(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-511167(P2018-511167A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】自己修復コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/015 20060101AFI20180323BHJP
H01G 4/18 20060101ALI20180323BHJP
H01G 2/18 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
H01G4/24 301C
H01G4/24 301J
H01G1/11 102
H01G4/24 321C
H01G4/24 331A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-543829(P2017-543829)
(86)(22)【出願日】2016年2月25日
(85)【翻訳文提出日】2017年10月3日
(86)【国際出願番号】US2016019641
(87)【国際公開番号】WO2016138310
(87)【国際公開日】20160901
(31)【優先権主張番号】62/121,328
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/053,943
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517126875
【氏名又は名称】キャパシタ サイエンシス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ケリー−モーガン,イアン エス.ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ラザレフ,パヴェル,イワン
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA11
5E082AB01
5E082BC01
5E082BC36
5E082BC38
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5E082GG08
5E082GG25
5E082LL25
(57)【要約】
自己修復コンデンサは、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置され、かつ前記第1電極と対向する第1表面及び前記第2電極と対向する第2表面を有する誘電体層とを含む。電極の少なくとも1つは金属発泡体を含むことができる。 誘電体層は、誘電体層の第1の表面上に位置する出口点および誘電体層の第2の表面上に位置する別の出口点をそれぞれ有する導電性チャネルを有することができる。電極は、誘電体層と電極との間の界面で電極内に、誘電体層内の各導電性チャネルの少なくとも1つの出口点の反対側に配置された局部接触遮断器を含むことができる。局部接触遮断器は、誘電体層内の導電性チャネルを通る電流を防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己修復コンデンサであって、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と対向する第1の表面と前記第2の電極と対向する第2の表面とを有する誘電体層と、
前記電極は平面状であり、互いにほぼ平行に配置されており、
電極の少なくとも1つは金属発泡体を含む。
【請求項2】
前記金属発泡体は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加した結果、導電性チャネルに電流が流れたときに、前記誘電体層内の前記導電性チャネルの端部で、金属蒸発によって接触遮断器が構成されるように調整されたことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項3】
前記誘電体層は、複数の導電性チャネルを備え、前記導電性チャネルの各々は、前記誘電体層の前記第1の表面上に位置する1つの出口点と、前記誘電体層の前記第2の表面上に位置する別の出口点とを有し、
ただし、前記第1の電極および第2の電極の各々は、前記誘電体層に隣接し少なくとも1つの出口点の反対側に位置する、前記誘電体層内の前記導電性チャネルを通る電流の通過を妨げる少なくとも1つの局部接触遮断器器を含むことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項4】
前記局部接触遮断器は、前記第1の電極及び第2の電極のそれぞれの厚さ全体を貫通する孔であることを特徴とする請求項3に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項5】
前記局部接触遮断器がドーム構造であることを特徴とする請求項3に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項6】
前記金属発泡体がアルミニウム(Al)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項7】
前記金属発泡体がニッケル(Ni)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項8】
前記金属発泡体が鉄(Fe)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項9】
前記金属発泡体が銅(Cu)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項10】
前記金属発泡体の溶融温度が約400〜約700である、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項11】
前記金属発泡体中の金属含有量が約5重量%〜約30重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項12】
前記金属発泡体が密閉気泡型である、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項13】
前記第1の電極が前記金属発泡体を含み、前記第2の電極が箔を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項14】
前記箔がアルミニウム(Al)を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項15】
前記箔がニッケル(Ni)を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項16】
前記箔が鉄(Fe)を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項17】
前記箔が銅(Cu)を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項18】
前記第1の電極は、前記金属発泡体を含み、前記第2の電極は、堆積された薄膜金属を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項19】
前記堆積された薄膜金属がアルミニウム(Al)を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項20】
前記堆積された薄膜金属がニッケル(Ni)を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項21】
前記堆積された薄膜金属が鉄(Fe)を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項22】
前記堆積された薄膜金属がCuを含む、ことを特徴とする請求項18に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項23】
前記金属発泡体の抵抗率は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加した結果、前記誘電体層を通って導電性チャネルを流す電流が流れるとき、前記金属発泡体が前記誘電体層の前にアブレーションされるように調整される、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項24】
前記誘電体層が、以下の一般構造式Iの改質有機化合物を含み、
{Cor}(M)n (I)
ただし、Corは共役π系を有する多環式有機化合物であり、各Mは修飾官能基であり、 nは修飾官能基の数であり、0以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項25】
前記修飾官能基が、アルキル、アリール、置換アルキル、および置換アリールからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項24に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項26】
前記多環式有機化合物が、以下の構造を有する材料を含み、
【化1】
ただし、nは1〜6の範囲の数であり、R1はジイソプロピルフェニールであり、R2はtert‐オクチルフェニルである、ことを特徴とする請求項24に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項27】
前記多環式有機化合物が、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアジン、インダントロンおよび構造1〜41からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項24に記載の自己修復コンデンサ。
【表1】
【請求項28】
前記修飾官能基が、アルキル、アリール、置換アルキル、および置換アリールからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項27に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項29】
前記誘電体層が、フッ素化アルキル、ポリエチレン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリ(フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン)、ポリプロピレン、フッ素化ポリプロピレンおよびポリジメチルシロキサンからなる群から選択される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項30】
前記誘電体層が、構造42〜47から選択される水溶性ポリマーに基づいて形成されたポリマー材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【表2】
【請求項31】
前記誘電体層が、構造48〜53から選択される有機溶媒に可溶なポリマーに基づいて形成されたポリマー材料を含み、
【表3】
ただし、各R1およびR2は、アルキル、アリール、置換アルキル、および置換アリールから独立して選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項32】
前記誘電体層が結晶質である、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項33】
前記誘電体層が、絶縁体マトリックス中の導電性ナノ粒子の微小分散体とコロイド複合体を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項34】
前記導電性ナノ粒子が導電性オリゴマーを含む、ことを特徴とする請求項33に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項35】
前記導電性オリゴマーのそれぞれの長軸が、電極表面に対して垂直に向けられている、ことを特徴とする請求項34に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項36】
前記導電性オリゴマーが、構造54〜60から選択され、
【表4】
ただし、X = 2,3,4,5,6,7,8,9,10,11または12である、ことを特徴とする請求項34に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項37】
前記導電性オリゴマーの各々が、置換基をさらに含み、以下の一般構造式IIを有し、
(導電性オリゴマー)‐Rq (II)
Rは置換基であり、qは0以上の数である、ことを特徴とする請求項34に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項38】
各前記Rが、独立して、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリール、およびそれらの任意の組み合わせである、ことを特徴とする請求項37に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項39】
絶縁マトリックスの材料は、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(N‐ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン)[P(VDF‐HFP)、エチレンプロピレンゴム(EPR)およびエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)を含むエチレンプロピレンポリマー、およびジメチルジクロロシロキサン、ジメチルシランジオールまたはポリジメチルシロキサンなどのシリコーンゴム(PDMSO)を含む、ことを特徴とする請求項33に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項40】
前記誘電体層は、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルおよびドデシルジメチルアミンオキシドから選択される界面活性剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項41】
前記誘電体層が、酸化物、窒化物、酸窒化物およびフッ化物からなる群から選択される材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項42】
前記誘電体層が、SiO2、HFO2、Al2O3およびSi3N4からなる群から選択される材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項43】
前記導電性チャネルは、前記誘電体層の破壊によって一緒に結合された電気的欠陥を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項44】
前記第1の電極および前記第2の電極は、金属発泡体を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自己修復コンデンサ。
【請求項45】
自己修復コンデンサの製造方法であって、以下のステップを含み、
(a)誘電体層によって分離された第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加するステップであって、印加するステップは、電圧を徐々に強化して絶縁破壊を達成するステップを含み、ただし、第1の電極および第2の電極の少なくとも1つは、金属発泡体を含み、
(b)誘電体層の対向する表面上に出口点を有する導電性チャネルを形成するために、第1の電極と第2の電極との間に電界を印加するステップ、
(c)第1の電極および第2の電極に電流を流すステップであって、以下を含み、(i)第1の電極および第2の電極の少なくとも一方にジュール加熱を生じさせ、(i i)第1の電極および第2の電極の少なくとも1つに局部接触遮断器を形成し、局部接触遮断器が出口点に隣接してまたは近接して形成され、そして
(d)局部接触遮断器の形成時に電流の印加を終了するステップ。
【請求項46】
前記電流の印加は、前記局部接触遮断器を形成するのに十分な量の金属が前記第1の電極および第2の電極の少なくとも1つから蒸発したときに終了する、ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、Pavel I.Lazarevにより2015年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/121,328号の優先権を主張し、その全体内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、静電界の形態でエネルギーを蓄積するために使用される受動電子部品であり、誘電体層によって分離された一対の電極を含む。2つの電極間に電位差が存在すると、誘電体層に電界が存在する。理想的なコンデンサは、各電極上の電荷とそれらの間の電位差との比である静電容量の単一の一定値によって特徴付けられる。実際には、電極間に位置する誘電体層は少量の漏れ電流を通過することがある。 電極およびリード線は等価直列抵抗を導入させ、誘電体層は破壊電圧をもたらす電界強度に制限を有する。
【0003】
ブレークダウン強度Ebdとして知られる特性電界は、コンデンサ内の誘電体層に導電性をもたらす電界である。これが起こる電圧は、デバイスの絶縁破壊電圧と呼ばれ、絶縁耐力と電極間の距離(距離)dの積で与えられ、
Vbd = Ebdd (1)
【0004】
コンデンサに蓄積される最大体積エネルギー密度は、~ε・E2bdに比例する値によって制限され、ここで、εは誘電体層の誘電率であり、Ebdは降伏耐圧である。したがって、コンデンサの蓄積エネルギーを増加させるためには、誘電体の透磁率εおよび誘電体の絶縁破壊強度Ebdを高める必要がある。
【0005】
高電圧用途では、はるかに大きなコンデンサを使用することができる。 ブレークダウン電圧を劇的に下げる要因はいくつかある。導電性電極の形状は、コンデンサの用途にとって重要である。 特に、鋭いエッジまたは点は、電界強度を局部的に著しく増大させ、局部的な破壊に至り得る。ある時点で局部破壊が始まると、破壊は誘電体層を透過して反対の電極に達する。 ブレークダウントレース(導電性チャネル)は導通しており、短絡を引き起こす。
【0006】
誘電体層の破壊は、通常、電場の強度が誘電体の原子から電子を解放し、一方の電極から他方の電極へ電流を伝導させるのに十分に高くなるために生じる。誘電体中の不純物または結晶構造の不完全性(電気的欠陥)の存在によっては、半導体デバイスにおいて観察されるようなアバランシェブレークダウンを生じ得る。このようにして、絶縁破壊が起こると、誘電体層に導電性チャネルが形成される。これらのチャネルは、誘電体層の両面に出口点を有する。
【0007】
エネルギー蓄積装置としてのコンデンサは、電気化学的エネルギー蓄積と比較して、周知の利点を有する。バッテリーと比較して、コンデンサは、非常に高い電力密度、すなわち充電/再充電速度でエネルギーを蓄積することができ、劣化の少ない長い貯蔵寿命を有し、数十万回または数百万回充電および放電(サイクル)することができる。しかし、蓄電器は、バッテリのように小さな体積または重量で、まはたエネルギー蓄積コストの低くてエネルギーを蓄積しないことが多くので、電気自動車などの一部のアプリケーションではコンデンサが実用的ではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、自己修復コンデンサおよびその製造方法を提供する。本発明の自己修復コンデンサは、あるエネルギー蓄積デバイスに関連する、蓄積するエネルギーの体積密度および質量密度を増加する問題を解決するとともに、材料および製造プロセスのコストを低減することができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一態様では、自己修復コンデンサは、第1の電極と、第2の電極と、および前記第1および第2の電極の間に配置され、かつ前記第1の電極と対向する第1の表面および前記第2の電極と対向する第2の表面を有する誘電体層とを含む。電極の少なくとも1つは金属発泡体を含む。前記誘電体層は、誘電体層の第1の表面上に位置する1つの出口点と、誘電体層の第2の表面上に位置する別の出口点とをそれぞれ有する複数の導電性チャネルを有する。前記第1および第2の電極の各々は、前記誘電体層に隣接し、少なくとも1つの出口点の反対側に位置する、前記誘電体層内の前記導電性チャネルを通る電流の通過を妨げる少なくとも1つの局部接触遮断器を含む。電極は平面状であり、必ずしも平坦ではないが、互いにほぼ平行または実質的に平行であり得る。電極は、並列構成からオフセットさせることができる。
【0010】
別の態様では、金属発泡体からなる少なくとも1つの電極を有する自己修復コンデンサを製造する方法であって、a)コンデンサ電極に電圧を印加し、誘電体の電気的破壊まで電圧の大きさを徐々に強化するステップと、b)電場の影響下で、誘電体層の両面に出口点を有する導電性チャネルを形成するステップと、c)これらの出口点に近い電極内に、ブレークダウンによって誘発された電流による金属のジュール加熱により、局部接触遮断器(貫通孔およびドーム構造(dome structure))を形成するステップと、d)電極の金属がこれらの出口点の周囲で蒸発したときに電流を停止するステップとを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のさらなる態様および利点は、本発明の例示的な実施形態のみが示され記載される以下の詳細な説明により、当業者に容易に明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、開示から逸脱することなく様々な明白な点で変更可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
参照による組み込み
【0012】
個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されているのと同程度に、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。 本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、自己修復コンデンサを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の様々な実施形態が本明細書に示され説明されてきたが、そのような実施形態が単なる例示として提供されることは、当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、および置換が当業者に生じ得る。本明細書に記載された本発明の実施形態の様々な代替物を使用することができることを理解されたい。金属化されたポリプロピレンフィルムからなるコンデンサは、電気的欠陥が弱いために部分放電を起こし、自己修復と呼ばれる保護機構を有する。自己修復は、絶縁破壊によって大きな電流密度が局部電極領域を加熱し金属を蒸発させてなる欠陥に流れ込む場合に発生する。この事象は、永久的な短絡を形成するのではなく、破壊部位で電気的絶縁を形成し、コンデンサがわずかな活性領域の損失で動作し続けることを可能にする。これらの欠陥は、電極の十分な金属がこの点の周囲で気化すると消す電気アークによって破壊される可能性がある。自己修復の揮発領域は、局部破壊によって誘発された電流パルスによる金属のジュール加熱によるものであり、局部放電は停止する(アーク消滅)が、フィルムに印加される電圧は一定であるが、電力密度はある臨界電力密度よりも低くなる。
【0015】
誘電体材料の他の重要な特性は、誘電率である。コンデンサには様々な種類の誘電体が使用され、セラミックと、ポリプロピレン、ポリエステルなどのポリマーフィルムと、紙と、各種電解コンデンサとなどがある。誘電率の増加は、体積エネルギー密度の増加をも たらすことができる。
【0016】
本発明は、自己修復コンデンサを提供する。本発明の一実施形態では、第1の電極は、第1の電極内に誘電体層と第1の電極との間の境界上に配置された局部接触遮断器(不連続、不規則)を有する。これらの局部接触遮断器は、誘電体層の第1の表面上に位置するすべての出口点の反対側に位置する。局部接触遮断器は、誘電体層内の導電性チャネルを通る電流を防止する。第2の電極は、第2の電極内に誘電体層と第2の電極との間の境界上に配置された局部接触遮断器(不連続、不規則)を有する。これらの局部接触遮断器は、誘電体層の第2の表面上に位置するすべての出口点の反対側に位置する。局部接触遮断器は、誘電体層内の導電性チャネルを通る電流を防止する。局部接触遮断器は、「バーンイン(burn-in)」工程の一部としてコンデンサ製造プロセス中に形成されてもよく、またはコンデンサの長期使用の結果として形成されてもよい。
【0017】
局部接触遮断器の形態は、a)電極の全厚を貫通するリーチスルーホール(ギャップ、開口部)と、b)電極の内側(電極内)に誘電体層との境界に位置するドーム構造とを含むリストから選択することができる。
【0018】
導電性チャネルは、誘電体層の材料内に電気アークによる誘電体層の電気的破壊の過程で形成される。出口点の近くの電極内の局部接触遮断器の形成は、破壊によって誘発された電流による金属のジュール加熱により行われる。本発明の別の実施形態では、金属発泡体の金属はAl、Ni、FeまたはCuである。金属発泡体は、固体金属だけでなく、大量のガス充填孔(「気泡」)からなるセルラー構造である。細孔は密閉する(独立気泡発泡体:closed-cell foam)ことも、相互接続網(連続気泡発泡体:open-cell foam)を形成することもできる。
【0019】
金属発泡体の特徴は、非常に高い気孔率、例えば、容積の75〜95%で、これらの超軽量材料に形成された空隙からなることができることである。金属発泡体は、典型的には、それらの基材のいくつかの物理的性質を有することができる。非可燃性金属から作られた発泡体は非可燃性のままであり、発泡体はその基材にリサイクル可能である。熱膨張係数も同様のままであり、一方、熱伝導率は低下し得る。
【0020】
自己修復コンデンサの別の実施形態では、金属発泡体の溶融温度は、約400℃〜約700℃の範囲にある。自己修復コンデンサのさらに別の実施形態において、電極用金属発泡体中の金属含有量は、約5体積%〜約30体積%の範囲にある。いくつかの実施形態では、金属発泡体の抵抗率は、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加した結果、誘電体層を通って導電性チャネルを流す電流が流れるとき、金属発泡体が誘電体材料の前でアブレーションするように調整してもよい。抵抗率を調整することはおもに、金属の選択と発泡体の気孔率の調整との問題である。
【0021】
自己修復コンデンサのさらに別の実施形態では、金属発泡体は、金属含量当たり最大コンダクタンスを有する密閉気泡型のものである。誘電体層との境界にある金属発泡体電極の内側(内)に位置するドーム構造は、金属発泡体内の気泡を分離する金属隔壁(隔壁、仕切り板)の溶融および/または蒸発の結果として、電気アークの高温により形成される。気泡の合体は、液体金属の表面張力が高く、気泡が多いために行われる。従って、気泡の合体は、金属発泡体電極の層の内側のドーム構造の局部接触遮断器を形成する。金属発泡電極の全厚さを貫通する孔(間隙、開口部)は、電気アークの高温および液体金属の高い表面張力により金属が蒸発するために形成される。本発明の一実施形態では、気泡のサイズまたは平均粒子サイズは、約100nm〜約100000nmの範囲にある。
【0022】
自己修復コンデンサの別の実施形態では、第1の電極および第2の電極は金属発泡体を含む。自己修復コンデンサの別の実施形態では、第1の電極は金属発泡体を含み、第2の電極は箔を含む。自己修復コンデンサのさらに別の実施形態では、前記箔の金属はAl、Ni、FeまたはCuである。
【0023】
自己修復コンデンサの別の実施形態では、第1の電極は金属発泡体を含み、第2の電極は、約20ナノメートル(nm)〜約2000nmの範囲の膜厚を有する堆積薄膜金属を含む。自己修復コンデンサの別の実施形態では、堆積された薄膜金属はAl、Ni、FeまたはCuである。箔および析出した金属薄膜のドーム構造および孔(隙間、開口部)は、電気アークの高温および液体金属の高い表面張力により金属の溶融および/または蒸発の結果として形成される。
【0024】
本発明の一実施形態では、誘電体層は結晶質である。誘電体層は、単結晶材料、バッチ結晶材料、または非晶質材料を含む任意の適切な結晶材料から製造することができる。
【0025】
誘電体層は、使用される材料および製造手順に応じて、非晶質および結晶質の固体層の間の範囲において異なる構造を有することができる。本発明の自己修復コンデンサの一実施形態では、誘電体層は、酸化物、窒化物、酸窒化物およびフッ化物から選択される材料を含む。本発明の自己修復コンデンサの別の実施形態では、誘電体層は、SiO
2、HFO
2、Al
2O
3およびSi
3N
4から選択される材料を含む。本発明の自己修復コンデンサの一実施形態において、誘電体層は、以下の一般構造式Iを有し、
{Cor}(M)
n (I)
式中、Corは共役π系を有する多環式有機化合物であり、Mは修飾官能基であり、nは修飾官能基の数であり、0以上である。本発明の別の実施形態では、多環式有機化合物は、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアイジンまたはインダントロンである。非限定的な例を表1に示す。
【表1】
【0026】
本発明の別の実施形態において、多環式有機化合物は、以下の式のアリーレン染料である。
【化1】
nは0,1,2,3,4,5または6に等しく、R
1はジイソプロピルフェニルであり、R
2はtert‐オクチルフェニルである。本発明の別の実施形態において、修飾官能基は、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、またはそれらの任意の組み合わせである。修飾官能基は、製造段階での有機化合物の溶解性および自己修復コンデンサの誘電体層への追加の絶縁特性を提供する。本発明の別の実施形態では、誘電体層は、フッ素化アルキル、ポリエチレン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリ(フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン)、ポリプロピレン、フッ素化ポリプロピレンまたはポリジメチルシロキサンなどの高分子材料を含む。本発明の別の実施形態において、誘電体層は、表2の繰り返し基を有するポリマーを含むポリマー材料を含む。
【表2】
【0027】
本発明の別の実施形態において、誘電体層は、表3の繰り返し基を含むポリマー材料を含む。
【表3】
修飾官能基R
1およびR
2は、独立して、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0028】
本発明の一実施形態では、誘電体層は、少なくとも部分的に、全体的にまたは実質的に完全に結晶質である。代替として、誘電体層はアモルファスである。本発明の一実施形態では、誘電体層は、絶縁体マトリックス中に導電性ナノ粒子の微小分散体を有するコロイド状複合体を含む。本発明の別の実施形態では、導電性ナノ粒子は、導電性オリゴマーを含む。本発明のさらに別の実施形態では、導電性オリゴマーの長手方向軸は、電極表面に対して主に垂直に向けられる。導電性オリゴマーの繰り返し基の非限定的な例を表4に示す。
【表4】
ここで、X=2,3,4,5,6,7,8,9,10,11または12である。本発明の自己修復コンデンサの別の実施形態では、導電性オリゴマーは、置換基をさらに含み、以下により説明される一般構造式IIを有し:
(導電性オリゴマー)‐Rq (II)
自己修復コンデンサのさらに別の実施形態において、置換基Rは、独立して、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、またはそれらの任意の組み合わせである。自己修復コンデンサの別の実施形態では、絶縁マトリックスの材料は、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(N‐ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン)[P(VDF‐HFP)、エチレンプロピレンゴム(EPR)およびエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)を含むエチレンプロピレンポリマー、およびジメチルジクロロシロキサン、ジメチルシランジオールまたはポリジメチルシロキサンなどのシリコーンゴム(PDMSO)を含む。これらの化合物は安定剤として作用し、導電性ナノ粒子を巨視的凝集から保護することができる。
【0029】
本発明の別の実施形態では、誘電体層は、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルおよびドデシルジメチルアミンオキシドなどの界面活性剤を含む。
【0030】
本発明の一実施形態では、導電性チャネルは、誘電体層の破壊によって一緒に結合された電気的欠陥によって特徴付けられる。本発明の別の実施形態では、金属発泡体が高い剛性を有するので、金属発泡体を含む電極は、コンデンサの担持素子として働く。
【0031】
本発明はまた、上記で開示した自己修復コンデンサの製造方法を提供する。
【0032】
図1は、第1の電極1、誘電体層2、第2の電極3、導電性チャネル4、出口点5、別の出口点6、誘電体層の第1の表面7、誘電体層の第2の表面8、貫通孔(開口部)9、および電極内のドーム構造10を含む開示された自己修復コンデンサの実施形態を示す。
第1の実施形態
【0033】
本発明のこの実施形態では、誘電体層は、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)の存在下でのポリアクリル酸(PAA)の水性分散液中のアニリンの現場重合を用いて合成されたポリアニリンとPANI‐DBSA/PAAとの複合体を含む。誘電体層の厚さは50μmに等しい。ポリアニリンとPANI‐DBSA/PAAとの複合体は、誘電率が100000である。 電極は、アルミニウム(Al)を含む金属発泡体からなる。これらの電極の厚さは10nmに等しい。 発泡体の溶融温度は約400℃であり、これらの電極の発泡体中の金属含有量は約30重量%である。発泡体は、金属含有量当たり最大コンダクタンスを有する密閉気泡型である。気泡のサイズは、約100nmから約10000nmの範囲内にある。
第2の実施形態
【0034】
本発明のこの実施形態では、誘電体層は、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)の存在下でのポリアクリル酸(PAA)の水性分散液中のアニリンの現場重合を用いて合成されたポリアニリンとPANI‐DBSA/PAAとの複合体を含む。誘電体層の厚さは50μmに等しい。ポリアニリンとPANI‐DBSA/PAAとの複合体は、100000に等しい誘電率を有する。 第1の電極は、アルミニウム(Al)を含む金属発泡体からなる。この電極の厚さは10nmに等しい。第2の電極は、アルミニウム(Al)を含む金属箔からなる。この電極の厚さは10nmに等しい。発泡体の溶融温度は約400℃であり、これらの電極の発泡体中の金属含有量は約30重量%である。発泡体は、金属含有量当たり最大コンダクタンスを有する密閉気泡型である。気泡のサイズは、約100ナノメートル(nm)〜100000nmの範囲内であり得る。
第3の実施形態
【0035】
本発明のこの実施形態では、誘電体層は、誘電体層は、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)の存在下でのポリアクリル酸(PAA)の水性分散液中のアニリンの現場重合を用いて合成されたポリアニリンとPANI‐DBSA/PAAとの複合体を含む。誘電体層の厚さは50μmに等しい。ポリアニリンとPANI‐DBSA/PAAとの複合体は、誘電率が100000である。第1の電極は、アルミニウム(Al)を含む金属発泡体からなる。 この電極の厚さは10nmに等しい。第2の電極は、アルミニウム(Al)を含む堆積された薄膜金属からなる。この電極の厚さは10nmに等しい。発泡体の溶融温度は約400℃であり、これらの電極の発泡体中の金属含有量は約30重量%である。発泡体は、金属含有量当たり最大コンダクタンスを有する密閉気泡型である。気泡のサイズは、約100nmから約100000nmの範囲内にある。
【0036】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され説明されたが、そのような実施形態が単なる例示として提供されることは、当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書中に提供される特定の例によって限定されるものではない。本発明を上記の明細書を参照して説明したが、本明細書の実施形態の説明および図解は、限定的な意味で解釈されることを意味しない。本発明から逸脱することなく、当業者には数多くの変形、変更、および置換が可能である。さらに、本発明の全ての態様は、様々な条件および変数に依存する本明細書に記載の特定の描写、構成または相対的な比率に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明の実施中に採用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、そのような代替、修正、変形、または均等物も網羅することが意図される。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造およびそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図される。
【国際調査報告】