(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-512919(P2018-512919A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(54)【発明の名称】抗炎症剤を含むポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20180420BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20180420BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20180420BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20180420BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20180420BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20180420BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20180420BHJP
【FI】
A61F13/00 T
C08G18/08 038
C08G18/76
C08G18/10
C08G18/66 074
C08G18/48 037
C08G18/00 L
A61F13/00 301J
A61F13/00 301Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-548415(P2017-548415)
(86)(22)【出願日】2016年4月20日
(85)【翻訳文提出日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】KR2016004084
(87)【国際公開番号】WO2016171454
(87)【国際公開日】20161027
(31)【優先権主張番号】10-2015-0056977
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヒョナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヒチョル
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC26
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4J034CC65
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4J034NA03
4J034NA08
4J034QC01
4J034QC10
4J034RA02
(57)【要約】
本発明は、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法であって、特定の分散剤を用いて、薬物(すなわち、抗炎症剤)含有ポリウレタンプレポリマーを得る工程;および前記薬物含有ポリウレタンプレポリマーを水含有発泡液と反応させて、ポリウレタンフォームを形成した後、前記ポリウレタンフォームを乾燥する工程を含む製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法であって、
(a)pKa7を超えるpKa値を有するアルカリ性抗炎症剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチルおよびn−ヘキサンからなる群から選択される1以上の分散剤;ならびにポリオールおよびイソシアナートを含むポリウレタンプレポリマーを混合して、薬物含有ポリウレタンプレポリマーを得る工程、ならびに
(b)工程(a)で得られた薬物含有ポリウレタンプレポリマーを、水および重合開始剤を含む発泡液と反応させて、ポリウレタンフォームを形成した後、前記ポリウレタンフォームを乾燥する工程
を含む製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)が、前記抗炎症剤を前記分散剤に溶解して得られた薬物溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記抗炎症剤が、アセトアミノフェン、イブプロフェン、またはデクスイブプロフェンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記抗炎症剤が、デクスイブプロフェンであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分散剤が、ポリウレタンプレポリマーの全重量に対して、0.2〜20重量%の範囲の量で用いられることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散剤が、エタノールであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)が、デクスイブプロフェンをエタノールに溶解して得られた薬物溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記薬物溶液が、デクスイブプロフェンを、0.005〜50g/mlの範囲の濃度になるようにエタノールに溶解させて得られることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリオールが、500〜6,000の数平均分子量および20〜90重量%のエチレンオキシド含量を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記イソシアナートが、メチレンジフェニルジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートからなる群から1以上選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリウレタンプレポリマーが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2−メチル−1,3−ペンタンジオールからなる群から選択される1以上の架橋剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記重合開始剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、およびグリシンからなる群から1以上選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記重合開始剤が、グリシンであることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記発泡液が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される1以上の界面活性剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥が、底面上に剥離紙を有するモールドに前記ポリウレタンフォームを注入した後、65℃〜75℃で20分間〜1時間乾燥することによって行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷とは、皮膚が外部刺激によって、裂けたり、切断されたり、または開いたりする皮膚損傷である。創傷は、皮膚の切開および損傷による多量の滲出物および痛みを伴う。創傷ドレッシング材は、創傷治癒用の医薬品の1つであり、創傷の保護、汚染の防止、滲出物の吸収、出血や体液損失の防止などのために用いられる。滲出物の吸収および出血の防止のために、フォームドレッシング材、アルギナートドレッシング材、ハイドロコロイドドレッシング材、およびハイドロゲルドレッシング材のような様々な創傷ドレッシング材が開発されている。また、二次汚染による感染を防止するために、銀含有ドレッシング材が現在開発段階にある。しかし、このような創傷ドレッシング材は、一次的な目的を果たすだけのものなので、創傷に伴う痛みの緩和といった患者の状態を改善する機能を果たすことができないという限界がある。
【0003】
フォームドレッシング材は、創傷において湿潤環境を維持することによって、痛みを軽減する。すなわち、フォームドレッシング材は、創傷により生じる滲出物を吸収することによって、湿潤環境を維持する。特に、深くて広い損傷を有する創傷においては、多量の滲出物が分泌されるので、滲出物の吸収および痛みの改善の両方の目的を達成するために、イブプロフェンのような抗炎症剤を含むポリウレタンフォームドレッシング材が開発されている。
【0004】
一方、薬物含有ポリウレタンフォームドレッシング材は、創傷部位全体において、適切かつ均一な、抗炎症効果および鎮痛効果を達成するために、薬物がドレッシング材において均一に分散されていることが要求される。また、薬物含有ポリウレタンフォームドレッシング材は、創傷の大きさに応じて適切なサイズに切り取った後、創傷に適用されるので、創傷部位に所望の抗炎症効果および鎮痛効果が均一にもたらされるためには、ドレッシング材における均一な薬物分布が必須である。さらに、薬物含有ポリウレタンフォームドレッシング材は、薬物非含有ポリウレタンフォームドレッシング材と同等レベルの発泡能(blowability)および滲出物吸収能(exudate−absorbing capacity)を保持していることが求められる。
【0005】
従来のポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法は、ポリオールおよびイソシアナートを含有するポリウレタンプレポリマーと、発泡剤(例えば、水)および重合開始剤を含有する発泡液とを、反応させることによってポリウレタンフォームを形成することを含む。抗炎症剤のような薬物が均一に分散されたポリウレタンフォームを得るためには、製造過程で、薬物を加え、均一に分散する工程を行う必要がある。しかし、薬物をポリウレタンプレポリマーを形成する工程中に加えると、得られるプレポリマーの粘性が高すぎて薬物が十分に溶解されないため、薬物が均一に分散されたポリウレタンフォームを得ることは困難である。また、薬物を発泡液に加えると、薬物が発泡液から析出するため、この点からも薬物が均一に分散されたポリウレタンフォームを得ることは困難である。また、薬物を可溶化するために、発泡液に溶解補助剤(例えば、界面活性剤)を加えることは、薬物の凝集、ポアの均一性の低下などの問題をもたらす。
【0006】
したがって、当技術分野において、ポリウレタンフォームドレッシング材の発泡能および滲出物吸収能を効果的に維持することができる、抗炎症剤などの薬物が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法を開発することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法を開発するために様々な研究を行った。特に、本発明者らは、フォーム形成工程での発泡能と、得られるポリウレタンフォームドレッシング材の滲出物吸収能の両方の維持を可能にするものでありながら、ポリウレタンプレポリマーに抗炎症剤を分散することができ、製造過程で容易に留去できる分散剤を探索するために、様々な分散剤を検討した。驚くべきことに、本発明者らは、エタノールのような特定の分散剤に抗炎症剤を溶解して得られた溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合して、薬物含有ポリウレタンプレポリマーを得た後、発泡液と反応させてポリウレタンフォームを形成して、得られたポリウレタンフォームを乾燥することにより、得られるポリウレタンフォームドレッシング材の発泡能および滲出物吸収能を維持することができると同時に、抗炎症剤をドレッシング材に均一に分散させることができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法であって、上述の特定の分散剤に抗炎症剤を溶解して得られた溶液をポリウレタンプレポリマーと混合して薬物含有ポリウレタンプレポリマーを得る工程を含む製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によって、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法であって、(a)pKa7を超えるpKa値を有するアルカリ性抗炎症剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチルおよびn−ヘキサンからなる群から選択される1以上の分散剤;ならびにポリオールおよびイソシアナートを含むポリウレタンプレポリマーを混合して、薬物含有ポリウレタンプレポリマーを得る工程、ならびに(b)工程(a)で得られた薬物含有ポリウレタンプレポリマーを、水および重合開始剤を含む発泡液と反応させて、ポリウレタンフォームを形成した後、前記ポリウレタンフォームを乾燥する工程を含む製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法において、前記工程(a)は、前記抗炎症剤を前記分散剤に溶解して得られた薬物溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合することによって行われてもよい。前記抗炎症剤は、アセトアミノフェン、イブプロフェン、またはデクスイブプロフェンであってもよく、好ましくはデクスイブプロフェンであってもよい。
【0011】
前記分散剤は、ポリウレタンプレポリマーの全重量に対して、0.2〜20重量%の範囲の量で用いられてもよい。好ましくは、前記分散剤は、エタノールであってもよい。一実施形態において、前記工程(a)は、デクスイブプロフェンをエタノールに溶解して得られた薬物溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合することによって行われてもよい。例えば、前記薬物溶液は、デクスイブプロフェンを0.005〜50g/mlの範囲の濃度になるようにエタノールに溶解させて得られるものであってもよい。
【0012】
本発明の製造方法において、前記ポリオールは、500〜6,000の数平均分子量および20〜90重量%のエチレンオキシド含量を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体であってもよい。前記イソシアナートは、メチレンジフェニルジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートからなる群から1以上選択されてもよい。また、前記ポリウレタンプレポリマーは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2−メチル−1,3−ペンタンジオールからなる群から選択される1以上の架橋剤をさらに含んでもよい。
【0013】
前記重合開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、およびグリシンからなる群から1以上選択されてもよく、好ましくはグリシンであってもよい。前記発泡液は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体およびシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される1以上の界面活性剤をさらに含んでもよい。また、前記乾燥は、底面上に剥離紙を有するモールドに前記ポリウレタンフォームを注入した後、65℃〜75℃で20分間〜1時間乾燥することによって行われてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明におけるポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法は、エタノールのような特定の分散剤に抗炎症剤を溶解して得られた溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合して、薬物含有ポリウレタンプレポリマーを得ることを含む。前記工程を含む本発明の製造方法は、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材を提供することができる。特に、本発明の製造方法において、前記分散剤は、フォーム形成工程での発泡能と、得られるポリウレタンフォームドレッシング材の滲出物吸収能の両方の維持を可能にするものでありながら、通常の乾燥方法により、容易に留去することができる。したがって、本発明の製造方法は、優れた発泡能および滲出物吸収能を有する、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明にしたがって製造されたデクスイブプロフェン含有ポリウレタンフォームドレッシング材を走査電子顕微鏡で観察した結果を示す。
【
図1b】界面活性剤またはポリアルコールを用いて製造されたデクスイブプロフェン含有ポリウレタンフォームドレッシング材を走査電子顕微鏡で観察した結果を示す。A:10% PEG溶液で調製したデクスイブプロフェン溶液を用いた場合、B:30% Tween80溶液で調製したデクスイブプロフェン溶液を用いた場合、C:1% ポロキサマー407溶液で調製したデクスイブプロフェン溶液を用いた場合。
【
図2】薬物非含有ポリウレタンフォーム(A)およびデクスイブプロフェン含有ポリウレタンフォーム(B)の外観およびサイズを示す。
【
図3】本発明にしたがって製造したポリウレタンフォームドレッシング材を無毛マウスの皮膚に適用した後、デクスイブプロフェンの皮膚透過率を測定して得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で、「抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材」とは、薬物(すなわち、抗炎症剤)が、凝集せずに均一に分散または分布しているポリウレタンフォームドレッシング材を意味する。
【0017】
「デクスイブプロフェン」とは、イブプロフェンの右旋性エナンチオマーであり、その化学名は、(2S)−2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸である。
【0018】
本発明は、抗炎症剤が均一に分散されたポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法であって、(a)pKa7を超えるpKa値を有するアルカリ性抗炎症剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチルおよびn−ヘキサンからなる群から選択される1以上の分散剤;ならびにポリオールおよびイソシアナートを含むポリウレタンプレポリマーを混合して、薬物含有ポリウレタンプレポリマーを得る工程、ならびに(b)工程(a)で得られた薬物含有ポリウレタンプレポリマーを、水および重合開始剤を含む発泡液と反応させて、ポリウレタンフォームを形成した後、前記ポリウレタンフォームを乾燥する工程を含む製造方法を提供する。
【0019】
本発明の製造方法において、前記工程(a)は、前記抗炎症剤を前記分散剤に溶解して得られた薬物溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合することによって行われてもよい。前記抗炎症剤は、アセトアミノフェン、イブプロフェン、またはデクスイブプロフェンであってもよく、好ましくはデクスイブプロフェンであってもよい。前記抗炎症剤は、各抗炎症剤の治療有効量で用いられてもよい。
【0020】
前記分散剤は、治療有効量の抗炎症剤を溶解することができ、得られるフォームドレッシング材の発泡能が低下および/または消失しない量で用いられることが好ましい。例えば、前記分散剤は、ポリウレタンプレポリマーの全重量に対して、0.2〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%の範囲の量で用いられてもよい。前記分散剤は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、またはイソプロパノールであってもよく、好ましくはエタノールであってもよい。
【0021】
抗炎症剤としてデクスイブプロフェンを使用することにより、少量(例えば、イブプロフェン量の1/2)で所望の薬理効果が得られると同時に、エタノールのような分散剤の量を最小限に抑えられることが本発明により見出された。特に、ポリウレタンフォームドレッシング材において、デクスイブプロフェンとエタノールを組み合わせて使用することにより、薬物非含有ポリウレタンフォームドレッシング材と同等な発泡能を維持できることが本発明により見出された。したがって、一実施形態において、前記工程(a)は、デクスイブプロフェンをエタノールに溶解して得られた薬物溶液を、ポリウレタンプレポリマーと混合することによって行われてもよい。前記薬物溶液は、デクスイブプロフェンを0.005〜50g/ml、好ましくは0.05〜5g/ml、より好ましくは約0.5g/mlの範囲の濃度になるようにエタノールに溶解させて得られたものであってもよい。
【0022】
工程(a)で用いられるポリウレタンプレポリマーとして、ポリウレタンフォームドレッシング材の分野で通常用いられるポリオールおよびイソシアナートを使用してもよい。例えば、前記ポリウレタンプレポリマーは、当技術分野で開示されている(例えば、韓国特許公開第2002−0046619号)種々のポリオールおよびイソシアナートを用いて得られた混合物で製造してもよい。例えば、ポリオールとしては、500〜6,000の数平均分子量および20〜90重量%のエチレンオキシド含量を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体を用いてもよい。また、前記イソシアナートは、メチレンジフェニルジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートからなる群から1以上選択されてもよい。前記ポリオールおよびイソシアナートは、3:1〜5:1の範囲の重量比で用いてもよいが、これに限定されない。また、前記ポリウレタンプレポリマーは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2−メチル−1,3−ペンタンジオールからなる群から選択される1以上の架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤の量は、所望の架橋効果を得ることができる限り、特に限定されない。
【0023】
工程(b)で用いられる発泡液は、発泡剤として機能する水(例えば、脱イオン水など)および重合開始剤を含む。発泡液を加えることにより、ガス発生によるポア形成を通じて、ポリウレタンフォームが提供される。上記したように、前記フォーム形成工程での発泡能は、分散剤を加えても、効果的に維持される。前記水は、所望の発泡能を得るために、例えば、工程(a)で得られた薬物含有ポリウレタンプレポリマーの1重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲の量で用いてもよい。前記重合開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、およびグリシンからなる群から1以上選択されてもよい。前記重合開始剤としてグリシンを使用することにより、重合開始効果だけではなく、保湿効果もさらに得られることが本発明により見出された。したがって、重合開始剤として、グリシンが好ましく用いられる。必要に応じて、前記発泡液は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体(例えば、ポロキサマー
TM(Poloxamer
TM)およびシリコーン系界面活性剤(例えば、L−688、L−626など)からなる群から選択される1以上の界面活性剤をさらに含んでもよい。その量は、当業者により適切に決定され得る。
【0024】
本発明の製造方法は、前記重合によって得られたポリウレタンフォームを乾燥することを含む。前記乾燥は、底面上に剥離紙を有するモールドに前記ポリウレタンフォームを注入した後、65℃〜75℃で20分間〜1時間、好ましくは約70℃で約30分間乾燥することによって行われてもよい。上記したように、前記分散剤は、通常の乾燥方法により容易に留去することができるものであり、また、前記分散剤を用いても、得られるポリウレタンフォームドレッシング材の滲出物吸収能は、乾燥工程後も効果的に維持される。前記剥離紙は、皮膚と接触しない支持膜であり、薬物非吸収性の可撓性物質を用いて形成されてもよい。剥離紙としては、シリコーンでコーティングした、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、またはポリウレタンなどのような通常のフィルムを用いてもよい。本発明の製造方法にしたがって得られたポリウレタンフォームドレッシング材は、例えば、単位面積当たり0.01〜2.5mg/cm
2の範囲の濃度で、デクスイブプロフェンを含有するように製剤化されてもよい。その濃度は、モールドサイズ、ポリウレタンフォームドレッシング材の厚さ(すなわち、剥離紙を除いた製剤の厚さ)などを適切に選択することによって調節することができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び実験例により本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び試験例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はそれらによって制限されるものではない。
【0026】
実施例1:ポリウレタンフォームドレッシング材の製造および評価
(1)ポリウレタンプレポリマーの製造
ポリエーテルポリオール(分子量:4,800、VORANOL
TM、The Dow Chemical Company社製)(39.81g)を150rpmで撹拌しながら、70℃まで加温した。これに2,4−トルエンジイソシアネート(9.6g)、エチレングリコール(0.24g)、および1,4−ブタンジオール(0.35g)を加えた。反応混合物を4時間撹拌して、ポリウレタンプレポリマーを製造した。(ポリウレタンプレポリマーにおけるNCOの含量(%)=14%)
【0027】
(2)デクスイブプロフェン含有ポリウレタンフォームドレッシング材の製造および評価
デクスイブプロフェンを、0.5g/mlの濃度になるようにエタノールに溶解させた。得られた溶液の0ml、0.02ml、0.1ml、または0.2mlを、上記で製造したポリウレタンプレポリマーとそれぞれ混合した。(脱イオン水 33.4g、グリシン 15g、およびポロキサマー188 3.34gを含有する)発泡液をそれぞれの混合物に加えた。混合物を150rpmで15秒間撹拌して、ポリウレタンフォームを形成した。得られたポリウレタンフォームを、シリコーンコーティングされた剥離紙を敷いた10cm×10cmのサイズのモールドに注入した後、10分間熟成させた。得られたポリウレタンフォームを70℃で30分間乾燥して、(それぞれ単位フォームドレッシング材当たり0、10、50、および100mgに相当する)0mg/cm
2、0.1mg/cm
2、0.5mg/cm
2、および1.0mg/cm
2のデクスイブプロフェンをそれぞれ含有するポリウレタンフォームドレッシング材を製造した。
【0028】
比較のために、(デクスイブプロフェンを0.5g/mlの濃度になるように10% PEG溶液、30% Tween80溶液、または1% ポロキサマー407溶液に溶解して得られた、各0.1mlの)デクスイブプロフェン溶液を、上記で製造したポリウレタンプレポリマーと混合することを除いては、上記と同様の手順にしたがって、0.5mg/cm
2のデクスイブプロフェンを含有するポリウレタンフォームドレッシング材を製造した。
【0029】
図1aおよび1bは、得られたポリウレタンフォームドレッシング材を、走査電子顕微鏡で観察した結果を示す。本発明にしたがって製造されたポリウレタンフォームドレッシング材は、そのポア形態およびポアサイズにおいて、薬物非含有ポリウレタンフォームドレッシング材と同様の外観を有し、薬物の凝集は認められなかった(
図1a)。しかし、界面活性剤またはポリアルコールを用いて製造されたポリウレタンフォームドレッシング材では、ポアが均一に形成されず、薬物の凝集が認められた(
図1b)。
【0030】
また、デクスイブプロフェンのエタノール溶液を用いて製造されたポリウレタンフォームドレッシング材を、1cm
2サイズのピースに切り取った後、リン酸緩衝食塩水に加えた。その滲出物吸収能を、リン酸緩衝食塩水の吸収前および吸収後のフォームドレッシング材の重量を測定して、評価した。その結果を下記表1に示す。
【0031】
【表1】
表1に示すように、本発明にしたがって製造されたポリウレタンフォームドレッシング材は、薬物非含有ポリウレタンフォームドレッシング材と同等な滲出物吸収能を示した。
【0032】
(3)ポリウレタンフォームドレッシング材の製造および発泡能の評価
デクスイブプロフェンを、0.5g/mlの濃度になるようにエタノールに溶解させた。得られた溶液の0mlまたは0.5mlを、上記で製造したポリウレタンプレポリマーとそれぞれ混合した。(脱イオン水 33.4g、グリシン 15g、およびポロキサマー188 3.34gを含有する)発泡液をそれぞれの混合物に加えた。混合物を150rpmで15秒間撹拌して、ポリウレタンフォームを形成した。得られたポリウレタンフォームを、シリコーンコーティングされた剥離紙を敷いた10cm×10cmのサイズのモールドに注入した後、10分間熟成させた。得られたポリウレタンフォームを、70℃のインキュベーターで30分間乾燥してエタノールを留去し、固化したポリウレタンフォームを得た。
図2は、それぞれのポリウレタンフォームの外観およびサイズを示す。
図2に示すように、デクスイブプロフェンのエタノール溶液を用いて製造されたポリウレタンフォームドレッシング材は、薬物非含有ポリウレタンフォームと同等な発泡能を示した。
【0033】
実施例2:ポリウレタンフォームドレッシング材の製造
イブプロフェンを、0.5g/mlの濃度になるようにエタノールに溶解させた。得られた溶液の1mlを、実施例1(1)と同様の手順にしたがって製造したポリウレタンプレポリマーと混合した。(脱イオン水 33.4g、グリシン 15g、およびポロキサマー188 3.34gを含有する)発泡液を混合物に加えた後、150rpmで15秒間撹拌して、ポリウレタンフォームを形成した。得られたポリウレタンフォームを、シリコーンコーティングされた剥離紙を敷いた10cm×10cmのサイズのモールドに注入した後、10分間熟成させた。得られたポリウレタンフォームを70℃で30分間乾燥して、5mg/cm
2のイブプロフェンを含有するポリウレタンフォームドレッシング材を製造した。
【0034】
実験例1:ポリウレタンフォームドレッシング材の皮膚透過の測定
上記で製造された0.1mg/cm
2のデクスイブプロフェンを含有するポリウレタンフォームドレッシング材を、2cm
2サイズのピースに切り取った後、約8週齢の無毛マウス(Orient Bio Inc.、韓国)の皮膚に貼付した。皮膚透過率は、レシーバ液(receiver medium)として、pH6.8のリン酸緩衝液を用いて、37℃で測定した。0分、10分、30分、1時間、2時間、4時間、および6時間が経過した時点でレシーバ液を等量採取し、そのデクスイブプロフェンの濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。その結果を
図3に示す。
【0035】
図3に示すように、本発明にしたがって製造されたデクスイブプロフェン含有ポリウレタンフォームドレッシング材は、初期に急速な薬物の透過が見られ、30分以内に40%を超える量の薬物が透過した。非ステロイド性抗炎症剤の一つであるデクスイブプロフェンは、痛みを緩和するために創傷部位で速やかに吸収されるように、高い初期放出速度を示さなければならないことを考慮すると、前記ポリウレタンフォームドレッシング材は、非常に有用に適用されることが期待される。
【国際調査報告】