(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-511663(P2018-511663A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】エアロゲル材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20180330BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20180330BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20180330BHJP
C01B 33/159 20060101ALI20180330BHJP
【FI】
C08J9/28CFF
C08J9/28CFH
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B33/159
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-541070(P2017-541070)
(86)(22)【出願日】2016年2月4日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2016052359
(87)【国際公開番号】WO2016124680
(87)【国際公開日】20160811
(31)【優先権主張番号】15153869.1
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】510143468
【氏名又は名称】エーエムペーアー・アイトゲネーシッシェ・マテリアルプリューフングス‐ウント・フォルシュングスアンシュタルト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ケーベル、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フーバー、ルーカス
【テーマコード(参考)】
4F074
4G072
【Fターム(参考)】
4F074AA78
4F074AA89
4F074CB32
4F074CB34
4F074CB47
4F074CC04X
4F074CC04Y
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4F074CC32Y
4F074DA35
4G072AA28
4G072BB02
4G072BB03
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4G072LL11
4G072MM31
4G072PP03
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4G072QQ07
4G072RR05
4G072RR12
4G072RR15
4G072TT08
4G072UU30
(57)【要約】
少なくとも0.55の細孔率および10nm〜500nmの平均細孔径を有するエアロゲル材料の製造方法であって、以下の工程、
a)ゾルを調製して場合により活性化する工程と、
b)ゾルを注型用鋳型(10)中に充填する工程と、
c)ゾルをゲル化して、それによりゲル(4)を製造して、その後ゲルを熟成する工程と、
以下の工程d)およびe)の少なくとも1つ、
d)細孔中の液体を溶媒と交換する工程と、
e)熟成されかつ場合により溶媒を交換したゲル(6)を反応剤を用いて化学的に改質する工程と、続いて、
f)ゲルを乾燥して、それによりエアロゲル材料を形成させる工程とを含むエアロゲル材料の製造方法。
工程b)で用いられる注型用鋳型には、複数のチャンネル形成要素(2)が設けられ、複数のチャンネル形成要素は、要素のチャンネル方向で規定された特定の最小長さLに沿って、注型用鋳型中に充填されたゾルのどの位置もチャンネル形成要素からのX≦15mmおよびL/X>3の条件を満たす最大距離Xを有するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.55の細孔率および10nm〜500nmの平均細孔径を有するエアロゲル材料の製造方法であって、以下の工程、
a)ゾルを調製して場合により活性化する工程と、
b)ゾルを注型用鋳型(10)中に充填する工程と、
c)ゾルをゲル化して、それによりゲル(4)を製造して、その後ゲルを熟成する工程と、
以下の工程d)およびe)の少なくとも1つ、
d)細孔中の液体を溶媒と交換する工程と、
e)熟成されかつ場合により溶媒を交換したゲル(6)を反応剤を用いて化学的に改質する工程と、続いて、
f)ゲルを乾燥して、それによりエアロゲル材料を形成する工程とを含み、
工程b)で用いられる注型用鋳型には、複数のチャンネル形成要素(2;14)が設けられ、複数のチャンネル形成要素は、要素のチャンネル方向で規定された特定の最小長さLに沿って、注型用鋳型中に充填されたゾルのどの位置もチャンネル形成要素からX≦15mmおよびL/X>3の条件を満たす最大距離Xを有するように構成される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記チャンネル形成要素は互いに平行に配列されたパイプの束として構成され、前記ゾルのための注型用鋳型がパイプの内部空間により形成され、溶媒交換d)および/または前記ゲルの化学的改質e)が、前記注型用鋳型中で直接的に、前記ゲルと前記チャンネル形成要素との間にゲルの熟成c)中の収縮の結果として形成される間隙によって、好ましくは、供給される溶媒または反応媒体の強制対流により実施される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記パイプの全ては、同一の、好ましくは、六方晶系の形状の断面を有している、方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法において、
場合により溶媒を交換しかつ場合により化学的に改質されたゲルは、前記注型用鋳型からゲルロッドとして取り出され、その後、乾燥f)が臨界未満の乾燥により実施される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記チャンネル形成要素は互いに平行に配列されたパイプの束として構成され、前記ゾルのための注型用鋳型がロッド要素間に位置する空間により形成され、連続したチャンネルを有するプレート形ゲル体が形成される方法で、ゲル化および熟成後にロッド要素が前記注型用鋳型からチャンネル方向に引き出され、溶媒交換d)および/または前記ゲルの化学的改質e)が溶媒または反応剤を適用することにより実施される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記溶媒または反応剤の適用が、ゲル体を少なくとも部分的に透過性の吸引プレート上に置いて、前記溶媒または反応剤を取り除くようにその下側を真空にすることによる強制対流によって実施され、新しい溶媒または反応剤が前記ゲル体の上から供給される、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、
前記ゾルが、少なくとも1種の酸触媒で活性化される疎水化剤を含有するアルコール性溶媒混合物中で酸化ケイ素ゾルとして調製され、前記ゾル中の疎水化剤の体積分率は5〜60%であり、
前記ゾルのゲル化が塩基の添加により開始され、
熟成されたゲルの化学的改質が実施され、前記化学的改質が疎水化剤と相互作用する少なくとも1種の疎水化触媒の放出または添加により開始される疎水化であり、
前記ゲルの乾燥が臨界未満の乾燥により実施される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
触媒的に活性化される疎水化剤がヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)である、方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法において、
前記ゾル中における疎水化剤の体積分率が20〜50%、具体的には、25%〜40%、より具体的には、34%〜38%である、方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法において、
前記疎水化触媒が、トリメチルクロロシラン(TMCS)および/またはアルコール性溶液中のHClである、方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、
前記ゲルが、ポリマーをベースとするゲル、好ましくは、ポリイソシアネートをベースとするゲルである、方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法において、
場合により活性化されたゾルが、ゲル化前に、繊維をベースとするマトリックスに添加される、方法。
【請求項13】
縦孔を備えたエアロゲルプレートからなるエアロゲルプレートを製造するための第1の前駆体生成物であって、プレートが請求項5により製造される、第1の前駆体生成物。
【請求項14】
請求項2により製造される複数のエアロゲルロッドからなるエアロゲルプレートを製造するための第1の前駆体生成物。
【請求項15】
請求項13に記載の第1の前駆体生成物からなるエアロゲルプレートであって、請求項14による第2の前駆体生成物のエアロゲルロッドが前記縦孔に対応して成形されると共に、前記縦孔に挿入されている、エアロゲルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文によるエアロゲル材料の簡素化された製造方法、請求項13および14の各序文による前駆体生成物に関し、請求項15の序文によるエアロゲルプレートにも関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは、高絶縁の絶縁材料の形態で建築技法などにおける高度に特殊化されたニッチ市場のみならず、航空宇宙および造船産業およびハイテク用途においても応用が増大しつつある。エアロゲルは、種々の実施形態および材料で利用可能である。エアロゲルおよびキセロゲルの工業化が、千年紀の変わり目以来、著しく躍進した。現在、特にシリケート系の(SiO
2)エアロゲルが利用可能である。最もよく知られた形態として、顆粒および一体型プレートがある。その上、少なくとも部分的に架橋されたポリマーに基づくエアロゲルでは、樹脂を主成分とするレソルシノールホルムアルデヒド系などが周知である(非特許文献1)が、今日まで何ら工業的重要性を認められなかった幾つかの関連する系も知られている。代替的ポリマーを主成分とするエアロゲルの工業プロセスの拡大が、特に、PUおよびPURなどの特定のポリイソシアネートを主成分とするエアロゲルについて、現在十分に進められており、数年後には種々の新しい市場が期待されている。将来、シリケートおよびポリマーを主成分とするエアロゲル、並びに後者から熱分解によって得られる炭素エアロゲルは、建築およびエネルギー技術、並びに交通やハイテク用途の領域において、益々重要になる。
【0003】
エアロゲル材料の製造における非常に重要な工程は、湿潤ゲルの乾燥である。初期には、超臨界乾燥、すなわち、超臨界流体(通常は、低級アルコール、もっと後になるとCO
2も)からの乾燥が、もっぱらシリケート系のゲルのために使用された。シリケートエアロゲルの場合、疎水化されたゲルの溶媒乾燥(臨界未満の乾燥)を用いることにより、超臨界的に乾燥されたエアロゲルと実質的には同一の性質の材料を製造することができる。古典的定義によれば、これらの材料は、溶媒から乾燥されたエアロゲルに今日でも使用されているキセロゲルと呼ばれていた。しかしながら、この後、材料の性質に基づく定義(密度<0.20g/cm
3、細孔率>85%、空隙サイズ20〜80nm)が、エアロゲルとも称される臨界未満で乾燥された材料にも使用される。有機ゲル(例えば、ポリウレタンおよびポリウレア)のための溶媒乾燥方法の開発が、現在十分に進行している。
【0004】
現在未だ比較的費用のかかるエアロゲルの主なコスト要因は、要求の多い加工処理、溶媒、溶媒の損失および同時に生じるVOC放出ならびに原材料および疎水化剤に起因する。製造方法のさらなる開発が、上記項目の全てにおける節約を目標として、今日まで、以下の開発工程が達成された。増大する重要性は、現在、大気圧における溶媒を含有するゲルからの簡素化された乾燥によるものであり、そのことは、SiO
2エアロゲルについて、アンダーソン、シーラーおよび彼らの共同研究者(非特許文献2)により最初に記載されている。その方法は、急速に知られて、シリケートエアロゲル製造のための新方法に拍車をかけることになった。特許文献1は、そのような製造方法を記載している。溶媒交換時間および疎水化時間は、合計で約120時間と述べられており、ゲル体の寸法や形状についてそれ以上記載していない。
【0005】
特許文献2は、有機化学的に改質された永久的に疎水性のエアロゲルを製造する方法に関する。特許文献3の場合と同様に、SiO
2ゲルは、水ガラス溶液から出発して酸による中和により、または、シリカゾルの形成後にイオン交換およびそれに続く塩基の添加により形成される。ゲル化中のpH値は、通常は、4と8の間の範囲内にある。湿潤ゲルは、有機溶媒で含水率が5%未満になるまで洗浄されて、次に疎水化される。大気圧下における溶媒の蒸発により乾燥すると、エアロゲル材料が顆粒状材料として残る。ゲル体の寸法および形状は、この文献においても、それ以上記載されていない。洗浄および疎水化回数も記載されていないが、固化したゲルの粉砕は明示的に言及されている。
【0006】
有機エアロゲルの例として、特許文献4および特許文献5は、ポリイソシアネートを主成分とするエアロゲルの調製を記載している。前駆体化合物イソシアネートが、有機溶媒混合物に溶解されて、ポリオール、ポリアミンまたは水と反応させられてゲル化し、CO
2で溶媒交換後に超臨界的に乾燥される。上記2件の特許は、具体的な製造工程を記載しないが、化学を記載している点で、ポリマーエアロゲルに関する大部分の技術文献を代表している。一般に、ゲル体の種類およびそれらの形状または厳密なトポロジーに関し文書化されたものは少ない。特許文献6は、有機ゲルの超臨界乾燥の方法を記載している。この場合も、ゲルの形態または形状に関する情報はない。
【0007】
非多孔質系における溶媒交換過程は拡散律速であり、そのために、ある状況では望ましくなく長い交換時間が生じることが知られている。簡単な手段として、拡散過程は、温度の上昇により加速される。これは、エアロゲル製造において、有機溶媒での交換過程をそれらの沸点近くで実施することにより、今日すでに利用されている。
【0008】
代替法として、エアロゲルは、顆粒状、または最も短い寸法または厚さ2cm未満の薄いマットやプレートとして製造され、それらは、次に1工程または2工程以上の精製工程で一体に接着される。これにより、厚めの絶縁パネルまたは他の、ある場合には機能的な複合体材料も製造することが可能である。特許文献7および特許文献8は、基部材料としてのエアロゲルから出発する接着技術による複合体材料の製作方法を記載しており、それによれば、機械的性質および加工性の向上が主に強調されている。特許文献9は、キセロゲル形態にあるレソルシノール−ホルムアルデヒド樹脂系が接着剤成分として用いられる同様な方法を記載している。
【0009】
顆粒状のエアロゲルの技術的製造では、ゲルの寸法は、機械的方法または沈殿塔中における液滴形態でのゲル化による溶媒交換の前の断片化により決定される。第1の方法は、このようにはるかに優れた空間の利用が系で達成されるため、工業的に確立されている。技術の状態は、走るベルト上におけるゲル化によるゲルカーペットの形成、および破砕機上における熟成されたゲルカーペットの断片化である。しかしながら、生じる剪断力により、1〜5mmのサイズ範囲にある所望の顆粒状の粒子に加えて、相当量のゲルも<1mmの細粒分として残る結果となる。この細粒分は、最大で合計収率の30%になり、製造において質の悪い生成物とみなされる。
【0010】
上記の全ての例において、とりわけ、向上した処理能力が達成されるように、製造方法を改善することが望ましい。方法の可能な改善は、技術の状態、すなわち所与の装置で技術的に実現可能な所望の最終生成物の最大処理能力に対する方法の効率に関して判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,565,142号明細書
【特許文献2】WO1998/005591
【特許文献3】WO1995/006617
【特許文献4】米国特許第5,484,818号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0211840号明細書
【特許文献6】米国特許第5,962,539号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2014/0004290号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2014/0287641号明細書
【特許文献9】WO2012/062370
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ペカラら(Pekala et.al)、J.Mater.Sci、1989、24、3221−3227
【非特許文献2】J.Non.Cryst.Solids,1995,186,104−112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、エアロゲル材料の改善された製造方法を提供することであり、更に、エアロゲルプレートを製造するための前駆体生成物、新規なエアロゲルプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、本発明に従って、請求項1に記載の製造方法により、および請求項13または14に記載の前駆体生成物により、および請求項15に記載のエアロゲルプレートにより達成される。
【0015】
好ましい実施形態は、添付の請求項で規定される。
本発明の少なくとも0.55の細孔率および10nm〜500nmの平均細孔径を有するエアロゲル材料の製造方法は、以下の工程、
a)ゾルを調製し、場合により活性化する工程と、
b)ゾルを注型用鋳型中に充填する工程と、
c)ゾルをゲル化して、それによりゲルが製造されて、その後ゲルを熟成させる工程と、
以下の工程d)およびe)の少なくとも1つ、
d)細孔の液体を溶媒と交換する工程と、
e)熟成されかつ場合により溶媒を交換したゲルを反応剤を用いて化学的に改質する工程と、続いて、
f)ゲルを乾燥して、それによりエアロゲル材料が形成される工程とからなる。
【0016】
本発明によれば、工程b)で用いられる注型用鋳型には、複数のチャンネル形成要素が設けられ、複数のチャンネル形成要素は、要素のチャンネル方向で規定された特定の最小長さLに沿って、注型用鋳型中に充填されたゾルのどの位置もチャンネル形成要素からX≦15mmおよびL/X>3の条件を満たす最大距離Xを有するように構成される。
【0017】
注型用鋳型中に充填されたゾルは、それらのどの位置でも(要素のチャンネル方向に規定された特定の最小長さLに沿って)チャンネル形成要素から最大距離Xを有する。チャンネル方向に垂直な断面を見ると、これは、ゾル中に、直ぐ隣のチャンネル形成要素からXより遠くに離れている位置はないことを意味する。このことは、ゾル中の最も内部の区域でさえ、チャンネル形成要素により規定された境界表面から離れすぎていない、すなわち最大で最大距離Xだけであることを保証する。Xは最大で15mmであるという事実によって、ゲル中における任意の点は、前記界面を通して供給される溶媒または反応剤に対して効率的に接近可能である。しかしながら、この有利な幾何学的状況は、単にチャンネル方向に沿って存在する個々の制約で提供されることはなくて、むしろ最大距離Xの少なくとも3倍ある距離Lにわたって実現される。
【0018】
用語「最大距離」は、絶対最大距離と誤解すべきではないことに注意する必要がある。むしろ、それは全ての最短距離の最大である。言い換えれば、本発明の意味における「最大距離」は、断面領域の最も内部の点とチャンネル形成要素により規定された境界表面との間の最短距離である。
【0019】
最大距離Xは、形状に依存し、ある場合には、チャンネル形成要素相互の間隔にも依存することを理解すべきである。対応する関係は、平面的幾何学的形状の知られた関係の結果である。複雑なおよび/または不規則な形状の場合、最大距離は、数で表して決定しなければならないこともある。
【0020】
ゾルから出発したエアロゲルの形成は、基本的には知られており、特に、溶媒交換の工程および/または化学的改質の工程を含む。本発明による配列によって、供給される溶媒および/または反応媒体に対するゲルの大きく改善された接近し易さが保証される。これは、方法の継続時間の短縮をもたらして、その結果として方法の経済性における改善も生じる。これらの利点は、既知のエアロゲル製造方法だけでなく、未だなお開発されるべき任意の将来の方法にも、これらも液体状またはあるいはガス状の種のゲル中への供給に基づくという条件で適用される。
【0021】
幾何学的形状を特定して選択することにより、すなわち寸法の広がりを少なくとも1つの空間的方向に限定することにより、拡散律速の溶媒交換過程の実質的加速を達成することができる。このようにして、例えば、1種の溶媒混合物から他種の溶媒混合物への交換を、大面積で厚さが数ミリメートルの一体型ゲルプレートで、工業的製造方法の観点から妥当な時間内に成し遂げることが可能である。50nmの中間の細孔径および5mmの厚さを有するシリケート系のゲルプレートは、完全に(即ち、プレートの深さを全て通して)、アルコールを主成分とする溶媒混合物中において室温で数時間以内に交換することができる。拡散速度は、フィック(Fick)の第2法則を解くことにより与えられる。ゲルプレートの場合、溶媒抽出のために必要な時間(全て溶媒成分の濃度が平衡に達するまで)は、厚さが最短の寸法の正方形のプレートに基づく第1近似に依存する。これは、プレートの厚さを2倍にすれば、交換時間が4倍になることを意味する。これは、エアロゲルおよびキセロゲル材料の工業的製造方法に深刻な結果を有する。実際には、系に依存して、それでも2〜3cmのエアロゲルプレートは、妥当な時間消費で製造することができる。しかしながら、例えば、絶縁技術で望ましい10cmの厚さは、現行の技術では、経済的には、固体材料として製造することができない。
【0022】
現在知られている方法と比較して、本発明の方法は、ゲル体の制御された構成により、エアロゲル材料の実質的により簡単なおよびより速い製造を可能にして、方法の有効度および処理量を著しく向上させることができる。
【0023】
原理的に、注型用鋳型、すなわち外側のハウジングを製造するために、および使用される任意のパイプまたはロッドの要素のためにも、種々の材料を使用することができる。これらは、例えば、ポリオレフィン、特にポリプロピレンまたはポリエチレンだけでなく、ガラスまたはセラミックスおよび金属、例えばステンレス鋼なども含む。どのような場合にも、材料を選択するときに、使用されるべき媒体(酸、塩基、溶媒)との適合性を確実にすることが必要である。
【0024】
1実施形態(請求項2)によれば、チャンネル形成要素は互いに平行に配列されたパイプの束として構成され、ゾルのための注型用鋳型がパイプの内部空間により形成され、溶媒交換d)および/またはゲルの化学的改質e)が、注型用鋳型中で直接的に、ゲルとチャンネル形成要素との間にゲルの熟成c)中の収縮の結果として形成される間隙によって、好ましくは、供給される溶媒または反応媒体の強制対流により実施される。このタイプの配列では、最大距離Xは、パイプの内部に位置する点のそれぞれのパイプ要素の内面からの距離を考慮することにより決定されることが理解される。
【0025】
原理的に、パイプ断面の種々の形状を使用することができる。それは、円形のまたは正方形の、特に正方形の内部プロファイルを有するパイプであることが有利である。それに加えて、ある数のパイプが一緒に保たれてパイプ束を形成するなら、取り扱いに有利である。
【0026】
有利な実施形態(請求項3)において、全てのパイプは、同一の、好ましくは、六方晶系の断面を有している。これは、個々のパイプの間に空所が殆どないコンパクトなパイプ束を構築することを可能にする。
【0027】
さらなる実施形態において(請求項4)、場合により溶媒を交換しかつ場合により化学的に改質されたゲルは、注型用鋳型からゲルロッドとして取り出されて、その後、乾燥f)が臨界未満の乾燥により実施される。この方法では、個々のゲルロッドはより小さい断片に崩壊して、それにより最小の細粒分のみを有する顆粒状のエアロゲルまたはキセロゲルが有利に製造される。
【0028】
さらなる実施形態(請求項5)によれば、チャンネル形成要素は互いに平行に配列されたロッド要素の束として構成され、ゾルのための注型用鋳型がロッド要素間に位置する空間により形成され、連続したチャンネルを有するプレート形ゲル体が形成されるような方法で、ゲル化および熟成後にロッド要素が注型用鋳型からチャンネル方向に引き出される。溶媒交換d)および/またはゲルの化学的改質e)が溶媒または反応剤を適用することにより実施される。このタイプの配列で、ロッド要素は、形成されて、その後熟成されたゲル中のチャンネルのための場所のホルダーとしての役目を果たす。したがって、最大距離Xは、ロッド要素間に位置する点の、最も近いロッド要素の外面からの距離を考慮することにより決定されるべきであることが理解される。
【0029】
原理的に、パイプ断面の種々の形状を使用することができる。それは、円形のまたは正方晶の、特に正方形の、または六方晶系の外部プロファイルを有するロッドが有利である。
【0030】
1実施形態において、溶媒または反応剤の適用は、前もって形成されたプレート形ゲル体で、注型用鋳型からそれを取り出した後で実施される。
有利なことに、ロッド要素は、その1端で、注型用鋳型の脱着可能な底表面または上側の表面に取り付けられ、したがって、ゲルの熟成後にゲル体から容易に引き出すことができる。
【0031】
溶媒または反応剤の適用が、ゲル体を少なくとも部分的に透過性の吸引プレート上に置いて、溶媒または反応剤を取り除くようにその下側を真空にすることによる強制対流によって実施され、新しい溶媒または反応剤がゲル体の上から供給されるならば、それは特に有利である(請求項6)。そのような方法は、基本的には、特に紙の製造から知られている。
【0032】
ゾルが、少なくとも1種の酸触媒で活性化される疎水化剤を含有するアルコール性溶媒混合物中で酸化ケイ素ゾルとして調製され、ゾル中の疎水化剤の体積分率は5〜60%であり、
ゾルのゲル化が塩基の添加により開始され、
熟成されたゲルの化学的改質が実施され、化学的改質が疎水化剤と相互作用する少なくとも1種の疎水化触媒の放出または添加により開始される疎水化であり、
ゲルの乾燥が臨界未満の乾燥により実施される方法は、有利であることが見出された(請求項7)。
【0033】
この場合に、疎水化剤の活性化は、相溶性の溶媒混合物中に溶解された少量の、典型的にはゲル体積の10〜20%の範囲内の、酸性疎水化触媒を添加することにより開始させることができる。しかしながら、ゲル材料中における均一な疎水化を確実にするために、疎水化剤は、ゲル材料の深部までにも拡散しなければならず、その際、ゲル体の形状および特性が、疎水化工程のために必要な時間に対して重要な効果を有する。本発明により、ゲルに特定の構造を提供することにより、ゲル体積と比較して少量の疎水化触媒の導入を、著しくより簡単なおよびより経済的に、さらに実現することができる。
【0034】
疎水化は、酸により触媒される方法であり、すなわちH
+およびH
3O
+イオンにより、それぞれ触媒されるという事実によって、僅かに塩基性の条件下で起こるゲル化方法、および酸性条件下で起こる疎水化方法は、1種のおよび同じオルガノゲルで実施することができるが、それにも拘わらず、一時的に互いに十分分離することができる。さらなる利点として、方法は、その有意に削減された溶媒消費のために卓越する。特に、エアロゲルの製造のために使用される溶媒量をゲル体積の1.1〜1.2倍に限定することは可能である。技術の現在の状態によれば、典型的には、ゲル体積の2倍を超える量が必要である。
【0035】
本明細書の関係で、アルコール性溶媒混合物は、1種または場合により数種の低級アルコール(特に、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール)および適切な比率の疎水化剤から本質的になる混合物として理解すべきである。混合物は、小さい比率の水、避けることのできない不純物および場合により(別の場所で説明)ある種の添加剤をさらに含有することができる。
【0036】
疎水化剤は、疎水性すなわち撥水性を提供する成分として一般的に知られているように理解すべきである。本明細書の関係で、疎水化剤および疎水化方法は、主として、シリケートゲルおよびそれらの性質の改質に関係する。
【0037】
有利な実施形態は、少なくとも1種の触媒的に活性化される疎水化剤を含有するアルコール性溶媒混合物中におけるアルコキシドをベースとするシリケートゾルのゲル化からなる。
【0038】
ゲル化過程は、アンモニアなどの希釈された塩基の添加により開始される。場合により、「オルガノゲル」とも称されるそのようにして形成されたゲルは、熟成過程にさらにかけられる。その場合により熟成されたゲルは、今やWO2013/053951A1によれば、疎水化のためにおよび臨界未満の乾燥のために必要とされる全ての成分を含有するか、より詳しくは、アルコールおよび活性化される疎水化剤を主要な成分として含むが、疎水化触媒を含まない細孔液体を含有する。
【0039】
それに続いて、疎水化触媒を、完全におよび追加の溶媒添加なしでまたはほんの僅かの溶媒が添加された制御された方法で、ゲル中に導入することが必要である。好ましい実施形態(請求項8)により、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)が酸触媒で活性化される疎水化剤として使用される。
【0040】
ゾル中における疎水化剤の体積分率は、20〜50%、具体的には、25%〜40%、より具体的には、34%〜38%であれば、特に有利である(請求項9)。
さらなる実施形態(請求項10)により、トリメチルクロロシラン(TMCS)および/またはアルコール性溶液またはこれらの2成分の混合物中のHClが疎水化触媒として使用され、それは、細孔液体と同様なまたは同一の組成を有する希釈された溶媒混合物中に溶解されて、液相中でゲルと接触させられる。触媒が加えられた溶媒の量は、溶媒のバランスを可能な限り低く保つ利益を維持するために、ゲル体積と比較して、可能な限り小さく保つべきである。好ましくは、バッチ法または連続法において触媒を含有する溶液は、最大で30%、特に最大で10%の体積分率および体積流動分率に相当するべきである。HClの代わりに、他の無機酸を使用することも可能であり、それにより硝酸(HNO
3)が、特に有利であることが見出されている。
【0041】
方法のさらに別の実施形態(請求項11)により、ゲルは、ポリマーをベースとする、好ましくは、ポリイソシアネートをベースとするゲルである。
増大する構造的安定性要件を有するある用途のために、場合により活性化されたゾルを、ゲル化前に繊維をベースとするマトリックスに添加することが有利であることが見出された。このようにして繊維によって強化されたエアロゲルプレートを製造することができる。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、縦孔を備える本発明によるエアロゲルプレートからなる、エアロゲル材料を製造するための第1の前駆体生成物が提供される。縦孔は、プレート平面を通して垂直に伸びる貫通チャンネルまたは一方だけに開口した対応する盲孔である。特に、縦孔は、上で規定された方法(請求項5)により製造することができて、その場合、孔の寸法は、使用されるロッド要素の外側の寸法によって実質的に規定される。しかしながら、ゲルの熟成中に起こる収縮を計算に入れることが必要である。
【0043】
本発明のさらに別の態様によれば、複数のエアロゲルロッドからなる、エアロゲルプレートを製造するための第2の前駆体生成物が提供される。特に、これらのロッドは、上で規定された方法(請求項2)により製造され、その場合、エアロゲルロッドの外側の寸法は、パイプ要素の内側の寸法によって実質的に規定される。しかしながら、この場合にも、ゲルの熟成中に起こる収縮を計算に入れなければならない。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、エアロゲルプレートの形態における第1の前駆体生成物からなるエアロゲルプレートであって、その縦孔の中に対応して成形された第2の前駆体生成物のエアロゲルロッドが挿入または圧入される、エアロゲルプレートが提供される。この場合に、原理的には、同じ材料が、エアロゲルプレートのためおよびエアロゲルロッドのために使用できる。このようにして、始めて本発明の方法の利点を有するプレート要素を製造することができる。製造されるエアロゲルプレートに断熱性能におけるかなりの低下を生じさせるので、最終的には望ましくない縦孔を、エアロゲルロッドを挿入することにより除去することができる。しかしながら、考えられる他の用途もあり、その中に装入されたエアロゲルロッドが異なった材料で作製され、それが特に最終生成物の機械的および熱的性質の改善を可能にする。例えば、シリケート系のゲルから形成されて連続した縦孔を備えるエアロゲルプレートは、ポリウレタンゲルで作製されて挿入されたエアロゲルロッドを備えることができる。
【0045】
ここから、本発明の例を、以下に示す図面を参照してさらに詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1a】正方形のパイプのプロファイルを有する配列における距離関係の模式図。
【
図1b】円形のパイプのプロファイルを有する配列における距離関係の模式図。
【
図1c】数本の円形のパイプのプロファイルを有する配列における距離関係の模式図。
【
図1d】六方晶系のパイプのプロファイルを有する配列における距離関係の模式図。
【
図1e】数本の六方晶系のパイプのプロファイルを有する配列における距離関係の模式図。
【
図1f】円形のロッドの正規直交の配列における距離関係の模式図。
【
図1g】円形のロッドの六方晶系の配列における距離関係の模式図。
【
図2a】第1の実施形態の方法の工程配列を示す図。
【
図2b】第1の実施形態の方法の工程配列を示す図。
【
図2c】第1の実施形態の方法の工程配列を示す図。
【
図2d】第1の実施形態の方法の工程配列を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、幾つかの基本的な幾何学的形状および関係を示す。図中、隣のチャンネル形成要素から最も離れた距離を有する最も内部の点を十字で示す。上記の意味で定義される最大距離Xも示し、それは、最も内部の点の隣接するチャンネル形成要素からの最短距離である。
【0048】
図1a〜
図1eは、チャンネル形成要素として使用されるパイプ成分2およびその中に含有されるゾルまたはそれから形成される未熟成のゲル4も見ることができる状況を示す。さらによく例示するため、これらの図は、前もって熟成されたゲル中に、パイプ成分の除去後に浸入すべき、工程d)またはe)のための溶媒または反応剤5も示す。
図1fおよび
図1gは、ロッド要素による熟成されたゲル材料6中におけるチャンネル形成がすでに完了したさらに別の状況を示す。ロッド要素は除去されて円形のチャンネル7が形成され、その中に反応剤5が充填されている。
【0049】
図1aに示す内側の辺の長さaを有する正方形のパイプのプロファイルでは、最大距離X=a/2である。すでに言及したように、これは、プロファイル内の最も内部の点から最短の距離である。
図1bに示す内径がdの円形のプロファイルで、最大距離Xはd/2である。
図1dに示す内側の辺の長さがbの規則的な六方晶系のパイププロファイルでは、最大距離X=b/2√3である。
【0050】
図1cおよび
図1eは、密に充填された円形のまたは六方晶系のパイプのプロファイルの配列を示す。
図1fに示す正規直交格子の碁盤目の場合、その格子点に、チャンネルを形成する円形のロッドが配列されて、それらは側辺の長さAの複数の正方形の基本格子胞からなり、最大距離は、X=1/2(A√2−ds)により与えられる。
【0051】
図1gに示す六方晶系格子の碁盤目の場合、その格子点に、チャンネルを形成する円形のロッドが配列されて、それらは側辺の長さBの複数の正方形の基本格子胞からなり、最大距離はX=B−1/2dsにより与えられる。
【0052】
図2a〜
図2dに示す方法の順序は、第1に、
図2aで円筒形のパイプ2の束を示し、最初は未だ空であり、特に、示していない拘束トレーの底表面上にある。
図2bでは、パイプ束は、ゾルまたはそれらから形成された未熟成のゲル4で充填されている。
図2cでは、収縮を伴うゲルの熟成が起こり、それにより、シネレシス流体で充填されたギャップ様の間隙8が、熟成されたゲルで作製された円筒形のロッド6とパイプ2との間で形成されている。
図2dでは、ゲルロッド6が、部分的に上方に引かれたパイプ2と共に示されている。これらは、今さらなる加工処理に備えている。
【0053】
図3a〜
図3eに示す方法の順序は、第1に、
図3aでネイルボード(nail board)様式で円筒形のロッド14の配列を備えた基部プレート12を含む直方体の拘束トレー10を示す。示された例で、全てのロッドは、およそ同じ長さである。
図3bでは、拘束トレーは、充填されたゾルまたはそれらから形成された未熟成のゲルを含有し、その充填レベルはロッドの先端の丁度すぐ下にある。
図3cでは、収縮を伴うゲルの熟成が起こって、それにより間隙8が、円筒形のロッド14と熟成されたゲルで作製されたプレート形ボディ16との間に形成される。
図3dでは、拘束トレーの蓋の部分18が、上方に持ち上げられて、それにより、熟成されたゲル体16をその中に含有する拘束トレーの基部部分20が覆われていない。
図3eでは、貫通孔22を備えた熟成されたゲル体16が、ロッド14を備えた基部部分20から持ち上げられてさらなる加工処理に備えている。
【0054】
無機有機水素化物エアロゲル顆粒の製造
アルコール中の酸化ケイ素ゾルは、希薄なエタノール性アンモニア溶液を室温で添加することにより活性化される。ゾルは、アンモニアと一緒に添加される副成分として、2%アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を含有する。このゾルを、今度は開放容器中に充填し、容器には、
図2a及び
図2bに示すように、内径d=13mm、壁厚さh
W=1mmおよび長さL=90cmのパイプを含むパイプ束パッケージが挿入されている。この挿入物は容器体積全体を満たす。ゲル化後、ゲルパックを12時間熟成させる。その後、パイプ束の挿入物を取り出して過剰の液体をデカンテーションで除く。その後、アミン基と反応するポリマー架橋剤および疎水化剤を含有する希薄溶液を添加する。混合物を、ゲル中にさらに12時間拡散するに任せて容器内で反応させ、その後過剰の液体を再び除去する。生じたゲルロッドを、次にオートクレーブに入れて、CO
2で交換し、その後超臨界的に乾燥する。生成物として、密度0.14g/cm
3および圧縮強度>10MPaのX−エアロゲルロッドが残る。
【0055】
シリケート系のエアロゲル顆粒状の高い効率の製造
シリカゾルを連続法で製造して、SiO
2含有率10%〜含有率6.6%のHMDSOで希釈する。このゾルを、35℃の温度で、希釈されたアンモニア溶液と充填ステーション(filling station)で混合することにより活性化する。充填ステーションには、空洞を完全に充填するハニカム様挿入物を備えた200lコンテナが存在する。ハニカム鋳型は0.5mmの壁厚さおよび8mmの格子胞直径を有する。すぐに、コンテナを個々に充填して覆うことにより密閉し、次にそれらを18時間70℃で貯蔵する。この時間中に混合物はゲル化して、ハニカムチャンネル中で形成されたゲル体は熟成され、それによりゲル体は僅かに収縮する。収縮の結果、間隙が形成されて、その中で液体が循環することができる(
図2cと同様に)。熟成後、コンテナを開いてシネレシスによる液体を抜き出す。その後、20lの希釈された無機酸を触媒として各容器に加え、その際、触媒をゲルとハニカム壁の間の間隙に均等に分布させる。コンテナを再び閉じて8時間90℃で貯蔵し、それによりゲルは疎水化される。その後コンテナを空けて、疎水化されたゲルロッドを150℃のオーブン中で乾燥する。乾燥中に、ゲルロッドは自発的に壊れて、粒子サイズが4〜7mmの間の顆粒状のエアロゲルを形成する。このようにして形成されたエアロゲル顆粒の密度は0.096g/cm
3、および隙間の多い材料の熱伝導度は17.8mW/mKである。本発明による加工処理によって、ゲル体は、乾燥工程まで鋳型中で変化しないままであり、したがって顆粒の収率は少なくとも95%になる。その結果、機械的に破砕されたゲルと比較して、粗悪な生成物とみなされるエアロゲル粉塵の生成は有意に少ない。
【0056】
別の実施形態において、大規模な方法において、挿入物は個々のコンテナに導入されず、互いに続いて長い処理トンネル(process tunnel)に導入され、したがってゲルと共にコンベアベルト上で全製造過程を通り、それによりシネレシスによる液体は、底の一定の区域で取り除かれ、その後直ぐに疎水化触媒が天井から噴射系により投与される。
【0057】
構造化されたポリウレタンエアロゲルプレートの製造
イソシアネート混合物(成分1)および触媒を含むポリオール(成分2)からなる有機溶媒混合物中の2通りの新たに調製された溶液を互いに混合して、トレー鋳型に入れ、その中に均一な
図3a)による円筒形のロッドのかぶさる配列を挿入した。個々の棒は、直径d
S=20mm、長さLs=331mmおよび中心から中心への最短距離A=35mmである。成分1および2からなるゾル混合物の充填レベルは、H=315mmである。上側で、ゾルは、ロッドを束縛する好適な孔の開いたプレートで覆われる。ゲル化およびゲルの熟成後、孔の開いたプレートを除去して個々のロッドを引き出す。次に、ゲル体を鋳型から取り出してオートクレーブに移す。ゲル体に含有される細孔の液体を、ここで、このオートクレーブ中で超臨界CO
2により抽出して、その後ゲルを臨界未満で乾燥する。最後に、厚さ273mmのポリウレタンエアロゲルの孔が開いたプレートが残る。
【0058】
別の実施形態において、混合物1および2は、酸触媒と希釈された水性ホルムアルデヒド溶液との少量の混合物を含むレソルシノールの溶液からなる。この場合、しかしながら、超臨界乾燥の前に、水性の細孔液体を、例えば、アセトンまたはエタノールなどの好適な溶媒媒体によって置き換えることが必要であり、それは溶媒交換によって行われる。
【0059】
エアロゲルプレートの工業的製造
連続式流通反応器で製造された酸化ケイ素ゾルを、シリケート含有率5.7%(SiO
2として測定)に調節する。ゾルにアンモニアをゲル化触媒として供給して、中にネイルボード様挿入物が存在するシェル鋳型に入れる。挿入物は、
図1gと同様に表面に直角に伸びる直径ds=1.5mmおよび長さLs=70mmおよび六角形の辺の長さに対応する中心から中心への最短距離B=10mmの、規則的な六方晶系配列の注射針様ロッドが上に置かれている基部プレートからなる。ゾル混合物の充填レベルHも70mmであり、その結果、ロッドの先端が丁度覆われる。次に、ゾルは第2のプレートで完全に覆われる(覆うプレートは示していない)。ゲル化およびゲルの熟成後、覆うプレートを除去し、ゲルプレートを鋳型から取り出して挿入物を注意深く除去する。貫通した孔のあるゲルプレートをゆっくり動く(7.3m/h)コンベアベルト上に移す。このゲル体に上から85%HMDSOおよび15%希塩酸−エタノールからなる疎水化剤の新鮮混合物を噴霧して、プレート上に生じる過剰液体を、コンベアベルトのガスおよび液体に透過性の膜材料を通して、低真空(slight underpressure)でポンプにより連続的に吸引除去する。75℃における交換および6時間の疎水化時間の後、プレートを溶媒乾燥により150℃で乾燥する。
【0060】
比較例
現在通例であるチャンネル形成要素のない標準的手順に従って、その他の点では同一の条件下で予想される交換および疎水化時間は、約25倍長い、すなわち150時間であり、それは工業的方法のためには許容されない。
【0061】
さらなる実施形態において、上の例で記載された本発明の方法に従って製造されたエアロゲルプレートは、この目的に必要な孔に丁度入るエアロゲルのシリンダーを備えている。ゲルのシリンダーを前もって適切に選択されたポリウレタンゲル調合物から調製してその後CO
2から超臨界的に乾燥した。
【国際調査報告】