(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-511006(P2018-511006A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】接着力を複数段階に切替可能な構造化表面
(51)【国際特許分類】
F16B 11/00 20060101AFI20180323BHJP
A44B 18/00 20060101ALI20180323BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20180323BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
F16B11/00 Z
A44B18/00
C09J7/00
C09J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-533222(P2017-533222)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2015079955
(87)【国際公開番号】WO2016102264
(87)【国際公開日】20160630
(31)【優先権主張番号】102014119470.5
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500449008
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クローナー エルマー
(72)【発明者】
【氏名】ヤクエ イスラ ポーラ
【テーマコード(参考)】
3B100
3J023
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3B100DA04
3J023EA01
3J023FA02
3J023GA02
4J004AA11
4J004AB01
4J004BA08
4J004FA08
4J040EK031
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040MA05
4J040PA21
4J040PA33
(57)【要約】
本発明は、少なくともその垂直高に関して互いに異なる少なくとも2つのタイプの突起を備える構造化表面に関する。これにより、当該構造化表面の接着力を、少なくとも3つの異なる状態間で切り替えることができるようになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切替可能な接着力を有する固体の構造化表面であって、該表面は、多数の突起を備える構造を有し、前記突起はそれぞれ、少なくとも1つの柱幹部を有し、該柱幹部は前記表面から離れた方向を向く端面を有し、
前記多数の突起は少なくとも2つのタイプの突起を含み、該少なくとも2つのタイプの突起は、前記端面の少なくとも垂直高に関して互いに異なり、
前記突起の材料は、
負荷に応じて、1つ以上のタイプの突起がその端面を介して、前記突起の起こり得る圧縮によって加えられる力より高い接着力を形成するような弾性率を有し、
少なくとも1つのタイプの突起は、
特定の負荷を超える場合には、これらの突起が座屈し、前記端面の座屈の結果として、前記接着力が大きく減少するようなアスペクト比を有することを特徴とする、構造化表面。
【請求項2】
少なくとも1つのタイプの突起が、広げられた端面を有することを特徴とする、請求項1に記載の構造化表面。
【請求項3】
前記突起は、1〜100のアスペクト比を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造化表面。
【請求項4】
切替可能な接着力を有する表面を得るために物体の前記表面を変更する方法であって、前記表面は構造化を施され、それにより、それぞれが少なくとも1つの柱幹部を有する多数の突起が形成され、前記柱幹部は前記表面から離れた方向を向く端面を有し、
前記多数の突起は少なくとも2つのタイプの突起を含み、該少なくとも2つのタイプの突起は、前記表面に対する前記端面の少なくとも垂直高に関して互いに異なり、
前記突起の材料は、
負荷に応じて、1つ以上のタイプの突起がその端面を介して、前記突起の起こり得る圧縮によって加えられる力より高い接着力を形成するような弾性率を有し、
少なくとも1つのタイプの突起は、
特定の負荷を超える場合には、これらの突起が座屈し、前記端面の座屈の結果として、前記接着力が大きく減少するようなアスペクト比を有することを特徴とする、方法。
【請求項5】
少なくとも垂直高に関して互いに異なる少なくとも2つのタイプの突起を有する構造化表面を作製する方法であって、
a)少なくとも1つのタイプの突起を有する構造化表面を設けるステップと、
b)前記突起のうちの少なくとも幾つかの突起の端面に硬化性材料を塗布するステップと、
c)前記硬化性材料を有する前記突起を高い突起の前記端面のための型と接触させるステップと、
d)前記硬化性材料を硬化させるステップであって、前記高い突起を形成する、ステップと、
e)前記型から前記構造化表面を切り離すステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面の接着力を切り替える方法であって、
a)前記構造化表面を基材と接触させるステップと、前記構造化表面に加えられる力に応じて、以下の場合を区別することができ、
a1)最も高い垂直高を有するタイプの突起を接触させ、低い接着力を形成するステップと、
a2)前記接触した突起を、次に低い垂直高を有する突起の接触点まで圧縮し、前記接着力を高めるステップと、
a3)前記突起のうちの少なくとも幾つかの突起が曲がるまで前記力を高め、前記接着力を大きく減少させるステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
2つの本体による複合物であって、界面が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造化表面を有する、複合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替可能な接着力を有する表面と、そのような表面を作製する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
切替可能な接着力は、数多くの用途の場合に極めて重要である。接合継ぎ手による接続は、多くの場合に、1回限りの用途の場合にのみ適しているか、又は何度も使用した場合に急速に摩耗する。
【0003】
可逆的な接着接続の重要な分野は、ヤモリ構造に類似の、ファンデルワールス力に基づく乾燥接着である。これらの構造は着脱可能であり、繰り返し使用することもできる。しかしながら、表面の接着力には、限られた程度しか影響を与えることができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、その接着力を変更することができ、切替可能な接着力を有する、構造化表面を明示することである。さらに、そのような表面を作製する方法も明示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項の特徴を有する本発明によって達成される。本発明の有利な更なる発展形態は従属請求項において特徴付けられる。全ての請求項の表現は引用することにより本明細書の一部をなす。本発明は全ての意味ある、より具体的には言及した全ての独立請求項及び/又は従属請求項の組合せも包含する。
【0006】
この目的は、構造化表面であって、表面は、多数の突起を備える構造を有し、突起はそれぞれ、少なくとも1つの柱幹部を有し、柱幹部は表面から離れた方向を向く端面を有し、多数の突起は少なくとも2つのタイプの突起を含み、少なくとも2つのタイプの突起は、端面の少なくとも垂直高に関して互いに異なり、突起の材料は、負荷に応じて、1つ以上のタイプの突起がその端面を介して、突起の起こり得る圧縮によって加えられる力より高い接着力を形成するような弾性率を有し、少なくとも1つのタイプの突起は、特定の負荷を超える場合には、これらの突起が座屈し、端面の座屈の結果として、接着力が大きく減少するようなアスペクト比を有することを特徴とする、構造化表面によって達成される。
【0007】
端面の垂直高は、突起が配置される表面からの端面の距離と理解されたい。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、端面の座屈は可逆的である。好ましくは、突起の変形は可逆的である。突起は十分に弾性であり、その結果、構造化表面は無負荷状態に戻ることができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の構造化表面の突起は、柱状構成からなる。これは、当該突起が表面に対して垂直に構成されることが好ましく、上記突起は柱幹部及び端面を有し、柱幹部及び端面は、任意の選択された断面(例えば、円形、長円形、長方形、正方形、菱形、六角形、五角形等)を有することができることを意味する。
【0010】
好ましくは、突起は、突起のベース面上への端面の垂直投影が、ベース面との重なりエリアを形成するように構成され、重なりエリア、及び端面上への重なりエリアの投影は、突起内全体に延在する本体に及ぶ。本発明の好ましい実施形態において、重なりエリアは、ベース面の少なくとも50%、好ましくは、ベース面の少なくとも70%を含み、特に好ましくは、重なりエリアはベース面全体を含む。
【0011】
好ましい実施形態において、端面は、ベース面に、かつ表面に対して平行に位置合わせされる。端面が表面に対して平行に位置合わせされず、それゆえ、異なる垂直高を有する場合には、突起の垂直高は、端面の平均垂直高と見なされる。
【0012】
好ましい実施形態において、突起の端面は、ベース面より大きい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、突起の柱幹部は、その平均径に関連して、1〜100、好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜5の高さ:直径のアスペクト比を有する。
【0014】
ここで、平均径は、突起の全高にわたって平均された、突起の対応する断面と同じ面積を有する円の直径であると理解されたい。
【0015】
本発明の更なる実施形態において、直径に対する突起の高さの比は、突起の全高にわたる特定の高さにおいて、常に約1〜100であり、好ましくは約1〜10であり、特に好ましくは約2〜5である。直径は、規定された高さにおける突起の対応する断面と同じ面積を有する円の直径であると理解されたい。
【0016】
少なくとも1つのタイプの突起は、広げられた端面、いわゆる、「キノコ」構造を有することができる。
【0017】
柱幹部のアスペクト比は、負荷が高すぎる場合の圧縮及び座屈にとって重要である。
【0018】
突起の端面自体は、その表面を拡大するように構造化することができる。この場合、突起の垂直高は、端面の平均垂直高と見なされる。
【0019】
好ましい実施形態において、全ての突起の垂直高は、1μm〜2mmの範囲内、好ましくは10μm〜2mmの範囲内にある。
【0020】
好ましい実施形態において、ベース面は、面積に関して、1μm〜1mm、好ましくは10μm〜500μmの直径を有する円に対応する。一実施形態において、ベース面は、1μm〜1mm、好ましくは10μm〜500μmの直径を有する円である。
【0021】
柱幹部の平均径は、好ましくは1μm〜1mm、好ましくは10μm〜500μmにある。好ましくは、高さ及び平均径は、好ましいアスペクト比に応じて構成される。
【0022】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つのタイプの突起は広げられた端面を有し、このタイプの突起の場合、垂直高の上3分の1の断面積が、広げられた端面まで拡大する。
【0023】
好ましい実施形態において、広げられた端面の場合に、突起の端面の表面積は、突起のベース面の面積の少なくとも1.01倍、好ましくは少なくとも1.5倍の大きさである。例えば、その面積は、1.01倍から最大で20倍だけ大きくすることができる。
【0024】
更なる実施形態において、端面は、ベース面より5%〜100%、特に好ましくはベース面より10%〜50%大きい。
【0025】
好ましい実施形態において、2つの突起間の距離は、2mm未満であり、特に1mm未満である。
【0026】
本発明の更なる好ましい実施形態において、特に好ましくは、構造化表面上に、1つのタイプの0個、10個、5個、4個、3個、2個又は1個の突起が同じタイプの突起によってのみ包囲されるように、異なるタイプの突起が混在して配置される。詳細には、1つのタイプの各突起は常に、異なるタイプの少なくとも1つの突起によって包囲される。好ましくは、1つの突起の場合に、その検討対象の突起のベース面の重心から、ベース面のその重心まで直線を引くことができ、かつその直線が別の突起のベース面を横切らない全ての突起が、ここで、包囲するものと見なされる。
【0027】
少なくとも2つのタイプの突起は、少なくとも端面の垂直高に関して互いに異なる。それゆえ、同じ垂直高を有する各タイプの突起は、この垂直高に関して、1つの接触エリアに広がる。基材と接触するとき、これらの接触エリアは、負荷に応じて、引き続き基材と接触し続ける。好ましくは、それぞれ広がる接触エリアは、突起が配置される表面に対して平行に配置される。特に好ましくは、突起は、基材と接触するときに、1つの垂直高の全ての突起がこの領域において基材と接触するように配置される。
【0028】
突起の垂直高に関して取り得る差は、とりわけ、突起の選択されたアスペクト比と、弾性率とによって決まる。突起は、少なくとも第2の垂直高のタイプの突起との接触点まで、端面が座屈することなく、圧縮できなければならない。
【0029】
好ましくは、高さの差は、突起の弾性挙動の範囲内の突起の圧縮によって実現されるように選択される。これは、簡単な測定によって求めることができる。この範囲を超える場合には、例えば、曲げの結果として、一般的に、突起の不可逆的な塑性変形が起こる。材料の弾性が制限されるので、この変形によって、基材と接触している端面も、基材に対して不可逆的に再編成する。極端な場合には、端面は、基材から部分的に切り離される場合さえある。これは、不可逆的な1回限りの切替動作のために利用することができる。
【0030】
更なる実施形態において、高さの差は、少なくとも最も高い垂直高を有するタイプの突起を、少なくとも、次に低い垂直高を有する突起の接触点まで、好ましくは、少なくとも、最も低い垂直高を有するタイプの突起の接触点まで圧縮できるように選択される。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、主に突起が変形し、突起が配置される表面は変形しない。
【0032】
本発明の更なる実施形態において、突起の弾性率は、10kPa〜10GPaにある。
【0033】
好ましい実施形態において、最も高い垂直高を有するタイプの突起と、最も低い垂直高を有するタイプの突起との間の高さの差は、最も低い垂直高の1%〜30%に、好ましくは2%〜20%にある。
【0034】
さらに、本発明は、切替可能な接着力を有する表面を得るために物体の表面を変更する方法であって、表面は構造化を施され、それにより、それぞれが少なくとも1つの柱幹部を有する多数の突起が形成され、柱幹部は表面から離れた方向を向く端面を有し、多数の突起は少なくとも2つのタイプの突起を含み、少なくとも2つのタイプの突起は、表面に対する端面の少なくとも垂直高に関して互いに異なり、突起の材料は、負荷に応じて、1つ以上のタイプの突起がその端面を介して、突起の起こり得る圧縮によって加えられる力より高い接着力を形成するような弾性率を有し、少なくとも1つのタイプの突起は、特定の負荷を超える場合には、これらの突起が座屈し、端面の座屈の結果として、接着力が大きく減少するようなアスペクト比を有することを特徴とする、方法に関する。
【0035】
本発明は、少なくとも垂直高に関して互いに異なる少なくとも2つのタイプの突起を有する構造化表面を作製する方法に更に関する。
【0036】
個々の方法ステップが、以下により詳細に説明される。それらのステップは、必ずしも提示された順序において実行されなくてもよく、説明されることになる方法は、更なる明記されないステップを有することもできる。
【0037】
それに加えて、第1のステップにおいて、少なくとも1つのタイプの突起を備える構造化表面が設けられる。突起のうちの少なくとも幾つかの突起の端面に、硬化性材料が塗布される。構造化表面が、同じ垂直高を有する突起を有する場合には、本方法に従って、同様に2つのタイプの突起を得るために、材料は、突起の端面のうちの幾つかにのみ塗布される。
【0038】
好ましくは、液体又は粘性の硬化性材料が、特に、端面上に少なくとも1つの材料滴を形成するように塗布される。
【0039】
好ましくは、材料は、処理された突起の最も高い垂直高が、塗布前の構造化表面の突起の最も高い垂直高より高くなるように塗布される。好ましくは、最も低い垂直高でない突起、好ましくは最も高い垂直高を有するタイプの突起が処理される。
【0040】
高い突起の後続の端面が硬化性材料から形成されるように、ここで、このようにして処理された突起を端面のための型と接触させる。
【0041】
この接触の結果として、先行する突起に対して端面を広げることもできる。
【0042】
硬化性材料が接着しないように、例えば、シラン処理を通して、型をコーティングすることができる。
【0043】
型は任意の選択された形を有することができる。最も簡単な変形形態において、その型は平坦な表面であり、結果として、高い突起は平坦な端面を有する。しかしながら、生成された端面に構造を与えるために、型を構造化することもできる。
【0044】
次のステップにおいて、硬化性材料を硬化させる。使用される方法は、使用される材料によって決まる。これは、例えば、放射及び/又は熱による硬化の形をとることができる。好ましくは加熱された型を使用することにより、熱によって硬化させることが好ましい。この場合、型は、接触プロセスにおいてあらかじめ加熱しておくことができる。
【0045】
最後のステップにおいて、ここで、少なくともその垂直高に関して互いに異なる少なくとも2つのタイプの突起を有する構造化表面が、型から切り離される。
【0046】
硬化性材料は、任意の適切な材料とすることができる。例えば、ポリマーのモノマー、シラン、シリコーンのような、重合性及び/又は硬化性化合物が適している。
【0047】
また、本発明は、特定の垂直高を有する更なるタイプの突起を生成するために、2回以上実行することもできる。
【0048】
本発明による構造化表面は、異なる方法で得ることもできる。例えば、2ステージフォトリソグラフィ、2光子リソグラフィ、適切なダイからの成形、エッチング法、ミリング法又は3D印刷が可能である。
【0049】
さらに、本発明は、2つの本体による複合物に関し、界面が本発明による構造化表面を有する。
【0050】
本発明は、表面の接着を切り替える方法に更に関する。このために、本発明による構造化表面を基材と接触させ、構造化表面に加えられる力に応じて、以下の場合を区別することができる。
【0051】
最も高い垂直高を有するタイプの突起の接触及び最も低い接着力の形成。ここで、これらの突起の端面を介して、接着が起こる。
【0052】
力を強くすると、既に接触している突起が次に低い垂直高を有する突起の接触点まで圧縮され、先行する状態に比べて、より高い接着力が形成される。ここで同じく基材との接触状態に入りつつある端面のうちの新たな端面の更なる接触の結果として、接着力が増加する。しかしながら、形成される接着力は、その圧縮の結果として、高い方の突起内に蓄積される弾性エネルギーの程度だけ低減される。3つ以上のタイプの突起が存在する場合には、全ての突起の端面が基材と接触するまで、加える力を増加しながら、このステップを繰り返すことができる。各タイプの突起が基材と接触することにより、特定の接着力が形成される。全ての突起が接触すると、構造化表面は、その最大接着力に達する。それゆえ、異なる垂直高の突起のタイプの数が、構造化表面の取り得る切替可能状態の数を決定する。
【0053】
それゆえ、各更なるタイプの突起による接触の結果としての接触面の拡大が常に、圧縮の結果として費やされることになるエネルギーより大きいことが重要である。とりわけ、細い柱幹部ほど圧縮されるので、それゆえ、広げられた端面を有する突起が好ましい。
【0054】
特定の値より高い力が加えられる場合には、構造化表面の材料及び構造に応じて、突起のうちの少なくとも幾つかが、好ましくは可逆的に曲げられることになる。結果として、端面のうちの少なくとも幾つかが、基材との接触を失う。接着のために利用可能な面積が低減され、構造化表面の接着力が減少する。理想的には、構造化表面は、ここで、接着することなく切り離すことができる。
【0055】
それゆえ、本発明による構造化表面によれば、少なくとも3つの接着状態間で切り替えることができるようになる。ここで、驚くことに、力を強くする結果として、接着力を減少させることができる。
【0056】
更なる細部及び特徴が、従属請求項と併せることで、好ましい例示的な実施形態に関する以下の説明から明らかになる。それぞれの特徴は、本明細書において、それ自体で、又は互いに組み合わせて複数において実現することができる。目的を果たすためのオプションは、例示的な実施形態には限定されない。
【0057】
したがって、範囲データは常に、例えば、全ての規定されない中間値、及び全ての考えられる部分的な範囲を含む。
【0058】
例示的な実施形態が、図において概略的に表される。ここで、個々の図における同じ参照符号は、同じ若しくは機能的に同一の要素、又はその機能に関して互いに対応する要素を表す。より具体的には、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図2】広げられた端面を有する突起を備える基材を作製する方法の概略図である。
【
図3】少なくとも2つの異なる高さの突起を備える基材を作製する、本発明による方法の概略図である。
【
図5】本発明による突起の異なる実施形態の概略図である。
【
図6a】本出願において取り上げられるサイズ仕様を有する試験品105の概略図である。
【
図7】端面を広げる前の、PDMSから形成される試験品の写真である。
【
図8】広げられた端面及び2つのタイプの突起(SP、LP)を有する試験品の側面図である。
【
図9a】力に対する相対変位のグラフであり、より明確にするために、その曲線がX軸に沿って互いに変位しており(相対変位)、一般に、その変位の場合に、試験品に対する力の増加が、同じ変位で実現されることを示す図である。
【
図10】試験品の画像への力/変位グラフの異なる点の割当てを示す図である。
【
図11】異なる速度(20μm/s、60μm/s)におけるAR4.0を有する試験品の場合の測定された接着力を示す図であり、試験品は、低い予負荷(A)、中間の予負荷(B)及び高い予負荷(C)の場合の測定値に対応する。
【
図12】異なる速度(20μm/s、60μm/s)におけるAR4.5を有する試験品の場合の測定された接着力を示す図であり、試験品は、低い予負荷(A)、中間の予負荷(B)及び高い予負荷(C)の場合の測定値に対応する。
【
図13】異なる速度(20μm/s、60μm/s)におけるAR5.0を有する試験品の場合の測定された接着力を示す図であり、試験品は、低い予負荷(A)、中間の予負荷(B)及び高い予負荷(C)の場合の測定値に対応する。
【
図14】20μm/sの速度におけるAR4.0を有する試験品の予負荷に関連する引き離し力を示す図である。
【
図15】60μm/sの速度におけるAR4.0を有する試験品の予負荷に関連する引き離し力を示す図である。
【
図16】20μm/sの速度におけるAR4.5を有する試験品の予負荷に関連する引き離し力を示す図である。
【
図17】60μm/sの速度におけるAR4.5を有する試験品の予負荷に関連する引き離し力を示す図である。
【
図18】20μm/sの速度におけるAR5.0を有する試験品の予負荷に関連する引き離し力を示す図である。
【
図19】60μm/sの速度におけるAR5.0を有する試験品の予負荷に関連する引き離し力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、本発明に従って構造化される表面を有する切替可能接着の概略図を示す。構造化表面200は、第1のタイプの突起210と、少なくとも第2のタイプの突起220とを備え、それらの突起は、その端面215、225の垂直高に関して互いに異なる。ここで、垂直高は、突起が配置される表面205からの端面215、225の距離である。突起は、柱幹部210、220と、端面215、225とを有する。この構造化表面は、ステップIにおいて基材230に向かって動かされる。IIに示されるように、最も大きい垂直高を有する突起が、最初に、基材表面と接触する。それゆえ、これらの突起220の端面225は、基材230への構造化表面200の接着をもたらす。構造化表面を再び切り離すには、この力に打ち勝たなければならない(破線矢印によって示される)。これは、低い予負荷を有する状況である。構造化表面200が基材230に向かって更に動かされるとき、基材に既に接触している突起220が圧縮されることになる。特定の圧縮又は予負荷を超えると、第2のタイプの突起210の端面215も基材と接触する(ステップIII)。このようにして、接着のために利用可能な表面は、直ちに大きく拡大される。それに応じて、切り離すために必要な力が増加する(破線矢印として示される。ただし、突起の切り離しは必ずしもIIを介して進行しなければならないとは限らない)。予負荷が更に高められる場合には(
図IV)、突起のアスペクト比に起因して、続いて突起の座屈が起こる。全ての突起が一様に座屈しなければならないとは限らない。重要なのは、端面、それゆえ、接着のために利用可能なエリアが、基材230から分離することである。結果として、切り離すために必要な力は急激に降下し、基材は、表面から容易に分離する。
【0061】
図5は、本発明による突起の好ましい実施形態の概略図を示す。突起500は、端面502と、ベース面504とを備える。端面502及びベース面504が、側面図(左)及び平面図(右)において示される。黒色エリア506は、ベース面504上への端面502の垂直投影の重なり合う領域を示す。その領域は、エリアa)と同一とすることができるか、広げられた端面b)及びc)の場合、端面502内に存在することができる。端面上への重なり領域506の投影によって伸びる本体508が、破線表現において示される。全ての突起において、本体は突起内に存在するが、a)の場合、本体は突起自体と同一である。それゆえ、「の内に」は、共通の外面も含む。
【0062】
実験
1.試験品の作製
試験品のための鋳型が、アルミニウムから複数の巨視的柱状体配列を切削加工(milling out:フライス加工)することによって作製された。このために、3mmの深さの切削加工された凹部内に、400μmの直径を有する六角形に配置された丸い穴が切削加工された。形成された後、それらの穴は適切な柱状体を生み出す。3つの異なる型、すなわち、中央柱状体、6個の更なる柱状体によって包囲される中央柱状体、及び全部で19個の柱状体からなる2つのリングによって包囲される中央柱状体が作製された。柱状体のための穴は1600μm、1800μm及び2000μmの深さであった。この結果として、4.0、4.5及び5のアスペクト比(AR、高さ:直径)を有する柱状体が生成される。穴の中心間の距離は、全ての型において800μmであった。切削プロセス後に、型はイソプロパノールで洗浄され、繰り返された形成による切削プロセスのあらゆる残片が除去された。
【0063】
試験品は、10:1のプレポリマーと架橋剤との比を有するポリジメチルシロキサン(PDMS、Sylgard184、Dow Corning)から作製された。全ての試験品が、PDMSを伴う型に混合PDMSを充填することによって形成された。この後、もはや気泡が見られなくなるまで、乾燥器においてガス抜きが実行された。試験品を、75℃で2時間、硬化させた。
【0064】
2.広げられた端面の作製
広げられた端面(キノコ形先端とも呼ばれる)が、自ら設計した装置で作製された。これにより、浸漬及びコンタクトプレスの場合に試験品を厳密に制御できるようになる。
【0065】
その方法は
図2において表される。最初のステップにおいて、基材120がシラン処理される。このために、基材は、乾燥器内に、1μLのトリクロロ(1H、1H、2H、2H−パーフルオロオクチル)シランを含む容器とともに置かれ、シランが完全に気化するような時点まで真空にかけられた。この後、基材は、95℃で30分間、オーブンにおいて処理された。シラン層110を有する基材120が得られた。
【0066】
次のステップにおいて、PDMSのためのプレポリマー及び架橋剤が、10:1の比(重量比)において混合され、乾燥器において気泡が除去された。この後、0.5mLのガス抜きされたPDMS135が、35mm径の基材の中央に配置され、基材を300rpmにおいて、5000rpm/sの加速度で、300s間回転させた。液体PDMSの0.5mm厚の層130が得られた。
【0067】
この層130の中に、1において作製された試験品100の端面が浸漬された。それにより、端面上にPDMS132の液滴を有する試験品100が得られた。
【0068】
次のステップにおいて、この試験品100は、100℃に加熱されたシラン処理済みガラス基材140に、10分間押圧された。それにより、広げられた端面を有する試験品104が得られた。
【0069】
3.2つのタイプの突起を有する試験品の作製
その方法は
図3において表される。
【0070】
最初のステップにおいて、PDMS134の液滴が、試験品104の画定された端面に塗布される。これは、ピペット又は何らかの他の器具137によって行うことができる。その後、試験品104は、液滴134とともに、100℃に加熱されたシラン処理済みガラス基材140に、10分間押圧された。結果として、処理された端面上に、円錐状の広がりが形成される。処理された突起は、同時に、幾分長くなる。それゆえ、得られた試験品105は、高さに関して互いに異なる2つのタイプの突起を有する。試験品105の全ての突起は、広げられた端面(「キノコ形先端」)を有する。
【0071】
図4は、試験品105の概略図を示す。
【0072】
図6は、a)において、2つのタイプの突起を有する試験品の概略図を示す。ここで、LPは、高い方の突起を表し、SPは低い方の突起を表す。測定データは、表1において取り上げられる直径及び高さに関するデータが測定された場所を示す。図b)は、試験品内の突起の配置を示す。それゆえ、試験品は、7個のLP突起と、12個のSP突起とを備えた。各タイプの突起は、取り得る接触エリアに及ぶ。端面を広げることを通して、直径を著しく拡大することができた。原理的には、高い方の突起(LP)の端面は、垂直高Δh LPにおいて第1の接触エリアに及ぶ。低い方の突起(SP)の端面は、垂直高Δh SPにおいて第2の接触エリアに及ぶ。双方の接触エリアは、互いに平行であり、かつ突起が配置される表面に対しても平行である。
【0073】
図7は、広げられた端面を用いることなく、PDMSから形成した後の試験品の写真を示す。
図8には、
図6による、広げられた端面と、2つのタイプの突起(SP及びLP)とを有する、
図7からの完全に処理された試験品が示される。突起の高さは、光学顕微鏡(VH−Z20R/Wレンズを備えるKeyence VHX−2000D)を用いて求められた。測定値が表1において取り上げられる。
【0074】
4.接着力測定値
その測定値は、Kroner, E.、Blau, J.、Arzt E「An adhesion measurement setup for bioinspired fibrillar surfaces using flat probes」(Review of Scientific Instruments 2012, 83)による装置を用いて測定された。ここで、PDMS試験品がガラス支持体に取り付けられ、高い精度で変位可能及び傾斜可能である試験品ホルダー内に固定される。レーザー干渉法によって、2524N/mのばね定数を有する金属製カンチレバーの曲げを測定することによって、力が求められる。カンチレバーは、滑らかで、平坦で、位置合わせされたガラス試験片(基材)を有する。測定のために、試験品は、特定の速度において基材に向かって動かされた。接触後に、所定の(正の)予負荷が設定された。この後、試験品は、基材から離れるように戻された。この直後に、(負の)引き離し力が測定された。試験は、20μm/s及び60μm/sの試験品速度において行われた。予負荷は、予負荷に依存する大きな引き離し力が測定されるように設定された。全ての測定が、光学カメラで監視された。全ての試験品が、基材に対して垂直な回転軸に関して、3つの異なる回転角(0度、120度及び240度)において測定された。それにより、基材に対する試験品の位置合わせ不良から生じる影響が最小化されるはずである。
【0075】
上述の装置を用いて全ての試験品に対して測定が行われた。
図9は、低い予負荷(A)、中間の予負荷(B)及び高い予負荷の場合の3つの例示的な測定の場合の力−変位曲線を示す。試験品は、基材に向かって、接触点まで動かされた。この後、試験品は、基材に向かって更に動かされた。測定ごとの予負荷として、圧力負荷の最大値が規定される。この後、試験品は、基材から離れるように戻された。最大測定力が引き離し力と見なされる。
図9b)は、
図9a)の引張応力の領域を拡大して示す。点線/実線(A)は、低い予負荷における測定値を示す。この測定値は、構造化試験品の典型的なパターンを示す。そのパターンは、圧縮の領域(基材に向かって動く場合)の一様なパターン、及び引張応力の領域(基材から離れるように動く場合)の鋸歯状パターンを示す。光学的観測とともに、個々の突起(LP)の切り離しに個々の最小値を割り当てることができた。
図9の場合、7個の切り離しが存在する。予負荷は、第2のタイプの突起(SP)を基材と接触させるほど十分に高くなかった。
【0076】
破線/実線(B)は、中間の予負荷の場合の測定値を示す。最初に、試験品は、高い方の突起(LP)のみと接触している。曲線は、この領域において、低い予負荷の場合と同じパターンを示す。その後、約0.08Nの力において、曲線の勾配が突然増加する。光学的観測は、この力において、短い方の突起(SP)が基材に達したことを示す。これは、長い方の突起(LP)が、その際、それに応じて強く圧縮されることを意味する。予負荷は更に幾分高められ、試験品は、その後、基材から離れるように戻された。引張負荷の領域において、著しく高い引き離し力が測定されたことが明らかである。さらに、個々の突起に19個の最小値を割り当てることができた。光学的観測は、最初に短い方の突起(SP)が分離し、その後、長い方の突起(LP)が分離することを示した。
【0077】
第3の曲線(C)は、高い予負荷における測定値を示しており、著しく異なるパターンを示す。低い負荷において、その曲線は、中間の予負荷のパターンに、すなわち、最初に低い勾配であり、短い方の突起(SP)が接触するのを通して、勾配が上昇するパターンに従う。特定の臨界負荷(ここでは、約0.8N)において、最大予負荷が達成される。更に変位する結果として、負荷が減少する。光学的観測は、これが突起の可逆的な座屈に起因することを示す。負荷の減少中に、曲線は明らかなヒステリシスを示す。光学的観測は、突起が最初に、当初の直線形状を呈することを示す。負荷が更に低下し、引張負荷が加えられる場合には、試験品が基材から直ちに分離し、場合によっては、当初の位置に達する前であっても分離する。曲線内の最小値の数ははるかに少なく、最小値は、ぼやけて見える。結果として生じる引き離し力は非常に低い。
【0078】
図10は、種々の測定段階における試験品の関連する図とともに、高い予負荷の場合の測定値を示す。1において、試験品は基材に向かって動かされる。接触が行われ、力が増加する。2において、短い方の突起も基材と接触するので、曲線の勾配が上昇する。3において、最大予負荷に達し、突起が捩じれ、かつ曲がり始める。この結果として、力5が減少する。後方に動く場合(6)にも、力は最初に減少するが、その後、突起が直線形状に回復するときに、再び上昇する(7)。8において、力が更に減少し、その後、試験品は、強く接着することなく(9)、試験品が基材から分離する。
【0079】
図11〜
図13は、20μm/s及び60μm/sの速度における3つの異なるアスペクト比(AR)(AR4.0、AR4.5、AR5.0)の場合の全ての接着実験を組み合わせる。試験品は、低い予負荷(A)、中間の予負荷(B)及び高い予負荷(C)の場合の測定値に対応する。
【0080】
実験から、以下の結論を得ることができる。
・試験されたアスペクト比ごとに、予負荷(A、B、C)に応じて3つのタイプの接着制御を検出することができた。低い予負荷は、低い引き離し力につながり、中間の予負荷は、高い引き離し力につながり、高い予負荷は、非常に低い引き離し力につながる。場合によって、Aの引き離し力がCと類似である場合であっても、一般的な傾向は、明確に区別できる。
・測定中に、試験品を迅速に動かすほど、引き離し力が低くなる。AR4.0を有する試験品の場合、引き離し力は類似である。AR4.5及び5.0を有する他の試験品の場合、明確な違いがある。
・アスペクト比が大きくなると、引き離し力が減少する。AR4.0を有する試験品は、最も高い接着力を示し、一方、AR5.0を有する試験品は、著しく低い接着力を有する。
【0081】
本発明による試験品のための個々のタイプの接着は、ここで、以下のように説明することができる。
【0082】
低い予負荷において、最も長い突起のみが基材と接触する。試験品の接着力は、それゆえ、原理的には、長い突起の数によって決まる。結果として、低い予負荷において、より広い端面が、接着のために利用可能である。
【0083】
中間の予負荷において、負荷の結果として、短い方の突起も表面と接触するまで、長い方の突起が圧縮される。この結果として、基材と接触している突起の数が突然増加する。これは、本質的に2つの効果を有する。一方では、試験品の実効的な剛性が増加する。これは、力/変位曲線の勾配の上昇に現れる。もう一方では、試験品の接触面積が突然増加する。この結果として、引き離し力及び接着効果が著しく増加する。低い予負荷における接着とは異なり、中間の予負荷の場合の引き離し力は、とりわけ、接触に関与する突起のタイプの数、突起のタイプ間の高さの差、及びアスペクト比によって決まるものと予想される。
【0084】
予負荷が特定の値を超える場合には、突起は曲がり、かつ捩じれ始める。これは、可逆的であることが好ましい。
【0085】
曲げは、突起の端面にも影響を及ぼす。その結果として、端面と基材との接触が失われ、接着力が減少する。
【0086】
5.接着の分析
試験品は、2つの異なる端面垂直高を有する2つのタイプの突起を有する。
【0087】
予負荷P
pが閾値P
p,1未満にある場合には、その負荷は、短い方の突起SPが表面と接触するほど、長い方の突起LPを圧縮するのに十分ではない。その際、引き離し力P
cは単に、表面と接触していたLPの数n
LPに、突起LPごとの分離のために必要な接着力F
LPを掛けた値によって決まる。P
p<P
p,1の場合、
P
c=F
LP*n
LP (1)
である。
【0088】
負荷P
p,1に達すると直ちに、第2のタイプの突起SPが表面と接触する。突起の数(n
SP)に応じて、これらの突起は、付加的な力F
SPにより接着に寄与する。しかしながら、他方の突起と接触できるようにするために、長い方の突起LPが圧縮されなければならない。この弾性エネルギーは、LP内に蓄積され、接着力を低減する。蓄積されたエネルギーによって表面に加えられる合力は、突起を圧縮するための力F
compr.LPに、LPの数を掛けた値と同じである。P
p,1<P
p<P
p,2の場合、
P
c=F
LP*n
LP+F
SP*n
SP−F
compr.LP*n
LP (2)
である。ただし、P
p,2は、突起が捩じれ始める負荷である。
【0089】
負荷P
p,2を超える高い負荷において、引き離し力は、「座屈引き離し力」P
c,buckまで降下する。P
p>P
p,2の場合、
P
c=P
c,buckling*(n
LP+n
SP) (3)
【0090】
それゆえ、短い突起及び長い突起の接着力の測定値によって、並びに長い突起を圧縮するために必要な力の測定値によって、そのような試験品の切替可能な接着力を記述するために必要な全てのパラメーターが決定される。突起の接着力F
LP及びF
SPは、円形突起の場合、半径r及びアスペクト比ARによって決まる。圧縮のための力F
compr.LPは、とりわけ、突起のアスペクト比ARと、弾性率Eとに依存する。突起間の結合、又は突起の曲げの起こり得る長さ依存性も考えられるが、この簡略化されたモデルでは、それ以上記述されない。
【0091】
図11〜
図13に示されるように、アスペクト比及び速度は試験品の接着力に影響を及ぼす。本発明において、アスペクト比が増加する結果として、接着力が低下することがわかった。AR4.0及び4.5における違いは無視できるが、AR5.0を有する試験品は、著しく低い接着力を示す。考え得る解釈として、長い方の突起が、曲げ及び捩じれに関して、短い方の突起より安定していないことを挙げることができる。これは、弾性率を適応させることによって補正することができる。
【0092】
速度依存性は、使用される材料PDMSによって説明することもできる。0.1Hz〜100Hzの負荷周波数において、PDMSは粘弾性挙動を示すことができる。これは、一方では、圧縮における弾性を変更する可能性があるだけでなく、表面の接触も変更する可能性がある。いずれの効果も接着力に影響を及ぼす可能性がある。
【0093】
図14、
図15、
図16、
図17、
図18及び
図19は、異なる速度におけるそれぞれのアスペクト比AR4.0、AR4.5及びAR5.0の3つの試験品ごとの負荷に応じた測定された引き離し力を示す。得られた結果は、異なる接着モード(A、B又はC)に割り当てられた。ここで、a1、a2、a3は、接着モードA(すなわち、低い予負荷、LPのみによる接着)に割り当てられた試験品1、2又は3の測定値を表す。測定値b1、b2、b3は、接着モードB(すなわち、中間の予負荷、SP及びLPによる接着)にそれぞれ割り当てられた試験品1、2及び3を表す。測定値c1、c2、c3は、接着モードC(すなわち、高い予負荷、突起の捩じれ及び曲げの結果としての接着力の減少)にそれぞれ割り当てられた試験品1、2及び3を表す。
【0095】
参考文献
D. Paretkar, M. Kamperman, A. S. Schneider, D. Martina, C. Creton, E. Arzt, Materials Science and Engineering: C 2011, 31, 1152.
M. Varenberg, S. Gorb, Journal of the Royal Society Interface 2008, 5, 785.
D. Paretkar, A. S. Schneider, E. Kroner, E. Arzt, Mrs Communications 2011, 1, 53.
【符号の説明】
【0096】
100 構造化表面
104 広げられた端面を有する突起を備える構造化表面
105 垂直高に関して互いに異なる2つのタイプの突起を備える構造化表面
110 パッシベーションのためのシラン層
120 基材
130 液体PDMS
132 PDMS液滴
134 PDMS液滴
135 PDMS
137 PDMSを塗布するための器具
140 加熱された表面
200 構造化表面
205 表面
210 柱幹部/突起
215 端面
220 柱幹部/突起
225 端面
230 基材
500 突起
502 端面
504 ベース面
506 重なり領域
【国際調査報告】