(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-519670(P2018-519670A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(54)【発明の名称】リフローはんだ付け可能な正温度係数電気回路保護部品
(51)【国際特許分類】
H01C 7/02 20060101AFI20180622BHJP
【FI】
H01C7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-568438(P2017-568438)
(86)(22)【出願日】2016年6月30日
(85)【翻訳文提出日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】CN2016087865
(87)【国際公開番号】WO2017000897
(87)【国際公開日】20170105
(31)【優先権主張番号】201520458963.6
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】518000372
【氏名又は名称】リテルヒューズ・エレクトロニクス・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514037697
【氏名又は名称】リテルヒューズ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】フー、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、チュアンロン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ジァンファ
(72)【発明者】
【氏名】フー、インソン
(72)【発明者】
【氏名】ブー、ジァンミン
【テーマコード(参考)】
5E034
【Fターム(参考)】
5E034AA07
5E034AB07
5E034AC10
5E034DA02
5E034DB20
5E034DC02
5E034DC04
(57)【要約】
第一チップ結合部(101)、第一電気回路結合部(105)、およびそれらの間の連結部(103)で構成され、ここで前記第一チップ結合部(101)が第一平面輪郭を有する、導電性のシート状上端子(1)と;第二チップ結合部(201)が含まれ、ここで前記第二チップ結合部が第二平面輪郭を有する、導電性のシート状下端子(2)と;前記シート状上端子(1)とシート状下端子(2)との間に挟まれ、および、はんだにより、前記第一チップ結合部(101)の下側表面および前記第二チップ結合部(201)の上側表面とそれぞれ結合しており、第三平面輪郭を有する、正温度系数チップであって、前記第一平面輪郭および第二平面輪郭は、前記第三平面輪郭の内側にあり、また、前記第三平面輪郭は、前記第一輪郭および/または第二輪郭に被覆されていない部分を有し、これにより、前記正温度系数チップが、自由な熱膨張空間を有する、正温度系数チップと;を具備する、リフローはんだ付け可能な正温度係数電気回路保護部品を開示する。この部品を用いることにより、保護状態にある時、高温熱膨張により部品を損傷させる可能性のある応力を減少させることができる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、正温度係数電気回路保護部品:
第一チップ結合部、第一電気回路結合部、およびそれらの間の連結部で構成され、ここで前記第一チップ結合部が第一平面輪郭を有する、導電性のシート状上端子;
第二チップ結合部が含まれ、ここで前記第二チップ結合部が第二平面輪郭を有する、導電性のシート状下端子;
前記シート状上端子とシート状下端子との間に挟まれ、および、はんだにより、前記第一チップ結合部の下側表面および前記第二チップ結合部の上側表面とそれぞれ結合しており、第三平面輪郭を有する、正温度系数チップ、
ここで:
前記第一平面輪郭および第二平面輪郭は、前記第三平面輪郭の内側にあり、また、前記第三平面輪郭は、前記第一輪郭および/または第二輪郭に被覆されていない部分を有し、これにより、前記正温度系数チップが、自由な熱膨張空間を有する。
【請求項2】
前記第三平面輪郭の前記第一輪郭に被覆されていない部分の面積が、少なくとも第三平面輪郭の面積の20%であり、
および/または、
前記第三平面輪郭の前記第二輪郭に被覆されていない部分の面積が、少なくとも第三平面輪郭の面積の20%である、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項3】
前記第三平面輪郭の前記第一輪郭に被覆されていない部分および前記第二輪郭に被覆されていない部分がずれている、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項4】
前記第一平面輪郭および第三平面輪郭の端部間が漏出防止間隙を有し、および/または、前記第二平面輪郭および第三平面輪郭の端部間が漏出防止間隙を有する、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項5】
前記第一チップ結合部および/または第二チップ結合部が、貫通孔を有する、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項6】
第一チップ結合部が、複数の貫通孔を有する、請求項5に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項7】
前記連結部の両側端部が切り欠きを有する、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項8】
前記連結部が湾曲しており、前記第一電気回路結合部の下側表面および前記第二電気回路結合部の下側表面は、基本的に同一平面上にある、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【請求項9】
前記シート状下端子が、前記第二チップ結合部から外側に延びた電気回路結合部をさらに含む、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品に関する。特に、リフローはんだ付け可能な正温度係数電気回路保護部品に関する。
【背景技術】
【0002】
正温度系数(Positive Temperature Coefficient、 PTC)チップは、電気回路保護に広く利用される。PTCチップは、正常な作業状態では、電気抵抗が低い。一旦、電気回路に過剰な電流が流れると、PTCチップは発熱し、温度が上昇する。一定温度を超えると、チップの電気抵抗が急激に増加し、絶縁体の状態に達し、その結果、電気回路が切断される。PTCチップは、これにより電気回路保護の役割を果たす。
【0003】
一般的に、PTCチップ部品の構造は、単純な層状構造であり:PTCチップの両側に、溶接で完全に被覆されたシート状導電端子を有する。使用時、二個のシート状導電端子を電気回路中(例えば電気回路板上)に溶接することにより、PTCチップ部品を電気回路中に取り付ける。
【0004】
図1は、従来技術のあるPTC電気回路保護部品を示す図である。
図1が示すように、PTCチップ3は、導電性の上端子1と下端子2との間に挟まれ、はんだ(図示せず)により上端子1および下端子2を結合させ、直列接続を可能にしている。上端子1は、外側に伸びて湾曲している結合部103、および電気回路結合部105を有する。取り付け時、下端子2および上端子1の電気回路結合部105により、電気回路板上などの電気回路中にはんだが流れる。上端子1および下端子2は、PTCチップ3を完全に被覆する。
【0005】
図1が示す従来技術のPTC電気回路保護部品は、構造が単純で扱いやすいが、以下のような問題がある。まず、保護状態(即ち高温状態)にある時、PTCチップが高温になり、および、熱膨張を起こす。ただし、完全に被覆されたPTCチップのシート状導電端子は電気回路上にしっかりと溶接されているため、変形しにくく、これによりPTCチップの熱膨張空間が大幅に制限され、および、これにより部品内に大きな残留応力が発生する。当該応力により、PTCチップに物理的な破壊が発生し、その結果焼損する可能性があり、また、電気回路結合部105と電気回路との間のはんだ溶接の脱落等が発生し、その結果、電気回路、即ち電子装置の信頼性に影響を及ぼす可能性がある。これは、PTCチップがポリマー正温度系数(Polymeric Positive Temperature Coefficient、 PPTC)チップである場合、特に深刻である。要するに、熱膨張が存在する状況下において、従来のPTCチップ部品の構造を使用した場合、発生する大きな応力により、製品の信頼性が大きな影響を受ける。次に、PTCチップ部品の製造中に、通常、リフローはんだ付けを用いてシート状導電端子をPTCチップに溶接し、また、製造されたチップ部品を電気回路に取り付ける時にも、通常、リフローはんだ付け技術を使用する。したがって、同様のリフローはんだ付け条件(熱風等)下で、
図1が示すPTC電気回路保護部品を、リフローはんだ付けにより、電気回路板上などの電気回路に溶接することで取り付けが完了する時、上下端子とPTCチップとの間のはんだが再溶融することで、はんだボールが発生する。シート状導電端子がPTCチップを完全に被覆しているため、溢れたはんだボールは、レジスタの側面に向かって垂れ、二個の導電端子間に「はんだブリッジ」を形成し、その結果、凝固後に端子間で短絡が発生し、電気回路の性能に影響、ひいてはPTCチップ部品を無効にする可能性がある。また、PTCチップを被覆しているシート状端子とPTCチップとの間の結合力が、不十分な場合があり、剥離しやすい。
【0006】
したがって、改良された正温度係数電気回路保護部品の構造が必要であり、これによりPTCチップの熱膨張が部品の信頼性に与える不利な影響を軽減することができ、同時に、該当部品取り付けのリフローはんだ付け中に「はんだブリッジ」が発生することを防止できる。
【発明の概要】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の技術的構想を提供する。
【0008】
[1]以下を含む、正温度係数電気回路保護部品:
第一チップ結合部、第一電気回路結合部、およびそれらの間の連結部で構成され、ここで前記第一チップ結合部が第一平面輪郭を有する、導電性のシート状上端子;
第二チップ結合部が含まれ、ここで前記第二チップ結合部が第二平面輪郭を有する、導電性のシート状下端子;
前記シート状上端子とシート状下端子との間に挟まれ、および、
はんだにより、前記第一チップ結合部の下側表面および前記第二チップ結合部の上側表面とそれぞれ結合しており、第三平面輪郭を有する、正温度系数チップ;
ここで:
前記第一平面輪郭および第二平面輪郭は、前記第三平面輪郭の内側にあり、また、前記第三平面輪郭は、前記第一輪郭および/または第二輪郭に被覆されていない部分を有し、これにより、前記正温度系数チップが、自由な熱膨張空間を有する。
【0009】
[2]前記第三平面輪郭の前記第一輪郭に被覆されていない部分の面積が、少なくとも第三平面輪郭の面積の20%であり、
および/または、
前記第三平面輪郭の前記第二輪郭に被覆されていない部分の面積が、少なくとも第三平面輪郭の面積の20%である、請求項1に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0010】
[3]前記第三平面輪郭の前記第一輪郭に被覆されていない部分および前記第二輪郭に被覆されていない部分がずれている、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0011】
[4]前記第一平面輪郭および第三平面輪郭の端部間が漏出防止間隙を有し、および/または、前記第二平面輪郭および第三平面輪郭の端部間が漏出防止間隙を有する、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0012】
[5]前記第一チップ結合部および/または第二チップ結合部が、貫通孔を有する、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0013】
[6]第一チップ結合部が、複数の貫通孔を有し、好ましくは三個以上の貫通孔である、[5]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0014】
[7]前記連結部の両側端部が切り欠きを有する、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0015】
[8]前記連結部が湾曲しており、前記第一電気回路結合部の下側表面および前記第二電気回路結合部の下側表面は、基本的に同一平面上にある、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【0016】
[9]前記シート状下端子は、前記第二チップ結合部から外側に延びた電気回路結合部をさらに含む、[1]に記載の正温度系数電気回路保護部品。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、従来技術のあるPTC電気回路保護部品を示す図である。
【
図2A】
図2Aから
図2Cは、本発明の実施形態の一つに基づいたPTC電気回路保護部品の外観図である。
【
図2B】
図2Aから
図2Cは、本発明の実施形態の一つに基づいたPTC電気回路保護部品の外観図である。
【
図2C】
図2Aから
図2Cは、本発明の実施形態の一つに基づいたPTC電気回路保護部品の外観図である。
【
図3】
図3は、上端子とPTCチップとの間の結合力と、シート状上端子内の貫通孔との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は結合付録図であり、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
図2Aから
図2Cは、本申請の実施形態の一つに基づいたPTC電気回路保護部品の外観図である。
図2Aは、上から見た図である。
図2Bは、横から見た図である。
図2Cは、下から見た図である。ここで、上下端子は金属のような導電材料であり、例えば、ニッケル、銅、錫メッキの銅、ステンレス、銅メッキのステンレスである。シート状端子の厚さは、通常、0.05mm〜0.5mmである。PTCチップは、PPTCチップであってよい。示される外観は基本的に長方形であるが、本発明の効果に影響しない前提で、如何なる形状の端子およびチップ材料も任意に使用してよい。
【0020】
図2Aが示すように、上端子1は、電気回路結合部105、PTCチップと結合する部分(第一チップ結合部101という)を有し、第一チップ結合部101は、貫通孔505、および電気回路結合部105と第一チップ結合部101との間の連結部103を有する。
【0021】
第一チップ結合部101の平面輪郭(第一平面輪郭という)は、PTCチップの輪郭(第三平面輪郭という)の内側にある。つまり、第一平面輪郭は、第三平面輪郭よりも小さく、および、第三平面輪郭との端部に空隙を有する。ここで、例えば、第三平面輪郭の一端には、第一平面輪郭に被覆されていない比較的大きな区域501がある。当該区域501は、上端子1の第一チップ結合部101による空間上の制限を受けていないため、高温時に自由に膨張でき、その結果、過度な残留応力が発生することがない。比較的良好な残留応力低減の効果を達成するためには、区域501は、第三平面輪郭を占める面積の割合が>20%であることが好ましく、より好ましくは>25%であり、さらに好ましくは<50%である。区域501の形状について、特に規定はない。
【0022】
第一平面輪郭の両側には、第三平面輪郭の端部との間に間隙503が存在している。間隙503が存在することにより、部品のリフローはんだ付けを電気回路中に入れた時、たとえ再溶融した部品内のはんだが溢れても、第一平面輪郭の周囲のPTCチップ上に留まり、側面に溢れて下に向かい、垂れてはんだブリッジを形成することはない。上述の役割を果たすことのできる間隙は、文中において「漏出防止間隙」という。
【0023】
任意に、上端子1の第一チップ結合部101上には、任意の数量および形状の貫通孔505を有し、溢れ出たはんだを収容するのに用いてよい。リフローはんだ付けを用いてPTC電気回路保護部品を電気回路中に溶接する時、シート状上端子に貫通孔がある場合:上端子とPTCチップとの間の結合力が明らかに上昇するという、特に有利な効果を有する。理論の如何に関わらず、これは、上端子とPTCチップとの間のはんだが、リフローはんだ付けの条件下で再溶融して貫通孔に入り、リフローはんだ付けが終わってはんだが凝固した後に、貫通孔内にはんだツノが形成されることによるものである可能性がある。これらのはんだツノは、はんだと上端子の結合面積を増やしながら、その周囲の貫通孔の移動を制限する役割を果たし、その結果、全体的に上端子とPTCチップとの間の結合力が向上する。
図3は、上端子の貫通孔と結合力の間の関係(90度剥離力vs孔寸法と数量)を示している。図中に、貫通孔が無い比較例、および三つの実施例を示しており、それぞれ直径が0.35mmの貫通孔一つ、0.80mmの貫通孔一つ、および0.35mmの貫通孔三つを有する。図から分かるとおり、孔の径が大きくなり、孔の数が多くなると、結合力は明らかに増大する。したがって、フローはんだ付け可能な正温度係数電気回路保護部品において、シート状上端子の貫通孔は特に好ましい。
【0024】
また、連結部103には、切り欠き701を設ける。好ましくは、連結部の両側に対称的に切り欠き701を設ける。切り欠きの存在により、当該部分においてシート状上端子が狭くなり、その他の部分と比較して良好な可撓性を有する。上端子において、熱膨張による応力が切り欠きの連結部に比較的大きな弾性変形を発生させることにより、その結果、熱膨張が引き起こしたシート状上端子のその他の部分が受ける力を軽減し、また、電気回路板から上端子を経由してPTCチップに印加される反力も軽減し、その結果、PTCチップ、上端子および電気回路板を保護する。電気回路保護部品に湾曲している連結部が無い時も、切り欠きを設けてよい。ただし、湾曲部を有する場合は、切り欠きを設けることが特に好ましい。
【0025】
図2Cが示すように、下端子2のPTCチップと結合している部分(第二チップ結合部201という)の平面輪郭(第二平面輪郭という)は、PTCチップの輪郭(第三平面輪郭という)の内側にある。上端子と同様に、第三平面輪郭の一端には、第二平面輪郭に被覆されていない比較的大きな区域601がある。当該区域601は、下端子2の第二チップ結合部201による空間上の制限を基本的に受けていないため、したがって高温時に自由に膨張でき、その結果、過度な残留応力が発生することがない。比較的良好な残留応力低減の効果を達成するためには、区域601は、第三平面輪郭を占める面積が20%であることが好ましく、より好ましくは>25%であり、さらに好ましくは<50%である。区域601の形状について、特に規定はない。
【0026】
好ましくは、上下端子の制限を受けない区域501および区域601はずれており、その結果、より高い効率で異なる部分において自由膨張空間を提供できる。
【0027】
同様に、第二平面輪郭の両側には、漏出防止間隙603が存在している。部品のリフローはんだ付けを電気回路中に入れた時、たとえ再溶融した部品内のはんだが溢れても、第二平面輪郭の周囲のPTCチップの下に留まり、側面に溢れて上に向かって堆積し、はんだブリッジを形成することはない。
【0028】
上端子1と同様に、下端子2の第二チップ結合部201上には、任意の数量および形状の貫通孔605を有し、溢れ出たはんだを収容するのに用いてよい。
【0029】
上述の構造は、PTCチップがPPTCチップである時に特に効果的である。
【0030】
本発明の実施例において、PPTCチップはPPTCシートを含有し、前記PPTCシートはポリマー中に分散された導電粉末を含有し、ポリマーおよび導電粉末の体積比は35:65から65:35であり、前記ポリマーは、ポリオレフィン系、少なくとも一種のオレフィンと少なくとも一種のそのオレフィンと共重合可能な非オレフィンモノマーとのコポリマー、および熱成形可能なフルオロポリマーから選択される少なくとも一種の半結晶ポリマーを含み、前記導電粉末は、遷移金属炭化物、遷移金属炭素ケイ素化合物、遷移金属炭素アルミ化合物、および遷移金属炭素スズ化合物の少なくとも一種類の粉末を含み、および、前記導電粉末の粒度分布が:20>D
100/D
50>6を満たし、ここでD
50は導電粉末の累計粒径分布パーセンテージが50%に達する時の対応する粒径を表し、D
100は最大粒径を表す。
【0031】
半結晶ポリマーにおいて、ポリオレフィン系は、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが含まれる)、またはエチレンとプロペンとのコポリマーを含み、前記コポリマーは、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、エチレン-アクリル酸メチルコポリマー、エチレン-アクリル酸エチルコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-アクリル酸ブチルコポリマーを含み、前記熱成形可能なフルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、およびエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー等を含む。
【0032】
導電粉末は、例えば、炭化チタン、炭化タングステン、炭素ケイ化チタン、炭素アルミ化チタン、炭素スズ化チタン等であってよい。炭素ケイ化チタン、炭素アルミ化チタン、炭素スズ化チタン等は、炭化タングステンと類似した性質を有する。
【0033】
上述の導電粉末は、類似球形形状である。ここで、「類似球形」という用語は、球形および球形と類似した形状を含む。
【0034】
導電粉末の平均粒度は、0.1から50μmであってよい。本発明の実施形態においては、導電粉末の寸法は、次を満足する:D
50<5μm,D
100<50μm。
【0035】
好ましくは、非常に低い電気抵抗率(200μΩ・cm未満)を得るために、導電粉末が比較的広い粒度分布を有する。好ましくは、20>D
100/D
50>6であり、より好ましくは10>D
100/D
50である。
【0036】
二種類の導電粉末を混合することでD
100/D
50>6が満たされる場合、同様の結論が得られる。
【0037】
また、遷移金属は一般的に複数の価数をとるため、その炭素化合物中には、MxC相(Mは遷移金属を表す、xは1より大きい)が存在することができ、このようなMxC相の存在は、炭素化合物中の合計炭素含有量を低減する。炭化タングステン(WC)を例にすると、純粋なWCの理論合計炭素含有量は6.18%であるが、WC相には通常W
2C(W
2Cは準安定状態である)が含まれ、WCには少量のW
2Cが含まれる時、合計炭素含有量は低下する。また、粒度分布が類似している条件下においては、炭素含有量が比較的低い炭素化合物の電気抵抗率が低くなる。例えば、炭化タングステン中の炭素含有量が、T.C.<6.0%である時(ここで、T.C.は、質量ベースの100%×C/WC)、特に、T.C.の含有量が5.90%前後である時、低い電気抵抗を得られる。一方、T.C>6.0%の時、電気抵抗率は高くなる。したがって、本発明の実施形態において、遷移金属炭素化合物の炭素含有量は、純粋な遷移金属炭素化合物MC(Mは遷移金属元素)の理論合計炭素含有量よりも、一定数低いことが好ましい。
【0038】
好ましくは、遷移金属炭素化合物中の炭素含有量が、化学量論比の遷移金属炭素化合物MCの理論合計炭素含有量よりも2%から5%低く、ここでMは遷移金属元素を表す。ここで、導電粉末が炭化タングステン(WC)である時、WC中の炭素含有量T.C.は5.90%から6.00%であり、ここでT.C.は、質量ベースの100%×C/WCである;または、導電粉末が炭化チタン(TiC)である時、TiC中の炭素含有量T.C.は19.0%から19.5%であり、ここでT.C.は質量ベースの100%×C/TiCである。
【0039】
PPTCシートにおいて、導電粉末をポリマーに均一に分散できるようにするためには、ポリマーと導電粉末の体積比は、35:65から65:35であってよく、好ましくは40:60から60:40であり、より好ましくは45:55から55:45であり、すなわち、おおよそ同等の体積比で混合する。
【0040】
PPTCシートは、本発明のPPTCシートの低電気抵抗および加工性能を損なわないという前提条件の下、例えば、無機フィラーまたはその他のポリマー材料のように、上述のポリマーおよび導電粉末を除いた成分を含んでよい。
【0041】
本発明の実施形態において、PPTCシートが保護状態(即ち高温状態)にない時の電気抵抗率は200μΩ・cm以下である。
【0042】
理解すべきこととして、上述の実施形態および実施例は、本発明の説明のみを目的とし、本発明の範囲を限定しない。当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく、各種修正および変更をすることができる。本発明の範囲は、後方に添付の特許請求の範囲に限定される。
【国際調査報告】