【実施例】
【0151】
実施例1.ランダム化されたループを有するテンコンライブラリの構築
テンコン(Tencon)(配列番号1)は、ヒトテネイシンCからの15個のFN3ドメインのコンセンサス配列から設計された、免疫グロブリン様足場構造のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107〜117,2012;米国特許第8,278,419号)。テンコンの結晶構造は、7個のβ鎖を連結する6個の表面露出ループを示す。これらのループ又は各ループ内の選択された残基をランダム化することでフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリを構築することができ、このライブラリを用いて特異的標的に結合する新規分子を選択することができる。
【0152】
テンコン:
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAEFTT(配列番号1)
【0153】
テンコンを足場として使用し、異なる設計手法を用いて、各種のライブラリを生成した。一般的に、ライブラリTCL1及びTCL2は、良好な結合分子を生成した。TCL1及びTCL2ライブラリの生成については、国際公開第2014081944A2号に詳細に述べられている。
【0154】
TCL1ライブラリの構築
cisディスプレイシステムで用いるため、テンコン(配列番号1)のFGループのみをランダム化するように設計されたライブラリTCL1を構築した(Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107〜117,2012)。このシステムでは、Tacプロモーター、テンコンライブラリコード配列、RepAコード配列、cisエレメント、及びoriエレメントの配列を組み込んだ一本鎖DNAを作製する。インビトロ転写/翻訳系で発現させると、それがコードされたDNAに対してcisで結合したテンコン−RepA融合タンパク質の複合体が産生される。次に、標的分子に結合する複合体を単離して、以下に述べるようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する。
【0155】
cisディスプレイで用いるためのTCL1ライブラリの構築は、PCRの連続ラウンドによって行われ、最終的に直鎖状の二本鎖DNA分子が2つの半分子として産生された。すなわち、プロモーター及びテンコン配列を含む5’末端フラグメントと、repA遺伝子とcis及びoriエレメントとを含む3’末端フラグメントである。これらの2つの半分子同士を制限酵素消化によって結合させて、完全な構築物を産生する。テンコンのFGループであるKGGHRSN(配列番号55)のみにランダムなアミノ酸を組み込んで、TCL1ライブラリを設計した。このライブラリの構築にはNNSコドンを用い、これにより20種類すべてのアミノ酸と1個の終止コドンがFGループに組み入れられると考えられる。TCL1ライブラリは、多様性を更に大きくするために、それぞれが7〜12残基の異なるランダム化FGループの長さを有する、6個の個別のサブライブラリを含む。
【0156】
TCL1ライブラリ(配列番号2)
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX
7〜12PLSAEFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7は、任意のアミノ酸であり、
X
8、X
9、X
10、X
11及びX
12は、任意のアミノ酸又は欠失である。
【0157】
TCL2ライブラリの構築
テンコンのBC及びFGループの両方がランダム化され、それぞれの位置のアミノ酸の分布が厳密に制御されたTCL2ライブラリを構築した。表3は、TCL2ライブラリの所望のループ位置のアミノ酸分布を示す。設計されたアミノ酸分布には2つの狙いがある。第1に、ライブラリを、テンコン結晶構造の解析及び/又はホモロジーモデリングに基づいて、テンコンのフォールディング及び安定性にとって構造的に重要となると予想された残基に偏らせた。例えば、29番目の位置は、テンコンが折り畳まれる際に疎水性コアの中に埋もれることから、疎水性アミノ酸のサブセットのみとなるように固定した。第2の層の設計としては、高アフィニティーの結合分子を効率よく生成するため、抗体の重鎖HCDR3に選択的に見出される残基の分布に近くなるようにアミノ酸分布を偏らせた((Birtalan et al.,J Mol Biol 377:1518〜28,2008;Olson et al.,Protein Sci 16:476〜84,2007)。この目標のため、表2の「設計された分布」は、以下の分布を指す。すなわち、6%アラニン、6%アルギニン、3.9%アスパラギン、7.5%アスパラギン酸、2.5%グルタミン酸、1.5%グルタミン、15%グリシン、2.3%ヒスチジン、2.5%イソロイシン、5%ロイシン、1.5%リジン、2.5%フェニルアラニン、4%プロリン、10%セリン、4.5%トレオニン、4%トリプトファン、17.3%チロシン、及び4%バリン。この分布には、メチオニン、システイン、及び終止コドンは含まれない。
【0158】
TCL2ライブラリ(配列番号3)
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8SFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX
9X
10X
11X
12X
13SX
14X
15LSAEFTT;ただし、
X
1は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
2は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
3は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
4は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
5は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
6は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
7は、Phe、Ile、Leu、Val、又はTyrであり、
X
8は、Asp、Glu、又はThrであり、
X
9は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
10は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
11は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
12は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
13は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
14は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
15は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValである。
【0159】
【表2】
*残基の番号は、配列番号1のテンコン配列に基づく。
【0160】
続いて、これらのライブラリを、野生型テンコンと比較して安定化した、置換E11R/L17A/N46V/E86Iを有するテンコンフレームワーク(テンコン27:配列番号4)上でライブラリを構築すること(米国特許第8,569,227号)、並びにBC及びFGループにおいてランダム化される位置を変えることを含む様々な方法によって改良した。テンコン27は、国際出願第2013049275号に記載されている。これより、テンコンのFGループのみ(ライブラリTCL9)、又はBC及びFGループの組み合わせ(ライブラリTCL7)をランダム化するように設計した新たなライブラリを作製した。これらのライブラリは、cisディスプレイシステムで使用することを目的として構築したものである(Odegrip et al.,Proc Natl Acad Sci USA 101:2806〜2810,2004)。この設計の詳細を以下に示す。
【0161】
安定化したテンコン(テンコン27)(配列番号4)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAIFTT
【0162】
TCL7(ランダム化したFG及びBCループ)(配列番号5)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9FDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19SNPLSAIFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15及びX
16は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYであり、
X
7、X
8、X
9、X
17、X
18及びX
19は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0163】
TCL9(ランダム化したFGループ)(配列番号6)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9 X
10X
11X
12SNPLSAIFTT;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、及びX
7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYであり、
X
8、X
9、X
10、X
11、及びX
12は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0164】
ライブラリ構築のため、ランダム化したBCループ(6〜9個分の位置の長さ)又はFGループ(7〜12個分の位置の長さ)をコードしたDNAフラグメントを、Slonomics技術(スローニング・バイオテクノロジー社(Sloning Biotechnology GmbH))を用いて合成することにより、ライブラリのアミノ酸分布を制御し、終止コドンを除去した。BCループ又はFGループをランダム化したDNA分子の2つの異なるセットを独立して合成し、後でPCRを用いて結合させることによって完全なライブラリ産物を生成した。
【0165】
FGループライブラリ(TCL9)の構築
5’末端のTacプロモーターに、FGループ内のコドンをランダム化した以外は、テンコンの完全な遺伝子配列が続くものとして構成される合成DNA分子のセットを作製した(配列番号26〜31)。FGループのランダム化を行うため、システイン及びメチオニンを除くすべてのアミノ酸を同比率でコードした。多様化させる部分の長さは、これらの部分がFGループ内の7、8、9、10、11、又は12個のアミノ酸をコードするようなものとした。それぞれの長さの変異体のサブライブラリを2μgのスケールで個々に合成し、次いで、オリゴヌクレオチドSloning−FOR(配列番号9)及びSloning−Rev(配列番号10)を使用したPCRによって増幅した。
【0166】
ライブラリの3’末端フラグメントは、PspOMI制限部位、repA遺伝子のコード領域、並びにcis及びoriエレメントを含む、ディスプレイ用のエレメントを含んだ一定のDNA配列である。鋳型としてのプラスミド(pCR4Blunt)(インビトロジェン社(Invitrogen))をM13フォワードプライマー及びM13リバースプライマーと共に使用して、PCR反応を行ってこのフラグメントを増幅した。得られたPCR産物を、PspOMIで一晩消化して、ゲル精製した。ライブラリDNAの5’末端部分を、repA遺伝子を含む3’末端DNAにライゲートするために、2pmol(約540ng〜560ng)の5’末端DNAを、NotI及びPspOMI酵素並びにT4リガーゼの存在下で、37℃にて一晩、等モル量(約1.25μg)の3’末端repA DNAとライゲートした。ライゲートしたライブラリ産物を、オリゴヌクレオチドとしてPOP2250(配列番号11)及びDidLigRev(配列番号12)を使用して12サイクルのPCR反応によって増幅した。それぞれのサブライブラリについて、12回のPCR反応より得られたDNAを加え合わせてQiagenスピンカラムにより精製した。TCL9のそれぞれのサブライブラリの収率は、32〜34μgの範囲であった。
【0167】
FG/BCループライブラリ(TCL7)の構築
TCL7ライブラリは、ランダム化されたテンコンのBC及びFGループを有するライブラリを与えるものである。このライブラリでは、アミノ酸6〜9個の長さのBCループを、アミノ酸7〜12個の長さのランダム化されたFGループとコンビナトリアルに混合した。合成テンコンフラグメントBC6、BC7、BC8、及びBC9(配列番号13〜16)を、BCループが6、7、8、又は9個のランダム化されたアミノ酸で置換されるように、残基VXまでの、かつ残基VXを含むタンパク質のN末端部分をコードしたテンコン遺伝子を含むように作製した。これらのフラグメントは、L17A、N46V及びE83I突然変異の発見よりも前に合成されたものであるが(CEN5243)、これらの突然変異は下記に述べる分子生物学的ステップにより導入した。このフラグメントを、ランダム化したFGループをコードしたフラグメントと結合するため、以下のステップを行った。
【0168】
最初に、Tacプロモーターとテンコンの5’末端配列をアミノ酸A17をコードするヌクレオチドまでコードしたDNAフラグメント(130mer−L17A、配列番号17)を、オリゴヌクレオチドPOP2222ext(配列番号18)及びLS1114(配列番号19)を使用したPCRによって作製した。これは、L17A突然変異がライブラリに含まれるように行った(CEN5243)。次に、ランダム化したBCループを含むテンコンの残基R18〜V75をコードしたDNAフラグメントを、鋳型としてのBC6、BC7、BC8、又はBC9と、オリゴヌクレオチドとしてLS1115(配列番号20)及びLS1117(配列番号21)を使用したPCRによって増幅した。このPCRのステップによって3’末端にBsaI部位を導入した。この後、これらのDNAフラグメントを、プライマーとしてオリゴヌクレオチドPOP2222ext及びLS1117を使用した重複PCRによって連結した。得られた240bpのPCR産物をプールし、QiagenPCR精製キットにより精製した。精製したDNAをBsaI−HFで消化し、ゲル精製した。
【0169】
FGループをコードしたフラグメントを、鋳型としてのFG7、FG8、FG9、FG10、FG11、及びFG12を、オリゴヌクレオチドSDG10(配列番号22)及びSDG24(配列番号23)と共に使用したPCRにより増幅して、BsaI制限部位並びにN46V及びE86I変異を組み込んだ(CEN5243)。
【0170】
消化したBCフラグメントとFGフラグメントとを、3Wayライゲーションを用いて1ステップで互いにライゲートした。それぞれのライゲーション反応で2つのBCループの長さと2つのFGループの長さとを組み合わせた4つのライゲーション反応を、16個の可能な組み合わせで準備した。各ライゲーションは、約300ngの全BCフラグメントと300ngのFGフラグメントを含んでいた。次いで、これら4つのライゲーションプールを、オリゴヌクレオチドPOP2222(配列番号24)及びSDG28(配列番号25)を使用したPCRにより増幅した。次いで、7.5μgのそれぞれの反応生成物をNot1で消化し、Qiagen PCR精製カラムにより精製した。5.2μgのこのDNAを、PspOMIで消化した等モル量のRepAのDNAフラグメント(約14μg)とライゲートし、生成物を、オリゴヌクレオチドPOP2222を使用したPCRにより増幅した。
【0171】
実施例2 別の結合表面を有するテンコンライブラリの作製
特定のライブラリ設計においてランダム化しようとする残基の選択によって、形成される相互作用表面の全体の形状が決まる。BC、DE、及びFGループがランダム化されたライブラリからマルトース結合タンパク質(MBP)に結合するように選択された足場タンパク質を含むFN3ドメインのX線結晶解析により、MBPの活性部位に嵌まり込む大きく湾曲した界面を有していることが示されている(Koide et al.,Proc Natl Acad Sci USA 104:6632〜6637,2007)。これに対して、MBPに結合するように選択されたアンキリン繰り返し足場タンパク質は、より平坦な相互作用表面を有し、活性部位から離れたMBPの外表面に結合することが見出されている(Binz et al.,Nat Biotechnol 22:575〜582,2004)。これらの結果は、足場分子の結合表面の形状(湾曲と平坦)が、どの標的タンパク質又はそれらの標的タンパク質上の特定のエピトープが足場によって効果的に結合されるかを決定しうることを示唆するものである。タンパク質結合用のFN3ドメインを含んだタンパク質足場の設計に関する、これまでに発表されている研究は、標的に結合するための隣接したループを設計し、これにより、湾曲した結合表面を生じさせることに頼っている。このアプローチは、こうした足場によってアクセス可能な標的及びエピトープの数を制限しうる。
【0172】
テンコン及び他のFN3ドメインは、分子の互いに反対側の面に存在する2組のCDR様ループを有しており、第1の組は、BC、DE、及びFGループによって形成され、第2の組は、AB、CD、及びEFループによって形成されている。これら2つのループの組は、FN3構造の中心を形成するβ鎖によって分離されている。テンコンの像を90°回転させると、代わりとなる表面が可視化されうる。このわずかに凹んだ表面は、CDループ及びFGループと2個の逆平行のβ鎖であるCβ鎖及びFβ鎖とによって形成されるものであり、本明細書ではC−CD−F−FG表面と呼ぶ。C−CD−F−FG表面は、表面を形成する残基のサブセットをランダム化することによりタンパク質足場相互作用表面のライブラリを設計するための鋳型として使用することができる。β鎖は、繰り返し構造を有し、1つ置きの残基の側鎖がタンパク質の表面に露出している。このため、β鎖内の一部又はすべての表面露出残基をランダム化することによって、ライブラリを作製することができる。β鎖内の適当な残基を選択することにより、他のタンパク質と相互作用するための固有の足場表面を与える一方で、テンコン足場の本来の安定性の低下を最小限に抑えなければならない。
【0173】
ライブラリTCL14(配列番号7)は、テンコン27足場内で設計した(配列番号4)。
【0174】
このライブラリを構築するために用いた方法の完全な説明は、米国特許出願公開第2013/0226834号に記載されている。
【0175】
TCL14ライブラリ(配列番号7):
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX
1IX
2YX
3EX
4X
5X
6X
7GEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYX
8VX
9IX
10GVKGGX
11X
12SX
13PLSAIFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、及びX
13は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、C、又はMである。
【0176】
テンコン27のC−CD−F−FG表面を形成する2本のβ鎖は、C鎖が、S30、L32、Q34、Q36、F鎖が、E66、T68、S70、Y72、及びV74の全部で9個の表面露出残基を有しているのに対して、CDループは、S38、E39、K40、V41、G42、及びE43の6個の可能な残基を有し、FGループは、K75、G76、G77、H78、R79、S80、及びN81の7個の可能な残基を有している。選択された残基は、22個の残基すべてがランダム化された場合のライブラリのより大きな理論上のサイズのため、TCL14の設計に含まれるように選択した。
【0177】
ランダム化を行うために、C鎖のL32、Q34、及びQ36、CDループのS38、E39、K40、及びV41、F鎖のT68、S70、及びY72、FGループのH78、R79、及びN81の13個のテンコンの位置を選択した。C及びF鎖において、S30及びE66は、CD及びFGループを超えてすぐの位置にあり、C−CD−F−FG表面の一部とは明確には考えられないことから、ランダム化しなかった。CDループでは、G42及びE43は、柔軟性を与えるグリシンはループ領域において貴重な存在であり得、E43は表面の接合部に位置することから、ランダム化しなかった。FGループでは、K75、G76、G77、及びS80は除外した。グリシンは上記の理由で除外したのに対し、結晶構造を注意深く調べたところ、S80はコアと主要な接点を形成して安定的なFGループの形成を助けることが判明した。K75は、C−CD−F−FG表面の表面から離れる方向に面しており、ランダム化の候補としてはそれほど重要と考えられなかった。上記に述べた残基は元のTCL14の設計ではランダム化しなかったが、デノボ選択用、又は例えば選択したTCL14の標的特異的なヒットについてのアフィニティー成熟ライブラリ用に更なる多様性を与えるため、後のライブラリの設計ではこれらを含めることができる。
【0178】
TCL14の作製後、3つの更なるテンコンライブラリの同様の設計を作製した。これら2つのライブラリTCL19、TCL21及びTCL23は、TCL14と同じ位置(上記を参照)においてランダム化したが、これらの位置に存在するアミノ酸の分布を変えた(表3)。TCL19及びTCL21は、システイン及びメチオニンのみを除き、すべての位置で18種類の天然アミノ酸の等しい分布(それぞれ5.55%)を有するように設計した。TCL23は、表3に示されるように、それぞれのランダム化した位置が機能性抗体のHCDR3ループ(Birtalan et al.,J Mol Biol 377:1518〜1528,2008)に見られるアミノ酸分布に近くなるように設計した。TCL21ランダム化と同様、システイン及びメチオニンは除外した。
【0179】
他のライブラリの可能性のある標的結合表面を拡張するために、第3の更なるライブラリを構築した。このライブラリ(TCL24)では、TCL14、TCL19、TCL21、及びTCL23のライブラリと比較して4つの更なるテンコンの位置をランダム化した。これらの位置には、D鎖のN46及びT48と、G鎖のS84及びI86が含まれる。位置46、48、84、及び86は、詳細には、これらの残基の側鎖がβ鎖D及びGから表面露出しており、C及びF鎖のランダム化した部分に構造的に隣接して位置するため、標的タンパク質との結合のためにアクセス可能な表面積が大きくなることから選択された。TCL24の各位置で用いたアミノ酸分布は、表3でTCL19及びTCL21について述べたものと同じである。
【0180】
TCL24ライブラリ(配列番号8)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX
1IX
2YX
3EX
4X
5X
6X
7GEAIX
8LX
9VPGSERSYDLTGLKPGTEYX
10VX
11IX
12GVKGGX
13X
14SX
15PLX
16AX
17FTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、及びX
17は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、Y、又はWである。
【0181】
【表3】
【0182】
TCL21、TCL23、及びTCL24ライブラリの作製
アミノ酸分布を制御するため、Colibraライブラリ技術(アイソジェニカ社(Isogenica))を使用してTCL21ライブラリを作製した。アミノ酸分布を制御するため、Slonomics技術(モルフォシス社(Morphosys))を使用してTCL19、TCL23、及びTCL24遺伝子フラグメントを作製した。最初の合成の後、PCRを用いて各ライブラリを増幅した後、ループライブラリに関して上記に述べたCISディスプレイシステム(Odegrip et al.,Proc Natl Acad Sci USA 101:2806〜2810,2004))を用いた選択に用いるために、RepAの遺伝子とライゲートした。
【0183】
実施例3:PSMAに結合するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの選択
プレートに基づく選択
CISディスプレイを用いて、TCL7、TCL9、TCL19、及びTCL21ライブラリからPSMA結合センチリン(Centyrin)を選択した。インビトロ転写及び翻訳(ITT)を行うため、3μgのライブラリDNAを30℃で、0.1mMの完全アミノ酸、1XS30プレミクス成分、及び15μLのS30エクストラクト(プロメガ社(Promega))と50μLの全体積中でインキュベートした。1時間後、375μLのブロッキング溶液(1×TBS(pH7.4)、0.01% I−block(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)、#T2015)、100μg/mlニシン精子DNA)を加え、反応混合物を氷上で15分間インキュベートした。ITT反応液を、抗ヒトPSMA抗体(ライフスパン・バイオサイエンス社(Lifespan Bioscience)、カタログ番号LC−C150527)でコーティングした96ウェルMaxisorbプレート上に固定化した組換えタンパク質であるチンパンジーPSMA(pan 229)若しくはカニクイザルPSMA(pan 230)、又はカニクイザルPSMA−FC融合タンパク質(pan 231)と共にインキュベートした。未結合のライブラリ成分をTBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃に10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおける標的PSMAの濃度を400nMから100nMに連続的に低下させ、洗浄のストリンジェンシーを高くしていくことによって、高いアフィニティーで結合する結合分子を単離した。
【0184】
パニング後、選択したFN3ドメインをPCRによって増幅し、リガーゼ非依存的クローニング部位を含むように改変されたpETベクターにサブクローニングし、大腸菌で可溶性発現させるために標準的な分子生物学の技法を用いてBL21−GOLD(DE3)(ストラタジーン社(Stratagene))細胞に形質転換した。精製及び検出を可能にするために、C末端ポリヒスチジンタグをコードした遺伝子配列を各FN3ドメインに付加した。1mLの96ウェルブロック中、100μg/mLカルベニシリンを添加したTB培地中で、培養物を37℃で吸光度が0.6〜0.8となるまで増殖させた後、IPTGを1mMとなるように添加し、その時点で温度を30℃に低下させた。およそ16時間後に細胞を遠心沈降させて回収し、−20℃で凍結した。各ペレットを0.6mLのBugBuster(登録商標)HT細胞溶解バッファー(ノバジェン・イーエムディー・バイオサイエンシーズ社(Novagen EMD Biosciences))中で、室温で45分間、振盪しながらインキュベートすることによって、細胞溶解物を得た。
【0185】
ビーズに基づく選択
センチリンを、更に、ビーズに基づいた捕捉セットアップを用いて選択した。上記に述べたようにしてITT反応混合物を調製し、次いで、ビオチン化組換えタンパク質であるチンパンジー又はカニクイザルPSMAとインキュベートした。ビオチン化組換えタンパク質及び結合したライブラリ成分を、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉した。未結合のライブラリ成分を、TBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃に10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおける標的PSMAの濃度を400nMから100nMに連続的に低下させ、洗浄のストリンジェンシーを高くしていくことによって、高いアフィニティーで結合する結合分子を単離した。
【0186】
オフレート選択(Off-rate selection)
ビーズに基づく選択の5回目のラウンドからの生成物に、4ラウンドのオフレート選択を行った。ITT反応混合物をビオチン化組換えチンパンジー又はカニクイザルタンパク質とインキュベートした後、タンパク質と結合ライブラリ成分をニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉し、TBSTでよく洗浄し、結合した複合体を5μMの低温の組換えPSMAタンパク質中で1時間洗浄した。次いで、ビーズに結合したITTをTBST及びTBS中でよく洗浄した後、溶出した。ビオチン化した標的抗原濃度を、ラウンド6及び7の25nMからラウンド8及び9の2.5nMに段階的に下げた。ラウンド7及び9からの選択生成物を、発現及びスクリーニングを行うために改変pET15ベクターにサブクローニングした。
【0187】
アフィニティー成熟ライブラリ選択
BCループの位置23〜30及びFGループの位置78〜83をランダム化した、クローンP229CR9P819−H11(配列番号40)の配列に基づいたアフィニティー成熟ライブラリ(TCL25)を、モルフォシス社(ドイツ、ミュンヘン)のSlonomics技術を用いて作製した。ライブラリ内の標的結合の維持は、各ランダム化した位置に65%の標的頻度で親アミノ酸(P229CR9P819−H11からの)をコードしたヌクレオチドをドープすることによって行った。ヌクレオチドの残りの35%は、含まれていなかったシステイン及びメチオニンを除く、すべての他の20種類の天然アミノ酸を同じ確率でコードしたコドンの混合物を含むように設計した。表4は、TCL25の成熟ライブラリの設計を示す。表中、括弧内の数値は、各位置に対応するアミノ酸を含むように設計されたライブラリ内の分子の比率(%)を表す。このドーピング手法(14個の位置で65%の親分子)により、親分子と比較して大部分が3、4、5、6、又は7個の変化を含む理論上の分子の分布が得られる。
【0188】
【表4】
【0189】
CISディスプレイを用いて、TCL25ライブラリからPSMAに結合するセンチリンを選択した。ITT反応混合物を、ビオチン化組換えタンパク質であるチンパンジー及びカニクイザルPSMAとインキュベートした。ビオチン化組換えタンパク質及び結合したライブラリ成分を、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉した。未結合のライブラリ成分を、TBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃に10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおける標的PSMAの濃度を400nMから100nMに連続的に低下させ、洗浄のストリンジェンシーを高くしていくことによって、センチリン結合分子を単離した。
【0190】
選択の2回目のラウンドからの生成物に、4ラウンドのオフレート選択を行った。ITT反応混合物をビオチン化組換えPSMAタンパク質とインキュベートした後、タンパク質と結合ライブラリ成分をニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉し、TBSTでよく洗浄し、結合した複合体を5μMの低温の組換えPSMAタンパク質中で1時間洗浄した。次いで、ビーズに結合したITTをTBST及びTBS中でよく洗浄した後、溶出した。ビオチン化した標的抗原濃度を、ラウンド3及び4の25nMからラウンド5及び6の2.5nMに段階的に下げた。ラウンド7及び9からの選択生成物を、発現及びスクリーニングを行うために改変pET15ベクターにサブクローニングした。
【0191】
PSMAに結合するセンチリンの生化学的スクリーニング
ニュートラアビジンでコーティングしたプレートを、Starting Block T20(ピアース社(Pierce))で1時間ブロッキングした後、ビオチン化PSMA(パニングと同じ抗原を使用したもの)又はネガティブコントロールで1時間コーティングした。プレートをTBSTですすぎ、希釈したライセートをプレートに1時間加えた。更なるすすぎの後、各ウェルをHRP結合抗センチリン抗体(PAB25)で1時間処理し、次いでPOD(ロシュ社(Roche))によりアッセイした。バックグラウンドよりも少なくとも10倍高いシグナルを有するセンチリンを、更なる分析を行うために選択した。
【0192】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、PSMAに結合するセンチリンの凝集状態を測定した。各精製センチリンのアリコート(10μL)をSuperdex 75 5/150カラム(ジーイー・ヘルスケア社(GE Healthcare))に流速0.3mL/分でPBS(pH7.4)を移動相として注入した。カラムからの溶出液を、280nmの吸光度によってモニターした。各ランに、コントロールとして野生型テンコンを含ませた。アジレント社(Agilent)のChemStationソフトウェア(Rev.B.04.02)を使用して溶出プロファイルを分析した。同じランの野生型タンパク質の溶出プロファイルと同様の溶出プロファイルを示したタンパク質のみを、更なる特性評価を行うための考慮対象とした。
【0193】
センチリンの高スループット発現、複合体化及び精製
生化学的結合ELISAによって同定された固有のヒットから単離したクローンを、96ウェルブロックプレートで増殖させるためにシングルヒットプレートで加え合わせた。クローンを、振盪しながら37℃で一晩、1mLの培養物(選択用にカナマイシンを添加したLB培地)中で増殖させた。96ブロックプレートでタンパク質発現を行うため、カナマイシンを添加した1mLのTB培地に50μLの一晩培養物を接種し、OD600=0.6〜1となるまで300rpmで連続的に振盪しながら37℃で増殖させた。目標ODに達した時点で、IPTGを1mMにまで加えることにより、タンパク質発現を誘導し、プレートを30℃(300rpm)に移行して一晩増殖させた。一晩培養物を遠心して細胞を回収し、細菌ペレットを使用できる状態となるまで−80℃で保存した。ポジティブコントロール及びネガティブコントロールの両方を、各プレート上の重複実験に含めた。
【0194】
ソルターゼタグと結合させるため、細菌ペレットを解凍し、組換えヒトライソザイム(EMD社、カタログ番号71110)を添加したBugBusterHT(EMD社、カタログ番号70922)中に再懸濁して溶解した。静かに攪拌しながら室温で溶解を進行させ、その後、プレートを42℃に移行して宿主タンパク質を沈降させた。遠心により破片をペレット化し、上清をソルターゼ触媒標識を行うために新しいブロックプレートに移した。Gly3−vc−MMAF(コンコルティス社(Concortis))、タグレスソルターゼA及びソルターゼバッファー(Tris、塩化ナトリウム、及び塩化カルシウム)を含むマスターミックスを2倍濃度で調製し、ライセートの上清に等量で加えた。標識反応を室温で2時間進行させた後、Ni−NTA multi−trap HPプレート(GE社、カタログ番号28−4009−89)を使用してタンパク質を精製した。タンパク質複合体を、イミダゾール含有溶出バッファー(50mMTris(pH7.5)、500mM NaCl、250mMイミダゾール)による段階的溶出によって回収し、フィルターを滅菌して、細胞を用いた細胞毒性アッセイに直接使用した。
【0195】
センチリン−薬剤複合体の高スループット細胞毒性アッセイ
96ウェル黒色組織培養コーティングプレート(ビーディー/コーニング社(BD/Corning)社カタログ番号353219)に、アッセイ培地(5%ウシ胎児血清を添加した無フェノールレッドRPMI(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)カタログ番号11835−030))中、10,000細胞/ウェルの密度でLNCaP FGC細胞(ATCC,カタログ番号CRL−1740)を播種した。播種したプレートを、5%CO2下、37℃で一晩インキュベートして細胞を付着させた。24時間後、CDCをアッセイ培地中に希釈し(1:100、1:300、1:1000、又は1:3000)、LNCaP細胞に直接加えた。この後、LNCaP細胞を、5%CO2下、37℃で66〜72時間インキュベートした。細胞毒性を、CellTiter−Glo試薬(プロメガ社(Promega)カタログ番号G7571)を使用して評価し、調製した試薬100μLを、処理したウェルに直接加え、光から保護して静かに振盪しながら10分間インキュベートした。発光量を、SpectraMax M5プレートリーダーを使用して測定した。値を非処理のコントロールに対して正規化し、50%よりも高い毒性が得られた場合に更なる分析を行うために選択した。
【0196】
実施例4:抗PSMAセンチリンの特性評価
大規模発現及び精製
センチリン突然変異体をコードした遺伝子配列をパニングによって見つけ、これをT7プロモーターの制御下で発現させるためにpET15bベクターにクローニングするか、又はDNA2.0社によって作製されたものをT5プロモーターの制御下で発現させるためにpJexpress401ベクター(DNA2.0社)にサブクローニングした。この得られたプラスミドを、発現させるためにE.coli BL21 Gold(アジレント社(Agilent))又はBL21DE3 Gold(アジレント社(Agilent))に形質転換した。シングルコロニーをピックし、カナマイシンを添加したLuria Broth(テクノバ社(Teknova))中で増殖させ、37℃、250RPMで18時間インキュベートした。カナマイシンを添加した1LのTerrific Broth(テクノバ社(Teknova))に、これらの継代培養物から接種し、37℃で振盪しながら4時間増殖させた。目標600nmの吸光度における光学密度が1.0に達した時点で、1mMのIPTGによりタンパク質発現を誘導した。タンパク質を37℃で4時間、又は30℃で18時間発現させた。細胞を6000Gで遠心して回収し、精製を行うまで−20℃で保存した。凍結した細胞ペレット(約15〜25g)を室温で30分、解凍し、0.2mg/mLの組換えライソザイム(シグマ社(Sigma))を添加したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))に細胞ペースト1g当たり5mLで懸濁し、室温にてシェーカー上で1時間インキュベートした。ライセートを74600Gで25分間遠心して清澄化した。上清を、AKTA AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、氷中に浸漬した5mlのQiagen Ni−NTAカートリッジ上に4mL/分の流速で加えた。他のすべてのNi−NTAクロマトグラフィーのステップは、流速5ml/分で行った。Ni−NTAカラムを、0.5M NaCl及び10mMイミダゾールを含んだ25.0mLの50mM Tris−HClバッファー(pH7.0)(バッファーA)中で平衡化した。ローディング後、カラムを100mLのバッファーA、次いで10mM イミダゾール、1%CHAPS及び1%n−オクチル−β−D−グルコピラノシド洗剤を含んだ100mlの50mM Tris−HClバッファー(pH7.0)、及び100mlのバッファーAで洗浄した。タンパク質を250mMイミダゾールを添加したバッファーAで溶出し、PBS(ギブコ社(Gibco))中で平衡化した分取用ゲル濾過カラムTSK Gel G3000SW(21.5×600mm)(東ソー株式会社)にロードした。ゲル濾過クロマトグラフィーを、AKTA−AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、室温で、流速10mL/分にてPBSで行った。
【0197】
熱安定性の測定
熱安定性をキャピラリーDSCによって測定した。各試料を、1mg/mlの濃度にPBS(pH7.4)に希釈した。オートサンプラー(マイクロカル社(MicroCal,LLC))を備えたVP−DSC機器を使用して、これらの試料の融解温度を測定した。試料を10℃から95℃又は100℃まで毎分1℃の速度で加熱した。各試料の走査の間にバッファーのみの走査を完結して、積分用のベースラインを計算した。バッファーのみのシグナルを引いた後、データを2状態アンフォールディングモデルに当てはめた。セルから試料を取り出さずに各試料について走査を繰り返すことによって、熱変性の可逆性を測定した。
【0198】
PSMA陽性細胞に対する抗PSMAセンチリン薬剤複合体の選択的細胞毒性
センチリンを、システイン/マレイミド化学反応(Brinkley,Bioconjugate Chemistry 3:2〜13,1992)又は上記に述べたソルターゼ反応を用いて、vc−MMAFと結合させた。センチリン−vcMMAF複合体の細胞毒性を、インビトロでLNCaP、VCAP、MDA−PC−2B、及びPC3細胞で評価した。細胞を96ウェル黒色プレートに24時間置いた後、異なる用量のセンチリン−vcMMAF複合体で処理した。細胞をセンチリン薬剤複合体(CDC)と66〜72時間インキュベートした。CellTiterGloを使用し、上記に述べたようにして毒性を評価した。発光量の値をExcelにインポートし、ここからPrismにコピーアンドペーストしてグラフによる分析を行った。データをX=Log(x)を用いて変換した後、非線形回帰を用いて分析し、3パラメータモデルを適用してIC
50を決定した。
【0199】
表6に、複数の配列群にまたがったパニングによって特定された固有ヒットを要約する。センチリンは、vcMMAFと結合させた場合に55℃〜85℃で熱安定性を示し、LNCaP細胞に対して細胞毒性を示し、IC
50値は22.6〜0.38nMであった。
【0200】
実施例4:抗PSMAセンチリンの特性評価
大規模発現及び精製
センチリン突然変異体をコードした遺伝子配列をパニングによって見つけ、これをT7プロモーターの制御下で発現させるためにpET15bベクターにクローニングするか、又はDNA2.0社によって作製されたものをT5プロモーターの制御下で発現させるためにpJexpress 401ベクター(DNA2.0社)にサブクローニングした。この得られたプラスミドを、発現させるためにE.coli BL21 Gold(アジレント社(Agilent))又はBL21DE3 Gold(アジレント社(Agilent))に形質転換した。シングルコロニーをピックし、カナマイシンを添加したLuria Broth(テクノバ社(Teknova))中で増殖させ、37℃、250RPMで18時間インキュベートした。カナマイシンを添加した1LのTerrific Broth(テクノバ社(Teknova))に、これらの継代培養物から接種し、37℃で振盪しながら4時間増殖させた。目標600nmの吸光度における光学密度が1.0に達した時点で、1mMのIPTGによりタンパク質発現を誘導した。タンパク質を37℃で4時間、又は30℃で18時間発現させた。細胞を6000Gで遠心して回収し、精製を行うまで−20℃で保存した。凍結した細胞ペレット(約15〜25g)を室温で30分、解凍し、0.2mg/mlの組換えライソザイム(シグマ社(Sigma))を添加したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))に細胞ペースト1g当たり5mlで懸濁し、室温にてシェーカー上で1時間インキュベートした。ライセートを74600Gで25分間遠心して清澄化した。上清を、AKTA AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、氷中に浸漬した5mlのQiagen Ni−NTAカートリッジ上に4mL/分の流速で加えた。他のすべてのNi−NTAクロマトグラフィーのステップは、流速5ml/分で行った。Ni−NTAカラムを、0.5M NaCl及び10mMイミダゾールを含んだ25.0mlの50mM Tris−HClバッファー(pH7.0)(バッファーA)中で平衡化した。ローディング後、カラムを100mLのバッファーA、次いで10mMイミダゾール、1% CHAPS及び1%n−オクチル−β−D−グルコピラノシド洗剤を含んだ100mlの50mM Tris−HClバッファー(pH7.0)、及び100mlのバッファーAで洗浄した。タンパク質を250mMイミダゾールを添加したバッファーAで溶出し、PBS(ギブコ社(Gibco))中で平衡化した分取用ゲル濾過カラムTSK Gel G3000SW(21.5×600mm)(東ソー株式会社)にロードした。ゲル濾過クロマトグラフィーを、AKTA−AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、室温で、流速10mL/分にてPBSで行った。
【0201】
熱安定性の測定
熱安定性をキャピラリーDSCによって測定した。各試料を、1mg/mlの濃度にPBS(pH7.4)に希釈した。オートサンプラー(マイクロカル社(MicroCal, LLC))を備えたVP−DSC機器を使用して、これらの試料の融解温度を測定した。試料を10℃から95℃又は100℃まで毎分1℃の速度で加熱した。各試料の走査の間にバッファーのみの走査を完結して、積分用のベースラインを計算した。バッファーのみのシグナルを引いた後、データを2状態アンフォールディングモデルに当てはめた。セルから試料を取り出さずに各試料について走査を繰り返すことによって、熱変性の可逆性を測定した。
【0202】
PSMA陽性細胞に対する抗PSMAセンチリン薬剤複合体の選択的細胞毒性
センチリンを、システイン/マレイミド化学反応(Brinkley,Bioconjugate Chemistry 3:2〜13,1992)又は上記に述べたソルターゼ反応を用いて、vc−MMAFと結合させた。センチリン−vcMMAF複合体の細胞毒性を、インビトロでLNCaP、VCAP、MDA−PC−2B、及びPC3細胞で評価した。細胞を96ウェル黒色プレートに24時間置いた後、異なる用量のセンチリン−vcMMAF複合体で処理した。細胞をセンチリン薬剤複合体(CDC)と66〜72時間インキュベートした。CellTiterGloを使用し、上記に述べたようにして毒性を評価した。発光量の値をExcelにインポートし、ここからPrismにコピーアンドペーストしてグラフによる分析を行った。データをX=Log(x)を用いて変換した後、非線形回帰を用いて分析し、3パラメータモデルを適用してIC
50を決定した。
【0203】
表5に、複数の配列群にまたがった、パニングによって特定された固有ヒットを要約する。センチリンは、vcMMAFと結合させた場合に55℃〜85℃で熱安定性を示し、LNCaP細胞に対して細胞毒性を示し、IC
50値は22.6〜0.38nMであった。表6、7及び8に、選択したクローンのBC、C、CD、F及びFGループのアミノ酸配列を示す。表9に、各クローンのアミノ酸配列を示す。
【0204】
【表5】
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
選択したセンチリン薬剤複合体を、一群の細胞株にわたって試験した。表10に、vcMMAFと結合させたいくつかのセンチリンのIC
50値を示す。データは、1〜9つの曲線当てはめの平均を示す。データは平均±SEMで示している。CDCは、PSMAを高いレベルで発現することが知られている細胞株であるLNCaP細胞において最も高い効果を示した。CDCは、PSMAのレベルがより低い前立腺癌細胞株であるMDA−PCA−2B及びVCAP細胞においても活性を示した。PSMA陰性細胞株であるPC3細胞では活性は認められず、選択性が示された。
【0210】
【表10】
【0211】
実施例5:抗PSMAセンチリンの操作
システイン走査
タンパク質の異なる位置にシステイン残基が導入された抗PSMAセンチリンP233FR9_10をコードした遺伝子をDNA2.0社より入手し、これを使用して上記に述べたようにタンパク質を発現させて精製した。得られたセンチリンを、上記に述べたように、熱安定性(vcMMAF複合体のある場合とない場合)及びLNCaP細胞毒性について評価した。結果を表11に要約する。
【0212】
【表11】
【0213】
実施例6:非標的化センチリンの生体分布のイメージング
アイソ・セラピューティクス・グループ社(IsoTherapeutics Group, LLC)(テキサス州アングルトン)において、位置62にシステインを有するように操作された標的抗原に対して特異的結合を示さないセンチリンを、DOTAと結合させ、次いでジルコニウム89放射性同位体と結合させた。去勢した雄NSGマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson laboratories))を1.5%イソフルランで麻酔し、シーメンス社(Siemens)のInveon microPET/CTでイメージングした。マウスに尾静脈注射により約0.2mCi[89Zr]のセンチリン(配列番号51)を投与し(低温のセンチリンを1mg/kg用量となるように)、最初の60分間にわたって連続的にイメージングし、その後、センチリン注射の3、6、及び24時間後にイメージングした。
【0214】
3次元PET画像を、「2Dサブセット化による期待値最大化アルゴリズム」(2D ordered-subsets expectation maximization algorithm)(シーメンス・ヘルスケア社(Siemens Healthcare)、テネシー州ノックスビル)を使用して、ボクセルサイズ0.107mm×0.107mm×0.107mmで768×768×512のトモグラフィ体積に再構成した。PMOD v3.0ソフトウェア(ピーエムオーディー・テクノロジーズ社(PMOD Technologies)、スイス、チューリッヒ)を使用して、画像を処理して分析した。既知の活性の円筒体をPETスキャナー内でスキャンして用量キャリブレータによって測定された注射用量との相互較正、及びPET画像のボクセル当たりのカウントを得た。PMOD画像融合ソフトウェアを用いて各PET画像をCT画像と位置合わせすることにより、解剖学的基準点を与えた。関心領域(ROI)を、分析しようとする各組織について4つの切片ごとに周囲に描画した。ボクセル当たりの平均カウントを導き出し、既知の活性の較正円筒体から導き出された補正係数を用いて体重1g当たりの注射された用量の比率(%)に変換した。放射活性のすべての測定値を、Zr89の既知の半減期(78.41時間)を用いて崩壊について補正した。
【0215】
図1は、時間に対する放射性標識されたFN3ドメインの組織分布を示す。腎臓及び膀胱における急速な蓄積が観察されたが、肝臓への蓄積はわずかであり、センチリンが腎臓によって排出されることを示唆している。
【0216】
実施例7:cynoPSMAと複合体化された抗PSMA P233FR9−H10の結晶構造
Hisタグを付加したP233FR9−H10センチリン(本明細書でH10センチリンと呼ぶ)を大腸菌で発現させ、アフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。センチリンはdPBS(pH7.2)中に受けた。
【0217】
カニクイザルPSMA細胞外ドメインを、huIgG1 FcドメインとのC末端融合としてGnTI
−細胞で発現させ、アフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。融合タンパク質を、dPBS、0.5mM ZnCl
2(pH7.2)中に受けた。次いで、FcドメインをPrescissionプロテアーゼ処理により除去した後、アフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィーを行った。単離したカニクイザルPSMA(cynoPSMA)の細胞外ドメインを、dPBS、0.5mM ZnCl
2(pH7.2)中に保存した。
【0218】
20mM Hepes(pH7.0)0.5mM ZnCl
2に対して4℃で48時間透析しながら、cynoPSMAをH10センチリンと1:3のモル比(センチリン過剰)で混合することによりH10センチリン/cynoPSMA複合体を調製した。次いで、複合体を、48〜68mM NaCl、20mM Hepes(pH7.5)、10%グリセロールによりmonoSカラムから溶出し、3.4mg/mLに濃縮した。X線回折に適した結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を20℃で用いて、25% PEG(3kDa)、0.2M NH
4Cl、0.1M酢酸ナトリウム(pH4.5)から得た。
【0219】
X線データ収集のため、結晶を、20%グリセロールを添加した母液を含むクライオプロテクタント溶液中に数秒間浸漬した後、液体窒素中で凍結した。アルゴンヌ国立研究所のAdvanced Photon Source(APS)のビームライン17−IDにおいてDectris Pilatus 6M Pixel Array検出器によって、X線データを収集した。回折データをプログラムHKL2000で処理した(Otwinowski & Minor,1997)。X線データ統計を表12に示す。
【0220】
構造を、Phaserを用いた分子置換法(MR)により解析した(Read、2001)。MRの検索モデルは、ヒトPSMA(PDBコード2C6G)の結晶構造及びP114AR7P94−A3 W33Aセンチリンの構造とした。PHENIXにより構造を精密化し(Adamsら、2004)、COOTを用いてモデル調整を行った(Emsley & Cowtan、2004)。他のすべての結晶学的計算は、CCP4プログラム群により行った(CCP4、1994)。すべての分子グラフィックは、PyMolを用いて生成した(DeLano、2002)。構造精密化の統計を表12に示す。
【0221】
【表12】
*最外郭の値は()内に示す。
【0222】
ホモ二量体cynoPSMAの構造は、二量体のサブユニット当たり、プロテアーゼ(残基57〜116及び352〜590)、頂端(残基117〜351)及び螺旋状(残基591〜750)ドメイン、並びに11個の可能なN結合型グリカンのうち8個(Asn−76、−121、−140、−195、−459、−476、−613、及び−638における)に対応した残基57〜750を有している。cynoPSMA活性部位は、3つのドメイン間の界面に位置し、ヒスチジン(H377及びH553)により配位された2個の亜鉛原子、及びグルタミン酸/アスパラギン酸(D387、触媒活性を有するE424、E425、及びD453)残基、及び水分子を有している。H10センチリン(配列番号41)構造は、残基2〜92を有している。H10残基は、配列番号41に基づいて順に番号付けされている。cynoPSMA残基は、配列番号141の完全長cynoPSMA配列に基づいて番号付けされている。成熟cynoPSMA(シグナルペプチドのないもの)は、配列番号141の残基44から始まっている。
【0223】
非対称ユニット中に1個のcynoPSMAがあり、各PSMAサブユニットに1個のH10センチリンが結合している(
図2A)。2個のセンチリン/PSMA複合体は、PSMAサブユニット内のすべての同等の原子の重ね合わせについての0.72Åの二乗平均偏差の平方根(r.m.s.d.)によって示されるように、構造的に非常によく似ている。また、センチリン複合体中のcynoPSMA分子と未結合のヒトPSMAとのCα原子の重ね合わせについての0.5Åのr.m.s.d.により示されるように(PBDコード2OOT、1.6Åの分解能における構造)、ヒトPSMAとカニクイザルPSMAとの間には高次の構造的類似性があり、センチリンの結合によって引き起こされる大きなコンフォメーション変化は見られない。興味深い点として、センチリンとの相互作用によるループコンフォメーションの安定化により、ループ領域541〜547はカニクイザルタンパク質においてのみ見えている。
【0224】
センチリン/PSMAの結合部位は、結合残基の位置を高い信頼度で決定することができる2F
obs−F
calc電子密度マップによってよく定義されている。B鎖とC鎖(それぞれPSMA鎖及びセンチリン鎖)との間の相互作用についてのみ、以下のセクションで述べることとする。
【0225】
H10センチリンは、PSMA活性部位の近くの領域に結合し(
図2A)、約1,170Å
2のcynoPSMAの面積を覆っている。詳細には、センチリンは、cynoPSMAを、
図3及び4に示されるようにプロテアーゼ(Y460、F488、K499〜P502、P504、R511、K514、N540〜E542、及びN544〜F546)、頂端(残基118)及び螺旋状(残基K610、N613、及びI614)ドメインにおいて認識する。
【0226】
センチリンの4本の鎖からなるβシートの面は、PSMA表面上に充填され、CDループが活性部位の入口の奥深くに挿入されている(
図2B及び2C)。詳細には、PSMA結合に関与するH10センチリン残基は、C(A32及びG34)、D(V46)、F(G64、P68、Y70、及びA72)及びG(S84−I86)β鎖、並びにCD(W36、W38−D41、E43、及びA44)及びFGループ(W79、F81、及びP82)内に位置している。残基D39、D40、D41、及びE43は、センチリンのCDループに負電荷を与え、これらの残基が活性部位内の亜鉛イオンにつながる深さ約20Åの正に帯電した漏斗状部分内に挿入されることで、漏斗状部分内への基質の入り込み及びPSMA酵素活性をブロックするものと考えられる(
図2B及び2C)。しかしながら、センチリンは、亜鉛イオン又は亜鉛イオンに配意している残基と直接的には相互作用しない。
【0227】
保存されたPSMA残基W541、Y460、F488、P502及びP504は、センチリン残基W36、P68、Y70、W79、F81、及びP82との結合部位にわたって芳香族クラスターを形成する(
図3A)。保存されたR511は、結合部位及びセンチリンの4本の鎖からなるβシートの中心残基である水素結合Y70の中心位置にある。
図3Bは、パラトープ及びエピトープの残基の図を示したものである。
【0228】
ヒトPSMAとカニクイザルPSMAとは、S613Nの変化を除いて97%同一であり、H10と相互作用するすべての残基は2つの種間で保存されている(
図4)。S613Nの変化は、cynoPSMAのN613のグリコシル化、及び、ヒト酵素には存在しない炭水化物とセンチリン残基E66、I86、T88(F及びGβ鎖)との間のファンデルワールス接触の獲得につながる。
【0229】
複合体形成におけるセンチリン残基
結合部位の外側の異なるH10センチリン残基は、小分子(毒性弾頭分子)と結合させるために、PSMAの結合又はセンチリンのフォールディングを妨げることなく改変することができる。システインは、これまでにC末端(Hisタグの後)並びに位置R11、E53、及びK62に配置され、これらの位置で弾頭分子と結合させられているが、これらの変異体のすべてが同様に強力な細胞毒性を示している。更に、BCループ内の残基T22、D25、及びA26、並びにDEループ内の末端残基N6、及びS52は、突然変異誘発後に化学的複合体化を行うには潜在的によい部位である(
図5)。これらの溶媒に露出した残基は、センチリン/PSMA界面から離れており、構造的に柔軟な領域に位置している。
【0230】
更に、N末端領域及びC末端領域は、両方とも他のタンパク質ドメインとの融合が行えるよう自由となっている。N末端は、PSMAプロテアーゼドメインの方向に向いており、融合リンカーが届くことができるようになっている一方で、やはりアクセス可能なC末端はPSMAの螺旋状ドメインの方向を向いている。センチリンの融合パートナーまでの最適なリンカーの長さは、融合パートナーの構造及び標的分子上のその結合部位の位置によって決まる。
【0231】
作用機序
H10センチリンは、センチリン/PSMA複合体が内在化されることから、前立腺癌細胞内に弾頭分子(毒性小分子、核酸など)を標的化によって送達させるための候補物質である。更に、H10センチリンは、多重特異性型とされる場合に、前立腺癌細胞に免疫細胞を再び方向付けるための候補物質である。
【0232】
H10センチリンは、PSMAの酵素活性を阻害するとも考えられており、細胞の適応性及び生存率の低下に寄与している可能性がある。センチリン/cynoPSMA構造は、活性部位の入口に結合したセンチリンを示しており、これにより、立体障害及び結合部位に対する直接的競合によりPSMAと基質との相互作用を妨げうる。
【0233】
実施例8:更なる抗PSMAセンチリン変異体の作製
選択した抗PSMAセンチリンを、親センチリンの特性を改良するために更に操作した。PSMAに結合するFN3ドメインを、上記に述べたライブラリを用いて作製し、そのPSMAとの結合について試験した。
【0234】
【表13-1】
【0235】
【表13-2】
【0236】
【表13-3】
【0237】
【表13-4】
【0238】
【表13-5】
【0239】
【表13-6】
【0240】
【表13-7】
【0241】
【表13-8】
【0242】
実施例9:蛍光色素と結合させた抗PSMAセンチリンを使用した腫瘍細胞上のPSMA発現の検出
本実施例は、蛍光色素と結合させた抗PSMAセンチリンによる、細胞上に存在するPSMAの検出を示すものである。アミノ酸53に遊離システインを有する、C末端にHisタグを付加した抗PSMAセンチリンP233FR9_H10(配列番号49)を、R−フィコエリトリン(PE)(プロザイム社(Prozyme)、カタログ番号PB31)と結合させた。PEをsulfo−SMCC(ピアース社(Pierce)、カタログ番号22122)を用いて60分間活性化させ、活性化したPEを遊離sulfo−SMCCから、Sephadex G25及びPBS/EDTAバッファーを使用したゲル濾過クロマトグラフィーにより分離した。センチリンをTCEP(シグマ社(Sigma)、カタログ番号646547)を用いて30分間還元した。還元したセンチリンを遊離TCEPから、Sephadex G25及びPBS/EDTAバッファーを使用したゲル濾過クロマトグラフィーにより分離した。活性化したR−PEを還元センチリンと90分間共有結合させた後、N−エチルマレイミド(シグマ社(Sigma)、カタログ番号04260)で20分間、クエンチした。「PE結合センチリン」を、AKTA explorer FPLC(ゼネラル・エレクトリック社(General Electric))上で、東ソー株式会社製TSKゲルG3000SWカラムを使用し、100mMリン酸ナトリウム、100mM硫酸ナトリウム、0.05%アジ化ナトリウム(pH6.5)中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製した。
【0243】
PE結合センチリンを、フローサイトメトリー及びCellSearch血液循環腫瘍細胞(CTC)アッセイにより、PSMA陽性及び陰性細胞化ブロックを使用して感受性及び特異性について試験した。以下の前立腺癌細胞株をATCCより購入し、抗PSMAセンチリンの特異性を評価するために使用した。すなわち、LNCaP(高PSMA発現)、22Rv1(低PSMA発現)及びPC3(PSMA発現なし)である。
【0244】
フローサイトメトリーによる細胞株上のPSMAの検出
標準的な細胞培養手順により前立腺癌細胞株を収穫した。細胞(約30,000個)を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含んだ0.1mLのPBS中で、PE結合センチリンと20分間染色した。バイオレジェンド社(Biolegend)(クローンLNI−17、カタログ番号342504)より入手した抗PSMA抗体−PE複合体を、ポジティブコントロールとして使用した。インキュベーション後、3mLのPBS/BSAバッファーを加え、未結合のPE複合体を800Gで5分間遠心して除去した。上清を吸引して、0.3mlのPBS/BSA中に、細胞を再懸濁した。ビーディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)のFACSCaliburにより試料を分析した。各細胞株からのPSMA染色の平均蛍光強度(MFI)を測定し、抗PSMA抗体によるMFIと比較した。MFIは、PSMAの発現レベルと直接的な関係を示し、高PSMA発現細胞株からは高いMFIが得られる。
図6は、抗PSMA抗体−PEによるMFI値と比較した、PE結合センチリンにより検出された異なる細胞株からのMFI値を示している。
【0245】
これらの結果は、PE結合センチリンがPSMA陽性細胞株と結合し、PSMA陰性細胞と非特異的に結合しないことを示している。MFIは、予想されたように、低PSMA発現細胞株(22Rv1)による低いMFIと比較して、高PSMA発現細胞(LNCaP)ではより高くなっている。PSMA陰性細胞株(PC3)によるMFIは、バックグラウンドシグナルに近い。更に、異なる細胞株との結合におけるPE結合センチリンEの性能は、センチリンと抗体複合体の両方において同様のMFI値が得られたことから、抗PSMA抗体−PEと同様である。この例は、PT結合センチリンが、腫瘍細胞上のPSMAの検出において感受性及び特異性を示すことを示している。
【0246】
循環腫瘍細胞アッセイによるPSMAの検出
上記の結果を、CELLSEARCHアッセイによりPE結合センチリンを試験し、7.5mLの血液から循環腫瘍細胞(CTC)を検出し、計数することによって更に確認した。循環腫瘍細胞の計数は、CELLSEARCH(ベリデックス社(Veridex LLC)、米国、ニュージャージー州、ラリタン)を使用し、製造者のプロトコール及びトレーニングに従って行った。CELLSEARCHアッセイでは、磁性流体磁気粒子と結合させた抗EpCAMを使用して、フルオロセインと結合させたサイトケラチン8、18及び19に特異的な抗サイトケラチンを捕捉することによりCTCを可視化する。CELLSEARCHアッセイは、試料の調製にCELLSEARCH AutoPrepを使用し、分析にはCELLTRACKS Analyzer II(登録商標)(CTA II)を使用する。CTA IIは、4色の半自動化蛍光顕微鏡であり、CTCを特定及び計数するために3色を使用する。CTA IIの第4の色は、更なる対象とするマーカーによってCTCの表現型を決定するために使用することができる。この例では、組織培養した腫瘍細胞を正常血液に加えることによって血液中のCTCを再現した。約500個の腫瘍細胞(LNCaP、22Rv1、PC3〜9又はSKBR3細胞)を、CELLSAVEチューブ(ジャンセン・ダイアグノスティクス社(Janssen Diagnostics))中に採取した7.5mlの正常なドナー血液中に加えた。また、乳癌細胞株(SKBR3)もPSMA陰性細胞株として使用した。各試料を、CELLSEARCH CXCキット及びマーカーとしてPE結合センチリンを使用し、AutoPrep上で処理した。AutoPrep試料調製システムは、抗EpCAM磁性流体を使用して腫瘍細胞を捕捉することによって腫瘍細胞を濃縮するものである。CTCを濃縮した試料を、有核細胞を識別するための核酸色素(DAPI)、腫瘍細胞を識別するためのフルオレセインイソチオシアナート(FITC)と結合させた抗サイトケラチン抗体、及び白血球を識別するためのアロフィコシアニン(APC)と結合させた抗白血球抗体により染色した。試料を0.32mlの最終体積にまで処理し、MagNest(登録商標)細胞提示装置内に入れたまま、試料チャンバに移した。MagNest(登録商標)装置は、CELLTRACKS Analyzer II(登録商標)による分析用に磁気標識した細胞を提示するものである。CTAIIを用いて試料を分析してCTCを計数し、CTC上のPSMAを検出した。この分析装置は自動的に試料を分析し、DAPI及びサイトケラチンについて陽性の候補腫瘍細胞をレビュー用のサムネイル画像として提示するものである。CellSearchアッセイにおいてPE結合センチリンで染色した腫瘍細胞から得られた結果を、
図7に示す。PT結合センチリンで染色したCTCの画像を、PSMA−PEとして示した列に示す。
【0247】
図7Aは、LNCaP腫瘍細胞上のPSMAの発現を示しており、これらの細胞の100%がPSMAについて陽性である。低PSMA発現細胞株(22Rv1)は、PSMAについて26%が陽性である(
図7B)。これに対して、PSMA陰性細胞株(PC3〜9及びSKBR3)は、PSMAについて陰性である(
図7C及び7D)。これらの結果は、フローサイトメトリーの結果と一致している。この例では、抗PSMAセンチリンを使用してCTC上のPSMAの発現を検出できることが示され、抗PSMAセンチリンの感受性及び特異性が更に確認された。
【0248】
配列
配列番号1=元のテンコン配列
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAEFTT
【0249】
配列番号2=TCL1ライブラリ
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV(X)
7〜12PLSAEFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7は、任意のアミノ酸であり、
X
8、X
9、X
10、X
11及びX
12は、任意のアミノ酸又は欠失である。
【0250】
配列番号3=TCL2ライブラリ
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8SFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX
9X
10X
11X
12X
13SX
14X
15LSAEFTT;
ただし、
X
1は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
2は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
3は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
4は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
5は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
6は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
7は、Phe、Ile、Leu、Val、又はTyrであり、
X
8は、Asp、Glu、又はThrであり、
X
9は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
10は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
11は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
12は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
13は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
14は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
X
15は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValである。
【0251】
配列番号4=安定化したテンコン
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAIFTT
【0252】
配列番号5=TCL7ライブラリ(FG及びBCループ)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9FDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19SNPLSAIFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15及びX
16は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYであり、
X
7、X
8、X
9、X
17、X
18及びX
19は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0253】
配列番号6=TCL9(FGループ)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9 X
10X
11X
12SNPLSAIFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、及びX
7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYであり、
X
8、X
9、X
10、X
11、及びX
12は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0254】
TCL14ライブラリ(配列番号7):
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX
1IX
2YX
3EX
4X
5X
6X
7GEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYX
8VX
9IX
10GVKGGX
11X
12SX
13PLSAIFTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、及びX
13は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、C、又はMである。
【0255】
TCL24ライブラリ(配列番号8)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFX
1IX
2YX
3EX
4X
5X
6X
7GEAIX
8LX
9VPGSERSYDLTGLKPGTEYX
10VX
11IX
12GVKGGX
13X
14SX
15PLX
16AX
17FTT;
ただし、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、及びX
17は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、Y、又はWである。
【0256】
配列番号9=Sloning−FOR
GTGACACGGCGGTTAGAAC
【0257】
配列番号10=Sloning−REV
GCCTTTGGGAAGCTTCTAAG
【0258】
配列番号11=POP2250
CGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATAC
【0259】
配列番号12=DigLigRev
CATGATTACGCCAAGCTCAGAA
【0260】
配列番号13=BC9
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0261】
配列番号14=BC8
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0262】
配列番号15=BC7
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0263】
配列番号16=BC6
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0264】
配列番号17=130mer−L17A CGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTG
【0265】
配列番号18=POP222ext
CGG CGG TTA GAA CGC GGC TAC AAT TAA TAC
【0266】
配列番号19=LS1114
CCA AGA CAG ACG GGC AGA GTC TTC GGT AAC GCG AGA AAC AAC CAG GTT TTT CGG CGC CGG CAG CAT GGT AGA TCC TGT TTC
【0267】
配列番号20=LS1115
CCG AAG ACT CTG CCC GTC TGT CTT GG
【0268】
配列番号21=LS1117
CAG TGG TCT CAC GGA TTC CTG GTA CTG GAT CAG GAA AGA GTC GAA
【0269】
配列番号22=SDG10
CATGCGGTCTCTTCCGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTCCTGACCGTTCCGGGT
【0270】
配列番号23=SDG24
GGTGGTGAAGATCGCAGACAGCGGGTTAG
【0271】
配列番号24=POP2222
CGGCGGTTAGAACGCGGCTAC
【0272】
配列番号25=SDG28
AAGATCAGTTGCGGCCGCTAGACTAGAACCGCTGCCACCGCCGGTGGTGAAGATCGCAGAC
【0273】
配列番号26=FG12
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0274】
配列番号27=FG11
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0275】
配列番号28=FG10
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0276】
配列番号29=FG9
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0277】
配列番号30=FG8
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0278】
配列番号31=FG7
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0279】
配列番号32=PSMW1(N’−AviTag−HisTag−GS−CynoPSMA_ECD)
KSSSEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLHNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELTHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPAGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGATGVILYSDPDDYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGMAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSASPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTSEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGMLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVYNLTKELESPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSSYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSVVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYNISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLRDFDKSNPILLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSQAWGEVKRQISIATFTVQAAAETLSEVA
【0280】
配列番号33=PSMW8(N’−AviTag−HisTag−GS−Chimp PSMA_ECD)
KSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVLDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRHGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVYNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYNISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFTERLQDFDKSNPILLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGDVKRQISVAAFTVQAAAETLSEVA
【0281】
配列番号34:ヘキサヒスチジンタグ
HHHHHH
【0282】
配列番号35=P258AR6P1071_G03
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWDIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0283】
配列番号36=P258AR6P1070_A05
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0284】
配列番号37=P258AR6P1071_F04
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWVIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0285】
配列番号38=P258AR6P1070_F09
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTIDEQRDWFESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0286】
配列番号39=P258AR6P1071_D02
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWAIDEQRDWFESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0287】
配列番号40=P229CR5P819_H11
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWDIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSSNPLSAIFTT
【0288】
配列番号41=P233FR9_H10
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0289】
配列番号42=P233FR9P1001_B5−5
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFTIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0290】
配列番号43=P233FR9P1001_H3−1
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFPIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYHVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0291】
配列番号44=P233FR9P1001_D9
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFPIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYWVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0292】
配列番号45=P234CR9_A07
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWGEQFTIFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGASGYEWFHAFGSSNPLSAIFTT
【0293】
配列番号46=P234CR9_H01
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWEWWVIPGDFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVVNSGQWNDTSNPLSAIFTT
【0294】
配列番号47=P233FR9_H10(C末端cys)
lpapknlvvsrvtedsarlswtapdaafdsfaigywewdddgeaivltvpgsersydltglkpgteypvyiagvkggqwsfplsaifttc
【0295】
配列番号48=P233FR9_H10(K62C)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLCPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0296】
配列番号49=P233FR9_H10(E53C)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSCRSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0297】
配列番号50=P233FR9_H10(R11C)
LPAPKNLVVSCVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0298】
配列番号51=非標的化センチリン(K62C)
LPAPKNLVVSEVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLCPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAIFTTGGHHHHHH