(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-501173(P2018-501173A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(54)【発明の名称】グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームに基づく階層的複合構造体
(51)【国際特許分類】
C01B 32/186 20170101AFI20171215BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20171215BHJP
C04B 41/83 20060101ALI20171215BHJP
C01B 32/198 20170101ALI20171215BHJP
H01G 11/48 20130101ALI20171215BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20171215BHJP
【FI】
C01B32/186
C04B38/00 303Z
C04B38/00 304A
C04B41/83 A
C01B32/198
H01G11/48
H01G11/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-523233(P2017-523233)
(86)(22)【出願日】2015年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2015075347
(87)【国際公開番号】WO2016066843
(87)【国際公開日】20160506
(31)【優先権主張番号】14382428.2
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】510301493
【氏名又は名称】レプソル,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ、ペドロス
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト、ボスカ
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド、カリェ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ、ルイス−ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス、ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ビオレタ、バランコ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、パエス、デュエニャス
(72)【発明者】
【氏名】ヘスス、ガルシア、サン、ルイス
【テーマコード(参考)】
4G019
4G146
5E078
【Fターム(参考)】
4G019FA11
4G019FA13
4G019FA15
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD24
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4G146CB29
5E078AA01
5E078AA05
5E078AB01
5E078BA18
5E078BA29
5E078BA32
5E078BA63
(57)【要約】
本発明は、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなる階層的複合構造体であって、このグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されており、かつ、このグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vは伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている階層的複合構造体に関する。本発明はまた、階層的複合構造体を製造するための方法であって、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、このグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋めるように、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体を電着させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなる階層的複合構造体であって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームが伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されており、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vが前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている、階層的複合構造体。
【請求項2】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の10%〜90%v/vが、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている、請求項1に記載の階層的複合構造体。
【請求項3】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の10%〜50%v/vが、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている、請求項1に記載の階層的複合構造体。
【請求項4】
前記連続気泡グラフェンフォーム中のグラフェンが、単層、二層または3〜20層を有する多層の単原子グラフェンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項5】
前記グラフェン状フォーム中の前記連続気泡グラフェン状材料が、21〜300層の単原子グラフェンを有する超薄グラファイト、または還元型酸化グラフェンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項6】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの構造が、5〜500μmの範囲の平均直径の細孔を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項7】
前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体のナノ細孔が、5〜500nmの範囲の平均直径を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項8】
前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が、伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを含んでなる、請求項7に記載の階層的複合構造体。
【請求項9】
前記伝導性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項8に記載の階層的複合構造体。
【請求項10】
前記伝導性ポリマーがポリアニリンである、請求項9に記載の階層的複合構造体。
【請求項11】
階層的複合構造体を製造するための方法であって、
a)連続気泡構造を有するグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを準備する工程;
b)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを、伝導性材料またはその前駆体を含む電解質溶液に浸漬する工程;
c)前記電解質溶液に浸漬された前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中に捕捉された空気を除去する工程;
d)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋めて、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が形成されるように、前記伝導性材料、またはその前駆体から形成された伝導性材料を、前記電解質溶液中の前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に電着させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項12】
前記伝導性材料の前記前駆体が伝導性ポリマーの前駆体モノマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体モノマーがアニリンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電解質溶液が凝集防止剤をさらに含んでなり、かつ、該凝集防止剤が、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームが浸漬される前記電解質溶液に、または工程c)を行った後に添加される、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記電着が電位印加状態で行われる、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
連続電位が0.65〜0.85Vの間で印加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法によって得られる、階層的複合構造体。
【請求項18】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vが、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている、請求項17に記載の階層的複合構造体。
【請求項19】
請求項1〜10および17〜18のいずれか一項に記載の階層的複合構造体を含んでなる、電極。
【請求項20】
セパレーターによって第2の電極から分離され、電解質に浸漬されている、請求項19に記載の少なくとも1つの電極を含んでなる、電気化学的エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項21】
スーパーキャパシターである、請求項20に記載の電気化学的エネルギー貯蔵デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆された連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームに基づく階層的複合構造体であって、この伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを、そのグラフェンフォームまたはそのグラフェン状フォームの細孔の中空空間を少なくとも部分的に埋めるノンコンフォーマルな方法で被覆している階層的複合構造体に関する。本発明の階層的複合構造体は、電極としておよび電気化学的エネルギー貯蔵デバイスにおいて使用し得る。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵デバイスは、ハイブリッド車および電気自動車または携帯用電子機器などの複数の大量消費財にますます普及しており、環境発電および送電線などの他の分野に急速に浸透している。高容量および高速充電速度は、これら総ての用途にとって重要な側面である。さらに、次世代のフレキシブルエレクトロニクスおよびウエアラブルデバイスの開発にはフレキシブルな電源が必要である。しかしながら、このようなエネルギー貯蔵デバイスの製作は、電子およびイオンの優れた伝導性、ロバストな機械的柔軟性、および優れたサイクル安定性を併せ持つ信頼性の高い材料がないために、依然として大きな課題である。
【0003】
スーパーキャパシターとも呼ばれる電気化学キャパシター(Electrochemical capacitor)(EC)は、高電力密度を有し、優れた可逆性を示し、非常に長いサイクル寿命を有する蓄電デバイスである。蓄電機構に基づいて、ECを2つの主要な種類に分類することができる:(i)電極−電解質界面での電荷分離から生じる電気二重層キャパシタンスを利用することによってエネルギーを貯蔵する、主に炭素材料を中心とした電気二重層キャパシター(electrical double-layer capacitor)(EDLC)、(ii)電気化学的活性材料で形成された電極表面における高速かつ可逆的なファラデー反応から生じる擬似キャパシタンスを利用することによってエネルギーを貯蔵する擬似キャパシター。EDLCと比較して、遷移金属酸化物または伝導性ポリマーに基づく擬似キャパシターは、はるかに高い比キャパシタンスを提供し得る。しかしながら、それらの実際の用途は、主に非効率的な大量輸送または遅いファラディックなレドックス速度のために、高コスト、低動作電圧、または速度能力不足によって依然として制限されている。酸化物の場合、厚さとともに増加する高い電気抵抗は、電極の実際の厚さを制限し、電荷輸送を減少させ得る。この制限は、小さな内部抵抗を示す伝導性ポリマーには当てはまらないが、それらはより低いサイクル安定性を示し得る。
【0004】
スーパーキャパシター電極として使用される材料に要求される特性は、強い容量性挙動、大きな比表面積、軽量、高い伝導率、および電気化学的安定性である。1000m
2/g〜2500m
2/gの表面積を有する活性炭は、最も一般的に使用される材料である。しかしながら、蛇行細孔構造であることから、高い走査速度でキャパシタンスは劇的に低下する可能性がある。
【0005】
スーパーキャパシターのための電極材料の探索では、高性能スーパーキャパシターの要件を理論的に満たす高い導電率、大きな表面積および豊富な中間層構造から、グラフェンに対して適切性が与えられる。化学蒸着(chemical vapor deposition)(CVD)グラフェンおよび化学的または熱的還元型酸化グラフェン(reduced graphene oxide)(rGO)を含む様々なグラフェン系材料が、スーパーキャパシターの電極として広く研究されている。複数の著者ら(Wu et al., ACS Nano 4(2010) 1963; Zhang et al., Chemistry of Materials 22 (2010)1392; およびLiu et al, CN102532891 A)は、グラフェン粉末と伝導性ポリマーの混合物に基づくスーパーキャパシター電極材料を開示しており、ここでは、両方の材料が別々に処理され、一緒に混合されて多孔質層構造を形成する。
【0006】
グラフェンの並はずれた特性は、最近、第3次元に入っている。三次元(3D)グラフェン構造の大きな比表面積および伝導性ロバスト構造は、電荷移動を助けることができ、電子電荷の容易な流れを可能にするだけでなく電極と電解質との間の界面特性も改善する。3Dグラフェン構造の中で、グラフェンフォームは、エネルギー貯蔵デバイスのためのより良好な電極材料を提供するための非常に有望な構造である。複数の著者らは、比表面積が変化しないかまたは堆積した薄層が一定の多孔性を有する場合に比表面積がほとんど増加しない擬似容量性材料の薄層でコンフォーマルに被覆されたグラフェンフォームを報告している。例えば、Yager(US2013/0021718A1)は、RuO
2、Fe
3O
4、またはMnO
2などの擬似容量性材料が3D連続気泡グラフェン構造を被覆する多孔質グラフェン電極材料を報告している。
【0007】
具体的には、Dong et al. (Mat. Chem. and Phys. 134(2012) 576)は、4A/gの電流密度で346F/gの比キャパシタンスに達するコンフォーマルなポリアニリン(polyaniline)(PANI)膜を有するグラフェンフォーム(a grahene foam)に基づくスーパーキャパシター電極を報告している。Kulkarniらは、静電相互作用およびΠ−Πスタッキング相互作用によって3Dグラフェン表面上に吸着されたPANIナノファイバーに基づくスーパーキャパシター電極を報告している。このPANIナノファイバーは、グラフェンフォーム上の準コンフォーマルな被覆(a quasi-conformal coating)を構成する。Kulkarniらは、1mA/cm
2の電流密度でPANI/3DグラフェンフォームおよびPANI/ステンレス鋼電極についてPANIナノファイバーの最大比キャパシタンス値1002F/gおよび435F/gを報告している。具体的には、Kulkarniらは、ナノ構造の過成長は、グラフェン系電極の比表面積を劇的に減少させ、結果として、実効キャパシタンスを減少させるナノファイバーの凝集をもたらすことに言及している。具体的には、Kulkarniらがグラフェンフォーム上に堆積させることができる限られた量のPANIナノファイバーは、1mA/cm
2の電流密度で最大値がわずか0.31F/cm
2の小さな面積キャパシタンスを反映している。
【0008】
従って、グラフェン系電極は、それらの並はずれた利点にもかかわらず、非常にコンパクトなアセンブリーを達成する一方で大きな体積キャパシタンスを提供するように高い多孔性を保持するために、1つの重要な技術的限界に直面する。この意味において、一方で、グラフェンシートの自己凝集は、グラフェン系電極の比表面積を劇的に減少させる可能性があり、電解質から電極へのイオン拡散を妨げ、それによって、実効キャパシタンスを減少させる。しかしながら、もう一方で、低いパッキング密度は電極内に大きな何もない空間をもたらし、これらの空間は、イオンの貯蔵に有効ではないが、電解質であふれ、それによって、キャパシタンスを追加することなく最終的なデバイス重量が増加する。後者は、電極のエネルギー密度を制限し、電気自動車の電源などの実際の用途でそれをスケールアップすることを困難にする。同様に、携帯用電子機器の小型化が進むにつれて、限られた空間のより良好な利用のためにより効率的な電極が必要となる。従って、より大きな比表面積、より高い比キャパシタンス、および高められた伝導率だけでなく、より大きな体積キャパシタンスを有する電極材料、ならびにそれらの合成のための改良された方法に対する必要性が残っている。それゆえに、広範な研究および努力にもかかわらず、高エネルギーおよび電力密度を有するスーパーキャパシターを作製することは、依然として困難なままである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなる階層的複合構造体であって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されており、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vは前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている階層的複合構造体を提供することである。
【0010】
本発明の階層的複合構造体の大きな比表面積は、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆しかつこの構造の細孔の空洞を部分的に埋めるナノポーラススポンジ状構造体(ノンコンフォーマル被覆)の伝導率と組み合わさることによって、電極として使用された場合に高いイオン拡散および電荷移行を可能にする。
【0011】
さらに、前記活性材料に大きな比表面積および大きなパッキング密度を与える本発明の階層的複合構造体は、イオンの流速および電荷抽出を変更することなく、コレクターおよび電解質に必要な容量を減少させる。
【0012】
さらに、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームと伝導性ナノポーラススポンジ状構造体との間の密接な接触は、伝導性スポンジ状構造体のナノ細孔を通るコレクターへの迅速な電荷輸送を可能にする低い内部抵抗を提供する。
【0013】
従って、本発明の階層的複合構造体は、拡張コレクターとしてのグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの高い伝導率、多孔性、軽量性および大きな比表面積と、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体の高い擬似キャパシタンスおよび大きなパッキング密度を兼ね備え、高い比キャパシタンスおよび体積キャパシタンスを有する電極を提供する。
【0014】
従って、第1の態様では、本発明は、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなる階層的複合構造体であって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されており、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vは前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている階層的複合構造体に関する。
【0015】
第2の態様では、本発明は、階層的複合構造体を製造するための方法であって、次の工程:
a)連続気泡構造を有するグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを準備する工程;
b)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを電解質溶液に浸漬する工程であって、前記電解質溶液は伝導性材料またはその前駆体を含んでなる、工程;
c)前記電解質溶液に浸漬された前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中に捕捉された空気を除去する工程;
d)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋めて、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が形成されるように、前記伝導性材料、またはその前駆体から形成された伝導性材料を、前記電解質溶液中の前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に電着させる工程
を含む方法に関する。
【0016】
加えて、本発明はまた、上で定義した方法によって得られる階層的複合構造体を意味する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、前記階層的複合構造体を含んでなる電極、および前記電極を含んでなる電気化学的エネルギー貯蔵デバイス、特に、前記電極を含んでなるスーパーキャパシターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的な実施態様を示し、記載された説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0019】
【
図1】
図1は、連続気泡グラフェンフォームが伝導性ナノファイバーフレームワークで被覆されており、かつ、この連続気泡グラフェンフォームの細孔の空洞が伝導性ナノファイバーフレームワークで占められている本発明の例示的な階層的複合構造体の模式図である。円(a)では、連続気泡グラフェンフォームの構造を詳細に示し、その細孔径を示している。円(b)では、その連続気泡グラフェンフォームを被覆しかつその連続気泡グラフェンフォームの細孔の空洞を埋める伝導性ナノファイバーフレームワークの構造の詳細を示している。ナノファイバースポンジの細孔径も示している。
【
図2】
図2a-dは、(a)グラフェンフォームが被覆されており、かつ、この細孔の空洞がPANIナノファイバーのフレームワークで占められている連続気泡グラフェンフォーム、(b)PANIナノファイバーがグラフェンフォームの表面から部分的に除去されているグラフェンフォームの細部、(c)本発明のある特定の実施態様による、平均直径200nmおよび長さ数ミクロンのPANIナノファイバーが絡み合っているPANIナノファイバーフレームワーク、(d)PANIナノファイバーの細部、のSEM画像である。
【
図3】
図3a-bは、(a)グラフェンをCVDによって堆積させた連続気泡ニッケルフォーム、(b)下部のニッケルフォームの除去後に得られるフリースタンディング連続気泡グラフェンフォーム、のSEM画像である。
【
図4】
図4a-fは、次の条件:(a-b)撹拌を伴った連続電位(continuous potential)(DC)により、(c-d)連続電位(DC)により、(e-f)撹拌を伴ったパルス電位により、0.8Vで電着させたPANIナノファイバーのフレームワークを含んでなる伝導性ナノポーラススポンジ状構造体のSEM画像である。右側の列の画像は、左側の列の画像の枠内領域の拡大図である。ナノファイバーの直径および単位面積あたりのナノファイバー数(または面密度)を示している。
【
図5】
図5は、走査速度5mV/s、10mV/sおよび20mV/sでの、PANIナノファイバー/グラフェンフォームの階層的複合構造体を含んでなる本発明の例示的な電極のサイクリックボルタモグラム(cyclic voltammogram)(CV)である
【
図6】
図6a-bは、(a)0.5mA、1mA、2mA、5mA、10mAおよび20mAで−0.2〜0.5V、(b)2mA、9mA、13.5mA、18mA、22.5mAおよび27mAで−0.2〜0.8V、の電圧範囲の異なる電流で測定したPANIナノファイバー/グラフェンフォームの階層的複合構造体を含んでなる本発明の例示的な電極の定電流充放電曲線を示す。(a)および(b)における挿入図は短時間での曲線の詳細を示す。
【
図7】
図7a-bは、PANIナノファイバー/グラフェンフォームの階層的複合構造体を含んでなる本発明の例示的な電極の異なる電流密度での、(a)PANI 1グラム当たりの比キャパシタンス、および(b)等価直列抵抗(the equivalent series resistance)(ESR)を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明のある特定の実施態様による、異なる電流密度でのPANIナノファイバー/グラフェンフォームの階層的複合構造体を含んでなる電極の面積キャパシタンスおよび体積キャパシタンスを示すグラフである。
【
図9】
図9は、2つの電圧範囲、−0.2〜0.5V(ΔV=0.7V)および−0.2〜0.8V(ΔV=1V)で測定したPANIナノファイバー/グラフェンフォームの階層的複合構造体を含んでなる本発明の特定の実施態様による電極のラゴンプロットである。
【
図10】
図10は、PANIナノファイバー/グラフェンの階層的複合構造体を含んでなる本発明の電極のサイクル安定性のグラフである。
【0020】
本発明は、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなる階層的複合構造体であって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されており、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vは前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている階層的複合構造体に関する。本発明の階層的複合体の代表的な図を
図1に示している。
【0021】
用語「階層的」とは、異なる長さスケールで相互連絡された細孔からなる多孔質構造であると理解される。本発明において、用語「階層的複合構造体」とは、異なる長さスケールの相互連絡された細孔からなり、かつ、少なくとも2つの異なる材料を含んでなり、一方は巨視的細孔を有する連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームであり、もう一方はナノ細孔を有するスポンジ状構造体の形態の伝導性材料である多孔質複合構造体を意味する。
【0022】
本発明において、用語「連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム」とは、個々の細孔が独立している独立気泡構造とは対照的に、個々の細孔の内部表面が隣接する細孔からアクセス可能である複数の細孔を有するグラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム構造を意味する。
【0023】
本発明における連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは、大きな空隙および界面を有する3D相互連絡マクロポーラス構造を有するマクロ構造鋳型またはスキャフォールドを提供する。ある特定の実施態様では、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔は、5〜500μmの範囲の平均直径を有し、好ましくは、その細孔の平均直径は、少なくとも50μmであり、より好ましくは、その平均直径は、100〜500μm、より好ましくは、200〜500μm、一層より好ましくは、300〜500μmの範囲である。
【0024】
用語「グラフェン」とは、単層または数層のグラフェンであると理解される。用語「多層グラフェン」とは、単原子グラフェンの複数の層を意味する。前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中のグラフェンは、1〜20層の間の単原子グラフェンを有し得る。好ましくは、前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは、1〜15層の間、より好ましくは、1〜10層の間、一層より好ましくは、1〜5層の間の単原子グラフェンを有する。一層より好ましくは、本発明において使用される連続気泡グラフェンフォーム中のグラフェンは、単層グラフェン、二層グラフェン、または3〜20層、より好ましくは、3〜5層の単原子グラフェンを有する多層のグラフェンである。
【0025】
ある特定の実施態様では、前記グラフェン状フォーム中のグラフェン状材料は超薄グラファイトまたは還元型酸化グラフェンである。本発明において、用語「超薄グラファイト」とは、単原子グラフェンの300層以下のスタックを有する構造であると理解される。前記連続気泡グラフェン状フォーム中の超薄グラファイトは、21〜300層の間の単原子グラフェンを有し得る。好ましくは、前記連続気泡グラフェン状フォーム中の超薄グラファイトは、21〜200層の間、より好ましくは、21〜100層の間、一層より好ましくは、21〜50層の間の単原子グラフェンを有する。1つの実施態様では、超薄グラファイトは25層の単原子グラフェンを有する。
【0026】
用語「伝導性ナノポーラススポンジ状構造体」とは、ナノポーラスフレームワークを有し、かつ伝導性材料を含んでなる構造体であると理解される。本発明において、用語「スポンジ状」とは、ナノポーラス構造の軽量性、弾性、および連続気泡形状を意味する。
【0027】
本発明において、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体は、本発明の階層的複合構造体の連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vを埋め、ナノポーラススポンジ状構造体の比表面積だけでなく、パッキング密度も増加させ、それによって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの比キャパシタンスおよび体積キャパシタンスの改善に寄与し、その結果、その電気化学的特性を改善する。
【0028】
ある特定の実施態様では、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体は伝導性ポリマーを含んでなる。好ましくは、前記伝導性ポリマーは、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン(polynaphtalene)、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体から選択される。あるより好ましい実施態様では、前記伝導性ポリマーはポリアニリン(PANI)である。
【0029】
本発明において、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体のナノ細孔は、5〜500nmの間に含まれる、好ましくは、少なくとも50nmの平均直径、より好ましくは、50〜500nmの間、より好ましくは、100〜500nmの間、一層より好ましくは、200〜500nmの間、一層より好ましくは、300〜500nmの間の直径を有する。
【0030】
図2に示されるように、本発明の1つの実施態様によれば、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体は、ナノポーラス構造を提供する伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを含んでなり、ここで、ナノ細孔はナノファイバー間に残された何もない空間から生じる。ある特定の実施態様では、前記伝導性ナノポーラススポンジ状物のナノファイバーは分離し、ナノファイバーフレームワーク中に、5〜500nmの間に含まれる平均直径を有するナノ細孔が残る。好ましくは、ナノファイバーのフレームワークのナノ細孔は、少なくとも50nm、より好ましくは、50〜500nmの間の直径を有し、一層より好ましくは、前記ナノ細孔は、100〜500nmの間、一層より好ましくは、200〜500nmの間、一層より好ましくは、300〜500nmの間に含まれる直径を有する。
【0031】
ある特定の実施態様では、前記伝導性ナノポーラススポンジ状物のナノファイバーは、整列しているかまたは絡み合っている。
【0032】
ナノファイバー形態は、高い比キャパシタンスをもたらし、電解質の電極マトリックス中への拡散抵抗を減少させる。ある特定の実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜250nmの間の直径、好ましくは、少なくとも5nmの直径、より好ましくは、50〜210nmの間に含まれる直径、一層より好ましくは、100〜200nmの間、一層より好ましくは、100〜150nmの間に含まれる直径を有する。あるより好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは約100nmの直径を有する。
【0033】
本発明において、前記ナノファイバーは、1〜100μmの間に含まれる長さを有する。好ましくは、前記ナノファイバーの長さは、1〜75μmの間、より好ましくは、1〜50μmの間、一層より好ましくは、1〜25μmの間に含まれる。あるより好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜10μmの間に含まれる長さを有する。
【0034】
本発明によれば、前記ナノファイバーは、1〜250nmの間に含まれる直径および1〜100μmの間に含まれる長さを有する。ある特定の実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜150nmの間に含まれる直径および1〜75μmの間に含まれる長さを有する。あるより特定の実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜100nmの間に含まれる直径および1〜75μmの間に含まれる長さを有する。ある好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜100nmの間に含まれる直径および1〜50μmの間に含まれる長さを有する。あるより好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜100nmの間に含まれる直径および1〜10μmの間に含まれる長さを有する。
【0035】
ある特定の実施態様では、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは、3μm
2あたりナノファイバー20本〜ナノファイバー150本の間に含まれる面密度を有する伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを含んでなる伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されている。好ましくは、3μm
2あたりナノファイバー40〜100本の間に含まれる、より好ましくは、3μm
2あたりナノファイバー60〜100本の間に含まれる面密度。
【0036】
本発明において、用語「面密度」とは、単位面積あたりの繊維数であると理解される。
【0037】
ある特定の実施態様では、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体を形成するフレームワークのナノファイバーは、伝導性ポリマーを含んでなる。ある特定の実施態様では、前記ナノファイバー中の伝導性ポリマーは、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン(polynaphtalene)、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体から選択される。好ましくは、前記伝導性ポリマーはポリアニリ(PANI)である。
【0038】
図2は、伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを含んでなる伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で細孔の空洞が部分的に埋められている、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体によって被覆された本発明の連続気泡グラフェンフォームの例を示している。
【0039】
ある特定の実施態様では、前記細孔の空洞の少なくとも10%v/v、好ましくは、10〜50%v/vの間、より好ましくは、10〜40%v/vの間、一層より好ましくは、10〜20%v/vの間、一層より好ましくは、10%〜15%v/vは埋められている。あるより好ましい実施態様では、前記細孔の空洞の11%v/vは埋められている。
【0040】
ある特定の実施態様では、前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞は、前記ナノポーラススポンジ状構造体で10〜90%v/v占められ、好ましくは、前記細孔の空洞は、15〜90%v/v、より好ましくは、40〜90%v/v、一層より好ましくは、45〜90%v/v占められている。ある好ましい実施態様では、前記細孔の空洞は50〜85%v/v、より好ましくは、60〜80%v/v占められている。
【0041】
前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームと前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体との間の密接な接触は、電子電荷の流れを可能にし、前記階層的複合構造体の界面特性を改善する。
【0042】
本発明の別の態様は、前記階層的複合構造体を製造するための方法であって、次の工程:
a)連続気泡構造を有する連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを準備する工程;
b)前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを電解質溶液に浸漬する工程であって、前記電解質溶液は伝導性材料またはその前駆体を含んでなる、工程;
c)前記電解質溶液に浸漬された前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中に捕捉された空気を除去する工程;
d)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を少なくとも部分的に埋めて、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が形成されるように、前記伝導性材料、またはその前駆体から形成された伝導性材料を、前記電解質溶液中の前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に電着させる工程
を含む方法に関する。
【0043】
ある特定の実施態様では、前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは、化学蒸着(CVD)、プラズマ式化学蒸着(plasma-assisted chemical vapor deposition)またはゲル化によって形成される。好ましくは、グラフェンは、CVDによってグラフェンの製造に好適な金属フォーム状鋳型上に直接堆積される。Chenおよび共同研究者ら(Nature Materials, 10 (2011) 424)は、まず、鋳型によるCVD(template-directed CVD)を用いた3Dグラフェンフォームの一般的な合成戦略を開発した。この手順は、高度に相互連絡されたニッケルの3Dスキャフォールドの存在下、周囲圧力下、1000℃でCH
4を分解することからなった。次いで、グラフェンフィルムをニッケルフォームの表面上に沈殿させた。得られたグラフェンフォームは、相互連絡された連続グラフェン3Dネットワークを示し、ここで、総てのグラフェンシートは、ニッケルフォーム鋳型の相互連絡された3Dスキャフォールド構造をコピーし、引き継いで、壊れることなく相互に直接接触していた。
【0044】
CVD法は、グラフェンを形成するための任意の好適な材料および条件を使用し得る。グラフェンを製造するための金属フォーム状鋳型として好適であり得る例示的な金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、白金、パラジウム、イリジウム、レニウムまたは銅が挙げられる。いくつかの例では、グラフェンの製造に好適な金属としては、ニッケル、銅、ルテニウム、鉄、コバルト、または白金が挙げられる。好ましくは、金属フォームとしては、ニッケルが挙げられる。
【0045】
本発明によれば、グラフェンは金属フォームの表面上に堆積させ得る。
図3aは、グラフェンをCVDによって堆積させた例示的なニッケルフォームのSEM画像を示している。一度、グラフェンを堆積させたら、その後、金属鋳型を取り外し、グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを得る。鋳型は、化学湿式エッチングによって除去し得るしまたはフリースタンディング連続気泡グラフェンフォームを残すように溶解し得る。本発明において、フリースタンディング連続気泡グラフェンフォームとは、金属鋳型を除去することから生じる連続気泡グラフェンフォームであると理解される。
図3bは、下部の金属フォームがHCl:H
2O(容量比1:3)溶液によって除去されている本発明のフリースタンディング連続気泡グラフェンフォームのSEM画像を示している。他の代替エッチング液としては、FeCl
3、希釈H
2SO
4、希釈王水(HClおよびHNO
3の混合物)、およびマーブル試薬が挙げられる。
【0046】
あるいは、金属フォームを除去する前に、連続気泡グラフェン状フォームまたはグラフェンフォームの損傷を防止するために、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上にポリマーを堆積させ得る。ある特定の実施態様では、前記ポリマーは、PMMA:クロロベンゼンの層である。一度、金属フォームが化学湿式エッチングによって除去されたらまたは溶解したら、グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に堆積しているポリマーは溶媒で溶解する。ある特定の実施態様では、前記ポリマーを熱アセトンに溶解する。ある特定の実施態様では、アセトン温度は約55℃である。
【0047】
前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中のグラフェンは、1〜20層の間を有し得る。好ましくは、前記グラフェンは、1〜15層の間、より好ましくは、1〜10層の間、一層より好ましくは、1〜5層の間を有する。1つの実施態様では、グラフェンは、単層グラフェン、二層グラフェンまたは3〜5層の単原子グラフェンを有する多層グラフェンである。
【0048】
ある特定の実施態様では、前記連続気泡グラフェン状フォーム中のグラフェン状材料は超薄グラファイトまたは還元型酸化グラフェンである。
【0049】
ある特定の実施態様では、前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔は、5〜500μmの範囲の平均直径を有し、好ましくは、細孔の平均直径は、少なくとも50μmであり、より好ましくは、平均直径は、100〜500μm、より好ましくは、200〜500μm、一層より好ましくは、300〜500μmの範囲である。
【0050】
本発明の方法の工程b)によれば、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは、伝導性材料またはその前駆体を含んでなる電解質溶液に浸漬される。好ましくは、前記電解質溶液は電解質水溶液である。
【0051】
ある特定の実施態様では、前記伝導性材料の前駆体は、伝導性ポリマー、すなわち、伝導性ポリマーの前駆体モノマーを提供することができるモノマーである。好ましい実施態様では、前記電解質溶液中のモノマーはアニリンである。
【0052】
別の特定の実施態様では、本発明の方法の次の工程d)において、前記伝導性材料を、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に繊維の形態で電着させる場合、前記電解質溶液は凝集防止剤を含み得る。前記凝集防止剤は、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体の形成中に繊維の凝集を回避する。
【0053】
ある特定の実施態様では、前記凝集防止剤は、アルコール、より好ましくは、直鎖または分岐C
1−C
4アルコールであり、一層より好ましくは、エタノールまたはメタノールである。
【0054】
別の特定の実施態様では、前記電解質溶液は、酸、好ましくは、塩酸を含む。
【0055】
ある特定の実施態様では、前記電解質溶液は、伝導性ポリマーの前駆体モノマー、直鎖または分岐C
1−C
4アルコールなどの凝集防止剤、および酸を含んでなる。好ましくは、前記電解質溶液は、アニリン、メタノールおよび塩酸を含んでなる電解質水溶液である。
【0056】
本発明の方法の工程c)によれば、前記電解質溶液に浸漬された前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中に捕捉された空気は除去される。ある特定の実施態様では、捕捉された空気は真空によって除去される。ある特定の実施態様では、捕捉された空気は膜ポンプを使用して、例えば、8ミリバールの圧力で除去される。
【0057】
ある特定の実施態様では、前記電解質溶液に凝集防止剤が予め添加されていない場合には、前記凝集防止剤は、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中に捕捉された空気を除去した後に添加することができる。ある特定の実施態様では、前記凝集防止剤は、アルコール、より好ましくは、直鎖または分岐C
1−C
4アルコールであり、一層より好ましくは、エタノールまたはメタノールである。
【0058】
本発明の方法の工程d)によれば、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体は、前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋めるように形成され、その構造の比表面積だけでなく、その構造のパッキング密度も増加させ、それによって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの比キャパシタンスおよび体積キャパシタンスの改善に寄与し、その結果、その電気化学的特性を改善する。
【0059】
この工程は、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋めて、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が形成されるように、前記伝導性材料、またはその前駆体から得られた伝導性材料を、前記電解質溶液中の前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に電着させることによって行われる。
【0060】
前記電解質溶液が前記伝導性材料の前駆体を含んでなる場合、前記前駆体は電着の間に伝導性材料に変換され、その結果、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋める伝導性ナノポーラススポンジ状構造体を形成する。
【0061】
前記伝導性材料が伝導性ポリマーの前駆体モノマー、例えば、アニリンなどから得られる場合、前記モノマーは電着の間に重合し、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体を提供する伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを形成する。
【0062】
ある特定の実施態様では、電着が行われる電解質溶液は、伝導性ポリマーの前駆体モノマーおよび凝集防止剤を含んでなる。形成されるポリマーの分子と凝集防止剤との間の優先的な水素結合は、ポリマー鎖を押し開き、ナノファイバーの成長を促進し、それらの凝集を防ぎ、その結果、広範囲な伝導性3D相互連絡ポリマーネットワークまたはナノポーラススポンジ状構造体をもたらす。
【0063】
ある特定の実施態様では、工程d)は、伝導性ポリマーの前駆体モノマー、アルコール、および酸の混合物を含有する電解質溶液中で電着させることによって行われる。
【0064】
本明細書において、「電着」とは、電位の印加時に発生するグラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上への伝導性材料の堆積であり、それによって、伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が形成される。
【0065】
電着は、下記、とりわけ:(a)定電流、(b)定電圧、(c)例えば、1回または複数回の走査/掃引による、電流走査/掃引、(d)例えば、1回または複数回の走査/掃引による、電圧走査/掃引、(e)電流矩形波または他の電流パルス波形、(f)電圧矩形波または他の電圧パルス波形、ならびに(g)電流および電圧の異なるパラメーターの組合せを含む様々な電気化学的条件下で行うことができる。
【0066】
本発明において、電着は、電解質溶液および3つの電極(作用電極、基準電極、および対電極)を含む容器内で行うことができる。電流が作用電極と対電極との間を通過する一方で、電位が基準電極に対して測定される。前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは作用電極として作用する。ある特定の実施態様では、白金メッシュは対電極として、Ag/AgCl基準電極とともに使用される。
【0067】
電着プロセスの間に印加される電位は、フォーム内部の溶液の均質性と、その結果、得られる伝導性ナノポーラススポンジ状構造体の密度を決定する。
【0068】
ある特定の実施態様では、電着プロセスの間に印加される電位はパルス電位である。好ましくは、パルス電位が撹拌器とともに電着の間に適用される。別の特定の実施態様では、電着プロセスの間に印加される電位は連続電位(DC)である。より好ましくは、連続電位が撹拌器とともに電着プロセスの間に使用される。この点に関して、
図4a〜fは、撹拌を伴った連続電位(
図4a〜b)、連続電位(
図4c〜d)および撹拌を伴ったパルス電位(
図4e〜f)の下でグラフェンフォーム上に電着させたポリアニリン(PANI)ナノファイバーのフレームワークを含んでなる伝導性ナノポーラススポンジ状構造体のSEM画像を示している。電着させたPANIナノファイバーの壁の直径、密度および粗さは、電位印加方法に依存する。従って、
図4a〜fに示されるように、撹拌を伴った連続電位を適用する場合(
図4a〜b)、より滑らかな壁およびより小さい直径を有するより高い密度のPANIナノファイバーが、グラフェンフォーム上に電着される。ある好ましい実施態様では、0.65〜0.85Vの間の連続電位が電着プロセスの間に使用される。ある好ましい実施態様では、電着プロセスの間に印加される電位は0.8Vである。
【0069】
ある特定の実施態様では、前記電着は、室温、すなわち、20℃で行われる。好ましくは、前記電着プロセスは−5〜30℃の間で行われる。一層より好ましくは、前記電着プロセスは15〜30℃の間で行われる。より好ましくは、前記電着プロセスの間の温度は15〜25℃の間に含まれる。
【0070】
ある特定の実施態様では、前記電着は、塩酸(HCl)、メタノール(CH
3OH)およびアニリンを含んでなる電解質水溶液中で行われる。好ましくは、前記電着プロセスは、HCl:CH
3OH:アニリン(x:y:0.2M;ここで、「x」はHClのモル濃度であり、「y」はCH
3OHのモル濃度である)「x」は0.8〜1.2の間であり、「y」は0.4〜0.6の間である)の電解質水溶液中で行われる。より好ましくは、前記電着プロセスは、HCl:CH
3OH:アニリン(1:0.5:0.2M)の電解質水溶液中で行われる。
【0071】
前記電着プロセスの間に、電位の印加時間は、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の充填パーセンテージを決定する。ある特定の実施態様では、前記電着時間は少なくとも7分であり、好ましくは、前記電着時間は9分〜100分の間に含まれ、より好ましくは、前記電着時間は10〜60分の間に含まれる。一層より好ましくは、前記電着時間は15〜30分の間に含まれる。ある好ましい実施態様では、前記電着時間は18分である。より好ましくは、前記電着時間は20分である。
【0072】
ある特定の実施態様では、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vは埋められており、好ましくは、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の10〜50%v/vの間、より好ましくは、10〜40%v/vの間、一層より好ましくは、10〜20%v/vの間、一層より好ましくは、10%〜15%v/v、一層より好ましくは、11%v/vは埋められている。
【0073】
ある特定の実施態様では、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞は、ナノポーラススポンジ状構造体で10〜90%v/v占められ、好ましくは、前記細孔の空洞は、15〜90%v/v、より好ましくは、40〜90%v/v、一層より好ましくは、45〜90%v/v占められている。ある好ましい実施態様では、前記細孔の空洞は、好ましくは、50〜85%v/v、一層より好ましくは、60〜80%v/v占められている。
【0074】
前記細孔の充填プロセスは、上記の電着条件、伝導性材料および時間によって支配される。ある好ましい実施態様では、例えば、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の11%は、上記のように、9分の電着プロセスによりPANIナノファイバーで埋められる。
【0075】
別の態様では、本発明はまた、上記の方法によって得られる階層的複合構造体を意味する。本発明のこの階層的複合構造体は、連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなり、ここで、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されており、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも一部は前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている。
【0076】
ある特定の実施態様では、上記の方法によって得られる連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中のグラフェンは、1〜20層の間の単原子グラフェンを有し得る。好ましくは、前記グラフェンは、1〜15層の間、より好ましくは、1〜10層の間、一層より好ましくは、1〜5層の間の単原子グラフェンを有する。一層より好ましくは、本発明において使用される連続気泡グラフェンフォーム中のグラフェンは、単層グラフェン、二層グラフェン、または3〜20層、より好ましくは、3〜5層の単原子グラフェンを有する多層のグラフェンである。
【0077】
ある特定の実施態様では、上記の方法によって得られる階層的複合構造体の連続気泡グラフェン状フォーム中のグラフェン状物は超薄グラファイトまたは還元型酸化グラフェンである。
【0078】
ある特定の実施態様では、上記の方法によって得られる階層的複合構造体の連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔は、5〜500μmの範囲の平均直径を有し、好ましくは、細孔の平均直径は、少なくとも50μmであり、より好ましくは、平均直径は、100〜500μm、より好ましくは、200〜500μm、一層より好ましくは、300〜500μmの範囲である。
【0079】
ある特定の実施態様では、上記の方法によって得られる階層的複合構造体の連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vは、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で占められている。
【0080】
ある特定の実施態様では、前記細孔の空洞の少なくとも10%v/vは埋められており、好ましくは、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の10〜50%v/vの間、より好ましくは、10〜40%v/vの間、一層より好ましくは、10〜20%v/vの間、一層より好ましくは、10%〜15%v/v、一層より好ましくは、11%v/vは埋められている。
【0081】
ある特定の実施態様では、前記連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞は、ナノポーラススポンジ状構造体で10〜90%v/v占められ、好ましくは、前記細孔の空洞は、15〜90%v/v、より好ましくは、40〜90%v/v、一層より好ましくは、45〜90%v/v占められている。ある好ましい実施態様では、前記細孔の空洞は、好ましくは、50〜85%v/v、一層より好ましくは、60〜80%v/v占められている。
【0082】
本発明において、上記の方法によって得られる階層的複合構造体の伝導性ナノポーラススポンジ状物は、5〜500nmの間に含まれる、好ましくは、少なくとも50nmの直径、より好ましくは、50〜500nmの間、より好ましくは、100〜500nmの間、一層より好ましくは、200〜500nmの間、一層より好ましくは、300〜500nmの間の直径を有するナノ細孔を有する。
【0083】
ある特定の実施態様では、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体は伝導性ポリマーを含んでなる。好ましくは、前記伝導性ポリマーは、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン(polynaphtalene)、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体から選択される。ある好ましい実施態様では、前記伝導性ポリマーはポリアニリン(PANI)である。
【0084】
本発明の1つの実施態様によれば、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体は、伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを含んでなる。
図2b、cおよびdは、グラフェンフォーム上にノンコンフォーマルに堆積させたナノファイバーのフレームワークを含んでなる本発明の階層的複合構造体を示すSEM画像である。ある特定の実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜200nmの間の直径、好ましくは、少なくとも5nmの直径、より好ましくは、50〜200nmの間に含まれる直径、一層より好ましくは、100〜200nmの間、一層より好ましくは、100〜150nmの間に含まれる直径を有する。あるより好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは100nmの直径を有する。
【0085】
本発明において、前記ナノファイバーは、1〜100μmの間に含まれる長さを有する。好ましくは、前記ナノファイバーの長さは、1〜75μmの間、より好ましくは、1〜50μmの間、一層より好ましくは、1〜25μmの間に含まれる。あるより好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜10μmの間に含まれる長さを有する。
【0086】
本発明によれば、前記ナノファイバーは、1〜200nmの間に含まれる直径および1〜100μmの間に含まれる長さを有する。ある特定の実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜150nmの間に含まれる直径および1〜75μmの間に含まれる長さを有する。あるより特定の実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜100nmの間に含まれる直径および1〜75μmの間に含まれる長さを有する。ある好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜100nmの間に含まれる直径および1〜50μmの間に含まれる長さを有する。あるより好ましい実施態様では、前記ナノファイバーは、1〜100nmの間に含まれる直径および1〜10μmの間に含まれる長さを有する。
【0087】
ある特定の実施態様では、前記伝導性ナノポーラススポンジ状物のナノファイバーは、整列しているかまたは絡み合っている。
【0088】
ある特定の実施態様では、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームは、3μm
2あたりナノファイバー20本〜ナノファイバー150本の間に含まれる面密度を有する伝導性ポリマーのナノファイバーのフレームワークを含んでなる伝導性ナノポーラススポンジ状構造体で被覆されている。好ましくは、面密度は3μm
2あたりナノファイバー40〜100本の間に含まれ、より好ましくは、3μm
2あたりナノファイバー60〜100本の間に含まれる。好ましい実施態様では、ナノファイバーのフレームワークは、3μm
2あたりナノファイバー約100本、65本または40本の面密度を有する。
【0089】
前記伝導性ナノポーラススポンジ状物のナノファイバーは分離し、ナノファイバーフレームワーク中に、5〜500nmの間に含まれる直径を有するナノ細孔が残る。
図2cおよび2dは、ナノファイバーの間にナノ細孔が観察される本発明の階層的複合構造体の絡み合ったナノファイバーフレームワークの例を示している。ある特定の実施態様では、ナノファイバーのフレームワークのナノ細孔は、少なくとも50nm、一層より好ましくは、50〜500nmの間の直径を有し、より好ましくは、前記ナノ細孔は、100〜500nmの間、一層より好ましくは、200〜500nmの間、一層より好ましくは、300〜500nmの間に含まれる直径を有する。
【0090】
本発明において、前記伝導性ナノポーラススポンジ状構造体を形成するフレームワークのナノファイバーは、伝導性ポリマーで作られる。好ましくは、前記ナノファイバー中の伝導性ポリマーは、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン(polynaphtalene)、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体から選択される。好ましくは、前記伝導性ポリマーはポリアニリン(PANI)である。
【0091】
産業上の利用可能性
本発明の階層的複合構造体は、高い表面積、導電率または低い重量を有する材料が望ましい多種多様な用途において有用である。1つの可能な用途では、本発明の階層的複合構造体は、鉛酸電池またはリチウムイオン電池などの電池における電流コレクターとして機能を果たし得る。
【0092】
さらに、本発明の階層的複合構造体は、大きな細孔チャネルが迅速な電解質輸送を可能にする一方で、小さなものがより高い表面積を提供するため、良好な比キャパシタンスおよび体積キャパシタンス性能を保証する。キャパシターのエネルギー密度が、一般に、E=CV
2/2(式中、Cはキャパシタンスであり、Vは電圧である)によって決定されていることを考慮すると、高い比キャパシタンスおよび体積キャパシタンスを有する本発明の階層的複合構造体は、高エネルギー密度デバイス用途に大変興味深いものである。従って、本発明の1つの態様によれば、本発明の階層的複合構造体は、改善されたエネルギー貯蔵のためのスーパーキャパシターとして使用される。
【0093】
1つの態様では、本発明は、本発明の階層的複合構造体を含んでなる電極に関する。ある特定の実施態様では、前記階層的複合構造体を含んでなる電極は、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスにおいて使用し得る。
【0094】
別の特定の実施態様では、前記階層的複合構造体を含んでなる電極は、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスにおいて使用し得る。
【0095】
さらに、本発明の階層的複合構造体は、コレクターとして使用し得る。従って、さらなる態様では、本発明は、本発明の階層的複合構造体を有する拡張コレクターを含んでなる電極に関する。ある特定の実施態様では、本発明の階層的複合構造体を含んでなるコレクターは、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスにおけるコレクターとして使用し得る。
【0096】
別の態様では、本発明は、セパレーターによって第2の電極から分離され、電解質に浸漬されている、本発明の階層的複合構造体を有する少なくとも1つの電極を含んでなる電気化学的エネルギー貯蔵デバイスに関する。ある特定の実施態様では、前記電気化学的エネルギー貯蔵デバイスは、セパレーターによって相互に分離され、電解質に浸漬されている、本発明の階層的複合構造体を有する2つの電極を含んでなる。
【0097】
ある特定の実施態様では、前記電気化学的エネルギー貯蔵デバイスは、本発明の階層的複合構造体を有する少なくとも1つの電極を含んでなるスーパーキャパシターである。別の特定の実施態様では、前記スーパーキャパシターは、セパレーターによって相互に分離され、電解質に浸漬されている、本発明の階層的複合構造体を有する2つの電極を含んでなる。
【0098】
1つの実施態様では、本発明の階層的複合構造体は、センサーとして使用し得る。
【0099】
1つの実施態様では、本発明の階層的複合構造体は、触媒として使用し得る。
【0100】
1つの実施態様では、本発明の階層的複合構造体は、フィルターとして使用し得る。
【0101】
1つの実施態様では、本発明の階層的複合構造体は、吸収材として使用し得る。
【実施例】
【0102】
1.
グラフェンフォームの製造
グラフェンは、化学蒸着(CVD)によって連続気泡ニッケルフォーム基材上に堆積させる。一度、連続気泡ニッケルフォームをCVD反応器に導入したら、CVDシステムを、5 10
−2ミリバールより低い圧力までポンピングする。その後、CVDシステムを1000℃まで加熱し、25ミリバールの圧力に到達するようにCVD反応器にH
2を導入して存在する微量の酸化ニッケルを除去しながら、連続気泡ニッケルフォームを5分間焼なます。次いで、CVD反応器にメタンおよびアルゴンの混合物を5〜20分間導入する。堆積するグラフェン層の数は、混合物Ar:H
2:CH
4の関係、堆積時間および冷却速度に伴って変化する。
【0103】
連続気泡ニッケルフォームは、HCl:H
2O(容量比1:3)の混合物による化学エッチングにより除去する。
【0104】
数層のグラフェン層を有するだけの連続気泡グラフェンフォームが望ましい場合、化学エッチングの間に堆積したグラフェンの完全性を保つために、PMMA:クロロベンセン(chlorobencene)(PMMA 4.5重量%)の層の堆積が必要である。一度、連続気泡ニッケルフォームを除去したら、堆積しているポリマーを熱アセトン(55℃)で溶解する。
図3bは、この方法で得られる最終的なフリースタンディンググラフェンフォーム構造の例を示している。
【0105】
2.
グラフェンフォーム上へのPANIナノファイバーの電着
PANIナノファイバーの電着は、本発明の特定の実施態様によれば、連続気泡グラフェンフォームは作用電極であり、一方、Ag/AgCl電極は基準電極であり、白金メッシュは対電極である3電極システムを使用して行う。
【0106】
HCl:CH
3OH:アニリン(1:0.5:0.2M)の混合物を、電解質として室温で0.8Vで使用する。グラフェンフォームを、伝導性銀ペースト1滴によって非伝導性の試料ホルダー上に取り付け、続いて、それを、化学薬品に耐性のあるエポキシ樹脂を用いて隔離する。
【0107】
電着プロセスの前に、グラフェンフォーム内に捕捉されている空気を膜ポンプ(8ミリバール)を使用して真空条件で除去する。一度、グラフェンフォームから捕捉されている空気を除去したら、メタノールを溶液に任意に添加してよい。
【0108】
図4a〜fは、異なる実験条件で電位を印加した、上記の実験条件で調製された3つのサンプルの対応するSEM画像を示している。具体的には、
図4aおよび4bは、撹拌を伴って連続電圧(DC)を9分間印加した場合、小さな直径(平均直径約100nm)および滑らかな形態を有する大きなPANIナノファイバー密度が得られることを示している。これに対して、撹拌を伴わない同じ電位および時間では、わずかに大きな直径(平均直径約130nm)およびより粗い形態を有するより低いナノファイバー密度がもたらされる(
図4cおよび4d)。最後に、デューティサイクル0.5およびt
off=0.8sでのパルス電位を18分間印加した(t
offの間はゼロ電流とする)場合、PANIナノファイバーの一層より大きな直径およびより粗い形態を有するよりコンパクトな伝導性ナノポーラススポンジ状構造体が得られる(
図4eおよびf)。
【0109】
3.
PANI−ナノファイバースポンジ/グラフェンフォームの階層的複合構造体によって形成された電極の電気化学的特性
総ての電気化学的測定は、電解質として1M H
2SO
4溶液を用いる3電極システムで行う。PANI−ナノファイバー/グラフェンフォームの階層的複合構造体(A hierarchical structure composite)は作用電極として直接試験し、一方、Ag/AgCl電極は基準として使用し、白金メッシュは対電極として使用する。調製した電極の電気化学的性能は、サイクリックボルタンメトリー試験および定電流充放電試験によって評価する。比キャパシタンスは、定電流プロセスの放電部から、下式:C
sp=It
discharge/(mΔV)(式中、Iは、測定に使用される定電流であり、t
dischargeは放電プロセスの持続時間であり、ΔVは、放電プロセスの電圧降下であり、mは、電極の活性材料の質量である)に従って抽出する。これらの条件で得られる最大比キャパシタンス値は1474F/gである。
【0110】
本発明の電極のサイクリックボルタモグラム(CV)を
図5に示している。示されているように、電流応答は走査速度の増加とともに増加する。さらに、CV曲線は、走査速度の増加とともにそれらの形状を維持し、本発明の例示的な電極が良好な速度性能およびイオン拡散に対する低い内部抵抗を有することを暗示する。
【0111】
図6aおよび6bに示す本発明の電極の定電流充放電曲線は、異なる電流および2つの異なる電圧範囲で測定している。
【0112】
さらに、
図7aおよびbは、それぞれ、本発明の電極の比キャパシタンスおよび等価直列抵抗(ESR)の電流密度に伴う変化を示している。これらの値は、
図6aおよび6bの定電流充放電曲線から抽出している。電極は、電流密度0.47A/g(約1.4mA/cm
2)で最大比キャパシタンス1474F/gを提供する。比キャパシタンスは電流密度の増加とともに減少するが、電流密度1.4A/g(約4mA/cm
2)では依然として1150F/gを上回っており、または4A/g(約12mA/cm
2)ほど高い電流密度では800F/gを上回っている。電極は、全電流密度範囲において低いESRを示す。
【0113】
図8は、2つの異なる電圧範囲:−0.2〜0.5V(ΔV=0.7V)および−0.2〜0.8V(ΔV=1V)で測定した本発明の電極の面積キャパシタンスおよび体積キャパシタンスを示している。この図は、電流密度を1.4mA/cm
2から74.6mA/cm
2に増加させると、本発明の電極の面積キャパシタンスが4.3F/cm
2から1.3F/cm
2に減少することを示している。同様の傾向が体積キャパシタンスで観察され、電流密度を1.4mA/cm
2から74.6mA/cm
2に増加させると、体積キャパシタンスは86F/cm
3から25F/cm
3に減少する。電極の大きな表面積は、中程度の電流密度で高い面積キャパシタンスおよび体積キャパシタンスを促進するが、一方、より速い充電速度では、表面に限られたレドックスプロセスが電荷移動速度を制限し、キャパシタンス値を減少させる可能性がある。ここに報告している値は、細孔の空洞の11%v/vを占めるPANIナノファイバースポンジに対応するため、100%v/vを占めている場合、面積キャパシタンスおよび体積キャパシタンス値それぞれ、39F/cm
2および780F/cm
3を得ることが期待される。
【0114】
図9は、本発明の電極のラゴンプロットを示している。電極の大きな比キャパシタンスは、高いエネルギー値および電力密度値を提供する。エネルギー密度は、式E=C
spV
2/2によって得、一方、電力密度は、式P=E/t
dischargeによって決定する。−0.2〜0.8V(ΔV=1V)の電位範囲で電極を充放電すると、それぞれ、134Wh/kgおよび9kW/kgほど高い値が得られる。さらに、低いESR値は高い最大電力密度を意味し、この最大電力密度はP
max=V
2/(4ESRm)として計算され、43kW/kgの値に達する。
【0115】
図10は、本発明の電極のキャパシタンス保持力を充放電サイクル数で表したものである。この図は、100サイクル後に電極が初期キャパシタンス値の100%を保持し、良好なサイクル安定性を示すことを示している。
【手続補正書】
【提出日】2016年8月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを含んでなる階層的複合構造体であって、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームが絡み合った伝導性ポリマーナノファイバーのフレームワークで被覆されており、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の少なくとも10%v/vが前記絡み合った伝導性ポリマーナノファイバーのフレームワークで占められている、階層的複合構造体。
【請求項2】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の10%〜90%v/vが、前記絡み合った伝導性ポリマーナノファイバーのフレームワークで占められている、請求項1に記載の階層的複合構造体。
【請求項3】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞の15%〜50%v/vが、前記絡み合った伝導性ポリマーナノファイバーのフレームワークで占められている、請求項1に記載の階層的複合構造体。
【請求項4】
前記連続気泡グラフェンフォーム中のグラフェンが、単層、二層または3〜20層を有する多層の単原子グラフェンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項5】
前記グラフェン状フォーム中の前記グラフェン状材料が、21〜300層の単原子グラフェンまたは還元型酸化グラフェンを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項6】
前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの構造が、200〜500μmの範囲の平均直径の細孔を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項7】
前記絡み合った伝導性ポリマーナノファイバーのフレームワークによって形成される細孔が、50〜500nmの範囲の平均直径を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項8】
前記絡み合った伝導性ポリマーナノファイバーのフレームワーク中のナノファイバーが5〜200nmの間の平均直径を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の階層的複合構造体。
【請求項9】
前記伝導性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項8に記載の階層的複合構造体。
【請求項10】
前記伝導性ポリマーがポリアニリンである、請求項9に記載の階層的複合構造体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の階層的複合構造体を製造するための方法であって、
a)連続気泡構造を有するグラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを準備する工程;
b)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを、伝導性材料またはその前駆体と、所望により、凝集防止剤とを含む電解質溶液に浸漬する工程;
c)前記電解質溶液に浸漬された前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム中に捕捉された空気を除去し、工程b)において添加されていない場合には凝集防止剤を添加する工程;
d)前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームを被覆し、かつ、前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォームの細孔の空洞を部分的に埋めて、前記伝導性材料の絡み合ったナノファイバーのフレームワークが形成されるように、前記伝導性材料、またはその前駆体から形成された伝導性材料を、前記電解質溶液中の前記グラフェンフォームまたはグラフェン状フォーム上に電着させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項12】
前記伝導性材料の前記前駆体が前記伝導性材料の前駆体モノマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体モノマーがアニリンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記凝集防止剤がアルコールである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記凝集防止剤がメタノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電着が、0.65〜0.85Vの間の連続電位を印加して行われる、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の階層的複合構造体を含んでなる、電極。
【請求項18】
セパレーターによって第2の電極から分離され、電解質に浸漬されている、請求項17に記載の少なくとも1つの電極を含んでなる、電気化学的エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項19】
スーパーキャパシターである、請求項18に記載の電気化学的エネルギー貯蔵デバイス。
【国際調査報告】