特表2018-513898(P2018-513898A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-513898炭化水素ポリオールを用いた軟質ポリウレタンフォーム及びそれを含む化粧品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-513898(P2018-513898A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(54)【発明の名称】炭化水素ポリオールを用いた軟質ポリウレタンフォーム及びそれを含む化粧品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20180427BHJP
   C08G 18/36 20060101ALI20180427BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20180427BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20180427BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20180427BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20180427BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20180427BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALN20180427BHJP
   A61K 8/02 20060101ALN20180427BHJP
   A61K 8/87 20060101ALN20180427BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20180427BHJP
【FI】
   C08G18/40 063
   C08G18/36
   C08G18/62 004
   C08G18/67 060
   C08G18/65
   C08F279/02
   A45D34/04 535C
   A61Q1/12
   A61K8/02
   A61K8/87
   C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-553346(P2017-553346)
(86)(22)【出願日】2015年11月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】KR2015012288
(87)【国際公開番号】WO2016167435
(87)【国際公開日】20161020
(31)【優先権主張番号】10-2015-0051752
(32)【優先日】2015年4月13日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0159751
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン−スー・カン
(72)【発明者】
【氏名】サン−ウク・パク
(72)【発明者】
【氏名】キョン−ソプ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン−ヒュプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】セ−ラ・シン
【テーマコード(参考)】
4C083
4J026
4J034
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC692
4C083AD042
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083CC12
4C083DD47
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4J026BA06
4J026BA20
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4J034RA02
(57)【要約】
本発明は、ポリオールを含む軟質ウレタンフォームを製造するための軟質ウレタンフォーム用組成物において、前記ポリオールは、炭化水素ポリオール、植物油及び植物油来由ダイマー酸のうち選択されたいずれか1つ、または炭化水素ポリオールと植物油及び植物油来由ダイマー酸のうち選択されたいずれか1つとの混合物であることを特徴とする軟質ウレタンフォーム用組成物、及びそれを用いて発泡させた軟質ウレタンフォームを提供する。本発明は、親水性化粧料組成物を含浸させるために含浸材の極性を調節できる化粧料組成物含浸用含浸材、及びそれを製造するための含浸用ウレタンフォーム組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む軟質ウレタンフォームを製造するための軟質ウレタンフォーム用組成物において、
前記ポリオールは、炭化水素ポリオール、植物油及び植物油来由ダイマー酸のうち選択されたいずれか1つ、または炭化水素ポリオールと植物油及び植物油来由ダイマー酸のうち選択されたいずれか1つとの混合物であることを特徴とする軟質ウレタンフォーム用組成物。
【請求項2】
前記炭化水素ポリオールは、ヒドロキシ官能基数が2〜10であり、数平均分子量が100〜100,000g/moleであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭化水素ポリオールは、ヒドロキシ官能基数が2〜3であり、数平均分子量が300〜50,000g/moleであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオールは、炭素と炭素との二重結合を有し、前記二重結合の一部または全部が付加反応を通じて改質されたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオールは、炭化水素ポリオール及び植物油を共に含むことを特徴とする請求項1に記載の軟質ウレタンフォーム用組成物。
【請求項6】
前記ポリオールは、ポリオールの総重量に対した植物油の含量比率が50重量%未満であることを特徴とする請求項5に記載の軟質ウレタンフォーム用組成物。
【請求項7】
前記付加反応は、付加反応開始剤によって高分子間の架橋結合を通じて行われるか、又は、ビニル単量体、アクリル単量体及びアクリルエステル単量体からなる群より選択されたいずれか1つを添加して行われることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記改質は、付加反応開始剤を添加して架橋結合を誘導することで行われることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記付加反応開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−ベンゾエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシ−ジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−アミルペルオキシ−ネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、ジイソノナノイルペルオキシド、ジドデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、t−ブチルペルネオデカノエート、t−ブチルペルベンゾエート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メトキシブチロニトリル)、メチルトリフェニルホスホニウム臭化物、エチルトリフェニルホスホニウム臭化物、フェニルトリフェニルホスホニウム臭化物、HSO、HClO、HCl、BF、BCl13、BF:O(C、TiCl、AlCl、AlBr及びSnClからなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記改質は、付加反応開始剤を添加し、ビニル単量体、アクリル単量体及びアクリルエステル単量体からなる群より選択されたいずれか1つ以上を加えて行われることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記ビニル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びクロトン酸からなる群より選択されたカルボキシル基含有ビニル単量体;無水マレイン酸及び無水イタコン酸からなる群より選択された酸無水物ビニル単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル及びメタクリル酸ヒドロキシヘキシルからなる群より選択されたヒドロキシル基含有ビニル単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルメタクリルアミドからなる群より選択されたN−置換アミド系ビニル単量体;アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル及びメタクリル酸エトキシエチルからなる群より選択されたアクリル酸アルコキシアルキルビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリル、N−ビニルカルボン酸アミド、スチレン、α−メチルスチレン及びN−ビニルカプロラクタムからなる群より選択されたビニル単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選択されたシアノアクリレートビニル単量体からなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アクリル単量体は、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルからなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記アクリルエステル単量体は、アクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール及びメタクリル酸メトキシポリプロピレングリコールからなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記軟質ウレタンフォーム用組成物は、イソシアネート化合物、発泡剤、整泡剤及び触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記イソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及びこれらの変性体からなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記炭化水素ポリオールは、cis−1,4−ポリブタジエンポリオール、trans−1,4−ポリブタジエンポリオール、1,2−ポリブタジエンポリオール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つのポリブタジエンポリオールであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記植物油は、ヒマシ油、大豆油、ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油及び菜種油からなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記植物油来由ダイマー酸は、下記化学式1で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【化1】
(ここで、R及びRはそれぞれC4〜C8の直鎖アルキレン基を示し、R及びRはC4〜C8の直鎖アルキル基を示す。)
【請求項19】
請求項1〜請求項18のうちいずれか1項に記載の組成物を発泡させて製造する軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項20】
前記軟質ウレタンフォームは、液状組成物含浸用含浸材、化粧用塗布具、またはパッキング材として使用されることを特徴とする請求項19に記載の軟質ウレタンフォーム。
【請求項21】
前記液状組成物は、化粧料組成物を含むことを特徴とする請求項20に記載の軟質ウレタンフォーム。
【請求項22】
請求項19に記載の軟質ポリウレタンフォーム;及び
前記軟質ポリウレタンフォームに含浸した化粧料組成物を含む、化粧料組成物が軟質ポリウレタンフォームに含浸した化粧品。
【請求項23】
前記化粧品は、炭化水素ポリオールの二重結合が二重結合付加反応開始剤によって架橋結合を形成して改質された炭化水素ポリオールを発泡させて得た軟質ポリウレタンフォームに、1,000〜10,000cPsの粘度を有する化粧料組成物を含浸させたものである請求項22に記載の化粧品。
【請求項24】
前記化粧品は、炭化水素ポリオールの二重結合にビニル単量体及びアクリル単量体のうち選択されたいずれか1つ以上の単量体が添加されて改質された炭化水素ポリオールを発泡させて得た軟質ポリウレタンフォームに、1,000〜10,000cPsの粘度を有する化粧料組成物を含浸させたものである請求項22に記載の化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム及びそれを含む化粧品に関し、より詳しくは、ポリウレタンフォームの極性を容易に調節できる軟質ポリウレタンフォーム及びそれを含む化粧品に関する。
【0002】
本出願は、2015年4月13日出願の韓国特許出願第10−2015−0051752号及び2015年11月13日出願の韓国特許出願第10−2015−0159751号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタンフォームは、通常、ポリオール、ポリウレタンフォーム製造用触媒、発泡剤などを含むレジンプレミックスを製造し、該レジンプレミックスとポリイソシアネートとを反応させることで得られる。
【0004】
ポリウレタンフォームは、優れた断熱性能、成形性、自己接着性のため、電気冷蔵庫、冷凍庫、冷凍倉庫、建材パネルなどの断熱材に使用され、また、優れたクッション性のため、自動車など車両用シートクッション、シートバック、ヘッドレスト、アームレスト、インストルメントパネル、ドアトリム(door trim)、天井材などの内装材、二輪車用サドル、航空機、鉄道車両用シート材、その他家具、寝具、事務用椅子のクッション材などの事務用品などに幅広く使用されている。
【0005】
ウレタンフォームの製造には、一般に、石油由来の合成ポリオールが主に使用されている。このような従来の石油由来の合成ポリオールを植物油由来の天然ポリオールで代替して、環境にやさしいポリウレタンを製造しようとする努力が多大に行われている(Petrovic、Z.S.、「Polyurethanes from Vegetable Oils」、Polym.Rev.、48(1)、109-155 (2008).Kong、X.、and Narine、S.S.、「Physical Properties of Polyurethane Plastic Sheets Produced from Polyols from Canola Oil」、Biomacromolecules、8(7)、2203-2209(2007).など)。しかし、植物油を用いたウレタンフォームの製造技術は殆どが硬質ウレタンフォームに関するものであり、軟質ウレタンフォーム分野では植物油を活用したウレタンフォーム製造の研究が活発に行われていなかった。大豆油由来のポリオールのみで軟質フォームを合成する研究が一部あったものの、実際には多量のクローズドセル(closed cell)が発見された(J.John、M.Bhattacharya、and R.B.Turner、Characterization of polyurethane foams from soybean oil、J.Appl.Polym.Sci.、86、3097(2002).)。
【0006】
一方、軟質ポリウレタンフォームはオープンセル(open cell)構造であって、弾性力に優れ、機械的強度(伸率、引張強度、耐磨耗性)に優れて包装材料など多様な産業分野で活用されている。
【0007】
近年のクッションパクト、クッション化粧品など、ウレタン発泡体に化粧料組成物を含浸させた形態は、化粧品業界で画期的な製品として評価され、化粧品業界でも軟質ウレタンフォームに対する関心が高まっている。
【0008】
ポリオール、二官能性以上のイソシアネート及び発泡剤などで製造されるウレタン発泡体は、用いられるポリオールによって多様な特性を有し得る。軟質のウレタン発泡体スポンジは比較的に分子量の大きいポリオールで製造され、類型別にはポリエーテル系とポリエステル系が主に用いられる。
【0009】
化粧料組成物を含浸させる発泡ウレタンフォームとしては、殆どエーテル系ポリウレタンフォームを使用している。しかし、エーテル系ポリウレタンフォームは、エステル結合を含むポリオールを用いたエステル系のポリウレタンに比べて、引張強度、硬度、伸率及び難燃性が劣る。エステル系ポリウレタンフォームは均一なセル組織を有し、耐薬品特性に優れて酸化に強い。しかし、エーテル系ポリウレタンフォームとは違って、加水分解される性質があるため、耐水性が弱いことが短所として知られており、実際このような理由で化粧料組成物を含浸させる用途としては極めて制限的に使用されている実情である。
【0010】
化粧料組成物の物性及び含有成分の差異によってエーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合し、適切なウレタンフォーム含浸材を選択するための努力が行われているが、ポリオール同士の相溶性が良くないという問題があった。
【0011】
一方、ポリウレタンフォームの製造に使用するイソシアネート及びその他添加剤の組成比を調節して極性を少し調節できるものの、化粧料組成物の物性に応じて多様に調節して使用することはできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US2004−0170670A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性が改善され、変形なく使用できる軟質ウレタンフォームを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、化粧品業界で多様に活用できる新たな軟質ウレタンフォームを提供することを他の目的とする。
【0015】
また、本発明は、化粧料組成物を含浸させるための新たな含浸材及びそれを含む化粧品を提供することをさらに他の目的とする。
【0016】
また、本発明は、親油性化粧料組成物の含浸に有利な化粧料組成物含浸用含浸材及びそれを含む化粧品を提供することをさらに他の目的とする。
【0017】
また、本発明は、化粧料組成物の種類に応じて含浸材の極性を調節できる方法及びそれを用いて製造された化粧料組成物含浸用含浸材を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を達成するため、本発明は、炭化水素ポリオールを用いた軟質ウレタンフォームを製造するための組成物を提供する。植物油由来のポリオールの場合、発泡フォームを製造するためのポリオールの分子量が大体1000g/mol以下と軟質フォームとして製造されるには低く、架橋密度が高くてオープンセルを形成し難くなるため、多くのクローズドセルが形成される問題があった。このような問題を解決するため、本発明者らは、植物油を含むポリオールを用いてウレタンフォームを製造すると同時に、オープンセル構造の形成が容易な軟質ウレタンフォームを製造するため、長年の研究の末、本発明の完成に至った。
【0019】
また、他の実施例において、本発明は、植物油または植物油来由ダイマー酸(dimer acid)を用いた軟質ウレタンフォーム組成物、及び前記組成物を用いた軟質ウレタンフォームを提供する。望ましくは、さらに他の実施例において、本発明は、植物油または植物油来由ダイマー酸を用いた化粧用軟質ウレタンフォーム組成物、及びそれを用いた軟質ウレタンフォームを提供する。望ましくは、本発明は、炭化水素ポリオール、及び植物油または植物油来由ダイマー酸からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む軟質ウレタンフォーム組成物を提供する。望ましくは、本発明は、前記ウレタンフォームを製造するための組成物を用いて製造された化粧料組成物含浸材、及び前記含浸材を含む化粧品を提供する。
【0020】
本発明者らは、エステル系ウレタンフォームとエーテル系ウレタンフォームとが有する長所を共に利用できる軟質ウレタンフォームを開発するため長年研究を重ねて本発明の完成に至った。特に、本発明者らは、含浸材に含浸する化粧料組成物の物性によって含浸効率に影響が及び得ることを確認し、ポリオール同士の相溶性が良くないことからエーテルポリオールとエステルポリオールとの混合を用いたウレタンフォーム含浸材を開発し難いという問題を解決できる新たな素材を開発するために努力した。
【0021】
本発明者らは、従来化粧品業界では全く試みなかった、新たなタイプのポリオールを用いた軟質ウレタンフォームの開発に至った。
【0022】
ウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオールに植物油を含ませて発泡フォームを製造する例はあるものの、架橋密度が高く、クローズドセル構造が多く形成されるため、軟質ウレタンフォームを使用する分野では殆ど活用できないという問題があった。しかし、本発明の実施例によって製造されたウレタンフォームは、オープンセル構造を形成して、軟質ウレタンフォームの形成に有利であるという事実を確認した。
【0023】
軟質ウレタンフォームは、産業及び家庭用洗浄具、ソファ−やベッドなどの家具類及び自動車部品、油吸着材、吸音材などとして活用され、化粧品業界では、特に、塗布用パフ、包装及びパッキング材、洗顔具などとして活用されている。特に、化粧料組成物を担持するための含浸材に望ましく利用できる。
【0024】
化粧品製造業界では、水分と油分とを同時に有する化粧品を担持しなければならない特性、塗布具を用いて含浸材を持続的に圧迫する特性、外部圧迫や圧力にも一定形態を維持しなければならない特性、化粧品含浸材が磨耗または崩壊してはならない特性のため、化粧料組成物含浸用ウレタンフォームを製造するためのポリオールの選択には限界があった。しかし、本発明者らは、従来業界では全く予測できなかった、すべての条件を満足できる全く新たな化粧料組成物含浸用ウレタンフォームを製造するためのポリオールの開発に至った。
【0025】
本発明は、ポリオールを含む軟質ウレタンフォームを製造するための軟質ウレタンフォーム用組成物において、前記ポリオールは、i)炭化水素ポリオール、ii)植物油及び植物油来由ダイマー酸のうち選択されたいずれか1つ、または、iii)炭化水素ポリオールと、植物油及び植物油来由ダイマー酸のうち選択されたいずれか1つとの混合物を使用することができる。望ましくは、前記ポリオールは炭化水素ポリオールと植物油とをともに含むことができる。
【0026】
本発明の他の実施例によれば、前記炭化水素ポリオールと植物油とをともに含むポリオールは、フォーム製造用組成物に含まれたポリオールの総重量に対して植物油を50重量%未満で含むことができ、望ましくは45重量%未満、より望ましくは42重量%未満で含むことができる。
【0027】
前記炭化水素ポリオールと植物油とをともに含むポリオールの場合、植物油の含量が50重量%を超える場合、ポリオール同士の相溶性が良くなく、安定的な軟質ウレタンフォームが生成されないという問題があった。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記i)炭化水素ポリオール、及びii)植物油または植物油来由ダイマー酸は、炭素と炭素との二重結合を有し、前記二重結合の一部または全部が付加反応を通じて改質されたものであり得る。
【0029】
ここで、改質される二重結合は、主鎖ではなく、側鎖に存在する二重結合であり得る。
【0030】
本明細書で使われる「改質」との用語は、炭素と炭素との二重結合に、二重結合反応開始剤またはビニル単量体、アクリル単量体、アクリルエステル単量体などのような単量体を添加して架橋結合またはグラフト重合反応を誘導することを意味する。
【0031】
本明細書で使われる「主鎖」との用語は、業界で一般に認識される意味で使われ、本発明の炭化水素ポリオール、植物油または植物油来由ダイマー酸などの骨格を成す結合を意味して、炭素数の多い炭化水素鎖を意味する。
【0032】
本明細書で使われる「側鎖」との用語は、主鎖から枝分かれして延びた結合を意味する。
【0033】
前記炭化水素ポリオールは、ヒドロキシ官能基数が2〜10であり、数平均分子量(g/mol)が100〜100,000であり得、望ましくは300〜50,000、より望ましくは500〜10,000であり得る。本発明の炭化水素ポリオールの分子量が100未満であれば、弾性を失う恐れがあり、100,000を超えれば、常温での粘度が高くてフォーム製造工程に適用し難く、適切な硬度のフォームを製造できない恐れがある。
【0034】
望ましくは、本発明の軟質ウレタンフォームを製造するための組成物に含まれる炭化水素ポリオールは、cis−1,4−ポリブタジエンポリオール、trans−1,4−ポリブタジエンポリオール、1,2−ポリブタジエンポリオール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つのポリブタジエンポリオールであり得、cis−1,4−ポリブタジエンポリオール/trans−1,4−ポリブタジエンポリオール/1,2−ポリブタジエンポリオールの混合物を使用することが最も望ましい。
【0035】
前記植物油は、ヒマシ油、大豆油、ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、菜種油などを含むことができ、必要に応じて水酸基を導入した変性菜種油、水酸基を導入した変性ひまわり油、水酸基を導入した変性菜種油などを使用することができる。望ましくは、前記植物油はヒマシ油を含むことができる。前記ヒマシ油は、主成分であるリノール酸の含量が多く、多くの植物油が有しているトリグリセリドとの二重結合だけでなく、幾つかの水酸基を有しているため、多様な改質の可能性がある。具体的に、他の植物油と違って、ポリオールとして使用するための水酸基の導入が要らず、分子量が多いため、本発明による軟質ウレタンフォームの製造に有利である。
【0036】
前記植物油来由ダイマー酸は、廃食用油、サフラワー油、トール油、魚油、菜種油、オリーブ油などで発生する資源から由来でき、例えば、植物油成分内のジエン酸の熱重合による炭素数36以上のダイマー酸、炭素数54以上のトリマー酸(Trimer acid)、または非共役化ダイマー酸を含む化合物を使用することができる。
【0037】
このような化合物は、現在一般に知られている物質であり、本発明では下記化学式1で表される植物油来由ダイマー酸を例示することができる。
【化1】
(ここで、R及びRはそれぞれC4〜C8の直鎖アルキレン基を示し、R及びRはC4〜C8の直鎖アルキル基を示す。)
【0038】
本発明のさらに他の実施例によれば、本発明の炭化水素ポリオール、及び植物油または植物油来由ダイマー酸は、炭素と炭素との二重結合を有し、前記二重結合の一部または全部が付加反応を通じて改質され得る。
【0039】
前記改質反応は、高分子間の架橋結合を通じて行われるか、または、ビニル単量体、アクリル単量体及びアクリルエステル単量体からなる群より選択されたいずれか1つを添加したグラフト重合反応で行われ得る。
【0040】
例えば、図1に示されたように、ポリブタジエンポリオールの二重結合が二重結合反応開始剤によって架橋結合を形成することができる。
【0041】
また、図2に示されたように、ポリブタジエンポリオールの二重結合がアクリル単量体の1つであるアクリル酸の添加によってグラフトされ得る。
【0042】
図1及び図2についての説明は本発明を説明するための例示的な言及に過ぎず、図1及び図2についての内容で本発明が限定されることはない。
【0043】
望ましくは、前記炭化水素ポリオールと前記植物油(または植物油来由ダイマー酸)とをともに使用したフォーム製造用組成物を用いて製造したフォームは、化粧料組成物を含浸させて使用するとき、化粧料組成物の極性を容易に調節することができる。
【0044】
前記二重結合反応開始剤は、特に限定されず、過酸化物、過酸化エステル及びアゾ化合物などのようなラジカル反応開始剤と、三フッ化ホウ素のような陽イオン開始剤など多様な例を利用できる。
【0045】
例えば、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−ベンゾエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシ−ジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−アミルペルオキシ−ネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、ジイソノナノイルペルオキシド、ジドデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、t−ブチルペルネオデカノエート、t−ブチルペルベンゾエート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メトキシブチロニトリル)及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つの開始剤を使用することができる。
【0046】
また、例えば、プロトン酸、ルイス酸(Lewis acid)、またはイオン化の容易な化合物を使用でき、具体的な例としてはHSO、HClO、HCl、BF、BCl13、BF:O(C、TiCl、AlCl、AlBr、SnClなどが挙げられる。また、アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩などの各種オニウム塩、そしてメチルトリフェニルホスホニウム臭化物、エチルトリフェニルホスホニウム臭化物、フェニルトリフェニルホスホニウム臭化物などを制限なく使用でき、これら開始剤も多様な混合形態で添加することができ、上述した多様なラジカル開始剤との混用も可能である。
【0047】
本発明のさらに他の実施例によれば、炭化水素ポリオールと、植物油または植物油来由ダイマー酸との二重結合には、ビニル単量体、アクリル単量体及びアクリルエステル単量体からなる群より選択されたいずれか1つ以上を添加することができる。
【0048】
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びクロトン酸からなる群より選択されたカルボキシル基含有ビニル単量体;無水マレイン酸及び無水イタコン酸からなる群より選択された酸無水物ビニル単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル及びメタクリル酸ヒドロキシヘキシルからなる群より選択されたヒドロキシル基含有ビニル単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルメタクリルアミドからなる群より選択されたN−置換アミド系ビニル単量体;アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル及びメタクリル酸エトキシエチルからなる群より選択されたアクリル酸アルコキシアルキルビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリル、N−ビニルカルボン酸アミド、スチレン、α−メチルスチレン及びN−ビニルカプロラクタムからなる群より選択されたビニル単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選択されたシアノアクリレートビニル単量体;アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルからなる群より選択されたエポキシ基含有アクリル単量体;アクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール及びメタクリル酸メトキシポリプロピレングリコールからなる群より選択されたグリコール系アクリルエステル単量体;またはこれらのうち2以上の混合物からなる群から選択されたいずれか1つを使用することができる。
【0049】
本発明のフォーム製造用組成物は、前記炭化水素ポリオール、及び植物油または植物油来由ダイマー酸からなる群より選択されたいずれか1つ以外にも、ポリウレタン発泡フォームを製造するために必要な発泡剤、整泡剤、触媒及びイソシアネート化合物をさらに含むことができる。
【0050】
前記発泡剤は化学的発泡剤であって、水、ヒドロキシフルオロカーボン類(HFC−245faなど)、炭化水素類(シクロペンテンなど)、炭酸ガス、液化炭酸ガス、二塩化メタンなどの物理的発泡剤も使用することができる。これらのうち、本発明の目的の面から、水、炭酸ガス、液化炭酸ガスが望ましい。本発明による発泡剤としては、液化炭酸ガスなどの物理的発泡剤も使用可能であるが、最も望ましくは水を使用することができる。発泡剤として水を使用する場合は、ポリオール全体成分100質量部に対し、望ましくは1.3〜6.5質量部、より望ましくは1.5〜6.0質量部、さらに望ましくは1.8〜5.5部、特に望ましくは2.0〜5.0質量部で含むことができる。発泡剤としての水の量が上記の範囲であれば、発泡が安定的且つ効果的に行われる。
【0051】
前記整泡剤としては、従来公知された整泡剤が使用でき、特に制限されないが、通常有機ケイ素系界面活性剤を使用することが望ましい。例えば、東レ・ダウコーニングシリコン(株)製のFV−1013−16、SRX−274C、SF−2969、SF−2961、SF−2962、L−3601、SZ−1325、SZ−1328、モメンティブ社製のL−5309、L−5307、L−3600、L−5366、L−580、Y−10366、エアプロダクト社製のDC−2525、DC−6070、エボニック社製のB−8715、B−8742、B−8450などを望ましく使用できる。整泡剤の使用量は、ポリオール全体成分100質量部に対し、望ましくは0.1〜10質量部、より望ましくは0.5〜5質量部の量で含むことができる。
【0052】
前記触媒は、業界でポリウレタン発泡フォームを製造するために使用する触媒を何れも使用できる。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、モルホリン類などの脂肪族アミン類;オクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物などを望ましく使用することができる。これらの触媒は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明のウレタンフォームを製造するため、ポリオール混合物とイソシアネート化合物とが混合される。前記イソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及びこれらの誘導体からなる群より選択されたいずれか1つ以上であり得る。
【0054】
本発明のポリウレタン製造のための組成物には、業界で一般に使用される成分をさらに加えることができる。例えば、セル安定化剤、架橋剤、鎖延長剤、防染剤、充填剤、補助ウレタンゲル化触媒、遷移金属触媒などを含むことができ、これらの例には業界で周知された成分が全て含まれ得る。
【0055】
本発明の一実施例によれば、前記軟質ウレタンフォームは以下のような製造方法で製造することができる。
【0056】
なお、業界の一般的な発泡ウレタンフォーム製造法で製造でき、以下の製造方法によって限定されない。以下の製造方法は本発明のポリウレタンフォームを製造するための方法の例示に過ぎない。
【0057】
(S1)炭化水素ポリオール、及び植物油または植物油来由ダイマー酸に、化学的発泡剤である水、物理的発泡剤、シリコン整泡剤、反応触媒であるアミン及び有機金属化合物、ポリブタジエンの架橋及びグラフトのための二重結合反応のための開始剤としてラジカル生成化合物、ビニル単量体及びアクリル単量体、そして酸化防止剤など添加剤を混合する段階;(S2)前記ポリオール混合物と反応を通じてポリウレタンを形成するイソシアネート化合物と混合する段階;及び(S3)前記(S2)段階の結果混合物を常温〜100℃以上の温度で発泡反応とゲル化反応を経て硬化させる段階を含むことができる。
【0058】
本発明の一実施例によれば、前記炭化水素ポリオール、及び植物油または植物油来由ダイマー酸誘導体からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む化粧料組成物含浸用ポリウレタンフォーム;及び前記ポリウレタンフォームに含浸した化粧料組成物を含む化粧品を提供する。
【0059】
本発明は、前記炭化水素ポリオール、及び植物油または植物油来由ダイマー酸からなる群より選択されたいずれか1つ以上のポリオールを用いて製造されたポリウレタンフォームの化粧料含浸材としての用途を提供する。
【0060】
本発明の前記含浸材は、液状の組成物を含浸させる用途で使用でき、望ましくは化粧料組成物を含浸させる用途で使用することができる。
【0061】
本明細書における「含浸」との用語は、化粧料組成物を製造する業界で一般に使用されている意味で使われ、具体的に、スポンジのように内部にポア(pore)が形成されている材質に内容物を担持させることを意味する。
【0062】
前記担持とは、任意の物質(例えば、液状、ゲル形態の化粧料だけでなく、高粘度の化粧料を含むことができる)を含んで保管できる能力を意味する。
【0063】
例えば、流動性のある物質としては、香水、液状洗剤(キッチン用、洗濯用など)などの生活用品を含むことができ、流動性のある液状であれば種類は特に制限されない。
【0064】
また、流動性のある化粧料組成物を内部に保存し、別途の道具などを用いて肌に塗布する形態の化粧品に利用できるが、ここに限定されることはない。
【0065】
前記流動性のある化粧料組成物は、化粧水、スキントナー、ローション、クリーム、ゲル(ジェル)、液状ファンデーション、ジェル状ファンデーションなどを含むことができ、剤形は特に制限されない。
【0066】
本発明の含浸材を含む化粧品は、炭化水素ポリオールの二重結合が二重結合反応開始剤によって架橋結合を形成して改質された炭化水素ポリオールを用いたポリウレタンフォームに、外相にオイルが存在する親油性化粧料組成物を含浸させたものであり得る。
【0067】
本明細書において、用語「外相」とは、化粧料組成物が含浸材に含浸するとき、前記含浸材との直接的な接触面を最も多く有する部分を意味し得る。例えば、単一相からなっている場合(すなわち、単独水相または単独油相)、該当単一相を外相とし、油中水型エマルションの場合は外相が油相であり、水中油型エマルションの場合は外相が水相である。また、多重エマルションを「(X)/(X)n/Y」のように記載する場合(前記「X、Y」は水相または油相であり得、水相であれば「W」と略称し、油相であれば「O」と略称する。前記「n」は1以上である)、前記「Y」が外相に該当し、例えば油中水中油型(O1/W/O2)での外相は「油相(O2)」である。
【0068】
前記化粧品は、炭化水素ポリオールの二重結合が二重結合付加反応開始剤によって部分的な架橋結合を形成して改質された炭化水素ポリオールを発泡させて得た軟質ポリウレタンフォームに、化粧料組成物を含浸させて製造することができる。例えば、前記化粧料組成物は、含浸可能な程度の粘度であれば特に限定されないが、例えば1,000〜10,000cPsの粘度を有する化粧料組成物が含浸できる。
【0069】
また、他の実施例において、前記化粧品は、炭化水素ポリオールの二重結合に、ビニル単量体及びアクリル単量体のうち選択されたいずれか1つ以上の単量体が添加されて改質された炭化水素ポリオールを発泡させて得た軟質ポリウレタンフォームに、化粧料組成物を含浸させて製造することができる。例えば、前記化粧料組成物は、含浸可能な程度の粘度であれば特に限定されないが、例えば1,000〜10,000cPsの粘度を有する化粧料組成物が含浸できる。
【発明の効果】
【0070】
本発明は、軟質ウレタンフォームを容易に製造できるウレタンフォーム製造用組成物を提供する。
【0071】
本発明は、耐腐食性に優れ、化粧品業界で用いられる化粧用パフ、塗布具などに使用することができる。
【0072】
本発明は、エステル系ウレタンフォームとエーテル系ウレタンフォームとの優れた特性を全て含むことができる。エステル系フォーム及びエーテル系フォームを製造するためのポリオール同士の相溶性が良くないことから生じた、物理的・化学的特性の調節が制限的であるという従来の問題点が緩和できた。
【0073】
本発明の軟質ウレタンフォームは、油吸着能に優れるため、海上油流出事故のとき、軽量の油吸着材としても活用することができる。
【0074】
本発明は、親油性化粧料組成物の含浸に有利な化粧料組成物含浸用含浸材を提供する。
【0075】
本発明は、親水性化粧料組成物を含浸させるため、含浸材の極性を調節できる化粧料組成物含浸用含浸材の製造方法を提供する。
【0076】
本発明は、化粧料組成物の含浸時に発生する含浸材の膨潤現象を解決することができる。
【0077】
本発明は、含浸材の耐久性を向上させ、含浸材を変形や腐食なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】代表的な炭化水素ポリオールであるポリブタジエンポリオールのポリブタジエンセグメントの二重結合がラジカル開始剤によって架橋結合する例を示した反応式である。
図2】代表的な炭化水素ポリオールであるポリブタジエンポリオールのポリブタジエンセグメントの二重結合に、ラジカル開始剤の存在下で、アクリル単量体の1つであるアクリル酸がグラフトされることを示した反応式である。
図3】本発明の軟質ウレタンフォーム(M3)に化粧料組成物を含浸させた場合(左)、及びエステル系ウレタンフォームに化粧料組成物を含浸させた場合(右)の腐食性を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、実施例などを挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例によって限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は本発明の具体的な理解を助けるために例示的に提供されるものである。
【0080】
[軟質ポリウレタンフォームの製造]
実施例1.ポリオールの改質
炭化水素ポリオールの改質は、フォーム製造工程前にビニル単量体またはアクリル単量体をグラフトさせる方法、及びフォーム製造工程中に架橋またはグラフト反応を行う方法が可能である。
【0081】
(1)フォーム製造工程前にビニル単量体またはアクリル単量体をグラフトさせる方法
付加反応開始剤であるベンゾイルペルオキシドを用いて、数平均分子量2,800g/moleのポリブタジエンポリオールにメタクリル酸を加えてポリブタジエンポリオールを改質した。ポリオールの総重量を基準に開始剤の含量は0.2%であり、メタクリル酸の添加量は2%であり、80℃の温度で6時間行った。
【0082】
(2)フォーム製造工程中に架橋またはグラフト反応を行う方法
付加反応開始剤であるt−ブチルペルベンゾエートを用いて、ポリウレタンフォーム発泡反応中に、数平均分子量2,800g/moleのポリブタジエンポリオールにメタクリル酸を加えてポリブタジエンポリオール系ポリウレタンフォームを改質した。ポリオールの総重量を基準に開始剤の含量は0.2%であり、メタクリル酸の添加量は2%であった。
【0083】
実施例2.ポリブタジエン系炭化水素ポリオールとヒマシ油を用いたポリウレタンフォームの発泡過程
分子量2,800g/mole、官能基数2.5のポリブタジエン系炭化水素ポリオール(cis−1,4−ポリブタジエンポリオール/trans−1,4−ポリブタジエンポリオール/1,2−ポリブタジエンポリオールを0.2/0.6/0.2の重量比で混合)とヒマシ油を用いた軟質ポリウレタンフォームは以下のように製造することができる。まず、常温で、ポリオールとヒマシ油とを下記表1に示した含量に従って適正比率で混合した後、撹拌して十分均一な状態にする。これら混合物の撹拌過程で混入した気泡を除去し、ポリウレタン反応に影響を与える水分を除去するため、真空脱泡及び乾燥の過程を施す。得られたポリオール混合物に、下記表1に示された配合比で触媒、整泡剤及び発泡剤を添加して高速で約10秒間撹拌する。次いで、計量したイソシアネート化合物(トルエンジイソシアネート(TDI T−80/T−65/T−100)を添加し、高速で10秒間撹拌した後、モールドに注入する。その後、発泡工程における反応の進行を確認するため、発泡による高さの上昇が停止する時間(rise time:RT)と、ゲル化による流動性喪失及び強度増加時間(gelation time:GT)を確認する。そして、発泡が行われたフォームを24時間常温で後反応が続くように措置した後、裁断することで、フォームを用途に適用することができる。フォームを必要に応じて網状に形成するため、別の工程を施すこともできる。
【0084】
下記表1には配合比とフォームの特性を例示した。含量は重量%で示した。
【0085】
【表1】
【0086】
上記の方法で軟質ウレタンフォームを製造した。ただし、ポリオールとヒマシ油とを混合しながら、t−ブチルペルベンゾエート(過酸化物開始剤)とアクリル酸(アクリル単量体)を下記表2に示した含量ほど追加して混合した後、撹拌して十分均一な状態にした。下記表2の改質過程を経て、ウレタンフォーム用組成物のポリオールとしてブタジエンポリオール/ヒマシ油/水添ヒマシ油(70/25/5)混合物が得られた。
【0087】
【表2】
【0088】
[化粧料組成物の製造]
下記表3の組成を有するファンデーションを次のようにして製造した。
【0089】
油相槽に油相成分と増粘剤を入れて、80℃に加熱して均一にした後、顔料を入れて分散させた。水相槽には水相成分を入れて、80℃に加熱して原料を完全に溶解した後、顔料が分散している油相槽に添加し、ホモミキサーで乳化して低粘度紫外線遮断乳化物を製造した。40mlの安定性容器に内容物を充填し、25℃のチャンバに一日以上保管した後、ブルックフィールドLVII粘度計で4番スピンドルを用いて30rpmで1分作動させてから、25℃における粘度を測定したとき、それぞれ下記のような粘度を示した。
【0090】
【表3】
【0091】
[軟質ウレタンフォームの含浸材]
実験例1.化粧品含浸による効果
表1及び表2の組成で製造した軟質ウレタンフォームの表面外観は、目視で観察した結果、一般に使用されるスポンジの外観とあまり変わらなく、化粧料含浸材としての使用に適したことが確認された。
【0092】
以下、化粧料組成物を含浸させた後、含浸材としての使用適合性を様々な実験を通じて確認した。
【0093】
◆ 化粧料組成物の安定性評価:
無機増粘剤で粘度を調節した化粧料組成物1、2をスポンジに含浸させた後、スポンジ内における化粧料組成物の分離現象を観察した(50℃の恒温器に入れて3週間観察)。
【0094】
参考までに、化粧料組成物をスポンジ内に含浸させない場合、同条件でサンプル1、2共にオイル分離が発生した。
【0095】
【表4】
【0096】
上記のように、本発明の軟質ウレタンフォームを含浸材として使用する場合、化粧料安定性の面で、エーテル系ウレタンフォームは化粧料組成物が分離する問題が発生したが、本発明の軟質ウレタンフォームを含浸材として使用する場合、化粧料組成物の分離問題が生じなく安定性に優れたことが確認できた。
【0097】
◆ 膨潤現象の評価:
化粧料組成物1、2を軟質ウレタンフォームに3週間含浸させた後、フォームの膨潤現象が誘発されたか否かを確認した。
【0098】
下記表5に示されたように、サンプルコード番号が大きくなるほど架橋度が増加し、架橋度が増加したサンプルで特に膨潤現象の改善が顕著であることが確認できた。
【0099】
【表5】
【0100】
◆ 崩壊または腐食(耐加水分解)性の評価:
下記それぞれのスポンジにサンプル2の化粧料組成物を含浸させた後、50℃の恒温器で3週間保管し、外形の変形を観察した結果を下記表6に示した。
【0101】
【表6】
【0102】
エステル系ウレタンフォームの場合、目視では良好であったが、指で押したらスポンジが砕けてしまう現象が共通して確認された一方、エーテル系ウレタンフォームとM2〜M5では異常がなかった。特に、ヒマシ油の含量が軟質ウレタンフォーム製造用ポリオールの総重量対比50重量%未満である場合、ブタジエンポリオールと植物油との相溶性が良くて、安定的にウレタンフォームが製造できることを確認した。特に、本発明の実施例によって製造されたウレタンフォームの場合、耐加水分解性に優れ、時間が経ってスポンジが砕けるか又は陥没されるという問題が生じなかった。
【0103】
特に、耐腐食性が良好であると知られたエーテル系ウレタンフォームに比べ、膨潤現象が改善されたことを確認した。
【0104】
[軟質ウレタンフォームのパフ]
表1及び表2に従って製造した軟質ウレタンフォームを用いて化粧用塗布具を製作した。化粧料を塗布具につけて肌に塗布する過程で、滑らかに塗布されるフォームは腐食性が高いという問題があり、腐食性が改善されたフォームの場合は多少荒い感じがあった。しかし、本発明の軟質ウレタンフォームで製造された塗布具(パフ)は、耐腐食性が高く、且つ、滑らかな使用感を提供できることを確認した。
【0105】
特に、本発明のパフは、洗って使用してもパフの変形が誘発されず、砕ける現象が殆ど現れなかった。
【0106】
[軟質ウレタンフォームを用いた化粧品パッキング材料]
表1及び表2の組成で製造した軟質ウレタンフォームを用いて化粧料組成物包装用パッキング材を製作した。本発明の軟質ウレタンフォームは、弾性に優れ、耐腐食性が強いため、化粧料組成物の包装、パッキングなどへの使用に適した。さらに、マスカラなどの容器入口に、蓋との密着力を高める部材として用いた結果、弾性に優れて形態保存力に優れることが確認できた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】