特表2018-508924(P2018-508924A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-508924被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-508924(P2018-508924A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(54)【発明の名称】被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20180302BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180302BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20180302BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20180302BHJP
【FI】
   H05B3/20 378
   B32B7/02 105
   H05B3/10 C
   H05B3/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-525108(P2017-525108)
(86)(22)【出願日】2016年3月26日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月8日
(86)【国際出願番号】CN2016077441
(87)【国際公開番号】WO2017133069
(87)【国際公開日】20170810
(31)【優先権主張番号】201610076006.6
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516073819
【氏名又は名称】広東天物新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】黄 偉聡
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
4F100
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA08
3K034AA10
3K034AA16
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3K092VV40
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明に係る被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子は、担体と、担体上に被覆された厚膜コーティング層と、厚膜コーティング層上を覆う被覆層とを含み、前記厚膜コーティング層が加熱材料で、加熱方式が電気加熱で、被覆層、厚膜コーティング層及び担体は熱伝達過程中で以下の関係式を満たした材料から選ばれ、


式中、200≦a≦10、0<b≦1000、0<c≦5×10とし、本発明の厚膜素子の被覆層が高熱伝導能力を持ち、被覆層の発熱製品に適し、熱伝達効率を高め、両面を加熱する必要がない状態下の熱エネルギーの損失が減少し、本発明の厚膜発熱体は被覆層のみに高熱伝導能力がある製品上に応用できるため、市場上の多機能加熱製品の需要を満たすことができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子であって、担体と、担体上に被覆された厚膜コーティング層と、厚膜コーティング層上を覆う被覆層とを含み、前記厚膜コーティング層が加熱材料で、加熱方式が電気加熱で、前記担体、前記厚膜コーティング層及び前記被覆層について、以下の各不等式を満たした材料から選ばれ、


前記λは、前記被覆層がTの時の熱伝達係数を表わし、前記λは、前記厚膜コーティング層がTの時の熱伝達係数を表わし、前記λは、前記担体がTの時の熱伝達係数を表わし、
前記Aは、前記厚膜コーティング層と被覆層或いは担体との接触面積を表わし、
前記dは、前記被覆層の厚さを表わし、前記dは、前記厚膜コーティング層の厚さを表わし、前記dは、前記担体の厚さを表わし、
前記Tは、厚膜発熱体の初期温度を表わし、前記Tは、前記被覆層の表面温度を表わし、前記Tは、前記厚膜コーティング層の加熱温度を表わし、前記Tは、前記担体の表面温度を表わし、
前記厚膜コーティング層の厚さは、d≦50マイクロメートルであり、
且つ、10マイクロメートル≦d≦10ミリメートル、d≧10マイクロメートルとし、
前記T担体の最低融点>25℃であり、
前記被覆層の熱伝達係数λ≧前記担体の熱伝達係数λであることを特徴とする厚膜素子。
【請求項2】
前記担体の熱伝達係数λ≦3W/m.kとし、前記被覆層の熱伝達係数λ≧3W/m.kとし、前記200≦a≦10、10≦b≦1000、10≦c≦5×10とすることを特徴とする請求項1に記載の厚膜素子。
【請求項3】
前記担体と前記厚膜コーティング層の間は、印刷或いは焼結を通じて結合し、前記厚膜コーティング層と前記被覆層が印刷又は焼結或いは真空吸着を通じて結合することを特徴とする請求項1に記載の厚膜素子。
【請求項4】
前記担体と前記被覆層の間に前記厚膜コーティング層がない領域は、印刷又はコーティング或いは吹付塗装及び/または焼結又はバインダーを通じて結合することを特徴とする請求項2に記載の厚膜素子。
【請求項5】
前記担体としては、ポリイミド、有機絶縁材料、無機絶縁材料、セラミック、結晶化ガラス、石英、水晶、石材材料、布地、繊維が挙げられることを特徴とする請求項1に記載の厚膜素子。
【請求項6】
前記厚膜コーティング層としては、銀、プラチナム、パラジウム、酸化パラジウム、金又は希土材料のうちの1種或いは数種が挙げられることを特徴とする請求項1に記載の厚膜素子。
【請求項7】
前記被覆層は、ポリエステル、ポリイミド或いはポリエーテルイミド、セラミック、シリカゲル、アスベスト、雲母板、布地、繊維のうちの1種或いは数種で製造されることを特徴とする請求項1に記載の厚膜素子。
【請求項8】
前記厚膜コーティング層の面積は、前記被覆層又は前記担体の面積より小さいか或いは等しいことを特徴とする請求項1に記載の厚膜素子。
【請求項9】
厚膜発熱体の用途であって、被覆層片面の加熱製品に用いられることを特徴とする厚膜発熱体の用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜分野に関し、特に、被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜技術は、前世紀の60年代早期に生まれ、数十年の発展を経て、厚膜技術が多くの業種で大量に運用されてきたが、厚膜発熱技術の発展は、まだ長くはない。厚膜発熱体とは、基材上において、発熱材料を厚膜として製作し、通電による発熱を行う発熱体をいう。従来の加熱方法は、ヒートパイプによる加熱とPTC加熱とを含み、現在のヒートパイプによる加熱とPTC加熱の方式は、間接加熱であるため、熱効率が比較的低く、且つ外形体積が大きくてかさばって重く、環境保全という視点から見ると、この2種類のヒーターが繰り返して加熱された後、汚れやすくて掃除しにくく、且つPTC加熱エレメント内に鉛等の有害物質が含まれ、酸化もしやすく、出力が減衰し、寿命も短い。
【0003】
特許文献1では、電気加熱エレメント及び該電気加熱エレメントにより加熱する放熱器の組み合わせが開示され、前記加熱エレメントは、基板と、前記基板上に位置する絶縁層と、前記絶縁層上に位置する厚膜導体とを含み、金属基板の第2側が放熱器と接触し、前記放熱器はヒーターに向かう表面上にある金属材料層を包括し、且つ前記基板が放熱器にろう接され、厚膜導体が延伸して通過した加熱エレメントの表面は、原則的に放熱器の表面に等しい。
【0004】
上記技術からから厚膜技術が徐々に発展してきていることが分かるが、上記厚膜発熱体の厚膜導体は、絶縁層を通じて基板と結合したもので、直接基板に被覆されるものではなく、このような加熱エレメントの厚膜が通電して発熱した時、基板に直接熱を伝達することができず、発熱速度に影響を及ぼし、且つ上記技術は、外付け装置を利用して厚膜加熱技術中の厚膜放熱不良という問題を克服したが、異なる製品に対する特定素材の厚膜加熱エレメントの設計については、厚膜加熱温度が高すぎることによる放熱不良の技術的課題は解決していない。本当に厚膜直接加熱性能を実現する厚膜素子の製品が非常に少なく、特に、片面のみを加熱する状態において、如何にして熱伝達しない片面を設けて熱損失を減らすかは、被覆層を設けて片面で熱伝達する厚膜回路の製品内への応用、加熱製品の開発を大幅に広げる。現在発表されている加熱厚膜素子は、該性能をまだ満たすことができず、且つ片面熱伝達の加熱エレメントが非常に少ない、或いは片面熱伝達効果が思わしくなく、片面に高い熱伝導能力を保たせることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許番号第CN2011800393787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明は体積が小さく、動作効率が高く、環境保全性に優れ、安全性能も高いと共に寿命が長いという被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子を提供する。
【0007】
本発明の前記厚膜の概念は、主に薄膜に比べて言うものとし、厚膜とは担体上において印刷・焼結技術を用いて形成した厚さが数マイクロメートルから数十マイクロメートルまでの膜層をいい、この種の膜層を製造する材料が、厚膜材料と呼ばれ、作製したコーティング層が厚膜コーティング層と呼ばれる。厚膜発熱体は、電力密度が大きく、加熱速度が速く、動作温度も高く、昇温速度も速く、機械的強度も高く、体積が小さく、据付が便利で、加熱による温度場が均一で、寿命が長く、省エネ・エコで、安全等の非常に多くの利点を持っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子は、担体と、担体上に被覆された厚膜コーティング層と、厚膜コーティング層上を覆う被覆層とを含み、前記厚膜コーティング層が加熱材料で、加熱方式が電気加熱で、前記担体、厚膜コーティング層及び被覆層について、以下の各関係式を満たした材料から選ばれる。


前記λは、前記被覆層がTの時の熱伝達係数を表わし、前記λは、前記厚膜コーティング層がTの時の熱伝達係数を表わし、前記λは、前記担体がTの時の熱伝達係数を表わし、
前記Aは、前記厚膜コーティング層と被覆層或いは担体との接触面積を表わし、
前記dは、前記被覆層の厚さを表わし、前記dは、前記厚膜コーティング層の厚さを表わし、前記dは、前記担体の厚さを表わし、
前記Tは、厚膜発熱体の初期温度を表わし、前記Tは、前記被覆層の表面温度を表わし、前記Tは、前記厚膜コーティング層の加熱温度を表わし、前記Tは、前記担体の表面温度を表わし、
前記厚膜コーティング層の厚さは、d≦50マイクロメートルであり、
且つ、10マイクロメートル≦d≦10ミリメートル、d≧10マイクロメートルとし、
前記T担体の最低融点>25℃であり、
前記被覆層の熱伝達係数λ≧担体の熱伝達係数λであり、
前記被覆層とは、印刷或いは焼結を通じて厚膜コーティング層上を覆う媒体層をいい、被覆層の面積が厚膜コーティング層より大きい。
【0009】
前記担体とは、厚膜コーティング層を担う媒体層をいい、厚膜コーティング層が印刷又はコーティング或いは吹付塗装若しくは焼結を通じて担体上に被覆され、厚膜素子の被覆基材となる。
【0010】
前記熱伝達係数とは、安定した伝達条件において、厚さ1mの材料の両側表面の温度差が1度(K、℃)で、1秒間以内(1S)に、単位面積1mごとに熱伝達する熱量をいい、単位をワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K)とし、ここでKとしているが、℃を代替として使用できる)。
【0011】
厚膜加熱エレメントの電気加熱部位において、被覆層、厚膜コーティング層及び担体は、密に接着し、厚膜コーティング層の両端が外付け電極に接続し、厚膜コーティング層が通電した後、厚膜コーティング層に対し加熱を行い、電気エネルギーを熱エネルギーに変換することで、厚膜コーティング層が発熱を開始し、厚膜コーティング層の発熱速度は、厚膜コーティング層の熱伝達係数、接触面積、初期温度、加熱温度及び厚さの測定を通じると共に下式で算出できる。


式中、Tが厚膜の加熱温度を表わす。
【0012】
本発明の技術的特徴は、被覆層に高熱伝導能力を持つ厚膜発熱体であり、被覆層、担体、厚膜コーティング層の発熱速度が以下の幾つかの要求を満たすよう求める。
(1)被覆層の熱伝達率及び担体の熱伝達率の限定条件が、次の関係式を満たすものとし、上記不等式を満たす厚膜素子の被覆層の熱伝達能力が担体を上回り、つまり被覆層の昇温速度が速く、担体の昇温速度が遅く、或いは安定な熱平衡状態に達した後、被覆層と担体の温度差が比較的大きくなることで、全体的から見ると、厚膜素子が被覆層加熱の技術的効果を奏する。


式中、200≦a≦10である。
(2)厚膜コーティング層の発熱速度と被覆層の熱伝達率の限定条件は、次の関係式を満たすものとし、厚膜コーティング層の発熱速度が被覆層の熱伝達率より高すぎる場合、厚膜コーティング層が絶え間なく蓄積されている熱量は直ちに外部に放出できないことにより、厚膜コーティング層の温度が絶え間なく高くさせ、温度が被覆層の最低融点を超えた時、被覆層が溶け始め、更には燃焼することで、被覆層或いは担体の構造を破壊して、厚膜加熱エレメントを損傷させる。


式中、0<b≦1000である。
(3)厚膜コーティング層の発熱速度と担体の熱伝達率の限定条件は、次の関係式を満たすものとし、担体の熱伝達係数が比較的小さく、且つ熱伝達率も比較的低いため、厚膜コーティング層の発熱速度が担体の熱伝達率を遥かに上回った場合、担体が直ちに放熱できず、厚膜コーティング層の温度を絶え間なく上昇させ、加熱温度が担体の最低融点を超えた時、担体が溶け始め又は熱変形が起き、更には燃焼することで、担体の構造を破壊して、厚膜加熱エレメントを損傷させる。


式中、0<c≦5×10である。
(4)加熱温度が高すぎることで厚膜加熱エレメントを損傷しないように、厚膜コーティング層の加熱温度を、被覆層或いは担体の最低融点より高くすることができず、T<T被覆層の最低融点、T<T担体の最低融点を満たす必要がある。
上記いくつかの要求を満たすため、被覆層、担体の熱伝達率は、その材料自体の性質及び該厚膜加熱エレメント製品の性能により決定する。
被覆層の熱伝達率の計算式は、下式で表わす。


式中、λは、前記被覆層の熱伝達係数を表わし、単位をW/m.kとし、被覆層を調製する材料の性質により決定し、dは、被覆層の厚さを表わし、調製工程及び厚膜加熱エレメントの要求により決定し、Tは、被覆層の表面温度を表わし、厚膜加熱エレメントの性能により決定する。
担体の熱伝達率の計算式は、下式で表わす。


式中、λは、前記担体の熱伝達係数を表わし、単位をW/m.kとし、担体を調製する材料の性質により決定し、dは、担体の厚さを表わし、調製工程及び厚膜加熱エレメントの要求により決定し、Tは、担体の表面温度を表わし、厚膜加熱エレメントの性能により決定する。
【0013】
好ましくは、前記担体の熱伝達係数λ≦3W/m.kとし、前記被覆層の熱伝達係数λ≧3W/m.kとし、前記200≦a≦10、10≦b≦1000、10≦c≦5×10とする。
【0014】
好ましくは、前記担体と厚膜コーティング層の間は、印刷或いは焼結を通じて結合し、前記厚膜コーティング層と被覆層が印刷又は焼結又は真空吸着を通じて結合する。
【0015】
好ましくは、前記担体と被覆層の間に厚膜コーティング層がない領域は、印刷又はコーティング或いは吹付塗装及び/または焼結又はバインダーを通じて結合する。
【0016】
好ましくは、前記担体としては、ポリイミド、有機絶縁材料、無機絶縁材料、セラミック、結晶化ガラス、石英、水晶、石材材料、布地、繊維が挙げられる。
【0017】
好ましくは、前記厚膜コーティング層としては、銀、プラチナム、パラジウム、酸化パラジウム、金又は希土材料のうちの1種或いは数種が挙げられる。
【0018】
好ましくは、前記被覆層は、ポリエステル、ポリイミド或いはポリエーテルイミド、セラミック、シリカゲル、アスベスト、雲母板、布地、繊維のうちの1種或いは数種で製造されるものとする。
【0019】
好ましくは、前記厚膜コーティング層の面積は、被覆層又は担体の面積より小さいか或いは等しい。
【0020】
本発明に係る厚膜素子の用途は、被覆層の発熱製品に用いられる。
【発明の効果】
【0021】
1、本発明に係る厚膜素子の被覆層が高熱伝導能力を持ち、被覆層の発熱製品に適し、熱伝達効率を高め、両面を加熱する必要がない状態下の熱エネルギーの損失が減少し、担体に厚膜を被覆できるが熱伝達係数が非常に小さい厚膜素子に適し、この時被覆層が高い熱伝導能力を持つことで、片面熱伝達効果を奏することができる。
2、本発明に係る厚膜素子は、3層構造を用いて印刷又は焼結を通じて直接結合し、厚膜コーティング層が通電した後、被覆層に対し直接加熱し、他の媒体を経ることなく、熱エネルギーを被覆層に直接伝導することで、熱伝導効率を高め、且つ本発明の被覆層は、厚膜コーティング層を覆うことで、厚膜コーティング層が通電した後の漏電問題を避け、安全性能を向上する。
3、本発明に係る厚膜素子は、厚膜コーティング層を用いて加熱したもので、コーティングの厚さがミクロンオーダであり、通電した後の発熱速度が均一で、且つ寿命が長い。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子は、担体と、担体上に被覆された厚膜コーティング層と、厚膜コーティング層上を覆う被覆層とを含み、前記厚膜コーティング層が加熱材料で、加熱方式が電気加熱で、前記担体、厚膜コーティング層及び被覆層について、以下の各不等式を満たした材料から選ばれる。


前記厚膜コーティング層の厚さは、d≦50マイクロメートルであり、
且つ、10マイクロメートル≦d≦10ミリメートル、d≧10マイクロメートルとし、
前記T担体の最低融点>25℃でありであり、
前記被覆層の熱伝達係数λ≧担体の熱伝達係数λである。
【0024】
下記実施例において本出願人が調製した20種類の厚膜素子を提供し、この20種類の厚膜素子の被覆層、厚膜コーティング層、担体の調製材料は、上記不等式を満たす材料から選ばれ、具体的調製方法及び関係は次の通りとする。
【実施例】
【0025】
熱伝達係数がλの銀ペースト材料を選んで厚膜コーティング層を調製し、熱伝達係数がλのポリイミド材料を選んで担体を調製し、熱伝達係数がλのポリイミド複合材料を選んで被覆層を調製し、3層材料を焼結によって結合し、調製した厚膜コーティング層の面積はA、厚膜コーティング層の厚さがdとし、被覆層の面積はA、厚さがdとし、担体の面積はA、厚さがdとする。
【0026】
外付け直流電源のスイッチを入れた後、厚膜コーティング層を通電させると,厚膜が徐々に昇温し、厚膜素子の発熱が安定した後、受熱安定後の被覆層と担体の表面温度及び厚膜コーティング層の加熱温度を測定して得られ、次の計算式を通じて被覆層と担体の熱伝達率及び厚膜コーティング層の発熱速度を算出する。

【0027】
下記表1乃至表4は、本出願人が調製した20種類の厚膜素子で、厚膜素子を2分間通電加熱した後、国家標準方法で測定して表内の性能データ(熱伝達係数、表面温度)が得られ、厚度・接触面積・初期温度は加熱前に測定する。
【0028】
被覆層、厚膜コーティング層、担体の熱伝達係数の測定方法としては、
1.電源に接続し、加熱電圧を規定値まで調整し、計器6Vの電源スイッチを入れて、20分間予熱する。
2.スポット検流計のゼロ点校正を行う。
3.室温によりUJ31型の電位差計の基準動作電圧を校正し、電位差計の切替スイッチを標準位置にさせ、電位差計の動作電流を調整する。
標準電池の電圧が温度に伴って変化するため、室温の校正は下式により計算する。


式中、E=1.0186V
4.薄い被試験物の下部に加熱板及び下部熱電対を放置し、薄い被試験物の上部に上部熱電対を放置し、熱電対を必ず被試験物の中心位置に置かなければならず、熱電対の冷接点を冷接点用魔法瓶内に入れる。
5.電位差計の切替スイッチを位置1にさせ、被試験物の上下部の初期温度を測定し、温度差が0.004mv(0.1℃)を下回った時、引き続き実験できることを求める。
6.上部熱電対の初期熱起電力に事前に0.08mvを加え、加熱スイッチをオンにして加熱し始め、同時にタイマーでカウントし、スポット検流計のスポットをゼロ点に戻した時、加熱電源をオフにして上部の過剰温度及び加熱時間を得る。
7.4〜5分間経た後、下部熱電対の熱起電力を測定して、下部の過剰温度及び時間を得る。
8.電位差計の切替スイッチを位置2にさせ、加熱スイッチをオンにして加熱電流を測定する。
9.実験が終了し、電源をオフにして、計器を整理する。
【0029】
温度の測定方法は、熱電対温度計で測定し、
1、温度感知線を発熱部材の発熱コーティング層表面、担体表面、被覆層表面、外気中に接続する。
2、定格電力で発熱体へ通電を行い、各部材の温度をテストする。
3、接続したコンピュータにより製品の各時間帯の各部材の温度であるT、T、T、Tを記録する。
【0030】
厚さの測定方法は、マイクロメータで測定し、積層の平均厚さの方式で測定を行う。
【0031】
融点の測定方法は、具体的に次の通りとする。
測定器:米国TA社製の示差走査熱量計、型番 DSC2920で、該測定器の検定を経て合格(クラスA)すること。検定根拠:JG(教 委){014-1996熱分析装置の検定規程}
1.環境条件の温度範囲:(20〜25)℃、相対湿度:<80%。
2.測定器校正用標準物質:熱分析標準物質(インジウム)、標準429.75K(156.60)。
3.測定過程:測定過程は、「GB/T19466.3-2004/IS0」を参照のこと。
4.3回繰り返し測定することで、測定器の状態が正常であることを確保してから試料テストを行い、試料計量:(1〜2)nag、0.01mgまでの精度で量りとり、アルミ製バット内に入れ、測定条件:1Oc/minで200℃まで昇温し、10回繰り返し測定し、測定モデルがコンピュータと測定器に伴い試料融点を集録し、測定データに対する自動集録及びスペクトログラム分析を通じて測定でき、融解による吸熱ピークの補外開始温度から直接測定モデルを出し、ベッセルの公式で計算して測定結果が得られる。
【0032】
表1は、実施例1〜実施例20における厚膜素子の被覆層を測定した性能データとなる。
【0033】

【表1】
【0034】
表2は、実施例1〜実施例20における厚膜素子の厚膜コーティング層を測定した性能データとなる。
【0035】

【表2】
【0036】
表3は、実施例1〜実施例20における厚膜素子の担体を測定した性能データとなる。
【0037】

【表3】
【0038】
表4は、上記表1/表2/表3内の各性能データによって計算して得られた熱伝導率のデータで、また被覆層、厚膜コーティング層、担体の3層の熱伝達率数値の大きさを比の値によって演算して本発明を満たす材料の限定条件が得られ、つまり次の関係式を満たすものである。


式中、200≦a≦10、0<b≦1000、0<c≦5×10とする。
【0039】

【表4】
【0040】
表4の結果は、実施例1〜実施例20で調製された厚膜素子がいずれも不等式を満たし、且つ上記厚膜素子の担体層、つまり被覆層が発熱機能を持ち、両面の温度差が40度以上あり、被覆層片面の発熱機能を実現し、製品に応用する時、厚膜素子が被覆層片面加熱の状態下にさせて熱損失を減らすことができ、2分間通電した後、被覆層の表面温度が最高で100℃以上にまで上げることができ、本発明の厚膜発熱体の発熱効率が比較的高いことを示した。
【0041】
表5〜表8は、本発明の厚膜素子に比べる比較例1〜比較例10の各性能データで、各データのモニタリング方法は、表1〜表4と一緒で、具体的なデータは、次の通りとなる。
【0042】

【表5】
【0043】

【表6】
【0044】

【表7】
【0045】

【表8】
【0046】
上記表内の比較例1〜比較例10で提供する厚膜素子は、材料選択及び構造が本発明の材料選択要求に適合せず、本発明の不等式関係を満たさず、通電して加熱した後、比較例1〜比較例10の両面の発熱昇温の温度差が大きくなく、被覆層と担体面の発熱温度差が15℃以下となり、このように選択した材料の設置及び調製した厚膜素子は本発明の被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子の要求に適合せず、本発明の製品要求も満たさず、これをもって本発明内の熱伝達率の関係を実証した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
実施例1〜実施20の厚膜素子を冬服上に応用し、被覆層の伝熱する一面を人体に近い方向に設け、厚膜素子の担体が人体に裏向け、厚膜素子へ通電して発熱した後、被覆層のみに発熱する。被覆層に高熱伝導能力がある厚膜素子の有益な効果としては、1)被覆層に熱伝達させるだけで、担体の熱伝導性能に対する要求が高くなく、比較的広い範囲の材料を厚膜の被覆基材として選択でき、2)該厚膜素子の被覆層が非常に薄いことを求め、厚膜素子をより一層コンパクトさせ、軽量し、衣服内に入れてより一層快適になり、3)衣服内に応用すれば、人体に近い一面のみを熱伝達してよく、裏面にも熱伝達する必要がなく、こうすると、裏面に断熱材を充填することを避け、更に熱損失も減らすことができる。比較例の厚膜素子の両側の熱伝達効果の差は大きくなく、被覆層片面熱伝達の衣服に応用した時、熱損失が生じ、且つ裏面にも断熱材を充填する必要があるため、コスト及び衣服の重量が増し、快適感も下がってしまう。
【0048】
上記明細書の開示と教示により、当業者は上記実施形態に対し変更及び修正できる。よって、本発明は、以上に開示及び記述した具体的実施形態に限定されることなく、発明について行う若干の修正及び変更も本発明の特許請求の範囲内に入る。また、本明細書内において若干の特定専門用語を使用したが、これら専門用語は、説明の便宜のためのであって、本発明に対しいかなる制限を構成しない。
【国際調査報告】