特表2018-514525(P2018-514525A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000003
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000004
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000005
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000006
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000007
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000008
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000009
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000010
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000011
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000012
  • 特表2018514525-塞栓形成粒子 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-514525(P2018-514525A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(54)【発明の名称】塞栓形成粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/24 20060101AFI20180511BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 31/745 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 31/765 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 31/78 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 41/00 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20180511BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20180511BHJP
【FI】
   A61K33/24
   A61K33/30
   A61K31/745
   A61K31/765
   A61K31/78
   A61K45/00
   A61K41/00
   A61P35/00
   A61P43/00 121
   A61K47/04
   A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-554266(P2017-554266)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(85)【翻訳文提出日】2017年12月1日
(86)【国際出願番号】GB2016051059
(87)【国際公開番号】WO2016166550
(87)【国際公開日】20161020
(31)【優先権主張番号】1506381.1
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】タウンレイ、ヘレン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ、レイチェル アン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA65
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD29A
4C084AA11
4C084AA19
4C084MA43
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC541
4C084ZC542
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA03
4C086HA05
4C086HA06
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、1以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである、複数のナノ粒子で被覆されたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子に関する。X線放射または陽子線放射と組み合わせて、または塞栓術において使用する、癌の治療に使用するための本発明の塞栓形成粒子もまた記載される。本発明はまた、1以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである複数のナノ粒子で被覆されたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子の製造方法に関する。その方法は、(i)マイクロ粒子を準備すること、(ii)マイクロ粒子を複数のナノ粒子と接触させること、(iii)マイクロ粒子およびナノ粒子を加熱して塞栓形成粒子を形成することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、前記金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである、複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子。
【請求項2】
前記金属酸化物は、二酸化チタンである、請求項1に記載の塞栓形成粒子。
【請求項3】
前記1以上の希土類元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbから選択される、請求項1または2に記載の塞栓形成粒子。
【請求項4】
前記1以上の希土類元素は、Gd、Eu、Er、およびNdから選択され、好ましくは前記希土類元素はGdである、請求項1乃至3のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項5】
前記金属酸化物は、2つ以上の前記希土類元素でドープされている、請求項1乃至4のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項6】
前記金属酸化物は、前記金属酸化物の量に対して0.1〜25モル%の合計量で前記1以上の希土類元素でドープされている、請求項1乃至5のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、200nm未満の平均直径を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項8】
前記マイクロ粒子は、1〜500μmの直径を有する、請求項1乃至7のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項9】
前記マイクロ粒子は、10〜200μmの直径を有する、請求項1乃至8のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項10】
前記マイクロ粒子は、ポリマー、金属および無機化合物から選択される1以上の材料を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項11】
前記マイクロ粒子は、ポリアルケン、ポリアクリレート、ポリエステルおよびポリエーテルから選択される1以上のポリマーまたはコポリマーを含み、好ましくは前記ポリマーまたは前記コポリマーは架橋されている、請求項1〜10のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項12】
前記マイクロ粒子は、スチレンモノマー単位から形成されたポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1乃至11のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項13】
前記ナノ粒子のコーティングの厚さは、10〜300nmである、請求項1乃至12のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項14】
前記塞栓形成粒子は、複数の放射線不透過性ナノ粒子をさらに含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項15】
前記放射線不透過性ナノ粒子は、前記マイクロ粒子に組み込まれる、請求項14に記載の塞栓形成粒子。
【請求項16】
前記放射線不透過性ナノ粒子は、酸化タンタル、金、または硫化ビスマス(III)、好ましくは酸化タンタルを含む、請求項14乃至15のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項17】
前記塞栓形成粒子は、化学療法剤をさらに含む、請求項1乃至16のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項18】
前記塞栓形成粒子は、前記化学療法剤を含む複数のナノ粒子をさらに含む、請求項17に記載の塞栓形成粒子。
【請求項19】
前記化学療法剤を含む前記ナノ粒子は、前記マイクロ粒子の表面上にコーティングされる、請求項18に記載の塞栓形成粒子。
【請求項20】
前記化学療法剤を含む前記ナノ粒子は、シリカナノ粒子である、請求項17乃至19のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項21】
複数の塞栓形成粒子を含む組成物であり、各塞栓形成粒子は複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含み、前記ナノ粒子は、1つ以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、前記金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、または二酸化セリウムである、組成物。
【請求項22】
前記塞栓形成粒子は、請求項2乃至20のいずれかに記載の塞栓形成粒子である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記塞栓形成粒子は、10〜200μmの平均直径を有する、請求項21乃至22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
請求項1乃至20のいずれかに記載の複数の塞栓形成粒子と、1以上の薬学的に許容される添加剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項25】
X線放射または陽子線放射と組み合わせた癌の治療に使用するための、請求項1乃至20のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項26】
前記癌は、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系または甲状腺の癌である、請求項25に記載した使用のための、請求項25に記載の塞栓形成粒子。
【請求項27】
前記癌は、低酸素腫瘍細胞を含む腫瘍組織と関連している、請求項25乃至26のいずれかに記載した使用のための、請求項25乃至26のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項28】
X線放射または陽子線放射と組み合わせた請求項25乃至27のいずれかに記載した癌の治療に使用するための、請求項21乃至23のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
X線放射または陽子線放射と組み合わせた請求項25乃至27のいずれかに記載した癌の治療に使用するための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
X線放射または陽子線放射と組み合わせた癌の治療は、
a)治療される被験体に前記組成物または前記医薬組成物を非経口的に投与すること、
b)前記癌または前記腫瘍組織の場所または部位にX線放射または陽子線放射を指向させること、
を含む、請求項28または請求項29に記載の使用のための請求項28に記載の組成物または請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
X線放射または陽子線放射と組み合わせた癌の治療は、
a)治療される被験体に前記組成物または前記医薬組成物を投与すること、
ai)前記塞栓形成粒子を前記癌または前記腫瘍組織の場所または部位に蓄積させ、前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位内の脈管構造を塞栓させること、
aii)前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位での前記塞栓形成粒子の存在を任意に検出すること、
b)前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位にX線放射または陽子線放射を指向させ、それにより前記ナノ粒子中の金属酸化物を励起して前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位に活性酸素種を生成すること、
を含む、請求項28または請求項29に記載の使用のための請求項28に記載の組成物または請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
X線放射のエネルギーは0.05MeV以上である、請求項28または請求項31のいずれかに記載した使用のための請求項28乃至31のいずれかに記載の組成物または医薬組成物。
【請求項33】
(a)は、前記組成物または前記医薬組成物を治療される前記被験体に静脈内投与することを含む、請求項30または請求項32のいずれかに記載した使用のための請求項30乃至32のいずれかに記載の組成物または医薬組成物。
【請求項34】
(a)は、前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位の位置またはその前の位置で治療される前記被験体の血流に前記組成物または前記医薬組成物を静脈内投与することを含む、請求項33に記載した使用のための請求項33に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項35】
a)被験体に、請求項1乃至20のいずれかに記載された塞栓形成粒子、請求項21乃至23のいずれかに記載された組成物、または請求項24に記載された医薬組成物を投与すること、
b)前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位にX線放射または陽子線放射を指向させること、
を含む、被験体の癌を治療する方法。
【請求項36】
a)前記被験体に、請求項21乃至23のいずれかに記載された組成物または請求項24に記載された医薬組成物を投与すること、
ai)前記塞栓形成粒子を前記癌または前記腫瘍組織の場所または部位に蓄積させ、前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位内の脈管構造を塞栓させること、
aii)前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位での前記塞栓形成粒子の存在を任意に検出すること、
b)前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位にX線放射または陽子線放射を指向させ、それにより前記ナノ粒子中の金属酸化物を励起して前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位に活性酸素種を生成すること、
を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
X線放射のエネルギーは0.05MeV以上である、請求項35乃至請求項36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記癌は、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系または甲状腺の癌である、請求項35乃至請求項37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記癌は、低酸素腫瘍細胞を含む腫瘍組織と関連している、請求項35乃至請求項38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記投与は非経口投与である、請求項35乃至請求項39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
(a)は、前記塞栓形成粒子、前記組成物、または前記医薬組成物を被験体に静脈内投与することを含む、請求項35乃至請求項40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
(a)は、前記塞栓形成粒子、前記組成物、または前記医薬組成物を前記癌または前記腫瘍組織の前記場所または部位の位置またはその前の位置で治療される被験体の血流に静脈内投与することを含む、請求項35乃至請求項41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
X線放射または陽子線放射と組み合わせた請求項25乃至27のいずれかに記載の癌の治療で使用するための医薬の製造における、請求項1乃至20のいずれかに記載の塞栓形成粒子、請求項21乃至23のいずれかに記載の組成物、または請求項24記載の医薬組成物の使用。
【請求項44】
塞栓術の方法で使用するための、請求項1乃至20のいずれかに記載の塞栓形成粒子。
【請求項45】
塞栓術の方法で使用するための、請求項21乃至23のいずれかに記載の組成物。
【請求項46】
1つ以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、前記金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである、複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子の製造方法であって、
(i)マイクロ粒子を準備すること、
(ii)前記マイクロ粒子を複数のナノ粒子と接触させること、
(iii)前記マイクロ粒子と前記ナノ粒子を加熱し、塞栓形成粒子を形成すること、
を含む製造方法。
【請求項47】
前記塞栓形成粒子は、請求項2乃至20のいずれかに記載の塞栓形成粒子であり、前記ナノ粒子は、請求項2乃至7のいずれかに記載のナノ粒子であり、または前記マイクロ粒子は、請求項8乃至12のいずれかに記載のマイクロ粒子である、請求項46に記載の製造方法。
【請求項48】
(ii)は、前記マイクロ子を前記複数のナノ粒子と混合することを含む、請求項46乃至47のいずれかに記載の製造方法。
【請求項49】
微粒子はポリマーを含み、(iii)は前記ポリマーのガラス転移温度を超える温度で前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子を加熱することを含む、請求項46乃至48のいずれかに記載の製造方法。
【請求項50】
(iii)は、150°C〜300°Cの温度で前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子を加熱することを含む、請求項46乃至49のいずれかに記載の製造方法。
【請求項51】
フレームスプレー熱分解を含むプロセスによって前記複数のナノ粒子を生成することをさらに含む、請求項46乃至50のいずれかに記載の製造方法。
【請求項52】
請求項46乃至51のいずれかに記載の塞栓形成粒子の製造方法により得られた塞栓形成粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞栓形成粒子および複数の塞栓形成粒子を含む組成物に関する。塞栓形成のための粒子の使用と同様に、塞栓形成粒子を癌の治療のためのX線放射または陽子線放射と組み合わせて使用することも記載されている。本発明はまた、塞栓形成粒子の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
癌の管理および治療には、いくつかの異なる技術を使用することができる。これらには、化学療法、放射線療法、光線力学療法、外科的方法、ホルモン療法および塞栓術が含まれる。
【0003】
塞栓術は、塞栓を導入することによって血管を選択的に閉塞する、非外科的、低侵襲的処置である。この技術は、動脈瘤、子宮筋腫、および癌などの多数の異なる状態を治療するために使用することができる(Abramowitz S.D.ら、Radiology、2009;250(2):482−487)。癌治療では、血流を制限する腫瘍を給餌する小さな血管内の標的やロッジの近くの血流に塞栓粒子を導入することができる。その結果、腫瘍への酸素および栄養供給が減少し、腫瘍壊死を引き起こす。
【0004】
放射線療法および光線力学療法も、腫瘍サイズを減少させるのに有効である。光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)は、いくつかのタイプの癌を治療するために一般的に使用されている。PDTは、患者の血流に光増感剤を注入することを含む。その薬剤は体全体の細胞に吸収されるが、腫瘍血管系の異常または欠陥のために腫瘍に蓄積するのが一般的である。それはまた、正常細胞よりもはるかに迅速に増殖および分裂する傾向があり、したがってより高い代謝活性を有する癌細胞によって急速に吸収される。
【0005】
注射の約24〜72時間後、その薬剤の大部分が正常細胞を離れるが腫瘍に残っている場合、腫瘍のみがUV光またはレーザー光のような特定の周波数の光に曝される。腫瘍に蓄積した光増感剤は、この光に曝されることによって励起され、組織内の近くの酸素分子または水分子と反応して、一重項酸素(平均寿命3.7msおよび拡散距離82nm)、スーパーオキシドラジカル(平均寿命50ms、拡散距離320nm)やヒドロキシルラジカル(平均寿命10−7秒、拡散距離4.5nm)のような活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)を産出する。産生されたROSは、近くの細胞の抗酸化防御能力を圧倒し、それにより腫瘍中の癌細胞の破壊をもたらす。
【0006】
ROSの短寿命と拡散距離は、近隣の正常細胞に損傷をほとんどまたは全く与えずに癌細胞を破壊することを可能にする。癌細胞を直接殺すことに加えて、PDTはまた、腫瘍中の血管を損傷させることによって腫瘍を縮小または破壊し、それによって腫瘍から栄養素を奪うように見える。さらなる利点は、PDTが腫瘍細胞を攻撃するために患者の免疫系を活性化する可能性があることである。
【0007】
二酸化チタンは、UV光への曝露時にROSを生成することが知られており、UV照射後に培養ヒト腺癌細胞に対する二酸化チタンの効果が研究されている(Xuら、Supramolecular Science、5(1998)、449−451)。この研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)は、酸化ストレスの結果として、細胞膜および細胞膜の内膜系を破壊することを示した。二酸化チタン粒子は、細胞の膜脂質を酸化する過酸化脂質を生成するヒドロキシルラジカルを生成し、それは連鎖的脂質過酸化反応を確立すると考えられている。酸化ストレスを受けた悪性細胞は壊死状態に進行し、その破壊をもたらす。
【0008】
二酸化チタンおよびPDTに使用される光増感剤の多くは、人体の深部まで浸透できない特定の波長の光によって励起される。その結果、PDTは皮膚癌などの表在性癌の治療に限定されている。
【0009】
身体の他の場所の癌は、代わりに、X線または陽子線放射のような電離放射線の使用を含む放射線療法を用いて治療することができる。しかし、腎細胞癌のようないくつかのタイプの癌は、癌を破壊するのに必要な放射線の量が臨床的に安全とは言えないほど高いので、放射線抵抗性である。より高い線量の放射線はまた、癌を引き起こすリスクの増加と関連している。
【0010】
国際公開WO2011/070324は、希土類元素でドープされた金属酸化物ナノ粒子を記載している。これらの粒子は、X線放射に曝露されると細胞死を引き起こすのに有効であることが示されている。
【0011】
Morrisonら、Pharm Res(2014)3 1:2904−2917は、化学療法剤を含むナノ粒子で被覆された微粒子(マイクロ粒子)を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、癌の治療の新しい形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、塞栓術の効能と放射線療法の効能とを組み合わせたマルチモーダルな塞栓形成粒子が生成され得ることを見出した。これは、腫瘍血管系を同時に塞栓し、腫瘍を放射線療法的に処置することにより、癌を治療するための新しい技術を提供する。驚くべきことに、本発明の塞栓形成粒子は、低酸素条件下であっても放射線療法的に有効なナノ粒子を含むことも見出された。
【0014】
したがって、本発明は、複数のナノ粒子で被覆(コーティング)されたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子を提供する。このナノ粒子は、1つ以上の希土類元素でドープ(doped)された金属酸化物を含み、その金属酸化物は二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである。
【0015】
本発明はさらに、複数の塞栓形成粒子を含む組成物を提供する。各塞栓形成粒子は、1つ以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含む複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含み、金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、または二酸化セリウムである。
【0016】
また、本発明は、本明細書で定義される複数の塞栓形成粒子と1以上の薬学的に許容される添加剤または希釈剤を含む医薬組成物も提供する。
【0017】
本発明はまた、X線放射または陽子線放射と組み合わせた癌の治療に使用するための、本発明の塞栓形成粒子、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を提供する。さらに、塞栓形成に使用するための本発明の塞栓形成粒子、組成物または医薬組成物が提供される。
【0018】
本発明はまた、
a)被験体に、本発明の塞栓形成粒子、組成物、または医薬組成物を投与すること、
b)癌または腫瘍組織の場所または部位にX線放射または陽子線放射を指向(directing)させること、を含む、被験体の癌を治療する方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、1つ以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、その金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである、複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子の製造方法であって、(i)マイクロ粒子を準備すること、(ii)マイクロ粒子を複数のナノ粒子と接触させること、(iii)マイクロ粒子とナノ粒子を加熱し、塞栓形成粒子を形成すること、を含む製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、2つのスケールでのサイズ、形状および結晶化度を示す、GdでドープされたTiO(TiO:Gd)ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を示す。
図2図2は、ドープされたチタニアナノ粒子中のガドリニウムの存在を示すエネルギー分散型X線(EDX)分光法の結果を示す。
図3図3は、ある範囲のサイズを与えるために実験室で合成されたポリスチレンマイクロ粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
図4図4は、実験室で合成されたポリスチレンマイクロ粒子のサイズ範囲の定量化を示す。
図5図5は、ドープされたチタニアナノ粒子でコーティングされた市販の蛍光性の39μmポリスチレンマイクロ粒子を示すSEM画像を示す。
図6図6は、ドープされたチタニアナノ粒子でコーティングされたポリスチレンマイクロ粒子の高分解能SEM画像を示す。
図7図7は、遊離したナノ粒子またはポリスチレン(PS)に結合したナノ粒子のいずれかとしてドープされた(TiO:Gd)またはドープされていない(TiO)チタニアナノ粒子とインキュベートされた横紋筋肉腫細胞、または対照としてPBSとインキュベートした横紋筋肉腫細胞に対するX線曝露前(0Gray)および後(3Gray)の細胞死結果を示す。全ての試料は、対照に対して正規化されている。
図8図8は、3Gy照射後のHeLa細胞のクローン原性生存率に及ぼすドープされたチタニアナノ粒子の効果を示す。
図9図9は、チタニアナノ粒子の存在下での細胞増殖に対する低酸素条件下(0.2% O)でのインキュベーションの効果を示す。
図10図10は、本発明による塞栓形成粒子を形成するための方法の概略図を示す。
図11図11は、ドープされたチタニアナノ粒子が、塞栓粒子をコーティングした後でも効率的な放射線増感剤であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、1以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、その金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである、複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子を提供する。本発明はまた、本発明による複数のナノ粒子を提供する。
【0022】
マイクロ粒子は、複数のナノ粒子で被覆(コーティング)されている。これは、通常、ナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子の表面である。従って、マイクロ粒子は、典型的には、塞栓形成粒子のコアを形成し、ナノ粒子は、典型的には、コア上にコーティングまたは外層を形成する。ナノ粒子のコーティングは、典型的には連続的であり、すなわち、マイクロ粒子の実質的に全表面(例えば、表面の95%超)がナノ粒子でコーティングされている。ナノ粒子のコーティングは、通常、数層のナノ粒子を含み、30nmを超える厚さを有し得る。コーティングは、ナノ粒子を表面に固定(コーティング)するために追加の材料が必要であることを必ずしも必要とせず、ナノ粒子は典型的にはマイクロ粒子の表面に直接付着する。以下に論じるように、ナノ粒子は、マイクロ粒子と一緒に焼結することができ、典型的には、これにより、ナノ粒子がマイクロ粒子を被覆する。
【0023】
典型的には、塞栓形成粒子のコアはマイクロ粒子を含み、塞栓形成粒子の最外層はナノ粒子を含む。場合によっては、塞栓形成粒子のコアはマイクロ粒子からなり、塞栓形成粒子の最外層はナノ粒子からなることがある。マイクロ粒子は、いくつかのナノ粒子、または他の異なるナノ粒子をさらに含むことができる。
【0024】
塞栓形成粒子は、1〜500μmの直径、例えば1〜100μmの直径を有することができる。典型的には、塞栓形成粒子のサイズは、5〜100μmまたは5〜50μmである。複数の塞栓形成粒子のサイズ分布は、以下にさらに論じるように、腫瘍の脈管構造に適合させることができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、単一粒子の直径の文脈における「直径」という用語は、粒子と同じ体積を有する球の直径を指す。したがって、粒子が球形である場合、粒子の直径は単に直径である。粒子が球状でない場合(例えば回転楕円体の場合)、粒子の直径は、同じ体積を有する球状の粒子の直径である。
【0026】
塞栓形成粒子は、典型的には、高い球形度を有する。従って、粒子は、典型的には丸い粒子である。塞栓形成粒子の球形度は、典型的には0.8〜1.0である。球形度は、π1/3(6Vp)2/3/Apとして計算することができる。ここで、Vpは粒子の体積であり、Apは粒子の面積である。完全に球形の粒子は、1.0の球形度を有する。他の全ての粒子は、1.0より低い球形度を有する。複数の塞栓形成粒子の平均球形度は、典型的には0.8〜1.0である。代わりに、粒子は、例えば、扁球または長球の形態の非球形であってもよい。塞栓形成粒子は、典型的には滑らかな表面を有する。
【0027】
ナノ粒子
金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムであってもよい。金属酸化物は、典型的には、二酸化チタン(チタニアとも呼ばれる)である。したがって、金属酸化物は、典型的には、任意の非結晶または結晶の形態であり得るTiOである。TiOは、アナターゼまたはルチル型チタニアであってもよい。ナノ粒子は、酸化亜鉛(ZnO)または酸化セリウム(CeO;セリアとしても知られている)を含むことができる。各ナノ粒子は、二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムの1つ以上を含むことができる。塞栓形成粒子中のいくつかのナノ粒子は、二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムの1つ以上を含み得、塞栓形成粒子中の他のナノ粒子は、二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムの1つ以上の異なる組み合わせを含み得る。
【0028】
1つ以上の希土類元素は、元素の周期律表から選択される任意の適切な希土類元素であり得る。希土類元素には、スカンジウムおよびイットリウムとともにランタノイド元素が含まれる。したがって、1つ以上の希土類元素は、典型的には、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選択される。ナノ粒子には、2以上の希土類元素または3以上の希土類元素でドープされていてもよい。
【0029】
1以上の希土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYb、または、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYb(放射能が原因によりPmを除く。そのような放射能はいくつかのアプリケーションでは望ましい場合があるが。)のランタノイドから選択することができる。1以上の希土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選択される1種以上、2以上または3以上の元素であってもよい。1以上の希土類元素は、好ましくは、Gd、Eu、ErおよびNdから選択される。1つ以上の希土類元素は、Gdを含むことができる。1以上の希土類元素は、Euを含むことができる。1以上の希土類元素は、Erを含むことができる。1以上の希土類元素は、Ndを含むことができる。好ましくは、1以上の希土類元素は、Gdを含む。金属酸化物は、単一の希土類元素、例えばGdでドープされてもよい。金属酸化物は、2以上の希土類元素でドープされていてもよい。
【0030】
希土類元素は、一般に、カチオンの形態の金属酸化物のホスト格子中のドーパントとして存在する。金属酸化物が酸化セリウムである場合、酸化セリウムにはセリウム以外の少なくとも1つの希土類元素でドープされていることが好ましい。ナノ粒子は、基本的に金属酸化物および希土類元素から構成され、例えば金属酸化物および希土類元素を98重量%以上含む。
【0031】
二酸化チタン、酸化亜鉛または酸化セリウムのホスト格子中のドーパントとしての1以上の希土類元素の存在は、これらの金属酸化物をX線または陽子線放射のような他の電離放射線によって励起させて、活性酸素種(ROS)のようなヒトまたは動物の体の治療に使用する遊離基を生成する。ドープされた金属酸化物によって生成されるROSの量は、とりわけ、希土類元素ドーパントの同一性および治療の一部として使用されるX線のエネルギーに依存する。したがって、金属酸化物および希土類元素は、治療の一部として特定の波長(すなわちエネルギー)のX線が使用される場合に適切な量のROSを生成するように選択することができる。これは、投射するX線のエネルギー範囲内にあるエネルギーでX線を強く吸収するドーパントとして希土類元素を選択することによって達成され得る。
【0032】
実際には、医学的使用のためにX線を発生させるために従来から使用されている装置は、放射線療法であろうと画像診断(例えばX線撮影)であろうと、ある範囲のエネルギーを有するX線を生成する傾向がある。通常、放射線療法で使用されるX線のエネルギーは、画像診断に使用されるエネルギーよりも高くなる傾向がある。例えば、放射線療法で使用されるX線は、0.04MeV以上のエネルギー、または以下でさらに論じるようなエネルギーを有してもよい。
【0033】
典型的には、金属酸化物はガドリニウム(Gd)でドープされる。好ましくは、金属酸化物は、ガドリニウムと、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)またはネオジム(Nd)のうちの1以上とでドープされる。したがって、金属酸化物は、好ましくは、GdとEuで、GdとErで、GdとNdで、GdとEuとErで、GdとEuとNdで、GdとErとNdで、またはGdとEuとErとNdで、ドープされてもよい。金属酸化物は、ガドリニウム、ユーロピウムおよびエルビウムでドープされてもよい。
【0034】
いくつかの場合、金属酸化物はユーロピウムでドープされてもよい。好ましくは、金属酸化物は、ユーロピウムと、ガドリニウム、エルビウムまたはネオジムの1以上とでドープされている。したがって、金属酸化物は、好ましくは、EuとErで、EuとNdで、またはEuとErとNdでドープされてもよい。
【0035】
金属酸化物は、例えば、エルビウムでドープされてもよい。好ましくは、金属酸化物は、エルビウムと、ガドリニウム、ユーロピウムまたはネオジムのうちの1以上とでドープされる。したがって、金属酸化物は、好ましくは、ErとEuで、またはErとNdでドープされてもよい。
【0036】
金属酸化物は、例えば、ネオジムでドープされてもよい。好ましくは、金属酸化物は、ネオジムと、ガドリニウム、ユーロピウムまたはエルビウムのうちの1以上とでドープされる。しばしば、金属酸化物はチタンであり、1以上のドーパント元素はガドリニウムを含む。
【0037】
一般に、金属酸化物は、0.1〜25モル%(例えば7.5〜25モル%)、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは2.5〜15モル%、特に5〜13.5モル%、さらにより好ましくは7.5〜12.5モル%の合計量で1以上の希土類元素でドープされる。典型的には、金属酸化物は、金属酸化物の量に対して0.1〜25モル%の合計量で1以上の希土類元素でドープされる。
【0038】
金属酸化物は、ガドリニウムおよび少なくとも1つの他の希土類金属でドープされてもよく、金属酸化物は、1〜12.5モル%、好ましくは5〜10モル%の量のガドリニウムでドープされる。
【0039】
金属酸化物は、(i)3.5〜12.5重量%の量のガドリニウム、(ii)0.5〜1.5重量%の量のユーロピウム、(iii)0.5〜1.5重量%の量のエルビウムでドープされてもよい。例えば、金属酸化物は、(i)5〜10重量%の量のガドリニウム、(ii)0.75〜1.25重量%(例えば、約1重量%)の量のユーロピウム、(iii)0.75〜1.25重量%(例えば、約1重量%)の量のエルビウムでドープされてもよい。
【0040】
金属酸化物は、例えば、(i)3.5〜12.5モル%の量のガドリニウム、(ii)0.5〜1.5モル%の量のユーロピウム、(iii)0.5〜1.5モル%の量のエルビウムでドープされてもよい。より好ましくは、金属酸化物は、(i)5〜10モル%の量のガドリニウム、(ii)0.75〜1.25モル%(例えば、約1モル%)の量のユーロピウム、(iii)0.75〜1.25モル%(例えば、約1モル%)の量のエルビウムでドープされてもよい。
【0041】
金属酸化物中に1つのドーパントまたは複数のドーパントとして取り込まれる1以上の希土類元素の合計量は、金属酸化物を調製するために使用される出発材料に対する出発材料を含む希土類元素の相対モル量に依存する。ドーパントとして金属酸化物中に組み込まれる希土類元素の量は、粒子を製造するために使用される方法に依存することができ、この方法は、粒子中に所望量のドーパントを得るために規定通りに適合させることができる。金属酸化物中のドーパントとしての希土類元素の量は、当業者に周知の技術を用いて容易に測定することができる。希土類元素の量は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy−Dispersive X−ray Spectroscopy)によって測定することができる。本発明の複数の粒子が存在するか、または療法(therapy)または治療(treatment)の一部として使用される場合、モル%での上記量は、粒子の金属酸化物をドープする希土類元素の算術平均(average)(すなわち平均(mean))合計量を言う。
【0042】
使用されるナノ粒子は、典型的には、200nm未満の平均直径を有する。粒子の平均直径は、典型的には、透過電子顕微鏡写真(TEM)画像から測定される。平均直径は質量中央径(MMD)であってもよい。MMDは、質量で粒子の半分がより大きく(すなわち、MMDよりも大きい直径を有する)、半分がより小さい(すなわち、MMDより小さい直径を有する)直径である。MMDは、多くの既知の技術によって測定することができる。質量中央径は、粒度分布のよく知られた尺度である。
【0043】
しばしば、使用されるナノ粒子は、100nm未満の平均直径を有する。ナノ粒子は、1〜100nmの平均直径を有することが好ましい。より好ましくは、ナノ粒子は、5〜75nm(例えば10〜75nm)、特に10nm〜65nmの平均直径を有する。
【0044】
本発明の塞栓形成粒子に有用なナノ粒子は、国際公開WO2011/070324にさらに記載されているようにすることができ、その全体を参考として本明細書に組み込む。
【0045】
塞栓形成粒子に使用されるナノ粒子は、任意の適切な方法、例えば国際公開WO2011/070324に記載されている方法によって合成することができる。一般的な方法論は以下の通りである。
【0046】
1以上の希土類元素化合物(例えば、金属塩)を、第1の溶媒および金属酸化物前駆体(例えば、金属アルコキシド)と組み合わせる。その溶液と組み合わされる希土類元素化合物の量は、金属酸化物のホスト格子に導入されるドーパントの量を決定する。1以上の希土類元素の25モル%までの合計量が、金属酸化物のホスト格子中に導入されてもよい。一例として、100ミリモルの金属酸化物前駆体に1ミリモルの希土類元素塩を添加し、1モル%の希土類元素でドープされた金属酸化物粒子を製造した。
【0047】
場合により溶液を激しく撹拌しながら、第2の溶媒に滴下して添加することができる。混合物をさらなる時間(例えば1〜15分間)攪拌し、次いで沈殿物を沈降させる。次いで、上清を除去し、沈殿物を第3の溶媒で洗浄し、さらなる時間(例えば1〜20分)撹拌する。その後、上清を典型的には濾過により集め、場合によりddHOで半充填したチューブ内で加圧滅菌器で処理(オートクレーブ)する。次いで、得られたスラリーを典型的に乾燥させ、試料を場合により粉砕する。得られたナノ粒子は、例えば、300°C〜1000°Cの温度で、続いて1時間〜10時間焼成することができる。
【0048】
希土類元素化合物は、典型的に希土類元素の塩である。したがって、希土類元素化合物は、典型的に希土類元素のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩または酢酸塩である。好ましくは、希土類元素化合物は希土類元素の硝酸塩である。塩である希土類元素化合物は、水和物の形態であってもよい。例えば、硝酸ガドリニウム(III)六水和物、硝酸ユーロピウム(III)、硝酸テルビウム(III)五水和物、硝酸ネオジム六水和物および硝酸エルビウム(III)五水和物から選択することができる。
【0049】
金属酸化物前駆体は、金属酸化物化合物のための任意の適切な前駆体、すなわち、適切な条件下、典型的には加水分解下で金属酸化物に変換する任意の化合物であり得る。金属酸化物前駆体は、多くの場合、金属または金属の塩を含む有機金属化合物である。例えば、金属酸化物前駆体は、金属アルコキシドまたは金属硝酸塩であってもよい。チタニアの前駆体は、典型的にはチタンアルコキシド、例えばチタン(IV)イソプロポキシドまたはチタン(IV)エトキシド、好ましくはチタン(IV)イソプロポキシドである。セリアの前駆体は、典型的には硝酸セリウムである。酸化亜鉛の前駆体は、典型的には硝酸亜鉛である。
【0050】
第1、第2および第3の溶媒は、任意の適切な溶媒であってもよい。各溶媒は、極性溶媒でも非極性溶媒でもよい。典型的には、第1、第2または第3の溶媒は極性溶媒である。極性溶媒としては、水、(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の)アルコール系溶媒、(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の)エーテル系溶媒、(酢酸エチル等の)エステル系溶媒、(ギ酸、エタン酸等の)カルボン酸溶媒、(アセトン等の)ケトン系溶媒、(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等の)アミド系溶媒、(トリエチルアミン等の)アミン系溶媒、(アセトニトリル等の)ニトリル系溶媒、(ジメチルスルホキシドの)スルホキシド系溶媒、および(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の)ハロゲン化溶媒などが挙げられる。第1、第2または第3の溶媒は、極性プロトン性溶媒から選択することができる。極性プロトン性溶媒の例には、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ギ酸、エタン酸が含まれる。非極性溶媒の例には、(ペンタンおよびヘキサンなどの)アルカン、(シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどの)シクロアルカン、および(ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの)アレーンが含まれる。好ましくは、溶媒は極性溶媒である。より好ましくは、溶媒は極性非プロトン性溶媒である。極性非プロトン性溶媒の例には、(アセトンなどの)ケトン系溶媒、(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドなどの)アミド系溶媒、(アセトニトリルなどの)ニトリル系溶媒、(ジメチルスルホキシドなどの)スルホキシド系溶媒、(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの)ハロゲン系溶媒が含まれる。
【0051】
典型的には、第1、第2または第3の溶媒は、アルコールのような極性プロトン性溶媒を含む。第1の溶媒は、典型的には、例えば体積で5%未満(または1%未満)の非常に少ない水を含む。したがって、第1の溶媒は無水であってもよい。第1の溶媒は、例えば、乾燥メタノール、乾燥エタノール、乾燥プロパノール、乾燥イソプロパノールおよび乾燥ブタノールから選択されるメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールから選択され得る。
【0052】
第2の溶媒は、典型的には水を含む。第2の溶媒は、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールをさらに含んでもよく、好ましくはイソプロパノールをさらに含んでもよい。したがって、第2の溶媒は、例えば、10/90〜90/10または40/60〜60/40の容量/容量比(v/v)の水/イソプロパノール混合物であってもよい。水/イソプロパノール混合物は、典型的には約50/50 v/vである。
【0053】
第3の溶媒は、ナノ粒子を洗浄するのに適した任意の溶媒、例えばエーテルまたはイソプロパノールのようなアルコールであり得る。
【0054】
例えば、方法は以下のようにすることができる。硝酸ガドリニウム(III)六水和物、硝酸ユーロピウム(III)水和物、硝酸テルビウム(III)五水和物、硝酸ネオジム六水和物、および硝酸エルビウム(III)五水和物から選択される1以上の希土類金属化合物を、チタン(IV)イソプロポキシドの1〜100mLに懸濁させ、次いで乾燥イソプロパノールの10〜100mL加えることができる。
【0055】
溶液中に懸濁している希土類金属化合物の量は、二酸化チタンのホスト格子に導入されるドーパントの量を決定する。1以上の希土類元素の25モル%までの全量を、二酸化チタンのホスト格子中に導入することができる。一例として、1ミリモルの硝酸ガドリニウムを100ミリモルのチタンイソプロポキシドに添加して、1モル%のガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子を製造した。
【0056】
次いで、溶液を激しく撹拌しながら50/50(v/v)の水/イソプロパノール混合物に滴下して添加してもよい。混合物をさらなる時間(例えば5分間)撹拌し、沈殿物を沈降させる。上清を除去し、沈殿物をイソプロパノールで洗浄し、さらなる時間(例えば10分間)撹拌することができる。その後、上清を濾過によって集め、次いでddHOで半分充填したチューブでオートクレーブすることができる。次いで、スラリーを乾燥するまで100°C保つことができる。試料は、典型的には微粉末に粉砕され、続いて様々な温度(例えば、700°Cで3時間)で焼成される。
【0057】
代わりに、ナノ粒子は、噴霧火炎法(FSP:Flame Spray Pyrolysis)によって製造されてもよい。FSPは、ナノ粒子の迅速かつスケーラブルな合成のための有望な技術である。前駆体は、高度に発熱性の溶媒に溶解/分散され、火炎中で燃焼される。粒子形成のメカニズムは、ガス−物質原理(Gas−to−Matter Principle)に基づいており、4つの主要な工程に分割できる。(i)金属蒸気を形成する前駆体噴霧蒸発/分解、(ii)過飽和の結果としての核形成、(iii)合体および焼結による成長、および(iv)粒子の集合/凝集。
【0058】
噴霧火炎法によるナノ粒子の製造は、典型的には、(i)溶媒と1以上の前駆体化合物とを含む組成物を(場合により排出口またはノズルを介して)噴霧して複数の液滴を生成し、(ii)組成物の液滴を燃焼させてナノ粒子を形成する。溶媒は、典型的には、高発熱性溶媒、例えば可燃性有機溶媒である。例えば、溶媒はメタノールまたはエタノールを含むことができる。1以上の前駆体化合物は、典型的には、金属の酸化物、アルコキシドまたはカルボキシレートを含み、ナノ粒子を形成する。例えば、1以上の前駆体化合物は、チタン(IV)イソプロポキシドと、硝酸ガドリニウム(III)六水和物、硝酸ユーロピウム(III)、硝酸テルビウム(III)五水和物、硝酸ネオジム六水和物、および硝酸エルビウム(III)五水和物から選択される1以上の希土類化合物とを含んでもよい。FSPによって生成されたナノ粒子は、濾過によって集められ得る。FSPによる製造後、ナノ粒子は、300°C〜800°Cの温度で0.1〜5時間加熱することにより焼成することができる。
【0059】
マイクロ粒子
塞栓形成粒子は、ナノ粒子がコーティングされたマイクロ粒子を含む。マイクロ粒子は、塞栓形成粒子に使用するのに適した任意のマイクロ粒子であってもよい。マイクロ粒子は、通常、塞栓形成粒子として単独で使用するのにも適したマイクロ粒子である。
【0060】
典型的には、マイクロ粒子は、0.1〜500μm、例えば1〜500μmの直径を有する。好ましくは、マイクロ粒子の直径は10〜200μmであり、例えば、マイクロ粒子は、10〜100μm、例えば20〜90μm、10〜80μm、20〜60μm、又は30〜50μmの直径を有することができる。しばしば、マイクロ粒子は10〜60μmの直径を有する。
【0061】
マイクロ粒子が作られる材料は、典型的には不活性材料、例えば、周囲の条件や湿度にさらされて反応しにくい材料である。マイクロ粒子はしばしば生物学的に不活性である。マイクロ粒子は、典型的には、ポリマー、金属および無機化合物から選択される1以上の材料を含む。マイクロ粒子は、しばしば、ポリマー、金属および無機化合物から選択される材料を80重量%超、90重量%超、または95重量%超含む。好ましくは、マイクロ粒子はポリマーを含む。マイクロ粒子は、ポリマーを80重量%超、90重量%超、または95重量%超含むことができる。マイクロ粒子は、基本的にポリマー(例えば、99重量%超)から構成されるものであってもよい。
【0062】
適切なポリマーの例には、ポリアルケン、ポリアルキン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、およびポリアクリレートが含まれる。これらの各々は、ポリマー(すなわち、単一のタイプのモノマーを含む)またはコポリマー(すなわち、2以上の異なるタイプのモノマーを含む)であり得る。少なくとも1つのモノマー単位がアルケンから誘導される2つ以上のモノマー単位を含むコポリマーは、ポリアルケンと呼ぶことができる。ポリアルケンの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンゼン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリブタ-1-エン、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン系ゴムなどが挙げられる。ポリアルキンの例には、ポリエチレンおよびポリプロピンが挙げられる。ポリエーテルの例には、ポリエチレングリコールおよびポリフェニルエーテルが挙げられる。ポリアミドの例には、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド44およびポリアミド66が挙げられる。ポリエステルの例には、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリアクリレートの例には、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(メチルアクリレート)が挙げられる。
【0063】
マイクロ粒子は、金属、典型的には周囲条件下で酸化に対して不活性な金属を含むことができる。例えば、Fe、Cu、Zn、Ni、Co、Cr、Mn、Ag、Au、Al、Pt、Pd、RhおよびVのような金属から選択することができる。
【0064】
マイクロ粒子は無機化合物を含むことができ、無機化合物は典型的に不溶性である。無機化合物は、例えば、シリカまたはアルミナであり得る。
【0065】
好ましくは、マイクロ粒子はポリマーまたはコポリマーを含む。マイクロ粒子は、ポリマーまたはコポリマーを90重量%超または95重量%超含むことができる。典型的には、マイクロ粒子は、ポリアルケン、ポリアクリレート、ポリエステルおよびポリエーテルから選択される1以上のポリマーまたはコポリマーを含む。ポリマーまたはコポリマーは、好ましくは架橋されている。
【0066】
好ましくは、マイクロ粒子は、スチレンモノマー単位から形成されるポリマーまたはコポリマーを含む。マイクロ粒子は、ポリスチレンまたはスチレンと他のモノマーとのコポリマー、例えばジアクリレートまたはジビニルベンゼンを含むことができる。例えば、マイクロ粒子は、スチレンと、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールジアクリレートおよびヘキサン-1,6-ジオールジメタクリレートから選択することができるジアクリレートのコポリマーを含むことができる。好ましくは、マイクロ粒子は、スチレンとエチレングリコールジメタクリレートのコポリマー、またはポリスチレンであるポリマーを含む。ポリマーまたはコポリマーの分子量は、任意の適切な値であり得る。
【0067】
マイクロ粒子に使用されるポリマーは、スチレンとエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)との懸濁共重合によって得ることができる。例えば、スチレンとEGDMAをアゾビスイソブチロニトリル(AIBN;Aldrich)のような開始剤と混合することによって油相を生成することができる。次いで、油相を水性ポリビニルアルコールに添加してもよい。
【0068】
ナノ粒子のコーティングの厚さは、典型的には10〜300nmである。例えば、ナノ粒子のコーティングの厚さは、10〜100nmまたは20〜80nmであり得る。塞栓形成粒子は、0.1〜50重量%、例えば1〜10重量%のナノ粒子を含むことができる。
【0069】
塞栓形成粒子の付加的なモダリティ
さらなる特徴を本発明の塞栓形成粒子に導入して、マルチモーダル塞栓形成粒子を作製することができる。例えば、塞栓形成粒子は、X線造影剤(非磁性であるため患者がMRIを受けることを可能にする)としてフルオロフォアのようなイメージング剤またはタンタルのような重金属を組み込むことができ、または化学塞栓(メソポーラスシリカナノ粒子とチタニアナノ粒子の混合物)と結合することができる。
【0070】
例えば、塞栓形成粒子は、複数の放射線不透過性ナノ粒子をさらに含むことができる。典型的には、放射線不透過性粒子は、X線に関して放射線不透過性である。放射線不透過性ナノ粒子は、塞栓形成粒子上のコーティングの一部を形成してもよく、またはそれらはマイクロ粒子の一部を形成してもよい。典型的には、放射線不透過性ナノ粒子は、マイクロ粒子に組み込まれる。したがって、放射線不透過性ナノ粒子は、例えばマイクロ粒子の構造に組み込まれることにより、塞栓形成粒子のコアの一部を形成することができる。放射線不透過性ナノ粒子は、典型的には、マイクロ粒子が生成される反応混合物に放射線不透過性ナノ粒子を添加することによって、マイクロ粒子に組み込まれる。
【0071】
放射線不透過性ナノ粒子は、典型的には、酸化タンタル、金または硫化ビスマス(III)を含む。好ましくは、放射線不透過性ナノ粒子は、酸化タンタルを含む。放射線不透過性粒子は、10〜100nmの平均直径を有することができる。
【0072】
酸化タンタルを含む放射線不透過性ナノ粒子は、Ohら、J Am Chem Soc 2011; 133(14):5508−5515に記載された方法によって製造することができる。典型的には、タンタル酸化物ナノ粒子は、タンタル(V)エトキシドを加水分解することによって製造される。
【0073】
塞栓形成粒子は、0.1〜10重量%の放射線不透過性ナノ粒子をさらに含むことができる。
【0074】
塞栓形成粒子は、追加的または代替的に、化学療法剤をさらに含み得る。化学療法剤は、任意の適切な化学療法剤であり得る。例えば、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤および細胞毒性抗生物質から選択される1以上の薬剤であり得る。化学療法剤は、オフィオボリンA、オフィオボリンC、ビンカアルカロイド、タキサン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、チオプリン、DNAポリメラーゼ阻害剤、低メチル化剤、カンプトテカ、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、カルボプラチン、シスプラチン、およびネダプラチンから選択され得る。
【0075】
化学療法剤は、典型的には、塞栓形成粒子中のナノ粒子に組み込まれる。したがって、塞栓形成粒子は、化学療法剤を含む複数のナノ粒子をさらに含むことができる。
【0076】
化学療法剤を含むナノ粒子は、典型的には、マイクロ粒子の表面上にコーティングされる。したがって、マイクロ粒子上のコーティングは、上記希土類ドープ金属酸化物ナノ粒子と化学療法剤を含むナノ粒子との混合物を含むことができる。
【0077】
化学療法剤を含むナノ粒子は、典型的にはシリカナノ粒子である。化学療法剤を含むナノ粒子は、10〜100nmの平均直径を有することができる。シリカナノ粒子は、テトラエチルオルトシリケートを加水分解することによって製造することができる(例えばHornら、Small 2010;6(11):1185−90で述べられているように)。化学療法剤を含むナノ粒子は、Morrisonら、Pharm Res(2014)31:2904−2917に記載されている通りである。
【0078】
塞栓形成粒子は、0.1〜10重量%の化学療法剤を付加的に含むことができる。
【0079】
本発明で使用されるナノ粒子は、少なくとも1つの標的部分をさらに含むことができる。典型的には、標的部分は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド、脂質、代謝産物、抗体、受容体リガンド、リガンド受容体、ホルモン、糖、酵素、ビタミンなどである。例えば、標的部分は、薬物(例えば、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、PSMA、タモキシフェン/トレミフェン、イマチニブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ)、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、疾患細胞周期標的化合物、遺伝子発現マーカー、血管新生標的化リガンド、腫瘍マーカー、葉酸受容体標的リガンド、アポトーシス細胞標的リガンド、低酸素標的リガンド、DNAインターカレーター、疾患受容体標的リガンド、受容体マーカー、ペプチド(例えば、シグナルペプチド、メラノサイト刺激ホルモン(MSH))、ヌクレオチド、抗体(例えば、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)抗体、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40)、アンチセンスアミコスチン、siRNA、グルタミン酸ペンタペプチド、グルコースを模倣する薬剤、アミホスチン、アンギオスタチン、カペシタビン、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリンおよびトリメチルリジンである。好ましくは、標的部分は、核局在化シグナル(NLS)ペプチドである。NLSペプチドの例は、PPKKKRKVまたはCGGFSTSLRARKAである。好ましくは、NLSペプチドはCGGFSTSLRARKAである。
【0080】
組成物
本発明はまた、複数の塞栓形成粒子を含み、各塞栓形成粒子が、1以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含む複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含み、金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである。塞栓形成粒子は、上記でさらに定義されていてもよい。
【0081】
組成物中の塞栓形成粒子の粒径分布は、任意の適切な分布であり得る。典型的には、塞栓形成粒子は、10〜200μmの平均直径を有する。
【0082】
本発明の塞栓形成粒子の粒径分布は、様々な腫瘍で見出される血管径の分布と密接に対応するように変化させることができ、したがって、腫瘍内の脈管構造をより効果的に閉塞する。これにより、所望の脈管構造の効果的な塞栓形成が可能になる。ある実施形態では、本発明による複数の塞栓形成粒子は、治療される腫瘍における脈管構造の平均直径(例えば、これの90〜100%の値)と同程度の平均直径を有する。例えば、塞栓形成粒子の平均直径は、15〜200μm、10〜100μmまたは20〜50μmであってもよい。
【0083】
様々な腫瘍における脈管構造の直径の例を以下の表1に示す。
【表1】
【0084】
医薬組成物および使用
本発明はまた、本明細書で定義される複数の塞栓形成粒子および1以上の薬学的に許容される添加剤または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。本発明の塞栓形成粒子は、典型的には、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、経皮的、または注入技術のいずれであっても非経口的に投与される。したがって、医薬組成物は、典型的には、非経口投与に適している。好ましくは、医薬組成物は、静脈内非経口投与に適している。
【0085】
懸濁液およびエマルジョンは、添加剤として、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含むことができる。筋肉内注射のための懸濁液または溶液は、活性化合物と一緒に、薬学的に許容される希釈剤、例えば、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール類、例えば、プロピレングリコール、および必要に応じて適切な量の塩酸リドカインを含む。
【0086】
注射用または点滴用の溶液は、希釈剤として、例えば滅菌水を含有してもよく、好ましくは滅菌した水性の等張性生理食塩水の形態であってもよい。
【0087】
典型的には、医薬組成物中の塞栓形成粒子の濃度は、100粒子/ml〜1010粒子/ml、例えば10粒子/ml〜10粒子/mlである。しばしば、組成物中の塞栓形成粒子の総数は、10〜10個、または20〜10000個であり得る。
【0088】
一般に、医薬組成物は、治療有効量の本発明の粒子を含むであろう。当業者であれば、粒子の適切な投与量および粒子を含む医薬組成物は、患者によって異なることが理解されよう。最適用量を決定することは、一般に、塞栓形成とROSのリリースによる治療効果のレベルと、任意の危険または有害な副作用とのバランスを取ることを含む。選択された投与量レベルは、投与経路、投与時間、粒子の排泄速度、治療期間、併用される他の化合物および/または材料、患者の重症度状態、および患者の種、性別、年齢、体重、状態、全般的健康状態、および既往歴に依存する。粒子の量および投与経路は、最終的に医師、獣医師、または臨床医の裁量に委ねられるが、一般的に、所望の効果を達成する作用部位で局所濃度を達成するように選択される。
【0089】
本発明はまた、X線放射または陽子線放射と組み合わせて癌を治療する際に使用するための、本明細書で定義される塞栓形成粒子を提供する。典型的には、治療はX線放射と組み合わせて行われる。癌は、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系または甲状腺の癌である。
【0090】
本発明の塞栓形成粒子は、低酸素条件下で放射線療法的に有効であることが分かっているナノ粒子を含む。従来の放射線療法の有効性は、腫瘍細胞への酸素の十分な供給に依存する。しかしながら、ヒトの固形腫瘍は、低酸素状態の細胞の実質的な部分を含むことが今や確立されている。腫瘍に見られるこの慢性低酸素状態は、酸素の拡散限界(75〜200μmと推定される)を超える大きな血管間距離から生じるので、拡散限界低酸素状態と呼ばれることが多い。加えて、一時的な「急性の」灌流限界低酸素状態が、血管内の不安定な血流のために生じ、その結果、ある領域への血流が減少または遮断される期間が生じる。組織が低酸素になると、いくつかのシグナル伝達経路が活性化され、細胞の行動を変化させて酸素欠乏に適応させる。これは、エネルギー産生のための嫌気的解糖の能力の増加を含み、インビボでの血流の変化を媒介し、血管形成を刺激する。しかし、放射線療法では、照射中またはミリ秒以内の照射の酸素濃度は、低酸素細胞と比較して十分に酸素処理された細胞に対するより高い有意性の所与の用量の生物学的有効性で、DNA損傷およびその後の生物学的応答を決定する上で重要である。X線の場合、2.5〜3.5の間の酸素増感比(OER(Oxygen Enhancement Ratio)、同じ生物学的効果を生じさせるのに必要な通気条件と比較して、低酸素下での用量の比として定義される)は、典型的には、クローン原性生存率を含む生物学的評価項目の範囲について報告されている。低酸素下(および正常酸素状態下も)で作用することができる放射線増感剤を用いる放射線療法の有効性の向上は、改善された治療成果を達成する有望な方法であろう。低酸素細胞に対する多数の放射線増感剤が文献に記載されている。これらは主に、放射化学的プロセスにおける酸素の効果を模倣することが見出されているニトロイミダゾールである(Adams GE:Cancer(ed 6)、New York、NY、F.F.Becker Plenum Press、1977; Wardman P:Clin Oncol 2007; 19:397-417)。しかしながら、主に、神経毒性のような望ましくない副作用のために、治療実験では、これらの増感剤を使用して有意な有効性を実証することができなかった(Kaanders JH、Bussink J、van der Kogel AJ:Semin Radiat Oncol 2004,14:233-240)。正常酸素状態下で放射線増感剤として作用するドープされたチタニアナノ粒子の活性は、Townley HE、Rapa E、Wakefield G、Dobson P.、Nanomedicine 2012; 8; 526-36に記載されている。チタニアからの電子の生成は酸素分子の存在に依存すべきではないので、我々は、低酸素条件下でナノ粒子が依然として有効な放射線増感を示したかどうかを調べようとした。
【0091】
したがって、治療される癌は、低酸素腫瘍細胞を含む腫瘍組織と関連している可能性がある。癌は、その腫瘍組織が癌の特徴である場合、すなわち腫瘍が癌によって引き起こされる場合、腫瘍組織と「関連」する。低酸素状態の腫瘍細胞は、酸素正常細胞と比較して酸素濃度が低い腫瘍細胞である。したがって、低酸素腫瘍細胞は、無酸素腫瘍細胞、すなわち実質的に0.0の酸素濃度を有する細胞を含む。通常、低酸素細胞中の酸素の分圧pOは、酸素正常細胞中のpOより少なくとも3mmHg低く、例えば酸素正常細胞中のpOより少なくとも10mmHg低い。しばしば、これにより、低酸素細胞中のpOが80mmHg未満、例えば20〜60mmHg、または例えば20〜40mmHgになる。低酸素状態は、腫瘍における大きな血管間距離から生じる拡散限界低酸素状態であり得る。低酸素状態は、血管内の不安定な血流に起因する一時的な「急性の」灌流限界低酸素状態であり得る。灌流限界低酸素状態は、塞栓形成のために生じることがあり、従って、本発明の塞栓形成粒子中のナノ粒子が、低酸素条件下で放射線療法的に活性であるという大きな利点がある。
【0092】
本発明はさらに、X線放射または陽子線放射と組み合わせて、本明細書で定義される癌の治療において使用するための、本明細書で定義される医薬組成物を提供する。
【0093】
本発明による癌の治療において、塞栓形成粒子は、腫瘍を塞栓するだけでなく、ROSの産生を介して腫瘍を放射線療法的に処置するという併用効果を有する。塞栓形成粒子は、腫瘍の脈管構造に蓄積する。これは、腫瘍を塞栓し、腫瘍内の適所に粒子を固定して、X線(または陽子線)を用いて腫瘍(または癌部位)の正確な治療を可能にする。
【0094】
X線放射と組み合わせた癌の治療は、典型的には、
a)治療される被験体に組成物または医薬組成物を非経口的に投与すること、
b)癌または腫瘍組織の場所または部位にX線放射を指向させること、
を含む。
【0095】
陽子線放射と組み合わせた癌の治療は、典型的には、
a)治療される被験体に組成物または医薬組成物を非経口的に投与すること、
b)癌または腫瘍組織の場所または部位に陽子線放射を指向させること、
を含む。
【0096】
典型的には、X線または陽子線放射を癌または腫瘍組織の場所または部位に向ける工程は、粒子を注射によって被験体に投与した後に直接行われる。いくつかの例では、X線または陽子線放射をその場所に向ける前に、粒子が腫瘍組織、癌部位または脈管構造全体に広がるのに短い時間要することがある。一般に、X線放射(または陽子線放射)を癌または腫瘍組織の場所または部位に向ける工程は、粒子または医薬組成物を被験体に投与してから1時間以内に行われる。好ましくは、X線または陽子線の放射線を癌または腫瘍組織の場所または部位に指向する工程は、粒子または医薬組成物を被験体に投与した後、45分以内、より好ましくは30分以内、特に15分以内、特別に10分以内、さらにより好ましくは5分以内に行われる。
【0097】
被験体に投与される組成物は、典型的には、10〜10または20〜10000の塞栓形成粒子の総数を含む。しばしば、投与される組成物は、20〜1000個の塞栓形成粒子、例えば40〜400個の塞栓形成粒子を含む。
【0098】
一般に、被験体は、1〜200Gyまたは20〜70Gy、例えば40〜50Gyの全X線線量に曝される。個々のX線線量は、0.1〜10Gyであってもよい。典型的には、本発明の癌を治療するための処置または方法は、1.0〜3.0Gy、好ましくは1.5〜2.5Gyの線量、より好ましくは1.8〜2.0Gyの線量のX線を、癌または腫瘍の場所または部位に指向することを含む。そのような少ない頻度での投与は、健康な細胞が成長して放射線によって引き起こされるいかなる損傷も修復することを可能にすることを意図している。陽子線の放射線量は、1〜2000Gy、1〜500Gy、または上記のいずれかであってもよい。
【0099】
典型的には、本発明の癌を治療するための処置または方法におけるX線放射は、0.005MeV〜10MeVのエネルギーを有する。より高いエネルギーのX線(例えば1MeVより大きい)は時にはガンマ線と呼ばれることがある。X線放射は、0.005MeV〜1MeV、または0.05MeV〜0.2MeVのエネルギーを有することができる。例えば、本発明による癌の治療は、0.01MeV以上のエネルギーを有するX線放射を使用することができる。あるいは、治療は、1MeV以上、例えば70〜250MeVのエネルギーを有する陽子線放射を使用することができる。癌の治療に使用されるX線放射線のエネルギーは、典型的には0.05MeV以上、例えば0.06MeV以上または0.06MeV以上である。癌を治療するためのX線のエネルギーは、0.04〜0.1MeVまたは0.06〜0.09MeVであり得る。本発明による癌治療に使用されるX線のエネルギーは、典型的には、画像化目的に使用されるエネルギーよりも高いエネルギーを有する。
【0100】
癌または腫瘍組織の場所または部位でX線放射または陽子線放射を指向させる工程は、典型的には、塞栓形成粒子内のナノ粒子中の金属酸化物を癌または腫瘍組織の場所または部位で励起して、癌または腫瘍組織の場所または部位にある活性酸素種を生成する。
【0101】
この方法はまた、癌または腫瘍組織の場所または部位にX線放射を指向させる前に、癌または腫瘍組織の場所または部位で本発明の粒子または複数の粒子の存在または非存在を検出する工程を含み得る。典型的には、場所または部位における粒子または複数の粒子の存在または非存在を検出する工程は、X線画像を得るために場所または部位にX線を向ける工程を含む。次いで、X線画像を用いて、癌または腫瘍組織が、場所または部位に存在するかまたは存在しないかを決定することができる。診断用途では、X線に対する被験者の曝露時間は、一般に1秒〜30分、好ましくは1分〜20分、より好ましくは1秒〜5分である。
【0102】
X線放射(または陽子線放射)と組み合わせた癌の治療は、例えば、
a)好ましくは非経口的に、組成物または医薬組成物を治療される被験体に投与すること、
ai)塞栓形成粒子を癌または腫瘍組織の場所または部位に蓄積させること、
aii)任意に、癌または腫瘍組織の場所または部位での塞栓形成粒子の存在または非存在を検出すること、
b)癌または腫瘍組織の場所または部位にX線放射(または陽子線放射)を向けること、
を含む
【0103】
塞栓形成粒子は、典型的には、癌または腫瘍組織の場所または部位内に脈管構造を塞栓することによって、癌または腫瘍組織の場所または部位に蓄積する。これは、腫瘍への血流を制限すると共に、X線または陽子線への暴露で癌を放射線療法的に治療する適切な位置にある腫瘍内に塞栓形成粒子を配置する。したがって、本発明によるX線放射(または陽子線放射)と組み合わせた癌の治療は、典型的には、塞栓形成粒子に、癌または腫瘍組織の場所または部位内に脈管構造を塞栓させる工程を含む。実際に、前段落に記載された実施形態の工程(ai)は、塞栓形成粒子を癌または腫瘍組織の場所または部位に蓄積させ、脈管構造を癌または腫瘍組織の場所または部位内に塞栓する工程を含むことができる。
【0104】
工程(a)は、典型的には、複数の塞栓形成粒子または医薬組成物を治療対象の被験体に静脈内投与することを含む。
【0105】
好ましくは、工程(a)は、複数の塞栓形成粒子または医薬組成物を、癌または腫瘍組織の場所または部位の位置でまたは前で、治療すべき被験体の血流に静脈内投与することを含む。本明細書で使用する「癌または腫瘍組織の場所または部位の前」という用語は、癌または腫瘍組織の場所または部位の血流の上流すなわち血液が心臓から離れて癌または腫瘍組織の部位や場所の方へ向かって流れている脈管構造における位置を意味する。
【0106】
塞栓形成粒子はまた、腫瘍の本体に直接注入された本明細書で定義されるようなドープされたナノ粒子と協力して使用され得る。
【0107】
本発明はまた、(a)本明細書で定義される塞栓形成粒子、本明細書で定義される組成物、または本明細書で定義される医薬組成物を被験体に投与すること; (b)癌または腫瘍組織の場所または部位にX線放射または陽子線放射を指向させることを含む方法を提供する。この方法は、上記の癌の治療における使用のためにさらに定義され得る。典型的には、(a)は、本明細書で定義される塞栓形成粒子、本明細書で定義される複数の塞栓形成粒子、または本明細書で定義される医薬組成物を被験体に静脈内投与することを含む。好ましくは、(a)は、癌または腫瘍組織の場所または部位の位置またはその前の位置で、本明細書で定義される塞栓形成粒子、本明細書で定義される組成物、本明細書で定義される医薬組成物を、治療すべき被験体の血流に静脈内投与することを含む。
【0108】
本発明はまた、X線放射線または陽子線放射と組み合わせて本明細書で定義される癌の治療に使用するための医薬の製造における、本明細書で定義される塞栓形成粒子、本明細書で定義される組成物、または本明細書で定義される医薬組成物の使用を提供する。
【0109】
本発明はまた、塞栓術の方法における使用のための、本明細書で定義される塞栓形成粒子、本明細書で定義される組成物、または本明細書で定義される医薬組成物を提供する。塞栓術は、典型的には、複数の塞栓形成粒子または医薬組成物を、癌または腫瘍組織の場所または部位の位置でまたは前で、治療すべき被験体の血流に静脈内投与することを含む。
【0110】
X線(または陽子線)放射と組み合わせた癌の治療は、塞栓術と同時に行うことができる。従って、本発明はまた、X線放射線または陽子線放射と組み合わせた本明細書で定義される癌の治療と組み合わせた塞栓術の方法における使用のための、本明細書に定義される塞栓形成粒子、本明細書で定義される組成物、または本明細書で定義される医薬組成物を提供する。
【0111】
塞栓形成粒子の製造方法
本発明はまた、1つ以上の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛または二酸化セリウムである複数のナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子を含む塞栓形成粒子の製造方法を提供する。この方法は、
(i)マイクロ粒子を準備すること、
(ii)マイクロ粒子を複数のナノ粒子と接触させること、
(iii)マイクロ粒子とナノ粒子を加熱し、塞栓形成粒子を形成すること、
を含む。
【0112】
塞栓形成粒子は、本明細書においてさらに定義され得る。ナノ粒子は、本明細書においてさらに定義され得る。マイクロ粒子は、本明細書においてさらに定義され得る。
【0113】
典型的には、(i)は、複数のマイクロ粒子を準備することを含む。典型的には、(ii)は、マイクロ粒子を複数のナノ粒子と混合すること、例えば、複数のマイクロ粒子を複数のナノ粒子と混合することを含む。マイクロ粒子およびナノ粒子は、通常、固相中で混合される。したがって、複数のマイクロ粒子を含む固体組成物(例えば、粉末)を、複数のナノ粒子を含む固体組成物(例えば、粉末)と混合することができる。ナノ粒子の体積は、通常、混合物中のマイクロ粒子の体積より大きい。より大きな体積のナノ粒子が望ましく、そうすると過剰量のナノ粒子が存在し、工程(iii)の前および工程中にマイクロ粒子が完全にコーティングされる。過剰のナノ粒子はまた、凝集した塞栓形成粒子の塊ではなく個々の塞栓形成粒子を生成するのに役立つ。マイクロ粒子対ナノ粒子(マイクロ粒子:ナノ粒子)の体積/体積(v/v)比は、典型的には1:1〜1:20である。例えば、比は、1:5〜1:15または1:8〜1:10(v/v)であり得る。
【0114】
塞栓形成粒子は、ナノ粒子に対するマイクロ粒子の組み合わせを加熱することによって形成される。これにより、ナノ粒子が相互に結合し、および/またはマイクロ粒子の表面に塞栓形成粒子を形成させる。典型的には、マイクロ粒子はポリマー(例えばスチレンモノマー単位から形成されたポリマーまたはコポリマー)を含み、(iii)は、ポリマーのガラス転移温度を超える温度でマイクロ粒子およびナノ粒子を加熱することを含む。典型的には、(iii)は、マイクロ粒子およびナノ粒子を150°C〜300°Cの温度で加熱することを含む。温度は、200°C〜250°C、例えば約230°Cであってもよい。加熱は、通常5〜60分間、例えば10〜20分間行われる。
【0115】
塞栓形成粒子の形成後、それらは、例えばふるい分けまたは密度勾配を使用して、より大きな塞栓形成粒子を除去し、過剰のナノ粒子を残すために、通常混合物から単離される。
【0116】
製造工程の一例は以下の通りである。マイクロ小粒子を1:5〜1:15(v/v)の比でナノ粒子と混合した。次いで、混合物を200°C〜250°Cに加熱することによって、ナノ粒子をマイクロ粒子の表面上に焼結させた。これは、毎分5°Cから10°Cの上昇率で炉内で行うことができる。混合物を200°C〜250°Cで5〜20分間保持した。次いで、60%および15%のスクロースを含むスクロース密度勾配を使用し遠心分離(例えば、9,000rpmで1時間)を行い、過剰のナノ粒子から塞栓形成粒子を分離することができる。コーティングされたマイクロ粒子を含むバンドを抽出し、遠心分離し、洗浄した。最後に、調製した粒子を真空下で一晩乾燥させた。本発明で使用されるナノ粒子は、合成または合成後に付随して、マイクロ粒子の表面に添加することができる。
【0117】
あるいは、工程(iii)は、マイクロ粒子の表面にナノ粒子を結合させる組成物をマイクロ粒子およびナノ粒子に添加することを含む。添加組成物は、接着剤組成物、例えばポリビニルアルコール、エポキシド、ウレタン、またはメタクリレートの溶液であってもよい。添加される組成物は、樹脂組成物であってもよい。
【0118】
本発明はまた、本明細書に記載の塞栓形成粒子の製造方法によって得ることができる塞栓形成粒子を提供する。
【0119】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に記載される。
【0120】
実施例
【0121】
ドープされたナノ粒子の製造
希土類ガドリニウムでドープされたチタニアを含むナノ粒子を調製した。これらの粒子の製造方法は以下の通りである。
【0122】
硝酸ガドリニウム(III)六水和物を10mLのチタン(IV)イソプロポキシドに懸濁し、次いで30mLの乾燥イソプロパノールを添加した。
【0123】
溶液中に懸濁している希土類金属化合物の量は、二酸化チタンのホスト格子に導入されるドーパントの量を決定する。1以上の希土類元素の25モル%までの全量を、二酸化チタンのホスト格子中に導入することができる。一例として、34マイクロモルの硝酸ガドリニウムを340ミリモルのチタンイソプロポキシドに添加して、1モル%のガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子を製造した。
【0124】
次いで、溶液を激しく攪拌しながら50/50(v/v)の水/イソプロパノール混合物500mLに滴下して加えた。混合物をさらに5分間撹拌し、沈殿物を沈降させた。上清を除去し、沈殿物を200mLのイソプロパノールで洗浄し、さらに10分間撹拌した。その後、上清を濾過によって集め、次いでddHOで半分充填したチューブでオートクレーブ処理した。次いで、乾燥するまでスラリーを100°Cに保った。試料を微粉に粉砕し、続いて様々な温度(例えば、700°Cで3時間)で焼成した。
【0125】
代替の希土類金属硝酸塩化合物を使用する場合、上記の方法を用いて他の希土類ドープ二酸化チタン粒子を調製することができる。上記の方法はまた、亜鉛アセチルアセトネートまたはセリウムアセチルアセトネートのようなセリウムまたは亜鉛ケトネートが出発材料として使用される場合、希土類ドープ酸化セリウムまたは酸化亜鉛を調製するために使用され得る。
【0126】
TEM画像は、ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子のサイズおよびサイズ分布(図1;上部)、およびそれらの結晶性(図1;下部)を示す。EDXトレース(図2)は、チタニアナノ粒子中のガドリニウムの存在を確認する。
【0127】
この方法が可能であることを確認するために、噴霧火炎法(FSP)を用いてドープされたナノ粒子も合成した。典型的な実験では、TiO中の5at%Gdに対するチタンおよびガドリニウム前駆体の適切な量を溶媒に添加し、1時間撹拌した。溶液をノズルを通して噴霧した。噴霧は、前駆体の注入速度とO分散ガス速度によって定義され、毎分1.5および3.2Lにそれぞれ設定されたメタンおよび酸素からなるパイロット炎によって点火された。粉末が前駆体の燃焼から生じ、ガラス繊維濾紙上に真空下で収集された。最後に、白色粉末を500°Cで2時間焼成した。
【0128】
ドープされたナノ粒子上のアルセナゾIIIアッセイ
FSPによって調製された5%ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子は、シリカ(TiO@5%Gd(FSP)@Si)でコーティングされ、アルセナゾIIIアッセイを用いてガドリニウム浸出について分析された。試料をMilli−Q水に再懸濁し、超音波処理し、濾過した。試料を希釈し(1:401)、試料について3つのUV−VISスペクトルを収集した。300nmでの吸光度を測定した。P25の較正曲線に基づいて、濾過後の試料の初期濃度を計算した(5.45mg/mL)。500μLの試料をSlide−A−Lyzer透析カセット(ThermoScientific)に注入し、室温で絶え間なく攪拌しながらMilli−Q水(55mL)に対して透析した。陽性対照実験では、硝酸ガドリニウム(III)六水和物を遊離ガドリニウム源として使用した。500μLの塩化ガドリニウム(III)六水和物(0.788mg/mL)をSlide−A−Lyzer透析カセット(ThermoScientific)に注入し、室温で絶えず攪拌しながら水(55mL)に対して透析した。さらに、500μLの未コーティングTiO@5%Gd(FSP)(5.45mg/mL)試料をSlide−A−Lyzer透析カセット(ThermoScientific)に注入し、室温で絶え間なく攪拌しながら水(55mL)に対して透析した。
【0129】
水(「シンク(Sink)」)を、透析1日後、最大14日間、遊離ガドリニウムについて評価した。測定用の試料は、100μLの0.2mMのアルセナゾIIIと900μLのシンクを混合することによって調製した。ブランクは、100μLの0.2mMのアルセナゾIIIと900μLのMilli−Q水を混合することによって調製した。誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によるさらなる分析のために、すべてのシンク試料を収集した。
【0130】
マイクロ粒子
ポリスチレンマイクロ粒子は、実験室で調製することができるか、または市販の標準品を使用することができる。マイクロ粒子は、ある範囲のサイズとして製造または購入することができる。閉塞される血管の大きさは、腫瘍に供給される主要な血管からより小さい内部血管(上記の表1参照)までの直径にわたる。したがって、マイクロ粒子は、正確な用途および意図された閉塞点に応じて、異種の直径の集まり(図3および図4)またはより厳密に制御された直径(図5)として適用することができる。
【0131】
ポリスチレンマイクロ粒子は、実験室で合成されたか、またはDuke scientificからDry green fluorescent 40μm ポリスチレンジビニルベンゼンビーズとして購入した。ポリスチレンマイクロ粒子の合成は、以前にIhara Hら(Materials Chemistry and Physics 2009; 114(1):1−5)およびUchimura Aら(Materials Chemistry and Physics 2011; 129(3):871−80)に記載されているように、スチレンとエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の懸濁共重合によって行った。2.5mlのスチレン(Aldrich)、2.5mlのEGDMA(Aldrich)および50mgのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN; Aldrich)を混合することによって、油相を生成させた。次いで、その油相を、丸底フラスコ内の30mlの4重量%水性ポリビニルアルコール(PVA、87〜90%加水分解、平均分子量30,000〜70,000; Aldrich)に添加した。混合物を室温で1時間250rpmで撹拌し、次いで60°Cで24時間放置した。粒子を遠心分離によって回収し、ddHOで2回洗浄し、30mlのddHOに再懸濁し、一晩還流して、残りのPVAを除去した。次いで、遠心分離によって粒子を回収し、メタノールで2回洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0132】
塞栓形成粒子の製造
実験室で合成されたポリスチレンマイクロ粒子および購入したポリスチレンジビニルベンゼンマイクロ粒子は、それぞれガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子で被覆されていた。
【0133】
マイクロ粒子を1:9の比(v/v)でナノ粒子と混合した。次いで、その混合物をポリスチレンマイクロ粒子のガラス転移温度よりも高い230°Cに加熱することにより、チタニアナノ粒子をポリスチレンマイクロ粒子の表面上に焼結させた。これは、毎分7度の上昇率でCarbolite RWF 1200の炉内で行った。混合物を230°Cで15分間保持して、ドープされたチタニアナノ粒子の結晶相の潜在的な変化を制限した。ドープされたチタニアナノ粒子被覆マイクロ粒子を、60%および15%スクロースを含有するスクロース密度勾配を使用し、9,000rpmで1時間の遠心分離をして、過剰のナノ粒子から分離した。コーティングされたマイクロ粒子を含むバンドを抽出し、遠心分離し、ddHOで3回洗浄してスクロースを除去した。最後に、調製した粒子を真空下で一晩乾燥させた。
【0134】
TEMを用いて、ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子のサイズ、表面形態、および結晶構造を測定した。TEMは、200keVの基本のビームエネルギーで動作するLaB熱電子銃と、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を実施するためのOxford Instruments INCA X線分析システムとを備えたJEOL−JEM−2010顕微鏡を用いて行った。基本の電子ビームと試料との相互作用によって生成された特有のX線を分析することにより、試料中に存在する元素を決定することができた。エタノール中にナノ粒子を再懸濁させ、穴の開いた炭素被覆グリッド(Agar Scientific)上にドロップキャスティングすることにより、TEM試料を調製した。
【0135】
SEMを用いて、ナノ粒子被覆マイクロ粒子(すなわち、本発明の塞栓形成粒子)のサイズ分布および表面被覆率を評価した。SEMは、3keVの基本のビームエネルギーで動作するJEOL−JSM−840F顕微鏡を使用して実施し、補助的な電子イメージングモードで画像を収集した。カーボンテープSEMスタブ(Agar Scientific)上に散布することによりSEM試料を調製し、次いで3nmの白金層で被覆して、動作中の帯電を減少させた。
【0136】
本発明による塞栓形成粒子のSEM画像を図5および6に示す。ナノ粒子は、図6のマイクロ粒子の表面上に視覚化することができ、これは、マイクロ粒子が、脈管構造を塞栓するためのマイクロ粒子の能力を破壊しない均一なコーティングを提供することを示す。
【0137】
細胞死実験 − 実施例1
ナノ粒子およびナノ粒子被覆マイクロ粒子の有効性は、横紋筋肉腫(RD:rhabdomyosarcoma)細胞株を用いてインビトロで測定した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(Aldrich)、2mM L−グルタミン(Aldrich)、100U/mlペニシリン(Aldrich)および0.1mg/mlストレプトマイシン(Aldrich)を補充した増殖培地(ダルベッコ改変イーグル培地:Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM); Aldrich)で増殖させ、37°C、5%CO雰囲気下でインキュベートした。細胞は3〜4日ごとに継代した。
【0138】
RD細胞を150μlの新鮮培地中に1ウェル当たり1x10の細胞で2つの別々の96ウェルプレート上に播種し、細胞をプレートに接着させるために一晩インキュベートした。次の日に、両方の細胞プレートを、三重に、(i)1.5mgの未ドープのチタニアナノ粒子(1.5mgのTiO); (ii)1.5mgのガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子(1.5mgのTiO:Gd); (iii)未ドープのチタニアナノ粒子(15mgのPS−TiO)でコーティングされた15mgのマイクロ粒子; (iv)ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子(15mgのPS−TiO:Gd)でコーティングされた15mgのマイクロ粒子; または(v)対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で、処理した。翌日、粒子処理された細胞の1つのプレートを80〜90keVの平均エネルギーおよび3グレイの線量の150keVまでの広範囲のスペクトルのX線エネルギーに曝したが、対照として他のプレートは未照射(0グレイ)のままにした。実験の最後の日に、細胞増殖を、血球計数器を用いた手動細胞計数によって測定した。培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、30μlのトリプシン−EDTAを用いて付着細胞を分離した。細胞が剥離したことを確認した後、30μlの新鮮な増殖培地を添加してトリプシンを中和し、細胞を光学顕微鏡を用いて計数した。細胞を一晩回復させ、細胞死を手動細胞計数によって評価した(図7)。
【0139】
この実験は、チタニアナノ粒子単独またはマイクロ粒子と組み合わせたチタニアナノ粒子が、照射の有無にかかわらず細胞死を引き起こさないことを示す(図6; 1.5mgのTiOおよび15mgのPS−TiO)。ガドリニウムでドープされた粒子は、照射の不存在下では不活性であるが、照射後に細胞死を劇的に増加させる。
【0140】
したがって、塞栓形成粒子がドープされたナノ粒子で官能化されて、癌部位または腫瘍を塞栓すると共にX線放射に曝露されると細胞死を引き起こすことができる粒子を生成することが示されている。
【0141】
細胞死実験 − 実施例2
細胞培養
Marican Type Culture Collection(ATCC; Manassas; VA):Rhabdomyosarcoma lines、RD(ATCC code CCL-136)およびRH30(ATCCコードCRL-7763)、および子宮頸癌HeLa系統(ATCCコードCCL-2)から得られた不死化癌細胞株について、ナノ粒子およびナノ粒子被覆マイクロ粒子の有効性をインビトロで測定した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(Aldrich)、2mM L−グルタミン(Aldrich)、100U/mlペニシリン(Aldrich)および0.1mg/mlストレプトマイシン(Aldrich)を補充した増殖培地(ダルベッコ改変イーグル培地:Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM); Aldrich)で増殖させ、37°C、5%CO雰囲気下でインキュベートした。細胞は3〜4日ごとに継代した。
【0142】
クローン原性アッセイ
HeLa細胞のフラスコに播種し、細胞を付着させるために4時間インキュベートした。ナノ粒子を適切なフラスコに加え、照射の前に一晩インキュベートした。照射後、細胞を37°Cで1時間インキュベートした。次いで、細胞をトリプシン処理し、計数し、ペトリ皿に1000細胞/皿を播種した。各実験条件について少なくとも3つのペトリ皿を播種した。細胞を37°C、5%CO雰囲気中で2週間静置してインキュベートした。次いで、細胞をPBSで2回洗浄することにより染色し、グルタルアルデヒドを用いて30分間固定した後、0.5%クリスタルバイオレット染料を少なくとも1時間加え、その後生き残ったコロニーをカウントした(>50細胞)。次いで生存率を、播種した細胞数でカウントしたコロニーを割り、0Gyの対照を用いて測定した播種効率に対して補正することによって計算した。
【0143】
放射線増感性塞栓形成マイクロ粒子によるインキュベーション後の細胞増殖
RD細胞を2つの別々の96ウェルプレート上に1ウェル当たり1×10個の細胞で150μlの新鮮な培地に播種し、細胞をプレートに接着させるために一晩インキュベートした。次の日に、両方の細胞タイプに対して三重にしたプレートを準備し、(i)1.5mgのドープされていないチタニアナノ粒子、(i)1.5mgのガドリニウムドープされたチタニアナノ粒子、(iii)15mgのドープされていないチタニアナノ粒子でコーティングされたマイクロ球体、(iv)15mgのガドリニウムドープされたチタニアナノ粒子、(v)対照のためのPBS、のいずれかで処理された。翌日、粒子処理した細胞の1つのプレートを3GyのX線に曝露し、他方のプレートを対照として未照射のままにした。さらに24時間後、トリプシン−EDTAを用いて付着細胞を除去した後、血球計数器を用いた手動細胞計数によって細胞増殖を測定した。
【0144】
低酸素状態
低酸素下での照射実験装置
細胞増殖を評価するための低酸素実験を、窒素および5%の二酸化炭素中0.2%の酸素濃度を用いて行った。照射の2時間前に、細胞を低酸素チャンバーに移し、これをX線セットの上の厚さ1mmのステンレススチールシェルフ上に配置した上記組成物のガスでフラッシュした。チャンバー内でプレートの外側周囲に温水を循環させて加熱した厚さ5mmのアルミニウムプレートの上にフラスコを置くことにより、細胞を37°Cに保った。照射後、細胞を低酸素が維持されるインキュベーターに移した。生存細胞の数をさらに24時間後に手動細胞計数によって評価した。
【0145】
照射
校正されたEBT3ガフクロミックフィルム(International Specialty Products、Wayne、NJ、USA)を用いて測定した0.57Gy/分の線量率で、厚さ0.25mmの銅フィルタ(1.08mm Cuの半値層)を有する250kV(一定電位)X線を用いてX線露光を行った。この論文で引用されているすべての線量は、同じ時間量で曝されたナノ粒子を有するか有しないかにかかわらず、水に曝される線量を指す。
【0146】
酸化タンタル放射線不透過性粒子の製造
TaOナノ粒子は、以下の方法を用いて調製した。Igepal Co−520(Aldrich)2.3g、エタノール(Fisher)0.75ml、およびシクロヘキサン(Aldrich)20mlを撹拌して混合することにより、油相を生成させた。250μlの2mM NaOH(aq)を添加することによってマイクロエマルジョンを作製した。最後に、50μlのタンタル(V)エトキシド(Aldrich)をマイクロエマルションに室温で添加し、5分間インキュベートした。次いでエタノール(Fisher)を混合物に添加して、粒子を沈降させた。次いで、遠心分離によって粒子を回収し、エタノールで3回洗浄し、デシケーター中で一晩乾燥させた。
【0147】
酸化タンタルナノ粒子のマイクロ粒子への組み込み
ポリスチレン−TaOマイクロ粒子は、ポリスチレンマイクロ粒子の合成のため、Iharaら(Materials Chemistry and Physics 2009; 114(1):1−5)によって提示された方法の改変によって調製された。まず、2.5mlのスチレン(Aldrich)、2.5mlのEGDMA(Aldrich)および50mgのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN; Aldrich)を混合して油相を生成させた。異なる質量のTaOナノ粒子を油相中に混合して、理論的に、0重量%、5重量%、10重量%、20重量%および50重量%のTaOナノ粒子を含むPS−TaOマイクロ粒子を作製した。次いで、油相全体にわたってナノ粒子の分散を増加させるために、超音波プローブ(Sonic Vibra−Cell)を用いて1分間(104W、5秒間隔で5秒パルス)油相を超音波処理した。油相を、丸底フラスコに入れた4重量%のポリ(ビニルアルコール)(PVA)(87〜90%加水分解、平均分子量30,000〜70,000; Aldrich)を含有する30mlの水相に添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで60°Cで24時間放置した。粒子を遠心分離によって集め、ddHOで2回洗浄し、次いで30mlのddHOに再懸濁し、一晩還流して残留PVAを除去した。最終的に粒子を遠心分離により回収し、メタノールで2回洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0148】
結果
【0149】
ドープされたチタニアナノ粒子
噴霧火炎法合成ルート
ドープされたチタニアナノ粒子は、上記のゾル−ゲル法によって調製することができる。臨床応用のためのナノ粒子の大規模製造にさらに適しているという利点を有する別のFSP法もまた使用された。FSP合成は、ナノ粒子の迅速かつスケーラブルな合成のための有望な技術である。前駆体は、高い発熱性の溶媒に溶解/分散され、火炎中で燃焼される。これは、大量の生成物を水性副生成物なしで調製することができるので、工業的に一般的に使用されている。粒子形成のメカニズムは、ガス−物質原理に基づいており、4つの主要な工程に分割できる。(i)金属蒸気を形成する前駆体噴霧蒸発/分解、(ii)過飽和の結果としての核形成、(iii)合体および焼結による成長、および(iv)粒子の集合/凝集。
【0150】
一連のドープされたGd−TiOナノ粒子がこの方法によって調製され、ここに提示された結果は、5at%のガドリニウムドープ試料に関するものである。合成されたナノ粒子について、TEM、EDXおよびXRD分析を行った。TEM画像は、ナノ粒子が5〜20nmの粒径を有する球状であることを示している。XRD分析により、アナターゼについては6〜8nm、ルチルについては10〜12nmの結晶サイズを有するアナターゼおよびルチル相の両方の存在が明らかになった。ルチルおよびアナターゼ以外の追加の結晶相は識別できないが、他のGd相が依然として存在する可能性がある(回折計分解能が低すぎてそのような小さな濃度でピークを検出できない可能性がある)。さらに、希土類の[6]倍配位(rTi4+=0.605Åと比較してrGd3+=0.938Å)で陽イオンサイズを考慮する場合に予想されるように、アナターゼまたはルチルピークの有意なシフトは検出されなかった。炭素残留物を除去することを目的とした500°Cの空気中での炉焼成は、粒径およびルチル/アナターゼ比を変化させないことが判明した。HAADF画像によれば、分解能は限られているが、Gdはナノ粒子の表面に存在する。5%ドープされた試料のXPSスペクトルは、Gdの存在を示すので、この仮定と一致する。ICP−MSの結果は、FSP生成材料のGd含有量が、10.4重量%Gd 48.4重量%Tiの理論Gd含有量を有するNPsと良好に相関することを示した。
【0151】
ナノ粒子の完全性
遊離ガドリニウムは患者に有毒である可能性があるので、遊離ガドリニウムがナノ粒子の表面から放出されたかどうかが試験された。ナノ粒子を水中で14日間インキュベートし、シンク溶液を遊離ガドリニウムについて1、5、6、8および14日目に評価した。 硝酸ガドリニウム(III)六水和物は、その溶解性のためにアッセイにおいて陽性対照として使用した。アルセナゾアッセイを使用して、ナノ粒子を含む試料から採取したシンク溶液からガドリニウムは検出されなかった。アルセナゾアッセイの検出の限界に起因して、同じシンク試料もICP−MSによって分析した。ここで、検出限界は0.01ppm未満であるが、再度ガドリニウムは検出されず、水溶液中でのインキュベーションによってナノ粒子構造が変化しないこと、およびナノ粒子がその完全性を維持していることを示している。
【0152】
ナノ粒子の放射線増感特性
放射線増感剤として作用するナノ粒子の能力は、クローン原性アッセイを用いて確認された。我々の実験的RDおよびRH30細胞株はコロニーをよく形成しないので、HeLa細胞株を使用した。用量およびナノ粒子処理の関数として生存率の変化(コロニー数を測定し、コロニー形成率PEで補正したものから決定)を図8に示す。照射がない場合、対照(PEcon=0.88±0.10)とドープされていない(PEundoped=0.72±0.04)またはドープされたチタニア(PEdoped=0.90±0.009)のいずれかとの間に有意差はなかった。3Gyの照射後、ナノ粒子を含まない試料とチタニアナノ粒子と共にインキュベートされた試料に見られたコロニーの数に有意差はなかった。しかし、ドープされたチタニアナノ粒子でインキュベートした試料と比較して、ナノ粒子なしでインキュベートした試料の間に非常に有意な(p<0.05)差が存在することが分かる。これは、FSPによって調製されたドープされたチタニアナノ粒子が、ゾル−ゲルによって調製されたものと同様の様式で放射線増感することができることを確認し、したがってこれらのナノ粒子を放射線生物学的試験および臨床使用のために大量に製造する方法論を提供する。
【0153】
低酸素条件下での放射線増感
臨床的に関連する条件下で放射線増感剤として作用する粒子の能力をさらに調べるために、インキュベートし酸素を低減させた条件下で照射した細胞を有する真低酸素下(under true hypoxia)の細胞にナノ粒子を導入した。
【0154】
低酸素状態
低酸素状態模倣剤は、低酸素の結果として観察されるのと同様の細胞内で同様のシグナル伝達経路を活性化することができるが、酸素効果の支配的メカニズムであると考えられている、細胞に存在する酸素が放射線が誘発したDNA損傷を直接的に改変することを妨げられない。従って、還元酸素条件下で培養された細胞における粒子の作用を調べることも重要であった。酸素を低減させた条件下で実施されたナノ粒子の非存在下で培養されたRH30細胞の実験的増殖データは、未照射対照(図9)と比較して5Gyの曝露後の細胞数に有意差を示さなかった。5Gy照射または未照射のいずれかに曝露された場合、FSPによって調製された標準対照(P25@Si)およびTiO@Siナノ粒子と共に細胞をインキュベートした場合にも、同様に細胞数が観察された。逆に、TiO@Gd@Si放射線増感剤ナノ粒子と共にインキュベートした細胞は、放射線の不在下で(予想通り)差を示さないが、照射後に細胞数の29%の有意な減少(p<0.05)が観察された。
【0155】
TiO2:Gdナノ粒子の塞栓形成微粒子への取り込み
ポリスチレンマイクロ粒子のナノ粒子コーティング
ポリスチレンマイクロ粒子は、実験室でまたは商業的な標準品で、ある範囲のサイズで調製された。塞栓形成粒子のサイズは、腫瘍に血液を供給する血管の直径に範囲があるので様々であった。
【0156】
特に特徴の無い(bland)塞栓形成粒子は、対照チタニアナノ粒子またはドープされたチタニアナノ粒子のいずれかでコーティングされた。多数の方法が研究されたが、最も成功したのは、図10に示すように、チタニアナノ粒子をポリスチレン上に焼結させることであった。ナノ粒子を有するマイクロ粒子のコーティングをSEMで評価した。
【0157】
塞栓形成粒子の放射線増感特性
チアニアコーティングされた塞栓形成粒子の放射線増感を、増殖アッセイを用いて細胞培養において試験した。照射されていない対照試料では、チタニアナノ粒子単独またはチタニアナノ粒子で被覆されたポリスチレンマイクロ粒子のいずれも有意に細胞数に影響を及ぼすことができなかったことが分かる(図11)。同様に、ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子は、未照射対照において細胞数に有意に影響しなかった。
【0158】
逆に、ガドリニウムでドープされたナノ粒子およびガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子でコーティングされたマイクロ粒子の両方が、照射後の細胞数の有意な減少を生じ得ることが確認された(有意差が観察されない非ドープナノ粒子と比較して)。したがって、ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子でコーティングされた塞栓形成マイクロ粒子は、腫瘍への栄養素および酸素の物理的ブロックとして作用することに加えて放射線増感剤として作用することが期待される。
【0159】
議論
【0160】
ナノ粒子の合成とキャラクタリゼーション
本明細書では、放射線増感ドープされたチタニアナノ粒子の製造のためのスケーラブルな方法;ナノ粒子の完全性の実証;低酸素条件下でのその有効性の調査;および塞栓形成マイクロ粒子の成分としてのさらなる有用性の実証が含まれる。
【0161】
ここでは、ナノ粒子を生成するためのFSPの使用について説明する。粉末は、比表面積が30〜100m/gで15〜100nmの平均粒径(APS:Average Particle Sizes)を有する。FSP技術は、単一工程で低コストの出発材料から容易に混合および単一金属酸化物を製造するために使用することができる。気相プロセスであるので、均一な粒度分布が得られる。金属カルボン酸塩またはアルコキシドは、しばしば前駆体として使用され、したがって、制限された金属不純物または他の望ましくない汚染、例えばハロゲン化物が最終生成物に見出される。最後に、このプロセスはスケーラブルであることが示されており、製品は既に商業的に入手可能である。
【0162】
ここで合成されたナノ粒子は、ルチル粒子より小さいアナターゼ粒子を伴い、直径が7.9〜11.7nmであることが示され、EDXによって確認されたガドリニウムドーパントの存在が確認された。その後、FSPによって調製されたガドリニウムでドープされたナノ粒子は、細胞培養において放射線増感剤として作用することが確認され、クローン原性生存率(図8)および細胞増殖(図9)の両方で大きな減少を示した。希土類成分の構造の破壊およびその結果の放出がないことを確実にするために、さらなる試験が行われた。その非結合状態のガドリニウムは極めて毒性が強く、カルシウムチャネルの強力な阻害剤であり、心臓血管および神経学的に重大な毒性を有するので、これは重要であった。ガドリニウムは、肝臓、骨およびリンパ節に蓄積することが知られている。マウスではGdClの致死量(LD50)の中央値は100〜200mg/kgに過ぎない。しかし、そのキレート化形態のガドリニウムは、MRIにおける組織のコントラストを改善するために一般的に使用され、正常な腎機能を有する患者において安全であることが証明されている。データは、National Characterization Laboratory(USA)によって推奨されたアルセナゾアッセイまたはICP−MSのいずれかを用いて、ナノ粒子からのガドリニウムの放出がないことを示した。PIXEによるさらなる調査により、ナノ粒子の構造的完全性が希土類元素の放出がないというさらなる証拠が示された。
【0163】
低酸素下でのナノ粒子の有効性
ナノ粒子は正常酸素状態下で放射線増感剤として作用することが実証されているが、腫瘍細胞はしばしば低酸素または無酸素である。低酸素状態は、腫瘍の攻撃性および治療抵抗性を高める最も重要なパラメータの1つである。これは、酸素分子が強力な放射線増感剤であるためである。しかし、この放射線増感は、酸素の代謝的または生理学的な影響に起因するものではないが、酸素が電離放射線からのエネルギーの吸収後にDNA損傷の生成をもたらす化学反応に関与する極めて電子親和性の分子であるという事実を反映している。したがって、酸素欠乏は、放射線療法の効率を著しく低下させる可能性がある。このように、酸素を低減させた条件下でナノ粒子の有効性を評価することが適切であろう。
【0164】
真低酸素下でナノ粒子の作用を調べた。放射線療法の間、増殖および細胞周期の進行に影響を及ぼすが、酸素の支配的な効果は、放射線誘発性DNA損傷の改変による修復性の低下であり、したがって低酸素濃度は細胞を不活性化する際の放射線の効率を低下させる。実験中、細胞を低酸素条件下でプレインキュベートし、実験および回復期間も同じ酸素条件にかける。放射線感受性に対する酸素の支配的効果は、それが照射の間またはその間の内(msecs)に存在することを必要とすることが実証されているが、全体的な応答は、放射線誘発損傷および酸化ストレスに起因する損傷のバックグラウンドレベルに影響を与える酸素の存在または非存在によってある程度調節される。照射後の低酸素状態は、低酸素状態で照射された細胞における潜在的致死損傷回復(PLDR:Potentially Lethal Damage Recovery)を排除することが示されている。しかし、毒性条件に戻ったとき、低酸素によるPLDRの阻害は緩和された。
【0165】
ここで、照射は、チタニアナノ粒子対照のいずれかとインキュベートした細胞において細胞数の有意な減少をもたらさなかったことが示された。しかしながら、ガドリニウムでドープされたチタニアナノ粒子は、依然として照射の際に細胞死の有意な増加を示した。これは、ドープされたチタニアナノ粒子が、腫瘍細胞に見られる低酸素状態下でさえ放射線増感剤として有効であることを示している。
【0166】
複合塞栓形成粒子の合成
ドープされたチタニアナノ粒子の有用性を付加するために、特に特徴の無い(bland)塞栓ポリスチレンマイクロ粒子の表面を放射線増感剤ナノ粒子でコーティングした複合塞栓形成マイクロ粒子を調製した。マイクロ粒子の良好な被覆を達成するために、ナノ粒子の付着のために多数の方法が試みられた。第1の方法は、マイクロ粒子重合反応の過程でメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MS)を用いてポリスチレン球の表面にチタニアを固定するワンポット法であった。しかし、合成反応の間、MSコーティングは、チタニア放射線増感剤ナノ粒子のUV光活性を阻害し、また外挿することによってX線励起によってROSを生成する能力を阻害することが見出された。第2の方法は、正に荷電した高分子電解質PDADMACを用いて、予め調製したポリスチレン球の表面上にチタニアナノ粒子を静電結合させた。合理的な被覆を達成することができたが、チタニアナノ粒子がポリスチレン球から分離し、体内に放出される恐れがあった。我々のナノ粒子に関しては、血流中の酵素がPDADMAC電解質の分解を引き起こし、塞栓粒子の表面からチタニアナノ粒子を放出する可能性がある。
【0167】
PS−チタニア粒子を製造するための最終的かつ最も成功した方法は、焼結法を使用した。予め調製したポリスチレン球体をチタニアの浴中に懸濁させ、次いでポリスチレン球体のガラス転移温度である165°C以上に加熱した。165°Cでポリスチレンチタニア混合物を焼結させると、チタニアナノ粒子で約70%のマイクロ粒子被覆率が得られ、焼結温度を200°Cと230°Cの両方に上昇させると被覆率はほぼ100%に増加した。焼結温度を260°C以下に保つことが重要であり、この温度で、ポリスチレンは質量の減少によって示されるように劣化し始める。また、チタニアナノ粒子の結晶構造が悪影響を受けることがあるので、焼成時間および温度を最小限に保つことが望ましい。(対照として、非結合ナノ粒子は同じ焼結手順で処理され、焼結前後の活性に有意差(p≧0.05)がないことが示された。ドープされたチタニアナノ粒子およびPS−チタニア塞栓粒子が細胞増殖を阻害する能力を、RD細胞株でインビトロで試験した。(ナノ粒子とインキュベートされていないが)同じ線量の照射を受けた対照細胞と比較して、TiO:5%Gd放射線増感剤ナノ粒子で処理した細胞の生存細胞数は、56.9%±11.4(p≦0.005)の有意な減少があった。また、TiO:5%Gd放射線増感剤と共にインキュベートした細胞と未照射または3Gyで照射した細胞のいずれとの間に生存細胞数には非常に有意な差があった。
【0168】
放射線を伴わずに不活性であるが、細胞を殺すためにX線を用いて活性化することができる放射線増感性塞栓粒子が実証されたのはこれが初めてである。本明細書に示されている放射線増感剤塞栓形成粒子は、概念実証であり、より大きな有用性のためにさらに改変することができる。腫瘍血管のサイズの範囲および特に特徴の無い(bland)の塞栓形成粒子のサイズは、血管の閉塞の最大サイズを提供するために容易に変更され得る。さらに、放射線増感剤を生成するための表面の修飾に加えて、蛍光マーカーまたはMRI造影剤をマイクロ粒子の中心に添加することによって、マルチモーダルな塞栓形成粒子を作製することができる。マイクロ粒子は、X線造影剤(非磁性であるため患者がMRIを受けることを可能にする)としてフルオロフォアのようなイメージング剤またはタンタルのような重金属を組み込むことができ、または化学塞栓形成(メソポーラスシリカナノ粒子とチタニアナノ粒子の混合物)と組み合わすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】