(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-508719(P2018-508719A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(54)【発明の名称】非対称的なコーティングを備える分離可能なねじ式接続部
(51)【国際特許分類】
F16L 15/00 20060101AFI20180302BHJP
F16L 58/10 20060101ALI20180302BHJP
C10M 149/20 20060101ALI20180302BHJP
C10M 145/22 20060101ALI20180302BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20180302BHJP
C10M 107/06 20060101ALI20180302BHJP
C10M 107/44 20060101ALI20180302BHJP
C10M 107/38 20060101ALI20180302BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20180302BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20180302BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20180302BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20180302BHJP
B32B 18/00 20060101ALI20180302BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20180302BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20180302BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20180302BHJP
C10N 80/00 20060101ALN20180302BHJP
【FI】
F16L15/00
F16L58/10
C10M149/20
C10M145/22
C10M107/02
C10M107/06
C10M107/44
C10M107/38
C09D5/08
C09D7/12
C09D161/28
C09D167/00
B32B18/00 C
C09D1/00
C10N30:12
C10N40:00 G
C10N80:00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-537304(P2017-537304)
(86)(22)【出願日】2015年12月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】AT2015000165
(87)【国際公開番号】WO2016112415
(87)【国際公開日】20160721
(31)【優先権主張番号】A16/2015
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】AT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511123418
【氏名又は名称】フェストアルピーネ チューブラーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】voestalpine Tubulars GmbH & Co KG
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャッファー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ライトナー、ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】シャルクハマー、トマス
【テーマコード(参考)】
3H013
3H024
4F100
4H104
4J038
【Fターム(参考)】
3H013GA01
3H013GA06
3H013GA08
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3H024EB01
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3H024ED07
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4J038NA03
4J038PA18
4J038PA19
4J038PB14
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、内ねじ(7)および外ねじ(6)を備えるねじ接続に関し、両方のねじ山が、第1の層としてリン酸塩層(8、9)を備え、内ねじが、第2の層として、摩擦低減効果を有するセラミック材料(11)を含み、外ねじが、第2の層として、有機ポリマーのバインダーを含む塗料層(10)を備え、塗料層(10)に固体潤滑剤粒子が分布している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めねじを有する管状部材と、おねじを有する管状部材と、を備える、ねじ継手であって、前記おねじおよび前記めねじが、互いに協働する第1の接触面を有し、前記管状部材が、好ましくは、前記めねじおよび/または前記おねじに隣接する第2の接触面を有し、前記第1の接触面、および該当する場合には前記第2の接触面がそれぞれ、少なくとも第1の層と第2の層とを有するコーティングを有し、前記第1の層が、いずれの場合でも転換層として形成され、
互いに協働する、前記第1の接触面、および該当する場合には第2の接触面のうちの一方が、第2の層として摩擦低減効果を備えたセラミック材料製の層(11)を有し、前記互いに協働する2つの接触面のうちの他方が、第2の層として、有機ポリマー製の結合剤を含むワニス層(10)を有し、前記ワニス層(10)の全体に亘って固体潤滑剤粒子が分布していることを特徴とする、ねじ継手。
【請求項2】
前記セラミック材料製の第2の層(11)が、前記めねじ(7)を備えた前記管状部材(2)上に形成され、前記ワニス層(10)からなる第2の層が、前記おねじ(6)を備えた前記管状部材(1)上に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のねじ継手。
【請求項3】
前記セラミック層(11)の前記層厚が、1μm未満、好ましくは、200nm未満、特に好ましくは、10〜100nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のねじ継手。
【請求項4】
前記セラミック層(11)が、メラミン樹脂などの樹脂、または疎水化剤を含み、特に、耐腐食性を増すために、それにより防水処理されることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載のねじ継手。
【請求項5】
前記セラミック層(11)が、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、クロム、ケイ素、バナジウム、タングステン、酸化ゲルマニウム、および/またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項6】
前記セラミック層(11)が、湿式化学の自己析出沈殿物、またはコーティングによって適用される有機成分を含むセラミックプレポリマーからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項7】
前記第1の層(8、9)が、リン酸塩層として形成され、それが、好ましくは、必要であれば、ニッケル塩の添加を伴った、リン酸マンガン、リン酸鉄、および/またはリン酸亜鉛から、特に好ましくは、リン酸マンガンおよびリン酸亜鉛から、さらに特に好ましくは、リン酸マンガンからなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項8】
前記第2の接触面が、封止座部を形成するように互いに協働する封止面(12、13)を備え、また互いに協働する肩面(14、15)をさらに備え、前記封止面(12、13)が、好ましくは、円錐形であり、また好ましくは、それぞれ前記めねじおよびおねじ(7、6)に近接するねじ込み方向において配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項9】
前記ワニス層(10)の前記層厚が、前記第1の接触面の領域において、5〜80μm、好ましくは、10〜40μmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項10】
前記ワニス層(10)の前記層厚が、前記第2の接触面の領域において、10〜500μm、好ましくは、40〜300μmであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項11】
前記ワニス層(10)の前記層厚が、前記第1の接触面の領域において、前記第2の接触面の領域より小さいことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項12】
前記ワニス層(10)の前記層厚が、前記封止面(12、13)の領域において、10〜300μm、好ましくは、40〜150μmであることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項13】
前記ワニス層(10)の前記層厚が、前記肩面(14、15)の領域において、50〜500μm、好ましくは、150〜300μmであることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項14】
前記ワニス層の前記結合剤の前記有機ポリマーが、架橋結合により硬化するポリマーであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項15】
前記ワニス層(10)が、合成樹脂の結合剤を含む焼付けワニスからなるか、または合成樹脂および結合剤としての硬化剤の二成分系を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項16】
前記合成樹脂が、アルキド樹脂、好ましくは、エポキシ樹脂で変性されたアルキド樹脂であることを特徴とする、請求項15に記載のねじ継手。
【請求項17】
前記固体潤滑剤粒子が、ポリマー系であり、特に、合成ワックス、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミド、またはフッ素ポリマー、特に好ましくは、ポリプロピレンワックスからなることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項18】
前記ワニス層(10)における前記固体潤滑剤粒子の割合が、1〜50%w/w、好ましくは、1〜20%w/w、より好ましくは、1〜10%w/w、特に好ましくは、5%w/wであることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項19】
前記互いに協働する第1の接触面の前記コーティングの前記厚さが、120μm未満、好ましくは、70μm未満であることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項20】
前記互いに協働する第2の接触面の前記コーティングの前記厚さが、前記封止面(12、13)の領域において、340μm未満、好ましくは、180μm未満であることを特徴とする、請求項8〜19のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項21】
前記互いに協働する第2の接触面の前記コーティングの前記厚さが、前記肩面(14、15)の領域において、540μm未満、好ましくは、330μm未満であることを特徴とする、請求項8〜20のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項22】
前記セラミック材料製の前記第1の層および第2の層が、好ましくは、リン酸塩転換コーティングによって生成される転換層として共に形成されることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項23】
前記潤滑剤粒子が、非晶質フッ素化炭化水素および/または非高分子、該当する場合には誘導体化された、炭化水素またはシリコーンからなることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載のねじ継手。
【請求項24】
管状部材のねじ式接続部のねじ山の表面処理のための方法であって、前記ねじ式接続部のめねじおよびおねじが互いに協働する前記第1の接触面へのコーティングの適用と、好ましくは、前記めねじおよび/またはおねじに隣接する前記管状部材が互いに協働する第2の接触面へのコーティングの適用と、を含み、前記コーティングが、少なくとも第1の層の適用と、前記第1の層への第2の層の適用と、を含み、転換層が、いずれの場合でも第1の層として前記接触面に適用され、
摩擦低減効果を備えたセラミック材料製の層(11)が、互いに協働する、前記第1の接触面、および該当する場合には第2の接触面のうちの一方に第2の層として適用され、有機ポリマー製の結合剤を含むワニス層(10)であって、その全体に亘って固体潤滑剤粒子が分布している、ワニス層が、前記互いに協働する2つの接触面のうちの他方に第2の層として適用される、方法。
【請求項25】
前記セラミック材料製の層(11)が、第2の層として、前記めねじ(7)の前記接触面に適用され、前記ワニス層(10)が、第2の層として、前記おねじ(6)の前記接触面に適用されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記セラミック層(11)が、1μm未満、好ましくは、200nm未満、特に好ましくは、10〜100nmの層厚で適用されることを特徴とする、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記セラミック層(11)が、溶液の、ナノ粒子、好ましくは、SiO2ナノ粒子の湿式化学沈殿法によって生成されることを特徴とする、請求項24、25、または26に記載の方法。
【請求項28】
前記管状部材(2)が、そのねじ山(7)を、主として垂直なパイプ軸を有する前記溶液の槽に浸漬し、前記槽の高さが、好ましくは、変位体を前記管状部材の内側に配置することによって増加されることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記管状部材(2)が、円周部分を、主として水平なパイプ軸を有する前記溶液の槽に浸漬し、かつ前記パイプ軸を中心として回転されることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ワニス層(10)が、前記第1の接触面の領域において、5〜80μm、好ましくは、10〜40μmの層厚で適用されることを特徴とする、請求項24〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ワニス層(10)が、吹き付けによって適用されることを特徴とする、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めねじを有する管状部材と、おねじを有する管状部材と、を備える、ねじ継手に関し、前記おねじおよび前記めねじが、互いに協働する第1の接触面を有し、管状部材が、好ましくは、前記めねじおよび/または前記おねじに隣接する第2の接触面を有し、前記第1の接触面、および該当する場合には前記第2の接触面がそれぞれ、少なくとも第1の層と第2の層とを有するコーティングを有し、前記第1の層が、いずれの場合でも転換層として形成される。
【0002】
本発明はさらに、管状部材のねじ式接続部のねじ山の表面処理のための方法であって、前記ねじ式接続部のめねじおよびおねじが互いに協働する前記第1の接触面へのコーティングの適用と、好ましくは、前記めねじおよび/またはおねじに隣接する前記管状部材が互いに協働する第2の接触面へのコーティングの適用と、を含み、コーティングが、少なくとも第1の層の適用と、前記第1の層への第2の層の適用と、を含み、転換層が、いずれの場合でも第1の層として前記接触面に適用される、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特に、本発明は、石油および天然ガスの製造産業において使用されるスチールパイプを螺合するために必要とされる、ねじ継手に関する。石油および天然ガスの製造産業において使用されるねじ式接続部が、螺合および有効負荷により非常に高い表面圧力に曝露されることが知られている。これらの接続部の多くは、数回に亘って繰り返し螺合および弛緩されなければならない。石油および天然ガスの製造産業において使用されるパイプ(一般に、OCTGパイプ(Oil Country Tubular Goods)として知られている)は、特に、油層および天然ガス層の開発のための、ケーシングおよびスタンドパイプとして使用される。
【0004】
高い必要条件が、前述のパイプのねじ接続に課せられる。互いに協働するねじ山面の高い接触圧力により、ねじ山がフレッティングする傾向があるため、フレッティングおよび全体的な相互破損を防ぐために、予防措置を講じなければならない。さらに、適切な耐腐食性がなければならない。関連基準でも、ねじ式接続部が数回に亘って(10回まで)、ねじ接続を螺合および弛緩するために適合されるものとすることを指定している。石油ケーシングパイプの分野における他の基準では、接続部が100回繰り返し螺合されることさえも求めている。
【0005】
最も簡単な場合では、あるものは、ねじ山潤滑剤の適用によってねじ山の破損を防ごうと試みる。しかしながら、グリースを塗る必要は、可能な限り避けられるべきであり、特に、数回に亘り、ねじ接続を螺合および弛緩することにより、グリースを再度塗ることが必要となる場合には、これによる成果が考慮されるべきである。
【0006】
さらに、ねじ山面の材料の表面を化学的に転換すること、またはそれらに別の材料を適用することは、転換層を得る既知の方法である。転換層は、通常、水溶性処理溶液と金属基板との化学反応によって製造され、後に続くコーティングの接着用に非常に良好な基底を提供し、未処理の材料表面と比較して、基材の耐腐食性を著しく増加させる。これは、ねじ山面をリン酸塩処理することを含む。さらに、最新技術では、ねじ接続の特性を増加させると言われているあらゆる種類の物質を含むねじ山面の表面コーティングが説明されている。しかしながら、既知のコーティングは、すべての必要条件を十分に満たすためには不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、数回に亘ってパイプ部分を接続する場合であっても、パイプのねじ式接続部(特に、ねじ山ピッチ、金属封止座部、および肩面)にグリースを塗ることが回避され得るという趣旨の、ねじ式接続部を改善することを意図する。フレッティングの受けやすさが、大幅に減少されるものとする。さらに、接続部を螺合および弛緩することからなるサイクル数は、定トルク性能で増加されるものとし、接続部の機密性が保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、上記タイプのねじ式接続部に関する本発明は、互いに協働する、第1の接触面、および該当する場合には第2の接触面のうちの一方が、第2の層として、摩擦低減効果を備えたセラミック材料製の層を有し、互いに協働する2つの接触面のうちの他方が、第2の層として、有機ポリマー製の結合剤を含むワニス層を有し、ワニス層に固体潤滑剤粒子が分布していることに主として本質がある。結果として、前記互いに協働する2つの接触面がそれぞれ、少なくとも2つの層を有し、本発明に従って、「第2の層」と呼ばれる層が、好ましくは、いずれの場合でも最外層であり、そこでは、おねじとめねじとが互いに接する。前記めねじの第2の層は、おねじの第2の層とは異なる材料、つまり、一方の側では摩擦低減効果を備えたセラミック材料、他方の側では有機ポリマー製の結合剤を含むワニスから形成され、前記材料は、前記第2の層が互いに化学的に反応しない、換言すれば、それらが化学化合物を形成しない、そのようなやり方で常に選択される。このように、フレッティングの受けやすさが劇的に低減され得、接続部が数回に亘って弛緩され得る。
【0009】
好ましくは、前記セラミック材料製の第2の層が、めねじを備えた管状部材上に形成され、前記ワニス層からなる第2の層が、おねじを備えた管状部材上に形成されることが規定される。
【0010】
前記セラミック材料製の第2の層は、ワニスなしでねじ山面の腐食防止性能を著しく増加させる。さらに、前記層は、第1の層と共に、特に、それが、1つの好ましい実施形態に従って、リン酸マンガン層として形成される場合に、特に、摩擦低減効果を有する。
【0011】
好ましくは、第1の層は、リン酸塩層として形成され、それは、好ましくは、必要であれば、ニッケル塩の添加を伴った、リン酸マンガン、リン酸鉄、および/またはリン酸亜鉛から、特に好ましくは、リン酸マンガンおよびリン酸亜鉛から、また最も好ましくは、リン酸マンガンからなる。
【0012】
本発明に従って、摩擦低減効果を備えたセラミック材料製の層と、固体潤滑剤粒子を含むワニス層との間の接触面上において、非常に低い運動摩擦が、グリースを塗ることを必要とせずに、達成される。低い運動摩擦が、長い期間に亘って維持され、かつ摩擦特性を本質的に害することなく、数回に亘って接続部を締着および弛緩した後も保証される。
【0013】
好ましくは、ワニス層の層厚および潤滑剤の部分が、材料を摩耗することなく、石油コンベアパイプで、少なくとも10回超、また好ましくは、ワニス層の潤滑効果を損なうことなく、石油ケーシングパイプで100回超も、締着および弛緩され得る、そのようなやり方で選択されることが規定される。
【0014】
コーティングされていない実施形態と比較して、コーティングされたねじ山のねじ山形状を変えずに保つために、適用される層の厚さは、可能な限り薄く保たれなければならない。この点において、1つの好ましい実施形態は、前記互いに協働する第1の接触面のコーティングの厚さが、120μm未満、好ましくは、70μm未満であることを提供する。
【0015】
本発明に従って、セラミック層は、その摩擦低減および腐食防止性能の効果を害することなく、特に薄くなるように形成され得る。特に、前記層は、ナノコーティングとして形成され得、好ましくは、前記セラミック層の層厚が、1μm未満、好ましくは、200nm未満、特に好ましくは、10〜100nmであることが規定される。
【0016】
そのような薄い適用は、前記セラミック層が、湿式化学の自己析出沈殿物、またはコーティングによって適用される有機成分を含むセラミックプレポリマーからなるように、好ましくは得られ得る。
【0017】
好ましくは、前記セラミック層が、メラミン樹脂などの樹脂、または疎水化剤を含み、特に、耐腐食性を増すために、それにより防水処理されることが規定される。
【0018】
前記ナノ層を防水処理するための樹脂または疎水化剤は、一時的な腐食防止性能に役立つだけでなく、長期間、多孔性ナノ層を圧縮し、その展延性も増加させる(結果として、セラミック材料の脆性特性が低減される)。
【0019】
水の浸透を防ぐために、種々の樹脂および既知の疎水化剤が適用され得る。樹脂としては、十分な安定性を備えたすべて樹脂、例えば、良好な技術的性質を備えた、メラミン樹脂または(例えば、PDMSを基材とした)シロキサンが使用され得る。これらは、十分な安定性を得るために、しばしば焼き付けられなければならない。疎水性側群を含むアルコキシシラン、またはそれらのオリゴマーおよびポリマーは、既知の疎水化剤、例えば、F8815またはF8261型のダイナシラン(dynasilanes)である。
【0020】
セラミック層は、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、クロム、ケイ素、および/または酸化ゲルマニウムを含む。特に、セラミック層は、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、クロム、ケイ素、バナジウム、タングステン、酸化ゲルマニウム、および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物からなる。特に好ましくは、セラミック層は、酸化ケイ素、つまり、石英からなる。
【0021】
既に述べられたように、第1の層は、好ましくは、接触面をリン酸塩処理することによって製造される層である。特に、これは、この場合ではリン酸マンガン層であり、おねじ上に形成される第1の層、およびめねじ上に形成される第1の層の両方が、リン酸塩処理によって製造され、特に、それらは、リン酸マンガン層として形成される。前記リン酸マンガン層は、好ましくは、高温槽のプロセスにおいて製造され、代替方法として、ガルバニック沈殿され得る。
【0022】
一方、ワニス層は、腐食防止性能を増加させ、また一方で、それは、そこに分布している固体潤滑剤粒子の担体である。ワニス層の層厚は、ねじ山形状を害さないために、第1の接触面の領域において、5〜80μm、特に好ましくは、10〜40μmである。
【0023】
本発明に従うコーティングは、ねじ山に隣接する管状部材の第2の接触面にも加えて適用され得る。これらは、好ましくは、封止座部を形成するように互いに協働する封止面、および該当する場合には互いに協働する肩面であり、封止面が、好ましくは、円錐形であり、また好ましくは、前記めねじおよび/またはおねじに近接するねじ込み方向において配置される。コーティング、特に、ワニス層の厚さは、ねじ山面、換言すれば、第1の接触面上より、第2の封止面上で厚みが大きくなるように選択され得る。1つの好ましい実施形態に従って、ワニス層の層厚は、第2の接触面の領域において、10〜500μm、好ましくは、40〜300μmの範囲である。特に、ワニス層の層厚が、封止面の領域において、10〜300μm、好ましくは、40〜150μmの範囲であることが規定される場合がある。肩面の領域において、ワニス層の層厚は、50〜500μm、好ましくは、150〜300μmになり得る。
【0024】
合計層厚の形成を考慮すると、次の実施形態が好ましい。互いに協働する第2の接触面のコーティングの厚さは、封止面の領域において、340μm未満、好ましくは、180μm未満になり得る。互いに協働する第2の接触面のコーティングの厚さは、肩面の領域において、540μm未満、好ましくは、330μm未満になり得る。
【0025】
本発明の1つの好ましい実施形態に従って、ワニス層の結合剤の有機ポリマーは、架橋結合により硬化するポリマーである。特に、ワニス層は、合成樹脂の結合剤を含む焼付けワニスからなるか、または合成樹脂および結合剤としての硬化剤の二成分系を含む。合成樹脂は、好ましくは、アルキド樹脂、好ましくは、エポキシ樹脂で変性されたアルキド樹脂である。例えば、それに配合されたワックス(ポリプロピレンワックス)を含むb/w SILVATHERMのワニス2312−3009−90が利用され得る。
【0026】
固体潤滑剤粒子は、好ましくは、ポリマー系で、特に、合成ワックス、好ましくは、ポリオレフィンもしくはポリアミド、またはフッ素ポリマー、最も好ましくは、ポリプロピレンワックスからなる。前記ワニス層における固体潤滑剤粒子の割合は、1〜50%w/w、好ましくは、1〜20%w/w、より好ましくは、1〜10%w/w、最も好ましくは、5%w/wになり得る。そのようなワックス粒子の割合は、滑り摩擦を著しく低減し、長期間安定した摺動性能を増加させる。
【0027】
好ましくは、セラミック材料製の第1の層および第2の層が、好ましくは、リン酸塩転換コーティングによって生成される転換層として共に形成されることが規定される。
【0028】
さらに、好ましくは、前記潤滑剤粒子が、非晶質フッ素化炭化水素および/または非高分子、該当する場合には誘導体化された、炭化水素またはシリコーンからなることが規定される。
【0029】
好ましくは、氷点未満の温度下での適用で、ワニス層が、より少ない程度に架橋結合されることが規定される。
【0030】
本発明の別の態様に従って、上記タイプの方法は、摩擦低減効果を備えたセラミック材料製の層が、第2の層として、互いに協働する接触面のうちの一方に適用され、ワニス層が、その全体に亘って固体潤滑剤粒子が分布し、かつ第2の層として、互いに協働する2つの接触面のうちの他方に適用される、有機ポリマー製の結合剤を含むように、行われる。
【0031】
1つの好ましい方法に従って、セラミック材料製の層が、第2の層として、めねじの接触面に適用され、ワニス層が、第2の層として、おねじの接触面に適用されることが規定される。
【0032】
別の好ましい方法に従って、セラミック層が、1μm未満、好ましくは、200nm未満、特に好ましくは、10〜100nmの層厚で適用されることが規定される。特に、セラミック層は、ナノ粒子、好ましくは、SiO
2ナノ粒子の湿式化学沈殿法によって有利に生成され得る。ここで、溶液は、エチルジグリコール、または反応エタノール、アンモニア、およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ならびに水からなり得る。
【0033】
加えて、管状部材は、そのねじ山を、主として垂直なパイプ軸を有する前記溶液の槽に浸漬し得、前記槽の高さが、好ましくは、変位体を管状部材内に配置することによって増加される。代わりに、前記管状部材が、円周部分を、主として水平なパイプ軸を有する前記溶液の槽に浸漬し、かつ前記パイプ軸を中心として回転されるように進められてもよい。
【0034】
ワニス層は、好ましくは、吹き付けによって適用され得る。ワニスは、吹き付けガンによって有利に適用され、その後、7〜20分間、130〜180℃で硬化される。5μm未満のワニス層は早い段階で浸食され、80μm超のワニス層は螺合中にモーメント異常を示す傾向があることが、試験で示された。有利なワニス層の厚さ、特に、第1の接触面の領域の厚さは、10〜40μmである。
【0035】
めねじを備える管状部材およびおねじを備える管状部材は、例えば、2つのパイプ、または1つのパイプと1つのソケットになり得る。
【0036】
本発明は、図面において概略的に示される一実施形態例を参照しながら以下でより詳細に論述される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】めねじおよびおねじの個々のコーティングを示す。
【
図2】回転の一機能として、ねじ式接続部の螺合の間に測定されるトルクの推移を示す。
【
図3】回転の一機能として、ねじ式接続部の螺脱の間に測定されるトルクの推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、おねじ6を備えるパイプ部分1、およびめねじ7を備えるソケットとしてのパイプ部分2を示す。パイプ部分1は、パイプ軸3を備え、内壁が4で明示される。パイプ部分2の内壁は、5で明示される。おねじ6およびめねじ7は、2つのパイプ部分の間にねじ式接続部を生み出すように、パイプ部分1が、ソケットとして形成されるパイプ部分2に螺合され得るように、互いに協働する接触面を伴って形成される。
【0039】
おねじ6およびめねじ7の各接触面には、第1の層8および9がそれぞれ直接適用され、それは、いずれの場合でもリン酸マンガン層である。リン酸マンガンのコーティング8および9は、5〜20μm、好ましくは、10〜15μmの厚さを有する。
【0040】
ワックス粒子が分布しているワニス層10は、パイプ部分1のリン酸マンガン層8に置かれる。ワニス層10は、好ましくは、商品名SILVATHERM 2312−3009−90のワニスで実現化される。これは、エポキシ樹脂で変性されたアルキド樹脂に基づいた焼付けワニスである。ワックス粒子は、好ましくは、ポリプロピレンワックス製の粒子であり、20μm未満、好ましくは、2〜10μmの粒径が好ましい。ワニスは、金属製の封止座部、肩面、およびおねじ10に適用され、その後、温度室において、7〜20分間、130〜180℃で硬化される。ワニス層は、5〜80μm、好ましくは、10〜40μmの厚さを有する。エポキシ樹脂で変性されたアルキド樹脂に基づいた焼付けワニスは、−40℃までの低温下であっても、トライボロジー特性の著しい劣化を全く示さない。
【0041】
<1μm(1μm未満)の層厚を備えたナノ石英層11が、パイプ部分2のリン酸マンガン層9に配置される。
【0042】
ねじ式接続部の接触面上の、そのような材料の組み合わせによる試験では、試験期間400サイクル超で約0.06の定摩擦があったことが明らかにされた。
【0043】
図2および3は、回転の一機能として、
図4に従うねじ式接続部の螺合(
図2)および螺脱(
図3)中のトルクの推移の測定値を示す。x軸には、回転が示され、y軸には、トルクがnmで示される。螺合および/または螺脱の連続した工程の10回分の測定値がマッピングされ、測定された値が、螺合および/または螺脱の工程の順番に従って、1〜10で番号が付けられている。
【0044】
追加の潤滑剤なしで、一定のトルク推移が、10回の連続した螺合工程でも付与されることを読み取ることができる。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態を示し、2つのパイプ部分1および2が、螺合された状態で示される。おねじ6およびめねじ7は、円錐形であり、互いに協働する第1の接触面を有する。おねじおよびめねじ6、7に続き、パイプ部分1、2はそれぞれ、互いに協働する第2の接触面、つまり、互いに接触して平らに横たわり、互いに協働する封止面12および13、ならびに互いに接触して平らに横たわり、互いに協働する肩面14および15を有する。好ましくは、封止面12、13は、円錐形である。肩面14、15は、2つのパイプ部分1および2が、ねじ継手を、肩面14、15においてだけではなく、封止面12、13においても締着する際に、互いに圧接されるように、軸3に対して主として傾けられる。
【国際調査報告】