(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
乾燥および硬化のうちの少なくとも1つを行った少なくとも1つの液体層接着剤の支持体のない構造体を含むテープおよび方法。エラストマー系ドレープと、支持体のあるドレープおよびいくつかの支持体のないドレープでは、実質的に気密なシールを形成するためにドレッシングと皮膚との界面に貼付するのに適した少なくとも乾燥および硬化のうちの1つの後に少なくとも部分的に架橋される液体成分とを含む、閉鎖性組織ドレッシング、テープおよび方法。その製造中に閉鎖的に封止されていない場合は、使用者がエラストマー系ドレープの管とドレッシングとの界面に塗布して管の周りに同様の気密シールを形成することにより同じまたは異なる液体成分を塗布してもよい。支持体のないテープ、液体シーラント成分を含むドレープ、液体シーラント成分を含む液体層状ドレープおよび液体層状ドレープを特徴とする。
(1)管の閉塞に抵抗するための機構を有する可撓性の管および(2)中央通路および前記中央通路の閉塞に抵抗するための機構を有するフランジのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のキット。
(1)前記管の前記第1の端部を挿入可能な中央通路を有するフランジおよび(2)前記管の前記第1の端部に嵌合することができるコネクターと連通する中央通路を有するフランジのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項7に記載のキット。
自身の上に巻き取られ、次いで展開されて陰圧を与えることができるベローズ型ポンプなどの陰圧源として機能することができる機械式ポンプをさらに含む、請求項7に記載のキット。
前記少なくとも1種のシーラント成分の少なくとも1つ容器は、(1)分注装置の中に取り外し可能に挿入可能なカートリッジであるか(2)前記シーラントを送達するために圧搾可能である、請求項1に記載のキット。
前記ドレープを前記皮膚の上に置く工程は、前記ドレープ内のあらゆるしわの近くで前記ドレープの前記第2の表面を押し付ける工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
第1および第2の表面を含み、かつ支持体なしで作製された少なくとも1つの接着剤層を有する固体コーティングまたはパターンコーティングとして、あるいは少なくとも2つの接着剤層が含められている場合には少なくとも1つの層が固体コーティングまたはパターン状である、支持体のない液体層状テープ。
【背景技術】
【0003】
陰圧閉鎖療法(「NPWT」)は開放創を治療するのに有効な技術である。NPWT装置は、米国食品医薬品局(「FDA」)がキネティック・コンセプト社(「KCI」)のV.A.C.(登録商標)装置に対して510(K)を認可した1995年にFDAによって最初に承認された。FDAによるNPWT装置の定義は年月とともに変化し、その定義は大まかに言えば、流体(すなわち、傷滲出液、洗浄流体および感染性物質)の除去を含む創傷管理目的で陰圧をかけるために使用されるシステムである。創傷の種類および深さに応じて創腔の中または上に位置する多孔性ドレッシングを介して、あるいは皮弁または移植片の上に陰圧をかけ、ドレッシングは創傷から流体を除去しながら圧力を分散させる。NWPTシステムは典型的に、
・創腔を塞ぐために使用される非粘着性創傷ドレッシング(例えば、無菌医療用スポンジまたはガーゼ(非粘着性パッキング材としても知られている))、
・ドレッシングに隣接するかその中に配置されるドレナージ管、
・封止を維持するためにドレッシング(および潜在的にドレナージ管)の上に配置され、かつ皮膚に付着される閉鎖性透明フィルム、
・創傷から排出された流体の回収容器、および
・低圧力真空源
を備える。
【0004】
NPWTは、多くの創傷の種類、すなわち慢性、急性、外傷性、亜急性および離開性の創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍または褥瘡など)、手術で縫合した切開部(縫合した術創としても知られている)、皮弁および移植片を治療するためにFDAによって認可されている。規定の治療期間は創傷の種類、創傷の寸法および患者の状態に応じて決まり、典型的には4週間から4ヶ月間続く。使い捨てドレッシング部品は約3日ごとに交換する。
【0005】
広範な臨床試験により、典型的には20mmHg〜200mmHgの制御された陰圧をかけることで認可されている創傷の種類の治癒において陰圧が成功することが実証されている。大部分の研究では一定の真空圧(125mmHgが最も一般的である)をかけたが、周期的および断続的な研究も肯定的な結果を示した。慢性の非治癒性創傷の治療におけるNPWTの使用を支持する証拠は、主に非無作為化対照臨床試験、前向きおよび後向きの大規模および小規模症例シリーズ、単一施設研究および単一症例研究の形態で存在し、無作為化対照臨床試験の数は少ない。急性創傷の治癒におけるNPWTの利点を実証する研究も存在する。さらに、2006年以来、術後に術創を管理する利点が臨床結果の改善により示されており、少なくとも10件の研究がこれまで発表されている。これらの研究から、NPWT治療の証明されている医学的な利点としては、
・創傷における血流(潅流)の促進、
・間質液(傷滲出液としても知られている)の除去と浮腫の減少、
・細菌および感染性物質数の減少、
・肉芽組織形成速度の上昇と瘢痕組織形成の減少、
・増殖因子および線維芽細胞の増加、
・創縁の均一な引き合わせ、
・保護された治癒環境の提供、および
・浸潤環境の提供
が挙げられる。
【0006】
慢性創傷の治癒における安全な治療法としてNPWTの利点を支持する有意な臨床的証拠は存在するが、NPWT中に静脈または動脈を破裂させる可能性がある。通常は、機械の安全警報が機械の設計速度を超える流体漏れ速度を知らせる。この警告される漏れ速度は典型的に空気および液体の両方の組み合わせを含み、典型的には、大量出血している静脈または動脈を有する創腔から生じ得る最小血流速度の安全上限を有する。静脈または動脈が偶発的に破裂した場合、システムは停止しなければならない。従って、患者が大量出血を起こさないように、これが生じた場合に陰圧を停止する安全機能を有することが非常に重要である。
【0007】
Linaらは米国特許第7,611,500号および国際公開第1996/005873号においてNPWTのために使用される最初の装置について記載している。この装置は実際に有効であることが分かったが、1つの主要な限界が検出された。すなわち、この装置を作動させるのに必要な高い電力系統電源により患者の移動性が制限された。従って、米国特許第6,142,982号にHuntらによって記載されているようなその後の改良型には電源のために充電式電池が組み込まれた。電池により患者の移動性が高まったが、充電までの間の電池の寿命によって時間が制限された。さらに、特に多くのNPWT患者を抱える施設では電池の管理が問題となり、電池を充電するために電力系統電力がなお必要であった。
【0008】
電力系統電源または電池により電力を不要にすることで、より広範囲に適用可能な臨床的に実行可能な治療法が得られる。システムの所要電力の変動は、所望の真空圧、創腔からの傷滲出液の除去速度、およびシステム内への空気漏れ速度によって決まる。空気漏れ速度が上昇するにつれて、創傷床において所定の値または閾値範囲で連続的な陰圧を供給するために、より多くの電力が必要となる。NPWTシステム内への空気漏れはあらゆる他の部品の大部分の電力を必要とする。空気漏れは連続的な外部電源またはその内部電力貯蔵の頻繁な再充電を必要としない真空システムの創出の妨げとなる。従って、機械式NPWTシステムの実現可能性は、システム内の全ての界面のシール品質に大きく依存する。ドレッシングシステムは、現在のNPWTシステムにおける、特に1)ドレッシングと皮膚との界面および2)管とドレッシングとの界面における主要な空気漏れ源として特定されている。これらの界面への空気漏れの量は、ポンプを再充電しなければならない時間頻度および特定の時間において創腔にかけられる真空圧の大きさを決める。これら後者の2つの特性はシステム依存パラメーターである。
【0009】
マサチューセッツ工科大学における機械工学の理学修士のために2007年に提出された「単純化された陰圧閉鎖装置の開発」において本発明者によって記載されているような機械式NPWTシステムは、現在ではほとんど入手不可能である。後に米国特許出願第2010/0228205号においてHuらによって、特定のより低圧力の機械装置が開示された。現在の機械式システムは典型的に、空気漏れ問題を解決することを試みるために親水コロイドドレッシングなどの精巧な材料からなる平らなドレッシングを使用している。しかし、平らなドレッシングと曲線のある皮膚表面との固有の幾何学的形状の不一致により空気漏れが生じることが多い。従って、この機械装置は選択された体の比較的平らな表面にのみに適用可能であり、その場合でも空気漏れを完全になくすことは難しい。
【0010】
非電動式ポンプは医療用ポンプの中でも低価格帯のものであり、典型的にはブラダーポンプおよび毛管作用材を用いる。ブラダーポンプは流体を抽出および挿入するために使用される。それらの物理的特性により、それらは非線形バネのような特性によって制御される。現在ブラダーポンプは排液のため、特に体腔内の排液のために創傷治療において使用されている。C.R.Bard社はこれらの非電動式ポンプの多くを製造しており、腔内の排液のために頻繁に使用されている1つのブラダーモデルは一般にJackson Pratt Drainと呼ばれている。
【0011】
既存の機械式ブラダーポンプを備えたNPWTの適用には様々な限界がある。ポンプ上に圧力計が存在しないため、使用者は印加した陰圧の初期の大きさが分からず、治療中に圧力を監視することができない。さらに、現在のポンプ用の空気漏れ検出システムは存在せず、予想以上に速い速度のブラダーの膨張は目で見るしかない。ポンプが透明であれば、その膨張速度が空気漏れによるものか、あるいは排液によるものかを目で監視することもできる。
【0012】
あまりに低過ぎるためにNPWTと見なすことができない程の非常に低い陰圧による治療を施すことにより創傷を治療するための毛管作用材も現在使用されている。この形態の治療は通常、水疱や擦過熱傷などの非常に小さい自己回復性創傷にNPWTのような利点を与えるための小さい局所包帯などのドレッシングで見られる。このような技術で創傷を治療することにより治癒環境が改善される。毛管作用材は創傷と外部環境との間の小さい毛管で充填される。創傷から外部環境に流れる流体の毛細管現象により陰圧をかけ、それにより間質液を除去する。毛管作用材の一例は、ジョンソン・アンド・ジョンソン社の応急処置用先進ケア治癒促進粘着性パッド(First Aid Advanced Care Advanced Healing Adhesive Pad)である。
【0013】
一般に創傷ドレッシングは、NPWTを含む大部分の創傷ケア治療において開放創を覆うために使用されている。これらのドレッシングは、典型的には主に粘着性フィルムの形態のドレープ部品からなる。粘着性フィルム型創傷ドレッシングは、第1および第2の表面を有する支持体(すなわち、典型的には押出フィルム)からなる。第1の表面は生体適合性皮膚コンタクト接着剤(すなわち、感圧接着剤)で被覆されており、皮膚接着剤は患者に配置する前に支持体に対向するその表面において保護ライナーで保護されている。ドレープの第2の表面は、典型的に取り扱いのために使用されるキャリアライナーも有していてもよい。このキャリアライナーには典型的に、キャリアライナーと支持体との間に結合を生じさせる接着剤が付着されており、この結合は保護ライナーと皮膚接着剤との間の結合よりも強力である。結合強度におけるこの差により、キャリアライナーをドレープに付着させたまま保護ライナーを皮膚接着剤から引き剥がすことができる。
【0014】
ドレッシングを貼付する前に、最初に使用者はこれを創傷のサイズよりも僅かに大きくなるようにカットしてもよい。典型的には、理想的なドレッシングのサイズは、創縁の周囲を約2〜4cm超える大きさである。いくつかの実施形態では、創傷ドレッシングをカットする場合、ドレッシングの取り扱いをさらに支援するためにドレープを超えて延在するキャリアライナーの境界も切り取ってもよいが、これは理想的ではない。またドレッシングの貼付前に、創傷皮膚の周囲を典型的にアルコールで通常消毒する。創傷皮膚の周囲を保護し、皮膚接着剤の創傷皮膚の周囲への接着強度を高め、かつ/または皮膚接着剤の創傷皮膚の周囲への接着強度の完全性および寿命を着用時間以上に引き延ばすために、皮膚前処理剤を創傷皮膚の周囲に塗布してもよい。
【0015】
ドレッシングを貼付するために、保護ライナーを皮膚接着剤から引き剥がして皮膚接着剤を大気に曝す。保護ライナーは単一体であっても除去を必要とする複数体であってもよい。次いで、ドレープを皮膚接着剤で創傷皮膚の周囲に結合させる。保護ライナーを皮膚への結合プロセスの前または間に除去してもよいが、典型的には結合前に除去する。次いで、キャリアライナーを除去する。キャリアライナーは、ライナーの異なる層またはセグメントを貼付プロセス中の異なる時間に除去するため、および/またはドレッシングを皮膚表面により適合させるために、複数の穿孔、層および/またはセグメントを有していてもよい。但し、その貼付の最終工程は全てのキャリアライナーセグメントの完全な除去であり、その後は支持体の非粘着面を露出させたままにする。
【0016】
皮膚接着剤は典型的にファンデルワールス力により皮膚に結合する。適切な結合強度を与えるファンデルワールス力の能力は、皮膚接着剤および支持体の材料ならびにそれらのそれぞれの厚さに基づく。典型的には、材料の各層の厚さは一定である。理論上は、ドレッシングを皮膚に付着させたままにするために、剥離靭性(結合強度)は剥離エネルギーよりも大きくなければならず、剥離エネルギーは、以下の方程式1および2によって一次基準で表されるように、材料(すなわち、皮膚接着剤およびドレープ)の有効厚さ、当該材料における有効歪みの二乗および当該材料の有効弾性率に比例している。支持体は典型的にポリウレタンフィルムであり、皮膚接着剤は典型的にアクリル系である。ドレッシングの中にはシリコーン系皮膚接着剤を使用しているものもある。ドレッシングの中にはゴム系接着剤を使用しているものもある。
【0017】
その製造中、支持体は最初にロール状の非粘着性固体フィルムあり、これを繰り出して皮膚接着剤で被覆する。次いで、典型的に保護ライナーを接着剤に積層した後、支持体および皮膚接着剤の層状実施形態を巻き取る。いくつかの実施形態では、最初に皮膚接着剤を保護ライナーに被覆した後、それを支持体に付着する。キャリアライナーを貼付する場合は、皮膚接着剤および/または保護ライナーの前、それと同時またはその後に貼付してもよい。理想的には、さらなる繰り出し手順が不要となるように、キャリアライナーを皮膚接着剤および保護ライナーと同じ繰り出し手順で貼付する。キャリアライナーを貼付するには、キャリアライナーを支持体に積層するために最初に接着剤をこのライナーまたは支持体に被覆してもよい。いくつかの実施形態では、キャリアライナーとドレープとの間に塗布される接着剤なしに静電付着力で、あるいは当該技術分野で知られている他の付着方法でキャリアライナーを貼付してもよい。
【0018】
本発明者によって米国仮出願第62/090,350号に開示されているように、現在市場で入手可能な創傷ドレッシングのための支持体および皮膚接着剤の2層機能体は典型的に、周囲条件で0.225/秒〜0.300/秒の歪み速度を用いると、線形弾性域において7E+6N/m
2を超え(すなわち、この場合に使用される微小歪み範囲:0〜0.2)、かつ多くの場合に8E+6N/m
2を超える有効単軸弾性率(ヤング率)(マイクロソフトエクセルにおいて最小二乗による線形回帰フィットを用いた平均)を有する。0〜0.1の微小歪み範囲を用いた場合、有効単軸弾性率は典型的に線形弾性域において9E+6N/m
2を超え、かつ多くの場合に10E+6N/m
2を超える。本発明らの線形弾性率解析のために、2.2ポンドのロードセルを用いるAdmen eXpertシリーズ(マサチューセッツ州ノーウッド)引張試験機(Interface社、アリゾナ州スコッツデール)を使用した。また、同じ実験パラメーターを用いて、0.2の歪みにおける応力は典型的に1.0MPa超、かつ多くの場合に1.5MPa超であり、応力−歪み曲線の折れ点は典型的に1.0MPa超、かつ多くの場合に2.0MPa超において生じる。実験解析のために、接着剤が薄層であるため、断面積全体を有効面積と仮定し、従って、得られる有効応力値および弾性率を僅かに過小評価する。
【0019】
ドレッシング技術では、NPWTシステム内への空気漏れの問題に対処することが試みられてきた。これは、電動式および機械式システムの両方にとってそれらの必要な所要電力を減らすために重要である。機械式システムでは、これは電力の入力およびポンプの再充電時間が介護者および/または患者が行うのに妥当であるような臨床的に重要な装置の機能のために必要である。電動システムでは、完全には無くならないとしても空気漏れの減少により、血液が流れている可能性を示す偽陽性の警告による緊急システムの停止回数は減少する。空気漏れの減少により、1回の電池充電でより長く持続する電池設計を可能にすると共に、全体としての電力容量がより小さい電池の使用が可能となる。空気漏れをなくすことにより、閉塞環境において真空圧を指定の閾値(その時間枠はポンプパラメーター、システムの最初の空気体積および創傷からの滲出液除去速度(典型的には100mL/日未満)に依存する)内に維持することができるため、連続的な電力供給の必要性が潜在的になくなる。
【0020】
現在、大部分のNPWTドレッシング(ドレープ部品)は、上記のように皮膚の曲線のある領域に貼付しなければならない薄く平らなテープ状の粘着性ドレッシングである。ドレッシング上の支持体を除去して接着剤を露出させなければならず、次いでドレッシングを皮膚に貼付する。ドレッシングは典型的に、キャリアライナーを有していたとしてもその低い曲げ剛性により非常に容易に折り重なったりひだになったりするため、貼付前にドレッシングを取り扱うだけで空気漏れの可能性が生じる。多くのドレッシングは普通紙よりも薄く、材料の曲げ剛性はその厚さの三乗に比例する。ドレッシングを貼付する際に、平らなドレッシングと治療される創傷を囲む体の曲線との幾何学的形状の不一致に対応するために、折り重ねなければならないことが多い。これによりドレッシングに、NPWTシステム内への空気漏れを引き起す可能性が非常に高いひだ(本明細書では「しわ」ともいう)が生じる。
【0021】
幾何学的形状の不一致に加えて、ドレッシングの貼付前に接着剤に異物が入り込むことでドレッシングの粘着性が低下することが多い。これは介護者の取り扱いによりドレッシングの縁部において最もよく起こることであり、ほぼ回避不可能である。介護者の手によって、ドレッシングのその領域へのさらなる付着を妨げるのに十分な異物が接着剤に入り込む時もある。米国では、介護者が粉の付いた手袋を使用する場合にこれが生じることが多い。界面破壊力学の理論によれば、ドレッシングの縁部は、ドレッシングの縁部から創腔への漏れの拡大が潜在的に非常に高い領域であるため、これは重要な問題である。
【0022】
電動式NPWTシステムでは、薄いプラスチック接着剤で支持されたドレッシングが典型的に使用される。電動式NPWTドレッシングシステムでは、ドレッシングと皮膚との界面で生じる上に列挙した空気漏れ問題が容易に対処されていない。その代わりに、ドレッシングを繰り返すことで、管とドレッシングとの界面における空気漏れに焦点が当てられてきた。NPWTが最初に市場に登場したときは、ドレナージ管をドレッシングの縁部から創腔に挿入していた。これにより空気漏れの可能性が高くなり、システム停止が頻繁に警告された。ドレッシングの縁部において管を皮膚表面から持ち上げてドレッシングを管の下で挟んだ後にドレッシングを皮膚に接触させることで、介護者がこの問題を解決し始めた。これによりドレッシングが皮膚の上で逆さまの「T字」型で付着するようになった。
【0023】
最終的には、NPWTドレッシングの市販の設計のいくつかに管の界面における高い空気漏れ速度に対する独自の解決法が組み込まれた。これらの解決法のうち、KCI社製のT.R.A.C.パッドは非常に有効であり、現在の設計傾向を後押ししている。T.R.A.C.パッドでは、ドレナージ管を半剛性管コネクターに予め組み立て、次いでこれを小さい円形の平らな粘着性ドレッシング(ドレープとしても知られている)に取り付ける。これらの接続は全てその製造中に気密になるように行われる。この管は粘着性ドレッシングの平面を超えて移動せず、従ってその開口部は皮膚表面に留まる。T.R.A.C.パッドを使用する場合、最初に標準的なドレッシング(すなわち、創傷パッキング材および接着剤ドレープ)を、管を接続せずに創傷に貼付する。次いで、創腔の上でドレッシングに小さい切り込みを形成する。但し、この穴もその製造中にドレッシングのドレープ部品の中に予め形成されていてもよい。円形の粘着性部品であるフィルム支持体をパッドから除去し、管開口部を切り込みの中心に置く。パッドの粘着面は小さいため、管を最初にドレッシングに通す手順よりも取り扱いが容易である。このパッドは管とドレッシングとの界面における空気漏れを確実になくすものではないが、その人間工学的設計および小さい形状により、ドレッシングへの空気漏れの見込み量を大きく減少させる。依然として存在する幾何学的形状の不一致および使用者の取り扱いにより、平らな粘着性部品を用いる全ての用途において最小量の空気漏れはほぼ回避不可能である。
【0024】
NPWTで適用される低価格の機械式ポンプの特定されている障壁を克服するために多くの努力がなされてきた。その焦点の大部分は空気漏れの減少およびより予測可能な真空源の創出に当てられている。NPWTドレッシングで使用される新しい材料は、ドレッシングと皮膚との界面におけるシステムへの空気漏れ速度の減少における主要な原動力となってきた。これらの材料は創傷ドレッシングにとって新しくないことが多いが、NPWTにとっては新しい。ポンプ設計では、より予測可能な真空源の創出に焦点を当てており、線形または定荷重バネなどの機械部品をシステムに導入し、治療法を通じてより予測可能な挙動を維持することが多い。
【0025】
現在市販されている機械式NPWTシステムは、Spiracur社(カリフォルニア州サニーヴェール)製のSNaP(登録商標)創傷ケアシステムのみの1種類であるが、これは広く使用されていない。SNaP(登録商標)創傷ケアシステムは、空気漏れに対応するために管からドレッシングへの特定の機械式コネクターを有する親水コロイドドレッシングを使用している。提供される親水コロイドドレッシングは比較的サイズが小さい。親水コロイドは多くの創傷ドレッシングシステムで使用されており、NPWT市場では一般的な傾向である。それらは最も一般的な粘着性の平らなNPWT特有のドレッシングよりも硬くて厚い。そのため、その取り扱いおよび貼付中にドレッシングが折り重なることは少なくなる。しかし、特にドレッシングの表面積が大きくなるにつれて、ひだにすることなく幾何学的形状の不一致に対応させることはできない。このドレッシングはより硬くて厚いため、その曲げ剛性の増加により、これらのひだを気密に封止することは難しい。従って、親水コロイドは小さめの創傷にしか適用できない場合が多い。Smith and Nephew社製のReplicare薄型親水コロイドドレッシングのように、それらの貼付可能な表面積を増加させ、かつ曲線への適合性を高めるために、それらをさらに薄くするための数多くの努力が現在なされている。親水コロイドは、皮膚への付着性の向上および空気漏れの減少に対応するために、それらの非常に粘着性の高い粘着特性に依存している。それらが傷滲出液と接触した場合、親水コロイド中のポリマーは飽和になるまで水で膨張してゲルを形成し、このゲルはその接着剤マトリックス構造において固体のまま保持される。
【0026】
SNaP(登録商標)創傷ケアシステムでは、KCI社製のT.R.A.C.パッドと同様に、親水コロイドドレッシングは機械式コネクター部品によって管に接続されている。SNaP(登録商標)創傷ケアシステムは、製造中に機械式コネクター部品をドレッシング全体の中央に予め組み立てることにより、この機械式コネクターからのあらゆる潜在的な空気漏れをなくす。このように予め組み立てることにより、使用者の界面と幾何学的形状との不一致による管とドレッシングとの界面におけるどんな潜在的な空気漏れもなくすが、ドレッシング表面での移動ができない。従って、患者にとって不快な位置などの不好都合な創傷領域にこれを配置しなければならない場合がある。さらに、管はドレープの平面に平行に通っており、ドレープの平面に沿った管の方向は固定されている。ドレッシングは典型的には円形ではないため、事前に設定した形状のドレープで創傷部を覆うためには望ましくない経路に管経路を通さなければならないことがある。
【0027】
SNaP(登録商標)創傷ケアシステムは、その真空源に関しては、定荷重バネによって駆動される複雑なシステムを使用している。従って、主に空気漏れおよび潜在的には滲出液の除去によりポンプが膨張すると、圧力は圧力印加期間中に比較的一定に保たれる。このシステムは、低価格帯の医療用ポンプの非電動式ポンプ(例えば、ブラダーポンプ)と比較して高価かつ高度に技術的なものであるが、NPWTポンプ設計候補であることが証明されている最初の市販の機械式NPWTポンプである。創傷の位置および介護者の経験に応じて、ドレッシングシステム内への空気漏れは依然として非常に起こりやすいため、実際にはSNaP(登録商標)創傷ケアシステムの貼付の成功は限られている。
【0028】
特定の公知の液体ドレープは、乾燥または硬化前に無傷の皮膚に直接貼付される低粘度の粘着性配合物である。1つの液体ドレープがZhangらによって米国特許出願第2010/0112036A1号に記載されている。但し、そのような液体ドレープは創腔の上への貼付に適していない。また、そのような接着剤は創傷ケアへの使用に十分な弾性がなく、テープ支持体と同じ耐久性制限を有する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書では、乾燥および硬化のうちの少なくとも1つを行った少なくとも1つの液体層接着剤からなる支持体のない構造体を含む新規なテープおよび方法について説明および特許請求している。エラストマー系ドレープと、支持体のあるドレープおよびいくつかの支持体のないドレープでは、実質的に気密なシールを形成するためのドレッシングと皮膚との界面における貼付に適した、少なくとも乾燥および硬化のうちの1つの後に少なくとも部分的に架橋される液体成分とを含む新規な閉鎖性組織ドレッシング、テープおよび方法についても説明および特許請求している。その製造中に閉鎖的に封止されていなければ、エラストマー系ドレープの管とドレッシングとの界面に同じまたは異なる液体成分を使用者が塗布して管の周りに同様の気密なシールを形成してもよい。
【0049】
本発明の閉鎖性創傷ドレッシング態様は、空気および体液の流体移動に対して好ましくは少なくとも48時間、より好ましくは少なくとも72時間実質的に不透過性の有機材料、好ましくはエラストマー材料からなる薄いシートとして形成された、第1および第2の表面を有するドレープを利用するキット、ドレッシングシステムまたは方法によって達成してもよい。好ましくは、生体適合性接着剤は、ドレープの少なくとも第1の表面の上に配置もしくは塗布するか接触させるもの、または支持体のない液体ドレープの基材である。多くの構成では、第1の除去可能ライナーシートはドレープの第1の表面を覆っており、任意に第2の除去可能ライナーシートはドレープの第2の表面を覆っている。好ましくは、ドレープは接着剤の少なくとも1つの層で構築されている。特定の構成では、本発明は、予め選択された周囲条件において液状のシーラントとして送達することができる少なくとも1種のシーラント成分の容器をさらに利用し、送達されるシーラントは少なくとも乾燥および硬化のうちの1つの後に少なくとも部分的に架橋されており、ドレープを創傷を囲む皮膚に貼付した後にシーラントを層としてドレープの縁部に塗布してから30分以内、好ましくは20分以内、より好ましくは10分以内に乾燥および硬化する工程のうちの少なくとも1つを行うことができる。
【0050】
本開示の閉鎖性ドレッシングは、電源の必要性をなくし、かつ特に1)ドレッシングと皮膚および2)管とドレッシングとの界面を確実に気密に維持することにより、NPWTの電力/移動性および空気漏れ問題に対処する。本開示のドレッシングシステムおよびそれらの接続方法は信頼性のある機械式NPWTシステムを可能にする。これにより、患者の移動性および電池管理問題をなくすだけでなく、電気が不足していることが多い厳しい環境および頑丈な製品を必要とする苛酷な環境でNPWTを施術することも可能になる。開示されている複数の実施形態は、包括的適用のための安価で頑丈な治療法を支援する。さらに、本発明に係るドレッシングはMRIに適合可能である。
【0051】
その好ましい構成では、本発明に係る創傷ドレープ部品は、新規な支持体のない液体接着剤実施形態を有する。これは一般的な粘着テープを製造するために利用される同じ加工プロセスを用いて製造することができ、従って本出願は新規な支持体のない液体粘着テープのより一般的な意味における実施形態を開示する。当業者であれば本出願を見直した後に、これが創傷ドレープ、皮膚テープ、構造用テープおよび布テープなどの多くの用途のための実施形態に適用されることが分かるであろう。
【0052】
特定の創傷ドレープなどの粘着テープは典型的に、実質的に非粘着性の構造支持体を接着剤で被覆することにより従来どおりに製造される。支持体は、紙、織布または不織布、箔およびポリマーフィルムまたはシートなどの各種材料で作られていてもよい。Korpmanによる米国特許第4,024,312号に詳述されているように、これらの支持体材料は、当該テープの伸展性および弾性を制限することが多い。従来のテープ製造プロセス中に支持体を典型的にはロール状で調達し、次いでこれを繰り出してその側面の少なくとも一方を接着剤で被覆する。支持体の製造/巻き取りおよび繰り出し/被覆プロセスは2つの異なる施設で行われることが多い。いくつかの実施形態では、接着剤を除去可能ライナー(剥離ライナーとしても知られている)でさらに保護してもよい。除去可能ライナーは典型的に、隣接する接着剤を支持体上で少なくとも部分的に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行った後に貼付される。最終的な層状材料(すなわち、支持体、接着剤および使用される場合には除去可能ライナー)は典型的にさらなる処理のために巻き取られる。
【0053】
除去可能ライナーを使用せず、かつ支持体の片面のみを接着剤で被覆する場合、さらなる処理および/またはその機能的な使用中に当該テープを容易に繰り出すために、従来の剥離コーティングを接着剤の反対側の支持体に塗布することが多い。接着剤を支持体の両面に塗布する場合、除去可能ライナーは典型的に接着剤の少なくとも1つに貼付される。1つのみの剥離ライナーが使用される場合、このライナーは典型的にそれを両接着剤から剥離するために両面に剥離コーティングを有し、1つは当該テープを繰り出す際のものであり、1つはライナーを除去する際のものである。この従来の事例では、2つの接着剤に対する剥離ライナーの結合は、適切に繰り出され、かつ次いでその使用中に除去されるために、2つの接着剤の間に十分に大きな結合強度差を有していなければならない。剥離ライナーは、繰り出しプロセス中にライナーから除去される第1の接着剤に対してより低い結合強度を有していなければならない。ライナーは典型的に、第1の接着剤を基材に塗布した後に第2の接着剤から除去される。従って、この従来の事例では、ライナーは第1の接着剤とそれが付着される基材との結合強度よりも第2の接着剤に対してより低い結合強度を有していなければならない。その機能的な使用中に、接着剤(支持体の1つまたは2つの側面にある)および支持体は機能的なテープ実施形態を形成する。
【0054】
本発明に係る好ましい機能的なテープ実施形態は、従来の製造プロセスについて上に記載したように従来の実質的に非粘着性の支持体と共に作られていない。好ましい一実施形態では、転写フィルムの少なくとも一部を液体ポリマー層で被覆し、少なくとも部分的に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行う。「『少なくとも一部』に被覆する」という語句は、同心円または「点」もしくは線の格子などの液体ポリマー層のパターンを含む。次いで、第2の液体ポリマー層を第1の層の少なくとも一部の上に直接被覆するか(すなわち、液状であり、かつ少なくとも部分的に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを可能にする)、そこに積層してもよい(すなわち、第2の液体ポリマーを転写フィルム上で少なくとも部分的に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行った後に積層)。その後に、連続層を追加してもよく、そのためには、転写フィルムを除去してコーティングまたは積層のためにポリマー表面の少なくとも一部を露出させなければならない場合がある。乾燥および/または硬化プロセスを支援するために、層状構造体を異なる環境に置いてもよい。例えば、以下の技術のうちの1つ以上を利用することができる。すなわち、液体層に熱を加えてもよく、特に熱溶融のために層を冷却してもよく、放射線を照射してもよく、あるいは当該プロセスは並行または連続プロセスの組み合わせを必要としてもよい。
【0055】
本発明に係るいくつかの技術では、積層プロセスは、さらなるポリマーを有しない転写フィルムの積層を含んでもよい。最終的な構造体のために、最終的な層状構造体の上部および下部のうちの少なくとも1つにある転写フィルムは除去せず、先に述べた除去可能ライナーの機能的な形態をなし、かつ/または最終的な層状構造体の上部および下部のうちの少なくとも1つにある転写フィルムを除去して除去可能ライナーで置き換える。当業者であれば、材料の個々の層化は連続的に行う必要はなく、層状構造体の部分組立体を互いに順々に積層することができることが分かるであろう。この技術は、部分組立体の処理温度および時間を分けるために望ましい場合がある。当業者は、特定の最終的な構造体を層状接着剤の組み合わせと見なしてもよい。この定義では、最終的な構造体はそれぞれ、その機能的な使用中に常に凝集を維持する機能的構造体を提供するために少なくとも1つの層において十分な凝集を有していなければならない。
【0056】
1つの好ましい構築方法は、各液体ポリマー層を転写フィルム上に被覆し、次いでポリマー層を連続的に積層して最終的な組立体または別個の部分組立体にすることである。典型的に、個々の層を最初に転写フィルム上に被覆した後、ポリマー層を少なくとも(1)乾燥および(2)硬化のうちの1つを行った後に巻き取る(すなわち輸送または貯蔵のため)。従って、好ましい実施形態では、当該層を繰り出して転写フィルムを除去することができるように、転写フィルムは両面に剥離面を有する。そうでなければ、それを巻き取る前に第2の転写フィルムをポリマー層に貼付する必要がある。
【0057】
最初に、各組立体または部分組立体のために、最初にベース液体ポリマー層を別の転写フィルム上に積層してその元の転写フィルムを除去するか、あるいは好ましいプロセスでは、その最初の転写フィルムと共に使用する。各層(すなわち、個々の層または複数の層の部分組立体)を連続的に別の層に積層し、次いで、積層されるポリマーを露出するために、得られた実施形態の転写フィルムの1つをその次の積層工程の前に除去する。このプロセス中に、積層工程を使用して層状構造体を新しい転写フィルムに積層してもよく、この間に新しい液体ポリマー層は追加しない。転写フィルムとその隣接する接着剤との間に必要な結合強度を生成するためにこれを行ってもよく、例えば、フィルムを積層体の反対側から剥離するために、弱い結合強度を有するフィルムをより強力な結合を有するフィルムで置き換えてもよい。また、部分組立体または最終的な組立体を巻き取り(すなわち、輸送または貯蔵のため)、かつその転写フィルムの1つを除去する場合、部分組立体または最終的な組立体を繰り出して後で転写フィルムを除去することができるように、残りの転写フィルムは両面に剥離面を有していなければならない。
【0058】
最終的な機能的構造体において上部および下部ポリマーのうちの少なくとも1つが除去可能ライナーに取り付けられている場合、加工プロセス中に1つ以上の最終的な除去可能ライナーを最終的な構造体の上に積層することができ、あるいは最終的な積層体の元の転写フィルムを除去可能ライナーとして使用することができる。新しいライナーを導入する場合の例は、熱感度または結合強度問題により転写フィルム上への個々の層被覆プロセスにおいて所望の除去可能ライナーを使用することができない場合である。これは、積層プロセス中のその後の転写フィルムの剥離中にベース層へのそのより強力な結合強度のために元のベース転写フィルムが必要とされる場合であってもよいが、層化を完了した後は、最終的な実施形態において異なるベース除去可能ライナーが好ましい。この場合、上部転写フィルムは、ベース(すなわち底部)転写フィルムが除去されて新しい除去可能ライナーで置き換えられるのに十分な積層体に対する強力な結合を有する必要がある。1つのみの除去可能ライナーを使用する場合および積層体をそれ自体の上に巻き取る場合は、先に記載したように積層体を繰り出すことができ、かつ当該ライナーを除去することができるように、除去可能ライナーは両面に剥離面を有していなければならない。好ましい一実施形態では、除去可能ライナーは少なくとも、機能的な使用中に最初に基材に取り付けられた側面に対向する積層体の側面にある。これにより当該テープをその機能的な貼付中に容易に取り扱うことが可能となる。2つの除去可能ライナーを使用する場合、最終的な実施形態におけるベースおよび上部ライナーは、ドレッシングの機能的な使用のために適切な結合強度差を有していなければならない。例えば、ベースライナーを最初に除去する場合、そのライナーはその除去の間により小さい結合強度を有していなければならない。転写フィルムおよび除去可能ライナーの結合強度は、積層および機能的な使用中に剥離角度およびセットタイムにより変えることができる。
【0059】
層状実施形態の製造および使用中に、全ての隣接するポリマー層間の結合強度は、その除去の間にあらゆる転写フィルムまたは除去可能ライナーのその隣接するポリマーへの結合強度(接着または接着強度としても知られている)よりも大きいことが理想的である。製造または使用中に2つの転写フィルムまたは除去可能ライナーを使用して少なくとも1つのポリマーコーティングを挟む場合、最初に除去されるフィルムまたはライナーはそれぞれ、その除去中に次に除去されるフィルムまたはライナーよりもその隣接する層に対して小さい結合強度を有していなければならない。これにより、あらゆる他の界面を剥離することなく、フィルムまたはライナーを容易に除去することが可能となる。いくつかの実施形態では、フィルムまたはライナーの隣接する層への有効な結合強度を減少させ、かつ除去のために必要な結合差を生じさせるために、指定の(1)角度および(2)速度のうちの少なくとも1つを用いて、あるいは指定の(1)角度および(2)速度の範囲内でフィルムまたはライナーを引っ張ることにより、転写フィルムまたは除去可能ライナーを除去する(剥離角度に対するこの可変な接着強度(すなわち剥離力)についてはKreckelらによる米国特許第5,516,581号においてテープを基材から剥離する場合について記載されており、フィルムまたはライナーのポリマー層または積層体からの剥離は同じ力学原理に従う)。これは好ましくないが、温度などの選択された環境条件も変えて層間の剥離力差を変えることができる。さらに、隣接する液体ポリマーのフィルムまたはライナーへの結合強度は典型的に時間の経過と共に増加した後にその最大値に到達する。従って、積層プロセス中に一時的なライナーを時間依存的に使用してもよい。
【0060】
層はそれぞれ、隣接する層または望ましい基材に対する適切な接着強度および所望の機械的性能特性のための適切な凝集力を提供するために、適切な接着と凝集とのバランスを必要とする。好ましい実施形態では、液体層は接着剤(すなわち、少なくとも部分的に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行った後の全ての粘弾性液体、全ての粘弾性固体または粘弾性液体/固体層の混合物)であり、従ってそれらは粘弾性であるため、液体および固体の両方の特性を有する。好ましい実施形態では、あらゆる積層プロセスの前にそれらを全て転写フィルム上に液状で被覆する。好ましい一実施形態では、全ての層は感圧接着剤(PSAとしても知られている)であり、(1)溶媒、(2)熱溶融、(3)エマルション、(4)放射線、(5)懸濁および(6)他の溶解法のうちの少なくとも1つを用いて製造する。転写フィルムは、巻き取りおよび繰り出しプロセスならびにあらゆる積層プロセスに必要な機械的構造を提供する。接着と凝集との適切なバランスを用いて、本発明に係る液体層の支持体のない構造体を除去可能ライナーを有する基材の上に移し、少なくとも1つの接着剤層および支持体層からなる典型的なテープ積層体の機能特性を実現してもよい。但し、本発明に基づき、本テープ実施形態の機械的性質を達成することができ、これは典型的な支持体層の積層だけでは不可能である。標準的な支持体のある実施形態では取り扱いが難しかったり製造が不可能であったりする材料を作製してもよい。当業者であれば、液体層構造体をボーダードレッシング(border dressing)などの他の組立体の部品として使用できることが分かるであろう。
【0061】
本発明に係る液体構築方法によるこのテープ実施形態の1つの利点は、今日では容易に入手可能な標準的な支持体と比較して、機能的な性能を高めるためにより望ましい材料を使用できる点にある。その層の貼付前に、最終的な実施形態の特性を変更し、かつカスタム材料からテープを作製するために、材料への添加剤を液体配合物の中に容易に混合することができる。エラストマー材料は理想的であるが、プラスチックおよびエラストマー材料を使用してもよい。本発明のためのその望ましいエラストマー特性により、ポリイソプレンゴム(IR)系または天然ゴムラテックス系配合物などのゴムからなる少なくとも1つの層が好ましい場合もある。いくつかの実施形態では、液体層は、医薬品、抗菌薬、親水コロイド、UV保護剤、アルギン酸塩および染料などの添加成分を懸濁してもよい。各層のための液体被覆プロセスに基づき、これらは当該設計の中に容易に組み込まれる。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態では、2つの層を2つの除去可能ライナーの間に挟む。最初に、液体ゴム接着剤(すなわち、合成、天然または合成/天然ハイブリッドゴム、好ましくはエマルション)に少なくとも部分的に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行うと、それが付着する転写フィルム/除去可能ライナーの上に被覆される。低いゴム弾性率を有し、それにより伸長容易性(すなわち高い伸展性)および高い弾性回復を可能にするように、最終的なゴム実施形態を架橋する。好ましくは、50%の伸長からの弾性回復は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%である。以下に材料特性についてさらに詳細に説明する。
【0063】
最終的なゴム実施形態は、その表面の両方が粘着性である固体の粘弾性材料層である。当業者であれば一般にこの層を接着剤層と呼ぶであろう。この高弾性層は、不可能ではないとしても、従来の支持体ロールのように取り扱いが非常に難しい。ゴムエマルションは粘着性であることが多く、従ってタックを除去するための処理工程なしにそれら自体の上に容易に巻き取ることができない。例えば、材料を粉末および/または液体シーラントで被覆することでタックを除去することができるが、粉末および/またはシーラントを最初に除去しなければならないため、これによりゴムに接着剤を直接被覆または積層する能力が変更されることになる。また、処理のために取り付けられるそれ自体の硬い支持体層が存在しない場合にはこの層の伸長容易性により取り扱いが難しくなり、この場合、転写フィルム/除去可能ライナーが巻き取りおよび繰り出しプロセスを含む容易な取り扱いを可能にする。
【0064】
転写フィルム/除去可能ライナー上に被覆されたゴム層に第2の機能的な感圧接着剤(PSA)を被覆または積層する。この場合、その凝集力のために主として最初のゴム層を使用し、その機能的な接着強度のために第2のPSAを使用する。好ましい実施形態では、PSAを転写フィルム/除去可能ライナー上に被覆した後に第2のPSAをゴムに積層する。好ましい実施形態では、第2のPSAはシリコーン系接着剤である。別の好ましい実施形態では、第2のPSAは改質アクリル系接着剤を含むアクリル系接着剤である。別の好ましい実施形態では、第2のPSAはゴム系接着剤である。本実施形態で使用することができる感圧接着剤としては、粘着性が高められたゴム接着剤(すなわち、天然ゴム、オレフィン系、シリコーン系、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン系、スチレン−イソプレン−スチレンおよびスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)および他のエラストマー、ならびに粘着性が高められた/高められていないアクリル系接着剤(すなわち、ビニルエーテルおよびエチレン−酢酸ビニル(EVA/PVA)を含む、放射線、溶解、懸濁またはエマルション法によって重合することができるアクリル酸イソオクチルとアクリル酸とのコポリマー)が挙げられる。架橋された接着剤、特により高い剪断強度(凝集力としても知られている)を与えるために架橋された感圧接着剤が好ましい場合がある。高い結合強度により目的の基材に対して高い剥離接着力を有する接着剤が好ましい場合がある。
【0065】
第2のPSA接着剤は、(1)積層プロセスならびに部分的な(2)乾燥および(3)硬化のうちの少なくとも1つを行った後にゴム層に付着する。元の接着剤コーティングからの転写フィルムを各側に残したままにするか、新しい除去可能ライナーを当該表面に積層することにより、除去可能保護ライナーを接着剤層の両面に貼付することが好ましい。複数の接着剤を積層することなく互いの上部に被覆することによってこの構造体を作製した場合、第2の除去可能ライナーを層状実施形態の上部に積層しなければならない。なお、この場合、層の製造は反対の順序であってもよい。すなわち、第2の除去可能ライナーを第2のPSA機能性接着剤で被覆し、第2のPSAをゴム接着剤で被覆し、次いで層状実施形態に第1の除去可能ライナーを積層する。
【0066】
本発明の範囲下の特定のテープ実施形態では、あらゆる所要の加熱または冷却プロセスおよび/または各層の必要な接着強度および凝集力および/またはUV硬化プロセスに応じて、特定の製造順序が必要になる場合もある。例えば、高温により所望の除去可能ライナーとその隣接する層との間に強力過ぎる結合が形成されることがあるにも関わらず、この層が(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つのために高温を必要とする場合がある。従って、最初に当該層をその除去前および所望の除去可能ライナーの積層前に転写フィルム上に被覆しなければならず、あるいは所望の除去可能ライナーの貼付前にそれをその隣接する接着剤の上に直接被覆しなければならない。別の例では、2つの接着剤層間に必要とされる結合強度が一方の接着剤を他方の接着剤の上に直接被覆するプロセスを必要とする場合があり、あるいは2つの層を積層する際により強力な結合強度のために一方の接着剤に下塗りを塗布しなければならない場合がある。別の例では、熱を加えることにより望ましい転写フィルム/除去可能ライナーとその隣接する層との結合を強化し続けることができるが、これは理想的ではない場合がある。従って、その後の層に(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行うために熱が必要な場合、それらの層を望ましい転写フィルム/除去可能ライナーの隣接する層および望ましい転写フィルム/除去可能ライナーの両方に積層する前に、(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行わなければならない。1つの好ましい製造プロセスでは、各層をこの構造体に連続的に積層する。従って、本構造体の各層の接着および凝集は、最終的な実施形態に達するまでその時除去されている転写フィルムの除去に耐えることができるものでなければならない。加熱および/または冷却は積層中に加えることができるが、それは好ましくない。また、接着力を高めるためにプライマーを被覆された接着剤層の上に直接被覆することは好ましくない。
【0067】
先に述べた好ましい実施形態(すなわち、ゴム層および第2のPSA積層体)を使用して、剥離なしに高伸展性基材に付着することができる高伸展性テープ(ゴム層の高弾性、第2のPSAの基材への高い接着および接着剤層間の強力な結合による)を作製してもよい。PSAの基材(被着物としても知られている)への接着は、接着剤が基材を濡らす(すなわちその中に流れ込む)能力、応力をかけた際に接着剤が流れに抵抗する能力および得られる結合に関わる分子力の強さなどの多くの変数に依存する。PSAテープは典型的に、最終的な結合強度に大いに寄与し、かつ表面の適切な濡れにも依存するファンデルワールス力により基材に結合する。適切な結合強度を提供するファンデルワールス力の能力は当該テープの各層の材料および厚さに基づく。典型的には、材料の各層の厚さは一定である。
【0068】
理論上は、テープ(一般に)を基材に付着したままにするために、剥離靭性(結合強度)は剥離エネルギーよりも大きくなければならず、剥離エネルギーは、材料の厚さ、材料における歪みの二乗および材料の弾性率に比例する。具体的には(その基準は微小歪み解析であるため、一次基準では)、薄膜の結合強度は、引張時に皮膚への接着を維持するために、方程式1(式中、Γは剥離靭性であり、
【化1】
は剥離エネルギーであり、Ωはクラックパターンに依存する無次元前因子であり、hは薄膜の厚さであり、ε
Tは引張時の歪みであり、E
fは薄膜の弾性率である):
【数1】
に従わなければならない。方程式1は、均質な等方性の線形弾性薄膜層および無限に厚い基材の剥離エネルギーを示す。より具体的には、方程式1は微小歪みに基づいており、故に、高伸展性テープの関数では一次基準でのみ使用されるべきである。多層テープの貼付では、剥離エネルギー
【化2】
は方程式2によって規定される。この方程式は均質な等方性の線形弾性薄膜層、無限に厚い基材および微小歪みも仮定しており、故に、厚い基材上の高弾性テープでは一次基準で使用されるべきである。当該テープの単位面積当たりの剥離エネルギーは、
【数2】
(式中、Ωはクラックパターンに依存する無次元前因子であり、h
fnはn個の薄膜層の厚さであり、E
fnはn個の薄膜層の弾性率であり、ε
Tは引張時の歪みである)である。従って、同じ結合強度を有するテープ(すなわち、同じコンタクト接着剤およびそれらの間の結合を含む基材特性)は、その層の厚さが減少し、かつ/またはその層の弾性率が減少するにつれて歪み変形が増加する間は結合したままである。これは薄い高弾性層を有する高エラストマーテープ実施形態の使用の幅を広げ、かつ本発明における液体構造体の層および標準的な被覆された支持体材料で達成可能な特性よりも優れたそれらの対応する機械的性質を大きく支持している。なお、本発明者らは、この一次分析のためにこの構造体層間の完璧な永久的結合を仮定していた。
【0069】
本発明におけるこの構造体層は、現在存在するテープ実施形態と比較した場合、最小の厚さおよび最小の弾性率に到達することができる。これは固体の支持体の除去によるものである。固体の支持体の代わりに、機能的な使用にとって十分な凝集力を有する液体層を使用する。実験により、天然または合成ゴム接着剤は層状構造体においてこの機能に適していた。完全に液体のテープを用いると、ゴム層は典型的に最も高い弾性率を有するため、ゴムまたは別の高伸展性弾性液体塗布ポリマーの優れた伸展性は、典型的に限界弾性率(すなわち、歪みによる剥離エネルギーを最も増加させるもの)である。また、液体層は作製可能な典型的な固体の支持体よりも被覆プロセスにおいてさらにより薄く塗布できることが多い。
【0070】
有用性に加えて、そのような低弾性率の高伸展性テープの別のさらなる利点は、基材からのその再剥離性である。先に記載した好ましい実施形態(すなわち、ゴムおよびPSA積層体)では、線形弾性率(線形弾性域における)をテープにおいて現在入手可能なものよりも非常に低くすることができ、応力−歪み曲線における折れ点をさらに小さくすることができ、場合によっては、折れ点後の大変形時の弾性率をさらに低下させることができる。使用者が除去のために当該テープを引くと、当該テープは低い力で大きな変形を有する。一般的な理論上の分析では、当該テープの伸長は、基材へのその接着結合を破壊するために使用されるエネルギーを当該テープに保存する。基材も変形して接着結合を破壊するために使用されるエネルギーを保存する。当該テープおよび基材の保存されたエネルギーは、変形の力学を定義するそれらの対応する応力−歪み曲線下面積に等しい。
【0071】
引裂、変形、剥離(例えば、壁または皮膚の上の塗料の場合)またはそれ以外の方法で基材を望ましくなく変化させないために、その変形の間中は基材よりも低い、好ましくは非常に低い弾性率を有するテープが望ましい。当該テープの応力−歪み曲線における折れ点は、基材の折れ点および/または降伏点と比較して低い応力を生じさせるために好ましく、当該テープは基材から除去される破断前に必要な伸びを有していなければならない。好ましい実施形態の実験中に、使用者は、それらの把持部を剥離破壊線から実行可能かつ制御可能な距離内に維持するために、基材により近いテープを再把持することができる。また、印加される力に対応する印加される応力を増加および減少させるためには、それぞれより薄いテープおよびより厚い基材が望ましい。理想的には、その使用中に当該テープに印加可能な最大の力は基材を損傷しない力である。従って、特により繊細かつ脆弱な基材が付着される場合は、当該テープがエネルギーの大部分を保存することが望ましい。また、当該テープがより高い接着結合を破壊するために必要なさらなるエネルギーを保存している場合には、基材を一定に維持しながら、基材に対してより高い接着強度を有する接着剤を除去時に基材に対して同じ衝撃で使用することができる。従って、より低い線形弾性率、より低い折れ点での応力、より低いゴム弾性率による大きな伸びおよびテープのより薄い厚さは全て、基材へのより強力な接着力を有するコンタクト接着剤を除去時に基材に対して同じ衝撃で使用する能力に寄与する。本特許出願は、特定の基材のためにテープにおいて現在使用することができない強力な接着剤(すなわち高い結合強度)をそのような基材のためにテープにおいて使用可能にする技術について記載している。
【0072】
米国特許第4,024,312号および第5,516,581号に記載されているように、再剥離性は剥離角度による接着強度変動に基づき、除去角度により変化する場合がある。従って、より低い線形弾性率、より低い折れ点での応力、より低いゴム弾性率による大きな伸びおよびより薄い厚さのうちの少なくとも1つを有するテープ実施形態も、使用者が基材を損傷させることなく特定の接着剤を有するテープを除去する角度を変えることができる能力に寄与する。これにより、当該テープの有用性および人間工学性を増加させることができ、かつ不適切な使用例を減少させることができる。コンタクト接着剤は好ましくは高伸展性であり、伸長中に積層体から分離せず、かつあらゆる好適な基材に対する接着よりも高い凝集を有することが好ましい。
【0073】
基材に貼付した後、本発明の粘着テープは強固に結合された状態になるが、単にそれを引き伸ばすだけで基材を損傷することなく容易に除去することができる。一般に、伸縮自在なテープは、単に当該テープを引き伸ばすだけで低い角度において基材の表面からの低い剥離力を提供する。本実施形態に記載されているテープは伸縮性が高いため、除去力はあらゆる方向におけるものであってもよい。但し、力を最小限に抑えるために、基材の表面に対して90°未満、より好ましくは平行、すなわち基材の表面に対して約45°未満で力を加えることが好ましい場合がある。除去前に破断せず、よって当該テープを無事に除去できるように、破断点引張強度は十分に高くなければならない。低いヤング率が好ましい。ヤング率が高すぎる場合、伸長時に綺麗な剥離を生じさせるのに十分な程に当該テープを引き伸ばすことは非常に難しい。好ましい実施形態では、当該テープは典型的に、それを除去した後に丸められたゴム糊のボールに類似したポリマーボールを形成する。このボールは層状テープ実施形態の接着および弾性特性によるものである。
【0074】
低弾性率で高伸展性のゴムおよびPSA積層体について記載されている好ましいテープ実施形態の1つの好ましい適用は、組織テープへの適用であり、特に皮膚の表面のための適用である。当該テープはその接着結合を維持しながら皮膚と共に容易に伸長するため、より低い線形弾性率、より低い折れ点での応力、より低いゴム弾性率による大きな伸びおよびより薄いテープ厚はその耐久性を高める。皮膚テープの多くの用途において、これは貼付されるテープが少ないという意味で使用者の自由な移動性を可能にし、それにより使用者の快適さを高めることができる。ゴムおよびPSA積層体を用いた場合、線形弾性率、特定の歪みにおけるゴム弾性率および折れ点での応力を現在のテープ実施形態と比較して非常に大きく減少させることができる。これは、その耐久性および快適さの増加における主要因子である。
【0075】
より低い線形弾性率、より低い折れ点での応力、より低いゴム弾性率による大きな伸びおよびより薄いテープ厚のさらなる利点は、特定のコンタクト接着剤の着用時間を引き延ばすことができる点である。例えば、時間の経過と共に分泌される体液は剥離靭性を低下させることがあり、これにより、上記方程式1および2による一次基準では、人の動きに伴って当該テープを皮膚の表面から剥離させてしまう可能性がある。但し、弾性率および/または厚さが減少すると、当該テープ変形の剥離エネルギーは著しく減少し、さらに非常に大きく減少した剥離靭性により良好な接着が可能になる。
【0076】
耐久性および快適さに加えて、組織テープは好ましくは除去時に使用者に痛みを引き起こさない。痛みは典型的に当該テープを除去する際の組織(すなわち基材)の変形および/または損傷によって生じる。従って、先に記載したように、ゴムおよびPSA実施形態はテープの除去時に組織の変形を減少させることができ、これにより痛みの感覚および/または皮膚裂傷などの組織への損傷を減少させることができる。
【0077】
本開示のテープ技術を用いる本技術開示はさらに、創傷(すなわち、創傷ドレープ部品)を覆うために使用される粘着性フィルム実施形態を有する創傷ドレッシングの分野におけるものである。以下は、先に述べた好ましいテープ実施形態(すなわち、ゴムおよびPSA積層体)を有する好ましい創傷ドレッシングに関する説明である。天然ゴム接着剤を使用してもよいが、大抵の場合、合成ゴム接着剤が好ましい材料である。合成ゴム材料は典型的に、オゾン、UV、熱および他の老化因子の影響を受けやすい状態にさせ得る炭素−炭素骨格を有していない。合成ゴム材料は一般に、それらの配合に応じて良好なレべルの耐化学性および耐熱性も備えている。合成ゴム材料は典型的に接触アレルギーを引き起こすタンパク質も有していない。
【0078】
ドレッシングの線形弾性率、応力−歪み曲線の折れ点および厚さは、創傷ドレッシングの貼付において重要な役割を担う。ドレッシングを貼付する際に、使用者は平らで柔軟なドレッシングを典型的に平らではない皮膚表面に貼付しなければならない。従って、使用者はその接着剤の塗布時にドレッシングを巧みに扱って皮膚の曲線に一致させなければならない。このプロセスの間、使用者は皮膚の曲線、皮膚のしわおよび/または皮膚の折り目を橋架してしまう場合がある。一旦貼付したら、皮膚の橋架された領域の上で皮膚への付着接触を生じさせる唯一の方法は、(A)より大きな橋架領域では、(1)ドレッシングを除去して、別のドレッシングの貼付中にあらゆる橋架を回避することを試みながらそれを再貼付すること、あるいは(2)橋架領域の上にあるドレープに圧力を加えてドレープを引き伸ばしてそれを下にある皮膚に付着させることであり、(B)より小さい橋架領域では(3)表面を皮膚コンタクト接着剤で濡らすことである。
【0079】
第1の解決法では、皮膚接着剤は皮膚の表面から死んだ皮膚細胞および他のデブリを除去してしまい、かつ大気中の粒子に付着してしまうことが多いため、ドレッシングを除去して再貼付することは理想的ではない。これらの粒子が皮膚コンタクト接着剤に結合した状態では、皮膚コンタクト接着剤の結合は皮膚の表面へのドレッシングの再貼付中にそれほど強力でなくなる。
【0080】
第2の解決法では、圧力の印加中に引張歪みがドレッシングに加えられ、かつ方程式2による一次基準では、より高い弾性率がドレッシングの剥離エネルギーをさらに増加させるため、ドレッシングのより低い有効弾性率(および伸びに応じて、応力−歪み曲線の折れ点でのより低い応力)が理想的である。故に、この解決法を用いた場合、皮膚コンタクト接着剤の皮膚への結合力に抗する残留力が存在する。厚さの増加により、方程式2による一次基準では、引張歪みを加える際にドレッシングの剥離エネルギーも増加する。但し、薄膜ドレッシングの厚さは同じ大きさであることが多く、従って多くの実施形態では、線形弾性率および潜在的に応力−歪み曲線の折れ点は、その後の皮膚からのドレッシングの剥離においてより大きな役割を担う。
【0081】
第3の解決法では、皮膚コンタクト接着剤の濡れは接着結合強度に一致することが多い。従って、接着剤の濡れ特性は典型的に、患者に痛みまたは組織損傷を引き起こすことなくドレッシングを除去する能力によって制限される。実際に、橋架領域は、利用可能な治療法および所望の目的の機能により、ドレッシングから完全に除去されないことが多い。上に述べた理由のために、本特許出願に示されているドレッシング技術により、貼付および着用中に全てではないがより多くの橋架領域をさらに解決し、封止された創傷環境を形成することができる。
【0082】
先に記載したように、弾性率、折れ点での応力、大変形時のゴム弾性率および厚さもドレッシング機能および耐久性に直接影響を与える。ドレッシングの弾性率および有効厚さが増加するにつれて、皮膚の上に留まらせ、かつ体の移動(すなわち、歪みの印加)中の剥離を防止するために、皮膚への皮膚接着結合強度も増加させなければならない。接着機能に加えて、弾性率および厚さの減少と共に患者の快適さおよびドレッシング耐久性が高まる。これはドレッシングの下にある皮膚の表面がより低いドレッシング弾性率および厚さを有するドレッシングから、より小さい抵抗で動くからである。皮膚の表面に対する皮膚接着剤の剪断も減少するため、これにより時間の経過に伴う皮膚表面における外傷が減少する。最小のドレッシング厚もドレッシングの曲げ剛性を減少させ、快適さおよび耐久性をさらに高める。これらの特性は、現在の市販の創傷ドレッシングよりも本発明の実施形態を支持するものである。
【0083】
ドレッシングを除去する場合、破断面は皮膚接着剤と皮膚の表面との間の表面であることが理想的である。これは当該テープおよび基材における材料の凝集と接着とのバランスに基づいており、これは先に記載したように、それらの機械的性質(すなわち、その変形時の弾性率、応力−歪み曲線における折れ点および/または降伏点および破断前の伸び)に強く関係している。いくつかの創傷ドレッシングでは、破断面は皮膚接着剤の層の中または皮膚接着剤の表面と支持体材料との間にあってもよい。これらの場合には、接着剤残留物が皮膚表面に残り、これは典型的に別のドレッシングの貼付の前に除去される。好ましい実施形態では、ドレッシング層の凝集および層間接着により、残留物が全く残らない状態でドレッシングを除去することができる。除去時に組織損傷(すなわち基材における破断)を引き起こすドレッシングは望ましくない。
【0084】
破断面の形成前に、ドレッシングの除去の際には典型的に力を加えなければならない。この力は典型的に介護者がドレッシングを手で引き剥がす際に加えられる。先に記載したように、弾性率、折れ点での応力、大変形時のゴム弾性率および厚さはドレッシングの除去において重要な役割を担う。痛みは典型的にドレッシングを除去する際の組織の変形によって生じる。従って、先に記載したように、より低い弾性率、より低い折れ点での応力、より低いゴム弾性率による大きな伸びおよびより薄いテープ厚を有する一実施形態は、テープの除去時に組織の変形を減少させることができ、これにより痛みの感覚および皮膚裂傷などの組織への損傷を減少させることができる。本出願に開示されているゴムおよびPSA積層体は、除去時の痛みを減少させるそのような一実施形態について記載しており、これは実験室および臨床的状況の両方において創傷ドレッシングについて証明されている(本発明者によって2014年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/090,350号を参照)。線形弾性率、折れ点での応力、厚さおよび/または潜在的に大変形時のゴム弾性率は減少するため、方程式1および2によれば、特定の接着剤の皮膚接着結合は機能的着用中に有効に増加する。さらに、線形弾性率、折れ点での応力、厚さおよび/または潜在的に大変形時のゴム弾性率が減少するため、皮膚への結合強度が増加した皮膚接着剤を同じであるか増加した患者快適さレベルを維持し、かつ除去時の同じであるか減少した組織への影響を維持しながら使用することができる。
【0085】
本発明のテープの貼付は、ドレッシングの貼付濡れ性を支援し、耐久性および快適さを高め、かつ除去時の組織変形および外傷を減少させるために、非常に柔軟な創傷ドレッシングに適用してもよい。好ましくは、当該ドレッシングは少なくとも4つの層で作られている。第1の層は除去可能ライナー(すなわち、キャリアライナー)であり、その上にエラストマー有機ポリマー接着剤(好ましくはゴムエマルション)の第2の層が被覆または積層されている。この場合の有機とは炭素を含む材料を意味する。(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つの後に、ゴム層に皮膚コンタクト接着剤層、好ましくはシリコーン系、アクリル系またはゴム系ポリマーを被覆または積層し、これを皮膚コンタクト接着剤に直接被覆されるか皮膚コンタクト接着剤に積層される最終的な除去可能ライナーで保護する。
【0086】
本出願に記載されているゴムおよびPSA積層体の創傷ドレッシング実施形態は、ドレッシングを皮膚に貼付してそのキャリアライナーを除去した後、皮膚から離れた表面において粘着性である。親出願(現時点では米国特許第9,173,777号)において参照されているように、この特性は、創傷ドレッシングと皮膚表面との幾何学的形状の不一致により形成される創傷ドレッシングの上部における折り目を押し付けるのを支援することができる。本発明者によって2014年12月11日に出願された米国仮特許出願第62/090,437号に記載されているように、本実施形態に記載されているドレッシング技術は、診察室で液体シーラントと組み合わせた場合に信頼性のある閉鎖性創傷ドレッシング(小さいバッチでの手作り)として有効であった。このシーラント技術について米国特許第9,173,777号にさらに記載されている。2014年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/090,350号に記載されているドレッシングは、(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行った前の層のそれぞれの後にゴムエマルションの複数の液体層を互いに直接被覆した後、(1)乾燥および(2)硬化のうちの少なくとも1つを行った前の層のそれぞれの後に皮膚コンタクト接着剤の1つまたは2つの層を貼付する。大抵の場合、米国仮特許出願第62/090,350号では臨床において接着剤はゴム層の上に被覆されており、これらの場合に、接着剤の上に除去可能保護ライナーは貼付されていなかった。最終的なドレッシングを貼付した後、ドレッシングの外面が他の表面に付着するのを防止し、かつその着用時間中にドレッシングとあらゆる他の表面との間の摩擦係数を減少させるために、ドレッシングの粘着性の外面を粉末で覆った。
【0087】
閉鎖性創傷ドレッシングの機械的および化学的特性ならびにその製造性を高めるために、米国仮特許出願第62/090,350号に示されている研究以外のさらなる材料選択を追及した。結果として、多くの場合に、さらなるシーラントを使用せずにゴムおよびPSA積層体を確実に皮膚に気密に貼付することができた(但し、全ての皮膚の種類、体の位置および着用時間のための閉鎖特性の信頼性のために、好ましい実施形態ではシーラントを使用する)。これは、層状実施形態の高弾性によるドレッシング貼付プロセス中および貼付プロセス後の(すなわち、ドレッシングをあらゆる橋架領域の中に押し付けることによる)濡れ性の増加によるものであった。また、積層体の粘着性(すなわち、濡れおよび接着結合)の増加、液体(すなわち、粘性)および弾性特性(すなわち、より低い弾性率)により、使用者が圧縮力を加えた際にあらゆる空気路を完全に閉鎖することができた。必要とされる力が減少するため、あらゆる空気路の閉鎖における使用者の信頼性が高まる。この信頼性を高める1つの因子は、好ましくは4ミル超のより厚く、より粘着性の皮膚コンタクト接着剤を用いることであった。
【0088】
皮膚へのより強力な結合を有する新しい皮膚コンタクト接着剤に加えて、米国仮特許出願第62/090,350号ではタンパク質を除去するためにゴム材料を置き換え、従って、合成ゴム系接着剤を使用した。この材料選択を用いた場合、長時間の着用時間により、使用されるゴムおよびPSA積層体に関してそれらの凝集性に基づくさらなる問題に直面した。長時間のドレッシング着用中に、特に基材が、皮膚、ガーゼおよび管フランジ間などの機械的性質を大きく変化させる位置においてピンホールが形成され始めた。これらのピンホールはドレッシングの至るところに拡大し、時間の経過と共に空気漏れを引き起こした。薄膜におけるこのピンホール問題は、フィルム包装産業、燃料電池産業および大きなバルーンにおいて見られることが多い。NASA Tech Brief(「Multi-Layer Laminated Thin Films for Inflatable Structures(インフレータブル構造のための多層の積層された薄膜)」)において、インフレータブル構造では多層積層体が単層膜上でのピンホールの発生を減少させることが示唆されている。本発明者らの実験中に、これが本発明におけるテープ積層体に当て嵌まることも証明された。
【0089】
閉鎖性創傷ドレッシングの1つの好ましい実施形態は、4ミルの皮膚コンタクト接着剤が2ミルのゴム接着剤に積層され、これが1ミルのアクリル系接着剤に積層され、これが2ミルのゴム接着剤に積層され、これが1ミルのアクリル系接着剤に積層され、これが2ミルのゴム接着剤に積層され、これが1ミルのアクリル系接着剤に積層され、これが2ミルのゴム接着剤に積層された8層積層体であった。当該テープの構造的完全性を提供するのに十分な凝集が得られたこの8ミルのゴム層を4つの層に分断した。これにより同様の機械的性質は得られるが、複数の積層体層の至る所にあらゆるピンホールが拡大する確率は低下した。新しいドレッシング実施形態は、本発明者らの生体外実験において5日間の着用中に閉鎖性のままであった。ドレッシング上のコンタクト接着剤は皮膚、ガーゼ包装および管フランジに付着していた。この新しい実施形態では、被覆プロセス中に材料の各層の厚さがその機械的完全性を達成する限り、同じ厚さの材料からなるより多くの層を有することが好ましい。但し、これは、各層を被覆および積層する時間と対応する支出とのバランスが取れるものでなければならない。また、層間接着も着用中にそのままでなければならない。創傷ドレッシングのための多層液体テープ実施形態の製造は一般的なテープについて先に述べたものと同じである。この多層液体積層体はテープ産業において創傷ドレッシング以外の用途を有し、ここではピンホールは好ましくない。ピンホールは時間の経過と共に拡大して大きな裂け目となり得、従って、それらは理想的にはあらゆるテープ用途において回避されなければならない。コンタクト接着剤以外の層の層数の増加はピンホール問題を解決するために理想的である。拡大を食い止めるために追加される液体層/材料が必要となり得る場合には、これらの新しい層を材料に交互に入れるべきである。
【0090】
気密な皮膚ドレッシングを得るために、本閉鎖性ドレッシングは好ましくは液体シーラントを使用する。先に述べた液体層状ドレープ実施形態を使用しない場合、この液体シーラントを利用しなければならない。この液体シーラントは、皮膚または他のドレッシング部品に貼付すると素早く、さらには即座に、または効果的な程に即座に乾燥および硬化して材料の連続的な閉鎖性フィルムまたはシートにすることができる。乾燥および硬化プロセスは同時に行ってもよく、蒸発によって促進してもよく、硬化剤および/または促進剤を必要としてもよく、かつ/または硬化剤および/または促進剤により向上または制御してもよい。あらゆる追加の添加剤(例えば、硬化剤および促進剤)をシーラントとのその化学反応およびその速度に応じて、シーラント貼付プロセスの直前、間および/または後に添加してもよい。
【0091】
液体シーラントは、シールされることが意図されている部品に結合する。添加される接着剤または他のプライマー(例えば、英国ロンドンのSmith and Nephew社製のSkin−Prep)なしで結合強度を与えるファンデルワールス力の能力は、材料およびその厚さに基づく。理論上、剥離靭性(結合強度)は剥離エネルギーよりも大きくなければならず、剥離エネルギーは、材料の厚さ、材料における歪みの二乗および材料の弾性率に比例する。具体的には(その基準は微小歪み解析であるため、一次基準では)、薄膜の結合強度は上記方程式1に従わなければならない。従って、高弾性の薄膜は、所要の接着強度を低下させてファンデルワールス力の機能的適用性を高めるのに理想的な材料特性を示す。
【0092】
1種以上の成分を有するシリコーン系、ゴム系(天然のラテックスゴムなど)またはアクリル系接着剤などのさらなる接着剤を用いて所望の結合強度をもたらしてもよい(例えば、ユタ州ウェストジョーダンのWalker Tape社製のLiqui-Tapeシリコーン接着剤(防水))。この接着剤をその化学組成および最終的な混合特性に応じて、液体シーラントの下に塗布したり、その塗布前に液体シーラントと化学的に混合したりすることができる。シーラントの下に塗布する場合、シーラントの上塗り前に接着剤を粘着性にしなければならない場合がある(「セットタイムの適用」としても知られている)。ACMIによって安全性が保証されているペンシルベニア州イーストンのSmooth On社から入手可能なSkin Tite(登録商標)シリコーンなどの使用前に混合される速硬化性二液型シーラントがいくつかの状況では有用であり得、それを単独またはThi−vex(登録商標)増粘剤(これもSmooth On社から入手可能)などの増粘剤と混合して使用してもよい。高いファンデルワールス力による接着剤のような特性を有するポリマーシーラントまたは連続的な閉鎖性シートに結合する能力を有する他の材料が望ましい場合があり、この場合、さらなる接着剤は不要である。
【0093】
ラテックス、合成ゴムおよび低刺激性ラテックスなどのゴムポリマーは、ドレッシングと皮膚との界面および管とドレッシングとの界面の両方にとって所望の特性を有するポリマーの例である。例えば、カリフォルニア州サンノゼのEnvision Design社の子会社であるDeviant社製のDeviant液体ラテックスおよびペンシルバニア州ワーリントンのLiquid Latex Fashions社製の液体ラテックスファッションボディーペイント(Liquid Latex Fashions Body Paint)はいずれも、両ドレッシング界面においてドレッシングを封止することが実証された。ラテックスの乾燥および硬化時間は、噴霧化プロセスまたは飽和スポンジ技術を用いて液体を皮膚に塗布すること(これについては以下の節でさらに開示する)、ラテックスから蒸発する水の吸収を助けるアルコールを添加すること、および/または対流乾燥のためにシーラント全体にガスを流すことにより大きく減少する。大部分の用途では、硬化/乾燥時間は、http://www.liquidlatex.net/においてDeviant社が以前に述べている5〜10分から即座(最長で1分)まで減少した。
【0094】
好適なラテックス材料の例としては、ジョージア州ダルースのVystar社によって製造および販売されている天然ゴムラテックスのブランドであるVytex天然ゴムラテックス(NRL)が挙げられる。VytexはRevertex社マレーシアによって製造され、Centrotrade Minerals and Metals社によって流通されている。タンパク質試験から、Vytex社製NRLは典型的にHevea天然ゴムラテックスよりも90%少ない抗原タンパク質を有することが分かっている。従って、Vytexは曝露およびラテックス過敏症の発症が少ない。Vytexにはアンモニアレべルの異なる2種類の製品がある。アンモニアは安定化剤および防腐剤であり、いずれの機能もNPWT液体シーラントおよびドレープ部品に適しているが、アンモニアに代わる安定化剤の方が皮膚刺激が少ない場合もある。ボディーペイント用の液体ラテックスは典型的に現地研究で患者に塗布しても刺激を引き起こさなかったアンモニアを含有する。低アンモニア化合物であるVytex(NRL)は、実験室環境において清潔な無傷の皮膚に機能的な閉鎖性ドレープおよびシーラント成分を提供している。
【0095】
別の好適なHeveaラテックス材料は、アリゾナ州フェニックスのYulex社によって製造および販売されているFSC Heveaである。Yulex社は、この製品ではタンパク質を含む99.9%超の不純物が除去されていると主張している。アリゾナ州フェニックスのYulex社は、Heveaラテックスよりさらにより好ましいグアユールゴム(Parthenium argentatum)から低刺激性ラテックスも製造している。Yulex社のグアユールゴムのバイオラバーエマルションおよび固体は、従来のHeveaラテックス中に見られた感作抗原タンパク質を全く有さず、1型アレルギーを有する人々にとって安全な代替物と見なされている。Yulex社のバイオラバーエマルションは、パーソナルケア製品評議会(Personal Care Product Council)に登録されており、そのINCI名は、グアユールゴム樹皮抽出物(Parthenium argentatum Bark Extract)である。非アレルギー性材料選択肢を提供するために、これはNPWTドレッシングおよびシーラントにとって現時点で好ましい材料である。現在、Yulex社はアンモニアおよびアンモニア非含有選択肢を有している。Yulex社は、ロシアタンポポ(Russian Dandelion)を主成分とするエマルションも開発しており、これも非Heveaゴム選択肢として将来好ましいものとなり得る。
【0096】
ニトリルゴムおよびネオプレンなどの合成材料はアレルギーを誘発するタンパク質を有しない天然ゴムの代替物であるが、一般に弾性が乏しく、破断率およびウイルス侵入率のリスクが高まる恐れがある。従って、それらは一般に本発明に係るドレッシング用途の多くにとってあまり理想的ではないが、いくつかの状況、特に皮膚の上での硬化および乾燥時間が問題ではないドレープには好適な場合もある。室温加硫シリコーンならびに主成分および治療成分を含む二液型材料である特定のポリウレタンなどの他の多液型材料はいくつかの用途では許容可能な場合もある。
【0097】
多くのゴム系材料によって達成可能な極めて低い剛性は、ファンデルワールス力のみによりその結合性を増加させる。ゴムポリマーを用いて達成することができる高い弾性は、変形の大きな体の移動中に皮膚表面において達せされる高レベルの引張歪みに対応する。さらに、ゴムポリマーの材料特性は、あらゆる初期の界面クラックサイズおよび接着強度に応じて、圧縮歪みが加えられた際の曲がりやすさにも対応できる。望ましいシーラントは、時間の経過に伴う大きな変動および変形の大きなヒトの動作中に受ける皮膚表面歪みの表面積に対応し、本文献では、最大の大変形歪みは、引張時では約0.45、圧縮時では0.3であると示されている。ゴムの機械的性質は構造的完全性を達成するのに十分であるため、ファンデルワールス接着特性により貼付可能な閉鎖性シーラントが決まり、ポリマーに応じてさらなる接着剤が必要になる場合がある。
【0098】
液体シーラントは、その塗布後に界面において空気漏れ通路が存在しないように、塗布および硬化プロセス中に全ての接触表面に一致させることができる粘性および硬化特性(好ましくは最小の収縮を含む)を有していなければならない。ドレッシングと皮膚との界面において、シーラントは、標準的な平らな創傷ドレッシングを貼付した際に橋架されることが多い皮膚の折り目およびひだに適合しなければならない。全ての部品の界面におけるこれらの種類の橋架されたクラックは、液体シーラントを有しないシステム内への重要な空気漏れ源であることが多い。クラックが存在すると、加わる歪みが少なくても引張および圧縮時にクラックの拡大が生じるため、歪みの大きさが小さくても時間と共に空気漏れ通路が形成され得る。従って、全ての界面におけるあらゆる初期のクラックをなくすことが望ましい。ドレッシングと皮膚との界面において、体毛などの構造体は創傷ドレッシング内へのクラックの拡大および空気漏れの機会を作り出すことが多いため、ドレッシング貼付前に体毛を剃ることが多い。剃毛プロセスは毛包において外傷を生じさせ、かつ感染のリスクを高めるので、感染の観点から体毛を剃らなければならない状況は望ましくない。液体シーラントを用いて、これらの構造体を気密シーラント内に完全に封入することができるため、シーラントの下でクラックの拡大源とはならず、引張によるクラックの拡大に抵抗するためにはドレッシングの縁部におけるクラックを封止することが最も重要であるため、典型的にはシーラント塗布前にこれらを除去する必要はない。いくつかの構成では、ドレープの第1の表面にある接着剤は、体毛および皮膚凹部の周りを封止し、かつクラックの拡大を最小に抑えるのに十分な程に厚く、かつ/または流動性である。
【0099】
シーラントの厚さ、部品の数、創傷位置およびシーラントの粘度により、最適なシーラント塗布方法が決まる。液体シーラントは、接触表面を完全に濡らすことができる限り、非常に高い粘度から低い粘度までを有することができる。機械的に塗布する場合(例えば、ブラシ「塗装」塗布、ローラー塗布、スポンジ塗装/ダビング塗布、スキージまたは他のスクイージー型塗布、非粘着性カバーを装着した/装着していない手(すなわち指)での塗布など)、シーラントを人間工学的にあらゆる創傷位置に貼付可能にするために、重力による流出を回避する粘度が好ましい。すなわち、これは高めの粘度を意味し、低い粘度範囲において限られる。厚めの塗布は剪断応力によりさらに流出しやすいため、適用可能な粘度は塗布厚に依存する。
【0100】
ブラシ塗装は好ましい塗布方法ではなく、シーラントをブラシで塗布する場合、一定の厚さを達成することは難しい。その表面積にわたって厚さが大きく変動する場合、機械的性質および剥離エネルギーも大きく変動し、これにより閉鎖性ドレッシングの破損が生じることがある。ブラシ塗布には他の欠点もあり、シーラント内に気泡を取り込みやすいため、これがクラックの拡大のクラック源になる。また、非常に薄い被膜を形成して維持することは難しく、これが必要なファンデルワールス結合強度を著しく増加させ、それが最終的なドレッシングの剛性を増加させ、かつドレッシングが大きな組織歪みに適合する能力を減少させる。また、塗布厚が大きくなる程に流出しやすく、あらゆる創傷位置のために塗布可能なシーラントの粘度限界を低下させてしまう。
【0101】
ブラシ塗装の代替法は、スポンジ塗装/ダブリングである。飽和スポンジ技術を用いた場合にこれが好ましい方法であると判断された。塗布装置はスポンジ実施形態、好ましくは軟らかい添加剤非含有の高密度かつ細孔性の親水性発泡体である。ポリウレタン、ポリエステル、ラテックス、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などの発泡体の製造のために異なる材料を使用することができ、ラテックス非含有材料が好ましい。低粘度シーラントのために、圧縮されていない細孔径は、好ましくは少なくとも1インチ当たり15〜90個の細孔(ppi)であって、その大部分が小さめの細孔であり、より好ましくは全ての細孔が少なくとも90ppiである。好ましくは、発泡体密度は50kg/m
3超、より好ましくは80kg/m
3超である。スポンジは流体を吸収するために好ましくは実質的に開口したセル構造体からなり、濡れた状態で使用される。スポンジを準備するために、それに液体を吸収させる。好ましい実施形態では、その液体はスポンジを飽和させるのに十分な低粘度を有し(例えば、水または生理食塩水)、スポンジを完全に飽和させる。包装前にスポンジに流体を含浸させるか、適切な吸収のために十分な体積の流体を有する容器の中にスポンジを包装することにより、これをその包装中に行うことができる。この場合、包装物は使用まで十分な流体を連続的に保持するのに十分に気密(すなわち、最小の蒸発率)でなければならず、好ましくは、これは貯蔵寿命を引き延ばし、かつスポンジの潜在的な汚染を阻止するために気密である。予め流体で満たされたスポンジおよび/または包装により、飽和のために当該キット中に流体の別個の容器(および潜在的に吸収を支援するためのトレー)を有する必要性をなくし、あるいは介護者が飽和のために十分な流体(例えば、生理食塩水)および潜在的に吸収を支援するためのトレーを独立して用意する必要性をなくす。飽和を促進するために、スポンジを流体中で握ったり放したりしてもよい。予め流体で満たされた包装では、スポンジの包装物の開封前にこれを行ってもよい。流体を含まない包装では、別個のトレーのあらゆる必要性をなくすために、流体をスポンジの中に直接注入することができ、開封したらスポンジ包装物を吸収のための流体で満たすことができ、あるいはスポンジを容器の中または流れ続ける流体(すなわち、蛇口)の中に直接挿入することができる。
【0102】
スポンジを使用する前に、あらゆる過剰な飽和流体を絞り出さなければならない。使用のために、スポンジは湿っているが飽和されていないことが好ましい。これは、望ましくない飽和流体の液だれ、およびその特性を変化させる過剰な流体とシーラントとの混合を防止するためのものである。いくつかの実施形態では、飽和流体はシーラントの特性を高めてもよく、あるいは乾燥または硬化のために必要であってもよく、その場合、過剰な流体は望ましいものとなり得、除去する必要はない。スポンジ内部の流体は、スポンジ内へのシーラントの吸収を防止し、そのためシーラントはスポンジの表面に残ったままであり、ドレッシングおよび皮膚に容易に転写される。好ましい実施形態では、この飽和および湿らせるプロセスにより、乾燥したスポンジの体積と比べてスポンジの体積を拡大させる。
【0103】
スポンジを流体で満たすことには多くの利点がある。例えば、より多くのシーラントを皮膚およびドレッシングの縁部に転写することができ、スポンジ塗布装置上でのシーラントの乾燥および/または硬化を防止し、これにより長い貼付期間にわたってシーラントを皮膚およびドレッシングの縁部に転写するのを支援し、貼付プロセスにおいてより少ないシーラントが使用され、スポンジを滑らかな移動で皮膚およびドレッシングに押し付けることができるため、塗装またはダブリングなどの塗布方法によって滑らかで薄く、かつさらに均一な被膜を形成することができ、塗布装置は硬化および/または乾燥中の塗布されたシーラントに付着せず、かつ塗布装置はドレッシングのあらゆる粘着面に付着しない。これらの機能特性により、塗布装置は、エアブラシで吹き付けられたような仕上がりおよび塗装を作り出すダブリング/スパックリングなどの複数の塗布方法を使用することができ、この間にスポンジを使用して塗布面の上のシーラントの薄層を滑らかにすることができる。
【0104】
製造プロセスの柔軟性に基づき、スポンジを多くの異なる形状およびサイズで作製することができる。好ましい実施形態では、塗布装置の鋭い縁部がシール経路に沿ったシーラントのより厚い縁線(塗料ブラシで塗装する際に形成される縁線と同様)に当たるのを防止するために、スポンジは使用中にシール経路を横切る全ての縁部において丸みがある。滑らかなシーラント表面が形成されるように、この丸い縁部を封止される界面(すなわち、シール経路)に沿って使用する。創傷ドレッシングを塗布するための好ましい方法では、スポンジを化粧の塗布において「スティップリング」および「ツイスティング」と呼ばれる「跳ね」および「捻じり」動作で最初に使用する。これにより、あらゆる輪郭を埋めると共に流出のリスクを最小限に抑える薄層を塗布する。次いで、好ましい方法では、スポンジを使用して、シーラントの塗布線(すなわち、シール経路)に沿ってそれを軽く塗装することにより滑らかな仕上げを行う。多くの好ましい実施形態では、シーラントを滑らかにすることで1つの連続的な固体層が形成されるため、これによりシーラントの除去をより容易にする。シーラントの塗布された層を非常に薄くして、流出のリスクを最小限に抑えることができる。
【0105】
現在、化粧の塗布のために同様のスポンジが使用されている。これはエアブラシ塗布の代替法とみなされている。塗布仕上げはスポンジの孔サイズおよびその硬さによって決まる。但し、化粧の塗布では、その表面は平らにならない。化粧の塗布において人気のあるスポンジは、鋭い縁部や皮膚の異なる表面に一致させるための複数の輪郭を有しない3次元の涙滴に類似した楕円形状のビューティーブレンダー(Beautyblender)である。創傷ドレッシングの貼付の際に、シーラントの厚い縁部が塗布されないような楕円形状が理想的である。但し、製造コストを抑え続けるためには、平らなスポンジの涙滴形状(すなわち、2次元の涙滴形状)のスタンプが好ましい。この実施形態は、使用中に涙滴がシール経路に垂直なままである限り、シール経路を横切る鋭い縁部を有しない。化粧用スポンジ塗布装置のために行われるように、塗料ブラシのハンドルと同様のハンドルを塗布装置スポンジに追加してその人間工学性を高めてもよい。使い捨て部品であることが意図されているため、好ましい実施形態はハンドルのない手持ち式であり、このようにしてコストを抑えることが好ましい。また、本発明者らの使用者試験では、ハンドルは塗布時間または最終結果を向上させなかった。
【0106】
硬化剤、促進剤、対流乾燥剤および接着剤などの添加剤は、塗布前にシーラントと混合しない場合には別個の貼付方法によって塗布してもよい。それらの塗布方法は、ブラシ塗装、ローラー、スポンジ塗装/ダブリング、スキージまたは他のスクイージー型装置、非粘着性カバーを装着した/装着していない手(すなわち指)、噴霧などによる塗布であってもよい。これらの添加剤成分およびシーラントの塗布は複数の工程プロセスで行ってもよい。それらを保管し、同じまたは異なる貼付方法を用いて別個の容器から連続または並行して塗布してもよい。但し、それらを同じ容器本体から並行または連続して塗布してもよい。1つの例は、シーラント排出口、剪断流体排出口および促進剤排出口の3つの排出口が存在する並行噴霧プロセスである。これらの3つの成分を3つの排出口が相互作用することができるスプレーノズルにおいて噴霧化プロセス中に1つにまとめることができる。別の例は、シーラント(および考えられる促進剤)を遮断できるように、シーラント(および考えられる促進剤)の量を制御することができるスプレー装置であり、その後剪断ガスは対流乾燥ガスとなる。さらに別の例は、シーラントおよびさらなる成分を別々に含み、かつそれらが排出すると所望の量のシーラントおよび成分を排出口において混合するスクイージー装置である。この技術はミネソタ州セントポールの3M社製の3Mエポキシ混合ノズル(3M Epoxy Mixing Nozzle)と同様である。得られた混合物をスクイージー塗布装置を用いてドレッシングに直接塗布することができ、あるいは飽和スポンジ塗布方法などの別の方法と組み合わせることができ、その場合、混合物を最初にスポンジに直接移すか、別個の浸漬容器を用いてスポンジに移すか、あるいはドレッシングに直接塗布して最終作業のためにスポンジでさらに操作する。
【0107】
ゴムのような特性を有する各種ポリマーを所望のシーラント特性を有するものと判断した。所望のシール実施形態の厚さは連続層状積層プロセスにおいて構築することができる。最終的な材料が連続的な1層シーラントとして挙動するように、その層の間に形成される強力なファンデルワールス力または化学結合にいずれかによりそれ自体が強力な親和性を有する材料が望ましい。所望の厚さは強度のため、および所望の閉鎖特性を達成するために必要な最小の厚さであり、これは材料に依存する。この厚さは大部分の塗布プロセスにより確実かつ均一に達成することができる厚さよりも薄いことが多いが、噴霧および飽和スポンジ塗布方法は再現可能な望ましい結果を示した。実験室試験により、噴霧化プロセスは最も薄い機能的シーラント厚を達成するための方法を提供することが分かった。
【0108】
閉鎖性ドレッシングはNPWT以外で有利であり、かつ高度なNPWT機構と組み合わせると有利である。閉鎖特性のいくつかの証明されている利点が本明細書で強調されている。閉鎖特性は軟膏、粉末およびクリームなどの局所塗布される薬の浸透および吸収を高めることができ、これらを標準的な創傷ドレッシングおよびNPWTなどの治療法と組み合わせると有利であり得る。V.A.C.Instill治療ユニット(KCI社)は点滴療法をNPWTと組み合わせるように作られた。V.A.C.Instill文書によって定義されているように、点滴は、1)液状の局所溶液の導入および除去、ならびに2)厳密な洗浄技術により創傷を洗い流して清浄する能力の両方を含む。上記および他の点滴を目的としたドレッシングに関する介護者の主な不満は、点滴プロセス中、特に厳密な洗浄手順中に点滴は液体漏れすることが多く、それが連続した治療中に空気漏れをさらに誘発することである。本開示で開示されている閉鎖性シールおよびドレッシングは、発生するどんな漏れ問題も解決する。洗浄プロセスは、ドレッシングにおいてクラックを拡大させることにより漏れを誘導することが多く、これらのクラックをなくすことにより、本開示におけるシーラントおよびドレッシング技術は、点滴中の漏れの可能性および漏れの形成を著しく減少させる。本開示における管とドレッシングとの同じ接続方法を用いて、点滴流体の挿入および除去のために必要な出入口を本開示の閉鎖性ドレッシング実施形態に直接接続することができる。
【0109】
本開示の閉鎖性ドレッシングはNPWTシステムを念頭において開発されたが、それらを皮膚に対する閉鎖性(気密および水密としても知られている)、気密または水密が望ましいあらゆる用途のために使用することができる。従って、それらはNPWT以外の複数の分野で、より一般には皮膚シーラントおよびそれらの方法の分野において適用可能である。真に閉鎖性であるドレッシングはそれらが貼付される組織の領域の上に制御体積を作り出し、これは複数の用途にとって望ましい特徴であり、その多くが本出願文書に開示されている。
【0110】
他のドレッシングはこれまで(確実に)真に閉鎖性であることが証明されていないため、本開示で考察されている閉鎖性ドレッシングは制御体積を提供する最初の皮膚ドレッシングである。これは、決定論的結果を達成するために環境の完全な制御が必要な幹細胞療法などの、環境におけるあらゆる差に敏感な高度な治癒療法の強化に役立つであろう。特定の空気漏れが望ましい場合、その速度を高精度な弁によって制御体積になるように正確に制御することができる。これらの弁を本開示における同じ管とドレッシングとの接続方法を用いて、本開示の閉鎖性ドレッシング実施形態に接続することができる。特に大部分のドレッシングの空気漏れは時間の経過および体の移動と共に変動があるため、あらゆる創傷ドレッシング内への空気漏れ速度のための正確な事前決定方法は現在存在しない。さらに、皮膚刺激および感作の生体内急性毒性試験において真に閉鎖性であるドレッシングを使用してもよい。試験動物の毛を剃り、試験材料を皮膚に塗布して閉鎖性材料で包む。次いで皮膚を23時間後に曝露させ、発赤および浮腫について評価し、この評価をその後48時間繰り返す。
【0111】
図1は、本発明に係る液体シーラントの塗布前の第1および第2の保護ライナー28および30と共にドレープ22、新規なフランジ26、フランジと管とのコネクター401、および管24を含むドレッシング組立体20の概略拡大斜視図である。ドレープ22および第2のライナー30は、フランジ26を挿入可能な穴32および34をそれぞれ画定している。複数の実験により、予め塗布されたドレープ接着剤のみを用いてフランジ26をドレープ22に取り付けることにより閉鎖性シールが可能であることが証明された。このシールは創傷液の存在下で治療期間にわたって機能的である。但し、この場合の接着剤の選択は非常に重要であり、単に冗長性のためであれば、さらなる接着剤および/またはシーラントが望ましいことが多い。
【0112】
多くの用途では、例えば、フランジ足部56が創傷皮膚の周囲に重なる場合(これは小さい創傷または術創を治療する場合に生じやすい)、
図2のその第1の表面402に接着剤を有することが理想的である。好ましい実施形態では、創傷皮膚の周囲と接触し得る表面402全体に接着剤を塗布する。製造または貼付中にこの表面402に接着剤を塗布することができ、追加または代わりとして、貼付中にフランジを付着させなければならない表面に接着剤を塗布することができる。多くの好ましい実施形態では、これは皮膚コンタクト接着剤である。これを液体接着剤の形態で塗布することができ、あるいは、
図2に示す好ましい実施形態では、この接着剤を接着剤パッチ403部品により塗布してもよい。このパッチ部品403は、接着剤の単層あるいは多層の積層および/または被覆された実施形態の形態であってもよい。接着剤パッチ403は、好ましくはパッチの製造中に塗布された接着剤によりフランジ表面402に付着し、かつ反対側404に所望のコンタクト接着剤(例えば、皮膚コンタクト接着剤)を有する。好ましい一実施形態では、接着剤パッチ403の外半径はフランジ足部56の外半径よりも大きい。この場合、接着剤パッチも組立中にドレープ22に付着する。これはフランジとドレッシングとの界面(すなわち、管とドレッシングとの界面の一部)において信頼性のある気密シールを形成するのを支援し、穴32からのフランジの引き抜き力に対する抵抗性を高める。
【0113】
好ましい一実施形態では、パッチ403は着用中に破損しないような十分に高い凝集力を有し、パッチをフランジの縁部(すなわち、フランジ26とドレープ22との間)に取り付ける材料の弾性率において大きな差が存在する場合があり、これにより破損の可能性が高まることがある。パッチ403がドレープ22まで延在している場合、ドレープとドレープおよびパッチ積層体との間での剥離エネルギー、曲げ剛性および厚さの差における変化を最小限に抑えるために、ドレープ22と同じかそれよりも低い弾性率を有し、かつ薄い形状を有することが好ましい。好ましい実施形態では、パッチ403がドレープ22と接触する縁部において創傷皮膚の周囲まで連続的に付着するために、パッチの縁部は十分に薄いか先細りになっている。
【0114】
好ましい一実施形態では、接着剤パッチ403の穴405の直径はフランジ足部56の最小径よりも大きく、従って、接着剤パッチはその内径において重なりがない状態でフランジに完全に付着される。好ましい実施形態では、製造中に閉鎖性になるように接着剤パッチが貼付されるが、使用者が貼付する方法も可能である。
【0115】
図3Aおよび
図3Bは、
図1および
図2の新規な対称フランジ26および管コネクター401が対称コネクター組立体406(
図4Aおよび
図4B)を形成するように接続される様子を示す。
図3Bは
図3Aの対称平面の断面図である。好ましい実施形態では、この界面においてさらなる接着剤またはシーラントを使用しないが、いくつかの実施形態では、さらなる接着剤またはシーラントを塗布して部品を互いに結合してもよい。管コネクター401を新規な対称フランジ26に接続する場合、接続を支援し、かつ部品間の摩擦を減らすために、部品の一方または両方を最初にアルコールなどで濡らしてもよい。
図3Aおよび
図4Aに示すように、さらなる組立工程中にバーブを取り付けることができる。但し、材料および設計に応じて多くの他のコネクター実施形態および方法を使用することができる。これらのコネクターのフランジおよび管への取り付け方法としては、オーバーモールド、超音波溶接、溶剤接着、赤外線溶接および接着結合が挙げられる。1つの接着剤候補は、上述したWalker Tape社製のリキュイテープ接着剤などのシリコーン接着剤である。気密な取り付けのために、管をフランジに圧縮嵌めすることも可能である。いくつかの構成では、浸漬、成形または噴霧プロセスによりフランジ26を管24の上に直接製造する。管24とフランジスリーブ領域52との接合部および/または管24とコネクター401との接合部および/または管コネクター401とフランジスリーブ領域52との接合部において生じ得る流体漏れをさらに塞ぐために、それらの接合部に液体シーラントを塗布することができる。
【0116】
回転領域54は、この構成において柔軟な玉継手として機能する。標準的なバーブと管との接続(
図5および
図6)により管24をバーブ401に取り付けたら、管24を矢印72(
図7A)の方向に操作して、
図7Bに示すように所望の横向きにすることができる。好ましい実施形態では、フランジ26はフランジ26の設計において「閉塞防止機構」を含む。フランジ設計は、フランジ/管の閉塞に抵抗するためにその中に構築された閉塞防止機構を有する。好ましい一実施形態では、閉塞防止機構は
図3Bおよび
図8に示すリブ付きパターン409である。操作中、リブ409は流体経路が閉塞されるのを防止する。好ましい一実施形態では、「丘陵部」410(
図8)は「谷部」411(
図8)よりも幅が小さく、従ってリブが噛み合っても全体の閉塞は物理的に不可能であり、幾何学的形状の不一致を保証するためにはリブ内のあらゆる先細り部分を補わなければならない。この柔軟な向きにある場合、フランジ内の閉塞防止機構(例えば、リブ409)の上部にある開口部は、表面に接触して閉塞することができる平面に連続的な縁部を有していてはならず、かつ/またはそれに接触して閉塞することができるあらゆる機構の幅よりも大きい直径を有していなければならない。
図4Bに示すように、丘陵部の尖端の幅は、バーブ412の遠位端における流体経路の直径よりも小さく、あらゆる潜在的な閉塞をさらに防止する。好ましい実施形態では、閉塞防止機構はリブ付きパターン409であるが、米国特許第9,173,777号の
図2および
図3に示すように螺旋状の管端をフランジ部品の下側にある突起部(管自体とは別個)として射出成形することができ、フランジ部品の下側にある突起部(管自体とは別個)として射出成形、付着または別の方法により接続された米国特許第9,173,777号の
図4にあるような他の閉塞防止機構を実現することができる。これらの特徴を個々または組み合わせて使用することができる。
【0117】
患者が着用している間、フランジ足部56は皮膚表面に平行なままであることが好ましい。これにより、フランジ足部表面402は折り重ならず、流体経路を遮断して潜在的に閉塞させることはない。同心リブ413(
図8)はフランジ足部56の平面における剛性を高め、フランジ足部56が折り重なるのを防止することができる。リブ内の切れ目414(
図8)により、フランジ足部56を患者の快適さのために柔軟なままにすることができるが、フランジ足部表面402が折り重なった場合に閉塞を引き起こし得るフランジのあらゆる生じ得る折り目の上にリブが存在するようにリブは互い違いに配置されている。
【0118】
フランジは、その外縁部57の厚さが最小になるように表面402の上で先細りになっている。この先細り部分415は、接着剤パッチ403がその上から封止しなければならない縁部57における段差を最小にするためのものである。好ましい実施形態では、接着剤パッチ403はどんな切れ目もなくフランジおよびドレープに連続的に付着されている。段階的な先細り部分415により、組立プロセス中の完全な濡れの達成がより容易になる。
【0119】
フランジ26が、それ自体が親和性を有する材料で完全に構築されているかそのような材料で被覆されている構成では、スリーブ領域52は、
図7Bに示すようにそれ自体に接して折り曲げられた場合に領域56が露出される程度まで回転領域54および接着領域56に自己付着することができる。フランジ26の外面を形成する材料がドレープ22の材料、特にラテックス化合物または他の粘着性化合物を含有する材料との親和性を有する場合、スリーブ領域52の外面は少なくともある程度までドレープ22にも付着し、管24の表面に塗布されたラテックス系材料がこの付着をさらに高める。管24を
図7Bに示すような固定された向きに固定することは、患者が長期間にわたって管を付けたまま横たわっていることを回避したり創傷の周りの領域が傷つけられることを回避したりするように管を配置することができるため、寝たきりまたは動きの少ない患者にとって特に有利であり得る。管が移動可能なままである他の状況では、回転領域54が柔軟なままであり、かつ長期間にわたって1つの位置で管を付けたまま横たわることでその組織が悪化しないように管を監視して頻繁に移動させることができるため、管を容易に再配置することができる。特に活発な患者では、患者または医療従事者によって管24を定期的に再配置することができる。
【0120】
図9および
図10は、本発明に係るドレッシングを製造するために上部ライナー30によって覆われているドレープ22を示す。ドレープ22は2ミクロン〜0.4mmの範囲の厚さを有する(特に皮膚に貼付される部分)ことが好ましく、創傷の上に位置する中央部におけるより大きな厚さは閉鎖にとってあまり重要ではない。いくつかの構成では、皮膚コンタクト接着剤が
図9および
図10に示すように上向きの表面に予め塗布されており、使用中に皮膚と接触して配置され、他の構成では、貯蔵および取り扱いのために、
図9の矢印81によって示されるようにドレープ22の反対側にもライナー30によって覆われるように接着剤が配置されている。接着剤は、いくつかの構成では均一なコーティングとして、他の構成では同心円または他の非均一なパターンとして塗布される。好ましくは、接着剤に全く触れることなくドレッシングの取り扱いを容易にし、かつ患者に配置した後にライナー30をドレープ22から容易に除去することができるように、ライナー30はその周囲の周りにドレープ22を超えて延在する延長部82を有する。いくつかの実施形態では、延長部82はドレープ22の全ての側面よりも小さく延在しており、この場合、好ましい実施形態では、ドレープ22の少なくとも2つの対向する側面に延長部がある。
【0121】
図11は、
図10のドレッシングの両方の層に開けられた穴32を示す。
【0122】
図12および
図13は、予め塗布された接着剤を利用して、フランジ26の縁部57までフランジ足部56の第2の側面にある接着剤領域416(
図6および
図12)がドレープ22に対して封止された状態で、管組立体27が
図11のドレッシングに挿入(矢印90)される様子を示す。所望であればさらなる接着剤またはシーラントを縁部57の周りに追加するか、領域416またはドレープ22に予め塗布することができる。
【0123】
図14Aおよび
図14Bは、フランジの第1の表面402(
図8)、フランジの縁部57およびドレープ22上の張出領域417に貼付される接着剤パッチ403を示す。これは、フランジ26をドレープ22に閉鎖的にさらに固定し、着用中に大きな引張力が管24に加えられた場合にフランジ26が穴32(
図11)から抜け出るのをさらに防止する。
図14Aに示すように、一実施形態では、接着剤パッチ403は同心リブ413を覆っていない。リブ413が接着剤パッチ403の貼付中に上から封止することが難しい場合、あるいは創傷パッキング材の上のさらなる剪断抵抗などのリブ413の上で封止しないことに利点がある場合に、これを行ってもよい。好ましい実施形態では、接着剤パッチの内径405は、重なりを有さずにフランジ足部領域56の内径に可能な限り近い。これにより、浸軟を防ぐために皮膚コンタクト接着剤で創縁全体がドレッシングに対して封止されるという望ましい特性により、より小さい創傷を治療することができる。創縁全体を封止することができない場合、その領域を1枚のフィルム粘着性ドレッシングなどのさらなる皮膚保護剤で、あるいはさらなる皮膚コンタクト接着剤を塗布することにより保護することが望ましい。
図14Bは、フランジが同心リブ413を有しておらず、かつ内径405がリブ409との重なりを有さずにフランジ足部領域56の内径と同じであるドレッシング組立体を示す。これは、着用中に生じ得る閉鎖性の折り重なりを減らすために表面402にリブまたは他の機構が不要であるフランジ材料または設計が使用される場合に好ましい実施形態である。表面402にその機構が存在する場合、これらの機構を覆うような接着剤パッチ403は望ましくない場合がある。
【0124】
図15は、
図14Bのドレッシング20に追加される保護ライナー28を示す。保護ライナー28は、
図16および
図17に示すようにライナー28が除去されるまで、予め塗布されている場合には皮膚コンタクト接着剤を保護する。
図16は、例えば角108を引いて予め塗布された接着剤を有するドレープ22を露出させることにより、ライナー28が矢印106によって示されるように除去されている状態の
図14Bのドレッシング20の下側の斜視図である。保護ライナー28は、使用者によって皮膚コンタクト接着剤から容易に除去可能なものでなければならない。
図16に示す一構成では、ライナー28はライナー30の延長領域82の上にあるドレープ22を超えて延在している。
【0125】
図17に示す一実施形態では、ライナー28はドレープ22の外側端との重なりさえ全くない状態である。
図17に示す好ましい実施形態では、使用者がライナー28を皮膚コンタクト接着剤から容易に除去するために、ライナー28は、プラウ折り418設計などの分割された底部ライナーを有する。プラウ折り418により、
図18Aおよび
図18Bに示すようにライナー28を好ましくはドレープ22の外側縁部の中心の上から、あるいはドレープ22の縁部がないドレープ22または接着剤パッチ403の接着剤領域の上から除去することができる。このようにライナー28(
図18Aおよび
図18B)を除去することは好ましく、その理由は、(1)
図16に示すようにドレープ22の縁部に垂直に、かつ/または角からそれを引き剥がして下側の保護ライナー28を除去する際にドレープを上側保護ライナー30から持ち上げやすい場合があり、(2)下側保護ライナー28を接着剤パッチ403の内側または外側縁部に垂直に引き剥がしてそれを除去する際にドレープをフランジ26から持ち上げやすい場合があり、かつ(3)ライナー28が分割されている場合に、使用者はライナー28の隣接する部分をドレープ22から引き剥く際にライナーの固定部に下方の力を加えることができ、この下方の力によりドレープを上部ライナー30に付着されたままにするのを支援することができるからである。
【0126】
分割されたライナーの別の実施形態が
図19に示されている。これは、穿孔または切り込み419(
図19)のいずれかを有する型抜きプロセス中のキスカットにより製造プロセスをより容易にすることができる。この実施形態を用いると、ライナー28は、除去のためにライナーを把持する延長領域82(
図16)を提供するために少なくとも穿孔または切り込みのある片側においてドレープ22を超えて延在することができ、あるいは
図19に示すように、ライナーをドレープと同じサイズにし、かつドレープと位置合わせすることができる。本実施形態では、製造プロセスにおいてライナーをドレープと共にスタンピングすることができる。把持するためのライナー張出部または延長部82がない場合、把持するための領域を形成するために、穿孔または切り込み419に沿ってドレッシング組立体を曲げて、穿孔または切り込み419でそれをドレープ22から持ち上げるか、あるいは除去のためにライナー28に付着させることができる別個の取り扱いタブを用いてライナーを持ち上げることができる。分割されたライナーは2つの目的を果たす。すなわち、(1)フランジ26のドレープ22の中心穴32への挿入、およびライナー28をドレープ22から完全に除去せずに行う接着剤パッチ403の貼付のうちの少なくとも1つのためにライナーを部分的に剥ぎ取り、次いで、フランジ26の挿入および/またはパッチ403の貼付の後にライナー28をその元の位置に戻すことができること、および(2)底部ライナーを除去する際にドレープが上部ライナーから剥がれる可能性を最小限に抑えるように底部ライナーをドレープから剥がす方法を提供することである。
【0127】
上部ライナー30における機構は使用者がドレッシングを貼付するのを支援してもよい。ドレッシングを曲線のある表面に貼付する際、その曲線に合わせ、かつドレープを創傷皮膚の周囲に完全に付着させるためにドレープ内に折り目が必要になることがある。これらの折り目は典型的にドレープの外縁部から管24に向かうものであり、好ましくは上部ライナー30の除去の前に折り上げられる。この状況では、好ましい貼付方法は数個の大きな折り目を作ることにより折り目の数を最小限に抑えることである。好ましくは、管24の周囲の周りで実質的に等しく分割された4つ以下の折り目が存在する。ドレープを皮膚の表面に付着した際にこれらの折り目は折り上げられて「T字形」をなす。これらの折り目の折り上げを支援するために、上部保護ライナー30は、折り目の折り上げを支援するための好ましい折り目線(すなわち、「T字形」の底)に沿ってライナー30の曲げ剛性を弱める特定の機構222、224、420および421(
図20)(例えば、貫通性の穿孔、非貫通性の穿孔および窪み)を有していてもよい。折り上げプロセスおよび折り上げ位置は、これらの新しい上部ライナー機構によってガイドされる。理想的には、これらの機構は、段ボール箱の折り上げを支援するために使用される折り目線の窪みと同じ機能を果たす。これは本発明者による米国出願第13/745,690号(現在は米国特許第9,173,777号)に記載されている折り上げ技術に相当し、従って、これらの機構は、好ましくは上部ライナー30内の指示線222および224に沿って存在する。ドレッシングの貼付中に、ドレッシングの縁部を超える折り目のあらゆる張出部が皮膚に付着するか切り取ることができる場合、これらの折り上げ機構は指示線222および224以外の位置(例えば、420および421)においても好ましいものとなり得る。なお、製造目的のために、これらの機構はライナーを横切ってドレープの縁部まで全体に延在する必要はなく、例えば、ライナーの縁部の周りにどんな機構も有しない幅の狭い境界が存在してもよい。
【0128】
創傷の上にドレープ22を貼付した後、上部ライナー30を除去しなければならない。ドレープの縁部を保護するために、ドレープから剥がされる底部ライナー28と同様に、上部ライナーをドレープ22の外側縁部の中心から引き剥がすことが好ましく、ここではドレープ22の縁部を皮膚の上で支持するために、除去されているライナーの一部に隣接するライナーを押し下げることができる。様々な有効な機構により、使用者がドレープ22の縁部の上でライナー30を分割するのを支援することができる。紙などのライナー30の材料が容易に裂かれる場合、あらゆる位置で使用者が手で分割することができる。
図21Aおよび
図21Bに示す好ましい実施形態では、ライナーを手で裂くのを容易にするために、ライナー30の縁部は鋸歯状(424)になっている。別の実施形態では、矢印425aによって表されている組立後に
図22の右側に矢印106によって示されているように、上部の折り目(
図20)を支援するために使用される機構を使用してドレープ22の縁部の上でライナー422aを裂くのを支援することもできる。
図22の左側に示されているようにライナー422aはこの構成では穴34aを有する。この場合、ドレッシングの縁部に沿った様々な位置に引裂機構を提供するために、指示線222および224以外のさらなる機構420および421(
図20)が好ましい。
【0129】
図23に示すように、上部ライナー機構は、上部ライナー422bをフランジからドレープ22の外側縁部まで容易に引き剥がす能力を提供することもできる。上記のように上部ライナーをドレープ22の外側縁部からフランジ26まで引き剥がすことでドレープ22の外側端が皮膚から持ち上げられるリスクが高まる場合に、これは好ましい。ドレープの縁部が皮膚よりも上部ライナーに対してより強力な親和性を有する場合、および/またはドレッシングを貼付する人が偶発的にドレープの縁部にある接着剤に手が触れて、その粘着性が低下した場合にこのようなことが生じ得る。
図23におけるこれらの上部ライナー機構では、フランジの近くのライナーはドレープを破壊することなく使用者によって容易に把持されることが好ましい。このために、別個の取り扱いタブのような追加の機構を加えることができる。但し、好ましい実施形態では、矢印425b(
図23)によって表されている組立中に、フランジを穿孔機構の交差部分に押し通し、これにより使用者が把持するためのフランジの周りの非付着性ライナー部426を作り出す。穿孔222、224、420および421(
図20)においてライナーを裂くことにより各部分を別々に除去することができる。例えば、フランジにあるドレープの縁部がフランジよりも上部ライナーに対してより強力な親和性を有する場合に、上部ライナーをフランジからドレープの縁部まで引き剥がすのはライナーの好ましい除去方法ではない場合がある。この場合、他の除去方法を検討すべきである。
【0130】
上部保護ライナー30を除去する場合、上部の折り目は、ドレープの上にある接着剤でドレープ22の表面に付着されている。好ましくは、折り目はドレープの上面に個々の三角形を形成している。次いで、折り目を押して平らにし、ドレープの表面に完全に付着させる。ドレープの縁部および上部の折り目の全てを先に詳述したシーラントの使用の有無を問わない飽和スポンジ技術により湿ったスポンジで押し付けることで、確実に全ての縁部が「優しく」(スポンジの柔らかさにより)平らに押圧される。この押圧プロセス中に、皮膚接着剤および外側接着剤(適切な厚さおよび粘度を有する)は、機械的に活性化されたシーラントのようにあらゆる空気路を封止する。これらの接着剤は湿ったスポンジに付着しない。湿ったスポンジを使用して、シーラントの塗布前にドレープ22の縁部、上部の折り目およびドレープのあらゆる他の領域を押し付けてもよい。
【0131】
ドレープを創傷の上に付着させたら、
図24、
図25および
図26のドレープ22の1つの縁部427の上に示されているように、少なくともドレープの縁部およびあらゆる上部の折り目の縁部にシーラントを塗布する。シーラントは、標準的な平らな創傷ドレッシングを貼付した場合に橋架されることが多い皮膚の折り目およびひだに一致して封止するものでなければならない。これらのクラックは、適切な濡れ特性を有する液体シーラントが使用されない場合に、システム内への重要な空気漏れ源となる。適切な濡れ特性は、液体流出をなくし、かつ塗装プロセスまたはより均一な薄膜を達成することができる噴霧化プロセスによる液体の噴霧により、液体シーラントをその液状で皮膚およびドレッシングに直接塗布することにより達成される。好ましい一実施形態では、シーラント塗布装置は、使用中にシール経路を横切るあらゆる縁部の上で丸く転がされる飽和スポンジである。創傷ドレッシングの貼付の際に、シーラントの厚い縁部が塗布されないような楕円形状のスポンジ428(
図24)が理想的である。また、楕円形状は使用中に皮膚の表面の曲線に一致することができる様々な輪郭を提供する。但し、製造コストを低く抑えるために、平らなスポンジ429の涙滴形状のスタンプ(
図25)が好ましい(すなわち、2次元の涙滴)。この実施形態は、
図25に示すように涙滴スポンジ429が使用中にシール経路に垂直なままである限り、シール経路を横切る鋭い縁部を有しない。コストをさらに減らすために、必要であれば丸い縁部430を有しないスポンジ(
図26)を使用することができ、好ましくは、これは台形状の標準的なサイズの化粧用スポンジ430である。これにより標準的な工具を使用することができ、スタンピングプロセス中の無駄をなくす。理想的ではないが、実験中に丸い縁部の有無を問わず同様の結果を達成することができることが分かったが、丸い縁部430を有しないスポンジはドレープ22の縁部の上で形成されるあらゆる縁線を平らにする方法について学習曲線を有していた。飽和スポンジ塗布装置の塗布幅431(
図24、
図25および
図26)の幅は、ドレープ22の縁部および上部の折り目の縁部の上で中央に置かれるシーラントの2〜3cmの所望の幅であることが好ましい。
【0132】
シーラントの塗布のために、多くの塗布実施形態および方法が可能である。塗装塗布を含む機械式塗布では、塗布装置実施形態は、「広げる」ように塗料を塗布するためのブラシ、ローラー、スポンジ、へらまたは他の同様の実施形態であってもよい。シーラントの塗布装置への連続供給のために、これらの塗布装置を液体シーラントの容器(好ましくは詰め替え可能)に取り付けることができ、これを重力供給(受動制御または使用者制御)してもよく、あるいは塗布装置をシーラントの容器に浸漬することにより塗布装置をシーラント共に準備してもよい。塗装は液体ドレッシングには好ましい塗布方法ではないが、その大きな剛性および厚さならびに幾何学的形状の不一致により、高粘性シーラント材料を使用して、パッキング材と創縁との間、その皮膚界面における親水コロイドの潜在的に高い隆起、または親水コロイドドレッシング内の大きなひだ、間隙および折り目などの大きな間隙に広げる場合に好ましい場合もある。
【0133】
噴霧塗布では、剪断プロセスによりシーラントを霧状にするための装置は、外部加圧ガス供給を有する詰め替え可能なスプレーガンまたはエアブラシであってもよく、あるいは、この機能を再充填可能かつ詰め替え可能にすることができる小型の手持ち式スプレー缶に組み込むことができる。各実施形態は、皮膚の上に薄膜の連続層を形成するように、シーラントを剪断するために必要なガスの圧力、速度および体積流量の設計特有の筐体を有する。その操作が筐体の外である場合、スプレーの液滴は大き過ぎる場合があり、連続層として噴霧するのではなく皮膚の上に激しく打ち付けたり、ガスが流体開口部からの流体を剪断しなかったりする。機能的な実施形態では、液体シーラントはノズルの中央開口部の中に重力供給され、加圧ガスがシーラントノズル開口部の周りの周囲リングを通るシーラントを剪断する。一方の流体または両方の流体のために複数のノズルが存在していてもよい。特に、スプレーパターンは、液体シーラントノズルを横切って異なる剪断方向に向けられる複数のガス排出口からのシーラントの剪断により制御してもよい。手持ち式装置では、高圧の液体二酸化炭素カートリッジなどの小型のガスシリンダーから加圧ガスを発生させてもよい。噴霧装置は充填されるガスキャニスターを作動させる際に介護者が充填してもよい。
【0134】
ドレッシング(含まれていればシーラントおよび管を含む)を創傷の上に貼付すると、創傷ドレッシングはその外面(上面)において粘着性であることが多い。これは、さらなる接着剤の存在し得る層を含むドレープの外面の材料、およびさらなる接着剤を含む塗布されるシーラントの材料によるものである。従って、ドレッシングの貼付を完了した後、それを外面において非粘着性にするために、長期間の着用のためにシーラントを含むドレッシングの上部にカバーを貼付することが好ましい。これは、限定されるものではないが、テープ、医療用ラップ(例えば、ミネソタ州セントポールの3M社製のACE包帯)、粘着性フィルム、非粘着性フィルム、粉末、塗料またはこれらの材料の組み合わせなどの多くの実施形態の形態であってもよい。好ましい実施形態では、カバーは、耐久性問題を引き起こすようなドレープの機能特性を変化させない。例えば、カバーはドレッシング部品の剛性を着用中に剥離のリスクを引き起こすレベルまで増加させるものであってはならない。従って、好ましい実施形態では、滑石粉末の薄い被膜を使用して外面を覆い、ドレッシングの機械的性質における変化を最小限に抑える。滑石粉末はドレッシングの上面におけるあらゆる望ましくないタックを排除することができ、かつ有利な特性を加えることができる。例えば、それは着用中にドレッシングの上面における摩擦を減らすことができ、それにより、皮膚コンタクト接着剤が耐えなければならない剪断力を減少させることができる。介護者がさらなる材料を用意する必要がないように、この粉末は理想的には当該キットに含まれている。創傷ドレッシングを覆うのに十分な粉末が提供されなければならない。
【0135】
粉末を塗布する場合、重力により上を向いていない表面に手で粉末を塗布するのは難しい。手で塗布すると、粉末が創傷ドレッシングの下の表面に落ちるため、多くの粉末を無駄にしやすい。従って、この問題を克服する粉末容器を提供してもよい。一実施形態は、Barber滑石散粉器(例えば、英国カーディフのBarber Blades社製の滑石散粉器)と同様の
図27に示すような散粉器である。散粉器は手で何度も圧搾することができる可撓性材料432からなる。この部品432を粉末で満たす。粉末はキャップ434の穴433から排出する。これらの穴433は散粉器から(432を絞ることにより)十分な空気を押し出すのに十分な程に小さく、粉末は霧状の粉末として穴433から排出し、これをあらゆる方向に噴霧することができる。理想的には、この散粉器は当該キットにおいて提供される粉末を貯蔵し、使い捨てである。除去可能ライナー435(
図28)を使用して輸送中に散粉器の穴を塞いでもよく、使用時にこれを除去して(436)(
図28)散粉器を作動させてもよい。
【0136】
粉末容器のための好ましい特性は、安価かつ使い捨てであり、好ましくは「吹き付け」により粉末を散布することができることである。一実施形態は、多くのサイズおよび様式で市販されており(例えば、英国ノーフォークのRaepak社製の粉末スプレーボトル)、かつ典型的にはスプレーポンプによって作動されるプラスチック製粉末スプレーボトルである。別の好ましい実施形態は、穴の開いた蓋を有する圧搾可能な容器であり、さらなる例が
図29および
図30に示されている。
図29に分解図として示されている一実施形態は、ポリマー、紙および/またはアルミニウム箔などの薄い金属製で作製することができる穴の開いた蓋437(好ましくはフィルム)を有する1回限りのゼリーパック(例えば、オハイオ州オービルにあるSmucker’sの1回限りの容器(Smucker's Single Serving))と同様である。好ましくは、容器438(
図29)は432(
図27)と機能上類似しており、吹き付け機能のために何度も圧縮することができる。
図30に分解図として示されている別の実施形態は、ポリマー、紙および/またはアルミニウム箔などの薄い金属で作製することができ、かつ接着剤で取り付けることができるフィルムなど、またはポリマーで作製することができ、かつねじ山または屈曲部などの機械的取り付け方法で取り付けることができる射出成形されたキャップなどの薄い穴の開いた蓋439を有する粉末分注装置ボトル(例えば、プラスチック製ボトル、ニューヨーク州ウォーターヴリートのSKS Bottle&Packaging社製のWhite Twist Top Sifter Capを有するWhite HDPE Powder Style)である。好ましくは、容器440は432(
図27)と機能上類似しており、吹き付け機能のために何度も圧縮することができる。穴機構433は、使用者が使用前に蓋に穴を開けることが期待されている場合、初期の包装では不要である。
図31に分解図として示されている別の好ましい実施形態は、
図31に示すように好ましくは粉末を散布するための穴433の開いた領域を有する砂糖袋の実施形態と同様の粉末袋441を含む。粉末吹き付け機能を達成するために、この袋を片方の手で保持し、かつドレッシングの上で粉末袋に垂直に保持された他方の手で叩くことができ、あるいは、その穴をドレッシングに向けて保持しながらこの袋を指で軽く叩くことができる。
【0137】
NPWTのためにドレッシングと皮膚との界面および管とドレッシングとの界面を封止したら(ドレッシングの貼付中またはその製造中のいずれか)、介護者は管を真空源に取り付けなければならない。好ましい実施形態では、真空室/回収キャニスターへのキャップは、管コネクター、入口逆止弁、空気抜き弁、空気抜き弁のためのキャップ/栓、封止面、シール部品およびねじ山のうちの少なくとも1つと一体化されている。
図32Aおよび
図32Bは、キャップおよびその機構の好ましい実施形態452を示す。これらの機構は異なる目的を果たす。管コネクター442は、管をポンプ/回収キャニスターに気密に接続する方法を提供する。好ましい実施形態では、管コネクター442は、射出成形されたプラスチックキャップに一体化されたバーブ管コネクター442である。これにより、治療法を施術する際に介護者が容易に手で組み立てることができる。着用中にバーブが折れるリスクを低下させる必要がある場合、シールド443がバーブのための構造的保護を与えるものであってもよいが、成形性問題によりキャップが射出成形されている場合にはこのシールドは好ましくない。入口逆止弁444はその好ましい実施形態においてダックビル弁444である。これにより傷滲出液を回収キャニスターに入れることができるが、滲出液の創腔への逆流は防止される。
【0138】
機械式ポンプでは、使用者がポンプを圧縮した際に、キャップをポンプから取り外すことを必要とすることなく空気抜き弁445によりポンプを排気することができる。この弁は騒音のないダックビル弁445、クロススリット弁、ボール弁またはアンブレラ弁であり、多くのダックビル弁は使用実験中に不快な騒音を有していたため、騒音が問題でなければ、ポンプのキャップ設計に応じてクロススリット弁またはアンブレラ弁が好ましい。好ましい実施形態では、この空気抜き弁445は治療中に空気抜き弁445を覆わなければならないキャップまたは栓446(「カバー」)を有する。このカバー446により、日常の着用中に滲出液が偶発的に回収キャニスターから排液されるのを防止する。これは、時間をかけて微粒子が空気抜き弁445に取り込まれる場合などに空気抜き弁445がシステム内で起こし得るあらゆる空気漏れも防止する。好ましい実施形態では、このカバー446は誤配置または紛失しないように、ポンプのキャップに繋留(447)されている。入口弁444および/または出口弁445は、圧縮板448によって適切な位置に閉鎖的に保持されている。圧縮板448は、スナップフィットによりポンプ/回収キャニスターのキャップに固定される。この板は弁との位置合わせを維持するために切り欠き449を有する。好ましい実施形態では、ポンプ/回収キャニスターのキャップはねじ山450によりポンプ/回収キャニスターの上に螺合する。これにより、治療中に滲出液を容易に空にしてポンプをリセットすることができる。キャップはポンプ/回収キャニスターに気密に適用しなければならない。気密なねじ山450または角度圧縮嵌め部を有するルアーの先細り部分451のような表面などの封止面を用いてこれを行うことができ、あるいは、ねじ山が堅く締められている場合にはキャップとポンプ/回収キャニスターとの間で圧縮されるゴムOリングなどの別個のシール部品を用いてそれを達成することができる。ポンプおよび回収キャニスターが別個の部品である場合、2つのキャップ実施形態をそれらの機能に対応するそれらの特定の機構と共に使用してもよい。但し、好ましい実施形態では、真空源および回収キャニスターの両方として機能する機械式ポンプを使用する。
【0139】
陰圧閉鎖療法では、創腔を真空に引くために真空ポンプが好ましくは管により創傷ドレッシングに接続されていてもよい。また、創傷排液または肺排液用途では、腔から流体を抜き出すために真空ポンプが排液管に接続されていてもよい。管および/または排液管をポンプに取り付けた後、ポンプを作動させなければならない。本開示ではあらゆる機械式または電動式真空源を排液管または閉鎖性ドレッシングに印加してもよいが、電動式ポンプよりも重要な利点があるため機械式システムが好ましい場合がある。真空を与えるために、ポンプを創傷ドレナージ管に接続し、次いでポンプ容器を空にする。一実施形態では、ポンプは
図33に示すプラスチックベローズ453であり、ここでは筐体およびバネは同じ部品であってもよい。ポンプが空気抜き弁を有する場合、ポンプを好ましくは最初に創傷ドレッシングの管または排液管に取り付け、手動で圧縮する。その材料のバネ特性および設計により、ベローズの膨張を介して陰圧を印加する。これらの用途のための好ましい実施形態では、ベローズはプラスチック(典型的にはPVCまたはLDPE)でブロー成形されている。ポンプによって印加される真空圧はベローズの圧縮長さに関係しており、この装置の圧力はその線形バネ様特性により、標準的なベローズの膨張にわたって連続的に減少する。典型的な真空圧−圧縮長さ曲線が
図34に示されている。上記説明を参照して、当業者であれば他の実施形態が存在することが分かるであろう。すなわち、当該装置を異なる材料ベローズから構築することができ、かつ/または材料特性およびベローズそれ自体の設計を変えることなくバネ定数を変えるために、当該装置はベローズに平行にさらなるバネを含むことができる。ポンプ設計において圧力を変えるために、別個のポンプは異なる材料特性および/または寸法で作製することができ、かつ/または異なる圧力結果のために部品を交換することができる。
【0140】
図34の特定の実施形態のために図示されているように、標準的なプラスチックベローズの圧力−膨張長さは、線形傾向線を辿り、さらに高次の多項式は典型的により良好な曲線適合である。この挙動は繰り返し的であるため、治療法のためにベローズを最適化することができる。理想的には、滲出液がシステム内に進入する際の圧力の低下は最小限に抑えられる。これにより、所定のポンプリセット圧力(充電通知圧力としても知られている)に達する前に、より多くの滲出液を回収することができる。この場合、100%の圧縮における圧力の最初の急激な低下455(
図34)は望ましくないことが多い。従って、機能を高めるためにポンプの最大圧縮を制限することが望ましい。実験を通して、この線の微分係数は80%の圧縮において好ましい(すなわち、より低い)ことが多く、40〜60%の圧縮においてさらにより好ましいと判断した。制限された最大圧縮長さにおける圧力(例えば、80%)を所望の最大圧力まで調整しなければならない。これを複数の方法で行うことができ、材料を含み同じベローズ実施形態を使用する場合、好ましい方法はベローズの壁の厚さを調整することによるものである。壁の厚さの変更を使用して、様々な圧力において同じ設計および材料を有する複数のベローズを作製することもできる。空気漏れおよび創傷排液速度は圧力勾配を決定し、圧力範囲はポンプされる最大圧力および再充電通知圧力によって決定される。ポンプされる最大真空圧を圧力で作動される入口弁によって制限することができ、この場合、ポンプは所望の真空圧またはそれ以上まで圧縮され、真空圧が所定の最大真空圧よりも高い場合に、入口弁は空気をポンプの中に入れる。最大真空圧を内部または外部リミッターによって制限することもでき、これは好ましいことが多い。
【0141】
内部および/または外部リミッターを使用してベローズの最大圧縮を所望の長さまで調整する。これらは様々な実施形態の形態をなし得るが、好ましい実施形態を開示する。外部リミッターはベローズ内部容積454の外側で使用する。外部リミッター456および457の好ましい実施形態が
図35Aおよび
図35Bに示されている。ベローズをベローズの最大圧縮からゼロまでの所望の治療圧力長さまで潰すことができるように、リミッターは設計されている。大抵の場合、外部リミッターはスペース内のベローズ設置面積に体積を加えることが多いため、ポンプをより携帯可能にするために外部リミッターは圧縮後に取り外し可能であることが好ましい。最大治療圧縮を達成するための外部リミッターの使用は、繰り返えされる予測可能な最大治療真空圧を達成する方法である。異なる使用者はポンプを僅かに異なるように手で圧縮する可能性があるため、外部リミッターは繰り返し性のための方法を提供する。また、圧縮長さを推定または測定するよりも予測可能な正確な圧力を達成してもよい。外部リミッターのための好ましい実施形態は
図35に示されている。これらの圧縮板によりベローズの圧縮長さを所定の長さ、従って所定の圧力に制限する。制限長さはリミッターの設計に基づき調整可能であってもよく、あるいは固定可能であってもよい(例えば、部品456および457(
図35Aおよび
図35B))。調整可能なリミッターを使用する場合、使用者が制限長さを調整しながら選択する変数として最大治療真空圧を有することが好ましい。
図35Aおよび
図35Bに示されている実施形態では、キャップ452(
図32A〜
図33)と同様のキャップ458および排出用の管459のための場所により、圧縮後に上板をポンプから容易に取り外すことができる。コストを抑えるためにテーブル上部などの表面に押し付けられる場合、上板はリミッターの唯一の部品であってもよい。収容する必要があるベローズの底部から突出している機構が存在する場合、底板に458および459と同様の機構が存在してもよい。当業者であれば、繰り返し性を与えるためにベローズだけでなくあらゆる機械式ポンプ実施形態の圧縮のために外部リミッターを使用できることが分かるであろう。
【0142】
本発明に係る各種構造体に内部リミッターを利用することもできる。
図36に示す好ましい実施形態では、内部リミッター460はキャップ452(
図32A〜
図33)と同様のキャップ設計452aの中に一体化されている。その基本的なキャップ実施形態では、内部リミッターは、最大圧縮を制限するためにポンプの底部に対する硬い停止部として機能する。ポンプの底部に対してシールを形成しないために、461および/または462などの機構をその設計の中に含めることができる。最終的な組立体を携帯性のために可能な限り軽量にするように重量を抑えるために、これらの機構461および462を使用することもできる。内部リミッターをポンプ設計の中に内蔵することもできる。
図37Aおよび
図37Bに示す好ましい実施形態では(
図37Aに破線により示されているように、
図37Bは
図37Aの断面の拡大図である)、ポンプ463の底部機構はベローズの内部容積454の中に突出している。すなわち、ベローズの製造中にこれらを形成することができる。内部リミッターは最大圧縮を制限するためにポンプの上部に対する硬い停止部として機能する。これは取り外されるベローズのために3部からなる成形部を必要とし、この理由のために、この方法は好ましくないことが多い。内部リミッターは組立中にポンプの中に配置される別個の部品として存在することもでき、キャップおよび/またはポンプ上の機構によって制約されていてもよい。当業者であれば、内部および外部リミッターの両方を組み合わせ実施形態として使用できることも分かるであろう。
【0143】
ポンプの上部および下部の撓みはポンプ内部の真空圧に影響を与えることがある。ベローズの実施形態では、この影響は必ずしも望ましいものではない。すなわち、例えば、それにより応力−圧縮曲線の微分係数を100%の圧縮において増加させる可能性がある。これらの影響を減少または排除するために、ポンプの上部および下部にリブ464、465、466および467(
図38Aおよび
図38B)などの構造支持機構を追加することができる。ブロー成形された実施形態では、
図38Aおよび
図38Bに示すように、これらは(成形経路468に平行な464および466および垂直な465および467)は容易に追加される。
【0144】
一旦圧縮したら、ベローズポンプを監視して空気が所定の閾値(典型的にはゼロ)を超えてシステム内に漏れていないことを確認し、かつ治療圧力を決定しなければならない。ポンプの膨張を監視することにより、これを目視で行うことができる。システム内への空気漏れがない場合、システムに進入する傷滲出液の速度によってベローズを制御する。ベローズポンプの内部圧力を測定するために、圧力ゲージを含めることができる。ベローズの実施形態では、当該ゲージはポンプの長さに対するポンプの内部圧力を反映する。使用者は、長さゲージ(
図39および
図40)に対するベローズの長さを測定することによりポンプの内部圧力を監視することができる。この測定により、必要であればポンプを再圧縮して圧力を予め指定された許容誤差内に維持することができる。ゲージの実施形態は、治療中の圧力読取り値を示すラインマーカー上の数字470を有する定規またはゲージ469(
図39)に似ていてもよい。また、定規は圧力が予め指定された治療真空圧範囲内であるか否かを示すための指定のゾーン471、472および473を有することが好ましい(例えば、ゾーン471は「ポンプをリセットする」ことを示し、ゾーン472は「治療法が問題ない」ことを示し、ゾーン473は「治療法が良好である」ことを示す)。ポンプを再圧縮すべきであるか否かを示すために、これらのゾーンを異なる色(例えば、赤色、黄色、緑色)で指定することができる。指示マークは、(1)三角形のマーク474などのゲージ469(
図39)、および(2)使用者がポンプをゲージと適切に位置合わせするのを支援するためのマーク475を有する
図40に示すポンプのうちの少なくとも1つに含まれていてもよい。一実施形態(
図39および
図40)では、ポンプの携帯用ストラップの上にゲージを印刷することができる。一実施形態(
図40)では、
図40に示すようにテーブルの上に直立して置くためにポンプが平底を有するように、携帯用ストラップはベローズ開口部477の首部およびポンプの底部にあるリム478に取り付けられている(476)。好ましい実施形態では、それらのポンプ実施形態への取り付けを確実にするために、上部(
図39)479および底部(
図39)480接続リングは手で組み立てる間に、上部(
図40)481および底部(
図40)482リップの上をそれぞれ摺動する。別の実施形態が
図41に示されており、底部リップ483が小さいノブの形状であること以外は
図40と同じ実施形態であり、それによりポンプをテーブルの上に直立して置くことができない。
図41に示す実施形態は、
図40と比較してストラップをスタンピングする際の材料の無駄を少なくしてもよく、ポンプのあらゆる底部機構の撓みが印加される真空圧に対して与えるあらゆる望ましくない影響も除去することができる。上部接続リングをキャップのみで固定することもできるが、これは治療使用中にキャップを取り外す場合は好ましくない。別の実施形態では、ゲージは創傷ドレッシングおよびベローズポンプを接続する管の上に印刷されている。それを管に直接に印刷したり(好ましい)、粘着性ステッカーとして取り付けたりすることもできる。
【0145】
当該キットを包装するために、キットをタイベック(Tyvex)袋などの袋またはトレー484および485(
図42)に入れることができる。トレーは部品に対してより大きな保護を与え、多くの場合に積み重ねが可能であり、これは物体の貯蔵目的のために好ましい場合がある。キットトレーが積み重ねられるように意図されている場合、それらはスペースを節約するために好ましくは互いに入れ子にする(486)ことができる。入れ子にされるトレーの一実施形態が
図42Aおよび
図42Bに示されており、ここでは第2のキットトレー484の中に入れ子にするために1つのトレー485が水平の平面において180°回転されている。このトレーはトレーの片側でより深いトレー区画487を必要とするより大きな部品を運び、トレーの上部にある区画488内にはフランジがトレーの中(いくつかの実施形態ではそれ自体の区画489の中)に突出した状態で薄いドレープが保持される。個々のトレーを傾倒させることなくテーブル上面に平らに置くことができることが好ましい場合、傾倒力に対抗するための機構/区画490を含めることができ、これは
図42Aおよび
図42Bに示すようにトレーを制限するための入れ子機構であってもよい。
【0146】
図43は、「ロール状のテープ」実施形態501における10層の積層体(9個の接着剤層502〜505および1個の除去可能な保護ライナー506)構造体を有する新規な液体層状テープの概略図である。これは、幅の広い仕上がり状態のロールを巻き直しプロセスの有無に関わらず複数のより幅の狭いロールにスライスする工程、および/または長い仕上がり状態のロールの長さを巻き直しプロセスと共に短く切断する工程、または単一のロール状のテープを積層する工程を含む方法によって製造することができる。実際には、個々の層は幅が異なってもよく、あるいは格子などのパターンの形態であってもよい。その機能的な実施形態では、コンタクト接着剤502は保護ライナー506から剥がせることができなければならない。従って、機能的な貼付のために当該テープを繰り出す際に、保護ライナーとのその結合は他の層間の結合よりも弱いものでなければならない。また、コンタクト接着剤505は保護ライナー506から剥がすことができなければならない。従って、保護ライナーとのその結合は、当該テープを基材に貼付する際に他の層の界面間の結合よりも弱いものでなければならず、理想的には502とそれが付着される基材との機能的な結合よりも弱いものでなければならない。502と基材との結合が層505とライナー506との結合よりも弱い場合、基材への貼付前にライナー506を除去しなければならないが、これは好ましくない。当該実施形態を両面テープとして使用しない場合、基材の反対側におけるタックを減少または排除するために粉末または他のカバーを貼付しなければならない。
【0147】
コンタクト接着剤502および505は同じ配合物である必要なない。層状接着剤が2層配合物503および504として示されているが、全ての層は実際には異なる配合および/または厚さおよび/またはパターンであってもよい。層503および504はそれぞれ概略図において1つの層につき同じ被覆された転写フィルムからのもの(すなわち、2つの異なる被膜)であることが意図されており、これは複雑性を減らすのを助け、従って、この場合、各配合物は一定の厚さおよび/またはパターンである。一実施形態では、より厚い層の配合物503は凝集性の高弾性ゴム接着剤などの機械的性能を高める配合物であり、アクリル系接着剤などのより薄い層の配合物504は層を互いに結合し、かつ使用中に潜在的な穴の拡大を防止するために特有の層を形成するように機能する。
【0148】
図44は、2種類の市販の創傷ドレープ試料(ミネソタ州セントポールの3M社製のテガダーム(Tegaderm)(曲線532)およびアイオバン2(Ioban2)(曲線530))および本出願において開示されている液体層状積層体(曲線534)に関する力−歪みのグラフの比較である。積層体の層の厚さは、5ミルのアクリル系PSA皮膚コンタクト接着剤に積層された6ミルのゴム接着剤であった(合計:約0.28mm)。テガダームは約0.05mmの厚さ(合計)であり、PSAに積層された支持体フィルムであり、アイオバン2は約0.08mmの厚さ(合計)であり、PSAに積層された支持体フィルムである。全ての試料は1cmの幅であった。個々の層の厚さは市販のドレッシングについては不明であり、従って比較のために応力の代わりに力を報告した。0.225/sの歪み速度は典型的なヒトの体の移動の間の皮膚表面の歪み速度を反映している。なお、それらの試料はどれも試験中に壊れなかった。すなわち、アイオバン2は他の試料の最大歪み値の半分まで歪んだだけであった。符号507は各曲線のおおよその「折れ点」すなわち傾きの変化を示し、図示のように、本積層体はより大きな歪みにおいてさらにより低い折れ点での応力値を可能にしている。また、
図44に示されているように、0〜0.1の歪みの線形弾性率(符号509)および大変形時のゴム弾性率(符号508)は、新しい液体層積層体実施形態では著しく減少している。力−歪みが
図44に示されているが、個々の層の厚さを含む新しい液体層積層体の厚さは市販のドレッシングの全厚よりも著しく大きく、従って、当業者であれば、有効応力−歪み曲線はその視覚的表示におけるこれらの特性低下を誇張していることが分かるであろう。
【0149】
図45は、NPWTドレッシングにおいてドレープ22として使用される新しい液体層ドレープ実施形態の一部を示す。フランジ26はドレープ22の穴32を貫通した状態で示されている。図示されている液体層状ドレープは8層の積層構造体を有する。当業者であれば、各接着剤の特性に応じて1つ以上の層を使用できることが分かるであろう。好ましい実施形態では、2つ以上の層を使用する。ピンホール形成のリスクのある多くの好ましい実施形態では、5つ以上、さらにより好ましくは7つ以上の層を使用する。層状接着剤が2層配合物511および512として図示されているが、実際には全ての層は異なる配合および/または厚さおよび/またはパターンであってもよい。層511および512はそれぞれ概略図において1つの層につき同じ被覆された転写フィルムからのもの(すなわち、2つの異なる被膜)であることが意図されており、これは複雑性を減らすのを助け、従って、この場合、各配合物は一定の厚さおよび/またはパターンである。好ましい実施形態では、より厚い層の配合物511は凝集性の高弾性ゴム接着剤などの機械的性能を高める配合物であり、アクリル系接着剤などのより薄い層の配合物512は層を互いに結合し、かつ使用中に潜在的な穴の拡大を防止するために特有の層を形成するように機能する。皮膚コンタクト接着剤510は好ましい実施形態ではPSAである。それは機能させるのに十分な程になお構造上凝集性である限り、曲線のある表面を完全に湿らせるために非常に厚くてもよい。好ましい実施形態では、それは、あらゆる体毛の周りおよび/またはあらゆる大きな毛穴を含むドレープの下の表面を完全に濡らす。従って、患者の体毛を剃る必要はなく、これは先に記載したように感染リスクを減らすなどの臨床的利点を有する。また、好ましい実施形態はクラックを拡大させ、かつ/または滲出液を生じさせて創傷皮膚の周囲を悪化させ、かつ/または接着剤を劣化させ得るドレープの下および創縁の周りのあらゆる通路をなくすために、創傷周囲の表面を完全に濡らす。実験室試験および臨床試験において、3日間の着用中にドレッシングが僅かに移動した場合に、それが閉鎖性能に影響を与えないことが分かった。但し、好ましい実施形態では、当該ドレッシングは3cmを超えて移動せず、さらにより好ましくは1cm未満、さらにより好ましくは0.5cm未満しか移動しない。理想的な事例では、当該ドレッシングは移動しない。
【0150】
図45の下側には、任意の接着剤パッチ403の一部も示されている。図示されている実施形態は3層であるが、当業者であれば、各接着剤の特性に応じて1つ以上の層を利用できることが分かるであろう。好ましい一実施形態では、フランジをドレープ穴32から抜き出そうとするあらゆる力に抵抗する追加の構造支持を提供し、かつフランジの周りに追加の閉鎖障壁を提供するために、組み立て矢印513によって示されているように、パッチ403がフランジ26およびドレープ22の底部に付着されている。それは、フランジを創傷皮膚の周囲の上に貼付する場合に創傷皮膚の周囲を保護するためにフランジの下に粘着面を有するための方法も提供する。皮膚接触の可能性により、好ましい実施形態では、底部接着剤514はドレープ部品上の皮膚コンタクト接着剤510と同じである。好ましい一実施形態では、それはドレープ上の皮膚コンタクト接着剤と同じ厚さである。層515および516は2つのさらなる接着剤層である。一実施形態では、層516は凝集性の高弾性ゴム接着剤などの機械的性能を高める配合物である。層515はフランジ26およびドレープ22に付着する接着剤層である。いくつかの実施形態では、接着剤515はドレープ510上の皮膚コンタクト接着剤と同じ配合物であることが好ましい。
【0151】
一例として、
図45に示す8層ドレープのための基本的な積層プロセスの一構成の概略図が
図46に示されている。積層体実施形態および転写フィルムに対する適切な積層力および引張力を生成し、かつフィルム除去のための適切な剥離力/角度を位置決めするために、ローラー518の位置決め(すなわち、垂直および水平位置)および数は異なってもよい。転写フィルム(A1〜A7)上の被覆された積層体(すなわち、接着剤)層のロール519は当該プロセスに供給されるようにローラー上にある。最初のベース接着剤層520は当該プロセスの開始位置に供給されるロール上にあり、この例では、この層は接着剤511の上部層である。ベース層は被覆された接着剤側521および露出された転写フィルム側522を有する。これは最初に、被覆された接着剤側523および露出された転写フィルム側524を有する接着剤512の次の層に積層される。次いでロールA1の転写フィルムを積層体から引き剥がし、ロールB1上に転がす。転写フィルム(B1〜B6)のロール519をそれらの対応する塗布された積層体(すなわち、接着剤)層から除去する。積層体実施形態および転写フィルムに対して適切な引張力を生成し、かつフィルム除去のための適切な剥離力/角度を生成するために、ロール519の位置決め(すなわち、垂直および水平位置)は異なってもよい。
【0152】
この8層の実施例において、ロールA7は皮膚コンタクト接着剤510であり、
図46における積層後にそのための転写フィルム525は残ったままである。特にプラウ設計(
図18A)または別の非標準的な除去可能ライナーが望まれる場合には、転写フィルム525を繰り出して新しい転写フィルムを層状構造体に積層することもできる。ロール526は上部および下部の除去可能ライナーを有する8層積層体のロールからなる。スタンピングなどのさらなる処理後に、ライナー525はドレープ22の底部除去可能ライナー28となり、ライナー522は上部除去可能ライナー30となる。底部ライナー28はドレープ貼付中に最初に除去する必要があるため、それをライナー28として最後(A7)に積層しなければならず、実際には皮膚コンタクト接着剤510はその除去中に接着剤とライナーとの全ての界面の中で最も弱い接着結合を有していなければならない。当業者であれば、
図46は例示のためであり、積層順序を含む製造プロセスのセットアップは当該テープ設計に基づいて様々に異なってもよいことが分かるであろう。
【0153】
当業者であれば、創傷排液または肺排液用途では、腔から流体を抜き出すために真空ポンプまたは他の陰圧源が排液管に接続されていることが分かるであろう。真空ポンプに関して考察されている全ての機構を内部排液用途のためにも使用することができる。
【0154】
あらゆる皮膚ドレッシングを閉鎖性にするために、個々のシーラント成分が単独で包装されていてもよい。あるいは、機械式ポンプおよびその予め取り付けられた部品、柔軟な足部および予め取り付けられた管コネクターおよび任意の一方向弁を有する管、パッキング材を覆うためのドレッシング粘着性フィルム(必要であれば)(シーラント材料は容器に入っている)、シーラントのためのスポンジ塗布装置、創傷パッキング材、粉末および皮膚前処理剤(必要であれば)を含む機械式NPWTキットの一部としてシーラントを包装することができる。さらに、介護者が取り扱わなければならない粘着性ドレッシングテープ状フィルムが存在する場合、より良好な接着結果のために非粘着性指先カバーが含まれている場合もある。また、シーラント付着のためのファンデルワールス力が皮膚表面に存在する粉末により変化しないように、粉の付いていない手袋が含まれていてもよい。当業者であれば、キット部品を上で考察したそれらの異なる機能的な実施形態と交換できることが分かるであろう。また、創傷デブリードマン器具などの典型的なドレッシング交換またはドレッシングを介した創腔内へのそれらの対応する導入口および(潜在的に)除去口を有する薬物療法などのさらなる創傷治療法で使用されるさらなる部品をさらなるキットの中に追加するか入れてもよい。
【0155】
本開示において多くのドレッシングシステムが特定されているように、当業者であれば、気密シールを形成するために液体封止法をあらゆる組織(皮膚としても知られている)ドレッシングと併用できることが分かるであろう。本開示において多くのポンプが特定されているが、当業者であれば閉鎖性ドレッシングシステムと組み合わせたあらゆるポンプが同様の性能特性を有することが分かるであろう。
【0156】
本発明の特定の機構がいくつかの図面には図示されて他の図面には図示されていないが、これは単に便宜上のためであり、各機構を本発明に係る他の機構のいずれかまたは全てと組み合わせることができる。本発明の基本的かつ新規な機構がその1つ以上の好ましい実施形態に適用されるものとして図示、説明および指摘されているが、当然のことながら、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、図示されている装置の形態および細部ならびにそれらの操作における各種省略、置換および変更が当業者により可能であり得る。例えば、同じ結果を達成するために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を行うそれらの要素および/または工程の全ての組み合わせが本発明の範囲内であることが明示的に意図されている。1つの記載されている実施形態からの要素を別の要素に置換することも完全に意図および想定されている。また、当然のことながら、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、実際にはそれらは単に概念的なものである。従って、本明細書に添付されている特許請求の範囲によって示されているとおりにのみ制限されることが意図されている。他の実施形態も当業者であれば思い付き、それらも以下の特許請求の範囲に含まれる。