特表2018-507265(P2018-507265A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-507265(P2018-507265A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(54)【発明の名称】流動床反応器用の流体注入ノズル
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/32 20060101AFI20180216BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20180216BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20180216BHJP
   B05B 7/30 20060101ALI20180216BHJP
   F23C 10/22 20060101ALI20180216BHJP
【FI】
   C10G9/32
   B05B7/04
   B01J8/24
   B05B7/30
   F23C10/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-529698(P2017-529698)
(86)(22)【出願日】2015年12月1日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月2日
(86)【国際出願番号】US2015063108
(87)【国際公開番号】WO2016089821
(87)【国際公開日】20160609
(31)【優先権主張番号】62/087,417
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・アレン・ナッパー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヴォルフガング・シュレーター
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ウィリアム・スクワロク
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・プロシウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・マクミラン
【テーマコード(参考)】
3K064
4F033
4G070
4H129
【Fターム(参考)】
3K064AA20
3K064AB03
3K064AD03
3K064AD05
3K064AF01
4F033QA10
4F033QB03X
4F033QB15Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD04
4F033QD11
4F033QE09
4G070AA03
4G070AB04
4G070BB32
4G070CA06
4G070CA13
4G070CB17
4G070DA21
4H129AA02
4H129CA08
4H129DA03
4H129FA03
4H129FA11
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】
ノズルによって形成される噴霧パターンの表面:体積の比を向上させるために、循環流動床反応器用の原料インジェクタに、円形で径方向に切り込みが入れられた吐出オリフィスを有する吐出ノズルが取り付けられている。原料インジェクタは、流動床の構成要素と注入される流体との間の良好な接触が求められる種々な種類の循環流動床反応器に流体を注入するのに有用である。この原料インジェクタは、流動コーキング反応器に特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質油原料のための入口と、噴霧スチームのための少なくとも1つの入口と、油とスチームとを吐出ノズルに案内するための流れ導管とを含み、前記吐出ノズルは、円形断面の中心流路を有し、前記中心流路は、前記流れ導管から、径方向に切り込みが入れられた吐出オリフィスへと延在している、循環流動床用の原料インジェクタ。
【請求項2】
前記吐出ノズルの中心流路は、径方向に対向する切り込みを有する端面へと延在している、請求項1に記載の原料インジェクタ。
【請求項3】
前記径方向に対向する切り込みは、v字形の切り込みである、請求項2に記載の原料インジェクタ。
【請求項4】
前記径方向に対向する切り込みは、矩形断面の切り込みである、請求項2に記載の原料インジェクタ。
【請求項5】
前記切り込みは、前記ノズルの中心流路から、前記ノズルの縁部へと径方向外側に延在している、請求項2に記載の原料インジェクタ。
【請求項6】
循環流動床反応器であって、垂直軸線の周りに円形断面を有する反応器壁と、流動化ガスのための下部入口と、液体重質油原料および噴霧スチームのための原料インジェクタとを有し、前記原料インジェクタは、前記反応器壁の周囲および前記流動化ガスの下部入口の上方にあり、前記原料インジェクタは、それぞれ、前記反応器壁を通して前記反応器内に延在していて、前記反応器内に吐出ノズルがあり、前記吐出ノズルから離れた端部に前記液体重質油原料のための入口があり、
各原料インジェクタは、油とスチームとを吐出ノズルに案内するための流れ導管を含み、前記吐出ノズルは、円形断面の中心流路を有し、前記中心流路は、前記流れ導管から、径方向に切り込みが入れられた吐出オリフィスへと延在している、
循環流動床反応器。
【請求項7】
前記吐出ノズルの中心流路は、径方向に対向する切り込みを有する端面へと延在している、請求項6に記載の循環流動床反応器。
【請求項8】
前記径方向に対向する切り込みは、v字形の切り込みである、請求項6に記載の循環流動床反応器。
【請求項9】
前記径方向に対向する切り込みは、矩形断面の切り込みである、請求項6に記載の循環流動床反応器。
【請求項10】
前記切り込みは、前記ノズルの中心流路から、前記ノズルの縁部へと径方向外側に延在している、請求項6に記載の循環流動床反応器。
【請求項11】
流動コーキング反応器であって、垂直軸線の周りに円形断面を有する反応器壁と、流動化ガスのための下部入口と、液体重質油原料および噴霧スチームのための原料インジェクタとを有し、前記原料インジェクタは、前記反応器壁の周囲および前記流動化ガスの下部入口の上方にあり、前記原料インジェクタは、それぞれ、前記反応器壁を通して前記反応器内に延在していて、前記反応器内に吐出ノズルがあり、前記吐出ノズルから離れた端部に前記液体重質油原料および噴霧スチームのための入口があり、
各原料インジェクタは、油とスチームとを吐出ノズルに案内するための流れ導管を含み、前記吐出ノズルは、円形断面の中心流路を有し、前記中心流路は、前記流れ導管から、径方向に切り込みが入れられた吐出オリフィスへと延在している、
流動コーキング反応器。
【請求項12】
前記吐出ノズルの中心流路は、径方向に対向する切り込みを有する端面へと延在している、請求項11に記載の流動コーキング反応器。
【請求項13】
前記径方向に対向する切り込みは、v字形の切り込みである、請求項11に記載の流動コーキング反応器。
【請求項14】
前記径方向に対向する切り込みは、矩形断面の切り込みである、請求項11に記載の流動コーキング反応器。
【請求項15】
前記切り込みは、前記ノズルの中心流路から、前記ノズルの縁部へと径方向外側に延在している、請求項11に記載の流動コーキング反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、循環流動床反応器に流体を注入するのに有用なノズルに関する。本発明は、さらに特に、石油残渣分及びビチューメンなどの重質油を流動コーキング反応器内に注入するのに有用なノズルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
循環流動床(CFB:circulating fluid bed)反応器は、種々の多相化学反応を行うために使用され得る周知のデバイスである。この種の反応器では、流体(ガス又は液体)が、粒状固体物質内を、固体を懸濁し、固体を流体であるかのように挙動させるほど十分に速い速度で送られる。流動化は、反応器の基部にある分配器(グリッド、スパージャ又は他の手段)を通じて注入される、空気、スチーム又は反応物ガスなどの流動化ガスによって維持される。CFB反応器は、現在、多くの工業用途で使用されており、この用途の中には、石油重質油の接触分解、オレフィン重合、石炭のガス化、並びに水及び廃棄物の処理がある。主要な用途の1つは循環流動床燃焼器の分野にある。この分野では、石炭又は別の高硫黄燃料が石灰石の存在下で燃焼され、SOxの排出量を低減させる。窒素酸化物の排出量もまた、床において得られる比較的低い温度により低減される。別の用途は、流動床コーキングプロセスであり、このプロセスは流動コーキング及びその変化形であるFlexicoking(商標)として知られている。この双方とも、Exxon Research and Engineering Companyによって開発されたものである。
【0003】
流動床コーキングは石油精製プロセスであり、このプロセスでは、重質石油原料、典型的には、分留による非留出残油(残渣分)又は重質油が、典型的には約480〜590℃(約900〜1100°F)、ほとんどの場合においては、500〜550℃(約930〜1020°F)の高い反応温度での熱分解(コーキング)によって、より軽質で、より有用な生成物に転化される。流動コーキングプロセスにより処理され得る重質油としては、重質常圧残渣分(heavy atmospheric resids)、芳香性抽出物、アスファルト、並びにカナダ(Canada)(アルバータ州アサバスカ(Athabasca,Alta.))、トリニダード(Trinidad)、南カリフォルニア(Southern California)(ロサンゼルス市ラ・ブレア(La Brea,Los Angeles))、マッキトリック(McKittrick)(カリフォルニア州ベーカーズフィールド(Bakersfield,California))、カーピンテリア(Carpinteria)(カリフォルニア州サンタバーバラ郡(Santa Barbara County,California))、ベルムデス湖(Lake Bermudez)(ベネズエラ(Venezuela))のオイルサンド、タールピット、及びピッチレイクから、及びテキサス州(Texas)、ペルー(Peru)、イラン(Iran)、ロシア(Russia)及びポーランド(Poland)で見つかるものなどの同様の堆積物からのビチューメンが挙げられる。このプロセスは、高温のコークス粒子を含む大型の反応容器を備えるユニット内で行われる。コークス粒子は必要な反応温度において流動化した状態で維持され、スチームが容器の底部において注入され、コークス粒子の平均移動方向は床全体を通して下方向である。重質油原料(heavy oil feed)は、典型的には、350〜400℃(約660〜750°F)の範囲の圧送可能な温度に加熱され、噴霧スチーム(atomizing steam)と混合され、反応器内のいくつかの連続する高さに配置された複数の原料ノズルを通じて供給される。スチームアシスト式噴霧化ノズルは、高温コークス粒子の流動床に重質油原料を噴霧(又はスプレー)するために使用される。注入された噴霧は床内に噴流(又はジェット)を形成し、この噴流中に、流動化したコークス粒子が同伴される。反応器の操作性及び液体の収率を向上させるためには、噴霧された原料小滴と同伴されたコークス粒子との効果的な混合が不可欠である。
【0004】
流動化されたスチームは、反応器の底部にあるストリッパ部に注入され、ストリッパ内のコークス粒子を通して上方に送られる。その際、コークス粒子は、上方の反応器の主要部分から降下する。原料液体の一部分は流動床内のコークス粒子を被覆し、続いて、固体コークスの層と、ガス又は気化液体として発生するより軽質の生成物とに分解する。反応器の圧力は、炭化水素蒸気の気化を有利にするために比較的低く、典型的には、約120〜400kPag(約17〜58psig)、最も通常は、約200〜350kPag(約29〜51psig)の範囲である。コーキング(熱分解)反応の軽質炭化水素生成物は気化して流動化スチームと混合し、流動床を通過して上方に、コークス粒子の高密度流動床上方の希釈相領域へと進む。コーキング反応で形成される気化炭化水素生成物のこの混合物は、スチームとともに、約1〜2メートル/秒(約3〜6フィート/秒)の空塔速度で希釈相内を上方に流れ続け、いくらかのコークスの微細な固体粒子を同伴する。同伴される固体のほとんどは、1つ以上のサイクロン分離器で遠心力により気相から分離され、重力によって、サイクロンディプレグを通過して高密度流動床に戻る。反応器からのスチームと炭化水素蒸気との混合物は、その後、サイクロンガス出口から、反応部上方に配置され隔壁によって反応部から分離されたプレナム内のスクラバ部に排出される。この混合物は、スクラバ部において、スクラバ部内のスクラバシェッド(scrubber shed)上に降下する液体との接触によりクエンチされる。ポンプアラウンドループは、凝縮された液体を外部冷却器へと循環させ、スクラバ部の頂段に戻し、液体生成物の最重質留分のクエンチ及び凝縮のための冷却を行う。この重質留分は、典型的には、流動床反応領域に供給して戻すことにより消滅するまで再利用される。
【0005】
同じくExxon Research and Engineering Companyによって開発されたFlexicoking(商標)プロセスは、実際には、上述のように、反応器及びバーナ(当該プロセスのこの変形形態においてはヒータと呼ばれることが多い)を含み、コークス生成物を空気/スチームの混合物との反応によってガス化し、低発熱量の燃料ガスを形成するためのガス化器も含むユニット内において操作される流動コーキングプロセスである。ヒータは、この場合、酸素欠乏環境で動作される。同伴されるコークス粒子を含む、ガス化器による生成物ガスは、反応器の熱必要量の一部を供給するためにヒータに戻される。ガス化器からヒータに送られるコークスの戻り流が熱必要量の残りを供給する。ヒータを出る高温コークスガスは、浄化のため処理される前に、高圧スチームを発生させるために使用される。コークス生成物は反応器から連続的に除去される。Flexicokingプロセスと流動コーキングプロセスとの間の類似性に鑑み、用語「流動コーキング」は、本明細書において、区別が必要とされる場合を除き、流動コーキング及びFlexicokingの両方を意味しかつ包含するように用いられる。
【0006】
高密度流動床は、一般に、十分に混合される反応器として挙動する。しかしながら、低温流体力学を用いたモデルシミュレーション及びトレーサ研究では、かなりの量の湿潤コークス(wetted coke)が反応部を迅速にバイパスして、ストリッパシェッドに接触し、そこで湿性膜の一部がコークスへと転化され、コークス粒子が互いに結合することができることを示している。時間の経過とともに、蒸気相からの炭化水素種は粒子間の間隙内で凝縮し、非常に硬質で除去が困難な堆積物を生成する。
【0007】
反応器のファウリングを低減する、及び液体の収率を増加する、の両方のための1つの手法は、原料が床に入る際における原料の噴霧化を向上させることである。向上した噴霧化により、油が液体形態でストリッパへと下方に運ばれる程度が低減されることが期待される。流動コーキングプロセスにおいて用いられる従来の噴霧化ノズルでは、スチームを用いて、高温のコークス粒子の流動化床への、加熱された残渣分又はビチューメンの噴霧を補助する。反応器の操作性及び液体生成物の収率を向上させるには、残渣分小滴と同伴されたコークス粒子との効果的な接触が重要である。注入された噴霧は床内に噴流を形成し、この噴流中に、流動化したコークス粒子が同伴される。不十分な性能の噴霧化ノズルにおける主な懸念は、床内に液固凝集体が形成しがちとなり、固体への高度の局所的な液体の充填が生じ、粒径がバルク固体の平均よりもかなり大きな、大きな湿性の原料/コークス凝集体が形成されることである。これらのより重い凝集体は、反応器の下方部分へと分離され、反応器の内部、特にストリッパ部を汚損する傾向があり得る。これら凝集体により、熱及び物質移動の制限の増加並びに液体の収率の低下も来す。高められた原料噴霧化性能によって、噴霧化された原料とコークス固体との間の接触が向上し、反応器の操作性の全体的な向上につがなり、反応器のファウリング低減により運転期間が長くなる及び/又はより低い反応器温度での操作により液体生成物の収率が高くなる。液体をコークス粒子全体に、より均一に拡散することにより、より薄い液体膜が形成され、熱及び物質移動の制限が低下し、液体の収率を伴う。改良された原料ノズルの使用によって、より高い液体供給速度も促進される可能性がある。
【0008】
流動コーキングユニットでの使用のために提案されたスチームアシスト式ノズルが特許文献1(Base)及び特許文献2(Chan)に記載されている。ノズルが壁を通してコークス粒子の流動床に入るように、典型的には、流動コーカーの側壁に取り付けられるこのノズルでは、重質油/スチームの混合物の泡状の流れのストリームが生成され、ノズルオリフィスにおいて噴霧される。使用されるノズルは、順に、入口と、縮径の第1の収束又は収縮部と、拡径の拡散部分と、縮径の第2の収縮部と、オリフィス出口と、を含む円形の流れ通路を有する。収束部は流れの混合を加速させ、伸張及び剪断応力流動機構により泡径の低減を引き起こす。第2の収縮部は、混合物の流れを第1の収縮部よりも加速させるように設計されており、その結果、第1の収縮によって生成された泡は、第2の収縮で大きさが更に低減される。拡散部分は、混合物が2回目の加速の前に減速し、速度を落とすことを可能にする。この目的は、ノズルを出る小滴の平均中心径を、比較的微細な大きさ、典型的には、300μmのオーダーに低減することであるが、これは、重質油小滴が加熱されたコークス粒子と衝突する最大確率が、小滴及び加熱された粒子の両方が同様の直径を有する場合に発生すると報告されていることが理由である。したがって、200又は300μmの小滴径が望ましいと考えられる。特許文献1のノズルの目的は、従来の見解によれば、コークス粒子と油小滴との間のより良好な接触に至る可能性のある微細な油小滴の噴霧を生成することである。非特許文献1に概念が詳述されている後の手法では、液体の小滴と高温のコークス粒子との間の初期の接触及び混合は、噴霧中の液体の小滴の大きさをあまり考慮することなく高められるべきであると提案している。
【0009】
吸出し管を用いるスプレーノズルが提案されており、特許文献3(Chan)に記載されている。このノズルデバイスは、ノズルオリフィスから出る液体噴流の運動量を利用して固体を吸出し管のミキサ内に引き込み、ミキサ内の固体と液体の激しい混合を引き起こし、こうすることで、個々の小滴と粒子とが接触する確率を高めることにより機能する。この結果、より多くのコークス粒子が油で薄く被覆される可能性があり、液体の収率の向上につながり、凝集体の生成が減少し、ファウリングの低減につながり、液体気化プロセスにおける物質移動の制限を低下させることにより液体生成物の高い収率をなお達成しつつも反応器の動作温度が低下する可能性がある。実際のアセンブリは、反応器の側壁を貫通する、噴流を生成するための噴霧ノズルと、開放式の吸出し管型ミキサと、を含む。開放式の吸出し管型ミキサは、反応器内に水平に配置され、ノズルから噴霧された噴流が管内を移動し、コークス粒子及び流動化ガスのストリームをコークスと液体の小滴との混合が行われる管へと同伴するように、ノズルと位置合わせされている。吸出し管は、管内の低圧状態を促進し、コークス粒子及び流動化ガスの誘導を補助するためのベンチュリ部を有することが好ましい。しかしながら、このデバイスは、流動床内のアセンブリのファウリングに対する懸念から商業的に成功を収めてはいない。
【0010】
例えば、Base及びChanの特許に示されるノズルの円形出口オリフィスは、液体の大半が噴流の中心軸に沿って集中する円筒状の液体プルームを形成し、同伴されるコークス粒子が噴流の中心領域へと進入する機能は限定される。このプルームは最小の表面積対体積比を有し、これが噴流の中心コアへの固体コークス粒子の進入に対する大きな障害となり、高温コークス粒子と注入された油のストリームとの間の接触が最適に満たないものとなる。
【0011】
特許文献4(Chan)は、オイルサンドビチューメンなどの重質油原料を用いる、円筒状の噴流に比して増加した表面積を有する液体原料の噴霧を提供するため出口にクローバリーフディスペンサが取り付けられた流動コーキングユニットにおいて有用な改良型の液体原料ノズルについて記載している。このプルームのより広い表面積は、噴流への固体の同伴を増加させるとともに、液体を噴流の中心からクローバ葉のローブへと引き込み、流動床における液体と固体との接触を向上させる。
【0012】
例えば、特許文献5(Steffens)、特許文献6(Gauthier)及び特許文献7(Chen)に記載されているような矩形の又はスリット付きのノズルは流体接触分解ユニットの原料インジェクタから扇形の噴霧を生成するために用いられてきたが、これらは、プロセス行程中における過剰な固体による目詰まりの可能性から流動コーキング反応器での使用にはあまり望ましくない。したがって、ある最低限の隙間がノズル出口に必要となり、円形の出口が最も大きな隙間を提供する。したがって、流動コーキング反応器のコークス粒子の流動床に注入される原料の分散を向上させることができるノズルアセンブリに対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,003,789号明細書
【特許文献2】CA2224615号明細書
【特許文献3】米国特許第7,025,874号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0063961号明細書
【特許文献5】欧州特許第454416号明細書
【特許文献6】米国特許第7,172,733号明細書
【特許文献7】米国特許第5,794,857号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“Injection of a Liquid Spray into a Fluidized Bed:Particle−Liquid Mixing and Impact on Fluid Coker Yields”,Ind.Eng.Chem.Res.,43(18),5663.,House,P.et al
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
ここで、出口オリフィスに側方(又は横方向(lateral))の切り込みを付加し、表面積を増加して、噴霧プルームと床内の粒子との間の接触にとって非常に有害な液体に富む中心領域の形成を最小限にすることによって、円形断面を有する単純なノズル開口部を改良して、分散を増加させた噴霧を生成することができることを見出した。このノズルは、スチームを利用して、原料を、分散を大幅に向上させた噴霧へと加速させかつ霧化する。ノズル本体内の流路の範囲(又は制限)を出る際のスチームの広がりにより、油/スチームの混合物がノズルを出る際に油/スチームの混合物を切り込みへと推進し、表面/体積の比が増加した噴霧パターンを形成する。
【0016】
本発明によれば、原料インジェクタ(又は供給インジェクタもしくはフィードインジェクタ(feed injector))は、ノズルを有し、このノズルは、円形で径方向に切り込みが入れられたオリフィスを備える。原料インジェクタは、流動化した固体と注入される流体との間に良好な接触が求められる種々な種類の循環流動床反応器に流体を注入するのに有用である。流動コーキング反応器(この分類の中には、Flexicoking(商標)ユニットを含む)に特に有用であり、潜在的には、類似の課題に直面している他のCFB反応器にも有用である。
【0017】
循環流動床ユニット(circulating fluid bed unit)は、垂直軸線の周りに円形断面を有する反応器壁と、流動化ガスのための下部入口と、液体重質油原料及び噴霧スチームのための原料インジェクタとを有し、原料インジェクタは、反応器壁の周囲および流動化ガスの下部入口の上方にある。原料インジェクタのそれぞれは、反応器壁を通して反応器の内部に延在していて、反応器内に吐出ノズルがあり、この吐出ノズルから離れた端部に液体重質油原料および噴霧スチームのための入口を有するものであり、原料インジェクタのそれぞれが、油とスチームとを吐出ノズルに案内するための流れ導管(flow conduit)を含み、吐出ノズルは、円形断面の中心流路を有し、中心流路は、流れ導管から、径方向に切り込みが入れられた吐出オリフィス(radially notched discharge orifice)へと延在している。
【0018】
流動コーキングユニットにおいて使用される好適な形態では、ユニットの反応器は、以下を含む。
反応器壁によって規定される高密度床反応部(dense bed reaction section)であって、典型的には、円錐台形の形状を有し、その大きい方の断面が最上部にある、高密度床反応部;
高密度床反応部の下方にある基部領域であって、高密度床反応部において、細密に分割された固体コークス粒子の高密度床を流動化するために、この基部領域において、流動化ガスが注入される、基部領域;
重質油入口であって、その原料インジェクタが、基部領域の上方の様々な高さで、反応器壁の周縁部のまわりに配置されている、重質油入口;
プレナムまたはスクラバ部であって、高密度床反応部の上方にあり、高密度床反応部から分離されている、プレナムまたはスクラバ部;
高密度床反応部の頂部にある複数のサイクロンであって、そのそれぞれが、サイクロン入口と、サイクロンガス出口と、サイクロンディプレグとを有し、サイクロン入口は、放出されるガスおよびコークス粒子の流れのためにあり、サイクロンガス出口は、反応部の上方のプレナムへと吐出するものであり、サイクロンディプレグは、サイクロン内でガスから分離されたコークス粒子を高密度床反応部へと戻すためにある、サイクロン;
ストリッピング部であって、反応器の基部領域にあり、ストリップ用スチームのためのストリッパシェッドおよびスパージャを含む、ストリッピング部。
【0019】
反応器は、ユニット内において、通常の方法で、コークスラインによってバーナ/ヒータに結合される。低温コークス移送ラインが、コークスをストリッパの底部からバーナ/ヒータに送り、高温コークス戻りラインが、高温コークスをバーナ/ヒータから反応器に戻す。Flexicokerの場合、上述のように、ガス化器(gasifier)部はヒータ容器に続いている。
【0020】
反応器において、原料入口ノズルは、反応器の上端部、かつ反応器の周縁部に実質的に水平に配置される。これら原料入口ノズルは、重質油原料を反応器へと運ぶ。これらは、それぞれ、ノズルから反応器に入る噴霧の最適な構成を提供するための上述の原料ノズルアセンブリを有する。
【0021】
その好適な形態では、インジェクタは、圧力下で、収束−発散するプレミキサ部を用いて、重質油ストリーム内に噴霧化スチームを導入する。プレミキサの使用によって付与される原料流れの安定性は、プレミキサと吐出ノズルとの間において、流れ導管内における狭窄−拡張する流れ調整器または安定器の使用によって、さらに向上する。プレミキサおよび流れ調整器の好適な形態は、プレミキサおよび流れ調整器の詳細について参照として援用される、2014年8月28日に出願の米国特許出願公開第2012/0063961号明細書又は米国特許出願第62/042,911号明細書に記載されている。
添付の図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】プレミキサ、流れ調整器及び吐出ノズルを組み込んだノズルアセンブリを断面図において示す。
図2】吐出ノズルの長手方向断面図を倍尺で示す。
図3】切り込みが入れられた吐出ノズルを示す。
図4】切り込みが入れられた吐出ノズルの第2の形態を示す。
図5】切り込みが入れられた吐出ノズルの別の形態を示す。
図6】コールドフロー試験において種々のノズルにより生成された噴霧パターンを示す。
図7】コールドフロー試験において種々のノズルにより生成された噴霧パターンを示す。
図8】コールドフロー試験において種々のノズルにより生成された噴霧パターンを示す。
図9】コールドフロー試験において種々のノズルにより生成された噴霧パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
ノズルアセンブリ
流動床内における原料分散の向上をもたらすための完全なノズルアセンブリを図1に示す。ノズルアセンブリ10は流動床ユニット、例えば流動コーカーユニットの反応器の壁11を貫通し、その内部12に入る。ノズルアセンブリは、ノズル及びその動作モードの記載全体を参照する米国特許出願公開第2012/0063961号明細書に示されている種類のスロットル本体プレミキサ部13を含む。別の好適な代替的なプレミキサ構成は、そのプレミキサの記載を参照する2014年8月28日出願の米国特許出願第62/042,911号明細書に示されている。プレミキサから吐出ノズルまで延在している流れ導管60には、その入口又は上流側端部にフランジ16が取り付けられており、プレミキサ本体の端部にあるフランジ14との流体流接続(fluid flow connection)を提供する。流れ導管は、その長さに沿って及び吐出ノズル29の上流の15で示される箇所に、収束−発散部の形態の流れ調整器15を有する。流れ導管60は円形断面のものであり、反応器内部における流れ導管60の先端部に吐出ノズル29を有する。ノズルアセンブリは、外部支持シュラウド17のフランジ付き端部18上のプレミキサ部とともに、通しボルト(図示せず)によって従来の手法で保持される。導管20はプレミキサ部13の入口側にフランジ式に取り付けられ、クリーニングポート21まで延出する。クリーニングポート21は、動作時には通常、フランジ式に取り付けられたカバープレート(図示せず)によって閉じられている。クリーニングポートは、カバーが外されたクリーニングポートから吐出ノズルまで、また、ロッドが十分に小さい場合は、ノズルの内端部にある吐出口にかけてクリーニングロッドを通すことによりノズルアセンブリのファウリングの清掃を可能にするために設けられる。クリーニングポートは、また、高圧水洗浄を用いることにより清掃してもよい。
【0024】
重質油原料のための入口ポート22が設けられ、噴霧スチームが、2つの径方向に対向するスチーム入口ライン23、24を通過してスチーム入口ポートに入る。スチーム入口ポートは収束領域の起端に配置されており、発散領域に続くスロートも有するプレミキサ部内のスロットル本体狭窄部への進入部を形成している。重質油原料と注入されたスチームとの激しい混合がスロート及び後続の発散部内において開始され、導管内の流れ調整器によって補助されて、流れ導管に沿って継続する。プレミキサ内の通路の入口直径と出口直径とは概して同じである。スチームラインにはその外端部にクリーニングポートも設けられている。クリーニングポートは、通常、フランジ式カバープレートによってカバーされており、クリーニングロッドをプレミキサの本体の入口ポートまで通すことを可能にする。
【0025】
プレミキサから反応器の壁11を通り、反応器内部に通じている導管60は、吐出ノズルまで内部シュラウド28内に収容されている。この目的は主に、構造的支持のため、及び反応器内を循環する固体による侵食から導管を保護するためである。
【0026】
スチームポートの数は保守要件及びアセンブリのサイズに応じて異なっていてもよく、通常、2つから6つが適切であり、ほとんどの場合においては、2つから4つである。2つのポートが良好な結果をもたらすことが判明しており、また、これらポートは、汚損の可能性を低減するほど十分に大きく作製することができる。2つのポートは直径の方向に対向する、4つのポートは四半分にあるなどの、対称な径方向のポート配置が好ましい。スチームポートは、ポートからの対向するスチームジェットの、互いに対する衝撃による原料の混合及び噴霧化を促進するために、対で対向することが好ましい。対向していないポートからのスチームの衝突によるプレミキサ壁の侵食も低減される。良好な混合、圧力脈動の低減による安定な泡の流れ、及びスロート部自体の侵食の低減のためには、スロート領域のちょうど進入部におけるガスと液体の混合が最適であると考えられる。
【0027】
スロートへの入口における収束角、スロート径及び長さ、スロートからの発散角、入口及び出口直径を含むプレミキサの設計の主な性能基準については2014年8月28日出願の米国特許出願公開第2012/0063961号明細書及び米国特許出願第62/042,911号明細書に記載されている。プレミキサのスロート領域を作製するためにステライトなどの耐食材料を使用してもよい。あるいは、スロート領域は、侵食を低減するために、熱間等方加圧法によって作製することができる。
【0028】
流れ調整器(又はフローコンディショナ)
ノズルアセンブリは、図1に示すような、プレミキサと吐出ノズルとの間の、一定の断面を持つ単純な管状導管によって良好に機能するものの、プレミキサ13の下流側の導管60内の乱流を流れ導管60内の流れ安定器又は調整器15によって更に安定させてもよく、また、吐出ノズルの前において、分散した泡状の流れを維持してもよい。流れ調整器は、流れ導管の吐出端部への流れの安定性を向上するために、好ましくは、プレミキサと吐出ノズルとの間のその長さの第2の半分以内、つまり、プレミキサよりも吐出ノズルのより近傍に配置されることが好ましい。概して、流れ調整器は、収束部に続いて発散部を含み、収束部と発散部との間に円筒部を有する。流れ調整器はノズルに通じる流れの安定性を向上させることが判明している。
【0029】
吐出ノズルの内部輪郭の好適な構成を図2に示す。この構成は、軸方向流通路41を有し、この軸方向流通路41は、一方の端から他方の端まで延在していて、上流側端部に、導管60の端部に接続するための適切なコネクタを備える。動作時に生じる高温及びノズルを通過する材料の種類のため、ノズル29は流れ導管の端部に溶接されていることが好ましい。ノズル内の中心通路は、順に、流れ導管60から直に続く、スロート43に向かって狭くなる収束領域42、これに続く発散拡散領域41、これに続くノズルの本体内の第2の収束領域44、更にこれに続くノズルオリフィス自体45を含む。ノズル本体内の円形流路の直径及び長さもまた、流れ導管及び流れ調整器内に形成される分散した泡状の流れの安定性、ゆえに、ノズルの噴霧化性能に影響を及ぼす。流れ導管内における過度に長い滞留時間は泡の凝集及び二相流の不安定性につながる。したがって、導管内の流体滞留時間を最小限に維持する必要性と、ノズルの全体的な圧力要件に対する導管内の圧力損失の寄与との間で、導管の直径/長さの比率の選択のバランスがある。流れ調整器の好適な特徴の更なる詳細はこうした詳細を参照する米国特許出願公開第2012/0063961号明細書及び米国特許出願第62/042,911号明細書に記載されている。
【0030】
吐出ノズル(又はディスチャージノズル)
ノズルの目的は、液体を中心線から引き出し、液体の固体との接触を最大にすることである。これにより、原料が、コークス粒子を、より均一かつ平均的により薄い膜でコーティングすることが可能になる。より薄い膜では拡散路が、より短くなるため、二次的な分解が減少する傾向にあり、その結果、液体の収率(又は収量(yield))が向上する。本発明によれば、ノズルの本体は、側方(又は横方向)に切り込みが入れられた吐出オリフィス(laterally notched discharge orifice)を有する。切り込みは、好ましくは、ノズルの中心流路から、その周縁部へと延在していて、v字形の切り込み(パイセグメント)または例えば半円形もしくは矩形断面の溝の形態で便利に作製してもよい。所与の反応器において、その通常の原料(又はフィード(feed))で最も効果的であることが判明している噴霧パターンに応じて、異なる切り込み構成を使用してもよい。加えて、噴霧パターンもまた、ノズル本体の構成、特にその吐出オリフィスのすぐ上流の形状によって異なる。
【0031】
径方向に切り込みが入れられた吐出オリフィスを有するノズルの2つの好適な形態を図3及び図4に示す。図3に示すノズル50では、中心流路51は、吐出開口部52のすぐ上流が円筒状の形状である。2つのv字形の径方向に対向する切り込み(又は切欠もしくはノッチ(notch))53、54がノズルの本体に切られており、中心流路の縁部から、ノズルの外側縁部まで、ノズルの前面にわたって延在している。図4のノズル55は、中心流路56が吐出オリフィスのすぐ上流でオリフィスの方向に収束するという点で異なる。この場合、切り込みは、図3の角度よりも広い角度で切られており、吐出オリフィスのすぐ上流の収束領域後のノズル内におけるスチーム/油の混合物の広がりを増加することを可能にする。示されるように、2よりも多くの切り込みを設けることが可能であり、例えば、更に以下に記載するように、噴霧パターンの形状の結果的な変化を伴い、3つ又は4つをノズルに作製することができる。
【0032】
切り込みが入れられたノズルの別の形態を図5に示す。この場合、切り込みは、ノズルの端面の幅全体にわたって延在していないものの、その代わり、中心流路からノズルの外部の湾曲面の途中まで外側に向けて延在している。切り込みは、略矩形の形状であり、一定の幅(径寸法)のものとして示されているが、その代わり、ノズルの内部から、ノズルの端面に向かって、幅が増す切り込みを形成するように、ノズル本体へと深さが増すにつれて幅を減少することができる。これら一部の径方向の切り込みは、矩形又は略矩形である必要はない(図5の切り込みは、ノズルに一定の壁厚を付与するために湾曲した外面を有する)。しかし、図3及び図4のものに類似するv字形であり得るものの、中心流路からノズルの表面の外側縁部までの全体に延在していない。また、図3及び図4と同様に、示されるように、2よりも多くの切り込みを設けることが可能であり、例えば、更に以下に記載されるように、噴霧パターンの形状の結果的な変化を伴い、3または4の切り込みをノズルに作製することができる。
【0033】
噴霧パターンへの効果を図6図9に示す。これら研究のため、液体として水、及び蒸気の代わりに圧縮空気を使用し、フルスケール(実寸)のノズルに対して、オープンエア(外気)でのコールドフロー実験を行った。図6は、単純な円形ノズルによって形成される噴霧パターンの一例を示す。この種のノズルからのプルームは、十分に柱状の噴流(又はジェット)の形態でコークス粒子の床に入る。この噴流は、上述のように、最小限の表面:体積の比を有するため、噴流への固体の同伴を阻止する。図7は、円筒状の流路が吐出オリフィスに通じており、2つの径方向に対向するv字形の切り込みがノズルの表面にわたって延在している図3に示される種類のノズルによって生成される扇形の噴霧パターンを示す。図8は、収束流路が吐出オリフィスに通じており、2つの径方向に対向するv字形の切り込みがノズルの表面にわたって延在している(写真における異なる角度によって、このパターンは、円錐形に見えるが、この噴霧もまた扇形である)図4に示される種類のノズルによって、類似の形状の噴霧パターンが形成されることを示す。これら扇形の噴霧パターンは、固体の同伴において、図6に示される柱状パターンよりも、かなり大幅に好ましい。4つの径方向に入れられた切り込みを有するノズルを使用した効果を図9に示す。ノズルの端面に入れられた4つのv字形の径方向の切り込みによって十字形のパターンが形成される。
【0034】
径方向に切り込みが入れられたノズルによって形成される噴流の外部表面積は標準的な円形ノズルによって形成される噴流の外部表面積よりも大幅に大きい。同じ体積流量に対し、1つの扇形噴霧パターンでは表面積が約400%増加し、十字形の扇形では表面積が約800%増加する。噴流へのコークスの同伴は、表面積に比例するため、同伴もまた、比例して増加する。
【0035】
また、切り込みが入れられた出口を有するノズルによって、大きな流動床内に噴霧することにより試験を実施し、凝集体分解比率(agglomerate breakage rate)を測定した。切り込みを有するノズルは、より少数の、より弱い凝集体を生成し、凝集体分解比率は、標準的な円形ノズルに比して30%増加した。切り込みが入れられたノズルは、より多くの固体粒子を噴霧中に同伴することができ、液体と固体との接触を大幅に向上させることができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】