特表2018-522070(P2018-522070A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-522070(P2018-522070A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(54)【発明の名称】白内障の処置用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20180713BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180713BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20180713BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180713BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20180713BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180713BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20180713BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20180713BHJP
【FI】
   A61K31/575
   A61P27/02
   A61P27/12
   A61P43/00 121
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/18
   A61K9/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2018-525507(P2018-525507)
(86)(22)【出願日】2016年7月27日
(85)【翻訳文提出日】2018年3月23日
(86)【国際出願番号】US2016044337
(87)【国際公開番号】WO2017019808
(87)【国際公開日】20170202
(31)【優先権主張番号】62/295,267
(32)【優先日】2016年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/252,120
(32)【優先日】2015年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/202,518
(32)【優先日】2015年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/197,477
(32)【優先日】2015年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】518031273
【氏名又は名称】キャタコア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Catacore, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】サム・エル・グエン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA65
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22Z
4C076DD23Z
4C076DD25Z
4C076DD26Z
4C076DD37R
4C076DD38
4C076DD49R
4C076DD51R
4C076DD55
4C076EE23
4C076EE32
4C076FF11
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
(57)【要約】
一実施形態において、本出願は、眼の疾患、病変、および損傷の処置用の水性眼病用組成物であって:a)眼の疾患、病変、および損傷の処置および/または予防に有効な濃度の、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14,24−トリエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8,24−ジエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8−エン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14−ジエン−3β−オール、14−デスメチルラノステロール、ラトステロール、Δ7,24−コレスタジエノール、コレステロール、コレスタ−7−エノール、コレステリルエステル、7−デヒドロコレステロール、デスモステロール、7−デヒドロデスモステロール、チモステロール、27−ヒドロキシコレステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3−β−オール、コレスタ−8(9)−エン−3−β−オール、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、5−コレステン−3β,25−ジオール,ジサルフェート、およびそれらのエステル、またはそれらの医薬的に許容可能な塩からなる群から選択される1つのステロイド、または少なくとも2つのステロイドの組合せ;ならびにb)医薬賦形剤を含む組成物、ならびにそのような組成物を用いて処置する方法を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の疾患、病変、および損傷の処置用の水性眼病用組成物であって:
a)前記眼の疾患、病変、および損傷の処置および/または予防に有効な濃度の、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14,24−トリエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8,24−ジエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8−エン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14−ジエン−3β−オール、14−デスメチルラノステロール、ラトステロール、Δ7,24−コレスタジエノール、コレステロール、コレスタ−7−エノール、コレステリルエステル、7−デヒドロコレステロール、デスモステロール、7−デヒドロデスモステロール、チモステロール、27−ヒドロキシコレステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3−β−オール、コレスタ−8(9)−エン−3−β−オール、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、5−コレステン−3β,25−ジオール,ジサルフェート、およびそれらのエステル、またはそれらの医薬的に許容可能な塩からなる群から選択される1つのステロイド、または少なくとも2つのステロイドの組合せ;ならびに
b)医薬賦形剤
を含む組成物。
【請求項2】
ステロイドの前記組合せまたは混合物が、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2つのステロイドの前記混合物は、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、ならびに5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される1つのステロイドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記眼疾患は白内障である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物はさらに、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらの薬理的に許容可能な塩、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのセルロースを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記ステロイドの総濃度は、約0.001から1.0mg/mlである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、前記ステロイドの用量範囲を、約0.01から約100mg/kg/日と規定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記ステロイドの量は、0.0005wt/wt%から0.5wt/wt%、0.001wt/wt%から0.5wt/wt%、0.01wt/wt%から0.5wt/wt%、または0.1wt/wt%から0.5wt/wt%の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記セルロースの量は、約0.01%から0.5%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
ベンジルアルコールまたはパラ−アミノ−安息香酸から選択される防腐剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ステロイドの組成または前記ステロイドの比率は、表1から表9に開示される通りである、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物はさらに、眼への局所投与に許容可能な潤滑剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、充填されたナノ粒子製剤または持続型放出製剤である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、少なくとも1週間、毎日投与するのに適している、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、少なくとも1週間または2週間、毎日、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、または毎週投与されてよい、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
眼の疾患、病変、および損傷を処置する方法であって:
a)前記眼の疾患、病変、および損傷の処置および/または予防に有効な濃度の、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14,24−トリエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8,24−ジエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8−エン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14−ジエン−3β−オール、14−デスメチルラノステロール、ラトステロール、Δ7,24−コレスタジエノール、コレステロール、コレスタ−7−エノール、コレステリルエステル、7−デヒドロコレステロール、デスモステロール、7−デヒドロデスモステロール、チモステロール、27−ヒドロキシコレステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3−β−オール、コレスタ−8(9)−エン−3−β−オール、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、5−コレステン−3β,25−ジオール,ジサルフェート、およびそれらのエステル、またはそれらの医薬的に許容可能な塩からなる群から選択される1つのステロイド、または少なくとも2つのステロイドの組合せ;ならびに
b)医薬賦形剤;
を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記眼疾患は白内障である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与は、白内障の形成を予防するのに有効であり、または白内障を処置するのに有効である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の前記投与は、白内障におけるタンパク質の凝集を逆転させ、または白内障の重症度を有意に低下させ、かつ水晶体の透明度を増大させる、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物の前記投与は、野生型クリスタリンタンパク質および突然変異クリスタリンタンパク質の双方のアグリソーム形成を有意に阻害する、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は、原発性開放隅角緑内障、白内障に付随する高眼圧症の患者に投与されてよい、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
水晶体タンパク質の凝集を阻害し、白内障を処置し、白内障の形成を引き下げ、白内障の重症度を低下させ、かつ水晶体の透明度を増大させる方法であって、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項23】
突然変異体クリスタリンタンパク質の培養によって引き起こされるタンパク質の凝集を減少させ、かつ水晶体の透明度を増大させることによって、予め形成された白内障の重症度を低下させる方法であって、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項24】
治療的に有効な量は、白内障を処置するのに有効である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、眼の硝子体眼房中への局所投与または注射である、請求項16から24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張出願)
【0002】
本出願は、2016年2月15日出願の米国仮特許出願第62/295267号明細書、2015年11月6日出願の米国仮特許出願第62/252120号明細書、2015年8月7日出願の米国仮特許出願第62/202518号明細書、および2015年7月27日出願の米国仮特許出願第62/197477号明細書に開示されている実施形態を組み込む。これらの出願は全て、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
白内障は、失明の主な原因である。毎年何百万人もの患者が、混濁した水晶体を取り除く白内障手術を受けている。白内障の外科的処置は有効であるが、合併症のリスクがないわけではない。先天白内障は、視力障害および小児失明症の一般的な原因の1つであることが報告されている。先天白内障は、単独で、または多系統障害の一要素として起こる。無症候性先天白内障は、10,000人の生児出生あたり1〜6人の発生率と推定されている。症例のほぼ3分の1は、家族歴陽性を示し、そのうち、常染色体優性遺伝が最も一般的である。単独の常染色体優性先天白内障の原因となる遺伝子は、20超が同定されている。これらの遺伝子は、クリスタリン、膜輸送タンパク質、細胞骨格タンパク質、および転写因子をコードする。α−クリスタリン、β−クリスタリン、およびγ−クリスタリンが挙げられるクリスタリンタンパク質は、ヒトにおいて、水晶体可溶性タンパク質の約90%を占めている。これらのタンパク質は、光透過性および高屈折率において、重要な役割を果たしている。α−クリスタリンは、小熱ショックタンパク質のファミリに属し、タンパク質が誤って折り畳まれることから保護する分子シャペロンとして機能する。スーパーファミリとみなされているβ−クリスタリンおよびγ−クリスタリンは、水晶体構造タンパク質であり、共通の2ドメイン構造を共有しており、4つのグリークキーモチーフで構成されている。γ−クリスタリンは、ヒト2番染色体上の遺伝子クラスタ(CRYGA−F)によってコードされる6つのメンバを備える。Xiao−Qiao Li et al.,Human Mutation,Research Article,Vol.33,Issue 2,pp.391−401,February 2012参照。
【0004】
Zhao et al.(2015)。ヒト水晶体は、大部分がクリスタリンタンパク質で構成されており、当該タンパク質は、水晶体の透過性および屈折率に不可欠な、高秩序の(highly ordered)、インタラクティブなマクロ構造にアセンブルされている。タンパク質内またはタンパク質間の相互作用の何らかの破壊により、この精巧な構造は変化して、疎水性表面が曝されて、結果的にタンパク質が凝集し、かつ白内障が発症することとなる。白内障は、世界中で、失明の最も一般的な原因であり、数千万の人々に影響を及ぼしており、現在、唯一の処置法は、白内障水晶体の外科的除去である。水晶体タンパク質が凝集を防止し、かつ水晶体透過性を維持する正確なメカニズムは、ほとんど知られていない。ラノステロールは、水晶体中で豊富な両親媒性分子である。これは、コレステロール合成経路の重要な環化反応中で、ラノステロール合成酵素(LSS)によって合成される。2つの異なるホモ接合性LSSミスセンス突然変異(W581RおよびG588S)が、広範な先天白内障の2つのファミリ内に存在する。当該突然変異は双方とも、高度に保存されたアミノ酸残基に作用して、LSSの重要な触媒機能を損なう。変異型ではなく野生型LSSの発現を操作すると、様々な白内障原因突然変異クリスタリンの細胞内タンパク質の凝集が防止される。コレステロールではないラノステロールによる処置により、インビトロ、そして細胞トランスフェクション実験の双方で、予め形成されたタンパク質凝集体が有意に減少した。Zhao et al.はまた、ラノステロール処置により、摘出したウサギ白内障水晶体において、インビトロで、白内障の重症度を低下させ、かつ透過性を増大させ、そしてイヌにおいて、インビボで、白内障の重症度を低下させることができたことも示している。Zhao et al.は、水晶体タンパク質の凝集の防止において重要な化合物として、ラノステロールを同定し、そして白内障の予防および処置についての新規な戦略を提案した。Ling Zhao et al.,Lanosterol reverses protein aggregation in cataract,Nature,Research Letters,July,2015参照。同様に、Makley et al.,Science,Vol.350,Issue 6261,pp.674−677は、白内障モデルにおいて透過性を部分的に回復させるα−クリスタリンの薬理学的シャペロンとしての特定のステロールの投与を報告した。
【0005】
関連技術および限定の上記の例は、例示用であり、排他的でないことが意図される。関連技術の他の限定は、本明細書を読んで、そして本明細書に示される図面を検討すれば直ぐに、当業者に明らかとなろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先天白内障が挙げられる白内障の処置に有効な非侵襲的かつ非外科的な方法が必要とされている。本出願は、白内障の予防および処置のための新規の製剤および方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の実施形態、態様、および変形例は、例示的かつ説明用のものであり、範囲を限定することを意図するものではない。
【0008】
一実施形態において、本出願は、ラノステロール等のステロイドと、白内障が挙げられる眼の疾患、病変、および損傷等の眼疾患の処置に有効な、ラノステロールまたはコレステロールの生合成経路の下流で形成されるステロイドとの組合せを含む組成物を開示する。別の実施形態において、ステロイドとして、そのプロドラッグ、例えばそのエステル(メチルエステルおよびエチルエステルが挙げられる)が挙げられる。一実施形態において、ステロイドの混合物は、ラノステロールを含む。本明細書中に開示される実施形態、変形例、および態様のそれぞれの一変形例において、ステロイド製剤は、ラノステロールを除外し;そしてステロイド製剤は、単一ステロイドとしてのコレステロールを除外する。
【0009】
別の実施形態において、本出願は、白内障が挙げられる、病変および損傷等の眼疾患の処置に有効なラノステロールを含む組成物を開示する。別の実施形態において、ラノステロールとして、プロドラッグ、例えばそのエステル(メチルエステルおよびエチルエステルが挙げられる)が挙げられる。
【0010】
一実施形態において、本出願は、開示される組成物または製剤を用いて白内障を処置する方法を開示する。一態様において、本出願は、常染色体優性先天白内障の患者におけるγC−クリスタリンの突然変異を含む白内障の処置用の製剤および組成物、ならびに方法を開示する。
【0011】
一実施形態において、眼の疾患、病変、および損傷の処置用の水性眼病用組成物であって:
a)眼の疾患、病変、および損傷の処置および/または予防(prophylaxis)に有効な濃度の、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14,24−トリエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8,24−ジエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8−エン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14−ジエン−3β−オール、14−デスメチルラノステロール、ラトステロール、Δ7,24−コレスタジエノール、コレステロール、コレスタ−7−エノール、コレステリルエステル、7−デヒドロコレステロール、デスモステロール(24−デヒドロコレステロール)、7−デヒドロデスモステロール、チモステロール、27−ヒドロキシコレステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3−β−オール、コレスタ−8(9)−エン−3−β−オール、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、5−コレステン−3β,25−ジオール,ジサルフェート、およびそれらのエステル、またはそれらの医薬的に許容可能な塩からなる群から選択される1つのステロイド、または少なくとも2つのステロイドの組合せ;ならびにb)医薬賦形剤
を含む組成物が提供される。
【0012】
先の一変形例において、ステロイドは、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される。別の変形例において、ステロイドの組合せまたは混合物は、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される。別の変形例において、2つのステロイドの混合物は、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、ならびに5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される1つのステロイドまたは少なくとも1つのステロイドから選択される。
【化1】
【0013】
一変形例において、眼への局所投与に適した医薬組成物であって:(a)眼の疾患、病変、および損傷の処置および/または予防に有効な濃度の、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14,24−トリエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8,24−ジエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8−エン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14−ジエン−3β−オール、14−デスメチルラノステロール、ラトステロール、Δ7,24−コレスタジエノール、コレステロール、コレスタ−7−エノール、コレステリルエステル、7−デヒドロコレステロール、デスモステロール(24−デヒドロコレステロール)、7−デヒドロデスモステロール、チモステロール、27−ヒドロキシコレステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3−β−オール、コレスタ−8(9)−エン−3−β−オール、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、5−コレステン−3β,25−ジオール,ジサルフェート、またはそれらの医薬的に許容可能な塩からなる群から選択される1つのステロイド、または少なくとも2つのステロイド;(b)溶液中でステロイドを維持するのに十分なシクロデキストリン濃度の、医薬的に許容可能なシクロデキストリン化合物;ならびに(c)コンニャクおよびアルギン酸ナトリウム;コンニャクおよびヒドロキシプロピルグアー;コンニャクおよびアルギン酸プロピレングリコール;コンニャクおよびCarbopol 971;ヒドロキシプロピルグアーおよびアガロース;アルギン酸プロピレングリコールおよびアガロース;ならびにアルギン酸プロピレングリコールおよびスクレログルカンからなる群から選択される少なくとも1つまたは少なくとも2つの眼科学的に適合可能なポリマーを含む組成物が提供される。先の一変形例において、ステロイドは、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される。別の変形例において、ステロイドの組合せまたは混合物、または少なくとも2つのステロイドは、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される。別の変形例において、2つのステロイドの混合物は、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、ならびに5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、および5−コレステン−3β,25−ジオールからなる群から選択される1つのステロイドから選択される。
【0014】
先の組成物または製剤の一変形例において、ラノステロールは、組成物の成分として存在する。別の変形例において、ラノステロールは、組成物または製剤中に、唯一のステロイドとして存在する。組成物の別の変形例において、ラノステロールは、ステロイド混合物の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の濃度で存在する。組成物の別の変形例において、組成物中のステロイドの濃度は、約1から100mM、1から75mM、1から50mM、1から25mM、または1から10mMである。別の変形例において、組成物中のステロイドの濃度は、約50から100mM、75から100mM、85から100mM、または90から100mMである。別の変形例において、組成物中のステロイドの濃度は、約25から75mM、35から65mM、または約45から55mMである。
【0015】
先の一変形例において、組成物または製剤は、局所医薬製剤である。一態様において、本発明の製剤は、眼病用薬剤の局所送達で直面する主要な問題の1つである、排液による迅速かつ広範な角膜前涙液損失(precorneal loss)および高い涙液入替り率(turnover)を克服する。
【0016】
組成物の別の態様において、眼疾患は白内障である。別の態様において、組成物はさらに、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらの薬理的に許容可能な塩、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのセルロースを含む。別の変形例において、製剤はさらに、カルボキシポリメチレンまたはポリビニルピロリドンを含む。
【0017】
一変形例において、組成物は、眼への局所投与に適している。別の変形例において、カルボキシポリメチレンまたはポリビニルピロリドンの量は、例えば、眼および/または房水において、ステロイドの眼内吸収を増大させるのに有効である。
【0018】
さらに別の変形例において、製剤は、シクロデキストリン化合物を、組成物中の本質的に全てのステロイド剤が溶液中にあるのを確実にするのに十分な濃度で含む。一態様において、シクロデキストリン化合物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、λ−シクロデキストリン、アルキルシクロデキストリン、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン、カルボキシアルキル−シクロデキストリン、およびスルホアルキルエーテルシクロデキストリンからなる群から選択される。別の変形例において、シクロデキストリン化合物は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンからなる群から選択される。先の一変形例において、シクロデキストリン濃度は、約1mg/mlから約500mg/ml、10mg/mlから約400mg/ml、100mg/mlから約300mg/ml、または150mg/mlから約250mg/mlである。別の変形例において、シクロデキストリン濃度は、約1mg/mlから約250mg/ml、1mg/mlから約200mg/ml、1mg/mlから約150mg/ml、または1mg/mlから約100mg/mlである。
【0019】
先の組成物の別の態様において、組成物中のステロイドの総濃度は、約0.001から1.0mg/mlである。別の態様において、組成物は、ステロイドの用量範囲を、約0.01から約100mg/kg/日と規定する。
【0020】
先の組成物の一変形例において、用量範囲は、0.1から約100mg/kg/日である。別の変形例において、用量範囲は、0.1から50mg/kg/日、0.1から25mg/kg/日、0.1から20mg/kg/日、0.1から15mg/kg/日、または0.1から10mg/kg/日である。別の変形例において、用量範囲は、50から100mg/kg/日、60から100mg/kg/日、75から100mg/kg/日、85から100mg/kg/日、90から100mg/kg/日、または95から100mg/kg/日である。別の変形例において、用量範囲は、25から75mg/kg/日、30から75mg/kg/日、45から75mg/kg/日、50から75mg/kg/日、60から75mg/kg/日、または65から75mg/kg/日である。
【0021】
組成物の別の態様において、組成物中のステロイドの量は、0.0005wt/wt%から0.5wt/wt%、0.001wt/wt%から0.5wt/wt%、0.01wt/wt%から0.5wt/wt%、または0.1wt/wt%から0.5wt/wt%の範囲内である。組成物の別の態様において、セルロースの量は、約0.01%から0.5%である。組成物の一変形例において、セルロースの量は、約0.2%から0.4%、0.25%から0.35%、または約0.3%である。先の一変形例において、組成物は、ステロイド製剤(100mg)が充填されたナノ粒子である。別の変形例において、ナノ粒子中のステロイド製剤は、0.01から100mg、0.01から50mg、0.01から25mg、0.01から10mg、または0.01から1mgである。
【0022】
先の別の態様において、組成物はさらに、ベンジルアルコールまたはパラ−アミノ−安息香酸から選択される防腐剤を含む。別の態様において、ステロイドの組成またはステロイドの比率は、本明細書中に開示される表1から表8に開示される通りである。別の態様において、先の組成物はさらに、眼への局所投与に許容可能な潤滑剤を含む。別の態様において、組成物は、眼への毎日の投与に適している。先の組成物のさらに別の態様において、組成物は、少なくとも1週間、毎日投与するのに適している。
【0023】
一変形例において、組成物は、治療的に有効な量のステロイド、および医薬的に許容可能な賦形剤を含む。先の一態様において、組成物は、眼への毎日の投与に適している。
【0024】
一変形例において、組成物は、少なくとも1週間、毎日、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、または毎週投与されてよく;あるいは組成物は、少なくとも2週、少なくとも3週、もしくは少なくとも4週、またはそれ以上投与されてよい。別の変形例において、組成物は、先で記載した期間、少なくとも1日1回または1日少なくとも2回、然るべく投与されてよい。別の変形例において、組成物は、4週またはそれ以上の間、1日2回局所投与するのに適している。別の変形例において、組成物は、6ヶ月またはそれ以上の間、局所投与するのに適している。
【0025】
別の変形例において、組成物は、眼の疾患、病変、および損傷を処置するための医薬品としての使用に適しており、そして組成物は、他の眼医薬品と組み合わせて投与するのに適している。
【0026】
先の別の態様において、組成物は、少なくとも1週間、毎日、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、または毎週投与されてよい。
【0027】
別の実施形態において、眼の疾患、病変、および損傷を処置する方法が提供され、当該方法は:a)眼の疾患、病変、および損傷の処置および/または予防に有効な濃度の、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14,24−トリエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8,24−ジエン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8−エン−3β−オール、4,4−ジメチルコレスタ−8(9),14−ジエン−3β−オール、14−デスメチルラノステロール、ラトステロール、Δ7,24−コレスタジエノール、コレステロール、コレスタ−7−エノール、コレステリルエステル、7−デヒドロコレステロール、デスモステロール(24−デヒドロコレステロール)、7−デヒドロデスモステロール、チモステロール、27−ヒドロキシコレステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3−β−オール、コレスタ−8(9)−エン−3−β−オール、5α−コレスタン−3β−オール−6−オン、5−コレステン−3β,25−ジオール、5−コレステン−3β,25−OSOH(5−コレステン−3β,25−サルフェート)、5−コレステン−3β−OSOH,25−オール(5−コレステン−3β−サルフェート,25−オール)、5−コレステン−3β,25−ジオール,ジサルフェート、およびそれらのエステル、またはそれらの医薬的に許容可能な塩からなる群から選択される1つのステロイド、または少なくとも2つのステロイドの組合せ;ならびにb)医薬賦形剤;を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0028】
先の方法の一態様において、眼疾患は白内障である。当該方法の別の態様において、当該投与は、白内障の形成を予防するのに有効であり、または白内障を処置するのに有効である。先の方法の別の態様において、組成物の投与は、白内障におけるタンパク質の凝集を逆転させ、または白内障の重症度を有意に低下させ、かつ水晶体の透明度を増大させる。
【0029】
先の方法の別の態様において、組成物の投与は、野生型クリスタリンタンパク質および突然変異クリスタリンタンパク質の双方のアグリソーム形成を有意に阻害する。
【0030】
先の一変形例において、当該方法は、患者の白内障を逆転させる。先の一変形例において、当該方法は、アミロイド形成の抑制、部分的抑制、または部分的逆転の少なくとも1つに有効である。別の態様において、開示される方法は、凝集を阻止し、かつR120G cryAB(αβ−クリスタリン)、cryAB、およびcryAAの、水晶体のタンパク質内容物中での不溶性を逆転させ、または部分的に逆転させる。別の態様において、当該方法は、クリスタリン(複数)を結合させて安定化させる。別の態様において、当該方法は、可溶性の形態のcryABを安定化させて、その凝集を抑制する。別の態様において、開示される方法は、いくつかの点で有効であり、これらとして、タンパク質の溶解性を回復させること;cryAAおよびcryABを含むα−クリスタリンの溶解性を向上させること;LOCS IIIスコアリング系の少なくとも一グレードによって決定される透過性を向上させること;より可溶性の形態のcryAAおよびcryABを結合させて安定化させることによって、タンパク質の凝集を逆転させること;およびcryABの天然の形態を安定化させることが挙げられる。先の方法は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%有効である。一変形例において、当該方法は、白内障の重症度を、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%低下させる。別の変形例において、眼への組成物の投与は、凝集体からの突然変異体クリスタリンタンパク質の放出をもたらす。別の変形例において、組成物の投与は、眼の水晶体組織中のアミロイド様原線維から、凝集したクリスタリンタンパク質を再溶解させる。別の変形例において、投与は、慢性的に局所的に眼にかかる眼圧、ならびに原発性開放隅角緑内障および高眼圧症の眼圧を低下させるのに有効である。
【0031】
先の方法の別の態様において、組成物は、原発性開放隅角緑内障、白内障に付随する高眼圧症の患者に投与されてよい。
【0032】
別の実施形態において、水晶体タンパク質の凝集を阻害し、白内障を処置し、白内障の形成を引き下げ、白内障の重症度を低下させ、かつ水晶体の透明度を増大させる方法であって、先の、本明細書中に開示される組成物のいずれかの組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0033】
別の実施形態において、突然変異体クリスタリンタンパク質の培養によって引き起こされるタンパク質の凝集を減少させ、かつ水晶体の透明度を増大させることによって、予め形成された白内障の重症度を低下させる方法であって、先の、本明細書中に開示されるいずれか1つの組成物を投与することを含む方法が提供される。先の方法の一態様において、治療的に有効な量は、白内障を処置するのに有効である。先の方法の別の態様において、投与は局所投与である。
【0034】
一変形例において、治療的に有効な量は、水晶体タンパク質の凝集の阻害、白内障の処置、白内障の形成の引下げ、白内障の重症度の低下、および水晶体の透明度の増大に有効である。先の方法の別の変形例において、当該方法は、医薬的に有効な量のステロイドを、処置を必要とする患者に投与することを含み、ステロイドの医薬的に有効な量は、疾患を改善するのに十分な量を含む。
【0035】
一実施形態において、セルロースの薬理的に許容可能な塩として、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびセルロースグリコール酸ナトリウムが挙げられる。USPは、セルロースのポリカルボキシメチルエーテルのナトリウム塩として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを記載している。セルロースの典型的な分子量は、90,000から700,000である。本発明の製剤に用いるのに適したセルロース化合物は、様々な製造業者から様々な形態で市販されている。ベンゼンフリーのカルボキシポリメチレンが、CARBOMER 980の商標名で市販されている。ポリビニルピロリドンは、KOLLIDON K17の商標名で市販されている。本明細書中に開示される実施形態、変形例、および態様のそれぞれの一変形例において、ステロイド製剤は、ラノステロールを除外する。
【0036】
別の実施形態において、製剤は、コンニャクおよびアルギン酸ナトリウム;コンニャクおよびヒドロキシプロピルグアー;コンニャクおよびアルギン酸プロピレングリコール;コンニャクおよびCarbopol 971;ヒドロキシプロピルグアーおよびアガロース;アルギン酸プロピレングリコールおよびアガロース;ならびにアルギン酸プロピレングリコールおよびスクレログルカンからなる群から選択される少なくとも1つ、または少なくとも2つの眼科学的に適合可能な化合物およびポリマーを含む。
【0037】
また、先の実施形態、態様、および変形例において挙げられるのは、アミノ酸の塩、例えばアルギン酸塩、グルコン酸塩、およびガラクツロン酸塩である。本発明の化合物の一部は、分子内塩または双性イオンを形成することができる。本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態で、そして溶媒和形態(水和形態が挙げられる)で存在することができ、本発明の範囲内であることが意図される。先の特定の化合物は、1つまたは複数の固体相または結晶相もしくは多形体で存在してもよく、そのような多形体またはそのような多形体の混合物の可変生物活性もまた、本発明の範囲内に含まれる。また、提供されるのは、医薬的に許容可能な賦形剤、および治療的に有効な量の、本発明の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物である。
【0038】
本発明の化合物またはその誘導体の医薬組成物は、非経口投与用の溶液または凍結乾燥粉末として製剤化されてよい。粉末は、使用前に適切な希釈剤または他の医薬的に許容可能なキャリアを加えることによって、再構成されてよい。液体製剤は一般に、緩衝された等張水溶液である。適切な希釈剤の例として、通常の等張生理食塩水、5%デキストロースの水溶液または緩衝酢酸ナトリウム溶液もしくは緩衝酢酸アンモニウム溶液である。そのような製剤は、非経口投与に特に適しているが、経口投与に用いられてもよい。賦形剤、例えばポリビニルピロリジノン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、またはクエン酸ナトリウムが加えられてもよい。代わりに、これらの化合物は、経口投与用に、カプセル化されても錠剤化されてもよいし、エマルジョンまたはシロップ中に調製されてもよい。医薬的に許容可能な固体キャリアまたは液体キャリアが、組成物を増強し、もしくは安定化させるために、または組成物の調製を容易にするために、加えられてよい。液体キャリアとして、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコール、または水が挙げられる。固体キャリアとして、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム,二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアゴム、寒天、またはゼラチンが挙げられる。キャリアはまた、持続放出性の材料、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを、単独で、またはワックスと共に含んでもよい。固体キャリアの量は変化するが、好ましくは、投薬量単位あたり約20mgから約1gとなろう。医薬調製物は、錠剤の形態用に、必要に応じて、粉砕、混合、造粒、および圧縮を;または硬質ゼラチンカプセルの形態用に、粉砕、混合、および充填を含む、従来の薬学技術に従って、製造される。液体キャリアが用いられる場合、調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジョン、または水性懸濁液もしくは非水性懸濁液の形態となろう。そのような液体製剤は、直接経口投与されてもよいし、軟質ゼラチンカプセル中に充填されてもよい。これらの投与方法のそれぞれに適した製剤が、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,ed.,20th edition,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,Paにおいて見出され得る。
【0039】
一変形例において、先のステロイド、またはその医薬的に許容可能な塩は、その可能な異性体に関して該当する場合には、単一の立体異性体またはその立体異性体の混合物の形態で提供される。
【0040】
先に記載される例示的な実施形態、態様、および変形例に加えて、更なる実施形態、態様、および変形例が、表および図を参照することによって、そして以下の記載を考察することによって、明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義:
【0042】
本明細書中で特に断らない限り、用いられる用語の定義は、有機合成および医薬科学の分野において用いられる標準的な定義である。例示的な実施形態、態様、および変形が、図面において示されており、本明細書中に開示される実施形態、態様、および変形、ならびに図面は、例示的なものであり、限定的なものでないとみなされるべきであることが意図される。
【0043】
本出願の方法に従って処置され得る哺乳類として、ヒト、イヌ科の動物(イヌ)、ネコ、ウサギ、およびウマが挙げられる。
【0044】
「眼疾患」とは、白内障、原発性開放隅角緑内障、角膜障害、老眼、コンピュータビジョン症候群、眼精疲労、眼炎症、かすみ目、ドライアイ症候群、網膜疾患、硝子体の混濁および病変、真性糖尿病および他の全身性疾患の合併症が挙げられる眼の障害を意味する。一実施形態において、眼疾患は白内障である。
【0045】
用語「ガム」は、眼科学的に適合可能であり、かつ溶液または製剤の粘度を増大させる、あらゆる合成ポリマーもしくは非合成ポリマー、天然の多糖類、または誘導体化された天然の多糖類を指し、これらは十分に、患者の眼に投与された後に、これらが見出される溶液もしくは製剤の粘度を増大させるための、または溶液の滴を半固体もしくはゼラチンの状態に変換するためのものである。合成ポリマーガムの非限定的な例として、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびそれらの誘導体、ならびにカルボポールおよびその誘導体が挙げられる。天然多糖ガムの非限定的な例として、カラギーナン、コンニャク、アルギン酸ナトリウム、アロエベラゲル、アガロース、グアー、ペクチン、トラガカント、アカシア、アラビア、カードラン、ジェラン、キサンタン、スクレログルカン、ヒアルロン酸、またはキトサンが挙げられる。誘導体化された天然の多糖ガムの非限定的な例として、アルギン酸プロピレングリコールおよびヒドロキシプロピルグアーが挙げられる。
【0046】
文言「眼病用組成物」または「眼病用製剤」は、眼またはその関連組織もしくは周囲組織、例えば眼瞼に施す組成物を指す。当該用語はまた、眼自体、または眼を取り囲む組織の症状を処置する組成物も含む。眼病用組成物は、局所的に、または当業者に知られている他の技術、例えば、眼もしくはその関連組織への注射によって、施され得る。眼への適切な局所投与の例として、点眼剤での、そしてスプレー製剤による投与が挙げられる。さらに適切な局所投与経路として、結膜下注射によるものがある。製剤はまた、眼球周囲、または後眼窩から(retro―orbitally)、眼に提供されてもよい。特定の実施形態において、眼内(intracameral)投与が採用されてよい。
【0047】
文言「流動性の粘膜付着性ポリマー」は、インビボ粘膜吸収速度、安全性、分解性、および流動性が点眼剤にとって最適な、カルボキシ含有ポリマー、例えばアクリル酸等の軽度に架橋されたポリマーを指す。本出願で用いられる流動性の粘膜付着性ポリマーは、水不溶性、水膨潤性、生分解性のポリマーキャリアであり、これとして、軽度に架橋されたカルボキシ含有ポリマー、例えばポリカルボフィル(Noveon(商標)AA−1、Lubizol Corp.、Wickliffe、Ohio)、または他のCarbopol(商標)ポリマー(Lubizol Corp.、Wickliffe、Ohio)が挙げられる。本発明に用いるのに適したカルボキシ含有ポリマーおよびその製造方法が、米国特許第5192535号明細書に記載されている。本出願に用いるのに適したカルボキシ含有ポリマー系として、DuraSite(商標)(InSite Vision Inc.、Alameda、Calif.)が挙げられ、これは、ポリカルボフィルを含有し、薬物を速度制御して放出する持続放出性の眼病用局所送達系である。ポリマー系として、軽度に架橋されたポリマーが挙げられ、これは、水性懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも約90重量%のカルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマー、例えばアクリル酸を、約0.1重量%から約5重量%の多官能性の、または二官能性の架橋剤、例えばジビニルグリコール(3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエン)(粒子サイズは、眼病用薬剤、例えばステロイド製剤が製剤化される場合、相当球径で約50μm以下である)と、水性媒体中の溶液または懸濁液に懸濁重合または乳化重合することによって、調製される(ポリマーの量が、約0.5重量%から約1.5重量%に及ぶ)。一実施形態において、pHは、約7.4から約8.5であり、浸透圧(オスモル濃度または張度)は、約10mOsMから約400mOsMであり、眼への投与に適した低い粘度を有する局所眼病用医薬送達系が、滴剤として提供される。当該製剤は、眼の中で、眼の涙液と接触した後に、最初に導入された懸濁液または溶液の粘度よりも実質的に大きい粘度にまで急速にゲル化するので、適所に長時間留まって、眼病用薬剤の持続放出を実現し得る。
【0048】
「医薬的に許容可能な塩」は、所望の薬理活性を有すると一般に考えられ、安全で無毒性であると考えられ、かつ獣医学的用途およびヒトの医薬用途にとって許容可能な塩組成物を意味する。そのような塩として、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸で;または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸で形成された酸付加塩が挙げられる。
【0049】
文言「持続放出送達系」または「持続放出組成物」は、ステロイド製剤の持続放出を容易にする、米国特許第5192535号明細書に記載されるような、ポリカルボフィルおよびDuraSite (商標)等のカルボキシ含有ポリマーであってよい流動性の粘膜付着性ポリマーを含む製剤または組成物を指す。持続放出送達系、持続放出製剤、または持続放出組成物は、溶液、ゲル、フィルム、ペレット、ロッド、フィラメント、シリンダ、ディスク、ウエハ、ナノ粒子、またはミクロ粒子等の、多くの形態または形状で調製されてよい。本明細書中で定義される「ミクロ粒子」は、直径が約1ミリメートル未満の混合ポリマー成分であって、その中にステロイド製剤が分散されている混合ポリマー成分を含む。ミクロ粒子は、形状が球形であっても、非球形であっても、不規則であってもよい。一態様において、ミクロ粒子は、注射に適した大きさのものとなろう。別の態様において、ミクロ粒子の粒度範囲は、直径約1から約50ミクロンである。
【0050】
本明細書で用いられる文言「ステロイド製剤」は、ラノステロールである単一ステロイドを含んでもよいし、ラノステロールおよび本明細書中に開示される第2のステロイドを含む少なくとも2つのステロイドを含んでもよい。別の実施形態において、用語「ステロイド製剤」は、ラノステロールではない単一ステロイドを含んでもよいし、本明細書に開示される少なくとも2つのステロイド、例えば表1から表9の化合物またはステロイドを含んでもよい。
【0051】
「治療的に有効な量」は、本明細書中で列挙した生物学的効果のいずれかを誘発するステロイドの量を意味する。
【0052】
用語「処置する」または「処置」は、眼自体もしくは眼周囲の組織の疾患もしくは病状、またはそれに関連する症候について、その進行の軽減、改善、回復、緩和、阻害、またはその予防を指す。当該用語はまた、予防、治療、および治癒を包含する。「処置」を受けている、または「処置」を経験する対象または患者は、(眼に関連する疾患、例えば白内障、炎症もしくは炎症状態、またはそれらの組合せに対する)そのような処置が必要なあらゆる哺乳類であり、これとして、霊長類、例えばヒト、他の、ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ等の哺乳類;ならびに一般的な家畜哺乳類およびペットが挙げられる。
【0053】
(実施例)
以下の表は、製剤に用いられ得るステロイドの比率を変えた、様々な製剤を説明するものである。一態様において、組成物中のステロイドの総量は、0.0005wt/wt%から0.5wt/wt%、0.0005wt/wt%から0.2wt/wt%、0.0005wt/wt%から0.1wt/wt%の範囲内であってもよいし、本明細書中に開示されるものであってもよい。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0054】
先の代表的な製剤の使用は、開示される方法が、開示される方法を用いない場合に得られた結果に対して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%有効であり、または向上していることを示す。一態様において、当該方法は、白内障の重症度を、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%低下させる。
実験:
【0055】
25−ヒドロキシコレステロール(5−コレステン−3β,25−ジオール,5−コレステン−3β,25−ジオール)、98%、H1015 Sigma、CAS Number 2140−46−7;C2746、MW 402.65、Beilstein Registry Number 3161259。コレステリル硫酸ナトリウム(5−コレステン−3β−オール硫酸ナトリウム塩、コレステロール3−硫酸ナトリウム塩、コレステリル硫酸ナトリウム、コレステリル硫酸ナトリウム塩)C9523 Sigma、CAS Number 2864−50−8、C2745NaOS、MW488.70、Beilstein Registry Number 3899884。ラノステロール(3β−ヒドロキシ−8,24−ラノスタジエン,8,24−ラノスタジエン−3β−オール)(≧93%、粉末)、L5768 Sigma、CAS Number 79−63−0、C3050O、MW426.72。DMSO(ジメチルスルホキシド、D1435)、CAS Number 67−68−5。アセトニトリル、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ホウ酸カリウム、重炭酸カリウム、Carbomer 980、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ、Poloxamer 237、Polysorbate 80、ヒマシ油、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリカプロラクトン(PCL)ポリマー、レシチン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000が、例えばSigma−Aldrichから市販されている。
例示的な製剤:
【0056】
以下に列挙する製剤は、説明のためだけに記載されており、特許請求の範囲の適切な構成を限定するために用いられるものではない。製剤は、ステロイドを、組成物または製剤中に、例えば表1から表9に示すような様々な比率で含んでよい。
【0057】
1.眼疾患の処置用の水性眼病用組成物:眼疾患、例えば白内障の処置用の例示的な製剤を、以下に示す:
ステロイド製剤No.1:
【0058】
脱イオン水970グラム;グリセリン(1.0%)13グラム;表1から表8のステロイド製剤;カルボキシメチルセルロース(0.3%)3グラム;ベンジルアルコール(0.3%)3グラム;ホウ酸カリウム7.9グラム;重炭酸カリウム3.4グラム、または必要に応じて、pHを6.3〜6.5に調整。
2.眼疾患の処置用の水性眼病用組成物
【0059】
例示的なステロイド製剤No.2は、ベンジルアルコールおよびナトリウムバッファを使用する:
ステロイド製剤No.2:
【0060】
脱イオン水970グラム;グリセリン(1.0%)13グラム;表1から表8のステロイド製剤;カルボキシメチルセルロース(0.3%)3グラム;フェニル−エチルアルコール(0.3%)3グラム;ホウ酸ナトリウム7.9グラム、および重炭酸ナトリウム3.4グラム、または必要に応じて、pHを6.3〜6.5に調整。
3.眼疾患の処置用の水性眼病用組成物
【0061】
例証となるステロイド製剤No.3は、Carbomer 980を使用する:
ステロイド製剤No.3:
【0062】
脱イオン水970グラム;グリセリン(1.0%)13グラム;表1から表8のステロイド製剤;カルボマー980 2グラム;ベンジルアルコール(0.3%)3グラム;ホウ酸カリウム7.9グラム;重炭酸カリウム3.4グラム、または必要に応じて、pHを6.3〜6.5に調整。
4.白内障の処置用の水性眼病用組成物
【0063】
眼疾患、特に白内障の処置用の例示的な製剤を、以下に示す:
ステロイド製剤No.4:
【0064】
脱イオン水970グラム;グリセリン(1.0%)13グラム;表1から表8のステロイド製剤;カルボキシメチルセルロース(0.3%)3グラム;ベンジルアルコール(0.3%)3グラム;ホウ酸カリウム7.9グラム;および重炭酸カリウム3.4グラム、または必要に応じて、pHを6.3〜6.5に調整。
ステロイド製剤No.5:
【0065】
脱イオン水970グラム;グリセリン13グラム;表1から表8のステロイド製剤(0.001から0.05wt/vol%);p−アミノ安息香酸0.07グラム;カルボキシメチルセルロース3グラム;ベンジルアルコール3グラム;ホウ酸カリウム7.9グラム;重炭酸カリウム3.4グラム、または必要に応じて、pHを6.3〜6.5に調整。
ステロイド製剤No.116:
【0066】
116.A.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、50mgのラノステロール、50mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な、僅かに濁った溶液が生じた。
【0067】
116.B.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、50mgのラノステロール、50mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、ポリソルベート80(0.1wt/vol%)、ヒマシ油(0.1wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な溶液が生じた。
ステロイド製剤No.117:
【0068】
117.A.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、30mgのラノステロール、30mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、30mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性のオフホワイト色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な、僅かに濁った溶液が生じた。
【0069】
117.B.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、30mgのラノステロール、30mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、30mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、ポリソルベート80(0.1wt/vol%)、ヒマシ油(0.1wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性のオフホワイト色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な溶液が生じた。
ステロイド製剤No.118:
【0070】
118.A.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、50mgのラノステロール、50mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な、僅かに濁った溶液が生じた。
【0071】
118.B.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、50mgのラノステロール、50mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、ポリソルベート80(0.1wt/vol%)、ヒマシ油(0.1wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な溶液が生じた。
ステロイド製剤No.119:
【0072】
119.A.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、50mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、50mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な、僅かに濁った溶液が生じた。
【0073】
119.B.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、50mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、50mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、ポリソルベート80(0.1wt/vol%)、ヒマシ油(0.1wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な溶液が生じた。
ステロイド製剤No.120:
【0074】
120.A.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、55mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な、僅かに濁った溶液が生じた。
【0075】
120.B.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、55mgの5−コレステン−3β,25−ジオール、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、ポリソルベート80(0.1wt/vol%)、ヒマシ油(0.1wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な溶液が生じた。
ステロイド製剤No.121:
【0076】
121.A.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、100mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な、僅かに濁った溶液が生じた。
【0077】
121.B.マグネティックスターラーバーを入れた30mlガラスビーカー内に、100mgのコレステリル硫酸ナトリウム、2.0mlの無水エタノール、10滴のDMSO、および8.0mlのストック滅菌水溶液(0.0001%のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、リン酸バッファ(0.2wt/vol%)、Poloxamer 237(0.05wt/vol%)、ポリソルベート80(0.1wt/vol%)、ヒマシ油(0.1wt/vol%)、エデト酸二ナトリウム(0.05wt/vol%)、塩化ナトリウム(0.9wt/vol%)、および塩化カリウム(0.05wt/vol%)を再蒸留水中に含む)を加えた。生じた溶液を室温にて15分間撹拌したところ、少量の不溶性の淡褐色の微粒子が、溶液中に懸濁液として存在し続けた。溶液を、10mlの密封可能なプラスチック(PET、LDPE)液体滴下ボトルに移して、キャップをして溶液を密封した。得られたボトルを、室温のウォーターバス内で40分間超音波処理して、懸濁液を分散かつ溶解させて、均質な溶液が生じた。
代替の局所的ビヒクル溶液:
【0078】
再蒸留HOを、0.055gアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドと組み合わせた1.1g(EDTA)Naに、1.1Lの最終容量(pH5.66)に達するまで加えた。
賦形剤:
【0079】
リン酸水素二カリウムおよびリン酸二水素カリウムで緩衝した滅菌水(眼病用等級の等張液、pH6.3から6.5);ベンジルアルコール(防腐剤);グリセリン(潤滑剤)1.0%、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(潤滑剤)0.3%。
薬剤充填ナノ粒子の調製:
【0080】
表1から表8に開示したステロイド製剤の組合せを、適したナノ析出法によって、脂質ポリマーハイブリッドナノ粒子中に充填する。所望の濃度のステロイド製剤を、アセトニトリル中に溶解したポリカプロラクトン(PCL)ポリマーと混合する。レシチンおよび1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000(DSPE−PEG−COOH)を、4%エタノール水溶液中に、20%のPCLポリマー重量で溶解させて、60℃超に加熱する。ステロイド/PCL溶液を、予熱した脂質溶液中に、穏やかに撹拌しながら加えて、その後3分間徹底的にボルテックスする。混合溶液を2時間撹拌して、ナノ粒子を形成させて、アセトニトリルを蒸発させる。分子量カットオフが10kDaであるAmicon Ultra−4遠心フィルタ(Millipore)を用いて、ナノ粒子溶液を3回洗浄して、残りの有機溶媒および遊離分子を除去する。
【0081】
次いで、生じたナノ粒子を、その後の使用のために、PBSバッファ中に再懸濁させる。薬物充填ナノ粒子のサイズ、流度分布、および表面ゼータ電位を、動的光散乱によって特徴付ける。ステロイド製剤の充填率を、高速液体クロマトグラフィによって定量する。
イヌにおける白内障水晶体の処置:
【0082】
以下の成犬品種を用いて、処置効果を評価する:ブラックラブラドール、クイーンズランドヒーラー、およびミニチュアピンシャー。全てのイヌは成犬であり、糖尿病でなく、正常な眼表面および眼付属器を有し、自然発生した成犬発症性の白内障を患っている。雄犬および雌犬の分布はほぼ等しい。LSS遺伝子の全エキソンを、これらのイヌにおいてスクリーニングし、突然変異はない。生存動物における白内障に及ぼすステロイド製剤処置の効果を評価するために、イヌに、アセプロマキシンおよびブトルファノールを筋肉内注射で前投薬する。20分後、静脈内プロポフォールを施すことによって、麻酔の誘導を実行する。
【0083】
その後直ちに、イヌに挿管して、酸素および2%イソフルランを2リットル/分にて維持する。ステロイド製剤(100μg)充填ナノ粒子を、試験眼内の硝子体眼房中に、28ゲージの針を用いて、最初に注入し、その後、実験の期間中、3日に1度与える。処置眼または偽眼を無作為化する。コントロール眼に、ネガティブコントロールとして空のナノ粒子キャリアを注射した。処置眼を、局所点眼剤中のステロイド製剤で処置する(点眼剤については、以下を参照)。ステロイド製剤50mlを1滴、6週間にわたって毎日3回、試験眼に投与する。
【0084】
白内障の重症度の程度を、6週間の処置期間の始めと終わりに、細隙灯によって検査して、撮影する。検査の前に、瞳孔を1%トロピカミドおよび10%フェニレフリンで拡張させる。白内障の重症度の程度を、盲検検査者が評価して、イヌ科動物の白内障ステージに基づいてスコアする。水晶体の透明度および透過性の向上を定量化する。Wilcoxon検定を用いて処置効果を評価する。
局所的ビヒクル溶液:
【0085】
再蒸留水を、0.055gアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドと組み合わせた1.1g (EDTA)Naに、1.1リットルの最終容量(pH5.66)に達するまで加える。局所ビヒクル溶液中25mMのステロイド製剤。再蒸留HOを、12.5gステロイド製剤、1.1g (EDTA)Na、0.055gアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、および200ml EtOHの混合液に加えて、最終容量1.1リットルとする。ビヒクル溶液を、特定の製剤において述べたように、添加剤および賦形剤と共に使用した。
薬物製剤:
【0086】
乾燥製剤を調製して、異なる標識ドロッパ中に入れた。製剤は、イヌに製剤を投与する3〜5日前に調製した。溶液を1回のみ混合して、全実験に用いた。用いない場合、製剤を室温で保存し、かつ光から保護した。
イヌ科動物の対象:
【0087】
3頭のイヌに、選択した製剤を投与した。以下の成犬品種を用いて、処置効果を評価する:イヌ1:雑種;イヌ2:ジャーマンシェパード;イヌ3:ペキニーズ。イヌを、実験期間中、屋内施設内で飼育し、かなり十分に給餌し、愛玩ペットとして十分人道的に扱う。これらの実験に使用した手順はいずれも、痛みを伴う、ストレスの多い、または有害な刺激またはプロセスに、イヌを曝すことはない。
イヌ1:
【0088】
左眼(LE)および右眼(RE)の処置眼を、以下の2つの異なる製剤で処置した:LE:製剤116.A;RE:製剤117.A.
イヌ2:
【0089】
左眼(LE)および右眼(RE)の処置眼を、以下の2つの異なる製剤で処置した:LE:製剤118.A;RE:製剤119.A.
イヌ3:
【0090】
左眼(LE)および右眼(RE)の処置眼を、以下の2つの異なる製剤で処置した:LE:製剤120.A;RE:製剤121.A.
【0091】
いずれの処置前にも、眼の拡大写真を撮影する。また、1週、2週、そして3週後に、毎日および/または毎週、示す時間間隔で写真を撮影する。特定のイヌ、眼(左眼(LE)または右眼(RE))、および用いた製剤を識別するために、全写真を記録する。製剤1滴(約50μl)を、3週間にわたって、示すように、毎日3回、AM7時頃、PM1時頃、そしてPM4時頃に、眼に投与する。
結果:
【表10】
【0092】
白内障の悪性度診断系:悪性度0:混濁化なし(グリッド線がはっきりと見える);悪性度1:軽度に混濁化(グリッド線は見えるが、グリッド線に最小限の曇り);悪性度2:ほぼ水晶体全体を含む散在した混濁化あり(主要なグリッド線は見えるが、グリッド線に中程度の曇り);悪性度3:水晶体全体を含む広範な、濃い混濁化あり(グリッド線が総じて曇り、グリッド線は全く見えない)。
【0093】
結果の表に記載した結果に基づいて、製剤の投与により、水晶体の透明度の少なくとも5%から20%の向上、タンパク質溶解性の回復、α−クリスタリンの溶解性の向上、透過性の向上、およびタンパク質の凝集の逆転が実現した。
イヌ1:
【0094】
7日目のLEの水晶体透明度は、1日目の未処置LEに対して、少なくとも20%の向上を示した。7日目のREの水晶体透明度は、1日目の未処置REに対して、少なくとも約15%の向上を示した。
【0095】
製剤116.Aおよび117.Aは、未処置水晶体に対して、水晶体透明度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、100%、110%、120%、130%、150%、170%、200%、220%、240%、260%、または300%の向上を実現し得る。例えば、白内障悪性度が2のイヌ水晶体は、製剤116.Aおよび117.Aによる処置で、1週、2週、3週、または4週後に、悪性度2から悪性度1、悪性度1未満、または悪性度0にまで改善し得る。
イヌ2:
【0096】
7日目のLEの水晶体透明度は、1日目の未処置LEに対して、少なくとも20%の向上を示した。7日目のREの水晶体透明度は、1日目の未処置REに対して、少なくとも約15%の向上を示した。
【0097】
製剤118.Aおよび119.Aは、未処置水晶体に対して、水晶体透明度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、100%、110%、120%、130%、150%、170%、200%、220%、240%、260%、または300%の向上を実現し得る。例えば、白内障悪性度が2のイヌ水晶体は、製剤118.Aおよび119.Aによる処置で、1週、2週、3週、または4週後に、悪性度2から悪性度1、悪性度1未満、または悪性度0にまで改善し得る。
イヌ3:
【0098】
7日目のLEの水晶体透明度は、1日目の未処置LEに対して、少なくとも5%から20%の向上を示した。7日目のREの水晶体透明度は、1日目の未処置REに対して、少なくとも5%から20%の向上を示した。
【0099】
製剤120.Aおよび121.Aは、未処置水晶体に対して、水晶体透明度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、100%、110%、120%、130%、150%、170%、200%、220%、240%、260%、または300%の向上を実現し得る。例えば、白内障悪性度が2のイヌ水晶体は、製剤120.Aおよび121.Aによる処置で、1週、2週、3週、または4週後に、悪性度2から悪性度1、悪性度1未満、または悪性度0にまで改善し得る。
【0100】
本明細書中で示されるように、本明細書中に開示される本出願の組成物の投与は、患者において白内障を回復に向かわせるのに有効であり、そして当該処置は、白内障の重症度を有意に低下させ、かつ水晶体透明度を増大させた。
【0101】
医薬製剤が、当該技術において知られている手順によって調製され得る。例えば、化合物は、一般的な賦形剤、希釈剤、またはキャリアと共に製剤化されて、錠剤、カプセル、懸濁液、粉末等が形成され得る。全身投与に適した希釈剤の例として、水、生理食塩水、および/または緩衝生理溶液が挙げられる。また、生理学的防腐剤(例えば塩化ベンザルコニウム)、抗生物質、および溶液の製剤のオスモル濃度を調整するための化合物が含まれてもよい。
【0102】
また、吸収方法に応じて使用され得る他の充填剤およびキャリアとして、以下のものが挙げられる:充填剤および増量剤、例えばデンプン、糖類、マンニトール、およびケイ酸誘導体;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、ならびにポリビニルピロリドン;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、および重炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;再吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;界面活性剤、例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアレート;吸着性キャリア、例えばカオリンおよびベントナイト;ならびに潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに固体のポリエチルグリコールが挙げられる。
【0103】
一実施形態において、治療用ステロイドの局所濃度のステロイド用量は、0.005μMから50μM、0.05nMから1μM、または1nMから100nMに及んでもよいし、本明細書中で開示する実施例において規定するものであってもよい。
【0104】
一実施形態において、組成物の、眼との接触の持続を、そしてステロイド製剤の、眼への送達の増大を達成するために、涙液中の、そして標的組織中の濃度は、ステロイドについて、MIC90を超えたままであってよい。本明細書中で用いる「有効な滞留時間」は、組成物を眼に施した後の期間であって、この間、涙液中および/または標的組織中のステロイドの濃度が、ステロイドについて、MIC90を超えたままである期間を意味する。一変形例において、3滴以下、2滴以下、または1滴以下(各滴は、約5μlから約50μl、約15μlから約30μl、例えば約25μlを有する)が、眼への投与に所望されるステロイド用量を含有してよい。より大用量を眼に投与することも可能であるが、涙液の排出によって、施した組成物のかなりの部分が失われるリスクがある。一変形例において、組成物は、インサイチュゲル化水性組成物またはインサイチュゲル化水性製剤、例えばインサイチュゲル化水性組成物である。そのような組成物は、眼と、または眼の外側にある涙液と接触して直ぐのゲル化を促進するのに有効な濃度でゲル化剤を含む。状況次第で、本出願の組成物をゲルとして製剤化して、例えば反射まばたきによって引き起こされる流涙の結果としての、投与直後の組成物のロスを最小にすることが有利となるであろう。
【0105】
一変形例において、製剤はさらに、眼の耐性を向上させる少なくとも1つの剤、例えばアロエベラゲル、緩衝剤、および張度調整剤を含んでよい。別の変形例において、製剤は、抗菌剤および/または防腐剤を含んでよい。
【0106】
特定の実施形態において、適切な量のカルシウム錯化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはその塩、例えば当該剤の二ナトリウム塩が、イオン、例えばカルシウムイオンをキレート化し、かつ貯蔵中のゲル形成を防止するために、組成物中に含まれてよい。EDTAまたはその塩は、約0.01%から約0.5%の量で含まれてよい。防腐剤が存在する場合、EDTAまたはその塩が含まれてよい。一態様において、約0.025重量%から約0.1重量%の量のEDTA二ナトリウムが、抗菌活性を高めるために用いられてよい。
【0107】
本出願の組成物は、抗菌的に有効量の防腐剤を含有してよいが、防腐剤が、ステロイドもしくは製剤の、または組成物中のあらゆる可溶化剤の有効性を実質的に阻害しないことを条件とする。一変形例において、製剤は、約0.03%から約0.5%の量のイミダゾリジニル尿素;約0.015%から約0.25%の量のメチルパラベン;約0.005%から約0.01%の量のプロピルパラベン;約0.25%から約1%の量のフェノキシエタノール;約0.05%から約0.2%の量のEDTA二ナトリウム;0.001%から約0.15%の量のチメロサール;約0.1%から約0.5%の量のクロロブタノール;約0.05%から約0.2%の量のソルビン酸;約0.001%から約0.02%の量の塩化ベンザルコニウム;先のいずれかのあらゆる適切な組合せからなる群から選択される防腐剤を含有してよい。先の全ての量の数値は、総組成物の重量パーセントとして示される。
【0108】
別の変形例において、本出願の組成物はさらに、眼科学的に適合可能な酸化防止剤を含んでよい。そのような酸化防止剤として、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、システイン、チオグリセロール、亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、ジチオエリスリトール、ジチオトレイトール、チオ尿素、没食子酸プロピル、メチオニン、およびエリソルビン酸が挙げられ得る。
【0109】
別の変形例において、組成物はさらに、約0.1重量%から約5重量%、より好ましくは約1重量%から約2.5重量%、例えば約1.5重量%から約2重量%の量のグリセリンを含んでよい。グリセリンはまた、組成物の粘度を増大させるのに、そしてオスモル濃度を調整するのに有用であり得る。
【0110】
別の変形例において、組成物または製剤は、眼に施すために製剤化された局所眼病用組成物であり、組成物は、本明細書中で開示した、治療的に有効な量のステロイド製剤、および流動性の架橋カルボキシ含有ポリカルボフィル粘膜付着性ポリマーを含み、組成物は、粘度が約1,000から約3,400cps、そしてpHが約7.4から約8.5の範囲内である。組成物の別の変形例において、流動性の粘膜付着性ポリマーは、組成物の約0.5重量%から約1.5重量%の量である。別の変形例において、ステロイド製剤は、組成物の約0.005重量%から約0.5重量%の量である。
【0111】
本出願に用いられるアクリル酸の架橋された、または軽度に架橋されたポリマーは、当該技術において知られている。一実施形態において、ポリマーは、存在するモノマーの総重量に基づいて、少なくとも約90重量%、または約95重量%から約99.9重量%の、1つまたは複数のカルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマーから調製される。アクリル酸は、カルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマーであるが、他の不飽和重合性カルボキシル含有モノマー、例えばメタクリル酸、エタクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、シス−α−メチルクロトン酸(アンゲリカ酸)、トランス−α−メチルクロトン酸(チグリン酸)、α−ブチルクロトン酸、α−フェニルアクリル酸、α−ベンジルアクリル酸、α−シクロヘキシルアクリル酸、β−フェニルアクリル酸(ケイ皮酸)、クマル酸(o−ヒドロキシケイ皮酸)、ウンベル酸(p−ヒドロキシクマリン酸)が、アクリル酸に加えて、またはアクリル酸の代わりに用いられてよい。そのようなポリマーは、存在するモノマーの総重量に基づいて、約5%未満、例えば約0.5%から、もしくは約0.1%から約5%、または約0.2%から約1%の多官能性架橋剤を用いて、架橋される。そのような架橋剤は、非ポリアルケニルポリエーテル二官能性架橋モノマー、例えばジビニルグリコール;2,3−ジヒドロキシヘキサ−1,5−ジエン;2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン;ジビニルベンゼン;N、N−ジアリルアクリルアミド;N、N−ジアリルメタクリルアミドである。また、挙げられるのは、1分子あたり2個以上のアルケニルエーテル基、または末端HC=C<基を含有するアルケニルエーテル基を含有するポリアルケニルポリエーテル架橋剤であり、少なくとも4個の炭素原子および少なくとも3個のヒドロキシル基を含有する多価アルコールの、アルケニルハライド、例えば臭化アリル、例えばポリアリルスクロース、ポリアリルペンタエリスリトールとのエーテル化によって調製される;例えば、米国特許第2798053号明細書参照。分子量が約400から約8,000であるジオレフィン系非親水性マクロマー架橋剤、例えば、ジオールおよびポリオールの不溶性ジアクリレートおよびポリアクリレートならびにメタクリレート、ジイソシアネート−ヒドロキシアルキシルアクリレートまたはメタクリレート反応生成物、ならびに、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、またはポリシロキサンジオールから誘導されたイソシアネート末端プレポリマーの、ヒドロキシアルキルメタクリレートとの反応生成物もまた、架橋剤として用いられてもよい;米国特許第4192827号明細書および米国特許第4136250号明細書参照。
【0112】
軽度に架橋されたポリマーは、存在する唯一のモノエチレン性不飽和モノマーとしてのカルボキシル含有モノマー(複数可)から、架橋剤(複数可)と共に製造されてよい。ポリマーはまた、最大約40重量%、または約0重量%から約20重量%のカルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマー(複数可)が、生理学的かつ眼科的に無害な置換基のみを含有する1つまたは複数の非カルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマー(アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル−メタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンが挙げられる;そのような更なるモノエチレン性不飽和モノマーのリストについては、米国特許第4548990号明細書参照)によって置換されているポリマーであってもよい。一実施形態において、ポリマーは、架橋モノマーが、2,3−ジヒドロキシヘキサ−1,5−ジエンまたは2,3−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンである、軽度に架橋されたアクリル酸ポリマーである。
【0113】
一実施形態において、本明細書中で用いられる軽度に架橋されたポリマーは、従来のフリーラジカル重合触媒を用いて、モノマーを、相当球径が約50μm以下の乾燥粒子サイズに懸濁重合または乳化重合することによって、調製されてよい;例えば、相当球径が約1から約30μm、または約3から約20μmのサイズの範囲の乾燥ポリマー粒子が提供される。当該ポリマーは、分子量が、約25,000から約4,000,000、または約500,000から約2,000,000に及んでよい。
【0114】
別の変形例において、製剤は、治療的に有効な量のステロイド製剤および流動性の粘膜付着性ポリマー(架橋されたカルボキシ含有ポリカルボフィルである)を含む眼病用組成物であり、当該組成物は、粘度が約1,000から約3,400cpsの範囲内であり、哺乳類の眼への投与用に、滴剤に製剤化され、当該組成物はさらに、少なくとも1つの更なる非ステロイド性抗炎症剤を含み、そして当該組成物は、pHが約7.4から約8.5である。
【0115】
別の変形例において、製剤は、流動性の粘膜付着性ポリマーおよび治療的に有効な量のステロイド製剤を含む眼病用組成物であり、当該組成物は、哺乳類の眼への投与用に滴剤に製剤化される粘度を有する。別の変形例において、ステロイド製剤は、流動性の粘膜付着性ポリマー中に保持され、または流動性の粘膜付着性ポリマーが担持されている。別の変形例において、流動性の粘膜付着性ポリマーは、持続放出送達系である。別の変形例において、流動性の粘膜付着性ポリマーは、カルボキシ含有ポリマー、例えばポリカルボフィルまたはDuraSite(商標)である。別の変形例において、粘膜付着性ポリマーは、組成物の約0.5重量%から約1.5重量%の量である。別の変形例において、ポリマーは、組成物の約0.8重量%から約1.0重量%の量である。別の変形例において、ステロイド製剤は、組成物の約0.005重量%から約0.5重量%の量である。別の変形例において、ステロイド製剤は、組成物の約0.01重量%から約0.2重量%の量である。別の変形例において、ステロイド製剤は、組成物の約0.045重量%から約0.09重量%の量である。別の変形例において、組成物は、pHが約7.4から約8.5、またはpHが約8.3である。別の変形例において、組成物の粘度は、約1,000から約2,000センチポアズ(cps)の範囲内であり、または約1,500cpsである。
【0116】
別の実施形態において、流動性の粘膜付着性ポリマーおよび治療的に有効な量のステロイド製剤を眼病用組成物中に含む持続放出ステロイド送達系が提供され;流動性の粘膜付着性ポリマーは、組成物の約0.5重量%から約1.5重量%の量であり、ステロイド製剤は、組成物の約0.005重量%から約0.5重量%;または組成物の約0.045重量%から約0.09重量%の量である。別の変形例において、ステロイド製剤は、組成物の約0.01重量%から約0.2重量%の量である。別の変形例において、ステロイド製剤は、流動性の粘膜付着性ポリマー中に保持され、または流動性の粘膜付着性ポリマーが担持されている。別の変形例において、流動性の粘膜付着性ポリマーは、カルボキシ含有ポリマー、例えばポリカルボフィルまたはDuraSite(商標)である。別の変形例において、ステロイド製剤は、組成物の約0.01重量%から約0.09重量%、または組成物の約0.8重量%から約1.0重量%の量である。別の変形例において、組成物は、pHが約7.4から約8.5、または約8.3である。別の変形例において、組成物の粘度は、約1,000から約2,000cpsの範囲内であり、または約1,500cpsである。
【0117】
別の実施形態において、開示される製剤または組成物は、1つまたは複数の界面活性剤、および所望される場合、1つまたは複数のアジュバント(更なる薬剤、バッファ、酸化防止剤、張度調整剤、防腐剤、増粘剤、または粘度調整剤が挙げられる)を含有してよい。組成物中に使用される界面活性剤は、POEソルビタン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、Polysorbate 60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、Polysorbate 80、Polyoxyethylene Hydrogenated Castor Oil 60、およびPoloxamer 407、ならびにそれらの混合物が挙げられ得る。
【0118】
製剤中の添加剤として、塩化ナトリウム、EDTA(エデト酸二ナトリウム)、およびBAC(塩化ベンザルコニウム)もしくはソルビン酸、またはそれらの双方が挙げられ得る。
【0119】
本明細書に開示される持続放出薬剤送達系によって送達される組成物は、眼内滞留時間が約8時間から約24時間に及んでよい。一態様において、当該組成物中に含有されるステロイド製剤は、ステロイド製剤の充填の程度および系のpH等の要因によって、そして、存在する場合、あらゆる薬物送達アジュバント、例えば、眼の表面と適合可能なイオン交換樹脂によって決まる速度にて、組成物から放出される。別の実施形態において、組成物は、眼の水性組織または処置される組織中で、10−8から10−4Mの、別の実施形態において10−7から10−5Mのステロイド製剤の持続濃度を、少なくとも1時間、少なくとも2時間、そして特定の実施形態において、少なくとも3時間、またはそれ以上、実現する。別の実施形態において、組成物は、眼の水性組織または処置される組織中で、10−8から10−4Mの、または10−7から10−5Mのステロイド製剤の持続濃度を、少なくとも2時間、少なくとも3時間、または少なくとも4時間もしくはそれ以上、実現する。
【0120】
別の実施形態において、哺乳類の眼の治療的処置プロセスであって:(a)眼病用組成物であって、当該組成物の約0.005重量%から約0.5重量%の治療的に有効な量のステロイド製剤、および当該組成物の約0.5重量%から約1.5重量%の量の流動性の粘膜付着性ポリマーを含む眼病用組成物を提供することと;(b)白内障、眼の炎症、または眼の炎症状態から選択される症状を処置するために、当該組成物を、これを必要とする哺乳類の眼に投与することとを含むプロセスが提供される。
【0121】
別の実施形態において、治療的に有効な量のステロイド製剤、流動性の粘膜付着性ポリマー、例えばDuraSite(商標)、および1つまたは複数の更なる非ステロイド性抗炎症剤、例えば治療的に有効な量のケトロラクを有する眼病用組成物を含む、哺乳類の眼の併用療法のための組成物または方法が提供される。先の一変形例において、ケトロラクは、本発明の組成物中に、組成物の約0.01重量%から約1重量%、約0.4重量%から約0.5重量%の量で含まれる。先の一変形例において、製剤はさらに、抗菌剤、抗菌性抗生剤、合成抗菌剤、抗真菌性抗生剤、合成抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗アレルギー剤、緑内障処置剤、抗ウイルス剤、および抗真菌剤から選択される1つまたは複数の剤を含む。
【0122】
本出願の別の実施形態、態様、および変形例に従えば、製剤または組成物はまた、活性剤としてのステロイドに加えて、1つまたは複数の他の活性剤、例えば他のNSAIDを含んでもよい。併用療法に適したNSAIDとして、アスピリン、ベノキサプロフェン、ベンゾフェナク、ブクロキシ酸、ブチブフェン、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンメタシン、クリダナク、クロピラク、ジクロフェナク、ジフルプレドネート、エトドラク、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラク、フェノプロフェン、フェンチアザック、フルノキサプロフェン、フラプロフェン、フルルビプロフェン、フロブフェン、フロフェナク、イブプロフェン、イブフェナック、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、ケトロラク、ケトプロフェン、ラクトロラク、ロナゾラク、メチアジン酸、ミロプロフェン、ネパフェナク、ナプロキセン、ノルケトチフェン、オキサプロジン、オキセピナク、フェナセチン、ピルプロフェン、ピラゾラック、プロチジン酸、スリンダク、スプロフェン、チアプロフェン酸、トルメチン、およびゾメピラックが挙げられる。
【0123】
別の実施形態において、眼病用製剤はさらに、1つまたは複数の更なる、治療的に活性がある剤を含んでよく、これとして、抗菌性抗生物質、合成抗菌剤、抗真菌性抗生物質、合成抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗アレルギー剤、緑内障処置剤、抗ウイルス剤、および抗真菌剤が挙げられ、これらは、活性剤から誘導された、それらのエステル、アルコール、および酸を含んでよい。
【0124】
抗菌性抗生物質の例として、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、ホルチマイシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、およびトロスペクトマイシン)、アンフェニコイス(例えば、アジダンフェニコール、クロランフェニコール、フロルフェニコール、チアンフェニコール)、アンサマイシン(例えば、リファミド、リファンピン、リファマイシンsv、リファペンチン、およびリファキシミン)、β−ラクタム(例えば、カルバセフェム(例えばロラカルベフ)、カルバペネム(例えば、ビアペネム、イミペネム、メロペネム、およびパニペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフカペンピボキシル、セフクリジン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セイフゾナム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロスポリン、セファロチン、セファピリンナトリウム、セフラジン、およびピブセファレキシン)、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフィニノックス、セフォテタン、セフォキシチン)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム)、オキサセフェム、フロモキセフ、およびモキサラクタム)、ペニシリン(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、アンピシリン、アパルシリン、アスポキシリン、アジドシリン、アズロシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタンピシリン、メチシリンナトリウム、メズロシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ペネタメートヨウ化水素酸塩、ペニシリンgベネタミン、ペニシリンgベンザチン、ペニシリンgベンズヒドリルアミン、ペニシリンgカルシウム、ペニシリンgヒドラバミン、ペニシリンgカリウム、ペニシリンgプロカイン、ペニシリンn、ペニシリンo、ペニシリンv、ペニシリンvベンザチン、ペニシリンvヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム、ピペラシリン、ピバンピシリン、プロピシリン、キナシリン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テモシリン、およびチカルシリン)、その他(例えば、リチペネム)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシングルコヘプトネート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンプロピオネート、エリスロマイシンステアレート、ジョサマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ミオカマイシン、オレアンドマイシン、プリマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、およびトロレアンドマイシン)、ポリペプチド(例えば、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン、エンビオマイシン、フサファンギン、グラミシジンs、グラミシジン(s)、ミカマイシン、ポリミキシン、プリスチナマイシン、リストセチン、テイコプラニン、チオストレプトン、ツベラクチノマイシン、チロシジン、チロトリシン、バンコマイシン、バイオマイシン、バージニアマイシン、および亜鉛バシトラシン)、テトラサイクリン(例えば、アピクロシン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメサイクリン、リメサイクリン、メクロシクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、およびテトラサイクリン)、およびその他(例えば、サイクロセリン、ムピロシン、およびツベリン)が挙げられる。
【0125】
合成抗菌剤の例として、2,4−ジアミノピリミジン(例えば、ブロジモプリム、テトロキソプリム、トリメトプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、塩化フラゾリウム、ニフラデン、ニフラテル、ニフルホリン、ニフルピリノール、ニフルプラジン、ニフルトイノール、およびニトロフラントイン)、キノロンおよび類似体(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、ミロキサシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキソリン酸、パズフロキサシン、ペフロキサシン、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、およびトロバフロキサシン)、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、クロラミン−b、クロラミン−t、ジクロラミン−t、2−ホルミルスルフィソミジン、4−β−d−グルコシルスルファニルアミド、マフェニド、4’−(メチルスルファモイル)スルファニルアニリド、ノプリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、フタリルスルファチアゾール、サラゾスルファジミジン、スクシニルスルファチアゾール、スルファベンズアミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン、スルファクリソイジン、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファエチドール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファレン、スルファロクス酸、スルファルネラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトミジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリダジン、スルファメトロール、スルファミドクリソイジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、4−スルファニルアミドサリチル酸、4−スルファニリルスルファニルアミド、スルファニリルウレア、n−スルファニル−3,4−キシラミド、スルファニトラン、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファプロキシリン、スルファピラジン、スルファピリジン、スルファソミゾール、スルファシマジン、スルファチアゾール、スルファチオウレア、スルファトラミド、スルフイソミジン、およびスルフイソキサゾール)、スルホン(例えば、アセダプソン、アセジアスルホン、アセトスルホンナトリウム、ダプソン、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン、スクシスルホン、スルファニル酸、p−スルファニリルベンジルアミン、スルホキソンナトリウム、およびチアゾールスルホン)、およびその他(例えば、クロホクトール、ヘキセジン、メテナミン、メテナミンアンヒドロメチレン−シトレート、ヒプル酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、スルホサリチル酸メテナミン、ニトロキソリン、タウロリジン、およびキシボルノール)が挙げられる。
【0126】
ステロイド性抗炎症剤の例として、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ハイドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサセトニドが挙げられる。
【0127】
抗真菌性抗生物質の例として、ポリエン(例えば、アンホテリシンb、カンジシジン、デノスタチン、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペシロシン、およびペリマイシン)、その他(例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ピロールニトリン、シカニン、ツベルシジン、およびビリジン)が挙げられる。合成抗真菌剤の例として、以下に限定されないが:アリルアミン(例えば、ブテナフィン、ナフチフィン、およびテルビナフィン)、イミダゾール(例えば、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、およびセルタコナゾール、スルコナゾール、ならびにチオコナゾール)、チオカルバメート(例えば、トルシクラート、トリンダート、トルナフテート)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール、およびテルコナゾール)、その他(例えば、アクリソルシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリチルクロラリニド、ブクロサミド、カルシウムプロピオネート、クロルフェネシン、シクロピロックス、クロキシキン、コパラフィネート、ジアムタゾールジヒドロクロリド、エキサラミド、フルシトシン、ハレタゾール、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウジョチオン、ウンデシレン酸、およびプロピオン酸亜鉛)が挙げられる。
【0128】
別の変形例において、組成物はさらに、組成物のオスモル濃度を眼科学的に許容可能な範囲にするのに必要な量の、少なくとも1つの眼科的に許容可能な塩を含んでよい。一部の態様において、塩はまた、酸化防止剤であってもよい。オスモル濃度を調整する際に使用するのに適した塩として、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、および塩素、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、重炭酸、硫酸、チオ硫酸、または重亜硫酸のアニオンを有するものが挙げられ;好ましい塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および硫酸アンモニウムが挙げられる。オスモル濃度の調整に適した他の溶質として、糖、例えばデキストロース、マンニトール、キシリトール、およびスクロースが挙げられる。
【0129】
本出願の組成物はさらに、少なくとも1つの眼科学的に許容可能なpH調整剤および/またはバッファを含んでよく、酸、例えば、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、および塩酸;塩基、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタン;ならびにバッファ、例えば、クエン酸/デキストロース、重炭酸ナトリウム、および塩化アンモニウムが挙げられる。そのような酸、塩基、および/またはバッファは、組成物のpHを眼科学的に許容可能な範囲内に維持するのに必要な量が含まれてよい。
【0130】
組成物はさらに、溶液が実質的に等張性となり、かつpHが生理学的に許容可能となる量の、緩衝剤および/またはオスモル濃度調整剤を含んでよい。別の変形例において、組成物はさらに、物理的安定性を高めるために、または他の目的のために、少なくとも1つの眼科学的に許容可能な界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を含んでよい。適切な非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えばポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。別の変形例において、組成物はさらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、ポリエチレンオキシド、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウム、およびデキストランからなる群から選択される眼科学的に許容可能な粘膜付着性ポリマーを含んでよい。組成物の別の態様において、1つまたは複数の酸化防止剤が、必要に応じて、化学安定性を高めるために含められてよい。適切な酸化防止剤として、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、およびチオグリセロールが挙げられる。
【0131】
別の実施形態において、開示される組成物は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアゾール、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルジョン、または懸濁液として投与されてよい。別の実施形態において、組成物は、コンタクトレンズまたは薬物送達デバイス中に組み込まれてもよいし、これらの上にコーティングされてもよく、そこから、組成物由来の1つもしくは複数の化合物が、拡散によって、レンズもしくはデバイスから離れて送達され;または1つもしくは複数の化合物が、時間的に制御されて放出される。コンタクトレンズが用いられている場合に、レンズに視力矯正が必要とされる場合には、組成物を含むコンタクトレンズは、眼表面または眼の上にあり続けてよい。本出願の組成物を用いる薬物送達デバイスを使用する別の実施形態において、薬物送達デバイスは、生分解性材料から形成されてもよいし、当該技術において知られている永久レンズとして形成されてもよい。
【0132】
いくつかの例示的な実施形態、態様、および変形例が、本明細書に記載されてきたが、当業者であれば、当該実施形態、態様、および変形例の特定の改変、入替え、追加、ならびに組合せおよび特定の部分的組合せを認識するであろう。本明細書中に引用される全ての参考文献は、それらの全体が参照によって組み込まれる。以下の特許請求の範囲は、そのような改変、入替え、追加、および組合せの全てを含むと解釈されること、そして当該実施形態、態様、および変形例の特定の部分的組合せが、その範囲内にあることが意図される。
【国際調査報告】