特表2018-505777(P2018-505777A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-505777高窒素ドープメソポーラス炭素複合材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-505777(P2018-505777A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(54)【発明の名称】高窒素ドープメソポーラス炭素複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/24 20060101AFI20180202BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180202BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20180202BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20180202BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20180202BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20180202BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20180202BHJP
   C07C 5/333 20060101ALN20180202BHJP
   C07C 15/46 20060101ALN20180202BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180202BHJP
【FI】
   B01J27/24 Z
   B01J37/02 101D
   B01J37/08
   B01J37/04 102
   B01J27/24 M
   B01J20/22 A
   B01J20/30
   B01J20/28 Z
   C07C5/333
   C07C15/46
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-539024(P2017-539024)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2016051196
(87)【国際公開番号】WO2016116542
(87)【国際公開日】20160728
(31)【優先権主張番号】15152038.4
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15152039.2
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500262120
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE STRASBOURG
(71)【出願人】
【識別番号】304052499
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク−シーエヌアールエス
(71)【出願人】
【識別番号】591095362
【氏名又は名称】コンシグリオ・ナツィオナーレ・デレ・リチェルケ
【氏名又は名称原語表記】CONSIGLIO NAZIONALE DELLE RICERCHE
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】パン−フー,クオン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンバスティアーニ,ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,イェフェン
(72)【発明者】
【氏名】バ,ウセイヌ
(72)【発明者】
【氏名】ギュエン−ジーニャ,ラン
(72)【発明者】
【氏名】ナット,ジーン−マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジュオン−ヴェト,クオン
【テーマコード(参考)】
4G066
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G066AA04B
4G066AA05C
4G066AA19C
4G066AA20C
4G066AA22C
4G066AA43A
4G066AD06B
4G066BA23
4G066CA51
4G066CA52
4G066DA01
4G066FA12
4G066FA21
4G066FA23
4G066FA38
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA21C
4G169BA29C
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BB16C
4G169BC75B
4G169BD01C
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD06C
4G169BE08C
4G169CA07
4G169CA11
4G169CA17
4G169CB02
4G169CB18
4G169CB63
4G169CB81
4G169CC22
4G169CC23
4G169DA05
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB14X
4G169EC22Y
4G169EC27
4G169EC28
4G169EE01
4G169EE06
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB29
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA51
4H006BA60
4H006BA81
4H006BA85
4H039CA21
4H039CC10
(57)【要約】
本発明は、高Nドープメソポーラス炭素マクロ複合材の製造を目的とした新規方法、およびいくつかの工業的に関連する触媒変換における高効率金属フリー不均一触媒としての使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高窒素ドープメソポーラス炭素相(活性相)の薄層で被覆したマクロ担体から製造されたマクロ複合材の製造方法であって、前記方法は:
(a)(i)(NHCO、(ii)アルドース単糖類およびそのグリコシル化体、二糖類ならびにオリゴ糖類またはバイオマス変換由来デキストリンから選択される炭素源としての炭水化物、ならびに(iii)クエン酸、ならびに他のモノ−、ジ−、トリ−、およびポリカルボン酸またはそのアンモニウム一塩基体、二塩基体、三塩基体およびポリ塩基体から選択されるカルボン酸源の水溶液を準備すること;
(b)炭素系、ケイ素系もしくはアルミニウム系材料、またはその二成分混合物から成るマクロ担体を準備し;前記マクロ担体は単一の物体またはより小さい物体の集合体であり、前記担体の全体寸法は直交3方向に0.1μm〜100cmの範囲であり;
必要に応じて、工程(b)の前記マクロ担体を:
(a1)クエン酸およびアルドース単糖類およびそのグリコシル化体、二糖類ならびにオリゴ糖類から選択される炭素源としての炭水化物の水溶液を準備する工程;
(c1)工程(c)の前に、工程(b)のマクロ担体を、前記工程(a1)の水溶液中に適切な時間沈める/浸漬または含浸する工程;
(d1)必要に応じて、過剰な水溶液を工程(c1)で使用する場合、前記工程(a1)の水溶液から沈めたマクロ担体を取り出す工程;
(e1’)必要に応じて、前記得られたマクロ担体を、45〜55℃、好ましくは50℃±3℃の低温において空気下穏やかに熱処理(乾燥)する工程;
(e1)前記得られたマクロ担体を、110〜150℃±5℃、好ましくは130℃±5℃の中程度の温度において空気下第一熱処理(乾燥)する工程;および
(f1)前記熱処理(乾燥)したマクロ担体を、600〜800℃±10℃、好ましくは600℃±5℃のより高温において不活性雰囲気下第二熱処理することにより、炭素層で被覆したマクロ複合材を製造する工程
を含む不動態化方法に付すこと;
(c)前記工程(a)の水溶液中適切な時間、不動態化処理を使用する場合、工程(b)の前記マクロ担体、または工程(f1)で得られた前記マクロ担体を沈める/浸漬または含浸すること;
(d)必要に応じて、過剰な水溶液を工程(c)で使用する場合、前記工程(a)の水溶液から前記沈めたマクロ担体を取り出すこと;
(e’)必要に応じて、前記得られたマクロ担体を、45〜55℃、好ましくは50℃±3℃の低温において空気下穏やかに熱処理(乾燥)すること;
(e)前記得られたマクロ担体を、110〜150℃±5℃、好ましくは130℃±5℃の中程度の温度において空気下第一熱処理(乾燥)すること;
(f)必要に応じて、前記熱処理(乾燥)したマクロ担体を:
1〜2時間、400〜500℃±10℃、好ましくは400℃±5℃、または
2〜4時間、300℃±10℃
のより高温において空気下第二熱処理し;それにより、高Nドープメソポーラス炭質材料の20〜200nm薄層で被覆されたマクロ担体から成るマクロ複合材を製造すること(前記メソポーラス炭質材料中のN原子%は25〜40%である);および
(g)必要に応じて、工程(f)で得られた前記マクロ複合材を、不活性雰囲気下600〜900℃±10℃、好ましくは700〜900℃±10℃の範囲の温度まで加熱することにより第三熱処理し;それにより、高Nドープメソポーラス炭質材料の10〜100nm薄層で被覆されたマクロ担体から成るマクロ複合材を製造すること(前記メソポーラス炭質材料中のN原子%は2〜35%、好ましくは5〜30%、最も好ましくは約15%(12〜18%)である)
を含み;
前記方法は、工程(f)または(g)の少なくとも1つを含む、
前記方法。
【請求項2】
工程(c)〜(f)を、工程(g)を実施する前に少なくとも1回繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(a)の水溶液中、(NHCOが1〜8モル/L、好ましくは2〜5モル/Lの範囲の濃度で存在し;前記炭水化物炭素源が1〜5モル/L、好ましくは2〜4モル/Lの範囲の濃度で存在し;および前記カルボン酸源が1〜3モル/L、好ましくは2モル/Lの範囲の濃度で存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マクロ担体を、純粋あるいはTiO、SiO、Alなどの異種元素でドーピングしたβ−SiCもしくはα−SiCまたはSiC系担体;アルミナ(純粋あるいはTiO、SiOなどの異種元素でドーピングしたα−またはβ−Alまたはアルミナ系担体);またはその各々が粒子、フレーク、リング、ペレット、成形品、ビーズもしくはフォームの形態であってよい炭素;またはカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンもしくは数層グラフェンから選択される材料から製造する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マクロ担体を、シリカ(SiO)、SiC、アルミナ(Al)またはチタニア(TiO);好ましくはシリカ(SiO)、SiCまたはアルミナ(Al)から製造する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マクロ担体を、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)またはチタニア(TiO)、好ましくはシリカ(SiO)またはアルミナ(Al)から製造し、前記方法は請求項1に記載の不動態化方法を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記沈める/浸漬または含浸工程(c)を1〜10分間、好ましくは2分間実施する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一熱処理工程(e)を1〜10時間、好ましくは1〜2時間実施する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二熱処理工程(f)を1〜10時間、好ましくは1〜2時間実施する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第三熱処理工程(g)を1〜10時間、好ましくは2時間実施する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記Nドープ炭質材層が:
1〜40%、好ましくは5〜40%、好ましくは10〜35%、好ましくは約15%(例えば、12〜18%)のN原子含有率を有し;
2〜50nm、好ましくは2〜30nm;最も好ましくは3〜12nmの平均ポア径を有し;および
5〜200±5nm、好ましくは10〜100±5nmの厚さを有する
高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材。
【請求項12】
触媒材料としての、請求項11に記載のマクロ複合材の使用。
【請求項13】
前記マクロ複合材を、酸素還元反応、炭化水素の水蒸気フリー脱水素またはHSの元素硫黄への部分酸化における触媒材料として使用する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
液相および気相水素化、直鎖アルカンおよび揮発性有機化合物(VOC)の酸化、フィッシャー−トロプシュ法によるCOの水素化、および合成ガス混合物のメタン化における金属および酸化物用触媒担体としての、請求項11に記載のマクロ複合材の使用。
【請求項15】
誘導加温機器における金属フリー面状ヒーターの製造のための、請求項11に記載のマクロ複合材の使用。
【請求項16】
揮発性有機化合物用吸着剤としての、請求項11に記載のマクロ複合材の使用。
【請求項17】
水および排水処理用促進酸化処理における金属フリー触媒としての、請求項11に記載のマクロ複合材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、共に2015年1月21日に出願された欧州特許出願第15152038.4号、欧州特許仮出願第15152039.2号の優先権を主張し、この全文は参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
技術分野
本発明は、高窒素ドープメソポーラス炭素マクロ(macroscopic)複合材の製造を目的
とした新規方法、およびいくつかの工業的に関連する触媒変換における高効率金属フリー不均一触媒としての使用に関する。
【0003】
本文書では、イタリック体および括弧( )内の数は、この文書の最後の参考文献一覧を表す。
【背景技術】
【0004】
特定の目的に適合させた金属フリー触媒アーキテクチャーの観点から、安価で容易な許容可能なビルディングブロックから設計および製造された基本的金属系触媒方法の再考は、現代の真に持続可能な触媒の挑戦的問題である。窒素ドープ1Dおよび2D炭素ナノ材料(N−CNM)は、効率的に触媒方法の増加を促進可能な効率的金属フリー系としてこの10年で登場した(1〜5)。近年の研究は、ハニカム状炭素構造中の窒素の包接が如何にCsp2ネットワークの電気的中性を破壊し(6、7)、いくつかの触媒変換を助長可能な改良された試薬の吸着特性を有する荷電部位を生成することを示した。N−CNM合成で使用される方法の中で、化学蒸着(CVD)はいまだに最も効率的で広範に使用される技術であり;異なる窒素源の存在下でのCNMのアニーリングおよびN含有有機前駆体の直接炭化などの他のアプローチ(3、8)は価値ある代替合成経路となる。これらの方法の実行可能性に反して、炭化水素および水素雰囲気下、概して高動作温度に加えて、比較的高毒性を有する窒素前駆体、すなわち、ジシアンジアミド(9)、メラミン(10)、ポリピロール(11)、アンモニア(12、13、14)は、最終的なNドープ材料を得るために通常必要とする。加えて、これらの合成プロトコールの低効率は、概して、出口ガス状反応物の大規模なリサイクル要求する、使用した窒素および炭素前駆体の重大な損失をもたらす。さらに、N−CNMを得るために必要とされる厳しい反応条件は、概して、多くの無駄な副産物の生成および加工費増加の原因となる。最後だが最小ではなく、多くの窒素前駆体は、その適切な取り扱いおよび加工のための特定の注意をしばしば必要とする比較的毒性化合物である。ナノカーボン側壁および先端のよりマイルドな化学的官能化などのCNMのN装飾(N-decoration)への代替アプローチは、特定の触媒変換におけるその化学的環境だけでなくN官能性の役割に対する新規な洞察を得るための理想的パラダイムとして近年関心を持たれている。その著しい触媒性能にもかかわらず、これらの材料は、高温での感温性(低温または中温触媒方法のみ理想的である)から厳しい合成制限(すなわち、その粉末状質感のため扱いにくい高級な手順および難しい材料の取り扱い)まで厳しく限定される弱点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、当技術分野で公知の主要な不都合を克服し、高Nドープ炭素系材料の製造のためのより容易で環境に優しい合成方法を考案することのニーズがいまだ存在する。特に、様々なマクロ担体への「高柔軟性」被膜の形態でのそれらの実施により、効率的金属フリーで環境に優しい不均一触媒として使用するための多種多様な複合材の利用を可能とする
ことは、いまでも、いくつかの工業的関連触媒変換に取り組む挑戦的目標である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
定義
本明細書で使用するとき、「マクロ(macroscopic)」、例えば材料を表す場合、その
担体もしくは触媒、または集合体という語は、当技術分野の用語の慣用的な意味内の「巨視的な大きさの」を意味する。例えば、本明細書で使用するとき、「マクロ材料」または「マクロ担体」は、直交する3方向で、μmの10分のいくつか(≧0.1μm)からcmの10分のいくつかまでまたはそれ以上(≦100cm)までの範囲である材料または担体を表す。場合によっては、担体は、より小さい寸法、すなわち、<0.1μmを有するナノ構造材料も含む。かかる場合、例えば担体を表す場合、「マクロ」という語は、後続の下流の応用のためのマクロ担体にこれらのナノ構造材料を最終的に集合することを意味する。いかなる場合でも、最終マクロ担体/材料/触媒は、≧0.1μmの寸法を有するだろう。例えば、本発明の目的内のマクロ材料、担体または触媒は、直交3方向に10μm〜90cmの大きさの範囲であり得る。マクロ材料または担体は、粒子、フレーク、リング、ペレット、成形品、ビーズまたはフォームなどの離散物体の形態であり得る。あるいは、より小さな物体のマクロ集合体であり得る。同様に、本発明の目的内の「より小さな物体のマクロ集合体」は、その大きさが直交3方向にμmの10分のいくつか(≧0.1μm)からcmの10の位までまたはそれ以上(≦100cm)の範囲である(より小さな物体の)集合体を表す。例えば、マクロ材料はカーボンナノチューブから構成され得るが、以下により得ることができる:
(1)ナノチューブ−ナノチューブ接合を必要としないで絡み合ったナノチューブのランダムに配列した等方性集合;(2)二次元ナノチューブ接合を含むランダムに配列した等方性集合または規則配列ナノチューブ構造;(3)三次元ナノチューブ接合を含むランダムに配列した等方性集合または規則配列ナノチューブ構造;(4)(1)、(2)および(3)のいずれかの組合せから構成される構造。本明細書でさらに使用するとき、「接合」は、いずれか(全て)の角度(複数可)においてナノチューブ間の結合(共有結合または非共有結合)のいずれかの形態であると見なされる。本明細書でさらに使用するとき、「二次元ナノチューブ接合」は、垂直な2方向に(またはいずれもの角度を有する同じ2D面に)少なくとも100nmであり、一方、両方の垂直方法(2D面)に直交する方向に、ナノチューブは概して100nm未満であるナノチューブを表す。同様に、「三次元ナノチューブ接合」は、直交する3方向に少なくとも100nmであるナノチューブを表す。
【0007】
窒素原子を用いたドーピングに関して本明細書で使用するとき、「ドーピング」という語は、炭素原子の代わりに炭素原子格子中に窒素原子を配置することを表す。例えば、「NドープCNT」は、CNT格子中炭素原子に置き換えて「注入した」窒素原子を有するカーボンナノチューブである。
【0008】
本明細書で使用するとき、略語「N@C」は、以下に記載するように、Nドープメソポーラス炭素構造を表す。N@C層で被覆/装飾したマクロ担体は、本明細書中、「マクロ複合材」または「マクロ触媒」と略記する/表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前述の通り、近年、高Nドープ炭素複合材の製造およびいくつかの触媒方法における金属フリー系としてその後続する応用を目的とする新規合成方法の開発への関心が高まっている。
【0010】
これに関連して、本明細書では、高窒素ドープメソポーラス炭素相(活性相)の薄層で被覆したマクロ担体(ホストマトリックス)から製造されたマクロ複合材の新規製造方法
を提供し、前記方法は以下を含む:
(a)(i)(NHCO、(ii)アルドース単糖類およびそのグリコシル化体、二糖類ならびにオリゴ糖類から選択される炭素源としての炭水化物、ならびに(iii)クエン酸、ならびに他のモノ−、ジ−、トリ−、およびポリカルボン酸またはそのアンモニウム一塩基体、二塩基体、三塩基体およびポリ塩基体から選択されるカルボン酸源の水溶液を準備すること;
(b)炭素、ケイ素またはアルミニウム系材料またはその二成分混合物から製造されたマクロ担体を準備すること;
(c)工程(b)のマクロ担体を、工程(a)の水溶液中に適切な時間沈める/浸漬または含浸すること;
(d)必要に応じて、過剰な水溶液を工程(c)で使用する場合、水溶液から沈めたマクロ担体を取り出すこと;
(e)得られたマクロ担体を、110〜150℃±5℃、好ましくは130℃±5℃の中程度の温度において空気下第一熱処理(乾燥)すること;および
(f)熱処理(乾燥)したマクロ担体を、400〜500℃±10℃、好ましくは450℃±5℃、最も好ましくは400℃±5℃のより高温において空気下第二熱処理することにより、高度にNドープしたメソポーラス炭質材料の薄層で被覆されたマクロ担体から構成されたマクロ複合材を製造すること;および
(g)必要に応じて、工程(f)で得られたマクロ複合材を、不活性雰囲気下600〜900℃±10℃、好ましくは700〜900℃±10℃または700〜800℃±10℃の範囲の温度まで加熱することにより第三熱処理すること。
【0011】
有利に、工程(g)を実施する場合、処理温度(すなわち、不活性雰囲気下600〜900℃±10℃、好ましくは700〜900℃±10℃または700〜800℃±10℃)を、例えば、直線加熱ランプにより次第に達成する。例えば、10℃/分の加熱速度を使用して工程(g)の処理温度を達成してもよい。
【0012】
変法では、方法は、工程(d)および(e)の間で、工程(d)で得られたマクロ担体の穏やかな乾燥工程(e’)をさらに含んでもよい。有利に、この穏やかな乾燥工程を、45〜55℃、好ましくは50℃±3℃の低温において空気下で実施してもよい。
【0013】
変法では、工程(f)を、400〜500℃±10℃、好ましくは450℃±5℃、最も好ましくは400℃±5℃のより高温を使用する場合以外、長時間で300℃±10℃において空気下で実施してもよい。変法では、方法は、工程(b)のマクロ担体を:
(c1)工程(c)の前に、工程(b)のマクロ担体を、炭素源で被覆する工程;
(e1)得られたマクロ担体を、110〜150℃±5℃、好ましくは130℃±5℃の中程度の温度において空気下第一熱処理(乾燥)する工程;および
(f1)熱処理(乾燥)したマクロ担体を、600〜800℃±10℃、好ましくは600℃±5℃のより高温において不活性雰囲気下第二熱処理することにより、炭素層で被覆したマクロ複合材を製造する工程
を含む不動態化方法に付すことをさらに含んでもよい。
【0014】
不動態化方法で使用する炭素源は、熱処理(e1)および(f1)の際、炭素層を得ることができるいずれもの適切な炭素源であり得る。例えば、炭素源は、フェノール性樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)等であってよい。炭素源は、炭水化物の重合に関与するクエン酸などのカルボン酸の存在下、アルドース単糖類およびそのグリコシル化体、二糖類ならびにオリゴ糖類から選択される炭水化物であってもよい。
【0015】
従って、方法は、工程(b)のマクロ担体を:
(a1)クエン酸およびアルドース単糖類およびそのグリコシル化体、二糖類ならびに
オリゴ糖類から選択される炭素源としての炭水化物の水溶液を準備すること;
(c1)工程(c)の前に、工程(b)のマクロ担体を、工程(a1)の水溶液中に適切な時間沈める/浸漬または含浸する工程;
(d1)必要に応じて、過剰な水溶液を工程(c1)で使用する場合、工程(a1)の水溶液から沈めたマクロ担体を取り出す工程;
(e1’)必要に応じて、得られたマクロ担体を、45〜55℃、好ましくは50℃±3℃の低温において空気下穏やかに熱処理(乾燥)する工程;
(e1)得られたマクロ担体を、110〜150℃±5℃、好ましくは130℃±5℃の中程度の温度において空気下第一熱処理(乾燥)する工程;および
(f1)熱処理(乾燥)したマクロ担体を、600〜800℃±10℃、好ましくは600℃±5℃のより高温において不活性雰囲気下第二熱処理することにより、炭素層で被覆したマクロ複合材を製造する工程
を含む不動態化方法に付すことをさらに含んでもよい。
【0016】
工程(f1)で得られた不動態化マクロ担体を、工程(c)に従って沈める/浸漬するまたは含浸してもよい。好ましくは、工程(f1)で得られた不動態化マクロ担体を、工程(c)に付す前に室温(25℃)まで冷却する。
【0017】
有利に、マクロ担体がシリカ(SiO)、アルミナ(Al)またはチタニア(TiO);好ましくはシリカ(SiO)またはアルミナ(Al)である場合、不動態化方法を実施する。不動態化方法は、Nドープメソポーラス炭質層で被覆する前に、マクロ担体を炭素層で被覆することを可能とする。中間炭素層は、Nドープメソポーラス炭質と担体との化学相互作用を減少させ、マクロ担体に対するNドープメソポーラス炭質層の接着力を強化することを可能とする。マクロ担体がC含有材料から製造されていない場合、例えば、マクロ担体がシリカ(SiO)、アルミナ(Al)またはチタニア(TiO);好ましくはシリカ(SiO)またはアルミナ(Al)担体である場合、これは特に有用である。
【0018】
変法では、方法は、工程(g)を選択して、工程(f)を省略してもよい。従って、「工程(f)なし」変法では、高窒素ドープメソポーラス炭素相(活性相)の薄層で被覆したマクロ担体(ホストマトリックス)から製造されたマクロ複合材の製造方法を提供し、前記方法は以下を含む:
(a)(i)(NHCO、(ii)アルドース単糖類およびそのグリコシル化体、二糖類ならびにオリゴ糖類から選択される炭素源としての炭水化物、ならびに(iii)クエン酸、ならびに他のモノ−、ジ−、トリ−、およびポリカルボン酸またはそのアンモニウム一塩基体、二塩基体、三塩基体およびポリ塩基体から選択されるカルボン酸源の水溶液を準備すること;
(b)炭素、ケイ素またはアルミニウム系材料またはその二成分混合物から製造されたマクロ担体を準備すること;
(c)工程(b)のマクロ担体を、工程(a)の水溶液中に適切な時間沈める/浸漬または含浸すること;
(d)必要に応じて、過剰な水溶液を工程(c)で使用する場合、水溶液から沈めたマクロ担体を取り出すこと;
(e)得られたマクロ担体を、110〜150℃±5℃、好ましくは130℃±5℃の中程度の温度において空気下第一熱処理(乾燥)すること;および
(g)工程(e)で得られたマクロ複合材を、不活性雰囲気下600〜900℃±10℃、好ましくは700〜900℃±10℃または700〜800℃±10℃の範囲の温度まで加熱することにより第三熱処理すること。
【0019】
上記全ての他の変法(例えば、追加工程(e’)、不動態化方法)は、本「工程(f)
フリー」変法に適用可能でもある。かかる変法では、工程(f)中、炭素前駆体を酸素との反応により除去するので、工程(f)を行わない結果、マクロ担体をより多くNドープした炭素相で被覆する。すなわち、工程(f)を行わないことにより、熱処理によってより少ない炭素前駆体しか除去せず、従って、より多くのNドープした炭素相がマクロ担体を被覆する。かかる「工程(f)フリー」変法により得られる複合材は、通常、中〜高硫黄選択性、すなわち、60〜>80%とともに、HS転化に関して高脱硫活性を示す。
【0020】
本明細書で使用するとき、本発明の方法に従って製造した高窒素ドープメソポーラス炭素相(活性相)で被覆したマクロ担体(ホストマトリックス)を表す場合の「薄層」という語は、5〜200±5nm、好ましくは10〜100±5nmの範囲の厚さの層を表す。Nドープ炭素層の厚さを、エネルギーフィルタ型TEM(EFTEM)によって測定できる。
【0021】
本明細書で使用するときの「メソポーラス」という語は、本発明の方法に従って製造した高窒素ドープメソポーラス炭素相(活性相)で被覆したマクロ担体(ホストマトリックス)を表す場合のポアの平均径がメソポーラスな範囲(2〜50nm)である場合の多孔性Nドープ炭素相を表す。通常、大部分のポアはメソポーラスな範囲にあるが、ミクロポアは多くないがこのようなミクロポアの存在は除外できない。
【0022】
炭素相の多孔性は、通例の装置を用いてBJH法およびt−プロット法に基づきブルナウアー−エメット-テラー(BET)比表面積(SSA)から決定し得る。例えば、BE
Tおよび多孔性(BJH法およびt−プロット法のいずれかに基づく)を、液体N温度において吸着性物質としてNを用いて、ASAP 2020マイクロメリティクス装置で測定できる。全試料を、250℃、14時間、完全に脱気/活性化した。
【0023】
炭水化物炭素源を、ショ糖などのより複雑な二糖およびオリゴ糖またはバイオマス変換由来デキストリンまで、それらのグリコシル化体を含むグルコース、マルトース、ラクトースなどの最も簡単なアルドース単糖から選択してもよい。
【0024】
カルボン酸源を、クエン酸、ならびに他のモノ−、ジ−、トリ−、およびポリカルボン酸またはクエン酸アンモニウム一塩基、クエン酸アンモニウム二塩基およびクエン酸アンモニウム三塩基などのそのアンモニウム一塩基体、二塩基体、三塩基体およびポリ塩基体から選択してもよい。
【0025】
マクロ担体を、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンおよび数層グラフェン、他などの炭素系材料から製造できる。シリコンカーバイド(α−およびβ−SiCまたは関連SiC系担体、純粋またはTiO、Al、SiOなどの異種元素でドーピングしたもののいずれか)などのケイ素系材料からも製造できる。アルミナ(α−またはβ−Alまたは関連アルミナ系担体、純粋またはTiO、SiOなどの異種元素でドープしたもののいずれか)などのアルミニウム系材料からも製造できる。マクロ材料は、SiC−Al、SiC−シリカ、SiC−炭素、他などの二成分組成も有することができ、異なる金属またはTiOなどの金属酸化物ドーパントでドーピングもできる。
【0026】
有利に、マクロ担体を、カーボンナノチューブおよび/またはグラフェン(単層グラフェンシート、数層グラフェンシートまたはグラフェンフレーク)の集合体;粒子、ペレット、リング、フォーム、他の形態の純粋あるいはTiO、Al、SiOなどの異種元素でドーピングしたα−およびβ−SiCまたは関連SiC系担体;粒子、ペレット、リング、ビーズおよびフォーム、他の形態のアルミナ(純粋あるいはTiO、SiOなどの異種元素でドーピングしたαおよびβ構造または関連アルミナ系担体);粒子
、ペレット、リング、ビーズおよびフォーム、他の形態の炭素;粒子、ペレット、リング、ビーズ、他の形態のシリカの集合体から選択してもよい。マクロ担体を、上記異なる担体の二成分混合物から製造もできる。マクロ担体は、例えば、粒子、ペレット、リング、フォーム、他の当技術分野で利用可能ないずれもの公知の形態であり得る。
【0027】
有利に、マクロ担体は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)またはチタニア(TiO);好ましくはシリカ(SiO)、SiCまたはアルミナ(Al)であってよい。
【0028】
有利に、マクロ担体は、工場で使用する最も通常のマクロ形態である粒子、フレーク、リング、ペレット、成形品、ビーズまたはフォームの形態であってよい。この場合、沈める工程(c)は、マクロ担体が工程(a)の水溶液をそのポアおよび/または凹みの中に吸い上げる事実を示す「含浸」と呼んでもよい。担体を、滴下法により混合物溶液により直接含浸することもできる。有利に、担体は、充分な多孔性ネットワーク、カーボン付着に連続するポア閉塞だけでなく拡散の問題をできる限り減少させるために選択的にメソ〜マクロポアを示すべきである。
【0029】
工程(c)では、担体を、適切な量の溶液で含浸し、次いで、工程(e)、(f)および(g)に記載の熱処理を実施できる。マクロ担体が多孔性または毛管効果により工程(a)で得られた溶液で詰め込まれ易いような構造である場合に含浸できる。
【0030】
あるいは、工程(c)では、細孔容積含浸法により担体を含浸できる。
本明細書で使用するとき、「細孔容積含浸」は、マクロ担体の細孔容積と等しい液体体積の使用を表す。マクロ担体の細孔容積を満たすのに必要な液体の体積を測定することによりこれを行うことができ、通常、液体は担体が親水性を示すことを考慮して水である。疎水性の場合、体積滴定液体を、アルコールまたは有機溶媒の中から選択できる。次いで、工程(a)の水溶液をこの決定した体積内で製造し、溶液をさらに使用して担体を含浸する。
【0031】
マクロ担体被膜の窒素含有量および被膜厚さを、沈める/浸漬/含浸工程および第一熱処理工程[工程(c)〜工程(f)]を、所望の窒素含有率および被膜厚さ、またはより高温の熱処理工程(g)の実施前に達成可能な上限窒素含有率を達成するのに必要なほどの回数繰り返すことにより調整できる。従って、工程(c)〜(f)を、工程(g)を実施する前に少なくとも1回繰り返してもよい。有利に、工程(c〜f)を、工程(g)を実施する前に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回、好ましくは1〜3回繰り返してもよい。工程(c)〜(f)を繰り返す場合、繰り返し沈める/浸漬/含浸工程(c)で使用する水溶液濃度は、同じでも異なっていてもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、本発明の方法に従って製造された高窒素ドープメソポーラス炭素相(活性相)で被覆したマクロ担体(ホストマトリックス)を表す場合の「高窒素ドープ」という語は、Nドープ炭素相中に存在する他の原子に対して、N原子%が1〜40%、好ましくは5〜40%、好ましくは10〜40%、好ましくは約15%(例えば、12〜18%)であるメソポーラスNドープ炭素相を表す。通常、これらの他の原子は炭素原子である。しかしながら、Nドープ炭質相は、ときどき、概して炭素原子および窒素原子の両方と結合した少量の酸素原子も含有する。酸素原子の含有率は、2〜6%で変わり得る。マクロ担体を被覆しているNドープ炭素相中のN原子%は、本発明の方法により適用された様々な熱処理温度、詳細には、工程(f)および(g)で使用する温度に依存するだろう。温度がより高いほど、Nドープ炭素相中のN原子%はより低い。概して、工程(f)は、工程(g)より低い処理温度を含む。従って、工程(f)後に得られたNドープ炭素相は、概して、工程(g)後に得られたNドープ炭素相より大きなN原子%を有す
るだろう。本明細書で使用するとき、「高窒素ドープメソポーラス炭素相」は、メソポーラス炭窒化物相を含まない。N原子%を、X線光電子分光法(XPS)または元素分析のいずれかにより測定してもよい。
【0033】
XPS技術は、マクロ担体を被覆しているメソポーラス炭質層面上のN原子%濃度を示す(9nmを超えない厚さの分析)。一方、元素分析は、マクロ担体を被覆しているメソポーラス炭質層の全体積のN原子%濃度を示す。それにもかかわらず、これら2つの各技術を、N原子%を決定するために使用し得る。本発明の目的のため、好ましくはXPSを使用してN原子%を測定する。この文書全体にわたって、記載されたN原子%は、XPS分析に基づいている。
【0034】
概して、黒鉛化工程(g)の結果、弱く吸着された窒素化学種の損失のため部分的に工程(f)後に得られたN原子%と比較して、炭質層中のN原子%は減少する。従って、工程(f)後、Nドープ炭質層は、25〜40%の範囲でN原子%を有し得る。工程(g)を実施する場合、Nドープ炭質層は、2〜35%、好ましくは5〜30%、最も好ましくは約15%(10〜20%、好ましくは12〜18%)の範囲のN原子%を有し得る。より低温範囲(例えば、700℃±10℃)の黒鉛化温度は、より高い範囲(例えば、15〜30%、最も好ましくは約20%(18〜25%))のN原子%をもたらし得る。逆に、より高温範囲(例えば、900℃±10℃)の黒鉛化温度は、より低い範囲(例えば、5〜10%)のN原子%をもたらし得る。
【0035】
窒素含有率を、水溶液中の炭酸アンモニウム((NHCO)/炭水化物/カルボン酸源モル比、好ましくは炭酸アンモニウム/炭水化物/クエン酸モル比)を調整することにより制御し得る。例えば、クエン酸をカルボン酸源として使用する場合、炭酸アンモニウム/炭水化物/クエン酸モル比は、1/1/1〜8/5/3モル/L、好ましくは2/2/2〜6/4/3モル/Lの範囲であってよい。
【0036】
窒素範囲を、適切な熱処理、すなわち、(f)および(g)、(f)のみ、または(g)のみを適用することにより精密に調整できる。
【0037】
マクロ担体上の窒素ドープ炭素層の存在は、最終マクロ複合材(または触媒)の表面特性を有意に変化させる。N部位は、マクロ複合材(または触媒)の最も外側の面において容易に利用でき、化学反応、選択的に触媒反応を起こすのに利用可能である。事実、Nドープ炭素層は、特に、複合材表面で起こる触媒変換に関して、究極のマクロ複合材(または触媒)系の反応性を著しく増強する。
【0038】
最終製品を目的とする応用に依存して(所望の下流触媒応用)、第三熱処理(g)を、700〜1000℃±20℃、好ましくは600〜900℃±10℃、好ましくは700〜800℃、最も好ましくは700〜900℃±10℃などのより高温において不活性雰囲気下、黒鉛化方法の形態で実施してもよい。温度範囲は、使用するマクロ担体の種類に依存するだろう。好ましくは、マクロ担体が分解し始める温度を超えるべきでない。有利に、本発明の方法で使用するマクロ担体は、使用された運転温度をはるかに超える比較的高熱安定性を有する(例えば、本発明に関連して使用運転温度をはるかに超えて分解するSiC系および炭素系材料)。加えて、熱処理温度は、好ましくは、活性相(Nドープメソポーラス炭質層)およびマクロ担体の間にいかなる化学反応も含むべきでない。例えば、シリカ、チタニアおよびアルミナマクロ担体などのいくつかの化学相互作用が起こる場合、不動態化炭素層を実行(本明細書に記載の不動態化方法)して、SiCまたは炭素などの化学的不活性マクロ担体で得られたものと比較して出来るだけ近い活性相の性質を維持するためにかかる化学反応を防止することができる。従って、有利に、本発明の方法は、工程(f)で得られた(または工程(f)を実施しない場合工程(e)で得られた)マ
クロ複合材を、不活性雰囲気下700〜1000℃±20℃、好ましくは600〜900℃±10℃、好ましくは700〜800℃、最も好ましくは700〜900℃±10℃の範囲の温度まで加熱する熱処理(工程(g))をさらに含む。この工程を、窒素ガス下、または好ましくはアルゴンまたはヘリウムガス下実施してもよい。この工程は、最終マクロ複合材(すなわち、最終触媒)の電気的および/または熱的伝導度の改良を可能とする。この工程は、より低い安定性のいくつかの窒素化学種をより多く黒鉛化されたもの、すなわち、ピリジン系および第四級化学種への完全転換も可能とする。
【0039】
有利に、熱処理工程(g)を、数時間;1時間〜10時間、好ましくは2時間実施してもよい。この処理の全持続時間は、目標処理温度へのマクロ担体の加熱速度および処理するマクロ複合材の総重量にも依存する。例えば、加熱速度を、開始温度(本発明の方法の前工程で使用する温度)から目標処理温度まで、0.5〜20℃/分、好ましくは2〜10℃/分で設定してもよい。
【0040】
開始温度から目標処理温度間の加熱傾斜速度は、直線的(単一直線加熱勾配、例えば、開始温度から目標処理温度まで10℃/分)であってよい。
【0041】
あるいは、開始温度から目標処理温度間の加熱傾斜速度全体は、異なる勾配の少なくとも2つの連続直線加熱傾斜を含んでもよい。好ましくは、最終加熱上昇は前のものより小さい勾配を有する(最終加熱上昇段階において、目標処理温度までゆっくりと加熱)。
【0042】
有利に、開始温度から目標処理温度間の加熱上昇速度全体は、異なる勾配の2つの連続直線加熱上昇を含んでもよい。好ましくは、第一加熱上昇は第二より大きな勾配を有する(例えば、2℃/分において開始温度から中間温度(例えば、300〜400℃)まで加熱)。それから、中間温度から目標処理温度までの第二加熱上昇は、例えば、中間温度300℃から目標温度700℃まで10℃/分の上昇のより速い勾配を有してもよい。
【0043】
有利に、工程(a)の水溶液中、(NHCOは、1〜8モル/L、好ましくは2〜5モル/Lの範囲の濃度で存在してもよい。最終マクロ複合材のNドーピング%および多孔性を、水溶液中の(NHCOまたは他の原材料の濃度を調節することにより、炭質層の深さ内で調整してもよい。例えば、工程(a)から工程(f)までの方法を実施して後、(NHCOのより低濃度の溶液で第二含浸方法を実施できる。所望の値を得るまで、このような方法を数回繰り返すことができる。マクロ複合材(または触媒)を、高温でさらに黒鉛化してもよい(工程(g))。
【0044】
有利に、工程(a)の水溶液中、炭水化物炭素源は、1〜5モル/L、好ましくは2〜4モル/Lの範囲の濃度で存在し得る。マクロ担体を被覆するNドープ炭質層の多孔性を、各含浸方法[工程(a)〜(f)、または工程(g)を選択して工程(f)を省略する場合工程(a)〜(e)]間の(炭酸アンモニウムとカルボン酸)/炭水化物モル比を調節することにより調整してもよい。例えば、マクロ担体を、方法(工程(a)〜(f))の第一反復において、以下の濃度の異なる構成成分を含有する水溶液で含浸することもできる:(NHCO=1.2モル/L、炭水化物炭素=1.1モル/L、クエン酸=1.6モル/L。第二含浸方法を、前と同じ水溶液を用いて実施してもよいが、3.8モル/Lのより高い(NHCO濃度を用いて実施してもよい。より高い(NHCO濃度により、第一反復方法のより低い(NHCO濃度で得られたN@C層と比較してより高い多孔性を特徴とするN@C層を得るだろう。N@Cの総量がマクロ複合材または触媒に定義されたもの(すなわち、マクロ複合材/触媒の目標Nドーピング%)に達するまで、同じ方法を繰り返すことができる。それから、最終マクロ複合材を、不活性雰囲気下、700〜1000℃±20℃、好ましくは600〜900℃±10℃、最も好ましくは700〜800℃±10℃において該複合材を上記最終熱処理(g)す
ることにより製造してもよい。
【0045】
有利に、工程(a)の水溶液中、カルボン酸源(例えば、クエン酸)は、1〜3モル/L、好ましくは2モル/Lの範囲の濃度で存在し得る。
【0046】
有利に、沈める/浸漬工程(c)を1〜10分間、好ましくは2分間実施してもよい。これは、当技術分野で公知の方法と比較して明確な利点である。本発明に記載の方法は、マクロ担体と工程(a)の水溶液間の非常に短い接触時間または湿潤時間のみ必要とする。マクロ担体を含浸する場合(過剰溶媒含浸かまたはポア−体積含浸かにかかわらず、工程(c)は含浸方法である場合)、同様な時間を必要とし、含浸する担体の大きさと重量および活性相前駆体を含有する溶液量にのみ依存する。
【0047】
有利に、第一熱処理工程(e)を、数時間;1時間〜10時間、好ましくは1〜2時間、所望の処理温度において実施してもよい。
【0048】
有利に、第二熱処理工程(f)を、工程(f)で使用する温度が400〜500℃±10℃、好ましくは450℃±5℃、最も好ましくは400℃±5℃である場合、数時間;1時間〜10時間、好ましくは1〜2時間実施してもよく;または工程(f)で使用する温度が300℃±10℃である場合、2〜4時間実施してもよい。この処理の全持続時間は、室温から処理温度までの固体の加熱速度にも依存し、処理するマクロ複合材の総重量にも依存する。例えば、加熱速度を0.2〜10℃/分、好ましくは0.5〜2℃/分、好ましくは2℃/分で設定してもよい。
【0049】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の全ての変法を含む本発明に記載の方法により得られた高Nドープおよび調節可能濃度Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材を提供する。別の態様では、本発明は、Nドープ炭質材料層が:
1〜40%、好ましくは5〜40%、好ましくは10〜35%、好ましくは約15%(例えば、12〜18%)のN原子含有率を有し;
2〜50nm、好ましくは2〜30nm;最も好ましくは3〜12nmの平均ポア径を有し;および/または
5〜200±5nm、好ましくは10〜100±5nmの厚さを有する
高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材を提供する。
【0050】
有利に、本発明に記載の高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材は、15〜35%、好ましくは約15%(例えば、12〜18%)のN原子%を有する。
【0051】
本発明の方法の明確な利点の1つは、液相(例えば、工程(a)の水溶液)を使用してマクロ担体を含浸して、担体表面上に高Nドープ炭質層を形成することである。これにより、固相または気相方法を使用する現存する方法と大きく異なる。
【0052】
別の態様では、本発明は、本発明の記載の高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材の触媒材料としての使用を提供する。マクロ担体の使用の1つの利点は、触媒床全体の圧力降下の減少と直接関連し、触媒の容易な取り扱いおよび移動にもある。マクロ担体を、下流の応用に依存して、粒子、ペレット、フォーム、他を含む上記のものから選択できる。上記の通り、窒素原子が多孔性炭素マトリックス被膜中に埋め込まれているマクロ複合材材料表面における該窒素原子の存在により、最終複合材に対する反応性および安定性も増強される。従って、得られた被覆された材料は、様々な化学反応および触媒変換の触媒活性に関して有利な特性を示す。
【0053】
例えば、本発明に記載の方法により得られた高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆さ
れたマクロ複合材を、少し例を挙げると酸素還元反応、炭化水素(芳香族炭化水素を含む)の水蒸気フリー(steam-free)脱水素またはHSの元素硫黄への部分酸化などのいくつかの工業的に関連する触媒変換において使用してもよい。マクロ複合材(窒素ドープメソポーラス炭素層で被覆されたマクロ担体)を、少し例を挙げると、液相および気相水素化、直鎖アルカンおよび揮発性有機化合物(VOC)の酸化、フィッシャー−トロプシュ法によるCOの水素化、および合成ガス混合物のメタン化などの他の関連触媒用途における金属または酸化物のための触媒担体として使用することもできる。
【0054】
さらに別の例では、本発明に記載の方法により得られた高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材を、水および排水処理用促進酸化処理における金属フリー触媒として使用してもよい。この場合、Nドープ炭質層は、固体マトリックスとして機能してマクロ担体表面上のカーボンナノチューブなどの炭素担体を固定し得る。本明細書で使用するとき、「促進酸化処理」(略語:AOP)という表現は、広い意味で、ヒドロキシルラジカル(・OH)との反応による酸化により水および排水中の有機(および酸化性無機)物質を除去するために設計された化学処理方法一式を表す。典型的に、AOPは、(i)過酸化水素、オゾン、オゾンおよび過酸化物の組合せ、次亜塩素酸塩、フェントン試薬、他を用いた化学酸化方法、(ii)UV/オゾン、UV/過酸化水素、UV/空気などの紫外線促進酸化;および(iii)湿式空気酸化および触媒湿式空気酸化(酸化剤として空気を使用する)を包含する。有利に、本発明に記載の方法により得られた高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材(N@C被覆複合材)を、有機微量汚染物質の触媒オゾン処理(COZ)および/または触媒湿式空気酸化(CWAO)の金属フリー触媒として使用してもよい。
【0055】
別の態様では、本発明は、誘導加温機器の金属フリー面状ヒーターの製造用に、本発明に記載の高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材の使用を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、本発明に記載の高Nドープメソポーラス炭質材層で被覆されたマクロ複合材の揮発性有機化合物用吸着剤としての使用を提供する。
【0057】
別の態様では、本発明は、固体接着剤そっくりに2つの材料を密に集合するために、本発明に記載の方法の使用を提供する。例えば、本発明の方法を、集合体の機械的耐性を強化する目的で、Nドープカーボンナノチューブ(当技術分野で公知の方法により製造してよい)および本明細書で記載のマクロ担体を接着するために使用してもよく、高触媒活性および安定な触媒活性を維持することを可能とする。本方法を実施の過程において形成されるNドープ多孔性炭質材から接着剤が製造されるだろう。その高N含有率のため、このような接着剤は、所与の触媒反応に望ましく有用である活性N部位をあまり希釈しないだろう。カーボンナノチューブおよびナノファイバーなどのナノカーボン材料で装飾したマクロ担体により構成された階層的複合材上にNドープ多孔性炭質材料を成膜するためにも同じ被覆方法を使用できる。カーボンナノチューブおよびナノファイバーは複合材にとって高効率的な表面積を提供するだろうが、Nドープ多孔性炭質材層は、最終複合材に、処置中に失われることを防止するためのより良好な機械的強度を与えるだろう。
【0058】
読者が考える通り、本発明は複数の利点を提供する:
炭酸アンモニウム(膨張剤)、グルコース/デキストロース、マルトース、ラクトース、およびクエン酸など容易に入手可能であり、安価で毒性のない環境に優しい化合物である出発物質の使用。
活性相の多孔性に依存して、厚さが充分である有利な接触可能表面を示す均一な活性相(高Nドープメソポーラス炭質材料)を成膜できること。
その容易な取り扱いおよび加工性に加えて触媒床全体の大きな圧力降下の防止により触媒方法によく適応する異なるマクロ担体上に、高い接触可能性で、上記活性相(高Nドー
プメソポーラス炭質材料)の薄膜を成膜できること。
マクロ担体を、アルミナ、シリカおよび炭化ケイ素などの市場で既に入手可能なものの中から選択でき、炭素などの他の担体、例えばナノチューブもしくはナノファイバー、または活性木炭、および純粋もしくは異種元素でドーピングしたいずれかの前述の担体の組合せ。
使用するマクロ担体を工業的に製造し、従って、担体スケールアップのさらなるニーズは、本発明を工業的規模で実施化する必要がない(すなわち、本発明は工業的規模の応用に容易に受け入れやすい/適用可能である)。
本発明のマクロ複合材は、酸素還元反応(ORR)用金属フリー触媒として非常に有用であると分かる。従って、これらは、その目的で従来使用されている高価で希少な白金触媒(または貴金属合金を含む白金族金属触媒)の置き換えに有利である。これは、本発明の方法の主要な利点の1つとなる。
本発明のマクロ複合材は、大きな濃度範囲の気体状HSの元素硫黄への部分的酸化用触媒として非常に有用であることも分かる。従って、これらは、この反応の気体状溶出物の脱硫のための触媒性能の改良に有利である。HS濃度は比較的大きく、0.1〜15%、好ましくは0.5〜10%、特に0.5〜5%の範囲である。
本発明のマクロ複合材は、エチルベンゼンのスチレンへの選択的気相水蒸気フリー脱水素用触媒として非常に有用であることが分かる。従って、これらは、この特定の反応における水蒸気生成を一般的に必要とする余分なエネルギーを減少させる利点がある。
本発明のマクロ複合材を、少し例を挙げると、液相と気相水素化、直鎖アルカンおよび揮発性有機化合物(VOC)の酸化、フィッシャー−トロプシュ法によるCOの水素化、および合成ガス混合物のメタン化などの他の関連触媒方法で使用できる金属および酸化物活性相用触媒担体として使用することもできる。
本発明のマクロ複合材は、有機微量汚染物質の触媒オゾン処理(COZ)および/または触媒湿式空気酸化(CWAO)などの水および排水処理のための促進酸化処理用金属フリー触媒として非常に有用であると分かったので、再生技術の中心でいくつかの関連触媒変換での利用が功を奏し得る。
炭化ケイ素または炭素を担体として使用する場合、炭化ケイ素および炭素の中程度の熱伝導性は、発熱(熱排除)または吸熱(熱保持)方法のいずれにおいても触媒床内で出来るだけ安定な反応温度を保持する助けになり、特に、マクロホスト担体とNドープ多孔性炭質材料との間の抵抗接点不足の結果である。特に、複合材担体単位(粒子)間の接点を見過ごすことができないので、上記界面抵抗接点は、触媒床で観察されたものより良好である。
消費した触媒の担体(またはマクロ複合材)を、空気中でN@C層を単純に焼き尽くしてから、プレ触媒水相の新たに調製した混合物から出発する含浸/乾燥/熱工程(複数可)(c)〜(f)(または(c)〜(g))を行うことにより回復もできる。共通に使用する金属または金属酸化物系触媒と概して出会う固体廃棄物処理量を減らすことが可能となるので、このような方法は非常に重要なものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
以後、マクロ複合材または触媒を、以下のように示す:(G)N@C/SiC2nd、(G)は不活性雰囲気下高温(700〜1000℃)で触媒を黒鉛化したことを示す(工程(g));N@Cは窒素ドープメソポーラス炭素活性相を示す;SiCは担体の性質を表す、例えば、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、その他;下付文字は担体のマクロ形態を示す:(g)粒子、(e)成形品、(p)ペレット、(f)フォーム;および最後の上付き数字は含浸サイクル数を示し、次いで黒鉛化工程(工程(g))前の450℃の空気中熱処理をする。
図1】マクロNリッチ炭質複合材、本発明の製造のための例示の合成方法を図式化している。(A)メソポーラス、Nリッチ触媒活性相(N@C)を含むモデル炭化ケイ素フォーム担体(SiC)を「飾る」ための典型的熱順序を示す。(B)α,β−D−グルコピラノースおよびクエン酸アンモニウム三塩基(プレ触媒相)をNリッチメソポーラス炭素グラフェン様ネットワーク(N@C−触媒活性相)に熱変換する想定機構を示す。
図2】本発明の方法に従って製造された(G)N@C/X2nd活性相の選択された化学物理的および形態的特徴を報告する。(A)異なる化学組成、形状および大きさを特徴とする担体上に調製された、調製されたままの(G)N@C/X2nd(X=粉末、粒子、成形品の形態のSiCおよびビーズの形態のAl)のBET比表面積。(B)N@C触媒活性相(熱処理:空気中450℃で2時間(N@C/SiC)、それからヘリウム雰囲気下900℃で2時間黒鉛化((G)N@C/SiC))。(C)(G)N@C/SiC2nd複合材のN@C層のHRTEM顕微鏡写真[担体としてSiC粒子を基材とするNドープ複合材、含浸2サイクル(c〜e工程)、450℃熱処理(f工程)およびヘリウム雰囲気下900℃黒鉛化(g工程)後]。(D)(左上)明視野TEM画像全体像。(左下)左上画像の点線四角形で示した領域を撮影した高角度環状暗視野画像(STEM−HAADF)。(右側4画像)左下画像の点線四角形でハイライトした領域を撮影したそれぞれケイ素、炭素、窒素および酸素の元素マップ。色は、隣接する縦棒で示す原子組成相対比に対応する。
図3】電極触媒酸素還元反応において、本発明に従って製造した(G)N@C/SiC2nd触媒の例示の触媒の応用を示す。(A)(G)N@C/SiC2nd(平均SiCの大きさ:40μm、N@C活性相450μg/cm)、VXC−72(N@C活性相100μg/cm)およびPt−20/XC72 Vulcan(25μgPt/cm)、反応温度=25℃、rpm=1600rpm、KOH 0.1M)のORR性能。(B)RRDEシステムを用いた25℃における(G)N@C/SiC2ndおよびPt−20/XC72触媒の長期安定性。1.0および0.6mV間1,500サイクルで試験を実施した。(C)異なる電極回転速度(rpm)で登録した曲線について0.4Vにおいて記録したKoutecky−Levichプロット。(D)アルカリ環境(25℃、KOH 0.1M)下、(G)N@C/SiC2ndおよびPt−20/C触媒の両方および電子移動平均数の算出のためのそれぞれのリング電流値(H生成)についてRRDE測定。
図4】高温において本発明に従って製造した(G)N@C/SiC1st複合材の例示の触媒応用、ガス状工業溶出物からHS残渣(脱硫)の酸化を示す。(A)反応条件(m触媒=1g、O/HSモル比=2.5、毎時重量空間速度(WHSV)=0.6毎時(h−1))の関数としての(G)N@C/SiC1st(エントリー3、表1)触媒の脱硫性能。(B)反応温度の関数としての触媒(G)N@C/SiC1stによるHS転化および硫黄選択性。(反応条件:m触媒=1g;毎時重量空間速度(WHSV)=0.6毎時;O/HSモル比=2.5)。(C)触媒(G)N@C/SiC1stおよびFe/SiC(m触媒=1g;O/HSモル比=2.5;毎時重量空間速度(WHSV)=0.6毎時)の脱硫性能の直接比較。
図5】エチルベンゼン(EB)のスチレン(ST)への水蒸気フリー直接脱水素(DH)における本発明に従って製造したN@C複合材の例示の触媒応用を示す。(A)(G)N@C/SiC2nd触媒(エントリー5、表1)、その黒鉛化形態(G)N@C/SiC2nd(エントリー5、表1)および初期状態の担体のエチルベンゼン脱水素性能。(B)それぞれ、550℃および600℃における工業的K−Fe系触媒および(G)N@C/SiC2ndの触媒性能。(C)(G)N@C/SiC2nd触媒の600℃における長期DH試験(反応条件:300mg、600℃)。(D)定常状態での様々な炭素系工業触媒および(G)N@C/SiC2nd系のベンチマーク(反応条件:550℃、ヘリウム30mL/分中2.8%EB、大気圧)。
図6】130℃、1時間加熱後、グルコース2g、炭酸アンモニウム2.3gおよびクエン酸3gの混合により得られたモデル3構成成分混合物のHおよび13C{H}NMRスペクトル(DO、298K)(C、D)および2つの分離構成成分D−グルコース(A)およびクエン酸(B)のHおよびNMRスペクトル(DO、298K)。DO中のHおよび13C{H}NMRスペクトルの細密検査から、3構成成分水溶液の130℃における第一熱処理により、α−D−グルコピラノースおよびβ−D−グルコピラノースならびにクエン酸アンモニウム三塩基の均質な固体混合物が得られる。このフェーズ(D)後、CO2−またはHCOいずれもほとんど観察されない。より高温(450℃)は高Nリッチ複素環式芳香族ネットワーク構築の進行を促進し、三塩基性クエン酸アンモニウムは同時にN貯蔵所(NH)およびCO、HOおよびプロペンの完全熱分解によりポア形成剤の役割を果たす(スキーム1)。
図7】(A)N@C活性相用担体(ホストマトリックス)として異なるマクロ材料のデジタル写真。(B)初期状態のSiC、および空気中熱処理および900℃でのヘリウム雰囲気下の黒鉛化後のN@C装飾マクロホスト構造のデジタル写真。(C〜E)典型的なミクロおよびメソポーラス構造表面を示す(G)N@C/SiC2nd複合材のSEM画像。
図8】(G)N@C/SiC2nd試料のTEMおよびEFTEMマッピング(表1、エントリー5)。(A)TEM明視野画像。(B)元素マップ、ファックカラー(fack colors)は窒素、炭素およびケイ素に相当する。(C)炭素マップ。(D)窒素マップ。(E)ケイ素マップ。
図9】(G)N@C/SiC2nd系のコークス抵抗を示すEB脱水素試験前後の(A)工業Fe−K/Alおよび(G)N@C/SiC2nd(エントリー5、表1)触媒のTPO−MS分析。
図10】スキーム1。
図11】表1。
図12】表2。
【0060】
スキーム1.
特定の理論に束縛されることを望まないが、スキーム1は、α,β−D−グルコピラノースおよびクエン酸アンモニウム三塩基(プレ触媒相)をNリッチ複素環式芳香族グラフェン様ネットワーク(触媒活性相)に熱変換する推定機構を示す。450℃熱処理は、ヘキソース糖の脱水の進行を開始して5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)(18)を得ると推定され、5−HMFはより複雑な化学物質および材料の合成に最も魅力的なケミカルプラットフォームの1つである(20)。これらの熱条件下で起こる反応の正確な性質を確認するためにはさらなる洞察が必要であるが、クエン酸アンモニウム三塩基は、重合過程で即時に捕捉されて(20)、窒素化化合物を得る(21〜23)求核性NHの貯蔵所としての役割をすると期待される。クエン酸コアの運命は、合理的に究極の材料のメソ多孔性に寄与する要素の揮発成分CO、HOおよびプロペンに完全分解することである。
【0061】
表1は、本発明に記載のモデルN@C/SiCおよび(G)N@C/SiC複合材および関連窒素元素組成物の種々の製造パラメーターを報告する。これらの複合材を、図4に示し詳述しているようにスーパークラウスHS酸化反応で使用する。これらの複合材を、材料の特徴付けおよび電気化学的酸素還元反応(ORR)にも使用する(図3および関連詳細参照)。これらの複合材を、エチルベンゼン(EB)のスチレン(ST)への水蒸気フリー直接脱水素(DH)でも使用する(図5および関連詳細参照)。
【0062】
均等物
以下の代表的実施例は本発明を例証する助けとなることを目的とし、本発明の範囲を限定する目的ではなく、限定すると解釈するべきでない。実際、本明細書に示し記載したものに加えて本発明の様々な修正およびその多くのさらなる実施形態は、以下の実施例および本明細書で引用した科学文献および特許文献の参照を含むこの文書の全内容から当業者には明白になるだろう。これらの引用参照文献の内容は最新技術を示す助けとするため参照により本明細書に組み入れられるものとさらに見なすべきである。
【0063】
以下の実施例は、様々な実施形態およびその均等物において本発明の実践に適用できる重要な追加情報、例示およびガイダンスを含む。
【実施例】
【0064】
本発明の方法および複合材ならびにその製造を、これらの複合材を合成または使用するいくつかの方法を例証する実施例によりさらに理解できる。しかしながら、これらの実施例は本発明を限定しないと考えられる。現在公知またはさらに開発される本発明の変化形は、本明細書に記載および以後の請求の範囲の通り本発明の範囲内であると見なされる。
【0065】
実施例1
高Nリッチ活性相のための基本手順。
典型的手順では、デキストロース2gおよびクエン酸3gを、室温(r.t.)において脱イオン水(10mL)に添加した。それから、炭酸アンモニウムの一定量(すなわち、1、2または3g)を室温において混合溶液に一度に添加すると、直ぐにCO発生による発泡が観察された。この懸濁液を透明な溶液が得られるまで室温で撹拌し、適切な担体上に成膜された(担体浸漬/含浸)Nドープ炭質材料を得るための原料混合物として使用した。この担体に関して、種々の担体2gを使用した、すなわち、SiC成形品(30m/g;SICAT社)、SiC粉末(25m/g;SICAT社)、SiCフォーム(30m/g;SICAT社)、およびα−Alビーズ(6m/g;Sasol社)。湿った固体を室温から130℃まで空気中でゆっくり加熱(10℃/分の加熱速度)し、この温度を1時間保持した。得られたままの乾燥固体を、所望の負荷に達するまで数回同じ3構成成分溶液でさらに含浸した。この固体を空気中450℃で2時間焼成(室温から450℃まで2℃/分の加熱速度)し、この間に、マクロホスト担体を高Nリッチメソポーラス炭質相で被覆した。1回の含浸相、次いで130℃の熱処理および450℃で空気中炭化して得られたN@C複合材を、N@C/SiC1stと名付ける。2回の連続含浸相、その各々の後に130℃の熱処理および450℃で空気中最終炭化相により得られたN@C複合材を、N@C/SiC2ndと名付ける。調製されたままの固体を、その最終黒鉛化度を増大するために、2時間、900℃(室温から900℃まで10℃/分の加熱速度)においてヘリウムの不活性雰囲気下さらに黒鉛化した。得られた複合材を、それぞれ、(G)N@C/SiC1st(1回含浸工程)および(G)N@C/SiC2nd(2回含浸工程)と名付ける。
【0066】
実施例2
材料特徴付け。
全試料の1D(Hおよび13C{H})NMRスペクトルを、Bruker Avance DRX−400分光計(それぞれ、Hおよび13C用に400.13および100.61MHz)で得た。化学シフト(δ)を、残留溶媒の共鳴化学シフトを基準にしてトリメチルシラン(TMS)に対してppmで報告する(Hおよび13C)。
【0067】
熱重量分析(TGA)を、25mL/分の空気流量および10℃/分の加熱速度で、室温から1000℃までSetaram装置で実施した。種々の試料の比表面積を、液体窒素温度において吸着体としてNを使用してBET法により測定した(TriStar sorptometer)。測定前、その表面上の水分および不純物を脱着するために200℃で一夜試料を脱ガスした。担体のXPS測定を、10分の収集でAl Kaアノード(hν=1486.6eV)を備えたMULTILAB 2000(THERMO VG)分光計で実施した。サーモエレクトロン社の「Avantage」プログラムを用いてピークデコンボリューションを行った。284.6eVのC1ピークを、帯電効果を補正するために使用した。シャーリーバックグラウンドを生データから差し引いてC1ピーク面積を得た。炭素およびセラミック材料の全体形態を10kVの加速電圧を用いてJEOL F−6700 FEGで走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。GATAN
Tridiemイメージングフィルターおよびプローブ収差補正器を備えた200kVで運転するJEOL 2100FXにより透過電子顕微鏡(TEM)測定を実施した。電子線エネルギー損失分光法(EELS)分析を、30mrad(ミリラジアン)収束角および25mrad集光角の走査モード(STEM)で実施した。各ピクセルに1秒の露光時間で20×33ピクセルでスペクトル画像を得た。エネルギー解像度は1.7eVであった。それぞれ、Si−L、C−K、N−KおよびO−K端から元素シグナルを抽出した。エネルギーフィルタ型TEM(EFTEM)測定を、Si、CおよびNそれぞれに対して8eV、30eVおよび20eVのエネルギースリットならびに10秒、30秒および40秒の収集時間を用いて3つの窓関数法により実施した。CCD検出器を備えたLabRAM ARAMIS共焦点顕微鏡分光計を用いてラマン分析を実施した。Laser Quantum MPC600 PSUを用いて、532nm/100mW(YAG)レーザー線を使用して試料を励起した。全測定を室温で実施した。ラマンスペクトルは、LabRAM ARAMIS 堀場ラマン分光装置を用いて記録した。532nmのレーザー励起波長で、500〜4000cm−1の範囲にわたってスペクトルを記録した。試料を、その懸濁液をスピンコートすることによりガラス基材上に成膜し、測定前に注意深く乾燥した。
【0068】
実施例3
触媒反応
3.1 酸素還元反応(ORR)。
10mV/秒の掃引速度でアナログ線形掃引発生器を備えたAutolab PGSTAT30(デンマーク、Eco Chemie社)ポテンシオスタットを用いて、0.1M
KOH支持電解質の三極セル中、25℃で電気化学的試験を実施した。酸化水銀(Hg/HgO)電極およびPt線電極を、それぞれ参照電飾および対極として使用した。特に指定しない限り、以後の全電位は可逆水素電極(RHE)を表す。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を使用して電解質溶液の抵抗を決定した。
【0069】
触媒試料10.0mg、イソプロパノール5mL、およびナフィオン溶液(5重量%)50μLを超音波処理で混合し均質な触媒インクを製造した。規定RRDE試験のため、作用電極(PINE、AFE6R2GCPT)を、前処理したグラッシーカーボン(GC)電極(直径5.5mmおよび幾何学的面積0.2376cm)上に触媒インク50μLを塗布してから室温で乾燥することにより製造した。25μgPt/cmを塗布した20重量%Pt/VXC−72(Sigma社)触媒を用いて、参照Ptデータを記録した。
【0070】
超純水(18MΩcm、TOC<3ppb)およびスープラピュアKOH(Sigma−Aldrich社)を用いて全水溶液を調製した。O還元実験では、飽和レベルを維持するために溶液中全体にOを絶えずバブリングし、リング電位を前の試験に従って1.2V RHEに設定した。標準測定条件(電位掃引速度10mV/秒、25℃)で0.1M NaOH中の10mM KFeCNで得られた実験データから収集効率(N)を算出した。Pt(20%)/VXC−72電極の収集効率は、37%であると分かった。この値は、Wang(Yusheng Andrew Wang, B.A.Sc. The University of British Columbia, 2009)およびChlistunoffら(17)からも報告されていた。
【0071】
触媒の4電子選択性を次式から算出したH収率に基づいて評価した:
(%)=200(J/N)/(J/N−J
式中、JおよびJは、それぞれ、ディスク電流密度およびリング電流密度であり、Nはリング収集効率である。
【0072】
電子移動数を2つの方法で算出できる。第一は、リング電流およびディスク電流n=−
4J/(J/N−J)を使用することである。nを算出する第二の方法は、一次Koutecky−Levich式を使用する:
1/J=1/j+1/j
式中、jは反応電流密度であり、jは、式j=Bω1/2=0.62nFγ−1/6O22/3O2ω1/2による拡散限界電流密度である。nは平均電子移動数であり;Fはファラデー定数であり;γは電極の動粘度であり;DO2は酸素拡散係数(1.15×10−5cm/秒)であり;CO2は電解質の酸素容積濃度(1.4×10−6モル/cm)であり;およびωは電極の角速度である。反応電流密度(j)およびKoutecky−Levich勾配(1/B)を1/j対1/ω1/2のプロットから得ることができる。
【0073】
3.2 エチルベンゼンの水蒸気フリー脱水素。
大気圧下固定ベッド連続フロー型反応器内で反応を実施した。触媒(300mg)を管状石英製反応器(内径8mm×長さ800mm)内側に配置された石英製濾板上に投入した。マスフローコントローラ(BROOKS MFC)により30mL/分の流速でヘリウムガスを反応器に供給し、熱調節された浴を用いて40℃に維持した液体EB(2922PaのEB分圧)を充填したガラスサチュレーターを通過させた。
【0074】
反応系を550℃まで加熱し、He雰囲気下2時間保持した。それから反応物流(ヘリウム中に希釈した2.8体積%EB、30mL/分の総流速)を反応器に供給した。反応物および生成物(反応器からスチレン(ST)、ベンゼン(BZ)およびトルエン(TOL)が出るのを、前以て補正した火炎検出器(FID)およびCP WAX S2CBカラムを備えたPERICHROM(PR2100)ガスクロマトグラフィーを用いてオンライン分析した。反応物または生成物のあり得る濃縮を避けるために、全ての管ラインを、110℃を維持するヒーティングワイヤで包んだ。
【0075】
エチルベンゼン転換(XEB)およびスチレン選択性(SST)を、次式(2)および(3)を用いて評価した:
【0076】
【数1】
(2)
【0077】
【数2】
(3)
【0078】
式中、FおよびFはそれぞれ出口および入口の流速であり、CEB、CST、CTOLおよびCBZはエチルベンゼン、スチレン、トルエンおよびベンゼンの濃度である。炭素収支は、全試験において≧96%に達した。試験条件において安定な触媒性能を有する水蒸気で30時間を超えた後結果を得た。
【0079】
3.3 HSの元素硫黄への部分酸化
大気圧において等温的に作動する全ガラス管状反応器内で酸素によるHSの触媒選択性酸化(式(1))を実施した。
S+(1/2)O → (1/n)S+HO ΔH=−222kJ/モル (1)
【0080】
触媒量(300mg)を管状パイレックス(登録商標)反応器(内径16mm)内のシリカウール上に入れ、それから、これを管状電気垂直炉内側に入れた。K型熱電対およびMinicorレギュレーターにより温度を制御した。HS(1体積%)、O(2.5体積%)、HO(30体積%)、およびHe(残部)を含む反応物フィードのガス混合物を下流に触媒床を通過させた。ガス流速をコントロールユニットと連結させたBrooks 5850TRマスフローコントローラーによりモニターした。毎時重量空間速度(WHSV)を0.6毎時に一定にし、O/HSモル比を5にした。
【0081】
反応を連続方式で実施した。これらの反応温度での硫黄の高い分圧のため、反応で生成した硫黄は揮発したが、反応器の出口で室温に維持したトラップ内に濃縮した。Chrompack CP−SilicaPLOTキャピラリーカラムおよび熱カサロメーター検出器(TCD)を備えたVarian CP−3800ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて入口および出口のガス分析をオンラインで実施し、これによりO、HS、HO、およびSOの検出を可能とした。
【0082】
実施例1〜3の結果のまとめ:
本発明者らは、炭酸アンモニウム、クエン酸ならびにバイオマスの最も豊富な糖単位およびリグノセルロース系バイオマスの酸加水分解の主生成物であるD−グルコースなどの単純で毒性のない未加工食品ビルディングブロックから出発する高Nドープメソポーラス炭素を得る新規方法を上記に説明してきた。D−グルコースが本発明において他の糖に置き換えることもできることは注目に値する。N含有活性相の生成のために採用するプロトコールは、浸漬する実質的に無限の種類豊富なマクロ担体のための含浸剤として使用できる基本的均質水性プレ触媒相を含む。マクロ担体を任意に、すなわち、下流の応用に応じて、粒子、ペレット、リング、ビーズまたはフォーム調節できる。含浸担体の制御された熱処理は、N含有メソポーラス活性相を、暴露されたN活性部位の著しく高パーセントが特徴の究極の複合材材料の被膜として成長することを可能とする。
【0083】
種々のマクロホスト材料から製造された様々な複合材は、それらの各々が先端技術の関連金属フリーあるいは金属系触媒のいずれかについての未解決の成果を有する3つの工業的に関連する触媒方法における金属フリー触媒として首尾良く精査されてきた。特に、電気化学的酸素還元反応(ORR)(1)、気体状溶出物の精製のための元素硫黄へのスーパークラウスHS酸化(4、15)およびエチルベンゼンのスチレンへの高選択性水蒸気フリー脱水素(16)を考察する。
【0084】
種々のマクロホストマトリックス用触媒表面被膜としてNドープ多孔性炭素を、(NHCO、グルコースおよびクエン酸で選択した担体(すなわち、粉末、成形品および炭化ケイ素(SiC)フォームまたはα−Alビーズ)を含浸した後、空気中で2つの連続した熱処理;含浸溶液を担体上でゆっくり乾燥することにより小さなプレ触媒層を生成する中程度の温度(130℃)の第一熱処理、および高Nリッチ活性相から製造された担体被膜を生成する(図1)450℃の第二熱処理(図6)により製造した。究極の触媒材料の電気伝導度および熱伝導度を改良し、触媒方法を促進するために窒素化学種をより安定で適切な形態に転換するために、800〜900℃において不活性ガス下、試料をさらに黒鉛化した。下流の応用に応じて最終工程は必ずしも必要ではない。
【0085】
D−グルコースおよび炭酸アンモニウムは、それぞれ、炭素源および窒素源を構成し、
一方、クエン酸は、高温熱処理中、N−貯蔵所[一塩基、二塩基および三塩基クエン酸アンモニウムの形態で]およびポア形成剤として二重の役割をする(図1、4およびスキーム1)。
【0086】
マクロ担体上のNドープ炭質被膜の厚さを、活性相を得るための複合材の最終高温熱処理(図1、フェーズ2および図7)に移行する前に、含浸/乾燥工程(図1、フェーズ1)を繰り返すことにより改良できる。
【0087】
概してメソ多孔性およびマクロ多孔性を特徴とするNリッチナノカーボン相(N@C)を基材とするホストマトリックス被膜は、最終複合材の比表面積(SSA)を著しく増大させる(図2A)。上記と同様に、連続的含浸/乾燥サイクル(図1、フェーズ1)を、触媒複合材の究極のSSAを付加的に増大するように利用した。複合材の高解像度N 1s XPS分析は、それぞれ、ピリジンおよびピロール窒素化学種に存する399および401eVにおける2つの主構成成分に特徴のある特性プロファイルを示している(図1B)。総窒素含有率は6%〜28原子%の範囲に及び、含浸サイクル数だけでなく炭酸アンモニウム/D−グルコース/クエン酸モル比の調整により制御できる(表1)。本研究における担体の最上部表面上の高窒素塗布およびそのほとんど独占的局在化を、SiCホストマトリックス上に成膜したNドープナノ材料の高解像度TEMおよびTEM−EELS分析により付加的に確認する(図2C、D)。これらの唯一の材料特性は、これらの複合材を、最先端技術の不均一金属/金属酸化物系対応物のものより優れたまたはさらにより良好な性能を有する工業的関連触媒変換の増加を促進するための理想的単相、金属フリー系にする。
【0088】
担体としてSiC粉末(10〜40μmの範囲の直径)から製造されたこの一連の最も代表的触媒として(G)N@C/SiC2nd触媒(詳細は表1参照)を用いて、酸素還元反応(ORR)実験をアルカリ環境(KOH 0.1M)下実施した。図3Aは、市販のPt−20/C(20重量%の白金添加したVulcan XC−72)および同一条件下の初期状態のSiC粉末担体と直接比較したその著しい電気化学的性能を示す。2つの触媒のKoutecky−Levich(K−L)プロットは同様な傾向を示しており、従って双方の系において働く近接四電子機構(near four electrons mechanism)を
示す(図3C)。Oモル当たりの移動した電子数(n)(および電気化学的方法において触媒により生成したHの%)のより正確な推定値を、回転リングディスク電極(RRDE)において測定したPtリング電流値から算出する(図3D)。両方のアプローチから算出したnの平均値は、(G)N@C/SiC2ndおよびPt−20/C触媒に対して、それぞれ、3.6および4である。CNTフォーム試料の開始電位(Eオン)は、参照のPt−Vulcan試料のもの(〜1V)に近いが、半電位はさらに低い(約60mV より低い)。E1/2および0.9Vにおける強度は、(G)N@C/SiC2ndの活性がPt/Cより僅かに小さい活性であることを示している。
【0089】
0.6〜1.0Vの範囲のサイクル電気化学試験(100mV/秒、25℃、0.1M
KOH中、900rpm)を使用して(G)N@C/SiC2nd対Pt−20/C触媒安定をチェックした。特に、選択した金属フリー系は1500サイクル後その開始ORR活性の約90%を保持するが、一方、Pt−20/C触媒では70%のみしか維持しない(図3B)。ORRの触媒性能と組み合わせたこのような著しい電気化学的安定性(他の研究チームにより垂直配向Nドープカーボンナノチューブについて同様に報告された(24、24a、24b)は、これらの系を、現存の高価な金属系触媒に代わるものとして役立たせる。
【0090】
(G)N@C/SiC1st2nd触媒(詳細は表1参照)は、一旦、現在の法律条件に同意してガス状工業的溶出物中のHS残渣の部分酸化(脱硫)用に使用すれば、よ
り苛酷な反応条件下優れた触媒性能を示した。この金属フリー系は、0.3毎時の毎時重量空間速度(WHSV)で210℃において方法を実施する場合、70%に近い(closed
to 70%)硫黄収率で比較的高脱硫性能を示す(図4A〜C)。比較のため、Fe
/SiC触媒などの最先端技術の最も活性かつ選択的脱硫系の一つを用いて脱硫試験も実施した。この後者は、同様な反応条件下、(G)N@C/SiC1st触媒(図4C)と比較して著しく低い脱硫活性を示す。この後者の触媒は、100時間の反応後ほとんど失活が観察されないので極めて高安定性も示す(図4A)。消費した触媒で実施したXPS分析は、窒素化学種修飾の証拠を示さず(表2)、選択的酸化反応下の触媒の高安定性を確認する。このような高安定性は、活性相の浸出効果を有意に阻止する炭質マトリックス中の窒素原子の化学的含有に起因し得るが、一方、使用した金属フリー系の性質の結果、活性相焼結効果は決定的に除外される。
【0091】
(G)N@C/SiC2nd(詳細は表1参照)触媒を、固定床構成においてエチルベンゼン(EB)のスチレンへのより過激な水蒸気フリー直接脱水素でも評価した。溶出物をオンラインガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。
550℃において、EB転換は22%(300mmol/g触媒/時の比速度)であり、反応温度の上昇と共に増大して600℃において44%(600mmol/g触媒/時の比速度)に達した(図5B)。スチレンを目的とする触媒選択性は、550℃において全試験でほぼ100%であったが、一方、より高い反応温度(600℃)においてわずかな選択性の低下が観察され、少量のトルエンおよびベンゼン(<2%)が反応副生物として生成される。同反応条件下、Fe−K/Al(Fe投入量の90重量%)触媒は、よりずっと低い脱水素活性を示す(図5A、B)。Fe−K/Al触媒は、試験の開始時に高いDH活性を示した後に5%のEB転換まで急激に失活する(図5A、B)。長期耐久試験についてほとんど失活が観察されないので、金属フリー触媒は極めて高安定性を示す(図5C)。SiC成形品で実施されたブランク試験は、比較的低いDH活性を示し(図5A)、SiC担体窒素ドープ多孔性炭素の高DH活性を確認する。Fe−K/Al触媒で観察された失活は、温度プログラム酸化(TPO)分析により示されたコークス残渣層による鉄系触媒の進行性被覆に起因していた。(G)N@C/SiC2nd触媒上、TPOスペクトルは、金属フリー触媒の高安定性および耐久性の主要因となる少量の炭質残渣のみ示す(図9)。種々の触媒で得られ毎時活性相グラム当たりの転換EBのモル数に関して表される比反応速度は図5Aに示され、(G)N@C/SiC2nd触媒のより高DH活性を再度確認する(26、27)。
【0092】
本研究で試験した窒素ドープ多孔性炭素の高触媒性能は、Gongらによる先駆的な仕事に従って隣接する窒素原子による炭素原子の電子的修正に起因し得る(1)。ORRおよびHS酸化における窒素ドープ触媒の高活性は、逃散前に最終製品中に組み込まれるだろう高反応性吸着酸素化学種を生成する解離の方法で、ドーピングされた炭素表面が酸素を吸着する高能力に起因し得る。
【0093】
消費触媒、すなわち、ORR用(G)N@C/SiC2nd粒子(<40μm)、HSの選択的酸化およびエチルベンゼンの水蒸気フリー脱水素用(G)N@C/SiC2nd成形品(1×2mm)を、XPS、BET比表面積測定およびTPOによってさらに特徴付けられ、結果は新鮮触媒で得られたものと同様な触媒特性の完全保持を確認する。このような結果は、窒素活性部位または比表面積損失が起こりそうもなく、これらの窒素ドープメソポーラス炭素活性相の極めて高安定性を再度強調する。
【0094】
まとめると、高窒素ドープ多孔性炭素を、比較的低温において炭酸アンモニウムおよびクエン酸混合物などの無毒性原材料を含む単純な化学反応により製造できる。開発された方法は、特定のガス相および液相方法で金属フリー触媒として使用するため、高機械的固着に加えて粉末形態だけでなく制御された形状でこれらの窒素−炭素複合材を製造するこ
とも可能とする。窒素および炭素源の転換は極めて高く、これは大量の前駆体が分解し大量の廃物の生成をもたらす従来の合成経路の場合と異なる。この合成方法と関連する最後だが特にコスト全体は、毒性(または爆発性)で高価な原料、高廃物放出および高温運転を経験する従来の窒素ドープ複合材で経験したものよりずっと低いと期待される。現在までに報告されたものより環境に優しい条件で製造された窒素ドープ多孔性炭素は、これに限定されないが、液相および気相水素化、直鎖アルカンおよび揮発性有機化合物(VOC)の酸化、フィッシャー−トロプシュ法によるCOの水素化、および合成ガス混合物のメタン化、ならびに有機微量汚染物質の触媒オゾン処理(COZ)および/または触媒湿式空気酸化(CWAO)などの水および排水処理のための促進酸化処理を含む、実施例3で例示したものを超えて様々な触媒方法において、より高い頑丈さおよび低運転コストを特徴とする新規触媒金属フリープラットフォームの開発への道を切り開くことができる。
【0095】
本発明者らは本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明者らの基本的実施例は本発明の触媒および方法を利用する他の実施形態を提供するため変更してもよいと考えられる。従って、本発明の範囲は実施例によって代表された特定の実施形態によるよりむしろ付属の請求の範囲により規定されるべきであることは理解されるだろう。
【0096】
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【国際調査報告】