(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-511488(P2018-511488A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】溝を有する工作物を研削する方法および研削機
(51)【国際特許分類】
B24B 19/02 20060101AFI20180330BHJP
B24B 53/075 20060101ALI20180330BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20180330BHJP
B24B 49/18 20060101ALI20180330BHJP
【FI】
B24B19/02
B24B53/075
B24B55/02 Z
B24B49/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-548866(P2017-548866)
(86)(22)【出願日】2016年3月11日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月15日
(86)【国際出願番号】EP2016055221
(87)【国際公開番号】WO2016146495
(87)【国際公開日】20160922
(31)【優先権主張番号】102015204909.4
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】399004027
【氏名又は名称】エルヴィン ユンカー マシーネンファブリーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Erwin Junker Maschinenfabrik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン ユンカー
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
3C049
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034CB12
3C047CC08
3C047CC11
3C047CC15
3C047FF09
3C047FF11
3C047GG00
3C049AA03
3C049AA09
3C049AA19
3C049AC02
3C049BB02
3C049CA02
3C049CB01
3C049CB03
(57)【要約】
溝またはプロファイルを工作物に研削する方法が記述される。溝は、これに対応して成形された研削砥石(5)により研削され、その際、研削砥石(5)の成形部(6)がクラッシングされる。本発明によれば、研削砥石の後成形クラッシングは、その際に駆動されるクラッシャロールを用いて行われ、その際、クラッシャロール(8)の制御が、回転数および電力消費量のその都度の測定に基づいて行われ、ひいては研削砥石(5)とクラッシャロール(8)との間の相対的な送り量が、この測定に基づいて制御される。さらに、このような溝を有する工作物を研削する研削機が記述されており、この研削機では、工作物は、工作物主軸台(3)により緊締された状態で保持されており、研削機に、追加的に、固有の回転駆動装置(11)を有するクラッシャロール(8)を備える、堅固に設置されたクラッシング装置(7)が設けられている。研削砥石(5)の成形部(6)を形直し・目直しするために、クラッシャロール(8)に研削砥石(5)が送られ、そのためにクラッシャロール(8)は、第1の形直し・目直し量で研削砥石(5)を成形クラッシングするための成形クラッシング区分(14)と、第2の形直し・目直し量で研削砥石(5)を後成形クラッシングするための、同一のクラッシャロール(8)に配置された後成形クラッシング区分(15)とを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削砥石(5)の、溝の横断面に対応するように構成された成形部(6)を用いて、溝を有する工作物(1)を研削する方法であって、
前記研削砥石(5)の前記成形部(6)により、前記工作物(1)が緊締された状態で該工作物(1)に前記溝を研削し、前記研削砥石(5)の前記成形部(6)をクラッシングする、方法において、
前記研削砥石(5)の後成形クラッシングを、その際に駆動されるクラッシャロール(8)を用いて行い、該クラッシャロール(8)の制御を、前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との各々の駆動装置の回転数および電力消費量のその都度の測定に基づいて行い、クラッシング時の前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の相対的な送り量を前記測定に基づいて制御する
ことを特徴とする、溝を有する工作物(1)を研削する方法。
【請求項2】
前記研削砥石(5)の成形クラッシングを、その際に場合により一時的にだけ駆動される前記クラッシャロール(8)を用いて、前記研削砥石の駆動装置の測定された回転数および電力消費量に基づく前記研削砥石の駆動装置の制御により、前記測定に基づいて前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の相対的な送り量の制御により行い、成形クラッシングを、研削プロセスの開始前に行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成形クラッシング時、後成形クラッシング時よりも大きな形直し・目直し量で前記研削砥石の形直し・目直しをする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
クラッシングのために、前記研削砥石(5)を前記クラッシャロール(8)へ送り、該クラッシャロール(8)と係合させて、成形クラッシングの間、前記クラッシャロール(8)を、固有の駆動装置(11)を作動させることなく前記研削砥石(5)とともに自由に回転させる、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)とを、該クラッシャロール(8)と該研削砥石(5)との回転数に関して、前記クラッシャロール(8)の所定の周面(17)を通る所定の溝の深さで後成形クラッシングするときに前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)との周速が互いに所定の比を有するように、互いに合わせて調整する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
所定の溝の深さに対応する前記周面(17)を、前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との周速の一定の比で、前記溝の深さに関して特に無段階に変化させる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
成形クラッシングの間、前記クラッシャロール(8)の回転数が所定の境界回転数を下回ると、該クラッシャロール(8)の周速が前記溝の所定の深さにおける前記周面(17)での前記研削砥石(5)の周速に一致するまで前記クラッシャロール(8)を駆動させる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)とをクラッシングするときに、前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)との係合領域に冷却剤を供給する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
クラッシング時の前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の最大の相対的な送り量は、機械パラメータとクラッシングパラメータとに依存しており、前記送り量をクラッシング前に求め、境界値として機械制御装置に入力し、特にそこに記憶させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
溝を有する工作物(1)を研削する研削機であって、
機械スタンド上の切込み台上でX軸方向およびZ軸方向にCNC移動可能な砥石台(2)であって、溝を研削するために成形された研削砥石(5)を支持するとともに回転駆動する、砥石台(2)と、
C軸を有する工作物主軸台(3)と、
を備え、
前記工作物(1)は、緊締された状態で存在し、追加的に、固有の回転駆動装置(11)を有するクラッシャロール(8)を備える、当該研削機に堅固に設置されたクラッシング装置(7)が設けられており、該クラッシング装置(7)は、制御装置により制御可能である、研削機において、
前記クラッシャロール(8)に、前記研削砥石(5)の成形部(6)を形直し・目直しするために前記研削砥石(5)を送ることが可能であり、
前記クラッシャロール(8)は、第1の形直し・目直し量で前記研削砥石(5)を成形クラッシングするための成形クラッシング区分(14)と、第2の形直し・目直し量で前記研削砥石(5)を後成形クラッシングするための、同一のクラッシャロール(8)に配置された後成形クラッシング区分(15)とを有し、
前記研削砥石(5)および前記クラッシャロール(8)は、後成形クラッシングの間に駆動可能であるとともに回転数制御可能である
ことを特徴とする、溝を有する工作物(1)を研削する研削機。
【請求項11】
前記クラッシング装置(7)は、ハウジング(9)内に配置され、前記機械スタンドと固く結合されている、請求項10記載の研削機。
【請求項12】
前記クラッシング装置(7)は、CNC制御式の駆動装置(11)を有し、該駆動装置(11)は、連結装置(10)を介して、特に高性能高速度鋼または硬質合金から成る前記クラッシャロール(8)と、該クラッシャロール(8)を回転駆動させるために、結合されている、請求項10または11記載の研削機。
【請求項13】
前記クラッシング装置(7)は、固体伝播音センサ(13)を有し、該固体伝播音センサ(13)により、前記研削砥石(5)が前記クラッシャロール(8)と係合しているときに、信号を前記制御装置に伝送することが可能であり、該信号に基づいて、前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)との間の係合接触を、該係合接触を監視するために、検出することが可能である、請求項10から12までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項14】
前記研削砥石(5)は、後成形クラッシング時に前記クラッシャロール(8)へと送ることが可能であり、横方向で後成形クラッシング区分(15)へ移動可能である、請求項10から13までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項15】
成形クラッシングの開始時または成形クラッシングの間に、前記クラッシング装置(7)の前記駆動装置(11)に、該駆動装置(11)の回転数が低下するとオン切替え可能な駆動インパルスを供給可能である、請求項10から14までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項16】
前記クラッシャロール(8)は、一体的にまたは2つの部分から構成されている、請求項10から15までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項17】
クラッシング時の前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の最大の相対的な送り量が、クラッシング前に前記制御装置に入力可能である、設定可能な機械パラメータとプロセスパラメータとに依存する境界値よりも小さいように、前記制御装置が構成されている、請求項10から16までのいずれか1項記載の研削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、溝を有する工作物を研削する方法および研削機に関する。
【背景技術】
【0002】
特に螺旋溝が切られた、またはねじ山を有する工作物が製作される、既知の工作物に溝を切込む方法および研削機では、研削砥石は、工作物に溝を切り込むとき、研削砥石の成形部の外側の凸形状が、工作物に設けられる溝の凹形状として生じるように成形される。高性能で比較的長い耐用期間を有するCBNまたはダイヤモンド・研削砥石を使用しても、研削砥石の成形部に生じる減耗が、研削結果の不良化ひいては工作物における溝の目標形状からのずれを生じさせてしまい、さらに研削のプロセスが進行すると、研削砥石の成形部の精度および研削砥石の鋭利さが低下する。これにより、研削砥石の成形部をある程度の使用期間の後で新たに成形する、つまり形直し・目直ししなければならない。
【0003】
前述の研削砥石を成形するための高性能な形直し・目直し法として、クラッシング(Crushieren)が行われている。多くの場合にロール式の形直し・目直し(Abrichten)とも称されるクラッシングは、金属またはセラミック結合されたダイヤモンド砥石またはCBN砥石を投影に従って成形するための、回転式の形直し・目直しの特別な方法として以前から実施され実証されている。クラッシングは、とりわけ大量の工具に微細なプロファイルを設けなければならない場合に用いられる。
【0004】
既知のクラッシング装置は、通常は、クラッシャロールを有し、クラッシャロールと研削砥石との両方が互いに係合しているとき、クラッシャロールが駆動され、研削砥石が摩擦により連行されるか、または駆動されずその代わりに研削砥石が駆動されるので、両方が互いに係合しているとき、研削砥石は、摩擦によりクラッシャロールを連行する、つまり回転させる。より高性能の研削主軸駆動装置を有する漸次より大きくより高性能となる研削機に基づいて近年ますます高まる傾向により、駆動される研削砥石によるクラッシャロールの駆動が実施されている。つまり、クラッシャロールは、研削砥石がクラッシャロールと係合しているときに軽い動作で一緒に回転する。クラッシング時に研削砥石に高い成形精度を実現できるようにするために、クラッシングパラメータを極めて入念に選択し使用しなければならない。少なくともクラッシャロールと研削砥石とが互いに係合しているとき、研削砥石の成形層から全ての砥粒または成形層の少なくともより大きな断片が押し潰されたり引き裂かれたりする。さらに、クラッシング時、離脱した砥粒がクラッシャロールと研削砥石との間の接触領域からできるだけすみやかに導出されるように配慮しなければならない。クラッシング工程は、クラッシャロールと研削砥石との係合領域で比較的高い圧力下で行われるので、場合により生じる研削砥石の変形により、形成されるべきプロファイルが形直し・目直し時またはその後で歪められる。したがって、狭義ではクラッシャロールおよび研削砥石の、広義ではクラッシャロール主軸および研削砥石主軸のパラメータを、いわゆる変形を回避するのみならず排除することもできるように選択するとともに実現しなければならない。たとえば、研削砥石とクラッシャロールとの間の相対的な送り量またはこれら両方の係合領域に発生するいわゆるクラッシング圧力などの特定のパラメータが過度に大きく選択されると、いわゆるがたつきが発生し、これは、クラッシング工程においてなんとしても回避されるべきである。
【0005】
独国特許発明第3050373号明細書には、数値制御式のプロファイル研削機または表面研削機に用いられる形直し・目直し装置が記述されている。この公知の形直し・目直し装置では、クラッシング装置が、プロファイル研削機または平面研削機に配置されており、クラッシング装置は、固有の駆動装置を有する。成形された複数の研削砥石の形直し・目直しが設定されており、研削砥石は、砥石自体の回転軸の方向で相並んで配置されているので、各々の成形された研削砥石に対応してロータリドレッサが配置されている。クラッシングの間、ロータリドレッサは、研削砥粒が押し潰されて破壊されるように圧力を加えつつ研削砥石上を転動する。その際、研削砥石とクラッシャロールとの周速は、同一である。ロータリドレッサをクラッシングのために直接に既知の研削砥石に設けることにより、形直し・目直しを既に研削プロセス全体に組み込むことができる。
【0006】
西独国特許出願公開第1284867号明細書において、リボルバヘッドを有するユニバーサル研削機が記述されており、ユニバーサル研削機において、砥石台に、いわゆるクラッシング装置が設けられており、クラッシング装置により、総形研削または切込み研削に必要なプロファイルが研削砥石の周にクラッシングされる。クラッシングを意図する成形としてのクラッシング工程の実施は、記述されていない。この公知のクラッシング装置を用いた研削砥石の成形は、実際の研削機で行われるが、研削操作の間に同様にユニバーサル研削機で行われる旋削、穿孔、研磨およびねじ研削プロセスが、1つの作業工程で追加的に行われる。
【0007】
米国特許第4555873号明細書において、成形された研削砥石を用いて工作物を研削する方法および装置が記述されている。形直し・目直し装置も同様に研削機に配置されており、形直し・目直し装置により、研削砥石の形状および鋭利さを回復させることができる。そのために、研削砥石の成形部に対応して成形されたロータリドレッサにより、研削砥石が、実際の研削操作の間に再び所定の形状および鋭利さにされる。この文献には、形直し・目直しを、中断された研削工程や研削中にも連続的に行うことができることが記述されている。この文献には、クラッシングに関する直接的な示唆は認められないが、連続的にまたは非連続的に実施することができる工程として形直し・目直しが考察されるべきであることが記述されている。形直し・目直し工程を方法技術的に分離することは、記述されていない。
【0008】
さらに、独国特許出願公開第4104266号明細書には、ドレッサ砥石(Abrichtscheibe)を用いて研削砥石を成形する形直し・目直し機械が記述されている。記述されている研削砥石の形直し・目直し、つまり研削結果の精度にとって必要な研削砥石の成形部の形成は、その端面で丸み付けされたドレッサ砥石により行われ、ドレッサ砥石は、研削砥石に得られるべきプロファイルが形成されるように、形直し・目直しに際して研削砥石の端面を中心に空間的に旋回させられる。ドレッサ砥石は、形直し・目直し工程の間にそれぞれその周方向端面に対して間隔を空けて配置され、回転軸線に対して横向きに延在する旋回軸線を中心に振動旋回させられる。原則として、ドレッサ砥石は、研削砥石に当て付けられる。この公知の形直し・目直し機械では、ドレッサ砥石の減耗がコントロールされるべきである。
【0009】
特開平5−138532号公報において、CBN研削砥石用の形直し・目直し装置が設けられており、この形直し・目直し装置は、研削砥石を、荒研削にも仕上げ研削にも同様に使用することができるように形直し・目直しする。ドレッサ砥石が、いわゆるクラッシング砥粒と個々の研磨性の砥粒とを有する。これらの粒体は、ドレッシング層において混合されている。この形直し・目直しは、1つの工程で行われ、カップ状に形成された研削砥石の軸方向端面の形直し・目直しを表す。
【0010】
すでに米国特許第3435814号明細書において、成形された研削砥石のクラッシングを行う形直し・目直し装置が記述されている。研削砥石は、研削機に堅固に配置されている。クラッシング装置は、クラッシャロールの態様で構成されており、研削砥石を形直し・目直しするために研削砥石に当接させられる。クラッシャロール用の駆動装置は、クラッシャロールと研削砥石との周速が異ならないことを確保するべきである。クラッシャロールと研削砥石とが互いに係合しているとき、専ら研削砥石がクラッシャロールを駆動する。クラッシング工程は、1つの作業工程で行われ、続いてクラッシャロールが、研削砥石との係合から解除される。
【0011】
すでにSaint−Gobain Abrasives社のパンフレットWinterにも、成形された研削砥石を形直し・目直しするために使用されるクラッシング装置が、可能な限り機械の構成要素であるべきであり、この機械に堅固に設置しなければならないことが記述されている。これにより、時間が掛かる工具の交換を回避することができる。好適には、研削砥石が駆動されるべきであり、成形ロールは、形直し・目直し時に、研削砥石によって軽い作動で連行されるべきである。後続の成形工程などに対する最初の成形には、その都度特別な成形ロールが必要である。この公知の装置では、前成形の後で成形ロールを交換する必要がある。これには、研削砥石に位置決め誤差ひいては成形誤差が発生し得るという欠点が存在する。
【0012】
既知の全ての形直し・目直し法またはクラッシング法もしくは使用されるクラッシング装置では、クラッシングが研削目的に依存して行われることもなく、実際のクラッシング工程の、高い融通性を保証するパラメータに留意することもない点が共通している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、主要なクラッシングパラメータを考慮しつつ成形されるべき研削砥石のクラッシング−形直し・目直しが自動の研削プロセスに組み込まれており、そして研削砥石の長い耐用期間が得られるとともに研削される工作物の高い品質が得られる、溝入れされた工作物を研削する方法および研削機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を有する方法および請求項10の特徴部に記載の構成を有する研削機により達成される。好適な改良形は、それぞれの従属請求項に規定されている。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、溝を有する工作物を研削する方法が記述されている。工作物は、特に螺旋溝が切られた、またはねじ山を有する工作物であり、この場合、溝は、たとえば切込みなどの真っ直ぐな溝であっても周方向に延在する溝であってもよい。工作物は緊締されており、その溝は、溝の横断面に対応する成形部を有する研削砥石によって研削される。研削工程により、研削砥石の減耗の結果、研削砥石の成形部が変化し、したがって研削砥石は、クラッシングにより後成形される。後成形とは、ここではいわゆる仕上げクラッシングまたは仕上げ成形と解されるべきである。プロファイルは、研削砥石に設けられていて、精度および鋭さに関していわゆる回復がなされる。本発明によれば、研削砥石の後成形クラッシングは、その際に同様に駆動されるクラッシャロールを用いて行われ、研削砥石とクラッシャロールとの各々の駆動装置のその都度の回転数および電力消費量の測定に基づくクラッシャロールの制御により行われ、これに基づいて、研削砥石とクラッシャロールとの間のクラッシング時の相対的な送りが行われる。この場合、好適には、クラッシングと研削工程全体とにおける効率の理由から、相対的な送り量が最大の相対的な送り量であり、その際、依然として不都合な加工プロセス状態が生じないように、相対的な送り量が選択される。つまり、常時最大の相対的な送り量で後成形クラッシングが成され、その際、クラッシャロールの耐用期間が過剰に減少することはない一方で、クラッシャロールと研削砥石との間の比較的高いクラッシング圧力で加工を行うことができ、その際、クラッシング時に常時安定したクラッシング状態が保持される。
【0016】
本発明によれば、少なくとも回転数および電力消費量が後成形クラッシングに関する主要なクラッシングパラメータとして測定され、クラッシングの加工プロセスの制御に利用される。この場合、電力消費量は、必要に応じて研削砥石やクラッシャロールの駆動装置を作動させる電力を表すか、または研削砥石やクラッシャロールに供給され、これにより所望の規定されたクラッシングパラメータを保持することができる電力を表す。
【0017】
好適には、研削砥石の成形クラッシングは、クラッシャロールを用いて行われ、その際、クラッシャロールは、通常は駆動されず、それも研削砥石の駆動装置の測定された回転数および電力消費量に基づいて切削砥石の駆動装置だけの制御装置により駆動されず、成形クラッシングは、研削プロセスの開始前に行われる。この場合、成形クラッシングとは、まだ成形されていない研削砥石に、第1の作業工程で、クラッシャロールを用いた実際の研削プロセスの開始前に成形部が与えられ、これによりこの研削砥石を用いて工作物に溝を研削することができることと解される。この場合、成形クラッシングは、前クラッシングまたは前成形もしくは荒成形に相当する。
【0018】
好適には、成形クラッシングは、後成形クラッシングに使用されるのと同一のクラッシャロールを用いて行われる。これは、クラッシャロールが複数の、好適には少なくとも2つの成形部を有し、成形部は、研削砥石に凸状の成形部を形成するための凹型として逐次使用されることにより達成される。クラッシャロールに複数のクラッシング溝目を設けることは、単一のクラッシャロールを複数のクラッシング工程に使用することができるという利点を有する。いずれにせよ、クラッシャロールにいわゆる溝目状の加工が成される。最後のクラッシング細溝が特に後成形クラッシングによる研削砥石の次の成形を精度に関する理由からもはや許容されなくなると、クラッシャロールを交換し、場合により再生しなければならない。
【0019】
成形クラッシング時にも、研削砥石の駆動装置の回転数および電力消費量の測定により、最大の相対的な送り量によるクラッシング工程の最適な実施が可能になり、その際、たとえばがたつきなどの不都合な加工プロセス状態が生じることはない。
【0020】
好適には、成形クラッシング時、後成形クラッシング時よりも大きな形直し・目直し量で研削砥石の形直し・目直しが成される。
【0021】
成形クラッシング時に研削砥石が駆動され、これに対してクラッシャロールは通常は駆動されないことを規定することができる。しかし、クラッシャロールが一緒に回転するクラッシングにおいて、スリップと他の影響とに基づいてクラッシャロールの回転数が低下するおそれがある。そのために、クラッシャロールにおいて、少なくとも短い間隔で、いわゆるインパルス状にクラッシャロールの駆動装置がオンに切り替えられるようになっている。駆動装置のオン切替えのインパルスは、クラッシャロールが、研削砥石の回転数である公称回転数に再び達するまでの長さであるかその長さだけ実施される。
【0022】
一般的に、第1の溝プロファイル側面において、研削砥石の成形部の第1の側が当て付けられ、その際、存在する当接センサ系により、クラッシャロールへの駆動インパルスの態様の、場合により行われる駆動装置のオン切替えと、第1の溝プロファイル側面への当付けとが監視される。続いて、クラッシャロールに配置された溝の第2の側面への当付けが行われ、その際、同様に当接センサ系により、クラッシャロールへの駆動インパルスの場合により行われるオン切替えが監視される。これに、研削砥石の側方の移動が、研削砥石がクラッシャロールに存在する溝のプロファイルの中央に合わせて移動させられるまで続く。これに、研削砥石が駆動され、クラッシャロールが自由に一緒に回転するとき、研削砥石とクラッシャロールとの間の送り移動が、つまり研削砥石とクラッシャロールとの間の相対的な送りが続く。最大の相対的な送り量は、つまりクラッシング時の許容される送り量は、電力消費量ひいては研削主軸出力の監視により実現され、その際、電流消費量が継続的に測定される。この場合、CNC制御により、最大の相対的な送り量、つまりクラッシャロールと研削砥石との間の、クラッシング法の効率に関して最適な送り量が算出されて調整される。
【0023】
成形クラッシングの間に研削砥石に成形部が与えられると、研削砥石は、続いて工作物に対応する溝を切り込むための通常の研削プロセスに使用されるかまたは新たに使用され、もしくは精度を向上させるためにさらに後成形クラッシングされる。研削動作では研削砥石は減耗するが、プロファイル形状はほぼ狭い範囲内で保持されるので、規定されるべき研削区分の間で、それも研削砥石の成形部の損耗率に基づいて、研削砥石は、後成形によりクラッシングされる。したがって、成形クラッシングは、この加工プロセスの段階ではもはや不要である。
【0024】
後成形クラッシング時に研削砥石だけではなくクラッシャロールもそれぞれ駆動させられる。成形クラッシング時と同様に、まずクラッシャロールにおける溝の側面が当て付けられ、その際、当接センサ系と、研削砥石およびクラッシャロールの(研削主軸/クラッシャ主軸)両方の駆動装置における電力消費量の測定とにより、この工程が監視される。これに、溝の第2のフランクの当付けが続き、その際、同様に当接センサ系と、研削砥石およびクラッシャロールの両方の駆動装置、つまり研削砥石およびクラッシャロールの主軸における電力消費量の測定とにより、この工程が監視される。これに、プロファイルの中心に合わせた研削砥石の移動が続く。この動作は、後成形クラッシング時に研削砥石とクラッシャロールとが駆動され、回転数制御され、追加的に各々の電力消費量が監視される点で、成形クラッシングとは相違している。
【0025】
好適には、クラッシャロールと研削砥石とは、クラッシャロールと研削砥石との回転数に関して、クラッシャロールの所定の周面を通る所定の溝の深さで後成形クラッシングするときにクラッシャロールと研削砥石との周速が互いに所定の比を有するように、互いに合わせて調整される。これにより、クラッシング工程を、後成形クラッシングに関する主要なパラメータを維持しつつ、制御して行うことができる。最適なクラッシングが行われ、しかもクラッシング時における主要な加工プロセス技術的なパラメータを考慮しつつ行われることが保証される。
【0026】
さらに好適には、所定の溝の深さに対応する周面は、研削砥石とクラッシャロールとの周速の一定の比で、溝の深さに関して特に無段階に変化させられる。
【0027】
成形クラッシングの間、クラッシャロールの主軸に掛かる駆動インパルスの前述のオン切替えに際して、クラッシャロールが所定の境界回転数を下回ると、好適には、回転数が周面の溝の所定の深さで研削砥石の周速に一致するように境界回転数が規定されるかまたは一致するまでクラッシャロールが駆動される。
【0028】
研削砥石のクラッシングの間に研削砥石の係合領域でクラッシングを行う際に、離脱した砥粒および研削層部分をスムーズに係合領域から導出することができるような量の冷却剤が、そのような強さで供給されることが特に重要である。
【0029】
少なくとも機械パラメータとクラッシングパラメータとに依存する、クラッシング時の研削砥石とクラッシャロールとの間の最大の相対的な送り量が、特に実際のクラッシングより前に「試行錯誤」により求められ、境界値として機械制御装置に入力され、特にそこに記憶される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、溝を有する工作物、特に螺旋溝が切られたまたはねじ山を有する工作物を研削するように設けられた研削機は、通常の形で、機械スタンド上の切込み台上でX軸方向およびZ軸方向にCNC移動可能な砥石台を有し、砥石台は、溝を研削するように成形された研削砥石を支持し、研削砥石は、回転駆動される。溝は、真っ直ぐな溝であっても切込みであってもよい。さらに、研削機は、C軸を有する工作物主軸台を備える。工作物は、研削機において締め付けられた状態で保持される。追加的に、研削機は、研削機に堅固に設置されるクラッシング装置を有し、クラッシング装置は、固有の回転駆動装置を有するクラッシャロールを備える。クラッシャロールの回転数は、制御装置により制御可能である。本発明によれば、研削砥石の成形部を形直し・目直しするために、クラッシャロールに研削砥石を送ることができる。クラッシャロールは、第1の形直し・目直し量で研削砥石を成形クラッシングするための成形クラッシング区分と、第2の形直し・目直し量で研削砥石を後成形クラッシングするための、同一のクラッシャロールに配置された後成形クラッシング区分とを有する。成形クラッシング区分と後成形クラッシング区分とを同一の1つのクラッシングロールに設けることにより、クラッシング装置を比較的簡単に構成することができるだけではなく、特に安定して構成することもできる。というのも、この場合、クラッシャロールが、たとえば堅固な軸支部により、実際のクラッシング加工時に変形を回避するのに十分に頑丈であるからである。この変形は、原則的にクラッシング工程時に生じる高い力によって発生するおそれがあり、したがって、クラッシング装置は、研削機の機械台上に固定することにより、やはり特に堅固に構成されなければならない。
【0031】
好適には、クラッシャロールは、3つ以上のクラッシング溝目またはクラッシング溝を有し、これらのクラッシング溝目またはクラッシング溝は、研削砥石の成形部のクラシングに際して、逐次、最後のクラッシング溝目によりクラッシングに際してクラッシング後の研削砥石の成形部の要求される精度と鋭利さとがもはや回復しなくなるまで、使用することができる。この場合、クラッシングロールは交換しなければならない。複数のクラッシング溝目を同一の1つのクラッシャロールに設けることにより、クラッシャロールの1つの溝目が減耗した後で、次の、後成形クラッシングのための溝目を使用することができる。したがって、後成形クラッシング時に常時1つの研削砥石プロファイルを最適な精度で製作できることが確保されている。これは、後成形クラッシングに関する。成形クラッシングは、研削前に、研削砥石が依然として工作物に形成されるべき溝に対応して形成された成形部を有しない場合に使用される。成形クラッシングは、いわゆる最初の成形である。少なくとも研削機の全体の研削プロセスの過程で、ときにより規定の周期に基づいて実施されるべき後成形クラッシングを行えばよく、これにより、成形部の形状も研削砥石の鋭利さもある程度の研削時間の後で回復される。
【0032】
研削機におけるクラッシング装置の安定性および剛性を保証できるようにするために、好適には、クラッシング装置は、安定したハウジング内に配置され、機械スタンドと堅固に結合されている。これにより、クラッシング時に生じる力を確実に吸収して、クラッシングの間のクラッシング装置の弾性変形であっても十分に回避することが可能である。
【0033】
好適には、クラッシング装置は、CNC制御式の駆動装置を有し、駆動装置は、連結装置を介して、クラッシャロールと、これを回転駆動するために結合されている。好適には、クラッシャロールは、高性能高速度鋼(HSS)または硬質合金から成る。電気的な駆動装置が有する利点によれば、特に成形クラッシングの場合に確実に自由に切り替えることができる、つまり駆動されずに一緒に回転し、これは、特に成形クラッシングの場合に当てはまる。というのも、そこでは通常はクラッシャロールが駆動されておらず、つまりクラッシャロールの溝目または溝に研削砥石が係合するとき研削砥石と一緒に回転するからである。クラッシャロールの電気的な駆動装置は、クラッシャロールの回転数が低下する場合、切替インパルスにより、駆動モーメントのオン切替えを介して短時間オンに切り替えることができ、クラッシャロールの回転速度がふたたび研削砥石の回転速度に一致し、そしてクラッシャロールが再び駆動されずに研削砥石と一緒に回転する、という利点をさらに有する。
【0034】
好適には、クラッシング装置は、追加的に固体伝播音センサを有し、固体伝播音センサを用いて、クラッシャロールと研削砥石との間の係合接触を継続的に監視することができる。固体伝播音センサにより、係合接触を検出する信号を制御装置に伝送可能であるので、係合接触に関する信号を制御装置に供給することができる。
【0035】
好適には、研削砥石または研削主軸を、主軸台とともに、後成形クラッシング時にクラッシャロールへと送ることが可能であり、横方向で後成形クラッシング区分へ移動可能であるように構成されている。すなわち、クラッシング時、通常は研削砥石のプロファイルの側面がまず当て付けられ、わずかにクラッシングされ、これに第2の側面の当付けおよびわずかなクラッシングが続き、これに溝に中心を合わせて進行する後成形クラッシングが続く。
【0036】
好適には、クラッシャロールは、一体的にまたは2つの部分から構成されている。全体の研削プロセスの間に研削砥石を複数回クラッシングするための複数のクラッシング溝目を設けた一体的な構成が、クラッシングに必要な高い剛性に関して有利である一方、クラッシャロールの2つの部分から成る構成は、単にクラッシャロールの一部を減耗により交換しなければならないが、まだ減耗していない部分を引き続き使用することができるときに特に有利である。これにより、場合により融通性に関する利点が得られる。
【0037】
最後に、好適には、制御装置は、クラッシング時の研削砥石とクラッシャロールとの間の最大の相対的な送り量が実現可能であり、しかもこの最大の相対的な送り量は、クラッシング前に制御装置に入力可能である、設定可能な機械パラメータとプロセスパラメータとに依存する境界値よりも小さくなるように、構成されている。この最大の相対的な送り量は、各々の工作物、クラッシャロールと研削砥石との各々の構成や使用される研削層とクラッシャロールの材料とを含む相応の研削条件に関して、特に好適には「試行錯誤」の試みの範囲内で決定することができる。
【0038】
本発明の場合、少なくとも、もはや制御不能な不都合な加工プロセス条件が生じることなく、最大の相対的な送り量、つまり最大の許容される送り量を制御するための主要なプロセスパラメータを研削機において保持または実現することができるという思想が平均的な当業者に示唆される。手間が必要であるが、当業者は、その境界値を実験により求めることができる。一度この境界値が求められると、制御装置により、送り量に関して、この境界値を上回ることなく、この境界値の近くにできるだけ近付けることができる。したがって、迅速で低コストの研削砥石のクラッシングを、高い精度でもって全自動プロセスで実施可能である。
【0039】
以下、別の利点、用途および詳細を、添付の図面に示された実施の態様に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】クラッシング装置を有する研削機を上から見た概略的な原理図である。
【
図2】本発明に係る、クラッシング装置とこれに対応して配置された研削砥石を有する研削主軸とを示す図である。
【
図3】成形クラッシングのためのクラッシャロールとこれに対応して配置された研削砥石とを示す図である。
【
図4】成形クラッシングの開始直後のクラッシャロールとこれに対応して配置された研削砥石との詳細図である。
【
図5a】第1の側面における研削砥石の成形部のクラッシング工程を示す。
【
図5b】クラッシャロールの第2の側面における研削砥石の成形部のクラッシング工程を示す。
【
図5c】クラッシャロールを用いた研削砥石の成形部のクラッシングがほぼ終了したクラッシング工程を示す。
【
図6】溝における溝深さと、研削砥石の成形部における、溝深さに応じて設定された周面との幾何学的な状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1には、機械台上の、本発明に係る研削機の主要な構成要素の配置を上から見た原理図が示されている。C軸を有する工作物主軸を備える工作物主軸台が、工作物1を緊締している。先端部において工作物の、場合により必要な緊締を行うために、工作物主軸の長手方向軸線の延長部に、移動可能な、先端部を有する心押台4が設けられている。機械台上に固定された切込み台上に、研削主軸を有する砥石台(研削主軸台)が配置されており、研削主軸に研削砥石5が取り付けられている。研削砥石5は、成形部を有し、成形部により、これに対応する溝が工作物1に切り込まれる。そのために、研削砥石は、CNC軸を介して、X、ZおよびY方向に移動可能であり、工作物1に送り可能である。さらにクラッシング装置7が設けられており、クラッシング装置7は、クラッシャロールを支持する。クラッシャロールの回転軸線と研削砥石5の回転軸線とは、研削砥石5がその成形部に関してクラッシングされるときには必ず互いに平行に配置されている。
【0042】
図2には、
図1による研削機における原理的な配置の一部として、研削砥石5を有する研削主軸2と、これに対応して配置された、クラッシャロール8を有するクラッシング装置7とだけが示されている。相応の溝を、
図2には示されていない工作物に切り込むことができるように、研削主軸2は、研削砥石5とともに、CNC制御されるA旋回軸を中心に旋回可能である。さらに研削主軸は、同様にCNC制御でZおよびY方向に移動可能である。
【0043】
図2に示す、クラッシング装置7の基本構造は、高い剛性を特徴としており、これは、たとえばクラッシング装置7がハウジング9内に配置されており、ハウジング9内に、クラッシャロール8を支持するクラッシャ主軸16がクラッシャロール8の両側で転がり軸受12により堅固に軸支されていることにより、明確である。クラッシング装置7の駆動モータ11は、同様にCNC制御されており、連結装置10を介してクラッシャ主軸16と結合されている。
【0044】
図2には、2つのクラッシング溝目またはクラッシング溝を有するクラッシャロール8が示されている。両方のクラッシング溝は、逐次研削砥石5の成形部をクラッシングするために用いることができる。これは、一方では、第1のクラッシング溝による成形クラッシングおよび第2のクラッシング溝による後成形クラッシングであってよい。しかも、他方では、クラッシャロール8の両方のクラッシング溝を、専ら後成形クラッシングに使用することもできる。この場合まず、
図2の上側に示されたクラッシング溝が、これがもはや研削砥石5の成形部の要求される精度を形成することができなくなるまで後成形クラッシングに使用される。続いて、図面においてその下に位置するクラッシング溝が、研削砥石の、これに続く後成形クラッシングに使用される。したがって、両方のクラッシング溝が後成形クラッシングに使用される場合、クラッシング時のクラッシャロールの耐用期間を、単一のクラッシング溝しか有しないクラッシャロールに対して2倍にすることができる。本発明に係るクラッシャロールにおいてより大きな数のクラッシング溝を使用するかまたは設けることも可能である。いずれにせよ、本発明に係るクラッシャロールにより、少なくとも2つのクラッシング溝が、一体的なひいては堅固な1つのクラッシャロール8に配置されている場合、この点に関してとりわけより高い剛性を考慮することもでき、研削砥石の成形部のクラッシング時のプロセス精度がより高くなり、ひいては研削されるべき工作物の精度がより高くなる。
【0045】
図3には、クラッシング装置7のうちの主要部分、つまりクラッシャ主軸16上に配置されたクラッシャロール8だけが示されている。クラッシャロール8は、成形クラッシング区分14と後成形クラッシング区分15とを有する。さらに原理図において、固体伝播音センサ13が、クラッシング装置7に設けられており、固体伝播音センサ13により、研削主軸2に配置されC軸を中心に回転駆動される研削砥石5の、クラッシャロール8との係合接触を検出可能または監視可能である。
【0046】
図3に示された研削砥石5は、まだ成形されておらず、したがって実際の研削工程のためにまず成形クラッシングされなければならない。これに関して、成形クラッシングとは、研削砥石5に実際の成形部を形成することと解される。これは、成形クラッシングのために設けられた、クラッシャロール8における成形クラッシング溝14で行われる。そのために、はじめは成形クラッシング前では横断面で見てプロファイル形状とは異なって構成されている研削砥石が、まずクラッシング溝の成形クラッシング区分14の側面に当接され、わずかにクラッシングされる。次いで第2のステップで、成形クラッシング溝14の第2の側面でわずかなクラッシングが行われる。これに続いて、研削砥石は、クラッシャロールの溝の中央に移動させられ、次いで両方の側面が同時に成形クラッシングされる。成形クラッシングの後で、研削砥石は、さらに後成形クラッシングされ、その際、研削砥石は、極めて高い精度で最終的な成形形状を得る。
【0047】
これに対して、やはり
図3に示された後成形クラッシング溝15は、研削砥石の形状がもはや目標形状と一致せず、鋭利さを後で付与しなければならないので、研削砥石5の成形部を後成形クラッシングしなければならないときに、実際の研削プロセスの間にだけ使用される。
【0048】
固体伝播音センサ13は、研削砥石5の、形成されるべき成形部6が、クラッシング溝14,15の側面のうちの1つに接触するごとに応答し、したがってクラッシング時の係合接触を監視する。はじめは平らに形直し・目直しされた研削砥石5は、
図3に示された成形クラッシング溝14により、尖ったプロファイルへとクラッシングされる。このプロファイルは、ねじ研削のために設けられている。成形クラッシング区分14と後成形クラッシング区分15とにクラッシング区分を分けることにより、クラッシャロール8が一般的にさらされる通常は強い減耗に関して、耐用期間を向上させることができる。後成形クラッシングのために設定された後成形クラッシング溝15は、工作物に溝を高い精度で形成するために、研削砥石5に成形部6が形成されることを保証する。
【0049】
図4に示された、直前に形直し・目直しされた研削砥石5のクラッシングがちょうど開始される状態では、研削砥石5は、研削主軸2を介して駆動され、これにより、クラッシャ主軸16上の、駆動されないクラッシャロール8は、成形クラッシング溝14における、直前に形直し・目直しされた研削砥石5の係合接触に基づいて、研削砥石により駆動され、これと一緒に回転する。クラッシャロール8の独自の駆動は行われない。つまり、駆動装置がオフに切り替えられるかまたは駆動装置とクラッシャロールとの間の連結装置10(
図2参照)が「分離」に設定される。
図4には、固体伝播音センサ13が再び示されており、固体伝播音センサ13は、成形クラッシング区分14における研削砥石5の係合接触を記録するかまたは監視する。固体伝播音センサ13がクラッシャロール8と研削砥石5との接触時に生成する信号は、研削砥石5が実際にクラッシャロール8との接触を形成し、クラッシング工程が開始されることについての監視を表す。
【0050】
研削砥石5は、一般的に、真円度公差を有するので、クラッシャロール8は、最初に接触するときには研削砥石5により完全には駆動されない。これにより、クラッシャロール8の回転数は低下し得る。予め定められた下限の回転数に達すると、クラッシャ主軸16の駆動モータ11が追加的にインパルス状にオンに切り替えられ得る。このオン切替えは、研削砥石5が有する回転数を、クラッシャロール8が再び有するまで行われる。つまり、駆動インパルスは、クラッシャロール8が研削砥石5の回転数に一致する目標回転数を有するまで行われる。
【0051】
図5a、bおよびcには、研削砥石5の成形部6をクラッシングするときの様々な段階が示されている。一般的に、クラッシング時にはこの方式が実現され、具体的には成形クラッシングだけではなく後成形クラッシング時にも実現される。
図5a〜cには、後成形クラッシング加工が例示されている。
図5aには、どのようにしてまず研削砥石5の成形部6の第1の側面が、クラッシャロール8における後成形クラッシング溝15の同じく第1の側面に当て付けられ、わずかにクラッシングされるのかが示されている。研削砥石5とクラッシャロール8との間の接触を形成するために、研削砥石5は、CNC制御されるZおよびY軸に沿って移動させることができる。これにより、クラッシングの間に、相対的な送り量、クラッシング力および別のパラメータに関する最適なクラッシングパラメータが保持されるかまたは実現されることが保証される。
図5bには、どのようにして側方に移動させられた研削砥石5が、成形部6の、第1の側面とは反対の側の側面でもって、後成形クラッシング溝15に形成された第2の側面に当接され、そこで当付け工程およびわずかなクラッシングにさらされるのかが示されている。第1の側面における当付けについての
図5aと同様に、研削砥石5は、当付けのために、CNC制御されたZおよびY軸に移動させられ、これにより、必要でありかつ許容されるクラッシングパラメータが保持される。
【0052】
研削砥石5の成形部6の両方の側面が個別に後成形クラッシング溝15に当接され、わずかにクラッシングされると、研削砥石は、Y方向に、つまり横方向に移動させられ、成形部が、クラッシング溝15に対して真ん中に配置される。これは、
図5cに図示されている。両方の側面のクラッシングは、同時に研削砥石5の成形部6のクラッシングの最終ステップを表す。図示の態様では、これは、やはり後成形クラッシングの例で示されている。同様にかつ同一順序で、これは、成形クラッシングでは、
図5cに同様に示されたクラッシャロール8の成形クラッシング溝14を用いて行われる。
【0053】
図6には、クラッシャロール8のクラッシング溝15と研削砥石5の成形部6との間の幾何学的状態が、クラッシング溝15の深さに関する異なる2つのレベルに関して示されている。ここでも後成形クラッシング溝15が示されている。研削主軸だけではなくクラッシャ主軸も固有の別個に制御される回転数制御装置を有するので、どの「レベル」においてクラッシャロール8の周速と研削砥石5の周速とが同一であるべきであるのかを正確に規定することができる。この場合、研削砥石5とクラッシャロール8とがそれぞれ異なる直径を有することに留意されたい。この場合「レベル」とは、環状に形成された周面17と解される。この周面17は、単に概念的に、この「レベル」が単一の半径において図示されている
図6に関して、「レベル」と称される。クラッシャロール8の内側で記入された周面17にまで環状に延びる関連する半径は、いわゆる環状で円筒形に形成された周面17を形成する。クラッシャロール8と研削砥石5との異なる直径を考慮して、研削砥石5とクラッシャロール8との異なる回転数が、選択されたレベルに関して、回転数つまり周速が一定であるように実現される。つまり、この周速の比は1:1である。クラッシング工程の間に、特に無段階にこの仮想の周面17を変位させると、クラッシング工程後の研削砥石5の成形部6の品質を向上させることができ、これにより、工作物における研削結果を改善することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 工作物
2 砥石台
3 工作物主軸台
4 心押台
5 研削砥石
6 成形部、研削砥石
7 クラッシング装置
8 クラッシャロール
9 ハウジング、クラッシング装置
10 連結装置、クラッシング装置
11 駆動装置、クラッシング装置
12 転がり軸受、クラッシング装置
13 固体伝播音センサ
14 成形クラッシング溝/成形クラッシング区分
15 後成形クラッシング溝/後成形クラッシング区分
16 主軸、クラッシング装置
17 周面
18 機械制御装置
【手続補正書】
【提出日】2017年4月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削砥石(5)の、溝の横断面に対応するように構成された成形部(6)を用いて、溝を有する工作物(1)を研削する方法であって、
前記研削砥石(5)の前記成形部(6)により、前記工作物(1)が緊締された状態で該工作物(1)に前記溝を研削し、前記研削砥石(5)の前記成形部(6)をクラッシングし、
前記研削砥石(5)の後成形クラッシングを、その際に駆動されるクラッシャロール(8)を用いて行い、該クラッシャロール(8)の制御を、前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との各々の駆動装置の回転数および電流消費量のその都度の測定に基づいて行い、クラッシング時の前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の相対的な送り量を前記測定に基づいて制御する方法において、
前記クラッシャロールの成形クラッシング区分による成形クラッシング時、同一のクラッシャロールに配置された後成形クラッシング区分による後成形クラッシング時よりも大きな形直し・目直し量で前記研削砥石の形直し・目直しをする
ことを特徴とする、溝を有する工作物(1)を研削する方法。
【請求項2】
前記研削砥石(5)の成形クラッシングを、その際に場合により一時的にだけ駆動される前記クラッシャロール(8)を用いて、前記研削砥石の駆動装置の測定された回転数および電力消費量に基づく前記研削砥石の駆動装置の制御により、前記測定に基づいて前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の相対的な送り量の制御により行い、成形クラッシングを、研削プロセスの開始前に行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
クラッシングのために、前記研削砥石(5)を前記クラッシャロール(8)へ送り、該クラッシャロール(8)と係合させて、成形クラッシングの間、前記クラッシャロール(8)を、固有の駆動装置(11)を作動させることなく前記研削砥石(5)とともに自由に回転させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)とをクラッシングするときに、前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)との係合領域に冷却剤を供給する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
クラッシング時の前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の最大の相対的な送り量は、機械パラメータとクラッシングパラメータとに依存しており、前記送り量をクラッシング前に求め、境界値として機械制御装置に入力し、特にそこに記憶させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溝を有する工作物(1)を研削する研削機であって、
機械スタンド上の切込み台上でX軸方向およびZ軸方向にCNC移動可能な砥石台(2)であって、溝を研削するために成形された研削砥石(5)を支持するとともに回転駆動する、砥石台(2)と、
C軸を有する工作物主軸台(3)と、
を備え、
前記工作物(1)は、緊締された状態で存在し、追加的に、固有の回転駆動装置(11)を有するクラッシャロール(8)を備える、当該研削機に堅固に設置されたクラッシング装置(7)が設けられており、該クラッシング装置(7)は、制御装置により制御可能であり、前記研削砥石(5)および前記クラッシャロール(8)は、後成形クラッシングの間に駆動可能であるとともに回転数制御可能である、研削機において、
前記クラッシャロール(8)に、前記研削砥石(5)の成形部(6)を形直し・目直しするために前記研削砥石(5)を送ることが可能であり、
前記クラッシャロール(8)は、第1の形直し・目直し量で前記研削砥石(5)を成形クラッシングするための成形クラッシング区分(14)と、第2の形直し・目直し量で前記研削砥石(5)を後成形クラッシングするための、同一のクラッシャロール(8)に配置された後成形クラッシング区分(15)とを有する
ことを特徴とする、溝を有する工作物(1)を研削する研削機。
【請求項7】
前記クラッシング装置(7)は、ハウジング(9)内に配置され、前記機械スタンドと固く結合されている、請求項6記載の研削機。
【請求項8】
前記クラッシング装置(7)は、CNC制御式の駆動装置(11)を有し、該駆動装置(11)は、連結装置(10)を介して、特に高性能高速度鋼または硬質合金から成る前記クラッシャロール(8)と、該クラッシャロール(8)を回転駆動させるために、結合されている、請求項6または7記載の研削機。
【請求項9】
前記クラッシング装置(7)は、固体伝播音センサ(13)を有し、該固体伝播音センサ(13)により、前記研削砥石(5)が前記クラッシャロール(8)と係合しているときに、信号を前記制御装置に伝送することが可能であり、該信号に基づいて、前記クラッシャロール(8)と前記研削砥石(5)との間の係合接触を、該係合接触を監視するために、検出することが可能である、請求項6から8までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項10】
前記研削砥石(5)は、後成形クラッシング時に前記クラッシャロール(8)へと送ることが可能であり、横方向で後成形クラッシング区分(15)へ移動可能である、請求項6から9までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項11】
成形クラッシングの開始時または成形クラッシングの間に、前記クラッシング装置(7)の前記駆動装置(11)に、該駆動装置(11)の回転数が低下するとオン切替え可能な駆動パルスを供給可能である、請求項6から10までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項12】
前記クラッシャロール(8)は、一体的にまたは2つの部分から構成されている、請求項6から11までのいずれか1項記載の研削機。
【請求項13】
クラッシング時の前記研削砥石(5)と前記クラッシャロール(8)との間の最大の相対的な送り量が、クラッシング前に前記制御装置に入力可能である、設定可能な機械パラメータとプロセスパラメータとに依存する境界値よりも小さいように、前記制御装置が構成されている、請求項6から12までのいずれか1項記載の研削機。
【国際調査報告】