特表2018-520943(P2018-520943A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-520943チルトモータ車両の前車部及びそのモータ車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-520943(P2018-520943A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】チルトモータ車両の前車部及びそのモータ車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/05 20130101AFI20180706BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20180706BHJP
【FI】
   B62K5/05
   B62K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-503790(P2018-503790)
(86)(22)【出願日】2016年7月28日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月21日
(86)【国際出願番号】IB2016054520
(87)【国際公開番号】WO2017017636
(87)【国際公開日】20170202
(31)【優先権主張番号】102015000039551
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AD03
(57)【要約】
前車部フレーム(16)と、中間部ヒンジに対応して前車部フレーム(16)にヒンジ止めされた一対の交差部材を備える関節型四辺形によって前車部フレーム(16)に運動学的に接続された一対の前輪(10´、10´´)とを備えるモータ車両前車部(8)であって、前記交差部材は、側部ヒンジに対応して横方向端部に対して回動する直立部によって、対向する横方向端部に対応して互いに接続され、各々の直立部は、前輪(10´、10´´)の回転ピンに機械的に接続されているスタブ車軸を案内し支持し、前車部(8)は、各スタブ車軸に対応して、関連するスタブ車軸に機械的に接続されてそれぞれの操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を中心としたスタブ車軸及び関連する前輪(10´、10´´)の操舵を可能にする操舵タイロッドをさらに備える、モータ車両前車部(8)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車部フレーム(16)と、
関節型四辺形(20)によって前記前車部フレーム(16)に運動学的に接続された一対の前輪(10´、10´´)と、を備え、
前記関節型四辺形(20)が、中間部ヒンジ(28)に対応して前記前車部フレーム(16)にヒンジ止めされた一対の交差部材(24´、24´´)を備え、
前記交差部材(24´、24´´)が、側部ヒンジ(52)に対応して横方向端部(40,44)に対して回動する直立部(48,48´、48´´)によって、対向する前記横方向端部(40,44)に対応して互いに接続され、
前記交差部材(24´、24´´)及び前記直立部(48,48´、48´´)が、前記関節型四辺形(20)を画定し、
前記直立部(48、48´、48´´)の各々は、前輪(10´、10´´)のスタブ車軸(56)を案内及び支持し、前記各直立部(48)は、上端部(60)から下端部(64)まで延出し、
前記左右直立部(48´、48´´)は、互いに平行なそれぞれの操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を中心として、前記左右前輪(10´、10´´)を回転可能にそれぞれ支持し、
前記各スタブ車軸(56)は、関連する回転軸(R−R)を中心として前記前輪(10´、10´´)を回転可能に支持するように、前記前輪(10´、10´´)の回転ピン(68)に機械的に接続され、
前記前車部(8)は、前記各スタブ車軸(56)に対応して、関連する前記スタブ車軸(56)に機械的に接続されて、それぞれの操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を中心に前記スタブ車軸(56)及び関連する前記前輪(10´、10´´)の操舵を可能にする操舵タイロッド(70)を備えることを特徴とし、
前記操舵タイロッド(70)は、それぞれの前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を中心として回転可能であって、第1の固定端部(72)から第2の固定端部(74)まで延出し、前記第1の固定端部(72)が、前記直立部(48)の前記上端部(60)に接続され、前記第2の固定端部(74)が、前記スタブ車軸(56)に接続され、前記第2の固定端部(74)は、前記第1の固定端部(72)に対して、少なくとも、前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)に平行なスプリンギングまたはバンピング方向(B‐B)に対して移動可能であって、前記バンピング方向(B‐B)に平行なバンピング運動において前記スタブ車軸(56)に追従するようになっていることを特徴とするモータ車両前車部(8)。
【請求項2】
前記各操舵タイロッド(70)は、前記前車部(8)のハンドルバーに動作可能に接続された少なくとも1つの制御ロッド(76)に機械的に接続されている、請求項1に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項3】
前記各スタブ車軸(56)の前記操舵タイロッド(70)は、前記前車部(8)の前記ハンドルバーに動作可能に接続された同じ前記制御ロッド(76)に接続されている、請求項1または2に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項4】
前記各操舵タイロッド(70)が、それぞれの前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を中心とした前記スタブ車軸(56)の回転を可能にするために、回転トルクをそれぞれの前記スタブ車軸(56)に伝達するように成形されている、請求項1,2または3に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項5】
前記各操舵タイロッド(70)は、前記第1の固定端部(72)及び第2の固定端部(74)に対応して配置された固定ヒンジ(82)を用いて前記前車部(8)にヒンジ止めされ、また前記各スタブ車軸(56)の前記バンピング運動の関数として前記第1の固定端部(72)及び前記第2の固定端部(74)の間の距離を変化させることによって接続ロッド(78、80)の相互の回転運動を可能にするように中間点(84)でそれぞれ互いにヒンジ止めされた、一対の前記接続ロッド(78、80)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項6】
前記固定ヒンジ(82)及び前記中間点(84)上のヒンジが、互いに平行なヒンジ軸を画定する、請求項5に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項7】
前記接続ロッド(78,80)の間には、関連する前記スタブ車軸(56)のバンピング運動に影響を及ぼすように少なくとも1つのばね(86)及び/またはダンパ(88)を備えるサスペンションが介在する、請求項5または6に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項8】
前記各操舵タイロッド(70)が、前記各スタブ車軸(56)の前記バンピング運動の関数として前記第1の固定端部(72)と前記第2の固定端部(74)との間の距離を変化させることによって伸縮ロッド(90)の並進運動を可能にするように前記第1の固定端部(72)及び前記第2の固定端部(74)に対応して取り付けられている前記伸縮ロッド(90)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項9】
前記伸縮ロッド(90)が、ステム(92)と、前記ステム(92)の少なくとも一部を収容し、かつ前記バンピング方向(B‐B)に平行な並進運動において前記ステム(92)に案内されるシース(94)とを備える、請求項8に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項10】
前記伸縮ロッド(90)には、関連する前記スタブ車軸(56)の前記バンピング運動に影響を及ぼすように少なくとも1つのばね(86)及び/またはダンパ(88)を備えるサスペンションが関連付けられている、請求項8または9に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項11】
前記各操舵タイロッド(70)が、前記各スタブ車軸(56)の前記バンピング運動の関数として前記第1の固定端部(72)と前記第2の固定端部(74)との間の距離を変化させることによって前記伸縮ロッド(90)の並進運動を可能にするように前記第1の固定端部(72)及び前記第2の固定端部(74)に対応して取り付けられている板ばね(96)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項12】
前記板ばね(96)が、前記前車部(8)の前記関節型四辺形(20)に対して前記スタブ車軸(56)のサスペンションを実現する、請求項11に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項13】
前記板ばね(96)が、全体的に「C」字形を有する、請求項11または12に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項14】
前記前輪(10´、10´´)の前記各回転ピン(68)は、前記関節型四辺形(20)の対応する前記直立部(48,48´、48´´)の前記上端部(60)及び前記下端部(64)の間に含まれている、請求項1から13のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項15】
前記各前輪(10)の前記各回転ピン(68)が、前記関節型四辺形(20)の前記交差部材(24)の隣接する前記側部ヒンジ(52)の間に含まれている、請求項1から14のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項16】
前記前車部(8)は、前記各前輪(10´、10´´)のそれぞれの前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を中心とした前記スタブ車軸(56)の回転を制御するように、前記前輪(10´、10´´)の前記スタブ車軸(56)と前記前車部(8)の前記操舵タイロッド(70)とに接続された少なくとも1つのブラケット(98)を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項17】
前記ブラケット(98)が前記各前輪(10´、10´´)の制動手段(100)を支持している、請求項16に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項18】
前記制動手段(100)が、前記前輪(10´、10´´)と一体で回転するブレーキディスク(102)を跨いで配置されたディスクブレーキ用キャリパーを備える、請求項17に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項19】
前記ブラケット(98)が、前記直立部(48)の下端部(64)の側部から対応する前記直立部(48)を跨いで延出する、請求項16,17または18に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項20】
前記スタブ車軸(56)が、前記直立部(48)と同軸に配置されたスリーブ(104)を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項21】
前記スタブ車軸(56)と前記直立部(48)との間には前記前輪(10´、10´´)のサスペンション手段が配置され、前記サスペンション手段が、前記ばね(86)及び/または前記ダンパ(88)を備える、請求項1から20のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項22】
前記直立部(48)は、前記前輪(10´、10´´)の前記サスペンション手段を少なくとも部分的に内部に収容するように中空である、請求項21に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項23】
前記各前輪(10´、10´´)は、タイヤ(108)を支持し、かつ関連する前記スタブ車軸(56)によって回転可能に支持されている車輪リム(106)を備え、前記スタブ車軸(56)及び前記操舵タイロッド(70)は、前記車輪リム(106)によって区切られた容積内に少なくとも部分的に収容されている、請求項1から22のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項24】
前記スタブ車軸(56)、前記操舵タイロッド(70)及び前記直立部(48)は、前記車輪リム(106)によって区切られた容積内に一体的に収容されている、請求項23に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項25】
前記ヒンジ(28,52)は、互いに平行であり、また、前記中間部ヒンジ(28)を通過する投影面(P)に対して前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)が前記中間部ヒンジ軸(W‐W)及び前記側部ヒンジ軸(Z‐Z)に対して角度(α)であり、前記角度(α)は80°〜120°であり、好ましくは前記角度(α)は90°〜110°であるように配向されている、請求項1から24のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項26】
前記中間部ヒンジ(28)を通過する前記投影面(P)に関して、前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)が、地面に垂直な鉛直方向(N‐N)に対して5°〜20°、さらに好ましくは8°〜16°の操舵角(β)で傾斜している、請求項1から25のいずれか一項に記載のモータ車両前車部(8)。
【請求項27】
後車軸の駆動輪と前車部(8)とを有する、請求項1から26のいずれか一項に記載のモータ車両(4)。
【請求項28】
前記モータ車両(4)が、前記後車軸(12)に2つの後部駆動輪(14)を備える、請求項27に記載のモータ車両(4)。
【請求項29】
前記後車軸(12)の前記後部駆動輪(14)は、請求項1から26のいずれか一項に記載の前記関節型四辺形(20)によって互いに、かつ後車軸フレームに接続されている、請求項28に記載のモータ車両(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルトモータ車両の前車部及びそのモータ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、後部駆動輪と、操舵輪及び傾斜輪の2つとを備えた(すなわち前部で転がりまたは傾斜する)3輪モータ車両が当業界には存在する。
【0003】
したがって、後輪はトルクを提供して牽引を可能にし、一方、対になった前輪は車両の方向性を提供することを意図している。
【0004】
2つの後輪の代わりに2つの前輪を使用することにより、トルク伝達のための差動装置の使用を回避する。このようにして、後車軸におけるコストと重量の削減を達成することができる。
【0005】
前車部(フォアキャリッジ)にある対になった車輪は、操舵に加えて傾斜及び転がりが可能である。このように、前車部に2つの車輪を有する車両は、後車軸に2つの車輪を有する3輪車両と比較して、バイクのようにコーナリング時に車両をチルトすることができるため、実際のバイクと同等である。
【0006】
しかし、前車部に対になった2つの車輪を有するこのような車両は、2輪のみの車両と比較して、自動車と同様に前輪が地面に二重に置かれていることによって、より大きな安定性が確保されている。
【0007】
前輪は、運動学的機構によって互いに運動学的に接続されており、これによって、例えば関節型四辺形を介在させて同期的かつ鏡面的な転がり及び/または操舵を可能にする。
【0008】
前輪の操舵角に関しては、例えばコーナリング時に外輪がより開いたままである車型の操舵を行う場合などに、前輪間で異なる操舵角を与えることも可能である。
【0009】
このように、チルト3輪モータ車両は、2輪モータサイクルのハンドリング性と同時に、4輪車両の安定性及び安全性をユーザに提供するように設計される。
【0010】
実は、より大きな安定性には、2輪モータ車両と比較して、必然的に車両の構造を重くする(第3の車輪とそれに関する運動学的機構など)追加要素の存在が必要であるため、予め定められた2つの目標は相反する。
【0011】
さらに、3輪「のみ」の存在では、4輪車両の安定性とロードホールディングを保証できない。
【0012】
したがって、安定性とハンドリング性、ならびに信頼性と低コストを確保しつつ、これらの相反する目的を取り持つことができる3輪車両を開発することが不可欠である。
【0013】
さらに、このようなタイプの車両では操舵運動を車輪のスプリンギング運動または鉛直なバンピングから切り離すことが重要であるため、2つの操舵前輪を備えたこのような車両の操舵システムには特に問題がある。実際、操舵運動と車輪の運動が結合した場合、各々が車輪の中心線を通る車輪面が発散し、例えば車輪の異なるスプリンギング運動(例えば、障害物や非対称の窪みによる、または2つの車輪のうちの1つのみに発生することによる)によって、その平行度が失われる状況が生じる可能性がある。
【0014】
さらに、操舵運動と車輪のスプリンギング運動または鉛直なバンピングとの結合は、前輪間の対称的なスプリンギングの場合には車輪面を互いに平行に保ちつつ、操舵制御をスピンさせる可能性がある。
【0015】
車輪面間の発散または平行な車輪面との操舵反力の2つの前述の状況は、操舵運動と車輪のスプリンギング運動または鉛直なバンピングとの間の結合に両方とも起因し、車両の動的挙動における欠点である。
【0016】
実際、車輪面間の発散は、ハンドルバーの操舵角によって設定される車両の方向性をあまり正確にしない一方で、車輪の反力(互いに平行ではあるが)がハンドルバーに伝達されると、低いハンドリング性及び操舵精度の感覚をドライバーに与えるだけでなく、場合によっては、関係する望ましくない旋回による偶発的な操舵を誘発する。
【0017】
このような目的を達成するためには、前輪の操舵部材の特定の幾何形状だけでなく、操舵及び転がりまたは傾斜の動きにおいて前輪の支持を担う、フレームの前部分または前車部の特定の幾何形状を開発しなければならない。
【発明の概要】
【0018】
前述の問題を解決するために、前車部が2輪の3輪車両の技術には今日まで多くの解決策が採用されている。
【0019】
先行技術のそのような解決策は、上記の安定性及びハンドリング性の必要性を最適化することができない。
【0020】
したがって、先行技術に関して言及した欠点及び制限を解決する必要があると考えられる。
【0021】
この要件は、請求項1に記載のモータ車両前車部及び請求項27に記載のモータ車両によって満たされる。
【0022】
本発明のさらなる特徴及び利点は、その好ましくかつ非限定的な実施形態の以下の記載からより明白に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による前車部を含むモータ車両の部分斜視図である。
【0024】
図2図1の矢印II側から見た図1のモータ車両の側面図を示す。
【0025】
図3図1の矢印III側から見た図1のモータ車両の正面図を示す。
【0026】
図4図1の矢印IV側から見た図1のモータ車両の平面図を示す。
【0027】
図5】本発明によるモータ車両前車部の部分斜視図を示す。
図6】本発明によるモータ車両前車部の部分斜視図を示す。
【0028】
図7a】本発明によるモータ車両の車輪の部分斜視図を示す。
【0029】
図7b】本発明によるモータ車両前車部のコンポーネントの部分側面図を示す。
【0030】
図8a】本発明によるモータ車両に適用されるサスペンションの断面の斜視図を示す。
【0031】
図8b】本発明によるモータ車両前車部のコンポーネントの部分側面図を示す。
【0032】
図9】本発明の一実施形態による操舵タイロッドを備える前車部の部分斜視図を示す。
図10】本発明の一実施形態による操舵タイロッドを備える前車部の部分斜視図を示す。
図10b】本発明の一実施形態による操舵タイロッドを備える前車部の部分斜視図を示す。
【0033】
図11】本発明のさらなる実施形態による操舵タイロッドを備える前車部の部分斜視図を示す。
図12a】本発明のさらなる実施形態による操舵タイロッドを備える前車部の部分斜視図を示す。
図12b】本発明のさらなる実施形態による操舵タイロッドを備える前車部の部分斜視図を示す。
【0034】
以下に説明する実施形態の共通の要素または要素の部分は、同じ参照番号を使用して示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
前述の図を参照すると、参照番号4は、本発明によるモータ車両の図式的な全体図を全体的に示す。
【0036】
本発明の目的のためには、モータ車両という用語は、少なくとも3輪、すなわち以下によりよく説明するように2つの整列した車輪と、少なくとも1つの後輪とを有するあらゆるモータサイクルを包含する、広範な意味で考える必要があることを指摘しなければならない。したがって、このような定義は、前車部に2輪を有し、後車軸に2輪を有する、いわゆる4輪オートバイをも含む。
【0037】
モータ車両4は、少なくとも2つの前輪10を支持する前車部8から、1つ以上の後輪14を支持する後車軸12まで延出する、フレーム6を備える。左前輪10´と右前輪10´´とを区別することが可能であり、左10´及び右10´´の定義は純粋に形式的なものであり、車両の運転者に関連して意味する。車輪は、モータ車両を運転する運転者の観察点と比較して、モータ車両の中心線面M‐Mの左右に配置される。
【0038】
以下の説明において、また図面においても、車両を運転する運転者の観察点と比較して前車部の左右コンポーネントをそれぞれ示すために、引用符´及び´´を用いて中心線面M‐Mに関する前車部の対称または鏡面要素に言及する。
【0039】
本発明の目的のために、モータ車両のフレーム6は、任意の形状、サイズであってもよく、例えば、格子タイプ、ボックスタイプ、クレードル、シングルまたはダブルなどであってもよい。
【0040】
モータ車両のフレーム6は、一体または複数の部品であり得る。例えば、モータ車両のフレーム6は、後車軸フレーム13と相互接続し、後車軸フレーム13は、1つ以上の後部駆動輪14を支持する振動する後部フォーク(図示せず)を備えていてもよい。
【0041】
前記後部振動フォークは、直接ヒンジによって、またはレバー機構及び/または中間フレームの介在によってフレーム6に接続されてもよい。
【0042】
モータ車両前車部(Motor vehicle forecarriage)8は、前車部フレーム16と、関節型四辺形20によって前車部フレーム16に運動学的に接続された一対の前輪10とを備える。
【0043】
関節型四辺形20は、中間部ヒンジ28に対応して前車部フレーム16にヒンジ止めされた、一対の交差部材24,24´、24´´を備える。
【0044】
中間部ヒンジ28は、互いに平行な中間部ヒンジ軸W−Wを識別する。
【0045】
例えば、前記中間部ヒンジは、長手方向X‐Xまたはモータ車両の走行方向を通る中心線面M‐Mを跨ぐように配置されたフロントビーム32に取り付けられている。
【0046】
例えば、モータ車両4のハンドルバー(図示せず)に接続された操舵機構36は、モータ車両4のフレーム6の操舵チューブ35内を旋回するように挿入された操舵コラム34上で回動する。
【0047】
交差部材24は、対向する横方向端部40,44間の主横方向Y‐Yに延出する。
【0048】
特に、前記交差部材24は、側部ヒンジ52に対応して前記横方向端部40,44に対して回動する直立部48,48´、48´´によって、前記対向する横方向端部40,44に対応して互いに接続されている。
【0049】
一実施形態では、交差部材24,24´、24´´は、フロントビーム32に対して片持ちに取り付けられる。
【0050】
交差部材24及び直立部48は、前記関節型四辺形20を画定する。具体的には、四辺形は、2つの交差部材24、すなわち上部交差部材24´と下部交差部材24´´とを備え、上部交差部材は関連するハンドルバーの側部に面し、下部交差部材24´´はモータ車両を支持している地面に面している。
【0051】
交差部材は、形状、材質、サイズの面で必ずしも同じである必要はなく、各交差部材24は、一体部品、または例えば溶接、ボルト、リベットなどによって機械的に取り付けられた2つ以上の部品で作ることができる。
【0052】
2つの直立部48、特に左側直立部48´と右側直立部48´´がある。
【0053】
左右直立部48´、48´´の定義は純粋に形式的なものであり、車両の運転者に関連して意味する。左右直立部48´、48´´は、モータ車両を運転する運転者の観察点と比較して、モータ車両の中心線面M‐Mの左右に配置されている。
【0054】
側部ヒンジ52は、互いに平行であり、それぞれの側部ヒンジ軸Z‐Zを画定する。
【0055】
好ましくは、前記中間部28及び側部ヒンジ52は、互いに平行な中間部ヒンジ軸W−W及び側部ヒンジ軸Z−Zに沿って配向される。
【0056】
左右直立部48´、48´´は、左右前輪10´、10´´をそれぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´の周りに回転可能にそれぞれ支持する。前記操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は互いに平行である。
【0057】
可能な実施形態によれば、ヒンジ28及び52は、互いに平行であり、前記操舵軸線S´‐S´、S´´‐S´´に垂直である。言い換えれば、一実施形態によれば、前記中間部ヒンジ28を通過する投影面Pと比較して、操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は、中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸と90度の角度αである。
【0058】
可能な実施形態によれば、前記角度αは80°〜120°であり、好ましくは前記角度αは90°〜110°であり、さらに好ましくは、前記角度値αは100°に等しい。
【0059】
前記投影面Pに関する操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は、地面に垂直な鉛直方向N‐Nに対して5°〜20°、さらに好ましくは8°〜16°の操舵角βで傾斜していてもよい。
【0060】
さらに他の実施形態によれば、ヒンジ28及びヒンジ52は、地面に対して平行、すなわち前記投影面Pに関して前記鉛直方向N‐Nに対して垂直な中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Z側に応じて、傾斜するように設けることも可能であり、この構成では前記角度βは0°に等しい。
【0061】
さらに、図示されているように、ヒンジ28及びヒンジ52は操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に対して垂直でないようにすることも可能である。実際には、上述のように、前記中間部ヒンジ28を通る投影面Pに関して操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´、中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Zの間に画定される前記角度αは90°〜110°を含み、さらに好ましくは前記角度α値は100°に等しい。
【0062】
中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Zの地面への平行度は、転がり運動において、曲線に対する内輪がほぼ鉛直に上昇することを意味し、(地面から伝達される)水平方向の制動力から車輪の転がり運動を切り離し、モータ車両の底部に向かって場所をあまり塞がないという二重の利点を有する。
【0063】
中間部軸W‐W及び側部軸Z‐Zを操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に対して傾斜させることにより、静止時の静状態では、前記中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Zは地面に対して平行であり、制動状態では、したがって前輪10´、10´´のサスペンションが圧縮された状態では、中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Zは地面に対して実質的に平行な状態へと傾斜して動くことに留意されたい。例えば、静状態において、前記中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Zは、水平方向に対してゼロとは異なる角度βであり(水平方向に対して垂直な鉛直方向で形成される角度に一致する)、制動時及び最大圧縮条件では、この角度はゼロになる傾向がある。
【0064】
制動中に、中間部ヒンジ軸W‐W及び側部ヒンジ軸Z‐Zが地面と実質的に平行に配置されているとき、水平であり、したがって地面に平行な制動力は、地面に実質的に垂直すなわち鉛直である車輪の行程運動に伴うコンポーネントを生成しないため、車輪の跳躍は回避される。
【0065】
直立部48,48´、48´´の各々は、前輪10,10´、10´´のスタブ車軸56を案内し支持する。各直立部48は、上端部60から下端部64まで延出する。上端部60は上部交差部材24´に面しており、下端部64は下部交差部材24´´に面している。
【0066】
左右直立部48´、48´´は、左右前輪10´、10´´を、互いに平行な操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´の周りで回転可能にそれぞれ支持する。
【0067】
各スタブ車軸56は、前輪10´、10´´の回転ピン68に機械的に接続され、前輪10´、10´´を関連する回転軸R‐Rの周りで回転可能に支持する。
【0068】
一実施形態によれば、前輪10´、10´´の各回転ピン68は、関節型四辺形20の対応する直立部48,48´、48´´の上端部60と下端部64との間に含まれる。
【0069】
一実施形態によれば、各前輪10の各回転ピン68は、関節型四辺形20の交差部材24の隣接する側部ヒンジ52の間に含まれる。
【0070】
さらに、それぞれの中間部軸W‐W及び側部軸Z‐Zを画定する中間部ヒンジ28及び側部ヒンジ52は、それぞれの前輪10´、10´´の回転ピン68の上下に配置されているが、先行技術の解決策で起きているように、完全にその上にはないことに留意されたい。言い換えれば、前輪10´、10´´の各回転ピン68は、操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に平行なスプリンギングまたはバンピングB‐Bの方向に関して、関節型四辺形の上部交差部材24´及び下部交差部材24´´の中間部28及び側部ヒンジ52の間にそれぞれ含まれる。
【0071】
これは、サスペンションを含む各車輪10´、10´´と関節型四辺形との間の接続の剛性が、先行技術の前述の解決策でもたらされるよりも剛直なレベルであり、制動力または非対称的な衝撃によって前輪10´、10´´の交互共振が優勢になり得る可能性をより少なくするのに役立つことを意味する。したがって、本発明は、軽量であるが安全で正確でもあり、前車部において運転者に安全感を伝える車両を提供するのに全般的に役立ち、振動やハンドルバーのわずかな動きをユーザに伝達しない。
【0072】
さらに、車輪の鉛直方向寸法における関節型四辺形の上部交差部材24´と下部交差部材24´´の位置決めは、前車部の重心、したがって車両の重心を下方に移動させ、車両の動的挙動を改善することを可能にする。
【0073】
有利には、前車部8は、各スタブ車軸56に対応して、関連する各スタブ車軸56に機械的に接続された操舵タイロッド70を備え、スタブ車軸56及び関係する車輪がそれぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心に回ることを可能にする。特に、前記操舵タイロッド70は、それぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心に回転可能であり、第1の固定端部72から第2の固定端部74まで延出し、第1の固定端部72は直立部48の上端部60に接続され、第2の固定端部74はスタブ車軸56に接続されている。第2の固定端部74は、第1の固定端部72に対して、少なくとも操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に平行なスプリンギングまたはバンピング方向B‐Bに関して移動可能であり、バンピング方向B‐Bに平行なバンピング運動においてスタブ車軸56に従う。
【0074】
上述したように、各車輪10のスタブ車軸56は、前記関節型四辺形20の単一の対応する直立部48によって支持され、案内される。
【0075】
各スタブ車軸56は、対応する直立部48に対して少なくとも1°の自由度を有するように対応する直立部48に取り付けられ、前記少なくとも1°の自由度は、バンピング方向B‐B´に平行な直立部48に対するスタブ車軸56の並進運動、及び/または操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心としたスタブ車軸56の回転運動を含む。関連するスタブ車軸56を備えた車輪10は、バンピング方向B‐Bに平行な実質的に真っ直ぐな軌道に沿って移動する。
【0076】
一実施形態によれば、各操舵タイロッド70は、前車部8のハンドルバー(図示せず)に動作可能に接続された少なくとも1つの制御ロッド76に機械的に接続されている。
【0077】
例えば、各スタブ車軸56の操舵タイロッド70が、前車部8のハンドルバーに動作可能に接続された同じ制御ロッド76に接続されるようにすることが可能である。
【0078】
一実施形態によれば、各操舵タイロッド70は、回転トルクをそれぞれのスタブ車軸56に伝達するように成形され、それぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心としたスタブ車軸56の回転を可能にする。言い換えれば、各操舵タイロッド70は、操舵すなわちそれぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心とした対応する車輪10´、10´´の回転を、伝達または可能にするように成形、適合または構成されている。
【0079】
可能な実施形態によれば、各操舵タイロッド70は一対の接続ロッド78,80を備え、接続ロッド78,80は、第1及び第2の固定端部72,74に対応して配置された固定ヒンジ82を用いて前車部8にヒンジ止めされ、また各スタブ車軸56のバンピング運動の関数として前記第1の固定端部72及び前記第2の固定端部74の間の距離を変化させることによって、接続ロッド78、80の相互の回転運動を可能にするように、中間点84でそれぞれ互いにヒンジ止めされる。
【0080】
言い換えれば、接続ロッド78、80は、それぞれの固定端部72、74を中心として中間点で回転し、スタブ車軸56の、ひいては車輪のバンピング運動に対応して追従することができる。
【0081】
具体的には、第1の固定端部72は、バンピングまたはスプリンギング方向B‐Bに平行な方向に対して直立部48で固定され、一方で第2の固定端部74は、前記バンピングまたはスプリンギング方向B‐Bに平行にスタブ車軸56と一体的に自由に並進し、バンピング運動に対応し、かつ追従する。
【0082】
好ましくは、固定ヒンジ82及び中間点84上のヒンジは、互いに平行なヒンジ軸を画定する。
【0083】
可能な実施形態によれば、接続ロッド78,80の間には、関連するスタブ車軸56のバンピング運動に影響を及ぼすように少なくとも1つのばね86及び/またはダンパ88を備えるサスペンションが介在する。
【0084】
ばね86及びダンパ88は、任意のタイプ、形状、及び大きさとすることができる。例えば、それらは互いに同軸に配置することができ、接続ロッド78、80の異なる点に取り付けることができる。また、ばね86及びダンパ88は、スタブ車軸56のバンピング運動の間に接続ロッド78、80の回転に追従するように、ジョイントまたはヒンジによってそれぞれの接続ロッド78、80に固定することができる。
【0085】
さらなる実施形態によれば、各操舵タイロッド70は伸縮ロッド90を備え、伸縮ロッド90は、各スタブ車軸56のバンピング運動の関数として前記第1の固定端部72と前記第2の固定端部74との間の距離を変化させることによって、伸縮ロッド90の並進運動を可能にするように、第1の固定端部72及び第2の固定端部74に対応して取り付けられている。
【0086】
言い換えれば、伸縮ロッド90の第1の固定端部72は、バンピングまたはスプリンギング方向B‐Bに平行な方向に対して直立部48に取り付けられ、一方で、伸縮ロッド90の第2の固定端部74は、バンピング運動に対応し、かつ追従するようにバンピングまたはスプリンギング方向B‐Bに平行にスタブ車軸56と一体的に自由に並進する。
【0087】
例えば、前記伸縮ロッド90は、ステム92と、前記ステム92の少なくとも一部を収容し、かつバンピング方向B‐Bに平行な並進運動においてステム92によって案内されるシース94とを備える。
【0088】
一実施形態によれば、サスペンションは、関連するスタブ車軸56のバンピング運動に影響を及ぼすように、少なくとも1つのばね86及び/またはダンパ88を備える伸縮ロッド90に関連付けられている。
【0089】
さらなる実施形態によれば、各操舵タイロッド70は板ばね96を備え、板ばね96は、各スタブ車軸56のバンピング運動の関数として前記第1の固定端部72と前記第2の固定端部74との間の距離を変化させて、第1の固定端部72と第2の固定端部74との間の往復並進運動を可能にするように、第1の固定端部72及び第2の固定端部74に対応して取り付けられている。
【0090】
例えば、前記板ばね96はまた、前車部8の関節型四辺形に対してスタブ車軸56のサスペンションを実現する。
【0091】
言い換えれば、板ばね96は弾性的に撓むことができ、第1の固定端部72と第2の固定端部74との間で相互に、かつ制御された変位を可能にする、すなわち、スタブ車軸56と対応する車輪10のバンピング運動を可能にする。さらに、板ばね96は、少なくとも弾性部分に関して、スタブ車軸56及び関連する車輪10のサスペンションを実現し、言い換えれば、板ばね96は車輪10のサスペンションの弾性ばねを実現する。さらに、板ばね96は、それぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心とした各車輪10´、10´´の操舵運動を伝達するように寸法決めされている。言い換えれば、板ばね96は、車輪の操舵運動と同時に、それぞれのバンピング運動を可能にするのに十分な剛性を有する。
【0092】
別の実施形態(図12b)によれば、スタブ車軸56のバンピング運動における主ガイド機能を前記伸縮ロッド90に委ね、また弾性サスペンション機能を前記板ばね96に委ねるため、前記伸縮ロッド90は前記板ばね96の横にも配置される。
【0093】
例えば、板ばね96は全体的に「C」のように形作られているため、「C」の2つの端部が第1の固定端部72と第2の固定端部74とを構成する。前記固定端部72,74の間に張られた弦は、スタブ車軸56のバンピング運動の関数として変化する距離または軸距を表す。
【0094】
例えば、前記第1の固定端部72及び前記第2の固定端部74の間に含まれる内部点に対応して、ダンパ88及び/または追加のばねを固定することが可能である。例えば、板ばね96は、金属要素であるかまたは金属要素ではなく、湾曲し、矩形断面バーで構成されており、前記矩形断面は、ばね自体の曲げを容易にするようにバンピング方向B‐Bに対して平行に向けられた短辺と、車輪の操舵運動に十分な剛性で対抗するように、すなわち、操舵タイロッド70によって設定された操舵角と、関係する運動学的ハンドルバーと、前記スタブ車軸56に伝達される実際の操舵角との間にドリフトを誘発することなく操舵運動をスタブ車軸56に強固に伝達するように、操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に対して垂直に向けられた長辺とを有する。
【0095】
一実施形態によれば、前車部8は、前輪10´、10´´のスタブ車軸56及び前車部8の操舵タイロッド70に各々接続されたブラケット98を備え、各前輪10´、10´´のそれぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心としたスタブ車軸56の回転を制御する。
【0096】
好ましくは、各ブラケット98は、各前輪10´、10´´の制動手段100を支持する。
【0097】
例えば、前記制動手段100は、前輪10´、10´´と一体で回転するブレーキディスク102を跨いで配置されたディスクブレーキ用のキャリパーを備える。
【0098】
ブラケット98は、前記直立部48の下端部64の側部から対応する直立部48を跨いで延在する。
【0099】
例えば、スタブ車軸56は、直立部48と同軸に配置されたスリーブ104を備える。
【0100】
可能な実施形態によれば、スタブ車軸56と直立部48との間には前輪10´、10´´のサスペンション手段が配置され、前記サスペンション手段は、ばね86及び/またはダンパ88を備える。
【0101】
例えば、直立部48は中空であり、前輪10´、10´´のサスペンション手段86,88を少なくとも部分的に内部に収容する。
【0102】
既知のように、各前輪10´、10´´は、タイヤ108を支持し、かつ関連するスタブ車軸56によって回転可能に支持されている車輪リム106を備える。好ましくは、スタブ車軸56及び操舵タイロッド70は、前記車輪リム106によって区切られた容積内に少なくとも部分的に収容されている。
【0103】
さらに好ましくは、スタブ車軸56、操舵タイロッド70及び直立部48は、車輪リム106によって区切られた前記容積内に一体的に収容される。
【0104】
好ましい実施形態では、車輪R´‐R´、R´´‐R´´の各中心線面は、各前輪10´、10´´の操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を通過する。
【0105】
さらなる実施形態では、各操舵車軸S´‐S´、S´´‐S´´と車輪R´‐R´、R´´‐R´´に関する中心線面との間にオフセットまたは横方向オーバーハングが設けられる。そのような横方向オーバーハングは、0〜2cm、より好ましくは0〜1cmであり、さらに好ましくは、前記横方向オーバーハングは0.7cmに等しい。
【0106】
好ましくは、車輪リム106によって囲まれた前記容積は、前記中間部ヒンジ28を通過する前車部の中心線面M‐Mに対して面している。言い換えると、スタブ車軸56は、モータ車両の中心線面M‐Mに向かって内側に面しており、スタブ車軸56のスピンドルに関連する関係のコンポーネントは、外部の観察者には直接見えない。
【0107】
上述したように、本発明による車両4は、少なくとも1つの後部駆動輪駆動14を備え、可能な一実施形態によれば、車両は後車軸12に2つの後部駆動輪14を有する。
【0108】
例えば、モータ車両が4輪車であるこの実施例では、後車軸12の後部駆動輪14は互いに接続され、また、前輪10に関連して上述したような関節型四辺形20によって、後車軸フレーム13に接続されている。
【0109】
この説明から理解されるように、本発明は、先行技術に言及された欠点を克服することを可能にする。
【0110】
特に、前車部の解決策は、操舵運動と前輪のバンピング運動との間の結合を有さない。
【0111】
その結果、前輪の非対称なバンピングの場合には、車両の方向性を危険にさらす前輪面間の発散は生じない。さらに、操舵運動と前輪のバンピング運動との間のこのデカップリングのおかげで、前輪の対称的なバンピングの場合、ハンドルバーへの回転を誘発するような操舵反力は生じない。
【0112】
さらに、この解決策は、車輪と関係するスタブ車軸によってのみ構成されているため、特に控えめなばね下質量を提示する。
【0113】
前輪の負荷に対するバランスは対をなす前輪に等しい負荷で得られるため、説明した解決策は相互接続されたサスペンションの場合に該当する。荷重の伝達は、四辺形を介して、したがって車両全体の慣性をも含む四辺形の慣性によって行われ、したがって前記慣性に関連するエンティティの遅延をもたらす。
【0114】
実際には、対になった車輪の間に介在する慣性は、相互接続された車輪を有する解決策を独立した車輪を有する方へ動かし、快適性を優先し、他の方法では減衰されない車輪上でトリガされ得るあらゆる共振現象を打ち消す。
【0115】
さらに、説明したように、それぞれの中間部軸及び側部軸を画定する中間部ヒンジ及び側部ヒンジは、それぞれの前輪の回転ピンの上下に配置されているが、先行技術の解決策で起きているように、完全にその上にはない。このようにして、各直立部の主延長軸に関して、前輪の各回転ピンは、関節型四辺形のそれぞれ上部及び下部交差部材の中間部ヒンジと側部ヒンジとの間に含まれる。これは、各車輪と、サスペンションを備える関節型四辺形との間の接続の剛性が、先行技術の前述の解決策でもたらされるよりも剛直なレベルであり、制動力または非対称的な衝撃によって前輪の交互共振が優勢になり得る可能性をより少なくするのに役立つことを意味する。したがって、本発明は、軽量であるが安全で正確でもあり、前車部において運転者に安全感を伝える車両を提供するのに全般的に役立ち、振動やハンドルバーのわずかな動きをユーザに伝達しない。
【0116】
したがって、本発明によるモータ車両は、2つの対になった前輪の存在により、2輪のモータ車両に勝る高い安定性だけでなく、優れたハンドリング性と、2輪のみを有するモータ車両に典型的である容易な傾斜を保証することができる。
【0117】
当業者は、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の保護の範囲内にとどまりつつ、偶発的な及び特定の要件を満たすように、上述の解決策に多くの修正及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図11
図12a
図12b
【国際調査報告】