(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-515568(P2018-515568A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】1,1,3,3−テトラクロロプロペンをベースとする組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 17/389 20060101AFI20180518BHJP
C07C 21/04 20060101ALI20180518BHJP
C07C 17/383 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
C07C17/389
C07C21/04
C07C17/383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-560689(P2017-560689)
(86)(22)【出願日】2016年5月4日
(85)【翻訳文提出日】2018年1月16日
(86)【国際出願番号】FR2016051054
(87)【国際公開番号】WO2016189214
(87)【国際公開日】20161201
(31)【優先権主張番号】1554655
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピガモ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】コリエ,ベルトラン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC13
4H006AD11
4H006AD17
4H006BC51
4H006BD70
4H006BD84
4H006EA03
(57)【要約】
本発明は、F−1230za(1,1,3,3−テトラクロロプロペン)、またはF−1230zaとF−1230zd(1,3,3,3−テトラクロロプロペン)とからなる混合物をベースとする組成物、その製造、ならびに特にF−1233zdE(トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)、F−1234zeE(トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)および/またはF−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン)の製造のためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも99.5重量%の1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)または1,1,3,3−テトラクロロプロペンと1,3,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230zd)との混合物を含み、ペンタクロロプロパン、F−1230zaおよびF−1230zd以外のテトラクロロプロペン、クロロブテン、クロロブタンおよび酸素化化合物からなる化合物のリストから選択される少なくとも1つの追加の化合物を含む組成物であって、該化合物または該化合物(複数)の総量は、0.5重量%以下の含有率で組成物中に存在する組成物。
【請求項2】
追加の化合物は組成物中で1000ppm以下、または500ppm以下、または450ppm以下、または400ppm以下、または350ppm以下、または300ppm以下、または250ppm以下、または200ppm以下、または150ppm以下、または100ppm以下、または75ppm以下、または50ppm以下、または25ppm以下、または10ppm以下、または5ppm以下の含有率に相当する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
追加の化合物は1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(F−240fa)、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(F−240db)および1,1,2,3−テトラクロロプロペン(F−1230xa)から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
以下の工程
− 四塩化炭素と塩化ビニルとの反応により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(F−240fa)を生成する工程、
− F−240faを脱塩化水素化して1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)を得る工程、
− F−1230zaを分離するための1つ以上の工程
を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項5】
以下の工程
− 四塩化炭素とエチレンとの反応により1,1,1,3−テトラクロロプロパン(F−250fb)を生成する工程、
− F−250fbの塩素化により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(F−240fa)を得る工程、
− F−240faを脱塩化水素化して1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)を得る工程、
− F−1230zaを分離する1つ以上の工程
を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
分離は、蒸留または抽出、および/またはモレキュラーシーブ、アルミナまたは活性炭上の物理化学的分離、および/または場合により気相中での膜分離によって行われる請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
第1の分離工程は、1回以上の蒸留を経て行われ、第2の分離工程はモレキュラーシーブ、活性炭またはその混合物への吸着によって行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分離工程は、4A、5A、10Xまたは13Xモレキュラーシーブのような種類のゼオライトへの吸着によって行われ、場合によりその後気相での膜分離が続く請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
吸着による分離工程は、0から120℃の間、好ましくは20から80℃の間の温度で行われる請求項6、7および8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zd)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234ze)または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(F−245fa)の製造における請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
以下の工程
− 請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物を含む流れをフッ素化反応器に導入する工程
を含む、液相中および触媒の不存在下で実施されるフッ素化による、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zd)および/または1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234ze)および/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(F−245fa)の製造方法。
【請求項12】
トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zdE)またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234zeE)を形成するための請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生成物の流れから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zd)および/または1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234ze)および/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(F−245fa)を分離するための1つ以上の工程が後に続く請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、F−1230za(1,1,3,3−テトラクロロプロペン)、またはF−1230zaとF−1230zd(1,3,3,3−テトラクロロプロペン)とからなる混合物をベースとする組成物、その製造、ならびに特にF−1233zdE(トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)、F−1234zeE(トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)および/またはF−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン)の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
フルオロオレフィン、特にF−1233zdEは、新しい環境規制を考慮すると、冷凍および空調システムにとって大きな関心のある化合物である。
【0003】
特にハイドロクロロオレフィンまたは塩化炭化水素のフッ素化によってF−1233zdEのようなハイドロフルオロオレフィンを製造することは既知の慣習である。このフッ素化は、一般に、フッ素化剤としてフッ化水素酸を用いたフッ素化である。
【0004】
F−1233zdEを得るための経路の中で、出発化合物としてF−240fa(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン)を使用することが特に知られた慣習である。これに関しては、例えば、触媒の不存在下で、しかし直列の数個の反応器および/または低い転化率に対処するために反応媒体の撹拌を必要とする液相のフッ素化の方法を記載するUS8704017号が参照される。
【0005】
US2014/0221704号は、F−240faとフッ化水素との低い混和性を教示し、この問題を解決するために反応媒体に相間移動剤を添加することを提案する。
【0006】
US2013/0211154号は、F−240faの転化率を改善するために反応媒体の圧力を増加させることを示唆している。
【0007】
別の考えられる方法は、触媒の不存在下ではるかに厳しくない条件下でのF−1230zaの液相フッ素化であり、このオレフィン性出発物質は、転化率が低いというこれらの難点を有さない。
【0008】
しかし、液相フッ素化方法は、オリゴマー化合物、高沸点の生成物、毒性もしくは腐食性化合物、またはより一般的には分離が困難な不純物のようないくつかの望ましくない化合物を生成するおそれがあることが知られている。特に、これらのオリゴマー化合物は、フッ素化方法の効率を低下させるという結果を有し、連続系またはバッチ系でのパージによって分離され、反応器から得られ、そして再処理されなければならない。高沸点の化合物も反応を阻むおそれがある。
【0009】
フッ素化方法に対する不純物の有害な影響は、F−1230zaの上記反応においても観察された。
【0010】
阻害剤、一般的に抗酸化剤によるテトラクロロプロペンの安定化は、US2012/0226081号、US2012/0190902号またはUS2014/0213831号に教示されている。これらの阻害剤は、輸送および保管の段階での酸素化不純物、主に毒性であるホスゲンの形成を防止する。しかし、液相フッ素化方法におけるこれらの不純物の影響は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8704017号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0221704号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0211154号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0226081号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0190902号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2014/0213831号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特に液相中および触媒の不存在下で実施するのが簡単であり、収率の改善を可能にし、ならびに/または望ましくない化合物を分離するという点で問題を生じない方法を用いて、工業的規模で良好な収率条件下でF−1233zdEを製造することができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、出発物質が特定の不純物を含有していないか、または非常にわずかしか含まない場合に、触媒の不存在下においてF−1230za、またはF−1230zdと混合されたF−1230zaのフッ素化がはるかに効率的であるとの驚くべき発見に基づいている。生成物流はF−1233zdEがより豊富であり、望ましくない化合物をより少なくしか含まない。
【0014】
本発明は、第1に、少なくとも99.5重量%の1,1,3,3−テトラクロロプロペンまたは1,1,3,3−テトラクロロプロペンと1,3,3,3−テトラクロロプロペンとの混合物を含み、ペンタクロロプロパン(特にF−240fa)、F−1230zaおよびF−1230zd以外のテトラクロロプロペン(特に1,1,2,3−テトラクロロプロペン(F−1230xa))、クロロブテン、クロロブタンおよび酸素化化合物(例えば、酸、エステル、アルデヒドまたはオキシ塩化物)からなる追加の化合物のリストから選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物であって、該化合物または該化合物(複数)の総量は、0.5%以下の重量含有率で組成物中に存在する組成物に関する。
【0015】
一実施形態では、追加の化合物は、組成物中に1000ppm以下の重量含有率で存在し、前記化合物の総量は0.5%以下である。
【0016】
一実施形態によれば、組成物は、少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.7重量%、特に好ましくは少なくとも99.8重量%のF−1230za、またはF−1230zaとF−1230zdとの混合物を含む。
【0017】
本発明は、第2に、上記で定義した組成物を得る方法に関する。
【0018】
次に、本発明は、一般に、F−1233zdの調製における前記組成物の使用に関し、− 上記で定義した組成物の提供;
− この組成物とフッ化水素酸との反応
を含む、特にトランス形態の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造するための特定の方法を提供する。
【0019】
出発試薬としてF−1230zd、またはF−1230zaおよびF−1230zdで構成される混合物を使用することもできる。
【0020】
好ましい実施形態によれば、この方法は、液相中および触媒の不存在下での単一のフッ素化工程を含む。
【0021】
フッ素化反応(複数可)の過程で、F−1230zaの不純物の一部は、標準的な温度および圧力条件下で処理された液体反応媒体中の異なる不純物に転化され得、反応器内に蓄積するおそれがある。これらのオリゴマーは反応器の容積を占め、反応収率を低下させるので、反応性にとって有害である。それらはまた、ある種の毒性または腐食性を有し、破壊のための処理中に問題を伴う化合物で構成されるおそれがある。従って、それらは、処理される前にパージシステムによって除去されなければならず、最終残渣が除去されなければならない。
【0022】
本発明により、従来技術の欠点を克服することが可能になる。本発明は、より具体的には、特定の不純物の含有率が制御され、F−1233zdEの製造方法の反応媒体中の有害なオリゴマーの生成を最小にすることを可能にする、F−1230zaをベースとする組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下の説明において、より詳細に、非限定的に記載される。
【0024】
示されている全ての含有率は、特に明記しない限り重量含有率である。
【0025】
本発明による組成物
本発明は、F−1230za、またはF−1230zaとF−1230zdとの混合物をベースとする組成物を提案する。F−1230zaの含有率またはF−1230zaおよびF−1230zdの含有率の合計は、99.5%以上である。
【0026】
特定の実施形態によれば、それは99.6%、または99.7%、または99.8%、または99.9%、または99.95%以上である。
【0027】
本発明による組成物はまた、ペンタクロロプロパン(特に1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、即ち、F−240fa)、テトラクロロプロペン(特に1,1,2,3−テトラクロロプロペン、即ち、F−1230xa)、クロロブテン、クロロブタンおよび酸素化化合物によって構成される追加の化合物のリストから選択される少なくとも1つの化合物を含み、該化合物は組成物中に0.5重量%以下、または1000ppm以下、または500ppm以下、または450ppm以下、または400ppm以下、または350ppm以下、または300ppm以下、または250ppm以下、または200ppm以下、または150ppm以下、または100ppm以下、または75ppm以下、または50ppm以下、または25ppm以下、または10ppm以下、または5ppm以下の含有率で存在する。
【0028】
「酸素化化合物」という用語は、酸素ヘテロ原子を含む任意の化合物、例えば、酸、エステル、アルデヒドまたはオキシ塩化物、例えば、ホスゲンを指す。
【0029】
反応媒体中に混入する特に望ましくない不純物は、
− F−240シリーズの分子、例えば、F−240fa(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン)、F−240da(1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン)、F−240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)、F−240ab(1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン)、より詳細にはF−240dbおよびF−240fa;
− F−1230zaおよびF−1230zd以外のF−1230シリーズの分子、例えば、F−1230xa(1,1,2,3−テトラクロロプロペン)、F−1230xd(1,2,3,3−テトラクロロプロペン)、F−1230xf(2,3,3,3−テトラクロロプロペン)、より詳細には上記のF−1230xaである。
【0030】
分子F−240fa、F−240dbおよびF−1230xaは、HFの存在下および触媒の不存在下で反応媒体中において望ましくない挙動を有する塩素化不純物である。F−240faは低い転化率を有し、反応媒体中である程度の安定性を有する。それは高い沸点を有するF−241fa(1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン)のような僅かにフッ素化された化合物をもたらす可能性がある。それらは十分に反応することなく反応媒体の体積を圧迫する傾向がある。この事例は、F−240dbの場合も実質的に同じである。他方、分子F−1230xaは、HFの存在下および触媒の不存在下で加熱されると多量のオリゴマーを生成する。
【0031】
従って、これらの塩素化不純物の存在を制限するために、本発明による組成物を調整することが望ましい。
【0032】
従って、本発明による有利な組成物は、
− F−240シリーズのものの中の少なくとも1つの化合物を0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmの含有率で含み、および/または
− F−1230zaおよびF−1230zd以外のF−1230シリーズのうちの少なくとも1つの化合物を0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmの含有率で含み、あるいは
− F−1230xa、F−240faおよびF−240dbのうちの少なくとも1つの化合物を0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmの含有率で含む。
【0033】
反応媒体中に混入する他の特に望ましくない不純物はまた、4個の炭素原子を含む塩素化分子である。これらの高沸点化合物もまた反応器内に蓄積し、反応体積を圧迫し、より少ない程度で、分子のフッ素化および転位により、その高い毒性がよく知られているフッ素化された4炭素化合物、即ち、ペルフルオロイソブチレン(PFIB)をもたらすおそれがある。
【0034】
従って、出発物質に含まれるこれらの不純物は、
− クロロブタン、ジクロロブタン、トリクロロブタン、特にテトラクロロブタンファミリー、例えば、1,1,4,4−テトラクロロブタン、1,2,3,4−テトラクロロブタン、1,1,1,3−テトラクロロブタンおよび1,1,3,3−テトラクロロブタンのような種類の分子;
− クロロブテン、ジクロロブテン、テトラクロロブテン、特にトリクロロブテン、例えば、1,2,4−トリクロロブタ−2−エン、1,3−ジクロロ−2−クロロメチルプロペン、1,1,3−トリクロロブタ−1−エン、4,4,4−トリクロロブタ−1−エン、1,2,3−トリクロロ−1−ブテン、3,4,4−トリクロロ−1−ブテン、2−クロロメチル−3,3−ジクロロプロペン、1,1,4−トリクロロブタ−2−エン、3,3,4−トリクロロブタ−1−エン、1,1,3−トリクロロブタ−2−エン、1,3,3−トリクロロブタ−1−エン、1,1,2−トリクロロブタ−1−エン、1,1,1−トリクロロブタ−2−エン、1,1,4−トリクロロブタ−2−エン、1,3,4−トリクロロブタ−1−エン、1,1,2−トリクロロブタ−2−エン、1,2,3−トリクロロブタ−2−エン、2−メチル−1,1,3−トリクロロ−1−プロペン、1,2,4−トリクロロブタ−2−エン、2,3,4−トリクロロブタ−1−エンである。
【0035】
従って、本発明による有利な組成物は、
− クロロブタンシリーズのものの中の少なくとも1つの化合物を0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmの含有率で含み、あるいは
− クロロブテンシリーズのうちの化合物を含み、全てのこれらの化合物の総含有率は0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmであり、あるいは
− クロロブタンおよびクロロブテンのうちの少なくとも1つの化合物を0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmの含有率で含む。
【0036】
反応媒体中に混入する他の特に望ましくない不純物は、酸、エステル、アルデヒドまたはオキシ塩化物、特にホスゲンのような、酸素ヘテロ原子を含む分子でもある。この化合物は、その毒性に関して特に知られている。フッ化水素の存在下では、これらの酸素化化合物は分解して水を生成しやすい。水は、HF媒体中の腐食現象を強めるおそれがあるので、その含有率を最小限に抑えなければならない要素である。
【0037】
従って、本発明による有利な組成物は、
− 少なくとも1つの酸素化化合物を0.5%以下、または1000ppm以下、または250ppm以下、または150から200ppm、または100から150ppm、または50から100ppm、または25から50ppm、または10から25ppm、または5から10ppm、または5ppm以下、例えば1から5ppmの含有率で含む。
【0038】
本発明による組成物の調製
本発明の組成物は、四塩化炭素から、F−240faを介して、
− 四塩化炭素と塩化ビニルとの反応によりF−240faを生成し;
− F−240faを脱塩化水素化してF−1230zaを得ることにより
効率的に得ることができる。
【0039】
あるいは、この組成物を調製する方法は、以下の工程
− 四塩化炭素とエチレンとの反応によりF−250fbを生成する工程;
− F−250fb(1,1,1,3−テトラクロロプロパン)の塩素化反応により主にF−240faを製造する工程;
− F−240faを脱塩化水素化してF−1230zaを得る工程
を含む。
【0040】
次いで、本発明による組成物は、F−1230zaを上記の他の化合物、特にF−240fa(これは一般に脱塩化水素化の主要副生成物である)ならびにF−240dbおよび/またはF−1230xa等の他の短鎖重合/脱塩化水素化副生成物から分離するための1つ以上の工程を実施することによって得ることができる。
【0041】
これらの分離工程は、好ましくは、吸収/洗浄および蒸留によって実施することができる。蒸留の代替物またはそれとの組み合わせにおいて、抽出蒸留、モレキュラーシーブ、アルミナもしくは活性炭上の物理化学的分離、または膜分離による分離を想定することも可能である。
【0042】
第1の分離は、一般に、標準蒸留(プレート塔、充填塔)を用いて大気圧下または減圧下で行われる。選択された圧力は、760mmHg未満、優先的には450mmHg未満、より優先的には200mmHg未満である。本質的に、塔圧力により、選択された分離度に対する温度条件が決定される。F−1230zaは、180℃未満、優先的には160℃未満、より優先的には130℃未満の温度で蒸留を行うことによって回収することができる。単一の塔または蒸留トレインを使用することができる。選択された条件下で、蒸留後のF−1230zaの純度は、最低99.3%に達する。
【0043】
第2の分離は、ゼオライトまたは活性炭上での吸着を用いて行うことができる。
【0044】
有利には、F−1230zaを精製するための方法において使用され得るゼオライトまたは活性炭は、3.4から11Å、好ましくは3.4から10Å、さらにより有利には4から9Åの間の平均細孔径を有する。
【0045】
ゼオライトまたは活性炭が11Åより大きい平均細孔径を有する場合、吸着されたF−1230zaの量は増加するが、平均細孔径が3.4Å未満ではゼオライトまたは活性炭の吸着容量が低下する。
【0046】
ゼオライトは、2以下のSi/Al比を有することが好ましい。ゼオライトのSi/Al比が2より大きい場合、ある種の不純物は選択的に吸着されない傾向がある。ゼオライトは、好ましくは、4Aモレキュラーシーブ、5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブおよび13Xモレキュラーシーブからなる群から選択される少なくとも1つの要素である。
【0047】
ゼオライトおよび活性炭は、吸着剤を再生する目的で個々に使用することが好ましいが、それらは混合物として使用することもできる。混合物中のゼオライトおよび活性炭の割合は特に大きいわけではない。
【0048】
液相中でゼオライトおよび/または活性炭によりF−1230zaを処理するために、バッチ方法または連続方法を使用することができる。工業的には、F−1230zaを固定床に連続的に通過させる方法が好ましい。液空間速度(LHSV)は、除去すべき不純物の含有率および処理すべきF−1230zaの量の関数として適切に選択することができる。一般に、空間速度は1から50h
−1であることが好ましい。あるいは、工業的には、精製方法は2つの吸着塔を使用することができる。
【0049】
F−1230zaの処理温度は、0℃から120℃、好ましくは20℃から80℃である。処理温度が120℃を超える場合、装置の加熱のために設備のコストが上昇し得、一方、処理温度が0℃未満である場合には冷却設備が必要になることがある。圧力は0から3MPa、好ましくは0から1MPaである。圧力が3MPaより大きい場合、装置の耐圧性に関する要件のために収益性が低下することがある。
【0050】
活性炭またはゼオライトへの吸着に加えて、またはこれらの技術の代替として、膜分離技術を使用することもできる。膜分離は、低圧または減圧下で実施される連続方法を介して気相で行うことができる。選択された圧力は、5バール未満、優先的には2バール未満、より優先的には大気圧未満である。膜の選択は、F−1230zaから分離すべき不純物の性質(溶解度、拡散性および透過性の差)に依存する。膜分離は、250℃未満、優先的には230℃未満、より優先的には180℃未満の、選択された圧力に依存する温度で行われる。
【0051】
好ましい実施形態によれば、例えば、蒸留または抽出蒸留、続いてモレキュラーシーブへの吸着による分離のように、いくつかの分離技術が組み合わされる。有利には、F−1230zaを精製するための方法において使用され得るゼオライトは、3.4から11Å、好ましくは3.4から10Å、さらにより有利には4から9Åの間の平均細孔径を有する。吸着工程は、0から120℃の間、有利には5から100℃の間、好ましくは10から80℃の間の温度で行われる。
【0052】
不純物を含有するF−1230zaを、液相中でゼオライトおよび/もしくは活性炭と接触させて配置し、ならびに/または上記の条件下で気相中で膜上で精製する場合、99.9%より高い純度でF−1230zaを得ることができる。
【0053】
F−1233zdEの製造
本発明による組成物は、1回以上のフッ素化工程を介して、好ましくは単一工程で、F−1233zdE、F−1234zeEおよび/またはF−245faの製造に使用することができる。
【0054】
フッ素化は、液相においてHFで触媒作用を及ぼされないフッ素化である。操作条件(温度、圧力)を調節することにより、F−1234zeおよび/またはF−245faの形成を促進して、得られる流れにおけるそれらの含有率を増加させることができる。別の実施形態では、F−1234zeの分離後にF−1233zdおよびF−245faを反応器内にリサイクルすることによって、F−1234zeの含有率を増加させることもできる。別の実施形態において、F−245faの分離後にF−1233zdおよびF−1234zeを反応器内にリサイクルすることによってF−245faの含有率を増加させることもできる。
【0055】
液相フッ素化反応は、
− 好ましくは5から15の間、好ましくは6から15の間、さらにより優先的には8から15の間、有利には9から14の間、優先的には9から12の間のHF/1,1,3,3−テトラクロロプロペンモル比で(HF/1,1,3,3−テトラクロロプロペンのモル比はHFのリサイクルされた部分を含み、好ましくは反応器入口で測定される。)
− 好ましくは80から120の間、有利には90から110℃の間の反応温度で
− 5から20バールの間、優先的には5から15バールの間、さらにより優先的には7から15バールの間、有利には7から12バールの間の圧力で
行うことができる。
【0056】
フッ素化反応は、好ましくは、撹拌されていない反応器内で行われる。
【0057】
反応器は、好ましくは金属反応器である。反応器の金属は、鋼またはステンレス鋼であることができる。しかし、スーパーオーステナイト系ステンレス鋼または不動態化ニッケル系合金等の他の材料を用いてもよい。反応のための触媒の不存在は、フッ素化触媒がこの種の反応器に使用される場合、当業者に知られている腐食現象を防止することを可能にする利点である。
【0058】
除去パイプにより、フッ素化反応中に形成された可能性がある、ある量の高分子量の望ましくない生成物をパージすることが可能になる。この流れはまた、HFおよび、例えば、デカンテーションまたは共沸蒸留、好ましくはこの2つの組合せを使用して、反応器に戻される前に特定の処理によって分離されたアップグレード可能な有機化合物を含有する。
【0059】
このようにして分離された組成物をフッ素化するための本発明による方法は、連続的、不連続的またはバッチ式で行うことができる。好ましい実施形態では、方法は連続式で実施される。
【0060】
フッ素化から誘導された生成物流は、精製された形態のF−1233zdEを回収し、存在する他の化合物(HCl、未反応HF、シス−1233zd異性体、他の有機化合物)からそれを分離するために、適切な処理(蒸留、洗浄等)を受けることができる。1つ以上の流れをリサイクルすることができる。
【0061】
従って、好ましい実施形態では、本発明は、フッ素化によって行われる、液相中および触媒の不存在下での、F−1233zdおよび/またはF−1234zeおよび/またはF−245faの製造方法であって、以下の工程
− 本発明に従って、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)の組成物または1,1,3,3−テトラクロロプロペンと1,3,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230zd)との混合物を含む流れをフッ素化反応器に導入する工程
を含む方法に関する。
【0062】
この方法は、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zdE)またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234zeE)の調製に特に有用である。
【0063】
最後に、本発明は、より一般的には、99.9%程度の高純度のF−1233zdEを製造するための本発明による組成物であって、特定の不純物の含有率を低下させた組成物の使用に関する。
【0064】
特定の不純物は、クロロ化合物240dbまたは1230xaから誘導され得る異性体1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)からなる。この異性体の沸点は、本発明者らの最終化合物に比較的近く、分離問題を引き起こすおそれがある。
【0065】
その沸点も化合物F−1233zdの沸点に近く、4個の炭素を含有する他の不純物が、クロロブテンおよび/またはクロロブタンのフッ素化に由来することがあり、これらは分離することが困難であるため、この方法における障害であることが判明する可能性がある。これらの不純物は、以下のリストから選択される。
1,1,1−トリフルオロブタン、即ち、F−383mff、即ち、CF
3−CH
2−CH
2−CH
3
1,1,1,4,4−ペンタフルオロブタン、即ち、F−365mff、即ち、CF
3−CH
2−CH
2−CHF
2
2,2,3,3−テトラフルオロブタン、即ち、F−374scc、即ち、CH
3−CF
2−CF
2−CH
3
1,1,1,2,2,4,4,4−オクトフルオロブタン、即ち、F−338mcf、即ち、CF
3−CF
2−CH
2−CF
3
1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロブタン、即ち、F−347mcc、即ち、CF
3−CF
2−CF
2−CH
3
1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロブタン、即ち、F−329mcc、即ち、CF
3−CF
2−CF
2−CHF
2。
【0066】
その沸点も化合物F−1233zdの沸点に近く、3個の炭素を含有する他の不純物が、クロロプロペンおよび/またはクロロプロパンのフッ素化に由来することがあり、これらは分離することが困難であるため、この方法における障害であることが判明する可能性がある。これらの不純物は、以下のリストから選択される。
1,2−ジフルオロプロパン、即ち、F−272ea、即ち、CH
2F−CHF−CH
3
1,1,2−トリフルオロプロパン、即ち、F−263eb、即ち、CHF
2−CHF−CH
3
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン、即ち、F−254ca、即ち、CH
2F−CF
2−CH
2F。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明を説明する。
【0068】
第1の工程は、出発物質を調製することにある。1,1,3,3−テトラクロロプロペンは、無水塩化第二鉄の存在下での1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの脱塩化水素化により得られる。
【0069】
[実施例1]F−240faの脱塩化水素化によるF−1230zaの調製
純度99.6%の1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン1626.5gを、還流冷却器を備えたジャケット付きガラス反応器に入れる。反応器のヘッドスペースを4L/hの窒素の流れでフラッシュして、雰囲気を不活性にする。次いで、無水塩化第二鉄17gを導入した後、800rpmで撹拌を開始する。還流は、20℃に維持された流体によって供給される。冷却器のガス出口は、脱塩化水素化反応の過程で放出されるHClを捕捉することを可能にする水バブラーに接続されている。次いで、混合物を80℃で5時間加熱する。得られた溶液1338.1gを丸底フラスコから取り出す。得られた混合物を濾過して懸濁液中の塩化第二鉄を除去し、活性炭で精製し、次いでガスクロマトグラフィーで分析する。
【0070】
【表1】
【0071】
クロロブテンおよびクロロブタンは、C
4H
6Cl
2、C
4H
7Cl
3、C
4H
2Cl
4またはC
4H
6Cl
4のような実験式によってのみ同定することができた。クロロプロペンおよびクロロプロパンは、1230xaであり、また250fb、240faまたは240dbとは異なるC
3H
3Cl
3またはC
3H
2Cl
4としてそれらの実験式によって同定された他の化合物である。
【0072】
上記の組成物の残りは、未確認の生成物から構成される。
【0073】
[実施例2]1230zaの蒸留
次に、10−プレートオールダーショウ(Oldershaw)塔、凝縮器、真空ポンプ、丸底フラスコおよびレシーバーフラスコを含む標準的な実験室蒸留に、低純度の1230zaを供する。蒸留は25ミリバールの真空下で実施され、その後、生成物1230zaは53℃の沸点を有する。蒸留の結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
[実施例3]1230zaのバッチ式フッ素化
実施した試験は、規定された圧力でのバッチ試験である。100gの純度99.6%のF−1230zaおよび115gのHF、即ち、モル比10.3を、凝縮器、圧力インジケータ、温度計プローブおよび破裂板を備えた1リットルのステンレス鋼製オートクレーブに連続的に導入する。凝縮器内に冷却循環を確立し、反応器を加熱し、圧力を10バール(公称圧力)に達するように徐々に上昇させる。そのとき測定した温度は、反応器内で85℃である。この圧力で、調節弁を開くことにより、軽質化合物を除去することが可能になる。有機生成物を洗浄し、次いで捕捉する。24時間後、系を室温に戻す。残りの有機化合物および水素酸を、脱気後にヘリウムでフラッシュすることによって反応器から除去する。これにより、反応器の底部に138gの水素酸、61gの補足された有機化合物および1.5gの重質黒色化合物を得る。有機化合物の重量百分率分布は、以下のとおりである。即ち、E−1233zdが94.9%、Z−1233zdが3.3%、245faが0.8%、E−1234zeが0.3%、および1232zd(1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロパ−1−エン)または1232za(1,1−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロパ−1−エン)のような中間体化合物である。
【0076】
1230zaの痕跡は見られず、このことは試薬の完全転化を示した。転化率は非常に高く、所望の生成物E−1233zdの最終収率は95%に近い。
【0077】
[比較例4]240faの液相バッチフッ素化
550gのF−240faおよび580gのHF、即ち、11のモル比を導入することによって、実施例3に従って試験を行う。これにより、570gの水素酸、545gの有機化合物および6.1gの重質化合物を得る。有機化合物の重量百分率分布は、以下のとおりである。即ち、F−240faが75.7%、F−241faが12.6%、E−1233zdが7.1%、Z−1233zdが0.2%、245faが3.9%および中間体化合物(1232、242)が0.07%である。
【0078】
従って、無触媒液相中のF−240faの転化率は非常に低く、所望の生成物E−1233zdの収率は非常に低い。
【0079】
[比較例5]240db/240aa混合物の液相バッチフッ素化
実施例3の手順を再現する。有機化合物は240db/240aaの混合物(88.5%/11.5%)である。108gの有機混合物および101gのHFをオートクレーブに連続的に、即ち、10.3のモル比で導入する。これにより、96gの水素酸、90gの有機化合物および2.2gの重質化合物を得る。有機化合物の重量百分率分布は、以下のとおりである。即ち、F−240dbが86.2%、F−240aaが11.9%、異性体241が1.3%である。
【0080】
従って、無触媒液相におけるF−240dbおよびF−240aaの転化率は非常に低く、所望の生成物E−1233zdの収率は存在しない。
【0081】
[比較例6]1230xaの液相バッチフッ素化
実施例3の手順を再現する。有機化合物は1230xaである。90gの1230xaおよび80gのHFをオートクレーブに連続的に、即ち、モル比8で導入する。これにより、90.5gの水素酸および66.3gの有機化合物を得る。有機化合物の重量百分率分布は、以下のとおりである。即ち、1230xaが1.2%、異性体1232が8.7%および同定されていない重質化合物が90%である。
【0082】
無触媒液相における1230xaの転化率は高いが、所望の生成物E−1233zdをもたらさない。それは同定することが困難な重質化合物に素早く転化される。
【0083】
実施例3から6は、以下の試薬:1230za、240fa、240db、240aaおよび1230xaについての無触媒フッ素化反応について得られた結果を示す。1230zaを除いて、E−1233zdの他の全ての収率は非常に低い。
【手続補正書】
【提出日】2018年1月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも99.5重量%の1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)または1,1,3,3−テトラクロロプロペンと1,3,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230zd)との混合物を含み、ペンタクロロプロパン、F−1230zaおよびF−1230zd以外のテトラクロロプロペン、クロロブテン、クロロブタンおよび酸素化化合物からなる化合物のリストから選択される少なくとも1つの追加の化合物を含む組成物であって、該化合物または該化合物(複数)の総量は、0.5重量%以下の含有率で組成物中に存在する組成物。
【請求項2】
追加の化合物は組成物中で1000ppm以下の含有率に相当する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
追加の化合物は1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(F−240fa)、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(F−240db)および1,1,2,3−テトラクロロプロペン(F−1230xa)から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
以下の工程
− 四塩化炭素と塩化ビニルとの反応により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(F−240fa)を生成する工程、
− F−240faを脱塩化水素化して1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)を得る工程、
− F−1230zaを分離するための1つ以上の工程
を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項5】
以下の工程
− 四塩化炭素とエチレンとの反応により1,1,1,3−テトラクロロプロパン(F−250fb)を生成する工程、
− F−250fbの塩素化により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(F−240fa)を得る工程、
− F−240faを脱塩化水素化して1,1,3,3−テトラクロロプロペン(F−1230za)を得る工程、
− F−1230zaを分離する1つ以上の工程
を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
分離は、蒸留または抽出、および/またはモレキュラーシーブ、アルミナまたは活性炭上の物理化学的分離、および/または膜分離によって行われる請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
第1の分離工程は、1回以上の蒸留を経て行われ、第2の分離工程はモレキュラーシーブ、活性炭またはその混合物への吸着によって行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分離工程は、4A、5A、10Xまたは13Xモレキュラーシーブのような種類のゼオライトへの吸着によって行われる請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
吸着による分離工程は、0から120℃の間の温度で行われる請求項6、7および8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zd)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234ze)または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(F−245fa)の製造における請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
以下の工程
− 請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物を含む流れをフッ素化反応器に導入する工程
を含む、液相中および触媒の不存在下で実施されるフッ素化による、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zd)および/または1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234ze)および/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(F−245fa)の製造方法。
【請求項12】
トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zdE)またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234zeE)を形成するための請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生成物の流れから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(F−1233zd)および/または1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(F−1234ze)および/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(F−245fa)を分離するための1つ以上の工程が後に続く請求項11または12に記載の方法。
【国際調査報告】