特表2018-519063(P2018-519063A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-519063(P2018-519063A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(54)【発明の名称】設定変更可能な患者用スリング
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20180622BHJP
   A61G 7/10 20060101ALI20180622BHJP
【FI】
   A61G5/14 702
   A61G7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-567112(P2017-567112)
(86)(22)【出願日】2016年6月29日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月20日
(86)【国際出願番号】EP2016065221
(87)【国際公開番号】WO2017001528
(87)【国際公開日】20170105
(31)【優先権主張番号】15174444.8
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517307876
【氏名又は名称】アルジョハントレイ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】ArjoHuntleigh AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ファルク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グラム,ロッタ
(72)【発明者】
【氏名】ルービン,マリエ
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA06
4C040AA08
4C040GG14
4C040HH02
(57)【要約】
患者スリング(10)は、背部支持部(12)および患者の臀部支持部(14)を有するプラスチックシートまたは成形プラスチックまたは繊維材料(16)で形成されている。2つのストラップ(30、32)が背部支持部(12)の各側部フランジ(18、20)に連結され、2つのストラップ(36、38)が各側部フランジ(22、24)および臀部支持部(14)に連結され、ストラップ(30、32)に連結されている。ストラップ(36、38)は、臀部支持部(14)の構成を調整するため、その長さが調整可能であり、上部ストラップ(30、32)から取り外すこともできる。臀部支持部(14)は、患者の身体機能を働かせるのを支援する切り欠き部(44)を具えており、さらに折り畳み線(52、54、56)により、臀部支持部(14)を部分的に折り畳むか、または完全に折り畳むことができ、背部支持部(12)が保持または支持されたままで患者の着衣や脱衣を支援する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者支持スリングにおいて、
背部支持部と、
前記背部支持部に連結された臀部支持部と、
前記背部支持部に連結された第1および第2の背部支持ストラップと、
前記臀部支持部に連結された第3および第4のストラップと、を具え、
前記第3および第4のストラップが、前記第1および第2のストラップに調節可能に連結され、前記臀部支持部が、前記背部支持部に対して折り畳み可能である、
ことを特徴とする患者支持スリング。
【請求項2】
請求項1に記載の患者支持スリングにおいて、前記第3および第4のストラップが、長さ調節可能であることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項3】
請求項1または2に記載の患者支持スリングにおいて、前記第3および第4のストラップが、前記第1および第2のストラップから取外し可能であることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記臀部支持部が、少なくとも1つの折り畳み線を中心にして前記背部支持部に対して折り畳み可能であることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記臀部支持部が、複数の折り畳み線において前記背部支持部に対して折り畳み可能であることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項6】
請求項5に記載の患者支持スリングにおいて、前記臀部支持部が、少なくとも横方向の折り畳み線に沿って折り畳み可能であることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記臀部支持部が、横方向の折り畳み線に沿って折り畳み可能であって、前記臀部支持部を前記背部支持部に対して上方に折り畳めることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項8】
請求項4乃至7の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記折り畳み線が、前記背部支持部および前記臀部支持部の材料内の弱化線、または支持部間の可撓性連結要素であることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記背部支持部および/または前記臀部支持部が、その形状を保持する材料で形成されていることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記背部支持部および/または前記臀部支持部の材料が、プラスチックシート材料であるか、またはプラスチックシート材料を含むことを特徴とする患者支持スリング。
【請求項11】
請求項10に記載の患者支持スリングにおいて、前記背部支持部および/または臀部支持部は、プラスチックシート材料または成形プラスチックまたは繊維材料から形成されていることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項12】
請求項1乃至11に記載の患者支持スリングにおいて、前記背部支持部および前記臀部支持部が、共通の材料でできたシートから形成されていることを特徴とする患者支持スリング。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の患者支持スリングにおいて、前記背部支持部および前記臀部支持部が、互いに連結された別個の材料でできたシートから形成されていることを特徴とする患者支持スリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の起立支援、または持上げ支援に使用可能であり、特殊な能動的リフトまたはホイストである設定変更可能な患者用スリングに関し、患者が着座した状態から起立した状態への動き、その逆の動き、およびその間の別の位置への動きを支援するスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
患者用スリングは、病院や介護施設で広く使用されている。いくつかのスリングは、例えばリクライニング位置にあるとき、患者の全体重を支持するように設計されており、受動的なリフトまたはホイストとともに使用されているが、その他のスリングは、起立支援装置や持上げ支援装置などの能動的なリフトまたはホイストにより、着座位置であるいは起立位置においても患者を支持することができる。
【0003】
通常、スリングは、複数のストラップを有する材料でできた成型シートの形態であり、使用時に患者を完全に地面または支持面から持ち上げることのできる(すなわち、受動的リフト機構またはホイスト)、および/または多少動くことができる患者または自身の脚でいくらか体重を負担する必要のある能動的リフト機構またはホイストの助けを借りて着座または起立することのできる患者への安定的な支持を提供するリフト機構またはホイスト(すなわち、受動的なリフト機構またはホイスト)に取り付けられている。
【0004】
既知のスリングは全体としては良好に患者を支持するが、患者が身支度、洗浄、トイレなどの様々な作業のいずれかを実行しようとするときに、患者の動きを制限したり、または適切な支持を提供できないことがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、改善された患者支持スリングを提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様によれば、患者支持スリングが提供されており、これは、背部支持部と、背部支持部に連結された臀部支持部と、背部支持部に連結された第1および第2の背部支持ストラップと、臀部支持部に連結された第3および第4のストラップとを具えており、第3および第4のストラップは、第1および第2のストラップに調節可能に連結され、臀部支持部は、背部支持部に対して折り畳み可能である。
【0007】
好ましくは、第3および第4のストラップは、長さの調節が可能である。第3および第4のストラップは、第1および第2のストラップから取外し可能であってもよい。
【0008】
有利なことに、臀部支持部は、複数の折り畳み線で背部支持部に対して折り畳み可能である。臀部支持部は、好ましくは、少なくとも側部の折り畳み線に沿って折り畳み可能である。好ましい実施形態では、臀部支持部は、横方向に横断する折り畳み線に沿って折り畳み可能であり、背部支持部に対して臀部支持部の上方への折り畳みが可能である。好ましい実施形態では、臀部支持部は、患者の腰部に向かって完全に折り畳んだり、取り外すことができ、または臀部支持部の一方または他方の側部で折り畳むことができる。
【0009】
折り畳み線は、背部支持部および臀部支持部の材料内の弱化線、または支持部間の可撓性連結要素などであってもよい。
【0010】
好ましい実施形態では、背部支持部および臀部支持部は、共通の材料でできたシートから形成され、他の実施形態では、互いに連結された別々の材料でできたシートから形成することができる。
【0011】
背部支持部および/または臀部支持部は、その形状を保持する材料で形成することができる。この材料は、プラスチックシートまたは成形プラスチックまたは繊維材料である。
【0012】
その他の特徴および利点は、以下の説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の実施形態を、添付の図面を参照し、単に例示として以下に説明する。
図1図1は、患者を着座位置にて支持している一実施例のスリングの一方の側部から見た斜視図である。
図2図2は、図1に示すスリングおよび患者の後方斜視図である。
図3図3は、スリング内に患者のない図1におけるスリングの前方斜視図である。
図4図4は、図3のスリングの側面斜視図である。
図5図5は、図3のスリングの側面斜視図であり、スリングの背部支持部および後方支持部間の折り畳み線を示している。
図6図6は、横方向に横断する折り畳み線に沿って折り畳んだ状態にある本明細書に教示したスリングの側面斜視図である。
図7図7は、折り畳まれた状態にある本明細書に教示したスリングの後方斜視図であり、臀部支持部が一方の側に沿って折り畳まれている。
図8図8は、本開示のスリングの側面斜視図であり、別の折り畳み線の構成によるスリングの背部支持部と後方支持部間の折り畳み線を示す。
図9図9は、本開示のスリングの側面斜視図であり、別の折り畳み線の構成によるスリングの背部支持部と後方支持部間の折り畳み線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これらの図は、起立状態にあるときに加えて、着座状態にあるときに患者を支持するよう設計された患者支持スリングの実施形態を概略的な形態で示している。さらにスリングの典型的な使用は、脚を多少使用できる患者の支援に用いるなど、起立および持上げ支援を伴うが、必要であれば患者を地面から持ち上げることもできる。
【0015】
図1乃至図4を参照すると、スリング10は、背部支持部12と臀部支持部14とを具えており、この実施形態においては、これらが単一の材料でできたシート16から形成されている。背部支持部12と臀部支持部14とを形成している材料16は、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)のような一般的に可撓性または剛性のプラスチック材料、またはシリコン、ポリウレタン(PUR)などの軟質材料、または熱可塑性エラストマ(TPE)などを含む任意の適当な材料である。シート材料16は、背部支持部12および臀部支持部14全体にわたって均一な厚さであるが、別の実施形態においては、シート材料が異なる厚さを有してもよい。例えば、スリング10の中央部26周りは、背部支持部12および臀部支持部14の側部フランジ18、20、22、および24よりも厚く、より固くしてもよい。別の実施例では、スリングの材料が、中央部26に加え、側部フランジ18および20で固くするようにしている。本開示のいくつかの実施形態によれば、この材料は、少なくとも重力に対してその形状を保持するときに剛性であると解釈される。他の実施形態においては、中央部26が、サイドフランジ18−24より薄い材料でできている。当業者であれば、異なる厚さの部分を有することにより、シート材料16の可撓性が変化し、その結果スリング10が、患者をスリングに支持したときに患者50の形状に適合する能力を得ることは理解するであろう。
【0016】
本開示の一実施形態では、背部支持部12は、人間の腰椎と同様のS字曲線を有するよう構成されている。本開示のその他の実施形態における背部支持部12は、湾曲を予め形成しない構成となっており、患者の背中の湾曲に適合するのに十分な柔軟性を有する。背部支持部12に係るこれらの実施形態のいずれにおいても、背部支持部12は、平均サイズの成人男性患者(または平均サイズの成人女性患者)の坐骨領域(例えば、坐骨結節)から、このような平均サイズの成人男性患者(または平均サイズの成人女性患者)の下部胸椎までにわたる寸法とすることができる。
【0017】
本体部12の側部18、20は、この実施形態において、後部12がほぼ垂直な向きにあるとき、ほぼ水平に延在するストラップ30、32まで延在している。これらのストラップは、好ましくは適合可能な材料で作られており、例えば、ナイロン、ポリエステル軟質PPまたはPUR、TPEなどの網目状のポリマ材料であってもよい。ストラップ30、32の先端部34には、通常、ストラップを従来の形態のリフトホイストに取り付ける連結要素が設けられている。適切な連結要素は、当該技術分野において周知であり、したがって、ここでは詳細に説明しない。起立支援および持上げ支援装置として構成されているリフトホイストの非限定的な例の1つは、Arjohuntleigh社によって製造された起立および持上げ支援装置Sara(登録商標)であり、起立および持上げ支援装置Sara(登録商標)3000または起立および持上げ支援装置Sara(登録商標)Liteなどがある。これにスリング10を連結して起立位置と着座位置との間で患者を持ち上げたり、降ろしたりする。
【0018】
追加のストラップ36、38が、臀部支持部14の側部フランジ22、24から延在しており、これらのストラップは同様に、ナイロン、ポリエステル軟質PPまたはPUR、TPEウェビングのような可撓性材料で作ることができる。図1から図4にて明らかなように、ストラップ36、38は、それぞれ背部支持ストラップ30、32まで延在しており、好ましい実施形態では、例えば、図1から図3に概略的に示すように、適切なバックルまたはその他の留め具15により、ストラップ30、32に調節可能に連結されている。これは、すべての実施形態に存在しており、これによって以下に記載する目的のため、ストラップ36、38が各ストラップ30、32に近づくように引っ張られる、またはそこから離れるように引っ張られる。バックルまたは他の締結具15により、例えば摩擦または歯のかみ合わせ機構により、または従来の調節可能なバックルまたはストラップ36、38上のピンと間隔を空けたアイレットにより、ストラップ36、38の動作可能な長さを変えて固定することが可能である。
【0019】
ストラップ30、32に調節可能に連結されたストラップ36、38の1つの目的は、ストラップ30、32が主耐荷重ストラップであるが、第2ストラップ36、38が側部フランジ22、24の臀部部分を引き上げることである。この側部フランジ22、24は、スリング10を装着している患者の大臀筋を受けるような寸法であり、そのように構成されている。したがって、側部フランジ22、24は、臀部側フランジと称することができる。臀部側フランジ22、24が患者の各側の大臀筋を受ける能力により、スリング10の適切な配置が容易になり、使用中にスリングが患者の背中を滑り落ちないようにする。さらに、ストラップ36、38を介してストラップ30、32を適切に調整および連結すると、側部フランジ22、24のこの構成により、患者の移動が容易になり、患者の起立または持上げ支援装置の使用時に、着座から起立への動きをスリングによって支援する間に、スリング10が患者の後部(すなわち尻または臀部)の下を支持するため、着座位置から起立位置へと上に上がるおよび前に進むにあたり、側部フランジがスリング10を追従する。
【0020】
特に図1および図2に見られるように、背部支持部12および臀部支持部14は、側部の切り欠きまたは凹部40、42により垂直方向に互いに離間した側部フランジ18−24をそれぞれ有する。これにより、ストラップ36、38がストラップ30、32に対して垂直に離間してストラップ30、32と交差する角度で延在するだけでなく、臀部支持部14が背もたれ部分12に対して内側かつ上側に引っ張られて、実際には患者の臀部または尻(すなわち大臀筋)周りで湾曲するため、上述したように患者を支持し、患者が滑るのを防止することができる。したがって、臀部支持部14は、臀部支持部14が湾曲しているため、患者の尻または臀部の下に、必要であれば、着座位置において患者の全体重を支える十分な角度に配置される、または臀部側フランジ22、24上の第2のストラップ36、38をそれぞれ引っ張ることにより、患者の臀部の周りで湾曲するのに十分に柔軟である。
【0021】
臀部支持部14はまた、その下側面に中央切り欠き部44を具えており、これにより、例えばトイレにおいても患者をスリング10に支持し続けることができる。言い換えれば、中央切り欠き部44は、患者の尾骨に対して押し付けられないような寸法であり、それにより、尾骨の上に褥瘡性潰瘍が発生する危険性が減り、便および/または尿の排泄経路を提供して、患者はスリング10を身につけたまま排便および/または排尿することができる。したがって、この中央切り欠き部44は、従来のスリングに欠けている機能をスリング10に提供している。すなわち、スリング10は、適切な能動的ホイストまたはリフトを用いて、トイレでの起立位置と着座位置との間で患者を下降させ上昇させる支援を提供するのに使用でき、患者は排便および/または排尿する前に、実質的な汚れを避けるためにスリング10を取外す必要がない。
【0022】
ここで図5を参照すると、背部支持部12と臀部支持部14との間の接合部の構造をさらに詳細に示している。より具体的には、この実施形態では、背部支持部12および臀部支持部14を形成しているシート材料16内に3つの折り畳み線52、54および56が設けられている。この実施形態において折り畳み線52は、2つの側部の凹部40、42の間にほぼ水平に延在しており、横方向の折り畳み線として特徴付けられる。この開示の一実施形態では、折り畳み線52は、凹部40、42間の最も狭い距離を横切るように、一方の凹部40の頂点から他方の凹部42の頂点まで延在している。この折り畳み線52により、図6に示すように、臀部支持部14を背部支持部12に対して上方に折り畳むことができ、これによって、この折り畳まれた位置において身体の腰の下がスリング10から自由になるため、スリングを着用している患者の身支度および/または洗浄が容易になる。
【0023】
折り畳み線54、56は、臀部支持部14のそれぞれの側部に位置し、例えば、水平に対して30°程度の角度で延在する。一実施形態では、折り畳み線52、54および56は、三角形に構成され、各折り目は、スリング10の外部の空間における他の2つの折り畳み線と交差するように延在する無限線上に配置されたセグメントを表す。例えば、折り畳み線52は、右側側部の凹部42に延在し、右側折り目56と同一直線上の仮想線と交差して、無限水平線のセグメントを構成する。折り畳み線52と同一直線上にある無限水平線は、左側凹部42内の位置で左側折り畳み線54と同一直線上にある仮想線と交差する。折り畳み線54および56と同一直線上にある仮想線は、中央切り欠き部44内で交差する。したがって、本開示の一実施形態によれば、折り畳み線52、54および56の幾何学的構造の配置は仮想三角形であり、各折り畳み線は、仮想三角形の側部の1つの上に配置され、他の2つの折り畳み線に対して交差しない。本開示の一実施形態において、折り畳み線52、54および56の三角形構造は、二等辺三角形であり、それゆえ、折り畳み線52、54および56自体は交差しないが、それらの仮想上の共線は交差する。別の実施形態では、折り畳み線52、54および56は、これらの仮想線が交差して三角形を形成しないようにオフセットされている。
【0024】
図5は直線の折り畳み線52、54、56を示しているが、これらの折り畳み線は、図8に示すように、ルーロー三角形または1つ、2つまたは3つの凸面辺を有する二等辺三角形の辺に沿って配置されるように湾曲するか、または反ユークリッドの辺、反対方向に曲がった三角形、または図9に示すような1つ、2つまたは3つの凹面辺を有する二等辺三角形の辺に沿って配置されるよう湾曲していてもよい。
【0025】
折り畳み線54、56は、通常、各ストラップ36、38の長さを変更することにより、または各ストラップ36、38をそれらと関連するストラップ30、32から完全に取り外すことにより、臀部支持部14の2つの側部が互いに個別に持ち上げられることが可能である。以下に説明するように、これにより、耐荷重ストラップ30、32を介して患者を直立姿勢で支持し続けながら、患者が着衣または脱衣するのを支援できる。本開示のいくつかの実施形態では、折り畳み線52、54、56を完全になくしてもよく、あるいは1またはそれ以上の折り畳み線52、54、56のみを設けるようにしてもよい。例えば、本開示の一実施形態では、折り畳み線52のみが提供されている。本開示の別の実施形態では、折り畳み線54と56のみが設けられている。
【0026】
折り畳み線52、54、56は、シートレスト部12、14の背部を形成するシート材料16内に弱化線として設けることができる。このような弱化線は、シート材料16を折り畳み線に沿って薄くするか、またはこの折り畳み線に沿ってシート材料16に穿孔を設けるか、または優先的に曲がることを可能にする線に沿って他の変則性を提供することにより形成することができる。本開示の一実施形態では、折り畳み線52、54、56は、シート材料16に恒久的な脆弱性を生じさせるのに事実上十分な材料に形成した折り目を構成している。他の実施形態では、折り畳み線52、54、56は、支持部分12、14に固定された別個のヒンジ要素であってもよく、この目的ため、繊維またはプラスチックのヒンジであってもよい。後者の実施形態においては、背部支持部12および臀部支持部14は、折り畳み線52−56のヒンジによって互いに連結されたシート材料でできた個別要素であってもよい。
【0027】
折り畳み線52、54、56によって、シートレスト部14が上方に折り畳まれて患者の臀部から離すことができる。これは、一例では、図5に示すように、折り畳み線52を中心に、セクション60を背もたれ部分12の後面に当接または密接するまで、後方および上方に折り曲げることにより達成できる。シートレスト部14の側部フランジ22、24は、側面の折り畳み線54、56によって図5に示されているのと実質的に同じ向きを保持するように、別の方法で折り畳むことができる。この構成は図6に見ることができ、ここでは、右臀部側フランジ24が側面の折り畳み線56を中心に折り畳まれ、左臀部側フランジ22は折り畳まれていない状態のままになっている。当然ながら、右臀部側フランジ24を折り畳まない状態のまま左臀部側フランジ22を側面の折り畳み線54を中心に折り畳むことができ、右臀部側フランジ24および左臀部側フランジ22の両方をそれぞれの側面の折り畳み線56および54を中心に折り畳むことが可能である。これらの実施形態では、セクション60は横方向に横断する折り畳み線52に対して折り畳まれていない状態になっている。
【0028】
図6から明らかなように、このように折り畳まれたとき、患者の下半身(例えば、腰の下の身体部分)にはスリング10がないため、患者50は、スリング10の上部(すなわち、背部支持部12)に支持されたまま、患者の下半身に着衣または脱衣することができる。この上部は、上側フランジ18および20と、横方向に横断する折り目52の上にある中央部26のその部分と、関連するストラップ30、32とを具える。スリング10の下部(すなわち、臀部支持部14)は、臀部側フランジ22、24と、横方向に横断する折り目52の下にある中央部26の部分と、セクション60と、関連するストラップ34、36とを具える。
【0029】
臀部支持部14のサイドフラップ22、24は、必要であれば互いに独立して取り外すことができる。一例が図7に示されており、右側ストラップ36が、関連する折り畳み線56を中心にその部分を折り畳むことによって持ち上げられている。この構成では、患者はスリングの左手側に支持され、すなわち左手ストラップ32および34によって支持されたまま、例えば着衣などのために患者の右手側にアクセスを提供する。
【0030】
サイドフラップ22、24を再び下げて、サイドフラップ22、24が患者の大臀筋に対して定位置に配置されて、ストラップ32および30にそれぞれ固定したストラップ34および36を使用してバックルなどの締結具15を介して適所に調整されたとき、患者への完全な支持を提供することができる。
【0031】
要約すると、好ましい実施形態は、Xの形状として説明され得るものに形成された本体12、14を有しており、ここでは、ストラップ30、32がXの上部である。これらの上部ストラップ30、32は、リフトホイストに取付けられており、Xの下部ストラップ36、38は、スリング10の臀部支持部14が所望の構成に達するまで引っ張ることができる調節可能なプラスチッククリップまたはバックル15を介して上部ストラップ30、32に取り付けられている。スリング10は、Xの中央に上側に位置する背もたれ12を有する。これにより、身体全体が移動中に、患者の背部が確実に十分に支持される。
【0032】
本明細書に開示されたスリングの実施形態は、患者の起立および持上げに通常使用される能動的スリングとして機能する。本明細書に開示されたスリングの実施形態と他の形態のスリングとを比較すると、その相違点は、スリングの形態及び機能にある。スリングの背部支持部12の背部26および側部パネル22、24は、ストラップ30、32およびそれらの端末カプリング34により、ホイストの主要取付け点に取り付けられており、スリング10のこの部分は、それ自身で動作可能になっている。しかしながら、スリング10は、臀部支持部14をストラップ36、38によって上部ストラップ30、32に取り付ける際に、臀部支持部14が、患者50の臀部の下を通るように背部支持部12に取り付けた臀部支持部14と共に用いることで完全に使用することができる。本開示の一実施形態によれば、スリング10は、患者が1またはそれ以上の脚を介して第3の安定用の荷重支持を提供することが必要である患者に2つの点荷重支持を提供するように構成されている。この1またはそれ以上の脚は、起立および持上げ支援(すなわち、能動的なリフト機構)の床または直立用プラットフォームのような支持面上に配置されている。
【0033】
スリング10の形状によって、患者の後部(すなわち大臀筋)の下で支持することができるため、安全であるばかりでなく、より快適な起立および持上げ運動を伴う多機能な配置を提供する。さらに、スリング10は、患者が衣服を脱ぐ間に、スリングの少なくとも1つの側部上(右側か左側)で同時に荷重支持を提供するような構成にすることが可能であり、さらにその下側部分は、折り畳み可能であり患者と係合しないような荷重支持とすることができ、一方、上側部分は、患者と係合したままであり、患者の腰より下の下半身の洗浄および/または着付けを容易にする。
【0034】
スリング10は、患者50の後部の下にフィットする形状の臀部支持部14を有し、それで大臀筋を受ける、または保持し、調節可能なバックル15またはその他の締結部を具える下側ストラップ36、38により、スリング10の上側取付けストラップ30、32に取り付けられる。ストラップ36、38を引っ張ることで、折り畳み線52、54および56を患者に向かってある程度折り畳むことができ、それにより、セクション60および臀部側の部分22、24が折り畳み線の周りで屈曲し、患者の大臀筋および臀部に適合する。下側ストラップ取付け部は、緩めたり取り外したりすることが可能である。このモードでは、ストラップ36、38を緩めたり取り外したりして、スリング10の臀部支持部14を折り畳んで、患者のズボンにアクセスして容易に脱がすことができる。臀部支持部14は、スリング10の一方の側で緩めたり/取り外すことができ、次いで、図7に示すように患者50の片側で一度折り畳まれるか、または図6に示すように、両側で緩めたり/取り外したりした後、患者50の下側腰部に沿って完全に折り畳むことができる。
【0035】
スリング10の主要部12、14は、プラスチックシートまたは成形プラスチックから作ることができる。この部分には、ストラップから患者にとって快適な柔らかいパッド材まで、あらゆる物を取り付けることができる。
【0036】
別の実施形態では、スリングは、記載の他の特徴に加えて、布材、有利には織物中にプラスチックインサートがある材料でつくることができる。
【0037】
スリング10の形状および3つの場所にて折り畳む能力により、スリング10を患者のいずれかの側から、または患者の背後から使用することも可能である。本開示の一実施形態では、スリング10の下側臀部支持部14は、プラスチッククリップまたは調節可能なバンドのいずれかを用いて背部支持部12に取り付けることができ、これは着脱可能および/または調節可能である。
【0038】
図6の構成のように、患者50が起立し、スリング10が折り畳まれており、患者のズボンが引き下げられると、スリング10を図3の構成のように、再び取り付けて、患者50をトイレの上に降ろすことができる。スリング10における臀部支持部14の開口部またはギャップ44により、中央切り欠き部44によって提供される開口部が、便または尿が遮られることなく落下する障害物のない通路を提供するので、トイレを使用する際に患者50はスリングを着用することができる。スリング10に着座するとき、開口部44はトイレの真上に配置される。したがって、患者50がトイレにいるときにスリング10を取外す必要はない。
【0039】
さらにスリング10により、患者は衣服の着脱中に、少なくとも片側で患者50の後部または臀部の下で患者を同時に支持することを可能とする。スリング10の臀部支持部14の側部にある調節可能な臀部側フラップ22、24により、スリング10による衣類への良好なアクセスおよび患者50の洗浄が可能となる。
【0040】
スリング10により、患者50の背部と臀部の両方(すなわち、大臀筋および臀部)を支持することができ、より快適な移送と起立位置ができる。本開示の一実施形態によれば、スリング10は、部分的な重量支持をするためにのみに構成され、患者の体重全体を完全に運ぶ受動ホイストまたはリフトは用いずに、起立および持上げ支援に使用するのに適している。言い換えれば、本開示の特定の実施形態によれば、スリング10は、脚部で相当量の体重(すなわち、支持部を用いて起立するのに十分な体重)を支えることのできる患者に用いられる部分的な荷重支持スリングとして構成され、したがって、スリング10に取り付けられた能動的なリフトを使用して、着座位置と起立位置との間で支援することができる。
【0041】
スリングが、プラスチックシートまたは成形プラスチックまたは繊維材料でできている場合、標準的なファブリックスリングに比べて洗浄が非常に容易であり、使用直後にスタッフが現場ですぐに洗浄できる。
【0042】
有利には、スリング10は、座っている患者の臀部(すなわち、大臀筋および臀部)への配置を容易にするのに十分な剛性があるプラスチックシートまたは成形プラスチックで作られている。
【0043】
記載された実施形態および従属請求項のすべての任意選択的な、および好ましい特徴および変更は、本明細書で教示される本発明のすべての態様において使用可能である。さらに、従属請求項の個々の特徴、ならびに記載された実施形態のすべての任意選択的なおよび好ましい特徴および変更は、互いに組み合わせることが可能であり、相互交換可能である。
【0044】
この出願に伴う要約の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】