特表2018-511580(P2018-511580A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-511580(P2018-511580A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】イブルチニブの多形体
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20180330BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180330BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180330BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20180330BHJP
【FI】
   C07D487/04 143
   C07D487/04CSP
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-546659(P2017-546659)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】IB2016051164
(87)【国際公開番号】WO2016139588
(87)【国際公開日】20160909
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512276315
【氏名又は名称】ドクター レディズ ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ペディー ヴィシュウェシュワール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラガ ダルマ ジャガンナーダ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カンニア スンダラ ラクシュミ
(72)【発明者】
【氏名】チェンヌル ラマナイア
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン スリヴィドヤ
(72)【発明者】
【氏名】ランギネニ スリニヴァス
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF05
4C050GG04
4C050HH04
4C086AA01
4C086CB06
4C086GA15
4C086GA16
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、イブルチニブの結晶形態及びこれらの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10.11、11.45、18.47及び20.89±0.20度の2θにおいてピークを有する、粉末X-線回折パターン(PXRD)により特徴付けられるイブルチニブの結晶形態D1。
【請求項2】
更に、約5.04、10.79、23.10及び26.60±0.20度の2θに位置する付随的なピークを有するPXRDパターンにより特徴付けられる、請求項1記載のイブルチニブの結晶形態D1。
【請求項3】
図18に示された如き粉末X-線回折パターン(PXRD)によって特徴付けられる、イブルチニブの結晶形態D1。
【請求項4】
イブルチニブの結晶形態D1を製造する方法であって、以下の工程、
a. イブルチニブのアルコール溶液を得る工程、
b. 工程a)の該溶液を貧溶媒と混ぜ合わせる工程、及び
c. イブルチニブの結晶形態D1を単離する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール及びペンタノールから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記貧溶媒が、水である、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブルチニブの多形体(polymorph)及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
一般名「イブルチニブ」を持つ上記薬物化合物は、1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オンという化学名を有し、かつ構造的には以下のように表される。
【0003】
【化1】
【0004】
イブルチニブは、ブルトン型(Bruton’s)チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤であり、また米国において、少なくとも1回の前治療を受けている、マントル細胞リンパ腫及び慢性リンパ性白血病に罹患した患者を治療するために承認されている。
米国特許第7,514,444号は、イブルチニブの製造方法を開示している。この米国特許’444号は、溶離剤としてジクロロメタン及びメタノールを用いたフラッシュクロマトグラフィーによるイブルチニブの単離を開示している。
WO 2013/184572A1出願は、イブルチニブの結晶、溶媒和物及びアモルファス形態を開示している。特に、この出願はPXRD、IR、DSC及びTGAによって特徴付けられる多形型形態A、B、C、D、E及びFを開示している。該WO'572出願は、形態Aをジクロロメタンに溶解することによる、イブルチニブのアモルファス形態を製造する方法を開示している。該溶媒のジクロロメタンは、アモルファスイブルチニブを与えるべく、ロータリーエバポレータによって除去された。
【0005】
CN 103694241Aは、PXRDによって特徴付けられる、イブルチニブの結晶形態Aを開示している。
CN 103923084Aは、PXRDパターンにより特徴付けられる、イブルチニブの結晶形態II、III、IV、V、VI、VII及びVIIIを開示している。
WO 2015/145415A2出願は、形態III、形態IV、形態V、形態VI、形態VII、形態VIII及び形態IXと名付けられたイブルチニブの様々な固体形状を開示している。
WO 2016/022942A1出願は、イブルチニブの固体分散体を開示している。
WO 2016/025720A1出願は、形態G、形態J及び形態Kと名付けられたイブルチニブの結晶形態を開示している。
与えられた化合物に関する多形型形態(polymorphic forms)の存在及び可能なその数を予測することはできず、またある物質の多形型形態を製造するのに使用することのできる「標準的な」手順は全く存在しない。このことは、例えばA. Goho,「トリッキービジネス(Tricky business)」,サイエンスニューズ(Science News), Vol. 166(8), 2004年8月において報告されているように、当分野においては周知である。
イブルチニブに係る、代わりの多形型形態及びこれらを製造するための方法に対する要求が残されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は形態D1、形態D1a、形態D2、形態D2a、形態D3、形態D4、形態D5、形態D6、形態D7、形態D8、形態D9、形態D10、形態D11、形態D12及び形態D13と名付けられるイブルチニブの結晶形態及びその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例1において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D1に係る特性PXRDパターンを示す。
図2図2は、実施例2において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D1に係る特性PXRDパターンを示す。
図3図3は、実施例3において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D2に係る特性PXRDパターンを示す。
図4図4は、実施例4において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D2に係る特性PXRDパターンを示す。
図5図5は、結晶性イブルチニブの形態D2aに係る特性PXRDパターンを示す。
図6図6は、実施例8において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D3に係る特性PXRDパターンを示す。
図7図7は、実施例9において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D4に係る特性PXRDパターンを示す。
図8図8は、実施例10において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D5に係る特性PXRDパターンを示す。
図9図9は、実施例11において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D6に係る特性PXRDパターンを示す。
図10図10は、実施例12において得られたような結晶性イブルチニブの形態D7に係る特性PXRDパターンを示す。
図11図11は、実施例13において得られたような結晶性イブルチニブの形態D8に係る特性PXRDパターンを示す。
図12図12は、実施例16及び17において得られたような結晶性イブルチニブの形態D9に係る特性PXRDパターンを示す。
図13図13は、実施例18において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D10に係る特性PXRDパターンを示す。
図14図14は、実施例19において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D11に係る特性PXRDパターンを示す。
図15図15は、実施例20において得られたような結晶性イブルチニブの形態D12に係る特性PXRDパターンを示す。
図16図16は、実施例21において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D13に係る特性PXRDパターンを示す。
図17図17は、結晶性イブルチニブの形態D1aに係る特性PXRDパターンを示す。
図18図18は、実施例22において得られた如き結晶性イブルチニブの形態D1に係る特性PXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様において、本発明は、形態(Form) D1と名付けられ、約10.11、11.45、18.47及び20.89±0.20度という2θにおいてピークを持ち、かつまた約5.04、10.79、23.10及び26.60±0.20度という2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、本発明は、形態D1と名付けられ、実質上図1又は図2又は図18のパターンにおいて示されるように配置されたピークを持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。
もう一つの態様において、本発明は、イブルチニブの結晶形態D1の製造方法を包含し、該方法は以下の工程を含む:
a) 10℃〜-40℃にて、イブルチニブをアルコールに懸濁する工程;
b) 該懸濁液を10℃〜-40℃にて維持する工程;及び
c) -10℃〜10℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、10℃〜-40℃における上記アルコール溶媒の添加を含む。工程a)で使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。好ましい一態様においては、アモルファスイブルチニブが使用される。
【0009】
工程a)において使用し得る上記アルコールはC1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等から選択される。好ましい一態様において、使用される該アルコールはエタノールである。
工程b)は、上記懸濁液の10℃〜-40℃という温度での維持を含む。該懸濁液を十分な時間維持して、確実に結晶性イブルチニブの形態D1を形成する。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D1の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D1は濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術により単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D1は、真空下で、かつ約-10℃〜10℃という温度での蒸発により単離することができる。より好ましい一態様において、該蒸発は-2℃〜10℃にて行われる。
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D1を製造する方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 20℃〜30℃にてイブルチニブのアルコール溶液を得る工程、
b) 2℃〜10℃にて、上記溶液に貧溶媒(anti-solvent)を添加する工程、
c) 2℃〜10℃にて維持する工程、及び
d) 2℃〜30℃にて単離する工程。
【0010】
工程a)におけるイブルチニブ溶液の入手は、20℃〜30℃での、イブルチニブに対するアルコールの添加を含む。工程a)において使用し得る該アルコールは、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等から選択される。好ましい一態様において、使用される該アルコールはメタノールである。場合により、該イブルチニブ溶液を、40-60℃に加熱し、かつ濾過して、粒子を含まない溶液を作製する。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。工程b)は、2℃〜10℃における該イブルチニブ溶液への貧溶媒の添加を含む。場合により、該貧溶媒を2〜10℃に予め冷却した後に、該イブルチニブ溶液に添加する。好ましい一態様において、使用される該貧溶媒は水である。
工程d)は、イブルチニブの結晶形態D1aの単離を含む。該結晶形態D1aは、濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術により単離することができる。好ましい一態様において、結晶形態D1aは、真空の下で及び約0℃〜30℃という温度での濾過によって単離される。
特定の一態様において、上記結晶形態D1aは、結晶形態D1を得るために乾燥される。乾燥は、任意の設備、例えば重力式オーブン(gravity oven)、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等を用いて行うことができる。一態様において、該乾燥は、大気圧下又は減圧下で行うことができる。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にて又は約30℃の温度にて行うことができる。該乾燥は、所望の品質を得るのに要する任意の時間、例えば約15分乃至数時間又はより長期間に渡り行うことができる。
【0011】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D1を製造する方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) イブルチニブのアルコール溶液を得る工程、
b) 工程a)の該溶液を貧溶媒と混ぜ合わせる工程、及び
c) イブルチニブの結晶形態D1を単離する工程。
工程a)においては、上記イブルチニブのアルコール溶液を与えるために、結晶性又はアモルファスであり得る、任意の物理的形状にあるイブルチニブを使用し得る。工程a)におけるイブルチニブ溶液の入手は、約0℃〜約50℃での及びより具体的には約25℃〜約35℃での、イブルチニブに対するアルコールの添加を含む。工程a)において使用し得る該アルコールはC1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等から選択される。好ましい一態様において、使用される該アルコールはメタノールである。場合により、該イブルチニブのアルコール溶液を40-60℃に加熱し、かつ濾過して、粒子を含まない溶液を得る。工程b)は、工程a)の溶液と貧溶媒との混ぜ合わせを含む。一態様において、工程b)は、約0℃〜15℃及びより具体的には約2℃〜10℃の温度にて、該イブルチニブ溶液への貧溶媒の添加、又は逆に該貧溶媒へのイブルチニブ溶液の添加を含むことができる。場合により、該貧溶媒を予め2℃〜10℃まで冷却し、その後該イブルチニブ溶液と混合する。好ましい一態様において、使用される該貧溶媒は水である。工程B)の一態様においては、イブルチニブの形態D1の種結晶を、場合により該貧溶媒とイブルチニブ溶液との混合物に添加する。同様に、該種結晶は、該貧溶媒溶液又は該イブルチニブ溶液の何れかに添加することもできる。該種結晶を添加する場合、これらはイブルチニブの質量に比して約0.5%w/wから約15%w/w以上の量で添加される。具体的には、該種結晶は、約1%〜約12%w/wの量で添加され、またより一層具体的には該種結晶は、約2%〜約10%w/wの量で添加される。
上記イブルチニブ溶液と貧溶媒とを混ぜ合せた後、該混合物を、同一の温度にて又は約-5℃〜約10℃の温度にて、約30分乃至約24時間又はそれ以上に渡り攪拌する。
【0012】
工程c)において、イブルチニブの結晶形態D1に係る上記単離は、場合によりイブルチニブの結晶形態D1aの仲立ちを通して進めることができる。イブルチニブの結晶形態D1aの単離は、場合により、当分野において公知の技術、例えば蒸発、蒸留による溶媒の除去、単離された個体の濾過等を包含する、当分野において公知の1又は2以上の方法を含むことができる。単離のための適当な温度は、約25℃未満、約10℃未満、約0℃未満又は任意の他の適当な温度であり得る。濾過は、当分野において公知の任意の手段により実行し得る。具体的には、濾過はブッフナ(Buchner)ロート又は加圧式ナッシュ型(nutshe)フィルタ(PNF)又はジャケット付き攪拌ナッシュフィルタドライヤ(ANFD)を用いることにより達成し得る。ジャケット付きANFD装置を使用する間ずっと、該ジャケットの温度を、ブライン溶液を循環させることによって約-20℃〜約5℃に維持することができる。該濾過の後、その湿潤固体を、場合により冷水で洗浄し、約30分乃至約24時間又はそれ以上に渡り吸引乾燥する(suck-dried)。PNFにより濾過する場合、該吸引乾燥は、乾燥空気又は窒素による正の圧を印加することにより実現される。ジャケット付きANFDによる濾過の場合、該吸引乾燥は、真空を適用し、一方で乾燥空気又は窒素を供給することにより大気圧を維持することにより実現される。ブッフナロートによる濾過の場合、該吸引乾燥は、真空を印加することにより実現される。
得られる上記固体は、例えば掻取りによる、又はその容器を振盪することによる等の技術、あるいは使用された装置に特有の他の技術を用いて集めることができる。この集められた物質は乾燥され、また乾燥は、エアトレードライヤ、真空トレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等の何れかを用いて、適切に行うことができる。該乾燥は、大気圧又はそれ以上にて、又は減圧下で、具体的には約80℃未満及びより具体的には約60℃未満及び最も具体的には約40℃未満の温度にて行うことができる。該乾燥は、所定の製品品質を得るのに必要な任意の時間、例えば約5分乃至約24時間又はそれ以上に渡り実施し得る。
【0013】
上記の得られたイブルチニブ結晶形態D1を、場合により所望の粒度及び分布をもたらすために、当分野において公知の技術の使用により粒度低減処置に掛けることができる。
その粒度分析は、当分野において公知の任意の適当な計測器又は技術により行うことができる。
一態様において、本発明は、形態D2と名付けられ、約11.44、12.51及び26.64±0.20度という2θにおいてピークを持ち、かつまた約5.00、10.20、20.87及び23.15±0.20度という2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、本発明は、形態D2と名付けられ、実質的に図3又は図4のパターにおいて示されているように配置されたピークを持つ、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D2の製法を含み、該方法は以下の工程を含んでいる。
a) 10℃〜-40℃にて、アルコールと水との混合物にイブルチニブを懸濁する工程、
b) 該懸濁液を10℃〜-40℃にて維持する工程、
c) -15℃〜-5℃にて単離する工程、及び
d) -5℃〜5℃にて乾燥する工程。
【0014】
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、20℃〜-40℃でのイブルチニブに対するアルコール及び水の添加を含む。アルコールと水との比率は、体積基準で約60:40〜95:5で変えることができる。好ましい一態様において、該比率は、体積基準で80:20である。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法で得ることができる。好ましい一態様では、アモルファスイブルチニブを使用する。
工程a)において使用し得る上記アルコールは、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等から選択される。好ましい一態様において、使用される該アルコールはエタノールである。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、10℃〜-40℃という温度におけるイブルチニブとエタノールとの混ぜ合わせを含む。
工程b)は、上記懸濁液の10℃〜-40℃での維持を含む。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D2aの単離を含む。この結晶性イブルチニブの形態D2aは、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。
工程d)は、約-5℃〜5℃の温度にて上記結晶性イブルチニブの形態D2aを乾燥して、形態D2を得ることを含む。
上記結晶性イブルチニブの形態D2aは、実質的に図5において示されるようなPXRDパターンによって特徴付けられる。
【0015】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D1の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 10℃〜-40℃にて、イブルチニブをアルコールと水との混合物に懸濁する工程、
b) 該懸濁液を10℃〜-40℃にて維持する工程、
c) -10℃〜10℃にて単離する工程、及び
d) 25℃〜60℃にて乾燥する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、10℃〜-40℃でのイブルチニブに対するアルコール及び水の添加を含む。アルコール及び水の比率は、体積基準で約60:40〜95:5の範囲で変え得る。好ましい一態様において、該比率は体積基準で80:20である。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法で得ることができる。好ましい一態様においては、アモルファスイブルチニブを使用する。
工程a)において使用し得る上記アルコールは、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等から選択される。好ましい一態様において、使用される該アルコールはエタノールである。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、10℃〜-40℃という温度でのイブルチニブとエタノール及び水との混ぜ合わせを含む。
工程b)は、上記懸濁液の10℃〜-40℃という温度での維持を含む。
【0016】
工程c)は、イブルチニブの結晶形態D2の単離を含む。該結晶形態D2は、例えば濾過、蒸留、遠心分離又は緩慢な蒸発等の技術によって単離し得る。好ましい一態様において、化合物は、真空下かつ約-10℃〜10℃の温度での蒸発により単離される。
工程d)は、上記結晶性イブルチニブの形態D2を25℃〜60℃にて乾燥して、結晶性イブルチニブの形態D1を得ることを含む。
工程d)における乾燥は、任意の設備、例えば重力式オーブン、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等を使用して、適切に行うことができる。一態様において、該乾燥は、大気圧にて又は減圧下で実施し得る。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にて又は約30℃の温度にて行うことができる。該乾燥は、所定の品質を得るのに必要とされる任意の時間、例えば約15分乃至数時間又はそれ以上に渡り実施し得る。
一態様において、本発明は、形態D3と名付けられ、約8.05、8.77、15.44、21.80、24.84、27.65及び29.10±0.20度という2θにおいてピークを持ち、かつまた約7.56、13.07、15.15、16.59、18.89及び21.27±0.20度という2θにおいてもピークを持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。更に、イブルチニブの形態D3は、約10.17、17.58、18.36、19.53、20.42、21.00、22.54及び24.31±0.20度という2θにおいて付随的なピークを持つ、粉末X-線回折パターンによっても特徴付けることができる。
イブルチニブの形態D3は、実質的に図6に描写された如き粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる。
一態様において、イブルチニブの形態D3は、アセトフェノン溶媒和物である。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D3の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 約0℃〜-25℃にて、イブルチニブをアセトフェノンに懸濁させる工程、
b) 該懸濁液を約0℃〜-25℃に維持する工程、及び
c) 25-30℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、約0℃〜-25℃の温度におけるイブルチニブとアセトフェノンとの混ぜ合わせを含む。好ましい一態様において、該温度は、約-10℃である。工程a)で使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法によって得ることができる。好ましい一態様においては、アモルファスイブルチニブを使用する。
工程b)は、上記懸濁液の、約0℃〜-25℃の温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D3を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、結晶性イブルチニブの形態D3の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D3は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術により単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D3は、真空下で、約20℃〜30℃の温度における濾過により単離し得る。より好ましい態様において、該濾過は25℃にて行われる。
一態様において、本発明は、形態D4と名付けられ、約5.55、10.87、11.44、13.31、14.14及び19.74±0.20度という2θにおいてピークを持ち、かつまた約16.04、18.36、18.91、20.35、20.95及び21.62±0.20度という2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。イブルチニブの形態D4は、実質的に図7に描写された如き粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる。
一態様において、イブルチニブの形態D4は、ホルムアミド溶媒和物である。
【0018】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D4の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 約10℃〜約-10℃にて、イブルチニブをホルムアミドに懸濁する工程、
b) 該懸濁液を約10℃〜約-10℃にて維持する工程、及び
c) 0℃〜-5℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、約10℃〜約-10℃の温度における、イブルチニブとホルムアミドとの混ぜ合わせを含む。より好ましい態様において、該温度は約0℃〜-10℃である。工程a)で使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。好ましい一態様においては、アモルファスイブルチニブを使用する。
工程b)は、上記懸濁液の約0℃〜約-10℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D4を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D4の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D4は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術により単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D4は、溶媒の蒸発、これに続く温度約0℃〜-5℃での窒素パージによって単離することができる。より好ましい態様において、該蒸発は-5℃にて行われる。
一態様において、本発明は、形態D5と名付けられ、約6.50、9.63、10.45、12.41、13.02、14.28、19.94、23.88、25.93、27.44及び28.85±0.20度という2θにおけるピークを持ち、かつまた約17.64、18.37、21.00、23.31及び25.23±0.20度という2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。イブルチニブの形態D5は、更に約10.01及び19.33±0.20度という2θにおける付随的なピークを持つ粉末X-線回折パターンによって特徴付けることもできる。イブルチニブの形態D5は、実質的に図8において描写されているような粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる。
一態様において、イブルチニブの形態D5は、アセトン溶媒和物である。
【0019】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D5の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 約20℃〜30℃にて、イブルチニブをアセトンに懸濁させる工程、
b) 該懸濁液を約20℃〜30℃にて維持する工程、及び
c) 20℃〜30℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、20℃〜30℃という温度における、イブルチニブとアセトンとの混ぜ合わせを含む。好ましい一態様において、該温度は25℃である。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。好ましい一態様においては、イブルチニブの形態D3を使用する。
工程b)は、上記懸濁液の、約20℃〜30℃の温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D5を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D5の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D5は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D5は蒸発、これに続く温度約20〜25℃における窒素パージにより単離することができる。より好ましい態様において、該蒸発は25℃において行われる。
【0020】
一態様において、本発明は、形態D6と名付けられ、約7.97、9.16、10.88、16.06、18.76、19.72、22.17、22.77、26.96及び28.08±0.20度という2θにおけるピークを持ち、かつまた約13.31、14.08、15.61、17.90、21.27及び25.38±0.02度という2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。イブルチニブの形態D6は、更に約20.55、24.32及び25.87±0.20度という2θにおける付随的なピークをも持つ粉末X-線回折パターンにより特徴付けることができる。イブルチニブの形態D6は、実質上図9に描写されたような粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる。
一態様において、イブルチニブの形態D6は、クロロベンゼン溶媒和物である。
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D6の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 約20℃〜約-40℃において、イブルチニブをクロロベンゼンに懸濁する工程、
b) 該懸濁液を、約20℃〜約-40℃にて維持する工程、及び
c) 約-10℃〜約20℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、約20℃〜約-25℃の温度での、イブルチニブとクロロベンゼンとの混ぜ合わせを含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。好ましい一態様においては、WO 2013/184572に記載されているイブルチニブの形態Cを使用する。
工程b)は、上記懸濁液の、20℃〜-25℃の温度における維持を含む。該懸濁液を、確実に結晶性イブルチニブの形態D6を形成するのに十分な時間に渡り維持する。
【0021】
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D6の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D6は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術により単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D6は、蒸発、これに続く約-10℃〜20℃の温度での窒素パージにより単離することができる。より好ましい態様において、該蒸発は0℃にて行われる。
一態様において、本発明は形態D7と名付けられ、約8.83、9.37、9.92、10.87、11.40、18.48、19.92、21.83、23.71及び25.29±0.20度という2θにおけるピークを持ち、かつまた約6.40、16.60、17.43、17.67、19.17及び24.26±0.20度という2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。イブルチニブの形態D7は、更に約13.37、13.73、15.93、22.51及び22.99±0.20度という2θにおける付随的なピークをも持つ、粉末X-線回折によっても特徴付けし得る。イブルチニブの形態D7は、実質上図10に描写されているような粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる。
一態様において、イブルチニブの形態D7は、ジメチルアセタミド溶媒和物である。
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D7の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 約20℃〜約-40℃にて、イブルチニブをジメチルアセタミドに懸濁する工程、
b) 該懸濁液を、約20℃〜約-40℃にて維持する工程、及び
c) 約-10℃〜20℃にて単離する工程。
【0022】
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、約20℃〜約-40℃という温度での、イブルチニブとジメチルアセタミドとの混ぜ合わせを含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。好ましい一態様においては、WO 2013/184572に記載されているイブルチニブの形態Cを使用する。
工程b)は、上記懸濁液の、約20℃〜約-40℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D7を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D7の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D7は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D7は、蒸発、これに続く約-10℃〜20℃の温度での窒素パージにより単離し得る。より好ましい態様において、該蒸発は0-5℃にて行われる。
一態様において、本発明は、形態D8と名付けられ、約9.27、9.69、10.97、14.24、24.83、25.83、28.21及び28.79±0.20度の2θにおけるピークを持ち、かつまた約5.03、7.13、13.23、16.00、17.26、17.59、21.60及び22.75±0.20度の2θにおけるピークをも持つ、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。イブルチニブの形態D8は、更に約10.17、18.51、19.56、20.47及び22.07±0.20度の2θにおける付随的なピークを持つ粉末X-線回折によっても特徴付けることができる。イブルチニブの形態D8は、実質上図11に描写されているような粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる。
一態様において、イブルチニブの形態D8はアセトン溶媒和物である。
【0023】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D8の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 約20℃〜約-40℃にて、イブルチニブをアセトンに懸濁する工程、
b) 約20℃〜約-40℃に維持する工程、及び
c) -10℃〜10℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁は、約20℃〜約-40℃の温度での、イブルチニブとアセトンとの混ぜ合わせを含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法によって得ることができる。好ましい一態様においては、WO 2013/184572に記載されているイブルチニブの形態Cを使用する。
工程b)は、上記懸濁液の、約20℃〜約-40℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D8を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D8の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D8は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D8は、蒸発、これに続く約-10℃〜10℃という温度での窒素パージにより単離し得る。より好ましい態様において、該蒸発は約0-5℃にて行われる。
【0024】
一態様において、本発明は、形態D9と名付けられ、約7.71、12.61、13.14、22.69及び23.65±0.20度という2θにおけるピークを持ち、約8.04、19.07、20.20及び31.79±0.20度という2θにおけるピークを伴う、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。結晶性イブルチニブの形態D9は、更に約18.63、20.81及び21.51±0.20度という2θにおけるピークによっても特徴付けられる。
一態様において、本発明は、形態D9と名付けられ、実質的に図12のパターンに示されたように配置されたピークを持つ粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。
もう一つの態様において、本発明は、イブルチニブの結晶形態D9の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む:
a) 20℃〜70℃にて、イブルチニブを溶媒又は溶媒混合物に懸濁する工程;
b) 該懸濁液を20℃〜70℃にて維持する工程;及び
c) 20℃〜70℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁液の入手は、20℃〜70℃での、溶媒又は溶媒混合物の添加を含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。好ましい一態様においては、アモルファスイブルチニブを使用する。
【0025】
工程a)において使用し得る上記溶媒又は溶媒混合物は、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、アニソール、1,4-ジオキサン等;エステル、例えばエチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロパノエート、エチルプロパノエート、メチルブタノエート、エチルブタノエート、ジメチルカーボネート等;脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン等;又はこれらの任意の混合物から選択される。好ましい一態様において、該溶媒はメタノールである。もう一つの好ましい態様において、該溶媒混合物は、ブタノール及びヘプタンである。
工程b)は、上記懸濁液の20℃〜70℃の温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D9を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D9の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D9は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D9は、真空下、かつ約20℃〜70℃の温度における濾過によって単離し得る。
【0026】
工程c)において得られる結晶形態D9は、場合により、例えば重力式オーブン、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等の任意の設備を使用して乾燥することができる。一態様において、該乾燥は大気圧下で、あるいは減圧下で行うことができる。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にて又は約30℃の温度にて行うことができる。該乾燥は、所望の品質を得るのに要する任意の期間、例えば約15分乃至数時間又はそれ以上に渡り実施し得る。
一態様において、本発明は、形態D10と名付けられ、約6.62、10.57、13.30、17.17、19.97、21.27、25.07及び29.59±0.20度という2θにおけるピークを持ち、約10.19、15.32、18.09、18.80、21.95、26.35及び26.85±0.20度という2θにおけるピークを伴う、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。結晶性イブルチニブの形態D10は、更に約9.68、19.28及び28.08±0.20度という2θにおけるピークによっても特徴付けられる。
一態様において、本発明は、形態D10と名付けられ、実質上図13のパターンにおいて示されるように配置されたピークを持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、イブルチニブの形態D10は、1,2-ジメトキシエタン溶媒和物である。
【0027】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D10を製造する方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 2℃〜25℃にて、イブルチニブを溶媒又は溶媒混合物に懸濁する工程、
b) 該懸濁液を2℃〜25℃にて維持する工程、
c) 2℃〜25℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁液の入手は、2℃〜25℃での溶媒又は溶媒混合物の添加を含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。
工程a)において使用し得る上記溶媒又は溶媒混合物は、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、アニソール、1,4-ジオキサン等;エステル、例えばエチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロパノエート、エチルプロパノエート、メチルブタノエート、エチルブタノエート、ジメチルカーボネート等;脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン等;又はこれらの任意の混合物から選択される。好ましい一態様において、該溶媒は1,2-ジメトキシエタンである。
【0028】
工程b)は、上記懸濁液の、2℃〜25℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D10を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D10の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D10は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D10は、真空下で、かつ約2℃〜25℃の温度での濾過により単離し得る。
工程c)において得られた結晶形態D10は、場合によって、例えば重力式オーブン、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等の任意の装備を用いて乾燥することができる。一態様において、該乾燥は、大気圧の下で、あるいは減圧下で行うことができる。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にて又は約30℃の温度にて行うことができる。該乾燥は、所望の品質を得るのに要する任意の期間、例えば約15分乃至数時間又はそれ以上に渡り実施し得る。
一態様において、本発明は、形態D11と名付けられ、約6.49、9.60、10.44、12.99、14.28、18.23、19.94、23.85、25.99、27.39及び28.85±0.20度という2θにおけるピークを持ち、約12.46、20.97、23.34及び25.13±0.20度という2θにおけるピークを伴う、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、本発明は、形態D11と名付けられ、実質的に図14のパターンにおいて示されたように配置されたピークを持つ、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、イブルチニブの形態D11は、アニソール溶媒和物である。
【0029】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D11の製法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 2℃〜25℃にて、イブルチニブを溶媒又は溶媒混合物に懸濁する工程、
b) 該懸濁液を2℃〜25℃にて維持する工程、
c) 2℃〜25℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁液の入手は、2℃〜25℃での溶媒又は溶媒混合物の添加を含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。
工程a)において使用し得る上記溶媒又は溶媒混合物は、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、アニソール、1,4-ジオキサン等;エステル、例えばエチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロパノエート、エチルプロパノエート、メチルブタノエート、エチルブタノエート、ジメチルカーボネート等;脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン等;又はこれらの任意の混合物から選択される。好ましい一態様において、該溶媒はアニソールである。
【0030】
工程b)は、上記懸濁液の、2℃〜25℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D11を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D11の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D11は、例えば濾過、蒸留、遠心分離又は緩慢な蒸発等の技術により単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D11は、真空下かつ約2℃〜25℃の温度での濾過により単離し得る。
工程c)において得られた結晶形態D11は、場合により、例えば重力式オーブン、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等の任意の設備を用いて乾燥することができる。一態様において、該乾燥は、大気圧下、あるいは減圧下で行うことができる。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にてあるいは約30℃の温度にて実施し得る。該乾燥は、所望の品質を得るのに必要とされる任意の期間、例えば約15分乃至数時間又はそれ以上に渡り行うことができる。
【0031】
一態様において、本発明は、形態D12と名付けられ、約9.79、12.95、14.08、19.84、21.82、22.48、23.71、25.55及び26.92±0.20度という2θにおけるピークを持ち、約6.46、10.24、15.97、17.65及び24.71±0.20度という2θにおけるピークを伴う、粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。結晶性イブルチニブの形態D12は、更に約18.17及び20.60±0.20度という2θにおけるピークによっても特徴付けられる。
一態様において、本発明は、形態D12と名付けられ、実質上図15のパターにおいて示されたように配置されたピークを持つ粉末X-線回折パターンによって特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、イブルチニブの形態D12はジメチルカーボネート溶媒和物である。
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D12を製造する方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) イブルチニブを、2℃〜25℃にて、溶媒又は溶媒混合物に懸濁する工程、
b) 該懸濁液を2℃〜25℃にて維持する工程、
c) 2℃〜25℃にて単離する工程。
工程a)におけるイブルチニブの懸濁液の入手は、2℃〜25℃での、溶媒又は溶媒混合物の添加を含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法で得ることができる。
【0032】
工程a)において使用し得る上記溶媒又は溶媒混合物は、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、アニソール、1,4-ジオキサン等;エステル、例えばエチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロパノエート、エチルプロパノエート、メチルブタノエート、エチルブタノエート、ジメチルカーボネート等;脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン等;又はこれらの任意の混合物から選択される。好ましい一態様において、該溶媒はジメチルカーボネートである。
工程b)は、上記懸濁液の2℃〜25℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D12を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D12の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D12は、例えば濾過、蒸留、遠心分離又は緩慢な蒸発等の技術により単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D12は、真空下で、かつ約2℃〜25℃の温度での濾過により単離することができる。
【0033】
工程c)において得られる結晶形態D12は、場合により、例えば重力式オーブン、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等の任意の設備を用いて乾燥することができる。一態様において、該乾燥は、大気圧下、あるいは減圧下で行うことができる。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にてあるいは約30℃の温度にて実施し得る。該乾燥は、所望の品質を得るのに必要とされる任意の期間、例えば約15分乃至数時間又はそれ以上に渡り行うことができる。
一態様において、本発明は、形態D13と名付けられ、約9.69、10.30、12.32、17.66及び24.05±0.20度という2θにおけるピークを持ち、約6.18、10.01、14.97及び23.13±0.20度という2θにおけるピークを伴う、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる結晶性イブルチニブを提供する。結晶性イブルチニブの形態D13は、更に約16.78、17.92及び19.42±0.20度という2θにおけるピークによっても特徴付けられる。
一態様において、本発明は、形態D13と名付けられ、実質上図16のパターンに示されたように配置されたピークを持つ粉末X-線回折パターンにより特徴付けられる、結晶性イブルチニブを提供する。
一態様において、イブルチニブの形態D13は、1,4-ジオキサン溶媒和物である。
【0034】
もう一つの態様において、本発明は、結晶性イブルチニブの形態D13を製造する方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
a) 2℃〜25℃にて、イブルチニブを溶媒又は溶媒混合物に懸濁する工程、
b) 該懸濁液を、2℃〜25℃にて維持する工程、
c) 2℃〜25℃にて単離する工程。
工程a)における上記イブルチニブ懸濁液の入手は、2℃〜25℃における、溶媒又は溶媒混合物の添加を含む。工程a)において使用されるイブルチニブは、当分野において公知の方法により得ることができる。
工程a)において使用し得る上記溶媒又は溶媒混合物は、C1-10アルコール、好ましくはC1-5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、アニソール、1,4-ジオキサン等;エステル、例えばエチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロパノエート、エチルプロパノエート、メチルブタノエート、エチルブタノエート、ジメチルカーボネート等;脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン等;又はこれらの任意の混合物から選択される。好ましい一態様において、該溶媒は1,4-ジオキサンである。
【0035】
工程b)は、上記懸濁液の、2℃〜25℃という温度での維持を含む。該懸濁液は、確実に結晶性イブルチニブの形態D13を形成するのに十分な時間に渡り維持される。
工程c)は、上記結晶性イブルチニブの形態D13の単離を含む。該結晶性イブルチニブの形態D13は、例えば濾過、蒸留、遠心分離、又は緩慢な蒸発等の技術によって単離される。好ましい一態様において、結晶性イブルチニブの形態D13は、真空下で、かつ約2℃〜25℃という温度での濾過により単離することができる。
工程c)において得られる結晶形態D13は、場合により、例えば重力式オーブン、棚型乾燥機、真空オーブン、ロタベーパ(RotavaporTM)、エアトレードライヤ、流動床ドライヤ、スピンフラッシュドライヤ、フラッシュドライヤ等の任意の設備を用いて乾燥することができる。一態様において、該乾燥は、大気圧下、あるいは減圧下で行うことができる。一態様において、該乾燥は、約60℃の温度にて、約50℃の温度にて、約40℃の温度にてあるいは約30℃の温度にて実施し得る。該乾燥は、所望の品質を得るのに必要とされる任意の期間、例えば約15分乃至数時間又はそれ以上に渡り行うことができる。
一態様において、本発明は、形態D1、形態D1a、形態D2、形態D2a、形態D3、形態D4、形態D5、形態D6、形態D7、形態D8、形態D9、形態D10、形態D11、形態D12及び形態D13と名付けられたイブルチニブの結晶形態と、少なくとも1種の製薬上許容される賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0036】
製薬上許容される賦形剤は、適当な表面改質剤を含むが、これらに限定されない。このような賦形剤は、様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然製品、及び界面活性剤を含む。
本発明に係る形態D1、形態D1a、形態D2、形態D2a、形態D3、形態D4、形態D5、形態D6、形態D7、形態D8、形態D9、形態D10、形態D11、形態D12及び形態D13と名付けられた、イブルチニブの上記結晶形態は、化学的な純度、安定性、例えば保存安定性、脱水(dehydrate)に対する安定性、多形変換(polymorphic conversion)に対する安定性、流動性、溶解度、形態学(morphology)又は晶癖、低い吸湿性及び残留溶媒の低含有率の内の少なくとも一つから選択される有利な特性を持つ。
【実施例】
【0037】
本発明に係る幾つかの特定の局面及び態様は、以下の実施例を参照しつつより詳しく説明されるであろう。これら実施例は、単なる例示の目的で与えられるものであり、如何なる形であれ本件出願の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
PXRD装置に係る一般的な説明
X-線回折は、パナリティカル(PANalytical) X-線回折装置、モデル:X'パートプロ(X'Pert PRO)を用いて測定された。システムの説明:CuK-α1波長=1.54060、電圧:45kV;電流:40mA;発散スリット=0.5°;サンプルステージ=反射-透過スピナー(Reflection-Transmission Spinner)。走査型:連続式;検出器−X'セレレータ(X'Celerator);測定パラメータ:出発位置[°2Th]:3;終了位置[°2θ(Th)]:40;ステップ幅(Step Size) [°2θ]:0.0170;走査ステップ時間(Scan Step Time) [s]:170.1800。
実施例1:結晶性イブルチニブの形態D1の製造
1.0gのイブルチニブを、25-30℃にて丸底フラスコに装填し、また-18℃まで冷却した。3.1mLのエタノール-水混合物(80:20)を、-18℃にて上記フラスコに装填した。その内容物を、18時間に渡り-15〜-20℃に維持した。該内容物を0℃にて蒸留し、また真空トレードライヤで、54℃にて6-7時間に渡り乾燥して、標記の化合物を得た。
上記結晶形態D1は、図1に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
【0038】
実施例2:結晶性イブルチニブの形態D1の製造
40mgのイブルチニブを、25-30℃にて、ハイスループットスクリーニング器械のウエル内に取った。0.25mLのエタノールを、同一の温度にて上記ウエルに添加した。その内容物を、-25℃にて13時間に渡りボルテックスした(vortexed)。該化合物を真空下で乾燥し、これに続けて-2℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
この結晶形態D1は、図2に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
実施例3:結晶性イブルチニブの形態D2の製造
1.0gのイブルチニブを、25-30℃にて丸底フラスコに装填し、また-18℃まで冷却した。3.1mLのエタノール-水混合物(80:20)を、-18℃にて上記フラスコに装填した。その内容物を、-15〜-20℃にて18時間に渡り維持した。該内容物を、0℃にて蒸留し、また2℃にて4-5時間乾燥させて、標記化合物を得た。
この結晶形態D2は、図3に与えられたPXRDにより特徴付けられる。
【0039】
実施例4:結晶性イブルチニブの形態D2の製造
1.5gのイブルチニブを、25-30℃にて丸底フラスコに装填し、また-18℃まで冷却した。4.6mLのエタノール-水混合物(80:20)を、-18℃にて上記フラスコに装填した。その内容物を、-15〜-20℃にて15〜18時間に渡り維持した。該内容物を、減圧下で2-4時間に渡り、0℃にて蒸留した。該蒸留された化合物を、減圧下で52℃にて4-6時間乾燥させて、標記化合物を得た。
この結晶形態D2は、図4に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
実施例5:結晶性イブルチニブの形態D2の製造
80mgのイブルチニブを、25-30℃にて、ハイスループットスクリーニング器械のウエルに取り、また-25℃まで冷却した。0.25mLのエタノール-水混合物(95:5)を、-25℃にて上記ウエルに添加した。その内容物を、-25℃にて13時間に渡りボルテックスした。該化合物を、真空下で乾燥させ、ついで0℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
実施例6:結晶性イブルチニブの形態D2の製造
80mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取り、また-25℃まで冷却した。0.25mLのエタノール-水混合物(90:10)を、-25℃にて上記ウエルに添加した。その内容物を、-25℃にて13時間に渡りボルテックスした。この化合物を、真空下で乾燥させ、それに続けて0℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
【0040】
実施例7:結晶性イブルチニブの形態D2の製造
80mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取り、また-25℃まで冷却した。0.25mLのエタノール-水(85:15)を、-25℃にて上記ウエルに添加した。その内容物を、-25℃にて13時間に渡りボルテックスした。この化合物を、真空下で乾燥させ、それに続けて0℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
実施例8:結晶性イブルチニブの形態D3の製造
2.5gのイブルチニブを、丸底フラスコに装填し、また-10℃まで冷却した。9.0mLのアセトフェノンを、-10℃にて上記フラスコに装填した。その内容物を、0〜-10℃に冷却し、かつ-10℃にて13-18時間に渡り維持した。該内容物を25℃にて濾過して、標記化合物を得た。
この結晶形態D3は、図6に与えられたPXRDにより特徴付けられる。
実施例9:結晶性イブルチニブの形態D4の製造
80mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取った。0.3mLのホルムアミドを、0℃にて上記ウエルに添加した。その内容物を、0℃にて18時間に渡りボルテックスした。この化合物を、真空下で乾燥させ、それに続けて-5℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
この結晶形態D4は、図7に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
【0041】
実施例10:結晶性イブルチニブの形態D5の製造
0.25gのイブルチニブを25℃〜30℃にて丸底フラスコに装填した。0.6mLのアセトンを、上記フラスコに装填した。その内容物を、25-30℃にて攪拌し、かつ1-2時間維持した。該溶媒を、窒素(Nitrogen)を用いて蒸発させて、標記化合物を得た。
この結晶形態D5は、図8に与えられたPXRDにより特徴付けられる。
実施例11:結晶性イブルチニブの形態D6の製造
50mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取り、また-25℃まで冷却した。0.25mLのクロロベンゼンを、-25℃にて上記ウエルに添加した。その内容物を-25℃にて13時間に渡りボルテックスした。この化合物を真空下で乾燥させ、それに続けて0℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
この結晶形態D6は、図9に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
実施例12:結晶性イブルチニブの形態D7の製造
50mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械に取り、また-25℃まで冷却した。0.25mLのジメチルアセタミドを、-25℃にて、上記ウエルに添加した。その内容物を、-25℃にて13時間に渡りボルテックスした。この化合物を、真空下で乾燥させ、それに続けて0℃にて窒素パージして、標記化合物を得た。
この結晶形態D7は、図10に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
【0042】
実施例13:結晶性イブルチニブの形態D8の製造
50mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取り、かつ-25℃に冷却した。0.25mLのアセトンを、-25℃にて上記ウエルに添加した。該ウエルを、-25℃にて13時間に渡りボルテックスした。該溶媒を、0℃にて、減圧下で蒸発させて、標記化合物を得た。
この結晶形態D8は、図11に与えられたPXRDによって特徴付けられる。
実施例14:結晶性イブルチニブの形態D1の製造
5.0gのイブルチニブを、25-30℃にて丸底フラスコに装填した。200mLのメタノールを該フラスコに装填し、またその内容物を50-60℃に加熱した。この溶液を、粒子を含まないものとし、また5-10℃に冷却した。2-10℃に予め冷却した200mLの脱イオン水を、上記フラスコに徐々に加えた。該フラスコの内容物を、5-15℃にて1-3時間維持し、かつ真空ポンプを用いて濾過して、結晶形態D1aを得た。この結晶形態D1aを、真空中で50-60℃にて4-6時間乾燥させて、標記化合物を与えた。
【0043】
実施例15:結晶性イブルチニブの形態D1の製造
1.0gのイブルチニブを、25-30℃にて丸底フラスコに装填した。40mLのメタノールを、該フラスコに装填し、かつその内容物を50-60℃に加熱した。この溶液を、粒子を含まないものとし、また2-10℃に冷却した。別のフラスコに、40mLの脱イオン水を取り、かつ2-10℃に冷却した。このフラスコに、上記の冷却されたイブルチニブのメタノール溶液を、2-10℃にて徐々に添加した。この添加の完了後、該フラスコの内容物を5-15℃にて2-3時間に渡り維持し、また真空ポンプを用いて濾過した。この得られた物質を、真空下で45-55℃にて4-6時間に渡り乾燥させて、標記化合物を得た。
実施例16:結晶性イブルチニブの形態D9の製造
5.0gのイブルチニブを、25-30℃にて丸底フラスコに装填した。200mLのメタノールを該フラスコに装填し、またその内容物を50-60℃に加熱した。この溶液を、粒子を含まないものとし、かつ20-30℃に冷却した。該フラスコの内容物を、20-30℃にて20-24時間に渡り維持し、また濾過した。この得られた物質は、25-30℃にて30-60分間に渡り、真空下で吸引乾燥されて、標記化合物を与えた。
【0044】
実施例17:結晶性イブルチニブの形態D9の製造
70mgのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取った。0.15mLのブタノール及びヘプタン(1:1)を、同一の温度にて上記ウエルに添加した。その内容物を25℃にて26時間に渡りボルテックスした。この化合物を、50℃での蒸発により単離し、それに続けて窒素パージして、標記化合物を得た。
実施例18:結晶性イブルチニブの形態D10の製造
1.5gのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取った。3.0mLの1,2-ジメトキシエタンを、同一の温度にて上記ウエルに添加した。該ウエルを5℃に冷却し、また5℃にて13時間に渡りボルテックスした。該ウエルの内容物を、20-30℃にて濾過し、また真空下で、60℃にて2-6時間に渡り乾燥させて、標記化合物を得た。
実施例19:結晶性イブルチニブの形態D11の製造
1.5gのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取った。3.0mLのアニソールを、同一の温度にて上記ウエルに添加した。該ウエルを5℃に冷却し、また5℃にて13時間に渡りボルテックスした。該ウエルの内容物を20-30℃にて濾過して、標記化合物を得た。
【0045】
実施例20:結晶性イブルチニブの形態D12の製造
1.5gのイブルチニブを、25-30℃にてハイスループットスクリーニング器械のウエルに取った。3.0mLのジメチルカーボネートを、同一の温度にて上記ウエルに添加した。該ウエルを5℃に冷却し、また5℃にて13時間に渡りボルテックスした。該ウエルの内容物を20-30℃にて濾過して、標記化合物を得た。
実施例21:結晶性イブルチニブの形態D13の製造
1.5gのイブルチニブを、25-30℃にて、ハイスループットスクリーニング器械のウエルに取った。3.0mLの1,4-ジオキサンを、同一の温度にて上記ウエルに添加した。該ウエルを5℃に冷却し、また5℃にて13時間に渡りボルテックスした。該ウエルの内容物を20-30℃にて濾過して、標記化合物を得た。
実施例22:結晶性イブルチニブの形態D1の製造
30.0gのイブルチニブを、フラスコ内の990mLのメタノールに取り、また50-60℃に加熱して、溶液を形成した。この溶液を、1,200mLの脱イオン水及び3.0gの形態D1に係る種物質を装填した反応器に添加し、約2-5℃の温度にて維持した。この添加の完了後、該反応器の内容物を、0-5℃にて15-20時間に渡り維持した。この反応生成物(reaction mass)を、穏やかな窒素圧下で、同時に高真空下で、予め冷却されたANFD(ジャケット温度:0℃〜5℃)で濾過した。この物質を、真空トレードライヤで、25-30℃にて8-9時間に渡り乾燥させて、標記化合物を得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】