(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
ラジカル模倣チオール−エン化学を用いて、ポリペプチド(ペプチド及びタンパク質を含む)を他の部分に連結する方法が提供される。例えば、ポリペプチドに反応性チオール基を導入して修飾し、次いでラジカルチオール−エン又はチオール−イン反応を支持する条件下で、チオール基をオレフィン含有試薬又はアルキン含有試薬と反応させることが挙げられる。反応性チオール基はシステインチオール基よりもラジカルチオール−エン反応に関し高い活性を有するチオール基であり、例えばペプチド骨格から少なくとも2つの炭素原子により隔てられたチオール基、例えばホモシステイン残基のチオール基である。また、前記連結されたポリペプチドを含む組成物及び生体材料、例えばペプチド及びタンパク質コンジュゲート、並びにチオール−エンに基づく生体適合性ヒドロゲルポリマー、更にはそれらの医療分野における使用が挙げられる。
ポリペプチドを連結するための方法であって、前記ポリペプチドがペプチド骨格と1又は2以上の反応性チオール基とを含むと共に、前記方法が、ラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で、前記ポリペプチドの反応性チオール基を1又は2以上の反応性エン基を含むエン化合物と反応させることを含み、ここで、前記ポリペプチドの反応性チオール基の前記ラジカル媒介性チオール−エン反応に関する反応性が、システインチオール基の反応性の少なくとも2倍である、方法。
前記ポリペプチドの反応性チオール基が、前記ポリペプチドのホモシステイン残基のチオール基、又は、前記ポリペプチドの2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール基である、請求項3に係る方法。
前記ラジカル開始剤が、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンからなる群より選択される光開始剤である、請求項2〜5の何れか一項に係る方法。
前記ポリペプチドが2以上の反応性チオール基を含み、前記反応性チオール基が各々、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、請求項1〜9の何れか一項の方法。
前記ポリペプチドが、n個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、m個の反応性エン基を含み、ここでn及びmが独立に2以上の整数であり、n+m≧5である、請求項11に係る方法。
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている1個の反応性チオール基を含む、請求項17〜19の何れか一項に係る方法。
前記ポリペプチドが、ペプチド又はタンパク質ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択される、請求項17〜20の何れか一項に係る方法。
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている1個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、2以上の反応性エン基を含む、請求項1〜9の何れか一項に係る方法。
前記方法が更に、第二のチオール化合物を、2以上の反応性エン基を含むエン化合物と反応させることを含むと共に、前記第二のチオール化合物が、2以上の反応性チオール基を含む、請求項22に係る方法。
前記第二のチオール化合物がj個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物がk個の反応性エン基を含み、ここでj及びkは独立に2以上の整数であり、j+k≧5である、請求項24に係る方法。
前記第二のチオール化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む、請求項24又は25に係る方法。
前記第二のチオール化合物が、ペプチド骨格と、分解性ペプチドと、前記ペプチド骨格から各々2以上の炭素原子により隔てられている2以上の反応性チオール基とを含む、請求項24又は25に係る方法。
前記第二のチオール化合物が、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列と、前記ペプチド配列の両側に存在する2個のホモシステイン残基とを含む、請求項27に係る方法。
前記エン化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む、請求項22〜29の何れか一項の方法。
1又は2以上の反応性チオール基を含む前記ポリペプチドの製造が、カルボキシ基に隣接する炭素原子から2以上の炭素原子により隔てられたチオール基を含有する、保護されたチオール含有アミノ酸又はアミノ酸類似体、例えば保護されたホモシステイン又は2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸、を用いたポリペプチド合成を含む、請求項31の方法。
1又は2以上の反応性チオール基を含む前記ポリペプチドの製造が、ポリペプチド中のメチオニン残基を、化学的又は酵素的に、ホモシステイン残基に転換することを含む、請求項31の方法。
生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーを製造するための方法であって、反応性チオール化合物をラジカル開始剤及び反応性エン化合物と反応させることを含み、ここで、前記反応性チオール化合物が、ペプチド骨格と、分解性ペプチドと、前記ペプチド骨格から各々2以上の炭素原子により隔てられている2以上の反応性チオール基とを含み、前記反応性エン化合物が、2以上の反応性エン基を含むエン修飾生体適合性モノマーである、方法。
前記ポリペプチドが、n個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、m個の反応性エン基を含み、ここでn及びmが独立に2以上の整数であり、n+m≧5である、請求項36に係る方法。
前記反応混合物に生物活性成分を加えることを更に含むと共に、前記生物活性成分が、前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされる、請求項36に係る方法。
前記反応性チオール化合物の反応性チオール基が、前記ポリペプチドのホモシステイン残基のチオール基、前記ポリペプチドの2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール、及び、リシン残基の側鎖アミノ基にリンカーを介して連結されたチオール基から独立に選択される、請求項36又は38に係る方法。
前記ラジカル開始剤が、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンからなる群より選択される光開始剤である、請求項36〜39の何れか一項に係る方法。
前記反応性エン化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む、請求項36〜40の何れか一項に係る方法。
前記生物活性成分が、組織、細胞、タンパク質、ペプチド、小分子薬物、核酸、(例えば脂質ナノ粒子に封入された)カプセル化核酸、脂質、炭水和物、又は農業用化合物である、請求項38〜41の何れか一項に係る方法。
前記生物活性成分が、前記生物活性ポリペプチドの反応性チオール基をエン基と反応させることにより形成されるチオエーテル結合によって、前記ポリマーマトリックスに共有結合されている生物活性ポリペプチドであり、ここで、前記チオエーテル結合のチオ基が、前記生物活性ポリペプチドの骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、請求項44に係る方法。
前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を更に含む、請求項46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマー。
ある状態又は障害を、それを必要とする対象において治療する方法であって、請求項35の修飾ポリペプチド;請求項46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた生物活性成分;請求項48の化合物;請求項50の化合物;請求項54のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項56のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項57のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項58の化合物;請求項60の化合物;請求項64のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項66のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;又は請求項67のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分を投与することを含む方法。
組織を再生する方法であって、請求項46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーに封入された細胞又は組織を、損傷又は欠損を有する組織の部位で放出することを含む方法。
請求項35の修飾ポリペプチド;請求項46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた生物活性成分;請求項48の化合物;請求項50の化合物;請求項54のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項56のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項57のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項58の化合物;請求項60の化合物;請求項64のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項66のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;又は請求項67のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分を含むキット。
請求項35の修飾ポリペプチド;請求項46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた生物活性成分;請求項48の化合物;請求項50の化合物;請求項54のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項56のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項57のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項58の化合物;請求項60の化合物;請求項64のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;請求項66のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;又は請求項67のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分を含む製品。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明は、ラジカル媒介性チオール−エン及びチオール−イン化学を用いてポリペプチド(ペプチド及びタンパク質を含む)を1又は2以上の他の部分に連結するための組成物及び方法を提供する。当該方法のある側面は、前記ポリペプチドに結合させた反応性チオール基を、ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン化学を促進する条件下で、オレフィン又はアルキン化合物と反応させることを含む。当該方法は、ペプチド及びタンパク質を他の部分に対してラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン反応を介して連結する際に、システインチオールを用いる方法と比較して改善された効率を提供する。本方法を用いて製造される連結ポリペプチド、例えばタンパク質及びペプチドのコンジュゲートやチオール−エン系生体適合性ポリマー等は、ヒトや動物の疾患の治療用途や、創傷治癒や組織再建等の医療用途の生体材料として有用である。
【0089】
本明細書で使用する場合、単数不定冠詞(「a”や“an」)は、別途明記しない限り、1又は2以上を指す。
【0090】
本明細書において、値又はパラメーターに付される「約」(「about」)は、その値又はパラメーター自体を対象とする態様も含む(と共に、その態様も記載する)ものとする。例えば、「約X」という記載は、「X」に関する記載も含む。
【0091】
方法
本発明の一側面は、ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン化学を用いて、ポリペプチドを連結するための方法を提供する。現在の科学文献及び特許文献、例えば本明細書で参照する文献等では、システインチオール基を用いたチオール−エン反応を、複数のポリペプチドを連結するための「バイオ直交性」(bioorthogonal)の方法であるとみなしてきた。しかし、これらの教示とは反対に、本発明者等は予想外にも、システイン隣接MMP分解性ペプチドにより架橋されたノルボルネン官能化四アーム型(4-arm)PEGマクロマーから形成されたチオール−エンヒドロゲルに封入されたタンパク質が、ヒドロゲルを重合させるのに必要とされる最少量のラジカル開始剤及び暴露時間を用いた場合であっても、この反応により実質的に修飾されることを見いだした。更に、これらの同一のタンパク質が、PEG−ジチオールで架橋されたノルボルネン(例えばノルボルン−2−エン−5−イル)官能化四アーム型(4-arm)PEGマクロマーによって形成されたチオール−エンヒドロゲルに封入された場合には、修飾されないことを見いだした。これら2つの実験の主な相違点は、第二の事例では、第一の事例において用いられた開始剤の量の僅か10分の1(1/10)の量で、ヒドロゲルを十分に重合させることが可能であったという点にある。この結果は、これらのペプチド内に存在するシステインチオールが、PEGチオールよりも反応性が低いことを示している。
【0092】
驚くべきことに、本発明者等は、システインのチオール基とペプチド骨格との間に1又は2以上の追加の炭素原子を挿入すると、ラジカル媒介性チオール−エン反応に関する反応性チオールの反応性が増強されることを見いだした。例えば、システインと比べてチオールとペプチド骨格との間に追加の炭素原子を有するホモシステインの反応性は、システインと比べて顕著に増強される。チオール基とペプチド骨格との距離を同様に延長した他の化合物も、チオール基の活性が同様に増強されるであろう。例えば、システインの代わりに2−アミノ−5−スルファニルペンタン酸を用いれば、チオールとペプチド骨格との間に更に2つの炭素原子を追加することができる。
【0093】
更に、本発明者等は、遊離システインがチオール−エン反応に関与する能力を評価した。驚くべきことに、遊離システインは、他の小分子チオール、例えばジチオスレイトール、β−メルカプトエタノール、ホモシステイン、システアミン及び3−メルカプトプロピオン酸等と比較して、実質的に低下した活性を示した。
【0094】
本分野における現在の教示と相反するこれらの観察結果を考え合わせると、ラジカル媒介性チオール−エン化学を用いてペプチドとエン含有部分とを、ペプチド内のシステイン残基を介して反応させるための条件は、前記反応混合物内に含有される生物活性成分を修飾し、或いは他の手法で損傷させることが可能な、高濃度の有害なフリーラジカルの生成に繋がることが示唆される。即ち、しばしば指摘されるラジカル媒介性チオール−エン化学の特性、即ちバイオ直交性(bioorthogonality)は、これらの条件下では維持されない。
【0095】
システインチオールと比較して増強された反応性を有するチオール基を用いる場合、反応に必要なラジカル開始剤の濃度はより低く、前記反応混合物中に存在する有害なフリーラジカルの濃度はより低く、及び/又は、反応の完了に要する時間はより短くなる。斯かる知見から導かれる結論は、これらの増強されたチオールを使用することで、チオール−エン反応のバイオ直交性という所望の特性が実現されるということだ。
【0096】
ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン反応におけるホモシステインの使用は、従来はごく限られた場面でしか論じられてこなかった。Yan等(2013)は、プロプ−2−イン−1−イル−(2−オキソテトラヒドロチオフェン−3−イル)カルバメートを使用することにより、非ペプチドポリマーにホモシステインを導入した。非水性環境において、プロプ−2−イン−1−イル(2−オキソテトラヒドロチオフェン−3−イル)カルバメートをアミノ分解すると、アルキン含有置換ホモシステイン残基が形成される。これを引き続き、同様に形成される化合物の別の分子のアルキン部分、或いは生成されたポリマーのアルケン部分との反応により、遊離ラジカル化学的開始剤の不在下で重合させる。本論文で使用された条件下では、この反応は累積で15時間の太陽光照射後に完了する。In Espeel等(2011)は、N−(アリルオキシカルボニル)ホモシステインチオラクトンを使用することにより、非ペプチドポリマーにホモシステインを導入した。非水性環境において、N−(アリルオキシカルボニル)ホモシステインチオラクトンをアミノ分解すると、アルケン含有置換ホモシステイン残基が形成される。これを引き続き、同様に形成される化合物の別の分子のアルキン部分との反応により、遊離ラジカル化学的開始剤の不在下で重合させる。本論文で使用された条件下では、この反応は3時間のUV光照射後に完了する。Yan等やEspeel等の論文に記載される反応は、比較的ゆっくりと進行すると共に、非水性環境において小モノマーを用いて実施されるものであった。ホモシステインをチオール−エン反応 に用いることで、水性ヒドロゲルに封入された生物活性成分の活性を保存する試みは、従来は議論されていなかった。
【0097】
即ち、一側面によれば、ポリペプチドを連結するための方法であって、前記ポリペプチドがペプチド骨格と1又は2以上の反応性チオール基とを含むと共に、前記方法が、ラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で前記ポリペプチドの反応性チオール基を1又は2以上の反応性エン基を含むエン化合物と反応させることを含む方法が提供される。また、ポリペプチドを連結するための方法であって、前記ポリペプチドがペプチド骨格と1又は2以上の反応性チオール基とを含むと共に、前記方法が、ラジカル媒介性チオール−イン反応を促進する条件下で、前記ポリペプチドの反応性チオール基を、1又は2以上の反応性イン基を含むイン化合物と反応させることを含む方法が提供される。本発明の方法に適した反応性チオール基は、ラジカルチオール−エン又はチオール−イン化学の条件下で、システインチオール基よりも高い反応性を有する。ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基は、ラジカル媒介性チオール−エン反応において、システインチオール基の少なくとも2倍という高い反応性を有する。ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基は、ラジカル媒介性チオール−エン反応において、システインチオール基の少なくとも3倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍という高い反応性を有する。2つのチオール基の相対反応性とは、(例えばエルマン(Ellman)アッセイを用いて)例えばチオール基の消費速度により測定される、同一の反応条件下でのこれら2つのチオール基の反応の相対速度である。ある態様によれば、相対反応性とは、同一の反応条件下で(例えば光化学的に開始された反応下、同一濃度のチオール、エン、及び開始剤の存在下、同一の波長及び強度の光を用いて)、前記ポリペプチドの反応性チオール基を用いた反応速度が、システインを用いた反応速度を表示の値で乗算したものと一致することを意味する。
【0098】
チオール−エン反応は化学的に又は光化学的に開始することができる。ある態様によれば、前記反応はラジカル開始剤により開始される。ある例によれば、前記反応は開始剤化合物の不在下で、光(例えばUV光又は太陽光)により開始されてもよい。好ましい態様によれば、ラジカル開始剤は光開始剤化合物でもよい。適切な光開始剤、例えばBowman等により使用される光開始剤、例えば米国特許第第7,288,608号公報及び国際公開第2012/103445号公報に記載の光開始剤を使用できる。ある態様によれば、光開始剤は、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)又はフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)である。ある態様によれば、光開始剤は、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(例えばIrgacure
(登録商標)2959)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えばIrgacure
(登録商標)184)、又は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えばIrgacure
(登録商標)651)である。
【0099】
チオール−エン反応は典型的にはフリーラジカルを生成する光開始剤の光分解により開始される。好ましくは、使用される光の波長は、前記光開始剤の励起波長と合致するように選択される。即ち、ある態様によれば、チオール−エン反応は、前記光開始剤を、前記光開始剤の励起波長に合致する波長を有する光に暴露することにより開始される。LAP又はNAPの場合、光の波長は約372nmであり、360nmから380nmまでは許容できる範囲である。2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(例えばIrgacure
(登録商標)2959)の場合、光の波長は約276nm又は331nmである。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えばIrgacure
(登録商標)184)の場合、光の波長は約246nm、280nm又は333nmである。2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えばIrgacure
(登録商標)651)の場合、光の波長は約254nm又は337nmである。
【0100】
最適な結果を得るためには、概して、前記チオール−エン反応が所望の完了状態に到達する(或いはほぼ到達する)のに必要な最少の光開始剤の量及び暴露時間を選択することが推奨される。特定の態様によれば、チオール−エン又はチオール−イン反応が完了率100%未満、例えば約98%、約95%、約90%、約80%、又は完了率約70%に到達するように、暴露時間が選択される。これにより、前記反応混合物の他の成分に対する過度のラジカル損傷を避けることができる。本発明の一態様によれば、ネットワーク形成は、光強度、暴露時間、及び開始剤濃度の関数であるレオロジーによりモニターされる。別の態様によれば、反応はエルマンアッセイを用いた遊離チオールの消費量によりモニターされる。レオロジー及びチオール消費量の他にも、反応をモニターするための更なる方法は、当業者には明確である。
【0101】
即ち ある態様によれば、チオール−エン化学を用いてポリペプチドを連結する方法は、前記光開始剤の量、前記光の強度、及び/又は、前記光開始剤が前記光に暴露される時間を制御することを更に含む。ある例によれば、前記チオール−エン反応が100%完了していないものの、所定の目標が実質的に達成された時点まで反応を行うことが、前記反応混合物の他の成分に実質的な損傷が及ぶのを避けることができる点で望ましい。例えば、合理的な程度に高速での光重合が達成されるように、光誘導性重合を比較的高濃度の光開始剤を用いて実施することが好ましい。斯かる例では、反応を100%完了させるための開始剤の全量は必要とされない。斯かる例では、チオール−エン反応を100%完了させてしまうと、開始剤の光分解により生じるフリーラジカルからの保護作用を有するチオール−エン反応物は完全に消費されてしまうため、生物活性カーゴ(cargo)に損傷が生じてしまう。これらの例では、前記チオール−エン反応の完了目標を100%未満とすることで、反応の完了度合いとカーゴ(cargo)の完全性との合理的な妥協を容易に図ることが可能となる。とりあえずの例(an ad hoc example)としては、チオール−エン光重合反応を特定の条件下で90%まで完了させることにより、予測可能な機械弾性特性(mechano-elastic properties)を有するヒドロゲルを形成すると共に、10%のチオール又はエンを残存させることで、封入された生物活性カーゴ(cargo)を十分に保護することが可能となる。例えば、一態様によれば、光開始剤が0.01重量%のLAP又は0.01重量%のNAPであり、前記反応混合物を19mW/cm
2の380nmの光に10秒暴露する。ある態様によれば、前記チオール−エン反応は(下限)約70%、80%、90%、95%、又は98%の完了率に到達する。ある態様によれば、前記チオール−エン反応は(上限)約99.99%、99.9%、99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、90%又は85%の完了率に到達する。即ち、前記チオール−エン反応の所望の完了率は、約70%〜約99.99%の範囲から選択される任意の完了率であり、下限が上限よりも小さければよい。ある態様によれば、前記チオール−エン反応は、完了率約70%から完了率約95%の範囲に到達する。
【0102】
チオール−エン又はチオール−イン反応は、任意の適切な媒体又は溶媒の中で実施される。しかし、タンパク質や他の水容性の生体材料を伴う反応では、水性媒体が好ましい。即ち、ある好適な態様では、ラジカル媒介性チオール−エン化学を用いてポリペプチドを連結するための方法は、水性環境又は水性媒体の中で、反応性チオール基をエン/イン化合物と反応させることを含む。当然ながら、例えば水性溶媒の存在下で反応を実施する場合等には、これらの方法により、ポリマーマトリックスを含むヒドロゲルが形成されることがある。
【0103】
典型的には、大気と平衡状態にある水溶液は、約200μM濃度の溶存酸素を含んでおり、これが多くのラジカル媒介性反応の阻害剤となることが知られている。しかし、ラジカル媒介性チオール−エン重合は、現在のところ、酸素媒介性阻害による影響を受けないと考えられている。ラジカル媒介性チオール−エン反応が酸素阻害に対して感受性ではないとの報告は、多くの文献(例えばMcCall, J. D.及びAnseth, K. S., 2012、更にはHoyle, C. E., Lee, T. Y.及びRoper, T. 2004等を参照)。しかし、予想外にも、バイオポリマーの急速な形成を生じるノルボルネン及びチオールの濃度、例えば反応性チオール基及び反応性エン基の各濃度が1mM〜50mMの範囲では、酸素が阻害作用を有すること、また、反応物溶液から酸素を除去することで、こうした酸素阻害を回避できることが見いだされた。従って、一側面によれば、(例えば反応を低酸素環境下で実施して)溶存酸素への反応の暴露を低減させることにより、ラジカル媒介性チオール−エン反応の反応速度を増加させる方法が提供される。ラジカル媒介性チオール−エン反応を低酸素環境下で実施することで、反応速度を増加させ、惹いては任意のチオール化合物/エン化合物の対、例えばシステイン/ノルボルネンの対やホモシステイン/ノルボルネンの対等について、不所望の副反応を防止することができると考えられる。一つの側面によれば、低酸素環境下で反応を実施することにより(例えばチオール化合物及びエン化合物を、脱気した溶液中、ラジカル媒介性チオール−エン反応に適した条件下で反応させることにより)、ラジカル媒介性チオール−エン反応のラジカル媒介性副生成物を低減する方法が提供される。ある態様によれば、チオール化合物は反応性チオール基を含有し、前記反応性チオール基はシステインのチオール基残基である。ある態様によれば、チオール化合物は反応性チオール基を含有し、前記反応性チオール基はホモシステイン残基のチオール基である。ある態様によれば、前記エン化合物は、1又は2以上のノルボルン−2−エン−5−イル部分を含む。ある特定の側面によれば、前記チオール−エン反応は脱気した溶液中で実施され、ここで反応性チオール基の濃度は1mM〜50mMの範囲であり、反応性エン基の濃度は反応性チオール基の濃度と同等であるか、或いはこれと合理的な程度に近い濃度である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも1mMから50mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも1mMから40mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも1mMから30mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも1mMから20mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも1mMから10mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも10mMから50mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも20mMから50mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも30mMから50mMの範囲である。ある変形例によれば、反応性チオール基及び反応性エン基の濃度は、何れも40mMから50mMの範囲である。
【0104】
チオール−エン又はチオール−イン反応は、低酸素環境下で、例えば酸素の不在下で、或いは反応の酸素暴露を低減するための手段を何ら講じない場合のチオール−エン反応と比較して低減された量の酸素の存在下で、実施することができる。例えば、反応の開始前に、本技術分野で一般に使用される方法により、反応溶液を脱気してもよい。ある態様によれば、ラジカル媒介性チオール−エン化学を用いてポリペプチドを連結するための方法は、反応媒体から酸素を除去することを含む。
【0105】
ある態様によれば、前記エン化合物は、非生体適合性エン化合物である。ある態様によれば、前記チオール化合物は、非生体適合性チオール化合物である。ある態様によれば、前記エン化合物は、非分解性エン化合物である。ある態様によれば、前記チオール化合物は、非分解性チオール化合物である。
【0106】
反応性チオール含有ポリペプチド
本発明の方法に適した前記ポリペプチドの反応性チオール基は、ラジカル媒介性チオール−エン反応について、ペプチド骨格から炭素原子一つにより隔てられているシステインチオール基よりも高い反応性を有する。ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基は、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている。ある態様によれば、前記ポリペプチドは、1又は2以上の反応性チオール基を含む。ある態様によれば、ポリペプチドは、本発明の方法に適した1又は2以上の反応性チオール基を導入するように修飾されてなる。ある態様によれば、ポリペプチドのシステイン残基が、稀少アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣体で置換されてなる。ポリペプチドに導入可能な反応性チオール基の限定されない例を下記表1に示す。表1の側鎖修飾アミノ酸残基は、ポリペプチドへの導入又はポリペプチド内での存在に適したアミノ酸残基であって、ラジカル媒介性チオール−エン反応において反応性エン基と反応しうるアミノ酸残基である。斯かる側鎖修飾アミノ酸残基は、ポリペプチド骨格とチオール基との間のアルカンジイル部分が、システインに比べて延長されてなる(1又は2以上の追加のリンカー基、例えば非限定的な例としてアミド及び/又はPEG部分等を含んでいてもよい)という所望の特性を有する。如何なる理論にも縛られるものではないが、延長されたアルカンジイル部分は、システインチオールにより形成されるラジカルと比較してチオールラジカルを不安定化する結果、システインチオールを用いた場合と比較して遊離ラジカル媒介性チオール−エン反応速度を増加させるものと考えられる。こうした反応速度の増加は有益であり、重要な効果をもたらす。斯かる効果としては、例えばラジカル媒介性副反応の量や程度の低減、組織や他の生物学的生成物への損傷の低減、(内因性システインの修飾の発生率の低減による)修飾が所望されるペプチドの選択性の向上、患者臨床時の処置プロトコールの迅速化(例えば、反応完了までの時間を約5〜50分の1に短縮、例えばシステイン系チオールでは90秒のところを、側鎖修飾アミノ酸では2〜10秒に低減)等が挙げられる。表1の骨格修飾アミノ酸残基(例えばβ−アミノ酸残基、γ−アミノ酸残基、アミノ酸類似体、及びアミノ酸模倣体等)とは、ラジカル媒介性チオール−エン反応時に反応性エン基と反応しうるチオール部分を有し、ポリペプチドへの導入に適したアミノ酸残基を指す。斯かる骨格修飾アミノ酸残基は、非修飾ポリペプチド骨格と比べてチオール−エン反応の総反応速度を増加させるのに有用であると考えられ、例えば副反応低減、選択性向上、及び処置プロトコールの迅速化等、側鎖修飾アミノ酸残基と同じ有益な特性を有すると予想される。
【表1】
【0107】
以下の[実施例]欄でも例示するが、ペプチド骨格とチオールとの間に1又は2以上の炭素原子を介在させるようにチオールをペプチドに導入する方法は多数存在する。これらの方法としては、これらに限定されるものではないが、以下が挙げられる。1)(ペプチドの骨格となるべき)2位の炭素原子から、チオールが2以上の炭素原子により隔てられてなる、保護されたアミノ酸を用いたペプチド合成。斯かる保護されたアミノ酸の例としては、これらに限定されるものではないが、Fmoc−保護構成要素(S)−2−(Fmoc−アミノ)−4−トリチルスルファニル−酪酸(Bachem)又は(S)−Fmoc−2−アミノ−5−(トリチルチオ)−ペンタン酸(ポリペプチド)が挙げられる。2) チオール化剤を用いたペプチドの修飾。斯かるチオール化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート(SATP)、N−アセチルホモシステインチオラクトン、及びNHS−PEG−SHが挙げられる。3)メチルトランスフェラーゼ反応によるメチオニンのホモシステインへの転換。
【0108】
ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基が、前記ポリペプチドのホモシステイン残基のチオール基、又は、前記ポリペプチドの2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール基である。ホモシステイン又は2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基を含むポリペプチドは、本分野で公知のペプチド合成法、例えば本明細書に記載の方法を用いて製造できる。
図2に、NHS−PEG−SHをチオール化剤として用いて、リシン残基の側鎖に反応性チオール基を導入する方法を挙げる。
【0109】
ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基は、アミノ基の側鎖アミノ基(例えばリシン残基の側鎖アミノ基又はN−末端アミノ基)にリンカーを介して連結されたチオール基である。前記ポリペプチドの反応性チオール基は、リシンの側鎖アミノ基に対して、チオール化剤を用いて連結されてなる。斯かるチオール化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート(SATP)、N−アセチルホモシステインチオラクトン、及びNHS−PEG−SH等が挙げられる。
【0110】
ポリペプチドを連結するための方法のある態様は、反応性チオール基をラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン反応を促進する条件に供する前に、1又は2以上の反応性チオール基を含むポリペプチドを製造することを更に含む。ある態様によれば、前記方法は、保護されたチオール含有アミノ酸を用いたポリペプチド合成を含み、ここで前記チオール基は、前記カルボキシ基に隣接する炭素原子から2以上の炭素原子により隔てられてなる、例えば限定されるものではないが、保護されたホモシステイン(例えば(S)−2−(Fmoc−アミノ)−4−トリチルスルファニル−酪酸等)又は2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸(例えば(S)−Fmoc−2−アミノ−5−(トリチルチオ)−ペンタン酸等)等である。ある態様によれば、前記方法は、チオール化剤を用いてポリペプチドを修飾すること、例えばペプチド内のアミノ基をチオール化剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(アセチルチオ)プロピオネート(SATP)、N−アセチルホモシステインチオラクトン、又はNHS−PEG−SH等と反応させることを含む。ある態様によれば、前記方法は、ポリペプチド中のメチオニン残基を、化学的又は酵素的に、例えばメチルトランスフェラーゼ反応等により、ホモシステイン残基に転換することを含む。
【0111】
ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基は、非天然アミノ酸に連結されたチオール基、例えばチオール置換βアミノ酸、チオール置換γアミノ酸、チオール置換δアミノ酸、又はチオール置換εアミノ酸等のチオール基である。チオール置換βアミノ酸、チオール置換γアミノ酸、チオール置換δアミノ酸又はチオール置換εアミノ酸残基を含むポリペプチドは、本分野で公知のペプチド合成法、例えば本明細書に記載の方法を用いて製造することができる。
【0112】
ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基は、アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣体残基に連結されたチオール基である。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分又はより長い炭素鎖(任意により酸素、硫黄、及び窒素から選択された1又は2以上のヘテロ原子が介在していてもよい)により置換された、天然アミノ酸、稀少アミノ酸又は非天然アミノ酸から誘導される。ある態様によれば、アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分又はより長い炭素鎖(任意により酸素、硫黄、及び窒素から選択された1又は2以上のヘテロ原子が介在していてもよい)により置換された、天然アミノ酸、稀少アミノ酸又は非天然アミノ酸から誘導される。
【0113】
前記態様のある変形例によれば、前記チオール化合物は、非生体適合性チオール化合物である。前記態様の別の変形例によれば、前記チオール化合物は、非生体適合性チオール化合物である。前記態様のある変形例によれば、前記チオール化合物は、分解性チオール化合物である。前記態様の別の変形例によれば、前記チオール化合物は、非分解性チオール化合物である。
【0114】
本発明のポリペプチドを連結するための方法を用いて、タンパク質又はペプチドを第二の部分に連結してもよい。第二の部分としては、生物活性成分(例えば本明細書に記載の成分)を有する部分や、ポリペプチドに追加の特性を付与する部分、例えばインビボ(in vivo)での循環半減期を延長するポリマー(例えばPEG)、捕捉機能を提供する親和性タグ、例えばビオチン、抗体、アプタマー(又は他の捕捉部分又はタグ)、標識(例えば蛍光標識、発色団、又は蛍光団等)、糖又は他の炭水和物、核酸、リボヌクレオタンパク質、別のポリペプチド、脂質又は別の疎水性部分、ナノ粒子、ナノチューブ、又は高次マクロ分子アセンブリ等が挙げられる。
【0115】
本発明の方法を用いて種々のポリペプチドを修飾することができる。特定の態様によれば、ポリペプチドは、ペプチド及びタンパク質ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択される。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体や同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン、及びコラーゲン等が挙げられる。
【0116】
本発明の方法を用いて、分解性ペプチドを、チオール−エン又はチオール−イン系のヒドロゲルポリマーに導入してもよい。ある態様によれば、前記ポリペプチドが更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む。別の態様によれば、ポリペプチドは、活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。別の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。特定の態様によれば、ポリペプチドは、ホモシステイン隣接型マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)分解性ペプチドである。これは、細胞分泌性MMPにより分解されるヒドロゲルネットワークを形成する。
【0117】
ある態様によれば、前記方法は、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている1個の反応性チオール基を含むポリペプチド(ペプチド及びタンパク質を含む)を用いる。ある態様によれば、前記ポリペプチド(ペプチド及びタンパク質を含む)は、各々前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、2以上の反応性チオール基を含む。ある態様によれば、前記ポリペプチド(ペプチド及びタンパク質を含む)は、各々前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、2つの反応性チオール基を含む。ある態様によれば、前記ポリペプチド(ペプチド及びタンパク質を含む)は、各々前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、3つ又は4つ又はそれ以上の反応性チオール基をを含む。ある態様によれば、前記反応性チオール基は、ホモシステイン残基のチオール基、2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール基、又は、リシン残基の側鎖アミノ基にリンカー(例えばPEGリンカー)を介して連結されたチオール基である。
【0118】
エン/イン含有化合物
本発明の方法において有用なエン化合物又はイン化合物は、ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン化学に適したエン化合物又はイン化合物、例えばラジカルチオール−エン又はチオール−イン条件下で反応性を有するアルケン又はアルキン基(「反応性エン基」又は「反応性イン基」)を含む化合物であれば、その種類は任意である。エン化合物(又はエン含有化合物)は、反応性エン基と、反応性エン基を担持する足場を構成するエン担持部分とを含む。適切なエン化合物のリスト、並びにそれらの相対反応速度の表示は、Hoyle等(2004)、“Thiol-enes: Chemistry of the past with promise for the future”に記載されている。本文献は引用により本明細書に組み込まれる。イン化合物(又はイン含有化合物)は、を含む the 反応性イン基と、反応性イン基を担持する足場を構成するイン担持部分とを含む。
【0119】
前記態様のある変形例によれば、前記エン化合物は、非生体適合性エン化合物である。前記態様の別の変形例によれば、前記エン化合物は、非生体適合性エン化合物である。前記態様のある変形例によれば、前記エン化合物は、分解性エン化合物である。前記態様の別の変形例によれば、前記チオール化合物は、非分解性エン化合物である。
【0120】
ある態様によれば、前記エン化合物は、任意の適切なエチレン性不飽和基を含む。その例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イル等が挙げられる。好ましい態様によれば、前記エン化合物は、ノルボルン−2−エン−5−イル基を含む。ある態様によれば、前記エン化合物の反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。ある態様によれば、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。ある態様によれば、前記エン化合物は、1又は2以上のノルボルン−2−エン−5−イル基を含む。当業者であれば理解するように、前記エチレン性不飽和基は、1又は2以上の適切な置換基により更に置換されていてもよい。置換基の非限定的な例としては、ハロ、アルキル、アルコキシ又はオキソが挙げられる。前記イン化合物は、1又は2以上のアルキン基、例えばエチニル、プロパルギル、プロピオレート(propiolate)、環状アルキン等を含む。
【0121】
反応性エン基及びそれらの対応するチオール−エン反応生成物の限定されない例を表2に示す。表中、点線は付着点を意味する。
【表2】
【0122】
当業者であれば理解するように、反応性チオール基の硫黄原子を、反応性エン基の炭素−炭素二重結合のいずれかの末端に連結してもよい。これも当業者であれば理解するように、チオール−エン反応は、反応性エン基の炭素−炭素二重結合面の何れの側で生じてもよい。結果として、前記チオール−エン反応の生成物は、(炭素−炭素二重結合の異なる炭素原子に対する反応により)位置異性を生じうると共に、(炭素−炭素二重結合の異なる面での反応により)立体異性も生じうる。可能な生成物の全てが本発明の対象となる。更に当業者には理解されるように、2以上の同一の反応性エン基を含むエン化合物を用いれば、個々の反応性エン基が異なる反応を生じた生成物を得ることができる。非限定的な例としては、PEGジノルボルネン(2つのノルボルン−2−エン−5−イル反応性基を有するエン化合物)により、一のノルボルネン部分(例えばノルボルン−2−エン−5−イル)が5−エキソ硫黄を有するチオエーテル結合を生じ、他のノルボルネン部分(例えばノルボルン−2−エン−5−イル)が6−エンド硫黄を有するチオエーテル結合を生じた生成物を得ることができる。当然ながら、斯かる多様な化合物も本発明に含まれる。
【0123】
エン/イン化合物のエン/イン担持部分は、本発明のラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン反応により、反応性チオール含有ポリペプチドに共有結合される。前記エン/イン担持部分は、連結により達成しようとする具体的な機能特性に応じて選択される。限定されない例としては、蛍光団又は発色団の導入、親和性タグの導入、酵素活性の導入、所定の化学的部分又は部分の導入、溶解性、薬物動態、薬動力学、又は生体膜や固体表面との相互作用を改変するための親水性、疎水性又は両親媒性ポリマー端の導入、更なる重合のためのタンパク質含有ポリマー又はテレケリック(telechelic)モノマーの生成等があげられる。前記エン担持部分には、以下の適切な誘導体(限定されない例)を含んでいてもよい。ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー(PLGA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー(ポロキサマー、メロキサポール(meroxapols))、ポロキサミン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、例えばヒドロキシエチルセルロースやメチルヒドロキシプロピルセルロース、並びに、天然ポリマー、例えばポリペプチド、核酸、多糖類、又は炭水和物、例えばポリスクロース、ヒアルロン酸、デキストラン、及びその同様の誘導体、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、又はアルギン酸、並びに、タンパク質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミン、又はオボアルブミン、フィブリノーゲン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質又はその類似体、蛍光及び非蛍光色素、蛍光消光剤、高親和性タグ、例えばポリペプチドタグ(His−タグ、FLAG−タグ等)、抗体及びその断片、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド、高次マクロ分子アセンブリ、例えばリボヌクレオタンパク質、ウイルスカプシド等が挙げられる。エン担持部分は、任意の公知の修飾を有する核酸(「修飾核酸」)を含んでいてもよい。修飾核酸の例としては、修飾塩基(例えば塩基の1又は2以上の位置、例えば2’ 位及び5位に、修飾を有する塩基)を導入した核酸や、ロックド核酸が挙げられる。
【0124】
ある態様によれば、エン/イン化合物は、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸、ロックド核酸、多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるエン/イン担持部分を含む。
【0125】
ある態様によれば、エン/イン担持部分は、生物活性成分を含んでいてもよい。ある態様によれば、エン/イン担持部分は、ポリペプチドに連結されることによりポリペプチドに追加の特性を付与する第二の部分を含んでいてもよい。第二の部分の例としては、インビボ(in vivo)での循環半減期を延長するポリマー(例えばPEG)、捕捉機能を提供する親和性タグ、例えばビオチン、抗体、アプタマー(又は他の捕捉部分又はタグ)、糖又は他の炭水和物、核酸、別のポリペプチド等が挙げられる。ある態様によれば、エン/イン担持部分は、ポリマー、捕捉部分、標識、炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドを含む。エン/イン官能基は、本明細書に詳細に記載したエン/イン担持部分や、他の適切な化合物に対して、本技術分野で公知の方法により導入することができる。
【0126】
生物活性成分としては、多種多様な物質や化合物が挙げられる。その例としては、これらに制限されるものではないが、組織、細胞、タンパク質、ペプチド、毒素、小分子薬物、核酸、(例えば脂質ナノ粒子に封入された)カプセル化核酸、脂質、炭水和物、又は農業用化合物が挙げられる。細胞型としては、上皮又は間葉由来の細胞、例えば幹細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、骨芽細胞、軟骨細胞、及び内皮細胞が挙げられる。タンパク質の非限定的な例としては、接着ペプチド(例えばRGD接着配列)、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、ホルモン、抗ホルモン、シグナル伝達化合物、酵素、血清タンパク質、アルブミン、マクログロブリン、グロブリン、凝集素、レクチン、細胞外マトリックスタンパク質、抗体、及び抗原等が挙げられる。他のタンパク質としては、ペプチド及びタンパク質ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質が挙げられる。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FB、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。小分子薬物としては、これらに限定されるものではないが、鎮痛剤、解熱剤、非ステロイド抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗細菌剤、抗貧血剤、細胞毒性剤、抗高血圧剤、皮膚病薬、精神治療剤、ビタミン、ミネラル、食欲抑制剤、栄養剤、抗肥満剤、炭水和物代謝剤、タンパク質代謝剤、甲状腺剤、抗甲状腺剤、及び補酵素が挙げられる。農業用化合物としては、これらに限定されるものではないが、殺菌剤、除草剤、肥料、殺虫剤、炭水和物、核酸、有機分子、及び無機生物活性分子等が挙げられる。
【0127】
当業者であれば理解するように、本明細書に記載のエン/イン担持部分にエン/イン基を追加する方法は数多く存在する。これらの方法により、エン/イン担持部分とエン/イン官能基との間にリンカー基を形成することができる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)をPEGに対してエステル結合を介して連結する。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)をPEGに対してアミド結合を介して連結する。限定されない例を以下に提示し、ノルボルネン修飾PEGの形成について説明する。
【化4】
【0128】
ある態様によれば、本方法では、1つの反応性エン基を含むエン化合物。ある態様によれば、前記エン化合物は、2以上の反応性エン基を含む。ある態様によれば、前記エン化合物は、2つの反応性エン基を含む。ある態様によれば、前記エン化合物は、3つ又は4つ又はそれ以上の反応性エン基を含む。
【0129】
ポリペプチド 修飾/誘導体化
ある態様によれば、ラジカル媒介性チオール−エン反応により、ポリペプチドに別の部分(第二の部分)を連結して、ポリペプチドを修飾することができる。ある態様によれば、ペプチドは、1又は2以上の反応性チオール基を有する。前記の反応性チオール基は、前記ペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられていてもよい。前記第二の部分は、1又は2以上の反応性エン基を含む。好ましい態様によれば、ペプチドは斯かる反応性チオール基を1つのみ有し、第二の部分は反応性エン基を1つのみ有する(
図4D)。
【0130】
ラジカル媒介性チオール−エン化学を用いてポリペプチドを連結するための方法のある態様によれば、前記ポリペプチドは、本明細書に記載の1又は2以上の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、本明細書に記載の1個の反応性エン基を含む。斯かる例では、本明細書に記載の1又は2以上のエン担持部分は、前記ポリペプチドの1又は2以上の反応性チオール基から誘導されるチオエーテルを介して、前記ポリペプチドに連結されてなる。
【0131】
特定の態様によれば、前記ポリペプチドは、以下のペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択することができる。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FB、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0132】
ある態様によれば、前記エン化合物は、生物活性成分、例えば、薬物、毒素、又は殺虫剤を含む。ある態様によれば、前記エン化合物は、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、捕捉部分又はタグ(例えばビオチン)、標識(例えば蛍光標識、発色団、又は蛍光団)、糖又は炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドを含む。
【0133】
本方法のある態様によれば、前記ポリペプチドは、本明細書に記載の1つの反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、本明細書に記載の1個の反応性エン基を含む。斯かる例では、前記ポリペプチドは、前記エン化合物のエン担持部分に対し、前記チオール−エン反応により形成されるチオエーテル結合を介して、連結(コンジュゲート)されてなる。
【0134】
これらの方法を用いて、タンパク質又はペプチドを第二の部分に連結してもよい。第二の部分としては、生物活性成分(例えば本明細書に記載の成分)を有する部分や、ポリペプチドに追加の特性を付与する部分、例えばインビボ(in vivo)での循環半減期を延長するポリマー(例えばPEG)、捕捉機能を提供する親和性タグ、例えばビオチン、抗体、アプタマー(又は他の捕捉部分又はタグ)、標識(例えば蛍光標識、発色団、又は蛍光団等)、糖又は他の炭水和物、核酸、別のポリペプチドが挙げられる。本方法の一態様は、ペプチドにモノマーを連結することにより、ペプチドのADME特性を変更するのに用いられる。別の態様によれば、官能基が付加される。
【0135】
この方法の重要な利点の一つは、1又は複数のシステイン残基の存在下で、タンパク質を特異的に誘導体化できるという点である。即ち、前記ペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられたチオールの活性が増加していることから、前記チオール−エン反応が、タンパク質内の他のシステインチオール基と比較して、その活性チオール基で優先的に生じる。
【0136】
更に、本明細書に記載の方法により製造される連結ポリペプチド(例えば生物活性成分、ポリマー、捕捉部分、標識、炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドに連結されたポリペプチド)も提供される。
【0137】
ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン化学を用いてポリペプチドを連結する方法のある態様によれば、前記ポリペプチドは、本明細書に記載の1つの反応性チオール基を含み、エン/イン化合物は、本明細書に記載の1又は2以上の反応性エン/イン基を含む。斯かる例では、本明細書に記載の1又は2以上のポリペプチドは、本明細書に記載のエン/イン担持部分に対して、前記ポリペプチドの反応性チオール基から誘導されるチオエーテルを介して連結されてなる。
【0138】
これらの態様の一部によれば、前記エン/イン化合物は、本明細書に記載のエン/イン担持部分の何れかを含んでいてもよい。ある態様によれば、前記エン化合物は、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含んでいてもよい。
【0139】
ある態様によれば、前記エン化合物は、任意の適切なエチレン性不飽和基を含む。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。好ましい態様によれば 前記エン化合物が、ノルボルン−2−エン−5−イル基を含む。ある態様によれば、前記エン化合物の反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。ある態様によれば、前記エン化合物は、1又は2以上のノルボルネン(例えばノルボルン−2−エン−5−イル)基を含む。当業者であれば理解するように、前記エチレン性不飽和基は、1又は2以上の適切な置換基により更に置換されていてもよい。置換基の非限定的な例としては、ハロ、アルキル、アルコキシ又はオキソが挙げられる。前記イン化合物は、1又は2以上のアルキン基、例えばエチニル、プロパルギル、プロピオレート(propiolate)、環状アルキン等を含む。
【0140】
ある態様によれば、ラジカル媒介性チオール−エン反応により形成されたポリマーマトリックスに、ラジカル媒介性チオール−エン反応によりペプチドを導入することにより、ポリペプチドを修飾する(
図4C)。特定の態様によれば、前記ポリマーマトリックスは、第二のチオール化合物とエン含有化合物との間のポリマー媒介性チオール−エン反応により形成される。ある態様によれば、前記ポリマーマトリックスは生体適合性である。他の態様によれば、前記ポリマーマトリックスは非生体適合性である。ある態様によれば、前記ポリマーマトリックスは分解性である。他の態様によれば、前記ポリマーマトリックスは非分解性である。
【0141】
ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン化学を用いてポリペプチドを連結する方法のある態様によれば、前記ポリペプチドは、本明細書に記載の1つの反応性チオール基を含み、前記エン/イン化合物は、本明細書に記載の2以上の反応性エン/イン基を含む。即ち、ポリペプチドをチオール−エン系ポリマー(例えば生体適合性架橋分解性ヒドロゲルポリマー)に連結する方法であって、前記ポリペプチドは、ペプチド骨格と、1つの反応性チオール基(例えば前記ペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている反応性チオール基)とを含むと共に、前記方法は、ラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で(例えばラジカル開始剤を用いる条件下及び/又は水性環境中で)、前記ポリペプチドの反応性チオール基及び第二のチオール化合物を、2以上の反応性エン基を含むエン化合物と反応させることを含み、ここで前記第二のチオール化合物が、2以上の反応性チオール基を含む、方法が提供される。
【0142】
これらの態様の一部によれば、前記ペプチドは、以下のペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択することができる。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FB、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0143】
これらの態様の一部によれば、前記第二のチオール化合物がj個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物がk個の反応性エン基を含み、ここでj及びkは独立に2以上の整数であり、j+k≧5である。
【0144】
特定の態様によれば、前記第二のチオール化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む。好ましい態様によれば、前記第二のチオール化合物が、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、及びポリ(エチレングリコール)(PEG)、及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む。
【0145】
ある用途では、連結されるポリペプチドを制御下で放出するために、連結されるチオール−エン系ポリマーは分解性ポリマーマトリックスを有することが必要となる。他の用途では、連結されたポリペプチドにおいて構築された異なる機序を通じて、連結されたポリペプチドを保持し、又は連結されたポリペプチドを放出する非分解性ポリマーマトリックスが必要となる。
【0146】
即ち ある態様によれば、前記第二のチオール化合物が、ペプチド骨格と、分解性ペプチドと、前記ペプチド骨格から各々2以上の炭素原子により隔てられている2以上の反応性チオール基とを含む。ある態様によれば、前記第二のチオール化合物が、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む。特定の態様によれば、細胞分泌性MMPにより分解されるヒドロゲルネットワークを形成するために、前記第二のチオール化合物が、2つのホモシステイン残基により挟まれた、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列、例えばジホモシステインで挟まれたメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチドを含む。別の態様によれば、前記ポリペプチドは、活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。他の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。
【0147】
他の態様によれば、前記第二のチオール化合物が、ポリエチレングリコールと、前記ポリエチレングリコールに付着された2つの末端チオール基とを含む。ある態様によれば、前記ポリペプチドは、一つの反応性チオール基を含み、前記反応性チオール基は、ペプチド骨格から少なくとも2つの炭素原子を含むリンカー及び分解性部分を以て隔てられてなる。即ち、連結されたポリペプチドは、ポリマーマトリックスを分解しなくとも放出することができる。これらの態様の一部によれば、前記方法は更に、ペプチド骨格から分解性部分を含むリンカーによって隔てられた反応性チオール基を含むポリペプチドを製造することを含む。
【0148】
特定の態様によれば、前記エン化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む。好ましい態様によれば、前記エン化合物は、ポリペプチド、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、及びポリ(エチレングリコール)(PEG)、及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む。
【0149】
ある態様によれば、前記エン化合物は、任意の適切なエチレン性不飽和基、例えば、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルを含む。好ましい態様によれば 前記エン化合物が、ノルボルン−2−エン−5−イル基を含む。ある態様によれば、前記エン化合物の反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。ある態様によれば、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、前記エチレン性不飽和基は、1又は2以上の適切な置換基により更に置換されていてもよい。置換基の非限定的な例としては、ハロ、アルキル、アルコキシ又はオキソが挙げられる。
【0150】
更に、本明細書に記載の方法により製造される、1又は2以上の連結されたポリペプチドを含む化合物(例えばエン担持部分に連結された複数のポリペプチド化合物、又はチオール−エン系ポリマー)も提供される。
【0151】
架橋
ラジカル媒介性チオール−エン化学を用いてポリペプチドを連結するための方法のある態様によれば、前記ポリペプチドは、本明細書に記載の2つの反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、本明細書に記載の2つの反応性エン基を含む。斯かる例では、ラジカル媒介性チオール−エン反応により誘導されたチオエーテル結合を介してエン担持部分に連結された前記ポリペプチドを含む繰り返し単位を有する直鎖ポリマーが形成される。
【0152】
ラジカル媒介性チオール−エン又はチオール−イン化学を用いてポリペプチドを連結する方法のある態様によれば、前記ポリペプチドが、本明細書に記載の2以上の反応性チオール基を含み、前記エン/イン化合物は、本明細書に記載の2以上の反応性エン/イン基を含む。斯かる例では、本明細書に記載の1又は2以上のポリペプチドが、前記ポリペプチドの反応性チオール基から誘導されたチオエーテルを介して、本明細書に記載のエン/イン担持部分に連結されてなる。
【0153】
特定の態様によれば、前記方法は、n個の反応性チオール基を含むポリペプチドと、m個の反応性エン基を含むエン化合物とを用い、ここでn及びmは、独立に2以上の整数であり、n+m≧5である。前記ポリペプチドは、反応性チオール基を介してエン担持部分に架橋され、チオール−エン系ポリマーマトリックスを形成する。
【0154】
前記エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。好ましい態様によれば、前記のエン基は、ノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、前記エチレン性不飽和基は、1又は2以上の適切な置換基により更に置換されていてもよい。非限定的な置換基の例としては、ハロ、アルキル、アルコキシ又はオキソが挙げられる。
【0155】
前記イン化合物は、1又は2以上のアルキン基、例えばエチニル、プロパルギル、プロピオレート(propiolate)、環状アルキン等を含んでいてもよい。
【0156】
ある態様によれば、前記エン化合物は、本明細書に記載のエン含有化合物の何れであってもよい。ある態様によれば、前記エン化合物は、エン修飾生体適合性モノマーであり、前記チオール−エン反応により生体適合性の架橋されたポリマーマトリックスが提供される。
【0157】
当業者であれば理解するように、本明細書に記載のエン/イン担持部分にエン/イン基を付加する方法は数々存在する。これらの方法により、エン/イン担持部分とエン/イン官能基との間にリンカー基が形成される。一態様によれば、PEGが5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾されることにより、1又は2以上の末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)部分がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンがNHS−ノルボルネンで修飾されることにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(例えばノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してアミド結合を介して結合される。
【0158】
ある態様によれば、前記イン化合物は、本明細書に記載のイン含有化合物の何れであってもよい。ある態様によれば、前記インは、イン修飾生体適合性モノマーであり、前記チオール−イン及びその後のチオール−エン反応により、生体適合性の架橋されたポリマー材料が提供される。
【0159】
ある態様によれば、前記ポリペプチドが更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列、例えばマトリックスメタロプロテアーゼによるペプチド分解性を有することが既知のペプチド配列を含む。ある態様によれば、前記ポリペプチドは、2つのホモシステイン残基で挟まれた、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列、例えばジホモシステインにより挟まれたメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチドを含む。斯かるポリペプチドを用いて作製されたヒドロゲルネットワークは、細胞分泌性MMPによる分解性を有する。斯かるポリペプチドの具体例の一つは「hC MMPA」である。これはジホモシステイン類似体MMPA(アミノ酸配列KCGPQGIAGQCK)であって、MMPAと同一の配列を有すると共に、各システイン残基がホモシステインで置換されてなる。別の態様によれば、前記ポリペプチドは活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。別の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。
【0160】
ある態様によれば、前記エン化合物は、エン修飾生体適合性モノマーであり、前記ポリペプチドは、2つのホモシステイン残基によって挟まれた、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列(例えば、ジホモシステインによって挟まれたメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチド)を含む。斯かる場合、前記チオール−エン反応によって、生体適合性の架橋された分解性(例えばMMPによる分解性)ヒドロゲルポリマーが提供される。
【0161】
ある態様によれば、架橋反応の際に、エン化合物の代わりに、或いはエン化合物に加えて、アルキン含有化合物(又はイン化合物)が用いられる。一次チオール−イン付加物を更に反応性チオールとのチオール−エン反応に供することにより、更なる架橋が行われる。
【0162】
更に、本明細書に記載の方法により製造される、架橋されたポリペプチド(例えば架橋されたチオール−エン系ポリマー)が提供される。
【0163】
架橋された分解性ヒドロゲルポリマー
一つの側面によれば、ポリペプチド架橋剤を含むチオールを用いてエン化合物を架橋することにより、生体適合性ポリマーが作製される(例えば
図3A又は
図4A)。前記ポリペプチドは、2又はそれ以上の反応性チオール基を含むように合成され、或いはそのように修飾される。前記の反応性チオール基は、前記ポリペプチド骨格から、2又はそれ以上の炭素原子によって隔てられていてもよい。特定の態様によれば、2又はそれ以上のホモシステイン残基を前記ポリペプチド内に組み込むことにより、2又はそれ以上のチオールが提供される。
【0164】
ある態様によれば、生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーを製造するための方法であって、反応性チオール化合物をラジカル開始剤及び反応性エン化合物と反応させることを含み、ここで、前記反応性チオール化合物が、ペプチド骨格と、分解性ペプチドと、前記ペプチド骨格から各々2以上の炭素原子により隔てられている2以上の反応性チオール基とを含み、前記反応性エン化合物が、2以上の反応性エン基を含むエン修飾生体適合性モノマーである、方法が提供される。
【0165】
特定の態様によれば、前記ポリペプチドが、n個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、m個の反応性エン基を含み、ここでn及びmが独立に2以上の整数であり、n+m≧5である。
【0166】
ある態様によれば、前記ポリペプチドの反応性チオール基が、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている。ある態様によれば、前記反応性チオール化合物の反応性チオール基が、前記ポリペプチドのホモシステイン残基のチオール基、前記ポリペプチドの2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール、及び、リシン残基の側鎖アミノ基にリンカーを介して連結されたチオール基から独立に選択される。ある態様によれば、前記方法が更に、本明細書に記載の方法/製法によって、反応性チオール基をポリペプチドに組み込むことにより、前記ポリペプチドを製造することを含む。ここで、反応性チオール基のポリペプチドへの組み込みは、例えば、所望のチオール基を有するアミノ酸を用いたペプチド合成により、或いは、リシン残基のアミノ基を介して、反応性チオール基をポリペプチドに連結することにより行われる。前記ポリペプチドの反応性チオール基は、チオール化剤を用いて、リシンの側鎖アミノ基に結合することができる。斯かるチオール化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート(SATP)、N−アセチルホモシステインチオラクトン、及びNHS−PEG−SHが挙げられる。
【0167】
ある態様によれば、前記ポリペプチドは、各々前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられた、2以上の反応性チオール基を含んでいてもよい。
【0168】
前記チオール−エン反応は、化学的に又は光化学的に開始される。ある態様によれば、前記反応はラジカル開始剤、例えば光開始剤等により開始される。ある態様によれば、前記ラジカル開始剤は、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(例えばIrgacure
(登録商標)2959)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えばIrgacure
(登録商標)184)及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えばIrgacure
(登録商標)651)からなる群より選択される光開始剤である。ある態様によれば、光の波長は、前記光開始剤の励起波長に合致するように選択される。ある態様によれば、前記チオール−エン反応は、例えばレオロジーの測定により、或いはエルマンアッセイを用いた遊離チオールの消費量により、約70%〜約95%の完了率に到達するように制御される。ある態様によれば、前記チオール−エン反応は、水性環境又は水性媒体の中で実施される。
【0169】
ある態様によれば、前記エン化合物は、任意の適切なエチレン性不飽和基とすることができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。好ましい態様によれば、前記エン化合物は、ノルボン−2−エン−5−イル基を含む。
【0170】
ある態様によれば、前記エン化合物は、任意のエン修飾生体適合性モノマーから選択することができる。例としては、制限されるものではないが、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せが挙げられる。特定の態様によれば、前記エン化合物は、エン修飾ポリエチレングリコール(PEG)である。好ましい態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにエステル結合により連結される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで連結することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合で連結される。
【0171】
ある態様によれば、得られるバイオポリマーは三次元ネットワークを形成する。特定の態様によれば、前記バイオポリマーは、>98%、>95%、>90%、>80%、又は>70%の水を含むヒドロゲルを形成する。
【0172】
多くの生物医学用途では、生物活性成分をポリマーマトリックスに封入し、又は組み込むことが望ましい。
【0173】
多くの場合、上述の生物活性成分を単にポリマーマトリックス内に含有されることが好ましい。ある例によれば、ポリマーマトリックスを分解することにより、非共有結合的に封入された成分を放出させることができる(
図3C)。他の例では、成分がポリマーマトリックスの孔サイズよりも小さい場合、前記成分が拡散によりポリマーネットワークから放出される(
図3B)。ある態様によれば、前記生物活性成分をまずナノ又はマイクロ粒子内に封入し、これを更にポリマーマトリックスに封入してもよい。生物活性成分を粒子内に封入する方法は当業者に周知である。
【0174】
或いは、前記生物活性成分をポリマーネットワーク内に連結し、又は組み込むことが好ましい場合もある。即ち、前記成分をポリマーマトリックスに対して、1又は2以上の共有結合を介して連結し、又は組み込む。例えば、孔サイズよりも小さな生物活性成分については、共有結合により成分をネットワークに連結し、ネットワークが分解されたときにだけ前記成分が放出されるようにすることが望ましい場合もある(
図3D)。ある態様によれば、ネットワークを架橋するのに使用したのと同じペプチドを介して、前記生物活性成分がポリマーネットワークに連結される。他の態様によれば、前記生物活性成分が、分解性又は非分解性リンカーにより連結される。ある例によれば、前記分解性リンカーは、加水分解又は酵素分解により分解されるリンカーである。特定の態様によれば、酵素分解により分解されるリンカーは、プロテアーゼにより切断されるペプチドである。上述の各々の場合において、前記生物活性成分を前記ネットワークに(介在するリンカーを介して、或いはリンカー無しで)ペプチドのチオールを介して連結し、或いは組み込む場合には、斯かるチオールは前記ペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられていることが好ましい。
【0175】
ある態様によれば、前記方法は更に、前記反応混合物に生物活性成分を加えることを含み、ここで前記生物活性成分は、前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされる。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに封入されてなり、前記生物活性成分と前記ポリマーマトリックスとの間には共有結合は存在しない。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに共有結合されてなる。前記生物活性成分の前記ポリマーマトリックスに対する相対的な位置関係に応じて、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに組み込まれ、或いはポリマーマトリックスに連結される。
【0176】
前記生物活性成分としては、適用可能な任意の生体材料、例えば本明細書に記載の生物活性成分のうち任意のものを使用することができる。例としては、本明細書に記載の組織、細胞、タンパク質、ペプチド、小分子薬物、核酸、(例えば脂質ナノ粒子に封入された)カプセル化核酸、脂質、炭水和物、又は農業用化合物が挙げられる。
【0177】
前記生物活性成分を、生物活性ポリペプチドに組み込んでもよい。この場合、生物活性ポリペプチドには、本発明のチオール−エン反応での使用に適した反応性チオール基を組み込んでもよい。
【0178】
即ち ある態様によれば、前記方法は、(例えば本明細書に記載のようなNHS−PEG−SH試薬を用いてチオール基をリシン側鎖アミンに連結することにより)反応性チオール基を生物活性ポリペプチドに組み込み、前記反応性チオール基にエン化合物のエン基を反応させることを含む。
【0179】
ある態様によれば、前記生物活性成分が、前記生物活性ポリペプチドの反応性チオール基をエン基と反応させることにより形成されるチオエーテル結合を介して、ポリマーマトリックスに共有結合された生物活性ポリペプチドであり、ここで前記チオエーテル結合のチオ基が、前記生物活性ポリペプチドの骨格から2以上の炭素原子により隔てられてなる。
【0180】
更に、本明細書に記載の方法により製造される生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーも提供される。ある態様によれば、前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーは、更に前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を含む。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに封入されてなる。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、前記ポリマーマトリックスに共有結合され(例えば、導入又は連結され)てなる。
【0181】
組成物
ラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下(例えばラジカル開始剤の存在下)で、ポリペプチドの反応性チオール基(例えばペプチド骨格から少なくとも2つの炭素原子により隔てられているチオール基)を、オレフィン含有化合物(エン化合物)と反応させる本明細書に記載の方法を用いることにより、反応性チオール基とオレフィン含有化合物のエン基との間のフリーラジカル反応により形成されるチオエーテル結合を介して別の部分に共有結合されているポリペプチド(例えばペプチド又はタンパク質);反応性チオール基とオレフィン含有化合物のエン基との間のフリーラジカル反応で形成された生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマー;及び、反応性チオール基とオレフィン含有化合物のエン基との間のフリーラジカル反応により形成された生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされ[例えば封入又は共有結合されて(導入又は連結され)]た生物活性成分を更に含む生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマー等の、数々の化合物や組成物が製造される。前記チオール含有ポリペプチドの各分子が有する反応性チオール基の数と、前記エン化合物が有する反応性エン基の数とに応じて、種々の化合物や組成物を製造することができる。当業者であれば理解するように、生体適合性又は非生体適合性の化合物及び組成物は、前記エン化合物及び1又は2以上のチオール化合物の生体適合性又は非生体適合性に応じて、本明細書に記載の方法を用いて製造することができる。これも当業者であれば理解するように、分解性又は非分解性の化合物及び組成物は、前記エン化合物及び1又は2以上のチオール化合物の分解性又は非分解性に応じて、本明細書に記載の方法を用いて製造することができる。これも当業者であれば理解するように、本明細書に記載の方法を用いて製造される化合物及び組成物を、分解性部分と非分解性部分の双方を含むように改変してもよい。非限定的な例としては、分解性ポリペプチドを非分解性ポリマーマトリックスに連結してもよい。分解性の化合物及び組成物は、酵素的、生物学的、化学的、又は物理的手法の何れにより分解される物であってもよい。
【0182】
1又は2以上の反応性チオール基を含むチオール含有ポリペプチドを、単一の反応性エン基を含むエン化合物と反応させる場合には、各エン含有化合物が単一の反応性チオール基と反応できるように、エン含有化合物に由来する1又は2以上の「末端」部分を有するように前記ポリペプチドを修飾する。
【0183】
即ち、式(A)の化合物が提供される。
P−[C
t−S−C−C−Q]
x
式中、Pはポリペプチドであり、C
tは少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(t≧2であり)、xは1又は1よりも大きい整数であり、Qは生物活性成分(例えば、薬物、毒素、又は殺虫剤)、ポリマー部分(例えばPEG)、捕捉部分(例えばビオチン)、標識(例えば蛍光標識、発色団、又は蛍光団)、糖又は炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドである。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である。)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により得られる部分である。この反応性エン基は、例えば、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される反応性エン基である。ある態様によれば、前記の硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により得られる部分であって、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、前記エチレン性不飽和基は、1又は2以上の適切な置換基により更に置換されていてもよい。置換基の非限定的な例としては、ハロ、アルキル、アルコキシ又はオキソが挙げられる。当業者であれば理解するように、C−C部分をQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。前記エン/イン官能基の非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、前記の硫黄原子とQとの間のC−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化5】
からなる群より選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。リンカー部分の非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0184】
斯かる態様において、ポリペプチドPは、1又は2以上のチオエーテル部分に対して、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されてなる。また、各チオエーテル部分もQ部分に対し、前記エン基に由来するエチレン単位を介して連結される。
【0185】
式(A)のある態様によれば、Pは、ペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択することができる。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0186】
式(A)のある態様によれば、前記ポリペプチドPは更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む。別の態様によれば、前記ポリペプチドは、活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。別の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。特定の態様によれば、前記ポリペプチドは、ホモシステイン隣接型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチドであり、細胞分泌性MMPで分解されるヒドロゲルネットワークを形成する。
【0187】
ある態様によれば、xは1であり、ここで単一のQ部分は、前記ポリペプチドPに連結されてなる。ある態様によれば、xは2、3、4、又はより大きな整数である。
【0188】
式(A)の特定の態様によれば、P部分は、ペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択される。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン、及びコラーゲンが挙げられる。
【0189】
ある態様によれば、前記ポリペプチドPに連結されたQ部分は、修飾により付与するべき目的となる具体的な機能特性に応じて選択される。斯かる機能特性の限定されない例としては、蛍光団又は発色団の導入、親和性タグの導入、酵素活性の導入、所定の化学的部分又は部分の導入、溶解性、薬物動態、薬動力学又は生体膜や固体表面との相互作用を改変するための親水性、疎水性又は両親媒性ポリマー端の導入、更なる重合のためのポリペプチド含有ポリマー又はテレケリック(telechelic)モノマーの生成等が挙げられる。例としては、以下の(限定されない例の)適切な誘導体が挙げられる。ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー(PLGA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー(ポロキサマー、メロキサポール(meroxapols))、ポロキサミン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、例えばヒドロキシエチルセルロースやメチルヒドロキシプロピルセルロース、並びに天然ポリマー、例えばポリペプチド、多糖類、又は炭水和物、例えばポリスクロース、ヒアルロン酸、デキストラン、及びそれらの同様の誘導体、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、又はアルギン酸、及びタンパク質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミン、又はオボアルブミン、フィブリノーゲン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質又はその類似体、蛍光及び非蛍光の色素、蛍光消光剤、高親和性タグ、例えばポリペプチドタグ(His−タグやFLAG−タグ等)、その抗体及び断片、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド、高次マクロ分子アセンブリ、例えばリボヌクレオタンパク質、ウイルスカプシド等が挙げられる。前記第二の部分の反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。前記ポリペプチドPに連結されたQ部分は、ポリマー部分を含んでいてもよい。その例としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せが挙げられる。ある態様によれば、前記第二の部分は、生物活性成分を含んでいてもよい。
【0190】
式(A)の特定の態様によれば、前記ポリペプチドPに連結されたQ部分は、生物活性成分を含んでいてもよい。例としては、本明細書に記載の任意の生物活性成分が挙げられる。ある態様によれば、前記Q部分は、本明細書に記載のポリマー、捕捉部分、標識、炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドが挙げられる。
【0191】
ある態様によれば、前記式(A)の化合物は、式P−[C
t−SH]
xの化合物を、式CH
2=CH−Qの化合物及びラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)と、例えば本明細書に記載のラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で反応させることにより製造される(ここでP、Ct、t、Q、及びxは、式(A)において定義されるとおり、又はその任意の変形である)。一つの側面によれば、前記CH
2=CH−QのCH
2=CH−部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、及びN−ビニルカルバモイルからなる群より選択される反応性エン基である。
【0192】
CH
2=CH−Qは、末端の無置換のアルケン部分を有するエン基を表す。しかし、本明細書に記載の置換アルケンを用いてもよいと解される。即ち、当然ながら、前記C−C部分が末端の無置換のアルケン以外のアルケンから誘導される式(A)の化合物も提供され、これらは、式P−[C
t−SH]
xの化合物と、式T−Qの化合物と、ラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)とを、フリーラジカル媒介性反応条件下で反応させることにより製造することができる(ここでP、Ct、t、Q、及びxは、式(A)において定義されるとおり、又はその任意の変形であり、Tは、末端の無置換のアルケン部分以外のアルケン部分を指す)。一つの側面によれば、T−Qは、下記式の環状アルケン部分である。
【化6】
ここで、環Gは、モノシクロ又はビシクロシクロアルケンを意味する。ここで当該アルケンは、O、S、及びNから選択される1又は2以上の環ヘテロ原子を有していてもよく、オキソ、ハロ、アルキル、及びアルコキシからなる群より選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。また、前記ビシクロシクロアルケンは、縮合、架橋、又はスピロ環型のビシクロ環であってもよい。当然ながら、Qは、Tに直接連結されていてもよく、リンカー部分を介してTに連結されていてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。T−Qの例としては、マレイミド基、プロペニルエーテル基、ノルボルン−2−エン−5−イル基又はこれらの任意の組合せにより誘導体化されたQ部分が挙げられる。これらのうち1又は2以上は、Qに直接結合していてもよく、リンカー部分を介してQに結合していてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0193】
ある態様によれば、T−QのT部分は、ノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、CH
2=CH−部分をCH
2=CH−QのQ基に付加し、或いはT部分をT−QのQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。好ましい態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにエステル結合を介して付加される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、前記CH
2=CH−QのCH
2=CH−部分は、CH
2=CH−C(=O)−、CH
2=CH−S(=O)
2−、CH
2=CH−O−、CH
2=CH−(C
0−C
4)−アルカンジイル−、CH
2=CH−C(=O)O−、CH
2=C(CH
3)−C(=O)O−、CH
2=CH−C(=O)NH−、CH
2=CH−CH
2−O−、及びCH
2=CH−NHC(=O)−からなる群より選択される部分であり、T−QのT部分は、
【化7】
−CH(CH
3)=CH−O−、及び
【化8】
からなる群より選択される。ここで、*(アスタリスク)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0194】
ある態様によれば、前記式(A)の化合物は、低酸素環境中又は酸素の不在下で、例えば脱気溶媒の存在下で製造される。
【0195】
式CH
2=CH−Q及びT−Qの種々の化合物並びに対応する式(A)の化合物(ここでxは1である)(即ち、(A)は式P−Ct−S−C−C−Qである)の限定されない例を下記表3に示す。式P−C
t−SHの種々の化合物並びに対応する式(A)の化合物(ここでxは1である)(即ち、(A)は式P−Ct−S−C−C−Qである)の限定されない例を下記表4に示す。
【表3】
【表4】
【0196】
また、式(B)の化合物も提供される。
[P−C
t−S−C−C]
y−Q
式中、Pはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(即ち、Pは、チオエーテル部分に対して、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されてなる)、yは1又は1よりも大きい整数(例えば2、3、4又はそれ以上)であり、Qは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。式(A)について記載したP、C
t、t及びQの全ての選択肢が、式(B)に対しても同様に適用可能であり、式(B)についても同様に、各記載、選択肢、側面又は態様を個別具体的に列挙しているように記載されているものとする。即ち、当然ではあるが、式(A)は、2以上の−Ct−S−C−C−Qが所与のPに付着していてもよい物質を記載し、式(B)は、2以上のP−Ct−S−C−C−が所与のQに付着していてもよい物質を記載するが、それらのP、Ct、t及びQの定義は何れの式でも同様である。
【0197】
ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−からなる群より選択される(ここでzは1〜10,000の整数である)。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、各硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、前記硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、各硫黄原子とQとの間のC−C部分が、部分は独立に、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化9】
からなる群より選択される。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0198】
ある態様によれば、前記式(B)の化合物は、式P−C
t−SHの化合物を、式[CH
2=CH]
yQの化合物及びラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)と、例えば本明細書に記載のラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で反応させることにより製造される(ここで、P、C
t、t、Q、及びyは、式(B)について定義されたもの又はその変形例である。
【0199】
一つの側面によれば、[CH
2=CH]
yQの各CH
2=CH−部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、及びN−ビニルカルバモイルからなる群より独立に選択される反応性エン基である。
【0200】
[CH
2=CH]
yQは、1又は2以上の末端の無置換のアルケン部分を含むエン基を表すと解される。しかし、本明細書に記載の置換アルケンを用いてもよい。即ち、当然ながら、C−C部分が末端の無置換のアルケン以外のアルケンから誘導される式(B)の化合物も提供され、これらは、式P−C
t−SHの化合物と、式[T]
y−Qの化合物と、ラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)とを、フリーラジカル媒介性反応条件下で反応させることにより製造することができる(ここで、P、C
t、t、Q、及びxは、式(B)について定義されたもの又はその変形例であり、Tは、末端の無置換のアルケン部分以外のアルケン部分を指す)。一つの側面によれば、[T]
y−Qは、1又は2以上の環状アルケン部分を含み、[T]
y−Qは、下記式のものである。
【化10】
ここで、各環Gは独立に、モノシクロ又はビシクロシクロアルケンを意味する。ここで当該アルケンは、O、S、及びNから選択される1又は2以上の環ヘテロ原子を有していてもよく、オキソ、ハロ、アルキル、及びアルコキシからなる群より選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。また、前記ビシクロシクロアルケンは、縮合、架橋、又はスピロ環型のビシクロ環であってもよい。当然ながら、Qは直接、1又は2以上のT部分の各々について独立に、Tに連結されていてもよく、リンカー部分を介してTに連結されていてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。[T]
y−Qの例としては、マレイミド基、プロペニルエーテル基、ノルボルン−2−エン−5−イル基、並びにこれらの任意の組合せから独立に選択される1又は2以上の基により誘導体化されたQ部分が挙げられる。これらのうち1又は2以上は、Qに直接結合していてもよく、リンカー部分を介してQに結合していてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0201】
ある態様によれば、[T]
y−Qの各T部分は、ノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、1又は2以上のCH
2=CH−部分を[CH
2=CH]
yQのQ基に付加する手法、或いは1又は2以上のT部分を[T]
y−QのQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。好ましい態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、末端ノルボルネンがPEGにエステル結合を介して付加される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、末端ノルボルネンがPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、[CH
2=CH]
yQの各CH
2=CH−部分が、CH
2=CH−C(=O)−、CH
2=CH−S(=O)
2−、CH
2=CH−O−、CH
2=CH−(C
0−C
4)−アルカンジイル−、CH
2=CH−C(=O)O−、CH
2=C(CH
3)−C(=O)O−、CH
2=CH−C(=O)NH−、CH
2=CH−CH
2−O−、及びCH
2=CH−NHC(=O)−からなる群より独立に選択される部分であり、[T]
y−Q各T部分は、
【化11】
−CH(CH
3)=CH−O−、及び
【化12】
からなる群より独立に選択される。ここで、*(アスタリスク)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。ある態様によれば、前記式(B)の化合物は、低酸素環境中又は酸素の不在下で、例えば脱気溶媒の存在下で製造される。
【0202】
ある態様によれば、前記式(B)の化合物は、低酸素環境中又は酸素の不在下で製造される。
【0203】
式(B)のある態様によれば、Pは、から選択することができる ペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0204】
式(B)のある態様によれば、前記ポリペプチドPは更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む。特定の態様によれば、前記ポリペプチドは、ホモシステイン隣接型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチドであり、細胞分泌性MMPで分解されるヒドロゲルネットワークを形成する。別の態様によれば、前記ポリペプチドは、活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。別の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。
【0205】
式(B)のある態様によれば、Qは、式(Qa)のポリマー部分である。
【化13】
式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化14】
は、式(B)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、或いは、前記式(Qa)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1a−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1aはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーである。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−からなる群より選択される(ここでzは1〜10,000の整数である)。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をR
2基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化15】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)はR
2基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0206】
R
1及びR
2のサイズは、得られるポリマー材料の所望の特性に応じて種々変更することができる。より具体的には、R
1及びR
2の分子量は、約30Da〜約50000Daの範囲とすることができる。本発明のポリマー材料の形成に先立ち、光開始チオール−エン重合に関与するように、R
1を2以上の反応性チオール基を含むように誘導体化してもよく、また、R
2を3以上の反応性エン基を含むように誘導体化してもよい。チオール化マクロマー、例えばポリ(エチレングリコール)ジチオールは、市販品を入手可能である。前記反応性エン基は、炭素−炭素二重結合を有する任意の適切な化合物から選択することができる。例えば、前記反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。その例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。即ち、当然ながら、上に挙げた繰り返し単位において、前記炭素はCH
2でもよく繰り返し基内の1又は2以上の炭素が置換されていてもよく、更には二重結合を組み込んだ環構造を形成していてもよい。R
1が2つの反応性チオールにより誘導体化され、R
2が2つの反応性エン基により誘導体化されている場合、得られるチオール−エンポリマーは、R
1及びR
2セグメントの繰り返しからなる直鎖コポリマーとなるであろう。しかし、前記チオール−エンポリマー材料は、架橋及び分岐を含むように形成されることが好ましい。即ち、誘導体化されたR
1及びR
2セグメントは、架橋及び重合に関与しうる反応性チオール基又は反応性エン基を、1分子当たり3つ以上有することが好ましい。分岐及び架橋の程度は、異なるように誘導体化されたR
1及びR
2セグメントを用いると共に、出発物質の濃度を制御することにより、制御することが可能である。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1b−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1bはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むR
1bの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基である。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。
【0207】
式(B)のある態様によれば、Qは、式(Qb)のポリマー部分である。
【化16】
式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。ここで、
【化17】
は、式(B)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は、式(Qb)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1a−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1aはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーである。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をR
2基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−,
【化18】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)はR
2基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1b−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1bはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含む各残基 R
1bは、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0208】
R
1及びR
2のサイズは、得られるポリマー材料の所望の特性に応じて種々変更することができる。より具体的には、R
1及びR
2の分子量は、約30Da〜約50000Daの範囲とすることができる。本発明のポリマー材料の形成に先立ち、光開始チオール−エン重合に関与するように、R
1を2以上の反応性チオール基を含むように誘導体化してもよく、R
2を3以上の反応性エン基を含むように誘導体化してもよい。チオール化マクロマー、例えばポリ(エチレングリコール)ジチオールは、市販品を入手可能である。前記反応性エン基は、炭素−炭素二重結合を有する任意の適切な化合物から選択することができる。例えば、前記反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。その例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。即ち、当然ながら、上に挙げた繰り返し単位において、前記炭素はCH
2でもよく、繰り返し基内の1又は2以上の炭素が置換されていてもよく、更には二重結合を組み込んだ環構造を形成していてもよい。R
1が2つの反応性チオールにより誘導体化され、R
2が2つの反応性エン基により誘導体化されている場合、得られるチオール−エンポリマーは、R
1及びR
2セグメントの繰り返しからなる直鎖コポリマーとなるであろう。しかし、前記チオール−エンポリマー材料は、架橋及び分岐を含むように形成されることが好ましい。即ち、誘導体化されたR
1及びR
2セグメントは、架橋及び重合に関与しうる反応性チオール基又は反応性エン基を、1分子当たり3つ以上有することが好ましい。分岐及び架橋の程度は、異なるように誘導体化されたR
1及びR
2セグメントを用いると共に、出発物質の濃度を制御することにより、制御することが可能である。
【0209】
また、式(I)の繰り返し単位を含むポリマー材料(例えばチオール−エンヒドロゲル)も提供される:
【化19】
式中、Xはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(即ち、Xは、少なくとも2つのチオエーテル部分に対し、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されている)、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をY基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化20】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Y基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0210】
また、式(II)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料も提供される:
【化21】
式中、Xはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(即ち、Xは、少なくとも2つのチオエーテル部分に対し、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されている)、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化22】
は、式(II)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をY基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化23】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Y基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0211】
また、式(III)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料も提供される:
【化24】
式中、Xはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(即ち、Xは、少なくとも2つのチオエーテル部分に対し、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されている)、Yは、からなる群より選択される ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化25】
は、式(III)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をY基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−,
【化26】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Y基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0212】
ある態様によれば、式(I)、(II)又は(III)のポリマー材料は更に、前記ポリマー材料のポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を含んでいてもよい。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに封入されてなる。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに共有結合され(例えば導入又は連結され)てなる。この生物活性成分としては、本明細書に記載の任意の適用可能な生物活性成分を用いることができる。その例としては、本明細書に記載の組織、細胞、タンパク質、ペプチド、小分子薬物、核酸、(例えば脂質ナノ粒子に封入された)カプセル化核酸、脂質、炭水和物、又は農業用化合物が挙げられる。
【0213】
当然ながら、式(A)、(B)、(I)、(II)、及び(III)に示す繰り返し単位において、炭素原子はCH
2であってもよく、繰り返し基内の1又は2以上の炭素が置換されていてもよく、更には二重結合を組み込んだ環構造を形成していてもよい。更に、当然ながら、生物活性化合物をエン/インで誘導体化するために、生物活性化合物と炭素との間に1又は2以上の連結基が存在してもよい。
【0214】
1又は2以上の反応性チオール基を含むチオール含有ポリペプチドを、単一の反応性エン基を含むエン化合物と反応させる場合、各エン含有化合物が単一の反応性チオール基と反応できるように、エン含有化合物に由来する1又は2以上の「末端」部分を含むよう前記ポリペプチドを修飾する。
【0215】
即ち、式(C)の化合物が提供される:
P−[C
t−S−C−C−Q]
x
(式中、Pはポリペプチドであり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、t≧1であり、xは1又は1よりも大きい整数であり、Qは生物活性成分(例えば、薬物、毒素、又は殺虫剤)、ポリマー部分(例えばPEG)、捕捉部分(例えばビオチン)、標識(例えば蛍光標識、発色団、又は蛍光団)、糖又は炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドであり、ここでC
tリンカーを含むPの残基の各々は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、前記硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。その例としては、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される反応性エン基である。ある態様によれば、前記硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、前記硫黄原子とQとの間のC−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−,
【化27】
からなる群より選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0216】
斯かる態様において、ポリペプチドPは、1又は2以上のチオエーテル部分に対して、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されてなる。各チオエーテル部分も、Q部分に対して、前記エン基に由来するエチレン単位を介して連結される。
【0217】
式(C)のある態様によれば、Pは、ペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択することができる。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0218】
式(C)のある態様によれば、前記ポリペプチドPは更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む。別の態様によれば、前記ポリペプチドは、活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。別の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。特定の態様によれば、前記ポリペプチドは、ホモシステイン隣接型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチドであり、細胞分泌性MMPで分解されるヒドロゲルネットワークを形成する。
【0219】
ある態様によれば、xは1であり、ここで単一のQ部分は、前記ポリペプチドPに連結されてなる。ある態様によれば、xは2、3、4、又はより大きな整数である。
【0220】
式(C)の特定の態様によれば、P部分は、から選択される ペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0221】
ある態様によれば、前記ポリペプチドPに連結されたQ部分は、修飾により付与するべき目的となる具体的な機能特性に応じて選択される。斯かる機能特性の限定されない例としては、蛍光団又は発色団の導入、親和性タグの導入、酵素活性の導入、所定の化学的部分又は部分の導入、溶解性、薬物動態、薬動力学又は生体膜や固体表面との相互作用を改変するための親水性、疎水性又は両親媒性ポリマー端の導入、更なる重合のためのポリペプチド含有ポリマー又はテレケリック(telechelic)モノマーの生成等が挙げられる。その例としては、以下の(限定されない例の)適切な誘導体が挙げられる:ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー(PLGA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー(ポロキサマー、メロキサポール(meroxapols))、ポロキサミン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、例えばヒドロキシエチルセルロースやメチルヒドロキシプロピルセルロース、並びに天然ポリマー、例えばポリペプチド、多糖類、又は炭水和物、例えばポリスクロース、ヒアルロン酸、デキストラン、及びそれらの同様の誘導体、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、又はアルギン酸、及びタンパク質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミン、又はオボアルブミン、フィブリノーゲン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質又はその類似体、蛍光及び非蛍光の色素、蛍光消光剤、高親和性タグ、例えばポリペプチドタグ(His−タグやFLAG−タグ等)、その抗体及び断片、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド、高次マクロ分子アセンブリ、例えばリボヌクレオタンパク質、ウイルスカプシド等が挙げられる。前記第二の部分の反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イル等が挙げられる。前記ポリペプチドPに連結されたQ部分は、ポリマー部分を含んでいてもよい。その例としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せ等が挙げられる。ある態様によれば、前記第二の部分は、生物活性成分を含んでいてもよい。
【0222】
式(C)の特定の態様によれば、前記ポリペプチドPに連結されたQ部分は、生物活性成分を含んでいてもよい。例としては、本明細書に記載の任意の生物活性成分が挙げられる。ある態様によれば、前記Q部分は、本明細書に記載のポリマー、捕捉部分、標識、炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドが挙げられる。
【0223】
ある態様によれば、式(C)の化合物は、式P−[C
t−SH]
xの化合物を、式CH
2=CH−Qの化合物及びラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)と、例えば本明細書に記載のラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で反応させることにより製造される(ここで、P、C
t、t、Q、及びxは、式(C)について定義されたもの又はその変形例である)。一つの側面によれば、CH
2=CH−QのCH
2=CH−部分が、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、及びN−ビニルカルバモイルからなる群より選択される反応性エン基である。
【0224】
ここで、CH
2=CH−Qは、末端の無置換のアルケン部分を有するエン基を表すと解される。しかし、本明細書に記載の置換アルケンを用いてもよい。即ち、当然ながら、C−C部分が末端の無置換のアルケン以外のアルケンから誘導される式(C)の化合物も提供され、これらは、式P−[C
t−SH]
xの化合物と、式T−Qの化合物と、ラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)とを、フリーラジカル媒介性反応条件下で反応させることにより製造することができる(ここで、P、C
t、t、Q、及びxは、式(C)について定義されたもの又はその変形例であり、Tは、末端の無置換のアルケン部分以外のアルケン部分を指す)。一つの側面によれば、T−Qは、下記式の環状アルケン部分である。
【化28】
ここで、環Gは、モノシクロ又はビシクロシクロアルケンを意味する。ここで当該アルケンは、O、S、及びNから選択される1又は2以上の環ヘテロ原子を有していてもよく、オキソ、ハロ、アルキル、及びアルコキシからなる群より選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。また、前記ビシクロシクロアルケンは、縮合、架橋、又はスピロ環型のビシクロ環であってもよい。当然ながら、Qは、Tに直接連結されていてもよく、リンカー部分を介してTに連結されていてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。T−Qの例としては、マレイミド基、プロペニルエーテル基、ノルボルン−2−エン−5−イル基又はこれらの任意の組合せにより誘導体化されたQ部分が挙げられる。これらのうち1又は2以上は、Qに直接結合していてもよく、リンカー部分を介してQに結合していてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0225】
ある態様によれば、T−QのT部分は、ノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、CH
2=CH−部分をCH
2=CH−QのQ基に付加する手法や、T部分をT−QのQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。好ましい態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにエステル結合を介して付加される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、前記CH
2=CH−QのCH
2=CH−部分が、CH
2=CH−C(=O)−、CH
2=CH−S(=O)
2−、CH
2=CH−O−、CH
2=CH−(C
0−C
4)−アルカンジイル−、CH
2=CH−C(=O)O−、CH
2=C(CH
3)−C(=O)O−、CH
2=CH−C(=O)NH−、CH
2=CH−CH
2−O−、及びCH
2=CH−NHC(=O)−からなる群より選択される部分であり、T−QのT部分は、
【化29】
−CH(CH
3)=CH−O−、及び
【化30】
からなる群より選択される。ここで、*(アスタリスク)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0226】
ある態様によれば、式(C)の化合物は、低酸素環境中又は酸素の不在下で、例えば脱気溶媒の存在下で製造される。
【0227】
また、式(D)の化合物も提供される:
[P−C
t−S−C−C]
y−Q
式中、Pはポリペプチドであり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、t≧1であり、ここでC
tリンカーを含むPの残基の各々は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない);yは1又は1よりも大きい整数(例えば2、3、4又はそれ以上)であり、Qは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。式(C)について記載されたP、C
t、t及びQの全ての選択肢が、式(D)に対しても同様に適用可能であり、また、各記載、選択肢、側面又は態様を個別具体的に列挙しているように、式(D)についても記載されるものとする。即ち、当然ではあるが、式(C)は、2以上の−Ct−S−C−C−Qが所与のPに付着していてもよい物質を記載し、式(D)は、2以上のP−Ct−S−C−C−が所与のQに付着していてもよい物質を記載するが、それらのP、Ct、t及びQの定義は何れの式でも同様である。
【0228】
ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、各硫黄原子とQとの間のC−C部分が、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、前記硫黄原子とQとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、各硫黄原子とQとの間のC−C部分が、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−,
【化31】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0229】
ある態様によれば、式(D)の化合物は、式P−C
t−SHの化合物を、式[CH
2=CH]
yQの化合物及びラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)と、例えば本明細書に記載のラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で反応させることにより製造される(P、C
t、t、Q、及びyは、式(D)について定義されたもの又はその変形例である)。
【0230】
一つの側面によれば、[CH
2=CH]
yQの各CH
2=CH−部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、及びN−ビニルカルバモイルからなる群より独立に選択される反応性エン基である。
【0231】
[CH
2=CH]
yQは、1又は2以上の末端の無置換のアルケン部分を含むエン基を表すと解される。しかし、本明細書に記載の置換アルケンを用いてもよい。即ち、当然ながら、C−C部分が末端の無置換のアルケン以外のアルケンから誘導される式(D)の化合物も提供され、これらは、式P−C
t−SHの化合物と、式[T]
y−Qの化合物と、ラジカル開始剤(例えば本明細書に記載の光開始剤)とを、フリーラジカル媒介性反応条件下で反応させることにより製造することができる(ここで、P、t、Q、及びxは、式(D)について定義されたもの又はその変形例であり、Tは、末端の無置換のアルケン部分以外のアルケン部分を指す)。一つの側面によれば、[T]
y−Qは、1又は2以上の環状アルケン部分を含み、[T]
y−Qは、下記式のものである。
【化32】
ここで、各環Gは独立に、モノシクロ又はビシクロシクロアルケンを意味する。ここで当該アルケンは、O、S、及びNから選択される1又は2以上の環ヘテロ原子を有していてもよく、オキソ、ハロ、アルキル、及びアルコキシからなる群より選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。また、前記ビシクロシクロアルケンは、縮合、架橋、又はスピロ環型のビシクロ環であってもよい。当然ながら、Qは直接、1又は2以上のT部分の各々について独立に、Tに連結されていてもよく、リンカー部分を介してTに連結されていてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。[T]
y−Qの例としては、マレイミド基、プロペニルエーテル基、ノルボルン−2−エン−5−イル基、並びにこれらの任意の組合せから独立に選択される1又は2以上の基により誘導体化されたQ部分が挙げられる。これらのうち1又は2以上は、Qに直接結合していてもよく、リンカー部分を介してQに結合していてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0232】
ある態様によれば、[T]
y−Qの各T部分は、ノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、1又は2以上のCH
2=CH−部分を[CH
2=CH]
yQのQ基に付加する手法や、1又は2以上のT部分を[T]
y−QのQ基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。好ましい態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにエステル結合を介して付加される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、末端ノルボルネン(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、[CH
2=CH]
yQの各CH
2=CH−部分が、CH
2=CH−C(=O)−、CH
2=CH−S(=O)
2−、CH
2=CH−O−、CH
2=CH−(C
0−C
4)−アルカンジイル−、CH
2=CH−C(=O)O−、CH
2=C(CH
3)−C(=O)O−、CH
2=CH−C(=O)NH−、CH
2=CH−CH
2−O−、及びCH
2=CH−NHC(=O)−からなる群より独立に選択される部分であり、[T]
y−Qの各T部分は独立に、
【化33】
−CH(CH
3)=CH−O−、及び
【化34】
からなる群より選択される。ここで、*(アスタリスク)は、Q基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。ある態様によれば、式(D)の化合物は、低酸素環境中又は酸素の不在下で、例えば脱気溶媒の存在下で製造される。
【0233】
ある態様によれば、式(D)の化合物は、低酸素環境中又は酸素の不在下で製造される。
【0234】
式(D)のある態様によれば、Pは、ペプチド及びタンパク質:ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択することができる。成長因子としては、AM、Ang、BMP、BDNF、GDNF、GCSF、GM−CSF、GDF、HGF、HDGF、KGF、MSF、NGF、TPO、FBS、EPO、IGF、EGF、FGF、TGF、PDGF、及びインターロイキン、並びにそれらの誘導体及び同族物質が挙げられる。構造タンパク質としては、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、アクチン、ラミニン及びコラーゲンが挙げられる。
【0235】
式(D)のある態様によれば、前記ポリペプチドPは更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む。特定の態様によれば、前記ポリペプチドは、ホモシステイン隣接型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)分解性ペプチドであり、細胞分泌性MMPで分解されるヒドロゲルネットワークを形成する。別の態様によれば、前記ポリペプチドは、活性チオール隣接型プラズミン分解性ペプチドである。別の態様によれば、前記ペプチドには2つのプラズミン分解性配列が含まれる。
【0236】
式(D)のある態様によれば、Qは、式(Qc)のポリマー部分である:
【化35】
式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。ここで、
【化36】
は、式(D)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は、式(Qc)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1a−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1aはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーである。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をR
2基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化37】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、R
2基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1b−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1bはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含む各残基R
1bは、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。
【0237】
R
1及びR
2のサイズは、得られるポリマー材料の所望の特性に応じて種々変更することができる。より具体的には、の分子量R
1及びR
2は、約30Da〜約50000Daの範囲とすることができる。本発明のポリマー材料の形成に先立ち、光開始チオール−エン重合に関与するように、R
1を2以上の反応性チオール基を含むように誘導体化してもよく、R
2を3以上の反応性エン基を含むように誘導体化してもよい。チオール化マクロマー、例えばポリ(エチレングリコール)ジチオールは、市販品を入手可能である。前記反応性エン基は、炭素−炭素二重結合を有する任意の適切な化合物から選択することができる。例えば、前記反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。その例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。即ち、当然ながら、上に挙げた繰り返し単位において、前記炭素はCH
2でもよく、繰り返し基内の1又は2以上の炭素が置換されていてもよく、更には二重結合を組み込んだ環構造を形成していてもよい。R
1が2つの反応性チオールにより誘導体化され、R
2が2つの反応性エン基により誘導体化される場合、得られるチオール−エンポリマーは、R
1及びR
2セグメントの繰り返しからなる直鎖コポリマーとなるであろう。しかし、前記チオール−エンポリマー材料は、架橋及び分岐を含むように形成されることが好ましい。即ち、誘導体化されたR
1及びR
2セグメントは、架橋及び重合に関与しうる反応性チオール基又は反応性エン基を、1分子当たり3つ以上有することが好ましい。分岐及び架橋の程度は、異なるように誘導体化されたR
1及びR
2セグメントを用いると共に、出発物質の濃度を制御することにより、制御することが可能である。
【0238】
式(D)のある態様によれば、Qは、式(Qd)のポリマー部分である:
【化38】
式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。ここで、
【化39】
は、式(D)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は、式(Qd)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1a−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1aはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーである。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をR
2基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とR
2との間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化40】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、R
2基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。ある態様によれば、R
1は、式−C
t−R
1b−C
t−のポリペプチドである。ここで、R
1bはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含む各残基R
1bは、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。
【0239】
R
1及びR
2のサイズは、得られるポリマー材料の所望の特性に応じて種々変更することができる。より具体的には、R
1及びR
2の分子量は、約30Da〜約50000Daの範囲とすることができる。本発明のポリマー材料の形成に先立ち、光開始チオール−エン重合に関与するように、R
1を2以上の反応性チオール基を含むように誘導体化してもよく、R
2を3以上の反応性エン基を含むように誘導体化してもよい。チオール化マクロマー、例えばポリ(エチレングリコール)ジチオールは、市販品を入手可能である。前記反応性エン基は、炭素−炭素二重結合を有する任意の適切な化合物から選択することができる。例えば、前記反応性エン基は、任意の適切なエチレン性不飽和基から選択することができる。その例としては、これらに限定されるものではないが、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルが挙げられる。即ち、当然ながら、上に挙げた繰り返し単位において、前記炭素はCH
2でもよく、繰り返し基内の1又は2以上の炭素が置換されていてもよく、更には二重結合を組み込んだ環構造を形成していてもよい。R
1が2つの反応性チオールにより誘導体化され、R
2が2つの反応性エン基により誘導体化される場合、得られるチオール−エンポリマーは、R
1及びR
2セグメントの繰り返しからなる直鎖コポリマーとなるであろう。しかし、前記チオール−エンポリマー材料は、架橋及び分岐を含むように形成されることが好ましい。即ち、誘導体化されたR
1及びR
2セグメントは、架橋及び重合に関与しうる反応性チオール基又は反応性エン基を、1分子当たり3つ以上有することが好ましい。分岐及び架橋の程度は、異なるように誘導体化されたR
1及びR
2セグメントを用いると共に、出発物質の濃度を制御することにより、制御することが可能である。
【0240】
また、式(IV)の繰り返し単位を含むポリマー材料(例えばチオール−エンヒドロゲル)も提供される:
【化41】
式中、Xはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むXの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)と共に、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をY基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−,
【化42】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Y基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0241】
また、式(V)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料も提供される:
【化43】
式中、Xはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むXの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)と共に、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化44】
は、式(V)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をY基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−、
【化45】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Y基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0242】
また、式(VI)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料も提供される:
【化46】
式中、Xはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むXの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)と共に、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化47】
は、式(VI)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す。ある態様によれば、前記非天然アミノ酸残基は、チオール置換βアミノ酸残基、チオール置換γアミノ酸残基、チオール置換δアミノ酸残基、又はチオール置換εアミノ酸残基。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、カルボニル官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、前記アミノ酸類似体残基又はアミノ酸模倣体残基は、アミノ官能基がメチレン部分により置換されてなる天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から誘導される。ある態様によれば、C
tは、(C
2−C
6)アルカンジイル−、−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−、及び−C(=O)−(C
1−C
6)−アルカンジイル−(O−CH
2CH
2)
z−(ここでzは1〜10,000の整数である)からなる群より選択される。ある態様によれば、C
tは更に、ハロ、アルキル、及びアルコキシから選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。当業者であれば理解するように、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。反応性エン基は独立に、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間のC−C部分は、反応性チオール基と反応性エン基とのチオール−エン反応により形成される部分である。ここで、前記反応性エン基はノルボルン−2−エン−5−イルである。当業者であれば理解するように、C−C部分をY基に付加する手法は数々存在する。これらの方法により、前記エン/イン担持部分と前記エン/イン官能基との間にリンカー基が形成されてもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。一態様によれば、PEGを5−ノルボルネン−2−カルボン酸で修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGに対してエステル結合を介して結合される。別の態様によれば、PEGアミンをNHS−ノルボルネンで修飾することにより、1又は2以上の末端ノルボルネン部分(ノルボルン−2−エン−5−イル)がPEGにアミド結合を介して付加される。ある態様によれば、硫黄原子とYとの間の各C−C部分は、−CH
2−CH
2−CH
2−C(=O)−、−CH
2−CH
2−OC(=O)−、−CH
2−CH
2−S(=O)
2−、−CH
2−CH
2−O−、−(C
2−C
6)−アルカンジイル−、−CH
2−CH
2−C(=O)O−、−CH
2−CH(CH
3)−C(=O)O−、−CH
2−CH
2−C(=O)NH−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−NHC(=O)−,
【化48】
からなる群より独立に選択される部分である。ここで、第一の−(ダッシュ)(−C−C)又は波線は、硫黄原子への結合を表し、第二の−(ダッシュ)(C−C−)は、Y基への結合を表す。これは直接結合でも、リンカー部分を介した結合でもよい。その非限定的な例としては、アミド官能基、エステル官能基、又はそれらの組合せが挙げられる。当然ながら、斯かるC−C部分は、ビニルアセチル、ビニルエステル、ビニルスルホニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、マレイミド、プロペニルエーテル、アリルエーテル、アルケニル、不飽和エステル、ジエニル、N−ビニルカルバモイル及びノルボルン−2−エン−5−イルからなる群より選択される部分を含むエン基に由来する基である。
【0243】
ある態様によれば、式(IV)、(V)又は(VI)のポリマー材料は更に、前記ポリマー材料のポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を含んでいてもよい。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに封入されてなる。これらの態様の一部によれば、前記生物活性成分は、ポリマーマトリックスに共有結合され(例えば導入又は連結され)てなる。この生物活性成分としては、本明細書に記載の任意の適用可能な生物活性成分を用いることができる。その例としては、本明細書に記載の組織、細胞、タンパク質、ペプチド、小分子薬物、核酸、(例えば脂質ナノ粒子に封入された)カプセル化核酸、脂質、炭水和物、又は農業用化合物が挙げられる。
【0244】
当然ながら、式(C)、(D)、(IV)、(V)、及び(VI)に示す繰り返し単位において、炭素原子はCH
2であってもよく、繰り返し基内の1又は2以上の炭素が置換されていてもよく、更には二重結合を組み込んだ環構造を形成していてもよい。更に、当然ながら、生物活性化合物をエン/インで誘導体化するために、生物活性化合物と炭素との間に1又は2以上の連結基が存在してもよい。
【0245】
用途
本明細書に記載のペプチド:ポリマー組成物、又は、本明細書に記載の方法により製造されるペプチド:ポリマー組成物は、ヒト及び動物の治療において数々の用途を有する。一態様(薬物送達)によれば、生物活性化合物はヒドロゲルに封入され、連結され、或いは組み込まれ、当該ヒドロゲルが組織と接触されると、生物活性成分が組織内に放出される。組織内への放出の機序は上述の何れの機序であってもよく、例としてはヒドロゲルからの拡散、ヒドロゲルの分解、又は分解性リンカーを介した放出が挙げられる。別の態様(組織再生)によれば、ヒドロゲルが組織再生の足場として機能する。斯かる態様の一つによれば、細胞又は組織が足場内に封入され、当該足場が組織欠損内に配置される。斯かるヒドロゲルは予め製造してもよく、使用時に予め重合してもよく、或いは欠損部位において原位置(in situ)重合してもよい。別の態様によれば、ヒドロゲルが周辺組織から組織内に遊走する際の足場として機能する。
【0246】
ある態様によれば、患者の状態又は障害を治療する方法であって、それを必要とする対象(例えばヒト又は動物)に対して、本明細書に記載の修飾ポリペプチド(例えば第二の部分とコンジュゲートされたポリペプチド);本明細書に記載の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた[例えば封入又は共有結合された(導入又は連結された)]生物活性成分;本明細書に記載の化合物;又は本明細書に記載のポリマー材料と組み合わされた[例えば封入又は共有結合された(導入又は連結された)]生物活性成分を投与することを含む方法が提供される。
【0247】
ある態様によれば、組織を再生する方法であって、本明細書に記載の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーに封入された細胞、又は組織を、損傷又は欠損を有する組織の部位で放出することを含む方法が提供される。ある態様によれば、前記方法は更に、生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーを含む組成物を、損傷又は欠損を有する組織の部位で産生することを含む。
【0248】
キット
本発明において提供される化合物又は組成物(例えば、式(A)の化合物−(D)又は(I)−(VI)、又は斯かる化合物の一又は二以上の前駆体、及び任意により更なる剤、例えば更なる生物活性成分)を含むキットが提供される。一つの側面によれば、当該キットは更に、創傷等の損傷の処置に使用するための指示書を含む。
【0249】
本明細書の上記記載及び全体において詳細に記載した任意の組成物をキットに使用できる。ここで、上述の全ての化合物及び組成物は各々、キットとの関連でも個別具体的に記載されているものとする。斯かるキットは任意により、創傷等の損傷の治療用途等に関する指示書を含んでいてもよい。斯かるキットは、前記化合物又は組成物を個体の所望の部位(例えば創傷)に送達するために、治療に関連する更なる要素、例えばアプリケーター、例としては針及び/又はシリンジを含んでいてもよい。斯かるキットは更に、重合を開始するように選択された光開始剤を含んでいてもよい。前記キットは更に、重合開始に使用される光開始剤の吸収スペクトルに合致するように選択される波長の光を発する光源を含んでいてもよい。
【0250】
製品
本発明において提供される化合物又は組成物(例えば、式(A)の化合物−(D)又は(I)−(VI)、又は斯かる化合物の一又は二以上の前駆体、及び任意により更なる剤、例えば更なる生物活性成分)を含有する容器を含む製品も提供される。斯かる製品は、瓶、バイアル(例えば封止済又は封止可能なチューブ)、アンプル、単回使用の使い捨てアプリケーター、シリンジ等の何れであってもよい。斯かる容器は、種々の材料、例えばガラス又はプラスチック等から形成することができ、一側面によれば、斯かる容器に貼付され、或いは斯かる容器と同封された、所望の適応の治療(例えば創傷治癒)に用いるための指示を更に含んでなる。
【0251】
一つの側面によれば、前記容器は、本発明にて提供される組成物の単位用量形態を含む医療デバイスである。前記デバイスは、当該組成物を個体の損傷部位(例えば創傷)に適用するためのアプリケーターを含んでいてもよい。或いは、容器(例えば瓶、バイアル又はアンプル)と共に、使用に関する指示書や、組成物を容器から所望の部位(例えば創傷)に分注するための針及び/又はシリンジを、同封又は添付してもよい。一つの側面によれば、本発明において提供される化合物又は組成物、又は本発明において提供される化合物又は組成物の一又は二以上の前駆体(例えば式(A)の化合物−(D)又は(I)−(VI)、又は斯かる化合物の一又は二以上の前駆体)を含む製品を、任意の更なる剤、例えば更なる生物活性成分を取得又は保存するのに適した第二の容器と共に供してもよい。
【0252】
本明細書に記載の任意の組成物を製品に使用することができる。ここで、上述の全ての組成物は各々、製品との関連でも個別具体的に記載されているものとする。
【0253】
列挙される態様
本発明は更に以下の態様として記載される。各態様の特徴は適切且つ実用可能な限りにおいて、各々他の態様の特徴と組み合わせることも可能である。
【0254】
態様1:ポリペプチドを連結するための方法であって、前記ポリペプチドがペプチド骨格と1又は2以上の反応性チオール基とを含むと共に、前記方法が、ラジカル媒介性チオール−エン反応を促進する条件下で、前記ポリペプチドの反応性チオール基を1又は2以上の反応性エン基を含むエン化合物と反応させることを含み、ここで前記ポリペプチドの反応性チオール基の前記ラジカル媒介性チオール−エン反応に関する反応性が、システインチオール基の反応性の少なくとも2倍である方法。
【0255】
態様2:前記方法が、前記ポリペプチドの反応性チオール基を、ラジカル開始剤及び前記エン化合物と反応させることを含む、態様1に記載の方法。
【0256】
態様3:前記ポリペプチドの反応性チオール基が、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、態様1又は2に記載の方法。
【0257】
態様4:前記ポリペプチドの反応性チオール基が、前記ポリペプチドのホモシステイン残基のチオール基、又は、前記ポリペプチドの2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール基である、態様3に記載の方法。
【0258】
態様5:前記ポリペプチドの反応性チオールが、リシン残基の側鎖アミノ基にリンカーを介して連結されたチオール基である、態様3に記載の方法。
【0259】
態様6:前記ラジカル開始剤が、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンからなる群より選択される光開始剤である、態様2〜5の何れか一つに記載の方法。
【0260】
態様7:チオール−エン反応が、前記光開始剤を、前記光開始剤の励起波長に合致する波長を有する光に暴露することにより開始される、態様6に記載の方法。
【0261】
態様8:前記方法が更に、前記光開始剤の量、前記光の強度、及び/又は、前記光開始剤が前記光に暴露される時間を制御することを含む、態様6又は7に記載の方法。
【0262】
態様9:前記チオール−エン反応が約70%から約95%の間の完了率に到達する、態様8に記載の方法。
【0263】
態様10:前記ポリペプチドが2以上の反応性チオール基を含み、前記反応性チオール基が各々、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、態様1〜9の何れか一つに記載の方法。
【0264】
態様11:前記エン化合物が、2以上の反応性エン基を含む、態様10に記載の方法。
【0265】
態様12:前記ポリペプチドが、n個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、m個の反応性エン基を含み、ここでn及びmが独立に2以上の整数であり、n+m≧5である、態様11に記載の方法。
【0266】
態様13:前記エン化合物が、エン修飾生体適合性モノマーである、態様12に記載の方法。
【0267】
態様14:前記エン化合物が、ノルボルネン修飾ポリエチレングリコール(PEG)である、態様13に記載の方法。
【0268】
態様15:前記ポリペプチドが更に、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列を含む、態様13又は14に記載の方法。
【0269】
態様16:前記チオール−エン反応が、生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーを提供する、態様15に記載の方法。
【0270】
態様17:前記エン化合物が、1個の反応性エン基を含む、態様1〜9の何れか一つに記載の方法。
【0271】
態様18:前記エン化合物が、ポリマー、捕捉部分、標識、炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドを含む、態様17に記載の方法。
【0272】
態様19:前記エン化合物が、生物活性成分を含む、態様17に記載の方法。
【0273】
態様20:前記ポリペプチドが、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている1個の反応性チオール基を含む、態様17〜19の何れか一つに記載の方法。
【0274】
態様21:前記ポリペプチドが、ペプチド又はタンパク質ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターロイキン、受容体、可溶化受容体、治療用タンパク質、酵素、及び構造タンパク質から選択される、態様17〜20の何れか一つに記載の方法。
【0275】
態様22:前記ポリペプチドが、前記ポリペプチドのペプチド骨格から2以上の炭素原子により隔てられている1個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、2以上の反応性エン基を含む、態様1〜9の何れか一つに記載の方法。
【0276】
態様23:前記エン化合物が、2以上の反応性エン基を含む、態様22に記載の方法。
【0277】
態様24:前記方法が更に、第二のチオール化合物を、2以上の反応性エン基を含むエン化合物と反応させることを含むと共に、前記第二のチオール化合物が、2以上の反応性チオール基を含む、態様22に記載の方法。
【0278】
態様25:前記第二のチオール化合物がj個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物がk個の反応性エン基を含み、ここでj及びkは独立に2以上の整数であり、j+k≧5である、態様24に記載の方法。
【0279】
態様26:前記第二のチオール化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む、態様24又は25に記載の方法。
【0280】
態様27:前記第二のチオール化合物が、ペプチド骨格と、分解性ペプチドと、前記ペプチド骨格から各々2以上の炭素原子により隔てられている2以上の反応性チオール基とを含む、態様24又は25に記載の方法。
【0281】
態様28:前記第二のチオール化合物が、プロテアーゼに対して感受性であることが既知のペプチド配列と、前記ペプチド配列の両側に存在する2個のホモシステイン残基とを含む、態様27に記載の方法。
【0282】
態様29:前記第二のチオール化合物が、ポリエチレングリコールと、前記ポリエチレングリコールに付着された2つの末端チオール基とを含む、態様24又は25に記載の方法。
【0283】
態様30:前記エン化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む、態様22〜29の何れか一つに記載の方法。
【0284】
態様31:態様1〜30の何れか一つに記載の方法。1又は2以上の反応性チオール基を含む前記ポリペプチドを製造することを更に含む.
【0285】
態様32:1又は2以上の反応性チオール基を含む前記ポリペプチドの製造が、カルボキシ基に隣接する炭素原子から2以上の炭素原子により隔てられたチオール基を含有する、保護されたチオール含有アミノ酸又はアミノ酸類似体、例えば保護されたホモシステイン又は2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸、を用いたポリペプチド合成を含む、態様31に記載の方法。
【0286】
態様33:1又は2以上の反応性チオール基を含む前記ポリペプチドの製造が、チオール化剤を用いてポリペプチドを修飾することを含む、態様31に記載の方法。
【0287】
態様34:1又は2以上の反応性チオール基を含む前記ポリペプチドの製造が、ポリペプチド中のメチオニン残基を、化学的又は酵素的に、ホモシステイン残基に転換することを含む、態様31に記載の方法。
【0288】
態様35:態様1〜34の何れか一つに記載の方法により製造される連結されたポリペプチド。
【0289】
態様36:生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーを製造するための方法であって、反応性チオール化合物をラジカル開始剤及び反応性エン化合物と反応させることを含み、ここで、前記反応性チオール化合物が、ペプチド骨格と、分解性ペプチドと、前記ペプチド骨格から各々2以上の炭素原子により隔てられている2以上の反応性チオール基とを含み、前記反応性エン化合物が、2以上の反応性エン基を含むエン修飾生体適合性モノマーである、方法。
【0290】
態様37:前記ポリペプチドが、n個の反応性チオール基を含み、前記エン化合物が、m個の反応性エン基を含み、ここでn及びmが独立に2以上の整数であり、n+m≧5である、態様36に記載の方法。
【0291】
態様38:前記反応混合物に生物活性成分を加えることを更に含むと共に、前記生物活性成分が、前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされる、態様36に記載の方法。
【0292】
態様39:前記反応性チオール化合物の反応性チオール基が、前記ポリペプチドのホモシステイン残基のチオール基、前記ポリペプチドの2−アミノ−5−メルカプトペンタン酸残基のチオール、及び、リシン残基の側鎖アミノ基にリンカーを介して連結されたチオール基から独立に選択される、態様36又は38に記載の方法。
【0293】
態様40:前記ラジカル開始剤が、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンからなる群より選択される光開始剤である、態様36〜39の何れか一つに記載の方法。
【0294】
態様41:前記反応性エン化合物が、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー部分を含む、態様36〜40の何れか一つに記載の方法。
【0295】
態様42:前記生物活性成分が、組織、細胞、タンパク質、ペプチド、小分子薬物、核酸、(例えば脂質ナノ粒子に封入された)カプセル化核酸、脂質、炭水和物、又は農業用化合物である、態様38〜41の何れか一つに記載の方法。
【0296】
態様43:前記生物活性成分が、前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックス内に封入されている、態様42に記載の方法。
【0297】
態様44:前記生物活性成分が、前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスに共有結合されている、態様42に記載の方法。
【0298】
態様45:前記生物活性成分が、前記生物活性ポリペプチドの反応性チオール基をエン基と反応させることにより形成されるチオエーテル結合によって、前記ポリマーマトリックスに共有結合されている生物活性ポリペプチドであり、ここで、前記チオエーテル結合のチオ基が、前記生物活性ポリペプチドの骨格から2以上の炭素原子により隔てられている、態様44に記載の方法。
【0299】
態様46:態様35〜45の何れか一つに記載の方法により製造される生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマー。
【0300】
態様47:前記生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーのポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を更に含む、態様46に記載の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマー。
【0301】
態様48:式(A)の化合物:
P−[C
t−S−C−C−Q]
x
(式中、Pはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり、xは1又は1よりも大きい整数であり、Qは生物活性成分、ポリマー、捕捉部分、標識、炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドである)。
【0302】
態様49:前記化合物が、式P−[C
t−SH]
xの化合物を、式CH
2=CH−Qの化合物及びラジカル開始剤と反応させることにより製造される、態様48に記載の化合物。
【0303】
態様50:式(B)の化合物:
[P−C
t−S−C−C]
y−Q
(式中、Pはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり、yは1又は1よりも大きい整数であり、Qは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);a ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される)。
【0304】
態様51:前記化合物が、式P−C
t−SHの化合物を、式[CH
2=CH]
yQの化合物及びラジカル開始剤と反応させることにより製造される、態様50に記載の化合物。
【0305】
態様52:Qが、式(Qa)のポリマー部分である:
【化49】
(式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化50】
は、式(B)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は前記式(Qa)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す、態様50に記載の化合物。
【0306】
態様53:Qが、式(Qb)のポリマー部分である:
【化51】
(式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化52】
は、式(B)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は、式(Qb)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す)態様50に記載の化合物。
【0307】
態様54:式(I)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料:
【化53】
(式中、Xはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される)。
【0308】
態様55:前記ポリマー材料のポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を更に含む、態様54に記載のポリマー材料。
【0309】
態様56:式(II)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料:
【化54】
(式中、Xはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(即ち、Xは、少なくとも2つのチオエーテル部分に対し、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されている)、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化55】
は、式(II)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す)。
【0310】
態様57:式(III)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料:
【化56】
(式中、Xはポリペプチドであり、t≧2であり、C
tは、少なくとも2つの炭素原子を含むリンカーであり(即ち、Xは、少なくとも2つのチオエーテル部分に対し、炭素原子2個又はそれ以上の長さのリンカーを介して連結されている)、Yは、からなる群より選択される ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化57】
は、式(III)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す)。
【0311】
態様58:式(C)の化合物:
P−[C
t−S−C−C−Q]
x
(式中、Pはポリペプチドであり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、t≧1であり、xは1又は1よりも大きい整数であり、Qは生物活性成分(例えば、薬物、毒素、又は殺虫剤)、ポリマー部分(例えばPEG)、捕捉部分(例えばビオチン)、標識(例えば蛍光標識、発色団、又は蛍光団)、糖又は炭水和物、核酸、又は第二のポリペプチドであり、ここでC
tリンカーを含むPの残基の各々は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)。
【0312】
態様59:前記化合物が、式P−[C
t−SH]
xの化合物を、式CH
2=CH−Qの化合物及びラジカル開始剤と反応させることにより製造される、態様58に記載の化合物。
【0313】
態様60:式(D)の化合物:
[P−C
t−S−C−C]
y−Q
(式中、Pはポリペプチドであり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、t≧1であり、ここでC
tリンカーを含むPの残基の各々は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない; yは1又は1よりも大きい整数(例えば2、3、4又はそれ以上)であり、Qは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される)。
【0314】
態様61:前記化合物が、式P−C
t−SHの化合物を、式[CH
2=CH]
yQの化合物及びラジカル開始剤と反応させることにより製造される、態様60に記載の化合物。
【0315】
態様62:Qが、式(Qc)のポリマー部分である:
【化58】
(式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化59】
は、式(D)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は、式(Qc)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す)、態様60に記載の化合物。
【0316】
態様63:Qが、式(Qd)のポリマー部分である:
【化60】
(式中、R
1及びR
2は独立に、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化61】
は、式(D)のP−C
t−S−部分の一つの硫黄原子、又は、式(Qd)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分のうち一方への付着点を表す)、態様60に記載の化合物。
【0317】
態様64:式(IV)の繰り返し単位を含むポリマー材料(例えばチオール−エンヒドロゲル):
【化62】
(式中、Xはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むXの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)と共に、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択される)。
【0318】
態様65:前記ポリマー材料のポリマーマトリックスと組み合わされた生物活性成分を更に含む、態様64に記載のポリマー材料。
【0319】
態様66:式(V)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料:
【化63】
(式中、Xはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むXの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)と共に、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化64】
は、式(V)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す)。
【0320】
態様67:式(VI)の繰り返し単位を含む[例えばチオール−エンヒドロゲルに対する]ポリマー材料:
【化65】
(式中、Xはポリペプチドであり、t≧1であり、C
tは、少なくとも1つの炭素原子を含むリンカーであり、ここでC
tリンカーを含むXの各残基は、天然アミノ酸残基、稀少アミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、アミノ酸類似体残基、又はアミノ酸模倣体残基からなる群より選択されうる(但し、前記C
tリンカーを含む天然アミノ酸残基は、システイン残基ではない)と共に、Yは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);PLAとPGAとのコポリマー(PLGA);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリ(エチレンオキシド);ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー;ポロキサミン;ポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリジオキサノン;ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリウレタン;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシアルキル化セルロース;ポリペプチド;核酸;修飾核酸;ロックド核酸;多糖類;炭水和物;ヘパリン硫酸;コンドロイチン硫酸;ヘパリン、アルギン酸;及びそれらの組合せからなる群より選択され、ここで
【化66】
は、式(VI)のポリマー部分の別のサブ単位のチオエーテル部分に対する付着点を表す)。
【0321】
態様68:ある状態又は障害を、それを必要とする対象において治療する方法であって、態様35の修飾ポリペプチド;態様46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた生物活性成分;態様48の化合物;態様50の化合物;態様54のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様56のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様57のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様58の化合物;態様60の化合物;態様64のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様66のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;又は態様67のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分、を投与することを含む方法。
【0322】
態様69:組織を再生する方法であって、態様46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーに封入された細胞又は組織を、損傷又は欠損を有する組織の部位で放出することを含む方法。
【0323】
態様70:生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーを含む組成物を、損傷又は欠損を有する組織の部位で産生することを更に含む、態様69に記載の方法。
【0324】
態様71:態様35の修飾ポリペプチド;態様46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた生物活性成分;態様48の化合物;態様50の化合物;態様54のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様56のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様57のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様58の化合物;態様60の化合物;態様64のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様66のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;又は、態様67のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分、を含むキット。
【0325】
態様72:態様35の修飾ポリペプチド;態様46の生体適合性の架橋された分解性ヒドロゲルポリマーと組み合わされた生物活性成分;態様48の化合物;態様50の化合物;態様54のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様56のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様57のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様58の化合物;態様60の化合物;態様64のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;態様66のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分;又は、態様67のポリマー材料と組み合わされた生物活性成分、を含む製品。
【実施例】
【0326】
以下の実施例は例示のために供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0327】
実施例1:固相合成における合成オリゴペプチドへのホモシステイン及び2−アミノ−5−スルファニルペンタン酸の組み込み
本技術分野において確立された方法に従って、配列KCGPQGIAGQCK(「MMPA」)及びCALKVLKGC(「C2xPC」)のシステイン含有オリゴペプチドを、Rink-アミド樹脂での固相Fmoc合成手順により合成した(Chan W.C. and White P.D. 2000参照)。
【0328】
これらの配列のシステインの代わりにホモシステイン又は2−アミノ−5−スルファニルペンタン酸残基を部位特異的に組み込むために、システインの一般的な材料(例えばFmoc−L−Cys(Trt)−OH)に代えて、Fmoc保護成分(S)−2−(Fmoc−アミノ)−4−トリチルスルファニル−酪酸(Bachem)又は(S)−Fmoc−2−アミノ−5−(トリチルチオ)−ペンタン酸(ポリペプチド)を用いて合成手順を実施した。合成されたオリゴペプチドは、本分野で周知の標準的な方法によって樹脂から剪断され、脱保護され、精製される。
【0329】
実施例2:非天然チオールの合成オリゴペプチドへの組み込み
手順1:NHS−PEG−チオールによるペプチドの樹脂選択的チオール化
2つのシステインアミノ酸の組み込みのないジチオールペプチド架橋剤を生成するために、自動固相ペプチドシンセサイザーを用い、標準的なFmoc化学に従って、以下のペプチドを0.5mmolのスケールで合成した(Tribute, Protein Technologies): GPQ
(trt)GIWGQ
(trt)GK
(Dde)G−樹脂。最後に脱保護工程を追加し、N−末端Fmocをペプチドから除去し、遊離末端アミンを生成した:NH
2−GPQ
(trt)GIWGQ
(trt)GK
(Dde)G−樹脂。続いて、ペプチド−樹脂を20ml DMF + 2% ヒドラジンと共に室温で10分間インキュベートし(この脱保護工程を3回繰り返し)、K
(Dde)のDde保護基を除去することにより、NH
2−GPQ
(trt)GIWGQ
(trt)GK
(NH2)G−樹脂を生成した。次に、ペプチド−樹脂をDMFで洗浄してヒドラジンを除去してから、秤量した(5.5gのペプチド−樹脂が回収された)。
【0330】
続いて、51.4mgのペプチド−樹脂を別のガラス反応容器に移送し(0.5mmolスケールの合成で5.5gのペプチド−樹脂が得られたことから、51.4mgは約0.005mmolのペプチドに相当する)。1mlの無水DMF(Sigma)、100mgの3.5KDa NHS−PEG−SH(Nanocs)、及び9μlのジイソプロピルエチルアミン(Sigma)を反応容器に加え、室温で>24時間攪拌した。次いで、遊離アミンの存在をニンヒドリン試験で検証した(2μlのビーズを反応系から取り出し、40μlの5%ニンヒドリンのエタノール溶液、40μlのフェノールとエタノールとの混合液(4:1の比)、及び40μlのピリジンと共に、100℃で2分間インキュベートする。この試験では、遊離アミンの存在は紫色の発色により検出される)。この試験では未反応ペプチド−樹脂は顕著な紫色を呈するのに対し、NHS−PEG−SH反応系から取り出したビーズは比較試験にて紫色を呈しなかったことから、遊離アミンが首尾よくNHS−PEG−SHと反応したことが分かった。次に、1mlの切断用カクテル(0.5ml H
2O、0.25g フェノール、0.25g ジチオスレイトール(DTT)、0.125ml トリイソプロピルシラン(TIPS)、5ml トリフルオロ酢酸(TFA))と反応させることにより、ペプチドを樹脂から切断した。この工程によりQ
(trt)のTrt保護基も除去された。得られたペプチドをエーテル沈殿により回収した。
【0331】
手順2:メルカプト−酸によるペプチドの樹脂選択的チオール化
2つのシステインアミノ酸の組み込みを含まないジチオールペプチド架橋剤を生成するために、自動固相ペプチドシンセサイザー(Tribute, Protein Technologies)を用い、標準的なFmoc化学に従って、以下のペプチドを0.5mmolスケールで合成する:GK
(Boc)K
(Dde)Q
(trt)GIWGQ
(trt)GK
(Dde)K
(Boc)G−樹脂。最後に脱保護及びキャッピング工程を加え、N−末端Fmocをペプチドから除去すると共に、遊離末端アミンにキャップを付す。次に、ペプチド−樹脂を20ml DMF + 2% ヒドラジンと共に室温で10分間インキュベートする(この脱保護工程を3回繰り返す)ことにより、K
(Dde)のDde保護基を除去し、GK
(Boc)K
(NH2)Q
(trt)GIWGQ
(trt)GK
(NH2)K
(Boc)G−樹脂を産生する。このペプチド樹脂をDCMで複数回洗浄して残留ヒドラジンを除去し、10mlの無水DCMを含む反応ガラス容器内に移す。
【0332】
第二の反応は、600mgのNHS、800μlのジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、及び440μlの3−メルカプト−プロピオン酸を、無水DCM中で、少量のジメチルアミノピリジン(DMAP)と混合することにより実施する。この反応時に、視認可能な沈殿が形成されれば、NHSが首尾よく活性化されたことが分かる。この反応系を濾過して沈殿を除去し、DCM中のペプチド−樹脂に付加する。混合したペプチド−樹脂と活性化したNHSを室温で30分間混合し、K
(NH2)をK
(N−CCC−SH)に完全に転換する。この転換はニンヒドリン試験によりモニターされる(前記手順にて説明)。
【0333】
その後、切断用カクテル(1.0ml H
2O、0.5g フェノール、0.5g ジチオスレイトール(DTT)、0.25ml トリイソプロピルシラン(TIPS)、10ml トリフルオロ酢酸(TFA))と反応させることにより、ペプチドを樹脂から切断する。この工程によって、K
(Boc)及びQ
(trt)からBoc及びTrt保護基も除去される。得られたペプチドをエーテル沈殿により回収する。
【0334】
前述の手順の代わりに、本分野で公知の数々のチオール化剤を用いて、選択的に脱保護されたアミノ基を非システインチオールに転換することができる。例としては、市販のN−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート(SATP)又はN−アセチルホモシステインチオラクトンが挙げられる。
【0335】
実施例3:非システインチオール基のコラーゲンへの組み込み
20mM 酢酸(Corning)に〜3mg/mL濃度で溶解したラット尾部コラーゲンを、pH8.0のリン酸緩衝剤中6M 尿素溶液に対して、+4℃で一晩透析する。その後、透析された変性コラーゲンに対し、ジメチルスルホキシド中N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート(SATP)の55mM 溶液を1:100(体積:体積)で加え、常温で2時間処理する。リン酸緩衝剤(pH7.4)中6M 尿素溶液に対して+4℃で一晩透析することにより、未反応のSATP及びジメチルスルホキシドを除去する。このタンパク質溶液に対し、0.5M ヒドロキシルアミン及び25mM EDTAを含むリン酸緩衝剤(pH7.4)を、1:10(体積:体積)の比率で加え、常温で2時間処理することにより、変性コラーゲンに連結されたチオール基を脱アセチル化し、20mM 酢酸に対して+4℃で更に透析することにより、脱アシル化工程の尿素、緩衝剤、及び低分子量生成物を除去する。
【0336】
実施例4:ジシステイン架橋剤及びPEG−ジチオール架橋剤を用いたチオール−エンヒドロゲルの光重合の反応速度論
6%(wt/vol)の4アーム型20kDa PEGテトラノルボルネン(Fairbanks)、0.01%(wt/vol)のフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(又はNAP)(Fairbanks 2)、50mM 酢酸ナトリウム緩衝剤(pH5.0)、及び、6mMのジチオール架橋剤 (ノルボルネンはチオールに対して化学量論比)を含む100μlの試料を調製した。ジチオール架橋剤としては、直鎖PEG−ジチオール、3.5kDa(JenKem USA)、又は、合成ジシステイン含有オリゴペプチドであるペプチド「MMPA」(アミノ酸配列KCGPQGIAGQCK)の何れかを含む物を使用した。何れの試料も二連で調製及び分析した。
【0337】
ヒドロゲル光重合のリアルタイム動態は、Discovery HR-3レオメーター(TA Instruments)の平行プレート配置における原位置(in situ)動的レオロジーにより測定した。19mW/cm
2の385nmの光を扁平石英プレートを通じて試料に透過させつつ、0.250mmのギャップ、1%の歪み、及び10rad/sで、常温で動的応力測定を行った。重合後に歪みを解消し、線形応答レジームを検証した。重合は剪断貯蔵弾性率(G’)プラトー値に到達するまで継続した(
図5)。これは光重合反応の完了を示している。
【0338】
データを検証したところ、架橋剤としてPEGジチオールを用いた場合には、僅か10s未満の照射でG’がプラトー値に到達するのに対し、ジシステインペプチドMMPAを用いた場合には、顕著に長い時間(80s超)が必要であることが分かる。
【0339】
実施例5:光誘導性チオール−エン反応の過程における複数のチオール含有化合物についての遊離チオール基の消費率
光開始チオール−エン反応における種々のチオール担持化合物の相対反応性を比較するために、6mM 直鎖PEGジノルボルネン(MW3.8kDa)、0.01%(重量/体積)NAP、50mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)、及びチオール担持化合物をチオール換算で12mMの濃度(ノルボルネンの濃度は化学量論比)を含む溶液200μlを調製し、これを平底96ウェル組織培養プレートに入れて、385nmの光を19mW/cm
2で照射した。試験したチオール担持化合物は、β−メルカプトエタノール、メトキシPEGチオール(MW5kDa、「MME−PEG5K−SH」)、塩酸システイン、及び合成ジシステイン含有オリゴペプチド「C2xPC」(アミノ酸配列CALKVLKGC)を含む。
【0340】
特定の時点において、10μlのアリコートを前記反応混合物から抜き出し、脱イオン水で12倍に希釈し残存する遊離チオールの濃度をエルマンアッセイにより以下の手順で測定した。透明な平底96ウェルプレートで、希釈試料20μlと200μmolの5,5'−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)の50mM リン酸ナトリウム溶液(pH7.4)200μlと混合し、常温で15分間インキュベートした。試料中の遊離チオールから放出された2−ニトロ−5−チオベンゾエート由来の405nmでの光学密度をBioTek ELx800プレートリーダーで決定した。新たに調製した塩酸システインの0.063mMから1.46mMまでの希釈系列を同様に製造し、Microsoft Excelの線形回帰によるフィッティングにより、試料中の遊離チオール濃度と405nmでの光学密度との一次方程式を作成し、これを用いて照射された試料における遊離チオールの濃度を算出した。
【0341】
試験した4つの化合物全てについての光誘導性チオール−エン反応の程における遊離チオールの消費量の動態を
図6に示す。注目すべき点として、動態曲線は2つの異なる群に明確に分かれている。即ち、β−メルカプトエタノール及びMME−PEG5K−SHは僅か10秒の照射で反応が完了まで進んだのに対し、システイン含有化合物(システイン及びC2xPCオリゴペプチド)の反応は何れもより緩やかであり、反応が概ね完了するまでに90秒の照射が必要であった。
【0342】
他の注目すべき点として、この実験で使用された前記チオール−エン反応条件は、上述の実施例4と実質的に同一であり、唯一の違いは、本実施例では反応生成物が直鎖の水溶性分子であったのに対し、実施例4では共有結合により架橋されたネットワークであった点ある。
図5及び
図6の動態曲線を直接比較すれば明らかなように、システイン含有架橋剤とチオール担持PEGとのネットワーク形成速度の違いは、主にこれらの化合物群により提供されるチオール官能基の反応性の違いによるものである。即ち、光誘導性チオール−エン反応においてシステイン系チオールが示す反応性は特に緩やかであることが分かる。
【0343】
実施例6:システイン媒介性チオール−エン反応による鶏卵リゾチームの損傷
1.4 mg/mL 鶏卵リゾチーム、6mM 直鎖PEGジノルボルネン(MW3.8kDa)、0.01%(重量/体積) NAP、50mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)と、及びチオール担持化合物をチオール換算で12mMの濃度(ノルボルネンの濃度は化学量論比)を含む溶液50μlを調製し、開放1.5 mL エッペンドルフチューブに入れて上方から385nmの光を19mW/cm
2で照射した。チオール担持化合物としては、システイン(遅反応)又はメトキシPEGチオール (速反応)を含むものを用いた。照射時間は、遅反応については90秒、速反応については10秒とした。選択された条件下でこれらの照射時間結果を適用した結果、実施例4で使用したのと同様の多アーム型ノルボルネン−及びチオール−担持モノマーを使用した場合、遅反応及び速反応の双方でチオールが完全に消費され(
図6;実施例5)、共有結合により架橋されたネットワークの形成が十分に誘導された。
【0344】
照射試料及び非照射対照をLDSゲル装填緩衝剤(Invitrogen)で〜800倍に希釈し、反応生成物を12% Novex NuPageゲル(Invitrogen)によりSDS−PAGEで分析し、次いで銀染色を行った(SilverQuest染色キット、Invitrogen)。
【0345】
結果を
図7に示す。PEG−チオール架橋ヒドロゲルを完全に光重合させるのに必要な時間に亘ってリゾチームを速反応のチオール−エンプロセスに暴露した結果、未処理対照と比較してタンパク質の移動性に検出可能な変化は現れなかった(「PEG−SH, 未UV」レーンと「PEG−SH, 10”UV」レーンとの対比)。これは、カーゴ(cargo)タンパク質(リゾチーム)が無傷であったことを示唆している。一方、チオール−エンプロセスが遅反応の場合、ネットワーク形成が完了するのに必要な時間に亘って目的タンパク質を反応に暴露することにより、移動の遅いタンパク質形態が相当量生じた(「Cys, 未UV」レーンと「Cys, 90”UV」レーンとの対比)。この結果は、天然状態の鶏卵リゾチームには遊離チオールは利用できないにもかかわらず、カーゴ(cargo)タンパク質が何らかの二次的なプロセスに関与した結果、おそらくは3.8kDaPEGジノルボルネンが付加されたことを示している。
【0346】
この実施例は、チオール−エンの速反応と遅反応との間で、バイオ直交性が大きく異なることを示している。即ち、より反応性の高いチオール部分(例えばメトキシ−PEG−チオール)により媒介されるチオール−エンプロセスは真のバイオ直交性(遊離チオールを欠くバイオマクロ分子に対して非反応性)であるのに対し、より緩やかなシステイン系チオールにより媒介されるプロセスは、少なくともある選択されたバイオマクロ分子(リゾチーム)に対してはバイオ直交性を欠く。
【0347】
実施例7:光誘導性チオール−エン反応の過程におけるシステイン及びホモシステイン含有化合物の遊離チオール基の消費率
光開始チオール−エン反応におけるシステイン系チオールとホモシステイン系チオールとの相対反応性を比較するために、6mM 直鎖PEGジノルボルネン(MW3.8kDa)、0.01%(重量/体積) NAP、50mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)、及びチオール担持化合物をチオール換算で12mMの濃度(ノルボルネンの濃度は化学量論比)で含む溶液200μlを調製し、平底96ウェル組織培養プレートに入れて385nmの光を19mW/cm
2で照射した。試験されたチオール担持化合物としては、遊離アミノ酸であるシステイン及びホモシステインに加えて、合成ジシステイン含有ペプチド「MMPA」及び「C2xPC」(アミノ酸配列KCGPQGIAGQCK及びCALKVLKGC)並びにシステインを含むホモシステインを含むそれらの類似体「hC MMPA」及び「hC2xPhC」を用いた。特定の時点において、反応系から10μlのアリコートを抜き出し、脱イオン水で12倍に希釈し、上記実施例で説明したように、残存する遊離チオールの濃度をエルマンアッセイにより測定した。
【0348】
遊離チオールの消費量の動態について、システインとホモシステインとを比較した結果を
図8のパネルAに示し、オリゴペプチドを含むジシステインとジホモシステインとを比較した結果を
図8のパネルBに示す。遊離システイン並びにジシステイン含有ペプチドMMPA及びC2xPCのチオール消費速度は、実施例5に示した値と実質的に同様であり、約90秒間の照射でほぼ完全にチオールが消費された。遊離ホモシステインは遙かに速く反応し、僅か20秒の照射で完全に消費された(
図8パネルA)。ジホモシステイン含有ペプチドであるhCMMPA及びhC2xPhCの反応は更に速く、僅か15秒の照射でチオールが完全に消費された。
【0349】
実施例8:ジシステイン架橋剤及びジホモシステイン架橋剤を用いたチオール−エンヒドロゲルの光重合の反応速度論
6%(wt/vol)の4アーム型20kDaPEG テトラノルボルネン(Fairbanks)、0.01%(wt/vol)のフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(又はNAP)(Fairbanks 2)、50mM 酢酸ナトリウム緩衝剤 pH5.0、及び6mMのジチオール架橋剤(ノルボルネンはチオールに対して化学量論比)を含む試料100μlを調製した。ジチオール架橋剤としては、合成ジシステイン含有オリゴペプチドであるペプチド「MMPA」(アミノ酸配列KCGPQGIAGQCK)、又は、各システイン残基がホモシステインで置換されてなる他は同一の配列を有するジホモシステイン類似体「hCMMPA」の何れかを用いた。全ての試料の調製及び分析は二連で行った。
【0350】
ヒドロゲル光重合のリアルタイム動態を、Discovery HR-3レオメーター(TA Instruments)の平行プレート配置における原位置(in situ)での動的レオロジーにより測定した。385nmの光を19mW/cm
2で、扁平石英プレートを通じて試料二等化させつつ、0.250mmギャップ、1%の歪み、及び10rad/sで、常温で動的応力測定を行った。重合後に歪みの解消を行い、線形応答レジームを検証した。重合は剪断貯蔵弾性率(G’)がプラトー値に到達するまで継続した(
図9)。これは光重合反応の完了を示している。
【0351】
データを検証したところ、架橋剤としてジホモシステインペプチドであるhCMMPAを用いた場合、20秒以内の照射でG’がプラトー値に到達するのに対し、ジシステインペプチドMMPAを用いた場合は顕著に長い時間(80秒超)が必要となることが分かる。更に、MMPA架橋ネットワークの場合、G’のプラトー値は、hC MMPA架橋ネットワークよりも顕著に低かった。使用したモノマーはほぼ同一の化学組成を有していることを考慮すると、これは予想外の結果である。斯かる相違点は、ジシステイン含有架橋剤の場合、反応があまりに遅いため、光重合の過程でヒドロゲルネットワークが完全に形成される前に全ての開始剤が消費されてしまうのに対し、反応性がより高いジホモシステイン架橋剤の場合には、ヒドロゲルが完全に形成されることを示している。この仮説を県s徴するべく、10倍濃度の開始剤(0.1% NAP)を用いてMMPA架橋剤についての光重合実験を繰り返した。
図9が示すように、斯かる高濃度の開始剤を用いた場合、MMPA媒介性光重合の全体の速度は、0.01% NAPを用いたhC MMPA媒介性プロセスの場合に近い値となった上に、結果として得られたネットワークの弾性特性はほぼ同一であった。しかし、この速度の増加は、モノマー溶液及び生物活性カーゴ(cargo)(例えば封入されたタンパク質)を10倍濃度の開始剤に暴露して得られたものである。惹いては、より高い濃度のフリーラジカルに暴露されることになり、カーゴ(cargo)の安定性に有害作用を及ぼす可能性が高い。
【0352】
実施例9:ホモシステイン媒介性チオール−エン反応に暴露されたリゾチームのSDS−PAGE分析
1.4mg/mL 鶏卵リゾチーム、6mM 直鎖PEGジノルボルネン(MW3.8kDa)、0.01%(重量/体積) NAP、50mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)、及びチオール担持化合物をチオール換算で12mMの濃度(ノルボルネンの濃度は化学量論比)含む溶液50μlを調製し、開放1.5mL エッペンドルフチューブに入れて、上方から385nmの光を19mW/cm
2で照射した。チオール担持化合物としては、システイン(遅反応)又はホモシステイン(速反応)を用いた。照射時間は、システインについては90秒、ホモシステインについては20秒とした。選択された反応条件下でこれらの照射時間を適用した結果、実施例8と同様の多アーム型ノルボルネン−及びチオール−担持モノマーを用いた場合、遅反応及び速反応の何れでもチオールが完全に消費され(
図8;実施例7)、光重合を完了させるのに十分であった。更に、上述の実施例8で議論したように、システイン媒介性光重合の過程において、ネットワークを完全に形成させる条件への暴露によりカーゴ(cargo)タンパク質の損傷の可能性を調べるべく、10倍濃度の開始剤(0.1% NAP)を用いて、10秒の照射でシステイン媒介性反応を繰り返した。
【0353】
照射試料及び非照射対照を、LDSゲル装填緩衝剤(Invitrogen)により〜800倍に希釈し、反応生成物を12% Novex NuPageゲル(Invitrogen)によりSDS−PAGEで分析し、次いで銀染色を行った(SilverQuest染色キット、Invitrogen)。
【0354】
結果を
図10に示す。完了まで誘導したホモシステイン媒介性反応にリゾチームを暴露した結果、システイン媒介性反応への暴露による障害作用から、完全に保護することが可能であった(
図10、「Cys, 90”UV」レーンと「hCys, 20“UV」レーンとの対比)。これと同時に、ホモシステイン系架橋剤の場合には完全にネットワークが形成されたと推測されるのに対し(実施例8)、システイン系の場合には当てはまらなかった。後者の場合、ネットワーク形成を完了させるには、開始剤濃度を10倍にする必要があった(
図9、実施例8)。これにより、非常に短い反応時間であったにもかかわらず、カーゴ(cargo)タンパク質の殆どが二次的なプロセスに消費されてしまった(「Cys, 10”UV」レーン)。
【0355】
実施例10:光誘導性チオール−エン反応の過程における遊離チオール基の消費速度に対する酸素の影響
光開始チオール−エン反応においてチオールの反応性に溶存酸素が与える影響を調べるため、濃度6mMの直鎖PEG−ジノルボルネン(MW3.5kDa)、0.01%(重量/体積)のNAP、及び濃度6mMのPEG−ジチオール(MW3.5kDa)を含む(即ちチオール基及びノルボルネン基が化学量論比で存在する)溶液4mLを調製した。この溶液を2mLのアリコート2つに分割し、その一方の溶液にアルゴンの低圧流を20分間バブリングして酸素を除去した(脱気)。第二の2mLのアリコートは脱気せずに用いた。各溶液の40μLのアリコートを円錐底96ウェルポリプロピレンプレートに入れ、385nmの光を19mW/cm
2で表示の時間照射した。その後、照射試料から10μLのアリコートを抜き出し、脱イオン水で11倍に希釈し、残存する遊離チオール基の濃度を、実施例5で説明したようにエルマンアッセイで測定した。全てのデータ点は二連で収集し、標準的な統計技術に従って平均値及び標準偏差を計算した。
【0356】
未処理(「そのまま」、“as is”)系及び脱気反応系の遊離チオールの消費量の動態を
図11で比較した。未処理(「as is」)反応系は、活性化に〜3〜4秒の顕著な知見期間を示したが、その後は僅か4秒で急速に完了した。反応物溶液を脱気した系では、活性化の遅延は全く消失し、反応も遙かに速く進行し、最初の4秒間の照射で反応がほぼ完了した。
【0357】
実施例11:骨格の修飾の影響
前記の実施例では、側鎖長を延長する(例えば、システインに炭素を付加してホモシステインとする)ことで、ラジカルチオール−エン化学に関するチオール基の活性を増強できることを示した(
図8A及び8B参照)。光開始チオール−エン反応においてシステイン骨格(即ち側鎖よりもα−アミノ酸部分)の修飾がチオールの反応性に与える影響を調べるために、濃度6mMの直鎖PEG−ジノルボルネン(MW3.5kDa)、0.01%(重量/体積)のNAP、及び、4つの異なるチオールの何れかを濃度12mMで含む(即ち、チオール基及びノルボルネン基は化学量論比で存在する)溶液4mLを調製した。試験対象のチオールとしては、システイン、ホモシステイン、3−メルカプトプロピオン酸、及びシステアミンを用いた(
図12A参照)。各溶液の40μLのアリコートを円錐底96ウェルポリプロピレンプレートに入れ、385nmの光を19mW/cm
2で、表示された時間に亘って照射した。その後、照射試料から10μlのアリコートを抜き出し、脱イオン水で11倍に希釈し、上記の実施例5で説明したように、残存する遊離チオールの濃度をエルマンアッセイにより測定した。全てのデータ点は二連で収集し、標準的な統計技術によって平均値及び標準偏差を求めた。
【0358】
各化合物の遊離チオールの消費量の動態を
図12Bで比較する。この結果から明らかなように、骨格修飾(この場合ではカルボキシル基又はアミンの除去)により、ホモシステインで見られるのと同様の速度の増加が見られる。
【0359】
参考文献
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Yan J-J, Sun J-T, You Y-Z, Wu D-C, Hong C-Y. Growing Hyperbranched Polymers Using Natural Sunlight. Scientific Reports 2013;3:2841.
Espeel P., Goethals F. & Du Prez F. E. One-pot multistep reactions based on thiolactones: extending the realm of thiol-ene chemistry in polymer synthesis. J. Am. Chem. Soc. 133, 1678-1681 (2011).
McCall JD, Anseth KS. Thiol-Ene Photopolymerizations Provide a Facile Method To Encapsulate Proteins and Maintain Their Bioactivity. Biomacromolecules 2012;13(8):2410-2417.
Mariner PD, Wudel JM, Miller DE, Genova EE, Streubel S-O, Anseth KS. Synthetic hydrogel scaffold is an effective vehicle for delivery of INFUSE (rhBMP2) to critical-sized calvaria bone defects in rats. Journal of orthopaedic research: official publication of the Orthopaedic Research Society2013;31(3):401-406.
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【0360】
本明細書を通じた引用文献、例えば公報、特許、特許出願、及び公開特許出願等は、その全体が援用により本明細書に組み込まれる。
【0361】
以上、理解の明確化の目的で、本発明を例示及び実施例を通じて幾分詳細に説明したが、細かな変更や改変を施して実施できることは当業者には明らかであろう。従って、発明の詳細な説明及び実施例が本発明の範囲を限定するものと介してはならない。