特表2018-513638(P2018-513638A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-513638(P2018-513638A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(54)【発明の名称】車両ウィンドウアンテナ板材
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20180420BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20180420BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20180420BHJP
【FI】
   H01Q1/22 C
   H01Q1/32 A
   B60J1/00 B
   B60J1/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-552951(P2017-552951)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(85)【翻訳文提出日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2016056974
(87)【国際公開番号】WO2016162251
(87)【国際公開日】20161013
(31)【優先権主張番号】15162763.5
(32)【優先日】2015年4月8日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ドロステ
(72)【発明者】
【氏名】ベアント シュテリング
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム フランソワ
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA09
5J046AB13
5J046LA01
5J046LA18
5J047AA09
5J047AB13
5J047EC03
(57)【要約】
本発明は、車内スペースを外部周辺から隔絶するための車両ウィンドウアンテナ板材(100)に関し、当該車両ウィンドウアンテナ板材(100)は、外部側表面(III)を有する内部板材(1)と、車内側表面(II)を有する外部板材(2)と、外部板材(2)の車内側表面(II)と内部板材(1)の外部側表面(III)とを面で結合する少なくとも1つの中間層(3,3’)と、内部板材(1)と外部板材(2)との間に配置された平面型のアンテナ構造部(4)と、アンテナ構造部(4)に対して車内スペース側に配置されているグランドプレート(5)とを少なくとも備えており、アンテナ構造部(4)とグランドプレート(5)との間に、少なくとも1つの誘電体が配置されており、当該誘電体は少なくとも、内部板材(1)から、中間層(3,3’)から、または内部板材(1)と中間層(3,3’)とから成り、アンテナ構造部(4)は、長さl対幅bの比が1:1〜10:1である基礎面を有し、グランドプレート(5)は少なくとも、内部板材(1)に関してアンテナ構造部(4)を直交投影した領域に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内スペースを外部周辺から隔絶するための車両ウィンドウアンテナ板材(100)であって、
外部側表面(III)を有する内部板材(1)と、
車内側表面(II)を有する外部板材(2)と、
前記外部板材(2)の車内側表面(II)と前記内部板材(1)の外部側表面(III)とを面で結合する少なくとも1つの中間層(3,3’)と、
前記内部板材(1)と前記外部板材(2)との間に配置された平面型のアンテナ構造部(4)と、
前記アンテナ構造部(4)に対して車内スペース側に配置されているグランドプレート(5)と
を少なくとも備えており、
前記アンテナ構造部(4)と前記グランドプレート(5)との間に、少なくとも1つの誘電体が配置されており、当該誘電体は少なくとも、前記内部板材(1)から、前記中間層(3,3’)から、または前記内部板材(1)と前記中間層(3,3’)とから成り、
前記アンテナ構造部(4)は、長さl対幅bの比が1:1〜10:1である基礎面を有し、
前記グランドプレート(5)は少なくとも、前記内部板材(1)に対して前記アンテナ構造部(4)を直交投影した領域に配置されている、
車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項2】
前記アンテナ構造部(4)および/または前記グランドプレート(5)は、
印刷ならびに焼成された導電性ペースト、有利には銀含有のスクリーン印刷ペースト、および/または
導電性フィルム、有利には金属フィルム、特に銅フィルム、銀フィルム、金フィルムもしくはアルミニウムフィルム、および/または
導電層からコーティング無しの分離領域によって、特にコーティング無しの分離線によって周囲の層から電気的に絶縁した導電性構造部
から成る、
請求項1記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項3】
前記導電層は透明であり、かつ/または0.4Ω/□〜200Ω/□、有利には0.5Ω/□〜20Ω/□のシート抵抗を有し、かつ/または銀(Ag)、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープされた酸化錫(SnO:F)もしくはアルミニウムドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al)を含む、
請求項2記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項4】
前記アンテナ構造部(4)および/または前記グランドプレート(5)は、印刷および焼成された導電性ペーストから、有利には銀含有のスクリーン印刷ペーストから成り、
前記印刷および焼成された導電性ペーストは、3μm〜20μmの厚さと、0.001Ω/□〜0.03Ω/□のシート抵抗、有利には0.002Ω/□〜0.018Ω/□のシート抵抗とを有する、
請求項2または3記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項5】
前記導電性フィルムは、50μm〜1000μmの厚さ、有利には100μm〜600μmの厚さと、1×10S/m〜10×10S/mの導電率、有利には3.5×10S/m〜6.5×10S/mの導電率を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項6】
前記アンテナ構造部(4)のアンテナ脚部は、フィルム導体(10)を介して前記車両ウィンドウアンテナ板材(100)の側縁部(30,31)まで引き出され、かつ当該車両ウィンドウアンテナ板材(100)内から引き出されており、
前記フィルム導体(10)は少なくとも、車体に隣接して配置できる領域に、ストリップ導体として、有利にはコプレーナストリップ導体として構成されており、
前記ストリップ導体のシールド(12)は、前記グランドプレート(5)に電気的に接続されており、
特に、前記シールド(12)は基材フィルム上に配置されており、当該基材フィルムは有利にはポリイミドまたはポリエチレンテレフタレート(PET)を含むか、またはこれから成り、当該基材フィルムは有利には2〜4の比誘電率、特に有利には2.7〜3.3の比誘電率を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項7】
前記アンテナ構造部(4)と前記フィルム導体(10)の信号伝送路(11)とは単一片で構成されており、かつ/または前記グランドプレート(5)と前記フィルム導体(10)の前記シールド(12)とは単一片で構成されており、
特に前記信号伝送路(11)は基材フィルム上に配置されており、当該基材フィルムは有利にはポリイミドまたはポリエチレンテレフタレート(PET)を含むか、またはこれから成り、当該基材フィルムは有利には2〜4の比誘電率、特に有利には2.7〜3.3の比誘電率を有する、
請求項6記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項8】
前記グランドプレート(5)は、アンテナ信号を容量入力または容量出力するための容量結合領域(20)と接地領域とを有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項9】
前記中間層(3’)は前記アンテナ構造部(4)と前記グランドプレート(5)との間の領域において、周辺領域における前記中間層(3)の誘電体の比誘電率εr,3より大きい比誘電率εr,3’を有する誘電体を含み、有利にはεr,3’≧3×εr,3が適用される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項10】
前記アンテナ構造部(4)および/または前記グランドプレート(5)は、基材フィルム上に配置されており、
前記基材フィルムは有利にはポリイミドまたはポリエチレンテレフタレート(PET)を含むか、またはこれから成り、当該基材フィルムは有利には2〜4の比誘電率、特に有利には2.7〜3.3の比誘電率を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項11】
前記内部板材(1)および/または前記外部板材(2)は、ガラス、有利には板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、石灰ソーダガラス、またはポリマー、有利にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートならびに/もしくはこれらの混合物を含み、かつ/または2〜8の比誘電率εr,1/4、特に有利には6〜8の比誘電率εr,1/4を有する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項12】
前記アンテナ構造部(4)および/または前記グランドプレート(5)は、導電層から、全部または一部がコーティング無しの分離領域によって周囲の層から電気的に絶縁した導電性構造部から成り、
前記分離領域の幅は5mm以上、有利には50mm〜90mmである、
請求項2から7までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)。
【請求項13】
車両ウィンドウアンテナ板材構成体であって、
請求項1から12までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)と、
アンテナ構造部(4)およびグランドプレート(5)に電気的に結合されている電子受信回路または電子送信回路と
を備えており、
前記車両ウィンドウアンテナ板材(100)はグレージング部として車体に配置されている、
車両ウィンドウアンテナ板材構成体。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)の製造方法であって、
(a)平面型のアンテナ構造部(4)を内部板材(1)と外部板材(2)との間に配置し、グランドプレート(5)を前記アンテナ構造部(4)に対して車内スペース側に配置して、前記内部板材(1)と、少なくとも1つの中間層(3)と、前記外部板材(2)とから成る積層体を作製するステップと、
(b)前記積層体を貼り合わせて車両ウィンドウアンテナ板材(100)を構成するステップと
を有する、製造方法。
【請求項15】
陸上交通、航空または水上交通用の移動手段において、特に自動車において、たとえばフロントガラス、リアガラス、サイドガラスおよび/またはルーフガラスとしての、請求項1から12までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)の使用。
【請求項16】
衛星支援ナビゲーションのための信号を受信するための、特に、1575.42MHzのL1周波数を有する右旋円偏波GPS信号、および/または1602MHz±4MHzの周波数を有するGLONASS信号を受信するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の車両ウィンドウアンテナ板材(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ウィンドウアンテナ板材、車両ウィンドウアンテナ板材の製造方法、およびその使用に関する。
【0002】
最新の車両にはしばしば、グローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)を用いてナビゲーションを行うシステムが組み込まれていることが多い。稼働中のシステムとしてはたとえば、全地球測位システム(GPS)またはグローバルナビゲーションサテライトシステム(GLObal Navigation Satellite System、GLONASS)がある。そのために必要なアンテナは、たとえば米国特許出願公開第20140176374号明細書(US 20140176374 A1)から公知であるように車体に配置することができ、ひいては車内スペースの外部に配置することができる。かかるアンテナは、車両の美的外観を損ない、風の騒音を引き起こす原因となり得るものであり、また損傷や破壊に対して脆弱であるため、魅力を損なうものとなる。
【0003】
これに代えて、GNSSアンテナを車内スペースの内部に配置することもでき、たとえばダッシュボードの下方またはフロントガラスの下方に配置することもできる。その場合には、GNSS衛星までのアンテナの見通しが良好である適切な位置を発見し、なおかつ、ダッシュボードにある電気機器および車両モータによるEMC問題を回避することが困難になる。さらに、たとえば赤外線反射層またはLow‐E層等の導電層が、板材内における電磁波の透過を阻止してGNSS信号をブロックし得る。
【0004】
典型的なGPSアンテナは平面アンテナとして、典型的にはパッチアンテナとして実現され、たとえば国際公開第00/22695号(WO 00/22695 A1)、独国実用新案第202006011919号明細書(DE 202006011919 U1)または同第202010011837号明細書(DE 202010011837 U1)から公知である。その際には、プリント配線板またはセラミック基板の片面上に、平面型の金属製アンテナ構造部が配置される。反対側の面には、平面型のグランドプレートが接地面として配置される。アンテナ構造部およびグランドプレートは電気的伝送路を介して電気的な受信ユニットに接続されている。プリント配線板ないしはセラミック基板の材料厚さに起因して、アンテナはある程度の厚さを有し、フロントガラスに直接配置される場合には明らかに視認可能となり、美感に乏しいものとなる。
【0005】
本発明の課題は、アンテナ、特にGPSアンテナを、簡単かつ低コストで組み込むことができる、改善された車両ウィンドウアンテナ板材を提供することである。
【0006】
本発明の課題は、本発明では独立請求項1に記載の車両ウィンドウアンテナ板材によって解決される。従属請求項に有利な実施形態が記載されている。
【0007】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材は、少なくとも以下の構成を有する:
・外部側表面(III)と車内側表面(IV)とを有する内部板材、
・外部側表面(I)と車内側表面(II)とを有する外部板材、
・外部板材の車内側表面(II)と内部板材の外部側表面(III)とを面で結合する少なくとも1つの中間層、
・内部板材と外部板材との間に配置される平面型のアンテナ構造部、
・アンテナ構造部に対して車内スペース側に配置されているグランドプレート、
・アンテナ構造部とグランドプレートとの間に、比誘電率εを有する少なくとも1つの誘電体が配置されており、当該誘電体は少なくとも、内部板材から、中間層から、または内部板材と中間層とから成り、
・アンテナ構造部は、長さl対幅bの比が1:1〜10:1である基礎面を有し、
・グランドプレートは少なくとも、内部板材に関してアンテナ構造部を直交投影した領域に配置されている。
【0008】
グランドプレートは有利には接地面として使用される。すなわち、車両の参照電位に接続されることができる。
【0009】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材は、車内スペースを外部周辺から隔絶するために適している。これにより、車両ウィンドウアンテナ板材の、車内スペース側に来る車内側表面(II,IV)と、車内スペースとは反対側となる外部側表面(I,III)とが定まる。
【0010】
アンテナ構造部は、平面型の導電性の構造部または層である。これは、内部板材と外部板材との間に配置されている。グランドプレートも、導電性の構造部または層である。グランドプレートも実質的に平面である。グランドプレートは、アンテナ構造部に対して車内スペース側に配置されている。つまり、グランドプレートの方がアンテナ構造部よりも、車内スペースの近傍に配置される。
【0011】
内部板材および外部板材としては、基本的に、本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の製造条件および使用条件下において熱的および化学的に安定的であり、かつ寸法安定的であるあらゆる電気絶縁性基板が適している。
【0012】
内部板材および/または外部板材は、有利にはガラスを含み、特に有利には板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、石灰ソーダガラスまたはクリアプラスチック、有利には剛性のクリアプラスチック、とりわけポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよび/またはこれらの混合物を含む。内部板材および/または外部板材は有利には、特に車両のフロントガラスまたはリアガラスとして当該車両ウィンドウアンテナ板材を使用するため、または高い光透過率が望ましい他の用途のために、透明である。本発明において「透明」とは、板材が可視スペクトル領域において、70%を超える透過率を有することをいう。運転者の交通上重要な視界内に位置しない車両ウィンドウアンテナ板材、たとえばルーフガラスの場合には、透過率を格段に低くすること、たとえば5%以上とすることもできる。
【0013】
内部板材および/または外部板材の厚さは幅広く変動することができるので、個別的事例の要求に合わせて調整できるという点に優れている。有利には、車両ガラスについて1.0mm〜25mmの標準厚さ、有利には1.4mm〜2.5mmの標準厚さを使用する。内部板材および/または外部板材のサイズは幅広く変動することができ、本発明の使用のサイズに従って定まる。内部板材および/または外部板材の通常の面積は、たとえば車両産業では200cm〜3mである。
【0014】
車両ウィンドウアンテナ板材は、任意の3次元形状を有することができる。有利にはこの3次元形状は、たとえば陰極スパッタリングによってコーティングできるように、陰のゾーンを有しない。有利には、内部板材および外部板材は平面状であるか、または空間の1方向もしくは複数方向に軽くもしくはきつく湾曲している。特に、平面状の板材が用いられる。板材は無色または有色とすることができる。
【0015】
内部板材および/または外部板材は有利には、2〜8の比誘電率εr,1/2を有し、特に有利には6〜8の比誘電率εr,1/2を有する。かかる比誘電率の場合、アンテナの特に良好な送受信特性を達成することができた。
【0016】
内部板材および/または外部板材を少なくとも1つの中間層によって互いに結合することができる。中間層は、有利には透明である。中間層は有利には、少なくとも1種のプラスチックを含み、有利にはポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。また、中間層はたとえば、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート樹脂、注型用樹脂、アクリレート、フッ化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニルおよび/またはエチレン‐テトラフルオロエチレン、またはこれらのコポリマーもしくは混合物を含むこともできる。中間層は、1つのフィルムにより、または、複数のフィルムを積層したもの、もしくは隣り合って並べたものにより構成することができる。その際には、1つのフィルムの厚さは有利には0.025mm〜1mm、典型的には0.38mmまたは0.76mmである。中間層は有利には熱可塑性とすることができ、この中間層は貼り合わせ後、内部板材と外部板材と、場合によっては他の中間層とを互いに接着することができる。
【0017】
中間層は有利には、2〜4の比誘電率εr,3を有し、特に有利には2.1〜2.9の比誘電率εr,3を有する。かかる比誘電率の場合、アンテナの特に良好なアンテナ特性を達成することができた。
【0018】
アンテナ構造部とグランドプレートとの間に、比誘電率εを有する少なくとも1つの誘電体が配置されている。アンテナ構造部は内部板材と外部板材との間に配置されるので、3つの有利な配置が得られる:
【0019】
アンテナ構造部は、外部板材と中間層との間に配置されている。その際には、グランドプレートを中間層と内部板材との間に、または内部板材の車内側表面(IV)上に配置することができる。第1の事例では、アンテナ構造部とグランドプレートとの間に配置された誘電体は中間層を含むか、または中間層から成り、第2の事例では、当該誘電体は中間層と内部板材とを含むか、またはこれらから成る。
【0020】
代替的に、アンテナ構造部を中間層と内部板材との間に配置することもできる。その際には、グランドプレートは内部板材の車内側表面(IV)上に配置されている。本事例では、誘電体は内部板材を含むか、または内部板材から成る。
【0021】
いずれの事例においても、グランドプレートは少なくとも、内部板材に関してアンテナ構造部を直交投影した領域に配置されている。このことは具体的には、車内スペースから車両ウィンドウアンテナ板材を通じて見たとき、すなわち車両ウィンドウアンテナ板材の車内側表面(IV)を見たときに、グランドプレートのみを視認することができ、グランドプレートがアンテナ構造部までの見通しを完全に隠す、ということである。
【0022】
本発明の有利な一実施形態では、グランドプレートの面積はアンテナ構造部の面積より大きく、有利には少なくとも10%大きく、特に有利には少なくとも25%大きい。本発明の他の一実施形態では、グランドプレートはアンテナ構造部の直交投影において、当該アンテナ構造部の周縁からそれぞれ少なくとも2mm突出し、有利には少なくとも5mm突出し、特に少なくとも10mm突出している。
【0023】
アンテナ構造部は、長さl対幅bの比が1:1〜10:1、有利には1:1〜2:1、特に有利には1:1〜1.1:1である基礎面を有する。アンテナ構造部の基礎面は、有利には方形、正方形、台形、4角より多くの角を有する多角形、楕円形または円である。方形の場合、長さlは当該方形の長辺の長さに相当し、幅bは当該方形の短辺の長さに相当する。よって、各辺の長さが等しい正方形または実質的に正方形の基礎面である場合には、長さlと幅bとの比は1:1となる。非方形、特に楕円形のパターンの場合には、長さは当該パターンの最大長さによって定まり、幅bは、長さlに対して直交する方向の長さによって定まる。円形の基礎面である場合、長さlと幅bとの比は1:1となる。
【0024】
特に方形または正方形の基礎面の場合、本発明においてはいずれか1つの角、有利には対角線上に相対向する2つの角、特に有利には全ての角を面取りすることができる。このことにより、受信すべき電磁波に合わせてアンテナ構造部を整合できるという利点が奏される。この面取りは有利には、長さlおよび/または幅bの20%未満、有利には10%未満である。
【0025】
アンテナ構造部の寸法は一般的に、所望の周波数帯と実際の使用とに依存する。0.8GHz〜2.7GHzの周波数領域での移動無線用途では、アンテナ構造部は典型的には、20mm〜60mmの長さlおよび/または幅bを有する。1.2GHz〜1.7GHzの周波数領域での衛星支援ナビゲーション(GNSS)用に使用される場合、アンテナ構造部は典型的には、30mm〜40mmの長さlおよび/または幅bを有する。
【0026】
本発明の有利な一実施形態では、アンテナ構造部は、1575.42MHzの周波数を有する、電磁波の振動面が右旋円偏波であるGPS信号に合わせて最適化されている。こうするためにはアンテナ構造部は、長さlが36mmかつ幅bが34mmの方形の基礎面を有し、よってその比は約1.06:1である。
【0027】
アンテナ構造部は有利には、他の切抜部を有することができる。特に有利なのは、スリット状の切抜部である。アンテナ構造部の基礎面が方形または正方形である場合、スリット状の切抜部の長辺の向きは有利には、基礎面の対角線に対して平行であり、特に当該対角線に沿った向きである。スリット状の切抜部は、たとえば方形の形状を有し、有利には5mm〜20mmの長さl、有利には7.5mm〜12.5mmの長さlと、0.5mm〜5.0mmの幅b、有利には0.9mm〜3.1mmの幅bとを有する。
【0028】
さらに、アンテナ構造部は、当該アンテナ構造部の基礎面において当該アンテナ構造部と信号伝送路との間の電気的伝送路接続部の両側に配置された方形の切抜部を有することもできる。かかる切抜部は、電子送信回路または電子受信回路の信号伝送路を介して供給される、アンテナ構造部へのアンテナ信号の特に良好な入力、またはアンテナ構造部からのアンテナ信号の特に良好な出力を実現できるという格別な利点を有する。
【0029】
本発明の有利な一実施形態では、アンテナ構造部および/またはグランドプレートは、印刷および焼成された導電性ペーストから成り、有利には銀含有のスクリーン印刷ペーストから成る。この印刷および焼成された導電性ペーストは有利には、3μm〜20μmの厚さと、0.001Ω/□〜0.03Ω/□のシート抵抗、有利には0.002Ω/□〜0.018Ω/□のシート抵抗とを有する。かかるアンテナ構造部およびグランドプレートは、工業製造プロセスにおいて容易に集積することができ、低コストで製造することができる。
【0030】
本発明の他の有利な一実施形態では、アンテナ構造部および/またはグランドプレートは導電性フィルムから成り、有利には金属フィルム、特に銅フィルム、銀フィルム、金フィルムまたはアルミニウムフィルムから成る。もちろん、かかるフィルムを基材フィルム上に、たとえば、ポリイミドまたはポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリマー基材フィルム上に配置することもできる。基材フィルム上に設けられたこのようなアンテナ構造部およびグランドプレートが特に有利である理由は、アンテナ構造部の全部をグランドプレートと共に一個体から作製することができ、かつその作製中、後に車両ウィンドウアンテナ板材となるものに快適かつ正確な位置で挟み込むことができるからである。
【0031】
本発明の他の有利な一実施形態では、アンテナ構造部および/またはグランドプレートは、導電層からコーティング無しの分離領域によって、特にコーティング無しの分離線によって周囲の層から電気的に絶縁した導電性構造部から成る。本発明の代替的な他の一実施形態では、上述の分離領域は完全にコーティング無しというわけではなく、互いに交差する多数の分離線によって、互いに電気的に絶縁された複数の小さい領域に分割されている。以下これを「ラスタ」とも称する。このラスタの寸法は、他の残りの導電層が、入射した高周波の電磁波と相互作用しないように選択される。典型的には、2つの隣り合った分離線の最大距離は3mm以下である。
【0032】
分離領域の幅は、完全にコーティング無しの分離領域の場合と、ラスタ構成の分離領域の場合とにおいて、5mm以上、有利には
【数1】
である。ここでλは、電磁波の波長であって、当該波長に合わせてアンテナ構造部が最適化された波長であり、εeffは、アンテナ構造部および/またはグランドプレートの周辺の誘電体の実効誘電率である。GNSSシステムに合わせて最適化されたアンテナ構造部の場合、その幅は50mm〜90mmであり、特に約70mmである。
【0033】
かかるアンテナ構造部およびグランドプレートは、たとえば電気加熱可能な板材や、太陽光入射に対するフィルタが組み込まれた板材の場合に通例であるように板材内に既に導電層が配置されている場合に、特に有利である。その際には、見通し可能な衛星の数(ないしは、アンテナの空間的角度)を、インスツルメントパネルに組み込まれたアンテナと比較して実効的に制限することなく、全部がコーティング無しである分離領域、または導電層のラスタ化を、最小限に選択することができる。
【0034】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の有利な一実施形態では、分離線の幅は30μm〜200μmであり、有利には70μm〜140μmである。このように細い分離線によって、確実かつ十分に高い電気絶縁性を達成することができ、なおかつこの分離線は、車両ウィンドウアンテナ板材の透視性を全く、または僅かしか阻害しない。
【0035】
本発明の導電層は、たとえば独国特許実用新案第202008017611号明細書(DE 20 2008 017 611 U1)、欧州特許第0847965号明細書(EP 0 847 965 B1)または国際公開第2012/052315号(WO2012/052315 A1)から公知である。その導電性コーティングは典型的には、1つまたは複数の機能層を、たとえば2つ、3つまたは4つの導電性の機能層を含む。この機能層は有利には少なくとも1種の金属、たとえば銀、金、銅、ニッケルならびに/もしくはクロム、または金属合金を含む。機能層は特に有利には、少なくとも90重量%の金属、とりわけ少なくとも99.9重量%の金属を含む。機能層は、上述の金属または金属合金から成ることができる。機能層は特に有利には、銀または銀含有合金を含む。かかる機能層は、特に有利な導電性を示すと同時に、可視スペクトル領域において高い透過率を示す。機能層の厚さは、有利には5nm〜50nmであり、特に有利には8nm〜25nmである。機能層の厚さの上述の範囲内では、可視スペクトル領域において有利な高さの透過率と、特に有利な導電性とが達成される。
【0036】
典型的には、各2つの隣り合った機能層間にそれぞれ、少なくとも1つの誘電体層が配置されている。有利には、最初の機能層の下方および/または最後の機能層の上方に、さらに別の誘電体層が配置されている。誘電体層は、たとえば窒化シリコン等の窒化物または酸化アルミニウム等の酸化物等を含有する誘電体材料から成る少なくとも1つの単層を含む。また、誘電体層はそれぞれ、複数の単層を含むこともでき、たとえば誘電体材料の複数の単層、平坦化層、整合層、ブロック層および/または反射防止層を含むこともできる。1つの誘電体層の厚さは、たとえば10nm〜200nmである。
【0037】
かかる積層体は一般的に、磁場アシスト陰極スパッタリング等の真空法により行われる成膜プロセスの連続によって得られる。
【0038】
他の適した導電層は有利には、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープされた酸化錫(SnO:F)またはアルミニウムドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al)を含む。
【0039】
導電層は原則的に、電気的にコンタクトされ得るあらゆるコーティングとすることができる。本発明の板材が、たとえば窓領域の板材のように透視性を可能とするものである場合、導電層は有利には透明である。1つの有利な実施形態では導電層は、総厚が2μm以下、特に有利には1μm以下の1つの層または複数の単層の積層体である。
【0040】
本発明の有利な透明導電層は、0.4Ω/□〜200Ω/□のシート抵抗を有する。特に有利な一実施形態では、本発明の導電層は0.5Ω/□〜20Ω/□のシート抵抗を有する。かかるシート抵抗のコーティングは、12V〜48Vの典型的な車載電圧の場合において車両ガラスを加熱するため、または最大500Vの典型的な車載電圧の電気自動車において、特に適している。
【0041】
本発明の複層板材の有利な一実施形態では、導電層は当該複層板材の縁部から2mm〜50mmの幅だけ、有利には5mm〜20mmの幅だけ離隔して配置されている。その際には、導電層は周辺との接触部を有さず、車両ウィンドウアンテナ板材の内側において中間層により、有利には損傷や腐食から保護される。
【0042】
導電層は有利には、透明な導電性のコーティングを含む。「透明」とはここでは、300nm〜1,300nmの波長の電磁波に対して、特に可視光に対して透過性であるという意味である。
【0043】
車両ウィンドウアンテナ板材のうち、たとえばカバープリントまたはプラスチック筐体によって透視性が阻害されない領域に、アンテナ構造部および/またはグランドプレートが配置されるので、導電層が透明であることを要しない場合には、導電層を透明導電層より格段に厚くすることもできる。このように厚い層は、格段に低いシート抵抗を有し得る。有利なのは、たとえば導電性フィルム、有利には金属フィルム、特に銅フィルム、銀フィルム、金フィルムまたはアルミニウムフィルムから成る。導電性フィルムは、有利には50μm〜1000μmの厚さ、有利には100μm〜600μmの厚さを有する。導電性フィルムは、有利には1×10S/m〜10×10S/mの導電率、有利には3.5×10S/m〜6.5×10S/mの導電率を有する。
【0044】
もちろん、アンテナ構造部およびグランドプレートは、上掲の形態を互いに組み合わせたもの、たとえば、印刷されたペースト、導電性フィルム、導電層を分割したもの等を互いに組み合わせたものとすることができる。具体的には、アンテナ構造部はたとえば導電性フィルムから成り、かつグランドプレートは印刷されたペーストから成る等が可能である。
【0045】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の有利な一実施形態では、アンテナ構造部およびグランドプレートは板材の外縁部に配置されている。外縁部との最大距離は、有利には20cm未満であり、特に有利には10cm未満である。かかる配置により、アンテナ構造部、グランドプレートおよび給電線を、視覚的に目立たない黒色印刷またはカバーに、たとえばカメラ筐体に隠すことができる。
【0046】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の他の有利な一実施形態では、アンテナ構造部のアンテナ脚部は、フラット導体を介して車両ウィンドウアンテナ板材の縁部まで引き出されて、車両ウィンドウアンテナ板材から引き出されている。このフラット導体は少なくとも、車体に隣接して配置できる領域に、アンテナ構造部と導電結合される信号伝送路を有するストリップ導体であって、シールドがグランドプレートと導電結合されるストリップ導体として、有利にはコプレーナストリップ導体として構成されている。ここで「導電結合」とは、有利には直流結合を意味する。これに代えて、当該結合を容量結合とすることもできる。
【0047】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の他の有利な一実施形態では、アンテナ構造部とストリップ導体の信号伝送路とは、単一片を成すように構成されており、かつ/またはグランドプレートとストリップ導体のシールドとは、単一片を成すように構成されている。このことにより、アンテナの各異なる部分間の移行部における伝送損失を回避することができる。さらに、複数の各要素を1つの共用の基材フィルム上に配置する場合、上述の単一片の構造は特に簡単に作製することができる。
【0048】
ストリップ導体は有利には、フィルム導体またはフレキシブルフィルム導体(フラット導体、フラットリボン導体)として構成されている。「フィルム導体」とは、幅が厚さより格段に大きい電気導体をいう。かかるフィルム導体はたとえば、銅、錫めっきされた銅、アルミニウム、銀、金もしくはその合金を含むまたはこれから成るストリップまたはリボンである。フィルム導体はたとえば、2mm〜16mmの幅と、0.03mm〜0.1mmの厚さとを有する。フィルム導体は、絶縁性の、有利にはポリマーの外被を備えることができ、かかる外被はたとえばポリイミド系である。板材内の導電性コーティングのコンタクトを行うのに適したフィルム導体の総厚は、たとえば0.3mmのみである。かかる薄さのフィルム導体は、困難を伴わずに、各板材間において熱可塑性の中間層内に埋め込むことができる。フィルム導体リボン内には、互いに電気的に絶縁された複数の導電層を設けることができる。
【0049】
これに代えて、細い金属ワイヤを給電線として使用することもできる。かかる金属ワイヤは、とりわけ銅、タングステン、金、銀、アルミニウムまたはこれらのうち少なくとも2種の金属の合金を含む。合金は、モリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジウムまたは白金を含むこともできる。
【0050】
アンテナ構造部と給電線との電気的伝送路接続部、および/またはグランドプレートと接地線ないしはシールドとの電気的伝送路接続部は、有利には、接続端領域と給電線との確実かつ長期間の電気的伝送路接続部を行える導電性接着材またははんだ接合部を用いて行われる。これに代えて、電気的伝送路接続部をクランプによって行うこともできる。というのも、クランプ接続は貼り合わせプロセスを通じて滑り防止性に固定されるからである。これに代えて、給電線を接続端領域上に重なるように印刷することもでき、たとえば、金属含有、特に銀含有の導電性印刷ペーストを用いて印刷することもできる。これに代えて、電気的伝送路接続部をはんだ付けによって作製することもできる。
【0051】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の他の有利な一実施形態では、グランドプレートは接地領域と、アンテナ信号の容量出力のための容量結合領域とを有する。本実施形態ではアンテナ信号は、グランドプレートの平面内においてアンテナ構造部とグランドプレート平面との間の誘電体によって容量結合領域と容量結合される。容量結合領域は、フィルム導体の信号伝送路の一領域と接続されており、または当該一領域と同一である。このことが特に有利である理由は、アンテナ信号のための給電線と接地ないしはシールドとを同一平面上に、1つのストリップ導体を用いて簡単に作製できるからである。車両ウィンドウアンテナ板材の内側のアンテナ構造部は、別途コンタクトする必要がなく、また、車両ウィンドウアンテナ板材内から別個の導体を引き出す必要もない。このことにより、板材縁部における封止問題や腐食問題を回避することができる。
【0052】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の他の有利な一実施形態では、中間層の、アンテナ構造部とグランドプレートとの間の直接的な領域は、その周辺領域における中間層の誘電体の比誘電率εr,3より大きい比誘電率εr,3’を有する誘電体から成る。有利には、εr,3’>3×εr,3である。このことにより、アンテナの送受信特性を実際の要求に容易に合わせて調整することができるという利点が奏される。
【0053】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の他の有利な一実施形態では、アンテナ構造部、フラット導体および/またはグランドプレートは、基材フィルム上に配置されている。基材フィルムは、有利にはポリマーを含み、特に有利にはポリイミドもしくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、またはこれから成る。基材フィルムは2〜4の比誘電率を有し、特に有利には2.7〜3.3の比誘電率を有する。アンテナ構造部およびグランドプレートに対する基材フィルムの相対配置に応じて、基材フィルムは、介挿される誘電体として使用されて、規定通りのアンテナ特性の決定に関与することもできる。
【0054】
本発明はまた、車両ウィンドウアンテナ板材構成体にも関するものであり、この車両ウィンドウアンテナ板材構成体は、本発明の上述の構成の車両ウィンドウアンテナ板材と、アンテナ構造部およびグランドプレートに電気的に結合された電子受信回路または電子送信回路とを備えている。かかる車両ウィンドウアンテナ板材構成体では、車両ウィンドウアンテナ板材はグレージング部(ガラス窓)として車両の車体に配置されている。グランドプレートは有利には接地面として使用され、かかる場合、グランドプレートは車両の参照電位に接続されている。
【0055】
本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の上述の複数の異なる実施形態や実施態様をそれぞれ単独で、または任意の組み合わせで実現することが可能である。
【0056】
本発明の他の一側面は、車両ウィンドウアンテナ板材の製造方法、特に、本発明の上述の構成の車両ウィンドウアンテナ板材の製造方法に関するものであり、少なくとも、
(a)平面型のアンテナ構造部を内部板材と外部板材との間に配置し、グランドプレートをアンテナ構造部に対して車内スペース側に配置して、内部板材と、少なくとも1つの中間層と、外部板材とから成る積層体を作製することと、
(b)積層体を貼り合わせて車両ウィンドウアンテナ板材を構成することと
を有する。
【0057】
ステップ(b)の貼り合わせ、すなわち中間層を介しての内部板材と外部板材との接合は有利には、熱、真空および/または圧力の作用下で行われる。複層板材を製造するための自明の手法を使用することができる。
【0058】
たとえば、約10バール〜15バールの昇圧した圧力で、かつ130℃〜145℃の温度で、約2時間にわたっていわゆるオートクレーブ法を実施することが可能である。自明の真空袋法または真空リング法は、たとえば約200ミリバールおよび80℃〜110℃で動作する。内部板材と、熱可塑性の中間層と、外部板材とを、カレンダーで少なくとも1対のローラ間でプレスして板材にすることもできる。かかる方式の設備は、板材作製において公知であり、通常は、プレス機構前に少なくとも1つの加熱トンネルを備える。プレス工程中の温度は、たとえば40℃〜150℃である。カレンダー法とオートクレーブ法との組み合わせは、実用上特に優れていることが判明している。これに代えて、真空ラミネータを使用することもできる。この真空ラミネータは、1つまたは複数の加熱可能かつ排気可能なチャンバから成り、このチャンバ内において、内部板材と外部板材とをたとえば約60分以内で、0.01ミリバール〜800ミリバールの降圧した圧力で、かつ80℃〜170℃の温度で貼り合わせる。
【0059】
本発明の他の一側面は、陸上交通、航空または水上交通用の移動手段における本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の使用、特に列車、船舶および自動車において、たとえばフロントガラス、リアガラス、サイドガラスおよび/またはルーフガラスとしての、本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の使用に関するものである。
【0060】
本発明はさらに、衛星支援ナビゲーションのためのGPS信号を受信するための、本発明の車両ウィンドウアンテナ板材の使用も包含する。
【0061】
以下、図面と実施例とを参照して本発明を詳細に説明する。本図面は概略図であり、実寸の比率通りではない。また、本図面は本発明を何ら限定するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1A】本発明の一実施形態の車両ウィンドウアンテナ板材の平面図である。
図1B図1Aの一部Zの拡大図である。
図1C図1Bの切断線A‐A’に沿った断面図である。
図1D図1Bの切断線B‐B’に沿った断面図である。
図1E図1Bの切断線C‐C’に沿った断面図である。
図2A図1Bの代替的な実施例の切断線A‐A’に沿った断面図である。
図2B図1Bの代替的な実施例の切断線B‐B’に沿った断面図である。
図3A図1Bの他の代替的な一実施例の切断線A‐A’に沿った断面図である。
図3B図1Bの他の代替的な一実施例の切断線B‐B’に沿った断面図である。
図4A】本発明の他の代替的な一実施形態の車両ウィンドウアンテナ板材の平面図である。
図4B図4Aの一部Zの拡大図である。
図4C図4Bの切断線A‐A’に沿った断面図である。
図4D図4Bの切断線B‐B’に沿った断面図である。
図4E図4Bの切断線D‐D’に沿った断面図である。
図5】本発明の他の代替的な一実施形態のアンテナ構造部を含む、図4Aの一部Zの拡大図である。
図6A】本発明の他の代替的な一実施形態の車両ウィンドウアンテナ板材の平面図である。
図6B図6Aの一部Zの拡大図である。
図6C図6Bの切断線A‐A’に沿った断面図である。
図6D図6Bの切断線B‐B’に沿った断面図である。
図7】本発明の方法の一実施形態の詳細なフローチャートである。
図8】本発明の車両ウィンドウアンテナ板材のいわゆるS11パラメータの測定結果を示す図である。
【0063】
図1Aは、本発明の一実施例の車両ウィンドウアンテナ板材100の平面図である。
【0064】
図1Bは、図1Aの本発明の車両ウィンドウアンテナ板材100の一部Zの拡大図である。同図では、車両ウィンドウアンテナ板材100はたとえば内部板材1と外部板材2とを備えており、これらは中間層3を介して互いに結合されている。車両ウィンドウアンテナ板材100はたとえば、乗用自動車のフロントガラスである。車両ウィンドウアンテナ板材100の寸法は、たとえば0.9m×1.5mである。
【0065】
内部板材1はたとえば、組付状態において車内スペース側に配置されるために構成されている。すなわち、内部板材1の車内側表面 IV には車内スペースから接近可能であるのに対し、外部板材2の外部側表面Iは、車内スペースを基準として外部を向いて設置される。内部板材1および外部板材2は、たとえば石灰ソーダガラスから成る。内部板材1の厚さはたとえば1.6mmであり、外部板材2の厚さは2.1mmである。もちろん、内部板材1と外部板材2とをたとえば等しい厚さにすることも可能である。中間層3は熱可塑性の中間層であり、たとえばポリビニルブチラール(PVB)から成る。その厚さは0.76mmである。
【0066】
図中の外観は、車両の外部から外部板材2の外部側表面Iを観察した平面図である。
【0067】
図1Cは、図1Bの切断線A‐A’に沿った断面図である。図1Dは、図1Bの切断線B‐B’に沿った、対応する断面図である。
【0068】
アンテナ構造部4およびグランドプレート5は、車両ウィンドウアンテナ板材100の板材下縁部30に配置されている。アンテナ構造部4は、本実施例では0.1mmの厚さの銅フィルムから成り、これは内部板材1の外部側表面 III 上に配置される。アンテナ構造部4は本実施例では、36mmの長さlと、同様に34mmの幅bとを有する方形の基礎面から成る。アンテナ構造部4の基礎面は、相対向する2つの角にそれぞれ三角形の切抜部7を有する。これらの各切抜部7は、正方形のそれぞれ一角から取り除いたものである。三角形の切抜部7はたとえば、隣辺長がa=2.5mmの二等辺直角三角形である。アンテナ構造部4はさらに、方形の形状を有するスリット状の切抜部6も有し、これは9.5mmの長さlと3mmの幅bとを有する。スリット状の切抜部6は長さ方向において、正方形の基礎面の対角線であって、三角形の切抜部7が位置する対角線に沿って配置されている。
【0069】
アンテナ構造部4は、電気的伝送路接続部13を介してフィルム導体10の信号伝送路11に接続されている。電気的伝送路接続部13はたとえば、はんだ箇所または導電性接着材である。フィルム導体10は少なくとも、板材縁部30の領域に設けられており、同図ではたとえば、その全長にわたってコプレーナストリップ導体として構成されている。すなわち平面状の信号伝送路11は、当該信号伝送路11と同一平面内に配置された2つの平面状のシールド12またはシールド導体によって挟まれている。よって、フィルム導体10は3つの内部導体15、すなわち1つの信号伝送路11と2つのシールド12とから成り、これらはたとえば片面において、有利には両面において、電気絶縁部16によって覆われている。電気絶縁部16はたとえばポリマーフィルムであり、特にポリイミドフィルムである。内部導体15はたとえば、幅4mmかつ厚さ200μmのアルミニウムフィルムである。フィルム導体10は、板材縁部30まわりに設けられている。2つのシールド12は、内部板材1の車内側表面 IV 上において電気的伝送路接続部13を介してグランドプレート5に電気的に接続されている。電気的伝送路接続部13はたとえば、はんだ箇所または導電性接着材である。さらに、フィルム導体10は接続端要素14も有し、たとえば、電子受信回路または電子送信回路に接続するための、ここでは特にGPS電子受信回路に接続するための、同軸SMA(Sub-Minature-A)コネクタを有する。
【0070】
グランドプレート5は、6cmの幅bGと13cmの長さlGとを有する方形の基礎面を有する。グランドプレート5は、内部板材1に関してアンテナ構造部4を直交投影した領域から突出している。グランドプレート5は、板材縁部30から板材内側に向かって約20mmの距離だけずれている。
【0071】
図1Eは、図1Bの切断線C‐C’に沿った断面図である。アンテナ構造部4の直交投影は、内部板材1の車内側表面 IV 上の面Aにわたって延在する。グランドプレート5は、アンテナ構造部4を直交投影した面Aから完全に、つまり全体的に突出している。
【0072】
アンテナ構造部4の正方形の基礎面は、その側辺が板材縁部30に対して平行にして配置されている。もちろん、側辺が板材縁部30に対して所定の角度をとること、たとえば45°とすることもできる。信号伝送路11は、アンテナ構造部4の、側縁部30に直接隣接する側辺において、当該アンテナ構造部4に接続されている。スリット状の切抜部6、および三角形の切抜部7が設けられた対角線は、信号導体11の接続点から見て左下から右上に向かって延在している。
【0073】
図中のアンテナ構造部4は、1575,42MHzのL1周波数を有する右旋円偏波のGPS信号を受信するために適したものである。図中のアンテナ構造部4はまた、良好なGLONASS受信を達成するためにも適したものである。
【0074】
アンテナ構造部4およびグランドプレート5は、車両ウィンドウアンテナ板材100のうち、外部板材2の車内側表面 II 上にカバープリント32が黒色印刷の形態で設けられた領域に配置されている。カバープリント32は、可視光に対して非透過性であり、車体内側への車両ウィンドウアンテナ板材100の接着部まで、ないしはアンテナ構造部4またはグランドプレート5までの透視を遮る。カバープリント32は、アンテナ構造部4とグランドプレート5とによって構成されるアンテナの周波数領域の電磁波に対しては透過性である。アンテナの作用は、カバープリント32によっては影響を受けないか、または実質的に影響を受けない。
【0075】
図2Aは、図1Bの代替的な実施例の切断線A‐A’に沿った断面図である。図2Bは、図1Bの代替的な実施例の切断線B‐B’に沿った断面図である。
【0076】
図2Aおよび図2B図1Cおよび図1Dと相違する点は、アンテナ構造部4の配置のみである。アンテナ構造部4は、本実施例では外部板材2と中間層3との間に配置されている。アンテナ構造部4とグランドプレート5との間の誘電体は、中間層3、およびアンテナ構造部4とグランドプレート5との間の内部板材1によって構成されている。フィルム導体10は、車両ウィンドウアンテナ板材100の内側において、外部板材2と中間層3との間に延在している。その他の構成は、図1A〜1Eについての記載事項に相当する。
【0077】
図3Aは、図1Bの他の代替的な一実施例の切断線A‐A’に沿った断面図である。図3Bは、図1Bの他の代替的な一実施例の切断線B‐B’に沿った断面図である。
【0078】
図3Aおよび図3B図2Aおよび図2Bと相違する点は、グランドプレート5の配置のみである。アンテナ構造部4は、本実施例では外部板材2と中間層3との間に配置されている。グランドプレート5は、中間層3と内部板材1との間に配置されている。アンテナ構造部4とグランドプレート5との間の誘電体は、中間層3のうち、アンテナ構造部4とグランドプレート5との間の領域によって構成されている。信号伝送路11およびシールド12は車両ウィンドウアンテナ板材100の内側において、外部板材2と中間層3との間に延在しており、シールド12は、同様に車両ウィンドウアンテナ板材100の内側において、または板材縁部30において、電気的伝送路接続部13を介してグランドプレート5にコンタクトしている。車両ウィンドウアンテナ板材100の内側に配置されている電気的伝送路接続部13については、図4Eにおいて詳細に例示されている。その他の構成は、図1A〜1Eについての記載事項に相当する。
【0079】
図4Aは、本発明の他の代替的な一実施形態の車両ウィンドウアンテナ板材100の平面図である。図4Bは、図4Aの一部Zの拡大図である。図4Cは、図4Bの切断線A‐A’に沿った断面図である。図4Dは、図4Bの切断線B‐B’に沿った断面図である。図4Eは、図4Bの切断線D‐D’に沿った断面図である。
【0080】
図4Aの車両ウィンドウアンテナ板材100は、その材料および配置については基本的に図1Aの車両ウィンドウアンテナ板材100と一致しているので、以下では両車両ウィンドウアンテナ板材100間の相違点のみを述べる。図1Aとの相違点は、アンテナ構造部4およびグランドプレート5が、車両ウィンドウアンテナ板材100の上部側縁部31に配置されていることである。アンテナ構造部4およびグランドプレート5は、同図では通信窓33の領域に配置されている。通信窓33のこの領域には、たとえば降雨センサまたはカメラ等の他のセンサが配置されている。通信窓33の領域は車内スペース側において、有利にはセンサを内部に配置したプラスチック筐体によって覆われている(同図では示されていない)。アンテナ構造部4およびグランドプレート5は、その材料および寸法については、図3Aおよび図3Bの実施例のアンテナ構造部4およびグランドプレート5と一致する。図3Aおよび図3Bとの相違点は、中間層3が車両ウィンドウアンテナ板材100全体にわたって均等には設けられておらず、2つの部分領域に分割されていることである。アンテナ構造部4とグランドプレート5との間には、その周辺の領域の中間層3の誘電体の比誘電率εr,3より大きい比誘電率εr,3’を有する材料から成る中間層3’が設けられている。よってアンテナ構造部4は、外部板材2と中間層3’のこの領域との間に配置されることとなる。グランドプレート5は、中間層3’の領域と内部板材1との間に配置されている。本実施例では誘電率については、たとえばεr,3’=3×εr,3が適用される。アンテナ構造部4とグランドプレート5との間の中間層3’の適切な選定により、アンテナ特性を実際の要求に特に良好に合わせて調整することができる。
【0081】
本発明のアンテナ構造部4の本実施例ではさらに、当該アンテナ構造部4の基礎面において2つの方形の切抜部8が、当該アンテナ構造部4と信号伝送路11との間の電気的伝送路接続部13の両側に配置されている。これらの方形の切抜部8により、アンテナ構造部4からのアンテナ信号の出力が改善される。
【0082】
図4Eは、図4Bの切断線D‐D’に沿った断面図である。同図では、ストリップ導体10のシールド12とグランドプレート5との間の電気的伝送路接続部13の一実施例が示されている。本実施例では、シールド12の一部区間が中間層3’とグランドプレート5との間に配置されている。シールド12とグランドプレート5との間のこの電気的伝送路接続部13は、板材縁部31から約10mm離隔している。このことによって、この複層板材の内側に伝送路接続部13を簡単かつ確実に封入することができ、伝送路接続部13は機械的に安定化され、水分から気密に保護され、ひいては腐食防止される。
【0083】
もちろん、上述の措置は有利には、本発明の他の実施形態と組み合わせることもでき、特に図3Aおよび図3Bの実施形態と組み合わせることができる。
【0084】
図5は、図4A〜4Dに示された本発明の車両ウィンドウアンテナ板材100の実施例に代わる代替的な一実施例を示しており、本実施例ではアンテナ構造部4の基礎面のみが、図4A〜4Dとは異なる形状を有している。本実施例では基礎面は楕円形であり、信号伝送路11はその長軸ないしは短軸に対してたとえば45°の角度で配置されている。本実施例では、アンテナ構造部4の基礎面の長さlは楕円形の最大径に相当する。すなわち、長軸の方向における径に相当する。幅bは、本実施例では楕円形の最小径に相当する。
【0085】
図6A〜6Dは、図1A〜1Dに示された本発明の車両ウィンドウアンテナ板材100の実施例に代わる代替的な一実施例を示しており、本実施例ではアンテナ構造部4の電気的コンタクトのみが異なる構成となっている。図6A〜6Dに示されているように、信号伝送路11はグランドプレート5およびシールド12の平面内に配置されており、かつシールド12は、グランドプレート5と単一片を成すように連結している。信号伝送路11は本実施例では、介挿されている誘電体としての内部板材1を介して、アンテナ構造部4と容量結合されている。アンテナ信号はこの誘電体を介して、信号伝送路11の容量結合領域20と結合され、接続端要素14へ伝送される。かかる構成は、信号伝送路11もシールド12のいずれも、車両ウィンドウアンテナ板材100の内側に引き入れる必要がないという格別な利点を奏する。電気的コンタクトは全て、本実施例では車両ウィンドウアンテナ板材100の外側に位置している、グランドプレート5の平面を介して行われる。グランドプレート5、信号伝送路11、および本実施例ではグランドプレート5の直接的な電気的コンタクトにも使用されるシールド12は、基材フィルム上に配置すること、たとえばポリイミドフィルムまたはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に配置することもできる。その厚さはそれぞれ、たとえば0.05mmである。これに代えて、グランドプレート5、信号伝送路11およびシールド12を、たとえばカメラカバー等の形状安定性のプラスチック基材上に配置して、当該プラスチック基材と共に、たとえば接着によって、内部板材1の車内側表面 IV に固定することもできる。
【0086】
図7は、本発明の車両ウィンドウアンテナ板材100の本発明の一実施例の製造方法のフローチャートである。
【0087】
図8は、いわゆるS11パラメータの測定結果を示している。測定結果を得るために、接続端要素14を介してアンテナの入力端にネットワークアナライザを接続し、その入力端反射を周波数の関数として測定した。S11パラメータは、入力端が参照システム(ここでは50Ω)にどの程度良好に(ないしはどの程度劣悪に)マッチングされているかの情報を示唆するものであり、よって、電気信号のうちどのような割合が電磁信号に変換されてアンテナによって放射されるかを表す尺度を示唆するものである。S11値が高い場合には(ここではたとえば−5dB)、入力信号が強く反射されており、当該周波数に対するアンテナのマッチングは悪く、よってアンテナは、供給された電気信号を、放射される電磁波に有効に変換していないということができる。S11値が低い場合には(ここではたとえば−40dB)、入力信号があまり反射されておらず、したがって当該周波数に対するアンテナのマッチングは良好であり、よってアンテナは、供給された電気信号を、放射される電磁波に非常に有効に変換しているということができる。信号マッチングが良好であるということは、アンテナが、適切な周波数帯の入射した電磁波を良好に吸収して電気信号に有効に変換していると推定することもできる。
【0088】
図8は、事例1(点線)において、図1A〜1Fの実施例の車両ウィンドウアンテナ板材100における1GHz〜2GHzの周波数領域の場合のS11パラメータの測定結果を示している。当該測定に際しては、車両ウィンドウアンテナ板材100をテストベンチ上で測定した。すなわち、車両ウィンドウアンテナ板材100を車体に組み付けなかった。当該測定により、約1.575GHzの周波数の場合、最小値は約−13dBとなった。基準値として、1.575GHzの周波数を縦の破線としてグラフ中にプロットしている。
【0089】
当該測定により、事例1の車両ウィンドウアンテナ板材100は、1.50GHz〜1.65GHzの領域において−10dB未満のS11値を示し、これにより、良好なGPS受信および良好なGLONASS受信の双方を達成するために十分に広帯域となるので、GPS受信のために非常に良好なアンテナ特性を示していることが分かる。
【0090】
図8はさらに、事例2(実線)において、車両ウィンドウアンテナ板材100を車体に組み付けた状態で行った、事例1の車両ウィンドウアンテナ板材100のS11パラメータの測定結果を示している。当該測定により、約1.575GHzのGPS周波数の場合、値は約−18dBとなり、約1.65GHzの周波数の場合には最小値は約−42dBにもなった。
【0091】
事例2の車両ウィンドウアンテナ板材100は、給電線として使用されるストリップ導体10が車体の組付フレームの直近に設けられて組み付けられた状態の場合、GPS関連およびGLONASS関連の1.50GHz〜1.65GHzの周波数領域において、事例1の組み付けられていない状態の車両ウィンドウアンテナ板材100より格段に良好な受信特性(低いS11値)を示す。この効果は、当業者にとって想定し得ないものであり、かつ驚くべきものであった。
【0092】
まとめとして、本発明は、アンテナ、特にGPS/GLONASSアンテナを、簡単かつ低コストで組み込むことができる、改善された車両ウィンドウ板材を提供するものである。
【符号の説明】
【0093】
1 内部板材
2 外部板材
3,3’ 中間層
4 アンテナ構造部
5 グランドプレート
6 スリット状の切抜部
7 三角形の切抜部
8 方形の切抜部
10 ストリップ導体、フィルム導体
11 信号伝送路
12 シールド
13 電気的伝送路接続部
14 接続端要素
15 内部導体
16 電気絶縁部
20 容量結合領域
30,31 板材縁部
32 カバープリント
33 通信窓
100 車両ウィンドウアンテナ板材
A アンテナ構造部4の直交投影の面
三角形の切抜部7の隣辺長
アンテナ構造部4の幅
グランドプレート5の幅
スリット状の切抜部6の幅
εr,1/2 内部板材1または外部板材2の比誘電率
εr,3,εr,3’ 中間層3,3’の比誘電率
アンテナ構造部4の長さ
グランドプレート5の長さ
スリット状の切抜部6の長さ
A−A’ 切断線
B−B’ 切断線
C−C’ 切断線
Z 一部
I 外部板材2の外部側表面
II 外部板材2の車内側表面
III 内部板材1の外部側表面
IV 内部板材1の車内側表面
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
【国際調査報告】