【実施例】
【0052】
実施例1.ヒトproBDNF抗原の原核発現
1.1 pET22b−proBDNFベクターの構築及び同定
ヒト腫瘍細胞U87MGのcDNAを鋳型(RAYGENE Corporationから購入)とし、以下のようなプライマーでPCR増幅を行った。
PROBDNF−F:5’GCGAATTCCCCATGAAAGAAGCAAACATCC3’(配列番号:15);及び
PROBDNF−R:5’CCGCTCGAGTTATCTTCCCCTTTTAATGGTCAATG3’(配列番号:16)。
両末端にEcoRI/XhoI制限部位があるPRO BDNF遺伝子断片(703bp)を得、EcoRI及びXhoI(NEB Corporationから購入)で二重消化し、標的遺伝子断片proBDNFを得た。ベクタープラスミドpET22b(Novogen Corporationから購入)をEcoRI及びXhoIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、ベクター断片を回収した。ベクター断片をT4リガーゼ(NEB Corporationから購入)によって上述の標的遺伝子断片proBDNFで連結した後、大腸菌TOP10(LIFE Corporationから購入)に形質転換した。アンピシリン耐性によるスクリーニング、EcoRI/XhoI消化による挿入を含む陽性クローンの同定、及びシークエンシングによる検証を通じて、正確なヒトproBDNF遺伝子配列を含む原核発現プラスミドpET22b−proBDNFが得られた。
【0053】
1.2 ヒトproBDNFタンパク質の発現と精製
pET22b−proBDNFプラスミドを発現宿主株BL21(DE3)(Novagen Corporationから購入)に形質転換し、アンピシリンを補充した培地を含むプレートに広く塗り、37℃にて逆さまで一晩培養した。誘導発現のために単クローンをピックアップした後、OD
600が0.6〜0.8になるまで振とう培養した。最終濃度が1mMになるようにIPTGを入れ、30℃にて4時間誘導した後に細菌懸濁液を収集した。ペレットを遠心分離によって回収し、1/10体積の緩衝液A(50mM NaH
2PO
4、300mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)を添加して、再懸濁させた。PMSF(最終濃度1mM)を添加した。氷の上に置いて超音波(超音波3秒、間隔10秒、一組99回、計4組)で処理し、15分間遠心分離した(4℃、12,000g)後、上清を遠心分離によって収集した。Ni−NTAアガロース(QIAGEN Corporationから購入)親和性カラムクロマトグラフィーを行い、精製して標的発現タンパク質を得た後、PBS溶液で透析した。12%SDS−PAGEで透析後の精製タンパク質の純度を分析し、A280でタンパク質の含有量を検出した。少量のタンパク質をSDS PAGE上でランさせて、その分子量を検出した。
図1に示すSDS−PAGE結果は、レーン1における精製して得られた標的バンドが、proBDNF分子の理論分子量(27.8kD)と実質的に同じである約30kDの分子量を有することを示している。
【0054】
実施例2.ヒトproBDNF前駆体ドメインの真核発現
2.1 ヒトproBDNF前駆体ドメイン発現ベクターV5F−前駆体ドメインの構築
上記で得られたプラスミドpET22b−proBDNFを鋳型とし、以下のプライマーでPCR増幅を行った。
BDNFproVF1(配列番号17):5’GCTGGCTAGCACCCATGAAAGAAGCAAACATCCGAG3’;及び
BDNFproVR1(配列番号18):5’CCGCTCGAGGTGGCGCCGGACCCTCATG3’。
両末端にNheI/XhoI制限部位があるヒトproBDNF前駆体ドメイン遺伝子断片を得た(350bp)。PCR断片をNheI及びXhoI(NEB Corporationから購入)で二重消化した。得られた前駆体ドメイン遺伝子断片を、NheI及びXhoI(NEB Corporationから購入)で二重消化したベクターV5F(RAYGENE Corporationから購入)と共に、T4 DNAリガーゼによって連結した後、宿主株TOP10(LIFE Corporationから購入)に形質転換した。陽性クローンを取ってPCR同定を行い、正確な挿入をシークエンシングによって検証した。その後、V5F−前駆体ドメインプラスミドの構築に成功した。
【0055】
2.2 ヒトproBDNF前駆体ドメインタンパク質の発現と精製
良好に生長したHEK293F細胞(HEK293F、LIFE Corporationから購入)を1×10
6細胞/mLの密度で培養三角フラスコに接種し、37℃、5%CO
2、120rpmで一晩培養した。上記手順から得られたV5F−前駆体ドメインプラスミドとリポソーム(293Fectin、LIFE Corporationから購入)をそれぞれDMEMで希釈して穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートした。インキュベートしたDNA−リポソーム複合体をHEK293F細胞に添加し、37℃、5%CO
2、120rpmで72時間培養した。細胞培養液を収集し、4500gで15分間遠心分離した。細胞を除去し、上清を取った。1mlのFLAG抗体親和性充填剤(抗FLAGアガロース親和性ゲル、Sigma−Aldrich Corporationから購入)をカラムに充填し、FLAG親和性カラムを5〜10カラム体積の溶解緩衝液(50mM PB、0.3M NaCl、5%グリセロール)で平衡化した。遠心分離した細胞培養液の上清を1ml/分でFLAG親和性カラムを通過させ、通った液を収集して、4℃にて保存した。5〜10カラム体積の洗浄緩衝液1(50mM PB、pH7.8、0.3M NaCl、5%グリセロール)でカラムを洗浄し、洗浄液1を収集し、4℃にて保存した。4〜5カラム体積の洗浄緩衝液2(50mM PB、pH7.8、0.5M NaCl、5%グリセロール)でカラムを洗浄し、洗浄液2を収集し、4℃にて保存した。4〜5カラム体積の溶出緩衝液(50mMグリシン、HCl、pH3.0、0.3M NaCl、5%グリセロール)でカラムを溶出し、溶出液を収集した。中和緩衝液(1M Tris、HCl、pH8.0)の添加後、溶出液を透析溶液(50mM PB、pH7.8、0.3M NaCl、5%グリセロール)に対して4℃にて一晩透析し、保存した。少量の溶出液をSDS PAGE上でランさせた。
図2に示すような電気泳動の結果は、レーン1の標的バンドが、ヒトproBDNF前駆体ドメインタンパク質の理論分子量(13kD)よりもわずかに大きい約20kDの分子量を有することを示している。理論に束縛されるものではないが、これは発現されたタンパク質の真核システムにおけるグリコシル化の程度に関係するかもしれない。
【0056】
実施例3.ラットproBDNF前駆体ドメイン融合タンパク質(ラットproBDNF前駆体ドメイン−Fc)の真核発現
3.1 ラットproBDNF前駆体ドメイン融合発現ベクターV5FC−ラット前駆体ドメイン−Fcの構築
ラットのcDNA(RAYGENE Corporationから購入)を鋳型とし、以下のプライマーでPCR増幅を行った。
RatproF1:5’GCTGGCTAGCGCGCCCATGAAAGAAGCAAAC3’(配列番号19);及び
RatproR1:5’CCGCTCGAGGCGCCGAACCCTCATAGACATG3’(配列番号20)。
両末端にNheI/BamHI制限部位があるラットproBDNF前駆体ドメイン遺伝子断片を得た(356bp)。PCR断片をNheI及びBamHI(NEB Corporationから購入)で二重消化した。得られた前駆体ドメイン遺伝子断片を、NheI及びBamHI(NEB Corporationから購入)で二重消化したFc融合発現ベクターV5FC(RAYGENE Corporationから購入)と共に、T4 DNAリガーゼによって連結し、宿主株TOP10(LIFE Corporationから購入)に形質転換した。陽性クローンを取ってPCR同定を行い、正確な挿入をシークエンシングによって検証した。その後、V5FC−ラット前駆体ドメインプラスミドの構築に成功した。
【0057】
3.2 ラットproBDNF前駆体ドメイン融合タンパク質の発現と精製
良好に生長したHEK293F細胞(HEK293F、LIFE Corporationから購入)を1×10
6細胞/mlの密度で培養三角フラスコに接種し、37℃、5%CO
2、120rpmで一晩培養した。上記手順から得られたV5FC−ラット前駆体ドメインプラスミドと、リポソーム(293Fectin、LIFE Corporationから購入)をそれぞれDMEMで希釈し、穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートした。インキュベートしたDNA−リポソーム複合体をHEK293F細胞に添加し、37℃、5%CO
2、120rpmで72時間培養した。細胞培養液を収集し、4500gで15分間遠心分離した。細胞を除去し、上清を取った。1mlのタンパク質A親和性充填剤(プロテインAアガロース、RAYGENE Corporationから購入)をカラムに充填し、プロテインA親和性カラムを5〜10カラム体積の溶解緩衝液(50mM PB、0.3M NaCl、5%グリセロール)で平衡化した。遠心分離した細胞培養液の上清を1ml/分でプロテインA親和性カラムを通過させ、通った液を収集して、4℃にて保存した。5〜10カラム体積のPBS(20mM PB、pH7.8、0.15M NaCl)でカラムを洗浄し、洗浄液1を収集し、4℃にて保存した。4〜5カラム体積の溶出緩衝液(100mMグリシン、HCl、pH2.5)でカラムを溶出し、溶出液を回収した。10%体積の中和緩衝液(1M Tris、HCl、pH8.0)の添加後、溶出液を透析溶液(50mM PB、pH7.8、0.3M NaCl、5%グリセロール)に対して4℃にて一晩透析し、保存した。少量の溶出液をSDS PAGE上でランさせた。
図3に示すような電気泳動の結果は、レーン1の標的バンドが、ラットproBDNF前駆体ドメイン融合タンパク質(ラットproBDNF前駆体ドメイン−Fc)の理論分子量と同程度の約44.3kD(矢印によって示す)の分子量を有することを示している。
【0058】
実施例4.抗ヒトproBDNF前駆体ドメインモノクローナル抗体の調製と同定
4.1 組み換えタンパク質による免疫
上述の実施例1で得られた1mlの精製ヒトproBDNFタンパク質(1.0mg/mL)を抗原として1mLの完全フロイントアジュバント(Sigma−Aldrich Corporationから購入)と十分に混合し、乳化した後、6〜8週齢のBALB/cマウスに対する皮下免疫に使用した。各マウスに100μgのヒトproBDNF抗原で免疫を行った。4週間後、ヒトproBDNF抗原と不完全フロイントアジュバントを乳化混合し、各マウスに50μgずつの腹腔注射によってマウスに免疫を行った。その後2週間ごとに、腹腔注射によって、50μgの抗原による強化免疫を行った。4回目の強化免疫の1週間後、上記実施例2で得られた精製されたヒトproBDNF前駆体ドメインタンパク質をコーティングしたプレートを用いて、ELISA法によってマウスの血清抗体価を測定した。マウスの血清抗体価が>10
5になるまで強化免疫を続けた。最後の強化免疫の3週間後、上記ヒトproBDNF前駆体ドメインタンパク質20μgで脾内免疫を行い、使用に備えた。
【0059】
4.2 ヒトproBDNFハイブリドーマ細胞株の構築
脾内強化免疫の4日間後、無菌の状況で脾臓をマウスから取り、100メッシュスクリーンを介した濾過によってリンパ球を分離し、骨髄腫細胞系SP2/0と融合し、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT)の選択性培養を3日間行った後、HT培地を添加し、1週間さらに培養した。抗原として本発明の上記実施例のヒトproBDNFでコーティングしたプレートを用いて、ELISAで陽性クローンをスクリーニングした。有限希釈法によってサブクローニングを3回行い、サブクローンを2カ月間継続して培養した。最後に、安定したハイブリドーマ細胞株が得られ、クローンを、2B11、2C7、5C10、4C3、6F3、2F3、8E1、及び1G7と名付けた。
【0060】
4.3 抗体の精製
上記のハイブリドーマ細胞クローンを、5×10
5細胞/マウスの量でそれぞれの群のマウスに腹腔に注射し、腹水を調製した。100mlの腹水を、2倍体積の0.06M、pH4.0の酢酸ナトリウム緩衝液で希釈し、ゆっくり4%オクタン酸を撹拌しながら滴下た。30分撹拌した後、混濁液を10,000gで30分間遠心分離した。沈殿物を捨て、上清を0.01M、pH7.4のリン酸緩衝液で一晩透析した。等体積の飽和硫酸アンモニウムを透析液にゆっくりと添加した後、2時間静置した。混濁液を10,000gで10分間遠心分離した。上清を捨て、沈殿物を0.01M PBS、pH7.4で溶解した。溶液を0.01M、pH7.4のPBSで透析し、その間に液を2回交換し、2回の液交換の時間の間隔は5時間未満であった。透析液を10,000gで10分間遠心分離した。沈殿物を捨て、上清を収集した。
【0061】
プロテインG親和性カラム(GE Corporationから購入)を室温に戻し、5カラム体積のPBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で平衡化した。上記段落で回収した上清をカラムに充填した。5カラム体積のPBSでカラムを洗浄し、0.1M、pH2.3のグリシン塩酸塩溶液で溶出した。1/10体積のpH9.0の1Mリン酸水素二ナトリウム溶液を溶出液に添加し、中和した。溶液を0.01M、pH7.4のPBSで透析し、その間に液を2回交換し、2回の液交換の時間の間隔は5時間超であった。透析液を10,000gで10分間遠心分離し、上清を、0.22μmフィルターを介して濾過して、保管し、それぞれのクローンに対応する精製されたモノクローナル抗体を得た。
【0062】
4.4 ELISA法によるモノクローナル抗体結合領域の同定
実験群1:PBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で、実施例1で得られた精製されたヒトproBDNFタンパク質を希釈した。各群は、8ウェルを含む、8つの対応する精製されたモノクローナル抗体をそれぞれに添加した。
実験群2:実施例2で得られた精製されたヒトproBDNF前駆体ドメインタンパク質をPBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で希釈した。各群は、8ウェルを含む、8つの対応する精製されたモノクローナル抗体をそれぞれに添加した。
【0063】
実験群1及び2の希釈したタンパク質をそれぞれ50μl(50ng)の体積(質量)で、4℃にて一晩コーティングするのに使用した。その後、上清を捨て、各ウェルをPBSで2回洗浄した後、PBS中の5%粉乳で37℃にて2時間ブロックした。その後、実験群1及び2の8つのウェルにそれぞれ上記実施例3.3で得られた8つの精製されたモノクローナル抗体を50μl(1μg/ml)添加し、37℃にて1時間インキュベートした。0.5%Tween−20を含有するPBSTでプレートを3回洗浄した後、50μlのHRP標識ヤギ抗マウス二次抗体を添加し、37℃にて1時間インキュベートした。0.5%Tween−20を含有するPBSTでプレートを5回洗浄し、ABTS基質を添加して、15分間呈色させ、マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度値を測定した。実験を2回繰り返し、2回の吸光度の測定値の平均値を取った。吸光度値が陰性対照ウェルの読み取り値の3倍以上よりも高い場合を陽性とした。
【0064】
図4に示すように、精製されたモノクローナル抗体2B11は、ヒトproBDNF及びヒトproBDNF前駆体ドメインの両方に結合し、抗体2B11が2つのタンパク質の共通セグメント、すなわち、ヒトproBDNF前駆体ドメイン領域に結合することを示唆している。
【0065】
4.5 モノクローナル抗体2B11の西洋ワサビペルオキシダーゼ標識
10mgの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を1mlの水に溶解させ、1mlの0.5M NaIO
4を添加して、4℃にて30分間反応させた。1mlの0.16Mエチレングリコールを添加し、4℃にて30分間反応させた。10mgの2B11抗体を0.05M、pH9.5の炭酸緩衝液で透析した。酸化したHRPを2B11抗体とよく混合し、4℃にて一晩透析した。0.4mlの1mg/ml NaBH
4を添加し、4℃にて2時間撹拌した。低濃度のNaH
2PO
4溶液でpHを弱酸性に調整し、等体積のグリセロールを添加して、使用するまで保管した。
【0066】
4.6 ELISA法による、抗体2B11とproBDNFの結合の種属特異性の決定
実験群1:PBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で実施例1で得られた精製されたヒトproBDNFタンパク質を希釈した。
実験群2:PBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で原核発現のマウスproBDNF(Alomone Labs Corporationから購入)を希釈した。
実験群3:PBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で実施例3で得られた真核発現のラットproBDNF前駆体ドメインを希釈した。
【0067】
実験群1、2及び3の希釈したタンパク質をそれぞれ50μl(50ng)の体積(質量)で4℃にて一晩コーティングするのに使用した。その後、上清を捨て、各ウェルをPBSで2回洗浄した後、PBS中の5%粉乳で37℃にて2時間ブロックした。上清を捨て、希釈した実施例4.5におけるHRP標識2B11抗体(1μg/ml)50μlを添加し、37℃にて1時間インキュベートした。上清を捨て、0.5%Tween−20を含有するPBSTで各ウェルを3回洗浄した。ABTS基質を添加して、15分間呈色させ、マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度値を測定した。吸光度値が陰性対照ウェルの読み取り値の3倍以上よりも高い場合を陽性とした。
【0068】
図5に示すように、クローン2B11から分泌された抗体は、ヒトproBDNFタンパク質、本発明の実施例1で調製したマウスproBDNFタンパク質、及び実施例3で真核発現のラットproBDNF前駆体ドメインのいずれとも結合する。
【0069】
4.7 ELISA法によるクローン2B11の抗体サブタイプの決定
分類する抗体の数に基づいて、6つの実験群を設けた。希釈した原核発現のヒトproBDNF(50ng)タンパク質を50μlの体積で各群の各ウェルに添加し、4℃にて一晩コーティングするのに使用した。上清を捨て、各ウェルをPBS(0.01M PB、0.15M NaCl、pH7.4)で2回洗浄し、PBS中の5%粉乳で37℃にて2時間ブロックした。上清を捨て、クローン2B11由来の、精製され、希釈した上記抗体(1μg/ml)50μlを各ウェルに添加し、37℃にて1時間インキュベートした。上清を捨て、0.5%Tween−20を含有するPBSTで各ウェルを3回洗浄した。6つの対応する型の抗体(Sigma−Aldrich Corporationから購入):ヤギ抗マウスIgG1、ヤギ抗マウスIgG2a、ヤギ抗マウスIgG2b、ヤギ抗マウスIgG3、ヤギ抗マウスIgA、及びヤギ抗マウスIgMをそれぞれ実験群1〜6に添加し、37℃にて1時間インキュベートした。上清を捨て、0.5%Tween−20を含有するPBSTで各ウェルを3回洗浄した。50μlのHRP標識ロバ抗ヤギ二次抗体を添加して、37℃にて1時間インキュベートした。上清を捨て、0.5%Tween−20を含有するPBSTで各ウェルを5回洗浄した。ABTS基質を添加して、15分間呈色させ、マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度値を測定した。吸光度値が陰性対照ウェルの読み取り値の3倍以上よりも高い場合を陽性とした。
図6に示すように、クローン2B11は、IgG1型と同定された。
【0070】
実施例5.モノクローナル抗体2B11のシークエンシング
5’−RACE法で2B11の配列をクローニングし、シークエンシングによって決定した(具体的な手順はTakara 5’−full RACE Kitの説明書を参照されたい)。アルカリホスファターゼ(CIAP)で全RNAにおける露出した5’リン酸基に対して脱リン酸反応をさせた。全RNAの使用量は2μgで、反応後フェノール/クロロホルム抽出によって全RNAを回収した。タバコ酸性ピロホスファターゼ(TAP)でmRNAの5’キャップ構造を脱離させ、一つのリン酸基を残した。T4RNAリガーゼで5’RACE AdaptorをmRNAに連結し、反応後フェノール/クロロホルム抽出によって、産物を回収した。逆転写酵素で逆転写反応を行い、使用されたプライマーはキットで提供されたRandom 9 mersであった。
【0071】
逆転写産物を鋳型とし、高正確性酵素を用いて標的遺伝子をPCR増幅した。使用されたプライマーは以下の通りである:
5’:5’RACEアウタープライマー:CATGGCTACATGCTGACAGCCTA(配列番号21);
3’:重鎖:mIgG1−アウトプライマー:CCAGAGTTCCAGGTCACTGTCACT(配列番号22);
軽鎖:mκ−アウトプライマー:AGGTGCTGTCTTTGCTGTCCTG(配列番号23)
【0072】
上記増幅で得られたPCR産物を鋳型とし、ネステッドPCRを行った。使用されたプライマーは以下の通りである:
5’:5’RACEインナープライマー:CGCGGATCCACAGCCTACTGATGATCAGTC GATG(配列番号24);
3’:重鎖:mIgG1−インナープライマー:CCAGGGTCACCATGGAGTTAGTTT(配列番号25);
軽鎖:mκ−インナープライマー:GTTCAAGAAGCACACGACTGAGG(配列番号26)。
【0073】
上記増幅によって得られたPCR産物を精製し、TAクローン(pGEM−T Easy Vector Kit、Promega Corporationから購入。手順は当該キットの説明書を参照されたい)によって、それぞれTeasy−2B11VH及びTeasy−2B11VKベクターを得た。モノクローナル抗体2B11の重鎖及び軽鎖は、シークエンシングによって得られ、それぞれ配列番号9及び配列番号10で示した。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列は、KabatManによって決定され、それぞれ配列番号7及び配列番号8で示した。重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3の配列は、Kabat番号付けに従って決定され、それぞれ配列番号1〜3で示され、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3の配列は、決定され、それぞれ配列番号4〜6で示された。
【0074】
実施例6.キメラ抗体ベクターpH−CH2B11及びpK−CH2B11の構築及び結合活性の予備同定
6.1 ベクターpH−CH2B11の構築
本発明の実施例5で構築されたベクターTeasy−2B11VHを鋳型とし、以下のプライマーでPCR増幅を行った:
2BVHF:5’−ggctgttcacagcctttcctggtttcctgtctgaggtgaaggtggtggag−3’(配列番号27);
2BVHR:5’−cgatgggcccttggtggaggctgaggagacggtgactg−3’(配列番号28)。
2B11抗体の重鎖可変領域を得た。
【0075】
同時に、抗体ベクターpH−EGFRvIII(すなわち、pH−CH12、このベクターの構築方法はPCT/CN2009/074090の実施例7.1を参照されたい)を鋳型とし、PCR増幅を行った:
プライマーFcF:5’−gcctccaccaagggcccatcg gtcttccccctgg−3’(配列番号29);及び
プライマーPIHR:5’−cgcttttgagagggagtactcac−3’(配列番号30)。
ヒトIgG1の定常領域を得た。
【0076】
上記2つのPCR増幅の断片を回収した後、架橋し、さらに以下のプライマーでPCR増幅を行った:
Nhe:5’−cctagctagccaccatgagagtgctgattcttttgt ggctgttcacagcctttcct−3’(配列番号31);及び上記プライマーPIHR(配列番号30)。
産物のアガロースゲルを回収した後、NheI及びNotI(NEB Corporationから購入)で二重消化し、同様に二重消化されたベクターpHに連結し、キメラの2B11重鎖を含む発現プラスミドpH−CH2B11を得、PCR同定及びシークエンシングによって確認した。
【0077】
6.2 ベクターpK−CH2B11の構築
本発明の実施例5で構築されたベクターTeasy−2B11Vκを鋳型とし、以下のプライマーでPCR増幅を行った:
2BVκF:5’−cttgcattcttgttgctttggtttccaggtgcaagatgtgacatccagatgactc−3’(配列番号32);及び
2BVκR:5’−agccaccgtacg ttttatttccaactttg−3’(配列番号33)。
【0078】
モノクローナル抗体2B11の軽鎖可変領域を得、断片を回収した。以下のプライマーで上記PCR増幅断片を増幅した:
Eco:5’−gatcgatatccaccatggacatgatggtccttgctcagtttcttgcattcttgttg−3’(配列番号34)、及び2BVκR(配列番号31)。
増幅産物をアガロースゲル上で回収し、EcoRV及びBsiWI(NEB Corporationから購入)で二重消化し、同様に二重消化されたベクターpKに連結し、キメラの2B11軽鎖を含む発現プラスミドpK−CH2B11を得、PCR及びシークエンシングによって確認した。
【0079】
実施例7.キメラ抗体CH2B11の構築及び結合活性の同定
上記構築された発現ベクターpH−CH2B11及びpK−CH2B11を懸濁液中のCHO細胞に共形質転換して発現させ、培養上清を3日後に収集した。CHO細胞の培養上清に、発現されたキメラ抗体CH2B11が含まれた。
【0080】
培養上清を使用して、ELISA結合実験を行った。本発明の実施例1で調製したヒトproBDNFタンパク質の実験群1だけを含め、後でウェルに対応する8つのモノクローナル抗体のクローンではなく、本実施例における細胞上清の勾配希釈液を添加した以外は、実験方法は、本発明の実施例4.4の方法と実質的に同じであった。同様に、吸光度値が陰性対照ウェルの読み取り値の3倍以上よりも高い場合を陽性とした。
【0081】
実験結果を
図7に示す。キメラ抗体CH2B1を分泌するCHO細胞の培養上清は、1:32希釈で、ヒトproBDNFと結合する活性を示した。すなわち、抗体の結合性は優れている。
【0082】
実施例8.モノクローナル抗体2B11は、関節リウマチのマウスモデルの臨床症状を緩和する。
関節リウマチ(RA)は、病因不明の全身性自己免疫疾患であり、主として中高年の女性に起こり、主に関節に関与する。通常、関節症状は再発する。発病の回数が増すにつれて、関節損傷がますます深刻になり、最終的には、種々の度合いの機能障害及び変形をもたらす。900万人を超える外来、及び250,000人を超える入院が毎年RAによって引き起こされる。RAに起因する労働定員の損失は、巨大は経済的損失と、家族に重い負担をもたらす。最も一般に使用されるRAマウスモデルは、コラゲナーゼ注射に起因する関節炎モデル(CAIAモデル)である。本実施例では、CAIAモデルを使用して、2B11のRAに対する治療効果を評価した。
【0083】
1.実験動物
18〜20gの重さの6〜8週齢の雌のSPFグレードのBalb/Cマウス(the Department of Laboratory Animals、Central South Universityにより提供)を本実験で使用した。給餌条件は、以下の通りであった:クリーングレード、5〜6匹のマウス/ケージ、水と飼料は自由摂取;マウスの食事は、給水に浸して柔らかくした後に与えた。実験動物は完全に無作為化した。
【0084】
実験は、4つの群に無作為化した:
(1)正常対照群:正常マウス、モデリング無し;
(2)CAIA群:自己免疫関節炎モデルを設けたが、PBSは対照治療として与えた;
(3)CAIA+2B11前処置群:モノクローナル抗体2B11を500μg/kgで1日1回、合計で1週間、モデリングの日からモデリング後の7日目まで腹腔内に注射した;
(4)CAIA+2B11処置群:モノクローナル抗体2B11は、モデリング後17日目に与えた。
【0085】
2.CAIAモデルの調製
CAIAモデルは、Modiquest Corporation、Netherlandsからの(7つの抗体複合体からなる)コラゲナーゼ抗体複合体を腹腔に注射することによって設けた(モデリングの0日目)。2.8mgの抗体複合体を200μlのPBS中に溶解させ、腹腔内に直接注射した。モデリングの3日目に、25μgのLPS(Sigma Corporation)を腹腔内に再び注射し、炎症反応を促進させた。正常対照群では、等体積のPBSをモデリングの0日目と3日目に与えた。前処置群では、モノクローナル抗体2B11(2B11前処置群)を、モデリングの7日目から1週間毎日500μg/kgで腹腔に注射した。処置群では、モノクローナル抗体2B11を、モデリング成功後の17日目から1週間500μg/kgで腹腔に注射した。
【0086】
3.観察指標
(1)動物の体重測定:動物の体重は、自己免疫関節炎のモデリング後(すなわち、多数の抗体複合体の腹腔注射後)に減少し得る。動物の体重測定は、薬剤の有効性を評価するための非常に重要な指標になっている。
(2)関節炎の重症度スコア:関節炎の程度は、関与する関節の数に基づいてスコアすることができ、これは、自己免疫関節炎に対する薬剤の治療効果を評価するための最も重要な指標である。
(3)関節腫脹の程度:ノギスによって足底の厚さを測定し、関節腫脹の程度を評価した。関節腫脹の程度もまた、関節炎のプロセス及び薬剤の有効性を評価するための重要な指標である。
【0087】
4.実験結果
(1)自己免疫関節炎をもつマウスの体重に対する2B11の効果を
図8に示す。正常群と比較して、CAIA群のマウスの体重は、コラゲナーゼ抗体複合体の腹腔注射後に継続的に減少した。(*、p<0.05、対正常群;*、p<0.01、対正常群)。CAIA+2B11前処置群またはCAIA+2B11処置群のマウスの体重の減少の程度は、対照群のものよりも著しく低く、これは統計的に有意である(#、p<0.05、2B11群対対照群)(一元配置分散分析を、反復測定を用いて行い、Tukeyのポストホック検定は、ポストホック検定分析として使用した)。これは、2B11による前処置、及び疾患発症後の2B11の投与のいずれも、関節炎マウスの体重の減少の程度を著しく減少させ得ることを示唆している。
(2)自己免疫関節炎をもつマウスの関節炎の重症度に対する2B11の効果:モデリング後、腫れ及び他の症状が、マウスの小関節で発生し得る。共通の関節炎の重症度スコア方法(表1を参照)を使用して、自己免疫関節炎に対する2B11の予防(前処置群)及び治療(処置群)効果を評価した。
【0088】
【表1】
【0089】
図9に示すように、実験を通じて正常群のマウスの関節には腫れは起きなかったため、関節炎スコアは、0であった。CAIA群では、種々の小関節及び足首関節の腫れは、モデリングの7日目に起こり、関節炎スコアは、最大で4.8ポイントの最も高いピークに著しく増加した(モデリング後10日目)。CAIA+2B11前処置群及びCAIA+2B11処置群のいずれにおけるマウスの関節炎スコアは、対照群のものよりも著しく低いが、正常群よりはまだ高い(一元配置分散分析を、反復測定を用いて行い、テューキーのポストホック検定をポストホック検定分析として使用した)。これは、2B11が、前処置群または処置群であっても、自己免疫関節炎をもつマウスの症状を効果的に緩和し得ることを示唆している。
【0090】
(3)自己免疫関節炎をもつマウスの関節腫脹の程度に対する2B11の効果:異なる群の足底は、ノギスを使用して測定し、マウスの関節腫脹の程度を評価した。
図10に示すように、対照群のマウスの足底の厚さは、正常群と比較して著しく増加し、CAIA+2B11前処置群及びCAIA+2B11処置群の足底の厚さは、対照群と比較して著しく減少した(*p<0.05、対正常群;*p<0.01、対正常群;#p<0.05、対実験群)。
【0091】
実施例9.モノクローナル抗体2B11は、実験的アレルギー性脳脊髄炎をもつマウスの臨床症状を緩和する。
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、臨床多発性硬化症のマウスモデルであり、これは、特異的に感作されたCD4+T細胞によって主に媒介される自己免疫疾患であると見なされ、中枢神経系中の微小血管周りの単核細胞浸潤及び脱髄によって特徴付けられる。
【0092】
1.実験動物
18〜20gの重さの6〜8週齢の雌のSPFグレードのC57BL/6マウス(the Department of Laboratory Animals、Central South Universityにより提供)を本実験で使用した。給餌条件は、以下の通りであった:クリーングレード、5〜6匹のマウス/ケージ、水と飼料は自由摂取;3以上の麻痺レベルのマウスと瀕死のマウスは、実験中に単一のケージに収容した;マウスの食事は、給水に浸して柔らかくした後に与えた。実験動物は完全に無作為化した。
【0093】
2.EAEモデルの調製
マウスをセボフルランで麻酔した。完全に乳化したMOG35−55(3mg/ml)/IFA(H37RA、4mg/ml)を、マウスの上背部の左及び右側部、並びに尾の左の根元に150μl/マウスの用量で皮下に注射した。さらに、マウスに百日咳毒素PTX(0.5μg/100μl)を50μl/マウスの用量で腹腔内に注射し、48時間後に同じ用量のPTXを再び注射した。7日目に、MOG35−55(3mg/ml)/IFA(H37RA、2mg/ml)を、マウスの下背部の左及び右側部、並びに尾の左の根元に150μl/マウスの用量で皮下に注射した。
【0094】
3.動物及び投与の群分け
マウスを1群当たり10匹のマウスで3つの群に無作為化した:
(1)正常群(正常);
(2)モデル群(EAE+NSS):モデリング後8日目に、等体積の正常ヒツジ血清を0.2ml/マウスの用量で毎日7日間連続して腹腔内に注射した;
(3)モデル+抗proBDNF抗体処置群(EAE+抗proBDNF):モデリング後9日目に、EAEモデルマウスが疾患の初期ステージである場合、マウスは、抗proBDNFポリクローナル抗体を1日1回、7日間連続して腹腔注射の治療を受け始めた(2.5mg/kg、0.2ml/マウス/日)。
【0095】
4.観察指標
(1)EAEモデルの臨床スコアリング:モデリング後、臨床スコアリングを毎日行った。スコアリング基準は、以下の通りであった:0、臨床症状無し;0.5、尾の衰弱;1、尾の麻痺;2、協調運動の喪失;2.5、片側後肢の麻痺;3、両側後肢の麻痺;3.5、前肢の衰弱と共に両側後肢の麻痺;4、前肢の麻痺;5、瀕死または死亡。スコアは、マウスが死亡したことが判明した日に5と記録し、スコアは次の日からは記録しなかった。
【0096】
5.実験結果
図11に示すように、EAE群のマウスの臨床スコアリングは、モデリング後7日目からモデリング後32日目まで著しく増加し始めた。EAE+2B11前処置群のスコアは、モデリング後7日目から25日目の間の同じ時点でEAE群のものよりも著しく低かった。これは、疾患の発症前の2B11の投与が、EAEに起因する脊柱機能の損傷を予防し、減少させ得ることを示している。EAE+2B11処置群のスコアは、モデリング後17日目から29日目の期間中にEAE群のものよりも著しく低かった。これは、2B11の投与が疾患発症後であっても良好な治療効果を有することをさらに示している。
【0097】
実施例10.抗proBDNFポリクローナル抗体の調製
ポリクローナル抗体は、以下のアミノ酸配列を有するヒトproBDNF抗原を用いて調製した:
APMKEANIRGQGGLAYPGVRTHGTLESVNGPKAGSRGLTSLADTFEHVIEELLDEDQKVRPNEENNKDADLYTSRVMLSSQVPLEPPLLFLLEEYKNYLDAANMSMRVRR(配列番号37)。
調製は、具体的には以下の通りであった。
(1)ヒトproBDNF断片をPCRで増幅し(リバースプライマー:5’CTAGCGCCGAACCCTCATAGA−3’(配列番号35);フォワードプライマー:5’−TTAGCGCCGAACCCTCATAGA−3’(配列番号36))、ベクターpET100/D−TOPO(Invitrogen)の多数のクローニング部位にクローンした。プラスミドを大腸菌BL21に形質転換し、培養した。細菌コロニーを、100μg/mlアンピシリンを含有する1,000mlのLB中で、37℃、300rpmで振動しながら増殖させた。580nmで測定した培養のOD値が0.8に到達すると、IPTGを添加して、0.5mMの最終濃度にした。培養を30℃で一晩インキュベートした後、4℃にて11,000gで遠心分離した。細菌を20分後に収集した。0.3M塩化ナトリウム、10%グリセロール、0.005%Triton−X 100、10mMイミダゾール、1mM DTT、及び1mM PMSFを含有する50mMリン酸カリウム緩衝液40mlに細菌プラークを懸濁させた。リゾチームを溶液に添加して、0.2mg/mlの最終濃度にし、溶液を25分間氷上に載置し、細胞を溶解した。その後、溶液を50Wのパワーで10回(各30秒)超音波処理し、全反応プロセスを氷上で行った。溶液を4℃にて20分間11,000gで再び遠心分離した。得られた沈殿物を50mlの緩衝液I(0.2M塩化ナトリウム及び1%デオキシコール酸ナトリウムを補充した20mM Tris(pH8.0)からなる)に入れ、氷上で30分間よく混合した。得られた懸濁液を3,000gで10分間遠心分離し、遠心分離によって得られた沈殿物を50mlの氷冷緩衝液II(1mM EDTA及び0.25%デオキシコール酸ナトリウムを補充した10mM Tris(pH8.0)からなる)に入れた。得られた溶解物を3,000gで10分間再び遠心分離した。遠心分離によって得られた沈殿物を40mlの緩衝液IIで3回洗浄した後、40mlの8M尿素溶液中に溶解させた。タンパク質溶液を11,000gで4℃にて25分間遠心分離し、得られた上清をニッケルカラムに添加した。上清の全てを通過させると、8M尿素、5mMイミダゾール、及び0.5M塩化ナトリウムを含有する洗浄液でニッケルカラムを洗浄した。溶出液のOD値を測定し、OD値が洗浄液のもの近くに低下するまで洗浄を停止した。8M尿素、1mMイミダゾール、及び0.5M塩化ナトリウムを含有する溶出緩衝液をニッケルカラムに添加し、標的タンパク質を溶出した。収集したタンパク質をゲル電気泳動で分離した後、クーマシーブリリアントブルー染色を施した。0.75M L−アルギニン、5mM GSH(R)、0.5mM GSSH(O)、5mM EDTA、及び0.1M Tris(pH=9.5)からなる溶液を使用して、標的タンパク質を含有する溶出液のタンパク質を安定化し、溶出液のpH値を中和した。タンパク質溶液を2LのPBSで4℃にて4時間透析し、5LのPBSで4時間再び透析した後、10LのPBSで一晩再び透析した。
(2)0.4%グルタルアルデヒドを含有する2mlのPBSと、2mlの完全フロイントアジュバントとを、ステップ(1)で得られた0.5mgの脳由来神経栄養因子前駆体に連続して添加し、エマルションを形成した。エマルションを成体ヒツジの背面及び鼠径部の多数の注射部位に皮下注射した。次に、抗体力価が1/10,000に到達するまで、不完全フロイントアジュバント中の抗原の半分の用量を用いて、エマルションを2週間に1回注射した。
【0098】
実施例11.実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の初期ステージにおける抗proBDNFポリクローナル抗体の使用
1.実験動物
18〜20gの重さの6〜8週齢の雌のSPFグレードのC57BL/6マウス(the Department of Laboratory Animals、Central South Universityにより提供)を本実験で使用した。給餌条件は、以下の通りであった:クリーングレード、5〜6匹のマウス/ケージ、水と飼料は自由摂取;3以上の麻痺レベルのマウスと瀕死のマウスは、実験中に単一のケージに収容した、マウスの食事は、給水に浸して柔らかくした後に与えた。実験動物は完全に無作為化した。
【0099】
2.EAEモデルの調製
マウスをセボフルランで麻酔した。完全に乳化したMOG35−55(3mg/ml)/IFA(H37RA、4mg/ml)を、マウスの上背部の左及び右側部、並びに尾の左の根元に150μl/マウスの用量で皮下に注射した。さらに、マウスに百日咳毒素PTX(0.5μg/100μl)を50μl/マウスの用量で腹腔内に注射し、48時間後に同じ用量のPTXを再び注射した。7日目に、MOG35−55(3mg/ml)/IFA(H37RA、2mg/ml)を、マウスの下背部の左及び右側部、並びに尾の左の根元に150μl/マウスの用量で皮下に注射した。
【0100】
3.動物及び投与の群分け
30マウスを1群当たり10匹のマウスで3つの群に無作為化した:
(1)正常群(正常);
(2)モデル群(EAE+NSS):モデリング後8日目に、等体積の正常ヒツジ血清を0.2ml/マウスの用量で毎日7日間連続して腹腔内に注射した;
(3)モデル+抗proBDNF抗体処置群(EAE+抗proBDNF):モデリング後9日目に、EAEモデルマウスが疾患の初期ステージである場合、マウスは、抗proBDNFポリクローナル抗体を1日1回、7日間連続して腹腔注射の治療を受け始めた(2.5mg/kg、0.2ml/マウス/日)。
【0101】
4.実験後処理
(1)EAEモデルの臨床スコアリング:モデリング後、臨床スコアリングを毎日行った。スコアリング基準は、以下の通りである:0、臨床症状無し;0.5、尾の衰弱;1、尾の麻痺;2、協調運動の喪失;2.5、片側後肢の麻痺;3、両側後肢の麻痺;3.5、前肢の衰弱と共に両側後肢の麻痺;4、前肢の麻痺;5、瀕死または死亡。スコアは、マウスが死亡したことが判明した日に5と記録し、スコアは次の日からは記録しなかった。
(2)HE染色及び区分、並びに病理学スコアリング
モデリング後35日目のマウス(5匹マウス/群)を、灌流を通じて犠牲死させた。脊髄を除去し、脱水し、ヒアリン化し、ワックスに浸し、ワックスブロックにし、区分し、(4μm)、従来の方法に従ってHE染色した。炎症細胞の浸潤が観察された。
(3)LFB染色:区分を従来のLFB染色法に従って染色し、脱髄を観察した。
(4)脊髄疾患関連の遺伝子発現の検出:
モデリング後35日目のマウス(5匹マウス/群)の脊髄を、リアルタイムPCRによって、前炎症性サイトカインIL−1、IL−6、IL−17、IFN−γ、及びTNF−αの発現レベルを検出した。
【0102】
5.データの分析
グラフパッドプリズムソフトウェア5.0を使用して、分析した。p<0.05である場合、有意差と見なされる。
【0103】
6.結果
(1)モデルマウスの疾患の発症:抗proBDNF抗体で処置したEAEモデルマウスの神経学的障害は著しく減少し、治療後の臨床スコアリングは、約1で基本的に安定していた(
図12)。
(2)病理切片及び病理学的損傷スコア:モデル群のマウスの炎症細胞が脊髄の実質に密に分散し、炎症細胞の浸潤が抗proBDNF抗体処置群で減少し、ごく少量の炎症細胞が浸潤したことが、光学顕微鏡法の結果により示された(
図13)。脊髄白質の髄鞘がモデル群のマウスにおいて著しく欠乏し、脊髄白質のミエリン欠損領域が抗proBDNF抗体処置群のマウスで減少したことが、LFB染色により示された(
図14)。
(3)脊髄における炎症性サイトカインの発現:リアルタイムPCRの結果を
図15に示す。炎症性サイトカインIL−1、IL−6、IL−17、IFN−γ、及びTNF−αの発現は大きく増加したが、IL−1、IL−6、IL−17、IFN−γ、及びTNF−αの発現は、抗proBDNF抗体処置群で著しく減少したことが示されている。
【0104】
疾患の初期ステージでの抗proBDNFポリクローナル抗体の投与がモデルマウスの神経学的機能スコアを著しく改善し、モデルマウスにおける脊髄及び脱髄の炎症細胞浸潤、並びに炎症性メディエーターの放出を阻害し得ることが、結果により示された。
【0105】
実施例12.EAEのピークにおける抗proBDNFポリクローナル抗体の使用
1.実験動物
18〜20gの重さの6〜8週齢の雌のSPFグレードのC57BL/6マウス(the Department of Laboratory Animals、Central South Universityにより提供)を本実験で使用した。給餌条件は、以下の通りであった:クリーングレード、5〜6匹のマウス/ケージ、水と飼料は自由摂取;3以上の麻痺レベルのマウスと瀕死のマウスは、実験中に単一のケージに収容した、及びマウスの食事は、給水に浸して柔らかくした後に与えた。実験動物は完全に無作為化した。
【0106】
2.EAEモデルの調製
マウスをセボフルランで麻酔した。完全に乳化したMOG35−55(3mg/ml)/IFA(H37RA、4mg/ml)を、マウスの上背部の左及び右側部、並びに尾の左の根元に150μl/マウスの用量で皮下に注射した。さらに、マウスに百日咳毒素PTX(0.5μg/100μl)を50μl/マウスの用量で腹腔内に注射し、48時間後に同じ用量のPTXを再び注射した。7日目に、MOG35−55(3mg/ml)/IFA(H37RA、2mg/ml)を、マウスの下背部の左及び右側部、並びに尾の左の根元に150μl/マウスの用量で皮下に注射した。
【0107】
3.動物及び投与の群分け
30匹のマウスを1群当たり10匹のマウスで3つの群に無作為化した:
(1)正常群(正常);
(2)モデル群(EAE+NSS):モデリング後17日目、等体積の正常ヒツジ血清を0.2ml/マウスの用量で毎日7日間連続して腹腔内に注射した;
(3)モデル+抗proBDNF抗体処置群(EAE+抗proBDNF):モデリング後17日目、EAEモデルマウスが疾患のピークであった場合、マウスは、抗proBDNFポリクローナル抗体を1日1回、7日間連続して腹腔注射の治療を受け始めた(2.5mg/kg、0.2ml/マウス/日)。
【0108】
4.実験後処理
(1)EAEモデルの臨床スコアリング:モデリング後、臨床スコアリングを毎日行った。スコアリング基準は、以下の通りである:0、臨床症状無し;0.5、尾の衰弱;1、尾の麻痺;2、協調運動の喪失;2.5、片側後肢の麻痺;3、両側後肢の麻痺;3.5、前肢の衰弱と共に両側後肢の麻痺;4、前肢の麻痺;5、瀕死または死亡。スコアは、マウスが死亡したことが判明した日に5と記録し、スコアは次の日からは記録しなかった。
(2)HE染色及び区分、並びに病理学スコアリング
モデリング後35日目のマウス(5匹マウス/群)を、灌流を通じて犠牲死させた。脊髄を除去し、脱水し、ヒアリン化し、ワックスに浸し、ワックスブロックにし、区分し、(4μm)、従来の方法に従ってHE染色した。炎症細胞の浸潤が観察された。
(3)LFB染色:区分を従来のLFB染色法に従って染色し、脱髄を観察した。
(4)脊髄疾患関連の遺伝子発現の検出:
モデリング後35日目のマウス(5匹マウス/群)の脊髄を、リアルタイムPCRによって、前炎症性サイトカインIL−1、IL−6、IL−17、IFN−γ、及びTNF−αの発現レベルを検出した。
【0109】
5.データの分析
グラフパッドプリズムソフトウェア5.0を使用して、分析した。p<0.05である場合、有意差と見なされる。
【0110】
6.結果
(1)モデルマウスの疾患の発症:抗proBDNFポリクローナル抗体で処置したEAEモデルマウスの神経学的障害は著しく減少し、治療後の臨床スコアリングは、約1で基本的に安定していた(
図16)。
(2)病理切片及び病理学的損傷スコア:モデル群のマウスの炎症細胞が脊髄の実質に密に分散し、炎症細胞の浸潤が抗proBDNF抗体処置群で減少し、ごく少量の炎症細胞が浸潤したことが、光学顕微鏡法の結果により示された(
図17)。脊髄白質の髄鞘がモデル群のマウスにおいて著しく欠乏し、脊髄白質のミエリン欠損領域が抗proBDNF抗体処置群のマウスで減少したことが、LFB染色により示された(
図18)。
(3)脊髄における炎症性サイトカインの発現:リアルタイムPCRの結果を
図19に示す。炎症性サイトカインIL−1、IL−6、IL−17、IFN−γ、及びTNF−αの発現は大きく増加したが、IL−1、IL−6、IL−17、IFN−γ、及びTNF−αの発現は、抗proBDNF抗体処置群で著しく減少したことが示されている。
【0111】
疾患のピークでの抗proBDNF抗体の投与がモデルマウスの神経学的機能スコアを著しく改善し、モデルマウスにおける脊髄及び脱髄の炎症細胞浸潤、並びに炎症性メディエーターの放出を阻害し得ることが、結果により示された。
【0112】
本発明に示した全ての文献は、各文献が個々に参照により組み込まれたように、その全体を同程度まで参照により組み込む。さらに、本発明の上記説明を読んだ後、当業者は本発明に対して種々の変更や修正をすることができ、これらの等価な形態も本出願の添付の特許請求の範囲に含まれることを理解すべきである。