(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、多価金属カチオンとアニオンとしての少なくとも1つの有機ホスホネート化合物および/または有機ホスフェート化合物との少なくとも1つの塩と、アニオン性および/またはアニオノゲン性の基ならびにポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの高分子分散剤とを含むコロイド分散調製物を含む水硬性組成物用添加剤に関する。該添加剤は、スランプ保持剤としておよび初期強度の向上に特に適している。
前記塩は、1〜3個のホスホン酸基および/もしくは1〜3個のリン酸基を有する有機ホスホネートまたは有機ホスフェートのアニオンから選択されるアニオンを含み、ここで、前記ホスホネートにおいて、前記有機基はリン原子に結合しており、前記ホスフェートにおいて、前記有機基はホスフェート基の1つまたは2つの酸素原子に結合しており、ここで、前記有機基は、置換されていてもよくかつ/または窒素原子および/もしくは酸素原子によって中断されていてもよいC1〜C12−アルキル基か、C2〜C4−アルケニル基か、または2〜300個のアルコキシ単位を有するポリ(C2〜C4−アルコキシ)基から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の添加剤。
前記ケイ酸カルシウム水和物は、水溶性のカルシウム供給源と水溶性のケイ酸塩供給源とを高分子分散剤の存在下で反応させることにより得ることができる、請求項12記載の添加剤。
スランプ保持剤としての、または水硬性結合材を含む含水建材混合物における初期強度を向上させるための、請求項1から14までのいずれか1項記載の水硬性組成物用添加剤の使用。
請求項1から14までのいずれか1項記載の添加剤と、(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、シリカダスト、メタカオリン、天然ポゾラン、オイルシェール燃焼物およびアルミン酸カルシウムセメントならびにそれらの混合物から選択される結合材とを含む、建材混合物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤に関し、より具体的にはスランプ保持剤として適した水硬性組成物用添加剤に関する。
【0002】
クレー、微粉状シリケート、チョーク、カーボンブラックもしくは微粉状鉱物のような粉末状の無機および/または有機物質を含む水硬性および/または鉱物系の結合材の水性スラリーを含む水硬性組成物は、例えばコンクリート、モルタルまたはプラスターの形態で広範に適用される。
【0003】
水硬性組成物を、その可使特性、すなわち混練性、展延性、噴霧性、ポンプ輸送性または流動性を向上させる目的で、高分子分散剤を含む添加剤と混合することは、知られている。この種の添加剤は、固形物の凝集物の形成を防止し、既存の粒子や水和によって新たに形成された粒子を分散させ、このようにして可使特性を向上させることができる。高分子分散剤を含む添加剤は特に、具体的には例えば(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、シリカダスト、メタカオリン、天然ポゾラン、オイルシェール燃焼物、アルミン酸カルシウムセメント、石灰、セッコウ、半水化物、硬セッコウもしくはこうした成分の2種以上の混合物のような水硬性および/または鉱物系の結合材を含む水硬性組成物の調製においても使用される。
【0004】
前述の結合材をベースとするこうした水硬性組成物を、すぐに使用できる加工可能な形態にするためには、その後の硬化プロセスに必要とされるであろう量よりも非常に多くの練りまぜ水を使用することが一般的に必要である。コンクリート構造物においては、余剰水が後から蒸発することにより形成される間隙によって、機械的強度や耐久性が低下する。
【0005】
所与の加工コンシステンシーについて余剰水の割合を減少させ、かつ/または所与の水/結合材比に対して可使特性を向上させるために、一般的に減水剤や可塑剤として識別される添加剤が使用される。実際に使用される減水剤や可塑剤はより具体的には、ラジカル重合によって得られるポリマーであって、カルボキシル含有モノマーとポリエチレングリコール含有オレフィン系モノマーとをベースとするものであり、こうしたポリマーは、ポリカルボキシレートエーテル(略して「PCE」)とも呼ばれる。こうしたポリマーは、ポリエチレングリコール含有側鎖を有するカルボキシル含有主鎖を有し、また櫛型ポリマーとしても識別される。
【0006】
減水剤や可塑剤とは別のカテゴリーであって、混合されたばかりのコンクリートを比較的少量で可塑化させるものとして、コンシステンシー剤やスランプ保持添加剤のカテゴリー(以下で「スランプ保持剤」と呼ぶ)が挙げられる。こうしたカテゴリーのものは、比較的多量に添加した場合にのみ同様の初期可塑化を達成するが、一定の経時的なスランプフローの広がりをもたらす。減水剤を添加した場合とは対照的に、スランプ保持剤を添加した場合には、良好な可使特性を、コンクリートの混合後例えば90分までにわたって長引かせることが可能であるが、一方で減水剤を用いた場合には、通常はわずか10〜30分後に可使特性が大幅に低下してしまう。
【0007】
従来技術においてこれまでに知られている櫛型ポリマーの特徴の1つに、ポリマー特有の特定のパラメーターに応じて、減水剤あるいはスランプ保持剤を意図的に製造できるという点が挙げられる。こうしたポリマー特有のパラメーターとしては、カルボキシル基または他の酸基の数、ポリエチレングリコール側鎖の数および長さならびに分子量が挙げられる。それにもかかわらず、前述のポリマー特有のパラメーターの相応する選択による減水効果およびスランプ保持効果の調整は、先験的に、実験室や化学製品製造プラント内での合成や重合の手段によってしか行うことができない。こうした場合、対応する種類の酸モノマーおよびポリエチレングリコール含有マクロモノマーが通常は選択され、これらが特定のモル比で重合される。製造プロセスにおいて生じる条件ゆえに、コンクリート加工現場での減水剤からスランプ保持剤への変換またはその逆は、従来技術によれば不可能である。
【0008】
当技術分野では一般に、減水剤およびスランプ保持剤は、配合物中で様々な割合で使用される。しかし、配合手段を用いた場合にはスランプ保持性向上の実現性は非常に限定的であり、特に、スランプ保持性を向上させつつ他のコンクリート特性に悪影響を及ぼさないようにすることは困難である。例えば、スランプ保持剤を含有する配合物を、例えば国際公開第2009/004348号(WO 2009/004348)に開示されるようにホスホネートと組み合わせることで、また特開昭57−067057号公報(JP 57067057 A)に開示されるように糖類と組み合わせることで、確かにより良好なスランプ保持性が得られる。しかし、初期強度が比較的低いという犠牲を払わなければ、スランプ保持性は得られない。
【0009】
セメント質結合材分散液中でスランプを保持するための他の方法が、時間と共に従来技術において開示されてきている:
欧州特許出願公開第1136508号明細書(EP 1136508 A1)および国際公開第2010/029117号(WO 2010/029117)に記載の、「動的超可塑剤」として知られる加水分解性アクリルエステルを有するポリカルボキシレートエーテルをベースとする超可塑剤の使用。この技術によって、セメント粒子の表面上への可塑剤ポリマーの時間制御による吸着が可能となり、その際、アルカリ性コンクリート媒体中での対応するカルボン酸誘導体(例えばアクリルエステル)の加水分解によって、スランプ保持性が向上する。この「動的超可塑剤」の特性も、実験室や化学製品製造プラント内での合成や重合の手段によって決まってしまい、コンクリート加工現場でフレキシブルに調整することはできない。
【0010】
さらに、例えばジ(メタ)アクリレートのような2つ以上の重合性官能基を有するモノマーによって架橋された架橋ポリカルボキシレートエーテルが使用される。セメント質の間隙水の強塩基条件下で、架橋構造単位が加水分解を受け、架橋が停止し、可塑剤として活性である非架橋(コ)ポリマーが時間と共に放出される(国際公開第2000/048961号(WO 2000/048961))。こうした架橋ポリカルボキシレートエーテルの特性も、実験室や化学製品製造プラント内での合成や重合の手段によって決まってしまい、コンクリート加工現場でフレキシブルに調整することはできない。さらに、生成物の貯蔵中に意図しない早期の加水分解が生じる恐れがある。こうした理由から、8を上回るpH値を有する他の塩基性添加剤を伴う配合や貯蔵は、不可能である場合が多い。
【0011】
米国特許第7879146号明細書(US 7879146 B2)には、2価の金属カチオン(例えばNi
2+、Zn
2+、Mn
2+および/またはCa
2+)および3価の金属カチオン(例えばAl
3+、Ga
3+、Fe
3+および/またはCr
3+)をベースとする層状複水酸化物の調製が開示されている。この層状複水酸化物は、例えば硝酸アニオン、水酸化物アニオン、炭酸アニオン、硫酸アニオンおよび塩化物アニオンのようなアニオンのインターカレートが可能である。無機生成物を高温(65℃)で数時間処理し、次いで減圧下で100℃で乾燥させる。続くイオン交換操作では、このようにして調製された層状複水酸化物に有機分子をインターカレートし、ここで、こうした有機分子の例は、ナフタレンスルホネート、ニトロ安息香酸の誘導体、サリチル酸、クエン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリナフタレンスルホン酸(PNS)のナトリウム塩をベースとする超可塑剤である。層状複水酸化物によって無機的に変性されたポリナフタレンスルホン酸(PNS)のナトリウム塩は、モルタル試験においてスランプ保持性の向上をごくわずかにしかもたらさない。多くの用途では、この向上は十分ではない。
【0012】
欧州特許第2412689号明細書(EP 2412689)には、層状複水酸化物とポリウレタンコポリマーとから構成されるコンクリート用ナノハイブリッド添加剤が記載されており、該添加剤は、これら2つの成分を混合して水熱処理することにより調製される。この添加剤は、塩化物イオンによって誘発される水中コンクリートの破壊を防ぎ、また冬期に塩化カルシウムなどの凍結防止剤を使用した結果としてコンクリートが分解するのを防ぐと言われている。不利な点は、合成時間が6時間超であって長いという点や、層状複水酸化物の水熱調製に必要な温度が80〜100℃であって高いという点である。さらに、この方法を用いた場合にも、このハイブリッド体の特性は、化学製品製造プラント内での複雑な合成手法において必然的に決まってしまう。
【0013】
国際公開第2014/013077号(WO 2014/013077)および国際公開第2014/131778号(WO 2014/131778)には、例えば鉄カチオン、カルシウムカチオン、アルミニウムカチオンといった多価カチオンと、例えばリン酸アニオン、アルミン酸アニオンおよびホウ酸アニオンといった無機アニオンとの塩のコロイド分散水性調製物を含む、コンシステンシー剤として適した水硬性組成物用添加剤が記載されている。しかし、さらにより効率的な添加剤を得ることが望ましいであろう。
【0014】
国際公開第2015/177232号(WO 2015/177232)には、リン酸とグリセロールなどの多価アルコールとの少なくとも1つのエステルと、少なくとも1つのカルシウム化合物とを含む、可使時間が長くかつ初期強度が非常に高い水硬性結合剤用促進剤が開示されている。しかし、下記式(a)を用いて算出されるカルシウムイオンの量は、50を大幅に上回る。
【0015】
コンクリートの性能プロファイルに課される多様な要求は、国別の規制や規格化の対象であり、例えば風化条件などの個々の建築現場で生じている条件に大きく左右される。特にスランプ保持性は、個々の建設現場で生じている条件に大きく左右される。
【0016】
生じている風化条件は建設現場ごとに非常に異なりうるため、上述の従来技術の欠点を排除することが建設業界において求められている。したがって本発明は、効率的なスランプ保持剤を提供するという課題に基づく。こうしたスランプ保持剤は、例えば初期強度などの他のコンクリート特性に悪影響を及ぼすことなく、建設現場で生じている条件下で十分なスランプ保持性を保証することができなければならない。
【0017】
前記課題は、以下の実施形態によって解決される。
【0018】
1. 以下:
a)少なくとも1つの多価金属カチオンと、前記多価金属カチオンと難溶性の塩を形成するアニオンとしての少なくとも1つの有機ホスホネート化合物および/または有機ホスフェート化合物との少なくとも1つの塩であって、前記化合物は適宜、カルボン酸アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、リン酸アニオン、ポリリン酸アニオン、亜リン酸アニオン、ホウ酸アニオン、アルミン酸アニオンおよび硫酸アニオンから選択される無機アニオンを放出しうる少なくとも1つの化合物との混合物であるものとする塩、ならびに
b)アニオン性および/またはアニオノゲン性の基とポリエーテル側鎖とを含む、少なくとも1つの高分子分散剤
を含むコロイド分散水性調製物を含む水硬性組成物用添加剤であって、
前記多価金属カチオンは、Al
3+、Fe
3+、Fe
2+、Zn
2+、Mn
2+、Cu
2+、Ca
2+、Mg
2+、Sr
2+、Ba
2+およびそれらの混合物から選択され、かつ
前記多価金属カチオンは、以下の式(a):
【化1】
[式中、
z
K,iは、前記多価金属カチオンの電荷の量であり、
n
K,iは、前記量り入れられた多価金属カチオンのモル数であり、
z
S,jは、前記高分子分散剤中に存在する前記アニオン性およびアニオノゲン性の基の電荷の量であり、
n
S,jは、前記量り入れられた高分子分散剤中に存在する前記アニオン性およびアニオノゲン性の基のモル数であり、
前記添え字iおよびjは、互いに独立しており、かつ0より大きい整数であり、ここで、iは、異なる種類の多価金属カチオンの数であり、jは、前記高分子分散剤中に存在する異なる種類のアニオン性およびアニオノゲン性の基の数であり、ここで、z
K,iは、前記カチオンの電荷が常に完全な形式電荷に基づくように定められ、すなわちz
Fe(Fe
3+)=3、z
Fe(Fe
2+)=2となるように定められる]に相当する量で存在する添加剤。z
S,jは、最大限の脱プロトン化に伴うアニオンの形式電荷の量であり、すなわち、z
COO−=1;z
−O−PO32−=2;z
−PO32−=2またはz
PO4(H
3PO
4)=z
PO4(Na
3PO
4)=3、またはz
CO3(Na
2CO
3)=2である。アルミン酸塩の場合には、この値は、z
AlO2(NaAlO
2)=z
AlO2(NaAl(OH)
4)=1に設定され、ケイ酸塩の場合には、この値はすべてのケイ酸塩種に関して、z
SiO3(Na
2SiO
3)=2に設定される。
【0019】
2. 前記多価金属カチオンは、Al
3+、Fe
3+、Fe
2+、Mn
2+、Zn
2+、Ca
2+およびそれらの混合物から選択される、実施形態1記載の添加剤。
【0020】
3. 前記多価金属カチオンは、Al
3+、Fe
3+、Fe
2+、Ca
2+およびそれらの混合物から選択される、実施形態1記載の添加剤。
【0021】
4. 前記多価金属カチオンは、Ca
2+である、実施形態1記載の添加剤。
【0022】
5. 前記有機ホスホネート化合物または有機ホスフェート化合物は、前記多価金属カチオンと難溶性の塩を形成しうる、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0023】
6. 前記式(a)による比は、0.5以上40以下の範囲であり、好ましくは1以上で40までの範囲であり、特に1〜30の範囲である、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0024】
7. 前記式(a)による比は、1〜8の範囲であるか、または1.1〜8の範囲であり、好ましくは1〜6の範囲であるか、または1.1〜6の範囲であるか、または1.2〜6の範囲である、実施形態6記載の添加剤。
【0025】
8. 前記式(a)による比は、1〜5の範囲であるか、または1.1〜5の範囲であるか、または1.2〜5の範囲であるか、または1.25〜5の範囲である、実施形態6または7のいずれかに記載の添加剤。
【0026】
9. 前記多価金属カチオンは、以下の式(a)に相当する量で存在し、かつ前記アニオンは、以下の式(b):
【化2】
[式中、
z
K,iは、前記多価金属カチオンの電荷の量であり、
n
K,iは、前記量り入れられた多価金属カチオンのモル数であり、
z
S,jは、前記高分子分散剤中に存在する前記アニオン性およびアニオノゲン性の基の電荷であり、
n
S,jは、前記量り入れられた高分子分散剤中に存在する前記アニオン性およびアニオノゲン性の基のモル数であり、
z
A,lは、前記量り入れられたアニオンの電荷であり、
n
A,lは、前記量り入れられたアニオンのモル数であり、
前記添え字i、jおよびlは、互いに独立しており、かつ0より大きい整数であり、iは、異なる種類の多価金属カチオンの数であり、jは、前記高分子分散剤中に存在する異なる種類のアニオン性およびアニオノゲン性の基の数であり、lは、前記金属カチオンと難溶性の塩を形成しうる異なる種類のアニオンの数であり、ここで、前記電荷z
A,lは、上記のz
S,jと同様に定められ、すなわち、z
PO4(フェノキシエタノールホスフェート)=z
PO3(ビニルホスホネート)=2である]に相当する量で存在し、
適宜添加される無機イオンも、式(b)に含まれる、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0027】
10. 前記式(b)による比は、以下の範囲:
0超で3以下、
0.01〜2、
0.1〜2、
0.1〜1、
0.2〜1.5、
0.2〜1、および
0.2〜0.75
のうちの1つから選択される、実施形態9記載の添加剤。
【0028】
11. 前記アニオンは、1〜3個のホスホン酸基および/もしくは1〜3個のリン酸基を有する有機ホスホネートまたは有機ホスフェートから選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0029】
12. 前記アニオンは、式I
R
A−R
B−R
C
[式中、
R
Aは、H、ヒドロキシル、C
1〜C
4−アルコキシ、C
1〜C
4−アルキル、フェニル、−PO
3H
2または−OPO
3H
2であり、
R
Bは、C
1〜C
4−アルキレンであり、該C
1〜C
4−アルキレンは、ヒドロキシル、C
2〜C
4−アルケニレン、−(CH
2)
x−NR
D−(CH
2)
y−または−(OC
zH
z)
n−によって置換されていてもよく、
R
Cは、−PO
3H
2または−OPO
3H
2であり、
R
Dは、−(CH
2)
x−R
C、ヒドロキシC
1〜C
4−アルキルまたはR
E−(OC
zH
z)
n−であり、
R
Eは、HまたはC
1〜C
4−アルキルであり、
xは、1または2であり、
yは、1または2であり、
zは、1、2、3または4であり、かつ
nは、1〜100である]の有機リン酸または有機ホスホン酸およびそれらの混合物から誘導される、実施形態11記載の添加剤。
【0030】
本明細書の以下の「誘導される」という表現は、アニオンが、−PO
3H
2基もしくは−OPO
3H
2基からH
+イオンを除去することによって形成される、有機リン酸または有機ホスホン酸の負に帯電した基であることを意味する。
【0031】
13. 前記アニオンは、前記式I
[式中、
R
Aは、H、フェニル、−PO
3H
2または−OPO
3H
2であり、
R
Bは、C
1〜C
4−アルキレンであり、該C
1〜C
4−アルキレンは、ヒドロキシル、C
2−アルケニレン、−(CH
2)
x−NR
D−(CH
2)
yまたは−(OC
zH
z)
n−によって置換されており、
R
Cは、−PO
3H
2または−OPO
3H
2であり、
R
Dは、−(CH
2)
x−R
C、ヒドロキシC
1〜C
4−アルキルまたはR
E−(OC
zH
z)
n−であり、
R
Eは、HまたはC
1〜C
4−アルキルであり、
xは、1であり、
yは、1であり、
zは、2または3であり、かつ
nは、1〜100である]の有機リン酸または有機ホスホン酸およびそれらの混合物から誘導される、実施形態12記載の添加剤。
【0032】
14. 前記アニオンは、前記式I
[式中、
R
Aは、フェニル、−PO
3H
2または−OPO
3H
2であり、
R
Bは、C
1〜C
4−アルキレンであり、該C
1〜C
4−アルキレンは、ヒドロキシルまたは−(OC
zH
z)
n−によって置換されており、
R
Cは、−PO
3H
2または−OPO
3H
2であり、
zは、2または3であり、かつ
nは、1〜100である]の有機リン酸または有機ホスホン酸およびそれらの混合物から誘導される、実施形態12または13記載の添加剤。
【0033】
15. 前記アニオンは、式
【化3】
の有機リン酸もしくはホスホン酸またはそれらの混合物から誘導される、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0034】
16. 前記アニオンは、式
【化4】
の有機リン酸もしくはホスホン酸またはそれらの混合物から誘導される、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0035】
17. 少なくとも1つの中和剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0036】
18. 前記中和剤は、有機脂肪族モノアミン、有機脂肪族ポリアミン、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、またはアンモニアである、実施形態17記載の添加剤。
【0037】
19. 前記中和剤は、アンモニア、モノヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、ジヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、トリヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、モノC
1〜C
4−アルキルアミン、ジC
1〜C
4−アルキルアミン、トリC
1〜C
4−アルキルアミン、C
1〜C
4−アルキレンジアミン、(テトラヒドロキシC
1〜C
4−アルキル)C
1〜C
4−アルキレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンおよびそれらの混合物から選択される、実施形態18記載の添加剤。
【0038】
20. 前記中和剤は、アンモニア、モノヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、ジヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、トリヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、C
1〜C
4−アルキレンジアミンおよびポリエチレンイミンから選択される、実施形態19記載の添加剤。
【0039】
21. 前記中和剤は、アンモニア、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびポリエチレンイミンから選択される、実施形態20記載の添加剤。
【0040】
22. 前記中和剤は、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0041】
23. 8〜13のpHを有する、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0042】
24. 9〜13、特に11.5超から13までのpHを有する、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0043】
25. 前記高分子分散剤は、アニオン性またはアニオノゲン性の基として、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id):
【化5】
[式中、
R
1は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基、CH
2COOHまたはCH
2CO−X−R
2であり、好ましくはHまたはCH
3であり、
Xは、−NH−(C
nH
2n)または−O(C
nH
2n)(ここで、nは、1、2、3もしくは4であり、窒素原子もしくは酸素原子は、CO基に結合している)または化学結合であり、好ましくは、Xは、化学結合またはO(C
nH
2n)であり、
R
2は、−OM、−PO
3M
2または−O−PO
3M
2であるが、但し、R
2がOMである場合には、Xは化学結合であるものとする]、
【化6】
[式中、
R
3は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、好ましくはHまたはCH
3であり、
nは、0、1、2、3または4であり、好ましくは0または1であり、
R
4は、−PO
3M
2または−O−PO
3M
2である]、
【化7】
[式中、
R
5は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、好ましくはHであり、
Zは、OまたはNR
7であり、好ましくはOであり、
R
7は、H、−(C
nH
2n)−OH、−(C
nH
2n)−PO
3M
2、−(C
nH
2n)−OPO
3M
2、−(C
6H
4)−PO
3M
2または−(C
6H
4)−OPO
3M
2であり、かつ
nは、1、2、3または4であり、好ましくは1、2または3である]、
【化8】
[式中、
R
6は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、好ましくはHであり、
Qは、NR
7またはOであり、好ましくはOであり、
R
7は、H、−(C
nH
2n)−OH、−(C
nH
2n)−PO
3M
2、−(C
nH
2n)−OPO
3M
2、−(C
6H
4)−PO
3M
2または−(C
6H
4)−OPO
3M
2であり、
nは、1、2、3または4であり、好ましくは1、2または3である]
の少なくとも1つの構造単位を有し、ここで、上記式中のそれぞれのMは独立して、Hまたは1つのカチオン等価物である、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0044】
26. 前記高分子分散剤は、アニオン性またはアニオノゲン性の基として、前記式(Ia)[式中、R
1は、HまたはCH
3である]の少なくとも1つの構造単位および/または前記式(Ib)[式中、R
3は、HまたはCH
3である]の少なくとも1つの構造単位および/または前記式(Ic)[式中、R
5は、HまたはCH
3であり、かつZは、Oである]の少なくとも1つの構造単位および/または前記式(Id)[式中、R
6は、Hであり、かつQは、Oである]の少なくとも1つの構造単位を有する、実施形態25記載の添加剤。
【0045】
27. 前記高分子分散剤は、アニオン性またはアニオノゲン性の基として、前記式(Ia)[式中、R
1はHもしくはCH
3であり、かつXR
2はOMであるか、またはXはO(C
nH
2n)(ここで、nは、1、2、3もしくは4であり、特に2である)でありかつR
2はO−PO
3M
2である]の少なくとも1つの構造単位を有する、実施形態25記載の添加剤。
【0046】
28. 前記高分子分散剤は、ポリエーテル側鎖として、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId):
【化9】
[式中、
R
10、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、
Zは、OまたはSであり、
Eは、非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
6−アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2C
6H
10、1,2−フェニレン、1,3−フェニレンもしくは1,4−フェニレンであり、
Gは、O、NHもしくはCO−NHであるか、または
EおよびGは一緒になって、化学結合であり、
Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5である)またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4および/または5であり、
aは、2〜350の整数であり、
R
13は、H、非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基、CO−NH
2および/またはCOCH
3である]、
【化10】
[式中、
R
10およびR
11は、それぞれ独立して、HまたはCH
3であり、好ましくはHであり、
Eは、C
2〜C
4−アルキレンであり、
Aは、C
xH
2xであり、ここで、xは、2または3であり、
aは、2〜200、特に2〜160であり、好ましくは5〜140であり、より好ましくは10〜80または20〜30であり、かつ
R
13は、HまたはC
1〜C
4−アルキルである]、
【化11】
[式中、
R
10およびR
11は、Hであり、かつ
aは、2〜200であり、好ましくは5〜160であり、より好ましくは10〜140であり、最も好ましくは20〜140または20〜30である]、
【化12】
[式中、
R
16、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、
Eは、非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
6−アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2C
6H
10、1,2−フェニレン、1,3−フェニレンもしくは1,4−フェニレンであるか、または化学結合であり、
Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5であり、好ましくは2もしくは3である)またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4または5であり、好ましくは0、1または2であり、
Lは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5であり、好ましくは2もしくは3である)またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、2〜350の整数であり、好ましくは5〜150の整数であり、
dは、1〜350の整数であり、好ましくは5〜150の整数であり、
R
19は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、かつ
R
20は、Hまたは非分枝状のC
1〜C
4−アルキル基である]、
【化13】
[式中、
R
21、R
22およびR
23は、それぞれ独立して、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、
Wは、O、NR
25またはNであり、
Vは、WがOまたはNR
25である場合には1であり、WがNである場合には2であり、
Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5であり、好ましくは2もしくは3である)またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、2〜350の整数であり、好ましくは5〜150の整数であり、
R
24は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、かつ
R
25は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基である]、
【化14】
[式中、
R
6は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、好ましくはHであり、
Qは、NR
10、NまたはOであり、
Mは、Hまたは1つのカチオン等価物であり、
Vは、WがOまたはNR
10である場合には1であり、WがNである場合には2であり、
R
10は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、かつ
Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5であり、好ましくは2もしくは3である)またはCH
2C(C
6H
5)Hであり、
R
24は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、かつ
aは、2〜350の整数であり、好ましくは5〜150の整数である]の少なくとも1つの構造単位を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0047】
29. 前記高分子分散剤は、ポリエーテル側鎖として、
(a) 前記式(IIa)[式中、R
10およびR
12は、Hであり、R
11は、HまたはCH
3であり、EおよびGは一緒になって、化学結合であり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、aは、3〜150であり、かつR
13は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基である]の少なくとも1つの構造単位および/または
(b) 前記式(IIb)[式中、R
16およびR
18は、Hであり、R
17は、HまたはCH
3であり、Eは、非分枝状または分枝状のC
1〜C
6−アルキレン基であり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、Lは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、aは、2〜150の整数であり、dは、1〜150の整数であり、R
19は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基であり、かつR
20は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基である]の少なくとも1つの構造単位および/または
(c) 前記式(IIc)[式中、R
21およびR
23は、Hであり、R
22は、HまたはCH
3であり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、aは、2〜150の整数であり、かつR
24は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基である]の少なくとも1つの構造単位および/または
(d) 前記式(IId)[式中、R
6は、Hであり、Qは、Oであり、R
7は、(C
nH
2n)−O−(AO)
a−R
9であり、nは、2および/または3であり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、aは、1〜150の整数であり、かつR
9は、Hまたは非分枝状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキル基である]の少なくとも1つの構造単位
を有する、実施形態28記載の添加剤。
【0048】
30. 前記高分子分散剤は、前記式(IIa)および/または(IIc)の少なくとも1つの構造単位を含む、実施形態28または29のいずれかに記載の添加剤。
【0049】
31. 前記高分子分散剤は、構造単位(III)および(IV)を含む重縮合生成物であり、
【化15】
[式中、
Tは、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基、または5〜10個の環原子を有する置換もしくは非置換の複素芳香族基であり、該環原子のうち1つまたは2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子であり、
nは、1または2であり、
Bは、N、NHまたはOであるが、但し、BがNである場合には、nは2であり、BがNHまたはOである場合には、nは1であり、
Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5である)またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、1〜300の整数であり、好ましくは5〜150の整数であり、
R
25は、H、分枝状もしくは非分枝状のC
1〜C
10−アルキル基、C
5〜C
8−シクロアルキル基、アリール基、または5〜10個の環原子を有するヘテロアリール基であり、該環原子のうち1つまたは2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子である]、
ここで、前記構造単位(IV)は、構造単位(IVa)および(IVb):
【化16】
[式中、
Dは、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基、または5〜10個の環原子を有する置換もしくは非置換の複素芳香族基であり、該環原子のうち1つまたは2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子であり、
Eは、N、NHまたはOであるが、但し、EがNである場合には、mは2であり、EがNHまたはOである場合には、mは1であり、
Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2、3、4もしくは5である)またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
bは、1〜300の整数であり、好ましくは1〜50の整数であり、
Mは、独立して、H、1つのカチオン等価物である]および
【化17】
[式中、
Vは、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基であり、ここで、Vは、R
8、OH、OR
8、(CO)R
8、COOM、COOR
8、SO
3R
8およびNO
2から独立して選択される1つまたは2つの基によって置換されていてもよく、好ましくは、OH、OC
1〜C
4−アルキルおよびC
1〜C
4−アルキルから独立して選択される1つまたは2つの基によって置換されていてもよく、
R
7は、COOM、OCH
2COOM、SO
3MまたはOPO
3M
2であり、
Mは、Hまたは1つのカチオン等価物であり、かつ
R
8は、C
1〜C
4−アルキル、フェニル、ナフチル、フェニルC
1〜C
4−アルキルまたはC
1〜C
4−アルキルフェニルである]から選択される、実施形態1から24までのいずれかに記載の添加剤。
【0050】
32. Tは、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基であり、Eは、NHまたはOであり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、aは、1〜150の整数であり、かつR
25は、Hまたは分枝状もしくは非分枝状のC
1〜C
10−アルキル基である、実施形態31記載の添加剤。
【0051】
33. Dは、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基であり、Eは、NHまたはOであり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2および/または3である)であり、かつbは、1〜150の整数である、実施形態31記載の添加剤。
【0052】
34. Tおよび/またはDは、1つもしくは2つのC
1〜C
4−アルキル基もしくはヒドロキシル基もしくは2つのC
1〜C
4−アルコキシ基によって置換されたフェニルまたはナフチルである、実施形態31から33までのいずれかに記載の添加剤。
【0053】
35. Vは、1つもしくは2つのC
1〜C
4−アルキル、OH、OCH
3もしくはCOOMによって置換されたフェニルまたはナフチルであり、かつR
7は、COOMまたはOCH
2COOMである、実施形態31記載の添加剤。
【0054】
36. 前記重縮合生成物は、式
【化18】
[式中、
R
5およびR
6は、同一であっても異なっていてもよく、H、CH
3、COOH、または置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基、または5〜10個の環原子を有する置換もしくは非置換の複素芳香族基であり、該環原子のうち1つまたは2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子である]のさらなる構造単位(V)を含む、実施形態31から35までのいずれかに記載の添加剤。
【0055】
37. R
5およびR
6は、同一であっても異なっていてもよく、H、CH
3もしくはCOOHであり、特にHであるか、またはR
5基およびR
6基のうち一方はHであり、他方はCH
3である、実施形態36記載の添加剤。
【0056】
38. 前記高分子分散剤は、前記式(I)および(II)の単位を有し、特に前記式(Ia)および(IIa)の単位を有する、実施形態1から30までのいずれかに記載の添加剤。
【0057】
39. 前記高分子分散剤は、前記式(Ia)および(IIc)の構造単位を有する、実施形態1から30までのいずれかに記載の添加剤。
【0058】
40. 前記高分子分散剤は、前記式(Ic)および(IIa)の構造単位を有する、実施形態1から30までのいずれかに記載の添加剤。
【0059】
41. 前記高分子分散剤は、前記式(Ia)、(Ic)および(IIa)の構造単位を有する、実施形態1から30までのいずれかに記載の添加剤。
【0060】
42. 前記高分子分散剤は、
(i)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレートホスフェートおよび/またはヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、ヒドロキシエチルアクリレートホスホネートおよび/またはヒドロキシエチルメタクリレートホスホネートから誘導されるアニオン性またはアニオノゲン性の構造単位と、
(ii)C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ビニルオキシC
2〜C
4−アルキレンポリエチレングリコール、ビニルオキシC
2〜C
4−アルキレンポリエチレングリコールC
1〜C
4−アルキルエーテル、アリルオキシポリエチレングリコール、アリルオキシポリエチレングリコールC
1〜C
4−アルキルエーテル、メタリルオキシポリエチレングリコール、メタリルオキシポリエチレングリコールC
1〜C
4−アルキルエーテル、イソプレニルオキシポリエチレングリコールおよび/またはイソプレニルオキシポリエチレングリコールC
1〜C
4−アルキルエーテルから誘導されるポリエーテル側鎖構造単位と
から形成される、実施形態1から30までのいずれかに記載の添加剤。
【0061】
43. 前記高分子分散剤は、構造単位(i)および(ii)から形成され、該構造単位(i)および(ii)は、
(i)ヒドロキシエチルアクリレートホスフェートおよび/もしくはヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、ならびに(ii)C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールアクリレートおよび/もしくはC
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)アクリル酸および/もしくはメタクリル酸、ならびに(ii)C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールアクリレートおよび/もしくはC
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)アクリル酸、メタクリル酸および/もしくはマレイン酸、ならびに(ii)ビニルオキシC
2〜C
4−アルキレンポリエチレングリコール、アリルオキシポリエチレングリコール、メタリルオキシポリエチレングリコールおよび/もしくはイソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導される、実施形態42記載の添加剤。
【0062】
44. 前記高分子分散剤は、構造単位(i)および(ii)から形成され、該構造単位(i)および(ii)は、
(i)ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、および(ii)C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールメタクリレートもしくはポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)メタクリル酸、および(ii)C
1〜C
4−アルキルポリエチレングリコールメタクリレートもしくはポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)アクリル酸およびマレイン酸、ならびに(ii)ビニルオキシC
2〜C
4−アルキレンポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)アクリル酸およびマレイン酸、ならびに(ii)イソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)アクリル酸、および(ii)ビニルオキシC
2〜C
4−アルキレンポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)アクリル酸、および(ii)イソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)アクリル酸、および(ii)メタリルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)マレイン酸、および(ii)イソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)マレイン酸、および(ii)アリルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)マレイン酸、および(ii)メタリルオキシポリエチレングリコールから誘導される、実施形態42記載の添加剤。
【0063】
45. 前記構造単位(I):(II)のモル比は、1:4〜15:1であり、特に1:1〜10:1である、実施形態25から30までのいずれかに記載の添加剤。
【0064】
46. 前記ポリエーテル側鎖のモル質量は、2000g/モル超であり、好ましくは4000g/モル超である、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0065】
47. 前記ポリエーテル側鎖のモル質量は、2000〜8000g/モルの範囲であり、特に4000〜6000g/モルの範囲である、実施形態46記載の添加剤。
【0066】
48. 前記高分子分散剤の電荷密度は、0.7〜1.5ミリモル/gの範囲であり、好ましくは0.8〜1.25ミリモル/gの範囲である、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0067】
49. 前記高分子分散剤のモル質量は、10000g/モル〜80000g/モルの範囲であり、好ましくは15000g/モル〜55000g/モルの範囲である、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0068】
50. 前記構造単位(III):(IV)のモル比は、4:1〜1:15であり、特に2:1〜1:10である、実施形態31から37までのいずれかに記載の添加剤。
【0069】
51. 前記構造単位(III+IV):(V)のモル比は、2:1〜1:3であり、特に1:0.8〜1:2である、実施形態31から37までのいずれかに記載の添加剤。
【0070】
52. 前記高分子分散剤は、前記式(III)および(IV)[式中、TおよびDは、フェニルまたはナフチルであり、ここで、前記フェニルまたはナフチルは、1つもしくは2つのC
1〜C
4−アルキル基またはヒドロキシル基または2つのC
1〜C
4−アルコキシ基によって置換されていてもよく、BおよびEは、Oであり、Aは、C
xH
2x(ここで、xは、2である)であり、aは、3〜150であり、特に10〜150であり、かつbは、1、2または3である]の構造単位から形成される、実施形態31から37までまたは50、51のいずれかに記載の添加剤。
【0071】
53. 前記高分子分散剤の存在下で前記多価金属カチオンの塩を析出させて、前記塩のコロイド分散調製物を得ることによって得ることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0072】
54. 前記多価金属カチオンの析出されたばかりの塩を前記高分子分散剤の存在下で分散させて、前記塩のコロイド分散調製物を得ることによって得ることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0073】
55. 前記コロイド分散配合物は、中和剤と混合される、実施形態53または54記載の添加剤。
【0074】
56. 前記式(a)による比は、1〜10の範囲である、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0075】
57. さらにケイ酸カルシウム水和物を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の添加剤。
【0076】
58. 前記ケイ酸カルシウム水和物は、前記添加剤の固形分ベースで25質量%〜75質量%の量で含まれている、実施形態57記載の添加剤。
【0077】
59. 実施形態1から58までのいずれかに記載の添加剤と、(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、シリカダスト、メタカオリン、天然ポゾラン、オイルシェール燃焼物、アルミン酸カルシウムセメントおよびそれらの混合物から選択される結合材とを含む、建材混合物。
【0078】
60. 水硬性結合材として(ポルトランド)セメントを含む、実施形態59記載の建材混合物。
【0079】
61. ポルトランドセメントを実質的に含まない(0質量%〜5質量%)、実施形態59記載の建材混合物。
【0080】
一実施形態によれば、金属カチオンは、以下の式(a):
【化19】
[式中、
z
K,iは、前記多価金属カチオンの電荷の量であり、
n
K,iは、前記量り入れられた多価金属カチオンのモル数であり、
z
S,jは、前記高分子分散剤中に存在する前記アニオン性およびアニオノゲン性の基の電荷の量であり、
n
S,jは、前記量り入れられた高分子分散剤中に存在する前記アニオン性およびアニオノゲン性の基のモル数であり、
前記添え字iおよびjは、互いに独立しており、かつ0より大きい整数であり、iは、異なる種類の多価金属カチオンの数であり、jは、前記高分子分散剤中に存在する異なる種類のアニオン性およびアニオノゲン性の基の数であり、ここで、zは、カチオンの電荷が常に完全な形式電荷に基づくように定められ、すなわちz
Fe(FeCl
3)=3、z
Fe(FeCl
2)=2となるように定められる]に相当する量で存在する。さらに、zは、最大限の脱プロトン化に伴うアニオン(有機ホスホネート、有機ホスフェートおよび適宜存在する無機アニオン)の形式電荷の量であり、すなわち、z
PO4(H
3PO
4)=z
PO4(Na
3PO
4)=3;z
PO4(H
3PO
4)=z
PO4(Na
3PO
4)=3、またはz
COO−=1;z
CO3(Na
2CO
3)=2、またはz
PO3(ビニルホスホネート)=z
PO4(フェノキシエタノールホスフェート)=2、またはz
CO3(Na
2CO
3)=2である。アルミン酸塩の場合には、この値は、z
AlO2(NaAlO
2)=z
AlO2(NaAl(OH)
4)=1に設定され、ケイ酸塩の場合には、この値はすべてのケイ酸塩種に関して、z
SiO3(Na
2SiO
3)=2に設定される。
【0081】
電荷z
S,jとモル数n
S,j(高分子分散剤1g当たりのミリモル数)との積全体の総和は、種々の公知の方法によって求めることができ、例えばJ. Plank et al., Cem. Conr. Res. 2009, 39, 1−5に記載のポリカチオンによる電荷密度滴定による測定によって求めることができる。さらに、従来技術に精通している当業者であれば、単純な計算で(例41の計算を参照)高分子櫛型ポリマーを合成するための出発モノマーの質量からこの値を求めることができよう。最後に、核磁気共鳴分光法(NMR)によりポリマー単位の比率を求めることによって、z
sとn
sとの積全体の総和の数値を実験的に得ることができる。この目的のために使用されるのは特に、櫛型ポリマーの
1H NMRスペクトルにおけるシグナルの積分である。
【0082】
多価金属カチオンは、Al
3+、Fe
3+、Fe
2+、Zn
2+、Mn
2+、Cu
2+、Ca
2+、Mg
2+、Sr
2+、Ba
2+およびそれらの混合物から選択され、好ましくはAl
3+、Fe
3+、Fe
2+、Mn
2+、Zn
2+、Ca
2+およびそれらの混合物から選択され、より好ましくはAl
3+、Fe
3+、Fe
2+、Ca
2+およびそれらの混合物から選択され、特にAl
3+、Fe
3+、Fe
2+およびそれらの混合物から選択される。
【0083】
好ましくは、使用される多価金属カチオンの塩の対アニオンは、該塩が良好な水溶性を有するように選択され、その際、20℃および標準圧力の標準条件下での溶解度は、好ましくは10g/l超であり、より好ましくは100g/l超であり、特に好ましくは200g/l超である。溶解度の数値は、20℃および標準圧力での脱イオン水中での塩の純物質の溶解平衡(MX=M
n++X
n−、ここで、M
n+:金属カチオン;X
n−:アニオン)に基づいており、プロトン化平衡(pH)および錯生成平衡に起因する影響は考慮していない。
【0084】
好ましいのは、硫酸アニオンまたは1価の対イオンであり、好ましくは硝酸アニオン、酢酸アニオン、ギ酸アニオン、硫酸水素アニオン、ハロゲン化物アニオン、ハロゲン化合物アニオン、擬ハロゲン化物アニオン、メタンスルホン酸アニオンおよび/またはアミドスルホン酸アニオンである。ハロゲン化物アニオンの群のうち特に好ましいのは、塩化物アニオンである。擬ハロゲン化物アニオンには、シアニドアニオン、アジドアニオン、シアン酸アニオン、チオシアン酸アニオン、雷酸アニオンが含まれる。金属塩として複塩を使用することも可能である。複塩とは、2つ以上の異なるカチオンを有する塩である。一例は、ミョウバン(KAl(SO
4)
2・12H
2O)であり、これはアルミニウム塩として適している。(反応物として)比較的高濃度の金属塩水溶液を確立することができるため、上述の対アニオンを有する金属カチオンの塩は、良好な水溶性を示し、したがって特に良好な適性を示す。
【0085】
高分子分散剤中に存在するアニオン性およびアニオノゲン性の基の電荷の量とは、アニオノゲン性基の完全な脱プロトン化が生じた場合に存在する電荷を指す。
【0086】
アニオン性基とは、高分子分散剤中に存在する脱プロトン化された酸基である。アニオノゲン性基とは、高分子分散剤中に存在する酸基である。高分子分散剤中に存在するアニオン性およびアニオノゲン性の基のモル量の総和を形成する際に、例えば部分的に脱プロトン化された塩基性酸基のような、アニオン性であると同時にアニオノゲン性でもある基は、専らアニオン性基でカウントされる。
【0087】
異なる種類の多価金属カチオンとは、異なる要素の多価金属カチオンを指す。さらに、異なる種類の多価金属カチオンとは、異なる電荷を有する同一の要素の金属カチオンをも指す。
【0088】
プロトン化による相互転化が不可能である高分子分散剤中のアニオン性およびアニオノゲン性の基は、異なる種類であると呼ばれる。
【0089】
式(a)による比は、好ましくは0.5〜40の範囲、1超から30までの範囲または1〜10の範囲である。好ましくはこの比は、1〜8、または1.1〜8、または1〜6、または1.1〜6、または1.2〜6の範囲であり、特に1〜5、または1.1〜5、または1.2〜5、または1.25〜5の範囲である。
【0090】
化学量論量を超える多価金属カチオンが存在する場合であっても、高分子分散剤中の酸基の一部は、アニオノゲン性基の形態で存在してもよい。
【0091】
好ましい一実施形態において、水硬性組成物用添加剤は、多価金属カチオンと難溶性の塩を形成しうるアニオンとして、少なくとも1つの有機ホスホネート化合物または有機ホスフェート化合物を含む。ここで、「難溶性の塩」とは、20℃および標準圧力の標準条件下での水への溶解度が5g/l未満であり、好ましくは1g/l未満である塩を指す。有機ホスフェートとは、1つまたは2つの酸素原子上に有機基を有する少なくとも1つのホスフェート基を有する化合物である。有機ホスホネートとは、リン原子に1つの有機基が結合している少なくとも1つのホスホネート基を有する化合物である。このホスフェート基およびホスホネート基中の有機基は好ましくは、置換されていてもよくかつ/または窒素原子および/もしくは酸素原子によって中断されていてもよいC
1〜C
12−アルキル基もしくはC
1〜C
12−アルケニル基であるか、または1〜300個、好ましくは2〜300個もしくは2〜100個のアルコキシ単位を有するポリ(C
2〜C
4−アルコキシ)基である。
【0092】
一実施形態において、有機ホスフェートまたは有機ホスホネートは、アニオン性および/もしくはアニオノゲン性の基とポリエーテル側鎖とを含む高分子分散剤とは異なり、かつ/またはホスホネート基もしくはホスフェート基を有する繰返し単位を含まない。
【0093】
さらなる一実施形態によれば、アニオンは、以下の式(b):
【化20】
[式中、
z
K,iは、前記多価金属カチオンの電荷の量であり、
n
K,iは、前記量り入れられた多価金属カチオンのモル数であり、
z
A,lは、前記量り入れられたアニオンの電荷であり、
n
A,lは、前記量り入れられたアニオンのモル数である]に相当する量で存在する。
【0094】
式(b)による比は好ましくは、0超から3までの範囲であり、好ましくは0.1〜2の範囲であり、より好ましくは0.2〜1.5の範囲である。本明細書中の開示には、式(a)に関する上述の範囲と式(b)に関するいずれかの範囲とのいかなる組み合わせも包含され、例えば式(a)に関して実施形態6、7および8に与えられた範囲と、式(b)に関して実施形態9および10に与えられた範囲とのいかなる組み合わせも包含される。例えば、本開示には、実施形態6の0.5以上40以下の範囲と、実施形態9および10における範囲のいずれかとのいかなる組み合わせも包含される。実施形態6、7および8の他の範囲についても同一のことが同様に該当し、また逆に、実施形態9および10における範囲と、実施形態6、7および8におけるいずれかの範囲との組み合わせについても同一のことが同様に該当する。
【0095】
好ましくは、多価金属カチオンと難溶性の塩を形成しうるアニオンの塩の対カチオンは、1価のカチオンまたはプロトンであり、好ましくはアルカリ金属カチオンおよび/またはアンモニウムイオンである。アンモニウムイオンは、有機アンモニウムイオンを含んでもよく、例えば1〜4個のアルキル基を有するアルキルアンモニウムイオンを含んでもよい。有機基は、本質的に芳香族であってもよいし、芳香族基を含んでいてもよい。アンモニウムイオンは、アルカノールアンモニウムイオンであってもよい。
【0096】
無機アニオンは、炭酸アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、リン酸アニオン、ポリリン酸アニオン、亜リン酸アニオン、ホウ酸アニオン、アルミン酸アニオンおよび硫酸アニオンから選択される。アニオンは好ましくは、炭酸アニオン、ケイ酸アニオン、リン酸アニオンおよびアルミン酸アニオンから選択される。アニオンはより好ましくは、リン酸アニオンである。
【0097】
上述のアニオンには、高分子ホウ酸アニオン、高分子ケイ酸アニオンおよび高分子シュウ酸アニオンならびにポリリン酸アニオンも含まれる。「高分子アニオン」という用語は、酸素原子と同様に、ホウ素、炭素、ケイ素およびリンの群からの少なくとも2つの原子を含むアニオンを意味すると理解される。特に好ましいのは、2〜20の原子数、特に好ましくは2〜14の原子数、最も好ましくは2〜5の原子数を有するオリゴマーである。ケイ酸アニオンの場合における原子数は、より好ましくは2〜14個のケイ素原子の範囲であり、ポリリン酸アニオンの場合には好ましくは2〜5個のリン原子の範囲である。
【0098】
ケイ酸アニオンを放出しうる化合物としては、Na
2SiO
3および水ガラスが挙げられ、これらが有する、SiO
2対アルカリ金属酸化物の比として定められる係数は、1/1〜4/1の範囲であり、より好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
【0099】
ケイ酸塩に関しては、該ケイ酸塩中のケイ素原子の一部をアルミニウムに置き換えることが可能である。相応する化合物は、アルミノケイ酸塩のクラスとして知られている。好ましくは、アルミニウムの割合は、ケイ素とアルミニウムとの合計に対して10モル%未満であり、より好ましくはアルミニウム分はゼロである。
【0100】
水硬性組成物用添加剤はさらに、少なくとも1つの中和剤を含んでもよい。
【0101】
好ましくは、中和剤は、有機アミン、ポリアミンまたはアンモニアである。なぜならば、これらの中和剤は、析出する塩の凝結をより効率的に防ぐためである。適切な有機アミンは特に、脂肪族モノアミンまたは脂肪族ポリアミンである。ポリアミンはまた、ジアミンおよびトリアミンである。
【0102】
中和剤は好ましくは、アンモニア、モノヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、ジヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、トリヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、モノC
1〜C
4−アルキルアミン、ジC
1〜C
4−アルキルアミン、トリC
1〜C
4−アルキルアミン、C
1〜C
4−アルキレンジアミン、(テトラヒドロキシC
1〜C
4−アルキル)C
1〜C
4−アルキレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンおよびそれらの混合物から選択される。
【0103】
より好ましくは中和剤は、アンモニア、モノヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、ジヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、トリヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミン、C
1〜C
4−アルキレンジアミンおよびポリエチレンイミンから選択される。
【0104】
特に好ましい中和剤は、アンモニア、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびポリエチレンイミンから選択される。
【0105】
好ましくは、水硬性組成物用添加剤は、8〜13のpH、好ましくは9〜13のpH、特に10〜13のpHを有する。
【0106】
アニオン性およびイオノゲン性の基は好ましくは、カルボキシル基、カルボキシレート基またはホスフェート基、ハイドロジェンホスフェート基またはジハイドロジェンホスフェート基である。
【0107】
一実施形態において、高分子分散剤は、上記で定義した一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)の少なくとも1つの構造単位を含み、その際、該構造単位(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)は、個々のポリマー分子内のみならず異なるポリマー分子間でも、同一であっても異なっていてもよい。
【0108】
上記式中のMは好ましくは、アルカリ金属イオンであり、特にナトリウムイオン、1/2アルカリ土類金属イオン(すなわち、1つの等価物)、特に1/2カルシウムイオン、アンモニウムイオン、または例えばC
1〜C
4−アルキルアミンまたはモノヒドロキシC
1〜C
4−アルキルアミンなどの有機アンモニウムイオンである。
【0109】
より好ましくは、式Iaによる構造単位は、メタクリル酸単位またはアクリル酸単位であり、式Icによる構造単位は、無水マレイン酸単位であり、式Idによる構造単位は、マレイン酸単位またはマレイン酸モノエステル単位である。
【0110】
モノマー(I)がリン酸エステルまたはホスホン酸エステルである限り、それらは、相応するジエステルおよびトリエステルを含んでもよく、そしてまた二リン酸のモノエステルも含んでよい。これらは総じて、有機アルコールを、リン酸、ポリリン酸、リン酸化物、ハロゲン化リンまたはオキシハロゲン化リンまたは相応するホスホン酸化合物、ならびにモノエステルにより、例えば5〜30モル%のジエステルおよび1〜15モル%のトリエステル、さらには2〜20モル%の二リン酸のモノエステルといった種々の割合でエステル化する間に生じる。
【0111】
一実施形態において、高分子分散剤は、上記で定義した一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)の少なくとも1つの構造単位を有する。一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および(IId)は、個々のポリマー分子内のみならず異なるポリマー分子間でも、同一であっても異なっていてもよい。構造単位Aはいずれも、個々のポリエーテル側鎖内のみならず異なるポリエーテル側鎖間でも、同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
より好ましくは、式IIaによる構造単位は、アルコキシル化イソプレニル単位、アルコキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテル単位、アルコキシル化(メタ)アリルアルコール単位またはビニル化メチルポリアルキレングリコール単位であり、これらはそれぞれ好ましくは、算術平均で2〜350個のオキシアルキレン基を有する。
【0113】
一実施形態によれば、高分子分散剤は、式(I)および(II)の構造単位を含む。式(I)および(II)の構造単位の他に、高分子分散剤は、ラジカル重合性モノマー、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(C
1〜C
4)−アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール、1−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ジブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジプロピルマレエートなどから誘導されるさらなる構造単位を含んでもよい。
【0114】
多価金属カチオンの塩および高分子分散剤の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された平均分子量M
wは概して、約15000〜約1000000の範囲である。
【0115】
高分子分散剤(櫛型ポリマー)の、好ましくは水溶性櫛型ポリマーの、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された平均分子量M
wは、好ましくは5000〜200000g/モルであり、より好ましくは10000〜80000g/モルであり、最も好ましくは15000〜70000g/モルである。該分子量を、以下に詳細に記載する通りに測定した。
【0116】
好ましくは該櫛型ポリマーは、工業規格EN 934−2(2002年2月)の要求を満たす。
【0117】
構造単位(I)および(II)を含む高分子分散剤の調製は、従来のように例えばラジカル重合によって行われる。これは、例えば欧州特許第0894811号明細書(EP 0894811)、欧州特許第1851256号明細書(EP 1851256)、欧州特許第2463314号明細書(EP 2463314)、欧州特許第0753488号明細書(EP 0753488)に記載されている。
【0118】
一実施形態において、高分子分散剤は、上記で定義した構造単位(III)および(IV)を含む重縮合生成物である。
【0119】
該重縮合生成物の一般式(III)および(IV)における構造単位TおよびDは、好ましくはフェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、ナフチル、2−ヒドロキシナフチル、4−ヒドロキシナフチル、2−メトキシナフチル、4−メトキシナフチル、フェノキシ酢酸、サリチル酸から誘導され、好ましくはフェニルから誘導され、その際、TおよびDは、互いに独立して選択されてよく、そしてまたそれぞれ上述の基の混合物から誘導されてもよい。基BおよびEは、互いに独立して、好ましくはOである。構造単位Aはいずれも、個々のポリエーテル側鎖内のみならず異なるポリエーテル側鎖間でも、同一であっても異なっていてもよい。特に好ましい一実施形態において、Aは、C
2H
4である。
【0120】
一般式(III)において、aは好ましくは、1〜300の整数であり、特に5〜150の整数であり、かつ一般式(IV)において、bは好ましくは、1〜300の整数であり、特に1〜50の整数であり、より好ましくは1〜10の整数である。さらに、一般式(III)または(IV)の基は、互いに独立して同一の鎖長を有してもよく、その際、aおよびbはそれぞれ、1つの数によって表される。総じて、それぞれの場合に異なる鎖長を有する混合物が存在して、重縮合生成物中の構造単位の基が、aについて、そして独立してbについて、異なる数値を有することが適切であろう。
【0121】
総じて、本発明による重縮合生成物は、5000g/モル〜200000g/モルの、好ましくは10000g/モル〜100000g/モルの、より好ましくは15000g/モル〜55000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0122】
構造単位(III):(IV)のモル比は典型的には、4:1〜1:15であり、好ましくは2:1〜1:10である。重縮合生成物中に比較的高い割合の構造単位(IV)を有することが有利である。なぜならば、ポリマーの負電荷が比較的高度であると、コロイド分散水性調製物の安定性に好影響を及ぼすためである。構造単位(IVa):(IVb)のモル比は、これらが双方とも存在する場合には典型的には、1:10〜10:1であり、好ましくは1:3〜3:1である。
【0123】
本発明の好ましい一実施形態において、重縮合生成物は、以下の式:
【化21】
[式中、
R
5は、H、CH
3、COOH、または置換もしくは非置換のフェニル、または置換もしくは非置換のナフチルであり、
R
6は、H、CH
3、COOH、または置換もしくは非置換のフェニル、または置換もしくは非置換のナフチルである]により表されるさらなる構造単位(V)を含む。
【0124】
好ましくは、R
5およびR
6は、Hであるか、またはR
5基およびR
6基のうち一方はHであり、他方はCH
3である。
【0125】
構造単位(V)中のR
5およびR
6は、典型的には同一であるかまたは異なり、かつH、COOHおよび/またはメチルである。極めて特に好ましいのは、Hである。
【0126】
もう1つの実施形態において、重縮合物における構造単位[(III)+(IV)]:(V)のモル比は、2:1〜1:3であり、好ましくは1:0.8〜1.2である。
【0127】
重縮合物は典型的には、構造単位(III)、(IV)および(V)のベースとなる化合物を互いに反応させる方法によって調製される。該重縮合物の調製は、例えば国際公開第2006/042709号(WO 2006/042709)および国際公開第2010/026155号(WO 2010/026155)に記載されている。
【0128】
ケト基を有するモノマーは、好ましくはアルデヒドまたはケトンである。式(V)のモノマーの例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、グリオキシル酸および/またはベンズアルデヒドである。ホルムアルデヒドが好ましい。
【0129】
本発明による高分子分散剤は、その塩の形態で、例えばナトリウム塩、カリウム塩、有機アンモニウム塩、アンモニウム塩および/またはカルシウム塩の形態で存在してもよく、好ましくはナトリウム塩および/またはカルシウム塩として存在してもよい。
【0130】
有機ホスホン酸またはホスホネート化合物は、市販されており、例えばZschimmer & Schwarz社よりCublen K3014(登録商標)、Cublen AP1(登録商標)およびCublen R60(登録商標)として市販されているか、またはSigma−Aldrich社製のビニルホスホン酸であるか、または例えば国際公開第2006042709号(WO 2006042709)、第13ページ第5行目〜第20行目に記載の公知の方法により調製可能である(フェノキシエタノールホスフェート)。
【0131】
添加剤は好ましくは、50%〜95%の水と、5%〜50%の固形物とを含み、より好ましくは45%〜85%の水と、15%〜45%の固形物とを含む。該固形物は、ポリマーと、本発明による多価金属カチオンの塩と、適宜さらなるアニオンの塩とを含み、ここで、前記塩のアニオンは、前記多価金属カチオンと難溶性の塩を形成する。
【0132】
一実施形態によれば、添加剤はさらに、ケイ酸カルシウム水和物を含み、特に、上記で詳細に説明され、かつアニオン性および/またはアニオノゲン性の基とポリエーテル側鎖とを含む高分子分散剤の存在下で調製されたケイ酸カルシウム水和物調製物を含む。そのようなケイ酸カルシウム水和物調製物は、例えば国際公開第2010/026155号(WO 2010/026155)に記載されており、該文献は完全に参照される。添加剤は総じて、該添加剤の固形分ベースで25質量%〜75質量%の範囲の量のケイ酸カルシウム水和物を含む。ケイ酸カルシウム水和物が上述の調製物の形態で存在する場合、この上記の量は、該調製物の全固形分をベースとする。
【0133】
本発明による添加剤は、溶液、エマルションまたは分散液の形態の水性生成物として存在してもよいし、固体の形態で存在してもよく、例えば乾燥ステップ後に粉末として存在してもよい。固体の形態の添加剤は、水中で再びコロイド状に分散しうる。固体の形態の添加剤の含水量は、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは5質量%未満である。水の一部を、好ましくは10質量%まで、有機溶媒で置き換えることもできる。有利な有機溶媒は、アルコール類、例えばエタノール、イソプロパノール、プロパノールおよび1−ブタノールであり、それらの異性体も含まれる。アセトンを使用することもできる。有機溶媒の使用によって、溶解度に、ひいては本発明による塩の結晶化特性に、影響を及ぼすことができる。
【0134】
本発明による添加剤は、多価金属カチオンの塩と高分子分散剤とを、水性媒体中で固体の形態でまたはポリマー溶融物中で接触させることによって製造される。好ましくは、多価金属カチオンの水溶性の塩が使用される。金属カチオンの塩は、固体の形態で提供されることができるが、適切には水溶液または懸濁液として提供されることができる。したがって、金属カチオンの塩を、粉末として、水溶液として、またはさもなくば水性スラリーとして、分散剤の水溶液に添加することが可能である。
【0135】
アニオンの水溶性の塩も同様に、固体の形態(イン・サイチュでの溶液の調製、またはポリマー溶融物との接触)で使用することもできるし、好ましくは水溶液の形態で使用することもできる。
【0136】
本発明による水硬性組成物用添加剤は、多価金属カチオンの塩を高分子分散剤の存在下で析出させて、該塩のコロイド分散調製物を得ることによって得ることができる。本明細書において、多価金属カチオンの塩の析出とは、高分子分散剤によって分散されてさらに凝結が妨げられるコロイド分散塩粒子の形成を意味する。
【0137】
あるいは、多価金属カチオンの塩が高分子分散剤の存在下で析出されるか否か、または析出されたばかりの多価金属カチオンの塩が高分子分散剤の存在下で分散されるか否かにかかわらず、本発明による水硬性組成物用添加剤は、該配合物をさらに上記の中和剤と混合することによって得ることもできる。
【0138】
添加剤は総じて、好ましくは水溶液の形態で存在する各成分を混合することによって調製される。これは好ましくは、まず高分子分散剤(櫛型ポリマー)と多価金属カチオンとを混合し、次いで該多価金属カチオンと難溶性の塩を形成しうるアニオンを添加することによって行われる。もう1つの実施形態によれば、高分子分散剤(櫛型ポリマー)と、多価金属カチオンと難溶性の塩を形成しうるアニオンとをまずは混合し、次いで該多価金属カチオンを添加する。pHを調整するために、次いで酸または塩基を添加することが可能である。各成分の混合は概して、5〜80℃の範囲の温度で、適切には10〜40℃の範囲の温度で、特に室温(約20〜30℃)で行われる。
【0139】
本発明による水硬性組成物用添加剤は、多価金属カチオンの析出されたばかりの塩を高分子分散剤の存在下で分散させて、該塩のコロイド分散調製物を得ることによっても得ることができる。「析出されたばかりの」とは、析出の直後を意味するものと理解され、すなわち析出の約5分以内、好ましくは2分以内または1分以内を意味するものと理解される。
【0140】
この調製は、連続式で行われても回分式で行われてもよい。各成分は概して、機械的撹拌機機構を備えた反応器中で混合される。この撹拌機機構の撹拌機速度は、10rpm〜2000rpmであってよい。あるいは、1000rpm〜30000rpmの範囲の撹拌機速度を有しうるロータ・ステータ混合機を使用して溶液を混合することもできる。さらに、他の混合形態を用いることもでき、例えばY型混合機を使用して溶液を混合する連続法を用いることもできる。
【0141】
場合により、水性分散液を乾燥させて、添加剤が固体の形態で、特に粉末の形態で存在するようにするために、さらなるプロセスステップが続いてよい。粉末の粒径は総じて、10〜500μmの範囲であり、好ましくは50〜200μmの範囲である(粉末の粒径は、Mastersizer 2000(Malvern Instruments Ltd.、英国)でのレーザー粒度分析により、機器内に実装された完全自動化測定プログラムによって測定した(選択した設定:撹拌速度40%および空気圧1.5バール))。この乾燥を、ローラー乾燥、噴霧乾燥、流動層法での乾燥により、高温での塊状物の乾燥または他の標準的な乾燥方法により行うことができる。乾燥温度の好ましい範囲は、50〜230℃である。
【0142】
本発明による水硬性組成物用添加剤は、水硬性結合材を含む含水建材混合物におけるスランプ保持剤として使用でき、ここで、該水硬性結合材は、(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、シリカダスト、メタカオリン、天然ポゾラン、オイルシェール燃焼物、アルミン酸カルシウムセメントおよびこれらの成分の2種以上の混合物から選択される。
【0143】
本出願における「スランプ保持剤」という用語は、添加剤によって、建材混合物と水との混合後に90分までの、好ましくは60分までの可使時間にわたって、特定の用途の条件に極めて大いに十分である結合材懸濁液の最大限のスランプが生じ、特に、モルタルまたはコンクリートの特性に悪影響を及ぼすことなく、特に初期強度に悪影響を及ぼすことなく上述の期間にわたって実質的に低下しないスランプが生じることを意味するものと理解される。本明細書において、初期強度とは、水硬性結合材との混合後12時間後のモルタルまたはコンクリートの曲げ強度および/または圧縮強度を意味するものと理解される。
【0144】
添加剤は、約12のpHで最適な可塑化をもたらすため、可塑化または初期強度に影響を及ぼすことなく、CSHを伴う無制限の使用が許容される。
【0145】
本発明による添加剤によってさらに、特定の用途に適合された特性プロファイルが可能となる。さらに、添加剤を、後のモルタルまたはコンクリートの段階ではなく、早期のセメント製造段階で添加することができる。その場合には添加剤は、同時に粉砕助剤の機能をも満たす。
【0146】
本発明によるコロイド分散配合物に加えて、本発明による高分子可塑剤、多価金属カチオンおよびアニオンから構成されるコンクリート添加剤は、さらにさらなる成分を含んでもよい。これらのさらなる成分としては、減水性可塑剤、例えばリグノスルホネート、ナフタレンスルホネート縮合物、スルホン化メラミン樹脂または従来のポリカルボキシレートエーテル、さらには消泡剤、空気細孔形成剤、遅延剤、収縮低減剤および/または硬化促進剤が挙げられる。
【0147】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1つの添加剤と少なくとも1つの結合材とを含む建材混合物に関する。該結合材は好ましくは、(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、シリカダスト、メタカオリン、天然ポゾラン、オイルシェール燃焼物、アルミン酸カルシウムセメントおよびそれらの混合物から選択される。該建材混合物はさらに、標準的な成分、例えば硬化促進剤、硬化遅延剤、クレー変性剤、収縮低減剤、防食剤、強度向上剤、減水剤などを含んでもよい。
【0148】
本発明による添加剤の計量供給量は総じて、固体の形態で、かつ建材混合物のセメント含量を基準として、0.1質量%〜4質量%である。この計量供給を、コロイド分散水性調製物の形態で行うことも、乾燥固体の形態で、例えば粉末の形態で行うこともできる。
【0149】
実施例
ゲル浸透クロマトグラフィー
GPC緩衝液中のポリマー濃度が0.5質量%となるようにGPC緩衝液にポリマー溶液を溶解させることにより、モル質量を測定するためのサンプル調製を行った。その後、この溶液を、ポリエーテルスルホン膜および孔径0.45μmを有するシリンジフィルターを通してろ過した。このろ液の注入体積は、50〜100μlであった。
【0150】
UV検出器(Waters 2487)およびRI検出器(Waters 2410)を備えたWaters Alliance 2690 GPC装置で分子量を測定した。
【0151】
カラム:SB−800 HQシリーズ用Shodex SB−G Guard Column
Shodex OHpak SB 804HQおよび802.5HQ
(PHMゲル、8×300mm、pH4.0〜7.5)
溶出液:0.05Mの水性ギ酸アンモニウム/メタノール混合物=80:20(体積部)
流量:0.5ml/分
温度:50℃
注入:50〜100μl
検出:RIおよびUV。
【0152】
PSS Polymer Standards Service GmbH社製ポリエチレングリコール標準物質に対してポリマーの分子量を測定した。このポリエチレングリコール標準物質の分子量分布曲線を、光散乱によって測定した。このポリエチレングリコール標準物質の質量は、682000、164000、114000、57100、40000、26100、22100、12300、6240、3120、2010、970、430、194、106g/モルであった。
【0153】
ポリマー合成
櫛型ポリマーP1は、モノマーのマレイン酸、アクリル酸およびビニルオキシブチルポリエチレングリコール−5800をベースとする。マレイン酸に対するアクリル酸のモル比は、7である。M
wは40000g/モルであり、これをGPCにより測定した。固形分は、45質量%である。この合成は、例えば欧州特許第0894811号明細書(EP 0894811)に記載されている。電荷密度は、0.93μeq/gである。
【0154】
ポリマーP2
温度計、還流冷却器および第2の供給部への接続部を備えた1Lのジャケット付き反応器に、最初に水500g、ビニルオキシブチルポリエチレングリコール(VOBPEG3000)350g(116.7ミリモル)、FeSO
4 0.01g、メルカプトエタノール1.55gおよびBrueggolit FF06(スルフィン酸系還元剤;Brueggemann KG)3.5gを装入した。その後、アクリル酸25.48g(99%、350.0ミリモル)および50%H
2O
2 1.8gを加えた。20分後、このポリマー溶液を、20%NaOH 69gで中和する。固形分は、41.0%である。分子量は、37500g/モルである。電荷密度は、0.897μeq/gである。
【0155】
実例的な電荷密度の計算:
【化22】
【0156】
ポリマーP2に関する例示的な計算(出発質量については、ポリマー合成を参照)
【化23】
【0157】
例A1を参照した場合の式(a)の例示的な計算:
相応する質量を、表2 Composition of the additivesから読み取る。ポリマーP1の質量:7.4gおよび硝酸カルシウムの質量:1.5g。
【0158】
したがって:
n
K=1.5g/164g/モル=9.2ミリモルであり、
n
S=7.4g×0.93ミリモル/g=6.88ミリモルであり、
かつ、
【化24】
である。
【0159】
【表1】
【0160】
本発明による添加剤の調製に関する例
アニオンとして使用するホスホネート化合物およびホスフェート化合物を、以下の化合物から誘導した:
【化25】
【0161】
添加剤A1〜A9ならびに比較添加剤C1およびC2の調製:
櫛型ポリマーの水溶液を、撹拌によって、本発明による金属カチオンの塩、本発明によるアニオン化合物またはC1およびC2のアニオンと混合し、適宜塩基または酸と混合してpHを調整する。この混合を、パドル型撹拌機を備えた1Lのジャケット付きガラス反応器中で、300rpmで、制御された20℃の温度で行う。添加の順序は、文字の符号によって表に記載されている。Pは、櫛型ポリマーの水溶液を表し、Kは、本発明による金属カチオンの塩を表し、Aは、本発明によるアニオン化合物を表し、BおよびSはそれぞれ、塩基および酸を表す。PKABの符号は、例えば、ポリマーPを最初に装入し、次いで金属カチオンの塩Kを添加することを意味する。これに続いて、アニオン化合物Aの添加および塩基Bの添加を行う。これらの量は常に、固形分をベースとする。得られた懸濁液の最終pHも、同様に記載されている。
【0162】
添加剤の組成を、以下の表2にまとめる:
【表2】
【0163】
本発明の添加剤A10ならびに比較添加剤C3およびC4の調製:
添加剤A2を、固形物比1:1でケイ酸カルシウム水和物懸濁液(C−S−HまたはCSH)と混合した。pHは11.9であることを確認した。
【0164】
ケイ酸カルシウム水和物懸濁液の調製は、国際公開第2010/026155号(WO 2010/026155 A1)(促進剤例5、第40ページの表)に記載されている。
【0165】
添加剤C3およびC4は、C−S−Hとの混合物(国際公開第2010/026155号(WO 2010/026155)により調製)で、国際公開第2014/013077号(WO 2014/013077)による添加剤の比較例としての役割を果たす。添加剤C3は、添加剤C1にさらに固形物比1:1でCSHを含ませたものである。C3の場合には、pHは11.4であることを確認した。添加剤C4は、添加剤C2にさらに固形物比1:1でCSHを含ませたものである。C4の場合には、pHは11.6であることを確認した。
【0166】
本発明の添加剤A11の調製:
添加剤A4を、A10と同様に固形物比1:1で、同一のケイ酸カルシウム水和物懸濁液(国際公開第2010/026155号(WO 2010/026155)により調製)と混合した。pHは12であることを確認した。
【0167】
適用試験
モルタル試験
用いたモルタル試験は、Bernburg CEM I 42.5 R(w/c 0.42)を用いたDIN EN 1015−3による標準モルタル試験であった。砂:セメントの質量比は、2.2:1であった。標準砂(Normensand GmbH、D−59247 Beckum)70質量%と石英砂30質量%との混合物を使用した。モルタルにおける試験の前に、添加剤の固形分ベースで1質量%のトリイソブチルホスフェートを用いて、添加剤試料を消泡処理した。
【0168】
混合操作
セメントを、水の初期装入物に導入した。これを、時間0秒と定める。これに続き、レベル1で30秒間撹拌した。次いで砂を加え、この混合物をレベル1(140rpm)でさらに30秒間混合し、レベル2(285rpm)でさらに30秒間撹拌した。次いで、撹拌を90秒間停止した。この時間間隔内に、添加剤を水性調製物として添加した。ここでこの添加剤と共に添加した水を、相応して練りまぜ水の量から差し引いた。最後にこの混合物を、レベル2でさらに60秒間撹拌した。このように4分間であった全混合時間の後に、最初のスランプを測定した。
【0169】
フローテーブルを上記のDIN法により振動させ、これを15回上下させること(ノッキング)によってスランプを測定した。ノッキング後のモルタルケークの直径を、スランプと呼ぶ。デルタとは、30分後の当該添加剤についてのスランプを4分後のスランプと比較した差を指す。
【0170】
生成されたモルタル混合物を用いてプリズムを作製して、DIN EN 196−1により曲げ強度および圧縮強度を測定する。
【0171】
記載された計量供給量は、使用した添加剤の固形分をベースとする。
【0172】
添加剤A1〜A9ならびに比較添加剤C1およびC2についての結果を表3にまとめ、添加剤A10およびA11ならびに比較添加剤C3およびC4についての結果を表4にまとめる。
【0173】
【表3】
【0174】
【表4】
【0175】
モルタル結果が示すように、本発明による添加剤は、コンシステンシーの優れた保持を示す。加えて、本発明による添加剤の初期強度は向上する:本発明の添加剤A10およびA11に関する12時間後の強度を参照。
【0176】
さらなる実験において、添加剤A2、A4およびC1について上記で与えられた成分を用いたがケイ酸カルシウム水和物を添加せずに、添加剤A12およびA13ならびにC5を調製した。上記のようにモルタル混合物を調製し、これらを使用してプリズムを作製して、DIN EN 196−1により7日後の圧縮強度を測定した。結果を、以下の表5に示す。
【0177】
【表5】
【0178】
以上のように、本発明の添加剤A12およびA13によって、添加剤C5と比較して、スランプ保持性の向上と、7日後の圧縮強度の増加とが組み合わせてもたらされる。このように、本発明の添加剤は、モルタルがより長い可使時間を保つと共に、すでに7日後には型枠を外すことができるため、早い時点で建築を引き続き行うことができるという利点を有する。