(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-508654(P2018-508654A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(54)【発明の名称】パーツの処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20180302BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20180302BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20180302BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20180302BHJP
C23F 4/04 20060101ALI20180302BHJP
【FI】
C23C28/00 E
C23C14/04 Z
C09D175/04
C09D7/12
C23F4/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-537265(P2017-537265)
(86)(22)【出願日】2016年1月13日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月8日
(86)【国際出願番号】ES2016070010
(87)【国際公開番号】WO2016113451
(87)【国際公開日】20160721
(31)【優先権主張番号】15382003.0
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517009486
【氏名又は名称】ザニニ オート グループ,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー プヤダス,アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】サナウーハ クロット,ホセ
【テーマコード(参考)】
4J038
4K029
4K044
4K057
【Fターム(参考)】
4J038DG001
4J038KA08
4J038NA01
4J038PC02
4J038PC08
4K029AA11
4K029BA03
4K029BA07
4K029BA11
4K029BA17
4K029BB03
4K029BD06
4K029FA07
4K029HA05
4K044AA16
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BB03
4K044BB04
4K044BB10
4K044BB16
4K044BC09
4K044CA13
4K044CA18
4K044CA64
4K057DA20
4K057DB03
4K057DB08
4K057DD06
4K057DK03
4K057DK10
4K057DN10
(57)【要約】
パーツの処理方法であって、当該方法は、パーツに電解クロムメッキ層を適用するステップと、前記パーツの外面全体にコーティングを適用するステップと、前記パーツが少なくとも1つのコーティングされた部分と少なくとも1つのコーティングされていない部分とを有するようにするために前記コーティングを選択的に剥離するステップと、前記層のコーティングされていない部分の少なくとも一部で選択的にエッチングを行うステップと、前記パーツの外面全体を金属化するステップと、前記コーティングを除去するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーツの処理方法であって、
パーツに電解クロムメッキ層を適用するステップと、
前記パーツの外面全体にコーティングを適用するステップと、
前記パーツが少なくとも1つのコーティングされた部分と少なくとも1つのコーティングされていない部分とを有するようにするために前記コーティングを選択的に剥離するステップと、
前記層のコーティングされていない部分の少なくとも一部で選択的にエッチングを行うステップと、
前記パーツの外面全体を金属化するステップと、
前記コーティングの残りを除去するステップと、
を含むパーツの処理方法。
【請求項2】
前記層は銅からなる第1のサブ層、ニッケルからなる第2のサブ層及びクロムからなる第3のサブ層を含む、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【請求項3】
前記コーティングは塗料である、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【請求項4】
前記塗料は非反応性ポリウレタン、固体の暗色顔料及び希釈剤を含む、請求項3に記載のパーツの処理方法。
【請求項5】
前記選択的に剥離するステップはレーザーを用いて行われる、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【請求項6】
前記金属化するステップは物理的気相成長法を用いて行われる、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【請求項7】
前記金属化するステップは複数の金属を組み合わせることにより行われる、請求項1又は6に記載のパーツの処理方法。
【請求項8】
前記コーティングを除去するステップはイソプロピルアルコールを使用する超音波浴を用いて行われる、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【請求項9】
前記選択的にエッチングするステップの後且つ前記金属化するステップの前に前記パーツを洗浄するステップを含む、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【請求項10】
前記パーツはプラスチック材料製である、請求項1に記載のパーツの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの同じパーツ(part)において光沢、サテン(satin)、テクスチャ及び異なる色等の異なる仕上げを組み合わせることを可能にするパーツの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電解浴によるクロムコーティングが腐食から守る装飾層として用いられている。一般に、これらのコーティングは電解浴を用いて行われる。
【0003】
これら従来の電解浴においては、プラスチックは導電体でないため、プラスチックにコーティングを施すためにはそれらに複雑な前処理工程を施す必要がある。
【0004】
現在、有害物質の使用を少なくすることが可能な物理的気相成長法(PVD)を用いたクロムメッキのための新しい方法が開発されている。PVD法は、蒸着する固体物質から直接始まり、その後に係る物質を加熱するか又はエネルギーイオンを衝突させることで蒸気に変換させる。生成された蒸気は基材の表面で凝結し薄層を形成する。このプロセスは、金属の蒸気と空気とが相互作用するのを防止するために真空又は制御された大気中で行われる。この方法を用いたコーティングプロセスが特許文献1に記載されている。
【0005】
プラスチックの表面又は金属の表面のいずれかにクロムメッキを形成するために、先ず銅が製品の表面に蒸着される。この層の厚さは約20〜25ミクロンである。その後、約15ミクロンのニッケルの蒸着が行われ、最後にクロムが通常0.5ミクロンの厚さで適用される。マットな外観にすることを望む場合、クロムを適用する前にニッケルの最終層に色合いが付けられる(tinted)。しかしながら、パーツがマットな領域と光沢のある領域とを有すべき場合、係るパーツの大半の領域とは外観が異なる1つ以上の領域を独立して挿入しなければならず、さらなる複雑さが生じる。現在、マットな領域は光沢のあるクロムメッキ面に有機層を部分的に適用することで得ることが出来る。このやり方には、異なる仕上げの境界における定義の問題と、接着性、引っかき傷に対する抵抗性といった自動車用途で必要な屋外での要望に関する耐性の問題とがある。
【0006】
これらの不便を解消するために、本願の出願人は特許文献2に記載の方法をデザインした。
【0007】
特許文献2に記載の方法により、1つのパーツにおいて光沢及びマット等の特定の仕上げを組み合わせることができるが、他の種類の仕上げを得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】スペイン特許出願第2239907号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/023798号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、前述した方法よりも多くの仕上げを得ること及び組み合わせることが可能なパーツの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパーツの処理方法は前述した欠点を解消するとともに、以下で説明する他の利点を有する。
【0011】
本発明に係るパーツの処理方法は、当該方法が、
パーツに電解クロムメッキ層を適用するステップと、
前記パーツの外面全体にコーティングを適用するステップと、
前記パーツが少なくとも1つのコーティング部分と少なくとも1つのコーティングされていない部分とを有するようにするために前記コーティングを選択的に剥離するステップと、
前記層のコーティングされていない部分の少なくとも一部で選択的にエッチングを行うステップと、
前記パーツの面全体の金属化を別の色で行うステップと、
前記コーティングの残りを除去するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0012】
好ましい実施形態によれば、前記コーティングは非反応性(non-reactive)ポリウレタン、暗色の固体顔料及び希釈剤を含むことができる塗料である。
【0013】
前記選択的に剥離するステップ及び前記選択的にエッチングするステップはレーザーを用いて行われることが有利である。
【0014】
さらに、前記金属化するステップは物理的気相成長法を用いて行われることが好ましい。
【0015】
前記金属化するステップは、例えば防食性を改善するために、必要に応じて複数の金属を組み合わせることにより行うことができる。
【0016】
例えば、前記コーティングを除去するステップは、洗浄媒体としてイソプロピルアルコールを使用する超音波浴により行うことができる。
【0017】
さらに、本発明に係るパーツの処理方法は、前記選択的にエッチングするステップの後且つ前記金属化するステップの前に前記パーツを洗浄するステップを含むことができる。
【0018】
本発明に係る方法により、パーツは光沢、サテン、テクスチャ及びいくつかの色等の差異のある仕上げを有する最終的な外観を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先の説明のより容易な理解を支援するために、本発明に係る方法の非限定例を用いた実施形態の説明を添える。
【0020】
本方法は、パーツ、好ましくはプラスチック製のパーツに第1の層である従来の電解クロムメッキの適用から始まる。この適用はとりわけパーツの外面全体に対して行われる。
【0021】
好ましい実施形態によれば、この金属層は銅からなる第1のサブ層、ニッケルからなる第2のサブ層及びクロムからなる第3のサブ層を含むことができる。
【0022】
その後、コーティング、例えば黒色の塗料がパーツの外面全体に適用される。このコーティングはマスクとして用いられる。
【0023】
好ましい実施形態によれば、前記塗料は下記の組成を有するが、他の好適な組成を有することもできる。
・バイエル(登録商標)社の非反応性ポリウレタンであるDesmolac(登録商標)4340X/iB:50重量%
・グルポ(Grupo)ADI(登録商標)のカーボンブラックに基づく黒色顔料ベースであるアジソルベントネグロ1(P.ブラック7):10重量%
・キシレン、酢酸ブチル及びnブタノールに基づく溶剤の製剤(formulation of solvents)である希釈剤A−2005:40重量%
【0024】
本製剤は、基材への付着とその後の剥離性能(材料にとっての非浸食性(non-aggressive conditions)条件で)との良好なバランスを得るために選択された。しかしながら、このバランスが得られる限りにおいて上記の製剤を変更してもよい。
【0025】
その後、コーティングの選択的な剥離が行われて、パーツの特定の選択された領域においてクロムメッキが露出される。コーティングはレーザーを用いて、例えば1064nmのNd−YAGレーザーを用いて除去することができる。
【0026】
この剥離ステップの終わりに、部分的にペイントされた部分(塗料がコーティングとして用いられている場合)と部分的にクロム化された部分とが得られる。
【0027】
その後、コーティングを欠いたままの領域の少なくとも一部に選択的なエッチングが行われる。
【0028】
この選択的なエッチングはレーザーを用いてテクスチャ化してもよく、前述した金属層を除去することにより、例えばクロム及びニッケルのサブ層を除去することによりテクスチャを生成する。
【0029】
所望により、上記の後で、選択的なエッチングの浸食性及びパーツの汚れの程度に応じてパーツの一般的な洗浄を行うことができる。
【0030】
その後、例えば物理的気相成長法(PVD)を用いてパーツの金属化が行われ、金属色を得た異なる仕上げを行うことを可能にする。この金属化はパーツの外面全体にわたって行われる。
【0031】
金属化は、Cr、Zr、Mo、Al、Ti等の異なる金属で行うことができ、これらの層の蒸着金属化プロセスと真空室内の気体との組み合わせにより、1つ以上の金属のナノメートル規模の金属層と共に発現できる色を得るために反応を起こさせることができる。
【0032】
最後に、マスクとして用いられたコーティング又は塗料の残りが除去される。
【0033】
この除去は、イソプロピルアルコールを使用する超音波浴を用いて行うことができるが、他の類似の方法及び/又は他の好適な溶剤若しくは洗浄液で行うこともできる。
【0034】
コーティングを除去した後、光沢、サテン、マット、テクスチャ及び複数色等の異なる仕上げを有するパーツが得られる。
【0035】
本発明の特定の実施形態を参照してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される保護範囲から逸脱することなく、説明した方法に数々の変更及び改良を加えることができるとともに、前述した詳細の全てが他の技術的に同等なもので置き換えられ得ることが分かる。
【国際調査報告】