特表2018-515711(P2018-515711A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-515711(P2018-515711A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】圧縮機速度をモデル化する方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/16 20060101AFI20180518BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
   F02B39/16 Z
   F02D45/00 370B
   F02D45/00 345Z
   F02D45/00 312P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-557454(P2017-557454)
(86)(22)【出願日】2015年5月6日
(85)【翻訳文提出日】2017年12月13日
(86)【国際出願番号】EP2015059909
(87)【国際公開番号】WO2016177413
(87)【国際公開日】20161110
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】ムリッチ,ケナン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッセン,ヘンリック
【テーマコード(参考)】
3G005
3G384
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA13
3G005JA13
3G005JA24
3G005JA40
3G005JB04
3G005JB05
3G384AA03
3G384DA38
3G384DA44
3G384DA62
3G384EE40
3G384FA09Z
3G384FA11Z
3G384FA85Z
3G384FA86Z
(57)【要約】
本発明はターボチャージャにおける圧縮機の速度をモデル化する方法に関し、圧縮機前後の温度差を求めるステップと、圧縮機を通る質量流量を求めるステップと、圧縮機の速度値を圧縮機前後の温度差と質量流量との関数として算出するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャにおける圧縮機の速度をモデル化する方法であって、
前記圧縮機前後の温度差を求める第1ステップと、
前記圧縮機を通る質量流量を求める第2ステップと、
前記圧縮機の速度値を前記圧縮機前後の温度差と質量流量との関数として算出する第3ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
回収された排気流が前記圧縮機の下流に導入されているか判定する第4ステップをさらに含み、
前記質量流量を求める前記第2ステップは、前記圧縮機を出た排気の質量流量を求め、該質量流量を、回収された排気流に対応する係数によって補正することで実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧縮機前後の温度差を求める前記第1ステップは、前記圧縮機の下流の温度を推定し、大気温度の測定値から前記圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで実行される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮機の下流の温度を推定する第5ステップは、吸気口マニホルドにおける温度を測定し、該温度を、対応する冷却装置前後の温度損失に対応した係数を用いて補正することで実行される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮機前後の圧力比を求める第6ステップをさらに含み、
前記圧縮機の速度値を算出する前記第3ステップは、前記圧縮機の速度値を前記圧力比の関数として算出することで実行されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮機前後の圧力比を求める前記第6ステップは、大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定し、下回っていれば、大気圧を前記予め定められた大気圧の参照値に固定して、ブースト圧を前記大気圧の参照値で除算することで実行される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮機の速度値を算出する前記第3ステップは、前記圧力比を入力値として用いて前記圧縮機の速度値を推定し、推定した前記圧縮機の速度値及び実際の大気圧から前記圧縮機の速度値を補正した値を算出することで実行される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ターボチャージャにおける圧縮機の速度をモデル化する方法であって、
大気圧を求める第1ステップと、
前記大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定し、下回っていれば、前記大気圧を前記予め設定された大気圧の参照値に固定する第2ステップと、
ブースト圧及び前記大気圧から圧力比を求める第3ステップと、
前記圧力比を入力値として用いて前記圧縮機の速度値を推定する第4ステップと、
推定した前記圧縮機の速度値と実際の大気圧とから前記圧縮機の速度値を補正した値を算出する第5ステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記圧縮機前後の温度差を求める第6ステップと、
前記圧縮機を通る質量流量を求める第7ステップと、
前記圧縮機の速度値を前記圧力比と前記圧縮機前後の温度差と前記質量流量との関数として算出する第8ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
【請求項14】
前記圧縮機の下流に回収された排気流が導入されているかを判定する第9ステップをさらに含み、
前記質量流量を求める前記第7ステップは、前記圧縮機を出た排気の質量流量を求め、該質量流量を、回収された排気流に対応した係数によって補正することで実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記圧縮機前後の温度差を求める前記第6ステップは、前記圧縮機の下流の温度を推定して、大気温度の測定値から前記圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで実行される請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記圧縮機の下流の温度を推定する第10ステップは、吸気口マニホルドの温度を測定し、該温度を、対応する冷却装置前後の温度損失に対応した係数を用いて補正することで実行される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータ上で実行されるときに請求項1〜16のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータプログラムを保持し、前記コンピュータプログラムが、コンピュータ上で実行されるときに請求項1〜16のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を有するコンピュータ読取可能媒体。
【請求項19】
ターボチャージャ(130)における圧縮機の速度をモデル化するための制御装置(200)であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法におけるステップを実行するように構成されている制御装置(200)。
【請求項20】
【請求項21】
さらに請求項2〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するように動作可能である請求項20に記載の制御装置(200)。
【請求項22】
【請求項23】
さらに請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法を実行するように動作可能である請求項22に記載の制御装置(200)。
【請求項24】
【請求項25】
請求項2〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された追加モジュール(216)をさらに含む請求項24に記載の制御装置。
【請求項26】
【請求項27】
請求項12〜16のいずれか1項に記載された方法を実行するように構成された追加モジュール(230)をさらに含む請求項26に記載の制御装置。
【請求項28】
請求項19〜27のいずれか1項に記載の制御装置(200)を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機速度をモデル化する方法に関し、特にターボチャージャにおける圧縮機速度をモデル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、トラック、バス、建築機械等の大型車両に適用可能である。本発明の説明ではトラックを用いるが、このような特定の車両に限定されるものではなく、航空システムや海洋システム等、ターボチャージャ装置を利用する他の用途にも適用可能である。
【0003】
ターボチャージャは車両コンポーネントであり、対応する内燃機関(代表的にはディーゼルエンジン)と共に用いられる。ターボチャージャは排気エネルギーの一部を回収して、この回収エネルギーを用いて内燃機関の燃焼室へ流入する吸気を圧縮するように構成されている。ターボチャージャは、通常、内燃機関の効率と出力を上げるために設けられている。
【0004】
ターボチャージャは、排気流のエネルギーを自らの回転運動に変換するタービン、吸気を圧縮するためにタービンに回転可能に接続された圧縮機、及び、タービン及び圧縮機を回転軸やベアリング等と共に収納したハウジングの3つの主要コンポーネントを有する。
【0005】
ターボチャージャの回転部品の損耗をモニタするためには、タービン或いは圧縮機の速度を求めることが望ましい。特に、圧縮機の損耗は、主に低サイクル疲労と高サイクル疲労とに分類され、低サイクル疲労は圧縮機速度の変動が比較的小さい場合に相当し、高サイクル疲労は圧縮機速度が比較的急激に(かつ大きく)変化する場合に相当する。疲労は結果として圧縮機の材料組織を実質的に変化させ、これにより圧縮機が突然破損してしまう可能性がある。多くの場合、このような破損の結果、ターボチャージャ全体が作動不能となり、車両の停止や、高コストなターボチャージャの修理又は交換が必要となる。
【0006】
圧縮機速度をモニタする様々な解決方法が提案されているが、とりわけ、物理的な速度センサを圧縮機に配置することが提案されている。しかしながら、直近では、物理センサを、圧縮機速度を推定するための圧縮機速度モデルに置き換える方法が提案されている。
【0007】
二段階式ターボチャージャの速度をモデル化する1つの方法が米国特許出願公開第2009/0314082号に記載されている。ここでは、各タービンの速度が別々にモデル化されタービン間の温度及び圧力並びに大気圧値を速度推定のための入力値として用いている。米国特許出願公開第2009/0314082号においては、必要な入力データを得るために多数の物理センサを必要としているが、速度モデル化方法によれば、この必要なセンサ数を減らすことができ好適であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術による問題を解決する、圧縮機速度をモデル化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、上記目的は請求項1に記載の方法によって達成される。第2の態様によれば、上記目的は請求項11に記載の方法によって達成される。第3の態様によれば、上記目的は請求項17に記載のコンピュータプログラムによって達成される。第4の態様によれば、上記目的は請求項18に記載のコンピュータ読取可能媒体によって達成される。第5の態様によれば、上記目的は請求項19に記載の制御装置によって達成される。第6の態様によれば、上記目的は請求項20に記載の制御装置によって達成される。第7の態様によれば、上記目的は請求項22に記載の制御装置によって達成される。第8の態様によれば、上記目的は請求項24に記載の制御装置によって達成される。第9の態様によれば、上記目的は請求項26に記載の制御装置によって達成される。第10の態様によれば、上記目的は請求項28に記載の車両によって達成される。
【0010】
圧縮機前後の温度差を求め、この温度差を圧縮機速度モデルの入力値として用いることで、圧縮機速度モデル用に入力データを提供する大気圧センサを設ける必要がなくなる。
【0011】
このため、ターボチャージャにおける圧縮機速度をモデル化する方法は、
i)圧縮機前後の温度差を求めるステップと、
ii)圧縮機を通る質量流量を求めるステップと、
iii)圧縮機速度値を圧縮機前後の温度差と質量流量との関数として算出するステップと、を含むものとして提供される。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
一実施形態では、上記方法は、回収された(recovered)排気流が圧縮機の下流に導入されているか判定するステップをさらに含む。さらに、質量流量を求めるステップは、圧縮機を出た排気の質量流量を求め、この質量流量を、回収された排気流に対応する係数によって補正することで実行される。回収された排気流によって生じる効果が加わることで、モデル化方法の精度が向上する。
【0016】
一実施形態では、圧縮機前後の温度差を求めるステップは、圧縮機の下流の温度を推定し、大気温度の測定値から圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで実行される。物理温度センサを圧縮機の近くに配置することは難しいので、圧縮機のすぐ下流の推定温度によって、結果的に、より正確な温度差が得られるであろう。
【0017】
一実施形態では、圧縮機の下流の温度を推定するステップは、吸気口マニホルドにおける温度を測定し、この温度を、対応する冷却装置前後の温度損失に対応した係数を用いて補正することで実行される。これにより圧縮機速度をモデル化する方法の精度がさらに向上する。
【0018】
一実施形態では、上記方法は、圧縮機前後の圧力比を求めるステップをさらに含む。さらに、圧縮機速度値を算出するステップは、圧縮機速度値を圧力比の関数として算出することで実行される。圧縮機前後の圧力比が圧縮機速度をモデル化する方法の入力値として含められることで、精度がさらに向上する。
【0019】
一実施形態では、圧縮機前後の圧力比を求めるステップは、大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定し、下回っていれば、大気圧を、予め設定された大気圧の参照値に固定し、大気圧の参照値でブースト圧を除算することで実行される。本実施形態によれば、高地環境も考慮される。このことは圧縮機速度をモデル化する際の精度を上げるのに非常に効果的である。さもなければ圧縮機速度を高く見積もる恐れがあるため、これにより、高地環境において不要なトルク減少及び低サイクル疲労の算出ミスを防ぐことが可能である。
【0020】
一実施形態では、圧縮機速度値を算出するステップは、圧力比を入力値として用いて圧縮機速度値を推定し、推定した圧縮機速度値及び実際の大気圧から圧縮機速度値を補正した値を算出することで実行される。これにより精度の高いモデル性能が得られることが分かっている。
【0021】
また、第2の態様によれば、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化する方法が提供される。上記方法は、
i)大気圧を求めるステップと、
ii)大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定して、下回っていれば、大気圧を、予め定められた大気圧の参照値に設定するステップと、
iii)ブースト圧及び大気圧から圧力比を求めるステップと、
iv)圧力比を入力値として用いて圧縮機速度値を推定するステップと、
v)推定した圧縮機速度値と実際の大気圧とから圧縮機速度値を補正した値を算出するステップと、を含む。
上記同様、このことは圧縮機速度をモデル化する際の精度を向上させるのに非常に効果的である。さもなければ圧縮機速度を高く見積もる恐れがあるため、これにより、高地環境において不要なトルク減少及び低サイクル疲労の算出ミスを防ぐことが可能である。
【0022】
一実施形態では、上記方法は、圧縮機前後の温度差を求めるステップと、圧縮機を通る質量流量を求めるステップと、圧力比、圧縮機前後の温度差、及び、質量流量の関数として圧縮機速度値を算出するステップと、をさらに含む。
【0023】
【0024】
一実施形態では、上記方法は、回収された排気流が圧縮機の下流に導入されているか判定するステップをさらに含み、上記の質量流量を求めるステップは、圧縮機を出た排気の質量流量を求め、この質量流量を、回収された排気流に対応する係数によって補正することで実行する。
【0025】
一実施形態では、圧縮機前後の温度差を求める上記ステップは、圧縮機の下流の温度を推定し、大気温度の測定値から圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで実行される。
【0026】
一実施形態では、圧縮機の下流の温度を推定する上記ステップは、吸気口マニホルドにおける温度を測定し、この温度を、対応する冷却装置前後の温度損失に対応した係数を用いて補正することで実行される。
【0027】
また、コンピュータプログラムが提供され、このコンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されるときに上記態様のいずれかに記載のステップを実行するプログラムコード手段を有する。
【0028】
また、コンピュータ読取可能媒体が提供され、このコンピュータ読取可能媒体はコンピュータプログラムを保持し、このコンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されるときに上記態様のいずれか1つのステップを実行するプログラムコード手段を有するコンピュータ読取可能媒体を提供する。
【0029】
また、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化するための制御装置を提供する。この制御装置は、上記の第1及び第2の態様に係る方法のステップを実行するように構成されている。
【0030】
また、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化するための制御装置を提供する。この制御装置は、プロセッサ及びメモリを有し、該メモリにはプロセッサにより実行可能な命令が含まれている。制御装置は、圧縮機前後の温度差を求め、圧縮機を通る質量流量を求め、圧縮機速度値を圧縮機前後の温度差と質量流量との関数として算出するように動作可能である。
【0031】
一実施形態では、上記制御装置はさらに、上記の第1又は第2の態様に係る方法を実行するように動作可能である。
【0032】
また、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化するための制御装置を提供する。この制御装置は、プロセッサ及びメモリを有し、該メモリにはプロセッサにより実行可能な命令が含まれている。制御装置は大気圧を求めて、この大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定し、下回っていれば、大気圧を、予め設定された大気圧の参照値に固定し、ブースト圧及び大気圧の参照値から圧力比を求め、この圧力比を入力値として用いて圧縮機速度値を推定し、推定した圧縮機速度値及び実際の大気圧力から圧縮機速度値を補正した値を算出するように動作可能である。
【0033】
一実施形態では、上記制御装置は上記第2の態様に係る方法を実行するようにさらに動作可能である。
【0034】
また、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化するための制御装置を提供する。この制御装置は、圧縮機前後の温度差を求めるように構成された第1モジュールと、圧縮機を通る質量流量を求めるように構成された第2モジュールと、圧縮機速度値を圧縮機前後の温度差と質量流量との関数として算出するように構成された第3モジュールと、を含む。
【0035】
一実施形態では、上記制御装置は上記第1の態様に係る方法を実行するように構成された追加モジュールをさらに含む。
【0036】
また、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化するための制御装置を提供する。この制御装置は、大気圧を求めるように構成された第1モジュールと、大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値より下回っているかを判定し、下回っていれば大気圧を予め設定された大気圧の参照値に固定するように構成された第2モジュールと、ブースト圧及び大気圧の参照値から圧力比を求めるように構成された第3モジュールと、圧力比を入力値として用いて圧縮機速度値を推定するように構成された第4モジュールと、推定した圧縮機速度値及び実際の大気圧から圧縮機速度値を補正した値を算出するように構成された第5モジュールと、を有する。
【0037】
一実施形態では、制御装置は上記第2の態様に係る方法を実行するように構成された追加モジュールをさらに有する。
【0038】
また、上記態様に係る制御装置を備えた車両を提供する。
【0039】
以下に添付図面を参照しつつ、本発明の一例としての実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】一実施形態に係る車両を示す側面図である。
図2】一実施形態に係る内燃機関を示す模式図である。
図3】一実施形態に係る制御装置を示す模式図である。
図4】一実施形態に係る制御装置を示す模式図である。
図5】一実施形態に係る車両のエンジントルクの関数としてエンジン回転速度を示した図である。
図6】異なる実施形態に係る方法を示した模式図である。
図7】異なる実施形態に係る方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
まず、図1に車両10を示す。トラックとして図示する車両10は、車両10を駆動するための内燃機関100を有している。以下においてさらに説明するように、車両10の内燃機関100はターボチャージャ装置130及び制御装置200を備えている。車両10は、ターボチャージャ装置130に作用する排気流を生じる少なくとも1つのエンジンを有する限り、電気駆動装置等の推進装置を追加で具備してもよい。したがって車両10はトラックに限定されるものではなく、バスや建設機械等の様々な車両であってよい。
【0042】
図2に内燃機関100の一例を示す。内燃機関100は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等、燃料を燃焼するように動作する複数のシリンダ104を備えたシリンダ部102を有し、これによりシリンダ104内を往復運動するピストンの動きをクランクシャフト110の回転運動へと変換する。クランクシャフト110は、駆動要素(図示省略)にトルクを与える変速機(図示省略)にさらに連結されている。トラック等の大型車両の場合、駆動要素は車輪であるが、建設機械や海洋での用途等、その他の機械に内燃機関100を用いることも可能である。
【0043】
内燃機関100はさらに排気システム120を有している。排気システム120は、排気流エネルギーの少なくとも一部を回収し、内燃機関100の性能を高める目的を果たすものである。図示の例では、排気はシリンダ104から出て排気マニホルド106に流入する。排気マニホルド106は、ターボチャージャ装置130の排気入口132にさらに接続されている。排気流によりタービンハウジング内に配置されたタービン134を回転させ、この回転が軸135を介して対応する圧縮機136の回転に変換される。圧縮機136は、圧縮機ハウジング内に配置され、シリンダ104に導かれる前の流入空気を圧縮するために用いられる。
【0044】
吸気口140を介して流入した空気は圧縮機136と相互に作用する。圧縮機136の下流で、すなわち、流入空気が圧縮された後に、この空気は空気導管142に沿って、シリンダ104に接続された吸気口マニホルド144へ案内される。給気冷却器等の冷却装置146を空気導管142に設けてもよい。
【0045】
排気を回収するために、排気流の一部を、空気導管142を介してシリンダ104に再循環させてもよい。このために、バイパス通路108の一端を、排気マニホルド106とターボチャージャ130の排気入口132との間における排気流路に接続してもよい。バイパス通路108の他端は、圧縮機136の下流のどこかで空気導管142に接続される。
【0046】
圧縮機136の速度をモデル化するために制御装置200も設けられている。制御装置200はプロセッサ202及びメモリ204を備え、メモリ204にはプロセッサ202によって実行可能な命令が含まれている。
【0047】
メモリ204は、限定するものではないが、EPROM(若しくはEEPROM)、SRAM(若しくはSDRAM)及びフラッシュメモリを含む公知のメモリ技術によって具現化可能であり、磁気ディスク又は光ディスク等の二次記憶装置を含んでもよい。物理的には、メモリ204は論理レベル上でメモリ204を共に構成する1つ若しくは複数のユニットから成る。幾つかの実施形態において、メモリ204は、制御装置200の別のコンポーネント内の記憶領域によって少なくとも部分的に具現化可能である。プロセッサ202は、制御装置200の演算を全て請け負っている。プロセッサ202は、例えば、所望の機能を実行可能なPLC、CPU及び/またはDSPによって具現化可能である。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
このため、制御装置200は回収された排気流が圧縮機の下流に導入されているか判定するように構成された更なるモジュールを有してもよい。したがって、質量流量を求めるためのモジュール212は、圧縮機から出た排気の質量流量を求め、この質量流量を、回収された排気流に対応する係数によって補正するように構成してもよい。
【0062】
幾つかの実施形態において、モジュール210は、圧縮機の下流の温度を推定し、大気温度の測定値から圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで、圧縮機前後の温度差を求めるように構成されてもよい。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
この態様は図3に示す温度差を用いた第1の態様と好適に組み合わせることができる。このように組み合わせることで、圧縮機速度のモデルを改良できる。一方で、この態様は、大気圧を入力値として用いる他の圧縮機速度のモデルと組み合わせることも可能である。
【0071】
図5を参照してモデルの校正について説明する。この校正方法は、上記の式によって示唆されるように、直接実行されてもよい。適当なテストサイクルが好適に設けられ、このテストサイクルは参照して校正するために用いられる。このため、サイクル中の繰り返し状態によって意図せず校正値を一方へ偏らせてしまう反復サイクルを設けないことが好ましい。したがって、モデルの校正方法としては、図5に示す図に基づいてエンジン回転速度やトルクを変化させたランダムなテストサイクルを生成する。テストサイクルが通常の駆動サイクルを表すものであるとより好適である。エンジン回転速度及びトルクの組み合わせが、エンジン回転速度に対して最大トルクとなる関係を満たすものであると好適である。そして、推定器によって与えられる値を用いることで、ターボチャージャの回転部品をモニタし、これらの部品の現在の「損耗」状態を含む情報バンクを生成して、車両の自己診断に利用することができる。
【0072】
圧縮機速度モデルの多項式を校正する案が図5に示されている。エンジン回転速度及びトルクのメッシュが形成され、ここではモデル校正のために偏りのない広範なデータが得られるように、任意の点間にランダムウォークを適用している。
【0073】
図6には、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化する方法300が模式的に示されている。この方法は、圧縮機前後の温度差を求める第1ステップ302と、圧縮機を通る質量流量を求める第2ステップ304と、を含む。ステップ306がその後実行され、圧縮機速度値を圧縮機前後の温度差と質量流量との関数として算出する。最終ステップ308が実行され、制御装置200に関して上述した内容に合わせて、モデル化された圧縮機速度値が装置に送信される。上記方法は上述したような追加のステップを行うことができる。
【0074】
図7には、ターボチャージャの圧縮機速度をモデル化するための別の方法400が模式的に示されている。方法400は、大気圧を求める第1ステップ402と、この大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定する第2ステップ404と、を含む。下回っていれば、方法400は、大気圧を、予め設定された大気圧の参照値に固定する。第3ステップ406では、ブースト圧及び大気圧から圧力比を求める。ステップ408では、圧力比を入力値として用いて圧縮機速度値を推定する。ステップ410では、推定した圧縮機速度値と実際の大気圧とから圧縮機速度値を補正した値を算出する。追加のステップを実行してもよく、例えば、制御装置200に関して上述した内容に合わせて、モデル化された速度値を装置に送信してもよい。上記方法において、上述したような追加のステップを行ってもよい。
【0075】
特に単純性及び精度の観点から圧縮機速度モデルを向上させるために、図6及び図7に示す方法300,400を好適に組み合わせてもよい。
【0076】
本発明は、上述及び図示した実施形態に限定されるものでなく、むしろ、当業者であれば特許請求の範囲内において様々な変更や修正が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2018年3月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
回収された排気流が前記圧縮機の下流に導入されているか判定する第4ステップをさらに含み、
前記質量流量を求める前記第2ステップは、前記圧縮機を出た排気の質量流量を求め、該質量流量を、回収された排気流に対応する係数によって補正することで実行されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記圧縮機前後の温度差を求める前記第1ステップは、前記圧縮機の下流の温度を推定し、大気温度の測定値から前記圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで実行される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧縮機の下流の温度を推定する第5ステップは、吸気口マニホルドにおける温度を測定し、該温度を、対応する冷却装置前後の温度損失に対応した係数を用いて補正することで実行される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮機前後の圧力比を求める第6ステップをさらに含み、
前記圧縮機速度値を算出する前記第3ステップは、前記圧縮機の速度値を前記圧力比の関数として算出することで実行されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮機前後の圧力比を求める前記第6ステップは、大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定し、下回っていれば、大気圧を前記予め設定された大気圧の参照値に固定して、ブースト圧を前記大気圧の参照値で除算することで実行される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮機の速度値を算出する前記第3ステップは、前記圧力比を入力値として用いて前記圧縮機の速度値を推定し、推定した前記圧縮機の速度値及び実際の大気圧から前記圧縮機の速度値の補正値を算出することで実行される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ターボチャージャにおける圧縮機の速度をモデル化する方法であって、
大気圧を求める第1ステップと、
前記大気圧が、高地環境に対応して予め設定された大気圧の参照値を下回っているかを判定し、下回っていれば、前記大気圧を前記予め設定された大気圧の参照値に固定する第2ステップと、
ブースト圧及び前記大気圧から圧力比を求める第3ステップと、
前記圧力比を入力値として用いて前記圧縮機の速度値を推定する第4ステップと、
推定した前記圧縮機の速度値と実際の大気圧とから前記圧縮機の速度値の補正値を算出する第5ステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記圧縮機前後の温度差を求める第6ステップと、
前記圧縮機を通る質量流量を求める第7ステップと、
前記圧縮機の速度値を前記圧力比と圧縮機前後の温度差と前記質量流量との関数として算出する第8ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
【請求項13】
前記圧縮機の下流に回収された排気流が導入されているかを判定する第9ステップをさらに含み、
前記質量流量を求める前記第7ステップは、前記圧縮機を出た排気の質量流量を求め、該質量流量を、回収された排気流に対応した係数によって補正することで実行されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮機前後の温度差を判定する前記第6ステップは、前記圧縮機の下流の温度を推定して、大気温度の測定値から前記圧縮機の下流の温度の推定値を減算することで実行される請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記圧縮機の下流の温度を推定する第10ステップは、吸気口マニホルドの温度を測定し、該温度を、対応する冷却装置前後の温度損失に対応した係数を用いて補正することで実行される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ上で実行されるときに請求項1〜15のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項17】
コンピュータプログラムを保持し、前記コンピュータプログラムが、コンピュータ上で実行されるときに請求項1〜15のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を有するコンピュータ読取可能媒体。
【請求項18】
ターボチャージャ(130)における圧縮機の速度をモデル化するための制御装置(200)であって、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法におけるステップを実行するように構成されている制御装置(200)。
【請求項19】
請求項18に記載の制御装置(200)を備えた車両。
【国際調査報告】