(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-505795(P2018-505795A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(54)【発明の名称】耐火性木製物およびそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B27K 3/34 20060101AFI20180202BHJP
【FI】
B27K3/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-536785(P2017-536785)
(86)(22)【出願日】2016年1月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月4日
(86)【国際出願番号】IB2016050459
(87)【国際公開番号】WO2016125058
(87)【国際公開日】20160811
(31)【優先権主張番号】TO2015A000073
(32)【優先日】2015年2月2日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516014395
【氏名又は名称】トルチトゥラ パダナ エス.ピー.エー.
(71)【出願人】
【識別番号】513291539
【氏名又は名称】ザノロ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トナニ、アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ノベロ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】シルナ、カロゲロ
(72)【発明者】
【氏名】ぺサロ、シモナ
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA07
2B230BA03
2B230BA04
2B230BA05
2B230BA18
2B230CB12
2B230CB13
2B230CB21
2B230DA02
2B230EB02
2B230EB05
2B230EB12
2B230EB13
(57)【要約】
木製物を硫酸化およびリン酸化して基質に対して防炎特性を与えるための方法であって、式(I)
PO(OH)
2−R−PO(OH)
2 (I)
で表される少なくとも1種のホスホン酸が、硫酸化のための触媒およびリン酸化剤として使用される方法、および、関連する木製物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製物を硫酸化およびリン酸化して前記木製物に防炎特性を与えるための方法であって、
i)木製物、好ましくは乾燥した木製物を提供する工程と、
ii)硫酸化およびリン酸化溶液を好ましくは加熱条件下で調製する工程であって、前記硫酸化およびリン酸化溶液は、水、スルファミン酸アンモニウム、尿素、および、一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含み、
PO(OH)2−R−PO(OH)2 (I)
式中、
Rは、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−10、好ましくはC1−5アルキル基、N(R1)基、R2N(R3)R4基を表し、
R1は、H、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
R2およびR4は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
R3は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基、R5N(R6)R7基を表し、
R5およびR7は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
R6は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基、R8N(R9)R10基を表し、
R8、R9およびR10は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
但し、前記一般式(I)における−PO(OH)2基の数は5よりも大きくはない、調製する工程と、
iii)前記木製物を、前記硫酸化およびリン酸化溶液に、好ましくは大気圧よりも高い圧力において浸漬する工程と、
iv)前記硫酸化およびリン酸化溶液から前記木製物を抽出する工程と、
v)1分から5時間の間の期間にわたって、前記木製物を110℃から175℃の間の温度に維持し、最後に、防炎特性を持った硫酸化およびリン酸化された木製物を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
工程v)の前に、前記硫酸化およびリン酸化溶液から抽出された前記木製物は、好ましくは70から90℃の間の温度において、滴下および加熱乾燥工程を施される、請求項1に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項3】
工程v)の終わりに、前記木製物は、好ましくは加熱条件下での洗浄工程と、好ましくは70から90℃の間の温度における加熱乾燥とを施される、請求項1または請求項2に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項4】
工程iii)の前に、大気圧よりも低い圧力において、前記木製物はガス放出工程を施される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項5】
前記硫酸化およびリン酸化溶液は、水、尿素、前記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種、およびスルファミン酸アンモニウムの順番で、これらを混合することにより調製される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項6】
前記硫酸化およびリン酸化溶液は、
80から25%w/wの間、好ましくは50から60%w/wの間の量の水と、
10から30%w/wの間、好ましくは10から20%w/wの間の量の尿素と、
5から30%w/wの間、好ましくは10から20%w/wの間の量の、前記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種と、
5から30%w/wの間、好ましくは8から15%w/wの間の量のスルファミン酸アンモニウムと、
を含有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項7】
前記一般式(I)の前記R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10基が存在する場合であって、これらのうちのいずれか1つが置換アルキル基を表す場合、1または複数の置換基が、−OH、−COOH、−PO(OH)2、−NH2、−NHR11、−NR12R13、−Cl、−Br、−Fから独立に選択され、
R11、R12およびR13は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表す、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項8】
前記一般式(I)の前記R11、R12およびR13基が存在する場合であって、これらのうちのいずれか1つが置換アルキル基を表す場合、前記1または複数の置換基が前記−PO(OH)2基によって表される、請求項7に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項9】
前記R2、R4、R5およびR8基が存在する場合、これらは、独立に未置換アルキル基を表す、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項10】
前記R3、R6、R7、R9およびR10基が存在する場合であって、これらが独立に置換アルキル基を表す場合、1または複数の置換基が、−PO(OH)2基で表される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項11】
前記一般式(I)で表されるホスホン化合物の前記少なくとも1種は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸、ヒドロキシエチル−イミノ−ビス−(メチレン−ホスホン)酸、アミノ−トリス−(メチレンホスホン)酸、エチレンジアミンテトラ−(メチレンホスホン)酸、ジエチレントリアミン−ペンタ−(メチレンホスホン)酸、(1−アミノエチリデン)ビスホスホン酸、オキシドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、(1−ヒドロキシ−2−メチル−1−ホスホノプロピル)ホスホン酸、(アミノメチレン)ビスホスホン酸、1−ヒドロキシペンタン−1,1−ビスホスホン酸、[(2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイル)ビス(ニトリロジメタン−ジイル)]テトラキス−ホスホン酸、クロドロン酸、(ジフルオロメチレン)ビスホスホン酸、(ジブロモメチレン)ビスホスホン酸、(ヒドロキシメタン)ビスホスホン酸から選択される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項12】
前記木製物は、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンから本質的に成る、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項13】
前記硫酸化およびリン酸化された木製物は、30から90の間、より好ましくは60から80の間のL.O.I.を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項14】
前記硫酸化およびリン酸化された木製物は、未処理の木製物と本質的に等しい物理特性を有する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の硫酸化およびリン酸化のための方法。
【請求項15】
木製物を硫酸化およびリン酸化するための方法における一般式(I)
PO(OH)2−R−PO(OH)2 (I)
で表される化合物の使用であって、
式中、
Rは、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−10、好ましくはC1−5アルキル基、N(R1)基、R2N(R3)R4基を表し、
R1は、H、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
R2およびR4は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
R3は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基、R5N(R6)R7基を表し、
R5およびR7は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
R6は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基、R8N(R9)R10基を表し、
R8、R9およびR10は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC1−5、好ましくはC1−3アルキル基を表し、
但し、前記一般式(I)における−PO(OH)2基の数は5よりも大きくはなく、
前記一般式(I)で表される前記化合物は、前記硫酸化の反応における触媒およびリン酸化剤として作用する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、木製物に対して防炎特性を与えるための方法、および関連する木製物に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、植物の幹から得られる、特に木(例えば、針葉樹および落葉樹)から得られる材料であるが、低木からもまた得られる。
【0003】
植物は、年々同心円状に外側に成長する幹と枝とを有すること、並びに、主にセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンから成る組織を有することによって特徴付けられる。
2、3
【0004】
乾燥した木材の化学組成は種ごとに変化し、一般に、約50%の炭素、42%の酸素、6%の水素、1%の窒素、および、1%のカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガンのような他の元素、並びに、微量の硫黄、塩素、珪素、リン、および小量の他の元素を含む。
【0005】
生木には、細胞壁内および組織の空洞中に水が存在する。
【0006】
完全に風乾された木材は、本質的に、組織の空洞中には水が無く、これに対し、細胞壁中には8から16%の間の水が保存される。
2、3
【0007】
木材に対する水分含量の一般的な効果は、木材を、より柔らかく、より柔軟にすることである。
【0008】
従って、乾燥することは、木材の強度/耐性における著しい増大を引き起こす。5cm片の完全に乾燥したモミのブロックが、同じ乾燥されていないブロックと比較して、4倍大きな不変荷重を支持することができる。
【0009】
木材は、41−43%のセルロース(グルコースに由来する結晶性ポリマー)、20−30%のヘミセルロース(不規則な態様で互いに結び付いた5つの炭素原子を有する糖類を主に含む)、並びに、23−27%のリグニン(ヘミセルロースおよびセルロースを一緒に保持することの可能な基質を生成する機能を有する)から成る。リグニンは、その構造が芳香族環を含むので、木質材料に対して疎水性の特性を与える。
2、3
【0010】
セルロースの化学構造(
図1)、ヘミセルロースの化学構造(
図2)、およびリグニンの化学構造(
図3)は、第1級、第2級、および第3級アルコールが関与できる反応と類似した化学反応に利用可能な、ヒドロキシル基の存在を示す。
【0011】
木材は、個人的な環境および(劇場、映画館、会議室等のような)公共的な環境の両方に対する構造的および非構造的要素を製造するために広く使用されているので、この材料の耐燃性を改善することが必須である。
【0012】
次の要素が存在する場合に、木材の燃焼が起こる。
−燃料(木材)、
−支燃性物質、一般的には空気中の酸素、および、
−燃料の燃焼を開始させるために、支燃性物質に対して物理的および化学的変化を促進することの可能な熱源。
【0013】
生成された熱によって、この瞬間から、燃焼現象が自分自身から動力を与えられる。
【0014】
木材の場合、様々な気体の分解生成物の形成によって、燃焼の燃料が供給される。セルロースおよびヘミセルロースの主な解重合生成物はレボグルコサン、セロビオースおよびそのオリゴマーである。これに対し、リグニンの熱分解においては、プロセスがより複雑なので、主分解生成物を判断することは難しい。リグニン分子は、実際のところ、互いに等しいモノマーユニットの繰り返しによって形成されるのではない。リグニン分子は3次元構造を示し、植物ごとに異なる。
【0015】
上記した揮発可燃性物質の前駆物質が、木材の燃焼の伝播速度に対する主な要因である。
【0016】
リグニンの熱分解の間に形成される、レボグルコサンおよびその他の揮発性成分の形成を低減させることが、揮発可燃性成分の量を低減させ、従って、木材の燃焼能力を低減させる。
【0017】
木材の燃焼能力を低減するために、木材自体を化学的に変更することを意図した様々な方法が実行されている。
1
【0018】
公知の技術は、様々な性質のホウ酸塩、リン酸塩、窒素を含む塩のような難燃性の物質が添加された水溶液中に木材を浸漬すること、および、これらに続いて、基質内で乾燥すること、または、それらと同じ塩の添加剤ポリマーを塗装することによってラミネート加工することを含み、これにより、炎に対する障壁を得る。
【0019】
しかしながら、これらの方法は、完全に効果的なわけではなく、いくつかの不利な点を示す。
【0020】
第1の不利な点は、特に、防炎性の塩の水溶液が木材の空洞に浸透することを可能にする、木材の添加材供給プロセスに関連する。残念なことに、使用される全ての添加剤が水に溶解する傾向がある。従って、製品の寿命の間にそれらが流出することを防ぐような、後続の処理がその後に行われなければならないことが明らかである。
【0021】
第2の不利な点は、木材の不活性表面保護、もっと厳密に言えば、ラミネート加工または塗装プロセスに関連する。実際のところ、難燃性の薄層は、炎から一時的に保護することができるのみであるが、木製物内にて進行する熱の増大は、直ちに、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン化合物が可燃性の揮発性化合物へと分解することを引き起こし、燃焼プロセスを引き起こす。
【発明の概要】
【0022】
本記載の目的は、木製物に対して改善された防炎特性を与えることが可能であり、文脈上、構造的に物体自体を弱めることの無い、木製物の新たな処理方法の開発である。
【0023】
本願発明によれば、上記の目的は、本記載の不可欠な部分を形成する添付の請求項にて具体的に呼び起される解決手段のおかげで実現される。
【0024】
本記載において提供される解決手段は、硫酸化の触媒としてのホスホン酸、および、木製物の必須成分、すなわちセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンと反応することの可能なリン酸化剤の使用から成り、それにより、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンが硫酸化およびリン酸化された木製物を得る。
【0025】
本記載における一実施形態は、30から90の間、より好ましくは60から80の間のL.O.I.レーティングを有する防炎特性を持った木製物に関する。
【0026】
本記載の異なる実施形態は、防炎特性を持った木製物を製造するための方法に関し、以下の工程を含む。
i)木製物、好ましくは乾燥した木製物を提供すること。
ii)硫酸化およびリン酸化溶液を好ましくは加熱条件下で調製すること。この硫酸化およびリン酸化溶液は、水、スルファミン酸アンモニウム、尿素、および、式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含む。
PO(OH)
2−R−PO(OH)
2 (I)
式中、
Rは、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−10、好ましくはC
1−5アルキル基、N(R
1)基、R
2N(R
3)R
4基を表し、
R
1は、H、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表し、
R
2およびR
4は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表し、
R
3は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基、R
5N(R
6)R
7基を表し、
R
5およびR
7は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表し、
R
6は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基、R
8N(R
9)R
10基を表し、
R
8、R
9およびR
10は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表す。
但し、一般式(I)における−PO(OH)
2基の数は5よりも大きくはない。
iii)この木製物を、硫酸化およびリン酸化溶液に、好ましくは大気圧よりも高い圧力において浸漬すること。
iv)硫酸化およびリン酸化溶液からこの木製物を抽出すること。
v)1分から12時間の間の期間にわたって、この木製物を110℃から175℃の間の温度に維持し、最後に、防炎特性を持った、硫酸化およびリン酸化された木製物を得ること。
【0027】
本記載の方法は、その物体のあらゆる点において防炎特性を持った木製物であって、未処理の木製物に対して物理的特性が変えられていない木製物の獲得を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、非限定的な例として、添付の図を参照して、ここで詳細に記載されるであろう。
【
図4】L.O.I.を測定するための装置の例を表す。
【
図5】セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン中に含有されるヒドロキシル基が、本記載による硫酸化およびリン酸化の方法を施された木製物の化学構造を表す。
【
図6】セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンに含有されるヒドロキシル基、並びにリン酸化剤に含有されるヒドロキシル基が、本記載による硫酸化およびリン酸化の方法を施された木製物の化学構造を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、非限定的な例として、ポプラから本質的に成る、改善された防炎特性を持った木製物を参照して、ここで詳細に記載されるであろう。
【0030】
この記載の範囲は、ポプラによる物体に限定されるものでは決してないことが明らかである。本明細書で記載される方法は、実際のところ、構造的および非構造的な要素を製造するために使用される、任意の植物の木製物に対して適用可能である。
【0031】
さらに、以下に提供される実験データは、L.O.I. UNI EN ISO 4589−2:2003の技術規格として理想的な、長さ80mm、幅10mm、厚さ10mmの平行六面体の形態のポプラから本質的に成る木製物を指すものの、本記載の方法は、厚板、パネル、梁、木くず、シート、ブロック、幹、薄板、および、少なくとも1つの木の部分を含む任意の構造的および非構造的要素のような、あらゆる構造を有する木製物に対して適用可能である。
【0032】
以下の記載において、実施形態の完全な理解を提供するための多数の具体的な詳細を示す。これらの実施形態は、具体的な詳細の1または複数が無くとも、もしくは、その他の方法、成分、材料等によっても、実際に実装されるであろう。その他の場合において、これらの実施形態の特定の態様を不明瞭にすることを回避すべく、周知の構造、材料、または工程は図示されない。または、詳細には記載されない。
【0033】
本明細書を通して、"一実施形態"または"実施形態"との言及は、その実施形態に関連して記載されている特定の構成、構造、または特性が、少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の全体を通じた様々な箇所にて"一実施形態において"または"特定の実施形態において"といったフレーズが現れたとしても、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の構成、構造、または特性は、1または複数の実施形態において、任意の簡便なやり方で組み合わされ得る。
【0034】
本明細書で提示される見出しは、便宜上のものに過ぎず、これらの実施形態の目的または意味を説明するものではない。
【0035】
本記載において、"木製物"という表現は、植物または低木の幹および/または枝から得られ、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンから本質的に成る物体を意味する。
【0036】
本記載における一実施形態は、木製物に対して防炎特性を与えるための化学的処理を施された木製物に関する。処理されたこの木製物は、30から90の間、より好ましくは、60から80の間のL.O.I.を有する。
【0037】
本記載における一実施形態は、木製物に対して防炎特性を与えるための、木製物の硫酸化およびリン酸化の方法に関するものであり、硫酸化を触媒するため、且つ、木製物の必須な構成成分、すなわち、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンに存在するヒドロキシル基と反応することの可能なリン酸化剤として機能するための、少なくとも1種のホスホン酸の使用によって特徴付けられる。
【0038】
本明細書に記載される方法の文脈において使用され得るホスホン酸は、2個から5個のホスホン基(phosphonic group)を含有する有機化合物である。
【0039】
一実施形態において、本明細書に記載される方法の文脈において使用されるホスホン酸は、一般式(I)
PO(OH)
2−R−PO(OH)
2 (I)
で表される。式中、
Rは、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−10、好ましくはC
1−5アルキル基、N−R
1基、R
2N(R
3)R
4基を表し、
R
1は、H、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表し、
R
2およびR
4は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表し、
R
3は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−10、好ましくはC
1−5アルキル基、R
5N(R
6)R
7基を表し、
R
5およびR
7は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表し、
R
6は、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−10、好ましくはC
1−5アルキル基、R
8N(R
9)R
10基を表し、
R
8、R
9およびR
10は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表す。
但し、一般式(I)における−PO(OH)
2基の数は5よりも大きくはない。
【0040】
一実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10基が存在する場合で、それらのうちのいずれか1つが置換アルキル基を表す場合、1または複数の置換基は、−OH、−COOH、−PO(OH)
2、−NH
2、−NHR
11、−NR
12R
13、−Cl、−Br、−Fから独立に選択され、式中、
R
11、R
12およびR
13は、独立に、直鎖型または分岐型で置換または未置換のC
1−5、好ましくはC
1−3アルキル基を表す。
但し、一般式(I)における−PO(OH)
2基の数は5よりも大きくはない。
【0041】
一実施形態において、R
11、R
12およびR
13基が存在する場合で、それらのうちのいずれかが置換アルキル基を表す場合、1または複数の置換基が−PO(OH)
2基によって表される。但し、一般式(I)における−PO(OH)
2基の数は5よりも大きくはない。
【0042】
一実施形態において、R
2、R
4、R
5およびR
8基が存在する場合、これらは、独立に未置換アルキル基を表す。
【0043】
一実施形態において、R
3、R
6、R
7、R
9およびR
10基が存在する場合で、これらが独立に置換アルキル基を表す場合、1または複数の置換基が、−PO(OH)
2基で表される。但し、一般式(I)中の−PO(OH)
2基の数は5よりも大きくはない。
【0044】
一実施形態において、本明細書に記載される方法において使用され得る式(I)のホスホン化合物は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシエチル−イミノ−ビス−(メチレン−ホスホン)酸、アミノ−トリス−(メチレンホスホン)酸、エチレンジアミンテトラ−(メチレンホスホン)酸、ジエチレントリアミン−ペンタ−(メチレンホスホン)酸、(1−アミノエチリデン)ビスホスホン酸、オキシドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、(1−ヒドロキシ−2−メチル−1−ホスホノプロピル)ホスホン酸、(アミノメチレン)ビスホスホン酸、1−ヒドロキシペンタン−1,1−ビスホスホン酸、[(2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイル)ビス(ニトリロジメタン−ジイル)]テトラキス−ホスホン酸、クロドロン酸、(ジフルオロメチレン)ビスホスホン酸、(ジブロモメチレン)ビスホスホン酸、(ヒドロキシメタン)ビスホスホン酸である。
【0045】
一実施形態において、木製物の硫酸化およびリン酸化の方法は、以下の工程を想定する。
i)木製物、好ましくは乾燥した木製物を提供すること。
ii)硫酸化およびリン酸化溶液を好ましくは加熱条件下で調製すること。この硫酸化およびリン酸化溶液は、水、スルファミン酸アンモニウム、尿素またはグアニジン、および、上記にて定義された式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含む。
iii)この木製物を、硫酸化およびリン酸化溶液に、好ましくは大気圧よりも高い圧力において浸漬すること。
iv)硫酸化およびリン酸化溶液からこの木製物を抽出すること。
v)1分から12時間の間の期間にわたって、この木製物を110℃から175℃の間の温度に維持し、最後に、防炎特性を持った、硫酸化およびリン酸化された木製物を得ること。
【0046】
一実施形態において、工程iii)の前に、大気圧よりも低い圧力において、この木製物はガス放出工程を施される。
【0047】
一実施形態において、工程iii)の間、圧力は1.1バール(10
3hPa)に等しいか、または、1.1バール(10
3hPa)より大きい。
【0048】
一実施形態において、工程v)に先立って、硫酸化およびリン酸化溶液から抽出されたこの木製物は、好ましくは50から90℃の間の温度において、滴下および加熱乾燥工程を施される。
【0049】
一実施形態において、工程v)の終わりに、この木製物は、好ましくは加熱条件下での洗浄工程、および、好ましくは70から90℃の間の温度での加熱乾燥を施される。
【0050】
一実施形態において、硫酸化およびリン酸化溶液は、水、尿素、式(I)で表されるホスホン酸の少なくとも1種、およびスルファミン酸アンモニウムを、この順番で混合することにより調製される。
【0051】
一実施形態において、硫酸化およびリン酸化溶液は以下を含有する。
− 80から25%w/wの間、好ましくは50から60%w/wの間の量の水、
− 10から30%w/wの間、好ましくは10から20%w/wの間の量の尿素またはグアニジン、
− 5から30%w/wの間、好ましくは10から20%w/wの間の量の、式(I)で表されるホスホン酸の少なくとも1種、および、
− 5から30%w/wの間、好ましくは8から15%w/wの間の量のスルファミン酸アンモニウム。
【0052】
この点に関して何らかの1つの理論に縛られることを望むものではないが、本発明者達は、本記載による木製物の硫酸化およびリン酸化の反応が、ダイアグラムIに示されるように説明されることが可能であり、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン中のヒドロキシルの含有が、
図5に説明される構造の化合物を生じさせる木製物を得ると信じる理由がある。
[ダイアグラムI]
【0053】
一実施形態において、式(I)の化合物が、第1級ヒドロキシルで置換されたアルキル基を含有する場合、本発明者達は、このヒドロキシル基がスルファミン酸アンモニウム化合物と反応する状態にあると信じる理由がある。
【0054】
例として、R基が第1級ヒドロキシル基によって置換されたアルキル基を表す場合、本発明者達は、本記載による木製物の硫酸化およびリン酸化の反応が、ダイアグラムIIに示されるように説明されることが可能であり、セルロース、ヘミセルロース、リグニン中のヒドロキシルの含有、およびリン酸化剤中のヒドロキシルの含有が、
図6に説明される構造の化合物を生じさせる木製物を得ると信じる理由がある。
[ダイアグラムII]
【0055】
式(I)のホスホン酸は、2から5個の遊離したホスホン基を含有し、その全て、または一部分のいずれかが、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの遊離ヒドロキシル基と反応することが可能である。これは、木製物に存在するヒドロキシルと結合するための、これらの化合物の高い能力を引き起こす。
【0056】
本記載による硫酸化およびリン酸化の方法を施された木製物の防炎特性は、公知の方法で得られるものと比較して、より良好である。何故ならば、木製物に結合された硫黄、窒素、およびリンが、それを弱めること無しに、相乗的に多量に存在しているからである。
【0057】
式(I)のホスホン酸の使用は、予期せぬやり方で、硫酸化およびリン酸化反応の同時の誘導を可能にする。この反応の動力学は、比較的速い。
【0058】
反応の最初の数分からでさえ、110℃の温度から始まって、優れた硫酸化度が得られる。
【0059】
この点に関して何らかの1つの理論に縛られることを望むものではないが、本発明者達には、加熱段階において、ホスホン酸、尿素、およびスルファミン酸アンモニウムをベースとする水溶液が、水の部分的な蒸発と共に、pHがおよそ2に等しい液体および油状の塊の形成をもたらし、これは、木材の繊維内を貫通して、たとえ約100−110℃の温度でさえも、木製物の硫酸化およびリン酸化の固体−液体反応に対する理想的な酸性度条件を生成すると信じる理由がある。
【0060】
特に、本発明者達には、尿素がホスホン酸との複合物を生成でき、これらの複合物が、ホスホン酸単独の場合に対してよりも水性環境により溶解し易く、従って、木製物を構成するセルロース、ヘミセルロース、およびリグニン中に存在するヒドロキシル基とのこれらの化合物のほぼ定量的な反応を可能にすると信じる理由がある。
【0061】
式(I)で表されるホスホン酸の少なくとも1種が存在しない場合の硫酸化およびリン酸化の方法は、110℃から140℃までの温度において、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの硫酸化の兆候を何ら示さないということを強調するのは、重要なことである。
【0062】
本記載の方法により生成される防炎性の木製物は、実際のところ、水による流出に対する優れた耐性を有する。これにより、この木材は、水の浸透を防ぐためおよび任意の添加剤を除去するための、後続の処理を受ける必要が無く、硫酸化およびリン酸化された化合物は、加水分解に対する優れた耐性を有する。
【0063】
さらに、非常に毒性の強い化合物の使用に関連した問題も無い。使用されるホスホン酸は、毒性の度合いが低く、非常に低い揮発性および高い熱安定性を有する。後者は、昇温された状態で実行される反応にとって重要な特徴である。
【0064】
最後に、本明細書に記載される硫酸化およびリン酸化の方法は、アンモニアおよび尿素のような、有害な気体成分を生じさせない。
【0065】
特に、式(I)の化合物のホスホン酸基に対して非化学量論的な量の尿素の使用は、ホスホン基との複合物の形成のおかげで、液体状態へのその移行段階の間に、尿素自身、および、硫酸化の間に生じたアンモニアの結合を可能にする。
【0066】
本記載の方法は、当技術分野において公知の方法により生成された木製物とは異なり、木製物が、改善された防炎特性を有しつつ、未処理の木製物のものと本質的に同様な物理的特性を有した状態で生成されることを可能にする。
【0067】
特に、窒素、リン、および硫黄をベースとする化学基の存在は、改善された防炎特性が得られることを可能にする。
【0068】
硫黄は、木製材料が発火温度よりも低い温度で分解することを可能にし、硫酸を放出する。窒素は炎を阻止し、不燃性の気体を形成する。最後にリンは、加熱段階においてレボグルコサンおよびその他の可燃性気体の形成を阻止することに加えて、化合物P
2O
5を形成し、障壁効果が得られることを可能にし、炎がそれを通り抜けることを防止する。
【0069】
以下において、本記載による木製物の硫酸化およびリン酸化の方法の実施形態の、非限定的な例が提供されるであろう。
【0070】
A)硫酸化およびリン酸化の方法を実施するための溶液の調製
硫酸化−リン酸化溶液は、加熱条件(約50℃)下で、次の物質、55%w/wの水、17%w/wの尿素、20%w/wのヒドロキシエチル−イミノ−ビス−(メチレン−ホスホン)酸、および8%w/wのスルファミン酸アンモニウムを、この順番で混合することによって調製される。
【0071】
B)木製物の調製
木製物は、必要な寸法、表面の種類、および繊維の方向を有するサンプルを得るための機械的な処理により調製される。これらの事項は、UNI EN ISO 4589−2:2008規格に規定されるように、その材料の燃焼性の程度に影響を及ぼす。使用されるサンプルは、次の特性を有する。
材料:ポプラ
寸法:
・長さ:100mm
・幅:10±0.5mm
・厚さ:10±0.5mm
・表面:滑らか
切断方向:繊維長さの長手方向
【0072】
C)防炎特性を与えるための方法の説明
木製物を処理する方法は、2つの主な工程によるものである。第1は含浸工程であり、第2は熱処理工程である。
【0073】
このプロセスで使用される器具は次の通りである。
【0074】
強制換気を有する恒温オーブン
容積:75L(460×390×430mm)
最高温度:+260℃
均一性(+150℃):±3.0℃
精度(+150℃):±0.3℃
出力:1300W
【0075】
実験室加熱パイロットオートクレーブ
内部寸法:直径:75mm − 長さ:300mm
最小圧力:−0.8バール(10
3hPa)
最大圧力:5バール(10
3hPa)
最高温度:140℃。
【0077】
木製物が防炎特性を有するように、硫酸化およびリン酸化の溶液が、可能な限り均一に木製物内を浸透することが有用である。この目的のために、以下の工程が実行される。
【0078】
1.1 乾燥
換気されたオーブン中での70℃で120分間にわたる乾燥サイクルにより、サンプルの水分成分が除去されることで、約7.5%の重量の低下をもたらす。
【0079】
1.2 ガス放出
ステンレス鋼のバスケットによるオートクレーブの円筒体中にサンプルが挿入される。吸引ポンプが駆動されて、オートクレーブの条件を−0.7バール(10
3hPa)にする。示された仕様を有するサンプルに対して、このプロセスの持続時間は30分である。
【0080】
1.3 オートクレーブの充填
硫酸化およびリン酸化の溶液が、ニードルバルブの開口を通してオートクレーブ中に挿入される。正確な含浸のために、サンプルは完全に溶液中に浸漬されなくてはならない。
【0081】
1.4 オートクレーブの加圧
ポンプが駆動されて、円筒体中の条件を4バール(10
3hPa)にする。この圧力は、硫酸化およびリン酸化溶液の、サンプル内における浸透の均一性と速度が増大することを可能にする。この目的を達成すべく、35℃まで加熱することにより、溶液の粘性が低下される。
【0082】
このプロセスのこの工程は4時間にわたって行われ、サンプルは、重量で70−190%の溶液を吸収する。
【0084】
2.1 サンプルの乾燥
オートクレーブのシリンダからサンプルが抽出され、2−3分にわたって排出状態にされる。
【0085】
その後、それは70℃のオーブン中に120分間置かれ、溶液の水性成分が蒸発することを可能とする。この工程において、サンプルは、約50%の重量を失う。
【0086】
2.2 硫酸化およびリン酸化反応
反応を活性化すべく、このサンプルは3時間にわたって140℃にされる。この工程において、サンプルは、10から25%の重量を失う。
【0087】
2.3 サンプルの洗浄および乾燥
サンプルは流水でリンスされ、60℃で3時間にわたり乾燥される。
【0088】
D)化学的パラメータの確認
上記したように、硫酸化およびリン酸化の方法を施されたサンプルから放出可能な揮発性成分の可能な存在量を検証すべく、ヘッドスペース技術を使用した、質量分析器に結合されたガスクロマトグラフィが実行された。
【0089】
適切な容器中に密閉して閉じ込められた処理されたサンプルが、サンプル中に存在する揮発性化合物と、サンプルによって気相中に放出された揮発性化合物との間で平衡に到達することが可能となるように、恒温水槽を使用して必要な温度にされ、ある期間にわたってこれらの条件下に維持された。ヘッドスペースの予め定められた容積分(250μl)が、気密シリンジを用いて取り出され、その後、ガスクロマトグラフ中に注入された。
【0090】
使用されるガスクロマトグラフは、5970質量選択検出器(MSD)、カラムSupelco SPB−1 −30mを搭載した、Hewlett−Packard 5890である。
【0091】
初期のカラム温度は、約40℃に設定され、5分間一定に保たれた。40から250℃に温度を上げる間、加熱の傾きは20℃/分にプログラムされた。温度は、250℃にて19分間、一定に保たれた。インジェクタ温度は220℃である。
【0092】
処理されたサンプルは、25℃、110℃、および130℃において1時間にわたる温度自動調節により分析された。
【0093】
分析は、感知できるほどの結果を何ら提供しなかった。処理されたサンプルのクロマトグラムは、実際のところ、完全にブランクと同等である。処理されたサンプルは、アンモニアまたは尿素のような揮発性の物質を放出しない。
【0094】
E)防炎パラメータの確認
本記載に従って処理されたサンプルが、標準技術UNI EN ISO 4589−2:2008を使用して、室温での酸素指数により燃焼挙動を決定するための試験を施された。
【0095】
難燃性処理のされた木製物の燃焼性の指標として、限界酸素指数試験(L.O.I.)が使用される。
【0096】
窒素と酸素による制御された混合物が存在する中でサンプルの酸素指数を決定するための装置1が、
図4に概略的に示される。
【0097】
木材サンプル2が、試験カラム4の中央にあるサポート3上に配置される。必要とされる初期の酸素濃度が、供給導管5を通して供給され、フローバルブ(図示されない)によって調整される。それぞれの供給ダクトにより試験チャンバ中に供給された酸素と窒素のフローが、それぞれのフローバルブ(図示されない)により調整され、分散チャンバ7中に注入され、これらの気体は、試験カラム4中に挿入される前に、均一に予備混合される。サンプル2が酸素の臨界濃度に達したとき、サンプルの最上部まで(つまり、その高さ全体にわたって)炎が生じるはずである。発火後に少なくとも3分間にわたってサンプルが燃焼する場合、酸素の濃度は酸素指数より大きい。上記にて説明された基準よりも前にサンプルの炎が止まる場合、酸素の濃度は酸素指数を下回っている。
【0098】
この結果は、分析される材料に対する酸素の臨界濃度を評価することのできる平均値の統計量として表される。
【0099】
処理されたサンプルは、82に等しいL.O.I.値を報告した。
【0100】
水による流出に対する耐性を検証すべく、処理されたサンプルが、撹拌した状態下で三角フラスコの脱イオン水中に3時間にわたって浸漬された。その後、このサンプルは乾燥され、脱水され、調整された。
【0101】
試験が繰り返されたが、L.O.I.値は大きな変化を受けなかった。
【0102】
参考文献
1.Lewin M.; Isaacs P.K. "Imparting flame resistance to materials comprising or impregnated with hydroxy group-containing polymers" From Ger. Offen. (1971), Database: CAPLUS
2.John F. Siau; State University College of Foresty at Syracuse University: "Flow in wood" Syracuse University Press (1971) Editor: Wilfred A. Cote
3.Christen Skaar; State University College of Foresty at Syracuse University: "Water in Wood" Syracuse University Press (1972) Editor: Wilfred A. Cote
【国際調査報告】