特表2018-510110(P2018-510110A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-510110(P2018-510110A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(54)【発明の名称】加熱可能な合せサイド板ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20180316BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20180316BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20180316BHJP
【FI】
   C03C27/12 M
   C03C17/36
   B60J1/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-539442(P2017-539442)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月25日
(86)【国際出願番号】EP2015078303
(87)【国際公開番号】WO2016119950
(87)【国際公開日】20160804
(31)【優先権主張番号】15152463.4
(32)【優先日】2015年1月26日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーツェル クライン
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン クレープス
【テーマコード(参考)】
4G059
4G061
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC13
4G059DA01
4G059DB02
4G059EA00
4G059EB04
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
4G061AA04
4G061AA23
4G061AA30
4G061BA02
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
4G061CD19
(57)【要約】
本発明は、車両の開放可能なサイドウインドウ用の加熱可能な合せサイド板ガラスであって、上縁(O)、下縁(U)、前縁(V)および後縁(H)を有しており、少なくとも、熱可塑性の中間層(3)を介して互いに結合された外板ガラス(1)と内板ガラス(2)、および前記外板ガラス(1)と前記内板ガラス(2)との間に配置された、透明で加熱可能なコーティング(4)を有しており、該コーティング(4)は、第1の電流母線(5)と第2の電流母線(6)とを介して電気的に接触接続されており、かつ前記コーティング(4)は、各前記電流母線(5,6)間を流れる加熱電流の案内用に、少なくとも1つのコーティング除去された絶縁線(8)を有しており、該絶縁線(8)は、前記各電流母線(5,6)間に延在しており、前記第1の電流母線(5)および前記第2の電流母線(6)は、前記前縁(V)または前記後縁(H)に沿って配置されているものに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開放可能なサイドウインドウ用の加熱可能な合せサイド板ガラスであって、上縁(O)、下縁(U)、前縁(V)および後縁(H)を有しており、
少なくとも、熱可塑性の中間層(3)を介して互いに結合された外板ガラス(1)と内板ガラス(2)、および前記外板ガラス(1)と前記内板ガラス(2)との間に配置された、透明で加熱可能なコーティング(4)を有しており、該コーティング(4)は、第1の電流母線(5)と第2の電流母線(6)とを介して電気的に接触接続されており、かつ前記コーティング(4)は、各前記電流母線(5,6)間を流れる加熱電流の案内用に、少なくとも1つのコーティング除去された絶縁線(8)を有しており、該絶縁線(8)は、前記各電流母線(5,6)間に延在しており、
前記第1の電流母線(5)および前記第2の電流母線(6)は、前記前縁(V)または前記後縁(H)に沿って配置されている、合せサイド板ガラス。
【請求項2】
前記第1の電流母線(5)は前記前縁(V)に沿って配置されており、前記第2の電流母線(6)は前記後縁(H)に沿って配置されている、請求項1記載のサイド板ガラス。
【請求項3】
加熱出力が前記後縁(H)から前記前縁(V)に向かって、少なくとも部分的に増大している、請求項2記載のサイド板ガラス。
【請求項4】
隣り合う各前記絶縁線(8)の間隔は、前記後縁(H)から前記前縁(V)にかけて少なくとも部分的に、最大間隔55mm〜110mmから最小間隔10mm〜55mmへ減少している、請求項3記載のサイド板ガラス。
【請求項5】
前記第1の電流母線(5)と前記第2の電流母線(6)とが、同一の縁部(V,H)に沿って配置されている、請求項1記載のサイド板ガラス。
【請求項6】
前記縁部に沿って配置された前記各電流母線(5,6)の、前記縁部に対する最大間隔は3cm未満、好適には2.5cm未満、特に好適には2cm未満である、請求項1から5までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項7】
前記縁部に沿って配置された前記各電流母線(5,6)の、前記縁部に対する最小間隔は3mmより大きく、好適には5mmより大きい、請求項1から6までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項8】
前記加熱可能なコーティング(4)は、前記外板ガラス(1)または前記内板ガラス(2)の、前記中間層(3)に面した側の表面(II,III)に設けられているか、または前記中間層(3)内のポリマ担体フィルムに設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項9】
前記加熱可能なコーティング(4)は、少なくとも銀を含有しかつ10nm〜50nmの厚さを有する少なくとも1つの導電層、好適には2つまたは3つの導電層を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項10】
前記加熱可能なコーティング(4)は、線幅が500μm以下、好適には10μm〜250μm、特に好適には20μm〜150μmの複数の絶縁線(8)を有しており、隣り合う前記絶縁線(8)の間隔は1cm〜10cm、好適には2cm〜6cmである、請求項1から9までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項11】
前記電流母線(5,6)は、好適には銅を含む導電性フィルムのストリップとして形成されているか、または好適には銀粒子を含む、焼き付けられたスクリーン印刷ペーストとして形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項12】
前記電流母線(5,6)の幅は1mm〜20mm、好適には2mm〜10mmである、請求項1から11までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項13】
双方の前記電流母線(5,6)は、それぞれ供給線路(7)と電気的に接続されており、これらの供給線路(7)は、前記下縁(U)に向かって延在しており、各前記供給線路(7)の、前記電流母線(5,6)とは反対の側の端部は、30mm以下、好適には20mm以下、特に好適には20mmの相互間隔を有している、請求項1から12までのいずれか1項記載のサイド板ガラス。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の加熱可能な合せサイド板ガラスの製造方法であって、少なくとも、
(a)前記外板ガラス(1)、前記内板ガラス(2)、および前記中間層(3)を準備し、
(b)前記外板ガラス(1)または前記内板ガラス(2)の前記表面(II,III)、または前記担体フィルム上に前記加熱可能なコーティング(4)を設け、
(c)該加熱可能なコーティング(4)に前記絶縁線(8)を形成し、
(d)前記加熱可能なコーティング(4)を、前記電流母線(5,6)を介して接触接続させ、
(e)前記外板ガラス(1)と前記内板ガラス(2)との間に前記中間層(3)を配置し、
(f)前記外板ガラス(1)を、前記中間層(3)を介して前記内板ガラス(2)と貼り合わせることにより結合する
ことを含む、合せサイド板ガラスの製造方法。
【請求項15】
陸上、航空、または水中交通用の移動手段、特に自動車に用いられる、請求項1から13までのいずれか1項記載のサイド板ガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な合せサイド板ガラス、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
自動車は、典型的には開放可能なサイドウインドウを有している。このようなサイドウインドウには、実質的に垂直方向に摺動され得、これによりサイドウインドウを開閉可能なサイド板ガラスが設けられている。
【0003】
サイド板ガラスは、貼り合わされた合せ安全板ガラスとして形成されていてよく、張り合わされた合せ安全板ガラスは、熱可塑性の中間層、典型的にはPVBフィルムを介して互いに結合された、外板ガラスと内板ガラスとを有している。また、熱線が装備された、加熱可能な合せサイド板ガラスも知られている。熱線は、熱可塑性の中間層に埋め込まれている。熱線を電気的に接触接続させるために、典型的には複数の電流母線(共同線またはバスバーとも呼ぶ)が設けられている。適当な電流母線は、例えば銅フィルムのストリップであり、これらは外部電圧源に接続される。熱線は、各電流母線間に延在しているので、電流は熱線を通って流れることができ、これにより加熱作用が得られる。このようなサイド板ガラスは、例えば独国特許出願公開第10126869号明細書(DE10126869A1)または国際公開第2005055667号(WO2005055667A2)から公知である。
【0004】
熱線の代わりに、透明なコーティングにより加熱されるサイド板ガラスも知られている。この場合、コーティングは、特に銀を基礎とした導電層を有している。コーティングもやはり、2つの電流母線と電気的に接触接続されており、これらの電流母線の間で電流が加熱可能なコーティングを通って流れるようになっている。ただし、サイド板ガラスの複雑な形状に基づき、電流母線を互いに平行に配置して、板ガラスの見通し領域に均質な加熱フィールドが形成されるようにすることも可能である。それでもなお電流母線間の電流路を板ガラスの見通し領域にわたって可能な限り均等に案内するためには、一般に、コーティング除去された複数の線状領域により、コーティングを構造化する。このようなサイド板ガラスは、例えば独国特許出願公開第102004029164号明細書(DE102004029164A1)、国際公開第03105533号(WO03/105533A1)および国際公開第2006010698号(WO2006010698A1)から公知である。
【0005】
上述した従来技術から判るように、これまで一般的なのは、加熱可能な合せサイド板ガラスの電流母線を、車両ボデーにより常に覆い隠されているサイド板ガラスの下縁に沿って配置することである。つまり、加熱可能な板ガラスの電気的な接触接続部は、常に隠されたままであり、下縁とは異なる別の側縁、特に前縁に沿った電流母線が、サイドウインドウの開放状態で観察者に見えるということは、審美的な理由から許容し得ない、という解釈が主流であることは明白である。
【0006】
下縁に沿った電流母線を備える従来の加熱可能なサイド板ガラスは、複数の欠点を有している。互いに逆の極性を有する2つの電流母線の空間的な近さは、短絡を継続して回避するための、手間のかかる絶縁手段を前提としている。さらに、板ガラスの全面を加熱するためには、熱線またはコーティングの構造化された各セグメントを、下縁を起点として蛇行状に板ガラスにわたって案内し、かつ下縁に戻し案内する必要がある。このような蛇行状の延在部は、審美的な理由から望ましくない場合がある。さらに、電流路が局所的に大きく湾曲している場合には、局所的な過熱を伴う箇所(いわゆるホットスポット)が形成される恐れがある。
【0007】
本発明の根底を成す課題は、改良された、加熱可能な合せサイド板ガラスを提供することにある。
【0008】
本発明の前記課題は、本発明に基づき、請求項1記載の加熱可能な合せサイド板ガラスにより解決される。好適な構成は、各従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明による加熱可能な合せサイド板ガラスは、車両の開放可能なサイドウインドウ用を想定されている。サイドウインドウとは、サイド板ガラスが車体ドア内へ実質的に垂直方向に摺動することにより開放され、かつ再び閉じられるものを意味する。
【0010】
加熱可能な合せサイド板ガラスは、上縁、下縁、前縁および後縁を有している。取付け位置において上方に面したサイド板ガラスの側縁を上縁と言う。取付け位置において下方の地面に面した側縁を下縁と言う。走行方向に見て前方を向いた側縁を前縁と言う。走行方向に見て後方を向いた側縁を後縁と言う。
【0011】
加熱可能な合せサイド板ガラスは少なくとも、外板ガラスと内板ガラスとを有しており、外板ガラスと内板ガラスとは、熱可塑性の中間層を介して互いに結合されている。この場合、取付け位置において車内に面した側の板ガラスを内板ガラスと言う。取付け位置において車両の外部環境に面した側の板ガラスを外板ガラスと言う。
【0012】
外板ガラスと内板ガラスとの間には、本発明に基づき透明で加熱可能なコーティングが配置されており、このコーティングは、第1の電流母線と第2の電流母線とを介して電気的に接触接続されている。電流母線は、外部電圧源と接続されるように設けられているので、作動中に加熱電流が、各電流母線間で加熱可能なコーティングを通って流れるようになっている。つまりコーティングは加熱層として働き、例えばサイド板ガラスの霜または水分を除去するために、その電気抵抗に基づいてサイド板ガラスを加熱する。
【0013】
加熱可能なコーティングは、加熱電流の案内用に、少なくとも1つのコーティング除去された絶縁線、通常は複数のコーティング除去された絶縁線を有している。絶縁線とは、本発明の意味では、導電性コーティング内の、非導電性の線状領域を意味する。絶縁線は、好適には導電性コーティングの厚さ全体にわたって、ただし少なくともコーティングの導電層の厚さ全体にわたって延在している。絶縁線は、好適にはレーザにより導電性コーティング内に生ぜしめられ、レーザが誘発する導電性コーティング内の変性に基づき形成される。このような、レーザが誘発する変性は、例えば導電層の剥離または導電層の化学変化である。レーザが誘発する変性により、層の導電性が中断される。ただし絶縁線は、原則として別の方法、例えば機械的な剥離によっても形成され得る。
【0014】
1つまたは複数の絶縁線は、各電流母線間に延在している。このことは、各絶縁線が、第1の電流母線から第2の電流母線まで、中断されずに延びていることを意味する。
【0015】
導電性コーティングは絶縁線により、互いに隔離された複数の異なるセグメントに分けられており、これらのセグメントは以下、加熱ストリップとも呼ばれる。各電流母線間で電流は、各加熱ストリップ内でしか流れないようになっている一方で、隣り合った加熱ストリップは互いに電気的に絶縁されているので、隣り合った加熱ストリップ間に電流が流れることはあり得ない。これらの加熱ストリップは、第1の電流母線と第2の電流母線との間の電流の流れの経路を的確に形成することを可能にし、このことは、一般的なサイド板ガラスの複雑な形状に基づき、均質な電流分布ひいては加熱作用を保証するために必要である。
【0016】
本発明では、サイド板ガラスの前縁または後縁に沿って第1の電流母線および第2の電流母線が配置されている。本発明の意味では、1つの電流母線が側縁に対して小さな間隔を有しており(前記側縁に対する平均的な間隔は、他の全ての側縁に対する間隔よりも小さい)、かつその延在方向が実質的に前記側縁の方向に従っている場合には、1つの電流母線が1つの側縁に沿って配置されていることになる。
【0017】
本発明の根底を成す意外な知見は、板ガラスの開放状態で観察者に見えることなく、サイド板ガラスの前縁と後縁とに沿って電流母線を配置することも可能である、という点にある。縁部に対する電流母線の間隔が極度に大きくない限り、電流母線は、有利には車両ドアの車体部分と、通常車両ウインドウに使用されるシールリップとによって覆い隠される。よって電気的な接触接続部は、板ガラスの如何なる状態でも見えなくなっており、これにより、このサイド板ガラスは車両用板ガラスに対する審美的な要求を満たしている。
【0018】
1つの有利な構成では、全ての絶縁線が、前縁に沿った電流母線と後縁に沿った電流母線との間に延在している。例えば前縁または後縁に沿った電流母線から、例えば電流母線の延長部が配置されている板ガラスの下縁に向かって延びる絶縁線は存在していない。前縁と後縁との間に全ての絶縁線が一貫して延在していることに基づき、加熱作用の特に有利な分散が達成されることになる。
【0019】
1つの有利な構成では、側縁に沿って配置された電流母線の、側縁に対する最大間隔は3cm未満、好適には2.5cm未満、特に好適には2cm未満である。本発明の意味での最大間隔は、サイド板ガラスの側縁と、該側縁とは反対の側の、電流母線の縁部との間で測定される。この間隔が十分に小さいので、電流母線は電気的な接触接続部と共に、車体部分と、典型的な自動車サイドウインドウのシールリップとにより覆われた領域に配置されている。意外にも、前記各間隔において、電流母線は有利には典型的な車両の車体部分の背後に隠されたままになる、ということが判った。したがって、前記各間隔はいわば、具体的な車両タイプに左右されない、普遍的な構造の教示であると理解することができる。
【0020】
しかしまた、電流母線は側縁に極度に密接して位置決めされていてもいけない。なぜならば、さもないと板ガラスの結合が妨げられ、側縁を介して結合部に空気が侵入する恐れがあるからである。1つの有利な構成では、側縁に沿って配置された電流母線の、側縁に対する最小間隔は3mmより大きく、好適には5mmより大きい。これにより良好な結果が得られる。本発明の意味での最小間隔は、サイド板ガラスの側縁と、該側縁に面した側の、電流母線の縁部との間で測定される。
【0021】
1つの好適な構成では、一方の電流母線はサイド板ガラスの前縁に沿って配置されており、かつ他方の電流母線はサイド板ガラスの後縁に沿って配置されている。このようにして、サイド板ガラスの供与された見えない領域が、最適に利用される。さらに、絶縁線を大きな湾曲やループ無しで前縁から後縁まで案内することができ、このことは美的な魅力を有していて、加熱出力の均一な分散を容易にすると共に、局所的な過熱の危険を低下させる。
【0022】
この場合、1つの好適な構成では、絶縁線は大きく湾曲することなく、第1の電流母線から第2の電流母線まで延在していてよい。サイド板ガラスの複雑な形状に基づき、典型的には絶縁線の少なくとも一部は各電流母線間で完全に直線的には延びておらず、これにより、加熱作用が可能な限り板ガラス全体にわたって分散されることになる。こうして、例えば典型的に湾曲された上縁付近の絶縁線は、上縁に適合した軽度の湾曲を有することになる。しかしまた択一的に、絶縁線は蛇行状の延在部を各電流母線間に有していて、その方向をターミナルループ状(「Uターン」)に多重に変化させてもよい。
【0023】
1つの択一的な好適な構成では、2つの電流母線が、サイド板ガラスの同一の側縁、つまり前縁または後縁のいずれかに沿って配置されている。この場合、加熱ストリップは第1の電流母線を起点として板ガラスにわたってループ状に、第2の電流母線に向かって延びている。両電流母線は、加熱可能なコーティング上に配置されている。各電流母線は相互に接触し合わないようにするために、電流母線を沿わせて延在させる側縁に対して、それぞれ異なる間隔を有していてよい、つまり相並んで配置されていてよい。加熱可能なコーティングの、他方の電流母線に対応した領域に対する一方の電流母線の望ましくない接触は、適当な絶縁手段により防止することができる。このような絶縁手段は、例えば電気的に絶縁性のフィルムの被着であり、このフィルムは、好適にはポリイミド(PI)および/またはポリイソブチレン(PIB)を含んでいて、10μm〜200μmの厚さを有している。択一的に各電流母線は、加熱路が適宜に案内されている場合には側縁に対して同一の間隔を有していて、側縁のそれぞれ異なる領域に沿って延在していてよい。つまり例えば絶縁線は、各加熱路が側縁の上部領域、例えば上半分で始まって、側縁の下部領域、例えば下半分で終了するように形成されていてよく、これにより第1の電流母線が側縁の前記上部領域のみに沿って配置されており、かつ第2の電流母線が側縁の前記下部領域のみに沿って配置されていれば済むことになる。この場合、加熱ストリップは環状ループ状に配置されている。択一的に、加熱ストリップが前縁から後縁まで延在しており、各2つの加熱ストリップを結合部材(例えば金属フィルム)により互いに直列に接続するように、加熱ストリップを形成することも可能であり、これにより電流路は、第1の加熱ストリップ内では一方の縁部から他方の縁部まで延び、かつ第2の加熱ストリップ内では再び最初の縁部に戻るように延在することになる。またこのようにして、コーティングを単一の縁部に沿って電気的に接触接続させることもできる。
【0024】
加熱可能なコーティングは、内板ガラスまたは外板ガラスの表面に施されていてよい。コーティングは、有利には外板ガラスまたは内板ガラスの、中間層に面した側の表面に施されている。なぜならば、そこではコーティングが腐食やその他の損傷から保護されているからである。択一的に、加熱可能なコーティングは、中間層内のポリマ担体フィルム上に配置されていてもよい。この担体フィルムは、好適には少なくとも、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレン(PE)、またはこれらの混合物またはコポリマまたは派生物を含んでいる。このことは、担体フィルムの取扱い、安定性および光学特性に関して特に有利である。担体フィルムは、好適には5μm〜500μm、特に好適には10μm〜200μm、極めて特に好適には12μm〜75μmの厚さを有している。これらの厚さを有する担体層は、有利にはフレキシブルであると同時に安定したフィルムの形態で供給され得、良好に取り扱うことができる。
【0025】
加熱可能なコーティングは、本発明に基づき透明である。透明なコーティングとは、本発明の意味では可視スペクトル範囲内で少なくとも50%、好適には少なくとも70%の透過率を有するコーティングを意味する。
【0026】
板ガラスのフレーム状の縁部領域には、好適には、加熱可能なコーティングは施されていない。この縁部領域は、しばしば縁部コーティング除去部(板ガラスに施されたコーティングの場合)または切り下げ部(担体フィルムに施されたコーティングの場合)とも呼ばれる。これにより、加熱可能なコーティングが周辺の雰囲気に接触することはない、ということが保証され、ひいては腐食も防止され、コーティングはいわば中間層内に密封されていることになる。コーティングされていない縁部領域の幅は、典型的には0.5mm〜20mm、特に1mm〜10mmである。板ガラスは、別の非コーティング領域、例えばデータ送信ウインドウまたは通信ウインドウを有していてもよい。
【0027】
導電性コーティングは、少なくとも1つの導電層を有している。このコーティングは付加的に、例えば層抵抗の制御、防食、または反射の減少に役立つ誘電体層を有していてよい。導電層は、好適には銀、または酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性酸化物(透明導電性酸化物、TCO)を含有している。導電層は、好適には10nm〜200nmの厚さを有している。これにより、層の透明性と導電性との間での良好な妥協が達成されることになる。高い透明性と同時に導電性をも改良するために、コーティングは、少なくとも1つの誘電体層により互いに隔離された複数の導電層を有していてよい。導電性コーティングは、例えば2つ、3つ、または4つの導電層を有していてよい。典型的な誘電体層は、酸化物または窒化物、例えば窒化ケイ素、ケイ素酸化物、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、または酸化チタンを含有している。
【0028】
1つの特に好適な構成では、導電性コーティングは、銀、好適には少なくとも99%銀を含有する、少なくとも1つの導電層を有している。導電層の層厚さは、好適には5nm〜50nm、特に好適には10nm〜30nmである。コーティングは、好適には前記導電層を2つまたは3つ有しており、これらの導電層は、少なくとも1つの誘電体層により互いに隔離されている。このようなコーティングは、一方では板ガラスの透明性に関して、かつ他方では板ガラスの導電性に関して特に有利である。
【0029】
絶縁線の幅は、好適には500μm以下、特に好適には10μm〜250μm、極めて特に好適には20μm〜150μmである。このような幅を有する絶縁線は、特にレーザ加工によって容易に形成可能であり、隣り合う各加熱ストリップの電気的な絶縁を保証する上に、視覚的にも目立たない。
【0030】
加熱可能なコーティングは、典型的には複数の絶縁線、つまり少なくとも2つの絶縁線を有している。絶縁線の正確な数および間隔は、個々のケースにおける板ガラスの正確な形状に左右され、当業者による事前の考察およびシミュレーションに基づき決定され得る。隣り合う絶縁線の間隔は、好適には1cm〜10cmであり、好適には2cm〜6cmである。このことも、絶縁線を視覚的に目立たせないようにすることに関して有利である。さらに、前記幅の加熱ストリップにより、効果的な加熱出力が保証される。上述した値は、特に乗用車のサイド板ガラスに適している。ただし、例えばトラックの、より大型のサイド板ガラスについては、例えば5cm〜30cmの大幅に大きな間隔が選択されてもよい。絶縁線の数は、典型的には2〜10、特に3〜7である。本発明の1つの構成では、全ての加熱ストリップが同じ幅を有している。この場合、絶縁線は、有利には板ガラスにわたって均等に、かつ目立たないように配分されている。
【0031】
本発明の1つの有利な構成では、加熱出力(単位面積あたりの電力密度 P)は、後縁から前縁に向かって、少なくとも部分的に増大している。これは特に、隣り合う各絶縁線の間隔が、後縁から前縁にかけて少なくとも部分的に減少していること、つまり加熱ストリップの幅が減少していることによって達成される。これにより、加熱電流が板ガラスの前方領域において、後方領域におけるよりも小さな加熱ストリップ幅に分かれることで、加熱出力が高められるようになっている。板ガラス前方領域における比較的高い加熱出力は、特に前方のサイド板ガラスに関して所望されていることがある。つまり、板ガラス前方領域から、霜または水分を比較的急速に除去することができるようになっており、これにより、サイドミラーに対する視界がより迅速に開かれる。好適には、狭まっている加熱ストリップの最大幅は、55mm〜110mm(好適には60mm〜100mm)であり、最小幅は10mm〜55mm(好適には10mm〜50mm)である。これらの値で以て、サイドミラーに対する視界を迅速に開くための、前方領域における急速な霜取りと、交通安全の意味でやはり重要な、板ガラス全体の霜取りとの間での良好な妥協が達成される。
【0032】
本発明の1つの有利な構成では、板ガラスの平均的な加熱出力(単位面積あたりの電力密度 P)は、少なくとも250W/m、好適には少なくとも300W/m、特に好適には少なくとも350W/mである。これにより、有利な加熱作用が得られる。
【0033】
1つの有利な構成では、電流母線は導電性フィルムのストリップとして形成されている。導電性フィルムは、好適にはアルミニウム、銅、すずめっきされた銅、金、銀、亜鉛、タングステンおよび/またはすず、またはこれらの合金、特に好適には銅を含有している。導電性フィルムの厚さは、好適には10μm〜500μm、特に好適には30μm〜200μm、例えば50μmまたは100μmである。このような厚さを有する導電性フィルムから成る電流母線は、技術的に簡単に実現され得ると共に、有利な電流容量を有している。導電性フィルムは、はんだ材料または導電性接着剤を介して、加熱可能なコーティングに直接に導電結合されていてよい。導電性フィルムのストリップから成る電流母線は特に、導電性コーティングが中間層の担体フィルム上に配置されている場合に適しているが、コーティングが板ガラス表面に施されている場合にも使用可能である。導電結合を改良するために、導電性コーティングと電流母線との間には、例えば銀含有ペーストが配置されてよい。
【0034】
1つの択一的な有利な構成では、電流母線は、印刷されて焼き付けられた導電構造として形成されている。印刷された電流母線は、少なくとも1つの金属、好適には銀を含有している。導電性は、好適には母線に含まれる金属粒子を介して、特に好適には銀粒子を介して実現される。金属粒子は、ペーストまたはインク等の有機および/または無機のマトリックス内に存在していてよく、好適にはガラスフリットを有する焼成されたスクリーン印刷ペーストとして存在していてよい。印刷された電流母線の層厚さは、好適には5μm〜40μm、特に好適には8μm〜20μm、および極めて特に好適には10μm〜15μmである。このような厚さを有する印刷された電流母線は、技術的に簡単に実現され得ると共に、有利な電流容量を有している。印刷された電流母線は特に、導電性コーティングが外板ガラスまたは内板ガラスの表面に施されている場合に適している。
【0035】
電流母線の長さは、サイド板ガラスの形態、特に電流母線が配置される縁部の長さに左右され、個々のケースにおいて当業者により適当に選択されてよい。典型的なストリップ状の電流母線の長さとは、電流母線が通常、複数の異なる加熱ストリップと接触接続している、より長い方の寸法を意味する。
【0036】
加熱出力は、(通常車両メーカにより予め設定される)印加電圧Uと、層抵抗Rと、電流母線の長さとが与えられている場合には、電流母線の幅によって影響を及ぼされる。通常、1mm〜20mm、好適には2mm〜10mmの電流母線の幅の範囲において、良好な結果が得られる。
【0037】
本発明の好適な構成では、外部電圧供給用の接続ケーブルの接続は、下縁領域で行われる。これにより、接続ケーブルを車両ボデー内に隠すことができる。このためにサイド板ガラスは、電流母線と電気的に接触接続されていて、電流母線を起点として下縁に向かって延びている、好適には少なくとも1つの供給線路を有している。好適には各電流母線に、このような供給線路が設けられている。供給線路は、例えば直線の形態で下縁に向かって延在していてよく、これにより、そこ(例えば下縁に対する電流母線の投影領域)で接触接続することができるようになっている。供給線路は、既に貼合わせ部内で、つまり下縁に到達する前に終わり、平形導体に接触接続していてよい。択一的に、供給線路は貼合わせ部の外側の外部接続ケーブルに接触接続するために、下縁を越えて延在していてもよい。
【0038】
各供給線路の、電流母線とは反対の側の端部は、1つの好適な構成では30mm以下、特に好適には20mm以下、極めて特に好適には12mm以下の相互間隔を有している。供給線路はさらに、各電流母線がサイド板ガラスの異なる縁部に配置されている場合には、下縁に沿って配置されている部分を有していてよい。このようにして、両電流母線に対する外部接続ケーブルの接続箇所を、場所的に互いに近くで案内することができ、このことは電気的な接続にとって有利であり得る。
【0039】
供給線路は、電流母線に対するのと同様に、好適には導電性フィルムのストリップとして、または焼き付けられた印刷ペーストとして形成されていてよい。1つの構成では、電流母線と供給線路とは同一材料で形成されており、このことは、板ガラスの製造を簡単にすると共に、(同一の電気抵抗に基づき)電流母線と供給線路との間の電気の移行に関して最適である。しかしまた、スクリーン印刷により形成された電流母線を、接続要素としての導電性フィルムに接触接続させることも可能である。
【0040】
導電性コーティングの層抵抗は、好適には0.3オーム/スクエア〜7オーム/スクエアである。これにより、一般に車両分野に用いられる電圧において有利な加熱出力が達成され、この場合、同一の印加電圧における低い層抵抗により、より高い加熱出力が生ぜしめられる。
【0041】
外板ガラスおよび/または内板ガラスは、好適にはガラス、特にソーダ石灰ガラス、またはプラスチック、好適には剛性のプラスチック、特にポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートを含んでいる。
【0042】
板ガラスの厚さは大幅に可変であり、したがって個々のケースにおける要求に抜群に適合可能である。好適には、外板ガラスおよび内板ガラスの厚さは0.5mm〜10mmであり、好適には1mm〜5mmであり、極めて特に好適には1.4mm〜3mmである。
【0043】
外板ガラス、内板ガラス、または中間層は、透明無色であってよいが、染色されているか、曇っているか、または着色されていてもよい。外板ガラスと内板ガラスとは、予荷重が加えられていないガラス、部分的に予荷重が加えられたガラス、または予荷重が加えられたガラスから成っていてよい。
【0044】
中間層は、少なくとも1つの熱可塑性の結合フィルムにより形成される。熱可塑性の結合フィルムは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマ、好適にはエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、またはポリウレタン(PU)、またはこれらの混合物またはコポリマまたは派生物、特に好適にはPVBを含んでいる。熱可塑性の結合フィルムの厚さは、好適には0.2mm〜2mm、特に好適には0.3mm〜1mm、例えば0.38mmまたは0.76mmである。
【0045】
加熱可能なコーティングが担体フィルム上に配置されている場合、この担体フィルムは、好適には2つの熱可塑性の結合フィルム間に配置されている。この場合、中間層は、少なくとも2つの熱可塑性の結合フィルムと、その間に配置された、電気的に加熱可能なコーティングを備える担体フィルムとを有している。
【0046】
典型的な加熱可能なコーティングは、赤外線(IR)反射特性をも有している。よって本発明によるコーティングにより、加熱機能のみならず、同時にIR反射機能性も提供される。車両室内への熱線の入射の減少に基づき、熱的な快適性が改善される。
【0047】
本発明にはさらに、本発明による加熱可能な合せサイド板ガラスの製造方法も含まれ、該製造方法は少なくとも、
(a)外板ガラス、内板ガラス、および中間層を準備し、
(b)外板ガラスまたは内板ガラスの表面、または担体フィルム上に加熱可能なコーティングを施し、
(c)加熱可能なコーティングに絶縁線を形成し、
(d)加熱可能なコーティングを、電流母線を介して接触接続させ、
(e)外板ガラスと内板ガラスとの間に中間層を配置し、
(f)外板ガラスを、中間層を介して内板ガラスと貼り合わせることにより結合する
ことを含んでいる。
【0048】
一方の板ガラスの表面にコーティングが施される場合には、積層体はステップ(e)において、コーティングが中間層に面しているように配置される。コーティングが担体フィルムに施される場合には、ステップ(e)においてこの担体フィルムは、好適には第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとの間に配置される。これらの熱可塑性フィルムは担体フィルムと共に、中間層を形成する。
【0049】
加熱可能なコーティングは、自体公知の方法により施される。好適にはコーティングは、磁界により支援される陰極スパッタリングにより行われる。これは、基板の簡単、迅速、廉価かつ一様なコーティングに関して特に有利である。加熱可能なコーティングを有する担体フィルムは市販もされているので、コーティングされた担体フィルムをわざわざ製造せずに済む。
【0050】
絶縁線の形成は、好適にはレーザ加工によって行われるが、原則的には別の方法、例えば機械的な剥離によって行われてもよい。導電層の構造化自体は、以前から当業者に知られている。
【0051】
電流母線の形成は、特に載置、印刷、ろう接、または接着により行われてよい。中間層は、少なくとも1つのフィルムの形態で提供される。
【0052】
合せガラスの製造は、それ自体は当業者に知られている慣用の方法、例えばオートクレーブ法、真空袋法、真空リング法、カレンダ法、真空ラミネータ、またはこれらの組合せを用いた貼り合わせにより行われる。この場合、外板ガラスと内板ガラスとの結合は通常、熱、真空および/または圧力の作用に基づき行われる。
【0053】
本発明によるサイド板ガラスは、好適には陸上、航空、または水中交通用の移動手段、特に自動車に用いられる。
【0054】
以下に、本発明を図面および実施例につきより詳しく説明する。図面は概略図であり、正確な縮尺ではない。図面が本発明を限定することは一切ない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明によるサイド板ガラスの構成を上から見た図である。
図2図1に示したサイド板ガラスのA−A’に沿った断面図である。
図3図1に示したサイド板ガラスのB−B’に沿った断面図である。
図4】本発明による方法の1つの実施形態のフローチャートを示す図である。
【0056】
図1図2および図3には、本発明による加熱可能な合せサイド板ガラスの構成が、それぞれ詳細に示されている。このサイド板ガラスは、サイド板ガラスの下降により開けられる、乗用車のフロントサイドウインドウ用を想定している。サイド板ガラスは、前縁Vと、後縁Hと、上縁Oと、下縁Uとを有している。各縁は、走行方向に見た取付け位置に応じて名付けられている。
【0057】
サイド板ガラスは、外板ガラス1と、内板ガラス2と、これら2つの板ガラスを互いに結合する中間層3とから成る合せガラスである。外板ガラス1と内板ガラス2とはソーダ石灰ガラスから成っており、例えばそれぞれ2.1mmの厚さを有している。中間層3は、PVBから成る厚さ0.76mmのフィルムにより形成されている。
【0058】
外板ガラス1は、外面Iと内面IIとを有している。内板ガラス2も同様に、外面IIIと内面IVとを有している。この場合、取付け位置において外部環境に面するように設けられた表面を外面と言う。取付け位置において車内に面するように設けられた表面を内面と言う。外板ガラス1の内面IIと内板ガラス2の外面IIIとは互いに向かい合っており、かつ中間層3に面している。
【0059】
内板ガラス2の外面IIIには、透明で加熱可能なコーティング4が施されている。加熱可能なコーティングは、例えば2つの銀層を有しており、さらに、透明度を高めかつ面抵抗を減少させるために、各銀層の上下および中間に誘電体層を有している。加熱作用を生ぜしめるために、コーティング4は、第1の電流母線5と第2の電流母線6とを介して電気的に接触接続されている。電流母線5,6は、例えば印刷されかつ焼き付けられた、銀粒子およびガラスフリットを含有するスクリーン印刷ペーストにより形成されていて、8mmの幅と100μmの厚さを有している。電流母線5,6に電圧が印加されると、電流がコーティング4を通って流れ、これにより加熱作用が生じることになる。電圧は、14Vの一般的な自動車搭載電源電圧であるか、あるいは例えば42Vまたは48Vの電圧であってもよい。
【0060】
加熱可能なコーティング4は、複数の絶縁線8により、それぞれ異なる複数のセグメント(加熱ストリップ)に分けられている。このことは加熱電流の案内に役立ち、これにより、板ガラスの可能な限り均質な加熱が可能になる。従来は典型的なサイド板ガラスの複雑な形状に基づき、板ガラスの大部分は加熱されないままであった。なぜならば、電流は電流母線5,6間の最短経路をとると考えられるからである。
【0061】
第1の電流母線5は、サイド板ガラスの前縁Vに沿って延在しており、第2の電流母線6は、後縁Hに沿って延在している。電流母線と、電流母線が平行に延在する縁部との最大間隔は、例えば2cmである。これまで主流であった、請求項1の上位概念に記載のサイド板ガラスの設計に関する解釈に反して、電流母線5,6は、サイドウインドウの開放状態でも、観察者には見えないようになっている。その代わりに電流母線5,6は、車体部分および典型的なサイドウインドウのシールリップによりカバーされている。最小間隔は、例えば6mmである。この間隔は、貼合わせ部の安定性が損なわれることと、空気の侵入とをそれぞれ防ぐには十分である。
【0062】
絶縁線8は、大きく湾曲せずに、第1の電流母線5から第2の電流母線6まで延びている。これにより、局所的な過熱を回避することができる。さらに、この構成は視覚的な魅力がある。絶縁線8は、上縁Oに対する間隔が小さくなるにつれて増大する、小さな曲率を有しているに過ぎない。これにより、湾曲した上縁Oを有する複雑な板ガラス形状にもかかわらず、加熱出力の一様な分散が達成されるようになっている。
【0063】
隣り合う各絶縁線8の間隔(すなわち加熱ストリップの幅)は、後縁Hから前縁Vにかけて減少している。これにより、前縁Vの領域では、より高い加熱出力が達成されることになる。つまりこの領域は作動中、最初に霜または水分が除去され、これにより、車両運転者がサイドミラーに対する視界を迅速に得られるようになっている。第1の電流母線5(前縁)における加熱ストリップの幅は、例えば45mmであり、第2の電流母線6(後縁)では、例えば75mmである。
【0064】
このサイド板ガラスは、さらに2つの供給線路7を有している。各供給線路7は、1つの電流母線5,6に電気的に接触接続されていて、下縁Uに向かって延びており、そこで供給線路7を、外部電圧供給用の接続ケーブルに接触接続させることができるようになっている。供給線路もやはり、銀を含むスクリーン印刷部として、または導電性フィルムとして形成されていてよい。供給線路7はそれぞれ、下縁Uに沿って延在する部分を有している。電圧供給用の外部接続ケーブルを備えて設けられた各供給線路7の端部は、相対して案内されており、例えば12mmの間隔を有している。各供給線路7の小さな相互間隔は、接続技術上の利点を有していてよい。
【0065】
図4には、本発明による加熱可能な合せサイド板ガラスの、本発明による製造方法の1つの実施例のフローチャートが示されている。
【符号の説明】
【0066】
(1)外板ガラス
(2)内板ガラス
(3)熱可塑性の中間層
(4)加熱可能なコーティング
(5)第1の電流母線
(6)第2の電流母線
(7)供給線路
(8)絶縁線
H サイド板ガラスの後縁
O サイド板ガラスの上縁
V サイド板ガラスの前縁
U サイド板ガラスの下縁
I 外板ガラス1の外面
II 外板ガラス1の内面
III 内板ガラス2の外面
IV 内板ガラス2の内面
A−A’ 断面線
B−B’ 断面線
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】