特表2018-507358(P2018-507358A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-507358自動車のパワートレインを操作する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-507358(P2018-507358A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(54)【発明の名称】自動車のパワートレインを操作する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20180216BHJP
   B60K 5/00 20060101ALI20180216BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20180216BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20180216BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20180216BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20180216BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20180216BHJP
【FI】
   F16D25/12 D
   B60K5/00
   F02D45/00 362H
   B60W10/00 102
   B60W10/00 108
   B60W10/06
   B60W10/02
   B60W10/11
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-532759(P2017-532759)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2014025029
(87)【国際公開番号】WO2016095941
(87)【国際公開日】20160623
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,オラ
【テーマコード(参考)】
3D235
3D241
3G384
3J057
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB23
3D235CC01
3D235FF32
3D241AA01
3D241AB01
3D241AC01
3D241AC06
3D241AC18
3D241AD02
3D241AD22
3D241AD23
3D241AD31
3D241AE03
3D241AE16
3D241AE31
3G384BA03
3G384CA16
3G384CB01
3G384DA44
3G384FA56Z
3G384FA72Z
3G384FA73Z
3J057AA07
3J057BB03
3J057DC04
3J057EE02
3J057EE03
3J057GA01
3J057GA02
3J057GA21
3J057GB02
3J057HH01
3J057JJ01
(57)【要約】
【解決手段】本開示は、自動車のパワートレインを操作する方法及び装置に関する。パワートレインは、内燃機関、トランスミッション、内燃機関とトランスミッションとの間の動力伝達を制御するためにこれらの間に配置された摩擦クラッチを備えている。本方法は、クラッチジャダーを検出するステップと、クラッチジャダーを分析するステップと、クラッチジャダーの種類を判定するステップと、を備えている。この方法は、判定されたクラッチジャダーの種類に基づいて、複数の所定のジャダー対策の中からジャダー対策を選択するステップと、選択されたジャダー対策を実行するステップと、をさらに備えている。本開示は、検出されたクラッチジャダーが、現在最も効果的な方法で処理され、将来のクラッチジャダーを避けることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)のパワートレイン(2)を操作する方法であって、
前記パワートレイン(2)は、内燃機関(3)と、トランスミッション(4)と、前記内燃機関(3)と前記トランスミッション(4)との間の動力伝達を制御するためにこれらの間に配置された摩擦クラッチ(5)と、を含み、
少なくとも1つの所定の車両変数に基づいてクラッチジャダーを検出するステップと、
前記少なくとも1つの所定の車両変数を評価することによって、クラッチジャダー特性を分析するステップと、
前記分析によりクラッチジャダーの種類を判定するステップと、
判定されたクラッチジャダーの種類に基づいて、複数の所定のジャダー対策の中からジャダー対策を選択するステップと、
選択されたジャダー対策を実行するステップと、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所定の車両変数の1つは、前記パワートレイン(2)における動力伝達部の回転速度である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラッチジャダーの種類の判定は、クラッチジャダーの周波数に基づく、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記クラッチジャダーの周波数をエンジンの周波数と比較するステップと、
前記クラッチジャダーの周波数が前記エンジンの周波数又は前記エンジンの周波数の半分と一致するかを評価するステップと、
をさらに備え、
前記クラッチジャダーの周波数が前記エンジンの周波数又は前記エンジンの周波数の半分と一致すれば、前記クラッチジャダーはエンジンに関連していると判定する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記摩擦クラッチ(5)の係合中、
前記パワートレイン(2)における動力伝達部の最高回転加速度が回転速度0から始まったか否かを評価するステップと、
前記クラッチジャダーがエンジンに関連しているか否かを評価するステップと、
をさらに備え、
前記クラッチジャダーがエンジンに関連していないと判定し、かつ、前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記最高回転加速度が回転速度0から始まったと判定すれば、前記クラッチジャダーは前記摩擦クラッチ(5)の係合に関連していると判定する、
請求項4に記載の発明。
【請求項6】
前記パワートレイン(2)は、プレッシャープレート(45)及びフライホイール(47)をさらに備え、
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記クラッチジャダーの周波数を、前記パワートレイン(2)における動力伝達部の回転速度と前記エンジンの回転速度との間の回転速度差に応じた回転速度差の周波数と比較するステップと、
前記クラッチジャダーの周波数が前記回転速度差の周波数に一致するかを評価するステップと、
をさらに備え、
前記クラッチジャダーの周波数が前記回転速度差の周波数と一致すれば、前記クラッチジャダーは、前記プレッシャープレート(45)と前記フライホイール(47)との間の角度公差に関連していると判定する、
請求項3〜請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記摩擦クラッチ(5)は、レリーズベアリング(50)及びダイアフラムスプリング(44)をさらに備え、
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記クラッチジャダーの周波数を前記パワートレイン(2)における動力伝達部の回転速度と比較するステップと、
前記クラッチジャダーの周波数が前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記回転速度と一致するかを評価するステップと、
をさらに備え、
前記クラッチジャダーの周波数が前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記回転速度と一致すれば、前記クラッチジャダーは、前記レリーズベアリング(50)と前記ダイアフラムスプリング(44)との間の角度公差に関連していると判定する、
請求項3〜請求項6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記選択されたジャダー対策は、
発進期間中の前記内燃機関(3)の回転速度を上昇させること、
特定のギアでの発進を避けること、
前記摩擦クラッチ(5)が係合する前記回転速度を調整すること、
前記摩擦クラッチ(5)の開始位置を調整すること、及び/又は、
内燃機関の危険な回転速度を迅速に通過させること、
を含むジャダー対策のグループから選択された、
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
クラッチジャダーが検出された場合、
車両(1)の加速度検知手段からの情報を収集するステップと、
前記加速度検知手段からの情報をクラッチジャダー特性に組み合わせるステップと、
前記クラッチジャダーの危険度を評価するステップと、
をさらに備えた、
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかのステップを実行するために、コンピュータで実行されるプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれかのステップを実行するために、コンピュータで実行されるプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを保持するコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項12】
内燃機関(3)、トランスミッション(4)、及び、前記内燃機関(3)と前記トランスミッション(4)との間の動力伝達を制御するためにこれらの間に配置された摩擦クラッチ(5)を操作するコントロールユニット(6)を備えた車両のパワートレイン(2)であって、
前記コントロールユニットは、
少なくとも1つの所定の車両変数に基づいてクラッチジャダーを検出し、
前記少なくとも1つの所定の車両変数を評価することによってクラッチジャダー特性を分析し、
前記分析によりクラッチジャダーの種類を判定し、
判定されたクラッチジャダーの種類に基づいて、複数の所定のクラッチジャダー対策の中からクラッチジャダー対策を選択し、
選択されたジャダー対策を実行する、
ように構成された、
車両のパワートレイン(2)。
【請求項13】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の方法のステップを実行するように構成された、パワートレインを操作する電子制御装置(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のドライバビリティを向上させるために、自動車のパワートレインを操作する方法に関する。本開示は、トラック、バス及び建設機械のような大型車両に適用することができる。本開示は、大型車両について説明されるが、本開示は、この特定の用途に限定されず、例えば、乗用車などの他の車両にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
摩擦クラッチを用いた手動変速機又は自動変速機の一方を備えた車両は、車両発進時(at vehicle take-off)における摩擦クラッチの係合中、クラッチジャダーと呼ばれる現象をしばしば経験することがある。クラッチジャダーは、約5〜20Hzの車両システム振動に現れる。クラッチジャダーは、様々な原因から発生する可能性があり、車両の多くのコンポーネントによって影響を受けるが、クラッチジャダーが発生する根本的な原因は、摩擦クラッチの係合中に発生する振動が、現在係合しているギアの共振周波数に一致することにある。クラッチジャダーは、車両のドライバビリティ及び運転者の快適性に大きな影響を及ぼし、クラッチジャダーが深刻であれば、懸念される車両を運転できなくなることさえある。また、切断されたクラッチジャダーが再発すると、車両に害を及ぼすおそれがある。
【0003】
今日、クラッチジャダーに関連する問題の多くの解決策は、例えば、制振材料を使用することによって、振動を抑えることに注目されている。しかしながら、制振材料を使用することによる制振効果は、しばしば経時的に衰退するので、そのような解決策は、一時的なものにすぎない。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0189192号明細書は、ジャダー振動を低減する方法を開示している。米国特許出願公開第2005/0189192号明細書によれば、例えば、トランスミッションのインプットシャフトの回転速度を分析することによって、ジャダーが検出されている。ドライブトレインコンポーネントに与えられたトルク又は速度のような回転パラメータが変更されるように、ドライブトレインに配置又はこれに連結された装置の自動調整によって、このジャダーがその後調整されている。しかしながら、米国特許出願公開第2005/0189192号明細書及び他の関連する先行技術では、クラッチジャダーの原因を特定するための方策がとられていない。従って、予防策又は長期間続く対策は行われていない。この提案された対策は、しばしば極めて一般的であって、それほど効果的ではない。
【0005】
従って、さらなる改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、車両のドライバビリティを向上する方法を提供することである。本開示のさらなる目的は、車両の耐久性を向上することである。この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。本開示のさらなる効果及び例示的な実施形態は、従属請求項及びその説明に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発進時における摩擦クラッチの係合中、様々な車両構成に応じた様々な原因が、車両のパワートレインに振動を引き起こす可能性がある。そのような振動が車両のパワートレインの共振周波数と一致すると、現在のギアにおいて、これがクラッチジャダーを引き起こす可能性がある。クラッチジャダーは、危険である可能性のある車両のドライバビリティに強い悪影響を及ぼし、特に、長期間に亘って発生すると、車両及び/又は車両コンポーネントに有害となる可能性もある。
【0008】
従って、発進時における摩擦クラッチの係合中、自動車のパワートレインを操作する方法が提供される。パワートレインは、内燃機関と、トランスミッションと、内燃機関とトランスミッションとの間の動力伝達(power flow)を制御するためにこれらの間に配置された摩擦クラッチと、を備えている。
【0009】
この方法は、
少なくとも1つの所定の車両変数に基づいてクラッチジャダーを検出するステップと、
少なくとも1つの所定の車両変数を評価することによって、クラッチジャダーの特性を分析するステップと、
前記分析によりクラッチジャダーの種類を判定するステップと、
判定されたクラッチジャダーの種類に基づいて、複数の所定のジャダー対策の中からジャダー対策を選択するステップと、
選択されたジャダー対策を実行するステップと、
を備えている。
【0010】
クラッチジャダーの特性は、例えば、クラッチジャダーによって発生した経時的なインプットシャフトの回転速度の変量(variation)である。本開示は、クラッチジャダーを連続的に検出し、クラッチジャダーの種類を判定することによって、以下では簡単な対策と呼ばれるジャダー対策を、クラッチジャダーの原因に依存させることができるという効果を有する。これによって、最も効率的な対策が実行され、将来のクラッチジャダーが回避される可能性がある。
【0011】
クラッチジャダーは、再発する不規則性が少なくとも1つの所定の車両変数に存在するときに分析することによって検出することができ、この不規則性は、所定の閾値を超える。閾値は、例えば、クラッチジャダーが運転者によって不快と感じられた場合、又は、クラッチジャダーが経時的に持続してパワートレインの早期摩耗を引き起こし得る差し迫ったリスクがある場合に応じて設定することができる。閾値は、好ましくは、分析される所定の車両変数が何であるかに対しても設定される。クラッチジャダーが検出されると、クラッチジャダーの特性を分析することによって、クラッチジャダーの種類が判定され、最も適切な対策を実行することができる。
【0012】
すべての方法ステップを含むこの方法は、車両の電子制御装置(ECU)によって実行され、ECUのソフトウエアによって制御される。この方法がECUによって実行されることを参照すると、この方法は単一の制御装置によって実行されることに限定されない。この方法は、車両の複数の相互作用する制御装置及びローカルコントローラを含む、分散制御装置によって実行することができる。これは、車両のコンピュータとも呼ばれる。コンピュータは、定義によると、情報を検索、保存、処理及び再分散できるプログラム可能な電子装置であり、従って、単一のコンポーネント又は相互作用するコンポーネントのネットワークである制御装置と同じ操作が実行される。
【0013】
また、例示的な実施形態では、この方法は、車両発進中に連続的に実行されてもよく、摩擦クラッチが係合しているとき、検出する方法ステップ及びことによるとこれに続く方法ステップが実行される。この方法の例示的な実施形態は、適応性があり得る。これは、クラッチジャダー対策が実行される契機となるクラッチジャダーが検出されると、特定の車両運転状態も記録され、次回に同様な運転状態で車両が運転されそうであれば、前もって対策が実行されるか、又は、クラッチジャダーが以前に発生した特定の運転状態での運転を回避することができる。
【0014】
本開示の例示的な実施形態によれば、所定の車両変数の1つは、パワートレインにおける動力伝達部の回転速度である。他の例示的な実施形態によれば、所定の車両変数は、パワートレインの他の部分又は車両の加速度又は振動であってもよい。
【0015】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、クラッチジャダーを検出する方法ステップで使用される所定の車両変数は、例えば、加速度検知手段又は傾斜検知手段によって提供される加速度入力及び/又は傾斜入力であってもよい。しかしながら、クラッチジャダーを検出する方法ステップにおいて加速度及び/又は傾斜が使用されても、パワートレインにおける動力伝達部の回転速度などの所定の車両変数は、その後、クラッチジャダーを分析し、クラッチジャダーの種類を判定する方法ステップで使用してもよい。
【0016】
本開示の例示的な実施形態の1つによれば、このパワートレインの動力伝達部は、トランスミッションのインプットシャフトである。回転速度を分析することができるパワートレインの他の動力伝達部の例は、任意の歯車、メインシャフト、カウンタシャフト、アウトプットシャフト、ドライブアクスル又は車輪である。例えば、回転シャフトが特定の位置にあるたびに、インプットシャフトの回転速度が一時的に低下すると、これは、クラッチジャダーの発生の指標となる可能性がある。エンジンから車輪への動力伝達に関与する可動部のいずれか1つの回転速度を分析することが可能である。しかしながら、回転速度が分析されるパワートレインのどの可動部であるかに応じて、インプットシャフトに対するギア比の違いの補正(compensation)を適用する必要がある。従って、エンジンからトランスミッションへの動力伝達に関与する部分の回転速度をインプットシャフトの回転速度に直結することができ、インプットシャフトに対するギア比を判定することができる限り、クラッチジャダーを検出するためにその部分を分析することができる。マルチクラッチトランスミッションについては、回転速度を分析する場合、いずれかのクラッチが係合され、又は、各クラッチの可動部の速度にかかわらず、関与する可動部を使用することができる。有利なことに、例えば、ODB、オンボードダイアグノスティックなどの付加的な目的のために使用される回転速度センサを備えたトランスミッションのシャフトなど、動力伝達部の1つの速度が使用される。
【0017】
パワートレインにおける動力伝達部は、好ましくは、メインシャフト、カウンタシャフト又はインプットシャフトなど、トランスミッションのシャフトの1つとすることができる。
【0018】
本開示のさらなる例示的な実施形態によれば、クラッチジャダーの種類の判定は、クラッチジャダーの周波数に基づく。少なくとも1つの所定の車両変数に対するクラッチジャダーの周波数を評価することによって、クラッチジャダーの原因を特定し、クラッチジャダーの種類を判定することが可能である。クラッチジャダーの周波数は、ジャダーの周波数として定義され、図3a〜3dに関してさらに説明される。
【0019】
各種類のクラッチジャダーを調整するための最も適切な対策は、クラッチジャダーの種類に依存する。以下の開示では、各種類のクラッチジャダーに適した例示的な対策を備えた、いくつかの異なる種類のクラッチジャダーを説明する。
【0020】
第1の例によれば、クラッチジャダーの種類を判定する方法ステップは、
クラッチジャダーの周波数をエンジンの周波数と比較するステップと、
クラッチジャダーの周波数がエンジンの周波数又はエンジンの周波数の半分と一致するかを評価するステップと、
をさらに備えている。
続く方法ステップにおいて、クラッチジャダーの周波数がエンジンの周波数又はエンジンの周波数の半分に一致していれば、現在のギアにおけるクラッチジャダーはエンジンに関連していると判定される。クラッチジャダーが特定のギアのみで発生する場合、これはまた、クラッチジャダーがエンジンに関連している指標となり得る。
【0021】
クラッチジャダーの周波数がエンジン回転速度の周波数と一致すれば、エンジンの毎分回転数(一分当たりの回転数)から求められた周波数が現在のギアの共振周波数と等しい場合、クラッチジャダーは、例えば、クラッチジャダーがクランクシャフトの回転に関連している、エンジンの各回転に関与するハードウエアに関連している可能性がある。クラッチジャダーの周波数がエンジンの周波数の半分と一致すれば、その代わりに、クラッチジャダーが1つの単一シリンダに関連している可能性がある。エンジンの2回転に一度、単一シリンダが点火するたびに、何らかの方法でクラッチジャダーを引き起こす何かが起こる。これは、例えば、このシリンダの失火、又は、そのシリンダに他のシリンダより過不足の燃料が噴射されていることに起因している可能性がある。
【0022】
クラッチジャダーがエンジンに関連していると判定された場合、例示的な対策は、ECUが、クラッチジャダーが検出されたギアで発進するときのエンジン回転速度を自動的に上昇させるか、又は、可能であれば、そのようなギアで発進することを完全に避けることとすることができる。クラッチ及び関連するコンポーネントを保護し、かつ、運転者の快適性を損なわないために、発進回転速度の所定の最大レベルが必要な場合がある。
【0023】
詳細を後述するように、摩擦クラッチはプレッシャープレートをさらに備え、パワートレインはフライホイールを備えている。第2の例によれば、クラッチジャダーの種類を判定する方法ステップは、
クラッチジャダーの周波数をパワートレインにおける動力伝達部の回転速度とエンジンの回転速度との間の回転速度差に依存する回転速度差の周波数と比較するステップと、
クラッチジャダーの周波数が回転速度差の周波数と一致するかを評価するステップと、
を備えている。
【0024】
動力伝達部は、例えば、インプットシャフト又は現在動力伝達に関与している任意の他のシャフトとすることができる。回転速度差の周波数を判定するときにエンジンの回転速度を参照するように使用される動力伝達部に応じて、動力伝達部とインプットシャフトとの間のギア比の差を補正する必要があり得る。従って、回転速度差の周波数は、エンジンの回転速度とインプットシャフトの回転速度との間の回転速度差から求められた周波数として定義される。回転速度差の周波数を判定するために、インプットシャフト以外の他の動力伝達部の回転速度を使用する場合、動力伝達部とインプットシャフトとの間のギア比の差が適用されなければならない。
【0025】
クラッチジャダーの種類が判定される方法ステップにおいて、クラッチジャダーの周波数が回転速度差の周波数と一致すれば、クラッチジャダーは、車両のプレッシャープレートとクラッチのフライホイールとの間の角度公差に関連していると判定される。図4a及び図4bに関連して詳細を説明する摩擦クラッチが、例えば、運転者がクラッチを解放することによって車両発進中に係合すると、解放手段のプレッシャープレートがフリクションプレートに作用し、フリクションプレートがクランクシャフトのフライホイールと係合するように構成されている。フリクションプレートは、インプットシャフトに連結されており、クランクシャフトのフライホイールをインプットシャフトのフリクションプレートに係合することによって、インプットシャフトとクランクシャフトとが係合し、回転動力(トルク)をクランクシャフトからインプットシャフトへと伝達することができる。プレッシャープレートとフライホイールとの間の角度公差に関連しているクラッチジャダーは、例えば、機械加工のバラツキや外力に起因する変位によって引き起こされる可能性がある。そうであれば、プレッシャープレートの回転中の特定点において、フリクションプレート及びフライホイールに意図しない係合をさせるか、又は、予期したより高い程度での係合をさせる。これは、パワートレインの振動を引き起こす。これらの振動が現在のギアの共振周波数と一致すると、これがクラッチジャダーを引き起こす可能性がある。
【0026】
クラッチジャダーの周波数が回転速度差の周波数と一致すると、クラッチジャダーは、プレッシャープレートとフライホイールとの間の角度公差に関連している可能性があると判定することができる。これによって、クラッチジャダーが現れるギアでの発進を避けることによって、クラッチジャダーの問題を最小にすることが可能になり、少なくとも、運転者がクラッチジャダーにさらされる回数を低減することができる。クラッチジャダーが発生するギアでの発進を避けることができない場合、この問題は、できるだけ迅速に危険な毎分回転数(critical rpm)を通過させることによって、最小にすることができる。
【0027】
また、摩擦クラッチは、以下でより詳細に説明する、レリーズベアリング及びダイアフラムスプリングを備えている。第3の例によれば、クラッチジャダーの種類を判定する方法ステップは、
クラッチジャダーの周波数をパワートレインにおける動力伝達部の回転速度と比較するステップと、
クラッチジャダーの周波数がパワートレインにおける動力伝達部の回転速度と一致するかを評価するステップと、
を備えている。
【0028】
クラッチジャダーの種類が判定される続く方法ステップにおいて、クラッチジャダーの周波数がパワートレインにおける動力伝達部の回転速度と一致すれば、クラッチジャダーは、レリーズベアリングとダイアフラムスプリングとの間の角度公差に関連していると判定される。経済的に実現可能な公差は、例えば、現在の車両自体がクラッチジャダーに
特に敏感である場合、十分ではないかもしれない。他の理由は、複数の関連している公差が好ましくない方法で相互作用することにある。レリーズベアリングとダイアフラムスプリングとの間の角度公差の不足(deficiency)は、フライホイールとプレッシャープレートとが平行にならない可能性がある。これもまた、コンポーネントを製造又は組み立てるときのエラーによって発生する可能性がある。フライホイールとプレッシャープレートが平行でなければ、クラッチの係合中にプレッシャープレートがフリクションプレートに作用するとき、フリクションプレートがフライホイールに均等に係合しなくなる可能性がある。フリクションプレート及びフライホイールの均等でない係合は、パワートレインに振動を引き起こし、これらの振動が現在のギアの共振周波数に相当すると、これがクラッチジャダーを引き起こす可能性がある。
【0029】
クラッチジャダーの周波数がパワートレインにおける動力伝達部の回転速度と一致する場合の例示的な対策は、クラッチジャダーの周波数が回転速度差の周波数と一致する場合と同じ、即ち、関連しているギアでの発進を避け、次にできるだけ迅速に危険な毎分回転数を通過させることによるものと同じである。
【0030】
プレッシャープレートとフライホイールとの間の角度公差、又は、レリーズベアリングとダイアフラムスプリングとの間の角度誤差からクラッチジャダーの原因を判定するために、クラッチジャダーが始まった毎分回転数及び車両発進からの時間、並びに、クラッチジャダーが止まった毎分回転数及び車両発進からの時間を分析することも重要である可能性がある。これは、クラッチジャダーの種類を判定するときの指標として使用される可能性もある。
【0031】
第4の例によれば、パワートレインの摩擦クラッチの係合が開始されたことに続いて、クラッチジャダーの種類を判定する方法ステップは、
摩擦クラッチの係合中、パワートレインにおける動力伝達部の最高回転加速度が回転速度0から始まったか否かを評価するサブステップと、
クラッチジャダーがエンジンに関連しているか否かを評価するサブステップと、
を備えている。
【0032】
クラッチジャダーの種類が判定される以下のステップにおいて、さらに、クラッチジャダーがエンジンに関連していないと判定され、かつ、パワートレインにおける分析された動力伝達部の最高回転加速度が回転速度0で始まれば、クラッチジャダーは摩擦クラッチの係合に関連していると判定される。
【0033】
クラッチジャダーが摩擦クラッチの係合に関連していると判定された場合、トルクピークを最小にすることによって、以後の車両発進中のクラッチジャダーを避けることができる。これは、クラッチの開始位置を調整することによって、又は、クラッチが係合する速度を単純に遅くすることによって達成することができる。従って、これは、クラッチが係合する時間を増やす。通常、係合に関係するクラッチジャダーは、経時的に減衰(damp out)する。
【0034】
従って、選択されたクラッチジャダー対策は、
発進期間中のエンジン回転数を上昇させること、
特定のギアでの発進を避けること、
クラッチが係合する回転速度を調整すること、
クラッチの開始位置を調整すること、及び/又は、
危険なエンジン回転速度を迅速に通過させること、
を含むジャダー対策のグループから選択することができる。
選択された対策は、判定されたクラッチジャダーの種類、及び、ジャダーの各種類の原因が何かに依存する。
【0035】
今日の多くの車両は、加速度計などの経時的な加速度を測定するように構成された、加速度検知手段及び/又は傾斜検知手段を備えている。少なくとも1つの所定の車両変数に関してクラッチジャダーの周波数を評価することは、クラッチジャダーを検出及び分類するためには十分である。しかしながら、少なくとも1つの所定の車両変数に関してクラッチジャダーの周波数を評価することによるだけでは、クラッチジャダーがどの程度深刻であるかを評価することができない可能性がある。従って、加速度検知手段及び/又は傾斜検知手段を備えた車両については、クラッチジャダーが検出された場合に、本開示の方法は、
車両の加速度検知手段及び/又は傾斜検知手段からの情報を収集するステップと、
加速度検知手段及び/又は傾斜検知手段からの情報を、経時的なクラッチジャダーの周波数を評価することによって求められるクラッチジャダー特性と組み合わせるステップと、
クラッチジャダーの危険度(criticality)を評価するステップと、
をさらに備えることができる。
【0036】
危険度又はクラッチジャダーがどの程度であるかを評価することによって、クラッチジャダーが現れるが、動作モードを全体として評価した場合にそれがドライバビリティ又は耐久性の観点からは注目に値しないものである動作モードを特定することが可能である。また、クラッチジャダーの危険度は、それぞれの場合に何の対策が適切であるかを判定することができる。
【0037】
本開示はまた、本開示の方法の任意の例示的な実施形態のステップを実行するプログラムコード手段を含む、ECUなどのコンピュータで実行されるコンピュータプログラムを備えている。本開示はまた、方法の任意の実施形態のステップを実行するプログラムコード手段を含む、ECUなどのコンピュータで実行されるコンピュータプログラムを保持するコンピュータ読み取り可能な媒体を備えている。また、本開示は、パワートレインを操作する方法の任意の実施形態を制御するために以前に開示されたものに従うECUであって、本方法の任意の実施形態のステップを実行するように構成されたECUを備えている。
【0038】
本開示のさらなる効果及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項で説明される。
【0039】
添付の図面を参照し、例として挙げた本開示の実施形態を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】大型車両の概略図である。
図2】本開示の方法に関する概略的なフローチャートである。
図3a】異なる種類のクラッチジャダーのクラッチジャダー特性を概略的に開示する、時間と毎分回転数との関係を示す図である。
図3b】異なる種類のクラッチジャダーのクラッチジャダー特性を概略的に開示する、時間と毎分回転数との関係を示す図である。
図3c】異なる種類のクラッチジャダーのクラッチジャダー特性を概略的に開示する、時間と毎分回転数との関係を示す図である。
図3d】異なる種類のクラッチジャダーのクラッチジャダー特性を概略的に開示する、時間と毎分回転数との関係を示す図である。
図4a】摩擦クラッチの概略図である。
図4b】摩擦クラッチの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、大型車両1の概略図を示す。大型車両1は、電子制御装置(ECU)6と、パワートレイン2と、を備えている。パワートレイン2は、内燃機関3と、摩擦クラッチ5を含むトランスミッション4と、を備えている。トランスミッション4及び摩擦クラッチ5は、大型車両1のエンジン3から車輪7へと伝達される動力を制御できるように、エンジン3に配置されている。エンジン3、トランスミッション4及び摩擦クラッチ5の動作は、ECU6によって制御されている。
【0042】
図2は、図1に開示されるような大型車両1が発進するときに実装することができる、本開示の方法に関する概略的なフローチャートを示す。
【0043】
クラッチジャダーは、一般的に、駆動系の振動が現在のギアにおけるパワートレインの共振周波数と一致するときに発生する。クラッチジャダーは、車両のドライバビリティを著しく低下させ、パワートレインの早期摩耗を引き起こす可能性もある。
【0044】
図2に開示される本開示の実施形態によれば、本方法は、クラッチジャダー動作検出21によって開始される。クラッチジャダーを検出するために、所定の閾値26が動作入力として提供される。所定の閾値26は、例えば、回転速度センサ、車両加速度検知手段又は車両傾斜検知手段などの適切な検知手段から提供される、少なくとも1つの所定の車両変数27の変量として設定される。検出された所定の車両変数27の変量が、許容可能な変量を表す、設定された所定の閾値26を超えると、クラッチジャダーが検出される。所定の閾値26は、例えば、運転者によって許容可能なジャダーであると考えられるものに関して、又は、例えば、ジャダーに起因する早期摩耗、安全性の低下又は耐久性の低下などの差し迫ったリスクがあるものに関して設定することができる。所定の車両変数27はまた、クラッチジャダー動作検出21への入力として提供され、例えば、インプットシャフト42の回転速度などのパワートレイン2の動力伝達部の回転速度、又は、車両加速度検知手段若しくは車両傾斜検知手段からの入力とすることができる。
【0045】
クラッチジャダーが検出されると、クラッチジャダー動作分析22において、少なくとも1つの所定の車両変数27の変量が分析される。クラッチジャダー動作分析22において、例えば、クラッチジャダーの周波数などのクラッチジャダー特性が使用される。クラッチジャダー特性は、検出されたクラッチジャダーの原因に基づいてクラッチジャダーの種類を判定するために、既知のクラッチジャダー特性に一致させることができる。例えば、クラッチジャダー動作検出21において所定の車両変数27として加速度検知手段又は傾斜検知手段が使用されるのであれば、クラッチジャダー特性を提供するために、クラッチジャダー動作分析22において他の所定の車両変数27を使用する必要があるかもしれないことに注意されたい。
【0046】
クラッチジャダー動作分析22に基づいて、クラッチジャダー動作判定23において、その後、クラッチジャダーの種類が判定される。判定されたクラッチジャダーの種類及び少なくとも1つの所定の車両変数27は、クラッチジャダー動作発生記録28において記録される。記録されたクラッチジャダー情報は、その後、適切な対策を実行することによってクラッチジャダーの発生を避けるため、及び/又は、将来の特定の運転モードを避けるために使用することができる。また、例えば、現在のギア及び運転者要求などの運転状態である他の車両情報は、将来の最良のクラッチジャダー予測を可能にするために、クラッチジャダーの検出とともに記録することができる。
【0047】
クラッチジャダーの種類が判定されると、例えば、危険なギアをスキップしたり、危険なエンジン回転速度を迅速に通過させたりすることを含むジャダー対策29のグループの中から、少なくとも1つのジャダー対策が選択される。適切な対策の選択は、対策動作選択24において行われ、その後、選択された対策は、対策動作実行25において実行される。
【0048】
この方法はその後繰り返され、クラッチジャダー動作検出21においてクラッチジャダーが依然として検出される場合には、この方法のステップが繰り返されて、さらなる対策が実行される。従って、クラッチジャダーによって実行された各補正対策の後、ECUは、とられた対策の結果を評価している。ECUは、クラッチジャダーが所定の閾値を下回るまで、一定の限度内で、補正対策を実行し続ける。クラッチジャダー動作検出21においてクラッチジャダーが検出されなければ、クラッチジャダーが検出されるまで、この方法ステップのみが繰り返される。
【0049】
クラッチジャダーは、トランスミッション4内部の任意の動力伝達部の回転速度センサを使用して検出することができる。多くのトランスミッションは、例えば、メインシャフト、カウンタシャフト、アウトプットシャフト及び/又はインプットシャフト42など、トランスミッション4内の1つ以上のシャフトに回転速度センサを備えている。クラッチジャダーはまた、例えば、加速度検知手段又は傾斜検知手段からの入力を使用して検出することもできる。クラッチジャダーは、例えば、車両発進中のインプットシャフトの回転速度又は加速度の変量又は不規則性を分析することによって検出される。動力伝達部の回転速度が使用された場合には、どの動力伝達部であるかに応じて、回転速度を分析し、ギア比の補正を適用しなければならない可能性がある。
【0050】
クラッチジャダーを検出して解析することによって、この解析に基づいて、クラッチジャダーの種類、及び、さらなるクラッチジャダーを最小又は避けるために適切な対策を判定し、ドライバビリティ並びに耐久性を向上させることができる。本開示の方法は、そのようなクラッチジャダーが検出されたとき、将来のクラッチジャダーを避けるために、クラッチジャダーを最小にして避けると共に、クラッチジャダーの以前からの発生情報を使用する。
【0051】
図3a〜図3dは、4つの異なる種類のクラッチジャダー特性を概略的に開示する、時間と毎分回転数との関係を示す4つの図を示す。回転ごとに何かが発生する回転速度は、特定の発生周波数を有するものとして説明することができる。従って、エンジン回転速度は、周波数として表すことができる。クラッチジャダーの周波数は、ジャダーの周波数として定義され、例えば、トランスミッションのシャフトなど、パワートレインの動力伝達部の回転速度における不規則性の周波数を測定することによって測定することができる。クラッチジャダー特性は、経時的な回転速度の変量として表すことができる。
【0052】
図3aは、クラッチジャダーが車両発進時に始まって、時間及び毎分回転数の増加に伴って大きくなる、ギアの概略的なクラッチジャダー特性を開示する。図3aに示すクラッチジャダー特性は、エンジン関連のクラッチジャダーの特性であってもよい。
【0053】
エンジン関連のクラッチジャダーは、クラッチジャダーの周波数がエンジンの周波数と本質的に等しいか、又は、その半分と本質的に等しいかによって特定することができる。一般的に、内燃機関については、クランクシャフトの2回転ごとに1回、各シリンダが点火される。エンジンの周波数及びクラッチジャダーの周波数が本質的に同じであれば、これは、クラッチジャダーがクランクシャフトの回転ごとに発生するハードウエアの欠陥などに関連している指標となることができ、従って、エンジン回転ごとに影響を及ぼす。クラッチジャダーの周波数が本質的にエンジンの周波数の半分であれば、これは、クラッチジャダーが1つの単一シリンダに関連している指標となることができる。
【0054】
一例を挙げると、y1aと記された回転数がエンジンの周波数16Hzに相当する毎分960回転を示し、x1aのクラッチジャダーの周波数が8Hzである場合、クラッチジャダーの周波数は、エンジンの周波数の半分である。これは、現在のギアにおけるクラッチジャダーが、1つのシリンダに関連している何かによって引き起こされていることを示している。クラッチジャダーが1つのシリンダに関連していると判定された場合、クラッチジャダーは、例えば、点火前にそのシリンダに噴射される燃料が過不足することにより、他のシリンダに対して、そのシリンダの各ストロークで発生する動力が過不足することによって引き起こされる可能性がある。同様に、y2aがエンジンの周波数30Hzに相当する毎分1800回転を示し、x2aのクラッチジャダーの周波数が15Hzである場合にも、クラッチジャダーの周波数は、エンジンの周波数の半分になる。
【0055】
クラッチジャダーの周波数がエンジンの周波数に一致できない場合、クラッチジャダーの原因は、エンジンに関連していないと判定される。図3b及び図3cは、各クラッチジャダーが発進後のある時点x1b、x1c及び毎分回転数y1b、y1cで現れ、その後、発進後のその後の時点x2b、x2c及び毎分回転数y2b、y2cで消滅した、所定のギアに対する概略的なクラッチジャダー特性を開示する。図3b及び図3cに示すクラッチジャダー特性は、角度公差に関連しているクラッチジャダーの特性であってもよい。
【0056】
インプットシャフト42などのパワートレインの動力伝達部の回転速度とエンジン回転速度との間の第1の回転速度差drpm(b)にクラッチジャダーの周波数が一致すると、クラッチジャダーは、摩擦クラッチ5のプレッシャープレート45とフライホイール47との間の角度公差に関連している可能性がある。インプットシャフト42以外のパワートレイン2の他の動力伝達部の回転速度が分析された場合、他の動力伝達部とインプットシャフト42との間のギア比の補正が適用されるべきである可能性がある。同様に、パワートレイン2の動力伝達部の回転速度(又は、動力伝達部の回転速度と毎分回転数0との間の差)である第2の回転速度差drpm(c)が、現在のギアにおけるパワートレイン2の共振周波数と本質的に等しい周波数に相当する場合、クラッチジャダーは、解放手段43のレリーズベアリング50とダイアフラムスプリング44との間の角度公差に関連している可能性がある。
【0057】
図3dの実施形態は、ギアについて概略的なクラッチジャダー特性を開示する。クラッチジャダー特性は、車両発進の時点x0dで最初に最大値に達し、その後、時間経過及び回転速度の上昇に伴って減少する。図3dに示すクラッチジャダー特性は、摩擦クラッチ5の乱暴及び/又は素早い係合に関連しているクラッチジャダーの特性とすることができる。そのようなクラッチジャダーを検出できるようにするために、まず、クラッチジャダーがエンジンに関連していることを除外する必要がある。
【0058】
図3a〜図3dは、各クラッチジャダーを簡略化した概略的な説明である。実際には、複数の種類のクラッチジャダーが、同時に又は少なくとも連続して発生する可能性がある。そうであれば、エンジン関連のクラッチジャダーが最初に特定されてジャダー分析から除外され、その後に、追加の種類のクラッチジャダーを検出できるようになる。
【0059】
ここで図4aを参照すると、従来技術の摩擦クラッチ5の一例が開示されている。摩擦クラッチ5は、クランクシャフト41を介してエンジン3に連結され、インプットシャフト42を介してトランスミッション4に連結されるように構成されている。摩擦クラッチ5は、エンジン3からトランスミッション4へと伝達される動力(トルク)を制御することができる。インプットシャフト42は、ハブ46によって、フリクションプレート48を含むクラッチディスク49に配置されている。インプットシャフト42及びフリクションプレート48は、同期して回転する。クランクシャフト41は、フライホイール47に固定的に配置されている。クランクシャフト41及びフライホイール47は、同期して回転する。レリーズベアリング50、ダイアフラムスプリング44及びプレッシャープレート45を含むクラッチ解放手段43は、インプットシャフト42と同心に配置されている。図4aに示す本開示の実施形態によれば、トランスミッション4に連結されていないインプットシャフト42の端部は、ベアリング52によってクランクシャフト41に回転可能に配置されている。インプットシャフト42は、このベアリング52を介してクランクシャフト41に対して回転することができる。フリクションプレート48及び解放手段43は、クラッチハウジング51によって少なくとも部分的に囲まれている。
【0060】
摩擦クラッチ5は、例えば、運転者からの要求に起因してクラッチを係合させるように構成されており、プレッシャープレート45がフリクションプレート48に当接するようにレリーズベアリング50を移動させ、フリクションプレート48がフライホイール47に係合する。フライホイール47及びフリクションプレート48が係合すると、エンジン3からの動力は、係合したフライホイール47及びフリクションプレート48を介して、クランクシャフト41からインプットシャフト42へと伝達される。プレッシャープレート45及びダイアフラムスプリング44は、クランクシャフト41と同じ回転速度で回転する。ダイアフラムスプリング44は、例えば、ローラベアリング型のベアリングによってレリーズベアリング50に配置されている。レリーズベアリング50は、クランクシャフト41及びインプットシャフト42のいずれとも回転しない。
【0061】
摩擦クラッチ5の機能は、それ自体本開示の一部ではなく、一般知識の一部であると考えられる。
【0062】
図4a及び図4bにおいては、プレッシャープレート45とフライホイール47の間の角度公差の影響が開示されている。図4aにおいて、高位置に示されているプレッシャープレート45の第1の部分がフリクションプレート48に当接し、プレッシャープレート45の低位置にある第2の部分がフリクションプレート48から離れている。図4bにおいて、レリーズベアリング50’が斜めになっており(図4では極端に示されている)、プレッシャープレート45の低位置にある第2の部分がフリクションプレート48に向かって押し付けられ、プレッシャープレート45の低位置にある第2の部分及びフリクションプレート48が当接している。
【0063】
図4aに示す実施形態は、フライホイール47及びフリクションプレート48が、プレッシャープレート45の高位置にある第1の部分では係合しているが、プレッシャープレート45の低位置にある第2の部分では係合していないという効果を有している。摩擦クラッチ5の非対照的な係合は、現在のギアにおける共振周波数と一致すると、クラッチジャダーを発生させる振動を引き起こす可能性がある。プレッシャープレート45の高位置にある第1の部分がフリクションプレート48に当接する位置は、プレッシャープレート45及びフライホイール47が最も接近する位置であり、この部分は、クランクシャフト41の回転に伴って回転する。図4aに示す実施形態の構成は、図3bで説明した状況を引き起こす可能性がある。
【0064】
同様に、図4bに示す実施形態においては、プレッシャープレート45の低位置にある第2の部分がフリクションプレート48に当接する位置は、プレッシャープレート45’及びフライホイール47が最も接近する位置である。図4bに示す実施形態においては、この部分は、レリーズベアリング50’で固定されている。図4bに示す実施形態の構成は、図3cで説明した状況を引き起こす可能性がある。
【0065】
プレッシャープレート45とフライホイール47との間の角度公差に影響を及ぼす構造におけるこれらの欠点は、例えば、フライホイール47、プレッシャープレート45又はフリクションプレート48を製造するときなど、構成部品を製造するときに、完全な公差を得ることが困難であることに起因する。
【0066】
本開示は、上述及び図示の実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で、多くの変更及び修正がなされ得ることを認識するであろう。
【0067】
以前に説明された図面の参照符号は、各図面の説明を通して使用されている。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
【手続補正書】
【提出日】2016年10月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)のパワートレイン(2)を操作する方法であって、
前記パワートレイン(2)は、内燃機関(3)と、トランスミッション(4)と、前記内燃機関(3)と前記トランスミッション(4)との間の動力伝達を制御するためにこれらの間に配置された摩擦クラッチ(5)と、を含み、
少なくとも1つの所定の車両変数に基づいてクラッチジャダーを検出するステップと、
前記少なくとも1つの所定の車両変数を評価することによって、クラッチジャダー特性を分析するステップと、
前記分析によりクラッチジャダーの種類を判定するステップと、
判定されたクラッチジャダーの種類に基づいて、複数の所定のジャダー対策の中からジャダー対策を選択するステップと、
選択されたジャダー対策を実行するステップと、
を備え、
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記摩擦クラッチ(5)の係合中、
前記パワートレイン(2)における動力伝達部の最高回転加速度が回転速度0から始まったか否かを評価し、
前記クラッチジャダーがエンジンに関連しているか否かを評価し、
前記クラッチジャダーがエンジンに関連していないと判定し、かつ、前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記最高回転加速度が回転速度0から始まったと判定すれば、前記クラッチジャダーは前記摩擦クラッチ(5)の係合に関連していると判定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パワートレイン(2)は、プレッシャープレート(45)及びフライホイール(47)をさらに備え、
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記クラッチジャダーの周波数を、前記パワートレイン(2)における動力伝達部の回転速度と前記エンジンの回転速度との間の回転速度差に応じた回転速度差の周波数と比較するステップと、
前記クラッチジャダーの周波数が前記回転速度差の周波数に一致するかを評価するステップと、
をさらに備え、
前記クラッチジャダーの周波数が前記回転速度差の周波数と一致すれば、前記クラッチジャダーは、前記プレッシャープレート(45)と前記フライホイール(47)との間の角度公差に関連していると判定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記摩擦クラッチ(5)は、レリーズベアリング(50)及びダイアフラムスプリング(44)をさらに備え、
前記クラッチジャダーの種類を判定するステップは、
前記クラッチジャダーの周波数を前記パワートレイン(2)における動力伝達部の回転速度と比較するステップと、
前記クラッチジャダーの周波数が前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記回転速度と一致するかを評価するステップと、
をさらに備え、
前記クラッチジャダーの周波数が前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記回転速度と一致すれば、前記クラッチジャダーは、前記レリーズベアリング(50)と前記ダイアフラムスプリング(44)との間の角度公差に関連していると判定する、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたジャダー対策は、
発進期間中の前記内燃機関(3)の回転速度を上昇させること、
特定のギアでの発進を避けること、
前記摩擦クラッチ(5)が係合する前記回転速度を調整すること、
前記摩擦クラッチ(5)の開始位置を調整すること、及び/又は、
内燃機関の危険な回転速度を迅速に通過させること、
を含むジャダー対策のグループから選択された、
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
クラッチジャダーが検出された場合、
車両(1)の加速度検知手段からの情報を収集するステップと、
前記加速度検知手段からの情報をクラッチジャダー特性に組み合わせるステップと、
前記クラッチジャダーの危険度を評価するステップと、
をさらに備えた、
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかのステップを実行するために、コンピュータで実行されるプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラム。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかのステップを実行するために、コンピュータで実行されるプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを保持するコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項8】
内燃機関(3)、トランスミッション(4)、及び、前記内燃機関(3)と前記トランスミッション(4)との間の動力伝達を制御するためにこれらの間に配置された摩擦クラッチ(5)を操作するコントロールユニット(6)を備えた車両のパワートレイン(2)であって、
前記コントロールユニットは、
少なくとも1つの所定の車両変数に基づいてクラッチジャダーを検出し、
前記少なくとも1つの所定の車両変数を評価することによってクラッチジャダー特性を分析し、
前記分析によりクラッチジャダーの種類を判定し、
判定されたクラッチジャダーの種類に基づいて、複数の所定のクラッチジャダー対策の中からクラッチジャダー対策を選択し、
選択されたジャダー対策を実行する、
ように構成され、
前記クラッチジャダーの種類の判定は、
前記摩擦クラッチ(5)の係合中、
前記パワートレイン(2)における動力伝達部の最高回転加速度が回転速度0から始まったか否かを評価し、
前記クラッチジャダーがエンジンに関連しているか否かを評価し、
前記クラッチジャダーがエンジンに関連していないと判定し、かつ、前記パワートレイン(2)における前記動力伝達部の前記最高回転加速度が回転速度0から始まったと判定すれば、前記クラッチジャダーは前記摩擦クラッチ(5)の係合に関連していると判定する、
ことを特徴する車両のパワートレイン(2)。
【請求項9】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の方法のステップを実行するように構成された、パワートレインを操作する電子制御装置(6)。
【国際調査報告】