特表2018-520980(P2018-520980A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-520980表面改質を施したシアニド系遷移金属化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-520980(P2018-520980A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】表面改質を施したシアニド系遷移金属化合物
(51)【国際特許分類】
   C01C 3/08 20060101AFI20180706BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180706BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180706BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
   C01C3/08
   H01M4/62 Z
   H01M4/58
   H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-568352(P2017-568352)
(86)(22)【出願日】2016年6月29日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月27日
(86)【国際出願番号】US2016040209
(87)【国際公開番号】WO2017004272
(87)【国際公開日】20170105
(31)【優先権主張番号】14/755,607
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/880,010
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517143377
【氏名又は名称】アルヴェオ エナジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】モタッレビ,シャーロック
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセルズ,コリン ディーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンシア,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050CB01
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA14
5H050HA02
(57)【要約】
表面改質を施した遷移金属シアニド配位化合物(TMCCC)組成物のための、システム、方法および製造品;上記組成物を含んでいる、改良型電極;ならびに、上記組成物の製造方法。上記組成物、化合物、装置およびその使用は、AMn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHOと関連している。式中、Vacは、Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)の空格子点である。Cheは、酸キレート剤である。Aは、Na、K、Liであり;MはMg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Pbである。0<j≦4であり;0≦k≦0.1であり;0≦(p+q)<6であり;0<x≦4であり;0≦y≦1であり;0<z≦1であり;0<w≦0.2であり;0<n≦6であり;−3≦r≦3である。x+2(y−k)+jk+(m+(r+1)q−6)z+wr=0である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで表される少なくとも1種類の組成物を含んでいる、物質:
Mn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHO (式I)
ここで、式I中、それぞれのAは、アルカリ金属であるLi、NaまたはKから独立に選択され、
任意構成であるそれぞれのドーパントMは、
(i)平均価数がjである、アルカリ土類金属のMgもしくはCa、
(ii)平均価数がjである、ポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、
(iii)平均価数がjである、遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd
から独立に選択される少なくとも1種類であってもよく、
Cheは、(i)Mnまたは(ii)MnおよびMと1つ以上の共有結合を形成している原子であって、リガンドと結合している原子を有している酸キレート剤を表しており、
0<j≦4、0≦k≦0.1、0≦(p+q)≦6、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0<w≦0.2、−3≦r≦3、0≦n≦6であり、
x+2(y−k)+jk+(m+(r+1)q−6)z+wr=0であり、
式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体を含んでおり、
pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているNC基の平均数であり、
qは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているChe基の平均数であり、
mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり、
(Vac)はMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)の空格子点であり、
CNは、シアノ基であり、
NCは、イソシアノ基である。
【請求項2】
上記キレート剤は、下記からなる群より選択される1種類以上の成分を含んでいる、請求項1に記載の物質:
蟻酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸、ホモクエン酸、コハク酸、乳酸、マロン酸、アスパラギン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、酒石酸、サリチル酸、グルタミン酸、シュウ酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、グリシン、アラニン、イミノ二酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)、EDDS(エチレンジアミン−N,N’−二コハク酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチルトリアミン五酢酸)、PDTA(1,3−プロピレンジアミン五酢酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、β−ADA(β−アラニン二酢酸)、HEIDA(N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸)、DHEG(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、HEDTA(ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸)、quadrol(N,N,N’,N’−テトラキス−2−ヒドロキシイソプロピル−エチレンジアミン)、DTPMP(ジエチレントリアミノペンタ(メチレンホスホン酸))、EDTMP(エチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、HDTMP(ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、ATMP(アミノトリメチレンホスホン酸)、HEDP(ヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸)、およびPBTC(2−ホスホノブタン1,2,4−トリカルボン酸)、リン酸、ピロリン酸、ならびにこれらの組み合わせ。
【請求項3】
上記組成物は、面心立方構造、単斜構造、面心立方構造と単斜構造との混合構造、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種類以上の結晶構造を有している、請求項1に記載の物質。
【請求項4】
上記1種類以上の結晶構造には、好ましくは、200nmを超える大きさの粒子が含まれている、請求項1に記載の物質。
【請求項5】
上記大きさは、より好ましくは、1ミクロンを超えている、請求項4に記載の物質。
【請求項6】
表面を有している集電体、ならびに
上記表面と一組になっている複合材料であって、組成物を含有している電気化学活物質、結着剤および導電材料、を含んでいる複合材料、
を備えている電極であって、
上記組成物は、下記式Iで表される少なくとも1種類の組成物を含んでいる、電極:
Mn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHO (式I)
ここで、式I中、それぞれのAは、アルカリ金属であるLi、NaまたはKから独立に選択され、
任意構成であるそれぞれのドーパントMは、
(i)平均価数がjである、アルカリ土類金属のMgもしくはCa、
(ii)平均価数がjである、ポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、
(iii)平均価数がjである、遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd
から独立に選択される少なくとも1種類であってもよく、
Cheは、(i)Mnまたは(ii)MnおよびMと1つ以上の共有結合を形成している原子であって、リガンドと結合している原子を有している有機酸キレート剤を表しており、
0<j≦4、0≦k≦0.1、0≦(p+q)≦6、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0<w≦0.2、−3≦r≦3、0≦n≦6であり、
x+2(y−k)+jk+(m+(r+1)q−6)z+wr=0であり、
式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体を含んでおり、
pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているNC基の平均数であり、
qは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているChe基の平均数であり、
mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり、
(Vac)はMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)の空格子点であり、
CNは、シアノ基であり、
NCは、イソシアノ基である。
【請求項7】
上記複合材料は、添加物をさらに含んでいる、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
上記結着剤は、下記からなる群より選択される1種類以上の成分を含んでいる、請求項6に記載の電極:
フッ化ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの混合物、ならびにスチレン−ブタジエンゴム系ポリマー、およびこれらの組み合わせ。
【請求項9】
上記導電材料は、黒鉛状炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1種類以上の成分を含んでいる、請求項6に記載の電極。
【請求項10】
(a)粒子状のTMCCC物質を製造する工程と、その後、
(b)酸基を有する物質を含んでいる溶液で、上記粒子状のTMCCC物質を洗浄する工程と、
(c)上記洗浄の工程(b)に対応して、安定性のTMCCC材料を製造する工程と、
を含む、環境安定性のTMCCC物質を製造する方法。
【請求項11】
上記安定性のTMCCC物質は、下記式Iで表される少なくとも1種類の組成物を含んでいる、請求項10に記載の製造方法:
Mn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHO (式I)
ここで、式I中、それぞれのAは、アルカリ金属であるLi、NaまたはKから独立に選択され、
任意構成であるそれぞれのドーパントMは、
(i)平均価数がjである、アルカリ土類金属のMgもしくはCa、
(ii)平均価数がjである、ポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、
(iii)平均価数がjである、遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd
から独立に選択される少なくとも1種類であってもよく、
Cheは、(i)Mnまたは(ii)MnおよびMと1つ以上の共有結合を形成している原子であって、リガンドと結合している原子を有している酸キレート剤を表しており、
0<j≦4、0≦k≦0.1、0≦(p+q)≦6、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0<w≦0.2、−3≦r≦3、0≦n≦6であり、
x+2(y−k)+jk+(m+(r+1)q−6)z+wr=0であり、
式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体を含んでおり、
pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているNC基の平均数であり、
qは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているChe基の平均数であり、
mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり、
(Vac)はMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)の空格子点である。
【請求項12】
上記溶液は、下記からなる群より選択される1種類以上の成分を含んでいる、請求項10に記載の製造方法:
蟻酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸、ホモクエン酸、コハク酸、乳酸、マロン酸、アスパラギン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、酒石酸、サリチル酸、グルタミン酸、シュウ酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、グリシン、アラニン、イミノ二酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)、EDDS(エチレンジアミン−N,N’−二コハク酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチルトリアミン五酢酸)、PDTA(1,3−プロピレンジアミン五酢酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、β−ADA(β−アラニン二酢酸)、HEIDA(N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸)、DHEG(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、HEDTA(ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸)、quadrol(N,N,N’,N’−テトラキス−2−ヒドロキシイソプロピル−エチレンジアミン)、DTPMP(ジエチレントリアミノペンタ(メチレンホスホン酸))、EDTMP(エチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、HDTMP(ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、ATMP(アミノトリメチレンホスホン酸)、HEDP(ヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸)、およびPBTC(2−ホスホノブタン1,2,4−トリカルボン酸)、リン酸、ピロリン酸、ならびにこれらの組み合わせ。
【請求項13】
上記溶液は、下記からなる群より選択される1種類以上の成分を含んでいる、請求項11に記載の製造方法:
蟻酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸、ホモクエン酸、コハク酸、乳酸、マロン酸、アスパラギン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、酒石酸、サリチル酸、グルタミン酸、シュウ酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、グリシン、アラニン、イミノ二酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)、EDDS(エチレンジアミン−N,N’−二コハク酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチルトリアミン五酢酸)、PDTA(1,3−プロピレンジアミン五酢酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、β−ADA(β−アラニン二酢酸)、HEIDA(N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸)、DHEG(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、HEDTA(ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸)、quadrol(N,N,N’,N’−テトラキス−2−ヒドロキシイソプロピル−エチレンジアミン)、DTPMP(ジエチレントリアミノペンタ(メチレンホスホン酸))、EDTMP(エチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、HDTMP(ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、ATMP(アミノトリメチレンホスホン酸)、HEDP(ヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸)、およびPBTC(2−ホスホノブタン1,2,4−トリカルボン酸)、リン酸、ピロリン酸、ならびにこれらの組み合わせ。
【請求項14】
(a)粒子状のTMCCC物質を製造する工程と、その後、
(b)上記TMCCC物質と、酸基を有する物質を含んでいる溶液とを組み合わせて、安定性のTMCCC材料を製造する工程と、
を含む、環境安定性のTMCCC物質を製造する方法であって、
上記安定性のTMCCC物質は、下記式Iで表される少なくとも1種類の組成物を含んでいる、製造方法:
Mn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHO (式I)
ここで、式I中、それぞれのAは、アルカリ金属であるLi、NaまたはKから独立に選択され、
任意構成であるそれぞれのドーパントMは、
(i)平均価数がjである、アルカリ土類金属のMgもしくはCa、
(ii)平均価数がjである、ポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、
(iii)平均価数がjである、遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd
から独立に選択される少なくとも1種類であってもよく、
Cheは、(i)Mnまたは(ii)MnおよびMと1つ以上の共有結合を形成している原子であって、リガンドと結合している原子を有している酸キレート剤を表しており、
0<j≦4、0≦k≦0.1、0≦(p+q)≦6、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0<w≦0.2、−3≦r≦3、0≦n≦6であり、
x+2(y−k)+jk+(m+(r+1)q−6)z+wr=0であり、
式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体を含んでおり、
pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているNC基の平均数であり、
qは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているChe基の平均数であり、
mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり、
(Vac)はMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)の空格子点であり、
CNは、シアノ基であり、
NCは、イソシアノ基である。
【請求項15】
上記溶液は、下記からなる群より選択される1種類以上の成分を含んでいる、請求項14に記載の製造方法:
蟻酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸、ホモクエン酸、コハク酸、乳酸、マロン酸、アスパラギン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、酒石酸、サリチル酸、グルタミン酸、シュウ酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、グリシン、アラニン、イミノ二酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)、EDDS(エチレンジアミン−N,N’−二コハク酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチルトリアミン五酢酸)、PDTA(1,3−プロピレンジアミン五酢酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、β−ADA(β−アラニン二酢酸)、HEIDA(N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸)、DHEG(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、HEDTA(ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸)、quadrol(N,N,N’,N’−テトラキス−2−ヒドロキシイソプロピル−エチレンジアミン)、DTPMP(ジエチレントリアミノペンタ(メチレンホスホン酸))、EDTMP(エチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、HDTMP(ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸))、ATMP(アミノトリメチレンホスホン酸)、HEDP(ヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸)、およびPBTC(2−ホスホノブタン1,2,4−トリカルボン酸)、リン酸、ピロリン酸、ならびにこれらの組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、米国特許出願第14/755,607号(現米国特許第9,299,981号)および米国特許出願第14/880,010号(現米国特許第9,359,219号;上記は米国特許出願第14/755,607号の分割出願である)の利益を主張する。上記出願の内容は、その全体があらゆる目的のために、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔連邦の支援を受けた研究または開発に関する陳述〕
本発明は、エネルギー高等研究計画局の助成金番号第DE−AR000300号(合衆国エネルギー省よりAlveo Energy, Inc.へ支給)の下、合衆国政府の支援を受けて成された。合衆国政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、一般的には、電気化学デバイスに有用な物質の環境安定性に関する。より具体的には、環境安定性を有する電極活物質の、組成物、製造品および製造方法に関する(ただし、これらには限定されない)。例えば、空気反応性の高い負極活物質である、遷移金属シアニド配位化合物(transition metal cyanide coordination compound;TMCCC)物質の安定化に関する。
【背景技術】
【0004】
本項目において論ずる内容は、単に本項目において言及されていることの帰結のみによって、先行技術であると見做されるべきではない。同様に、本項目において言及されている課題、または本項目の内容と関連する課題は、従来技術において従前認識されていたと見做されるべきではない。本項目の内容は、単に、異なるアプローチを表しているに過ぎない。このアプローチもまた、元来それ自体として、発明でありうる。
【0005】
電気化学セル設計における潮流として、安全で、経済的で、エネルギー効率の良い電池を達成できるような、エネルギー蓄積技術用の新材料の開発が求められている。正極として用いられるシアニド系遷移金属複合体は、有機および水系電解液用に、多数開発されてきた。一方今日まで、シアニド系遷移金属複合体を負極に用いる研究(より具体的には、水系電解液電池の負極電極として用いる研究)は、ほとんど公開されていない。
【0006】
水系電解質電池用のシアニド架橋配位高分子電極に関する昨今の開発からは、期待できる成果が見受けられる。しかし、シアニド系遷移金属複合体の安全性および経済性、ならびに、負極(とりわけ、水系電解液セル中で作用する負極)におけるエネルギー効率の良い使用方法の前には、取り組むべき多くの課題がある。電極の劣化速度が比較的速く、酸素存在下における当該物質の加工および取扱いが困難であることが、重要な技術上・経済上・安全上の関心事である。
【0007】
例えば、マンガン−ヘキサシアニドマンガン負極物質は、空気および水分に対する反応性が高い。そのため、その保存、取扱いおよび加工には、酸素および水分から必ず隔離されるように制御された環境が必要になる。このような物質を製品(電池など)に組み込むことによって、電池の組み立てに非常に大きなコストが生じる。そのため上記物質は、その電気化学的特性に起因する潜在的な利点があるにもかかわらず、負極活物質としての魅力が低減してしまっている。
【0008】
改良型の遷移金属シアニド配位化合物(TMCCC)組成物、当該組成物を含んでいる改良型電極および当該組成物の製造方法のための、システム、方法および製造品が求められている。
【発明の概要】
【0009】
改良型の遷移金属シアニド配位化合物(TMCCC)組成物、当該組成物を含んでいる改良型電極および当該組成物の製造方法のための、システム、方法および製造品を開示する。
【0010】
空気反応性が高い物質の空気安定化に関するいくつかの技術的特徴の理解を促すために、以下に本発明の概要を記載する。この記載を本発明全体の説明とすることは、意図していない。明細書全文、特許請求の範囲、図面および要約書を総体として扱うことによって、本発明の種々の態様を完全に理解することができる。本発明は、他の物質および製造方法にも適用できる。
【0011】
本発明の実施形態は、1種類以上のキレート剤を含んでいる電気化学デバイスの電極に使用されうる、空気反応性が高い物質(TMCCC物質など)を反応させる方法を含みうる。この方法の結果、生じる物質は空気安定性が改善されており、かつ、望ましい電気化学的性能およびサイクル寿命性能を計量しても、測定できる程の減少を示さない。上記キレート剤は、酸を有している物質を含んでいてもよい。酸を有している物質は、TMCCC物質の構成要素の表面にある金属イオンと相互作用する。上述の反応の結果生じる物質は反応性が低減されているため、周囲の環境における安定性(特に、酸素および水に対する安定性)が増加している。
【0012】
本発明の一実施形態は、一般式:AM[R(CN)6−j.(Che).nHOの最終組成物を含みうる。式中、Aは、カチオンでる。Mは金属カチオンである。Rは、遷移金属のカチオンである。Lは、CNリガンドの位置に置換していてもよいリガンドである。Cheは、酸を有しているキレート剤である。
【0013】
本発明の一実施形態は、電気化学デバイス中の電極を含みうる。ここで、上記電極は、一般式:AM[R(CN)6−j.(Che).nHOの最終組成物を含んでいる。式中、Aは、カチオンでる。Mは金属カチオンである。Rは、遷移金属のカチオンである。Lは、CNリガンドの位置に置換していてもよいリガンドである。Cheは、酸を有しているキレート剤である。
【0014】
本発明の一実施形態は、環境安定性のTMCCC物質を製造する方法を含みうる。ここで、上記の製造方法には、(i)粒子状のTMCCC物質を製造する工程と、その後、(ii)上記粒子状のTMCCC物質を、酸基を有する物質を含んでいる溶液で洗浄して、安定性のTMCCC物質を製造する工程と、が含まれる。上記安定性のTMCCC物質は、電気化学デバイスに有用な構造物(例えば負極など)の製造に用いてもよい。また、上記安定性のTMCCC物質は、周囲の雰囲気への曝露に起因する分解に関する懸念が、大きく低減されている。
【0015】
本発明の一実施形態は、式Iの組成物を含みうる:
Mn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHO (式I)
ここで、上記組成物は、表面改質を施したシアニド架橋配位高分子を含んでいる。上記シアニド架橋配位高分子は、ファセットが明確な立方晶構造を有しており、結晶の大きさは1ミクロン超である。また、表面反応性が低減されているので、空気安定性が向上している。
【0016】
本発明の表面改質を施したシアニド架橋配位高分子の実施形態は、非常に優れた空気安定性を示す。いくつかの実施形態において、これらの物質の粒子を空気に曝露させた場合、60時間後においても表面の酸化は無視できる程度である。空気に曝露させた物質と曝露させなかった物質とを比較しても、その電気化学的特性に違いはない。また、他のシアニド系遷移金属化合物と比較すると、容量低下が大いに改善されている。
【0017】
これらの新規な物質は、調製が容易で空気安定性が改善されている。そのためこれらの物質は、電気化学デバイス用のシアニド架橋配位高分子系負極の一群の中でも、安全性および経済性の観点において非常に魅力的な候補である(例えば電池科学など)。
【0018】
上記の物質は、電気化学エネルギーの貯蔵デバイス(電池など)用の電極に用いることができる。この電池は、据置型電池、自動車、携帯用電子機器などの用途に用いることができる。上記の物質はまた、エレクトロクロミック・デバイスのエレクトロクロミック用電極にも用いることができる。
【0019】
本明細書に開示されている任意の実施形態は、単一で、または、任意の組み合わせで互いに組み合わせて用いられうる。また、本明細書に包含されている発明には、本項目または要約書に(i)部分的にしか言及もしくは示唆されていない実施形態、または(ii)全く言及もしくは示唆されていない実施形態、も含まれうる。本発明の種々の実施形態は、先行技術に伴う種々の欠陥(本明細書の一箇所以上において、議論または示唆する場合がある)によって、動機付けられていたかもしれない。しかし、本発明の実施形態は、上記の欠陥のいずれをも、取り上げている必要性はない。換言すれば、本発明の異なる実施形態は、異なる欠陥(本明細書において議論されている場合がある)を取り上げていてもよい。いくつかの実施形態では、単一または複数の欠陥(本明細書において議論する場合がある)を、部分的にしか取り上げていない場合がある。また、いくつかの実施形態では、上記の欠陥を全く取り上げていない場合がある。
【0020】
本発明の他の特徴、利点および長所は、本開示(本明細書、図面および特許請求の範囲を包含している)を精査すれば明白である。
【0021】
添付の図面において、同じ参照数字は、個々の図を通じて、同じ要素または機能上類似した要素を表している。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成している。添付の図面は、本発明をさらに図示するものであり、発明の詳細な説明とともに、本発明の本質を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a図1a〜図1dは、シュウ酸で表面改質を施した物質の、一連の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy;SEM)像である(異なる時間空気に曝露させたもの)。図1aは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に0時間曝露させた後におけるSEM像である。
図1b図1bは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。
図1c図1cは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に10時間曝露させた後におけるSEM像である。
図1d図1dは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に60時間曝露させた後におけるSEM像である。
図2a図2a〜図2dは、表面改質を施したTMCCC物質と、表面改質を施していないTMCCC物質とを、空気に曝露させて対比した、一連の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。図2aは、表面改質を施していないTMCCC物質の、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。
図2b図2bは、クエン酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。
図2c図2cは、リンゴ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に10時間曝露させた後におけるSEM像である。
図2d図2dは、グリシン酸ナトリウムで表面改質を施したTMCCC物質の、空気に10時間曝露させた後におけるSEM像である。
図3図3は、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質製の電極と、表面改質を施していないTMCCC物質製の電極との、空気に曝露させた状態におけるサイクル寿命である。
図4図4は、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質と、表面改質を施していないTMCCC物質とを、空気に2時間曝露させた後におけるサイクル寿命である。
図5図5は、電解液と接触して配置されている表面改質を施したTMCCC製電極を1つ以上備えている、二次電気化学セルの例示的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態により、改良型遷移金属シアニド配位化合物(TMCCC)組成物のための、システム、方法および製造品が提供される。また、上記組成物を含んでいる改良型電極、および上記組成物の製造方法も提供される。以下の説明は、当業者が本発明を製造・使用できるように示されており、特許出願およびその要件との関連において与えられている。
【0024】
本明細書に説明されている好ましい実施形態、ならびに一般的な本質および特徴に対する種々の変更は、当業者にとって直ちに明白であろう。したがって、本発明を示されている実施形態に限定する意図はない。そうではなく、本発明は、本明細書において説明されている本質および特徴と合致する、最も広い範囲に対して認められるべきである。
【0025】
[定義]
別途定義されていない限り、本明細書において用いられている全ての用語(技術用語および科学用語など)は、本発明思想の全般が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと、同じ意味を有する。さらに、用語(通常に用いられる辞書で定義されている用語など)は、関連技術および本開示との関係における当該用語の意味と合致する意味を有していると解釈されるべきである旨を理解されたい。また、本明細書において明示的に定義されていない限り、上記用語は、理念化された意味または過度に形式的な意味として解釈されないことも、理解されたい。
【0026】
以下の定義は、本発明のいくつかの実施形態に関して説明されている、いくつかの態様に対して適用される。これらの定義はまた、本明細書中で敷衍される場合がある。
【0027】
本明細書において用いられるとき、用語「または」は、「および/または」を包含している。また、用語「および/または」は、関連して列挙されている1つ以上の項目の、任意の組み合わせ(および全ての組み合わせ)を包含している。要素のリストに先行する場合、「1つ以上の」などの表現は、要素のリスト全体を修飾しているのであり、当該リストの個々の要素を修飾しているのではない。
【0028】
本明細書において用いられるとき、単数形を表す用語「ある」および「その」(the singular terms "a," "an," and "the")は、文脈上そうではないと明らかに指示されていない限り、複数形の対象をも包含している。したがって、文脈上そうではないと明らかに指示されていない限り、例えば、ある対象(an object)への言及は、複数の対象を包含しうる。
【0029】
また、本明細書および引き続く特許請求の範囲の記載に用いられているとき、文脈上そうではないと明らかに指示されていない限り、「中」の意味には、「中」および「上」が包含される(meaning of "in" includes "in" and "on")。ある要素が他の要素の「上」にあると言及されている場合、当該要素は当該他の要素の直接上にあってもよいし、それらの間に挟まれている要素が存在してもよいことを理解されたい。逆に、ある要素が他の要素の「直接上(directly on)」にあると言及されている場合、挟まれている要素は存在しない。
【0030】
本明細書において用いられるとき、用語「群(set)」は、1つ以上の対象の集合を表す。したがって、例えば、「対象の群(set of objects)」は、一または複数の対象を包含しうる。また、「群の対象(objects of a set)」は、当該群の要素を表しうる。群の対象は、同一であってもよいし、非同一であってもよい。いくつかの事例において、群の対象は、1つ以上の共通の性質を共有しうる。
【0031】
本明細書において用いられるとき、用語「隣接する(adjacent)」は、近くにあること、または接触していることを表す。隣接する対象は、互いに間を隔てていてもよいし、(実際にまたは直接に)互いに接触していてもよい。いくつかの事例において、隣接する対象は、互いに一組になっていてもよいし、互いに一体化して形成されていてもよい。
【0032】
本明細書において用いられるとき、用語「接続する」「接続されている」および「接続している」("connect," "connected," and "connecting")は、直接の連結または結合を表す。接続されている対象は、仲介する対象または対象の群が存在しないか、または実質的に存在しない(文脈により示される)。
【0033】
本明細書において用いられるとき、用語「一組の」「一組にされた」および「一組になっている」("couple," "coupled," and "coupling")は、機能的な連結または結合を表す。一組にされている対象は、互いに直接的に連結されていてもよいし、互いに間接的に接続されていてもよい(例えば、仲介する対象の群を介して)。
【0034】
本明細書において用いられるとき、用語「実質的に」および「実質的な」("substantially" and "substantial")は、相当な度合いまたは程度を表す。事象または状況と連結して用いられた場合、上記用語は、上記事象または状況がまさに起こっている事例に加えて、上記事象または状況が近似的に起こっている事例(例えば、本明細書において説明されている実施形態の、通常の許容範囲または変差と見做される事例)をも表してよい。
【0035】
明示的に示されているか否かを問わず、全ての数値に対して、用語「約(about)」が適用される。通常、上記用語は、記載されている数値に対して合理的な偏差量であると当業者に見做される(すなわち、同等の機能または結果を有する)、数値または範囲を表す。例えば、上記用語は、「所与の数値の±10%の偏差を含んでいること」と解釈することができる(ただし、このような偏差が、上記の値の最終的な機能または結果を変化させないことを前提とする)。したがって、「約1%」という値は、「0.9%〜1.1%」という範囲であると解釈することができる。
【0036】
本明細書において用いられるとき、用語「任意の/任意構成の」および「任意に/任意構成で」("optional" and "optionally")は、引き続いて説明されている事象または状況が、起こっても起こっていなくてもよいことを意味する。また、その記載が、上記事象または状況が起こっている事例と、上記事象または状況が起こっていない事例とを包含していることを意味する。
【0037】
本明細書において用いられるとき、用語「大きさ(size)」は、対象に固有の寸法を表す。したがって、例えば、球形の対象の大きさは、当該対象の直径を表してよい。非球形の対象の場合には、当該非球形の対象の大きさは、対応する球形の対象の直径を表してもよい。ここで、上記対応する球形の対象は、特定の導出可能または計算可能な特性の群(上記非球形の対象のそれと実質的に同じである)を示すか、有している。したがって、例えば、非球形の対象の大きさは、当該非球形の対象の光散乱または他の特性と実質的に同じそれを示す、対応する球形の対象の直径を表してよい。その代わりに(あるいはそれと組み合わせて)、非球形の対象の大きさは、当該対象における種々の直交する寸法の平均を表してもよい。したがって、例えば、回転楕円体状の対象の大きさは、当該対象の長径と短径との平均を表してよい。対象の群が特定の大きさであると言及している場合、当該対象が、当該特定の大きさ近傍に大きさの分布を有していてもよいことが意図される。したがって、本明細書において用いられるとき、「対象の群の大きさ」は、大きさの分布の典型的な大きさ(平均の大きさ、中央値の大きさ、または最頻値の大きさなど)を表してもよい。
【0038】
図1a〜図1dは、シュウ酸で表面改質を施した物質の、一連の走査型電子顕微鏡(SEM)像である(異なる時間空気に曝露させた)。図1aは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に0時間曝露させた後におけるSEM像である。図1bは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。図1cは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に10時間曝露させた後におけるSEM像である。図1dは、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に60時間曝露させた後におけるSEM像である。
【0039】
図2a〜図2dは、表面改質を施したTMCCC物質と、表面改質を施していないTMCCC物質とを、空気に曝露させて対比した、一連の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。図2aは、表面改質を施していないTMCCC物質の、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。図2bは、クエン酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。図2cは、リンゴ酸で表面改質を施したTMCCC物質の、空気に10時間曝露させた後におけるSEM像である。図2dは、グリシン酸ナトリウムで表面改質を施したTMCCC物質の、空気に10時間曝露させた後におけるSEM像である。
【0040】
図3は、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質製の電極と、表面改質を施していないTMCCC物質製の電極との、空気に曝露させた状態におけるサイクル寿命である。
【0041】
図4は、シュウ酸で表面改質を施したTMCCC物質と、表面改質を施していないTMCCC物質とを、空気に2時間曝露させた後におけるサイクル寿命である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態は、(i)周囲の雰囲気に対する安定性の問題を克服することを意図していてもよく、(ii)電池における使用のための、表面改質を施したシアニド架橋配位高分子製の負極を含んでいてもよい。より具体的には、上記実施形態は、空気安定性および劣化速度が改善され、エネルギー効率に優れた負極を備えている電極を意図していてもよい。
【0043】
シアニド架橋配位高分子は、電気化学的過程において交換されたイオンを貯蔵して蓄電し、電気エネルギーを取り出せることが知られている。配位高分子の酸化・還元に伴うイオンの挿入/脱離のために、この物質は、二次電池における電極化合物の有望な候補となっている。
【0044】
シアニド架橋配位高分子のイオン貯蔵効率は、当該高分子の構造に関連している。理論上、ペロブスカイト型構造(AII[M’II(CN)];式中、Aはアルカリカチオンであり、MおよびM’は遷移金属である)は、最高の電極効率を提供する構造である。しかし、ペロブスカイト型構造骨格を調製することは、簡単な工程ではないことが実証されている。このことが特に妥当するのは、マンガン(II)ヘキサシアニドマンガン化合物の、空気反応性を有するアルカリカチオン塩(本発明の実施形態に含まれている場合がある)に関してである。
【0045】
本発明のシアニド架橋配位高分子の実施例は、下記式Iによって表されてもよい:
Mn(y−k)[Mn(CN)(6−p−q)(NC)(Che).(Che)(Vac)(1−z).nHO (式I)
ここで、式I中、それぞれのAは、アルカリ金属であるLi、NaまたはKから独立に選択される。任意構成であるそれぞれのドーパントMは、(i)平均価数がjである、アルカリ土類金属のMgもしくはCa、(ii)平均価数がjである、ポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、(iii)平均価数がjである、遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCdから独立に選択される少なくとも1種類であってもよい。Cheは、(i)Mnまたは(ii)MnおよびMと1つ以上の共有結合を形成している原子であって、リガンドと結合している原子を有している有機酸キレート剤を表している。0<j≦4、0≦k≦0.1、0≦(p+q)≦6、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0<w≦0.2、−3≦r≦3、0≦n≦6である。x+2(y−k)+jk+(m+(r+1)q−6)z+wr=0である。式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体を含んでいる。pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているNC基の平均数である。qは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれているChe基の平均数である。mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数である。(Vac)はMn(CN)(6−p−q)(NC)(Che)の空格子点である。
【0046】
本発明のシアニド架橋配位高分子のいくつかの実施形態は、ファセットが非常に明確な立方晶構造を有しており、結晶の大きさは1ミクロン超であってもよい。単純で簡単なリガンド交換処理によってこれらの粒子を化学処理することで、粒子表面の金属イオンが強力なキレート剤と結合する。結果として、物質表面の反応性が低減されるため、空気安定性が改善されている。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態の物質は空気安定性が改善されており、制御された不活性雰囲気下ではなく空気中でこれらを取扱い・加工することができる。そのため、これらの物質は、二次電池における電極部品の候補として非常に魅力的である。
【0048】
これらの生成物を調製する工程は、後述する実施例の項目の、実施例4〜15に説明されている。好ましい調製方法では、シアン化ナトリウムのマンガン(II)塩に対するモル比は、3:1を超えている。最も好ましいシアン化ナトリウムのマンガン(II)塩に対するモル比は、(3.0:1.0)〜(3.3:1.0)の範囲である。好ましいマンガン(II)塩は、酢酸マンガン(II)水和物である。好ましい溶媒としては、エタノール、メタノールおよび水、ならびにこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい溶媒は、水である。反応温度は、5〜40℃の範囲である。好ましい温度範囲は、5〜20℃である。好ましい添加の順序は、マンガン(II)塩溶液に対して、シアン化ナトリウム溶液を加える順である。添加速度は、約1分間〜1時間であることが好ましい。好ましい添加速度は、1分間〜20分間と速い添加速度である。シアン化ナトリウムは、固形または水溶液(濃度:1.0〜45.0 wt/wt%)で用いる。好ましいシアン化ナトリウム水溶液の濃度は、15〜20 wt/wt%である。好ましい酢酸マンガン(II)水和物水溶液の濃度は、5〜30 wt/wt%である。より好ましい酢酸マンガン(II)水和物水溶液の濃度は、15〜20 wt/wt%である。
【0049】
本発明の実施形態を含んでいる組成物は、負極電極の作製に用いられる組成物であってもよい。この組成物は、集電体上に塗布されるスラリーまたはインクであってもよい。組成物は、本発明の実施形態、結着剤、導電材料、添加物および溶媒の混合物である。結着剤は、フッ化ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、これらの混合物、およびスチレン−ブタジエンゴム系ポリマーからなる群より選択される、1種類以上の成分であってもよい。導電材料は、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物から選択されてもよい。導電材料は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブおよびグラフェンから選択されてもよい。
【0050】
溶媒は、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドなどの溶媒から選択されてもよい。好ましい溶媒は、N−メチルピロリジノンである。
【0051】
[電極の作製]
本明細書に記載の実施例の1つから選択したマンガン(II)ヘキサシアニドマンガン(II)塩を、乳鉢および乳棒で磨り潰すことにより、カーボンブラック(Timcal super C65)と完全に混合した。次に、生じた灰色粉末を、ポリフッ化ビニリデン(Kynar HSV900)のN−メチル−2−ピロリジノン溶液と混合して、スラリーを調製した。活物質、カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデンの質量比は、80:10:10であった。得られたスラリーの薄層で炭素繊維布製の集電体を被覆し、真空下で乾燥させて電極を作製した(負極電極に当たる)。作製した負極電極を、それ以上の処理を施すことなく、電気化学セルの組み立てに用いる。この際、後述する空気安定性試験も行っている。
【0052】
[空気安定性試験]
後述する実施例の項目の生成物1a〜15aを、空気に2.0時間〜60.0時間曝露させた。得られた曝露後の粉末を、上述した電極の作製に用いた。これらの空気に曝露された後の物質の電気化学的特性を、対応する未曝露の物質と比較した。
【0053】
走査型電子顕微鏡(SEM)での分析によって、粒子表面が酸化および分解から保護されている程度について、いくらかの証拠が得られた(図1a〜図1dおよび図2a〜2dを参照)。図1a〜図1dは、シュウ酸で表面改質を施した物質のSEM像である(異なる時間空気に曝露させたもの)。これらのSEM像によって、空気に60時間曝露させた後でさえも粒子は元のままであり、表面が酸化した形跡はないことが明らかになった。
【0054】
図2aは、表面改質を施していない物質を、空気に2時間曝露させた後におけるSEM像である。この像には粒子表面が酸化した明白な形跡が見られ、白斑の形成および表面の粗面化として現れている。対照的に、図2b〜図2dはそれぞれ、クエン酸、リンゴ酸またはグリシン酸ナトリウムによる処理で表面改質を施した物質である。これらの像によると、空気に2時間(図2b)および10時間(図2cおよび図2d)曝露させた後においても、分解または表面の酸化の形跡は見られない。
【0055】
図3は、表面改質を施した物質製の電極と、表面改質を施していない物質製の電極との、空気に曝露させた状態におけるサイクル寿命である。表面改質を施した物質と表面改質を施していない物質とを比較すると、表面改質を施した物質は全て、250サイクルを超えた後においても容量を維持していることが判る。逆に、表面改質を施していない物質は、250サイクル後において顕著に容量が減少していた。
【0056】
図4は、シュウ酸で表面改質を施した物質と、表面改質を施していない物質とを、空気に2時間曝露させた後におけるサイクル寿命である。シュウ酸で表面改質を施した物質と表面改質を施していない物質とを比較すると、表面改質を施した物質は、200サイクル後においても容量を維持していることが判る。逆に、表面改質を施していない物質は、200サイクル後において顕著に容量が減少していた。
【0057】
表面改質を施していない物質を空気に2.0時間曝露した後における、顕著な酸化および容量の減少を、表Iに示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表面改質を施した物質を空気に曝露した後における電気化学的分析の結果を、表IIに示す。併せて、物質表面が酸化から保護されており、比容量が顕著に維持されている証拠も示す。
【0060】
【表2】
【0061】
シュウ酸で粒子の表面改質を施すことによって粒子表面の酸化が著しく阻害され、比容量も顕著に維持されることを、表IIIに示す。
【0062】
【表3】
【0063】
図5は、電解液と接触して配置されている表面改質を施したTMCCC製電極を1つ以上備えている、本明細書で説明されている二次電気化学セル500の例示的な模式図である。セル500は、負極505、正極510、および電極と電気的な伝達を行う電解液515を備えている。負極505および正極510のうち一方または両方は、電気化学活物質としてTMCCCを含んでいる。負極集電体520は、負極505と第1電池端子(図示せず)の間で電子を導く、電気的導電材料を含んでいる。正極集電体525は、正極510と第2電池端子(図示せず)の間で電子を導く、電気的導電材料を含んでいる。これらの集電体のおかげで、セル500は外部回路に電流を供給することができ、また充電時には外部回路から電流/エネルギーを受け取ることができる。実際に実施する際には、セル500の全ての構成要素は、適切に封入されている(例えば、外部から集電体に接続可能な保護容器内に)。広範な実施の形態においては、各部品の構成および配置に、多くの異なる選択肢がある。例えば、種々の使用および用途の中でも、複数のセルを電池内に集合させる実施の形態が挙げられる。
【実施例】
【0064】
〔実施例1:生成物1a〕
脱気した水(120g)中の塩化マンガン四水和物(23.75g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(90g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(50mL)で洗浄し、脱気したメタノール(200mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、19.7gの青色粉末を得た。
【0065】
〔実施例:生成物2a〕
脱気した水(120g)中の硫酸マンガン一水和物(20.28g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(50mL)で洗浄し、脱気したメタノール(200mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、20.0gの青色粉末を得た。
【0066】
〔実施例3:生成物3a〕
脱気した水(120g)中の酢酸マンガン四水和物(29.4g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(250mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、20.0gの青色粉末を得た。
【0067】
〔実施例4:粒子表面の機能化(生成物4a)〕
脱気した水(120g)中の酢酸マンガン四水和物(29.4g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中のシュウ酸溶液(20wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、20.0gの灰青色粉末を得た。
【0068】
〔実施例5:粒子表面の機能化(生成物5a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中のクエン酸溶液(2.5wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、9.8gの灰青色粉末を得た。
【0069】
〔実施例6:粒子表面の機能化(生成物6a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中の酒石酸溶液(2.5wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、9.9gの灰青色粉末を得た。
【0070】
〔実施例7:粒子表面の機能化(生成物7a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中のグリコール酸溶液(2.5wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、9.8gの灰青色粉末を得た。
【0071】
〔実施例8:粒子表面の機能化(生成物8a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中のコハク酸溶液(2.5wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、10.0gの灰青色粉末を得た。
【0072】
〔実施例9:粒子表面の機能化(生成物9a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中のリンゴ酸溶液(2.5wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、9.8gの灰青色粉末を得た。
【0073】
〔実施例10:粒子表面の機能化(生成物10a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中の乳酸(88%)溶液(2.5wt/wt%、100mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、9.7gの灰青色粉末を得た。
【0074】
〔実施例11:粒子表面の機能化(生成物11a)〕
脱気した水(120g)中の酢酸マンガン四水和物(29.4g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール中の酢酸溶液(30V/V%、50mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、20.0gの青色粉末を得た。
【0075】
〔実施例12:粒子表面の機能化(生成物12a)〕
脱気した水(120g)中の酢酸マンガン四水和物(29.4g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気したメタノール(50mL)で洗浄し、次いで脱気したメタノール中のHEDP(ヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸)溶液(5.0wt/wt%、50mL)で洗浄した後、脱気したメタノール(150mL)で洗浄した。生じた粉末を真空下で乾燥させて、20.0gの青色粉末を得た。
【0076】
〔実施例13:粒子表面の機能化(生成物13a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、粉末状のグリシン酸ナトリウム(1.0g)を加え、混合物をさらに10分間混合した。次に、混合物を0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を脱気したメタノール(150mL)で洗浄した後、真空下で乾燥させて、9.8gの灰青色粉末を得た。
【0077】
〔実施例14:粒子表面の機能化(生成物14a)〕
脱気した水(120g)中の酢酸マンガン四水和物(29.4g、120.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化ナトリウム(19.2g、392.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、粉末状のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)四ナトリウム塩(2.0g)を加え、混合物をさらに10分間混合した。次に、混合物を0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を脱気したメタノール(250mL)で洗浄した後、真空下で乾燥させて、20.0gの青色粉末を得た。
【0078】
〔実施例15:粒子表面の機能化(生成物15a)〕
脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(14.7g、60.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(9.6g、196.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて速やかに加えた。生じた混合物をさらに1時間攪拌した後、粉末状のシュウ酸ナトリウム(4.0g)を加え、混合物をさらに10分間混合した。次に、混合物を0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を脱気したメタノール(150mL)で洗浄した後、真空下で乾燥させて、10.0gの灰青色粉末を得た。
【0079】
本発明の好ましい実施形態を詳細に理解する一助とするために、上述のシステム、方法、組成物、物質および製造品を、一般論として説明した。本明細書の記載において、数値を特定した詳細な説明(成分および/または方法の例など)は、本発明の実施形態に対する理解を充分なものとするために与えられている。本発明のいくつかの特徴および利点がこのような形態において実現されるのであって、必ずしも全ての場合において必要とされる訳ではない。しかしながら、当業者が理解するであろうことには、本発明の実施形態は、(i)1つ以上の特定の項目がなくとも実施することができるし、あるいは、(ii)他の装置、システム、組立体、方法、成分、物質、部品などと併せて実施することもできる。他の場合には、周知の構造、物質または操作は、具体的に示されていないか、または詳細に説明されていない。これは、本発明の実施形態の態様の理解を茫洋とさせないためである。
【0080】
本明細書を通じて、「一実施形態」「実施形態」または「特定の実施形態」("one embodiment," "an embodiment," or "a specific embodiment")という言及は、以下のことを意味する。すなわち、上記実施形態と共に説明されている特定の特徴、構造または特徴点は、本発明の1つ以上の実施形態に含まれているのであって、必ずしも全ての実施形態に含まれている必要はない、ということである。したがって、本明細書中の種々の箇所に、「一実施形態において」「実施形態において」または「特定の実施形態において」の語がそれぞれ登場していたとしても、必ずしも同じ実施形態について言及しているとは限らない。さらに、本発明の任意の特定の実施形態における特定の特徴、構造または特徴点を、任意の適切な方法によって、1つ以上の他の実施形態と組み合わせてもよい。本明細書に説明および図示されている本発明の実施形態に、他の変更および修正を加えることは、本明細書の教示に照らせば可能であり、本発明の趣旨および範囲の一部として見做されるべきであると理解されたい。
【0081】
また、図面/図に描かれている1つ以上の要素を、(i)さらに分割または統合した方法によって実施することもできるし、あるいは、(ii)特定の用途に関して有用であるならば、特定の場合においては除去または操作不能なものとしても構わないことを、充分に理解されたい。
【0082】
さらに、図面/図中の任意の信号を表す矢印は、単なる例示と見做されるべきであり、別途具体的な注記がない限り、限定的ではない。「用語が分離または結合できるか否かが不明確である」との解釈が予期される場合には、当該用語が関係する構成要素または工程の組み合わせもまた、注記されているものとして見做されるべきである。
【0083】
説明されている本発明の実施形態に関する上述の記載(要約書の記載事項も含む)は、網羅的であることを意図していない。また、本明細書において開示されている形態自体に、本発明を制限することも意図していない。本発明の特定の実施形態(および実施例)は、単に説明の目的のみのために、本明細書において説明されている。そして、当業者が認識・理解する通り、本発明の趣旨およびの範囲の内で、種々の均等な変更が可能である。上記に示したように、本発明の実施形態を説明している上述の記載に照らせば、これらの変更を本発明に対してなすことができる。そしてこれらの変更も、本発明の趣旨および範囲の内に含まれるものである。
【0084】
このように、本明細書では、本発明をその特定の実施形態に関して説明してきた。しかし、変更の許容、種々の修正および置換が、本開示においては意図されている。またいくつかの場合では、記載されている本発明の範囲および趣旨を離れることなく、本発明の実施形態のいくつかの特徴を、対応する他の特徴を用いずに採用することを、充分理解されたい。したがって、特定の状況または物質に適用するために、本発明の本質的な範囲および趣旨に対して多くの変更がなされうる。(i)下記の特許請求の範囲に用いられている特定の用語、および/または、(ii)特定の実施形態(本発明の実施のために考慮された、ベストモードとして開示されている)は、本発明を制限しないことが、意図される。そうではなく、本発明には、任意のおよび全ての実施形態、ならびに添付の特許請求の範囲に包含される均等物が含まれることが意図される。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
【国際調査報告】