(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
操向可能な医療器具および使用方法。幾つかの実施形態では、操向可能な医療器具は、操向可能な部位の長さに沿って剛性が変化する操向可能部位を含む。この医療器具は第1のデュロメータ値を有する第1の材料からなる第1の部位と、第2のデュロメータ値を有する第2の材料によって形成される第2の部位とを有することができる。第1の部位と第2の部位は医療器具の長手方向軸に対して斜めの継ぎ目で接合されることができる。
前記操向可能部位の遠位端の前記内側管状部材の長手方向軸を横断する断面で前記第1の材料のセグメントの方が前記第2の材料のセグメントよりも多く、前記第1のデュロメータ値が前記第2のデュロメータ値よりも低い、請求項1に記載の操向可能な医療器具。
前記操向可能部位の近位端の前記内側管状部材の長手方向軸を横断する第2の断面で前記第2の材料のセグメントの方が前記第1の材料のセグメントよりも多い、請求項9に記載の操向可能な医療器具。
前記第1および第2の材料のセグメントが、180度オフセットされて対向する同じ構成のポリマー製セグメントをそれぞれ含む、請求項1に記載の操向可能な医療器具。
前記内側および外側管状部材が構成要素を含み、その各々が、最大限操向されたときに前記操向可能部位が1.5cmから4.0cmの、曲線の直径を持つような操向可能長さを有する、請求項1に記載の操向可能な医療器具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0074]本開示は一般に操向可能な案内器具を含む操向可能な医療器具およびその使用方法に関する。本明細書で操向可能な医療用「送達」器具について記載するとき、それは本明細書に記載するところの操向可能な医療器具の一例であるにすぎない。操向可能な送達器具は、それを通して適宜任意の種類の医療器具または器械を患者の体内の目標位置まで送達または案内するために使用することができる。例えば、操向可能な送達器具は、例を挙げれば、血管、食道、気管および場合により隣接する気管支、消化管各部、腹腔、胸腔、体内にあるその他様々な導管、リンパ管、心臓の1つまたは複数の部屋(これらだけに限らない)などの身体内の内腔または空所に医療器具を送達または案内するために使用することができる。操向可能な送達器具が対象内の目標位置に届くと、1つまたは複数の医療処置を行うためにその目標位置に1つまたは複数の医療器具または器械が送達または案内される。幾つかの使用方法では、本明細書に記載する操向可能な器具はあらかじめ位置決めされたガイドワイヤ(その位置決めは当技術分野では既知である)に沿って追跡される。本明細書に記載する操向可能性に関する概念は、幾つかの実施形態では、何らかの診断的および/または治療的機能を有し、別の案内器具を通して前進するカテーテルなどの操向可能な医療器具に適用することができる。
【0017】
[0075]
図1は、例示的な操向可能な送達器具の遠位部の斜視図である。操向可能な器具10は操向可能部位12を含み、遠位端15を有する。操向可能部位12は外側管状部材14と内側管状部材16を含む。外側管状部材14はそのルーメンを画定する内面を有し、内側管状部材14は外側管状部材14内部のルーメンに内設されるようにその寸法が決定される。外側管状部材14と内側管状部材16は、操向可能な器具10の長さに沿って固定箇所18で互いに相手に対して軸方向に恒久固定されている。すなわち、固定箇所18では、内側と外側の管状部材は互いに相手に対して遠位または近位に移動するようには適合されずに、互いに相手に対して軸方向に恒久固定されている。本明細書において「恒久」固定とは、器具の製造時になされる固定であって、1つまたは複数の構成要素が器具の使用中に相手との結合を解除されるように適合または意図されていない固定を一般にいう。本明細書において、管状部材または構成要素が特定の箇所で互いに相手に対して軸方向に固定されているものとして記載されるときには、その固定は、特に恒久固定または一時固定のいずれかであると示されない限り、そのいずれであることもできる。固定箇所18は操向可能部位12の遠位に位置する。固定箇所18の近位の位置では、内側管状部材16と外側管状部材14とが互いに相手に対して軸方向に移動可能である。すなわち、操向可能部位12に沿って、内側管状部材16と外側管状部材14は相手に対して軸方向に移動するように適合されており、それによって以下に説明する器具の操向を可能にする。外側管状部材14にはスロット22が形成されており、そのスロットによって背骨部20が画定される。背骨部20は操向可能部位12の長さに沿って延びる。スロット22は、
図1に示すように操向可能部位12が直線的な構成にあるときは、操向可能部位12の長手方向軸「L」に対して実質的に垂直をなすものとして示される。操向可能部位では内側管状部材16にもスロットが形成されて(図示せず)おり、そのスロットによって背骨部(図示せず)が画定される。
【0018】
[0076]
図2Aおよび2Bは操向可能な送達器具の例示的な実施形態を示している。操向可能な器具30は遠位端37を有し、固定箇所38では互いに相手に対して軸方向に移動不能であり、固定箇所38の近位では軸方向に移動可能である外側管状要素34と内側管状要素36とを含む。外側管状要素34には、背骨部40を画定する複数のスロット42が形成されている。内側管状要素36にも背骨部(図示せず)を画定する複数のスロットが形成される(図示せず)。
図2Aおよび2Bでは、背骨部がそれぞれ互いに実質的に180度離して配置されている。
図2Aは、第1の曲げ構成となるように偏向させた、すなわち操向させた操向可能部位32を示しており、
図2Bは、第1の湾曲構成と異なる第2の湾曲構成になるように操向させた操向可能部位32を示している。操向可能部位を
図2Aに示す構成になるように操向させるには、外側管状部材34の近位部を内側管状部材36に対して軸方向に、詳細には近位に移動させる一方で、管状要素34および36は固定箇所38で互いに相手に対して軸方向に固定されるようにする。これは、内側管状部材36の位置を保持しながら外側管状部材23を近位方向「P」に引くか、外側管状部材の位置を保持しながら遠位方向「D」に内側管状部材36を押すか、またはその両者を組み合わせるかによって行うことができる。
図2Aに示す内側および外側管状部材の相対的な軸方向移動は、それぞれの管状部材の背骨部に対して実質的に対向する圧縮力と引張力とを加えるものであり、それによって、
図2Aに示すように、外側管状部材34の背骨部40の方向に器具を偏向させ、すなわち操向させることになる。
図2Bは、
図2Aに示した方向と実質的に反対方向に器具30を操向させるステップを表している。器具30を
図2Bに示す構成になるように操向させるには、内側管状部材を外側管状部材34に対して近位に移動させる。これは、外側管状部材を遠位に移動させるか、内側管状部材を近位に移動させるか、またはその両方を組み合わせるかによって行うことができる。この相対的な軸方向移動は、器具30の操向可能部位32の背骨部に対して実質的に対向する圧縮力と引張力とを加えるものであり、それによって外側管状部材34の背骨部40の方向と実質的に反対の方向に器具を偏向させることになる。
【0019】
[0077]
図2Cは、
図2Bの操向可能部位の断面図を示したもので、内側管状部材504内に配設された任意選択の浮動式管状部材505が含まれている。操向可能部位500は内側管状部材504と外側管状部材502を含む。内側管状部材504には断続的スロット512が形成されており、そのスロットによって背骨部506が画定される。外側管状部材502には断続的スロット510が形成されており、そのスロットによって背骨部508が画定される。操向可能部位は背骨部506の軸に沿って湾曲される。背骨部508と背骨部506は互いに実質的に180度離れている(すなわち、両者は操向可能部位500の実質的に対向する側にある)。
【0020】
[0078]操向可能部位500を
図2Cに示す(
図2Bにも示す)構成になるように操向させるには、
図2Bに示すように、内側管状部材504を外側管状部材502に対して近位方向に引く。内側管状部材504を引っ張ることにより、内側背骨材506に引張力がかかる。内側および外側管状部材504および502は操向可能部位の遠位位置で互いに相手に対して軸方向に固定されているので、内側部材504を外側管状部材502に対して引っ張ると、外側管状部材502の操向可能部位の遠位端に圧縮力が加わる。その圧縮力は外側管状部材502のスロット510を圧縮し始める。外側スロット510の圧縮により、外側管状部材は
図2Cに示す方向に湾曲し、内側スロット510が閉じたところで湾曲は止まる。したがって、外側スロット510は操向可能部位500の湾曲の度合を制限する。
図2Bおよび2Cに示すものと同種の湾曲は、外側管状要素502を内側管状部材504に対して遠位に押し込んだ場合にも起こる。
【0021】
[0079]外側管状部材502を内側管状部材504に対して近位に引くと(または、内側管状部材504を外側管状部材502に対して遠位に押し込むと)、操向可能部位500は
図2Aに示す形で湾曲する。湾曲の度合は内側スロット512によって制限される。
【0022】
[0080]
図2Cは、本明細書では浮動ライナと呼ぶ場合もある浮動式管状部材を含む医療器具の実施形態を表している。一般に浮動ライナは外部構造に内設される。
図2Cの例示的な実施形態では、外部構造は内側および外側管状部材を含む。外部構造は全般に送達器具に対して構造的、機械的性質を与えるものであり、浮動ライナは送達器具内を通って進む医療器具または器械に対して潤滑を与える。浮動ライナは全般に遮水性でもある。浮動ライナは外部構造の一部に対して「浮動」する。すなわち、浮動ライナは浮動ライナがその中を浮動する外部構造の一部に対して固定されていない。
図2Cの例示的な実施形態では、浮動ライナは操向可能部位の中を浮動する(すなわち、操向可能部位には取り付けられていない)。全般に、浮動ライナは、装置の操向可能または湾曲可能な部位の近位位置で外部構造に取り付けられる。例えば、
図2Cの実施形態では、浮動ライナは、操向可能部位の近位位置で外部構造に取り付けられている。浮動ライナは、操向させられ、湾曲され、操作され、または力を加えられた外部構造が移動する能力を妨げることはない。
【0023】
[0081]幾つかの実施形態では、浮動ライナは潤滑性のポリマー管である。幾つかの実施形態では、浮動ライナはワイヤ巻線および/または軸方向に配したワイヤを含む。
[0082]その内部で浮動ライナが浮動する外部構造は適当などのような管状部材であってもよい。例えば、外部構造はカテーテル、案内器具、操向可能な器具などであることができる。幾つかの実施形態では、外部構造は中立的な湾曲の選択性を有しており、操向するようには意図されていない。この実施形態では、外部構造によって軸方向および径方向の剛性が与えられ、それによってよじれが起こりにくくされる一方、浮動ライナも潤滑をもたらしつつ、外部構造によってよじれの発生を抑え込まれる。
【0024】
[0083]
図2Aおよび2Bには、操向可能部位32の近位にあって、選択的な湾曲軸をもたないように設計された実質的に中立の部位を有するとともに、器具30の近位端(図示せず)に加えられる軸方向の力とトルクとを伝達する器具の近位部35も示されている。
【0025】
[0084]幾つかの実施形態では、内側および外側管状部材は、操向可能部位を操向させるためにそれぞれに加えられる対向する圧縮荷重と引張荷重とが得られるように適合される。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの管状部材は中立的な湾曲軸を有する。ここでいう中立的な湾曲軸とは、管状部材の軸であって、それに加えられた圧縮力および/または引張力を受けたときにその軸に沿って軸方向の変位をほとんど生じない軸のことをいう。中立的な湾曲軸がそれに加えられた圧縮力および/または引張力を受けたときの軸方向の変位は、管状部材のそれ以外のどの構造の軸方向の変位にも満たない。とりわけ、中立的な湾曲軸に沿った軸方向変位は、管状部材のそれ以外のどの部分の構造の軸方向変位と比べても最小である。中立的な湾曲軸の例としては、
図21の背骨部382と
図23の背骨部412および414がある。
【0026】
[0085]幾つかの実施形態では、少なくとも1つの管状部材が、中立的な湾曲軸を反対の管状部材に対してずらすように適合される。管状部材の中立的な湾曲軸は反対の部材の反対側と実質的に正接するようにずらすことができ、それによって中立的な湾曲軸のずれが器具の直径に等しくなるようにして、所与の器具径で可能な限り最大の曲げてこ率を得る。
【0027】
[0086]本明細書記載の管状部材が示す湾曲挙動は選択的であることも中立的であることもできる。中立的な湾曲挙動とは、(管状部材の端部から管状部材の長手方向軸を通して)径方向に加えられる所与の荷重に対する変位が、荷重が加えられたときの径方向角度に依存しないことを含意する。それに対して、非中立的な構造では、径方向荷重に伴う変位は径方向角度に応じて変化する。中立的な湾曲挙動につながる例示的な管状部材を
図25に示すが、これは基本的にばねである
図25の切れ目のない渦巻きパターンである。
【0028】
[0087]幾つかの実施形態では、内側および外側管状要素は互いに相手に対して回転するように適合されることで操向可能部位の操向可能性が強化される。管状要素は互いに相手に対して回転することができるが、操向可能部位の遠位位置で互いに相手に対して軸方向に固定されていることに変わりはない。これらの実施形態では、1つまたは複数の管に対して加えられる軸方向の力に加え、1つまたは複数の管状部材は互いに対して回転もさせられることで操向可能部位の操向が行われる。
【0029】
[0088]幾つかの実施形態では、内側および外側管状部材のうちの一方だけが操向可能部位に沿って背骨部を画定する少なくとも1つのスロットを有し、他方は操向可能部位に沿って一切スロットをもたない。例えば、
図2Aおよび2Bで、外側管状部材34はスロットと背骨部を有することができるが、内側管状部材36にはスロットは形成されていない。別法として、外側管状部材36は少なくとも1つのスロットと背骨部を有することができるが、外側管状部材34にはスロットは形成されていない。内側および外側管状部材の少なくとも一方が第1の方向に選択的に湾曲するように適合されていれば、操向可能部位は本明細書に記載するように操向させることができる。
【0030】
[0089]
図1および2の実施形態では、両方の管状部材のスロットは操向可能部位の長手方向軸に対して実質的に垂直をなす。しかし、一方または両方の管状部材のスロットは長手方向軸に対して実質的に90度以外である角度をなすものであってよい。
【0031】
[0090]幾つかの実施形態では、操向可能な器具は、内側と外側の管状部材の間に配設された管状要素をさらに含む。この中間部材は、例えば柔軟なポリマー材料(それだけに限らない)であることができる。中間部材は管状部材の一方または両方を包み込むものであっても、部材の一方または両方を含むものであってもよい。中間部材は、流体バリアおよび/または低摩擦面を提供するように適合されることができる。
【0032】
[0091]本明細書に記載するようなスロットは、レーザ加工またはその他の機械加工法によって管状部材に形成することができる。スロットの形成は管状部材に少なくとも1つの背骨部を作り出す。ここでいう背骨部とは、圧縮もしくは引張またはその両方における軸方向の剛性を与える操向可能部位の領域であって、さらにねじり剛性をもたらす機能が追加的に含まれてよい領域であると理解することができる。管状部材に単一の背骨部が作り出される場合には、管状部材の中立的湾曲軸は管状部材の背骨部に移る。
【0033】
[0092]幾つかの実施形態では、管状部材は少なくとも2つの背骨部を含み、その組合せによって、管状部材の中立的な湾曲軸は管状器具の長手方向軸に対して平行か、または湾曲時には正接をなす軸であって、両背骨部を通る軸に移る。
【0034】
[0093]幾つかの実施形態では、柔軟なポリマー製ライナなどのライナは内側管状部材の内面に結合される。幾つかの実施形態では、柔軟ポリマーは外側管状部材の外面に結合またはそれ以外で付置される。ライナは、内側管状部材を包み込むようにして付置されてもよい。
【0035】
[0094]幾つかの実施形態では、操向可能部位は、第1の方向に選択的に湾曲するように適合された第1の管状部材と、1つの方向に選択的に湾曲するように適合されていない第2の管状部材とからなる。それらの実施形態の幾つかの事例では、第2の管状部材は、編み構造またはワイヤによる支持を伴う、または伴わない柔軟なポリマー材料である。幾つかの事例では、偏向可能区域で第1の管状部材に管状部材の一方の側に沿って圧縮剛性および引張剛性を高めるためのワイヤまたはその他の支持構造が含まれ、それによって中立的な湾曲軸は管状部材の長手方向軸からその支持構造を含む管状部材の側に移る。幾つかの事例では、長手方向にワイヤを配してそれらが均等に分布するようにして、選択的な湾曲を生じることなく軸方向の引張剛性が高められる。
【0036】
[0095]幾つかの実施形態では、器具は3つの管状部材を備え、径方向に約120度の間隔をあけてずらされた3つの中立的な湾曲軸を有し、それによってあらゆる方向に自在に操向させることができる操向可能な器具を提供する。
【0037】
[0096]
図3は、説明を容易にするため、内側管状部材であっても外側管状部材であってもよい例示的な管状部材50の一部位を平面展開した、すなわち巻きを延ばした状態で示している。管状部材50は固定部52、操向可能部位54および近位中立部位58を含む。操向可能部位54は、操向可能部位に沿って延びる背骨部55を画定するようにそこに形成された複数のスロット56を含む。スロット56は波形スロットであり、背骨部55は操向可能部位54の長さに沿った全体に直線的な構成を有する。すなわち、背骨部55は管状部位の長手方向軸と実質的に平行である。固定部52は、第2の管状部材(図示せず)との軸方向の固定を実現するための結合を容易にする複数の穴57を含む。近位部58は、柔軟性、軸方向の力の伝達およびトルク伝達に関する所望の特徴をもたらすための複数の多重重畳スロット60を含む。
【0038】
[0097]
図4は、操向可能部位の内側管状部材であっても外側管状部材であってもよい例示的な管状部材61の一部位を平面展開した、すなわち巻きを延ばした状態で示している。管状部材61は固定部62、操向可能部位64および近位中立湾曲部位68を含む。中立湾曲部位68は、そこに加えられる圧縮または引張力に対して最小限の湾曲の選択性を示す。管状部材61は、
図3に示す管状部材50と類似しているが、柔軟なものであることができる連結要素72を含む。それぞれの連結要素はスロットの一方の側から他方の側まで延びる。それぞれの連結要素はスロットの一方の側からスロットの他方の側まで延びる2つの腕部を含む。2つの腕はそれぞれがスロットの一方の側と結合される地点で出合う。連結要素は背骨部65とは実質的に反対側で操向可能部位64に沿って延びる。連結要素72は、操向可能部位64のトルク応答および湾曲を増強し、かつ/または制御する。操向可能部位64が背骨部65に関して湾曲するとき、連結要素72は張力を受けて湾曲し、伸長する。操向可能部位64にひねりが加えられると、すなわちトルクが与えられると、連結要素72は圧縮される。トルクがかかると、所与の連結要素と、近位でその所与の連結要素に隣接する管状部材セクションとの隙間がつぶれて、操向可能部位64のねじり剛性が確実に高まる。
【0039】
[0098]
図5は、固定部82、操向可能部位84および近位中立部位86を含む例示的な管状部材80の一部位を平面展開図で示している。
図5の実施形態は
図2Aおよび2Bに示す外側管状部材と類似している。操向可能部位84は、管状部材80の長手方向軸に対して実質的に垂直をなす実質的に直線のスロット90を含む。背骨部88は実質的に直線状に構成されており、管状部材80の長手方向軸と実質的に平行な操向可能部位84の長さに沿って延びる。固定部82は、結合が容易になるようにそれを貫通する穴92(4つを図示)を含む。近位部86は、所望の柔軟性、軸方向の力およびトルクの伝達を与えるための多重重畳スロット94を有する。
【0040】
[0099]
図6は、固定部98、操向可能部位100および近位中立部位102を含む例示的な管状部材96の一部位を平面展開図で示している。操向可能部位100は、管状部材96の長手方向軸に対して実質的に垂直をなす実質的に直線のスロット108を含むが、それぞれは隣接するスロットに対してずらされており、それによって背骨部106が操向可能部位100の長さに沿って延びる波形をなすようにされている。固定部98は、結合が容易になるようにそれを貫通する穴104(4つを図示)を含む。近位部102は、柔軟性、軸方向の力およびトルクの伝達に関する所望の特徴を与えるための多重重畳スロット110を含む。
【0041】
[0100]
図7Aおよび7Bは、平面展開した第1および第2の管状部材112および128の例示的な部位を示している。第1の管状部材112が内側管状部材であり、第2の管状部材128が外側管状部材であることも、あるいは第1の管状部材112が外側管状部材であり、第2の管状部材128が内側管状部材であることもできる。管状部材112および128は操向可能な送達器具の一部として組み立てることができる。すなわち、第1および第2の管状部材の一方は他方に内設することができる。第1の管状部材112は、固定部114、操向可能部位116および近位中立部位118を含む。固定部114は穴120を含む。操向可能部位116は、背骨部122を画定するようにそこに形成された複数のスロット124を含む。背骨122は全体に波形をなす。近位部118は複数の重畳スロット126を含む。第2の管状部材128は、固定部130、操向可能部位132および近位中立部位134を含む。固定部130は穴136を含む。操向可能部位132は、背骨部138を画定するようにそこに形成されたスロット140を有する。背骨138は全体に波形をなす。近位部134は複数の重畳スロット142を含む。
【0042】
[0101]
図7Aおよび7Bでは、管状部材112および128のそれぞれのスロットは隣接するスロットに対してずらされており、断続的であり、全体にらせん状の構成を有する。背骨部122および138は全体に波形の構成を有する。それぞれの管状部材のスロットは管状部材の長手方向軸に対して同じ角度にあるが、らせんパターンが反対向きになるように形成されている。(管状部材の長手方向軸に対して垂直なスロットを有する内側および外側管状部材とは違って)互いのスロットが整列していない内側および外側管状部材を用意する利点は、操向可能部位を操向させる際にスロットが互いにからみ合う可能性を低くできるところにある。
図7Aおよび7Bに示した斜めのスロットは、器具の近位端にトルクが加えられたときのトルク応答を高める結果ももたらす。
【0043】
[0102]
図8は例示的な操向可能な送達器具の部位を示している。操向可能な器具150は、外側管状部材152、内側管状部材154および中間管状部材156を含む。外側管状部材152および中間管状部材156の一部は、内側管状部材154を見せるように切り取られている。中間管状部材156は柔軟なポリマー管であってよい。中間および外側管152および154には、背骨部158および162を画定するようにスロット160、164が形成されている。背骨部は、図示するように互いに実質的に180度離れている。それぞれの管状部材に形成されたスロットは操向可能部位の長手方向軸に対して一定の角度にあり、らせんパターンが反対向きになるように形成されている。
【0044】
[0103]
図9は例示的な操向可能な送達器具の部位を示している。操向可能な器具166は外側管状部材168と内側管状部材170を含む。内側管状部材170は柔軟なポリマー製管状要素であってよい。外側管状部材168には、背骨部172を画定するように複数のスロット174が形成されている。内側管状部材170は選択的な湾曲軸をもたない。内側管状部材170は、別法として、背骨部172から約180度の内側管状部材170の壁に補強要素を組み込むなどによって、修正された湾曲軸のずれを有することもできる。幾つかの実施形態では、内側管状部材170は、編み構造のカテーテルまたはその他の類似の既知の管状医療器具でよくあるように、よじれ発生の可能性を減ずるとともに軸方向の剛性を高める編みワイヤおよび/または軸方向に配したワイヤを組み込んだものであることができる。
【0045】
[0104]
図10は例示的な操向可能な送達器具の部位を示している。操向可能な送達器具178は外側管状部材180と内側管状部材182を含む。外側管状部材180は、例えば柔軟なポリマー製管状部材であってよい。内側管状部材182は、操向可能部位の長手方向軸と実質的に平行をなす背骨部184を画定するようにそこに形成された複数のスロット186を有する。外側管状部材180は選択的な湾曲軸をもたない。別法では、外側管状部材180は選択的な湾曲軸を有することができる。例えば、背骨部184から約180度の外側管状部材180の壁の中に構造支持要素を組み込むこともできる。外側管状部材180は、潤滑を高める機能を除いて、
図9の内側管状要素170と実質的に同じである。幾つかの実施形態では、内側管状部材170は、編み構造のカテーテルまたはその他の類似の既知の管状医療器具でよくあるように、よじれ発生の可能性を減ずるとともに軸方向の剛性を高める編みワイヤおよび/または軸方向に配したワイヤを組み込んだものであることができる。
【0046】
[0105]代替的な実施形態では、器具は内側および外側のスロット付き管を含み、さらに
図10に示す180に類似した最外側の管状部材を追加的に含む。この最外側の管状部材は、例えば柔軟なポリマー製管状部材であってよい(それだけに限らない)。
【0047】
[0106]
図11Aは、操向可能な送達器具に含めることができる第1の管状部材の例示的な実施形態の一部位を示している。管状部材190はリボンワイヤから形成された管状部材である。管状部材190は、インターロック要素194および196を伴う形状を与えられたリボン材を巻いて形成した背骨部192を有しており、それぞれのインターロック要素は協働して背骨部192に沿ってインターロック機構を構成する。インターロック要素194および196は押込みばめによって両者がインターロックされるようにすることができる。インターロック要素は、ポリマー製管状部材などの管状部材によって包み込むことで所定の位置に固定することができる。インターロック要素はさらに、または別法として、内設されたポリマー製管状部材を含むようにすることで所定の位置でのその固定の助けとなり得る。インターロック機構に加え、リボンワイヤは、巻かれて管状構造になったときに柔軟性のある操向可能部位を作り出すように狭幅198化されたセクションを有する。操向可能な送達器具の第2の管状部材は、
図11Aの管状部材と同様にして作製することができる。
図11Bは、インターロック要素196と要素196間の狭幅部分200とを含むリボンの実施形態を示している。管状要素の長手方向軸に対するインターロック要素196の角度は巻きピッチに基づいて変化してよい。こうしたパターンはレーザ加工によって追加的に製作されてもよい。
【0048】
[0107]
図12Aおよび12Bは管状部材の例示的な実施形態を示している。管状部材210は、管214の外面に形成された溝212を有する管214を備える。溝212は管214の全体に延びるものではない。管状部材は、例えば剛性のポリマー製管状部材であってよい。
図12Aは管状210の一部位の断面図を示したもので、操向可能部位の溝212の深さが示されている。
図12Bは管状部材210の平面展開図を示したもので、管214に形成された溝212が示されている。溝212は単一の実質的に直線的な背骨部216を画定する。管214に切られた溝212は操向可能部位の柔軟性を高め、それによって操向可能部位の操向を可能にする。背骨部216は、器具を操向させるための圧縮力および引張力を加えることを可能にする。溝切りは管の壁厚全体に及ぶものではないため、流体密封バリアおよび潤滑ライナがそれによって当然に作り出される。幾つかの実施形態では、管状部材210は操向可能な器具の内側または外側管状部材のいずれかであることができ、内側および外側管状要素の他方もまた溝が形成された管状要素を含むことができる。幾つかの実施形態では、操向可能な器具は、外側管を包んで滑らかな外面を作り出すポリマースリーブをさらに含むことができる。
【0049】
[0108]
図13Aは、例示的な導入シース補強部材220の一部位を示している。部材220は、レーザ切削しスロットまたは隙間を形成することによって形成される。らせん状のスロット222は、補強部材220に形成されるインターロック用T形パターン224を画定する。らせん状経路はらせん状経路226に全体的に示されている。部材220に柔軟性スロット228が形成されて部材220に柔軟性が与えられる。部材220には結合スロット230がさらに形成されており、器具の1つまたは複数の構成要素との結合を可能にする。
図13Bは、
図13Aの部材220を平面展開したパターンで示しており、らせん状経路226に沿ったインターロック用T形パターン、柔軟性スロット228および結合スロット230を示している。
図13Cは
図13Bに示したセクションの拡大図を示している。
【0050】
[0109]幾つかの実施形態では、ガイディングカテーテルは、内側と外側の柔軟なポリマー管の間に層をなすようにした比較的剛性の高い金属またはポリマー製補強部材(
図13A〜13Cに示したものはその一例)を含む。剛性補強部材はレーザまたはそれ以外の切削法によってパターンに加工することが可能であり、それによって管の長手方向軸に沿った柔軟性を高め、ある限られた径方向の柔性を与えるとともに、内側および外側の柔軟なポリマーの結合を可能にする。スロットパターンには、柔軟性と径方向の柔性が得られるように管の周りにらせん状に構成したインターロック用T形パターンや、管の長手方向軸に実質的に垂直なスロットからなり、柔軟性および前記層の結合が一段と高まるように管の長手方向軸に沿ってパターン化されたスロットパターンを含めることができる。
【0051】
[0110]
図14は、治療、診断、処置のための、またはそれ以外のあらゆる種類の医療用器具260を内腔を通して体内の目標位置まで案内し、送達するように適合された案内システムの例示的な実施形態を示している。案内システム250は、外側案内部材252と、外側案内部材250に部分的に内設される操向可能送達器具256とを含む。操向可能送達器具256は、例えば、本明細書に記載するいずれの操向可能な送達器具であってもよい。外側案内部材252は、熱硬化などによって形成することができるあらかじめ設定された湾曲254を有する。操向可能な送達器具256は、例えば本明細書に記載する操向可能部位のいずれの形で形成されるものであってもよい操向可能部位258を含む。例えば、操向可能送達器具は外側および内側管状部材を含み、その管状部材の少なくとも1つは第1の方向に選択的に湾曲するように適合されている。
図14に示す実施形態では、操向可能部位258は、引きワイヤ264を操作することで操向させられて
図14に示す構成になる単一の操向可能管状部材からなる。あるいは、操向可能な送達器具256は、
図2に記載する実施形態からなり、本明細書に記載するように内側および外側管状部材の軸方向の相対移動によって操向させられるものであることができる。
【0052】
[0111]別法として、外側案内部材252は、
図14に示すように任意選択の引きワイヤ262を使って湾曲させるように適合されたものであることもできる。そのような実施形態では、湾曲254はあってもなくてもよい。案内部材250は、本明細書で操向可能部位に関して記載したようなスロットパターンを組み込んだ管状部材を備える。定位置にあるとき、引きワイヤ262は引かれており、屈曲部254の軸方向のねじり剛性がそれによって増大する。操向可能な外側案内部材252は、送達構成にあるとき(非湾曲時)は全体に弛緩した柔性の状態にあるが、引っ張られるか、または圧縮されることによってあらかじめ設定された形状へと構成が変わる。湾曲した構成におけるその剛性は、加えられた引張または圧縮の量および選択された具体的スロットパターンに依存する。
【0053】
[0112]外側案内部材252の湾曲254は、ガイドワイヤに沿って進むなど、送達のために直線的になるのに十分な柔性を有している一方で、操向可能な送達器具256を湾曲部254を回り込んで案内するのに十分な剛性を有する。操向可能な送達器具256は操向可能であり、トルクを伝達する。
【0054】
[0113]操向可能な送達器具の内側および外側管状部材の構造的性質は、加えられる力にそれがどう応答するかを決定づける。内側および/または外側管の構造的性質は、管の材料と管状部材に設けられるスロットのデザイン、すなわち特徴とに依存する(内側および外側管状部材の一方がそれ自体に全くスロットをもたないのでない限り)。したがって、スロットパターンのデザインは管状部材に必要とされる構造的性質に依存する。例えば、スロットまたはスロットパターンのデザインを変更することによって変えることができる管状部材の構造的性質には、曲げ剛性、トルク伝達、操向可能性、曲率半径、および操向可能アセンブリの許容壁厚が含まれる。
【0055】
[0114]
図15は平面展開図であり、管状部材の例示的な操向可能部位の一部位を示している。管状部位290は、本明細書に記載するような内側または外側管状部材であることができる。操向可能部位290は典型的にはレーザ切削加工を施した管状部材であるが、実際には、必要とされる適切な切削幅を作り出すことができるあらゆる技法(水ジェット、ワイヤEDM等)を用いて製作されるものであってよく、それによって第1の面294および第2の面296によって画定される第1の切欠き、すなわちスロット292が作成される。スロット292は管状部材290のほとんど全周にわたって延び、背骨部308を画定する。スロット282は、管状長手方向軸沿いに、管状部材290の構成を変える圧縮軸Cに沿った管状部材の圧縮を可能にする圧縮軸Cに沿って最も幅が広い。管状部材290は、第1のインターロック要素300と第2のインターロック要素302を含むインターロック機構298(うち1つにのみ符号を付す)も備える。スロット292は、第1および第2のインターロック要素300および302によって画定され、2つのインターロック要素300および302の間での軸方向の移動を可能にするスロット部304を含む。管状部位290は、背骨部308を横断して延びて背骨部308の応力除去をもたらす応力除去スロット306をさらに含む。応力除去スロット306は軸方向にスロット292とスロット292の中間にあると考えることができる。スロット292はスロット306と連絡していない。スロット306はスロット292よりもかなり細い。以下に詳しく記すように、管状部材290は、背骨部308から実質的に180度にある圧縮軸Cに沿って圧縮されるように適合される。
【0056】
[0115]
図16Aおよび16Bは、
図15に示す管状部材290の一部位を示している。
図16Bは、圧縮軸Cに沿って最も幅が広いスロット292を含む管状部材290を示している。スロット292は、インターロック要素300および303によって画定されるスロット部304を含む。スロット292とスロット304は、
図16Aに示す管状部材290の圧縮を可能にする。圧縮力Aが圧縮軸Cに沿って加わると、面294および296は互いに接近し、面300および302も同様に接近する。そのため、スロット292および304は、面294および296が互いに係合するか、または面300および302が互いに係合するかのいずれか早い方まで管状部材290の軸方向の圧縮を可能にする。スロット292および304は、それぞれのスロットが同時に閉じるようにデザインすることができる。いったん係合すると、両方の面は隙間のない管と実質的に同じように振る舞い、係合箇所に沿ってそれ以上圧縮されることはない。この構成では、第1および第2のインターロック要素は、両者の間の移動を少なくとも第1の軸(この実施形態では圧縮軸C)沿いに妨げるように適合される。したがって、管状部材290に対して圧縮力が加わることで、管状部材は
図16Aに示す構成になるように操向させられる。
【0057】
[0116]同様に、
図16Aに示す管状部材290に対して引張力が加わると、管状部材290は直線的に延びて
図16Bに示す構成になる。とりわけ、管状部材290は、インターロック機構が互いに係合してそれ以上の移動を阻止するところまで直線的に延びる。
図16Cは、
図16Aおよび16Bの管状部材を表したもので、
図16Bおよび16Cに示したものを含めて荷重がかかる地点を示している。ねじり力Tは、器具の近位端でトルクを加えたときに管状部材290に作用するねじり力を表す。引張力および圧縮力は、以下に記すように管状部材が示す挙動に応じて「a」または「b」としてリストに掲げられている。
【0058】
[0117]
図17は、
図15〜16Cに示す管状部材290の様々な箇所における荷重の付加または変位に伴う力と変位の関係を示したグラフである。管状部材290の長手方向軸を通る面に加えられた荷重に関する管状部材の力対変位の挙動は
図17の線AからBまでの範囲に見ることができる。曲線Aは、管状部材の長手方向軸と平行でスロット幅が最大の管状部材表面の柔性軸に沿った挙動を示しており、曲線Bはスロットが非常に狭いところでの挙動を示している。管状部材がスロット292を閉ざすように背骨部308に関して湾曲するとき、管状部材を湾曲させるために必要とされる力は小さく、力/変位曲線の勾配はなだらかである。この領域では管状部材は柔性である。スロットの幅が狭まってゼロになると、曲線Aのはるかに急な第2の勾配によって示されるように、構造の剛性は格段に高まる。スロットが閉じることに伴う変位量は基本的に、力/変位曲線の勾配が変わるD点によって示されている。曲線Aは、圧縮軸C沿いの点で加えられた力によって予想される挙動を示しており、管状部材290に対する最小限の圧縮力によって軸方向の大きな変位量がもたらされることを表している。スロットが閉じると、圧縮軸は剛性となる(曲線のD点における力の大幅な増大によって示される)。グラフの曲線Bは、背骨部308を通る軸に沿った圧縮を示す。応力除去スロット306があることによって若干量の圧縮変位が起きた後、背骨部308は剛性となり、グラフのE点で示されるように、隙間のない管と実質的に同じように動作するようになる。構造は、構造の頂部で圧縮軸Cに引張荷重が加わったときには、その荷重を受けて閉じる隙間は非常に狭いため、曲線Bの挙動を示す。曲線Bはまた、ねじり荷重に対する構造の挙動も示す。これは、その荷重による作用を最も受ける隙間が狭いためである。
【0059】
[0118]
図18は例示的な管状部材320の平面展開図を示している。そこに形成されたスロット330、すなわち切欠きは渦巻き(本明細書ではらせんともいう)パターンを有し、切れ目がない。管状部材320は切欠きが圧縮された構成で示されており、引張力が加えられたときに伸張軸EAに沿って最大限伸張されるように適合される。管状部材320は、面322および324ならびに面326および328を含むインターロック機構332を備える。スロット330は、面326および328によって、さらに面322および324によって画定されるスロットを含む。この実施形態では、面326および328によって画定されるスロット、すなわち隙間は、面322および324によって画定される隙間よりも幅広い。すなわち、伸張軸EAに近い方の隙間は伸張軸EAから遠い方の隙間よりも幅広い。管状部材334は、小さなスロット336による切れ目が入った背骨部334をさらに含む。
図16Cに示すように、管状部材320は、そこに軸方向負荷が加えられたとき、以下のような力/変位曲線を呈する。すなわち、圧縮力(下向き)がEAに加わると曲線Bを呈し、引張負荷(上向き)がEAに加わると曲線Aを呈する。ねじり負荷は曲線Bを呈する。
【0060】
[0119]
図19は平面展開図であり、管状部材の一部位を示している。管状部位270は、本明細書に記載するような内側または外側管状部材であることができる。操向可能部位270はレーザ切削加工を施した管状部材であり、そこには背骨部276を画定するように第1の切欠き、すなわちスロット274が作成される。切欠き274は管状部材270のほとんど全周にわたって延びる。切欠き274は、第1のインターロック要素280および第2のインターロック要素282からなるインターロック機構278(うち1つにのみ符号を付す)も画定する。切欠き274は、インターロック機構を作り出し、2つのインターロック要素の間の移動を可能にする切欠き284を含む。管状部位270は、背骨部276を横断して延びて背骨部276の応力除去をもたらす応力除去スロット272をさらに含む。応力除去スロット272は軸方向にスロット274とスロット274の中間にあると考えることができる。スロット274はスロット272と連絡していない。管状部材270は伸張軸EAに沿って伸張するように適合され、そこに加えられる圧縮力に対する圧縮が最小限となるように適合される。背骨部276は実質的に静的である。管状部材270に伸張軸EAに沿って引張力が加わると、管状部材270は偏向して、直線的な構成から湾曲した構成へと変わる。
【0061】
[0120]
図20は
図18に示したものと類似した実施形態を示したものであり、両者の間の構造の違いについてのみ説明する。それ以外の特徴はすべて同一であると考えてよい。管状部材350は、インターロック要素354および356を含むインターロック機構を備える。管状部材350に設けられたスロット360は、インターロック要素354および356の面によって画定される隙間を含む。
【0062】
[0121]
図21は、背骨部382を画定する断続的な切欠き390を含む例示的な管状部材380の一部位を平面展開図で示している。管状部材380は、インターロック要素386および388を含むインターロック機構384を備える。インターロック機構384は、引張力が加えられたときに伸張軸EA沿いの伸張を可能にする。管状部材380は、特に別段の記載がある場合を除き、本明細書に記載するすべての管状部材と同様、操向可能部位に内側または外側管状部材として組み込むことができる。
【0063】
[0122]
図22は例示的な管状部材400の一部位を平面展開図で示している。断続的スロット404がらせん形の背骨部402を画定する。管状部材400は静軸をもたない。
[0123]
図23は例示的な管状部材410の一部位を平面展開図で示している。管状部材410は、背骨部412および414を画定する断続的ならせん形スロット418を備える。管状部材410は、器具の周りに互いに180度をなす2つの背骨部を有する。らせん形の切欠きパターンはそれ自体180度ごとに反復して、実質的に直線的な背骨部を画定する。管状部材410もまた、ねじり剛性を与える複数のインターロック機構420を備える。最大の伸張/圧縮は軸416で得られる。
【0064】
[0124]
図24は例示的な管状部材430の一部位を平面展開図で示したもので、
図23の実施形態と似ているが、切欠きパターンは180度ごとに繰り返されるのではなく、360度ごとに繰り返されている。スロット434は断続的ならせん形のデザインで、管状部材430は単一の背骨部432を有する。機構436は追加的なねじり剛性を与える。管状部材430は、軸438に沿って最大の伸張/圧縮を示す。
【0065】
[0125]
図25は例示的な管状部材440の一部位を平面展開図で示している。管状部位440は、190度ごとに繰り返して背骨部442および446を画定するスロット448を含む。スロットは断続的ならせん形をなし、比較的自然なパターンを作り出す。
【0066】
[0126]
図26は例示的な管状部材450の一部位を平面展開図で示している。管状部材450には、360度ごとに繰り返される切れ目のないスロット456が形成されている。管状部材450は、本明細書に記載するような少なくとも2つのインターロック要素からなるインターロック機構454も備える。この実施形態では、インターロック要素は相補的形状の曲面を有し、回転を支えるように適合されている。スロット456は背骨部452を画定し、一方でスロット456は軸Aに沿った圧縮および/または伸張を可能にする。
【0067】
[0127]
図27は、操向可能部位520を含む例示的な操向可能な送達器具を示している。操向可能な送達器具は、外側管状部材522、内側管状部材524および浮動式内側部材534を含む。内側管状部材524は外側管状部材522に同軸状に内設され、浮動式内側部材534は内側管状部材524に同軸状に内設される。浮動式内側部材534は操向可能部位520の近位位置で内側管状部材524に対して軸方向に固定される。
図27に示す器具は、外側管状部材と内側管状部材の間に配設されたライナ部材をさらに含むことができる。
【0068】
[0128]
図28は例示的な操向可能な送達システム600を示している。システム600は、操向可能な送達器具の操向可能部位610を操向するように適合された制御器具602を含む。操向可能な送達器具は、外側管状部材606と、外側管状部材606に内設された内側管状部材608とを含む。制御器具602は、アクチュエータ604の移動が可能となるように適合されたスロットを有するハウジング612を備える。アクチュエータ604は内側管状部材608と連結され、遠位Dまたは近位Pにそれぞれ軸方向に移動して内側管状部材608の軸方向移動を制御するように適合される。機械的利点を採り入れたアクチュエータを含め、それ以外のあらゆる適当なタイプのアクチュエータを使用することもできる。アクチュエータ604の操作により、内側管状部材608が外側管状部材に対して軸方向に移動し、それによって操向可能部位610が湾曲する。したがって、制御器具は、対象の内部で操向可能部位610を操向するように適合されている。システム600は浮動式ライナ部材616および止血弁614をさらに備える。
【0069】
[0129]本開示の1つの態様は、特定の構成に保持または錠止されることで医療器具または器械を通すためのアクセスを提供するように適合された案内器具であって、操向が可能であってもなくてもよい案内器具である。
図2A〜2Cでは、操向可能部位32は
図2Aおよび2Bに示された構成の間でどのような構成をとることもできるように操向または偏向されるように適合されている。操向可能部位は、身体内の内腔の湾曲部または屈曲部の通り抜けなどのために操向させられるように適合される。この具体的な実施形態では、操向可能部位を操向させるために内側および/または外側管状部材に対して圧縮力および/または引張力が加えられる。幾つかの実施形態では、いったん操向可能部位32が操向されて曲折構成になると、そこに加えられた力(圧縮力、引張力、ねじり力など)は解除することが可能であり、その状態でなお医療器具または器械を管状部材に通すことができる。しかし、幾つかの実施形態では、操向可能部位の湾曲構成はそこに加えられた力を維持することで保持することができる。例えば、
図2A〜2Cでは、圧縮力および/または引張力の付加を維持することによって、操向可能部位32は図示した湾曲構成に保持または錠止されることができる。操向可能部位に対する力の付加を維持するか、または内側管および外側管の相対的変位を錠止することにより、内側管および外側管は操向可能部位の長さに沿って互いに実質的に軸方向に固定される。
【0070】
[0130]例示的な使用方法では、対象の生体構造の部位を綿密になぞった、またはそれに似せた構成が錠止状態で得られるように、複数の湾曲部位が組み込まれ、適合されることができる。湾曲部位は対象を通して(ガイドワイヤをたどるなどによって)所期の位置まで進められ、そこで、圧縮力および/または引張力を加えることなどによって操作されて曲折構成にされることができる。曲折構成は、器具が配置される解剖学的内腔の経路に似せて適合されることができる。操作力を加えることによって湾曲部位を所望の曲折構成に保つ、すなわち剛体化させる。その上で、医療器具または器械を曲折部位を通して対象内の目標位置まで進めることができる。
【0071】
[0131]
図14に示した器具は別法としてこのように操縦できるように構成することができる。
図14の操向可能な送達器具256は、例えば、第1の湾曲または曲折区域254と第2の湾曲または曲折区域258とを備えるように操作することができる。曲折部、すなわち湾曲部は、全体がS字形をなす器具の部位を形成する。送達器具256は全体にS字形に保持または錠止されて、その中を通す形で医療器具または器械を案内することができる。送達器具256のS字形は、それが配置される生体構造の部位に類似していれば使用することができるが、生体構造的な要求によってはそれ以外のタイプの好ましい構成を使用することがあってよい。
図14に代わるものとして、送達器具は、本明細書に記載するように、内側および外側管状部材に圧縮力および/または引張力を加えることによって図示する構成に操作されるものであることができる。
【0072】
[0132]
図29〜34は操向可能な送達器具の代替的な実施形態を示している。
図29〜34は、トルク伝達性および湾曲保持性が強化され、一方向に湾曲することができる操向可能な送達シース900を示す。
図34は、シース900の最遠位部の拡大図である。シース900は内側管状部材930と外側管状部材920をそれぞれ含む。シース900の横断面は
図30〜33に示す。横断面の位置は
図29に示すように断面A−A、B−B、C−C、D−Dとして示されている。
図33に横断面D−Dで示されている近位部913のシース900の構造はシース810の近位部に類似している。表3は、
図29〜34に示すシースの例示的な実施形態の構成要素の性質を記したものである。シース810の場合と同様に、内側および外側管状部材930および920の最遠位部は、
図30の断面A−Aに示すように合体される。断面A−Aでは、両者は恒久的に軸方向に固定されている。内側管状部材930には3つの個別の構成要素として、内層931、編み層932および外層933が含まれる。この実施形態では、内層931は潤滑ライナであり、層932は編み材で、PEBAXの外層933に埋め込まれている。外側管状部材920には内層921、中間層922および外層923が含まれる。この実施形態では、内層921は潤滑ライナであり、中間層922は編み材で、外側のPEXAX層923に埋め込まれている。
【0073】
[0133]しかし、シース810とは対照的に、内側シース930は、シースの遠位端がその面内で湾曲する平面に収まる軸に沿って剛性 − ただし、引張剛性のみ − を与える追加的な剛性要素945を内蔵する。剛性要素945の近位端は、
図33に示すように、内側管状部材930の近位部913の遠位部にある位置で内側管状部材930の外側ポリマー層933に埋め込まれる。剛性要素945は、近位部913の残りの部位にわたって、さらにシース900の遠位湾曲可能部位914内において、
図30のA−A断面に示す外側ポリマー層923に剛性要素945の遠位部が埋め込まれている遠位部914遠位端の地点に至るまで、内側管状部材930と外側管状部材920の間の環状空間943内を自由浮動する。剛性要素945は、シース900の遠位端がその面上で湾曲する平面内に位置し、かつその湾曲の半径内に位置する。幾つかの実施形態では、剛性要素945はKevlar多重より線である。幾つかの実施形態では、剛性要素の近位端は、内側管状部材の近位端よりも器具の操向可能部位に近い位置で内側管状部材の外側層に固定される。
【0074】
[0134]遠位部914はシース900の操向可能部位であり、以下のようにして製作される。遠位部914の近位区域(断面C−C)では、層922の編みひもは切抜きを伴った管状構造によって置き換えられ、金属の管状構造であることができる。切抜きは、長手方向軸を通して延びる様々な平面での外側管状部材の曲げ剛性の制御された変化を可能にする。切抜きパターンは、ねじり剛性を高める機能を追加的に組み込むことを可能にする。
【0075】
[0135]この実施形態では、要素925はパターンが切削された管922および927の背骨部の一部であり、器具のすべての層を貫く開口である。
【0077】
[0136]
図35は切抜きを伴うこうした管の性能を示したものであり、ここでは曲線951は切欠き付きの管の長手方向軸に平行な管外周の軸に沿った圧縮剛性を表している。剛性は極座標で示されており、rは剛性を表し、θは測定軸に向かう長手方向軸の周りの角度を表している。曲げ剛性の変化の制御とねじり剛性を高める機能とをそれぞれ採り入れた切抜きパターンの一実施形態を平面パターンで
図36に示す。
【0078】
[0137]操向可能シース900の操向可能部位914の湾曲は、内側管状部材と外側管状部材とを長手方向軸に沿って互いに平行移動することによってもたらされる。幾つかの実施形態では、これは、内側管状部材930を平行移動させるように適合された内部メカニズムが組み込まれたハンドルまたは外部コントローラに外側シース920を固定することによって実現される。内側管状部材930を外側920に対して遠位に平行移動させると、外側シース920に対して圧縮力が加わる。この圧縮力により、シース900の遠位部914がその最も柔性の高い軸の方向(
図34、35および36に929で示す)に湾曲する。図示する通り、剛性要素945は軸929に隣接しており、その軸上で内側シース930に追加的な引張剛性を与える一方、反対側の軸928の伸長を可能にする。
図34のシースはさらに、その遠位端にX線不透過性マーカ927を内蔵している。926は層922の切抜きであり、
図31に示すようにそこにポリマーを通すことができる。矩形の切抜きを有するセクションは完全にポリマーの中に埋め込まれ、それによって
図34の遠位端ですべてがともに固定される材料により、器具をバルーン送達のために使用する場合にシースを通して送達した後にバルーンを膨らませてから遠位端に引き戻すときに起こりうるようにシースの遠位端が閉塞されるときにはシース内からシース外部への流体の送達が可能になる。
【0079】
[0138]
図29〜34に示す実施形態では、内側および外側管状部材を互いに対して回転させることができ、それによってシースの湾曲した遠位端を
図37に示すように全体が円弧を描くように回転させることができる。これにより、遠位端だけに非常に細かくトルクを与えることで遠位先端の制御を向上させることができる。この種の制御は、急なしなり(whipping)を一段と最小限に抑えることができる。
【0080】
[0139]
図38は、本明細書に記載するように制御することができる例示的な操向可能な器具を示している。器具には、その近位端のハンドルに内蔵された例示的な外部操作可能な構成要素が含まれる。ハンドルには、その遠位端にある第1のアクチュエータであって、本明細書に記載するように先端を偏向または操向させるために操作(回転など)できるように適合されたアクチュエータが含まれる。ハンドルにはさらに、その近位端にある第2のアクチュエータであって、
図37に示すようにトルク調節を微調整するために操作(回転など)できるように適合されたアクチュエータが含まれる。
【0081】
[0140]
図39〜41は、ハンドルの形をした例示的な外部コントローラであって、本明細書に記載する操向可能な器具を送り込んで操作するように適合されたコントローラを示している。外部コントローラは、本明細書には特に記載されていない他の操向可能な器具を制御するように適合されており、または適合されることができる。
図39および40は、上に記載したもののような操向可能シース1100と、操向可能シース1100を操作するためのハンドル部位1200とを含む例示的な操向可能シースシステム1000の近位部を示している。ハンドル部位1200は、シースたわみ調整ノブ1210、グリップ1220、ガイドワイヤ孔1230、中心ルーメン1150に至るルーメンパージ孔1240を含む。操向可能シースの撓曲、すなわち操向は操作ノブ1210をハンドルグリップ1220に対してひねることによって容易に行うことができる。シースの撓曲量は調整ノブ1210の回転量に関係する。幾つかの実施形態では、操作ノブ1210の回転度合とシースの操向可能セクションの撓曲角度の間には比較的直線的な対応関係ができる。そうした実施形態では、操向可能シースの最初の撓曲にかかわらず、操作ノブ1210の漸増的回転の一単位は、シースの操向可能部位の漸増的撓曲の対応する一定の単位に対して実質的に等しくなるか、または「マッピング」される。代替的な実施形態では、直線的でない対応関係があってよい。例えば、例示的な構成では、操作ノブ1210は、操向可能セクションが最小の撓曲にあるときは、許容撓曲の約50%にあるときの2倍の撓曲を与えることができる。
【0082】
[0141]本明細書ではその他のマッピングについても検討するが、詳しくは記載しない。
図40は、
図39のハンドル部位1200の正中面における横断面図を示している。近位端には、ガイドワイヤシール1250の近位に位置し、中心ルーメン1150へと導くガイドワイヤ用開口部1230がある。
【0083】
[0142]制御メカニズム1330を含む追加的な機能も示されている。操作ノブ1210は駆動ナット1330の上に設置され、駆動ナット特徴部1380によって駆動ナットに対して回転を拘束される。操作ノブ1210およびそれに続いて駆動ナット1330は、駆動ねじ1310の周りに同軸状に配置される。外側シース接続管1340は駆動ナット1330内に同軸状に設置される。
【0084】
[0143]外側シャフト1110は1140で外側シース接続管に係留される。係留は、接着剤、超音波溶接、熱かしめまたはその他の適当な手段によって行うことができる。内側シャフト1120は、外側シースについて記したいずれかのメカニズムを介して1130で内側シース接続管1370に係留される。
【0085】
[0144]ハンドルのハウジング1220特徴部1320は、回転および軸方向変位のそれぞれに関してそれを拘束する外側シース接続管1340の近位端を貫いて延びる。ピン1320はさらに、
図41に示した駆動ねじ1310の駆動ねじ安定化スロット特徴部1350に掛合する。
図41は、ハウジングの特徴部を取り外した制御メカニズム1300の一部位を図示している。操作ノブ1210を回すと、特徴部1380および操作ノブ内の対応する特徴部(図示せず)を介してそれと一緒に回転するように駆動ナット1330が拘束されている。駆動ねじ1310は、スロット1350に掛合する駆動ねじ安定化ピン1320によって回転しないように拘束されているため、駆動ナット1330の回転は駆動ねじ1310の直線運動に変わる。駆動ねじ山1360は一定ピッチまたは可変ピッチからなることができる。内側シャフトは内側シース接続管に係留され、その内側シース接続管の方はねじ1310に対して軸方向の運動を拘束されているため、これは外側シースに対する内側シースの軸方向運動へと変わり、結果として器具の操向可能部位の撓曲、すなわち操向を得る。
【0086】
[0145]本開示の例示的な態様には、生体または遺体内におけるシステム構成機器の相対位置の特定に関連して、St.Jude NavX Navigation & Visualization Technologyなどのナビゲーションシステムや、その他のインピーダンスに基づく方法で使用されるときに操向可能シースの部位の視覚化を容易にする実施形態が含まれる。
【0087】
[0146]上に記載した実施形態のように、操向可能な器具が1つまたは複数の管状部材を含む場合は、1つまたは複数の管状部材の遠位セクションは、操向可能な器具の頂部を真直にするために操作されたときに圧縮され、すなわち短縮されることがある。例えば、外側管状部材に内設された内側管状部材を含む上述の実施形態では、内側管状部材の遠位セクションは、操向可能部位を湾曲構成からより真直な構成へと直線状に伸ばすために外側管状部材に押し込まれると、ときとして圧縮され、すなわち短縮される場合がある。そうした実施形態のうちの幾つかでは、内側管状部材の近位セクションのデュロメータ値(例えば72D)は操向可能部位(例えば35D)よりも高い。デュロメータ値が低めであるために操向可能部位は湾曲することができる。短縮は、仮にそれが起こる場合、操向可能な器具を偏向させるために必要な内側管状部材の変位の利用としては非効率的な方法である。
【0088】
[0147]
図42A〜42Gは、短縮を減らした、またはなくした例示的な実施形態を示している。この実施形態では、操向可能部位の曲折の内側に位置する内側管状部材の領域および遠位先端部は、操向可能部位の内側管状部材および遠位先端部のそれ以外よりも高いデュロメータ値を有する。
図42B〜42Dは、
図42Aに示す断面A−A、B−BおよびC−Cによる横断面を示している。器具1650は内側管状部材1652、外側管状部材1654および張力要素1660を含む。外側管状部材1654は外側管状部材の長さに沿って同じデュロメータ値を有する。断面C−Cでは、内側管状部材は、第1のデュロメータ値を有する第1の部位1658を含む。断面B−BおよびA−Aでは、内側管状部材は、第1のデュロメータ値を有する第1の部位1658と、第1のデュロメータ値よりも低い第2のデュロメータ値を有する第2の部位1656とを含む。第1の部位1658は横断面における内側管状部材の約4分の1を占める。第1の部位1658は、管状部材の近位セクションから器具の先端部に張力を移すために利用される張力部材1660に対して径方向にその内側にある。曲折の内側にある部位はデュロメータ値が高めであるため、操作を受けた内側管状部材が短縮されることが妨げられる。
図42Gは
図42Eに示された遠位セクションのG−G断面を示している。第1の部位1658は曲折の内側、径方向に張力要素1660よりも内側にあることがわかる。具体的な一実施形態では、第1の部位1658は72DのPEBAXであり、第2の部位1656は35DのPEBAXである。これらの数字は例示的なものであり、限定的であることを意図するものではない。
【0089】
[0148]
図43A〜43Dは、器具1700が内側管状部材1702と外側管状部材1704を含む代替的な実施形態を示している。内側管状部材1702は、第1のデュロメータ値を有する第1のセクション1708と、第1のデュロメータ値よりも低い第2のデュロメータ値を有する第2のセクション1706とを含む。この実施形態では、内側管状部材の操向可能部位(断面B−B)および遠位先端部(断面A−A)は2つの高めのデュロメータ値のセクション1708を含む。この実施形態では、高めのデュロメータ値のセクション1708のいずれも径方向に張力部材1710の内側にはなく、そのため、かかるいずれのセクション1708も曲折の内側にない。2つの高めのデュロメータ値のセクション1708は内側管状部材の周囲に沿って互いに実質的に対向しており、それぞれは張力要素1710から約90度離れている。
【0090】
[0149]
図44〜46に記載の例示的な操向可能な器具は上の
図42A〜Gに示したものと類似している。とりわけ、
図44〜46の操向可能な器具の内側管状部材は上の
図42A〜Gを参照しながら説明した内側管状部材1652と類似している。
【0092】
[0151]内側管状部材4100は操向可能な遠位セクション4114と近位セクション4102を含む。近位セクション4102は、第1のデュロメータ値を有する近位管状要素4116を含む。図示した実施形態では、近位管状要素4116は72Dのデュロメータ値を有し、かつPebax/vestamid材料である。操向可能な遠位セクション4114は管状要素4104および背骨部4106を含む。背骨部4106は本明細書の
図42A〜Gの第1の部位1658と類似している。管状要素4104は近位管状要素4116よりも低いデュロメータ値を有する。この実施形態では、管状要素4104は35Dのデュロメータ値を有し、かつPebaxである。背骨部4106は、器具の全周にわたって延びる任意選択の近位および遠位のカフ部位と、2つのカフ部位の間に延びるが、器具の全周にわたって延びるわけではない背骨部分とを含む。背骨部分では、背骨部4106は内側管状部材4100の約4分の1を占め、管状要素4104は内側管状部材4100の約4分の3を占める。内側管状部材4100は、カフ部位の遠位端4110および近位セクション4102の遠位端4112に固定された張力部材4108をさらに含む。張力部材4108は、それが固定されている2つの点の間では自由浮動する。張力部材4108は背骨部4106の背骨部分に直接隣接し、それに対して整列する(
図44Cに見ることができる通り)。この実施形態では、張力部材4108はKevlar線である。背骨部4106は管状要素4104よりも高いデュロメータ値を有し、この実施形態では72DのPebaxである。
【0093】
[0152]上で詳しく説明した通り、近位管状要素4116と比べて低めの管状要素4104のデュロメータ値は操向可能な遠位セクションの湾曲を可能にする。しかし、背骨部4106は、操作されたときに遠位セクションで圧縮時の短縮や引張時の伸長が起きても、その高めのデュロメータ値によってそれらを抑える。例えば、内側管状部材の遠位セクションは、操向可能部位を湾曲構成からより真直な構成へと直線状に伸ばすために外側管状部材に押し込まれると、ときとして圧縮され、すなわち短縮される場合がある。提示するデュロメータ値は限定的なものであることを意図したものではなく、例示にすぎない。
【0094】
[0153]
図45A〜45Cは、送達器具の一部である例示的な外側管状4200であって、内側管状部材4100を取り囲むようにその外に配設された外側管状を示している。
図45Aは上面図である。
図45Bは
図45Aにおける図から90度回転させた図であり、
図45Cは
図45Aにおける図から180度(
図45Bにおける図からは90度)回転させた図である。
【0095】
[0154]外側管状部材4200は、近位セクション4202と、操向可能な、すなわち連接式の遠位セクション4214とを含む。近位セクション4202は、第1のデュロメータ値を有する近位管状要素4204を含む。この実施形態では、近位管状要素4204は72DのPebax/Vestamid材料である。連接式遠位セクション4214は、構造的には
図44A〜44Cの背骨部と同じ背骨部4206を含む。背骨部4206は、遠位および近位カフと、任意選択の2つのカフ部位の間に延びる背骨部分とを含む。この実施形態では背骨部4206は72DのPebaxである。連接セクション4214は第1のセクション4208、第2のセクション4210および第3のセクション4212をさらに含み、そのそれぞれが異なるデュロメータ値を有する。この実施形態では、デュロメータ値は器具の遠位端に向かって低下していく。この実施形態では、第1のセクション4208は55DのPebaxであり、第2のセクション4210は40DのPebaxであり、第3のセクション4212は35DのPebaxである。デュロメータ値の異なる材料による外側管状部材のこの複数(この実施形態では3つ)のセクションは、操向可能部位を操向させたときに曲率半径が操向可能部位の長さに沿って変化するように構成される。この実施形態では、操向可能部位の曲率半径は操向可能部位の長さに沿って小さくなり、遠位領域の方がそれより近位のセクションよりも小さくなる。操向可能部位の曲率は近位領域よりも遠位領域の方がきつくなる。この実施形態では、操向可能部位の構成は渦巻きとして考えることができる。対照的に、単一のデュロメータ値の材料が操向可能部位(背骨部を除く)の長さに延びる実施形態では、操向可能部位の曲率半径は操向可能部位の長さに沿って実質的に同一である(すなわち、操向可能部位の長さ沿いの位置によらない)。単一のデュロメータ値の設計では、外部からの連続的な操作に対して曲率半径が減少することはなく、曲率半径は操向可能部位の長さに沿って実質的に同じであり続ける。そのため、湾曲はきつくなっても、操向可能部位に沿ったその曲率半径は実質的に一定である。そのため、操向可能部位の材料および材料の構成は、器具にどのような用途を望むかに応じて選択することができる。例えば、体内のどの目標位置が意図されているかを含め、器具の目的用途に応じて、所望の湾曲、すなわち操向の程度は変わることが考えられる。
【0096】
[0155]近位管状要素4204は4208、4210および4212の3つのどのセクションよりも高いデュロメータ値を有する。連接式遠位セクション4214は遠位先端部4216をさらに含む。この実施形態では、遠位先端部4216はデュロメータ値が最小の材料であり、この実施形態では20DのPebaxである。
【0097】
[0156]外側背骨部と複数のデュロメータ値の操向可能セクションを有するこれらの実施形態は双方向用途で利点をもたらす。例えば、複数のデュロメータ値の構成では、湾曲させるための力は少なくてすみ、要素に引張力をかけて使用する場合の短縮も、反対に伸長も少ない。この利点は単方向の操向についても当てはまる。
【0098】
[0157]
図46A〜46Cに示すアセンブリについてさらに詳しく記載するように、内側管状部材と外側管状部材のそれぞれの背骨部は互いに4180度ずらされている。そのため、張力部材4108も外側背骨部から180度ずらされている。
【0099】
[0158]
図46A〜46Eは、それぞれ
図44および45で示した内側および外側管状部材4100および4200を含むアセンブリ4300を示している。
図46Aおよび46Eから見て取れるように、張力部材4108は外側背骨部4206から180度ずらされている。内側背骨部と外側背骨部も180度ずらされている。
【0100】
[0159]アセンブリ4300は、参照によって本明細書に組み込まれる出願に記載されているようにして使用することができる。例えば、内側および外側管状部材を互いに軸方向に移動させることによって遠位の操向可能セクションを操向させることができる。一方の管状部材の背骨部に引張力がかかると、他方の背骨部には圧縮力がかかる。二重背骨部の実施形態では、圧縮力がかかる一方の管状部材の短縮が減り、引張力がかかる他方の管状部材の伸長が減る。
【0101】
[0160]幾つかの実施形態では、内側または外側管状部材の形成は、マンドレルに異なる材料を位置決めし、それら材料の周りにシュリンクラップを巻き、温度を上げることで材料が融解して一体となるようにして、内側または外側管状部材を形成させることによって行う。任意選択である上述のカフは、製造工程における1つまたは複数の構成要素の固定に役立てることができる。
【0102】
[0161]1つまたは複数のスロットまたは背骨部を含む上述の内側および外側管状部材はいずれも、エラストマーまたはポリマー材料によって製作することができる。例えば、
図2、3または4に示すスロットおよび背骨部付きの管状部材はPebaxまたはその他のポリマー材料によって製作することができる。
【0103】
[0162]
図47〜49の実施形態は、本明細書に記載の内側および外側シャフトの代替的な設計を記すものである。
図47〜49に記す内側および外側管状部材のアセンブリは、上述のものと同じか、または類似の方法で操作し、したがって操向させることができる。例えば、
図47〜49の例における管状部材は操向可能部位の遠位で互いに軸方向に固定されており、操向可能部位は、内側または外側管状部材を外部器具の操作によって相手の管状部材に対して操作することによって操向させることができる。外部器具(ハンドルなど)の操作によって管状部材は操向可能部位の近位で互いに相手に対して軸方向に移動し、それによって操向可能部位におけるそれらの軸方向の相対的移動が起こり、それによって操向可能部位の操向がもたらされる。管状部材間の相対的移動の量は軸方向の固定箇所からの距離が小さくなるにつれて減少する。軸方向の固定により、一方の管状部材に引張力がかかると、他方には圧縮力がかかる。例えば、外部コントロールの操作によって内側シャフトが外側シャフトに対して近位に移動する(かつ、外側シャフトの近位端は近位に移動しない)と、内側シャフトには引張力がかかる。それぞれのシャフトは軸方向に固定されており、外側シャフトは近位に移動しないため、外側シャフトは圧縮を受ける。代替的な実施形態では、上に開示した内側および外側管状部材の詳細を、本開示で具体的に別段の指示を行うものを除き、
図47〜49の実施形態で記載する管状部材に組み込むことができる。
【0104】
[0163]
図47A〜47Iは、本明細書で内側シャフト(または部材)サブアセンブリと呼ぶ場合もある例示的な内側管状部材の詳細を示している。
図48A〜48Eは、本明細書で外側シャフト(または部材)サブアセンブリと呼ぶ場合もある例示的な外側管状部材の詳細を示している。
図49A〜49Dは、
図47A〜47Iおよび
図48A〜48Eのそれぞれ内側および外側管状部材を備える操向可能な器具アセンブリの詳細を示している。さらに、
図49A〜49Dのアセンブリは、内側および外側管状部材を組み立てた後に付け加えることができる遠位端の軟質先端部を示している。
【0105】
[0164]
図47Aおよび47Bは例示的な内側管状部材の操向可能部位の側面図を示したもので、追加的詳細を検証できるように一部を選択的に切り取ってある。
図47Bは、
図47Aの側面図と比べて管状部材の周りに90度回転させた側面図である。「遠位」は図では左側、「近位」は図では右側に当たる。内側管状部材の操向可能部位は、管状部材の長手方向軸に対して平行でも垂直でもない継ぎ目であって、斜めの継ぎ目であることができる継ぎ目でそれぞれが少なくとも隣接する1つのセクションと連結されている3つの材料セクションを含む。
図47Aおよび47Bに示すように、操向可能部位は、近位から遠位に向かって(
図47Aおよび47Bの右から左)3つの異なるセクションを含んでおり、それぞれのセクションのデュロメータ値は近位から遠位に向かうにつれて低下する。例えば、
図47Aに示すように、操向可能部位はセクション473(72DのPebaxなど)、中間セクション472(55DのPebaxなど)および近位セクション471(35DのPebaxなど)を含む。これらのデュロメータ値はあくまでも例であり、それ以外のデュロメータ値を用いてよい。幾つかの実施形態ではデュロメータ値は近位から遠位に向かうにつれて低くなり、別の実施形態では中央のデュロメータ値が最大であることもできる。セクション473とセクション472の間の接合部、すなわち継ぎ目は、内側シャフトの長手方向軸に対して平行でも垂直でもなく、幾つかの実施形態では斜めの継ぎ目である。セクション473とセクション472の間の接合部、すなわち継ぎ目は、内側シャフトの長手方向軸に対して平行でも垂直でもなく、幾つかの実施形態では斜めの継ぎ目である。しかし、接合部は、隣接するセクション同士の間で直線をなさないものであってもよく、その場合にも長手方向軸に対して非平行かつ非垂直であると見なされる。この実施形態では、接合部は実質的に接合部全体にわたって長手方向軸に対して非平行かつ非垂直である。ここでいう「実質的に接合部全体」には、長手方向軸に対して垂直な終端を有する接合部が含まれる。この文脈における「実質的に」とは、接合部の大半は、少なくともその長さの80パーセントといったところでは、長手方向軸に対して非平行かつ非垂直であるような接合部のことをいう。
【0106】
[0165]この実施形態では、内側シャフトの3つのセクションの変化するデュロメータ値は、
図45A〜45Cに関連して上に記載したものと類似した機能を有する。デュロメータ値の異なる材料による内側管状部材の複数(この実施形態では3つ)のセクションは、操向可能部位を操向させたときに曲率半径が操向可能部位の長さに沿って変化するように構成される。この実施形態では、操向可能部位の曲率半径は操向可能部位の長さに沿って減少し、遠位領域の方がそれより近位のセクションよりも小さくなる。操向可能部位の曲率は近位領域よりも遠位領域の方がきつくなる。この実施形態では、操向可能部位の構成は渦巻きとして考えることができる。対照的に、単一のデュロメータ値の材料が操向可能部位(背骨部を除く)の長さに延びる実施形態では、操向可能部位の曲率半径は操向可能部位の長さに沿って実質的に同一である(すなわち、操向可能部位の長さに沿った位置によらない)。単一のデュロメータ値の設計では、外部からの連続的な操作に対して曲率半径が減少することはなく、曲率半径は操向可能部位の長さに沿って実質的に同じであり続ける。そのため、操向されることによって湾曲はきつくなっても、操向可能部位に沿ったその曲率半径は実質的に一定である。そのため、操向可能部位の材料および材料の構成は、器具にどのような用途を望むかに応じて選択することができる。例えば、体内のどの目標位置が意図されているかを含め、器具の目的用途に応じて、所望の湾曲、すなわち操向の程度は変わることが考えられる。
【0107】
[0166]上の
図42A〜42Gの実施形態では、操向可能部位の内側シャフト全体にわたって(シャフトの長手方向軸に垂直な)横断面の平均デュロメータ値は一定のままである。湾曲の際の操向可能部位における湾曲の曲がりを遠位方向にきつくできるようにするための試みとして、操向可能部位の少なくとも1つのシャフトは、操向可能部位にわたる横断面の平均デュロメータ値がその長さに沿って変化する(すなわち、その長さに沿って一定でない)ようにできる。変化する平均デュロメータ値は増加的に(すなわち段階的に)変化することも(例えば
図45)、連続的に変化することもできる(例えば
図47のように非平行かつ非垂直な継ぎ目を介して)。横断面の平均デュロメータ値の変化を制御するためにどのような継ぎ目の構成でも選ぶことができる。
【0108】
[0167]他の実施形態では、外側シャフトはその長さに沿って一定でない(すなわち変化する)横断面の平均デュロメータ値を有する。幾つかの実施形態では、いずれのシャフトもそれぞれの長さに沿って変化する横断面の平均デュロメータ値を有する。
【0109】
[0168]いずれの実施形態に関しても、別法として、いずれかのシャフトで、操向可能部位にデュロメータ値の異なる3つ超または未満のセクションがあってよい。
[0169]この実施形態では、内側シャフトの湾曲面は
図47Bではページ面である。この実施形態(および本明細書のそれ以外のもの)における湾曲面は背骨部、長手方向軸および選択的湾曲軸を含む平面である。背骨部は
図47Bのシャフトの頂部を通って延びる(ただし、幾つかの実施形態では背骨部自体は必ずしも直線的な「軸」である必要はない。例えば、背骨部は、「軸」であるシャフトの長手方向軸と平行をなす正中線を有することができる)。選択的湾曲軸はページ面内にあり、
図47Bのシャフトの底部を通って延びる。圧縮力がかかると、シャフトは湾曲面内をページ下方に湾曲する。湾曲したとき、背骨部、長手方向軸および選択的湾曲軸は湾曲面内にとどまる。セクション473とセクション472の間の継ぎ目に関しては、セクション473の最遠位位置は湾曲面内の背骨部にある。セクション472の最近位位置は選択的湾曲軸沿いにある。したがって、デュロメータ値が高めの材料の最遠位位置は背骨部沿いにあり、デュロメータ値が比較的低めの材料の最近位位置は選択的湾曲軸沿いにある。上述の通り、長手方向軸に対して垂直な横断面のシャフトの平均デュロメータ値はセクション472の最近位位置からセクション473の最遠位位置まで連続的に変化する。
【0110】
[0170]この実施形態では、セクション473とセクション472の間の継ぎ目の最遠位位置は背骨部沿いにあり、継ぎ目の最近位位置は選択的湾曲軸上にある。
[0171]内側部材は操向可能部位の近位にある近位部474を含む。近位部474は操向可能部位よりも全体に剛性が高い。幾つかの実施形態では、近位部474は、ナイロンまたはベスタミドのようなポリアミドである。
図47Eは近位部474の(
図47Aの)F−F横断面を示している。
【0111】
[0172]
図47Cは
図47Aの操向可能部位におけるG−G横断面を示している。最内部層は、PTFEなどの潤滑ライナであることができるライナ476である。断面G−Gは、内側部材に埋め込まれた支持部材475(この実施形態ではらせん形コイル)の一部も示している。支持部材475はステンレス鋼製ワイヤであることができ、断面G−Gでは、この実施形態においては35DのPebaxを含んだ遠位部471に埋め込まれている。遠位部471にはさらに、例えばKevlar線であることができる補強部材477も埋め込まれている。補強部材471およびコイル475の長さは
図47Bに示す。
【0112】
[0173]
図47G〜47Iは、遠位部471、中間セクション472および近位セクション473をそれぞれの組立て前の側面図で示している。
[0174]
図47Fは
図47Aの器具の遠位端のJ−J断面を示している。コイル475の両端は、ベスタミドなどの薄いポリアミドに埋め込まれており、両端の遠位に対しては
図47Eでは478の符号が与えられている。補強部材477も見ることができ、その遠位端は器具の遠位端の近位にある。内側ライナ476は器具の遠位端まで余すところなく延びる。
【0113】
[0175]
図47G〜47Iに示すように、また
図47Aおよび47Bに関連して上述したように、操向可能部位の隣接するセクション同士は、シャフトの長手方向軸に対して平行でも垂直でもない接合部であって、幾つかの実施形態では径方向にごくわずかに重畳してもよい接合部で衝合する。幾つかの実施形態では、接合部は斜めの接合部であってよい。このわずかな重畳は、2つの材料のキット化に伴う欠陥をなくすのに役立つことが考えられる。接合部が斜めの実施形態について、継ぎ目の例示的な角度を
図47G〜47Iに示すが、これらはあくまでも例示的なものにすぎない。
図47A〜47Iに示す内側管状部材と上記の実施形態の内側部材との1つの相違点は、Kevlar材料であることができる補強部材477は内側管状部材に完全に埋め込まれているのであって、内側管状部材の長さに沿って特定箇所で自由に浮動できたり、または外側部材の外側面に埋め込まれたりするものでないところにある。補強部材は、編み材などの支持部材を貫いて編まれるものであってもよい。その上で、補強部材および支持部材は内側部材に埋め込まれる。この実施形態では、補強部材はシャフトの背骨部と直線的に位置合わせされる。そのため、補強部材は編み材を貫いて編まれて全体に直線的な方向に延びるものであってよく、それでもなおここでいうところに関しては背骨部に対して「直線的に位置合わせ」されていると見なすことができる。
【0114】
[0176]
図48A〜48Dは例示的な外側管状部材を示している。
図48Aおよび48Bは、内側管状部材の
図47Aおよび47Bの図と同じ相対関係にある外側管状部材の図である。外側部材は操向可能部位501の近位に配設された近位部481を含む。この例示的な実施形態では、近位部481は72DのPebax材料であることができる。操向可能部位501に沿って、外側管状部材は異なるデュロメータ値を有する材料のセクションを含む。この実施形態では、操向可能部位501は、第2のセクション488よりも高いデュロメータ値の第1のセクション487を含む。第1のセクション487は操向可能部位501に沿った背骨部として働く。あくまでも例示的な実施形態では、第1のセクション487は72DのPebax材料であり、第2のセクション488は35DのPebax材料であることができる。第1のセクション487は外側シャフトの周りに180度未満の範囲で延び、第2のセクション488は外側シャフトの周りに180度超の範囲で延びる。2つの材料の間の接合部は外側シャフトの長手方向軸(当技術での用語の意において)と平行である。ただし、他の実施形態では、セクション487とセクション488の間の接合部は外側管状部材の長手方向軸に対して非平行であることができ、さらに外側管状部材の長手方向軸に対して非垂直であってもよい。例えば、セクション487とセクション488の間の接合部は斜めの接合部を含むことができる。
【0115】
[0177]
図48Cは
図48Aに示したA−A断面を示している。外側シャフトは、PTFEなどの潤滑ライナであることができる内側ライナ484を含む。この実施形態では編み材の形をなす支持部材489はライナ484の周りに配設される。ポリマー製外側シャフトは、低めのデュロメータ値のセクション488と高めのデュロメータ値のセクション487とを含む。図からわかるように、支持部材489はポリマー製管状部材に埋め込まれている。
【0116】
[0178]
図48Dは、
図48Aに示す外側シャフトの断面C−C(図左方の遠位端)を示している。第1および第2のセクション487および488を含むセクションの遠位の直近には、操向可能セクション501よりも剛性の高い材料のセクションがある。幾つかの実施形態では、セクション485は72DのPebax材料であることができる。支持部材489はセクション485の中まで延びる。ライナ484もセクション485の中まで延びる。セクション485の遠位には、外側層482および内側層486を含む外側シャフトの先端セクションがある。外側層482は内側層486よりも剛性が高い。一例として、外側層482は72DのPebaxであり、内側層486は35DのPebaxであることができる。遠位先端部はさらに、外側層482内にあって径方向をなし、内側層486に対して径方向に外に延びるマーカバンド483を含む。遠位端部はさらに、マーカバンド483によって捕捉または保持される編み材を含む。マーカバンド483は、蛍光透視法のもとで遠位先端が可視化されるようにX線不透過材料によって形成することができる。例えば、マーカバンド483は、プラチナ=イリジウム合金などのX線不透過合金で形成することができる。
【0117】
[0179]
図49A〜49Dは、内側シャフト492(
図47A〜47Iのもの)に定着された外側シャフト491(
図48A〜48Dのもの)を含む例示的な操向可能な器具の図を示している。組立て後の操向可能な器具はさらに、内側および外側シャフトが互いに定着された後に内側および外側シャフトに定着される軟質先端部493を遠位端に備える。
【0118】
[0180]
図47A〜47Iおよび
図48A〜48Dの構成要素には
図49A〜49Dで改めて符号が付けられている。
図49Cで最もよく見て取れるように、内側シャフト492の補強部材477(Kevlar線など)は外側シャフト491のデュロメータ値が高めのセクション487の中間点から(長手方向軸と直角に器具の周りに測って)180度反対にある。
【0119】
[0181]
図49Dは
図49Aの器具のE−E断面を示している。操向可能部位の内側シャフト492と外側シャフト491の間には空間505がある。
図49Dから見て取れるように、内側シャフト492と外側シャフト491は、内側シャフトのセクション471と外側シャフトの内側層486との境界で互いに定着されている(
図48Dの内側層486参照)。
図49Dから見て取れるように、内側シャフト492は外側シャフト491よりもさらに遠位に延びる。外側シャフト491よりもさらに遠位に延びる内側シャフト492の部位はセクション471および内側ライナ476を含む。軟質先端部493は内側シャフト492の遠位端を径方向に覆うように配設され、さらに、
図49Dに示すように、外側シャフト491の遠位端とも軸方向に接続される。ポリマー製構成要素は周知の技法を用いて互いに定着される。軟質先端部493の定着後、内側シャフト492の補強部材477および外側シャフト491の背骨部と位置合わせされた通気口510がアセンブリに設けられる。操向可能な器具は本明細書のどのハンドルとも組み合わせることができ、本明細書に記載の方法で操向可能部位を操向するように操作することができる。
【0120】
[0182]
図50Aおよび50Bは代替的な内側管状部材550の遠位部の側面図を示しており、
図50Aと
図50Bの図は互いに90度の関係にある。内側管状部材550は本明細書のどの外側管状部材との組合せで用いることもできる。この例示的な実施形態では、操向可能部位553は、継ぎ目558で接続される第1のセグメント551と第2のセグメント552を含む。操向可能部位553は
図47Aおよび47Bの実施形態における操向可能部位と類似しているが、操向可能部位553には、継ぎ目で接続される2つのセグメント551および552だけがある。
【0121】
[0183]
図50Bは、継ぎ目558が、継ぎ目の最遠位位置563および継ぎ目の最近位位置562で出合う第1および第2の継ぎ目559および560を備えている様子を示している。
【0122】
[0184]この例示的な実施形態では、継ぎ目558は、
図50Aで長さ「L」として示されているその全長に沿って斜角をなす。ここで使う「斜角」とは、継ぎ目が内側管状部材の長手方向軸に対して平行でもなければ、垂直でもないことをいい、内側管状部材の長手方向軸は内側管状部材がその一部をなす操向可能な医療器具の長手方向軸と同じであることができる。継ぎ目は、その長さの少なくとも85%というように、その長さの実質的に全体に沿って斜角をなすこともできる。例えば、継ぎ目の最遠位および/または最近位位置には、内側管状部材の長手方向軸に対して垂直な短い直線区間が含まれてもよく、継ぎ目はそれでもなおその実質的に全長に沿って斜角であることができる。
【0123】
[0185]斜めの継ぎ目558については、内側管状部材の長手方向の断面積の比較によって説明することもできる。例えば、操向可能部位の最遠位点563と最近位点562の間の様々な位置で切り取られた断面積には、互いに嵌合して円形断面を作り上げる異なるデュロメータ値の材料を有するC字形セグメントを含めることができる。例として、最遠位点563から近位方向に数ミリメートルで切り取られた第1の断面は、デュロメータ値が高めで弧長が短めの第1のC字形セグメントと、デュロメータ値が低めで弧長が長めの第2のC字形セグメントとを含むことができる。対照的に、最近位点562から遠位方向に数ミリメートルで切り取られた第2の断面は、デュロメータ値が高めで弧長が長めの第1のC字形セグメントと、デュロメータ値が低めで弧長が短めの第2のC字形セグメントとを含むことができる。最遠位点563から最近位点562までの間で連続的な角度で直線的に斜めの継ぎ目558の場合は、最遠位点と最近位点の間の中間位置で切り取られた第3の断面は、デュロメータ値が高めの第1のC字形セグメントとデュロメータ値が低めの第2のC字形セグメントとを有し、第1および第2のC字形セグメントは同じ弧長を有する、すなわち半円であることができる。
【0124】
[0186]継ぎ目558は長手方向軸に対してその長さにわたって変化する角度を含むことができる。例えば、実質的に全長に沿って斜めの継ぎ目は、比較的短い垂直または平行な継ぎ目区間をその長さに沿ってなお1つまたは複数含むことができる。すなわち、継ぎ目558は、それぞれが長手方向軸に対して垂直および平行なセグメントを含んだ離散的な段を有することができる。そのため、斜めの継ぎ目558の段付きの輪郭線は、継ぎ目の1つまたは複数のセグメントがある角度になっていなくても、操向可能部位553の表面の周りをある角度で進むことができる。
【0125】
[0187]継ぎ目558は、操向可能部位553の表面の周りをある角度で進む他の輪郭線を含むことができる。例えば、継ぎ目の輪郭線は(段付きの継ぎ目の輪郭線が離散的であるのとは反対に)連続的であっても、継ぎ目の角度は変化することができる。ある実施形態では、可変的な角度の継ぎ目の輪郭線は、最遠位位置563に始まって、操向可能部位の表面の周りを波状に進み、最遠位位置563に対して周方向にオフセットしたより近位位置へと至る波状輪郭線を含むことができる。
【0126】
[0188]内側管状部材550はその全長に沿って斜めの継ぎ目を含むが、内側管状部材550はまた、継ぎ目の少なくとも一部位がその長さに沿って斜めの継ぎ目を備える管状部材の一例でもある。
【0127】
[0189]第1のセグメント551(遠位セグメントと見なすことも可能)のデュロメータ値は第2のセグメント(近位セグメントと見なすことも可能)のデュロメータ値よりも低い。幾つかの実施形態では、第1のセグメントはデュロメータ値が20D〜55Dで、25D〜45Dなどあり、ある特定の実施形態では35Dである。幾つかの実施形態では、第2のセグメントはデュロメータ値が55D〜85Dで、65D〜85Dなどであり、ある特定の実施形態では約72Dである。
【0128】
[0190]幾つかの実施形態では、内側管状部材は、操向可能部位に対して近位の管状材料のセグメント554と、セグメント554に対して近位の管状材料のセグメント555とを備える。幾つかの例示的な実施形態では、セクション554はVestamid(登録商標)などのポリアミドであることができる。幾つかの実施形態では、セグメント555のデュロメータ値は55D〜85Dで、65D〜85Dなど、72Dなどである。
【0129】
[0191]幾つかの実施形態では、第1のセグメントと第2のセグメントの間のデュロメータ値の差は少なくとも10D、少なくとも15D、少なくとも20D、少なくとも25D、少なくとも30D、さらにまたは少なくとも35Dである。継ぎ目の1つまたは複数の斜めの部位558は、斜めの継ぎ目に沿って変化するデュロメータ値を持つ内側管状部材の1つまたは複数の遷移部位を作り出す。
【0130】
[0192]内側管状部材550の操向可能部位の長さ「S」に対する百分率としての継ぎ目の長さLはこの実施形態では比較的大きい。この実施形態では、長さLは長さSの少なくとも80%であるが、幾つかの実施形態では、その長さは少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%であることができる。斜めの継ぎ目558およびその相対的な長さの例示的な利点は、それによって操向可能な医療器具の操向可能な部位に対して、操向時に、より一貫性のある、すなわちよりスムーズな曲率を与えることができるところにある。斜めの継ぎ目は、2つの材料の異なるデュロメータ値により、斜めの継ぎ目の長さに沿って連続的に変化する剛性を生み出す。例えば、内側管状部材550の剛性は、最近位位置562から最遠位位置563までの遠位方向に段階的または連続的に低下することができる。幾つかの代替的設計は、操向時に操向可能セクションに沿って「継手」(すなわち、スムーズさに劣る曲率)を形成しがちな操向可能部位を含んだものとなる可能性があり、例示的な斜めの継ぎ目558は、望まれれば、「継手された」操向可能セクションが生じる可能性を低減する助けとなり得る。
【0131】
[0193]幾つかの実施形態では、継ぎ目の長さLは1cmから8cmの間で、2cmから7cmの間、または3cmから6cmの間であることができる。
[0194]幾つかの実施形態では、操向可能部位の長さSは3cmから9cmの間で、3cmから8cmの間などであり、または4cmから7cmの間で、4.5cm、4.6cm、4.7cm、4.8cm、4.9cm、5.0cm、5.1cm、5.2cm、5.3cm、5.4cm、5.5cm、5.6cm、5.7cm、5.8cm、5.9cm、6.0cm、6.1cm、6.2cm、6.3cmまたは6.4cmなど(これらだけに限らない)である。
【0132】
[0195]幾つかの実施形態では、操向可能な医療器具には内側管状部材550と、例えば
図48A〜Dの外側管状部材(これらだけに限らない)が含まれる。内側および外側管状部材の操向可能部位の長さは、本明細書のいずれの例示的な長さもそうであるように一般に同じである。内側管状部材550は、操向可能部位が外部アクチュエータの操作によって操向されるように操向可能な医療器具に組み込むことが可能であり、その例を本明細書で説明する。例えば、幾つかの実施例では、外側管状部材は外部ハンドルに対して軸方向に固定され、内側管状部材は外部ハンドルの外部アクチュエータと操作可能に結合されてアクチュエータの操作が内側管状部材の相対的な軸方向移動(近位方向の移動など)をもたらす。内側管状部材に近位方向の力がかかると、内側管状部材が引張られるが、内側管状部材と外側管状部材は操向可能部位に対して遠位では軸方向に固定されているため、外側管状部材が圧縮され、その結果、操向可能部位の操向が行われる。
【0133】
[0196]外側管状部材の圧縮と内側管状部材の引張またはその逆は、それぞれの管状部材の対向する各々の側に異なる量の長さの変化をもたらすことができる。内側管状部材を例に取ると、内側管状部材を引張した場合、デュロメータ値の高い材料を有する操向可能部位の側よりもデュロメータ値の低い材料を有する操向可能部位の側を伸ばすことになる。材料のひずみの違いは管状部材の曲率半径として現れるようにすることができる。同様の現象は外側管状部材を圧縮することでも起こすことが可能で、その場合、デュロメータ値の低い材料の方がデュロメータ値の高い材料よりも余計に圧縮される。いずれの場合でも留意されるのは、曲率半径は、それぞれの管状部材のソリッドな壁面、すなわちスロットのない側に沿った材料のひずみ率が異なることによって得られるということである。より具体的には、操向可能部位は、操向可能部位全体にわたる管状部材の壁にスロット、穴または不連続部を含まない管状部材を用いて湾曲や操向を行うことができる。代替的な実施形態では、内側および外側管状部材の一方または両方にポリマー材料のソリッドな管を含まない操向可能部位を備えることができる。例えば、内側および外側管状部材の一方または両方はその操向可能部位においてポリマー部材に1つまたは複数の不連続部を有することができる。不連続部は、例えば任意の構成の1つもしくは複数の穴、または任意の構成の1つもしくは複数のスロットの形のものであってよく、操向可能部位の所望の長さに沿って延びることができる。このような不連続部の例示的な機能の1つは、管状部材の一方または両方の1つまたは複数の部位におけるひずみ除去として働くことができるというものであろう。不連続部を設けるための例示的な方法の1つは、1つまたは複数の穴などを管状部材の形成後にポリマー材料に設けるというものであろう。
【0134】
[0197]医療器具の操向可能部位の長さならびに操向可能部位の各種セグメントの構成および性質は、操向操作を受けて操向可能部位が取る構成に全般的に影響する。この構成には、最大限の操向操作または湾曲操作を受けたときの操向可能部位の曲線のきつさが含まれる。この直前で定めた操向可能セクションの長さSは操向可能部位が2.0〜3.5cmの曲線径571を達成することを可能にする。
図51Bにその寸法を操向可能な医療器具の一例について示す。曲線径571は半径として表すこともできる。例えば、到達長さ570は操向可能部位が180度以上曲げられない場合は操向可能部位の曲率半径であってもよい。操向可能部位を90度曲げたときの寸法である
図51Aの例示的な到達長さ570は、例えば限定的でないものとして、2.7cm〜4.7cmであることができる。
【0135】
[0198]操向可能部位553の近位端は斜めの継ぎ目を含まず、第2の材料のセグメント552だけを含む。同様に、操向可能部位553の遠位端は、
図50Bを見るとわかるように、斜めの継ぎ目を含まず、第1の材料のセグメント551だけを含む。しかし、一実施形態では、1つまたは複数の操向可能部位553の遠位端または操向可能部位553の近位端は遠位セクション556または近位セクション554と一致することができる。これは、継ぎ目の頂点558、すなわち継ぎ目部位559と継ぎ目部位560が出合う点が操向可能部位の遠位端または近位端と一致してよいことを意味する。
【0136】
[0199]幾つかの実施形態では、セグメント551および552は同じ長さである。セグメント551および552の長さは継ぎ目の最遠位位置および最近位位置に影響する。
[0200]第1および第2のセグメント551および552は同じ構成を持つが、互いに180度オフセットして対向する。しかし、第1および第2のセグメントは必ずしも同じ構成である必要はない。
【0137】
[0201]
図50Bは、継ぎ目558の両端に鋭角(遠位の角度561だけに符号)を形成する継ぎ目部位559および560を示している。継ぎ目の長さは、2つの継ぎ目部位559および560によって形成される角度に影響する可能性がある。この文脈で使用する「角度」は、一般に角度と称されるものを画定する2つの直線を必要としない。継ぎ目部位559および560の全体構成は、たとえ継ぎ目部位559および560が側面図で完全に直線でなくても(例えば、その一方または両方にわずかな曲率があっても)、互いの間に鋭角を形成することができる。さらに、継ぎ目部位559および560は上述のように頂点で出合うか、または部位559と部位560を連結する接続セグメントで終結することができる。例えば、直線的または曲線的な継ぎ目部位559および560は、継ぎ目の端部同士を連結する半径を有する曲線的セグメントで終結することができる。同様に、継ぎ目部位559および560は、継ぎ目の端部同士を連結する円周方向のセグメント、例えば長手方向軸に対して垂直に走る線で終結することができる。そのため、
図50Bに示した角度のある頂点は例として示したものであって、限定しようとするものではない。
【0138】
[0202]ここでいう継ぎ目は、突合せ継手、重ね継手、開き継手など、任意の方法で異なる材料のセグメント同士を接続することによって形成され得る。そのため、操向可能部位のセクションは、継ぎ目に沿って互いに重ね合わせ、溶接または熱、接着剤等による接着など、既知の方法を用いて接合されることができる。
【0139】
[0203]継ぎ目558の最遠位位置と最近位位置は、内側管状部材の周りに互いに180度隔てられている。最遠位位置と最近位位置は2つの線の交点によって画定される必要はないが、例えば、内側管状部材の長手方向軸に対して垂直な直線などを含むものであることができる。
【0140】
[0204]内側管状部材550は、その背骨部に沿って、
図50Cで見て取ることができるとともに
図50Bに破線で示された補強部材557をさらに含む。補強部材557は、セクション554に止着された近位端から、セクション553に止着された遠位端まで延びる。この実施形態では、補強部材557は、
図50Cの選択的切取り図でその一部を見ることができる第2の補強部材565に織り込まれている。この実施形態では、第2の補強部材565は、少なくともその長さの一部分に沿った編組み材料である。補強部材557は、第2の補強部材565の上または下に交互に配置されることができる。補強部材557は、第2の補強部材565の中に織り込まれる場合でも、内側管状部材550の長手方向軸に対して平行に配置される。補強部材557の遠位端557は、
図50Cに示すように、めくり返されるか、または折り返される。遠位端は、
図50Cに示すように、折り返され、第2の補強部材565のセグメントの周りに巻きつけられる。遠位端は、補強部材557の相対位置に応じて、第2の補強部材565の上または下に折り返すことができる。例えば、
図50Cでは、補強部材557は第2の補強部材565の下から遠位に延び、第2の補強部材565の上にめくり返され、または折り返される。めくり返される長さは、例えば0.5cmから5cmの間で、1cmから3cmの間などであることができる。補強部材の端部の一方または両方をこうしてめくり返すことができる。
【0141】
[0205]補強部材557の遠位端をめくり返すことにより、内側管状部材550の補強部材557のより確実な係留が得られる。それによって、操向可能部位の所定の形状を変えかねない第2の補強部材565に対する補強部材557の移動を起こりにくくすることができる。
【0142】
[0206]内側管状部材550の遠位端は、一般に比較的柔軟性があり、第2のセグメント552よりも低いデュロメータ値を有する遠位セクション556とともに示されている。遠位セクション556は、15Dから50Dの間で、25Dと40Dの間など、35Dなどであるデュロメータ値を有することができる。
【0143】
[0207]
図50Dは内側管状部材550の遠位部を示したもので、内側管状部材550の背骨部に沿って配置された補強部材557が示されている。
図50Eは
図50DのセクションA−Aを示したもので、内側ライナ564、比較的柔らかな遠位セクション556、めくり返された補強部材の遠位端557、ならびに第1および第2のセグメント551および552の一部位が示されている。
【0144】
[0208]内側管状部材および外側管状部材は幾つかの方法で個々に製造することができる。1つの例示的なプロセスは、内側管状部材の材料は熱収縮チューブを使用してマンドレル上でまとめてリフローにかけられるようにするというものである。
【0145】
[0209]装置内のどのコイルも材料の編組みセクションと交換することができる。
[0210]
図52Aは、内側管状部材550、外側管状部材580(
図48A〜48Dに示した外側管状部材と同一または類似のものであってよい)、および遠位柔軟セクション582を含む例示的な操向可能な医療器具の一部位を示したものである。
図52Bおよび52Cはそれぞれ
図52Aに示したA−A断面およびB−B断面を表したものである。
図52Cは、内側管状部材550、外側管状部材580、および内側管状部材の補強部材557であって、外側管状部材580にある高めのデュロメータ値のセグメント581の中間点に対して180度反対側にある補強部材557を表している。この設計では、また本明細書で繰り返し説明しているように、内側および外側管状部材の背骨部は180度オフセットされている。比較的低いデュロメータ値の材料のセグメント583は外側管状部材の周りに180度超にわたって延びる。
【0146】
[0211]
図52Dは
図52Bの詳細Aで、操向可能な医療器具の遠位端を示している。内側管状部材550は、図示するように外側管状部材580よりもさらにわずかに遠位まで延びるが、いずれも遠位柔軟先端部582と係合する。
【0147】
[0212]
図53Aは例示的な操向可能な医療器具の斜視図で、外部ハンドルおよびアクチュエータを含めて図示されている。
図53Bは
図53Aに示した詳細Aの分解図である。
[0213]
図53Aは、ハンドルの形をした例示的な外部コントローラであって、本明細書に記載する操向可能な器具を送り込んで、操作するように適合された外部コントローラを示している。外部コントローラ5300は、本明細書には特に記載されていない他の操向可能な器具を制御するように適合されており、または適合されることができる。一実施形態では、外部コントローラ5300は、上述したもののような操向可能管状部材を含んだ例示的な操向可能なシースシステム1000の操向を制御する。操向可能なシースシステム1000はハンドル部位1200によって操作することができる。
【0148】
[0214]
図53Bでは、ハンドル部位1200の分解図が一実施形態に従って示されている。ハンドル部位1200は、シースたわみ調整ノブ1210、グリップ1220およびガイドワイヤ孔1230を含む。ハンドル部位1200の各部位は、
図39〜41で構成要素の同様の機能を示すためにすでに記載のものと同様の番号によって表示しているが、各部位には構造的な違いがある場合もある。例えば、ガイドワイヤ孔1230は、外部コントローラ5300の近位端をなすバルブキャップ5302と一体化されたものであることができる。ただし、ガイドワイヤ孔1230はコントローラの内側であってよい。例えば、ガイドワイヤ孔1230は、ガイドワイヤをハンドル部位1200内のガイドワイヤシール1250の方へ導くためにグリップ部位1220の間に延びる型押しされた円筒形部位を含むことができる。調整ノブ1210、グリップ1220およびガイドワイヤ孔1230は、以下に説明する外部コントローラ5300の操作メカニズムを収容するハウジングを形成するものであってよい。
【0149】
[0215]操向可能シースの撓曲、すなわち操向は操作メカニズムによって容易に行うことができる。より具体的には、操作メカニズムは、操作ノブ1210をハンドルグリップ1220に対してひねることによって操作することができる。すると、ノブ1210の回転によって、外側シャフト1110および内側シャフト1120にそれぞれ取り付けられた部位に荷重をかけることができ、それによって管状部材の間に相対移動を生じる。本明細書の操向可能な医療器具の外部コントローラ5300による操向方法は、
図39〜41に関してすでに説明した方法と同様のものであってよく、
図39〜41の外部コントローラの適切な構造またはその適切な使用方法は外部コントローラ5300の一部またはその使用方法の一部であってよい。
【0150】
[0216]一実施形態では、シースの撓曲量は調整ノブ1210の回転量に関係する。幾つかの実施形態では、操作ノブ1210の回転度合とシースの操向可能セクションの撓曲角度の間には比較的直線的な対応関係ができる。そうした実施形態では、操向可能シースの最初の撓曲にかかわらず、操作ノブ1210の漸増的回転の一単位は、シースの操向可能部位の漸増的撓曲の対応する一定の単位に対して実質的に等しくなるか、または「マッピング」される。代替的な実施形態では、直線的でない対応関係があってよい。例えば、例示的な構成では、操作ノブ1210は、操向可能セクションが最小の撓曲にあるときは、許容撓曲の約50%にあるときの2倍の撓曲を与えることができる。
【0151】
[0217]外側シース1110に連結される外部コントローラ5300の部位は、外側シース接続管1340を含むことができる。外側シース1110は、例えば接着剤、超音波溶接、熱かしめ、その他の適当な方法などによって1340で外側シース接続管に係留されることができる。外側シース1110および外側シース接続管1340は、この実施形態ではグリップ1220に対して軸方向に固定される。
【0152】
[0218]外側シース1120に連結される外部コントローラ5300の部位は、内側シース接続管1370を含むことができる。内側シース1120は、外側シースについて説明したメカニズムのいずれかを通して内側シース接続管1370に係留されることができる。例えば、内側シース接続管1370は外側シース接続管1340と外側シャフト1110の間の結合部の近位位置で内側シース1120に接着結合されることができる。内側シース接続管1370は駆動ねじ1310に止着される。Oリングカップ5306は、Oリングを間に挟み込んで、適当な連結メカニズムによって内側シース接続管1370の近位端に止着される。ピン5308は駆動ねじ1310の内側に配置され、Oリングカップ5306を、さらにそれによって内側シース接続管1370を駆動ねじ1310に止着する。したがって、駆動ねじ1310、内側シース接続管1370および内側シース1120は共に軸方向に移動する。さらに、駆動ねじ1310はハンドルグリップ1220に対して軸方向に移動可能である。そのため、一実施形態では、外側シャフト1110と内側シャフト1120の間の相対移動はハンドルに対する内側シャフト1120の移動を通して行われるが、ハンドルは操向をもたらすための別の方法で機能するように変更することもできる。
【0153】
[0219]操向を行うためのシャフト間の相対移動が、外側シャフト1110と内側シャフト1120とを連結する外部コントローラ5300の各部位の間の相対移動に依存することは今や明らかであろう。すなわち、シャフト間の相対移動は内側シース接続管1370と外側シース接続管1340の間の相対的な直線動作によってもたらすことができる。一実施形態では、そのような相対的な直線動作は、駆動ねじ1310の直線動作を引き起こす駆動ナット1330の回転を引き起こすアクチュエータノブ1210の回転によって引き起こされる。より詳細には、駆動ナット1330は、ノブ1210の回転が駆動ナット1330の回転を生じるようにノブ1210に係合することができる。一実施形態では、ノブ1210および駆動ナット1330の回転は1:1の関係にあり、すなわちノブ1210は駆動ナット1330に対して固定されている。そのため、操作ノブ1210は駆動ナット1330の上に来ることができ、駆動ナット1330に対して回転しないようにすることができる。それによって、操作ノブ1210および駆動ナット1330は駆動ねじ1310および内側シース接続管1370の周りに同軸上に配設され、外側シース接続管1340は駆動ナット1330内に同軸上に収まることができる。
【0154】
[0220]一実施形態では、駆動ナット1330は駆動ねじ1310と螺合状態に置かれることができる。すなわち、駆動ナット1330の内ねじが駆動ねじの外ねじと噛み合うことができる。内側シース接続管1370はハンドル1220に対して軸方向に移動可能なため、ノブ1210を回転させることにより、駆動ナット1330および内側シース接続管1370の直線動作が、さらにそれによって内側シースの直線動作がもたらされる。ハンドル突起部1320(ピンなど)は上述したように駆動ねじスロット1350の中に入り込み、ノブ1210を回転させたときに駆動ねじが回転するのを防ぐ。こうしてハンドル突起部は駆動ねじ1310の軸方向の移動を生じさせ、それが内側シースの軸方向の移動を生じさせる。外側シース接続管1340のハンドルグリップ1220に対する軸方向の移動は、外側シース接続管1340の近位端の開口部の中に延びるハンドル突起部1320(ピンなど)によって妨げられる。外側シース接続管1340の位置、したがって外側シースの位置は、ハンドルグリップ1220に対して軸方向に固定される。この実施形態では、アクチュエータ1210を操作することによって内側シースが軸方向に移動するが、それによって外側シースの軸方向移動を生じることはない。幾つかの実施形態では、操作時に外側管状部材は軸方向に移動するが、内側管状部材は移動しないように外部コントローラが適合される。