(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-521505(P2018-521505A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】圧電積層スタックの製造方法、および圧電積層スタック
(51)【国際特許分類】
H01L 41/39 20130101AFI20180706BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20180706BHJP
H01L 41/08 20060101ALI20180706BHJP
H01L 41/083 20060101ALI20180706BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20180706BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
H01L41/39
H01L41/04
H01L41/08
H01L41/083
H01L41/09
H01L41/187
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-564477(P2017-564477)
(86)(22)【出願日】2016年4月13日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2016058097
(87)【国際公開番号】WO2016198183
(87)【国際公開日】20161215
(31)【優先権主張番号】102015210797.3
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ツムシュトルル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴィルトゲン
(57)【要約】
本発明は、圧電積層スタック(10)の製造方法において、複数の圧電セラミック層(12)と、複数の導電性内部電極(14)とを有し、これらが縦軸(L)に沿って交互に配置される積層スタック(10)を準備し、このセラミック層(12)はその表面(16)に、多結晶質の組織(20)を有する第1の領域(18)と、多結晶質の組織(20)に機械的に付着しているだけの緩いセラミック材料(24)を有する第2の領域(22)とを有し、この緩いセラミック材料(24)を、多結晶質の組織(20)から、多結晶質の組織(20)を損なうことなしに除去する、圧電積層スタック(10)の製造方法に関する。さらに、本発明は、ことにこのような方法で製造された積層スタック(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程:
S1)複数の圧電セラミック層(12)と、複数の導電性内部電極(14)とを有する積層スタック(10)を準備すること、ここで、前記積層スタック(10)の縦軸(L)に沿ってそれぞれ1つの内部電極(14)が2つのセラミック層(12)の間に配置されていて、かつここで、前記圧電セラミック層(12)はその表面(16)に、多結晶質の組織(20)が存在する第1の領域(18)と、前記多結晶質の組織(20)に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料(24)が存在する第2の領域(22)とを有する;
S2)前記多結晶質の組織(20)に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料(24)を、前記多結晶質の組織(20)を損なうことなしに除去すること
を有する、圧電積層スタック(10)の製造方法。
【請求項2】
工程:
S2a)圧力印加により液化されたガス(38)を準備すること;
S2b)微結晶(44)が形成されるように前記ガス(38)を放圧すること;
S2c)前記微結晶(44)を整列させて、方向付けられた流れ(50)にすること;
S2d)前記方向付けられた流れ(50)を前記積層スタック(10)の表面(16)に当てること
を特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液化されたガス(38)として、CO2および/またはN2および/または希ガスを使用することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記積層スタック(10)の前記表面(16)を、流れ(50)の供給源(52)に対して1cm〜10cm、好ましくは2cm〜8cm、さらに好ましくは3cm〜6cm、ことに4cmの距離(d)で、前記流れ(50)を越えるように動かすことを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記流れ(50)は、2bar〜25bar、好ましくは5bar〜20bar、さらに好ましくは10bar〜16bar、ことに14barの圧力(ps)を有することを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記多結晶質の組織(20)に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料(24)の除去後に、前記積層スタック(10)の前記表面(16)を、工程S3)において、ことにイオン化された空気(30)を吹き付けることによりおよび/または溶媒浴(32)中で超音波(34)に曝すことにより、脱イオンすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記積層スタック(10)の前記表面(16)を、前記脱イオンの後に、工程S4)において、ことに不動態化塗料(36)を施すことにより不動態化することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
圧電セラミック材料(24)から形成された複数のセラミック層(12)と、複数の導電性内部電極(14)とを有する、ことに請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された圧電積層スタック(10)において、前記積層スタック(10)の縦軸(L)に沿って、それぞれ1つの内部電極(14)が2つのセラミック層(12)の間に配置されていて、前記圧電セラミック層(12)は、その表面(16)に、多結晶質の組織(20)が存在する第1の領域(18)と、前記多結晶質の組織(20)に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料(24)が存在する第2の領域(22)とを有し、前記セラミック層(12)の前記表面(16)の20%未満には、前記機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料(24)が存在する、圧電積層スタック(10)。
【請求項9】
前記圧電セラミック層(12)は、0.5μm〜3μm、ことに1μm〜2μmの平均粗さ(Ra)を有することを特徴とする、請求項8記載の圧電積層スタック(10)。
【請求項10】
前記セラミック層(12)の前記表面(16)に、不動態化層、ことに不動態化塗料(36)が配置されていることを特徴とする、請求項8または9記載の圧電積層スタック(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電積層スタックの製造方法、およびことにこの方法により製造された圧電積層スタックに関する。
【0002】
圧電積層スタックは、電子素子として、例えば内燃機関のシリンダの燃焼室内に燃料を噴射するためのアクチュエータユニット内で使用される。
【0003】
例示的にアクチュエータユニットとして使用される積層スタックは、典型的には、複数の圧電セラミック層と、複数の導電性内部電極とを有し、ここで、それぞれ内部電極の1つが、2つの圧電セラミック層の間に配置されている。特に頻繁に、自動車用の多種多様なエンジンタイプの噴射弁中で操作エレメントとして適用するために、電子構成部材として形成された積層スタックは、ピエゾアクチュエータの形で使用される。
【0004】
排気ガスおよび燃費に関する要求が増すにつれて、燃焼室内への燃料の噴射に関する要求も増している。したがって、より高い圧力、温度、ならびに複数回噴射は、噴射される燃料の配分の際に、より高い精度を必要とする。この場合、電界強度がより高くなり、かつ運転時間の要求がより高くなる傾向がある。この場合、積層スタックの表面での電気的フラッシュオーバーの危険性が増す。
【0005】
積層スタックの表面での電気的フラッシュオーバーの危険性は、この場合、例えば積層スタックの研磨プロセスにより典型的には最も上の粒状層が機械的に損傷されることにより高まり、この際に、緩い粒状材料が焼結されたセラミック集合体から離れない。それにより、セラミック結晶体と機械的に結合しているだけの緩い粒状層が生じる。この緩い粒状層は、機械的負荷および熱機械的負荷の下で、セラミックの劣化現象についてのもととなり、ならびにその他の点で高抵抗性のセラミック材料内に導電性経路を形成する。この緩い粒状層により、積層スタックの表面に微小亀裂が形成されるため、この微小亀裂内へ水分および/または金属イオンが移行し、こうして2つの隣接する内部電極の間に導電性経路が形成されかねない。
【0006】
図14および
図15は、言及された問題を図式的に示す。
【0007】
図14中には、複数の圧電セラミック層12と複数の導電性内部電極14とを有する積層スタック10が示されていて、この場合、積層スタック10の縦軸Lに沿ってそれぞれ1つの電極14が2つのセラミック層12の間に配置されている。
図14は、さらに、セラミック層12の1つの表面16の領域を拡大図で示す。この拡大図では、表面16でセラミック層12が、第1の領域18を有し、この第1の領域18内には、セラミック層12の材料が多結晶質の組織20として、つまり閉じた結晶として存在する。さらに、セラミック層12の表面16には、第2の領域22が存在し、この第2の領域22内には、もはや多結晶質の組織20の構成要素ではなく、多結晶質の組織20に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料24が存在する。したがって、このセラミック材料24は、多結晶質の組織20との関連で、緩い粒状結合体26を形成する。
【0008】
図15は、セラミック層12の表面16から引き剥がされた粒状結合体26のSEM写真を示す。
【0009】
このような緩い粒状結合体26は、もはや多結晶質の組織20の一部ではないが、機械的にまだ比較的強く多結晶質の組織20と付着している。
【0010】
図16は、画像a)に表面16の顕微鏡写真を示し、この場合、緩い粒状結合体26は明るい領域により表されている。画像b)には、積層スタック10が汚染物および粒子の除去のために溶媒浴中で超音波処理された後の表面16が示されている。過去において電界強度はそれほど高くなかったため、この種の前処理は積層スタック10を洗浄するために十分であった。しかしながら、画像b)では、表面16にはまだ緩い粒状結合体26が多数存在することがわかる。したがって、粒状結合体26の機械的付着は、例えば超音波のような通常の洗浄方法が緩い粒状結合体26を積層スタック10から引き離すことができないほど強い。
【0011】
図14で見ることができるように、最も不都合の場合に、多結晶質の組織20と粒状結合体26の間に経路28が形成され、例えば表面16のこの領域内に水分が進入する場合に、これが導電性経路28を形成しかねない。
【0012】
これは、積層スタック10が極めて高い電界強度に曝される場合にはことに不利である、というのもこのときに積層スタック10中で電気的フラッシュオーバーが生じることがあるためである。
【0013】
したがって、本発明の課題は、上述の問題を克服することができる、圧電積層スタックの製造方法、および相応する積層スタックを提案することである。
【0014】
この課題は、請求項1に記載の圧電積層スタックの製造方法により解決される。
【0015】
ことにこのような方法によって製造された圧電積層スタックは、独立請求項の主題でもある。
【0016】
本発明の好ましい実施態様は、従属請求項の主題である。
【0017】
圧電積層スタックの製造方法の場合に、次の工程が実施される:工程S1)において、複数の圧電セラミック層と、複数の導電性内部電極とを有する積層スタックを準備し、この場合、積層スタックの縦軸に沿ってそれぞれ1つの内部電極が2つのセラミック層の間に配置されている。圧電セラミック層は、その表面に、多結晶質の組織が存在する第1の領域を有する。さらに、圧電セラミック層は、多結晶質の組織に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料が存在する第2の領域を有する。工程S2)において、多結晶質の組織に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料を、多結晶質の組織を損なうことなく除去する。
【0018】
この圧電セラミック層は、その表面の他に、バルク内でも多結晶質の組織から形成されている。
【0019】
「表面」とは、この場合、積層スタックのセラミック層のバルク内へ約15μm〜20μm拡がっている領域であると解釈すべきである。
【0020】
このような製造方法によって、それ自体が新たな緩い粒状結合体の形成を引き起こしかねない、多結晶質の組織での機械的損傷を引き起こさずに、積層スタックの表面から緩い粒状結合体は取り除かれる。それにより、作動時に、低抵抗経路として、部材としての積層スタックの故障の原因となりかねない緩い粒界は存在しないかまたは生じない。
【0021】
好ましくは、記載された方法の場合、次の工程が実施される:
S2a)圧力印加により液化されたガスを準備すること;
S2b)微結晶が形成されるようにガスを放圧すること;
S2c)微結晶を整列させかつ加速して、方向付けられた流れにすること;
S2d)この方向付けられた流を積層スタックの表面に当てること。
【0022】
工程S2c)での加速は、この場合、好ましくは、形成されるかまたは形成された微結晶への圧縮空気の供給により行われる。
【0023】
積層スタックの表面に微結晶からなる流を当てる際に、好ましくは機械的に付着する圧電セラミック材料、つまり粒状結合体に、この機械的に付着しているだけのセラミック材料を多結晶質の組織から除去するために十分な機械的エネルギーが作用する。予め圧力印加により液化され、放圧されたガスから形成された微結晶の使用は、この微結晶が、積層スタックの表面との接触の後に再び気体の状態に移行し、それにより積層スタックの表面には、例えば、表面に砂粒子、ガラス粒子等を当てる場合に生じるような残留物が残らないという利点を有する。
【0024】
したがって、標準条件で、つまり室温、ことに20℃で、かつp=1013mbarの圧力で気体状であるガスを使用する場合が有利である。
【0025】
したがって、例えば、液化されたガスとして、好ましくはCO
2、N
2および/または希ガスを使用することができる。
【0026】
好ましくは、積層スタックの表面を、流の供給源に対して1cm〜10cm、好ましくは2cm〜8cm、さらに好ましくは3cm〜6cm、ことに4cmの距離でこの流を越えるように動かす。この範囲は、実験において特に好ましいことが判明している、というのも短すぎる距離の場合、微結晶が流の中で十分には加速されず、機械的に付着する圧電セラミック材料を、積層スタックの表面から完全には除去することができないためである。それに対して長すぎる距離は、著しく拡がった流を生じさせる。好ましくは、この流は、積層スタックの表面と衝突する箇所で、積層スタックの幅に相応する幅を有する。
【0027】
このために、流は、2bar〜25bar、ことに5bar〜20bar、さらにことに10bar〜16barの圧力を有する場合が同様に好ましい。
【0028】
機械的に付着する圧電セラミック材料を積層スタックの表面から完全に除去するために好ましい暴露時間は、2秒〜15秒の間の範囲で変動する。
【0029】
「完全に」とは、セラミック層の表面の80%超が、多結晶質の組織に機械的に付着しているだけのセラミック材料を有しないことを意味する。つまり、セラミック層の表面の20%未満には、機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料が存在する。
【0030】
好ましくは、多結晶質の組織に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料の除去後に、積層スタックの表面を、工程S3)において、脱イオンする。ことに、この脱イオンは、イオン化された空気を吹き付けることにより行われる。あるいは、またはそれに加えて、積層スタックを溶媒浴中で超音波に曝すこともできる。この脱イオンは、この場合、積層スタックの表面が無電荷となりかつそれにより均等になるという利点を有する。
【0031】
好ましくは、積層スタックの表面を、脱イオンの後に、工程S4)において、不動態化する。このために、例えば不動態化塗料が施される。積層スタックの表面の不動態化は、積層スタックの作動時の電気的フラッシュオーバーを避けることができるという利点を有する。
【0032】
ことに上述の方法により製造された圧電積層スタックは、圧電セラミック材料から形成された複数のセラミック層と、複数の導電性内部電極とを有する。積層スタックの縦軸に沿って、それぞれ1つの内部電極が2つのセラミック層の間に配置されている。圧電セラミック層は、その表面に、多結晶質の組織が存在する第1の領域と、多結晶質の組織に機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料が存在する第2の領域とを有する。セラミック層の表面の20%未満には、機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料が存在する。
【0033】
このような圧電積層スタックは、積層スタックが極めて高い電界強度に曝される場合であっても、多結晶質の組織と、多結晶質の組織の表面上の緩い粒状結合体との間で形成される不所望な導電性経路を通した電気的フラッシュオーバーを僅かな程度でのみ見込むことができるという利点を有する。というのも、この緩い粒状結合体は、圧電積層スタック内にもはや十分には存在しないためである。
【0034】
好ましくは、圧電セラミック層は、0.5μm〜3μm、ことに1μm〜2μmの平均粗さを有する。この範囲内の粗さは、引き続き積層スタックの表面に施される材料層が、この積層スタックに特に良好に付着することができるという利点を有する。
【0035】
好ましくは、セラミック層の表面に、不動態化層、ことに不動態化塗料が配置されている。
【0036】
本発明の好ましい実施形態を、次に添付の図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】圧電積層スタックの製造方法の際に実施される工程を図式的に表すフローチャート。
【
図2】方向付けられた流れに当てた後に積層スタックを脱イオンするための第1の方法。
【
図3】方向付けられた流れに当てた後に積層スタックを脱イオンするための第2の方法。
【
図4】表面に不動態化層を有する、
図6または
図7により脱イオンされた積層スタック。
【
図5】
図1による方法で実施される部分工程を図式的に表すフローチャート。
【
図6】
図1による方法で使用されるような、圧力印加により液化されたガス。
【
図7】ガス容器の開口部を通して放圧され、かつ整列装置を通して整列させて、方向付けられた流れにされる、
図6からの圧力印加され液化されたガス。
【
図8】
図7により形成された流れに当てられる圧電積層スタック。
【
図9】
図1による方法が実施されていない積層スタックの縦断面の顕微鏡写真。
【
図11】
図1による方法が実施された積層スタックの縦断面の顕微鏡写真。
【
図13】a)未処理の積層スタック、b)超音波浴で予備洗浄された積層スタック、c)
図1に記載された方法により洗浄された積層スタックの顕微鏡写真の比較。
【
図15】
図14からの積層スタックから引き剥がされた緩い粒状層のSEM写真。
【
図16】a)未処理の積層スタック、b)超音波浴で予備洗浄された積層スタックの顕微鏡写真の比較。
【0038】
図1は、圧電積層スタック10を製造するための図式的な方法工程を表すフローチャートを示す。
【0039】
この場合、工程S1)において、複数の圧電セラミック層12と、複数の導電性内部電極14とから構成されていて、これらは、積層スタック10の縦軸Lの方向で交互に配置される積層スタック10が準備される。セラミック層12は、その表面16に、セラミック材料24が多結晶質の組織20として存在する第1の領域18と、セラミック材料24が、多結晶質の組織20に機械的に付着しているだけで、多結晶質の組織20の一部を形成していない第2の領域22とを有する。
【0040】
次いで、工程S2)において、機械的に付着しているだけのセラミック材料24を多結晶質の組織20から、特に多結晶質の組織20が損傷されないように除去する。
【0041】
このセラミック材料24をセラミック層12の多結晶質の組織20から除去することにより、セラミック層の表面16は、静電気的に帯電していることがあり、このことは積層スタック10の後続する処理工程にとって不都合であることがある。したがって、工程S3)において、積層スタック10の表面16を脱イオンする。
【0042】
図2および
図3は、このために考えられる脱イオン法の図式的なスナップショットを示す。
図2において、例示的に、脱イオンのために、セラミック材料24の除去により静電気的に帯電している積層スタック10の表面16に、イオン化された空気30を吹き付ける。あるいは、またはそれに加えて、
図3に示されているように、積層スタック10は溶媒浴32中で超音波34に曝すこともできる。
【0043】
積層スタック10の作動時のフラッシュオーバーを避けるために、積層スタック10の表面16を脱イオンした後に、積層スタック10の表面16を、工程S4)において、例えば表面16に不動態化塗料36を施すことにより不動態化する。このように不動態化塗料36で処理された積層スタック10が、
図4に示されている。
【0044】
S3)およびS4)は、圧電積層スタック10の製造方法において任意の方法工程であり、これらは積層スタック10の引き続く後続処理に依存して実施しても、または実施しなくてもよい。
【0045】
図5は、工程S2)において、セラミック材料24を多結晶質の組織20から除去するために実施することができる図式的な部分工程を表すフローチャートを示す。
【0046】
例えば、緩いセラミック材料24を、機械的放射により多結晶質の組織20から除去することができる。
【0047】
例えば、このために、工程S2a)において、圧力印加によって液化されているガス38を準備する。
図6は、これについて、圧力容器40内に準備された液化されたガス38を示す。この圧力容器40、およびその中に配置された液化されたガス38は、周囲温度T、例えば室温に相当する温度Tを有する。しかしながら、ガス38内の圧力pは、周囲圧力p
0よりも明らかに高い。この高い圧力pでの圧力印加により、ガス38は圧力容器40内で液体として存在する。
【0048】
工程S2b)において、このときに、ガス38は放圧される。このために、例えば、
図7に図式的に表されているように、圧力容器40内よりも明らかに低い圧力p
0が支配するガス容器40の外側の周囲環境にガス38が漏れ出ることができるように圧力容器40を開放する。ガス38の放圧の際に、その体積は増加し、そのためガス38は、周囲環境に対して体積変化に伴う仕事を行わなければならない。このため、エネルギーは、ガス自体から取り出され、それにより周囲温度Tから、この周囲温度Tよりも明らかに低い温度T
1に冷却される。冷却の際に、ガス38はエネルギー損失により凝縮して、ことに微結晶44の形の固体42になる。
【0049】
圧力容器40から流出する、膨張するガス38およびその際に形成される微結晶44を、積層スタック10の表面16の処理のための機械的粒子として利用するために、工程S2c)において、膨張するガス38を、例えば整列装置46、例えば絞り48の使用により整列させることで、形成された微結晶44からなる方向付けられた流れ50が生じる。図式的に、工程S2b)およびS2c)は、
図7に、この方法のスナップショットで示されている。
【0050】
工程S2d)において、そのときに、積層スタック10の表面16に、方向付けられた流れ50が当てられる。この図式的なスナップショットでは、この工程が
図8に示されている。
【0051】
この場合、方向付けられた流れ50は静止されたままであり、つまり、供給源52、
図8では整列装置46からの微結晶44の流出点は、空間内での位置が変わらない。しかしながら、積層スタック10の全体の表面16を、方向付けられた流れ50に当てるために、積層スタック10を、
図8では双頭矢印により示されたように、方向付けられた流れ50を越えるように動かす。これは、例えば、積層スタック10の縦軸Lが、方向付けられた流れ50の主要流動方向Hに対して正確に垂直に配置されるように行うことができるが、縦軸Lと主要流動方向Hとの間で0°と90°との間の傾斜角をなすことも可能である。
【0052】
好ましくは、この場合、積層スタックを、縦軸Lを中心として連続的に回転させる。
【0053】
方向付けられた流れ50の供給源52と、積層スタック10の表面16との間の距離dは、好ましくは1cm〜10cmの範囲にある。3cm〜6cmの距離dが特に好ましい。この場合、供給源52が、表面16に対してより近くに配置されていればそれだけ、より多くの微結晶44が、表面16の定義された面積領域に当たる、つまり面積当たりより多くの力が、この面積領域内の表面16に作用する。この距離dが近すぎるように選択される場合、多結晶質の組織20の損傷を引き起こしかねない。
【0054】
方向付けられた流れ50が積層スタック10の表面16に当たる圧力p
sに関しても同じ考察を行うことができる。圧力p
sが低すぎる場合、緩いセラミック材料24を、多結晶質の組織20から完全には引き離すことができない。したがって、圧力p
sについての最適な圧力範囲は、2bar〜25bar、ことに10bar〜16barである。
【0055】
表面16に方向付けられた流れ50が当てられる好ましい放射時間として、2秒〜15秒の範囲が突き止められた。この時間は、積層スタック10の表面16から緩いセラミック材料24を除去するために十分である。
【0056】
圧電積層スタック10の製造方法において使用することができる、商業的に、圧力容器40に入れられた入手可能なガスは、例えばCO
2、N
2および/または、例えばアルゴンのような希ガスである。このガスは、全体として、一方で無毒であり、他方で標準条件下でガス状であるため、このガスは、積層スタック10の表面16との接触後に再びガスの状態に移行し、かつ積層スタック10の表面16から蒸発するという利点を有する。それにより、積層スタック10の表面16の処理のために使用される固体42による残留物は全く生じない。
【0057】
図9〜
図12は、積層スタック10の表面16の写真を示し、これらの写真は、一方で説明された方法で処理されていない(
図9および
図10)、ならびに他方で説明されたような方法で処理されている(
図11、
図12)。
【0058】
この場合、
図9および
図11は、それぞれ積層スタック10の縦断面の顕微鏡写真を示し、
図10および
図12は、それぞれ
図9もしくは
図11による積層スタック10の表面16のSEM写真を示す。
【0059】
図9では、矢印により印されるように、緩いセラミック材料24が多結晶質の組織20に接して存在することを認識することができる。
【0060】
図10では、この緩いセラミック材料24は、表面16上での結晶粒54の不規則な分布により表されている。
【0061】
図11では、多結晶質の組織20に関して、
図9と比べて緩いセラミック材料24がもはや存在しないことを認識することができる。
図12では、したがって、この方法により処理された積層スタック10の表面16が、結晶粒54からなる規則的な構造として示されている。平均粗さRaは、この方法により処理された積層スタック10の場合、0.5μm〜3μmの範囲で変動し、このことは、積層スタック10の表面16を後に別の材料、例えば不動態化塗料36で被覆する場合に特に好ましい。
【0062】
図13は、a)全く未処理の積層スタック10、b)溶媒浴32中での超音波34を用いて処理しただけの積層スタック10、およびc)上述の方法で処理された、つまり液化されたガス38に当てることにより緩いセラミック材料24が除去された、積層スタック10の表面16の顕微鏡写真をまとめて示す。
【0063】
緩いセラミック材料は、a)、b)およびc)による写真において明色の斑点として現れる。積層スタック10の超音波洗浄により、表面16には、未処理の積層スタック10と比べて、セラミック材料24からなる比較的小さな緩い粒子を除去することができたことを認識することができる。しかしながら、積層スタック10の後の作動において、超音波により除去可能な比較的小さな粒子が問題を起こすのではなく、写真b)で見られるような、いまだに積層スタック10の表面16に残留し、したがって多結晶質の組織20から除去されていない比較的大きな粒状結合体26が問題を起こす。それに対して、写真c)では、緩いセラミック材料24を形成する全ての粒子を十分に除去することができたことを認識することができる。したがって、積層スタック10の表面16の80%超が、緩いセラミック材料24を有さず、かつセラミック層12の表面16の20%未満に、機械的に付着しているだけの圧電セラミック材料24が存在する。
【国際調査報告】