(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-505550(P2018-505550A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(54)【発明の名称】発光電気化学セル及び化合物
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20180126BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20180126BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20180126BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H05B33/10
C09K11/06 650
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2017-534979(P2017-534979)
(86)(22)【出願日】2015年12月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月29日
(86)【国際出願番号】GB2015054172
(87)【国際公開番号】WO2016108046
(87)【国際公開日】20160707
(31)【優先権主張番号】1423289.6
(32)【優先日】2014年12月29日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1507337.2
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516222473
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー コート オブ ザ ユニヴァーシティー オブ セント アンドリューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ザイスマン−コールマン イーライ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン マイケル イン
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107DD53
3K107DD66
(57)【要約】
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種について記述する。発光電気化学セル(LEEC)は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンをエミッター材料として含む。TADF種を含有するOLEDSをも開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンをエミッター材料として含む発光電気化学セル(LEEC)。
【請求項2】
前記発光電気化学セルの前記エミッター材料が、
下記式I:
【化1】
(式中、TADFは、有機熱活性化遅延蛍光部分であり;
Yは、前記TADF部分に結合した無金属荷電種であり;
nは、少なくとも1であり;
Aは、対イオンであり;
p及びqは、それぞれ各Y及びA上の電荷であり;かつ
mは、対イオンAの数であり、p×n=m×qである)
の化合物を含み、該化合物から成り、又は該化合物から基本的に成る、
請求項1に記載の発光電気化学セル。
【請求項3】
前記式Iの化合物が、下記式II:
【化2】
(式中、前記無金属荷電種Yは、各出現について独立に、非金属荷電基Z及び任意的な連結基Lであり;かつ
TADF、A、n、m、p及びqは、式Iと同じ意味を有する)
の形を取る、請求項2に記載の発光電気化学セル。
【請求項4】
前記式IIの化合物が少なくとも1つの連結基Lを含み、各連結基Lが、置換若しくは非置換ヒドロカルビレン又は不飽和ヒドロカルビレンであり得るヒドロカルビレン鎖を含む、請求項3に記載の発光電気化学セル。
【請求項5】
前記式IIの化合物が、各基Zに対して、ヒドロカルビレン鎖を含む1つの連結基Lを含む、請求項4に記載の発光電気化学セル。
【請求項6】
前記連結基Lが、下記形:
【化3】
(式中、nは0〜10、より適切には0〜5である)
の非置換ヒドロカルビレン鎖であり、このヒドロカルビレン鎖は、任意に1つ以上の不飽和を含有してよい、請求項4又は5に記載の発光電気化学セル。
【請求項7】
前記連結基Lが、シクロペンタン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、1,4-フェニレン、及び4,4’-ビフェニレンから成る群より選択される、請求項4又は5に記載の発光電気化学セル。
【請求項8】
前記式IIの化合物が、下記式III又は式IV:
【化4】
(式中、nは少なくとも1であり、n=mである)
の形を取る、請求項3〜7のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項9】
前記式IIIの化合物を利用し、前記基Zが、各出現について独立に、四級窒素カチオン及び四級リンカチオンから成る群より選択される、請求項8に記載の発光電気化学セル。
【請求項10】
前記式IVの化合物を利用し、前記基Zが、各出現について独立に、カルボキシラート、スルホナート、スルフィナート、ホスホナート、シアニド及びチオシアナートから成る群より選択される、請求項8に記載の発光電気化学セル。
【請求項11】
前記基Zが、下記:
【化5】
(式中、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表し;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、及びカルバマートから成る群より選択される)
から成る群より選択される、請求項9に記載の発光電気化学セル。
【請求項12】
少なくとも1つの基Zが、下記構造5:
【化6】
(式中、R
8、R
9、R
10及びR
11の1つは、連結基L又は直接TADF部分に結合し、他のR
8、R
9、R
10及びR
11は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、及びカルバマート等から成る群より選択される)
の形を取る、請求項9に記載の発光電気化学セル。
【請求項13】
前記基Zが、下記:
【化7】
(式中、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表す)
から成る群より選択される、請求項11に記載の発光電気化学セル。
【請求項14】
前記基Zが、下記形:
【化8】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であてよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、及びカルバマートから成る群より選択され;−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表す)
の四級リン基Zである、請求項9に記載の発光電気化学セル。
【請求項15】
前記基Zが、下記:
【化9】
(式中、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表す)
から成る群より選択される、請求項14に記載の発光電気化学セル。
【請求項16】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式V、式XIII又は式XVIに従うものであり、
【化10】
式中、各Dは、下記:
【化11】
(式中、各A
1、A
2、及びA
3は、同一又は異なってよく、かつ-CN、-CO
2-、-CO
2R
*、-SO
3-、-PO
4-、-NR
3+、-PR
3+、ハロゲンから成る群より独立に選択されるアクセプター基であり、ここで、R
*並びに-NR
3+及び-PR
3+上の置換基Rは、各出現について独立に、H、アルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され;かつ
A
1、A
2、及びA
3のどれも荷電していないとき、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16の出現の少なくとも1つは、直接又は連結基Lを介した荷電基Zへの結合位置を表し;
A
1、A
2、及びA
3のどれも存在しないとき、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の出現の少なくとも1つは、直接又は連結基Lを介した荷電基Zへの結合位置を表し;かつ
有機荷電基Zへの結合に関与しない各基R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド及びホスフィンスルフィドから成る群より選択され;かつ
基Arは、各出現について独立に、置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリールであり、n ( )は、ベンゼン環に環付加した環中の飽和-CH
2-基の任意的な存在を表し、nは、各出現について独立に、0、1、又は2である)
から成る群より独立に選択されるドナー部分である、
請求項1に記載の発光電気化学セル。
【請求項17】
基A1及び基A2が同一であり、かつ基A3が異なる、請求項16に記載の発光電気化学セル。
【請求項18】
前記ドナーDが下記式のものである、請求項16に記載の発光電気化学セル。
【化12】
【請求項19】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式Va又は式VI:
【化13】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16の少なくとも1つの出現は、直接又は連結基Lを介した荷電基Zへの結合位置を表し;かつ
有機荷電基Zへの結合に関与しない各基R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド及びカルバマートから成る群より選択される)
に従うものである、請求項16に記載の発光電気化学セル。
【請求項20】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式VII、VIII又はVIIIa:
【化14】
(式中、基R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、R
15が有機基Zへの結合に関与しないことを除き、請求項19と同じ意味を持ち;連結基Lは、存在してもしなくてもよく、Zは、モノカチオン性無金属荷電基である)
の1つに従うものである、請求項19に記載の発光電気化学セル。
【請求項21】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式IX及びXの1つに従うものであり、
【化15】
式中、各出現についてLは、不在であるか又は下記:
【化16】
(式中、nは0〜10である);
【化17】
から成る群より独立に選択され;
各出現についてZは、下記:
【化18】
(式中、−Lは、連結基L又はLが不在の場合は直接カルバゾール環への結合位置を表す)
から成る群より独立に選択される、請求項20に記載の発光電気化学セル。
【請求項22】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種と共に利用する前記対イオンが、PF6-、BF4-及びF-から成る群より選択される、請求項21に記載の発光電気化学セル。
【請求項23】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式XVIa又はXVIb:
【化19】
(式中、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の出現の少なくとも1つは、直接又は連結基Lを介した荷電基Zへの結合位置を表し、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有し;かつ
有機荷電基Zへの結合に関与しない各基R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド及びカルバマートから成る群より選択される)
に従うものである、請求項16に記載の発光電気化学セル。
【請求項24】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式XVIc又は式XVId:
【化20】
(式中、基R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、R
15が有機基Zへの結合に関与しないことを除き、請求項23と同じ意味を持ち;連結基Lは、存在してもしなくてもよく、Zは、モノカチオン性無金属荷電基である)
に従うものである、請求項23に記載の発光電気化学セル。
【請求項25】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式XVIe及びXVIfの1つに従うものであり、
【化21】
式中、各出現についてLが、不在であるか又は下記:
【化22】
(nは、0〜10である);
【化23】
から成る群より独立に選択され;
各出現についてZが、下記:
【化24】
(式中、−Lは、連結基L又はLが不在の場合は直接カルバゾール環への結合位置を表す)
から成る群より独立に選択される、
請求項24に記載の発光電気化学セル。
【請求項26】
前記エミッター材料が、下記式XI、XII、XVII、XVIII、XIX、XX、XXI、XXII、XXIII、及びXXIVのいずれか1つの化合物を含む、請求項1に記載の発光電気化学セル。
【化25】
【化26】
【請求項27】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、前記TADF種の不可欠な部分である置換基(複数可)によって荷電している、請求項1に記載の発光電気化学セル。
【請求項28】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種が、下記式式XIIIaに従うものである、
請求項27に記載の発光電気化学セル。
【化27】
【請求項29】
前記対イオン(複数可)が、ハライド、PF6-、BF4-、BR4--(Rはアリール基、例えばフェニルである)、OTf--、OTs--、SbX6--(Xはハライドである)、NTf2--、NO3--、CO32--、周期表の1族及び2族元素のカチオン並びに四級アンモニウムカチオンから成る群より選択される、請求項1〜28のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項30】
ルミネセンス層がイオン性液体を含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項31】
請求項2〜30のいずれか1項に記載の荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオン。
【請求項32】
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンをエミッター材料として含む、有機発光ダイオード(OLED)。
【請求項33】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種及び対イオンが、請求項2〜30のいずれか1項に記載どおりである、請求項32に記載の有機発光ダイオード。
【請求項34】
発光方法であって、下記工程:
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオン、又はその混合物を準備する工程;
前記荷電有機TADF種及びこの荷電有機TADF種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオン、又はその混合物をエミッター材料として含むエレクロルミネセンスデバイスを製造する工程;及び
前記エレクロルミネセンスデバイスを操作する工程
を含む、前記発光方法。
【請求項35】
前記荷電有機熱活性化遅延蛍光種及び対イオンが、請求項2〜30のいずれか1項に記載どおりである、請求項34に記載の発光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、発光電気化学セル(LEEC)及びLEECに用いるルミネセンスエミッター化合物、特にLEEC又は他の発光デバイスに用いる熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence)(TADF)化合物の提供に関する。
【0002】
発明の背景
有機発光ダイオード(OLED)は、ディスプレイ表示及び照明の最先端技術として頭角を現してきた。OLEDは、軽量で、可撓性であり、より良いコントラストを与え、かつ大きい視野角を有するので望ましい。OLEDは伝統的光源より電力効率も良く、それ故にそれらを広く採用すると、現在のエネルギー需要への負担を顕著に軽減することができる。照明だけで世界中のエネルギー消費の約20%を構成しているからである。
【0003】
「第一世代」のOLEDは、一重項励起子を補充できるだけのためその効率の上限が25%とされた有機蛍光エミッターに基づいていた。「第二世代」のOLEDは、イリジウム(III)及び白金(II)等の重金属の大きなスピン軌道結合によって媒介される項間交差(ISC)増加のため、発光に一重項及び三重項を両方とも取り入れる有機金属リン光エミッターを利用した。それらの非常に望ましい性能特性にもかかわらず、これらの金属の希少性、それらの高いコスト及びそれらの毒性は、OLED技術の大規模な世界中での採用を阻止する重要な好ましくない特徴である。
【0004】
「第三世代」のOLEDは、最近、まず最初に安達氏と同僚らによって報告された。彼のグループは、熱活性化遅延蛍光(TADF)機構を経て発光する小有機分子がどのようにOLEDに組み込まれ、かつ一重項と三重項の両励起子が発光のために補充されるリン光エミッターと同様に非常に高い効率を示すことができるかを実証した(参考文献1)。このように、TADFに基づくOLEDは、「第二世代」のOLEDに固有の重要な好ましくない特徴に対処しながら、それらの利点を維持する(参考文献2)。
【0005】
TADFの原理は、最低の一重項と三重項励起状態との間の小さいエネルギーギャップ(ΔE
ST)に頼る。これらの条件下では、三重項状態の電子は、熱エネルギー、次に放射蛍光を用いて逆項間交差(RISC)により一重項状態に戻ることができる(参考文献1a)。この小さいΔE
STは、HOMOとLUMOとの間の空間的隔離によって実現されて、これらの軌道間の電子反発を最小限にする。今日までに多数の有機TADFエミッターが報告されてきた。それらは、分子内で種々のタイプのドナー及びアクセプター部分を利用して、最低の一重項状態と三重項励起状態との間に望ましい小エネルギーギャップ(ΔE
ST)を達成することができる。これらの分子の大多数は、ドナー部分とアクセプター部分が互いにほぼ直交するように設計されるねじれ分子内電荷移動(TICT)デザインに基づいている(参考文献1a、1c及び3)。
【0006】
しかしながら、TADF-OLEDを含め、現在のOLEDは、カプセル化を必要とする空気感受性電極を未だに利用し、真空蒸着されるのでデバイスのサイズを制限し、かつ製造コストを増大させる複雑な多層構造を有する。
単層固体発光電気化学セル(LEEC)は、OLEDに見られるこれらのネガティブなデザイン特徴に対処するそれらの可能性のためにもっと最近に注目されてきた(参考文献4)。LEECのエミッターはイオン性遷移金属錯体であることが多い。最も人気があり、最高の性能クラスの錯体は、カチオン性イリジウム(III)錯体である。
【0007】
OLEDにおけるそれらの使用と同様、LEECにおける希少重金属の使用は難題を提示する。LEEC用の小分子エミッターの代替物として、イオン輸送材料及び無機塩、例えばLiOTfと共に複合ポリマーを含めることができる。最近、イリジウムベース錯体の代替物として小分子有機シアニン色素ベースフルオロフォアを有する操作可能なLEECの最初の例が開示された(参考文献5)。
【0008】
この進展にもかかわらず、発光電気化学セル(LEEC)等のディスプレイ及び照明用途に用いる改善された代替化合物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
発明の説明
第一態様によれば、本発明は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオン、又はその混合物をエミッター材料として含む発光電気化学セル(LEEC)を提供する。
LEECのエレクロルミネセンス材料は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこのTADF種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンを含み、それらから成り、又はそれらから基本的に成り得る。
【0010】
これらの有機塩(有機荷電TADF種及び対イオン)は、LEECに使用できるが、OLED等の他のエレクロルミネセンスデバイスにも使用可能である。それらは、それらのフォトルミネセンス特性を用いる用途にも利用可能である。塩及びそれらの他の使用も本発明のさらなる態様を構成する。荷電TADF種及び/又は対イオンの混合物を利用してよい。さらに他のエミッター材料をさらに利用してよい。
複数のTADF発色団を荷電TADF種に利用してよい。例えば既知タイプの1、2又は3つのTADF発色団を分子に一緒に結合させて、電荷及び対応する対イオンを与えることができる。
【0011】
第二態様によれば、本発明は、発光方法であって、下記工程:
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオン、又はその混合物を準備する工程;
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオン、又はその混合物をエミッター材料として含むエレクロルミネセンスデバイスを製造する工程;及び
エレクロルミネセンスデバイスを操作する工程
を含む方法をも提供する。
【0012】
エレクロルミネセンスデバイスは、例えば、OLED又はLEECであってよい。
TADF種は、技術上周知の個別の非荷電TADF分子、例えば、TADF発色団の選択肢を記載する特許文書:CN103694992、CN1038194423、EPO2733761、US2014/01224762、US2013/0306945、US2014/0103329、US2014/0138669、WO2012133188、WO2013180261、WO2014013947、WO2014024446、WO201424447、WO2014034092、WO2014038417、WO2014042006、WO2014083785、WO014092083、WO2014104346、WO2014122895、WO2013092313、EP2511360、EP2733762、US8847218、US20120241732、US2014138870、WO2011070963、WO2013081088、WO2013154064、WO2013172255、WO2014024856、及びWO2014104315に記載のもの由来であってよい。これらの文書の内容は、参照によってここに組み込まれる。これとは別に、荷電TADF種は、例えばポリマーであってよい。
【0013】
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種は金属を含有しないが、TADF種が負に荷電している場合、対イオンは金属カチオン、例えばアルカリ金属カチオンであり得る。この有機TADF種に金属が存在しないことにより、コストの点で利益がもたらされ、重金属の存在に起因する毒性を回避することができる。TADF種は、電荷及び対応する対イオンのため、LEECにおける使用ではなく、OLEDデバイスで見られる高効率の点で利益を与え得る。荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びその付随する対イオンは、表示デバイスの製造時、特に大型ディスプレイの製造時に溶液処理、例えばインクジェット型プリンティングを可能にする良い溶解性という利点を与え得る。溶液処理の利点は、OLED又はLEECの製造時に利用可能である。LEECの他の利点、例えば空気中でデバイスを製造する能力及び空気中で安定な電極を使用する能力が実現可能である。
【0014】
発光電気化学セル(LEEC)のエミッター材料は、荷電置換基(複数可)を含むTADF種を含み、それらから成り、それらから基本的に成り得る。荷電置換基は、TADF種の不可欠な部分であり得る。すなわち、荷電置換基は、TADF効果をもたらすアクセプター又はドナーの挙動を示すか又は該挙動に寄与し得る。
例えば、シアノベンゼン部分をアクセプターとして用いてTADFのドナーとしてのカルバゾール部分を補完する場合(例えば、参考文献1a)、アクセプター挙動を達成するためのシアノ置換基の代替物は、さらに詳細に以下の特定の実施形態を参照して述べるように、カルバマート(-CO
2-)、スルホナート(-SO
3-)、ホスファート(-PO
4-)、四級アンモニウム(-NR
3+)又はホスホニウム(-PR
3+)を含むことができる。窒素又はリン上の置換基Rは、各出現について独立に、H、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)から選択可能である。
分子のアクセプター部分の電子吸引基が荷電されると、LEECに該エミッター材料を使用するという選択肢を与える。
【0015】
同様に、荷電置換基(TADF効果全体にドナー挙動が寄与し得るような)、例えばアルコキシド(-RO
-)又はチオラート(-RS
-)をTADF分子のドナー部分の一部として与えてよい。TADF種の残部につながる基Rは、例えばC1〜C30、より適切にはC1〜C10のヒドロカルビレン鎖から選択可能であり、置換若しくは非置換ヒドロカルビレン又は不飽和ヒドロカルビレンであってよい。ヒドロカルビレン鎖は、置換若しくは非置換飽和、不飽和又は芳香環を含むことができる。
或いは、TADF効果と区別し得るが、発色団のTADF効果に寄与するか又は実質的に寄与することなくTADFに結合する荷電置換基として荷電種を供給してもよい。
従って、例えば発光電気化学セル(LEEC)のエミッター材料は、下記式Iの化合物を含み、該化合物から成り、又は該化合物から基本的に成り得る。
【0017】
式中、TADFは、有機熱活性化遅延蛍光部分であり;
Yは、TADF部分に結合している無金属荷電種であり;
nは、少なくとも1であり;
Aは、対イオンであり;
p及びqは、それぞれ各Y及びA上の電荷であり;かつ
mは、対イオンAの数であり、p×n=m×qである。
対イオンAは、電荷を釣り合わせるために無金属荷電種Yに対して反対に荷電している。荷電種Yは、TADF部分に直接結合していてもよい。荷電種Yが、荷電基と、この荷電基をTADF部分に結合する連結基とを含むのが都合よい。連結基の使用は、LEECにおける応用のためのTADF発色団の機能付与へのモジュール経路を提供する。付着荷電基を有する連結基(複数可)の使用は、例えば上記文書で既知のいずれの広範なTADF部分の使用の可能性をも与える。
従って、式Iの化合物は、下記式IIの形を取り得る。
【0019】
式中、無金属荷電種Yは、非金属荷電基Z及び任意的な連結基Lであり;かつ
TADF、A、n、m、p及びqは、式Iと同じ意味を有する。
連結基Lは、基Zの各出現について任意的である。連結基Lを利用する場合、各基Zについて1つ使用するのが都合よい。
存在する場合、連結基Lは、各出現について独立に、例えばC1〜C30、より適切にはC1〜C10のヒドロカルビレン鎖を含むか、又はそれから成り、置換若しくは非置換ヒドロカルビレン又は不飽和ヒドロカルビレンであり得る。ヒドロカルビレン鎖は、置換若しくは非置換飽和、不飽和又は芳香環を含むことができる。例えばヒドロカルビレン鎖は、置換若しくは非置換シクロペンタン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、1,4-フェニレン又は4,4’-ビフェニレン部分を含むか又はそれから成り得る。存在する場合、芳香環はアリール又はヘテロアリールであり得る。
【0020】
連結基Lが置換されている場合、連結基Lは各出現について独立に置換され得る。例えば1回、2回、又は3回、例えば1回、すなわち、ヒドロカルビレン鎖の1個以上の水素原子を形式的に置き換える。該置換基の例は、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、-SF
5、-CF
3、-OMe、-NO
2、環状であってよく、不飽和であってよい(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4)置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等である。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rはアルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
【0021】
上記連結基Lについての置換選択肢に加えて、本明細書に記載の置換若しくは非置換であり得る他の基又は置換基についても置換の同様の選択肢を利用し得る。従って、置換され得る基は、例えば1回、2回、又は3回、例えば1回置換され、すなわち、基の1個以上の水素原子を形式的に置き換え得る。該置換基の例は、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、-SF
5、-CF
3、-OMe、-NO
2、環状であってよく、不飽和であってよい(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4)置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等である。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rはアルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
【0022】
アリールは、本明細書では、芳香族化合物から水素原子の引き抜きによって形式的に形成される基を意味する。当業者には分かるように、ヘテロアリール部分はアリール部分のサブセットであり、1個以上の炭素原子の代わりに1個以上のヘテロ原子、典型的にO、N又はS及びそれに付着したいずれの水素原子をも含み得る。代表的なアリール置換基としては、例えば、置換されていてもよいフェニル又はナフチルが挙げられる。代表的なヘテロアリール置換基としては、例えば、ピリジニル、フラニル、ピロリル及びピリミジニルが挙げられる。
【0023】
ヘテロ芳香環のさらなる例としては、ピリダジニル(2個の窒素原子が芳香族6員環内で隣接している);ピラジニル(2個の窒素が6員芳香環内で1,4-配置されている);ピリミジニル(2個の窒素原子が6員芳香環内で1,3-配置されている);又は1,3,5-トリアジニル(3個の窒素原子が6員芳香環内で1,3,5-配置されている)が挙げられる。
連結基が1つ以上の環を含む場合、それらはシクロアルキルであってよく、それらは例えばシクロヘキシル又はシクロペンチル環であり得る。存在する場合、シクロヘキシル又はシクロペンチル基は、飽和又は不飽和であってよく、上述したように置換されていてもよい。
【0024】
連結基Lは、ヒドロカルビレン鎖に、例えば鎖内の1個以上、例えば1、2、又は3個の炭素原子を例えばO、N、又はSのいずれか1個で置換することによってヘテロ原子を含んでもよい。
基Lの非置換ヒドロカルビレン鎖の例としては、下記式:
【0026】
(式中、nは0〜10、より適切には0〜5であり、任意に1つ以上の不飽和を含有することがある);シクロペンタン-1,3-ジイル;シクロヘキサン-1,4-ジイル;1,4-フェニレン;4,4’-ビフェニレンが挙げられる。
非金属荷電基Zは、各出現について独立に、正又は負に荷電していてよい。対イオンAは、反対電荷を有することになる。例えば荷電基Zが一価であり、対イオンAも一価である場合、式IIの化合物は、下記式III又は式IVのどちらかの形を取り得る。
【0028】
式中、n=mである。
基Zが正に荷電している場合、それらは、各出現について独立に、四級窒素カチオン、及び四級リンカチオンから成る群より選択される。好都合には全ての基Zが同一となる。
基Zが負に荷電している場合、それらにはカルボキシラート、スルホナート、スルフィナート、ホスホナート、シアニド及びチオシアナート等のアニオン置換基が備わっていてよい。
四級窒素基Zの例としては、下記が挙げられる。
【0030】
式中、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表し;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4)置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート等から成る群より選択される。置換基がアミノである場合、それは、NH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
【0031】
四級窒素が、構造3に示すようにピリジニル(pyridynyl)である場合、連結基L又は直接TADF部分への付着は、窒素よりはむしろ炭素であり得る。従って、四級窒素基Zは、下記構造5の形をとり得る。
【0033】
式中、R
8、R
9、R
10及びR
11の1つは連結基L又は直接TADF部分に結合し、他のR
8、R
9、R
10及びR
11は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4);置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート等から成る群より選択される。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10がアリール、ヘテロアリール又はシクロアルキルであり、かつ置換されている場合、それらは、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4);置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート等で置換されていてよい。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
従って、四級窒素基Zとしては、下記構造が挙げられる。
【0035】
式中、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表す。
四級リン基Zの例には、下記構造が含まれる。
【0037】
式中、R
1、R
2及びR
3は、上述した対応する四級窒素基1についてと同じ意味を有し、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表す。
従って、四級リン基Zの例としては、下記構造が挙げられる。
【0039】
式中、−Lは、連結基L又は直接TADF部分への結合位置を表す。
多くの適切なTADF分子が、OLEDデバイスのエミッター材料としての利用案で知られている。参考文献6は、TADF材料について記載し、広範な無金属TADF分子の考察を包含する。該TADF分子には、本発明のLEECに利用する化合物のTADF種中におけるTADFコア構造(発色団)としての用途を見い出すことができる。
典型的に、TADF種は、一重項及び三重項(S
1及びT
1)励起(exited)状態間のエネルギーギャップの差が小さく、<100meVである(ΔE
ST<100mEv)。
【0040】
適切なTADFコア構造の例は、カルバゾイルジシアノベンゼン(CDCB)TADFエミッター分子が記載されている参考文献に記載されている。これらの分子では、カルバゾール(又は誘導体)が電子ドナーとして作用し、ジシアノベンゼン(又は誘導体)が電子アクセプターとして作用する。ドナー上のHOMO及びアクセプター上のLUMOが局在し、立体障害に起因するジシアノベンゼンの平面からのカルバゾールのゆがみのため、最小限の重なりを有する。これが、望ましい小さいΔE
STを与える。さらに一般的に、TADF構造は、典型的に共役リンカーを介して電子アクセプターに連結した電子ドナーを有する。
本発明のエミッター材料として用いる化合物のTADF部分は、1つ以上のTADF発色団、例えば1〜3つのTADF発色団、例えば一緒に結合したカルバゾイルジシアノベンゼン(CDCB)発色団を含んでよい。
しかしながら、1つだけのTADF発色団を利用してTADF効果を与え得る。
例えば、下記式VのTADF種の荷電誘導体:
【0042】
式中、Dは、下記形態のドナー部分であり;
【0044】
式中、各A
1、A
2、及びA
3は、同一又は異なってよく、-CN、-CO
2-、-CO
2R
*、-SO
3-、-PO
4-、-NR
3+、-PR
3+、ハロゲン(F、Cl、Br、I)から成る群より独立に選択されるアクセプター基であり、R
*並びに-NR
3+及び-PR
3+上の置換基Rは、各出現について独立に、H、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10);及び-CO
2-L-Z(Lは任意的な連結基であり、Zは荷電基であり、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式II、III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有する)から選択され;
A
1、A
2、及びA
3がどれも荷電していないときは、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16の出現の少なくとも1つが、荷電基Zへの直接又は連結基Lを介した結合位置を表し、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式II、III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有し;かつ
有機荷電基Zへの結合に関与しない各基R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4)置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等から成る群より選択される。
この基がアミノである場合、それは-NH
2、-NHR又は-NR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
この基がホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィドである場合、それは下記基から成る群より選択される。
【0046】
式中、リン上の置換基Rは、置換若しくは非置換アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
ホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィド置換基は、カルバゾール構造の窒素に対してパラであり得る。すなわち、R
15の一方又は両方がホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィド置換基であり得る。両R
15がホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィド置換基であるのが都合よく、両者が同一であってよい。ホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィド置換基は、リン上にフェニル又は置換フェニル基Rを有し得る。
従って、ドナー部分Dに対しては下記置換基、又は一方若しくは両方のフェニル基が置換されている置換基を企図する。
【0048】
本明細書に記載のTADF化合物のようなTADF分子の構造のアクセプター部分として、又はアクセプター部分の一部(アクセプター部分上の置換基)としてホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィドを使用してよい。
本明細書に記載のドナー部分D上の置換基として使用する場合には、ホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィドが作用してドナーの性質を加減するので、TADF化合物の光物理的挙動を変えることができ、例えば発光の色又は強度の変化をもたらす。
ホスフィンオキシド及びホスフィンスルフィド置換基は、例えば、典型的なドナー部分であるカルバゾールに関する置換を図解する下記スキームに従って導入可能である。
【0050】
基A
1とA
2が同一で、A
3が異なってよく、合成経路が一般的にあまり複雑でないので有利である。例えば、A
1とA
2が両方とも-CNであってよく、A
3が-Fであってよい。
さらに一般的には、部分Dを下記から選択してもよい。
【0052】
式中、X
1は、O、S、NR、SiR
2、PR及びCR
2から成る群より選択され、各Rは、-H、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)から成る群より独立に選択され;
各Arは、各出現について独立に、置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリールから成る群より選択され;かつ
【0054】
は、各出現について独立に、構造A、B、C、D、E又はFの中心環に縮合した置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール環、例えば5員又は6員置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール環を表し、構造C、D、G及びHでは分子の残部への結合は、窒素に対してパラであり;
n( )は、ベンゼン環に環付加した環中の飽和-CH
2-基の任意的な存在を表し、nは、各出現について独立に、0、1、又は2であり;かつ任意に少なくとも1つの荷電基Zが、任意に連結基Lを介して、-Ar又は
【0056】
上の置換基として備わっていることがある。
荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上のどこにも備わっていないとき、少なくとも1つの荷電基Zが、-Ar又は
【0060】
上に置換基が存在する場合には、置換基にホスフィンオキシド又はホスフィンスルフィドを含めて、ドナー特性を加減することができる。
従って、式Vの化合物中のドナー部分Dを下記から選択してもよい。
【0062】
式中、基R
13、R
14、R
15及びR
16は、前述の基と同じ意味に解釈し得る。
下記構造中のベンゼン環に環付加した飽和環は5、6又は7員環であり得る。
【0064】
典型的に、それらは6員、すなわち、下記ジュロリジン(juliolidine)構造であり得る。
【0066】
さらなる例として、下記式Va又は式VIに従う、カルバゾイルTADF部分を有するジシアノベンゼンの荷電誘導体がある。
【0068】
式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16の出現の少なくとも1つは、荷電基Zへの直接又は連結基Lを介した結合位置を表し、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有し;かつ
有機荷電基Zへの結合に関与しない各R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4);置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等から成る群より選択される。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
【0069】
式Va又は式VIのTADF部分は、位置R
15(カルバゾール窒素に対してパラ)の少なくとも1つを経て荷電基Zに結合するのが都合よい。式VIのTADF部分の両カルバゾール構造が同じ置換パターンを有するのが都合よい。
従ってLEECは、例えば下記式VII、VIII又はVIIIaの形を取り得る式III又は式IVのTADF種を用いる化合物を包含し得る。
【0071】
式中、基R
11、R
12、R
13、R
14、R
1及びR
16は、有機基Zへの結合に関与しないときには、上記と同じ意味に解釈し;連結基Lは、存在してもしなくてもよく、存在する場合は、式IIに関して上述した形を取ってよく;Zは、本明細書に記載するようなモノカチオン無金属荷電基である。本明細書に記載の対イオンA、例えば本明細書に記載のようなモノアニオン種A
-を備えて、電荷Zに対抗する。
【0072】
さらに一般的には、基Zが1より大きい電荷を含み、及び/又はアニオン性である式VII及びVIIIのような構造をも企図する。対イオンAを与えて、基Z上の電荷に対する反対電荷を運び、一般式Iに関してのように電荷バランスの達成が可能となる。このように、対イオンAは、1より大きい電荷、例えば2
+又は3
+を運ぶことができる。
アニオン性のときには本発明の化合物中の対イオンAは、各出現について独立に、ハライド(クロリド、フルオリド、ブロミド又はヨージド)、PF
6-、BF
4-、BR
4-、OTf
-、OTs
-、SbX
6-、NTf
2-、NO
3-、及びCO
32-から成る群より選択され得る。Xは、ハライド(フルオリド、クロリド、ブロミド又はヨージド)であり、Rはアリール基、例えばフェニルである。
【0073】
Aがハライドである場合、それはF
-であるのが都合よい。利用するアニオン性対イオンを混合してよく、例えばフルオリドとクロリドの混合物を利用してよい。
カチオン性のときには本発明の化合物中の対イオンAは、各出現について独立に、周期表の1族及び2族元素のカチオン及び四級アンモニウムカチオンから成る群より選択され得る。利用するカチオン性対イオンAを混合してよく、例えばリチウムイオンとナトリウムイオンの混合物を利用してよい。
従って、例えばカチオン性対イオンAは、Li
+、K
+、Na
+ Mg
2+、Ca
2+及びNR
4+から選択可能である。NR
4+のときには、四級アンモニウム塩の基Rは、各出現について独立に、-H、アルキル(一級、二級又は 三級)、アリール及びヘテロアリールから成る群より選択され得る。アルキル、アリール又はヘテロアリール置換基は、飽和又は不飽和であってよく、置換又は非置換であってよい。一級、二級又は三級アルキルは、環状であってよく、不飽和であってよい(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4)。
【0074】
さらなる態様によれば、本発明は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及び本明細書で述べるように荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンを提供する。これらの有機塩には、発光電気化学セル(LEEC)のエミッター材料としての用途を見い出すことができる。これらの有機塩は、式I及び本明細書に記載の種々の他の選択肢に従ってよい。これらの有機塩は、例えばOLEDのような他のデバイスにおける発光材料又はその一部として利用可能である。荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種は無金属であるが、本明細書に記載のように金属対イオンを有してよい。
式VII及びVIIIの化合物の例として、下記式IX及び式Xの化合物が挙げられる。
【0076】
式中、各出現についてLは不在であるか又は下記:
【0078】
(式中、nは0〜10、より適切には0〜7である);
【0080】
から独立に選択され;
各出現についてZは、下記:
【0082】
(式中、−Lは、連結基Lへの結合位置又はLが不在の場合は直接カルバゾール環への結合位置を表す)
から独立に選択される。
対イオンAは、各出現について独立に、PF
6-、BF
4-及びF
-から成る群より選択される。本明細書に記載するように他の対イオンAを使用してよい。
2つのL、Z及びAの出現がある式Xの化合物では、両基Lが不在であるか又は同一であり;両基Zが同一であり;かつ両アニオンAが同一であると都合よい。
該化合物の例としては、下記式XI及びXIIの化合物が挙げられる。
【0086】
(1,4-ブチレン)であり、荷電基Zは、
【0088】
であり;かつ対イオンAはPF
6-である。
式XI及びXIIの化合物は、TADF挙動を示すことが示され、さらに詳細に後述するように、LEECの製造に使用可能である。
上述したように、典型的にドナーとしてカルバゾール又は関連窒素含有種を有するTADF種中のシアノベンゼンアクセプター部分上の置換基としてシアノ基を使用する。シアノ置換基の代替物として、カルボキシラート(-CO
2-)、スルホナート(-SO
3-)、ホスファート(-PO
4-)、四級アンモニウム(-NR
3+)又はホスホニウム(-PR
3+)等の荷電基を使用してよい。これにより、LEECにおける使用を容易にする荷電置換基がTADF種の不可欠な部分となる。TADF種のアクセプター部分上にもドナー部分上にも荷電基を有することも可能である。必要に応じて適切な対イオンを使用する。
【0089】
なおさらなる代替として、アクセプター部分上にカルボン酸エステル官能基-CO
2-L-Zを用いて荷電基を設けてよい。カルボン酸エステル官能基は、アクセプター部分にアクセプター挙動をもたらし、Lは、任意的な連結基を表し、Zは、荷電基を表す。LとZが両方とも式II、III及びIVについて本明細書で述べたのと同じ意味を有する。
従って例えば下記式V又はXIII:
【0091】
(式中、各A
1、A
2、A
3 R
11、R
12及びDは、各出現について独立に、式Vの化合物について上述したのと同じ意味を有する)
の化合物の荷電誘導体を、電荷を釣り合わせるための十分な適切な対イオンAと一緒に利用することができる。
【0092】
本発明の荷電化合物のさらなる例を、スルホン(-SO
2-)がアクセプター挙動をもたらす、下記化合物XVIの荷電誘導体により提供する。
【0094】
式中、ドナー部分Dは、各出現について独立に、式Vの化合物について上述したのと同じ意味を持ち;R
17及びR
18は、各出現について独立に、式Vの化合物の置換基R
11及びR
12として上述したのと同じ意味を持ち;かつ少なくとも1つの荷電基Zを備え;各基Zは、ドナー部分Dへ直接又はR
17及びR
18の出現の1つの連結基Lを介して付着され;存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式II、III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有する。
式XVIの荷電誘導体の例としては、下記式XVIa又はXVIbの荷電誘導体が挙げられる。
【0096】
式中、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の出現の少なくとも1つは、荷電基Zへの直接又は連結基Lを介した結合位置を表し、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有し;かつ
有機荷電基Zへの結合に関与しないR
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各基は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4)置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル;置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等から成る群より選択される。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
【0097】
式XVIa又は式XVIbのTADF部分は、少なくとも1つの位置R
15(カルバゾール又はジフェニルアミン窒素に対してパラ)を介して荷電基Zに結合すると都合よい。式XVIa又は式XVIbのTADF部分のカルバゾール又はジフェニルアミン構造が同一の置換パターンを有すると都合よい。
従って、式XVIa又は式XVIbの荷電TADF部分は、下記式XVIc又は式XVIdに従ってよい。
【0099】
式中、基Zは、本明細書に記載したように、任意的な連鎖Lで分子の残部に結合している荷電基であり、描いたR
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各基は、有機荷電基Zへの結合に関与しない。
描いた全ての基RがHであってもよい。従って、式XVIc又は式XVIdの荷電TADF部分は、下記式XVIe又はXVIfのものであり得る。
【0101】
式XVIの化合物の例として下記式XVII及び式XXの化合物が挙げられる。
【0103】
化合物XVIIは、カルバゾールドナー部分を有し、化合物XXは、ジフェニルアミンドナー部分を有する。
電荷がTADF種の一部である例は、下記式XIIIa:
【0105】
におけるようにA
1及びA
2が-CO
2-であってよく、基Dがカルバゾールであってよく、電荷を釣り合わせるために用いるカチオン性対イオンA(複数可)、例えば複数のカリウムイオンを有する。
【0106】
当業者は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンの合成を行なうことができる。
これらの塩は、荷電種及び荷電種への合成経路で用いるる所望の対イオン(複数可)を与えるためのTADF種の修飾によって作製可能であり、又は適切なイオン交換によって導入可能である。
例えば、TADF分子のジシアノベンゼンアクセプター部分上のシアノ基を修飾して、カルボキシラート、カルボン酸、又はカルボン酸エステル基を与え得る。さらなる例では、TADF分子の合成前及び/又は後にTADF分子のカルバゾール又は同様のドナー部分を修飾して、荷電基(複数可)を与えてよい。
【0107】
従って、本発明の化合物の例としては、下記式XVIII、XIX、XXI、XXII及びXXIIIの化合物が挙げられる。
【0109】
本発明の発光電気化学セル(LEEC)は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及びこの荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種上の電荷を釣り合わせるための十分な対イオンをエミッター材料として使用する。
本発明の典型的なLEECは、エレクトロルミネセンスを示す有機半導体層として、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及び電荷を釣り合わせるための十分な対イオンを含む層を有する2つの電極を含み得る。ルミネセンス層は、荷電有機熱活性化遅延蛍光(TADF)種及び対イオンから成るか又はそれらから基本的に成り得る。しかしながら、技術上周知なように、イオン性液体、例えば1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート[Bmim][PF
6]を利用してさらなるイオンを与えてよい。他の選択肢としては、エレクトロルミネセンス材料を層をマトリックス、例えば荷電有機材料のマトリックスに分散させるホストゲストシステムがある。
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、下記式Vの化合物を提供する。
【0111】
式中、D、R
11、R
12、A
1、A
2、及びA
3は、上記と同じ意味を有し、基Z、並びに/または基A
1、A
2、及びA
3が電荷を帯びている場合はそれらの電荷を釣り合わせるための適切な対イオンを有する。LEECのエミッター材料として用いないときには、式Vの化合物は、A
1、A
2、及びA
3のどれも荷電していない場合でさえ、荷電基Z及び対応する対イオン(及び任意的な連結基L)を伴わずに提供可能である。式Vの化合物はTADF分子なので、それらは、荷電又は非荷電時に、OLED等の発光デバイスに使用可能である。従って、本発明は、発光デバイス、例えば有機発光ダイオードを包含する。
従って本発明は、下記式XIVの化合物を提供する。
【0113】
式中、各基R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、各出現について独立に、-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4);置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等から成る群より選択される。置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
【0114】
式XIVの化合物は、良いTADF挙動を示し、OLED等のデバイスに使用可能である。従って本発明は、式XIVの化合物を含む発光デバイス、例えば有機発光ダイオードを包含する。
例えば式XIVの化合物は下記式XVに従い得る。
【0116】
さらなる態様によれば、本発明は、下記式XIIIcの化合物を提供する。
【0118】
式中、アクセプター基-CO
2R
*のR
*は、各出現について独立に、H、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10);及び-CO
2-L-Zから選択され、Lは、任意的な連結基であり、Zは荷電基であり、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式II、III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有し;かつ
R
11、R
12及びDは、各出現について独立に、荷電の有無にかかわらず、式Vの化合物について上述したのと同じ意味を有する。
例えばR
*はアルキル又はHであり得る。
少なくとも1つの荷電基Zが存在するときには、式XIIIcの化合物は、電荷を釣り合わせるための適切な対イオンを有する。或いは、式XIIIcの化合物は荷電していなくてよい。
式XIIIcの化合物はTADF分子なので、荷電時又は非荷電時に、OLED等の発光デバイスに使用可能である。従って本発明は、式XIIIcを含む発光デバイス、例えば有機発光ダイオードを包含する。
従って、例えば式XIIIcの化合物は、下記式XXIVの形を取り得る。
【0120】
式中、アクセプター基-CO
2R
*のR
*は、各出現について独立に、-H、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)及び-CO
2-L-Zから選択され、Lは、任意的な連結基であり、Zは荷電基であり、存在する場合の各L及び各Zは、各出現について独立に、式II、III又はIVの化合物について上述したのと同じ意味を有し;かつドナー部分は、式VIに関して上述したようにカルバゾール誘導体である。
或いは、置換基R
*、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16がどれも荷電基Zを持たなくてもよい。該化合物は中性であるので、R
*は、-H、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)から成る群より選択され;各R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、下記:-H、環状であってよく、不飽和であってよい置換若しくは非置換一級、二級又は三級アルキル(例えばC1-C10、より適切にはC1-C4);置換若しくは非置換アリール又はヘテロアリール、-CF
3、-OMe、-SF
5、-NO
2、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、アリール、アリールヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシ、シアノ、チオ、ホルミル、エステル、アシル、チオアシル、アミド、スルホンアミド、カルバマート、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド等から成る群より選択され得る。
置換基がアミノである場合、それはNH
2、NHR又はNR
2であってよく、窒素上の置換基Rは、アルキル、アリール又はヘテロアリール(例えば置換若しくは非置換C1-C20、より適切にはC1-C10)であり得る。
カルボン酸アクセプター基にもドナー部分にも電荷を帯びている式XXIVの例は、下記式XXVである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】TADF化合物の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す。
【
図2a】発光電気化学セルのエレクトロルミネセンス挙動を示す。
【
図2b】発光電気化学セルのエレクトロルミネセンス挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0124】
いくつかの実施形態の詳細な説明及び実験結果
化合物の合成
式XI及びXIIの化合物の合成を下記スキーム1に示す。
修飾カルバゾール種以外のTADF種組込みドナー部分の製造時に同様の手順を利用し得る。
【0126】
スキーム1. LEEC XI及びXIIのための荷電TADFエミッターの合成。a. NBS、ACN、rt、1時間。b. i) NaH、THF、rt、30分、ii) TBDMSiCl c. i) n-BuLi、THF、-78℃、30分、ii)過剰の1,4-ジヨードブタノン。d. NaH、イミダゾール、THF、還流、4時間。e. i) NaH、4、THF、rt、30分、ii) 2当量の4,5-ジフルオロフタロニトリル、rt、4時間。f. i) NaH、4、THF、rt、30分、ii) 0.6当量の4,5-ジフルオロフタロニトリル、rt、4時間。g. i) MeI、ACN、40℃、2時間、ii) 飽和NH
4PF
6(水溶液)。
スキーム1に示す手順において、N-ブロモスクシンイミドを用いた3-ブロモカルバゾール1の調製では、いくらかの出発材料及び3,6-ジブロモカルバゾールが混入したが、両方ともトルエンからの分別再結晶により除去できた。3の調製は、リチウム化TBDMS保護3-ブロモカルバゾール2中間体の過剰1,4-ジヨードブタンへの滴下導入により良い収率で達成された。
化合物4は、ワンポット様式で、ナトリウムイミダゾラートの3によるS
N2反応後に、水素化ナトリウムを用いたシリル脱保護によって得られた。
化合物5及び6は、4を準化学量論的又は化学量論的な4,5-ジフルオロフタロニトリルと、それぞれ塩基性条件下で求核芳香族置換反応経由で反応させることによって合成した。目標とした荷電TADFエミッターXI及びXIIは、ヨードメタンによるメチル化及びNH
4PF
6飽和溶液によるアニオンメタセシス後に、それぞれ、6工程にわたって、33%及び27%の収率で得られた。DCMにおけるXI及びXIIの溶解性は、アニオンメタセシス後に、元のヨード塩の溶解性に比べて大いに改善された。
【0127】
XIとXIIは両方とも、サイクリックボルタンメトリーによってMeCN溶液で不可逆的酸化波及び可逆的酸化波を示す。
XIのHOMO(-5.93eV)は、電子求引性フッ素原子の存在のためXIIのHOMO(-5.87eV)よりわずかに低い。XIのLUMO(-2.92eV)は、XIIのLUMO(-2.99eV)よりわずかに高く、これは、XIIのLUMOを下げる第2のカルバゾール部分によって付与される共役増大のためである。これらの構造と特性の関連性は、XIIの吸収プロファイルがXIの吸収プロファイルに比べてわずかにレッドシフトしている吸収スペクトルに反映されている(
図1参照)。
図1に、298KでのXI(線A)及びXII(線B)について通気アセトニトリル中における正規化吸収スペクトルを示す。脱気アセトニトリル(線A1)及び薄膜(線A2)中におけるXIについての対応発光スペクトルをも示す。脱気アセトニトリル(線B1)及び薄膜(線B2)中におけるXIIについての対応発光スペクトルをも示す。
XI及びXIIについての電気化学及び発光データを下表1に要約する。λ
emは、最大発光の波長であり、Φはフォトルミネセンス量子収率であり、τ
eは蛍光寿命であり、E
HOMO及びE
LUMOは、サイクリックボルタンメトリーから得られるエネルギー準位であり、ΔEはその差である。
【0128】
表1. TADF-LEEC色素XI及びXIIの発光及び電気化学データ。
【0129】
XIとXIIの両方についてMeCN溶液及び固体薄膜中での発光は、CT(電荷移動)発光の幅広く、構造不定の特徴であり;マッチした励起及び吸収スペクトルは、高レベルの純度を指す。MeCN中での発光スペクトルは、薄膜中の発光に比べて、それぞれ約30〜40nmだけレッドシフトする。薄膜は、いずれのドーパント又は他の添加剤も存在しない膜にアセトニトリル溶液から成膜された。
溶液中では、XI及びXIIの両方とも発光は弱く、観察された寿命はナノ秒領域である。サンプルの脱気時に光物理的特性の変化はほとんどなく、MeCN中ではXI及びXIIがフルオロフォアとして作用し、TADFが観察されないことを示唆している。これは、溶媒による三重項状態のより強い安定化がΔE
ST増加をもたらすことによる可能性が高い。類似点により、ジカルバゾリルジシアノベンゼンは、トルエン溶液中で473nmにてTADFにより47%のフォトルミネセンス量子収率Φ
PLで発光することが安達によって示された(参考文献1a)。純粋(neat)膜内では、XI及びXIIは、通気条件下でそれぞれ、9.1%及び35.5%というΦ
PL値でずっと明るい。重要なことには、このとき短成分も長いマイクロ秒成分も含め、TADF発光の特徴である発光寿命の双指数関数的減衰が観察される。
スキーム1と同様の経路をたどる式XVIIの化合物の合成を下記スキーム2に示す。
上記スキーム1からの化合物4とビス(4-フルオロフェニル)スルホンとの反応が中間体7を与え、これをヨードメタンによるメチル化及びNH
4PF
6飽和溶液によるアニオンメタセシスによって生成物XVIIに変換する。
【0131】
式XVIIIの化合物の合成を下記スキーム3に示す。
0.5モル当量のカルバゾールと4,5-ジフルオロフタロニトリルとの反応が化合物8をもたらし、次にこれを4と反応させて中間体9を形成する。ニトリル官能基の加水分解が酸性化によりジカルボン酸10をもたらす。ヨードメタンによるメチル化及びNH
4PF
6飽和溶液によるアニオンメタセシスが生成物XVIIIを与える。
【0133】
式XIXの化合物の合成を下表4に示す。
上記スキーム1の化合物6の加水分解が酸性化によりジカルボン酸11をもたらす。ヨードメタンによるメチル化及びNH
4PF
6飽和溶液によるアニオンメタセシスが生成物XIXを与える。
【0135】
式XXの化合物の合成を下記スキーム5に示す。
上記スキーム1でカルバゾールについて示した経路と同様の経路でジフェニルアミン12をイミダゾール誘導体13に変換する。13とビス(4-フルオロフェニル)スルホンとの反応が中間体14を与える。ヨードメタンによるメチル化及びNH
4PF
6飽和溶液によるアニオンメタセシスが生成物XXをもたらす。
【0137】
式XXI、XXII及びXXIIIの合成を下記スキーム6に示す。
カルバゾールと4,5-ジフルオロフタロニトリルの反応が中間体15を与え、これが加水分解されてジカルボン酸のカリウム塩16となる。n-Pr
4NBrとの反応が生成物XXIを与える。3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール17を用いる同様の手法により、4,5-ジフルオロフタロニトリルと反応して中間体18が得られる。加水分解がジカルボン酸XXIIのカリウム塩をもたらす。n-Pr
4NBrとの反応によって生成物XXIIIへの変換を行なう。
【0139】
式XXVの化合物の合成を下記スキーム7に示す。
イミダゾールと1,4-ジブロモブタンの反応が19を与え、これが11(スキーム4参照)と反応するとジエステル20をもたらす。
ヨードメタンによるメチル化及びNH
4PF
6飽和溶液によるアニオンメタセシスが生成物XXVをもたらす。
【0141】
TADF-LEEC色素XIII〜XXIVの発光及び電気化学データを下表2に示す。
【0143】
a.DCM中、298K。
b.PMMA(10wt%)でドープし、スピンコートした。
c.発光最大値及び半値全幅(FWHM)を脱気溶液から報告する。FWHMは括弧内。
d H
2SO
4(水溶液)中0.5M硫酸キニーネ を基準として用いた(PLQY:54.6%)。引用した値は、5回の凍結-ポンプ-解凍サイクルによって調製した脱気溶液中のものである。括弧内の値は、5分間空気を泡立たせることによって調製した通気溶液についてのものである。
e 支持電解質として0.1Mの[nBu
4N]PF
6及び内部基準としてFc/Fc
+を含むMeCN中。HOMO及びLUMOエネルギーは、関係E
HOMO/
LUMO=-(E
oxpa,1/E
redpc,1+4.8)eVを用いて計算した。式中、E
oxpa及びE
redpcは、それぞれアノードピーク電位及びカソードピーク電位である。ΔE=-(E
HOMO-E
LUMO)。N/A=該当なし。
【0144】
LEECの製造
本発明の化合物は、LEECの製造に利用可能である。
一般に、パターン化酸化インジウム錫(ITO)コートガラス基板の上でLEECを調製する。発光層の成膜前に、セルの再現性を高めるために80nmのPEDOT:PSSをコーティングした。
XIIについては、発光化合物のみから成るか又はイオン性液体(IL)1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート[Bmim][PF
6]を4:1のモル比で添加したアセトニトリル溶液のスピンコーティングによって発光層(100nm)を調製した。発光層の成膜後、デバイスを不活性雰囲気のグローブボックス内に移した。デバイスを完成させるため、不活性雰囲気のグローブボックスに組み込まれた高真空チャンバー内で、上部電極として働く70nmのアルミニウム層を熱的に蒸発させた。
XIについては、元の状態の(無添加剤)固体膜層内では当該塩は発光しなかったので、ホストゲストマトリックスを利用した。イオン性ホストでスピンコーティングして、機能するLEECを作り出した。
化合物XIは、EP2733188(参照によってここに援用される)に記載の公知のイオン性ホストNS25のマトリックス内で調製した化合物を用いてうまくLEECに加工することができた。
【0146】
LEECの性能を決定するため、ブロック波パルス電流駆動法(1000Hz及び50%のデューティサイクル)を10、25及び50Am
-2の異なる平均電流密度で用いてデバイスを操作した。この操作モードは、ターンオン時間を短くし、時間に対してさらに持続した挙動をもたらすので、定電圧モードよりこのモードを選択した。
XII及びXII:[Bmim][PF
6]の4:1混合物を発光層用成分として用いたLEECについて、輝度及び平均電圧を
図2に示す。
図2aは、XII:[Bmim][PF
6]の4:1混合物をルミネセンス層として用いたLEECの経時的な輝度を示す。経時的な平均電圧は、挿入グラフに示してある。
図2bは、ルミネセンス層としてXIIのみを用いたLEECについての同様のグラフを示す。
図2a及び2bに示すように、異なる平均電流密度を利用した:線Aとして示す50Am
-2、線Bとして示す25Am
-2及び線Cとして示す10Am
-2。
【0147】
研究した異なるデバイスに関する結果を下表3に要約する。初めに、両LEECについて、平均印加電圧は最初の数秒間で急速に降下する。駆動電圧の低下と同時に、輝度の上昇が観察された。これは最大値に達してから、時間に対してゆっくり低減した。
このことは、電極界面へのイオンの遊走及びその後のドープ領域の形成のため電子及び正孔の注入バリアが減少するので、LEECにとっては典型的である。注入バリアの減少は、設定電流密度を持続するための駆動電圧低下につながる。操作時間の増加につれてドープ領域が拡大し、励起子の徐々に増加するクエンチングをもたらし、結果として(非永続の)輝度低下となる。
【0148】
表3. ブロック波パルス電流を用いて1000Hzの周波数及びデューティサイクル50%で異なる電流密度にてバイアスをかけたLEECデバイス:ITO/PEDOT:PSS/XII/Al及びITO/PEDOT:PSS/XII:[Bmim][PF
6]4:1/Alの性能。
【0149】
この表は、試験した2つのLEECについて、輝度(Lum
max)、電力変換効率(PCE
max)、外部量子効率(EQE
max)及びフォトルミネセンス量子収率(PLQY)を示す。
図2では、電流密度が低下するにつれて輝度が低減するにもかかわらず、この関連性は決して直線的でないことが明らかに分かる。イオン性遷移金属錯体に基づくLECについて同様の挙動が観察された。この効果は、電荷キャリア若しくは励起状態又はその両方の低減による励起子(excition)のクエンチング低減に起因した。デバイスを固定平均電流密度で操作すると、デバイスの効率は輝度に正比例する。電流密度を5倍下げた状態では、XIIのみ(イオン性液体なし)のデバイスの輝度は、約26cd・m
-2から13cd・m
-2に低下するだけである。従って、デバイスの電力効率は、0.39%の外部量子収率(EQE)で(ランバート発光を仮定して)強力に0.7lum W−1まで上昇する。
これらのLEECのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルは、
図1のフォトルミネセンススペクトルと類似している。全てのセルは、活性領域から均質に発光した。スペクトルは、538nmに中心を置く構造不定の緑色発光を特徴とする(CIE座標:0.35,0.57)。
【0150】
参考文献−下記文献は参照によって完全に本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】