(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-511405(P2018-511405A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】治療インプラントの標的送出用のデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20180330BHJP
【FI】
A61M5/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-551129(P2017-551129)
(86)(22)【出願日】2015年4月1日
(85)【翻訳文提出日】2017年10月6日
(86)【国際出願番号】US2015023789
(87)【国際公開番号】WO2016160004
(87)【国際公開日】20161006
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517295698
【氏名又は名称】ユーエヌエル ホールディングス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】UNL Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウェッツェル、ランス
(72)【発明者】
【氏名】シェティ、ゴータム エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー、アーロン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ、ロバート スコット
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB10
4C066CC01
4C066CC06
4C066DD08
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4C066FF03
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4C066GG16
4C066KK05
4C066KK08
4C066KK19
4C066NN02
(57)【要約】
バレル(218)と、プランジャ(212)とを有するシリンジ(200)のためのバレルアダプタ(220)。アダプタは、バレル先端部(232)と、針後退機構(211)とを含み、針後退機構(211)は、針(201)及びルーメンを有する針サブアセンブリ(221)と、アクチュエータサブアセンブリ(210)と、付勢部材(240)とを有する。針サブアセンブリは、バレル先端部内において注入位置から後退位置に動く。アクチュエータサブアセンブリは、バレル先端部に接続された保持器(224)と、スタイレットディスク(214)内に保持されたスタイレット(254)と、保持器内に延びるプロング(242)とを含む。スタイレットは、針ルーメン内を摺動し、且つ注入位置において針先端部から離間される。付勢部材は、保持器からNOMを付勢する。ロック機構は、ロックされているときに付勢部材を圧縮し、且つプランジャの押下によって作動されるときに付勢部材を解放し、これがプロングを保持器に対して動かす。付勢部材は、解放されると、針及びスタイレットを注入位置から後退位置へと動かす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル(218)と、前記バレル内で動くように適合されたプランジャアセンブリ(212)とを有する送出シリンジ(200)のためのバレルアダプタ(220)であって、
前記バレルの遠位端と密閉的に係合するように構成されたバレル先端部(232)と、
針後退機構(211)であって、
針(201)と、針オーバーモールド部(222)であって、それを通して前記針が延出する、針オーバーモールド部(222)とを含む針サブアセンブリ(221)であって、前記針は、ルーメンを有し、前記針サブアセンブリは、少なくとも部分的に前記バレル先端部内に配置され、且つ前記バレル先端部の遠位端から前記針が延出する注入位置から、前記針が前記バレル先端部又は前記バレルのうちの少なくとも1つの中に配置される後退位置へと動くように適合されている、針サブアセンブリ(221)と、
前記バレル先端部に接続された針オーバーモールド部保持器(224)と、スタイレット(254)と、前記スタイレットの近位端を保持するスタイレットディスク(214)と、前記スタイレットディスクを通り、且つ前記針オーバーモールド部保持器へと達する少なくとも1つのプロング(242)とを含むアクチュエータサブアセンブリ(210)であって、前記少なくとも1つのプロングは、前記バレル内における前記プランジャアセンブリの動きに応答して作動可能であり、前記スタイレットは、軸方向に摺動可能であり、且つ少なくとも部分的に前記針ルーメン内に配置されており、及び前記スタイレットは、近位に配置され、且つ前記針が前記注入位置にあるときに前記針の遠位先端部から離間される、アクチュエータサブアセンブリ(210)と、
前記針オーバーモールド部を前記針オーバーモールド部保持器から離れる方に付勢するために、前記針オーバーモールド部と前記針オーバーモールド部保持器との間に配置された少なくとも1つの付勢部材(240、241)と
を含む、針後退機構(211)と、
作動可能なロック機構であって、前記ロック機構がロックされているときに前記少なくとも1つの付勢部材を付勢位置に維持し、且つ前記アクチュエータサブアセンブリによって作動されるときに前記付勢部材を解放するように配置されており、前記プランジャアセンブリの押下により、前記少なくとも1つのプロングを前記針オーバーモールド部保持器に対して動かすように作動可能であり、前記少なくとも1つの付勢部材は、前記注入位置から前記後退位置への前記針及びスタイレットの相対運動を提供するために配置されている、作動可能なロック機構と
を含む、バレルアダプタ。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記針オーバーモールド部と前記針オーバーモールド部保持器との間に解放可能なカップリングを含む、請求項1に記載のバレルアダプタ。
【請求項3】
前記解放可能なカップリングは、前記針オーバーモールド部保持器の少なくとも1つの保持器アーム(234)と前記針オーバーモールド部の針オーバーモールド部シェルフ(235)との間に形成されている、請求項2に記載のバレルアダプタ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロングの作動端部(243)は、前記プランジャアセンブリの押下に応答して、前記少なくとも1つの保持器アームを前記針オーバーモールド部シェルフと係脱させて前記ロック機構を作動させるように構成されている、請求項3に記載のバレルアダプタ。
【請求項5】
2つのプロング及び2つの保持器アームを更に含む、請求項4に記載のバレルアダプタ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロングの近位端(237)は、前記プランジャアセンブリ内に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバレルアダプタ。
【請求項7】
前記スタイレットディスクは、前記プランジャアセンブリの押下が前記ロック機構の前記作動を生じさせる前に、前記プランジャアセンブリの前記押下が前記針ルーメン内における前記スタイレットの最初の軸方向の動きをもたらすように、前記プランジャアセンブリに隣接して配置されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバレルアダプタ。
【請求項8】
前記針ルーメンは、インプラント(129)と、前記インプラントの遠位に配置されたプラグ(127)とを受け入れるように構成されており、前記スタイレットディスクは、前記スタイレットの前記最初の軸方向の動きが、前記インプラントを前記針から押し出すことなく前記プラグを前記針から押し出すように配置されている、請求項7に記載のバレルアダプタ。
【請求項9】
前記針サブアセンブリは、前記針オーバーモールド部に隣接して配置された針ハブ(216)を更に含み、前記針ハブは、前記針の後退時に前記スタイレットディスクに係合するように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバレルアダプタ。
【請求項10】
前記針は、前記針が前記後退位置に配置されているときに、前記バレル先端部又は前記バレルのうちの少なくとも1つの中に配置されている、請求項1に記載のバレルアダプタ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のバレルアダプタを含む自動的に後退可能な送出シリンジ(200)であって、バレル(218)と、前記バレル内で動くように構成されたプランジャアセンブリ(212)とを含む、自動的に後退可能な送出シリンジ。
【請求項12】
請求項13に記載の自動的に後退可能な送出シリンジを組み立てる方法であって、
前記針オーバーモールド部保持器と前記針サブアセンブリとの間に前記少なくとも1つの付勢部材を配置するステップと、
前記針オーバーモールド部を前記針オーバーモールド部保持器と作動可能にロックして、作動可能なロック機構であって、前記ロック機構がロックされているときに、前記少なくとも1つの付勢部材を、前記針オーバーモールド部を前記針オーバーモールド部保持器から離れる方に付勢する前記付勢位置に維持し、且つ作動されるときに前記付勢部材を解放する、作動可能なロック機構を形成するステップと、
前記針の遠位端が前記バレル先端部を通して延出している状態で、前記針サブアセンブリの少なくとも一部分を前記バレル先端部内に配置するステップと、
前記スタイレットディスクから延出する前記スタイレットを前記針の近位端内に配置するステップと、
前記プロングの遠位端が前記作動可能なロック機構の近位に配置されている状態で、前記少なくとも1つのプロングを前記スタイレットディスクの少なくとも1つの開口部を通して配置するステップと、
前記プランジャアセンブリを前記バレル内で動くように配置するステップと、
前記プランジャによる軸方向の動きのために前記少なくとも1つのプロングを前記バレル内に配置するステップと、
前記スタイレットディスク及び前記作動可能なロック機構を前記バレル内に配置し、且つ前記バレル先端部を前記バレルの遠位端と密閉的に係合するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記針ルーメンは、インプラントと、前記インプラントの遠位に配置されたプラグとを受け入れるように構成されており、前記方法は、前記プランジャアセンブリの押下が前記ロック機構の前記作動を生じさせる前に、前記プランジャアセンブリの前記押下が、前記インプラントを前記針から押し出すことなく前記プラグを前記針から押し出す、前記針ルーメン内における前記スタイレットの最初の軸方向の動きをもたらすように、前記スタイレットディスクを前記プランジャアセンブリに隣接して配置するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療インプラントの標的送出用のデバイスに関する。より具体的には、本発明の実施形態は、薬剤インプラントを特定の位置に配置することができる送出システム、薬剤インプラント、ビーズ、丸剤又はカプセル剤の送出を容易にする後退可能なカニューレを有するシリンジ、このようなデバイスを製造する方法、及びこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の療法は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病黄斑浮腫等などの疾患の治療法に変革をもたらしている。人口の高齢化及び糖尿病の羅患率の増加は眼疾患の治療で使用される治療法の需要を押し上げている。いくつかの製薬会社は、すでに市販されている薬剤を有する治療法に加え、この領域における新たな治療法の開発に積極的に取り組んでいる。
【0003】
現在、滲出型の加齢黄斑変性症の治療に使用されている最も一般的な薬剤は血管新生阻害剤である。この薬剤は、通常、眼の硝子体部分(眼の水晶体後方から網膜までを埋める透明なゼリー状物質)に注入される。ほとんどの治療では月1回の注入を必要とする。注入には、患者の不便に加え、眼内炎などの感染症に罹患するいくらかのリスクを伴う。また、臨床医が治療する必要がある患者数の増加は、医療システム全体の負担となる。
【0004】
薬剤インプラント又は薬剤デポには、薬剤が標的部位内で効果を持続する時間を増加する可能性がある。これにより、患者が注入による治療を要する頻度が低下するため、医療システムへの負担を低減すると共に、患者に対する注入関連のリスクの可能性も低下させる。
【0005】
このようなインプラント又はデポ剤を留置又は配置するためのデバイスは、理想的には、臨床医にとって使用が簡単であるべきであり、患者の不快感を最小限とすべきであり、薬剤インプラント又はデポ剤の薬剤送出動力学を変えるべきではない。インプラントを留置/配置するために使用されている現在のデバイスは、通常、臨床医側におけるかなりの訓練が必要であり、患者の痛みを伴い(場合によっては有害であることに加えて)、インプラントを損傷するおそれのある顕著な剪断力を与える。インプラントの物理的損傷は、薬剤送出動力学、結果として、薬剤の臨床的有効度及び/又は規制順守を変える可能性がある。現在のデバイスは、通常、インプラント又はデポ剤の正確な位置決めも勘案していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記した問題を解決することができる治療インプラントの標的送出用のデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様によれば、バレルと、バレル内で動くように適合されたプランジャアセンブリとを有する送出シリンジのためのバレルアダプタが提供される。バレルアダプタは、バレルの遠位端と密閉的に係合するように構成されたバレル先端部を含む。バレルアダプタは、また、針サブアセンブリと、アクチュエータサブアセンブリと、少なくとも1つの付勢部材とを含む針後退機構を含む。針サブアセンブリは、針と、針オーバーモールド部であって、それを通って針が延出する、針オーバーモールド部とを含む。針は、ルーメンを有し、針サブアセンブリは、少なくとも部分的にバレル先端部内に配置され、且つバレル先端部の遠位端から針が延出する注入位置から、針がバレル先端部又はバレルのうちの少なくとも1つの中に配置される後退位置へと動くように適合されている。アクチュエータサブアセンブリは、バレル先端部に接続された針オーバーモールド部保持器と、スタイレットと、スタイレットの近位端を保持するスタイレットディスクとを含む。アクチュエータサブアセンブリは、また、スタイレットディスクを通り、且つ針オーバーモールド部保持器へと達する少なくとも1つのプロングを含む。少なくとも1つのプロングは、バレル内におけるプランジャアセンブリの動きに応答して作動可能である。スタイレットは、軸方向に摺動可能であり、且つ少なくとも部分的に針ルーメン内に配置されており、及びスタイレットは、近位に配置され、且つ針が注入位置にあるときに針の遠位先端部から離間される。少なくとも1つの付勢部材は、針オーバーモールド部を針オーバーモールド部保持器から離れる方に付勢するために、針オーバーモールド部と針オーバーモールド部保持器との間に配置されている。バレルアダプタは、また、ロック機構がロックされているときに少なくとも1つの付勢部材を付勢位置に維持し、且つアクチュエータサブアセンブリによって作動されるときに付勢部材を解放するように配置されている作動可能なロック機構を含む。ロック機構は、プランジャアセンブリの押下により、少なくとも1つのプロングを針オーバーモールド部保持器に対して動かすように作動可能である。少なくとも1つの付勢部材は、付勢部材が付勢位置から解放されると、注入位置から後退位置への針及びスタイレットの相対運動を提供するために配置されている。
【0008】
本発明の別の態様では、自動的に後退可能なインプラント送出シリンジが提供される。送出シリンジは、遠位端と近位端とを有するバレルと、バレル内で動くように構成されたプランジャアセンブリとを含む。送出シリンジは、バレルの遠位端と密閉的に係合しているバレル先端部と、針後退機構とを含む。針後退機構は、針サブアセンブリと、アクチュエータサブアセンブリと、少なくとも1つの付勢部材とを含む。針サブアセンブリは、針と、針オーバーモールド部であって、それを通って針が延出する、針オーバーモールド部とを含む。針は、ルーメンを有し、針サブアセンブリは、少なくとも部分的にバレル先端部内に配置され、且つバレル先端部の遠位端から針が延出する注入位置から、針がバレル先端部又はバレルのうちの少なくとも1つの中に配置される後退位置へと動くように適合されている。アクチュエータサブアセンブリは、バレル先端部に接続された針オーバーモールド部保持器と、スタイレットと、スタイレットの近位端を保持するスタイレットディスクとを含む。アクチュエータサブアセンブリは、また、スタイレットディスクを通り、且つ針オーバーモールド部保持器へと達する少なくとも1つのプロングを含む。少なくとも1つのプロングは、バレル内におけるプランジャアセンブリの動きに応答して作動可能である。スタイレットは、軸方向に摺動可能であり、且つ少なくとも部分的に針ルーメン内に配置されており、及びスタイレットは、近位に配置され、且つ針が注入位置にあるときに針の遠位先端部から離間される。少なくとも1つの付勢部材は、針オーバーモールド部を針オーバーモールド部保持器から離れる方に付勢するために、針オーバーモールド部と針オーバーモールド部保持器との間に配置されている。送出シリンジは、ロック機構がロックされているときに少なくとも1つの付勢部材を付勢位置に維持し、且つアクチュエータサブアセンブリによって作動されるときに付勢部材を解放するように配置されている作動可能なロック機構を含む。ロック機構は、プランジャアセンブリの押下により、少なくとも1つのプロングを針オーバーモールド部保持器に対して動かすように作動可能である。少なくとも1つの付勢部材は、付勢部材が付勢位置から解放されると、注入位置から後退位置への針及びスタイレットの相対運動を提供するために配置されている。
【0009】
本発明の更に別の態様では、自動的に後退可能な送出シリンジを組み立てる方法が提供される。方法は、プランジャアセンブリをバレル内で動くように配置し、且つバレル先端部をバレルの遠位端と密閉的に係合するステップと、針サブアセンブリをバレル内に配置するステップとを含む。針サブアセンブリは、針と、針オーバーモールド部であって、それを通って針が延出する、針オーバーモールド部とを含む。針は、ルーメンを有し、針サブアセンブリは、少なくとも部分的にバレル先端部内に配置され、且つバレル先端部の遠位端から針が延出する注入位置から、針がバレル先端部又はバレルのうちの少なくとも1つの中に配置される後退位置へと動くように適合されている。方法は、また、バレル内にアクチュエータサブアセンブリを配置するステップを含む。アクチュエータサブアセンブリは、バレル先端部に接続された針オーバーモールド部保持器と、スタイレットと、スタイレットの近位端を保持するスタイレットディスクとを含む。アクチュエータサブアセンブリは、スタイレットディスクを通り、且つ針オーバーモールド部保持器へと達する少なくとも1つのプロングを含む。少なくとも1つのプロングは、バレル内におけるプランジャアセンブリの動きに応答して作動可能である。スタイレットは、軸方向に摺動可能であり、且つ少なくとも部分的に針ルーメン内に配置されており、及びスタイレットは、近位に配置され、且つ針が注入位置にあるときに針の遠位先端部から離間される。方法は、針オーバーモールド部を針オーバーモールド部保持器から離れる方に付勢するために、針オーバーモールド部と針オーバーモールド部保持器との間に少なくとも1つの付勢部材を配置するステップを含む。方法は、また、針オーバーモールド部をロック機構内の針オーバーモールド部保持器に作動可能にロックして、ロック機構がロックされているときに、少なくとも1つの付勢部材を付勢位置に維持し、且つアクチュエータサブアセンブリによって作動されるときに付勢部材を解放するステップを含む。ロック機構は、プランジャアセンブリの押下により、少なくとも1つのプロングを針オーバーモールド部保持器に対して動かすように作動可能である。少なくとも1つの付勢部材は、付勢部材が付勢位置から解放されると、注入位置から後退位置への針及びスタイレットの相対運動を提供するために配置されている。
【0010】
本明細書全体を通して、特に指示がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」、又は「包含する」、又は「からなる」などの関連用語は、排他的ではなくむしろ包括的に使用される。そのため、記載される整数又は整数群は1つ以上の他の記載されていない整数又は整数群を含んでもよい。以下に更に記載されるように、本発明の実施形態は、医療デバイス業界で標準的な構成要素とみなされ得る1つ以上の追加構成要素を含んでもよい。構成要素及びこのような構成要素を含む実施形態は、本発明の企図の範囲内であり、本発明の範疇及び範囲内であると理解されるべきである。
【0011】
本明細書中、以下の本発明の非限定的な実施形態は、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による送出システムを含む送出シリンジの第1実施形態の側立面図である。
【
図2】
図1に示される実施形態の長手方向の軸線に沿った分解組立図である。
【
図3A】本発明の一実施形態によるバレルアダプタの拡大側面図を示す。
【
図3B】長手方向の軸線に沿った
図3Aのバレルアダプタの側断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図3C】針アセンブリをバレルアダプタの他の構成要素から分離した、
図3Aのバレルアダプタの部分分解組立側面図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態によるロック機構の等角図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態によるバレル先端部の等角図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による、プロングベースと、スタイレットディスクと、スタイレットとを含む作動機構の等角図を示す。
【
図7A】シリンジが針注入の段階を進む際の、本発明の一実施形態によるバレルアダプタを含む送出シリンジの側立面図を示す。
【
図7B】シリンジが針後退作動の段階を進む際の、本発明の一実施形態によるバレルアダプタを含む送出シリンジの側立面図を示す。
【
図7C】シリンジがインプラント送出の段階を進む際の、本発明の一実施形態によるバレルアダプタを含む送出シリンジの側立面図を示す。
【
図7D】シリンジがスタイレット後退の段階を進む際の、本発明の一実施形態によるバレルアダプタを含む送出シリンジの側立面図を示す。
【
図8A】同様に、シリンジが針注入の段階を進む際の、
図7Aに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図8B】同様に、シリンジが針後退作動の段階を進む際の、
図7Bに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図8C】同様に、シリンジがインプラント送出の段階を進む際の、
図7Cに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図8D】同様に、シリンジがスタイレット後退の段階を進む際の、
図7Dに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図9A】本発明の別の実施形態による、ねじ嵌合接続部を有するバレルアダプタを含む送出シリンジの側立面図を示す。
【
図9B】包装、輸送及び/又は組立などのために使用してもよい、本発明の別の実施形態による、針キャップ(明確にするために透明な構成要素として示される)内に収容された
図9Aに示されるバレルアダプタの側立面図を示す。
【
図9C】組み立てられた構成における、
図9Aに示される送出シリンジ及びバレルアダプタの側立面図を示す。
【
図10A】本発明の少なくとも一実施形態によるプランジャアセンブリの拡大側立面図を示す。
【
図10B】本発明の少なくとも一実施形態による、スタイレット及びスタイレットディスクを有するスタイレットアセンブリの拡大側立面図を示す。
【
図10C】本発明の少なくとも一実施形態による、スタイレットガイド及び1つ以上の突起又はプロングの拡大側立面図を示す。
【
図11A】矢印Rによって示されるように、軸線Aの周りを90度の間隔で回転させた、本発明の少なくとも一実施形態によるプランジャロッドの側立面図を示す。
【
図11B】矢印Rによって示されるように、軸線Aの周りを90度の間隔で回転させた、本発明の少なくとも一実施形態によるプランジャロッドの側立面図を示す。
【
図11C】矢印Rによって示されるように、軸線Aの周りを90度の間隔で回転させた、本発明の少なくとも一実施形態によるプランジャロッドの側立面図を示す。
【
図12】
図9Aに示される送出シリンジの実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図13A】シリンジが針注入の段階を進む際の、
図9Aに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図13B】シリンジが針後退作動の段階を進む際の、
図9Aに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図13C】シリンジがインプラント送出の段階を進む際の、
図9Aに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図13D】シリンジがスタイレット後退の段階を進む際の、
図9Aに示される実施形態の拡大部分断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図14A】本発明による送出シリンジ及び送出システムの別の実施形態の断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図14B】本発明による送出シリンジ及び送出システムの別の実施形態の断面図を示す(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)。
【
図16A】
図14A及び
図14Bに示される実施形態による針オーバーモールド部(「NOM」:needle−over−mold)及びNOM保持器の分解組立図を示す。
【
図16B】
図14A及び
図14Bに示される実施形態による針オーバーモールド部(「NOM」:needle−over−mold)及びNOM保持器の分解組立図を示す。
【
図16C】
図14A及び
図14Bに示される実施形態による針オーバーモールド部(「NOM」:needle−over−mold)及びNOM保持器の分解組立図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、針の後退を利用してインプラントを配置する。インプラントは、例えば、薬剤を溶出し得るか、又は放射線放出ビーズであり得る。本開示の目的では、用語「インプラント」は、集合的に又は個々に、デポ剤、インプラント、ビーズ、丸剤、カプセル剤、小塊、薬剤溶出デバイス、乾燥若しくは凍結乾燥薬剤若しくは治療薬、又はその他の形態のインプラント等を含むように使用される。
【0014】
臨床医は、従来のシリンジによりもたらされる標的化及び操作の容易さに慣れている。このようなシリンジの基本態様を用いること及び後退機構を組み込むことにより、本発明の発明者は、後退可能な針シリンジを用いてインプラントを正確且つ安全に送出又は留置する、使用が簡単な送出システムを開発した。インプラントは、標的位置内の、針が配置される位置に配置される。これにより、インプラントの正確な配置が可能になり、既存の植え込み用デバイスに比べ、針の配置を送出位置に関してより確定的にする。既存の植え込み用デバイスでは、一般に、デポ剤又はインプラント送出のためにインプラントをカニューレから押し出すための手段を用いる。使用者は習慣的にカニューレの先端部を標的位置に配置することを望むため、このようなデバイスは不正確であることが多い。カニューレの先端部が標的位置に置かれたとき、従来の方法によってインプラントをカニューレから押し出すことでインプラントの不正確な送出に至る。この不正確さを補償するために、使用者は、インプラントが標的位置のより近くに押し出されるように、カニューレの先端部を標的位置から推定距離だけ「短縮して配置する」ことを選択する場合がある。本発明の実施形態は本質的に異なる手法を用いる。この手法では、標的送出の精度が大幅に増加し、且つ使用者にとって操作が簡単である。インプラントをシリンジ針の先端部に配置することでシリンジ針を所望の標的位置に挿入し、その後、シリンジ針を抜去又は後退させてインプラントを留置することにより、標的位置へのインプラント送出の精度が従来の植え込み手段に比べて大幅に向上する。加えて、植え込み工程全体を通してインプラントの位置が変化しないことから、使用者による計算又は推定の必要を排除するため、本発明の実施形態は使用者にとって操作が簡単である。更に、本発明の実施形態は、シリンジ針がインプラント送出シリンジのバレル内に後退するため、望ましい安全機能を提供し、それにより針刺し損傷のリスクを排除する。
【0015】
第1実施形態では、本発明は、針と、スタイレットと、後退機構と、作動機構と、送出用のインプラントとを含む送出システムを提供する。針と実質的に同軸のスタイレットは、針のルーメン(例えば、針の中空孔)内に配置されている。一実施形態では、スタイレットは非患者側端部(すなわち近位端)から針に部分的に重なっていてもよい。インプラントは、スタイレットと針の患者側端部(すなわち遠位端)との間の、針のルーメン内に配置される。プランジャロッドなどの作動機構を用いて後退機構を作動させ、針を後退させてもよい。まず、スタイレットは針に対して静止しており、後退機構による針の後退により、送出の標的領域においてインプラントを露出させる。スタイレットは、針が後退する際にインプラントが針に追従しないようにする。スタイレットは、スタイレットの遠位端が後退する針の遠位端を越えた後で初めて針と共に後退する。スタイレットの後退の順序及びタイミングは、スタイレットの後退が針の後退後に作動又は起動されるものであるが、同一の後退機構を用いて両構成要素を後退させてもよい。後退機構の近位にあるスタイレットディスクを用いて所望の後退順序を確実としてもよい。後退機構とスタイレットディスクとの間の距離により、針に対するスタイレットの後退のタイミングを設定する。
【0016】
本発明の実施形態は、複雑な製造工程を必要とすることなく、針後退を利用した正確なインプラント留置機構を提供する。本発明の実施形態は、より少数の構成要素を含む比較的簡略化されたシリンジアセンブリを提供し、それにより、製造コストを最小限に維持しつつ、使用者にとって使いやすく且つ安全なインプラント留置シリンジを提供する。本発明の新規なバレルアダプタは、特に、好ましくは、組み込み式針アセンブリ及び後退機構をバレルに付与するための、真直バレルガラス(straight−barrel glass)又はプラスチックバレルなどの種々の構成及び材料の一次薬剤バレルに適合され得る。したがって、本発明の適応可能なインプラント留置及び針後退機構は、柔軟に、真直ガラスバレルなどの標準的なバレルに取り付けられても、固定されても、装着されても、そうでなければ結合されてもよい。バレルアダプタは、いくつかの異なる手法でバレルと結合するように構成してもよいが、好適な実施形態では、バレルアダプタは、少なくとも近位接続部がバレルの遠位部の内径に取り付けられ、且つその中に配置されるような形状となるように構成されている。したがって、バレルアダプタは、標準的な真直バレルシリンジに、アダプタの少なくとも近位部をこのバレルの遠位端に挿入し、このバレルの遠位端に取り付ける、固定する、装着する、又はそうでなければ結合することによって接続されてもよい。バレルアダプタは、例えば、締まり嵌めアセンブリ、スナップフィットアセンブリ及び/又はねじ嵌合アセンブリによってバレルに接続されてもよい。当業者には理解されるように、これらの接続方法のいずれも、例えば、接続が行われたことを使用者に知らせるため、及び使用中又は使用後にバレルアダプタが送出シリンジから外れることを防止するためのロック機能も含んでよい。本発明の少なくとも一実施形態では、本明細書中に更に詳述されるように、バレルアダプタはねじ嵌合アセンブリによってバレルに接続されてもよい。したがって、本発明の新規なバレルアダプタ設計は、針アセンブリをバレルに取り付けるために特定のバレル形状又は構成を有する必要を排除する。これにより、製造コスト、特に、特別に作製されるガラスバレルの製造に伴うコストを大幅に低減することができる。本発明の新規なバレルアダプタは、例えば、真直ガラス又はプラスチックバレルに取り付けることができ、それにより、製造工程及びより複雑なバレル形状の製造に関連するコストを簡略化する。
【0017】
本発明のバレルアダプタは、使用時に選択可能であってもよく、又は製造中にバレルに予め取り付けられてもよい。選択可能な選択肢では、本発明の設計及び構成は、特定の設計若しくは寸法の針及び/又は針アセンブリを使用者が選択し、それを薬物デポ剤又はインプラント送出のためにシリンジバレルに適応させることを可能にする。例えば、バレルアダプタ及び針アセンブリは、いくつかの異なる針の長さ又は厚さを提供するように構成してもよい。したがって、使用者は、所望の針寸法によってバレルアダプタを選択し、このバレルアダプタを、インプラントを送出するためのシリンジに適応させてもよい。
図1及び
図2に示される実施形態では、バレルアダプタはバレルに直接取り付けられている。1つ以上の追加構成要素を用いてこのアダプタの機能を提供してもよい。例えば、1つ以上の接続構成要素を用いてバレルアダプタのバレル先端部をバレルに接続してもよい。1つのこのような実施形態では、1つの接続構成要素(受け入れ構成要素など)をバレルの遠位端に固定的に取り付けてもよい。受け入れ構成要素はバレル先端部を直接受け入れ、バレル先端部を組み込み式後退機構と係合してもよい。代替として、バレルアダプタは、受け入れ構成要素に係合するために使用される付加的な接続構成要素(結合構成要素など)を含んでもよい。上述のように及び本明細書中に更に詳述されるように、本発明の少なくとも一実施形態では、バレルアダプタはねじ嵌合アセンブリによってバレルに接続してもよく、バレルアダプタ及びバレルの両方は対応する雄及び雌ねじピッチ部又は構成要素を有する。バレルアダプタとバレルとの間の接続を容易にするために、当業者に周知のエラストマーシールなどの他の任意の構成要素を要し、デバイスに組み込んでもよい。バレルアダプタは、針寸法にかかわらず実質的に同一構成要素を含む一方で、インプラント留置並びにバレル内への針及びスタイレットの完全な後退を容易にするためにカスタマイズしてもよい。当業者には容易に理解されるように、例えば、より長い針の後退を容易にするために、より長い付勢部材(例えば、より長いばね)を必然的に選択又は調整してもよい。同様に、より長い又はより太い針を使用する場合には、より長い又はより太いスタイレットを必要としてもよい。このような寸法は、また、例えば、送出のために針内に初めに保持されているより長い又はより短いインプラントの送出を容易にするように調整されてもよい。
【0018】
本発明の実施形態は、製薬用途に容易に利用可能な材料及び構成要素も利用できる構成を提供する。これらの多くには、既製の又は標準的な構成要素が次第に考慮されるようになっている。特に、使用される材料は抽出物含有量が低いものであってもよい。これにより、全体的な製造コストを削減し、組み立て工程を簡素化し、多くの場合、非標準的な材料及び構成要素の使用に伴う不必要な規制事項を回避する。加えて、本発明は、針後退機構を有しない従来のシリンジに審美的に類似する構成要素及びデバイスを提供し、医療関係者及び自己投与患者などのエンドユーザにとって人間工学的に魅力的であると共に、非常に望まれる組み込み式安全機能を提供する。したがって、これらの実施形態は、既存の製造工程に容易に組み込まれる新規且つコスト効率的な構成要素及びデバイスを提供する。本発明のこれらの態様は、非常に望まれる機能的且つ審美的特徴を提供してもよく、修正して様々な異なる構成を作製してもよい。
【0019】
本発明のシリンジは、薬剤インプラントの標的送出を可能にし、針刺し損傷において一般的な針への偶発的な露出を防止するため、安全機能を組み込む。上述のように及び図に詳述されるように、使用者は、本発明の送出シリンジを使用して薬剤インプラント送出の段階を実施してもよい。段階は、針注入、針後退作動、インプラント送出、及びスタイレット後退を含む。1つ以上のロックシステムを組み込み、シリンジの再使用及び/若しくは針刺し損傷を防ぐ又は少なくとも最小限にすることにより、本発明の実施形態は、製造がコスト効率的であり且つ医療関係者及び自己投与患者による使用が簡単な非常に望ましい製品を提供する。このようなロックシステムは、例えば、後退した針がシリンジの端部から再度延出することを阻止する針後退機構及び/又は配置を含んでもよい。本発明のバレルアダプタ及びシリンジの新規な特徴及び機能は、使用者に対していくつかの安全性における利点を提供する。例えば、ロック機構は、使用者に対し、薬剤投与量が完全に送出された、後退機構が作動された、針が後退した、及びシリンジが処分するのに安全であるという視覚、聴覚及び/又は触覚フィードバックを提供するように構成してもよい。
【0020】
本発明の構成要素は、また、使用の終了時に構成要素及びシリンジ全体の破壊を増すように構成されてもよい。このような安全及び破壊の一体化により、シリンジの再利用性を妨げ、デバイスの安全プロファイルを増加する。例えば、針後退後、針がバレル先端部から出て近位方向に並進することを防止するために、任意の針ブロックを構成してもよい。この構成では、プランジャロッドの押下及び近位方向における針の軸方向並進によって使用者により力が加えられると、バレル内で針が曲がることになる。
【0021】
本発明により可能にされる別の安全機能は、針の後退の速度を制御する機能である。制御された針後退により、薬剤投与量が送出された後の患者の怪我を防止する。これは、後退作動時の付勢部材の伸張速度を制限する1つ以上の摩擦部材などの能動構成要素により、又はより遅く伸張する付勢部材を選択するなどの受動構成要素により促進され得る。
図1及び
図2に示される実施形態では、後退は、プランジャロッド及びプロングベースによって制御される。針後退の作動時、使用者はなおプランジャロッドの近位端に接触しており、これに力を加えている。付勢部材を伸張させるにつれて、付勢部材は近位方向に軸方向の力を加え、針及び/又は針アセンブリを後退させる。この動作により、プロングベース(後退時に針ハブに接触している)及びプランジャロッドに力を伝える。針ハブ及びプロングベースによりバレルの内側に生じる摩擦は、針アセンブリの後退の速度を制限する。使用者がプランジャロッドに加える力を低減すると、後退の速度も制御することができる。この制御された後退は安全性を増加し、且つ患者が感じる痛みを低減するため、シリンジの使用者により非常に望まれている。
【0022】
添付の図に関する本発明の実施形態を本明細書中に更に詳述する。これらは単に非限定的な実施形態であり、他の類似の実施形態は本発明の企図並びに本開示の範囲内であると理解すべきである。
【0023】
送出システム、シリンジ、バレル、バレルアダプタ又は本発明の構成要素の相対位置のいずれかを説明するために本明細書で使用する場合、用語「軸方向」又は「軸方向に」は、概して、シリンジ又はバレルがその周りに好ましくは形成されるが、必ずしもその周りに対称には形成されない長手方向の軸線「A」を意味する。用語「径方向」は、概して、軸線Aに垂直な方向を意味する。用語「近位」、「後部」、「後方」、「後部」又は「後方」は、概して、患者に注入される針端部から離れる軸方向(全体として
図1に「P」と示される)を意味する。用語「遠位」、「前部」、「前方」、「押下される」又は「前方」は、概して、患者に注入される針端部に向かう軸方向(全体として
図1に「D」と示される)を意味する。本明細書中で使用される用語「ばね」は、所与の方向に圧縮され且つ伸張させることができる、実質的に螺旋状に巻かれたコイルなどの付勢部材を示唆するものと理解すべきである。本明細書中に詳述される実施形態に記載され且つ用いられている配置などのばねを用いてもよいが、同じ目的のために、他の種類の付勢部材を容易に用いることができる一方で依然として本発明の範囲内にあることは本発明の企図の範囲内である。当業者に理解されるように、例えば、圧縮ばね、ねじりばね、定荷重ばね、引張ばね、板ばねなどのばね、及び同じ若しくは異なる種類のばねの組み合わせ、又はその他の構造を本発明の範囲内において用いてもよい。加えて又は代替として、ばね以外の付勢部材も同様の目的のために用いてもよい。付勢部材の非限定的な例は、解放可能なエネルギーを保存するためのばね、弾性又はその他のデバイスを含む。しかしながら、少なくとも一実施形態では、付勢部材は圧縮ばねなどのばねであることが好ましい。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「ガラス」は、通常、ガラスを要する製薬グレード用途での使用に適した他の同様の非反応性材料を含むものと理解すべきである。用語「プラスチック」は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの両方を含んでもよい。熱可塑性ポリマーは熱によってその本来の状態に再度軟化させることができ、熱硬化性ポリマーは再度軟化させることができない。本明細書で使用する場合、用語「プラスチック」は、主として、通常、硬化剤、充填剤、補強剤、着色剤及び/又は可塑剤等などの他の成分も含み、熱及び圧力下で形成又は成形することができる、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン又はアクリル樹脂などの成形可能な熱可塑性高分子を意味する。本明細書で使用する場合、用語「プラスチック」は、プラスチックと相互作用し得る又はそうでなければプラスチックから液体に入る可能性のある置換基によって劣化する可能性のある治療液と直接接触する用途での使用が承認されているガラス又はゴム系エラストマーのいずれかを含まない。本明細書で使用する場合、用語「エラストマー」、「エラストマーの」又は「エラストマー材料」は、主として、プラスチックに比べてより容易に変形可能であるが、製薬グレード流体での使用が承認されており、浸出又はガス移動の影響を容易に受けない架橋熱硬化性ゴム系ポリマーを意味する。本明細書で使用する場合、用語「流体」は、主として、液体を意味するが、液体中に分散した固体の懸濁物、及びシリンジの流体を含む部分の内部液体中に溶解した又はそれ以外でこの液体中に共に存在するガスも含み得る。
【0025】
加えて、本発明のデバイスは、治療流体又は薬剤と実質的に反応せず、製薬グレード用途での使用に適した材料を用いる。本発明のこのような新規な構成及び送出シリンジは、インプラント及び薬剤送出デバイスの安定性及び保管寿命パラメータの増加をもたらす。加えて、保管及び輸送時、既知の方法及び材料を用いて薬剤インプラントを所定の位置に保持してもよい。この目的のために、例えば、ポリマー(PLGA、CAHP等)のマイクロデポジションを用いてもよい。使用されるポリマーの性質は標的部位に依存し、例えば、水様の又は水を含む部位では水溶性ポリマーを選択する。全般的に、針注入及びインプラント留置前、インプラントを保持するために、ポリマーを含む様々な生物分解性材料を用いて針の遠位端に栓をしてもよい。バレルアダプタ及び送出シリンジの組み立て及び製造を容易にする必要がある場合、インプラントは、針の遠位先端部に栓をする前又は後に針内に配置してもよい。例えば、デバイスアセンブリが遠位端からのインプラント挿入を必要とする場合、インプラントは、針の遠位先端部に栓をする前に針内に配置してもよい。これは、例えば、バレルアダプタがインプラントの挿入前にバレルに固定される場合に必要な場合がある。代替として、インプラントは、針の遠位先端部に栓をした後、針内に配置してもよい。これは、例えば、送出シリンジのバレルにバレルアダプタを組み付ける前にインプラントがバレルアダプタ内に挿入される場合に利用してもよい。同様に、スタイレットへのインプラントの非特定及び特定の付着を防止するためにスタイレット先端部の表面処理が想定され、バレルアダプタ及び送出シリンジの組立及び製造に関して、任意の操作順序で実施してもよい。例えば、スタイレット先端部表面の親水性を最大にするための処理を用いて、スタイレットを処理してもよく、及び/又はスタイレット先端部をコーティングしてもよい。
【0026】
本発明の1つ以上の実施形態は、特定の標準的な構成要素を更に含んでもよい。例えば、本発明のバレルアダプタ構成及びシリンジデバイスは1つ以上のOリングを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、バレル内のバレル先端部を封止するために、並びに/又はバレルの薬剤チャンバ内の滅菌環境及び容器完全性を確保するために、1つ以上のOリングが用いられる。加えて又は代替として、バレルアダプタは、後退速度の制御を容易にするために1つ以上の制御部材を含んでもよい。同様に、バレルアダプタは、後退機構の完成後、針及びスタイレットが並進すること又はバレル先端部のアパーチャを通じてバレルから突出することを防止するように機能する、クリップ、フラップ、フランジ等などの1つ以上の針ブロックを含んでもよい。
【0027】
更に、送出シリンジは、審美性、使用の容易さ又はその他の目的のための1つ以上の構成要素を含んでもよい。例えば、当業者には理解されるように、本発明の1つ以上の実施形態はフィンガーフランジを含んでもよい。フィンガーフランジはバレル若しくは送出シリンジの任意の部分に沿って予め形成してもよく、又はバレル若しくは送出シリンジに接続若しくは固定される別個の構成要素であってもよい。少なくとも一実施形態では、フィンガーフランジはバレルの近位端に予め形成された構成要素である。フィンガーフランジは、使用者が自らの人差し指及び中指をフランジ上に載せることを可能にするように構成してもよいと共に、薬剤の注入のために使用者が自らの親指でプランジャを押下する際の、てこインターフェース(leverage interface)を提供してもよい。当業者には容易に理解できるように、このような構成要素の位置、形状、数及び材料は、任意の数の所望の特徴を満たすために様々であってもよい。
【0028】
同様に、本明細書中ではバレルアダプタ及び送出シリンジの構成要素は別々の構成要素として記載されているが、これらの構成要素の特定の群を組み合わせて個々の構成要素の機能を実施することができる単一構成要素を形成してもよいことは本発明の企図の範囲内である。上述のように、例えば、少なくとも1つの実施形態では、針シールが設けられる場合、針ハブと針シールとは二重の機能を提供する1つの一体型の構成要素であってもよい。加えて、当業者には理解されるように、送出シリンジの構成要素は、一体的に形成された構成要素として、又は個々の若しくは単一の構成要素として製造してもよい。上述のように、フィンガーフランジは、製造工程時にバレル自体の一部分として予め形成される構成要素であってもよい。したがって、少なくとも一実施形態では、フィンガーフランジはバレルのガラスフィンガーフランジ拡張部であってもよい。更に、本明細書中ではバレルアダプタの構成要素は別々の構成要素として記載されているが、それらは複数の機能を有する一体型の構成要素であってもよい。例えば、プロングベースはプランジャの一部分であっても、プランジャとは別個の構成要素であってもよい。同様に、本明細書中に更に記載されるように、突起又はプロングはプロングベースの拡張部であっても、プロングベースとは別個の構成要素であってもよい。構成要素及びそのアセンブリの構成は、組立工程、デバイスパラメータ及び他の所望の特徴に基づいて異なってもよい。
【0029】
図1は、本発明による送出シリンジ10の一実施形態の等角図を示す。
図2は、
図1に示される送出シリンジ10及びその構成要素の分解図を示す。本発明に従い、バレルアダプタ20が、プランジャアセンブリ12を有するシリンジバレル18に取り付けるために提供される。本発明の実施形態の利点として、バレルアダプタ20のバレル先端部32は、任意の適切な方法によって任意の標準的なバレル18と結合するように構成してもよい。バレル18はプラスチックバレルであっても、ガラスバレルであっても、医療デバイスで使用される任意の他の既知の材料で作製してもよい。バレル18は、テーパ状であっても、非円筒状であっても、実質的に真直であってもよい。製造目的に適した実施形態では、バレル18は真直バレルガラスシリンダである。1つ以上の実施形態では、バレル18は、例えば、価値のある製造効率及び運転コスト削減をもたらす標準的な市販の構成要素であってもよい。加えて、送出シリンジ10が組み立てられた後、バレル18からプランジャアセンブリ12が分離するのを阻止又は防止し得るバレルキャップ16を提供してもよい。バレル18又はバレルキャップ16(示されるような)はフィンガーフランジを含んでもよい。
【0030】
本発明の実施形態は、送出シリンジの市場における他の顕著な利点も可能にする。例えば、1つ以上の実施形態は、標準的なプランジャロッド、バレル、バレルキャップ及び硬質針シールドなどの標準的な構成要素を用いることができ、それにより、特別に作製される又は射出成形される構成要素の必要を大幅に低減する。例えば、いくつかの実施形態では送出シリンジ10は、可能な標準的な構成要素の中でもとりわけ、標準的なプランジャロッド14及び硬質針シールド(図示せず)を用いてもよい。シールが提供される場合、本明細書中で使用されるシールは、ペンシルベニア州リオンビル所在のウエスト・ファーマスーティカル・サービス・インコーポレイテッド(West Pharmaceutical Services,Inc.)から商品名「フルロテック(FluroTec)(登録商標)」、及びベルギー所在のダットウィラー・ファルマ・パッキング(Datwyler Pharma Packaging)から商品名「オムニフレックス(Omniflex)」で容易に入手可能なものなどのエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)でコーティングされたゴムストッパ/シールであってもよい。他の構成要素も同様に標準的な市販の構成要素であってもよく、本発明の実施形態の優れた利点を提供する。本発明の実施形態のこの利点は、価値のある製造効率及び運転コスト削減をもたらす。
【0031】
当業者には理解されるように、バレルアダプタ20は任意の適切なカップリング機構によってシリンジバレル18に取り付けられてもよい。例えば、バレルアダプタ20はカップリング構造によってシリンジバレル18に結合されてもよく、カップリング構造は、バレルアダプタ20及びシリンジバレル18の構成要素とは別であってもよく、バレルアダプタ20及びシリンジバレル18と一体であってもよい。更に、バレルアダプタ20はシリンジ製造工程中又は使用の直前にシリンジバレル18に結合されてもよい。単に例として、シリンジアダプタ20は、シリンジ製造工程中、締まり嵌め、接着剤、スナップフィットアセンブリ及び/又はねじ嵌合アセンブリ等により、シリンジバレル18に結合されてもよい。その代わりに、例えば、バレルアダプタ20を使用の直前にシリンジバレル18に結合できるように、シリンジバレル18及びバレルアダプタ20は、嵌合するねじ山又はルアーロック機構を含んでもよい。本発明の少なくとも一実施形態では、バレルアダプタはねじ嵌合アセンブリによってバレルに接続されてもよく、バレルアダプタ及びバレルの両方は対応する雄及び雌ねじピッチ部又は構成要素を有する。別の実施形態では、バレルアダプタ20をバレル18に結合するために1つ以上のカップリング構造が設けられてもよい。バレルアダプタ20とバレルとの間に配置するために1つ以上のOリング36が提供されてもよい。
【0032】
バレルアダプタ20は、シリンジバレル18への針28(
図2を参照)の取り付けを容易にする。バレルアダプタ20は、バレル先端部32と、針アセンブリ42と、針後退機構21とを含む。シリンジバレル18へのバレルアダプタ20の取り付けに関して上で説明したように、バレル先端部32は任意の適切な方法によってシリンジバレル18に結合してもよい。バレル先端部32は、通常、シリンジバレル18に結合されると安全シリンジ10の遠位端となり、インプラントの送出のための注入時、針28がバレル先端部32の遠位端内に延びている。バレル先端部32は、以下に説明するように、針後退機構21の一部分を形成する1つ以上の構造を更に含んでもよい。
【0033】
針アセンブリ42は、概して、針28及び針ハブ24を含んでもよい。Oリング36は針アセンブリ42の廃棄を容易にするために針ハブ24の周りに設けられてもよい。針28は、針28の一端がバレル内にあり、針28の他端がバレル先端部32のアパーチャ33を通る(
図3Bを参照)ように、針後退機構21及びバレル先端部32を通るように構成されている。本発明内において針後退を容易にするために種々の針後退機構を用いてもよい。例えば、針後退機構は、国際公開第2013126118A1号パンフレットとして公開されている国際出願PCT/米国特許出願公開第2012/067793号明細書及び米国特許出願第13/693,915号明細書(あらゆる目的において参照により全体を本明細書に援用する)に開示されているものに類似し得る。少なくとも一実施形態では、針後退機構21は、付勢部材30と、針アセンブリ42の針28がバレルアダプタ20内に後退するときまで付勢部材30を付勢位置に維持する作動可能なロック機構31とを含む。ロック機構31は、針28が後退するときまで付勢部材30を付勢位置に維持する任意の適切な設計であってもよいが、以下により詳細に説明するように、図示される実施形態では、ロック機構31は、ロック機構22と、付勢部材30を付勢位置に維持する表面の相対位置を維持するために結合するロック部(locking aspect)32aとを含む。ロック機構31の作動時、付勢部材30によって針28がバレル先端部32内に後退する。
【0034】
ロック機構31の1つのこのような実施形態では、付勢部材30は圧縮ばねである。ばね30の端部は、バレル先端部32内においてロック機構22の表面23と表面35とに隣接して配置されている。表面23、35の相対位置は、付勢部材30を、注入前に圧縮され付勢位置に維持するか、又は注入後、ばね30が針28を後退させるために消勢位置に移動することを可能にする。ばね30を付勢位置に維持するために、ロック機構22及びバレル先端部32は嵌合構造を含む。嵌合構造は、分離されてばね30が消勢位置に移動することを可能にしてもよい。針後退機構21の構造及び動作を以下でより詳細に説明する。
【0035】
図1〜
図5に示される実施形態は、ロック機構22がバレル先端部32から独立した構成を含む。しかしながら、ロック機構22は、バレル先端部32の一部分であるように又はバレル先端部32に取り付けられるように構成してもよい。上述のように、ロック機構22は、別個の構成要素であっても、デュアルパーパスロック機構22及び針ブロックなどのデュアルパーパス構成要素であってもよい。換言すると、ロック機構22は、後退機構が作動され、針28が後退した後、針28を遠位方向に軸方向に並進することを阻止する機能を含んでもよく、又はこの機能を作動させてもよい。代替として、
図2、
図3B及び
図3Cに示すように、別個の針ブロック34構成要素を用いてもよい。
【0036】
図3Bは、
図3Aに示されるバレル先端部32の断面図を示す。しかしながら、明確にするために、種々の構成要素のクロスハッチングは省略されている。
図3Bに見られるように、付勢部材30は少なくとも部分的にバレル先端部32内にある。圧縮された状態にあるとき、付勢部材30は、遠位端にあるバレル先端部32内及び近位端にあるロック機構22内にある。バレルアダプタ20の構成要素は
図3Cの分解図に示されている。針ハブ24及び針28を含む針アセンブリ42は、バレルアダプタ20の他の構成要素とは別に又はバレルアダプタ20の他の構成要素と共に組み立てられてもよい。例えば、全ての構成要素は、
図1及び
図2に示されるバレル18などのバレルに結合するために、
図3Aに示されるような完全なバレルアダプタ20へと予め組み立てられてもよい。代替として、針アセンブリ42の構成要素はバレルアダプタ20の残りの構成要素とは別に組み立てられてもよい。この第2構成では、組み立て時、針アセンブリ42はバレルアダプタ20を有する遠位端ではなく、近位端からバレルに取り付けられてもよい。
【0037】
針後退機構21は任意の適切なトリガーによって作動されてもよい。例えば、図示される実施形態では、針後退機構21は、送出シリンジ10の遠位端に向かうロック機構22の動きによって作動される。このような構成では、針ハブ24はロック機構22に強制的に接触及び/又は押下してもよい。この接触によってロック機構22を係脱し、付勢部材30が実質的にバレル18の長手方向の軸線に沿って近位方向に伸張することを可能にし、それにより、ロック機構22と、針28を含む針アセンブリ42の構成要素とをバレル18内に後退させてもよい。概して、針注入及びインプラント送出のために構成されている第1段階にバレルアダプタ20、送出システム及び送出シリンジ10がある間、針ハブ24は針28を実質的に固定位置に保持するように機能してもよい。加えて又は代替として、この薬剤注入の第1段階中、ロック機構22は針を実質的に固定位置に保持するように機能してもよい。
【0038】
以下により詳細に説明するように、ロック機構22の係脱及び後退機構の作動時、付勢部材又はばね30は伸張され、針アセンブリ42を実質的にバレルの長手方向の軸線に沿って近位方向に後退させる。本発明のいくつかの実施形態では、針アセンブリ42全体を後退させる一方、他の実施形態では、ロック機構22の解放及び付勢部材30の伸張の際、針28を含むその特定の構成要素のみを後退させる。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、ロック機構22を針アセンブリ42と共に後退させる一方、他の実施形態では、ロック機構22は実質的に静止したままであるが、針アセンブリ42又はその構成要素が動くことを可能にする。
【0039】
いくつかの実施形態では、バレルアダプタ20には、針28の後退後、針28が遠位方向に及びバレル先端部32から出て並進することを防止又は阻止するブロックが設けられてもよい。
図3Cは、バレル先端部32の遠位端内にあり得る針ブロック34の一実施形態を示す。示される針ブロック34は、針28の通過のための中心アパーチャを有するフランジ60を含む。アーム62の対がフランジ60から延出し、アーム62の遠位端はクリップ64の対を支持している。針ブロック34がバレル先端部32内に配置されているとき、アーム62はクリップ64を互いに向かって付勢する。この実施形態では、針28がフランジ60のアパーチャ内に延びている状態で、針28が注入及び後退段階にあるとき、針ブロック34の遠位端にあるクリップ64が拡張し、クリップ64間に針28を配置することを可能にする。しかしながら、針28がクリップ64を過ぎて近位方向に後退すると、アーム62はクリップ64を閉鎖位置へと付勢し、針28を遠位方向に通過させない。このアセンブリは別の形態で構成してもよいが、この実施形態では、組み立て時、付勢部材30、すなわちばね30の遠位端をフランジ60に隣接させて配置してもよい。示される針ブロック34は単に例として開示され、ブロックは別の構成及び構造のものであってもよいことは理解されよう。
【0040】
本発明の別の態様によれば、送出シリンジ10及び/又はバレルアダプタ20は、シリンジバレル18と共に、インプラント49の送出のために使用してもよい。当業者には理解されるように、インプラント49は、集合的に若しくは個々に、デポ剤、インプラント、ビーズ、丸剤、カプセル剤、小塊、薬剤溶出デバイス、乾燥若しくは凍結乾燥薬剤若しくは治療薬、又はその他の形態のインプラント等であってもよく、且つ薬剤の分散体、粉末、懸濁物等、若しくはこれらの組み合わせを含んでもよい。インプラント49の配置又は留置を可能にするために、バレルアダプタ20は、針28のルーメン29内に配置されるスタイレット54と、好ましくは、多段階後退機構とを更に含む。
【0041】
図3Bを参照すると、針28は中心ルーメン29を含む。針ハブ24は、その中央において(例えば、実質的にこれらの構成要素及びバレルの長手方向の軸線において)通路として機能するアパーチャ25を有する。このアパーチャ25は、初期注入段階中、針28が針ハブ24内の適所に保持され、後退機構の作動時、近位方向に軸方向に並進させることができるように、針ハブ24を有する又は有しない針28の外径に等しい直径を有してもよい。針28が針ハブ24を通じてアパーチャ25内に配置された状態で、針28の近位端は中心ルーメン29を呈する。
図2及び
図6を参照すると、動作時、スタイレット54は針28の中心ルーメン29内に配置されており、植え込まれるインプラント49がスタイレット54の遠位の針28のルーメン29内に収容されていてもよい。したがって、針28が標的(図示せず)に入ると、針28はスタイレット54上を軸方向に後退させてもよい。このようにして、スタイレット54はインプラント49が針28と共に後退することを防止し、インプラント49を標的内の適所に残す。スタイレット54がバレル先端部32を越えて延出した場合、スタイレット54は、同様に、インプラント49の位置決め後、針28と共に、又は針28が後退した後、針28とは別々にのいずれかにおいて標的から後退させてもよい。したがって、本発明の態様によれば、インプラント49の注入を行うために少なくとも針28を後退させる。別の態様によれば、いくつかの実施形態では、インプラント49の送出後、スタイレット54を同様に後退させる。
【0042】
まず針28の後退について述べると、任意の適切な作動可能なロック機構31を設けてもよい一方で、作動可能なロック機構31の一実施形態が
図3B、
図3C、
図4及び
図5に示される。
図4は、ロック機構22を示し、
図5は、バレル先端部32を示す。バレル先端部32は、ロック機構22と係合可能なロック部32aを有する。この実施形態では、バレル先端部32は、ロック機構22内の受け入れ構造と係合する2つのロック部32aを有する。しかしながら、バレル先端部32が1つ以上のロック部32aを有してもよいことは理解されよう。
【0043】
図4に示すように、ロック機構22の受け入れ構造は、例えば、ロック入口46の形態であってもよい。図示される実施形態では、ロック入口46は「L字」形の切り欠きであるが、別の形状及び配置も想定される。ロック機構22の内径内の1つ以上のチャネル47により、ロック部32aがロック入口46へと摺動することが可能になり、ロック機構22の回転時、ロック機構22のロック入口46のシート22a内に載置される。このようにして、この実施形態の付勢部材30がロック機構22とバレル先端部32とを付勢して離す際、ロック機構22とバレル先端部32との相対位置が維持される。図示した実施形態のロック機構22及びバレル先端部32はそれぞれロック入口46及びロック部32aを含むが、ロック機構22及びバレル先端部32は、その代わりに、係合によって関連構成要素に係合可能/着脱可能に結合するように動作可能な機構が提供される限り、それぞれロック部及びロック入口又はいくつかの他の組み合わせを含むことができることは理解されよう。更に、機構がシリンジ内における針28の後退可能な配置を提供し、好ましくは、インプラント49を注入するために送出シリンジ10を使用することにより作動可能である限り、ロック機構22は完全に別の構造のものであってもよいことは理解されよう。
【0044】
図示される実施形態では、針後退機構21は、ロック機構22に印加される軸方向の力によって作動される。別の構造により印加されてもよいが、この実施形態では、針ハブ24による接触及び針ハブ24の軸方向の動きにより、軸方向におけるロック機構22の対応する動きを生じさせる。作動において、針ハブ24による接触などによってロック機構22を遠位方向に並進させると、ロック機構22をバレル先端部32の1つ以上の対応するロック部32aから係脱させることができ、ばね30が伸張し、後退機構が作動することを可能にする。ロック部32aからのロック機構22の係脱はロック機構22の軸方向並進によって生じさせてもよい。加えて又は代替として、ロック部32aからのロック機構22の係脱は軸方向並進時の回転などのロック機構22の回転によって生じさせてもよい。回転は、それ自体で又は軸方向並進と共に、ロック機構22がロック部32aとの係合から脱することを可能にする。少なくとも1つの実施形態では、この回転は、圧縮ばね30をねじるように付勢することによって生じさせてもよく、圧縮時にロック機構22を軸線の周りで一方向に回転させる。別の実施形態では、この機能を可能にするために、回転はロック機構22自体の構成により、例えば、ロック機構22のピッチ部(pitched aspect)プロファイル、ロック部32aの形状、又はこの動きを促進し、構成要素の係合及び係脱を可能にする、ロック部32aとロック機構22との間のインターフェースにより生じさせてもよい。
【0045】
プランジャロッド14を軸方向に並進させるために使用者により印加される力は、同様に、作動可能なロック機構31を作動させてバレル先端部32からロック機構22を係脱し、針28を後退させるために使用してもよい。この目的のため、プランジャアセンブリ12のプランジャロッド14構成要素は、スタイレット54が注入及びインプラント送出のための位置にある一方で、針後退作動力の伝達を可能にするように配置されている。プランジャアセンブリ12から針ハブ24への、及び最終的には、ロック機構22への針後退作動力の伝達を可能にするために、少なくとも1つの作動プロング51は、スタイレット54がシリンジバレル18内で実質的に静止したままである一方、プランジャアセンブリ12が動くと、長手方向に前進するように配置されている。
【0046】
図6に見られるように、本発明の少なくとも一実施形態では、スタイレットアセンブリ53は、スタイレットディスク52の形態の支持構造から延出するスタイレット54を含む。スタイレットディスク52はシリンジバレル18内に位置し、スタイレット54を適所に実質的に維持する。スタイレットディスク52は、1つ以上のOリングによってシリンジバレル18内の適所に維持されてもよい。プランジャアセンブリ12からの力の伝達を可能にするために、バレル内を長手方向に横断するように配置された少なくとも1つの作動プロング51が提供され、スタイレットディスク52は少なくとも1つの通路53を含む。通路53は、スタイレットディスク52内を長手方向に延び、少なくとも1つの作動プロング51を受け入れるように配置されている。図示した実施形態は2つのこのようなプロング51と通路53とを含むが、より多くの数を設けてもよい。更に、図示した実施形態は、スタイレットディスク52の外周部から離間した少なくとも1つの通路53を提供するが、シリンジバレル18の内壁が同様に長手方向に延びる通路53の一部分を形成し得るように、少なくとも1つの通路53は、代替として又は加えて、スタイレットディスク52の外周部に沿って配置され得ることは当業者には理解されよう。更に、通路53とプロング51の数は同一である必要はないことは理解されよう。例えば、単一の通路53により、2つ以上のプロング51の通路53を考慮に入れてもよい。
【0047】
プロング51はベース50から延びる。ベース50は、シリンジバレル18内を軸方向に動くことができるように配置されている。プロングベース50は1つ以上のOリングによってシリンジバレル18内の適所に維持されてもよい。ベース50はディスク形状を有するものとして示されているが、ベース50がプロング51の支持を維持し、バレル18内におけるプロング51の動きを容易にする限り、別の形状を有してもよいことは理解されよう。動作時、プランジャアセンブリ12の軸方向の動きによってベース50及び対応するプロング51の動きを生じさせ、プロング51は針ハブ24に接触する。したがって、図示される実施形態では、使用者によってプランジャロッド14に印加される力がベース50に印加され、少なくとも部分的に針ハブ24に伝達されるように、プロング51は針ハブ24に接触するように作製してもよい。この伝達により、針ハブ24の表面又はその類似の面はロック機構22を押してもよく、又はそうでなければ、ロック機構22をバレル先端部32のロック部32aとの係合接続から解放し始めてもよい。ロック機構22をバレル先端部32のロック部32aから解放することにより、付勢部材30(例えば、ばね)は伸張され、針28を含む針アセンブリ42を、実質的にバレル18の長手方向の軸線に沿って近位方向に後退させる。本発明のこのような実施形態では、ロック機構22の解放及び付勢部材30の伸張の際、針28、針ハブ24及びロック機構22を後退させる。
【0048】
プロング51と、ベース50と、プランジャアセンブリ12とは別々に作製してもよく、又はこれらの1つ以上の態様をユニットとして形成してもよく、別々に形成し、後に組み立ててもよく、又は送出シリンジ10の組立若しくは使用時に互いに係合する別個のユニットのままであってもよいことは理解されよう。
図6に示される実施形態では、プロング51と、ベース50と、プランジャロッド14とは一体的に形成されており、プランジャアセンブリ12が押下されると、プロング51、ベース50及びプランジャロッド14は単一ユニットとして軸方向に動く。別の実施形態では、例えば、プランジャロッド14がシリンジバレル18内で前方に押されると、プランジャロッド14がベース50に係合し、ベース50及び対応するプロング51を動かすように、ベース50とプロング51は一体的に形成されていてもよい。
【0049】
組み立て時、針28と実質的に同軸のスタイレット54は針28のルーメン29内に配置される。一実施形態では、スタイレット54は非患者側端部(すなわち近位端P)から針28に部分的に重なっていてもよい。インプラント49は、スタイレット54と針28の患者端部(すなわち遠位端D)との間の、針28のルーメン29内に配置される。
【0050】
使用時、プランジャロッド14などの作動機構を用いて針後退機構21を作動させ、針28を後退させてもよい。まず、スタイレット54は針28に対して静止しており、針後退機構21による針28の後退により、送出の標的領域においてインプラント49を露出させる。スタイレット54は、針28が後退する際にインプラント49が針28に追従しないようにする。
【0051】
本発明の態様によれば、インプラント49の正確な送出を確実とするために、スタイレット54は、スタイレット54の遠位端が後退する針28の遠位端を越えた後で初めて後退する。図示される実施形態では、スタイレット54の後退の順序及びタイミングは、スタイレット54の後退のための機構が、針28の遠位端がスタイレット54の遠位端を過ぎて後退した後に作動又は起動されるものであるが、同一の後退機構を用いて両構成要素を後退させてもよい。針後退機構21の近位にあるスタイレットディスク52を用いて所望の後退順序を確実としてもよい。針後退機構21とスタイレットディスク52との間の距離により、針28に対するスタイレット54の後退のタイミングを設定する。図示される実施形態では、スタイレット後退機構は、スタイレットディスク52との針ハブ24の係合である。
【0052】
図7A〜
図7Dは、シリンジ10が針注入、針後退作動、インプラント送出及びスタイレット後退の段階を進む際の、本発明の一実施形態による、バレルアダプタ20と、後退機構21と、送出システムとを含む送出シリンジ10を示す。
図7Aは、バレル18に取り付けられたバレルアダプタ20を示す。包装時、バレルアダプタ20は硬質針シールド(RNS:rigid needle shield)を含んでもよい。硬質針シールドはバレル先端部32と着脱可能に係合し、使用者を針28から保護する。
図7Aは、RNSが取り外され、針28が患者への注入のために露出しているシリンジを示す。スタイレット54と針先端部との間の針28のルーメン29は、注入のための薬剤インプラント49を含む。
図7Bは、プランジャロッド14が軸方向遠位方向に押下され、プロングベース50が針ハブ24と接触している、後退機構21が作動した後のシリンジを示す。プランジャロッド14を更に最小限押下すると後退機構21が作動され、ロック機構22は、例えば、付勢部材30のねじり付勢(torsional bias)によって軸方向に回転することが可能とされる。上述のように、ロック機構22の軸方向回転時、ロック機構22は、バレル先端部32のロック部32aから係脱することが可能とされる。
【0053】
図7Cに示すように、付勢部材30は軸方向近位方向に伸張することが可能とされる。付勢部材30の近位端はロック機構22を近位方向に押し、ロック機構22は針ハブ24及び針28を押し、針28をバレル18内に後退させる。この動作は、スタイレット54が針28と共に動かないことと併せて、インプラント49を患者への標的送出のために露出させる。インプラント49が完全に露出し、送出された後、スタイレット54を針28と共に後退させる。この動作は、針ハブ24がスタイレットディスク52に接触し、両構成要素が共に後退することによって生じさせる。上に言及したように、これらの寸法は、インプラント49が送出された後で初めてスタイレット54の後退が行われることを確実にするように制御される。
図7Dは、針28及びスタイレット54の後退が完了した後のシリンジを示す。
図8A〜
図8Dは、シリンジが針注入、針後退作動、インプラント送出及びスタイレット後退の段階を進む際の構成要素の関係を示す、
図7A〜
図7Dに示される実施形態の拡大断面図を示す。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、ねじ嵌合接続部によってバレルに取り付けることができるバレルアダプタを有する送出シリンジを提供する。本明細書中に更に記載されるように、このような構成は、バレルアダプタの針にインプラントを装填するための自動インプラント挿入工程を容易にしてもよい。
図9Aは、本発明の1つのこのような実施形態による、ねじ嵌合接続部を有するバレルアダプタ120を含む送出シリンジ100の側立面図を示す。このような送出シリンジでは、
図9Bに明確にするために透明な構成要素として示される針キャップ170を用いてもよい。針キャップ170は、インプラントを含むバレルアダプタ120の、送出シリンジ100のバレル118への取り付けを容易にする。バレルアダプタ120は完全に針キャップ170内に、例えば、包装、輸送及び/又は組立のために取り外し可能な膜171によって密閉された滅菌環境内に位置してもよい。バレルアダプタ120は、例えば、インプラントの挿入及び送出シリンジ100のバレル118との最終組立のために、滅菌針キャップ170内において充填業者又は製薬会社に輸送されてもよい。少なくとも一実施形態では、バレルアダプタ120の針128の遠位先端部には、製造業者が、バレルアダプタ120を含む滅菌針キャップ170を充填業者又は製薬会社に輸送する前に生分解性高分子などにより栓を施す。バレル118とは別個の針キャップ170及び送出シリンジ100の他の構成要素を受け取ると、充填業者又は製薬会社は取り外し可能な膜171を剥がすかそれ以外の手法で除去し、バレルアダプタ120の近位端を通じてインプラントを挿入してもよい。バレルアダプタ120は、その後、針キャップ170の補助あり又はなしで送出シリンジ100のバレル118に取り付けられるか装着されてもよい。送出シリンジは、スタイレット154が針128の近位端と軸方向に整列し、針ハブ124のアパーチャを通じて針128の近位端に挿入されたときのみにバレル118へのバレルアダプタ120の組み付けが可能であるように構成されている。
図9Cは、このような組み立てられた構成における、
図9Aに示される送出シリンジ及びバレルアダプタの側立面図を示す。
【0055】
特に、本発明のこれらの実施形態は、1つ以上のプロング151がプロングベース150から分離されている又は別個の構成要素である構成を示す。このような実施形態では、1つ以上のプロングは、
図1を参照して上述した送出シリンジに用いられるプロングと同じ相対的な機能を実施する。しかしながら、
図9Cに示される実施形態では、プロングは、
図1に示すようにプロングベースから遠位方向に延出するよりもむしろ、スタイレットガイド155から近位方向に延出する。構成を問わず、プロング151は、スタイレットディスク152がプロング151上で軸方向に並進することを可能とし、送出シリンジが動作の段階を進む際にスタイレット154の位置を制御するように構成されている。
図1に示される実施形態又は
図9Cに示される実施形態のいずれかにおいて、プロング151は、また、使用者によりプランジャロッド114に印加される力をロック機構122に伝えることによって針後退機構を作動させるために利用してもよい。
図10B及び
図10Cは、送出シリンジ100の動作時、スタイレットガイド155及びプロング151と相互作用するスタイレットディスク152及びスタイレット154の拡大図を示す。
【0056】
上述のように、本発明の実施形態は、インプラント送出シリンジの組立、製造及び動作を簡略化してもよい。これらの工程は、
図10Aに示すような任意のプランジャガイドアセンブリ112の使用によって容易になってもよい。一実施形態では、プランジャガイドアセンブリ112は、バレルキャップ116と、ベース150を有するプランジャロッド114とを含む。バレルキャップ116はポート116Aを有してもよく、ポート116A内にガイドピン117が配置されてもよい。ガイドピン117は、例えば、プランジャロッド114のチャネル、通路及び停止部材などによってプランジャロッド114と相互作用し、送出デバイスの組立、製造及び動作を案内してもよい。
図11A〜
図11Cは、それぞれ矢印Rによって示されるようにガイドピン117に対して軸線Aの周りを90度の間隔で回転させた、本発明の少なくとも一実施形態によるプランジャロッド114の側立面図を示す。
図11Aは、停止部材114Dと、通路114Aと、チャネル114Eと、ベース接続態様114Cとを有するプランジャロッド114を示す。ベース接続態様114Cは、
図12に示すようにプランジャロッド114をベース150に接続するために用いてもよい。このような構成では、ピンガイド117がチャネル114E内にあってもよく、ピンガイド117が停止部材114Dに接触するまでプランジャロッド114の軸方向並進を可能にしてもよい。
【0057】
図11Aに示される構成は、例えば、初期組立及び製造業者から充填業者又は製薬会社への輸送のために使用してもよい。この構成では、停止部材114Dはプランジャロッドの遠位方向の軸方向並進を防止する。任意選択的に、バレルキャップ116はプランジャロッド114と相互作用してもよいと共に、プランジャロッドの近位方向の軸方向並進を防止するために用いてもよい。
図11Bは、ガイドピン117が通路114Aを通じてチャネル114Eとチャネル114Fとの間で移動することが可能になるように、軸線Aの周りで矢印Rによって示される方向に90度回転させたプランジャロッド114を示す。この構成では、充填業者又は製薬会社はプランジャロッド114を並進させて、スタイレットディスク152及びスタイレット154を最終組立及び動作のために位置決めしてもよい。
図11Aに示される構成から
図11Bに示される構成への移行により、例えば、上述のように、送出シリンジのバレルにバレルアダプタを取り付ける前にバレルアダプタ内へのインプラントの配置を可能にしてもよい。送出シリンジは
図11Bに示される構成において使用者に輸送されてもよい。使用前に、使用者はプランジャロッド114を軸線Aの周りで矢印Rによって示される方向に更に90度回転させてもよい。この回転により、通路114Bを通じてチャネル114Fとチャネル114Gとの間でガイドピン117が移動することを可能にしてもよい(
図11Cに示すように)。
図11Cに示される構成では、プランジャロッド114は、インプラントの留置並びに針及びスタイレットの後退を容易にするために、遠位方向及び近位方向に自由に軸方向に並進することが可能である。
図12は、ガイドピン117とプランジャロッド114との間の相互作用がバレルキャップ116を通して見える、送出シリンジ100の拡大断面図(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)を示す。
【0058】
図13A〜
図13Dは、送出シリンジ100が針注入、針後退作動、インプラント送出、及びスタイレット後退の段階を進む際の拡大断面図(明確にするためにクロスハッチングは除去されている)を示す。
図13Aに見られるように、本発明の少なくとも一実施形態では、スタイレットアセンブリは、スタイレットディスク152の形態の支持構造から延出するスタイレット154を含む。スタイレットディスク152はシリンジバレル118内に位置し、スタイレット154を初期位置に実質的に維持する。スタイレットディスク152は、1つ以上のOリングによってシリンジバレル118内の適所に維持されてもよい。特に、初期動作段階中、スタイレットディスク152とスタイレット154とはOリング又は均等な手段によって実質的に固定位置に保持され、針128が近位に後退してインプラントを留置のために露出させるまで、インプラント129を固定位置に維持する。このスタイレットアセンブリの初期位置は、針ハブ124及び針128の後退時にスタイレットガイド154がスタイレットディスク152に接触するまで維持される。
図13A〜
図13Dに示すように、針後退機構を作動すると、針128は後退し、スタイレット154によりインプラント129を留置のために露出させ、その後、スタイレット154をバレル118内に後退させる。インプラント129を針128の遠位先端部の適所に当初保持するためにプラグ127が用いられる場合、プラグ127は、任意選択的に、インプラント129の留置に加えて、留置されてもよい。
【0059】
図13Aに示すように、スタイレットガイド155は、プランジャロッド114及び/又はベース150によりプロング151に印加された力によって針ハブ124に接触させてもよい。図示される実施形態では、使用者によりプランジャロッド114に印加された力がベース150に印加され、少なくとも部分的に針ハブ124に伝達されるように、スタイレットガイド155を針ハブ124に接触させてもよい。この伝達により、針ハブ124の表面又はその類似の面はロック機構122を押してもよく、又はそうでなければ、ロック機構122をバレル先端部132のロック部との係合接続から解放し始めてもよい。ロック機構122をバレル先端部132のロック部から解放することにより、付勢部材130(例えば、ばね)は伸張され、針128を含む針アセンブリを実質的にバレル118の長手方向の軸線に沿って近位方向に後退させる。本発明のこのような実施形態では、ロック機構122の解放及び付勢部材130の伸張の際、針128、針ハブ124及びロック機構122を後退させる。まず、スタイレット154は針128に対して静止しており、針後退機構による針128の後退により、送出の標的領域においてインプラント129を露出させる。スタイレット154は、針128が後退する際にインプラント129が針128を追従しないようにする。インプラント129の正確な送出を確実とするために、スタイレット154は、スタイレット154の遠位端が後退する針128の遠位端を越えた後で初めて後退する。図示される実施形態では、スタイレット154の後退の順序及びタイミングは、スタイレット154の後退のための機構が、針128の遠位端がスタイレット154の遠位端を越えて後退した後に作動又は起動されるものであるが、同一の後退機構を用いて両構成要素を後退させてもよい。
図1を参照して上述した実施形態と同様に、スタイレットディスク152が針後退機構の近位にあり、このスタイレットディスク152を用いて所望の後退順序を確実としてもよい。針後退機構とスタイレットディスク152との間の距離を利用して、針128に対するスタイレット154の後退のタイミングを設定してもよい。
【0060】
針後退機構を作動すると、針128は送出シリンジ100のバレル118内に後退し、それにより、標的位置への留置のためにインプラント129を露出させる。針ハブ124及び針128を含む針アセンブリの後退により、針ハブ124がスタイレットガイド155に接触し、スタイレットガイド155を後退させる。
図13Bに示すように、インプラント129の周りで針128が後退する際、インプラント129を比較的固定位置に保持するために、スタイレットディスク152及びスタイレット154は実質的に一定の位置に保持される。
図13Cに示すように、インプラント129を留置のために針128から露出させると、スタイレットガイド155はスタイレットディスク152に接触し、スタイレットディスク152、及びそれにより、スタイレット154を後退させる。特に、針アセンブリ及びスタイレットガイド155の後退は近位方向におけるプロング151の軸方向並進をもたらすため、プランジャロッド114及び/又はベース150もまた、近位方向に軸方向に並進する。これにより、使用者が、プランジャロッド114との接触を維持することによって針アセンブリの後退及びインプラントの留置を制御することを可能にする。
図13Dに示すように、インプラント留置の終了時、針128及びスタイレット154は完全に後退し、送出シリンジ100のバレル118内に安全に収容される。上述のように、任意のガイドピン117をプランジャロッド114と共に用いて、送出シリンジ100の機能を制御してもよい。したがって、本発明の実施形態は、使用が簡単なままであり且つ針刺し損傷を防止する一方で、標的位置への薬剤インプラントの正確な送出を可能にする。
【0061】
本発明の実施形態は、また、標準的な市販の構成要素の使用を可能にする構成を提供し、それにより、全体的な製造コストを削減し、組み立て工程を簡素化し、多くの場合、非標準的な材料及び構成要素に伴う規制事項を回避する。例えば、バレルは、特定のプラスチック、ガラス、又は医療グレードの製品に一般に使用される任意の他の材料から作製してもよい。本発明の1つ以上の構成要素はまた、マサチューセッツ州ピッツフィールドに所在のSABICイノベーティブプラスチックス(SABIC Innovative Plastics)によって商品名「レキサン(LEXAN)(商標)」で販売されているポリカーボネートプラスチックなどの特定のプラスチックで作製してもよい。同様に、ニュージャージー州ペンサクケンのダットウィラー・ファルマ・パッキング(Datwyler Pharma Packaging USA Inc.)によって商品名「ヘルボエット(HELVOET)」で販売されているゴム製品などの特定の弾性重合体又はゴムを針シール(設けられる場合)及びプロングベース50などの構成要素に用いてもよい。当業者には理解されるように、針にはステンレス鋼などの種々の医療グレード金属材料を用いてもよい。これらの構成要素、バレルアダプタ及び送出シリンジは、所望のパラメータを満たすために種々の異なる構成における形状又は大きさにしてもよい。これらの構成要素、バレルアダプタ及びシリンジは、当該技術分野で周知の多数の工程によって組み立てられてもよく、及び/又はインプラントが充填されてもよい。例えば、周知の接着剤又は超音波溶接などの溶接方法を用いて本発明の構成要素を組み立ててもよい。
【0062】
本発明の送出シリンジは、従来のシリンジと同様の手法で使用されるように構成されている。使用の方法は、プランジャアセンブリ12を押下して後退機構21の作動及び針28からのインプラント49の送出を容易にするステップと、ロック機構22を起動し、付勢部材30と針アセンブリ42との間の接触により付勢部材30をその付勢された状態から解放し、針アセンブリ42をバレル内に後退させるステップと、インプラント49を標的位置に送出するステップと、インプラント49の送出時、スタイレット54をシリンジのバレル内に後退させるステップとを含む。シリンジの実施形態に関して上述したように、ロック機構22、針ハブ24及び他の構成要素が付勢部材30の係合及び解放を可能にするように機能するように構成され得るいくつかの異なる方法がある。例えば、シリンジ10において、ロック機構22はバレル先端部32上に、ロック機構22に係合するインターフェースを含んでもよい。使用者によって作動されると、ロック機構22の、バレル先端部32との係合の解除を開始するために、針ハブ24を用いてもよい。シリンジの別の実施形態では、ロック部32aはバレル先端部32とは別の構成要素であってもよいが、シリンジ10の構成要素と同様の手法で機能してもよい。送出シリンジ100の機能は送出シリンジ10に関して本明細書中に記載したものと実質的に類似している。
【0063】
特定の構成要素を問わず、本発明の送出シリンジの使用方法は比較的類似している。ロック機構22をその係合状態から解除することにより、付勢部材30を伸張させ、針アセンブリ42を実質的にバレル18の長手方向の軸線に沿って近位方向に後退させる。本発明のいくつかの実施形態では、針アセンブリ42全体を後退させる一方、他の実施形態では、ロック機構22の解除及び付勢部材30の作動の際、針28を含むその特定の構成要素のみを後退させる。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、ロック機構22を針アセンブリ42と共に後退させる一方、他の実施形態では、ロック機構22は実質的に静止したままであるが、針アセンブリ42又はその構成要素が動くことを可能にする。任意選択的に、使用方法は、針アセンブリ42がバレル18内に後退した後、針28が軸方向遠位方向に並進することを針ブロックによって阻止するステップを含んでもよい。
【0064】
図14A〜
図16Cは、送出シリンジ200の別の実施形態を示す。上述の送出シリンジの実施形態と同様に、送出シリンジ200は、標的組織にインプラントを配置するように構成されている。以下に詳細に記載されるように、しかしながら、送出シリンジ200は、
図1〜
図13に記載した実施形態と異なる針後退機構を使用する。
【0065】
図14A及び
図14Bに示すように、送出シリンジ200は、プランジャアセンブリ212を有するシリンジバレル218に取り付けるためのバレルアダプタ220を含む。バレルアダプタ220のバレル先端部232は、任意の適切な方法によって任意の標準的なバレルと結合するように構成してもよいと考えられる。上述のバレル18と同様に、バレル218はテーパ状であっても、非円柱状であっても、実質的に真直であってもよいと共に、任意の適切な材料で形成してもよい。製造目的に適した実施形態では、バレル218は真直バレルガラスシリンダである。1つ以上の実施形態では、バレル218は、例えば、標準的な市販の構成要素であってもよく、価値のある製造効率及び運転コスト削減をもたらす。加えて、送出シリンジ200が組み立てられるとバレル218からプランジャアセンブリ212が分離するのを阻止又は防止し得るバレルキャップ208を提供してもよい。バレル218又はバレルキャップ208(示されるように)はフィンガーフランジを含んでもよい。プランジャアセンブリ212は、プランジャロッド213及びプランジャ215を含み得る。プランジャ215はねじ式係合などによってプランジャロッド213の遠位端に一体化又は接続され得る。プランジャ215は、バレル218に対して上下に作動し、プランジャロッド213に追従することができる。
【0066】
当業者には理解されるように、バレルアダプタ220は任意の適切なカップリング機構によってシリンジバレル218に取り付けてもよい。例えば、バレルアダプタ220はカップリング構造によってシリンジバレル218に結合してもよく、カップリング構造は、バレルアダプタ220及びシリンジバレル218の構成要素とは別個であってもよく、バレルアダプタ220及びシリンジバレル218と一体であってもよい。更に、バレルアダプタ220は、シリンジ製造工程中又は使用の直前に、シリンジバレル218に結合してもよい。単に例として、シリンジアダプタ220は、シリンジ製造工程中、締まり嵌め、接着剤、スナップフィットアセンブリ及び/又はねじ嵌合アセンブリ等により、シリンジバレル218に結合されてもよい。その代わりに、例えば、バレルアダプタ220が使用の直前にシリンジバレル218に結合され得るように、シリンジバレル218及びバレルアダプタ220は、嵌合するねじ山又はルアーロック機構を含んでもよい。本発明の少なくとも一実施形態では、バレルアダプタはねじ嵌合アセンブリによってバレルに接続されてもよく、バレルアダプタ及びバレルの両方は対応する雄及び雌ねじピッチ部又は構成要素を有する。別の実施形態では、アダプタカラー233などの1つ以上のカップリング構造を設けて、バレルアダプタ220をバレル218に結合してもよい。バレルアダプタ220とバレルとの間に配置するために1つ以上のOリング236を提供してもよい。
【0067】
バレルアダプタ220は、シリンジバレル218への針201の取り付けを容易にする。バレルアダプタ220は、バレル先端部232及び針後退機構211を含む。針後退機構211は、アクチュエータサブアセンブリ210(
図15A及び
図15Bに示される)と、針サブアセンブリ221と、内部及び外部付勢部材240、241と、付勢部材240、241を付勢位置に維持するために配置された作動可能なロック機構とを含む。バレル先端部232は、通常、シリンジバレル218に結合されるとシリンジ200の遠位端となり、薬剤の注入時、針201はバレル先端部232の遠位端内に延びている。以下により詳細に説明するように、バレル先端部232は、スリーブ250などの針後退機構211の一部分を形成する構造を更に含んでもよい。
【0068】
図15A及び
図15Bに示すように、針サブアセンブリ221は、針オーバーモールド部(「NOM」)222と、針201と、針ハブ216とを含む。
図15Aに示すように、針201の近位端229は針ハブ216の中央内に配置され、NOMの上方への動きによってバレル218に対する針ハブの上方への動きをもたらすように、針ハブはNOM222の近位端223に隣接して配置されている。いくつかの実施形態では、NOM222の近位端223は針ハブ216に接続され得る。NOM222は針201上に成形され得る、接着によって取り付けられ得る、共成形され得る、又はいくつかの手法で針に取り付けられ得る、装着され得る若しくは固定される。代替として、機械技術分野の当業者には容易に理解されるように、NOM222は針201の成形態様であってもよい。
【0069】
バレルアダプタ220は作動可能なロック機構も含む。作動可能なロック機構は、針201を後退させるためにアクチュエータサブアセンブリ210によって作動されるまで内部及び外部付勢部材240、241を付勢位置に維持するように配置されている。作動可能なロック機構は、部分的に、NOM222とNOM保持器224との間に解放可能なカップリングを含む。
図15A及び
図15Bに示すように組み立てられると、NOM222は実質的にNOM保持器224の中央内及びバレル先端部232の中央内に嵌合する。
図15Aに示される実施形態では、NOM保持器224は、例えば、NOM保持器224内の係合オリフィス225によって形成されたスリーブアーム250Aと係合面224Aとの間の係合部などにおいて、バレル先端部232のスリーブ250に着脱可能に係合してもよい。スリーブアーム250Aは、スリーブ250をNOM保持器224の端部に挿入することを可能にし、且つスリーブアーム250Aが係合オリフィス225内の適所にスナップ留めされることを可能にするカム付き表面を含み得る。
【0070】
NOM222及びNOM保持器224は
図16A、
図16B及び
図16Cに分解組立形態で示されている。
図16A〜
図16Cには針201自体は図示されていないことは理解されよう。図示される実施形態では、内部及び外部付勢部材240、241(
図16A〜
図16Cでは明確にするために省略する)は保持器突起230とNOM突起231との間に挟まれている。
図14及び
図15の実施形態は内部及び外部付勢部材の両方を含むが、いくつかの実施形態では、単一の付勢部材又は更なる付勢部材のいずれかを使用することができると考えられると理解されるべきである。少なくとも1つの保持器アーム234が適所にスナップ留めされNOM222上に含まれるNOMシェルフ235と係合し、ロック機構の解放可能なカップリングを形成するように、NOM222は、NOM保持器224の中央に受け入れられるように構成されている。保持器アーム234は、NOMシェルフ235との係合を維持するために、概して、内側に付勢され得る。NOMシェルフ235と保持器アーム234との間の接触によってNOM222の上方への動きを防止し、付勢部材240、241を付勢位置に維持する。
図15Bを参照すると、示されるように、NOM222が適所にあり、付勢位置にあるとき、バレル先端部232のスリーブ250はNOM切欠部238と係合し、バレル先端部232に対するNOM及び針201の更に下方への動きを防止する。以下に更に記載されるように、ロック機構は作動されるまで付勢位置のままであり得る。
【0071】
ここで
図15A〜
図15Bに戻ると、アクチュエータサブアセンブリ210は、作動可能なロック機構を作動し、付勢部材240、241を消勢させ、針201を後退させるために配置されている。図示される実施形態では、アクチュエータサブアセンブリ210は、スタイレットディスク214と、スタイレット254と、少なくとも1つのプロング242と、NOM保持器224とを含む。図示した実施形態は、プランジャ215から延出するプロング242の対を含む。このようにして、プランジャ215はプロング保持器として機能し、プロング242はプランジャ215と共に軸方向に動く。しかしながら、プロング242がプランジャ215の押下によって長手方向遠位方向に動くように配置される限り、プロング242は、プランジャ215によって係合される又はプランジャ215に固定される別個のベースから延出してもよいことは理解されよう。
【0072】
プロング242は針ハブ216に対して摺動可能に配置されており、プロングの作動端部243はNOM保持器224の中央へと延びて、保持器アーム234の内部部分と係合する。プロング242の作動端部243には保持器アーム234の内部部分と滑らかに係合するようにカムが付され得る。
【0073】
図3に関して上述した実施形態と同様に、
図14〜
図16に示されるシリンジ200及びバレルアダプタ220は、インプラントの送出に使用され得る。
図15Bに示すように、針ハブ216は、その中央において(例えば、実質的にこれらの構成要素及びバレルの長手方向の軸線において)通路として機能するアパーチャ227を有する。このアパーチャ227は、初期注入段階中、針201が針ハブ216内の適所に保持され、後退機構の作動時、近位方向に軸方向に並進させることができるように、針ハブ216ありで又はなしで、針201の外径に等しい直径を有してもよい。針201が針ハブ216を通じてアパーチャ227内に配置された状態で、針201の近位端229は中心ルーメンを呈する。動作時、スタイレット254は針201の中心ルーメン内に配置されており、植え込まれるインプラントはスタイレット254の遠位の針201のルーメン内に収容されていてもよい。したがって、針201が標的(図示せず)に入ると、針201はスタイレット254上を軸方向に後退させてもよい。このようにして、スタイレット254はインプラントが針201と共に後退することを防止し、インプラントを標的内の適所に残す。スタイレット254がバレル先端部232を越えて延出した場合、スタイレット254は、同様に、インプラントの位置決め後、針201と共に、又は針が後退した後、針201とは別々にのいずれかにおいて標的から後退させてもよい。したがって、本発明の態様によれば、インプラントの注入を行うために少なくとも針201を後退させる。別の態様によれば、いくつかの実施形態では、インプラントの送出後、スタイレット254を同様に後退させる。
【0074】
ここで
図14Aを参照すると、スタイレットの遠位端が針201内に配置されている際、スタイレットディスク214はスタイレット254の近位端237を保持している。バレル218に対するスタイレットディスクによる軸方向並進時、スタイレット254がこのような軸方向並進に追従するように、スタイレット254はスタイレットディスク214内に保持されている。同様に、プランジャ215の軸方向並進時、
図14A及び
図14Bに示されるように、プロング242がバレル218及びアクチュエータサブアセンブリ210に対して下方に遠位に動くように、プロング242の近位端239はプランジャ215内に保持される。したがって、プロング242の作動端部243はNOM保持器224の保持器アーム234の内部部分に係合することから、アクチュエータサブアセンブリ210の作動は、プランジャアセンブリ212の下方への軸方向の動きに応答したプランジャ215が下方に軸方向に動くことで行われる。アクチュエータサブアセンブリ210の作動時、プロング242の作動端部243は保持器アーム234をNOM222に対して外側に動かす。保持器アーム234が外側に動き、NOMシェルフ235から離れると、保持器アームはNOMシェルフにもはや係合しておらず、NOM保持器224はNOM222が内部及び外部付勢部材240、241の力により上方に動くことをもはや妨げない。付勢部材240、241はNOM222をNOM保持器224に対して上方に強制的に動かすため、針201はNOMと共に、バレル先端部232の遠位端へと後退する。
【0075】
図13A〜
図13Dに関して上述した実施形態と同様に、プラグ127(
図13A〜
図13Dに示されている)は、インプラントを最初に針201の遠位先端部の適所に保持するために用いられ得る。プラグは、任意選択的に、インプラントの留置に加えて、留置されてもよい。いくつかの実施形態では、
図14Aに示すように、プランジャロッド213がバレル218に向かって作動されると、プランジャ215がスタイレットディスク214を押し、スタイレットディスク及びスタイレット254をバレル218に対して下方に並進させるように、スタイレットディスク214はプランジャ215に直に隣接して配置されている。このような実施形態では、アクチュエータサブアセンブリ210が作動される直前に、スタイレット254のこのわずかな下方への軸方向の動きによってスタイレットが針201に対して下方に並進する。スタイレット254のこのわずかな下方への動きはプラグを針201の遠位端から単に解放するために十分であり得るが、インプラントを針から解放するには十分ではない。アクチュエータサブアセンブリ210が作動され、NOM222及び針ハブ216をバレル218内に軸方向に後退させると、針201はスタイレット254の周りで後退し、スタイレットがインプラントを針から強制的に出す。インプラントが針201から出されて配置され、付勢部材240、241が針ハブ216をスタイレットディスク214に押し付けると、スタイレット254もまた、バレル218及びバレル先端部232に対して後退することができる。
【0076】
したがって、本発明の一態様では、送出システムは、使用者がプランジャロッド213をバレル218に対して軸方向に押下することによって作動される。プランジャロッド213の押下により、プランジャ215及びスタイレットディスク214のわずかな下方への軸方向並進が生じる。スタイレットディスク214の下方への動きによってスタイレット254が針201内で軸方向に並進し、インプラントを針から押し出すことなく針の遠位端からプラグを押し出す。プランジャ215がその下方への並進を続けると、プランジャはプロング242をNOM保持器224に対して下方に押す。プロング242のアクチュエータ端部243はNOM保持器224の保持器アーム234を外側に押しやり、NOM222を保持から解放する。NOM222が解放されると、付勢部材240、241は付勢位置から消勢位置に移動することができ、NOM222をNOM保持器224及びバレル先端部232に対して軸方向上方に押しやる。NOM222は針ハブ216を押し、針ハブを上方に移動させ、針201の遠位端をバレル先端部232に後退させる。針201が後退する際、スタイレット254は所定の位置に留まり、インプラントを針の遠位端から押し出す。針ハブ216がスタイレットディスク214に接触すると、スタイレットディスク214を上方に押しやり、スタイレット254もバレル先端部232内に後退させることができる。
【0077】
本発明の実施形態は、また、標準的な市販の構成要素の使用を可能にする構成を提供し、それにより、全体的な製造コストを削減し、組み立て工程を簡素化し、多くの場合、非標準的な材料及び構成要素に伴う規制事項を回避する。例えば、バレルは、特定のプラスチック、ガラス、又は医療グレードの製品に一般に使用される任意の他の材料から作製してもよい。本発明の1つ以上の構成要素はまた、マサチューセッツ州ピッツフィールドに所在のSABICイノベーティブプラスチックス(SABIC Innovative Plastics)によって商品名「レキサン(LEXAN)(商標)」で販売されているポリカーボネートプラスチックなどの特定のプラスチックで作製してもよい。同様に、ニュージャージー州ペンサクケンのダットウィラー・ファルマ・パッキング(Datwyler Pharma Packaging USA Inc.)によって商品名「ヘルボエット(HELVOET)」で販売されているゴム製品などの特定の弾性重合体又はゴムを針シール(設けられる場合)及びプランジャ215などの構成要素に用いてもよい。当業者には理解されるように、針にはステンレス鋼などの種々の医療グレード金属材料を用いてもよい。これらの構成要素、バレルアダプタ及び送出シリンジは、所望のパラメータを満たすために種々の異なる構成における形状又は大きさにしてもよい。これらの構成要素、バレルアダプタ及びシリンジは、当該技術分野で周知の多数の工程によって組み立てられてもよく、及び/又はインプラントが充填されてもよい。例えば、周知の接着剤又は超音波溶接などの溶接方法を用いて本発明の構成要素を組み立ててもよい。
【0078】
本発明は、バレルアダプタ、送出システム及び針後退を提供する後退機構などの構成要素アセンブリ、このような安全機構を組み込む送出シリンジ、このような送出シリンジを製造する方法、並びにそれらの使用方法を提供する。上述したように、バレルアダプタ、送出システム、後退機構及び送出シリンジはいくつかの異なる構成において使用してもよい。例えば、上述のように、本発明の新規なバレルアダプタはバレルと結合する、バレル内に取り付けられる、又はそうでなければバレルに接続するように構成されているが、バレルアダプタの構成要素のいずれかをバレルに予め形成することが望ましい場合がある。このような修正形態は本発明の実施形態において考えられると共に、本発明の実施形態に包含される。上述の実施形態に記載したように、構成要素は単一の構成要素であっても、一体型の構成要素であっても、又は多目的構成要素であってもよい。更に、針28、201、スタイレット54、254、針ハブ24、216、スタイレットディスク52、214、及びプロングベース50、及び関連構成要素の相互作用を利用し得る、本明細書中に記載される新規な針後退機構を用い得るいくつかの異なる構成がある。したがって、上で記載した例と同様に、本発明のバレルアダプタ及び送出シリンジは、本発明の範囲内にある一方で、任意の数の構成において薬剤インプラント送出を開始し、針後退を作動させるように構成、修正及び利用してもよい。したがって、本発明は、本発明の修正形態及び変形形態を、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内であることを前提として包含するものとする。
【0079】
前述の記載は開示されるシステム及び手法の例を提供するものであることは理解されよう。しかしながら、本開示の他の実装形態は前述の例と細部が異なっていてもよいと考えられる。本開示又はその例への参照は全て、その時点で論じられている特定の例を参照するものであり、より一般的に、本開示の範囲についての限定を示唆するものではない。特定の特徴に関する区別及び非難のあらゆる文言は、それらの特徴の好適さが欠如していることを示すものであるが、特に指示のない限り、そのようなものを本開示の範囲から完全に排除するものではない。
【0080】
本発明の記載に関連して(特に、以下の特許請求の範囲に関連して)、用語「1つの(a)」、及び「1つの(an)」、及び「その(the)」、及び「少なくとも1つ」、並びに類似の指示対象の使用は、本明細書中で別段示唆されず、或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、単数形及び複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。1つ以上の物品のリストに続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書中で別段示唆されず、或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、列挙された物品から選択された1つの物品(A又はB)、又は列挙された物品の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するものと解釈されるべきである。
【0081】
本明細書中で特に指示のない限り、本明細書中における値の範囲の記述は、単にその範囲内の別個の値それぞれを個々に参照する簡潔な方法としての機能するものであり、それぞれの別個の値は本明細書中に個々に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中で別段示唆されず、或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、本明細書中に記載されるいずれの方法も任意の適切な順序で実施され得る。
【0082】
したがって、本開示は、準拠法の許す範囲で、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙する対象のあらゆる修正形態及び均等物を含む。更に、上述の要素の任意の組み合わせは、そのあらゆる可能な変形形態において、本明細書中で別段示唆されず、或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、本開示に包含される。
【国際調査報告】