特表2018-504428(P2018-504428A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-504428ルテニウムおよびインジウム結合ガストリン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-504428(P2018-504428A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(54)【発明の名称】ルテニウムおよびインジウム結合ガストリン
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/00 20060101AFI20180119BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20180119BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20180119BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20180119BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180119BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20180119BHJP
   A61K 103/20 20060101ALN20180119BHJP
【FI】
   A61K51/00 100
   A61K51/08 100
   A61K51/08 200
   A61K38/16
   A61K33/24
   A61P35/00
   A61K103:00
   A61K103:20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-541064(P2017-541064)
(86)(22)【出願日】2016年2月4日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】AU2016050063
(87)【国際公開番号】WO2016123670
(87)【国際公開日】20160811
(31)【優先権主張番号】2015900343
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512264910
【氏名又は名称】ユーファーマ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ユーティック マルヴィン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA12
4C084BA44
4C084DB41
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH03
4C085KA11
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB15
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086HA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、従来知られていなかった、ルテニウムおよびインジウムとガストリンとの高い結合親和性を頼りとする。特に、これらの金属は穏やかな条件下でガストリンと直接結合できるため、上昇させられたガストリンレベルに関係した病気の治療または予防の方法や、腫瘍およびCCK受容体が過剰発現するその他の病気の検出に用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度の非アミド化ガストリンに関係した患者の病気の、治療または予防の方法であって、
インジウムおよびルテニウムから選択される金属の有効量を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
非アミド化ガストリンの活性を調整する方法であって、
インジウムおよびルテニウムから選択される金属を前記非アミド化ガストリンに結合させるステップを含む方法。
【請求項3】
前記金属が前記非アミド化ガストリンの鉄結合サイトに結合するように、前記患者に前記金属を投与する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インジウムおよびルテニウムが、In3+およびRu3+の形態である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インジウムおよびルテニウムが、インジウムおよびルテニウムのラジオアイソトープである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属が自由イオンを含む溶液の一部である、または前記金属が組成物や塩の構成要素である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属が、前記非アミド化ガストリンと接触するときにキレート基と結合しない、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
病気が、大腸がん、ガストリノーマ、膵島細胞がん、卵巣腫瘍、下垂体腫瘍、甲状腺髄様がん、星細胞腫、小細胞肺がん、髄膜腫、子宮内膜および卵巣腺がん、乳がん、消化管間質腫瘍、膵・消化管腫瘍、萎縮性胃炎、G細胞過形成、悪性貧血、腎不全、潰瘍性大腸炎、胃腸潰瘍、胃食道逆流、胃カルチノイド、およびゾリンジャー・エリソン症候群よりなる群から選択される、
請求項1、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
患者が、ヒト、家畜、またはコンパニオンアニマルを含む哺乳類である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非アミド化ガストリンの調整が、正常な生物活性を減少させることである、
請求項2に記載の方法。
【請求項11】
CCK受容体の過剰発現に関係した患者の病気の、治療または予防の方法であって、
インジウムおよびルテニウムから選択される金属の有効量を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項12】
前記金属がアミド化ガストリンの鉄結合サイトに結合し、前記CCK受容体と前記アミド化ガストリンとの結合時に前記受容体を提示する細胞内に前記金属が取り入れられるように、前記患者に前記金属を投与する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
インジウムおよびルテニウムより選択される金属を、CCK受容体を発現する細胞の内部に輸送する方法であって、
アミド化ガストリンを前記金属と接触させてそこへ結合させ、結合された金属とともに前記アミド化ガストリンを前記CCK受容体に接触させて、前記細胞に取り入れさせるステップを含む方法。
【請求項14】
前記CCK受容体は、CCK−2受容体である、
請求項11乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記インジウムおよびルテニウムはラジオアイソトープである、
請求項11乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
治療または予防される病気、または前記金属を細胞内に輸送する目的が、大腸がん、ガストリノーマ、膵島細胞がん、卵巣腫瘍、下垂体腫瘍、甲状腺髄様がん、星細胞腫、小細胞肺がん、髄膜腫、子宮内膜および卵巣腺がん、乳がん、消化管間質腫瘍、膵・消化管腫瘍、萎縮性胃炎、G細胞過形成、悪性貧血、腎不全、潰瘍性大腸炎、胃腸潰瘍、胃食道逆流、胃カルチノイド、およびゾリンジャー・エリソン症候群よりなる群から選択される病気を治療または予防することである、
請求項11乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ガストリン−金属錯体を形成する方法であって、
ガストリンをインジウムおよびルテニウムから選択される金属と接触させるステップを含む方法。
【請求項18】
ガストリンと、前記ガストリンの鉄結合サイトに結合あるいは錯形成したインジウムおよびルテニウムから選択される金属と、を備える錯体。
【請求項19】
前記ガストリンが、アミド化ガストリンまたは非アミド化ガストリンである、
請求項17に記載の方法、または請求項18に記載の錯体。
【請求項20】
前記金属が、前記ガストリンと接触するときにキレート基と結合しない、
請求項11乃至17のいずれか一項に記載の方法、または請求項18若しくは19に記載の錯体。
【請求項21】
CCK受容体陽性がんを診断する方法であって、
インジウムおよびルテニウムから選択される金属ラジオアイソトープに錯形成したアミド化ガストリンを備える、アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体を患者に投与するステップと、
前記アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体が前記CCK受容体に結合するようにさせるステップと、
前記アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体内の前記金属ラジオアイソトープの存在を検出するステップと、を含み、
前記金属と結合した前記アミド化ガストリンが、共役、錯形成、あるいはキレート基と関与しないことによって、前記CCK受容体陽性がんを診断する方法。
【請求項22】
非アミド化ガストリンの受容体を検出する方法であって、
インジウムおよびルテニウムから選択される金属ラジオアイソトープに錯形成した非アミド化ガストリンを備える、非アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体を患者に投与するステップと、
前記非アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体が前記受容体に結合するようにさせるステップと、
前記非アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体内の前記金属ラジオアイソトープの存在を検出するステップと、を含み、
前記金属と結合した前記非アミド化ガストリンが、共役、錯形成、あるいはキレート基と関与しないことによって、前記非アミド化ガストリンの受容体を検出する方法。
【請求項23】
前記錯体が、PETまたはSPECTによって検出される、
請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記ラジオアイソトープが、109In、110In、111In、95Ru、97Ru、103Ru、105Ruおよび106Ruよりなる群から選択される、
請求項21乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
アミド化ガストリンまたは非アミド化ガストリンが、特徴的なガストリンのペンタグルタミン酸配列における5つのグルタミン酸残基のうち少なくとも3つを備えている、
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記金属と結合した、アミド化ガストリンまたは非アミド化ガストリンが、共役、錯形成、あるいはキレート基と関与しない、
請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記金属と結合したガストリンペプチドが、DOTA、DTPA、HYNIC、およびテトラアミンキレート基を備えない、
請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ガストリンが、ミニガストリン11若しくはミニガストリン11類似体、デモガストリン若しくはデモガストリン類似体、および、ミニガストリン若しくはデモガストリンと共役していないDOTA、DTPA、HYNICよりなる群から選択されない、
請求項1乃至27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療及び検出方法におけるルテニウムまたはインジウムとガストリンとの高親和性結合の利用、及び、前記ガストリン及び結合されたルテニウムまたはインジウムからなる錯体に関する。特に、排他的ではないが、本発明は、ルテニウム及びインジウムの結合を用いた、高濃度の非アミド化ガストリンまたはガストリン受容体に関係した病気の治療または診断に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における背景技術の参照は、そのような技術がオーストラリアまたは他の場所での技術常識を構成することを認めるものとして解釈されるべきでない。
【0003】
ガストリン、あるいはGアミド(Gamide)は、消化管ペプチドホルモンとして知られ、元は胃酸分泌の刺激剤として発見された(Dockray, 2001)。それは主として胃幽門洞のG細胞によって、及び、小腸上部の不定の範囲で、結腸及び膵臓内ではさらに少ない量で産生される。関連したホルモンのコレシストキニン(CCK)は、結合するCCK1受容体を通じて膵臓酵素分泌の興奮の原因となるが、ガストリンと同じC末端テトラペプチドアミドを有する。Gアミドによって活性化された胃酸分泌は、コレシストキニン−2(CCK−2)受容体によって媒介される。
【0004】
ヒトのCCK−2R(447アミノ酸)は、ヒトのCCK−1R(428アミノ酸)と同一のアミノ酸配列を46%共有し、両者は典型的な7回膜貫通ドメイン受容体である。CCK1R及びCCK2Rの両者と高い親和性で結合するために必要な最小配列は、アミド化したC末端テトラペプチドTrp−Met−Asp−Pheである。CCK1Rは非硫酸化CCK8よりも硫酸化CCK8と500倍も親和して結合する一方で、CCK2Rにとってのその差は10倍だけという事実から、二つの受容体は容易に区別され得る。
【0005】
ヒトのガストリンの活性型の産生は、大きな前駆体分子であるガストリン遺伝子の最初の翻訳産物、プレプロガストリン(101アミノ酸)で始まる。プレプロガストリンは、N末端シグナルペプチドの開裂によってプロガストリン(80アミノ酸)に転換され、プロガストリンはさらに分泌小胞内でエンドペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼによってグリシン伸長ガストリンを生成するように加工される。グリシン伸長ガストリン(Ggly)のC末端は、それからペプチジルα−アミド化モノオキシゲナーゼによってアミド化され、さらにタンパク質開裂が成熟アミド化ガストリン(ZGPWLEEEEEAYGWMDFamide, Gアミド(Gamide))となる。健康なヒトにおいて、プロガストリン及びグリシン伸長ガストリンは、ガストリン循環の10%未満を構成する。
【0006】
Gアミド/ガストリンは、胃上皮にとって重要な成長因子であり、胃及び近位小腸のECL細胞の増殖と、胃壁細胞移動を活性化するとして知られている。これらの増殖効果は、ゾリンジャー・エリソン症候群のような病気の長期の高ガストリン血症に二次的なカルチノイド腫瘍形成をもたらす。ヒトの卵巣腺がんの80%はGアミドとCCK2受容体を同時発現するという近年の報告は、多くの胃がんはGアミドを自己分泌増殖因子として利用できるであろうと示唆している(Goetze JP, 2013)。
【0007】
前駆体であるプロガストリン及びそのグリシン伸長ガストリン誘導体(Ggly)は、従来、生理的に不活性だと考えられてきた。しかし、データが蓄積し、Gglyのようなこれらガストリン前駆体はいくつかのがん細胞株の増殖を活性化することを示唆した(Aly A, 2004)(Ferrand A, 2006)。
【0008】
プロガストリンとGglyの大きな生理的役割は、結腸内では、プロガストリン及びGglyはイン・ビトロ(in vitro)で結腸細胞株の(Hollande F, 1997)、イン・ビボ(in vivo)で正常粘膜の(Wang TC, 1996)(Koh TJ, 1999)増殖を活性化する。このような非アミド化ガストリンは、大腸がんの成長因子としても機能する(Aly A, 2004)。Wangらは、イン・ビボで正常結腸組織における前駆非アミド化ガストリンの成長効果を実証した(Wang TC, 1996)。例えば、ガストリン不足マウスへのGglyの注入は、増殖指数を80%増加させたが、ガストリン/Gglyの注入は結腸の増殖指数に影響を及ぼさなかった。ヒトのプロガストリンを過剰発現するトランスジェニックマウスは、高濃度の循環プロガストリンと、通常濃度のガストリン/Gアミドを肝臓内に有する。これらのマウスは、野生型マウスに比べ、深い陰窩と、近位及び遠位結腸の両方における上昇した増殖指数とともに肥厚性の結腸粘膜をもつ。同様の結果は、Gglyを過剰発現するトランスジェニックマウスについても報告された。
【0009】
ガストリン遺伝子発生の上方制御は、大腸がん(CRC)腫瘍形成に寄与し得る。不完全に加工されたガストリンの増大した濃度は、大腸ポリープと腺がん、及びCRC患者の循環に存在し、正常な結腸粘膜に細胞分裂促進作用を及ぼし、CRC細胞株イン・ビトロ及びイン・ビボに示されている。ガストリンは、血管新生促進の(proangiogenic)性質も有している。ヒトの血管内皮細胞による細管形成はGアミドとGglyのいずれによっても高められる。ヒトのCRC細胞株のGglyによる処理は、重要な血管新生因子、血管内包成長因子(VEGF)の発現を活性化することが示されており、Gglyを過剰発現するトランスジェニックマウスの結腸は、対照マウスと比較して、高レベルのVEGF発現及び高い微小血管密度を示すことが実証されている。
【0010】
これらのガストリン前駆体分子が大腸がんの発達に関与している間、CCK−2受容体もまた、腫瘍型がCCK−2受容体を頻繁に発現させることが示されているがんの別のグループに関与する。特に、Reubiと協同者は、甲状腺髄様がん及び卵巣間質がんの90%よりも多くが、そして星細胞腫及び小細胞肺がんの50%よりも多くが、CCK−2受容体陽性であることを示した(下の表を参照せよ)(Reubi JC, 1997)。
【表1】
【0011】
CCK2R−陽性腫瘍の診断のための金属キレート共役したガストリン誘導体の利用についても、関心がもたれている(Roosenburg S, 2011)。例えば、キレート基1,4,7,10−テトラアザシクロデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(DOTA)がミニガストリン11(D-Glu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2)及び111Inまたは68Gaで放射性標識されたミニガストリン(von Guggenberg E, 2012)と結合されている。このアプローチにとって不利なことの一つは、金属イオンの取り込みが厳しい環境(pH4.5,98℃,15分)を必要とし、潜在的にペプチドに酸化的損傷や組み替えを引き起こすことが示されている。
【0012】
U.S.特許6,180,082号は、受容体依存の放射性標識された化合物及びそれらの腫瘍組織内の蓄積を、診断及び治療の両方に利用することを記している。コレシストキニン(CCK)とソマトスタチンは、適した受容体依存性のペプチドとして開示されている。CCKがガストリンと関連したペプチドである間、ガストリンペンタグルタミン酸配列(gastrin pentaglutamate sequence)を失う。111In−ペンテトレオチドや様々なDOTA及びDPTAの誘導体(有機キレート基)といった、既に利用可能な金属−キレート−ペプチド錯体の一列は、放射性金属と結合するように規定される。このような放射性核種と結合したペプチドキレートをより長い注入時間にわたって輸送することは、ボーラス注入よりも腫瘍組織への蓄積を改善に利点をもたらすと主張されている。
【0013】
Roosenburg S(2011)は、とりわけ、CCK及びガストリンペプチドの、放射性標識された化合物の利用を通じた、CCK−2Rを発現するがんの可視化への利用を記載する。キレート剤のペプチドへの共役は、放射性金属による放射性標識を許容するために不可欠なステップとして議論されているが、いくつかのペプチド−キレート−金属錯体が存在するという欠点が説明されている。特に、特定の錯体は、生成物を形成するために、潜在的にペプチド構造を破壊する加熱のようなステップを必要とし、その他は、イン・ビボで乏しい安定性、及び/または腎臓損傷を引き起こす望ましくない腎臓蓄積を実証することが示されている。再度、DOTA、DTPA、そしてHYNICもまた、有機金属キレート基として記述されている。デモガストリン1及び2、テトラミン鎖(tetramine chain)がペプチド配列に共役した金属キレート剤群として機能するミニガストリン類似体はまた、放射性核種金属のようなテクネチウム(Tc)結合と関係しても議論される。
【0014】
同様に、Fani M 2012は、放射性標識されたペプチドが、腫瘍受容体イメージング及び標的放射性核種治療にとって価値ある生物学的ツールとなり得ることを示した。CCK及びガストリンペプチド類似体は議論され、Tc−デモガストリンならびにIn−DOTAミニガストリンは、金属に結合するキレート剤または補欠分子族の共有結合として記述される適切な放射性標識されたペプチドを発達させるメインステップの一つとともに一般的に使用される候補として、記述されている。適したキレート基の開発は、それゆえ、適切な有効性及びイン・ビボ安定性を有する放射性標識されたペプチドを対象にした受容体を生成する技術分野における重要な要素である。
【0015】
Tc及びInは、ペプチド錯体へのキレート基に取り付けるための放射性核種として使われてきたが、金属は一般的に様々な抗がん剤としてしばらくの間利用されてきたことが認識されるであろう。WO2007/101997は、がん治療に用いるための新しいルテニウム(Ru)サンドイッチ錯体の開発を記述している。関連するRuサンドイッチ錯体は、錯体のハロ原子(a halo atom)の加水分解を通じてDNAと直接結合し、それによってインターカレーション及び結合のために化合物を活性化することが示されると述べられている。WO2007/101997の化合物は、より早い化合物のハロ原子に対応する部分が直ちに加水分解せず、そのためそれ自身が活性種である完全なサンドイッチ錯体であると考えられる点で、異なって作用する。こうした種のルテニウム原子は、完全に錯化され、そのためそれ自身は他の基に結合できない。それゆえ、Ruサンドイッチ錯体は、活性化された錯体自体が何であったとしても、主に完全な状態のままでとどまり、DNA結合を介して活動の直接モードに従う。
【0016】
ガストリンは二つの第二鉄イオンと結合し、一つ目はGlu7と、二つ目はGlu8及びGlu9とである。第二鉄イオンは、Gglyのような、細胞増殖及び移動の刺激剤としてのペプチドの非アミド化形成の生物活性には不可欠である。それゆえ、Glu7からAlaへの置換、または鉄キレート剤デスフェリオキサミンによる治療は、完全にGglyの生物活性をブロックする。対照的に、第二鉄イオンは、Gアミドの生物活性には必要ではない。Bi3+イオンは、Gglyの鉄結合サイトを競うことで、イン・ビトロで、及びマウス及びラットの両方の正常な結腸粘膜内においてイン・ビボで、生物活性をブロックする。
【0017】
付加金属イオン存在下のGgly蛍光測定によって検出されるように、GglyがCo(II)、Cu(II)、Mn(II)、またはCr(III)とは結合しないことをBaldwinが示したように、Gglyの金属結合サイトは高選択的である(Baldwin GS, 2001)。また、プロガストリンがCa(II)、Co(II)、Cu(II)、Fe(II)、Mn(II)またはZn(II)、またはAl(III)、Cr(III)またはEu(III)と結合しないことも、放射性59Fe3+イオンとの競合によって検出されるように示された(Baldwin G, 2004)。
【0018】
Ggly受容体の天然リガンドは、Ggly自身よりも、第二鉄イオンがGglyと結合するときに形成された錯体であってもよいことを、WO2004/089976は開示している。これと、GglyはCCK−2受容体とは独立してその作用を有するという知見に基づき、Gアミドがその効果を有する場合、Gglyの生物活性をブロックするための酸化金属イオンの使用に基づく選択的治療を彼らは提案した。Bi3+及びGa3+についてのデータが与えられており、また、Co2+、Cr3+、Cu2+及びMn2+イオンは蛍光を消失しないことが示され、20等量のAl3+もGglyのNMR信号に有意なシフトを起こさず、そのため三価イオン群内でさえもGgly金属イオン結合の予測できない性質が確認されたことが述べられている。これらの論じられたデータは、pH4において、第二鉄イオンの10倍低い5.8μMの親和性で、Gglyが二つのBi3+イオンと結合することを示している。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、少なくとも部分的に、ルテニウム及び/またはインジウム金属イオンが、Fe3+イオン、さらにその上Bi3+及びGa3+について実験的に決定された値よりも数桁低い結合定数でガストリンと結合するであろうという驚くべき発見を根拠にしている。ルテニウム及びインジウムの両者は、アミド化及び非アミド化ガストリンの両者と同じぐらい有効な結合で結合するであろうことが見出されている。金属イオンの結合の大いに予測できない性質がガストリンによって与えられ、ルテニウム及びインジウム結合、及びそれらの著しくより強い結合の範囲は、先行技術からは予測され得なかった。
【0020】
高親和性結合は、ルテニウムまたはインジウムが比較的温和な条件下で直接ガストリンに結合されるのを可能にし、それによって、ルテニウムまたはインジウムと結合したガストリンの、治療法として、または非アミド化ガストリン受容体の診断及び同定としての利用を可能にする。これは、キレート化ペプチドに放射性標識を導入するために普通厳しい環境を用いなければならない先行技術のペプチドキレート錯体よりも重要な利点を提供する。特に、ルテニウムまたはインジウムのガストリンへの結合は、アミド化または非アミド化ガストリンによって関連づけられ、もしくは引き起こされる様々な病気の治療を可能にする。
【0021】
ルテニウムまたはインジウムとガストリンから形成される錯体は、放射性標識されたルテニウムまたはインジウムが使われる場合、ガストリンが結合する受容体を同定するプローブとして利用でき、それゆえ特定の病気を同定する診断ツールとしての利用が見いだせる。それゆえ、本発明のアプローチを用いると、ルテニウムまたはインジウムの高親和性結合は、金属がペンタグルタミン酸配列に直接結合するために金属キレートのガストリンペプチドへの結合を必要としないことを意味する。これは、プローブ/治療の合成を容易にし、ガストリンに対する損傷を最小化し、イン・ビボ安定性に対する懸念を低減する。
【0022】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明が容易に理解され実際的な効果に含まれるように、好ましい実施形態は、添付する図面の参照による例として説明される。
図1図1は、ガストリン結合の2サイトモデルを表している。
図2図2は、FeIIIGglyのXASのK端近傍のスペクトルである。
図3図3のA−Hは、Gglyで試験した金属錯体の一連のEXAFSスペクトル(A,C,E及びG)、及び対応するフーリエ変換(B,D,F及びH)であり、A及びBはFe3+イオン、B及びCはGa3+イオン、そしてE及びFはIn3+イオン、そしてG及びHはRu3+イオンである。
図4A図4Aは、FeIIIGglyの提案された構造モデルである。
図4B図4Bは、RuIIIGglyの提案された構造モデルである。
図5図5は、Ga3+イオン添加に応じて記録された、ガストリンGアミド及びGglyの吸収変化のグラフ表示である。
図6図6は、様々な濃度におけるIn3+イオン存在下の、Fe3+イオン添加に応じて記録された、ガストリンGアミド及びGglyの吸収変化のグラフ表示である。
図7図7は、様々な濃度におけるRu3+イオン存在下の、Fe3+イオン添加に応じて記録された、ガストリンGアミド及びGglyの吸収変化のグラフ表示である。
図8図8は、Ru106−Gアミド錯体の精製を表しており、Aは、Sep−Pak分離後の様々なフラクションで見られる放射能、Bは、陰イオン交換HPLCによるさらなる錯体精製を表しており、その各1mLフラクション内の放射性はバーで示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(定義)
他で定義されていない限り、本明細書中において用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書中において用いられる用語「ガストリン(gastrin)」及び「ガストリン類(gastrins)」は、プロガストリン、ならびにアミド化ガストリン(Gアミド)及び非アミド化ガストリン(グリシン伸長ガストリン)を表す。一実施形態においては、本用語はガストリンとガストリン様ペプチドを除いてもよく、それらは特徴的なペンタグルタミン酸配列の残基のいくつか、または全てを含んでいない。
【0026】
本明細書中において用いられる用語「アミド化ガストリン」は、プロガストリンから誘導され、ペンタグルタミン酸配列を含み、そのうえ、配列trp−met−asp−フェニルアラニンアミド(phenylalanine-amide)をC末端に備えたガストリンを表す。そのようなアミド化ガストリンの例は、アミド化ガストリン34及びアミド化ガストリン17(Gアミド)を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0027】
本明細書中において用いられる用語「非アミド化ガストリン」は、プロガストリンであるかプロガストリンから誘導されて、ペンタグルタミン酸配列を備えるが、フェニルアラニンアミドをC末端に備えず、その範囲内にグリシン伸長ガストリンを含む、ガストリンを表す。そのような非アミド化ガストリンの例は、プロガストリン、ならびにグリシン伸長ガストリン17(Ggly)及び、グリシン伸長ガストリンのN−及びC−末端拡張型、ならびに残基55から72の間のプロガストリン配列から誘導される短いペプチドを含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0028】
本明細書中において用いられる用語「CCK受容体」、「CCK−1受容体」、及び「CCK−2受容体」は、コレシストキニン受容体群の一般または特定の亜類型を表す。
【0029】
本発明の第1の態様によれば、高濃度の非アミド化ガストリンに関係した患者の病気の治療または予防の方法であって、インジウムおよびルテニウムから選択される金属の有効量を、前記患者に投与するステップを含む方法が、提供される。
【0030】
前記金属が前記非アミド化ガストリンの鉄結合サイトに結合するように、前記患者に前記金属を投与する。
【0031】
一実施形態においては、本方法は、前記非アミド化ガストリンに結合するルテニウム及びインジウムから選択された金属の投与を必要とすることを含む、そのような治療を必要とする患者を選択するステップを、さらに含む。
【0032】
アミド化及び非アミド化ガストリンは、異なる組織内の別種の受容体を介して、異なる生物学的効果を引き起こす。アミド化ガストリン(Gアミド)は、胃酸分泌及び胃カルチノイドの発生を刺激する一方で、前駆体のグリシン伸長ガストリンは、結腸粘膜の増殖及び大腸がんの発生を刺激する。
【0033】
上で議論したように、Baldwinはグリシン伸長ガストリン(Ggly)が2つの第二鉄イオンと高い親和性をもって結合していることを示した(Baldwin, 2001)。鉄リガンドの同一性、それらの結合サイト、及び生物活性における第二鉄イオンの役割についての研究によって、Glu7が最初の第二鉄イオンの結合に重要であり、Glu8及びGlu9は二つ目の第二鉄イオンの結合に関することが特定された。Glu7がAlaに置換されたGglyミュータント(GglyE7A)の活性の完全な欠如、及び鉄キレート剤デスフェリオキサミン(DFO)によるGgly活性の抑制は、第二鉄イオンの結合がGglyの生物活性に不可欠であることを示している。
【0034】
実験のセクションで示される結果は、インジウム及びルテニウムのイオンが非アミド化ガストリンと予期できないほど高い親和性をもって結合するであろうことを実証する。In3+は、Gglyの1つ目の鉄結合サイトについて2.1×10−13MのK値を有し、対してFe3+では5.7×10−9Mである。Ru3+は、Gglyの1つ目の鉄結合サイトについて5.3×10−15MのK値を有する。Inの親和性は、したがって、数桁高い。ある範囲の金属の結合親和性は、予測可能性の妥当なレベルを除き、非常に多様な結果(ヒ素やアンチモンのような他の15族は高い親和性結合を示さなかった)で試験されたため、In3+及びRu3+イオンの驚くべき高い親和性結合は、非アミド化ガストリンを含むガストリンに関連した病気の範囲の検出及び治療に有用なツールを提供する。
【0035】
一実施形態においては、前記インジウム及びルテニウムは、+3の形態、すなわちIn3+およびRu3+の形態である。
【0036】
一実施形態においては、前記インジウムおよびルテニウムは、インジウムおよびルテニウムのラジオアイソトープである。
【0037】
前記金属は自由イオンを含む溶液の一部、または前記金属が化合物や塩の構成要素であるようにして投与されてもよい。化合物は、解離またはそれ以外で、ガストリンへの結合に利用可能な金属を生成できるものであるべきである。
【0038】
金属を含む化合物は、単体、錯体、または有機金属の塩もしくは錯体もしくはキレート、多形体、共結晶、またはそれらの複合体であってもよく、それは金属を放出することができるか、非アミド化ガストリンの一つまたは複数の第二鉄イオン結合サイトを占有できるようにすることができ、それゆえにそれらの生物活性をブロックする。有機金属錯体は、都合のよいキャリア、例えばシクロデキストリンに結合された三価金属イオンを含んでもよく、あるいは、抗体またはカチオンのようなターゲット分子が、キレート剤もしくはビピリジン及びターピリジンのルテニウム誘導体のような有機「ラッピング」分子に結合されてもよい。好適な薬学的に許容される単塩は、無機酸または鉱酸またはアンモニアなどのアルカリから誘導されうる。
【0039】
インジウム及び/またはルテニウムの単純な錯体または塩は、酸化物、炭酸塩、セレン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、三臭化物、三塩化物、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、ガラート、没食子酸塩、グリシン酸塩、グルタミン酸塩、メシル酸塩、ピコリン酸塩、及びトシル酸塩から独立に選択されてもよい。
【0040】
より大きな錯体は、ヘキサアンミンルテニウム(II)塩[Ru(NH]Clのような、インジウムまたはルテニウムのジ塩(disalts)を含むが、これらに限定されない。
【0041】
別の形態では、インジウムまたはルテニウムのカチオンは、体からのクリアランス率を下げるため、あるいは基質からのカチオンの徐放を提供するために、PEG(ポリエチレングリコール)やポリ乳酸のような様々な高分子に結合及び/または付着してもよい。
【0042】
高濃度の非アミド化ガストリンに関係した病気は、Gglyの増加した血中濃度、分泌もしくは活性速度が一つまたは複数の症状の原因である任意の病状であってもよい。この病気は、細胞増殖、細胞移動、あるいは酸分泌を伴ってもよい。
【0043】
好ましくは、前記病気は、大腸がん、ガストリノーマ、膵島細胞がん、卵巣間質腫瘍を含む卵巣腫瘍、下垂体腫瘍、または甲状腺髄様がん、星細胞腫、小細胞肺がん、髄膜腫、子宮内膜および卵巣腺がん、乳がん、消化管間質腫瘍、膵・消化管腫瘍のような、CCK−2受容体から発現する腫瘍、萎縮性胃炎、G細胞過形成、悪性貧血、腎不全のような、血清ガストリンもしくはそれらの前駆体が上昇する病気、潰瘍性大腸炎のような胃腸粘膜に作用する病気といった、ガストリンを産生する腫瘍よりなる群から選択される。
【0044】
非アミド化ガストリン前駆体は、結腸粘膜における増殖因子として作用することが知られているため、これらガストリン前駆体の特定の阻害剤は、潰瘍性大腸炎及び消化管がんのような胃腸増殖障害の治療として有用である。特に、長期にわたるガストリン濃度の上昇は大腸がんあるいは膵臓がんのリスクを上昇させることが知られている。特に、長期にわたるガストリン濃度の上昇は結腸がんあるいは膵臓がんのリスクを上昇させることが知られている。従って、本発明は、これらの病気の治療または予防に適用できる。結腸がんのリスクは、食事で脂肪または肉が多い個体、または家族性腺腫性ポリポーシスのような結腸がんの家族歴をもつ個体においても上昇し、彼らもそれゆえ本発明に関する予防的治療に適する候補者である。
【0045】
非アミド化ガストリンはまた、アミド化ガストリンによる酸分泌の刺激を促進するので、特定の阻害剤は、胃食道逆流、胃カルチノイド、ゾリンジャー・エリソン症候群のような、プロトンポンプ阻害薬やHブロッカーで治療されるものを含む病気による、患者内の過剰酸産生の治療にも有用である。
【0046】
本発明は、非アミド化ガストリンの生物活性をブロックする、新奇かつ予期できない方法を示す。インジウムまたはルテニウムによる非アミド化ガストリンの金属イオン結合サイトの占有は第二鉄イオンの結合を阻害し、それでペプチドを不活性化する。このアプローチの大きな長所は、不活性化の選択性である。Ggly/Gアミド結合サイトを飽和させるために必要なルテニウムまたはインジウムのカチオンが低濃度のとき、他の生体内作用と結合していない金属イオンによる干渉はほとんどないであろう。
【0047】
患者は、哺乳類、特にヒトまたは家畜またはコンパニオンアニマルとすることができる。本発明の化合物はヒトの医学的治療における使用に適すると特に考えられている一方で、これらは、イヌやネコのようなコンパニオンアニマル、及びウマ、ウシ、及びヒツジのような家畜、またはネコ科、イヌ科、ウシ科、及び有蹄動物のような動物園の動物の治療を含む、獣医学的治療にも適用できる。
【0048】
Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000), Williams & Williams, USAのような教科書に記載されているように、金属を含む医薬組成物の調製のための方法及び医薬担体は、当技術分野において周知である。
【0049】
本発明の化合物及び組成物は、任意の適切な経路または投与形態(徐放投与形態を含む)によって投与されてもよく、当業者は、治療される病気の最も適切な経路及び用量を容易に決定することができるであろう。投薬は、担当医師または獣医の裁量であるだろうし、治療される病気の性質及び状態、治療される被験体の年齢及び全身の健康状態、投与経路、及び投与されうる任意の従来の治療法に依存するであろう。ボーラス注入及びIV注入は、有用かもしれない、単なる二つのアプローチである。
【0050】
キャリアまたは希釈剤、及びその他の賦形剤は、投与経路または投与形態に依存し、そして当業者は、各特定のケースについての最も適切な調合を容易に決定することができるであろう。
【0051】
本発明は、病気を改善するために有用な、様々な医薬組成物を含む。本発明の一実施形態による医薬組成物は、本発明に係る金属または金属を含む化合物または誘導体、錯体、キレート、または塩、それらの共重合体、または本発明の化合物と一つまたは複数の他の薬学的に活性な物質の複合体を、キャリア、賦形剤、及び添加剤または補助剤を用いて、被験体に投与するのに適した形態にすることによって調合される。
【0052】
たびたび用いられるキャリアまたは補助剤には、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン類、セルロース及びその誘導体、動物油類及び植物油類、ポリエチレングリコール類、及び、滅菌水、アルコール類、グリセロール及び多価アルコールといった溶媒類、を含むが、これらに限定されない。静脈内輸送手段は、水と栄養補充液を含む。防腐剤は、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスを含む。他の薬学的に許容されるキャリアは、水溶液と非毒性賦形剤を含み、それは塩、防腐剤、バッファー、及び、例えば参照することにより内容が本書に含まれるRemington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed. Williams & Wilkins (2000)及びThe British National Formulary 43rd ed. (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net)に記載されているような同種のものを含む。医薬組成物の様々な成分のpH及び精密な濃度は、当技術分野の日常技術(routine skills)によって調製される。GoodmanとGilmanのThe Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed., 1985)を参照されたい。
【0053】
医薬組成物は、好ましくは投薬単位で調製され、投与される。固体の投薬単位は、タブレット、カプセル、及び坐薬を含む。被験体の治療のため、化合物の活性、投与方法、障害の性質及び重さ、被験体の年齢及び体重に依存して、異なる一日量を用いることができる。特定の状況のもとでは、しかしながら、より高いもしくは低い一日量が投与されてもよい。一日量の投与は、個々の投薬単位の形態における単回投与または他のいくつかの小さな投薬単位によって、及び特定の間隔で細分化された投薬の複数の投与の両方によって行われることができ、あるいは拡張されたデポ(depot)もしくは徐放型で与えられてもよい。
【0054】
本発明による医薬組成物は、局所的に、あるいは好ましくは、全身的に治療効果のある量で投与されてもよい。この使用に効果的な量は、もちろん、病気の重さ、及び被験体の年齢と全身状態に依存するであろう。典型的には、イン・ビトロで用いられる投薬量は、医薬組成物のイン・サイチュ(in situ)での投与に有用な量について有用な指針を提供することができ、また、動物モデルは、もしあれば細胞毒性の副作用の治療のための有効な投薬量を決定するために使用されてもよい。経口使用のための調合は、有効成分が不活性の固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンとともに混合されている、硬ゼラチンカプセルの形であってもよい。それらは、有効成分が水、またはピーナッツオイル、流動パラフィンもしくはオリーブオイルといった油媒体と混合されている軟ゼラチンカプセルの形であってもよい。
【0055】
水性懸濁液は、通常、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活物質を含む。そのような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、トラガカントゴム及びアカシアゴム、ケイ酸マグネシウムのような懸濁化剤であってもよく;分散剤もしくは湿潤剤であってもよく、それは(a)レシチンのような天然に発生するリン脂質;(b)アルキレンオキサイドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート(polyoxyethylene stearate);(c)エチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール(heptadecaethylenoxycetanol);(d)エチレンオキサイドと、脂肪酸及びヘキシトールから得られる部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート(polyoxyethylene sorbitol monooleate)、または(e)エチレンオキサイドと、脂肪酸及びヘキシトール無水和物から得られる部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(polyoxyethylene sorbitan monooleate)であってもよい。
【0056】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性もしくは油性懸濁液の形であってもよい。この懸濁液は、既知の方法によって、適切な分散剤もしくは湿潤剤及び懸濁化剤を用いて調合されてもよい。無菌の注射可能な調合剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒の中の、無菌の注射可能な溶液もしくは懸濁液であってもよい。利用される好ましい輸送手段及び溶媒の中には、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の不揮発性油は、溶媒もしくは懸濁媒体として慣習的に利用されている。この目的のために、合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含む、任意の無菌性の不揮発性油が用いられてもよい。加えて、オレイン酸のような脂肪酸が注射物質の調合剤に用いられてもよい。
【0057】
本発明の金属はまた、様々な単純または複雑な輸送システムの形で投与されてもよく、それは小型の単層ベシクル、大型の単層ベシクル、及び多層ベシクルのようなリポソーム輸送システムを含むが、それに限定されるものではない。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンのような様々なリン脂質から形成され得る;注射可能なマイクロ粒子;ナノ粒子;マトリックスインプラント(matrix implants)及びデバイス及び/またはビードコーティング。これらの輸送システムは、本発明の金属の一定の放出、遅延放出、パルス放出、または順次的放出の、濃度を提供するように工夫されてもよい。キャリアもしくは原料は、シクロデキストリン類、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリ無水物類、ポリ乳酸類、ポリオルトエステル類、及び、HPMCまたは他のセルロース誘導体から構成されるヒドロゲル類、を含んでもよい。金属またはそれらを含む化合物は、抗体または受容体分子のようなターゲット分子に付着されてもよい。
【0058】
金属の輸送形態、すなわち化合物、錯塩などは、金属をガストリンに結合できるようにするために、加水分解またはその他の解離が可能でなければならない。
【0059】
本発明の金属の投薬量レベルは、通常、約0.001mg〜約250mg/体重kgのオーダーで、好ましい投薬量の範囲は、約0.1mg〜約10mg/体重kg・日であろう(平均的な患者に1日あたり約0.1g〜3g)。一回の投薬を調製するためにキャリア原料と混合され得る活性な金属イオンの量は、治療されるホスト及び特定の投与方法に依存して変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した調合は、約1mg〜1gの活性な金属を、適切かつ好都合な量のキャリア材料とともに含んでもよく、それは組成物全体の約5〜95%で変化してもよい。投薬単位の形態は、一般的に約1mg〜500mgの間で有効成分を含むであろう。
【0060】
しかしながら、あらゆる特定の患者に対する特有の服用レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、薬の組み合わせ、及び治療を受ける特定の病気の重さ、を含む様々な要因に依存するであろう。
【0061】
加えて、本発明の化合物のいくつかは、水または一般的な有機溶媒とともに溶媒和物を形成してもよい。そのような溶媒和物は、本発明の範囲に包含される。
【0062】
本発明の化合物は、効き目のある組み合わせ、または共治療(co-treatment)のために他の化合物と追加的に組み合わせることができる。組み合わせが本発明の金属の活性に負の影響を与えない限り、薬学的に活性な物質の、化学的に混合可能な組み合わせを含むことが意図される。
【0063】
本発明の第2の態様によると、非アミド化ガストリンの活性を調整する方法であって、インジウムおよびルテニウムから選択される金属を前記非アミド化ガストリンに結合させるステップを含む方法が提供される。
【0064】
第1の態様に関してされた全てのコメントは、第2の態様にも同様に適用される。
【0065】
非アミド化ガストリンの調節は、その通常の生物活性の低下であろう。これは、鉄結合サイトをブロックするルテニウムまたはインジウムによりもたらされ、鉄結合は通常活性に必要である。
【0066】
本発明の第3の態様によると、CCK受容体の過剰発現に関係した患者の病気の、治療または予防の方法であって、インジウムおよびルテニウムから選択される金属の有効量を、前記患者に投与するステップを含む方法が提供される。
【0067】
金属は、アミド化ガストリンの鉄結合サイトに結合し、CCK受容体とアミド化ガストリンとの結合時に受容体を提示する細胞内に金属が取り入れられるように、患者に金属を投与する。
【0068】
一実施形態において、前記CCK受容体は、CCK−1もしくはCCK−2受容体である。
【0069】
好ましくは、前記CCK受容体はCCK−2受容体である。
【0070】
Gglyに関して上述で論じたように、本発明者は、インジウムまたはルテニウムイオンが予期できないほど高い親和性をもってアミド化ガストリンとも結合することを見出した。In3+は、Gアミドの1つ目の鉄結合サイトについて6.5×10−15MのK値をもち、対してFe3+では3.0×10−10Mであることを見出した。Ru3+は、Gアミドの1つ目の鉄結合サイトについて2.6×10−13MのK値をもつことを見出した。どちらの金属も、したがって、鉄より数桁高い親和性で結合する。
【0071】
本明細書で述べられる実施形態の恩恵は、RuまたはInがGアミド自体のペンタグルタミン酸配列への結合の高い選択性及び親和性をうまく利用することにある。さらに、高親和性は、金属−ガストリン錯体の安定性の向上をもたらす。
【0072】
CCK受容体の役割は、腫瘍に関して既に議論されており、したがって、本発明はルテニウムまたはインジウムのカチオンを細胞毒性剤として利用することを可能にする。腫瘍がCCK−1もしくはCCK−2受容体陽性である場合、治療は、任意の結合した金属イオンとともに、一度ガストリン/Gアミドが結合するとCCK2Rが内在化されるという知見に基づくことができる。インジウム及びルテニウムの両方のイオンの場合で立証されているように、金属イオンが強くかつ不可逆的に結合しているならば、また十分に高い比放射能で放射性標識されているならば、細胞の内容に対する放射性損傷は細胞死に導きうる。この「トロイの木馬」アプローチにおいて、中間の半減期をもつβ粒子放射体は効果的である。ガストリン/Gアミドに付着したルテニウムまたはインジウムの結合、それからCCK2R発現腫瘍細胞との複合体は、多くの重要なFe含有タンパク質及び酵素内のFeを置換するイオンの細胞内濃度の上昇を引き起こすことになり、それによって細胞の生存に必須な多数の細胞内プロセスを阻害することになる。
【0073】
インジウムまたはルテニウムの放射性同位体は、そのような治療において望ましいが、必須ではない。ルテニウムは周期表において鉄のすぐ下であり、したがって最も近接している利用可能な鉄の同族体と予想できる。したがって、Ru−GアミドのCCK2R発現腫瘍細胞への結合は、多くの重要な鉄含有タンパク質及び酵素内の鉄を置換するルテニウムの細胞内濃度の上昇を引き起こすことになり、それによって細胞の生存に必須な多数の細胞内プロセスを阻害することになる。同様の干渉効果は、インジウムイオンからも得られるであろう。
【0074】
したがって、一実施形態において、インジウム及びルテニウムはラジオアイソトープである。
【0075】
治療される病気は、CCK受容体に関する任意の病気であってもよく、第1の態様に列挙された、CCK受容体の発現に関する病気を含む。組成物、投薬及び輸送形態は、第1の態様について記載されたものであってもよい。
【0076】
一実施形態において、アミド化ガストリンと接触されたとき、金属はキレート基と結合しない。すなわち、金属は、ペプチド−キレート複合体または錯体の成分として輸送されない。そのような、DOTA、DTPA、HYNIC及びテトラアミンを含むキレート基は、本明細書で議論される。
【0077】
本発明の第4の態様は、インジウムおよびルテニウムより選択される金属を、CCK受容体を発現する細胞の内部に輸送する方法であって、アミド化ガストリンを前記金属と接触させてそこへ結合させ、結合された金属とともに前記アミド化ガストリンを前記CCK受容体に接触させて、前記細胞に取り入れさせるステップを含む方法にある。
【0078】
第4の態様は、第3の態様で記述されたように与えられてもよく、列挙された全ての要素は、したがって、第4の態様に明確に繰り返されると考えられる。
【0079】
本発明の第5の態様によると、ガストリン−金属錯体を形成する方法であって、ガストリンをインジウムおよびルテニウムから選択される金属と接触させるステップを含む方法が提供される。
【0080】
本発明の第6の態様は、ガストリンと、前記ガストリンの鉄結合サイトに結合したインジウムおよびルテニウムから選択される金属と、を備える錯体にある。
【0081】
第5及び第6の態様の一実施形態において、ガストリンはアミド化ガストリンである。
【0082】
第5及び第6の態様のその他の実施形態において、ガストリンは非アミド化ガストリンである。
【0083】
本発明のガストリン−ルテニウム及びガストリン−インジウム錯体は、それらの高親和性結合のために驚くほど安定であることが見出されている。グリシン伸長gastrin17と三価金属イオンとの錯体の構造は、X線吸収微細構造分光法によって決定されており、実験のセクションで議論される。この高い親和性はまた、金属をガストリンに結合させるために温和な状態を用いることができ、そのためペプチドへの損傷がはるかに起こりにくいことを意味する。
【0084】
本発明の第7の態様は、CCK受容体陽性がんを診断する方法であって、
(i) インジウムおよびルテニウムから選択される金属ラジオアイソトープに錯形成したアミド化ガストリンを備える、アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体を患者に投与するステップと、
(ii) 前記アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体が前記CCK受容体に結合するようにさせるステップと、
(iii) 前記アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体内の前記金属ラジオアイソトープの存在を検出するステップと、を含み、
それによって前記CCK受容体陽性がんを診断する方法にある。
【0085】
本発明の第8の態様は、非アミド化ガストリンの受容体を検出する方法であって、
(i) インジウムおよびルテニウムから選択される金属ラジオアイソトープに錯形成した非アミド化ガストリンを備える、非アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体を患者に投与するステップと、
(ii) 前記非アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体が前記受容体に結合するようにさせるステップと、
(iii) 前記非アミド化ガストリン−金属ラジオアイソトープ錯体内の前記金属ラジオアイソトープの存在を検出するステップと、を含み、
それによって前記非アミド化ガストリンの受容体を検出する方法にある。
【0086】
第7及び第8の態様に関して、CCK受容体陽性がんまたは非アミド化ガストリン受容体の検出は、RuまたはInのガストリンへの結合の高選択性及び高親和性を経由して達成される。
【0087】
結合は、ミニガストリン11には存在しないガストリンのペンタグルタミン酸配列に対してであるため、上述の8つの態様の任意の1つの一実施形態において、ガストリンはミニガストリン11またはミニガストリン11類似体ではない。有利なことに、ラベリングは室温で急速に生じ、そのためペプチドが損傷を受けることは起こりそうもない。特に、高親和性は金属−ガストリン錯体の安定性向上をもたらし、それによって先行技術の金属キレート基と結合したガストリンの欠点の一つを回避する。少なくとも下に示すRu及びIn同位体は、単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT)またはポジトロン放出型断層撮影法(PET)によって、ガストリン結合受容体、及びそれらを示すCCK2R陽性腫瘍を含む細胞の場所によく適合されるであろう。
SPECTは111In−Gアミド(γエミッター、t1/2=67h)、97Ru−Gアミド(γエミッター、t1/2=65h)である。
PETは109In−Gアミド(βエミッター、t1/2=4.3h)である。
【0088】
したがって、腫瘍がCCK−1もしくはCCK−2受容体陽性である場合、Gアミドとルテニウムまたはインジウムの適した放射性同位体との錯体はPETもしくはSPECTによって原発腫瘍もしくはその転移を示すために診断上利用できるかもしれない。
【0089】
前記ラジオアイソトープは、109In、110In、111In、95Ru、97Ru、103Ru、105Ruおよび106Ruよりなる群から選択される。
【0090】
本明細書中において示されるデータは、RuまたはInの放射性同位体が、単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT,97Ru,111In)及びポジトロン放出型断層撮影法(PET,109In)におけるCCK受容体プローブとしての利用のために、アミド化ガストリンと直接錯化できることを示す。当技術分野で知られているように、運搬可能なジェネレータの使用は、このアプローチをより実行可能にする。このアプローチの一つの長所は、錯形成が室温で急速に進行するためにペプチドに対する酸化的損傷が防がれるであろうことである。
【0091】
豊富な構造−CCK2Rに利用可能な機能情報とは対照的に、プロガストリン及びGglyといった非アミド化ガストリンの受容体の同一性は、未だ議論を呼んでいる。Ggly及びプロガストリンがRu及びIn金属の両方と高親和的に結合するという認識は、非アミド化ガストリン受容体の同定のための新奇なツールを提供する。上に示したRu及びIn同位体は、腫瘍及びそのような受容体を発現する他の病気状態の場所に、そしてそれに続くSPECTまたはPETによる同定に、よく適すると予想される。
【0092】
上述の8つの態様の任意の一つまたは複数の一実施形態において、アミド化もしくは非アミド化ガストリンは、少なくとも特徴的なガストリンペンタグルタミン酸配列の5つのグルタミン酸残基の中の3つを含む。
【0093】
上述の8つの態様の任意の一つまたは複数の一実施形態において、アミド化もしくは非アミド化ガストリンは、少なくとも特徴的なガストリンペンタグルタミン酸配列のうち4つまたは5つのグルタミン酸残基を含む。
【0094】
上述の8つの態様の任意の一つまたは複数の一実施形態において、アミド化もしくは非アミド化ガストリンは、ペンタグルタミン酸配列を備える。
【0095】
ペンタグルタミン酸配列及び関心のあるガストリン内で実際にそこに含まれるグルタミン酸残基の数に関する上述の3つの記述は、放射性金属と結合したガストリンが、患者への投与のような利用の前に実際に生成される実施形態に、特に適用可能である。これに関して、本発明の錯体及び方法に用いられるガストリンは、ミニガストリン11のような、ペンタグルタミン酸配列を含まないガストリン誘導体からははっきりと区別される。
【0096】
ペンタグルタミン酸配列の全ての5つのグルタミン酸残基が存在することは、必須でなくてもよい。例えば、alaで置換されたglu6をもつGglyは、親ペプチドと同程度の親和性で2つのFeと依然結合する。特定の残基が特に重要であると本実験において観察された一方で、特徴的なペンタグルタミン酸配列の天然のグルタミン酸残基のうち3つが本発明の錯体及び方法に用いられるガストリン内に存在する間、よい結果が得られるであろう。しかし、天然グルタミン酸残基の、少なくとも4つ、さらに好ましくは5つ全てが、天然ペンタグルタミン酸配列の形態に存在することが望ましい。
【0097】
上述の8つの態様の任意の一つまたは複数において、アミド化もしくは非アミド化ガストリンは、キレートフリーである。すなわち、ガストリンは、ルテニウムもしくはインジウムが結合するまたは結合するように意図されているキレートもしくは補欠分子族と、結合、錯化、あるいはその他で関連していない。再度、これは、本発明で使用されているのとは根本的に違うメカニズムによって、金属と結合及び輸送する先行技術のミニガストリン11−DOTA及び類似のアプローチと区別する。
【0098】
特定の実施形態において、したがって、上述の8つの態様の任意の一つまたは複数におけるガストリンはDOTA、DTPA、HYNICもしくはテトラアミンキレート基を備えない。
【0099】
特定の実施形態においては、上述の8つの態様の任意の一つまたは複数におけるガストリンは、ミニガストリン11若しくはミニガストリン11類似体、デモガストリン若しくはデモガストリン類似体、および、ミニガストリン若しくはデモガストリンと共役していないDOTA、DTPA、HYNICよりなる群から選択されない。
【0100】
本発明が、ルテニウムまたはインジウムの「未修飾」ガストリンへの直接結合を利用し、金属結合を可能にするために特異的に付加された任意の基との結合に対する必要性を避ける点は、大きな長所である。これは、ガストリン自体がガストリン/金属錯体の調製の間に損傷されにくく、イン・ビボ安定性を有意に改善する可能性があることを意味する。
【0101】
本発明は、以下の非限定の実施例及び図面のみを参照して詳細に記述されることになる。
【0102】
上述の個々のセクションで述べられた本発明の様々な特徴及び実施形態は、必要に応じて、変更すべきところは変更して、他のセクションにも適用される。したがって、一セクションで明記された特徴は、他のセクションで明記された特徴と、必要に応じて組み合わせてもよい。
【0103】
以下の実施例は、説明を目的として提供されるもので、少しも本発明の範囲を限定するものではない。
【0104】
(実験)
(材料及び方法)
(ペプチドと金属イオン)
Gアミド及びGgly(それぞれ純度88%及び93%)は、Auspep(Clayton、Australia)から購入された。不純物は水及び塩から成っていた。10mM塩酸(HCl)中において、金属イオン(Aldrich、St.Louis、MO)の溶液は調整され、National Measurement Institute(Pymble、Australia)において、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いて、それらの濃度は測定された。Ru106(6M塩酸中2mCi/ml)は、Eckert&Ziegler Isotope Products(Valencia、CA)から購入された。
【0105】
(吸光分光法)
金属イオンの濃度上昇下において、ペプチド(10mM酢酸ナトリウム中10μM、pH4.0、100mM塩化ナトリウム及び0.005%Tween20を含む)の280nm吸光は、バッファーブランクに対して、298Kに温度調節された1ml石英キュベット内において、Cary 5 spectrophotometer(Varian、Mulgrave、Australia)を用いて測定した。
【0106】
(X線吸光試料の調整、分光法、及び分析)
X線吸光分光法(XAS)に用いるサンプルは、1mMペプチド、50mMMOPS、10%DMSO、及び凍結保護材として20%グリセロールとして、調整された。金属ストック溶液は、対応する硝酸塩を用いて調節され、終濃度2mMまで増量された。データ収集後、比較のため、2mMのGaまたはInを含有するサンプルは、さらに、1mM鉄を用いて滴定された。データ収集前に、すべてのサンプルは、液体窒素中において凍結された。XAS測定は、略450mA、3.0GeVのSPEARストレージリングを用いて、Stanford Synchrotron Radiation Laboratoryにおいて、データ取得プログラムXAS Collect(29)を使用して、行われた。鉄、ガリウム、及びインジウムのK殻のデータは、20−pole 2 Tesla wiggler sourceを用いて作動しケイ素二結晶分光器を採用している構造分子生物学的XASビームライン7−3上において、収集された。鉄及びガリウムの分光法に関して、下流の垂直方向に平行なロジウムコートミラーは、高調波がカットオフより上に落ちるように、高調波除去のために採用された。入射X線強度は、窒素充填イオン化チャンバーを用いてモニターされ、X線吸光は、30個のゲルマニウム検出器のアレイを使用して、X線Kα蛍光励起スペクトル(X−ray Kα fluorescence excitation spectrum)として、測定された。X線蛍光は、ソーラースリットアセンブリ(Soller slit assembly)を介して収集され、検出器を用いて記録された固有のサンプル蛍光は、6または9吸光ユニット厚さ(absorption unit thickness)(鉄についてマンガン、ガリウムについて亜鉛、及び、インジウムについて銀)のフィルターを用いて除去した。データ収集の間、サンプルは、液体ヘリウムフロークライオスタット(liquid helium flow cryostat)(Oxford Instruments)を使用して、略10Kの温度に維持された。それぞれのデータセットは、それぞれのサンプルについて6〜9の走査を累積し、エネルギーは、それぞれの走査と同時に測定した同じ元素の基準薄片の吸光を基準として、キャリブレーションされた(鉄について7,111.3、ガリウムについて10,368.2、インジウムについて27,940.0eVを最も低いエネルギー変曲点と仮定する)。
【0107】
EXAFS振動χ(k)は、FEFFv8.20x5(Rehr、1991)を使用して計算される基本的な(ab initio)理論的位相及び振幅関数を用いた公知の方法(George、1996)に従ったコンピュータプログラムのEXAFSPAK suite(http://www-ssrl.slac.stanford.edu/exafspak.html)を使用したカーブフィッティングを用いて、定量的に分析された。拡張X線吸光微細構造(EXAFS)の振動(k=0Å−1)のエネルギー閾値は、鉄について7,130、ガリウムについて10,385、インジウムについて27,960eVと仮定された。鉄のデータは、14.2Å−1のK範囲に収集され、ガリウムは14.0Å−1のK範囲、及び、インジウムは16.2Å−1のK範囲に収集された。
【0108】
(Sep−Pak精製)
Ru106−Gアミド錯体(Ru106−Gアミド complex)は、50mM酢酸ナトリウム(sodium acetate)中、250pmolのRu106及び250pmolのGアミドを、室温において、pH4.0で1時間インキュベートすることによって作製され、逆相C18 Sep−Pakカートリッジ(reverse phase C18 Sep−Pak cartridges)(Waters Corporation、Milford、MA)上において精製された。Sep−Pakカートリッジは、まず、10mLのバッファーA(100mM酢酸ナトリウム、pH4)、10mLのバッファーB(100mM酢酸ナトリウム、pH4、50%アセトニトリル(acetonitrile))、及び、10mLのバッファーAの通過により、活性化された。次に、反応混合物(reaction mixture)が通過され、カートリッジは、未結合のRu106を除去するために10mLのバッファーAを用いてウォッシュされた。Ru106−Gアミド錯体は、バッファーBを用いて溶出され、そして、β−counter(Packard、Meriden、CT)を用いて連続したフラクション中(それぞれ1mL)の放射能を測定した。フラクション1及び2は、Ru106−Gアミド錯体を含有し、HPLCに注入される前に、バッファーAを用いて希釈され、2回ろ過されるか、または、結合アッセイ用に結合バッファー(下記参照)に再懸濁される前に、Speed Vac(Savant、Hicksville、NY)中において、2mLから略100μLまで結合及び乾燥される。
【0109】
(HPLC精製)
Ru106−Gアミド錯体(以下においてさらに論じる)は、Protein−PakQ 8HR(5×50mm、Waters Corporation)上において、アニオン交換HPLCを用いて、バッファーA中において0Mから1Mの塩化ナトリウム(NaCl)の勾配を用いて55分間に渡り流速1mL/minで、精製された。1mLフラクション中における放射能は、β−counter(Packard、Meriden、CT)を用いて測定された。
【0110】
(カーブフィッティングと統計)
データ(平均±標準誤差でテーブルされる)は、BioEqsプログラムを用いて1サイトまたは2サイト順序モデル(one−site or two−site ordered models)(図1のように)にフィッティングされた。実験的に決定された平衡定数、及び、GアミドまたはGglyと第二鉄イオンとの相互作用についてテーブル1に示される吸光度比は、第二鉄イオン存在下において他の金属イオンとGアミドまたはGglyとの相互作用を示すデータをフィッティングする間中、一定に保たれていた。
【0111】
(結果)
(ガストリンへの金属イオンの結合)
イオン結合:Fe3+イオンの添加が吸光スペクトルに及ぼす影響と、pH4.0におけるGアミド及びGglyの蛍光と、はすでに報告されている(Baldwin、2001)。蛍光データの線形変換(linear transformation)のフィッティングは、図1に示すように、μM親和性(μM affinities)の2結合サイトに一致していた。材料及び方法のセクションに記載したように、新しい吸光データセットが取得され、Bioeqsプログラムを用いてフィッティングされた。適切なフィッティングは、Gアミドについては3.0×10−10及び8.5×10−11M、及び、Gglyについては5.7×10−9及び7.0×10−9Mの親和性を用いて、取得された(テーブル1)。図1に示すように、2サイトモデルにおいて、ガストリンは、解離定数がKd1M及びKd2Mである2つの金属イオンに結合している。2サイト競合モデルにおいて、ガストリンは、解離定数がKd1Fe及びKd2Feである2つの第二鉄イオンに結合しており、さらに、解離定数がKd1M及びKd2Mである2つの同じサイトに金属イオンMを結合している。解離定数Kd3Mは、混合鉄ガストリンM錯体(mixed FeGastrinM complex)が形成されていることを示す。
【0112】
(FeGglyのEXAFS特性)
FeIIIGgly(図2)のX線吸光スペクトルK端近傍スペクトル(XAS K−edge near edge spectrum)は、1s→3d(t2g)及び1s→3d(e)遷移に起因する7,114eVを中心とするプレエッジピーク(pre−edge peaks)を示す。これらのピーク間における比較的大きな分離(Δ=1.2eV)は、低いt2gレベルに比較して、eレベルの上昇に起因し、低スピン第二鉄イオンの指標となる。この大きな分離は、また、第二鉄イオンがグルタミン酸側鎖のカルボキシレート供与体(carboxylate donors)によって主に配位されるという予想にも一致する。
【0113】
FeIIIGglyのEXAFSデータ(図3A― Ggly錯体についてのK端拡張X線吸光微細構造(EXAFS)スペクトル(A、C、E、G、黒塗り太線)、及び、Gglyと、Fe3+イオン(A、B)、Ga3+イオン(C、D)、In3+イオン(E、F)またはRu3+イオン(G、H)との錯体に対応するフーリエ変換(B、D、F、H)は、テーブル2に示す散乱経路パラメーターを使用して計算された最良のフィッティング(赤色/薄く、かつ細い線)と共に表される。)は、2Å直下のFe−O後方散乱相互作用(Fe−O backscattering interactions just below 2Å)及び〜3.3Åの外殻後方散乱Fe…Fe相互作用(outer shell backscattering Fe…Fe interaction at 〜3.3Å)によって支配されている。データへの最良のフィッティングは、1.90Åの2つの短いFe−O後方散乱相互作用、2.03Åの4Fe−O、2.57Åの1Fe…C相互作用(テーブル2)を含む単一散乱経路を使用して取得された。構造パラメーターは、メタンモノオキシゲナーゼ(methane monooxygenase)、及び、鉄原子が比較的近くにあり、金属中心の間を架橋するカルボキシレートを含む複数のカルボキシレートによって結合されている、ジ−鉄錯体(di−iron complexes)に類似するような、ジ−第二鉄−非ヘム鉄結合タンパク質(diferric non−heme iron binding proteins)を連想させる。EXAFSデータに顕著に現れる配位リガンドの数(the number of coordinating ligands)、及び、より長い範囲のFe…Cの散乱相互作用に基づいて、2つの第二鉄イオンは、少なくとも1つの架橋カルボキシレートを有するカルボキシレート供与体によって、主に結合された。核内分離(internuclear separation)は、Fe3+への単座デカンテートカルボキシレート供与体(mono−dentate carboxylate donors)もまた同様の錯体において、この原子間距離の範囲に近づくことができるので、この場合には特に診断的(diagnostic)ではないが、場合によってはO2−またはOHとして、酸素原子の架橋を示す可能性がある、より短いFe−O結合長さ(1.90Å)の包含についての明確な優先もある。
【0114】
EXAFSデータは、単一Fe…Fe後方散乱相互作用(Fe…Fe scattering interaction)を用いると最もフィッティングされた。この観察は、図3に示すEXAFSのデータに基づいたFeIIIGglyの構造のモデルを提案し、しかし、Ggly及び変異ペプチドの以前のNMR及び可視分光学的実験を用いて一定であることも指し示す、図4に示唆されるように、ジ−イオン配位環境においてGglyがFe3+に結合することを指し示す。図4のモデル中における2つのFeIIIイオンは、グルタミン酸7が両方のFeIIIイオンのリガンドとして作用し、グルタミン酸6、7、8、9、及び10のカルボキシレート側鎖によって配位される。2つの酸素原子もまた、2つのFeIIIイオン間の架橋として作用する。ペプチドの骨格及び非配位側鎖は、簡略化のため、図4において省略されている。ジ−イオン配位環境において、Fe3+のGgly結合は、鉄−カルボキシレート錯体の多核小分子結晶構造(multinuclear small molecule crystal structures)においてしばしば見られるように、更なる第二鉄イオンの見かけ上の引き抜き(apparent recruitment)なしに起こる。Fe…C相互作用は、それぞれの鉄の中心が、多くとも2つの架橋カルボキシレート、及び、少なくとも1つの架橋相互作用に関与しない更なるカルボキシレートと相互作用することを示唆する。
【0115】
ガリウム結合:図5に見られるように、Ga3+イオンの添加は、pH4.0におけるGアミド及びGgly両方の280nmの吸光の増大を引き起こした。図5においては、pH4.0における、塩化第二鉄(ferric chloride)(▲)、または、硝酸ガリウム(gallium nitrate)(▼)のアリコート(aliquot)の、10mM酢酸ナトリウム中10μMのGアミド又はGgly、100mM塩化ナトリウム、0.005%Tween20への、298Kにおける添加は、280nmでの吸光度のモル比2.0までの増加を起こし、そして、Ga3+について3.3×10−7M、及び、Gアミドについて1.1×10−6M、及び、Gglyについて1.7×10−8M及び2.3×10−6M(テーブル1)の親和性を生じるBioeqsプログラムにフィッティングした。図5において、点は少なくとも3回の独立した実験を意味する。バーは、標準誤差を表す。線は、図1に示す2サイトモデルへのBioeqsプログラムを用いた最適なフィッティングを表し、テーブル1に適切なKと最大吸光度値を示す。
【0116】
(GaGglyのEXAFS特性)
GaIIIGglyのEXAFSフーリエ変換(図3D)における一次後方散乱のピークは、より対称的に表れるが、著しく改善されたフィッティングは、1.88Åにおいて2つ、1.99Åにおいて3つの、2つの別々のGa−O後方散乱相互作用を含むことによって得られた。1.88Åにおいて、3番目のGa−O後方散乱を含めるとフィッティングに小さな変化を生じることは、混合物の可能性を除外できないが、Ga3+の中央が5または6配位であることを示唆する。EXAFSデータ(図3C)もまた、3.05Åにおいて、Ga…Ga後方散乱相互作用を明らかに示し、そして、GaIIIGglyデータ(テーブル2)に使用された単一散乱経路モデルの結果は、ジ−イオンEXAFSモデルとよく一致する。構造的な意味合いは、Ga3+は、Gglyに配位している場合、ジ−核配位部位(di−nuclear coordination site)の局所配位環境において、最小限の構造変化によるFe3+の置換を表す。
【0117】
インジウム結合:図6に見られるように、In3+イオンの添加は、pH4.0において、GアミドまたはGglyの各々の280nmにおける吸光度の増加をほとんど起こさなかった。図6のグラフ表示は、バッファー中10μMのGアミドまたはGglyへの硝酸インジウム(▼)のアリコートの添加から得られ、塩化第二鉄(▲)のアリコートの添加の際に見られる変化に比較した場合、280nmにおける吸光度の変化をほとんど生じなかった。しかしながら、3.99(■)または39.85μM(●)の硝酸インジウム存在下において、塩化第二鉄のアリコートの添加の際に見られる吸光度の変化は、硝酸インジウムの非存在下において見られる変化と明らかに異なっていた。点は、少なくとも3回の独立した実験を表し、バーは、標準誤差を表す。線は、解離定数、及び、BioEqsプログラムを用いて図1に示すように、データを2サイト競合モデルにフィッティングすることによって得られる最大吸光度値(テーブル1)を用いて構成される。
【0118】
39.85μMのIn3+イオン存在下において、Gアミド及びGglyのいずれも280nmにおける吸光度は、Fe3+イオンの添加時に、より急激に上昇し、モル比1付近まで最大吸光度が到達した単一部位結合において予想されるカーブに近づいた。これらの観察は、吸光度に変化を全く起こさずに、In3+イオンがFe3+イオンよりも大きな親和性によって第1のFe3+イオン結合サイトに結合することができるという仮説に一致する。実際、In3+イオンは、In3+イオン濃度の上昇により得られるカーブのファミリー(family)がBioeqsプログラムを用いて図1に示す2サイト競合モデルに合理的によくフィッティングしているため、両方のFe3+イオン結合サイトに競合するようだ。第1のFe3+イオン結合サイトについて、イオンの最もフィッティングする親和性は、実質的にFe3+イオンよりも高く、Gアミド及びGglyについてそれぞれ6.5×10−15及び2.1×10−13MのIn3+におけるK値を有していた(テーブル1)。
【0119】
(InGglyのEXAFS特性)
InIIIGglyについてのEXAFSフーリエ変換(図3F)は、2.1Åにおける一次後方散乱のピーク中心の短い距離側のショルダーを示し、短いIn−O後方散乱相互作用の含有は、フィッティングを著しく改善した。EXAFSデータ(図3E)のk範囲を14Å−1まで切り捨てると、酸素のような軽い原子との後方散乱相互作用に期待されるように、フーリエ変換におけるこの明らかなピークが低k範囲データに合理的に表されており、ノイズやその他のアーチファクトに起因するものではないことが確かめられた。全体的に、EXAFSデータに対する最適なフィッティングは、2.13Åにおける5つの等価なIn−O後方散乱相互作用のように、1.98Åにおける単一の短い金属−O原子経路を含有することによって、得られた。In…In後方散乱相互作用は3.26Åにおいて観察された。InIIIGglyについてフィッティングパラメーターは、親FeIIIGgly錯体(parent FeIIIGgly complex)に用いられたものに合理的によく一致していることは、Ga3+のように、In3+が2インジウム結合環境下において、Fe3+錯体に構造が似ていることを示唆する。
【0120】
ルテニウム結合:類似ファミリーのカーブは、結合実験が図7に示すようにIn3+イオンの変わりにRu3+イオンと共に繰り返された場合に得られた。図7のグラフ表示は、バッファー中10μMのGアミドまたはGglyに塩化ルテニウムのアリコートを添加することから得られ、塩化鉄(▲)のアリコートの添加の際に見られる変化よりも、かなり小さい280nmにおける吸光度の上昇を引き起こした。しかしながら、5.30(■)または26.48μM(●)の塩化ルテニウムの存在下において塩化第二鉄のアリコートの添加の際に見られる吸光度の変化は、塩化ルテニウムの非存在下において見られるものとは明らかに異なる。点は、3回の独立した実験を表し、バーは、標準誤差を表す。線は、解離定数、及び、BioEqsプログラムを用いて図1に示すようにデータを2サイト競合モデルにフィッティングすることによって得られる最大吸光度値(テーブル1)を用いて構成される。
【0121】
ルテニウムとインジウムの観察結果の主な相違点は、Ru3+イオンの添加はそれ自体がpH4.0においてGアミド及びGglyの両方の280nmにおける吸光度の顕著な上昇を起こしたことである。それにも関わらず、Ru3+イオンの濃度上昇によって得られたカーブのファミリーは、Bioeqsプログラムを用いて、図1に示される競合2サイトモデルによくフィッティングしていた。第1のFe3+イオン結合サイトについてRu3+の最適なフィッティングの親和性は、実質的にFe3+イオンよりも高く、Gアミド及びGglyについてそれぞれ2.6×10−13及び5.3×10−15MのRu3+におけるK値を有していた(テーブル1)。
【0122】
(RuGglyのEXAFS特性)
ジ−Ru3+錯体(図3H)のEXAFSフーリエ変換は、調べられた他の錯体のそれとは著しく異なり、〜2.1Å及び〜2.4Åにおける2つの強い後方散乱のピーク中心を示す。図3Hにおけるフーリエ変換のピークの大きさは、図3B、D,及びFに示された他の錯体のそれに比較して大幅に低下し、個々のRuの散乱経路間における顕著な相殺の結果である。データへの最適なフィッティングは、RuRu核、架橋カルボキシレート、及びO原子及びRu中心の1つに結合した単一塩素と競合した残りの配位を含有する、ジ−核RuIII錯体を使用して、得られた(図4B)。EXAFS(図3Gにデータ)実験は、Ru中心についてすべての配位環境の重ね合わせを同時に与えるため、フィッティングパラメーター(テーブル2)は、非等価な配位環境を示すために、〜2.4ÅにおけるO原子の部分占有(fractional occupancy)と同様に、Clの部分占有を必要とする。この混合ジ−核配位環境もまた、実験データによると、最大EXAFSを相殺させた。Ru中心間における短い核内分離(2.4Å)は、直接の金属−金属結合を示す。
【0123】
要約すると、金属カチオンのかなりな数の統計的スクリーニングは、Ggly及びGアミドがいずれも、Fe3+に加えて、Ga3+、In3+、またはRu3+に結合することを明らかにした。3価のガリウムカチオンでは、Ga3+濃度が上昇する場合において、ガストリンの吸光の変化は、ガストリン/Gアミドについて、0.33及び1.1μM、または3.3×10−7及び1.1×10−6、及び、Gglyについて、1.7×10−8及び2.3×10−6の解離定数(K)と共に、2サイトモデルを用いてフィッティングされた。ガストリンの吸光はIn3+イオンの添加によって変化しなかったが、インジウムイオン存在下においてFe3+イオンが結合する場合の吸光度の変化は、In3+についてのKd値が6.5×10−15及び1.7×10−7Mの2サイト競合モデルを用いてフィッティングされた。同様の結果が、Ru3+についてのKd値が2.6×10−13及び1.2×10−5MのRu3+イオンにおいて得られた(テーブル1)。結果は、ガストリン/Gアミド及びGglyが、選択的に3価のインジウムまたはルテニウムイオンに、第二鉄またはガリウムイオンよりも著しく高い親和性で結合することを実証する。
【表2】
【表3】
【0124】
(Ru106−Gアミド錯体の精製及び安定性)
Ru106−Gアミド錯体の精製における第1ステップは、C18SepPakカートリッジを利用した。未結合のRu106は最初のフロースルーにおいてカラムを通過し、一方、Ru106−Gアミド錯体はフラクション1及び2において溶出した(図8A)。Ru106−Gアミド錯体をさらに精製するために、C18SepPakカートリッジからフラクション1及び2は、プールされ、そして、アニオン交換HPLCにかけられた(図8B)。フラクション11に見られた放射能は、明らかにGアミドの吸光度ピークに一致している。同様の結果が、Ru106−Ggly錯体から得られた(データなし)。重要なことに、Ru106−アミド化ガストリン錯体は、中性pHにおいて、16.8±3.2日の非常に安定した半減期である。
【0125】
詳細には、図8Aに示されるデータについて、100mM酢酸ナトリウムpH4中のRu106−Gアミド錯体(2つの各組において最も右である暗い黒色のバー)は、C18SepPakカートリッジへの結合、続いて、10mLの100mM酢酸ナトリウムpH4を用いたウォッシュ、及び、50%アセトニトリルを含む100mM酢酸ナトリウムpH4の1mLアリコートを用いた溶出によって、未結合のRu106から分離された。Ru106(2つの各組において最も左である明るい黒色のバー)のみカートリッジにアプライされた場合、大半の放射能は、最初のウォッシュの中に見られる。図8Bに関して、Ru106−Gアミド錯体は、55分かけてpH4の10mM酢酸ナトリウム中0から1Mに示された塩化ナトリウムの線形勾配を使用してHPLCアニオン交換を用いて、さらに精製された。それぞれの1mLフラクションにおける放射能は、縦棒を用いて示されている。
【0126】
本発明の様々な実施形態の上記説明は、関連技術の当業者の説明のために、提供される。 網羅的であること、または、本発明を単一の開示された実施形態に限定することは、意図されない。上述したように、本発明の多くの代替及び変形は、上記の教示の当業者には明らかだろう。したがって、いくつかの代替の実施形態が具体的に議論されているが、他の実施形態は、当業者にとって、明らか、または、比較的容易に開発されるだろう。したがって、この特許明細書は、本明細書で論じた本発明の全ての代替、改変、及び変形、及び、上記発明の主旨および範囲の内に入る他の実施形態を包含することが意図されている。
【0127】
以下の特許請求の範囲および本発明の前述の説明において、文脈が明示的な言語または必要な意味のために明白に別段の必要がある場合を除いて、“comprise(備える)”という言葉、または、“comprises”や“comprising(備えた)”を含むそれの変形語は、包括的な意味で使用され、すなわち、定められた数値の存在を記述するが、本発明の1つ以上の実施形態におけるさらなる数値の存在または追加を排除するものではない。
【0128】
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図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】