(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
非ウイルスベクターおよびT細胞など、がんを処置するための遺伝子改変組成物が開示される。また、遺伝子改変組成物を作製し、がんの処置において使用する方法も開示される。本明細書で開示される組成物および方法は、患者のがんにおける固有の免疫原性突然変異を認識する、がん特異的T細胞受容体(TCR)を同定し、患者における任意の種類のがんを処置するために使用することができる。がん特異的TCRをコードするこれらのトランス遺伝子のT細胞への挿入であって、非ウイルス(例えば、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、またはMega−TAL)法を使用する挿入は、免疫療法を、多くのがん型へと拡張するための新たな機会を開く、新規の手法である。
内因性CISH(サイトカイン誘導性SH2含有)遺伝子の配列内の破壊と、内因性遺伝子内の、少なくとも1つのさらなる破壊とを伴い、前記内因性遺伝子が、アデノシンA2a受容体(ADORA)、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1(VTCN1)、Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、KIR3DL1(キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長細胞質テール、1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD−1)、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、アデノ随伴ウイルス組込み部位(AAVS1)、およびケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(遺伝子/偽遺伝子)(CCR5)からなる群から選択される操作初代細胞。
少なくとも1つの遺伝子の破壊と、少なくとも1つの、非ウイルスにより組み込まれたT細胞受容体(TCR)配列とを含み、前記遺伝子が、前記非ウイルスにより組み込まれたTCR配列により破壊されている操作細胞。
外因性受容体が、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはB細胞受容体(BCR)を含む群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の操作細胞。
外因性受容体が、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはB細胞受容体(BCR)を含む群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の操作細胞。
内因性CISH(サイトカイン誘導性SH2含有)遺伝子に結合する、少なくとも1つのガイドRNAと、アデノシンA2a受容体(ADORA)、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1(VTCN1)、Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、KIR3DL1(キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長細胞質テール、1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD−1)、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、アデノ随伴ウイルス組込み部位(AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など))、またはケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(遺伝子/偽遺伝子)(CCR5)から選択される内因性遺伝子に結合する、副次的ガイドRNAとを含む組成物。
外因性受容体が、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはB細胞受容体(BCR)を含む群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の操作細胞。
前記遺伝子が、アデノシンA2a受容体(ADORA)、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1(VTCN1)、Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、KIR3DL1(キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長細胞質テール、1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD−1)、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、CISH(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、アデノ随伴ウイルス組込み部位(AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など))、またはケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(遺伝子/偽遺伝子)(CCR5)である、請求項24に記載の方法。
前記ヌクレアーゼが、Cas9、Argonaute、Cpf1、CRISPR、TALEN、トランスポザーゼ、ZEN、メガヌクレアーゼ、またはMega−TALからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
1または複数の外因性操作ポリ核酸に対する細胞の細胞毒性を低減するための方法であって、前記細胞を、前記1または複数の外因性操作ポリ核酸と接触させることにより、前記ポリ核酸に対する1または複数の細胞応答を変更するステップを含み、前記1または複数の細胞応答が、細胞質DNAセンシング経路を含む方法。
前記1または複数の細胞応答を変更するステップが、DAI(IFN調節因子のDNA依存性アクチベーター)、IFN誘導性タンパク質16(IFI16)、DEADボックスポリペプチド41(DDX41)、AIM2(absent in melanoma 2)、DNA依存性タンパク質キナーゼ、環状グアノシン一リン酸−アデノシン一リン酸シンターゼ(cGAS)、STING(IFN遺伝子の刺激因子)、TANK結合性キナーゼ(TBK1)、インターロイキン1β(IL−1β)、MRE11(減数分裂組み換え11)、Trex1、カスパーゼ1(アスパルテート特異性を有するシステインプロテアーゼ)、3’修復エキソヌクレアーゼ、DAI(DNA−dependent activator of IRF)、IFI16、DDX41、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA−PK)、MRE11(減数分裂組み換え11)相同体A、および/またはIFN調節因子(IRF)3もしくは7を修飾することを含む、請求項39に記載の方法。
前記1または複数のシグナル伝達修飾化合物が、DAI(IFN調節因子のDNA依存性アクチベーター)、IFN誘導性タンパク質16(IFI16)、DEADボックスポリペプチド41(DDX41)、AIM2(absent in melanoma 2)、DNA依存性タンパク質キナーゼ、環状グアノシン一リン酸−アデノシン一リン酸シンターゼ(cGAS)、STING(IFN遺伝子の刺激因子)、TANK結合性キナーゼ(TBK1)、インターロイキン1β(IL−1β)、MRE11(減数分裂組み換え11)、Trex1、カスパーゼ1(アスパルテート特異性を有するシステインプロテアーゼ)、3’修復エキソヌクレアーゼ、DAI(DNA−dependent activator of IRF)、IFI16、DDX41、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA−PK)、MRE11(減数分裂組み換え11)相同体A、および/またはIFN調節因子(IRF)3もしくは7を変更する、請求項39に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0157】
開示の詳細な説明
以下の記載および実施例は、本発明の実施形態を詳細に例示する。本発明は、本明細書で記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって変化し得ることを理解されたい。当業者は、その範囲内に包含される本発明の多数の変形および改変が存在することを認識するであろう。
【0158】
定義
本明細書で使用される基準数値およびその文法的同等物に関する、「約」という用語およびその文法的同等物は、その値からプラスまたはマイナス10%の範囲の値を含み得る。例えば、「約10」という量は、9〜11の量を含む。基準数値に関する「約」という用語はまた、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%の範囲の値も含み得る。
【0159】
本明細書で使用される「活性化」という用語およびその文法的同等物は、細胞が、休眠状態から、活性状態へと移行する過程を指す場合がある。この過程は、抗原への応答、遊走、および/または機能的活性状態への、表現型もしくは遺伝子的変化を含み得る。例えば、「活性化」という用語は、T細胞活性化の段階的過程を指す場合がある。例えば、T細胞は、完全に活性化するのに、少なくとも2つのシグナルを要求し得る。第1のシグナルは、抗原−MHC複合体の、TCRへの係合の後で生じることが可能であり、第2のシグナルは、共刺激性分子の係合により生じ得る。in vitroにおいて、抗CD3は、第1のシグナルを模倣することが可能であり、抗CD28は、第2のシグナルを模倣し得る。
【0160】
本明細書で使用される「隣接する」という用語およびその文法的同等物は、基準の対象物のすぐ隣を指す場合がある。例えば、ヌクレオチド配列の文脈における隣接するという用語は、間にヌクレオチドを伴わないことを意味する。例えば、ポリヌクレオチドBと隣接するポリヌクレオチドAとは、AとBとの間にヌクレオチドを伴わないABを意味し得る。
【0161】
本明細書で使用される「抗原」という用語およびその文法的同等物は、1または複数の受容体が結合することが可能な、1または複数のエピトープを含有する分子を指す場合がある。例えば、抗原は、宿主の免疫系を刺激して、抗原が提示されている場合の、細胞性の抗原特異的免疫応答をもたらす場合もあり、体液性抗体応答をもたらす場合もある。抗原はまた、それ自体により、または別の分子と組み合わせて存在する場合に、細胞性応答および/または体液性応答を誘発する能力も有し得る。例えば、腫瘍細胞抗原は、TCRにより認識され得る。
【0162】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語およびその文法的同等物は、抗体、B細胞、T細胞、または操作細胞により認識され得る、抗原の一部を指す場合がある。例えば、エピトープは、TCRにより認識されるがんエピトープであり得る。また、抗原内の複数のエピトープも認識することができる。エピトープはまた、突然変異している場合もある。
【0163】
本明細書で使用される「自家」という用語およびその文法的同等物は、同じ存在に由来することを指す場合がある。例えば、試料(例えば、細胞)を採取し、加工し、後に同じ対象(例えば、患者)へと戻すことができる。自家工程は、ドナーとレシピエントとが異なる対象である、同種工程と区別される。
【0164】
「〜へとバーコードづけされた」という用語は、第1の分子が、第2の分子を同定するのに使用し得るバーコードを含有する場合における、分子間の関係を指す。
【0165】
本明細書で使用される「がん」という用語およびその文法的同等物は、細胞の過剰増殖であって、その固有の形質(正常な制御の喪失)が、調節されていない増殖、分化の欠如、限局的な組織浸潤、および転移を結果としてもたらす過剰増殖を指す場合がある。本発明の方法との関連で、がんは、急性リンパ球がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、肛門がん、肛門管がん、直腸がん、眼がん、肝臓内胆管がん、関節がん、頸部がん、胆嚢がん、または胸膜がん、鼻がん、鼻腔がん、または中耳がん、口腔がん、外陰がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、白血病、液性腫瘍、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、悪性中皮腫、マスト細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜がん、網がん、および腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟組織がん、固体腫瘍、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん、および/または膀胱がんのうちのいずれかを含む、任意のがんであり得る。本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、細胞または組織の異常な増殖であって、例えば、悪性型または良性型の増殖を指す。
【0166】
本明細書で使用される「がんネオ抗原」または「ネオ抗原」または「ネオエピトープ」という用語およびその文法的同等物は、正常な、突然変異していない宿主のゲノム内ではコードされない抗原を指す場合がある。「ネオ抗原」は、場合によって、腫瘍形成性のウイルスタンパク質、または体細胞突然変異の帰結として発生する異常なタンパク質を表し得る。例えば、ネオ抗原は、ウイルスタンパク質の活性を介する、細胞機構の破壊により発生し得る。別の例は、場合によって、体細胞突然変異をもたらし得る、発がん性化合物への曝露であり得る。この体細胞突然変異は最終的に、腫瘍/がんの形成をもたらし得る。
【0167】
本明細書で使用される「細胞傷害作用」という用語は、細胞の正常状態の、意図されないかまたは所望されない変更を指す。細胞の正常状態とは、細胞傷害性組成物、細胞傷害剤、および/または細胞傷害性状態への細胞の曝露の前に顕在化されるかまたは存在する状態を指す場合がある。一般に、正常状態にある細胞とは、ホメオスタシスにある細胞である。細胞の正常状態の、意図されないかまたは所望されない変更は、例えば、細胞死(例えば、プログラム細胞死)、複製の潜在能の減殺、膜の完全性などの細胞の完全性の減殺、代謝活性の減殺、発生能の減殺、または本出願で開示される細胞傷害作用のうちのいずれかの形態で顕在化され得る。
【0168】
「細胞傷害作用を低減すること」または「細胞傷害作用を低減する」という語句は、細胞傷害性組成物、細胞傷害剤、および/または細胞傷害性状態への曝露時における、細胞の正常状態の、意図されないかまたは所望されない変更の程度または頻度の低減を指す。語句は、細胞傷害性組成物、細胞傷害剤、および/または細胞傷害性状態へと曝露された個々の細胞内の細胞傷害作用の程度を低減することを指す場合もあり、細胞集団を、細胞傷害性組成物、細胞傷害剤、および/または細胞傷害性状態へと曝露した場合に、細胞傷害作用を呈する集団の細胞数を低減することを指す場合もある。
【0169】
本明細書で使用される「操作された」という用語およびその文法的同等物は、核酸、例えば、生物のゲノム内の核酸の、1または複数の変更を指す場合がある。「操作された」という用語は、遺伝子の変更、付加、および/または欠失を指す場合がある。操作細胞とはまた、遺伝子を付加し、欠失させ、かつ/または変更した細胞も指す場合がある。
【0170】
本明細書で使用される「細胞」または「操作細胞」という用語およびこれらの文法的同等物は、ヒト由来の細胞を指す場合もあり、非ヒト動物由来の細胞を指す場合もある。
【0171】
本明細書で使用される「チェックポイント遺伝子」という用語およびその文法的同等物は、免疫応答の振幅を調節するように作用する阻害性過程(例えば、フィードバックループ)、例えば、有害な応答の、制御されない伝播を緩和させる、免疫阻害性フィードバックループに関与する、任意の遺伝子を指す場合がある。これらの応答は、感染症に対する免疫応答時に生じ得る付帯的な組織損傷に対して防御する分子シールド、および/または末梢における自己寛容の維持への寄与を含み得る。チェックポイント遺伝子の非限定的な例は、拡張CD28ファミリーの受容体のメンバーおよびそれらのリガンド、ならびに共阻害性経路(例えば、CTLA−4およびPD−1)に関与する遺伝子を含み得る。「チェックポイント遺伝子」という用語はまた、免疫チェックポイント遺伝子も指す場合がある。
【0172】
「CRISPR」、「CRISPR系」、または「CRISPRヌクレアーゼ系」、およびこれらの文法的同等物は、DNAに結合する非コードRNA分子(例えば、ガイドRNA)と、ヌクレアーゼの機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を伴うCasタンパク質(例えば、Cas9)とを含み得る。例えば、Sander, J. D.ら、「CRISPR−Cas systems for editing, regulating and targeting genomes」、Nature Biotechnology、32巻:347〜355頁(2014年)を参照されたい。また、例えば、Hsu, P. D.ら、「Development and applications of CRISPR−Cas9 for genome engineering」、Cell、157巻(6号):1262〜1278頁(2014年)も参照されたい。
【0173】
本明細書で使用される「〜を破壊すること」という用語およびその文法的同等物は、例えば、欠失、挿入、突然変異、再配列、またはこれらの任意の組合せにより遺伝子を変更する工程を指す場合がある。例えば、遺伝子は、ノックアウトにより破壊することができる。遺伝子の破壊は、遺伝子の発現を部分的に低減することの場合もあり、これを完全に抑制することの場合もある。遺伝子の破壊はまた、異なる遺伝子、例えば、下流における遺伝子の活性化も引き起こし得る。
【0174】
本明細書で使用される「機能」という用語およびその文法的同等物は、意図される目的を果たすか、有するか、またはこれに適う能力を指す場合がある。「機能的」とは、正常機能の、ベースラインから100%までの任意のパーセントを含み得る。例えば、機能的とは、正常機能の5、10、15、20、25、30、35、40、45、50,55、60、65、70、75、80、85、90、95、および/もしくは100%を含み得るか、またはほぼこれらの比率を含み得る。場合によって、機能的という用語は、正常機能の100%またはほぼ100%を超える、例えば、正常機能の125、150、175、200、250、300%、および/もしくはこれを上回ることを意味し得る。
【0175】
本明細書で使用される「遺伝子編集」という用語およびその文法的同等物は、ゲノムにおいて、1または複数のヌクレオチドを挿入するか、置き換えるか、または除去する遺伝子操作を指す場合がある。遺伝子編集は、ヌクレアーゼ(例えば、天然で存在するヌクレアーゼまたは人工的に操作されたヌクレアーゼ)を使用して実施することができる。
【0176】
本明細書で使用される「突然変異」という用語およびその文法的同等物は、ポリヌクレオチド内の、1または複数のヌクレオチドの置換、欠失、および挿入を含み得る。例えば、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)配列内またはポリペプチド配列内で、最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、50、またはそれよりも多い、ヌクレオチド/アミノ酸を、置換し、欠失させ、かつ/または挿入することができる。突然変異は、遺伝子のコード配列またはその調節配列に影響を及ぼし得る。突然変異はまた、ゲノム配列構造、またはコードされるmRNAの構造/安定性にも影響を及ぼし得る。
【0177】
本明細書で使用される「非ヒト動物」という用語およびその文法的同等物は、ヒト以外の全ての動物種であって、天然動物の場合もあり、遺伝子改変された非ヒト動物の場合もある、非ヒト哺乳動物を含む動物種を含み得る。「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「ポリ核酸」、および「オリゴヌクレオチド」という用語、ならびにこれらの文法的同等物は、互換的に使用することができ、直鎖状コンフォメーションまたは環状コンフォメーションにあり、一本鎖形態または二本鎖形態にある、デオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを指し得る。本開示の目的では、これらの用語は、長さに関して限定的とはみなされるべきではない。用語は、天然ヌクレオチドの類似体のほか、塩基部分、糖部分、および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において修飾されたヌクレオチドも包含し得る。用語の変化形はまた、脱メチル化、CpGメチル化の付加、細菌性メチル化の除去、および/または哺乳動物性メチル化の付加も包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有し得る、すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対であり得る。
【0178】
本明細書で使用される「末梢血リンパ球」(PBL)という用語およびその文法的同等物は、血液(例えば、末梢血)中を循環するリンパ球を指す場合がある。末梢血リンパ球とは、臓器へと局在化しないリンパ球を指す場合がある。末梢血リンパ球は、T細胞、NK細胞、B細胞、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0179】
本明細書で使用される「表現型」という用語およびその文法的同等物は、生物の観察可能な特徴または形質の複合物であって、その形状、発生、生化学的特性または生理学的特性、生物季節学、挙動、および挙動の結果などの複合物を指す場合がある。文脈に応じて、「表現型」という用語は、ある場合には、集団の観察可能な特徴または形質の複合物を指す。
【0180】
本明細書で使用される「プロトスペーサー」という用語およびその文法的同等物は、PAMに隣接する核酸配列であって、ガイドRNAのスペーサー配列または操作されたターゲティング部分など、ガイドRNAの部分にハイブリダイズすることが可能な核酸配列を指す場合がある。プロトスペーサーは、遺伝子内、ゲノム内、または染色体内のヌクレオチド配列であって、ガイドRNAにターゲティングされるヌクレオチド配列であり得る。天然状態では、プロトスペーサーは、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)と隣接する。RNAにガイドされるヌクレアーゼの切断部位は、プロトスペーサー配列内にある。例えば、ガイドRNAが、特異的プロトスペーサーをターゲティングする場合、Casタンパク質は、プロトスペーサー配列内で二本鎖切断を生じ、これにより、プロトスペーサーを切断するであろう。切断後、プロトスペーサーの破壊は、非相同末端結合(NHEJ)または相同性により導かれる修復(HDR)を結果としてもたらし得る。プロトスペーサーの破壊は、プロトスペーサーの欠失を結果としてもたらし得る。加えて、または代替的に、プロトスペーサーの破壊は、プロトスペーサーへと挿入されるか、またはこれを置き換える外因性核酸配列を結果としてもたらし得る。
【0181】
本明細書で使用される「レシピエント」という用語およびその文法的同等物は、ヒトまたは非ヒト動物を指す場合がある。レシピエントはまた、それを必要とするレシピエントでもあり得る。
【0182】
本明細書で使用される「組換え」という用語およびその文法的同等物は、2つのポリ核酸の間の遺伝情報の交換過程を指す場合がある。本開示の目的では、「相同組換え」または「HR」とは、例えば、二本鎖切断の修復時において生じ得る、このような遺伝子交換の特化形態を指す場合がある。この過程は、例えば、標的分子(例えば、二本鎖切断を経た分子)を修復するための鋳型として、ドナー分子を使用して、ヌクレオチド配列相同性を要求する場合があり、ある場合には、非交叉型遺伝子変換またはショートトラクト型遺伝子変換として公知である。このような移入はまた、破壊される標的とドナーとの間で形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチの是正、および/または標的の一部となりうる遺伝情報を再合成するのにドナーを使用し得る合成依存性鎖アニーリング、および/または関連する過程も伴いうる。このような特化したHRは、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部を、標的ポリヌクレオチドへと組み込みうるように、標的分子の配列の変更を結果としてもたらし得ることが多い。場合によって、「組換えアーム」という用語と、「相同性アーム」という用語は、本明細書で互換的に使用することができる。
【0183】
本明細書では、「標的ベクター」という用語と、「ターゲティングベクター」という用語とを、互換的に使用する。
【0184】
本明細書で使用される「トランス遺伝子」という用語およびその文法的同等物は、生物へと移入される遺伝子または遺伝子素材を指す場合がある。例えば、トランス遺伝子は、生物へと導入される遺伝子を含有する、DNAの連なりまたはセグメントであり得る。トランス遺伝子を生物へと移入する場合、生物を、トランスジェニック生物と称する。トランス遺伝子は、トランスジェニック生物において、RNAまたはポリペプチド(例えば、タンパク質)を産生するその能力を保持し得る。トランス遺伝子は、異なる核酸、例えば、RNAまたはDNAから構成され得る。トランス遺伝子は、操作T細胞受容体、例えば、TCRトランス遺伝子をコードし得る。トランス遺伝子は、TCR配列を含み得る。トランス遺伝子は、組換えアームを含み得る。トランス遺伝子は、操作部位を含み得る。
【0185】
本明細書で使用される「T細胞」という用語およびその文法的同等物は、任意の由来のT細胞を指す場合がある。例えば、T細胞は、初代T細胞、例えば、自家T細胞、細胞株などであり得る。T細胞はまた、ヒトT細胞の場合もあり、非ヒトT細胞の場合もある。
【0186】
本明細書で使用される「TIL」または腫瘍浸潤リンパ球という用語およびこれらの文法的同等物は、腫瘍から単離された細胞を指す場合がある。例えば、TILは、腫瘍へと遊走した細胞であり得る。TILはまた、腫瘍に浸潤した細胞でもあり得る。TILは、腫瘍内で見出される任意の細胞であり得る。例えば、TILは、T細胞、B細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、またはこれらの任意の組合せであり得る。TILは、混合細胞集団であり得る。TIL集団は、表現型の異なる細胞、分化程度の異なる細胞、系統の異なる細胞、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0187】
「治療効果」は、処置される状態に変化が見られる場合に生じ得る。変化は、肯定的変化の場合もあり、否定的変化の場合もある。例えば、「肯定的効果」は、対象における活性化T細胞数の増大に対応し得る。別の例では、「否定的効果」は、対象における腫瘍の量またはサイズの減少に対応し得る。少なくとも10%の改善、好ましくは、少なくとも25%、より好ましくは、少なくとも50%、なおより好ましくは、少なくとも75%、および最も好ましくは、100%の改善が見られる場合に、処置される状態には「変化」が見られる。変化は、個体において処置される状態の重症度の改善に基づく場合もあり、本発明の組成物をそれと組み合わせて投与する治療用組成物による処置を伴う個体およびこれを伴わない個体の集団における、状態の改善の頻度の差違に基づく場合もある。同様に、本開示の方法は、対象へと、「治療有効」量の細胞を投与するステップを含み得る。「治療的に有効な」という用語は、「治療効果を及ぼすこと」に対応する定義を有するように理解されるべきである。
【0188】
本明細書で使用される「セーフハーバー」および「免疫セーフハーバー」という用語ならびにこれらの文法的同等物は、外因性核酸を組み込むために使用され得るゲノム内の場所であって、組込みが、核酸単独の添加により、宿主細胞の増殖に対して、著明な効果を引き起こさない場所を指す場合がある。セーフハーバーの非限定的な例は、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、CCR5、またはRosa26を含み得る。
【0189】
本明細書で使用される「配列」という用語およびその文法的同等物は、DNAの場合もあり、RNAの場合もあり;直鎖状の場合もあり、環状の場合もあり、分枝状の場合もあり;一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある、ヌクレオチド配列を指す場合がある。配列は、突然変異させることができる。配列は、任意の長さ、例えば、2〜1,000,000の間、またはそれよりも多いヌクレオチドの長さ(またはこれらの間であるか、もしくはこれらを上回る、任意の整数値)、例えば、約100〜約10,000ヌクレオチドの間または約200〜約500ヌクレオチドの間であり得る。
【0190】
概観
本明細書では、細胞内ゲノム移植を実施するために有用な、組成物および方法が開示される。細胞内ゲノム移植は、治療適用のために、細胞および核酸を遺伝子改変することを含み得る。全体を通して記載される組成物および方法は、操作細胞の、生理学的および免疫学的な抗腫瘍効力を改善する形で、腫瘍特異的TCRを送達するために、核酸を媒介する遺伝子操作工程を使用し得る。効果的な養子細胞移入ベースの免疫療法(ACT)は、がん(例えば、転移性がん)患者を処置するのに有用であり得る。例えば、非ウイルス法を使用して、がん細胞上の固有の突然変異であるネオ抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を発現するように、自家末梢血リンパ球(PBL)を改変し、開示される、細胞内ゲノム移植の組成物および方法において使用することができる。ネオ抗原は、突然変異負荷が大きな腫瘍と関連し得る(
図58)。
【0191】
図1は、in vitroアッセイ(例えば、全エクソームシーケンシング)を使用して、がん患者から得られた試料に由来する、がん関連標的配列、場合によって、ネオ抗原を同定し得る、方法の例について描示する。方法はさらに、標的配列を認識する第1のT細胞に由来するTCRトランス遺伝子も同定し得る。がん関連標的配列およびTCRトランス遺伝子は、同じ患者の試料から得ることもでき、異なる患者の試料から得ることもできる。方法は、TCRトランス遺伝子を含む核酸を、第2のT細胞の膜を越えて、効果的かつ効率的に送達し得る。場合によって、第1のT細胞と、第2のT細胞とは、同じ患者から得ることができる。他の場合には、第1のT細胞と、第2のT細胞とは、異なる患者から得ることができる。他の場合には、第1のT細胞と、第2のT細胞とは、異なる患者から得ることができる。方法は、操作T細胞を作製するように、非ウイルス性組込み系(例えば、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、またはMega−TAL)を使用して、TCRトランス遺伝子を、安全かつ効率的に、T細胞のゲノムへと組み込むことが可能であり、したがって、TCRトランス遺伝子を、操作T細胞内で、信頼できる形で発現させることができる。操作T細胞は、その免疫学的効力および抗腫瘍効力を維持する状態で、増殖させ、拡大することができ、さらに、がんを処置するために、患者へと投与することもできる。
【0192】
操作細胞はまた、患者へと投与されたらその性能を改善し得る条件下で、増殖させ、拡大することもできる。操作細胞は、選択することができる。例えば、細胞の拡大および操作の前に、様々な非限定的な方法により、細胞の供給源を、対象から得ることができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、多数の非限定的な供給源から得ることができる。例えば、任意のT細胞株を使用することができる。代替的に、細胞は、健常ドナーに由来する場合もあり、がんを伴うと診断された患者に由来する場合もあり、感染を伴うと診断された患者に由来する場合もある。別の実施形態では、細胞は、異なる表現型特徴を提示する混合細胞集団の一部であり得る。細胞株はまた、既に記載されている方法に従い、形質転換されたT細胞から得ることもできる。細胞はまた、細胞療法バンクから得ることもできる。免疫抑制処置に対して抵抗性の改変細胞も得ることができる。所望の細胞集団はまた、改変の前に選択することもできる。操作細胞集団はまた、改変の後で選択することもできる。
【0193】
場合によって、操作細胞は、自家移植において使用することができる。代替的に、操作細胞は、同種移植において使用することができる。場合によって、操作細胞は、がん関連標的配列および/またはTCRトランス遺伝子を同定するのにその試料が使用された同じ患者へと投与することができる。他の場合には、操作細胞は、がん関連標的配列および/またはTCRトランス遺伝子を同定するのにその試料が使用された患者と異なる患者へと投与することができる。1または複数の相同組換えエンハンサーは、本発明の細胞と共に導入することができる。エンハンサーは、二本鎖切断の、相同性により導かれる修復を容易とし得る。エンハンサーは、TCRの本発明の細胞への組込みを容易とし得る。エンハンサーは、二本鎖切断の、相同性により導かれる修復が優先的に生じるように、非相同末端結合(NHEJ)を遮断し得る。
【0194】
本発明の外因性ポリ核酸の毒性を低減するのに、修飾化合物もまた用いることができる。例えば、修飾剤化合物は、カスパーゼ1、TBK1、IRF3、STING、DDX41、DNA−PK、DAI、IFI16、MRE11、cGAS、2’3’−cGAMP、TREX1、AIM2、ASC、またはこれらの任意の組合せに作用し得る。修飾剤は、TBK1修飾剤であり得る。修飾剤は、カスパーゼ1修飾剤であり得る。修飾剤化合物はまた、生得的シグナル伝達系にも作用する場合があり、したがって、生得的シグナル伝達修飾剤であり得る。場合によって、外因性核酸は、細胞に対して毒性であり得る。細胞の生得的免疫センシング応答を阻害する方法は、操作細胞生成物の細胞生存率を改善し得る。修飾化合物は、ブレフェルジンAおよび/またはATM経路のインヒビターであり得る(
図92A、
図92B、
図93A、および
図93B)。
【0195】
修飾化合物は、ポリ核酸の添加の前に、細胞へと導入することができる。修飾化合物は、ポリ核酸と共時的に導入することができる。修飾化合物は、ポリ核酸内に含まれうる。これらの組成物および方法は、効率的かつ低毒性の方法であって、それにより、細胞療法、例えば、がん特異的細胞療法を案出し得る方法をもたらし得る。
【0196】
1または複数のサイトカインは、本発明の細胞と共に導入することができる。サイトカインは、細胞傷害性Tリンパ球(養子移入させる腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球を含む)をブーストして、腫瘍微小環境内で拡大するのに用いることができる。場合によって、IL−2を使用して、本明細書で記載される細胞の拡大を容易とすることができる。IL−15などのサイトカインもまた、利用することができる。IL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IL−21、またはこれらの任意の組合せなど、免疫療法の分野において妥当である、他のサイトカインもまた、用いることができる。場合によって、IL−2、IL−7、およびIL−15を使用して、本発明の細胞を培養する。
【0197】
細胞傷害作用は一般に、細胞に対して毒性である、組成物、薬剤、および/または状態(例えば、外因性DNA)の資質を指す場合がある。一部の態様では、本開示の方法は一般に、遺伝子改変時に、1または複数の細胞へと導入される、外因性DNAの細胞傷害効果を低減することに関する。一部の実施形態では、細胞傷害作用、または細胞に対して細胞傷害性である物質の効果は、DNAの切断、細胞死、オートファジー、アポトーシス、核凝縮、細胞の溶解、壊死、細胞運動性の変更、細胞硬直性の変更、細胞質タンパク質発現の変更、膜タンパク質発現の変更、所望されない細胞分化、膨張、膜完全性の喪失、代謝活性の停止、代謝活性の低下、代謝活性の亢進、反応性酸素分子種の増大、細胞質の収縮、炎症促進性サイトカイン(例えば、DNAセンシング経路の産物としての)の産生、またはこれらの任意の組合せを含み得る。炎症促進性サイトカインの非限定的な例は、インターロイキン6(IL−6)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、C−Cモチーフリガンド4(CCL4)、C−Cモチーフリガンド5(CCL5)、C−X−Cモチーフリガンド10(CXCL10)、インターロイキン1ベータ(IL−1β)、IL−18およびIL−33を含む。場合によって、細胞傷害作用は、トランス遺伝子またはTCRなど、ポリ核酸の導入の影響を受ける場合がある。細胞への外因性TCRの組込みは、
【0198】
細胞傷害作用の変化は、当技術分野で公知である、多数の方式のうちのいずれかにより測定することができる。一実施形態では、細胞傷害作用の変化は、細胞死または所望されない細胞分化など、細胞傷害作用関連効果の発生の程度および/または頻度に基づき評価することができる。別の実施形態では、細胞傷害作用の低減は、当技術分野で公知のアッセイであって、色素除外、細胞の生存率と関連する形状特徴の検出、損傷および/または死、ならびに目的の細胞型と関連する酵素活性および/または代謝活性の測定など、標準的な検査室法を含むアッセイを使用して、細胞毒性の量を測定することにより評価する。
【0199】
一般に、本発明のT細胞は、CD3 TCR複合体関連シグナルおよびリガンドであって、T細胞の表面上の共刺激性分子を刺激し得るシグナルおよびリガンドを刺激し得る薬剤をそれへと接合させた表面と接触させることにより拡大することができる。特に、T細胞集団は、表面上に固定化された、抗CD3抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗CD2抗体と接触させることにより、あるいは、ある場合には、カルシウムイオノフォアと共に、プロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)と接触させることなどにより、in vitroで刺激することができる。T細胞の表面上のアクセサリー分子を共刺激するために、アクセサリー分子に結合するリガンドを使用することができる。例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激し得る条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。場合によって、4−1BBを使用して、細胞を刺激することができる。例えば、細胞は、4−1BBおよびIL−21または別のサイトカインで刺激することができる。
【0200】
CD4 T細胞またはCD8 T細胞の増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体を使用することができる。例えば、シグナルをもたらす薬剤は、溶液中の場合もあり、表面へとカップリングさせる場合もある。粒子対細胞比は、標的細胞と比べた粒子サイズに依存し得る。さらなる実施形態では、T細胞などの細胞は、薬剤でコーティングしたビーズと組み合わせることができ、この場合、ビーズと細胞とは、後で分離し、任意選択で、培養することができる。各ビーズは、抗CD3抗体もしくは抗CD28抗体、または、場合によって、2つの組合せでコーティングすることができる。代替的な実施形態では、培養の前に、薬剤でコーティングしたビーズと細胞とを分離せず、併せて培養する。細胞表面タンパク質は、抗CD3および抗CD28を接合させうる常磁性ビーズ(3×28ビーズ)を、T細胞へと接触させることにより、ライゲーションすることができる。一実施形態では、細胞およびビーズ(例えば、比を1:1とする、DYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)を、緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)中で組み合わせる(例えば、カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを伴わずに)。任意の細胞濃度を使用することができる。混合物は、数時間(例えば、約3時間)もしくはほぼこの時間〜14日間もしくは約14日間、またはこれらの間の任意の時間整数値にわたり培養することができる。別の実施形態では、混合物は、21日間もしくはほぼこの期間にわたり、または最長で21日間もしくはほぼこの期間にわたり培養することもできる。T細胞を培養するのに適切な条件は、増殖および生存率に必要な因子であって、血清(例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン2(IL−2)、インスリン、IFN−g、IL−4、IL−7、GM−CSF、IL−10、IL−21、IL−15、TGFベータ、およびTNFアルファ、または細胞を増殖させるための他の任意の添加剤を含む因子を含有し得る、適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Media 1640またはX−vivo 5(Lonza))を含み得る。細胞を増殖させるための他の添加剤は、界面活性剤、Plasmanate、ならびにN−アセチルシステインおよび2−メルカプトエタノールなどの還元剤を含むがこれらに限定されない。培地は、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンを添加し、無血清であるか、あるいは適切な量の血清(または血漿)もしくは規定されたセットのホルモン、および/またはT細胞を増殖させ、拡大するために十分な量のサイトカインを補充した、RPMI 1640、A1 M−V、DMEM、MEM、α−MEM、F−12、X−Vivo 1およびX−Vivo 20、Optimizerを含み得る。抗生剤、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験用培養物中に限り組入れうるが、おそらく、対象へと輸注される細胞の培養物中には組み入れることができない。標的細胞は、増殖を支援するのに必要な条件、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、5%CO
2を加えた空気)下で維持することができる。場合によって、変動させる刺激時間へと曝露されたT細胞は、異なる特徴を呈し得る。場合によって、ヒトCD3、CD28、CD2、またはこれらの任意の組合せに対する、可溶性で一特異性の、四量体抗体を使用することができる。
【0201】
場合によって、ゲノム移植を経る細胞は、組織または細胞と共培養することにより、活性化させることもでき、拡大することもできる。細胞は、抗原提示細胞であり得る。人工抗原提示細胞(aAPC)は、T細胞受容体および共刺激性分子に対するリガンドを発現することが可能であり、場合によって、それらの効力および機能を改善しながら、移入のためのT細胞を活性化させ、拡大し得る。aAPCは、T細胞活性化のための任意の遺伝子を発現するように操作することができる。aAPCは、T細胞拡大のための任意の遺伝子を発現するように操作することができる。aAPCは、ビーズ、細胞、タンパク質、抗体、サイトカイン、またはこれらの任意の組合せであり得る。aAPCは、ゲノム移植を経る可能性のある細胞集団へと、シグナルを送達し得る。例えば、aAPCは、シグナル1、シグナル2、シグナル3、またはこれらの任意の組合せを送達し得る。シグナル1は、抗原認識シグナルであり得る。例えば、シグナル1は、TCRへの、ペプチド−MHC複合体のライゲーション、またはCD3に対するアゴニスト抗体であって、CD3シグナル−形質導入複合体の活性化をもたらし得るアゴニスト抗体の結合であり得る。シグナル2は、共刺激性シグナルであり得る。例えば、共刺激性シグナルは、それぞれ、ICOS−L、CD70、および4−1BBLに結合する、抗CD28、誘導性共刺激因子(ICOS)、CD27、および4−1BB(CD137)であり得る。シグナル3は、サイトカインシグナルであり得る。サイトカインは、任意のサイトカインであり得る。サイトカインは、IL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IL−21、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0202】
場合によって、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用して、細胞集団を活性化させ、かつ/または拡大することができる。場合によって、人工抗原提示細胞は、アロ特異性を誘導しえない。aAPCは場合によって、HLAを発現しえない。aAPCは、活性化および/または刺激のために使用し得る遺伝子を安定的に発現するように、遺伝子改変することができる。場合によって、K562細胞を、活性化のために使用することができる。K562細胞はまた、拡大のために使用することもできる。K562細胞は、ヒト赤白血病細胞株であり得る。K562細胞は、目的の遺伝子を発現するように操作することができる。K562細胞は、HLAクラスI分子、HLAクラスII分子、またはCD1d分子を内因的に発現しえないが、ICAM−1(CD54)およびLFA−3(CD58)を発現し得る。K562は、シグナル1を、T細胞へと送達するように操作することができる。例えば、K562細胞は、HLAクラスIを発現するように操作することができる。場合によって、K562細胞は、B7、CD80、CD83、CD86、CD32、CD64、4−1BBL、抗CD3、抗CD3 mAb、抗CD28、抗CD28mAb、CD1d、抗CD2、膜結合型IL−15、膜結合型IL−17、膜結合型IL−21、膜結合型IL−2、切断型CD19、または任意の組合せなど、さらなる分子を発現するように操作することができる。場合によって、操作K562細胞は、CD80およびCD83に加えて、抗CD3 mAbの膜形態である、クローンOKT3を発現し得る。場合によって、操作K562細胞は、CD80およびCD83に加えて、抗CD3 mAbの膜形態である、クローンOKT3、抗CD28 mAbの膜形態を発現し得る。
【0203】
aAPCは、ビーズであり得る。球形ポリスチレンビーズを、CD3およびCD28に対する抗体でコーティングし、T細胞を活性化させるために使用することができる。ビーズは、任意のサイズであり得る。場合によって、ビーズは、3および6マイクロメートルであり得るか、またはほぼこの長さであり得る。ビーズは、4.5マイクロメートルのサイズであり得るか、またはほぼこのサイズであり得る。ビーズは、任意の細胞対ビーズ比で用いることができる。例えば、1ミリメートル当たり100万個の細胞で、3対1のビーズ対細胞比を使用することができる。aAPCはまた、剛性球形粒子、ポリスチレンラテックスマイクロビーズ、磁性ナノ粒子または磁性マイクロ粒子、ナノサイズ量子ドット、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、非球形粒子、カーボンナノチューブバンドル、楕円体のPLGAマイクロ粒子、ナノワーム、流体脂質二重層含有系、2D支援型脂質二重層(2D−SLB)、リポソーム、RAFTソーム/マイクロドメインリポソーム、SLB粒子、またはこれらの任意の組合せでもあり得る。
【0204】
場合によって、aAPCは、CD4 T細胞を拡大し得る。例えば、aAPCは、HLAクラスII拘束性CD4 T細胞の抗原プロセシングおよび提示経路を模倣するように操作することができる。K562は、HLA−D、DPα.DPβ鎖、Ii、DMα、DMβ、CD80、CD83、またはこれらの任意の組合せを発現するように操作することができる。例えば、操作K562細胞は、HLA拘束性抗原特異的CD4 T細胞を拡大するために、HLA拘束性ペプチドでパルスすることができる。
【0205】
場合によって、aAPCの使用は、T細胞の活性化、拡大、または任意の組合せのために外因的に導入されるサイトカインと組み合わせることができる。細胞はまた、in vivoにおいて、例えば、ゲノム移植された細胞の、対象への投与の後における、対象の血液中で拡大することもできる。
【0206】
細胞内ゲノム移植のためのこれらの組成物および方法は、がん治療に、多くの利点をもたらし得る。例えば、これらの組成物および方法は、高効率の遺伝子の移入、発現、細胞生存率の増大、組換え誘導性二本鎖切断の効率的導入、および非相同末端結合(NHEJ)機構により、相同性により導かれる修復(HDR)を優先する工程、および相同な組換え体の効率的回収および拡大をもたらし得る。
【0207】
リボ核酸系
操作細胞を作製する、1つの例示的な方法は、細胞内ゲノム移植のために、リボ核酸(RNA)系、例えば、完全RNA系または部分的RNA系を使用することにより実施される。操作される細胞は、ある場合に、DNAの使用に伴い観察される、DNA(例えば、二本または一本鎖DNA)誘導性の毒性および免疫原性を防止するように、DNAではなく、RNAまたは修飾RNAで遺伝子改変することができる。場合によって、RNA/DNA融合ポリ核酸もまた、ゲノム操作のために利用することができる。
【0208】
場合によって、初代ヒトT細胞の遺伝子編集のための、全てのRNAポリ核酸系を使用することができる(例えば、
図5を参照されたい)。概略は、in vitroにおいて転写されたリボ核酸を、標的細胞内部へと送達し、dsDNAへと逆転写し得ることを示す。次いで、DNA鋳型を、細胞内部の相同組換え(HR)反応のために使用することができる。
【0209】
場合によって、頑健なゲノム操作は、トランス遺伝子をコードするポリ核酸の量を増大させることにより達成することができる。量を増大させるDNAの導入は、場合によって、細胞毒性を結果としてもたらし得る(
図2および3)ので、ゲノム操作のためには、RNAを、細胞へと導入することが望ましい場合がある。
【0210】
場合によって、外因性受容体配列を含むトランス遺伝子は、ゲノム操作のために、RNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)を介して、細胞へと導入することができる。RNA、例えば、mRNAは、in situで、DNAへと変換することができる。1つの例示的な方法は、in vitroにおけるポリ核酸の転写を用いて、mRNAポリ核酸を産生する。次いで、mRNAポリ核酸を、逆転写酵素(RT)(タンパク質形態またはRTをコードするポリ核酸形態の)と共に、細胞へと、トランスフェクトすることができる。逆転写酵素(RT)をコードするポリ核酸。他の場合には、RTタンパク質を、細胞へと導入する。RTは、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV RT)、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(M−MLV RT)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)逆転写酵素(RT)、これらの誘導体、またはこれらの組合せであり得るか、またはこれらに由来し得る。トランスフェクトされると、逆転写酵素は、操作mRNAポリ核酸を、二本鎖DNA(dsDNA)へと転写し得る。逆転写酵素(RT)は、RNA鋳型から、相補的DNA(cDNA)を作製するのに使用される酵素であり得る。場合によって、RT酵素は、RNA(cDNA合成)または一本鎖DNAを鋳型として使用するプライマーから始めて、相補的DNA鎖を合成し得る。場合によって、RTは、摂氏37度の温度で機能的であり得る。他の場合には、RTは、摂氏37度を下回る温度で機能的であり得る。他の場合には、RTは、摂氏37度を超える温度で機能的であり得る。
【0211】
RTは、RNA鋳型から、相補的DNA(cDNA)を作製するのに使用される任意の酵素であり得る。RTは、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、Hepadnaviridae科、または任意の二本鎖ウイルスもしくは一本鎖ウイルスに由来し得る。RTは、任意の数の生化学活性を有し得る。例えば、RTは、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有し得る。RTは、リボヌクレアーゼH活性を有し得る。RTは、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有し得る。場合によって、RTを使用して、一本鎖RNAを、二本鎖cDNAへと変換することができる。その後、cDNAを、細胞ゲノムへと導入することができる。
図101Aおよび
図101Bは、電気穿孔されたmRNAの、in vivoにおける逆転写を示す。
【0212】
RTは、1型ヒト免疫不全ウイルスに由来するHIV−1 RTであり得る。HIV−1 RTは、サブユニットを有し得る。例えば、HIV−1 RTは、2つのサブユニットを有し得る。RTはまた、モロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)にも由来し得る。M−MLVウイルスは、サブユニットを有する場合もあり、サブユニットを有さない場合もある。場合によって、M−MLVウイルスは、単一の単量体である。RTはまた、ニワトリ骨髄芽球症ウイルスRT(AMV RT)でもあり得る。AMV RTは、サブユニットを有し得る。場合によって、AMV RTは、2つのサブユニットを有する。場合によって、テロメラーゼRTもまた使用する。
【0213】
場合によって、dsDNAを、後続の相同組換えステップにおいて使用することができる。後続の相同組換えステップにより、外因性受容体配列を、細胞ゲノムへと導入することができる。
【0214】
逆転写酵素を、操作ポリ核酸へとターゲティングする方法
a)固有配列
場合によって、導入されるRTを、導入されるポリ核酸へとターゲティングする必要があり得る。導入されるポリ核酸は、RNAの場合もあり、DNAの場合もある。場合によって、導入されるポリ核酸は、RNAとDNAとの組合せであり得る。導入されるRTのターゲティングは、操作受容体をコードするポリ核酸に固有の配列を組み込むことにより実施することができる(
図22)。これらの固有配列は、RTを、特定のポリ核酸へとターゲティングする一助となりうる。場合によって、固有配列は、反応の効率を増大させることができる。表1は、RTを、操作ポリ核酸へとターゲティングするための、可能な固有配列について記載する。固有配列は、任意のヒトmRNA転写物内で見出されえない配列であり得る。場合によって、固有配列は、それがもはや、内因性配列とならないように、公知のmRNA転写物から改変することができる。固有配列は、バイオインフォマティクスを使用して同定することができる。場合によって、固有配列は、公表されているデータベースを使用して同定することができる。
【表1】
【0215】
固有配列は、任意の塩基対長のサイズであり得る。固有配列は、1〜20塩基対、1〜30塩基対、1〜40、1〜50、1〜60、1〜70、1〜80、1〜90、1〜100塩基対、もしくは100塩基対を超える任意の長さであり得るか、またはこれらの間であり得る。場合によって、固有配列は、1〜20塩基対であるか、またはこれらの間である。場合によって、固有配列は、20塩基対を超える。場合によって、固有配列は、20塩基対ちょうどの長さである。固有配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、またはそれよりも多い塩基対であり得る。場合によって、複数の固有配列を、ポリ核酸へと導入する。
【0216】
場合によって、固有配列は、操作ポリ核酸内に組み入れることができる。固有配列を使用して、RTを、操作ポリ核酸へとターゲティングすることができる。場合によって、オリゴヌクレオチドは、操作ポリ核酸とプレアニールさせることができる。プレアニールされるオリゴヌクレオチドは、操作ポリ核酸内の、任意の長さの相補的な固有配列を包含し得る。プレアニールされるオリゴヌクレオチドは、相補的な固有配列とちょうど同じ長さの場合もあり、操作ポリ核酸内の、固有配列の相補配列の全長未満の場合もある。
【0217】
b)操作構造
場合によって、逆転写酵素は、二次構造を有するようにポリ核酸を操作することにより、操作ポリ核酸へとターゲティングすることができる。二次構造は、任意の構造であり得る。場合によって、複数の二次構造を用いることができる。
【0218】
例えば、二次構造は、二重螺旋であり得る。二重螺旋は、多くの連続塩基対からなる領域により形成され得る。場合によって、二重螺旋は、三次構造である。二重螺旋は、渦巻き状のポリマーであり得る。場合によって、二重螺旋は、右旋性であり得る。二重螺旋はまた、左旋性でもあり得る。場合によって、二重螺旋は、併せて塩基対合し得る、2つのヌクレオチド鎖を含有し得る、右旋性構造であり得る。場合によって、二重螺旋の1旋回は、10ヌクレオチドであり得るか、またはほぼこの長さであり得る。他の場合には、二重螺旋の1旋回は、10ヌクレオチドを超えるか、もしくは10ヌクレオチド未満であり得るか、またはほぼこの長さであり得る。二重螺旋の1旋回は、1〜5ヌクレオチド、1〜10、1〜20、もしくは20ヌクレオチドを超える長さであり得るか、またはほぼこの長さであり得る。
【0219】
二次構造はまた、ステムループ構造またはヘアピン構造でもあり得る。RNAヘアピンは、単一のRNA分子内の2つの相補配列が会合し、分子のフォールディングまたはリンクリングの後で、一体に結合する場合に形成され得る。場合によって、RNAヘアピンは、二本鎖RNA(dsRNA)ステムと、末端ループとからなりうる。構造的に、RNAヘアピンは、異なる種類のRNA内の、異なる位置において生じ得る。RNAヘアピンは、リボ核酸の5’末端において生じる場合もあり、3’末端において生じる場合もあり、5’末端〜3’末端の間の任意の位置において生じる場合もある。RNAヘアピンは、ステムの長さ、ループのサイズ、バルジの数およびサイズ、ならびにヌクレオチド配列が異なりうる。RNAヘアピンは、任意のステム長のヘアピンであり得る。RNAヘアピンは、任意のサイズのループを有し得る。例えば、ヘアピンループは、4〜8塩基の間の長さであり得るか、またはほぼこれらの数の塩基の間の長さであり得る。場合によって、ヘアピンループは、8塩基の長さを超えるか、またはほぼこれらの数の塩基の長さを超える。ある特定の場合には、8塩基の長さを超えるか、またはほぼこれらの数の塩基の長さを超えるヘアピンループは、二次構造を有し得る。RNAヘアピンは、任意の数およびサイズのバルジを有し得る。RNAヘアピンは、任意の塩基対長のヘアピンであり得る。例えば、RNAヘアピンは、1〜100塩基対、1〜200塩基対、1〜300塩基対、もしくは300塩基対を超えうるか、またはほぼこの長さであり得る。RNAヘアピンは、例えば、バルジング構造などの二次構造を有し得る。
【0220】
機能的に、RNAヘアピンは、cisまたはtransにおいて、遺伝子の発現を調節し得る、例えば、RNA分子内のRNAヘアピンは、その分子だけを調節する場合(cis)もあり、他のRNAまたは経路に対する効果を誘導する場合(trans)もある。ヘアピンは、様々なタンパク質の結合性部位として用いられる場合があり、酵素反応の基質として作用し得るほか、内因性酵素活性も提示し得る。場合によって、ヘアピンを使用して、転写のために、RTを、操作ポリ核酸へとターゲティングすることができる。ヘアピン構造は、リボソーム結合性部位に位置し得る。ヘアピン構造は、翻訳を容易とし得る。
【0221】
ヘアピン構造は、内部リボソーム進入部位(IRES)を有し得る。IRES配列は、ヘアピンを含有するmRNAのターゲティングされた転写を可能とし得る。場合によって、ヘアピン構造は、操作ポリ核酸を、細胞内の場所へと導きうる。例えば、ヘアピンは、核局在化シグナルであり得るか、またはこれを含有し得る。
【0222】
場合によって、RTは、操作ポリ核酸のRNAヘアピンをターゲティングし得る。操作ポリ核酸は、1または複数のヘアピン領域を含有し得る。ヘアピンは、操作ポリ核酸の任意の位置において形成され得る。
【0223】
二次構造はまた、シュードノットでもあり得る。シュードノットは、少なくとも2つのステムループ構造またはヘアピン構造であって、1つのステムの半分が、別のステムの、2つの半分の間に挿入された構造を含有し得る、核酸の二次構造であり得る。シュードノットの、いくつかの顕著に異なるフォールディングトポロジーを使用することができる。場合によって、H型シュードノットを使用することができる。H型フォールディングでは、ヘアピンのループ内の塩基は、ステムの外側の塩基と共に、分子内対を形成し得る。これは、第2のステムおよびループの形成を引き起こす結果として、2つのステムおよび2つのループを伴うシュードノットをもたらし得る。2つのステムは、互いの上にスタッキングされて、1つの連続鎖と、1つの不連続鎖とを伴う、準連続的螺旋を形成することが可能であり得る。
【0224】
場合によって、シュードノットを使用して、操作ポリ核酸の転写を開始させることができる。シュードノットは、リボソームを、代替的なリーディングフレームへとスリップするように誘導し得る。シュードノットは、場合によって、フレームシフティングを引き起こし得る。
【0225】
操作ポリ核酸の、核へのターゲティング
場合によって、操作ポリ核酸は、細胞内の核へと局在化させる必要がある。操作ポリ核酸は、細胞ゲノムへと導入することが必要であり得る、外因性受容体配列または操作受容体配列をコードし得る。場合によって、受容体配列の、細胞ゲノムへの導入は、転写のために、操作ポリ核酸を、細胞内ヌクレアーゼへと局在化させることにより実施することができる。
【0226】
操作RNAポリ核酸は、細胞内ヌクレアーゼへと局在化させることができる。局在化は、任意の数の技法を含み得る。場合によって、核局在化シグナルを使用して、操作受容体をコードする操作ポリ核酸を、核へと局在化させることができる。核局在化シグナルは、任意の内因性配列の場合もあり、任意の操作配列の場合もある。
【0227】
場合によって、核局在化シグナルまたは核局在化配列は、厳密に核内タンパク質であり得るタンパク質に由来し得る。核内タンパク質であるタンパク質は、細胞状態またはそのゲノム発現遺伝子座の影響が及びえない、核局在化シグナルを有し得る。場合によって、核局在化は、スプライシングされた成熟タンパク質の転写物内の配列または構造に由来し得る。
【0228】
場合によって、核局在化シグナルは、BMP2−OP1応答性遺伝子(「BORG」)配列であり得る。場合によって、複数のBORG NLS配列を、ポリ核酸内に組み入れる。場合によって、1つ〜5つのBORG配列を組み入れることができる。他の場合には、5つ〜10のBORG配列を組み入れる。1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれよりも多いBORG配列を、ポリ核酸内の核局在化シグナルとして組み入れることができる。場合によって、ポリ核酸内でコードされ得る限りの多くのBORG配列を用いる。核局在化シグナルは、五量体の始点と比べた−8および−3位において、2つの配列の制約を伴う五量体である、AGCCCからなる、短いRNAモチーフであり得る。BORG配列は、操作ポリ核酸を、細胞の核へと局在化させるように、操作ポリ核酸内で使用することができる。
【0229】
場合によって、核局在化が、SF1の、イントロンの分枝状部位のコンセンサス配列に相似する短い配列のタンデムリピートとの相互作用により媒介され、結果として、核膜サブドメインを分泌するように、RNAポリ核酸の局在化がもたらされ得る。BORG配列は、転写複合体など、夥多な核限局性タンパク質または核限局性タンパク質複合体と相互作用することにより機能し得る。他の場合には、核局在化配列は、核局在化モチーフを含有するポリ核酸を、核内にアンカリングし得る、核の局在化RNAまたはクロマチン関連RNA−タンパク質複合体と相互作用し得る。他の場合には、核局在化配列は、移出複合体の形成に干渉し得る因子と相互作用して、ポリ核酸の核内の保持を結果としてもたらし得る。
【0230】
核局在化シグナルは、配列、構造、またはこれらの任意の組合せであり得る。場合によって、核酸の核局在化は、輸送を要求しえず、細胞骨格(アクチンまたは中間径フィラメント)へのアンカリングだけを要求し得る。他の場合には、操作ポリ核酸は、微小管上を、核へと輸送され得る。輸送は、大型リボ核タンパク質(RNP)複合体またはRNP輸送顆粒の形態で起こりうる。場合によって、ポリ核酸は、それを核へと局在化させる二次タンパク質と複合体化させることができる。場合によって、輸送されたポリ核酸は、その最終的な輸送先でアンカリングされ得る。一部のトランス作用因子は、核へとシャトリングバックし得る。
【0231】
場合によって、ポリ核酸は、核へと直接導入することができる。他の場合には、ポリ核酸は、核内で合成することができる。ポリ核酸は、少なくとも1つのBORG配列をコードするように操作することができる。ポリ核酸は、複数のBORG配列をコードするように操作することができる。ポリ核酸は、4つのBORG配列をコードするように操作することができる。場合によって、細胞に、BORG配列を含有するポリ核酸をトランスフェクトする。BORG配列を含有するポリ核酸は、それが相同組換えに参与する、細胞内の核へと局在化させることができる。場合によって、核へと局在化させるポリ核酸は、受容体配列をコードし得る。受容体配列は、BORGを媒介する核局在化により、細胞ゲノムへと導入することができる。
【0232】
ポリ核酸の修飾
本明細書で記載されるポリ核酸は、修飾することができる。修飾は、ポリ核酸の任意の位置において施すことができる。単一のポリ核酸に、1つを超える修飾を施すことができる。ポリ核酸は、修飾後に、品質管理を経る場合がある。場合によって、品質管理は、PAGE、HPLC、MS、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0233】
修飾は、置換、挿入、欠失、化学修飾、物理修飾、安定化、精製、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0234】
ポリ核酸はまた、5’アデニル酸、5’グアノシン三リン酸キャップ、5’N
7−メチルグアノシン三リン酸キャップ、5’三リン酸キャップ、3’リン酸、3’チオリン酸、5’リン酸、5’チオリン酸、Cis−Synチミジン二量体、三量体、C12スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、dSpacer、PCスペーサー、rSpacer、Spacer 18、Spacer 9、3’−3’修飾、5’−5’修飾、脱塩基、アクリジン、アゾベンゼン、ビオチン、ビオチンBB、ビオチンTEG、コレステリルTEG、デスチオビオチンTEG、DNP TEG、DNP−X、DOTA、dT−ビオチン、二重ビオチン、PCビオチン、ソラーレンC2、ソラーレンC6、TINA、3’DABCYL、Black Hole Quencher 1、Black Hole Quencher 2、DABCYL SE、dT−DABCYL、IRDye QC−1、QSY−21、QSY−35、QSY−7、QSY−9、カルボキシルリンカー、チオールリンカー、2’デオキシリボヌクレオシド類似体プリン、2’デオキシリボヌクレオシド類似体ピリミジン、リボヌクレオシド類似体、2’−0−メチルリボヌクレオシド類似体、糖修飾類似体、ゆらぎ/ユニバーサル塩基、蛍光色素標識、2’フルオロRNA、2’O−メチルRNA、メチルホスホネート、ホスホジエステルDNA、ホスホジエステルRNA、ホスホチオエート(phosphothioate)DNA、ホスホロチオエートRNA、UNA、シュードウリジン−5’−三リン酸、5−メチルシチジン−5’−三リン酸、またはこれらの任意の組合せにより修飾することもできる。代表的な2’O−メチルRNA修飾gRNAを、
図31に示す。
【0235】
場合によって、修飾は、永続性であり得る。他の場合には、修飾は、一過性である。場合によって、複数の修飾を、ポリ核酸に施す。ポリ核酸の修飾は、それらのコンフォメーション、極性、疎水性、化学反応性、塩基対合相互作用、またはこれらの任意の組合せなど、ヌクレオチドの物理化学的特性を変更し得る。
【0236】
修飾はまた、ホスホロチオエート置換でもあり得る。場合によって、天然のホスホジエステル結合は、細胞内ヌクレアーゼによる急速な分解を受けやすく、ホスホロチオエート(PS)結合置換を使用する、ヌクレオチド間連結の修飾は、細胞内分解による加水分解に対して、より安定であり得る。修飾は、ポリ核酸の安定性を増大させることができる。修飾はまた、生体活性も増強し得る。場合によって、ホスホロチオエート増強型RNAポリ核酸は、RNアーゼA、RNアーゼT1、仔ウシ血清ヌクレアーゼ、またはこれらの任意の組合せを阻害し得る。これらの特性は、in vivoまたはin vitroの、ヌクレアーゼへの曝露の可能性が高い適用における、PS−RNAポリ核酸の使用を可能とし得る。例えば、ホスホロチオエート(PS)結合は、ポリ核酸の5’末端または3’末端の、最後の3〜5ヌクレオチドの間に導入し、これにより、エキソヌクレアーゼ分解を阻害することができる。場合によって、ホスホロチオエート結合は、エンドヌクレアーゼによる攻撃を低減するように、ポリ核酸の全体を通して付加することもできる。
【0237】
場合によって、修飾をスクリーニングすることができる。スクリーニングは、免疫原性についての試験、毒性についての試験、転写効率についての試験、翻訳効率についての試験、またはこれらの任意の組合せを含み得るがこれらに限定されない。場合によって、修飾は、免疫原性ではありえない。修飾は、毒性ではありえない。場合によって、候補修飾は、ポリ核酸へと組み込む前にスクリーニングする。他の場合には、異なる修飾を伴うポリ核酸をスクリーニングして、付加される修飾の、免疫原性、毒性、効能、または任意の組合せのレベルを決定する。場合によって、修飾を、ポリ核酸の逆転写を支援するその能力についてスクリーニングする。場合によって、修飾は、シュードウリジン−5’−三リン酸修飾である(例えば、
図59を参照されたい)。他の場合には 修飾は、5−メチルシチジン−5’−三リン酸修飾である(例えば、
図59を参照されたい)。修飾はまた、キラリティーの変化も含み得る。
【0238】
ポリ核酸は、様々な方法、例えば、自動式固相合成によりアセンブルすることができる。ポリ核酸は、標準的な固相DNA/RNA合成を使用して構築することができる。ポリ核酸はまた、合成手順を使用して構築することもできる。ポリ核酸はまた、手作業により合成することもでき、完全に自動式で合成することもできる。場合によって、合成手順は、以下を含み得る:まず、5’−ヒドロキシルオリゴヌクレオチドを、対応する5’−H−ホスホネートモノエステルへと転換し、続いて、イミダゾールの存在下で、活性化5’−ホスホルイミダゾリデートへと酸化し、最後に、固体支持体上で、ピロリン酸と反応させうる。この手順は、PAGE、HPLC、MS、またはこれらの任意の組合せなど、合成後の精製ステップを含み得る。
【0239】
場合によって、ポリ核酸を修飾して、細胞へのトランスフェクションのために、免疫原性を小さくし、より安定的とすることができる。修飾ポリ核酸は、任意の数の遺伝子をコードし得る。場合によって、ポリ核酸は、トランス遺伝子をコードし得る。トランス遺伝子は、操作受容体をコードし得る。受容体は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはこれらの任意の組合せであり得る(例えば、
図57を参照されたい)。場合によって、受容体は、TCRであり得る。
【0240】
場合によって、修飾ポリ核酸は、後続のステップで使用することができる。例えば、修飾ポリ核酸は、相同組換え反応で使用することができる。相同組換え反応は、外因性受容体をコードするトランス遺伝子を、細胞のゲノム内に導入することを含み得る。導入は、トランス遺伝子配列を、細胞ゲノムへと導入するのに必要な任意の機構を含み得る。場合によって、受容体配列を、細胞ゲノムへと導入するステップで、CRISPRを使用する。
【0241】
細胞内ゲノム移植
細胞内ゲノム移植は、治療適用のために、細胞および核酸を遺伝子改変する方法であり得る。全体を通して記載される組成物および方法は、腫瘍特異的なTCRの発現のための、核酸を媒介する遺伝子操作工程であって、T細胞の、生理学的および免疫学的な抗腫瘍効力を撹乱せずに置く形の工程を使用し得る。効果的な養子細胞移入ベースの免疫療法(ACT)は、がん(例えば、転移性がん)患者を処置するのに有用であり得る。例えば、非ウイルス法を使用して、がん細胞上の固有の突然変異であるネオ抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を発現するように自家末梢血リンパ球(PBL)を改変し、開示される、細胞内ゲノム移植の組成物および方法において使用することができる。
【0242】
患者のがんにおける、固有の免疫原性突然変異を認識する、がん特異的TCRの配列を同定する、1つの例示的な方法については、PCT/US14/58796において記載されている。例えば、がん特異的TCRトランス遺伝子は、ランダム挿入または特異的挿入を使用して、細胞ゲノム(例えば、T細胞)へと挿入することができる。
【0243】
一部の態様では、本明細書で開示される方法は、細胞へと、1または複数の核酸(例えば、第1の核酸または第2の核酸)を導入するステップを含む。当業者は、核酸は一般に、その分子が、長鎖に連結された、多くのヌクレオチドからなる物質を指す場合があることを察知するであろう。核酸の非限定的な例は、人工核酸類似体(例えば、ペプチド核酸、モルホリノオリゴマー、ロックト核酸、グリコール核酸、またはトレオース核酸)、環状核酸、DNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、ゲノムDNA、プラスミド、プラスミドDNA、ウイルス的DNA、ウイルスベクター、ガンマ−レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、RNA、短鎖ヘアピンRNA、psiRNA、および/またはこれらのハイブリッド体もしくは組合せを含む。一部の実施形態では、方法は、核酸を含むことが可能であり、核酸は、合成核酸である。一部の実施形態では、試料は、核酸を含むことが可能であり、核酸は、断片化することができる。場合によって、核酸は、ミニサークルである。
【0244】
一部の実施形態では、核酸は、プロモーター領域、バーコード、制限部位、切断部位、エンドヌクレアーゼ認識部位、プライマー結合性部位、選択用マーカー、固有の識別配列、耐性遺伝子、リンカー配列、またはこれらの任意の組合せを含み得る。一部の態様では、これらの部位は、酵素的消化、増幅、シーケンシング、結合のターゲティング、精製、耐性特性(例えば、抗生剤耐性)の付与、またはこれらの任意の組合せに有用であり得る。一部の実施形態では、核酸は、1または複数の制限部位を含み得る。制限部位は一般に、部位特異的分子(例えば、プロテアーゼ、エンドヌクレアーゼ、または酵素)が、核酸を切断し得る、特異的ペプチド配列または特異的ヌクレオチド配列を指す場合がある。一例では、核酸は、1または複数の制限部位を含むことが可能であり、この場合、制限部位における核酸の切断は、核酸を断片化する。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。一部の実施形態では、エンドヌクレアーゼ認識部位は、I型エンドヌクレアーゼ認識部位、II型エンドヌクレアーゼ認識部位、III型エンドヌクレアーゼ認識部位、IV型エンドヌクレアーゼ認識部位、またはV型エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。エンドヌクレアーゼ認識部位の非限定的な例は、AatII認識部位、Acc65I認識部位、AccI認識部位、AclI認識部位、AatII認識部位、Acc65I認識部位、AccI認識部位、AclI認識部位、AfeI認識部位、AflII認識部位、AgeI認識部位、ApaI認識部位、ApaLI認識部位、ApoI認識部位、AscI認識部位、AseI認識部位、AsiSI認識部位、AvrII認識部位、BamHI認識部位、BclI認識部位、BglII認識部位、Bme1580I認識部位、BmtI認識部位、BsaI認識部位、BsaHI認識部位、BsiEI認識部位、BsiWI認識部位、BspEI認識部位、BspHI認識部位、BsrGI認識部位、BssHII認識部位、BstBI認識部位、BstZ17I認識部位、BtgI認識部位、ClaI認識部位、DraI認識部位、EaeI認識部位、EagI認識部位、EcoRI認識部位、EcoRV認識部位、FseI認識部位、FspI認識部位、HaeII認識部位、HincII認識部位、HindIII認識部位、HpaI認識部位、KasI認識部位、KpnI認識部位、MfeI認識部位、MluI認識部位、MscI認識部位、MspA1I認識部位、MfeI認識部位、MluI認識部位、MscI認識部位、MspA1I認識部位、NaeI認識部位、NarI認識部位、NcoI認識部位、NdeI認識部位、NgoMIV認識部位、NheI認識部位、NotI認識部位、NruI認識部位、NsiI認識部位、NspI認識部位、PacI認識部位、PciI認識部位、PmeI認識部位、PmlI認識部位、PsiI認識部位、PspOMI認識部位、PstI認識部位、PvuI認識部位、PvuII認識部位、SacI認識部位、SacII認識部位、SalI認識部位、SbfI認識部位、ScaI認識部位、SfcI認識部位、SfoI認識部位、SgrAI認識部位、SmaI認識部位、SmlI認識部位、SnaBI認識部位、SpeI認識部位、SphI認識部位、SspI認識部位、StuI認識部位、SwaI認識部位、XbaI認識部位、XhoI認識部位、およびXmaI認識部位を含む。特定の例では、制限部位は、NotIエンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
【0245】
場合によって、核酸は、別の核酸にたやすく結合し得る(例えば、核酸は、粘着末端またはヌクレオチドの突出を含む)。例えば、核酸は、核酸の第1の末端において、突出を含み得る。一般に、粘着末端または突出とは、核酸の末端における、一連の非対合ヌクレオチドを指す場合がある。場合によって、核酸は、核酸の1または複数の末端において、一本鎖突出を含み得る。場合によって、突出は、核酸の3’末端において生じ得る。場合によって、突出は、核酸の5’末端において生じ得る。突出は、任意の数のヌクレオチドを含み得る。例えば、突出は、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、または5もしくはそれよりも多いヌクレオチドを含み得る。場合によって、核酸は、別の核酸への結合の前に、修飾を要求し得る(例えば、核酸は、エンドヌクレアーゼによる消化を必要とし得る)。場合によって、核酸の修飾により、ヌクレオチドの突出を作製することができ、突出は、任意の数のヌクレオチドを含み得る。例えば、突出は、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、または5もしくはそれよりも多いヌクレオチドを含み得る。一例では、核酸は、制限部位を含むことが可能であり、この場合、核酸を、制限部位において、制限酵素(例えば、NotI)で消化することにより、4ヌクレオチドの突出を産生する。場合によって、修飾は、核酸の1または複数の末端において、平滑末端を作製することを含む。一般に、平滑末端とは、両方の鎖が、塩基対で終結する二本鎖核酸を指す場合がある。一例では、核酸は、制限部位を含むことが可能であり、この場合、核酸を、制限部位において、制限酵素(例えば、BsaI)で消化することにより、平滑末端を産生する。
【0246】
プロモーターとは、RNAポリメラーゼおよび転写因子の結合を制御し、遺伝子転写の効率、遺伝子が、細胞内のどこで発現し得るのか、および/または遺伝子を、どの細胞型内で発現し得るのかに対して大きな影響を及ぼし得る核酸配列である。プロモーターの非限定的な例は、サイトメガロウイルス(cytomegalocirus)(CMV)プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター、SV40(simian vacuolating)ウイルスプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK1)プロモーター、ユビキチンC(Ubc)プロモーター、ヒトベータアクチンプロモーター、CAGプロモーター、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)プロモーター、UASプロモーター、Actin5c(Ac5)プロモーター、ポリヘドロンプロモーター、Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKIIa)プロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、TEF1プロモーター、グリセルアルデヒド3−三リン酸(phosphage)デヒドロゲナーゼ(GDS)プロモーター、ADH1プロモーター、CaMV35Sプロモーター、Ubiプロモーター、ヒトポリメラーゼIII RNA(H1)プロモーター、U6プロモーター、またはこれらの組合せを含む。
【0247】
場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、LTR(long terminal repeat)のU3−R−U5領域であって、レトロウイルスのプロウイルスのいずれの側でも見出されるU3−R−U5領域をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、ウイルスゲノムRNAの3’末端における固有の領域であって、ウイルスゲノムRNA転写の活性化に必要な配列を含有する領域であるU3をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、レトロ/レンチウイルスベクターの5’LTRおよび3’LTRのいずれにおいても見出されるリピート領域であるRをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、ウイルスゲノムRNAの5’末端における固有の領域であるU5をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、RNA pol IIプロモーターとして作用し得る5’LTRをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、CMVまたはRSVなどの構成的プロモーターを伴う、ハイブリッド体の5’LTRをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、LTRのR領域内に位置し、Tatに対する結合性部位として作用し得る、TAR(trans−activating response)エレメントをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、5’LTRにより開始された転写を、R配列に続くポリAトラクトの付加により終結させるのに使用され得る3’LTRをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、プロウイルスのDNA合成のための認識部位である、cPPT(central polypurine tract)をコードする配列を含み得る。cPPTの存在は、遺伝子導入の効率およびトランス遺伝子の発現に影響を及ぼし得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、ヌクレオカプシドによるパッケージングのためのRNA標的部位であるPsiをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、Revタンパク質が結合する配列である、rev応答エレメント(RRE)をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、核からの移出の増大を介して、トランス遺伝子の発現を刺激する配列である、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、マトリックス構成要素、カプシド構成要素、およびヌクレオカプシド構成要素を含有するレンチウイルス粒子の前駆体構造タンパク質であるGAGをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、逆転写酵素およびインテグラーゼ構成要素を含有する前駆体タンパク質であるPolをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、スプライスされていない転写物内および部分的にスプライスされた転写物内のRREに結合して、核からの移出を容易とし得るRevをコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、TARに結合して、LTRプロモーターからの転写を活性化させうる、トランスアクチベーター(Tat)をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターのシュードタイピングに使用し得る、親和性が広範なエンベロープタンパク質である、水泡性口内炎ウイルスG糖タンパク質(VSVG)をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、ウイルスによるDNA複製の起点として用いられうるT字型ヘアピンを形成する、ITR(inverted terminal repeat)をコードする配列を含み得る。ITRの対称性は、AAVゲノムの効率的繁殖に影響を及ぼし得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、ゲノムの複製に要求され、組込みに必要なパッケージングタンパク質である、Rep(例えば、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40)をコードする配列を含み得る。場合によって、核酸は、ウイルスベクターであることが可能であり、ウイルスベクターは、後期エンドソームからAAV粒子を放出し、かつ/または適正なビリオンアセンブリーを確保するのに用いられうる、カプシド構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、およびVP3)をコードする配列を含み得る。
【0248】
場合によって、核酸は、バーコードまたはバーコード配列を含み得る。バーコードまたはバーコード配列とは、ポリヌクレオチドにより構成される、天然または合成の核酸配列であって、前記バーコード配列を有するポリヌクレオチドにより構成される、ポリヌクレオチドおよび他の配列の一義的な識別を可能とする核酸配列に関する。例えば、バーコードを含む核酸は、コードされるトランス遺伝子の識別を可能とし得る。バーコード配列は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、45、または50もしくはそれよりも多い連続ヌクレオチドの配列を含み得る。核酸は、2つまたはそれよりも多いバーコード配列またはそれらの相補体を含み得る。バーコード配列は、ランダムにアセンブルされたヌクレオチド配列を含み得る。バーコード配列は、縮重配列であり得る。バーコード配列は、公知の配列であり得る。バーコード配列は、あらかじめ規定された配列であり得る。
【0249】
場合によって、本明細書で開示される方法は、核酸(例えば、第1の核酸および/または第2の核酸)を含み得る。場合によって、核酸は、トランス遺伝子をコードし得る。一般に、トランス遺伝子とは、複数のヌクレオチドサブユニットを含む直鎖状ポリマーを指す場合がある。トランス遺伝子は、任意の数のヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、約100未満のヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約100ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約200ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約300ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約400ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約500ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約1000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約5000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約10,000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約20,000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約30,000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約40,000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、少なくとも約50,000ヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、約500〜約5000の間のヌクレオチドを含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、約5000〜約10,000の間のヌクレオチドを含み得る。本明細書で開示される場合のうちのいずれかでは、トランス遺伝子は、DNA、RNA、またはDNAとRNAとのハイブリッド体を含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、一本鎖であり得る。場合によって、トランス遺伝子は、二本鎖であり得る。
【0250】
a.ランダム挿入
本明細書で記載される方法の、1または複数のトランス遺伝子は、細胞ゲノムへと、ランダムに挿入することができる。これらのトランス遺伝子は、ゲノム内のいずれの場所に挿入されても機能的であり得る。例えば、トランス遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードする場合もあり、内因性プロモーターの制御下にある位置へと挿入される場合もある。代替的に、トランス遺伝子は、遺伝子のイントロン、遺伝子のエクソン、プロモーター、または非コード領域などの遺伝子へと挿入することができる。
【0251】
トランス遺伝子配列をコードする核酸、例えば、RNAは、細胞の染色体へと、ランダムに挿入することができる。ランダムな組込みは、核酸、例えば、RNAを、細胞へと導入する任意の方法から得ることができる。例えば、方法は、電気穿孔、超音波穿孔、遺伝子銃の使用、リポトランスフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、デンドリマーの使用、マイクロインジェクション、ならびにアデノウイルスベクター、AAVベクター、およびレトロウイルスベクターを含むウイルスベクターの使用、ならびに/またはII群のリボザイムであり得るがこれらに限定されない。
【0252】
トランス遺伝子をコードするRNAはまた、レポーター遺伝子の活性化を介して、トランス遺伝子またはその発現産物の存在を検出し得るよう、レポーター遺伝子を含むようにデザインすることもできる。上記で開示したレポーター遺伝子など、任意のレポーター遺伝子を使用することができる。細胞培養物中で、レポーター遺伝子が活性化した細胞を選択することにより、トランス遺伝子を含有する細胞を選択することができる。
【0253】
挿入されるトランス遺伝子は、ゲノム内の標的二本鎖切断部位と類似する操作部位で挟んで、ポリ核酸から切り出し得るので、二本鎖切断領域に挿入することができる。場合によって、トランス遺伝子は、ウイルスにより導入することができる。例えば、AAVウイルスを用いて、細胞に、トランス遺伝子を感染させることができる。場合によって、修飾AAVウイルスまたは操作AAVウイルスを使用して、トランス遺伝子を、細胞へと導入することができる(
図83Aおよび
図83B)。修飾AAVまたは野生型AAVは、少なくとも1つのゲノム位置に対する相同性アームを含み得る(
図84〜
図86D)。
【0254】
トランス遺伝子をコードするRNAは、電気穿孔を介して、細胞へと導入することができる。RNAはまた、リポフェクション、感染、または形質転換を介して、細胞へと導入することもできる。電気穿孔および/またはリポフェクションを使用して、初代細胞にトランスフェクトすることができる。電気穿孔および/またはリポフェクションを使用して、初代造血系細胞にトランスフェクトすることができる。場合によって、RNAは、細胞内で、DNAへと逆転写することができる。次いで、DNA基質を、相同組換え反応において使用することができる。DNAはまた、相同組換えを使用せずに、細胞ゲノムへと導入することもできる。場合によって、DNAは、ゲノム内の標的二本鎖切断領域と相補的な操作部位で挟むことができる。場合によって、DNAは、ポリ核酸から切り出すことができるので、相同組換えを伴わずに、二本鎖切断領域に挿入することができる。
【0255】
トランス遺伝子の発現は、発現アッセイ、例えば、qPCRにより検証することもでき、RNAのレベルを測定することにより検証することもできる。発現レベルはまた、コピー数も示し得る。例えば、発現レベルが極度に高度である場合、これは、トランス遺伝子の1つを超えるコピーが、ゲノム内に組み込まれたことを指し示し得る。代替的に、高度な発現は、トランス遺伝子が、高度な転写領域内に、例えば、高度に発現するプロモーターの近傍に組み込まれたことを指し示し得る。発現はまた、ウェスタンブロット法を介するなど、タンパク質レベルを測定することにより検証することもできる。場合によって、スプライスアクセプターアッセイを、トランス遺伝子の組込みを測定するレポーター系と共に使用することができる(
図94)。
【0256】
b.部位特異的挿入
本明細書で開示される方法のうちのいずれかにおける、1または複数のトランス遺伝子の挿入は、部位特異的であり得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、プロモーターと隣接して、またはこの近傍に挿入することができる。別の例では、1または複数のトランス遺伝子は、遺伝子(例えば、PD−1遺伝子)のエクソンと隣接して、この近傍に、またはこの中に挿入することができる。このような挿入を使用して、トランス遺伝子(例えば、がん特異的TCRトランス遺伝子)をノックインしながら、同時に、別の遺伝子(例えば、PD−1遺伝子)を破壊することができる。別の例では、1または複数のトランス遺伝子は、遺伝子のイントロンと隣接して、この近傍に、またはこの中に挿入することができる。トランス遺伝子は、AAVウイルスベクターにより導入することができ、標的ゲノム位置へと組み込むことができる(
図87)。
【0257】
細胞のターゲティングされた遺伝子座の修飾は、標的遺伝子座に対する相同性を有するDNAを、細胞へと導入することによりもたらし得る。DNAは、構築物の組込みを含む細胞の選択を可能とするマーカー遺伝子を含み得る。標的ベクター内の相補的DNAは、標的遺伝子座において、染色体DNAを組み換えうる。マーカー遺伝子は、相補的DNA配列、3’側組換えアーム、および5’側組換えアームで挟むことができる。細胞内の複数の遺伝子座をターゲティングすることができる。例えば、複数のゲノムの修飾が、単一のステップで生じるように、1つまたは複数の標的遺伝子座に特異的な組換えアームを伴うトランス遺伝子を、一度に導入することができる。
【0258】
様々な酵素が、外来DNAの、宿主ゲノムへの挿入を触媒し得る。例えば、部位特異的リコンビナーゼは、顕著に異なる生化学的特性を伴う、2つのタンパク質ファミリー、すなわちチロシンリコンビナーゼ(この場合、DNAを、チロシン残基へと共有結合的に接合させる)と、セリンリコンビナーゼ(この場合共有結合的接合は、セリン残基において生じる)とへとクラスター分けすることができる。場合によって、リコンビナーゼは、Cre、fC31インテグラーゼ(Streptomyces属ファージfC31に由来するセリンリコンビナーゼ)、またはバクテリオファージ由来の部位特異的リコンビナーゼ(Flp、ラムダインテグラーゼ、バクテリオファージHK022リコンビナーゼ、バクテリオファージR4インテグラーゼ、およびファージTP901−1インテグラーゼを含む)を含み得る。
【0259】
構築物内では、発現制御配列もまた使用することができる。例えば、発現制御配列は、多種多様な細胞型内で発現する、構成的プロモーターを含み得る。組織特異的プロモーターもまた、使用することができ、発現を、特異的細胞系統へと導くのに使用することができる。
【0260】
部位特異的遺伝子編集は、CRISPR、TALEN(米国特許第14/193,037号を参照されたい)、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、またはMega−TAL、またはトランスポゾンベースの系など、非ウイルス的遺伝子編集を使用して達成することができる。例えば、PiggyBacトランスポゾン系(Moriarty, B.S.ら、「Modular assembly of transposon integratable multigene vectors using RecWay assembly」、Nucleic Acids Research、(8号):e92頁(2013年)を参照されたい)またはSleeping beautyトランスポゾン系(Aronovich, E.Lら、「The Sleeping Beauty transposon system: a non−viral vector for gene therapy」、Hum. Mol. Genet.、20巻(R1号):R14〜R20頁(2011年)を参照されたい)を使用することができる。
【0261】
部位特異的遺伝子編集はまた、相同組換えを伴わずに達成することもできる。外因性ポリ核酸は、相同組換えを使用せずに、細胞ゲノムへと導入することができる。場合によって、トランス遺伝子は、ゲノム内の標的二本鎖切断領域と相補的な操作部位で挟むことができる。トランス遺伝子は、ポリ核酸から切り出すことができるので、相同組換えを伴わずに、二本鎖切断領域に挿入することができる。
【0262】
c.トランス遺伝子
トランス遺伝子は、内因性遺伝子を、トランス遺伝子を伴わない場合より高レベルで発現させる、例えば、過剰発現させるために有用であり得る。加えて、トランス遺伝子を使用して、バックグラウンド、すなわち、トランス遺伝子をトランスフェクトされていない細胞より高レベルで、外因性遺伝子を発現させることができる。トランス遺伝子はまた、他の種類の遺伝子、例えば、ドミナントネガティブの遺伝子も包含し得る。
【0263】
トランス遺伝子は、トランス遺伝子の産物を産生するように、生物、細胞、組織、または臓器へと入れることができる。ポリ核酸は、トランス遺伝子を含み得る。ポリ核酸は、外因性受容体をコードし得る(
図57A、
図57B、および
図57C)。例えば、本明細書では、アデノシンA2a受容体、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1、Bリンパ球およびTリンパ球関連、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ1、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長細胞質テール、1、リンパ球活性化遺伝子3、プログラム細胞死1、A型肝炎ウイルス細胞受容体2、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー、またはナチュラルキラー細胞受容体2B4であるゲノム配列内のポリヌクレオチドと相補的な配列を有する、少なくとも2つの組換えアームで挟んだ、少なくとも1つの外因性T細胞受容体(TCR)配列を含むポリ核酸が開示される。1または複数のトランス遺伝子は、1または複数の破壊と組み合わせることができる。
【0264】
T細胞受容体(TCR)
T細胞は、1または複数のトランス遺伝子を含み得る。1または複数のトランス遺伝子は、抗原上の少なくとも1つのエピトープ(例えば、がんエピトープ)を認識し、これらに結合するか、または抗原上の突然変異エピトープに結合する、TCRアルファ鎖タンパク質、TCRベータ鎖タンパク質、TCRガンマ鎖タンパク質、および/またはTCRデルタ鎖タンパク質を発現させうる。TCRは、がんネオ抗原に結合し得る。TCRは、
図22および
図26に示される通り、機能的TCRであり得る。TCRは、本明細書で規定されるアルファ鎖配列またはベータ鎖配列(例えば、それぞれ、さらなるアルファ鎖またはベータ鎖と組み合わせた)のうちの1つだけを含む場合もあり、両方の鎖を含む場合もある。TCRは、本明細書で規定されるガンマ鎖配列またはデルタ鎖配列(例えば、それぞれ、さらなるガンマ鎖またはデルタ鎖と組み合わせた)のうちの1つだけを含む場合もあり、両方の鎖を含む場合もある。機能的TCRは、融合タンパク質内の、少なくとも実質的な生体活性を維持する。TCRのアルファ鎖および/またはベータ鎖の場合、これは、両方の鎖が、その生物学的機能、特に、TCRの特異的ペプチド−MHC複合体への結合、および/またはペプチド活性化における機能的シグナル伝達を果たす、T細胞受容体を形成する(非修飾アルファ鎖および/もしくはベータ鎖と共に、または別の融合タンパク質のアルファ鎖および/もしくはベータ鎖と共に)ことがなおも可能であることを意味する。TCRのガンマ鎖および/またはデルタ鎖の場合、これは、両方の鎖が、その生物学的機能、特に、TCRの特異的ペプチド−MHC複合体への結合、および/またはペプチド活性化における機能的シグナル伝達を果たす、T細胞受容体を形成する(非修飾ガンマ鎖および/もしくはデルタ鎖と共に、または別の融合タンパク質のガンマ鎖および/もしくはデルタ鎖と共に)ことがなおも可能であることを意味する。T細胞はまた、1または複数のTCRも含み得る。T細胞はまた、1つを超える標的に特異的な、単一のTCRも含み得る。
【0265】
TCRは、様々な方法を使用して同定することができる。場合によって、TCRは、全エクソームシーケンシングを使用して同定することができる。例えば、TCRは、全エクソームシーケンシングにより同定されたE805G突然変異を含有する、ERBB2IP(ErbB2 interacting protein)抗原をターゲティングし得る。代替的に、TCRは、自家レパートリーから同定することもでき、同種レパートリーから同定することもでき、異種レパートリーから同定することもできる。自家および同種の同定は、マルチステップの工程を伴いうる。自家および同種のいずれの同定においても、CD14で選択した単球から、樹状細胞(DC)を作製し、成熟の後、特異的ペプチドでパルスするか、またはこれをトランスフェクトすることができる。ペプチドでパルスしたDCを使用して、自家T細胞または同種T細胞を刺激することができる。限界希釈法により、単一細胞のペプチド特異的T細胞クローンを、これらのペプチドでパルスしたT細胞株から単離することができる。目的のTCRを、同定および単離することができる。目的のTCRのα鎖およびβ鎖は、クローニングし、コドン最適化し、ベクターまたはトランス遺伝子へとコードすることができる。TCRの一部は、置き換えることができる。例えば、ヒトTCRの定常領域は、対応するマウス領域で置き換えることができる。ヒト定常領域の、対応するマウス領域による置換を実施して、TCRの安定性を増大させることができる。TCRはまた、ex vivoにおいて、高アビディティーまたは超生理学的アビディティーで同定することもできる。
【0266】
腫瘍特異的TCRの作製に成功するには、適切な標的配列を同定すべきである。配列は、希少な腫瘍反応性T細胞の単離により見出すこともでき、これが可能でない場合、代替的な技術を利用して、高活性の抗腫瘍T細胞抗原を作製することもできる。1つの手法は、ヒト白血球抗原(HLA)系を発現するトランスジェニックマウスを、ヒト腫瘍タンパク質で免疫化して、ヒト抗原に対するTCRを発現するT細胞を作製するステップを伴いうる(例えば、Stanislawskiら、「Circumventing tolerance to a human MDM2−derived tumor antigen by TCR gene transfer」、Nature Immunology 2巻、962〜970頁(2001年)を参照されたい)。代替的な手法は、腫瘍特異的T細胞を、腫瘍の寛解を経つつある患者から単離し、反応性のTCR配列を、疾患は共有するが、非応答性であり得る、別の患者に由来するT細胞へと移入し得る、同種TCR遺伝子移入であり得る(de Witte, M. A.ら、「Targeting self−antigens through allogeneic TCR gene transfer」、Blood、108巻、870〜877頁(2006年))。最後に、in vitro技術を利用して、TCRの配列を変更し、反応性の弱い腫瘍特異的TCRの、標的抗原との相互作用(アビディティー)の強度を増大させることにより、それらの腫瘍殺滅活性を増強することができる(Schmid, D. A.ら、「Evidence for a TCR affinity threshold delimiting maximal CD8 T cell function」、J. Immunol.、184巻、4936〜4946頁(2010年))。代替的に、TCRは、全エクソームシーケンシングを使用して同定することができる。
【0267】
本機能的TCR融合タンパク質は、MHCにより提示されたエピトープに対しするものとすることができる。MHCは、クラスI分子、例えば、HLA−Aであり得る。MHCは、クラスII分子であり得る。本機能的TCR融合タンパク質はまた、抗原をターゲティングするために、ペプチドベースの機能またはペプチドにガイドされる機能も有し得る。本機能的TCRは、連結することができ、例えば、本機能的TCRは、2A配列と連結することができる。本機能的TCRはまた、
図26に示される通り、フリン−V5−SGSGF2Aと連結することもできる。本機能的TCRはまた、哺乳動物性構成要素も含有し得る。例えば、本機能的TCRは、マウス定常領域を含有し得る。本機能的TCRはまた、場合によって、ヒト定常領域も含有し得る。ペプチドにガイドされる機能は、原理的に、ペプチド配列を、TCRへと導入し、これらのペプチド配列により、腫瘍をターゲティングすることにより達成することができる。これらのペプチドは、ファージディスプレイライブラリーまたは合成ペプチドライブラリーに由来し得る(例えば、Arap, W.ら、「Cancer Treatment by Targeted Drug Delivery to Tumor Vasculature in a Mouse Model」、Science、279巻、377〜380頁(1998年);Scott, C.P.ら、「Structural requirements for the biosynthesis of backbone cyclic peptide libraries」、8巻:801〜815頁(2001年)を参照されたい)。とりわけ、乳癌、前立腺癌、および結腸癌に特異的なペプチドのほか、血管新生に特異的なペプチドも、既に単離に成功しており、本発明で使用することができる(Samoylova, T. I.ら、「Peptide Phage Display: Opportunities for Development of Personalized Anti−Cancer Strategies」、Anti−Cancer Agents in Medicinal Chemistry、6巻(1号):9〜17頁(2006年9月))。本機能的TCR融合タンパク質は、突然変異させたがんエピトープまたは突然変異させたがん抗原に対するものとすることができる。
【0268】
使用することが可能であり、具体的に想定されるトランス遺伝子は、本明細書で開示される遺伝子、例えば、TCR遺伝子に対する、一定の同一性および/または相同性を呈する遺伝子を含み得る。したがって、遺伝子は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の相同性、または少なくともほぼこれらの比率の相同性(核酸レベルまたはタンパク質レベルで)を呈する場合、トランス遺伝子として使用し得ることが想定される。また、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性、または少なくともほぼこれらの比率の同一性(核酸レベルまたはタンパク質レベルで)を呈する遺伝子は、トランス遺伝子として使用し得ることも想定される。場合によって、トランス遺伝子は、機能的であり得る。
【0269】
トランス遺伝子は、細胞へと組み込むことができる。例えば、トランス遺伝子は、生物の生殖細胞系列へと組み込むことができる。細胞へと挿入されると、トランス遺伝子は、メッセンジャーRNA(mRNA)のコピーである、相補的DNA(cDNA)セグメントの場合もあり、ゲノムDNA(イントロンを伴うかまたは伴わない)の、その元の領域内に存在する遺伝子自体の場合もある。Xタンパク質のトランス遺伝子とは、Xタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むトランス遺伝子を指す場合がある。場合によって、本明細書で使用される、Xタンパク質をコードするトランス遺伝子は、Xタンパク質のアミノ酸配列の100%または約100%をコードするトランス遺伝子であり得る。他の場合には、Xタンパク質をコードするトランス遺伝子は、Xタンパク質のアミノ酸配列のうちの、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、もしくは1%、または少なくともほぼこれらの比率のアミノ酸配列をコードするトランス遺伝子であり得る。トランス遺伝子の発現は最終的に、機能的タンパク質、例えば、部分的に、完全に、または過剰に機能的なタンパク質を結果としてもたらし得る。上記で論じた通り、部分配列を発現させる場合、最終結果は、非機能的タンパク質またはドミナントネガティブのタンパク質であり得る。非機能的タンパク質またはドミナントネガティブのタンパク質はまた、機能的(内因性または外因性)タンパク質と競合する場合もある。トランス遺伝子はまた、RNA(例えば、mRNA、shRNA、siRNA、またはマイクロRNA)もコードし得る。場合によって、トランス遺伝子が、mRNAをコードする場合、これを、ポリペプチド(例えば、タンパク質)へと翻訳することができる。したがって、トランス遺伝子は、タンパク質をコードし得ることが想定される。場合によって、トランス遺伝子は、タンパク質をコードする場合もあり、タンパク質の部分をコードする場合もある。加えて、タンパク質は、野生型ポリペプチドと比較して、1または複数の突然変異(例えば、欠失、挿入、アミノ酸の置換、または再配列)を有し得る。タンパク質は、天然ポリペプチドの場合もあり、人工ポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)の場合もある。トランス遺伝子は、2つまたはそれよりも多いポリペプチドにより形成される融合タンパク質をコードし得る。T細胞は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくはそれよりも多いトランス遺伝子を含むか、またはほぼこれらの数のトランス遺伝子を含み得る。例えば、T細胞は、TCR遺伝子を含む、1または複数のトランス遺伝子を含み得る。
【0270】
トランス遺伝子(例えば、TCR遺伝子)は、セーフハーバー遺伝子座内に挿入することができる。セーフハーバーは、トランス遺伝子が、内因性活性を撹乱されずに、組み込まれ、機能する、ゲノム位置を含み得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、CCR5、hROSA26のうちのいずれか1つ、および/またはこれらの任意の組合せへと挿入することができる。トランス遺伝子(例えば、TCR遺伝子)はまた、内因性免疫チェックポイント遺伝子内に挿入することもできる。内因性免疫チェックポイント遺伝子は、刺激性チェックポイント遺伝子の場合もあり、阻害性チェックポイント遺伝子の場合もある。トランス遺伝子(例えば、TCR遺伝子)はまた、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、またはICOSなど、刺激性チェックポイント遺伝子内に挿入することもできる。免疫チェックポイント遺伝子の位置は、Genome Reference Consortium Human Build 38 patch release 2(GRCh38.p2)アセンブリーを使用して提示する。トランス遺伝子(例えば、TCR遺伝子)はまた、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、VISTAまたはCISHなど、内因性阻害性チェックポイント遺伝子内に挿入することもできる。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、ICOS、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、VISTA、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、PHD1、PHD2、PHD3、CCR5、CISH、PPP1R12Cのうちのいずれか1つ、および/またはこれらの任意の組合せへと挿入することができる。トランス遺伝子は、内因性TCR遺伝子内に挿入することができる。トランス遺伝子は、コードゲノム領域内に挿入することができる。トランス遺伝子はまた、非コードゲノム領域内に挿入することもできる。トランス遺伝子は、相同組換えを伴わずに、ゲノムへと挿入することができる。トランス遺伝子の挿入は、細胞内ゲノム移植のステップを含み得る。トランス遺伝子は、PD−1遺伝子に挿入することができる(
図46Aおよび
図46B)。場合によって、1つを超えるガイドは、免疫チェックポイントをターゲティングし得る(
図47)。他の場合には、トランス遺伝子は、CTLA−4遺伝子に組み込むことができる(
図48および
図50)。他の場合には、トランス遺伝子は、CTLA−4遺伝子およびPD−1遺伝子に組み込むことができる(
図49)。トランス遺伝子はまた、AAVS1などのセーフハーバーへと組み込むこともできる(
図96および
図97)。トランス遺伝子は、AAV組込み部位へと挿入することができる。場合によって、AAV組込み部位は、セーフハーバーであり得る。第5染色体上のAAVS2または第3染色体上のAAVS3など、代替的なAAV組込み部位も存在し得る。AAVS2、AAVS3、AAVS4、AAVS5、AAVS6、AAVS7、AAVS8など、さらなるAAV組込み部位もまた、TCRなどの外因性受容体のための、可能な組込み部位と考えられる。本明細書で使用されるAAVSとは、AAVS1ならびに類縁のアデノ随伴ウイルス(AAVS)組込み部位を指す場合がある。
【0271】
キメラ抗原受容体は、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、およびT細胞の活性化を制御するシグナル伝達領域から構成され得る。細胞外抗原認識ドメインは、マウスモノクローナル抗体に由来する場合もあり、ヒト化モノクローナル抗体に由来する場合もあり、完全ヒトモノクローナル抗体に由来する場合もある。具体的には、細胞外抗原認識ドメインは、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域であって、一本鎖可変断片(scFv)の形態でクローニングされ、ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインを介して、T細胞受容体(TCR)複合体の細胞内シグナル伝達分子および少なくとも1つの共刺激性分子へと結合した可変領域からなる。場合によって、共刺激性ドメインは使用しない。
【0272】
本開示のCARは、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞の細胞膜内に存在することが可能であり、この場合、適する哺乳動物細胞は、細胞傷害性細胞、Tリンパ球、幹細胞、幹細胞の子孫細胞、前駆細胞、前駆細胞の子孫細胞、およびNK細胞を含むがこれらに限定されない。真核細胞の細胞膜内に存在する場合、CARは、それが結合する標的の存在下で活性であり得る。標的は、膜上で発現し得る。標的はまた、可溶性でもあり得る(例えば、細胞に結合していない場合もある)。標的は、標的細胞など、細胞の表面上に存在し得る。標的は、脂質二重層など、固体表面上に提示することができる。標的は、可溶性抗原など、可溶性であり得る。標的は、抗原であり得る。抗原は、標的細胞など、細胞の表面上に存在し得る。抗原は、脂質二重層など、固体表面上に提示することができる。場合によって、標的は、抗原のエピトープであり得る。場合によって、標的は、がんネオ抗原であり得る。
近年におけるいくつかの進歩は、場合によって、抗腫瘍T細胞応答を誘発する、腫瘍特異的突然変異の同定に焦点を当てている。例えば、これらの内因性突然変異は、全エクソーム−シーケンシング法を使用して同定することができる(Tran Eら、「Cancer immunotherapy based on mutation−specific CD4+ T cells in a patient with epithelial cancer」、Science、344巻:641〜644頁(2014年))。したがって、CARは、腫瘍特異的ネオ抗原を標的とするscFvから構成され得る。
【0273】
方法は、in vitroアッセイ(例えば、全エクソームシーケンシング)を使用して、がん患者から得られた試料に由来する、がん関連標的配列を同定し得る。方法はさらに、標的配列を認識する第1のT細胞に由来するTCRトランス遺伝子も同定し得る。がん関連標的配列およびTCRトランス遺伝子は、同じ患者の試料から得ることもでき、異なる患者の試料から得ることもできる。がん関連標的配列は、CARトランス遺伝子上でコードされて、CARを、標的配列に特異的とし得る。方法は、CARトランス遺伝子を含む核酸を、T細胞の膜を越えて、効率的に送達し得る。場合によって、第1のT細胞と、第2のT細胞とは、同じ患者から得ることができる。他の場合には、第1のT細胞と、第2のT細胞とは、異なる患者から得ることができる。他の場合には、第1のT細胞と、第2のT細胞とは、異なる患者から得ることができる。方法は、操作T細胞を作製するように、非ウイルス性組込み系またはウイルス性組込み系を使用して、CARトランス遺伝子を、安全かつ効率的に、T細胞のゲノムへと組み込むことが可能であり、したがって、CARトランス遺伝子を、操作T細胞内で、信頼できる形で発現させることができる。
【0274】
T細胞は、1または複数の遺伝子の破壊、および1または複数のトランス遺伝子を含み得る。例えば、それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子は、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、ICOS、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、PHD1、PHD2、PHD3、VISTA、CISH、PPP1R12Cのうちのいずれか1つ、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、多様な組合せを例示するためだけに述べると、それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子は、PD−1を含むことが可能であり、1または複数のトランス遺伝子は、TCRを含む。別の例では、それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、CTLA−4も含むことが可能であり、1または複数のトランス遺伝子は、TCRを含む。
【0275】
T細胞は、1または複数の遺伝子の抑制、および1または複数のトランス遺伝子を含み得る。例えば、それらの発現が抑制される、1または複数の遺伝子は、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、ICOS、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、PHD1、PHD2、PHD3、VISTA、CISH、PPP1R12Cのうちのいずれか1つ、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、多様な組合せを例示するためだけに述べると、それらの発現が抑制される、1または複数の遺伝子は、PD−1を含むことが可能であり、1または複数のトランス遺伝子は、TCRを含む。別の例では、それらの発現が抑制される、1または複数の遺伝子はまた、CTLA−4も含むことが可能であり、1または複数のトランス遺伝子は、TCRを含む。
【0276】
T細胞はまた、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくはそれよりも多いドミナントネガティブのトランス遺伝子も含み得るか、または、ほぼこれらの数のドミナントネガティブのトランス遺伝子も含み得る。ドミナントネガティブのトランス遺伝子の発現は、ドミナントネガティブのトランス遺伝子の野生型対応物の発現および/または機能を抑制し得る。したがって、例えば、ドミナントネガティブのトランス遺伝子Xを含むT細胞は、その発現が抑制されるX遺伝子を含む、異なるT細胞と比較して、類似の表現型を有する。1または複数のドミナントネガティブのトランス遺伝子は、ドミナントネガティブのCD27、ドミナントネガティブのCD40、ドミナントネガティブのCD122、ドミナントネガティブのOX40、ドミナントネガティブのGITR、ドミナントネガティブのCD137、ドミナントネガティブのCD28、ドミナントネガティブのICOS、ドミナントネガティブのA2AR、ドミナントネガティブのB7−H3、ドミナントネガティブのB7−H4、ドミナントネガティブのBTLA、ドミナントネガティブのCTLA−4、ドミナントネガティブのIDO、ドミナントネガティブのKIR、ドミナントネガティブのLAG3、ドミナントネガティブのPD−1、ドミナントネガティブのTIM−3、ドミナントネガティブのVISTA、ドミナントネガティブのPHD1、ドミナントネガティブのPHD2、ドミナントネガティブのPHD3、ドミナントネガティブのCISH、ドミナントネガティブのCCR5、ドミナントネガティブのHPRT、ドミナントネガティブのAAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、ドミナントネガティブのPPP1R12C、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0277】
また、遺伝子発現を抑制し得る、例えば、遺伝子をノックダウンし得る、1または複数の核酸をコードする、1または複数のトランス遺伝子を含むT細胞も提示される。遺伝子発現を抑制するRNAは、shRNA、siRNA、RNAi、およびマイクロRNAを含むがこれらに限定されない。例えば、siRNA、RNAi、および/またはマイクロRNAを、T細胞へと送達して、遺伝子発現を抑制することができる。さらに、T細胞は、shRNAをコードする、1または複数のトランス遺伝子を含み得る。shRNAは、特定の遺伝子に特異的であり得る。例えば、shRNAは、本出願で記載される任意の遺伝子であって、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、ICOS、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、VISTA、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、PHD1、PHD2、PHD3、CCR5、CISH、PPP1R12C、および/またはこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない遺伝子に特異的であり得る。
【0278】
1または複数のトランス遺伝子は、異なる種に由来し得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、ヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、ブタ遺伝子、ウシ遺伝子、イヌ遺伝子、ネコ遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子、またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、トランス遺伝子は、ヒト遺伝子的配列を有するヒトに由来し得る。1または複数のトランス遺伝子は、ヒト遺伝子を含み得る。場合によって、1または複数のトランス遺伝子は、アデノウイルス遺伝子ではない。
【0279】
トランス遺伝子は、上記で記載した通り、T細胞のゲノムへと、ランダムに挿入することもでき、部位特異的に挿入することもできる。例えば、トランス遺伝子は、T細胞のゲノム内のランダムな遺伝子座へと挿入することができる。これらのトランス遺伝子は、機能的、例えば、ゲノム内のいずれの場所に挿入されても完全に機能的であり得る。例えば、トランス遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードする場合もあり、内因性プロモーターの制御下にある位置へと挿入される場合もある。代替的に、トランス遺伝子は、遺伝子のイントロンもしくは遺伝子のエクソン、プロモーター、または非コード領域などの遺伝子へと挿入することができる。トランス遺伝子は、挿入が、遺伝子、例えば、内因性チェックポイントを破壊するように挿入することができる。トランス遺伝子の挿入は、内因性チェックポイント領域を含み得る。トランス遺伝子の挿入は、トランス遺伝子を挟みうる組換えアームでガイドすることができる。
【0280】
ある場合には、トランス遺伝子の1つを超えるコピーを、ゲノム内の、1つを超えるランダムな遺伝子座へと挿入することができる。例えば、複数のコピーを、ゲノム内のランダムな遺伝子座へと挿入することができる。これは、トランス遺伝子を、ランダムに、1回挿入する場合と比較した、全発現の増大をもたらし得る。代替的に、トランス遺伝子のコピーを、ある遺伝子へと挿入し、トランス遺伝子の別のコピーを、異なる遺伝子へと挿入することもできる。トランス遺伝子は、T細胞のゲノム内の特異的遺伝子座へと挿入され得るようにターゲティングすることができる。
【0281】
トランス遺伝子の発現は、1または複数のプロモーターにより制御することができる。プロモーターは、遍在性プロモーター、構成的プロモーター(関連遺伝子の連続的転写を可能とする非調節性プロモーター)、組織特異的プロモーター、または誘導性プロモーターであり得る。プロモーターと隣接して、またはこの近傍に挿入されるトランス遺伝子の発現は、調節することができる。例えば、トランス遺伝子は、遍在性プロモーターの近傍に、またはこの隣に挿入することができる。一部の遍在性プロモーターは、CAGGSプロモーター、hCMVプロモーター、PGKプロモーター、SV40プロモーター、またはROSA26プロモーターであり得る。
【0282】
プロモーターは、内因性プロモーターの場合もあり、外因性プロモーターの場合もある。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、内因性または外因性のROSA26プロモーターと隣接して、またはこれらの近傍に挿入することができる。さらに、プロモーターは、T細胞に特異的であり得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、ブタROSA26プロモーターと隣接して、またはこれらの近傍に挿入することができる。
【0283】
組織特異的プロモーターまたは細胞特異的プロモーターを使用して、発現の位置を制御することができる。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、組織特異的プロモーターと隣接して、またはこれらの近傍に挿入することができる。組織特異的プロモーターは、FABPプロモーター、Lckプロモーター、CamKIIプロモーター、CD19プロモーター、ケラチンプロモーター、アルブミンプロモーター、aP2プロモーター、インスリンプロモーター、MCKプロモーター、MyHCプロモーター、WAPプロモーター、またはCol2Aプロモーターであり得る。
【0284】
組織特異的プロモーターまたは細胞特異的プロモーターを使用して、発現の位置を制御することができる。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、組織特異的プロモーターと隣接して、またはこれらの近傍に挿入することができる。組織特異的プロモーターは、FABPプロモーター、Lckプロモーター、CamKIIプロモーター、CD19プロモーター、ケラチンプロモーター、アルブミンプロモーター、aP2プロモーター、インスリンプロモーター、MCKプロモーター、MyHCプロモーター、WAPプロモーター、またはCol2Aプロモーターであり得る。
【0285】
誘導性プロモーターも同様に、使用することができる。これらの誘導性プロモーターは、所望の場合、誘導剤を添加または除去することにより、オンにすることもでき、オフにすることもできる。誘導性プロモーターは、Lac、tac、trc、trp、araBAD、phoA、recA、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、PL、cspA、T7、VHB、Mx、および/またはTrexであり得るがこれらに限定されないことが想定される。
【0286】
細胞は、内因性遺伝子をノックアウトするように操作することができる。ノックアウトされ得る内因性遺伝子は、免疫チェックポイント遺伝子を含み得る。免疫チェックポイント遺伝子は、刺激性チェックポイント遺伝子の場合もあり、阻害性チェックポイント遺伝子の場合もある。免疫チェックポイント遺伝子の位置は、Genome Reference Consortium Human Build 38 patch release 2(GRCh38.p2)アセンブリーを使用して提示することができる。
【0287】
ノックアウトされる遺伝子は、データベースを使用して選択することができる。場合によって、ある特定の内因性遺伝子は、ゲノム操作により適する。データベースは、エピジェネティクスにより許容性の標的部位を含み得る。データベースは、場合によって、ENCODE(Encyclopedia of DNA Elements)(http://www.genome.gov/10005107)であり得る。データベースは、ゲノム操作の許容性がより大きい可能性がある、オープンクロマチンを伴う領域を同定し得る。
【0288】
T細胞は、1または複数の遺伝子の破壊を含み得る。例えば、それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子は、アデノシンA2a受容体(ADORA)、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1(VTCN1)、Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、KIR3DL1(キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長細胞質テール、1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD−1)、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、CISH(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、アデノ随伴ウイルス組込み部位(AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など))、またはケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(遺伝子/偽遺伝子)(CCR5)、CD160分子(CD160)、TIGIT(T−cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)、CD96分子(CD96)、CRTAM(cytotoxic and regulatory T−cell molecule)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、シアル酸結合Ig様レクチン7(SIGLEC7)、シアル酸結合Ig様レクチン9(SIGLEC9)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10a(TNFRSF10A)、カスパーゼ8(CASP8)、カスパーゼ10(CASP10)、カスパーゼ3(CASP3)、カスパーゼ6(CASP6)、カスパーゼ7(CASP7)、FADD(Fas associated via death domain)、FAS(Fas cell surface death receptor)、形質転換増殖因子ベータ受容体II(TGFBRII)、形質転換増殖因子ベータ受容体I(TGFBR1)、SMADファミリーメンバー2(SMAD2)、SMADファミリーメンバー3(SMAD3)、SMADファミリーメンバー4(SMAD4)、SKIがん原遺伝子(SKI)、SKI様がん原遺伝子(SKIL)、TGIF1(TGFB induced factor homeobox 1)、インターロイキン10受容体サブユニットアルファ(IL10RA)、インターロイキン10受容体サブユニットベータ(IL10RB)、HMOX2(heme oxygenase 2)、インターロイキン6受容体(IL6R)、IL6ST(interleukin 6 signal transducer)、c−srcチロシンキナーゼ(CSK)、PAG1(phosphoprotein membrane anchor with glycosphingolipid microdomains 1)、SIT1(signaling threshold regulating transmembrane adaptor 1)、FOXP3(forkhead box P3)、PRドメイン1(PRDM1)、BATF(basic leucine zipper transcription factor, ATF−like)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1アルファ2(GUCY1A2)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1アルファ3(GUCY1A3)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1ベータ2(GUCY1B2)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1ベータ3(GUCY1B3)、CISH(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、タンパク質のプロリルヒドロキシラーゼドメイン(PHD1、PHD2、PHD3)ファミリーのうちのいずれか1つ、またはこれらの任意の組合せを含み得る。場合によって、内因性TCRもまた、ノックアウトすることができる。例えば、多様な組合せを例示するためだけに述べると、それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子は、PD−1、CTLA−4、およびCISHを含み得る。
【0289】
T細胞は、1または複数の遺伝子の抑制を含み得る。例えば、それらの発現が抑制される、1または複数の遺伝子は、アデノシンA2a受容体(ADORA)、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1(VTCN1)、Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、KIR3DL1(キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長細胞質テール、1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD−1)、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、CISH(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、アデノ随伴ウイルス組込み部位(AAVS1)、またはケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5(遺伝子/偽遺伝子)(CCR5)、CD160分子(CD160)、TIGIT(T−cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)、CD96分子(CD96)、CRTAM(cytotoxic and regulatory T−cell molecule)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、シアル酸結合Ig様レクチン7(SIGLEC7)、シアル酸結合Ig様レクチン9(SIGLEC9)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10a(TNFRSF10A)、カスパーゼ8(CASP8)、カスパーゼ10(CASP10)、カスパーゼ3(CASP3)、カスパーゼ6(CASP6)、カスパーゼ7(CASP7)、FADD(Fas associated via death domain)、FAS(Fas cell surface death receptor)、形質転換増殖因子ベータ受容体II(TGFBRII)、形質転換増殖因子ベータ受容体I(TGFBR1)、SMADファミリーメンバー2(SMAD2)、SMADファミリーメンバー3(SMAD3)、SMADファミリーメンバー4(SMAD4)、SKIがん原遺伝子(SKI)、SKI様がん原遺伝子(SKIL)、TGIF1(TGFB induced factor homeobox 1)、インターロイキン10受容体サブユニットアルファ(IL10RA)、インターロイキン10受容体サブユニットベータ(IL10RB)、HMOX2(heme oxygenase 2)、インターロイキン6受容体(IL6R)、IL6ST(interleukin 6 signal transducer)、c−srcチロシンキナーゼ(CSK)、PAG1(phosphoprotein membrane anchor with glycosphingolipid microdomains 1)、SIT1(signaling threshold regulating transmembrane adaptor 1)、FOXP3(forkhead box P3)、PRドメイン1(PRDM1)、BATF(basic leucine zipper transcription factor, ATF−like)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1アルファ2(GUCY1A2)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1アルファ3(GUCY1A3)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1ベータ2(GUCY1B2)、可溶型グアニル酸シクラーゼ1ベータ3(GUCY1B3)、タンパク質のプロリルヒドロキシラーゼドメイン(PHD1、PHD2、PHD3)ファミリー、CISH(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)のうちのいずれか1つ、またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、多様な組合せを例示するためだけに述べると、それらの発現が抑制される、1または複数の遺伝子は、PD−1、CTLA−4、およびCISHを含み得る。
【0290】
d.がん標的
操作細胞は、抗原をターゲティングし得る。操作細胞はまた、エピトープもターゲティングし得る。抗原は、腫瘍細胞抗原であり得る。エピトープは、腫瘍細胞エピトープであり得る。このような腫瘍細胞エピトープは、突然変異から生じる腫瘍に由来する抗原(ネオ抗原またはネオエピトープ)、共通の腫瘍特異的抗原、分化抗原、および腫瘍内で過剰発現する抗原など、多種多様な腫瘍抗原に由来し得る。これらの抗原は、例えば、少数を挙げれば、アルファ−アクチニン−4、ARTC1、BCR−ABL融合タンパク質(b3a2)、B−RAF、CASP−5、CASP−8、ベータ−カテニン、Cdc27、CDK4、CDKN2A、COA−1、dek−can融合タンパク質、EFTUD2、伸長因子2、ETV6−AML1融合タンパク質、FLT3−ITD、FN1、GPNMB、LDLR−フコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質、HLA−A2d、HLA−Al ld、hsp70−2、KIAAO205、MART2、ME1、MUM−1f、MUM−2、MUM−3、neo−PAP、ミオシンクラスI、NFYC、OGT、OS−9、p53、pml−RARアルファ融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K−ras、N−ras、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT−SSX1融合タンパク質またはSYT−SSX2融合タンパク質、TGF−ベータRII、トリオースリンサンイソメラーゼ、BAGE−1、GAGE−1、2、8、Gage 3、4、5、6、7、GnTVf、HERV−K−MEL、KK−LC−1、KM−HN−1、LAGE−1、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−Al2、MAGE−C2、mucink、NA−88、NY−ESO−1/LAGE−2、SAGE、Sp17、SSX−2、SSX−4、TAG−1、TAG−2、TRAG−3、TRP2−INT2g、XAGE−1b、CEA、gp100/Pmel17、カリクレイン4、マンマグロビンA、Melan−A/MART−1、NY−BR−1、OA1、PSA、RAB38/NY−MEL−1、TRP−1/gp75、TRP−2、チロシナーゼ、adipophilin、AIM−2、ALDH1A1、BCLX(L)、BCMA、BING−4、CPSF、サイクリンD1、DKK1、ENAH(hMena)、EP−CAM、EphA3、EZH2、FGF5、G250/MN/CAIX、HER−2/neu、IL13Rアルファ2、腸カルボキシルエステラーゼ、アルファフェトタンパク質、M−CSFT、MCSP、mdm−2、MMP−2、MUC1、p53、PBF、PRAME、PSMA、RAGE−1、RGS5、RNF43、RU2AS、セセルニン1、SOX10、STEAP1、スルビビン、テロメラーゼ、VEGF、および/またはWT1に由来し得る。腫瘍関連抗原は、宿主が正常では発現しない抗原の場合もあり;突然変異しているか、切断されているか、ミスフォールディングしているか、または他の形で、宿主が正常では発現しない分子の異常な兆候の場合もあり;正常でも発現するが、異常な高レベルで発現する分子と同一な場合もあり;異常な関連または環境で発現する場合もある。腫瘍関連抗原は、例えば、タンパク質もしくはタンパク質断片、複合体炭水化物、ガングリオシド、ハプテン、核酸、他の生物学的分子、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0291】
場合によって、標的は、ネオ抗原またはネオエピトープである。例えば、ネオ抗原は、ERBB2IP内のE805G突然変異であり得る。場合によって、ネオ抗原およびネオエピトープは、全エクソームシーケンシングにより同定することができる。場合によって、ネオ抗原標的およびネオエピトープ標的は、消化器がん細胞が発現し得る。ネオ抗原およびネオエピトープは、上皮癌において発現し得る。
【0292】
e.他の標的
エピトープは、間質エピトープであり得る。このようなエピトープは、腫瘍微小環境の間質上にあり得る。抗原は、間質抗原であり得る。このような抗原は、腫瘍微小環境の間質上にあり得る。これらの抗原およびこれらのエピトープは、少数を挙げれば、例えば、腫瘍内皮細胞、腫瘍血管系、腫瘍線維芽細胞、腫瘍周皮細胞、腫瘍間質、および/または腫瘍間葉細胞において存在し得る。これらの抗原は、例えば、CD34、MCSP、FAP、CD31、PCNA、CD117、CD40、MMP4、および/またはテネイシンを含み得る。
【0293】
f.遺伝子の破壊
トランス遺伝子の挿入は、遺伝子の破壊を伴って行うこともでき、これを伴わずに行うこともできる。トランス遺伝子を、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、ICOS、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、VISTA、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、CCR5、PPP1R12C、またはCISHなどの遺伝子と隣接して、これらの近傍に、またはこれらの中に挿入して、遺伝子の活性または発現を低減するかまたは消失させることができる。例えば、がん特異的TCRトランス遺伝子を、遺伝子(例えば、PD−1)と隣接して、この近傍に、またはこの中に挿入して、遺伝子の活性または発現を低減するかまたは消失させることができる。トランス遺伝子の挿入は、内因性TCR遺伝子において行うことができる。
【0294】
遺伝子の破壊は、任意の特定の遺伝子の破壊であり得る。本出願内の遺伝子の遺伝子相同体(例えば、遺伝子の任意の哺乳動物形)を対象とすることが想定される。例えば、破壊される遺伝子は、本明細書で開示される遺伝子、例えば、CD27、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、CD28、ICOS、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、VISTA、HPRT、CCR5、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、PPP1R12C、またはCISHに対する、一定の同一性および/または相同性を呈し得る。したがって、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の相同性を呈するか、またはほぼこれらの比率の相同性(核酸レベルまたはタンパク質レベルで)を呈する遺伝子は、破壊し得ることが想定される。また、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を呈するか、またはほぼこれらの比率の同一性(核酸レベルまたはタンパク質レベルで)を呈する遺伝子は、破壊し得ることも想定される。当技術分野では、一部の遺伝子相同体は公知であるが、場合によって、相同体は公知ではない。しかし、哺乳動物の間で相同な遺伝子は、NCBIのBLASTなど、公表されているデータベースを使用して、核酸(DNAまたはRNA)配列またはタンパク質配列を比較することにより見出すことができる。
【0295】
破壊され得る遺伝子は、遺伝子ファミリーのメンバーであり得る。例えば、破壊され得る遺伝子は、がん免疫療法の治療可能性を改善し得る。場合によって、遺伝子は、CISHであり得る。CISH遺伝子は、SOCS(suppressor of cytokine signaling)タンパク質ファミリーまたはSTAT誘導性STATインヒビター(SSI)タンパク質ファミリーとしてもまた公知である、サイトカイン誘導性STATインヒビター(CIS)タンパク質ファミリーのメンバーであり得る(例えば、Palmerら、Cish actively silences TCR signaling in CD8+ T cells to maintain tumor tolerance.、The Journal of Experimental Medicine、202巻(12号)、2095〜2113頁(2015年)を参照されたい)。遺伝子は、サイトカインによるシグナル伝達を調節し得る、古典的な負のフィードバック系の一部を形成し得る、SOCSタンパク質ファミリーの一部であり得る。破壊される遺伝子は、CISHであり得る。CISHは、エリスロポエチン、プロラクチン、またはインターロイキン3(IL−3)受容体など、JAK−STAT5経路を介してシグナル伝達するサイトカインの負の調節に関与し得る。遺伝子は、そのチロシンリン酸化を抑制することにより、STAT5のトランス活性化を阻害し得る。CISHファミリーメンバーは、サイトカインによるシグナル伝達の、サイトカイン誘導性の負の調節因子であることが公知である。遺伝子の発現は、造血系細胞内のIL2、IL3、GM−CSF、またはEPOにより誘導することができる。プロテアソームを媒介する、遺伝子のタンパク質の分解は、エリスロポエチン受容体の不活化に関与し得る。場合によって、ターゲティングされる遺伝子は、腫瘍特異的T細胞内で発言し得る。ターゲティングされる遺伝子は、破壊されると、操作細胞の、抗原に関連する腫瘍への浸潤を増大させることができる。場合によって、ターゲティングされる遺伝子は、CISHであり得る。
【0296】
破壊され得る遺伝子は、TCRシグナル伝達、機能的アビディティー、またはがんに対する免疫の減衰に関与し得る。場合によって、破壊される遺伝子は、TCRが刺激されると、上方調節される。遺伝子は、細胞の拡大、機能的アビディティー、またはサイトカインの多機能性の阻害に関与し得る。遺伝子は、細胞によるサイトカインの産生を負に調節することに関与し得る。例えば、遺伝子は、例えば、エフェクターサイトカイン、IFN−ガンマ、および/またはTNFの産生の阻害に関与し得る。遺伝子はまた、TCRの刺激の後で、IL−2など、補助的サイトカインの発現の阻害にも関与し得る。このような遺伝子は、CISHであり得る。
【0297】
遺伝子の抑制はまた、多数の方式で行うこともできる。例えば、遺伝子の発現は、ノックアウトにより抑制することもでき、遺伝子のプロモーターを変更することにより抑制することもでき、かつ/または干渉性RNAを投与することにより抑制することもできる。これは、生物レベルで行うこともでき、組織レベル、臓器レベル、および/または細胞レベルで行うこともできる。細胞内、組織内、および/または臓器内で、1または複数の遺伝子をノックダウンする場合、1または複数の遺伝子は、RNA干渉性試薬、例えば、siRNA、shRNA、またはマイクロRNAを投与することにより抑制することができる。例えば、shRNAを発現させうる核酸を、細胞へと、安定的にトランスフェクトして、発現をノックダウンすることができる。さらに、shRNAを発現させうる核酸を、T細胞のゲノムへと挿入し、これにより、T細胞内の遺伝子をノックダウンすることもできる。
【0298】
破壊法はまた、ドミナントネガティブのタンパク質を過剰発現させるステップも含み得る。この方法は、機能的な野生型遺伝子の機能の、全体的な減殺を結果としてもたらし得る。加えて、ドミナントネガティブの遺伝子を発現させるステップは、ノックアウトおよび/またはノックダウンの表現型と類似の表現型を結果としてもたらし得る。
【0299】
ある場合には、終止コドンを、1または複数の遺伝子内に、挿入または創出(例えば、ヌクレオチドの置換により)することができ、これは、非機能的転写物または非機能的タンパク質を結果としてもたらし得る(ある場合には、ノックアウトと称する)。例えば、終止コドンを、1または複数の遺伝子の中央部において創出する場合、結果として得られる転写および/またはタンパク質は切断される可能性があり、非機能的であり得る。しかし、場合によって、切断は、活性(部分的に活性であるか、または過剰に活性の)タンパク質をもたらし得る。タンパク質が過剰に活性である場合、これは、ドミナントネガティブのタンパク質を結果としてもたらし得る。
【0300】
このドミナントネガティブのタンパク質は、任意のプロモーターの制御下にある核酸内で発現させうる。例えば、プロモーターは、遍在性プロモーターであり得る。プロモーターはまた、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞特異的プロモーター、および/または発生特異的プロモーターでもあり得る。
【0301】
次いで、ドミナントネガティブのタンパク質をコードする核酸を、細胞へと挿入することができる。任意の方法を使用することができる。例えば、安定的なトランスフェクションを使用することができる。加えて、ドミナントネガティブのタンパク質をコードする核酸は、T細胞のゲノムへも挿入することができる。
【0302】
T細胞内の1または複数の遺伝子は、任意の方法を使用して、ノックアウトまたは破壊することができる。例えば、1または複数の遺伝子のノックアウトは、1または複数の遺伝子を、T細胞のゲノムから欠失させることを含み得る。ノックアウトはまた、遺伝子配列の全部または一部を、T細胞から除去することも含み得る。また、ノックアウトは、T細胞のゲノム内の遺伝子の全部または一部を、1または複数のヌクレオチドで置き換えることを含み得ることも想定される。1または複数の遺伝子のノックアウトはまた、配列を、1または複数の遺伝子内に挿入し、これにより、1または複数の遺伝子の発現を破壊することも含み得る。例えば、配列の挿入は、終止コドンを、1または複数の遺伝子の中央部に作製し得る。配列の挿入はまた、1または複数の遺伝子のオープンリーディングフレームもシフトさせうる。
【0303】
ノックアウトは、任意の細胞内、臓器内、および/または組織内、例えば、T細胞内、造血幹細胞内、骨髄中、および/または胸腺内で行うことができる。例えば、ノックアウトは、全身におけるノックアウトであることが可能であり、例えば、1または複数の遺伝子の発現が、ヒトの全ての細胞内で抑制される。ノックアウトはまた、ヒトの、1または複数の細胞、組織、および/または臓器に特異的でもあり得る。これは、1または複数の遺伝子の発現を、1または複数の臓器、組織、または細胞型において選択的に抑制する、条件的ノックアウトにより達成することができる。条件的ノックアウトは、creを、細胞特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、および/または臓器特異的プロモーターの制御下で発現させる、Cre−lox系により実施することができる。例えば、1または複数の遺伝子を、1または複数の組織内または臓器内でノックアウトし得る(または発現を抑制し得る)が、この場合、1または複数の組織または臓器は、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、眼、網膜、生殖器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、または尿管、子宮、卵巣、精巣、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。また、1つの細胞型内の、1または複数の遺伝子も、ノックアウトし得る(または発現を抑制し得る)が、この場合、1または複数の細胞型は、毛胞、角化細胞、性腺刺激物質産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞(corticotrope)、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、ソマトトロピン産生細胞、プロラクチン産生細胞、クロム親和性細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜実質細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア(例えば、希突起膠細胞、星状細胞)、脳室上衣細胞、松果体細胞、肺細胞(例えば、I型肺細胞およびII型肺細胞)、クララ細胞、杯細胞、G細胞、D細胞、腸管クロム親和性細胞、胃主細胞、壁細胞、胃小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、杯細胞、パネート細胞、腸細胞、M細胞、肝細胞、肝星細胞(例えば、中胚葉に由来するクッパー細胞)、胆嚢細胞、腺房中心細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞、膵ε細胞、甲状腺(例えば、濾胞細胞)、副甲状腺(例えば、上皮小体主細胞)、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋サテライト細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハール介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞(例えば、糸球体内メサンギウム細胞および糸球体外メサンギウム細胞)、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞(stromal cell)、間質細胞(interstitial cell)、テロサイト、単純上皮細胞、有足細胞、腎近位尿細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、非繊毛性上皮細胞、胚細胞、精子、卵子、リンパ球、骨髄性細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中胚葉性血管芽細胞、周皮細胞、壁細胞、および/またはこれらの任意の組合せを含む。
【0304】
一部の実施形態では、本開示の方法は、1または複数の細胞を、対象から得るステップを含み得る。細胞は一般に、膜内に封入された、細胞質、タンパク質、核酸、および/または細胞小器官を含む、任意の生物学的構造を指す場合がある。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞であり得る。一部の実施形態では、細胞とは、免疫細胞を指す場合がある。細胞の非限定的な例は、B細胞、好塩基球、樹状細胞、好酸球、ガンマデルタT細胞、顆粒球、ヘルパーT細胞、ランゲルハンス細胞、リンパ系細胞、生得的リンパ系細胞(ILC)、マクロファージ、マスト細胞、巨核球、メモリーT細胞、単球、骨髄細胞、ナチュラルキラーT細胞、好中球、前駆体細胞、形質細胞、前駆細胞、調節性T細胞、T細胞、胸腺、これらの任意の分化細胞もしくは脱分化細胞、またはこれらの任意の細胞の混合物もしくは組合せを含み得る。
【0305】
一部の実施形態では、細胞は、ILCであることが可能であり、ILCは、群1 ILC、群2 ILC、または群3 ILCである。群1 ILCは一般に、T−bet転写因子により制御され、細胞内の病原体に応答して、IFN−ガンマおよびTNF−アルファなど、1型サイトカインを分泌する細胞として記載することができる。群2 ILCは一般に、GATA−3転写因子およびROR−アルファ転写因子に依拠し、細胞外の寄生虫感染症に応答して、2型サイトカインを産生する細胞として記載することができる。群3 ILCは一般に、ROR−ガンマ転写因子により制御され、IL−17および/またはIL−22を産生する細胞として記載することができる。
【0306】
一部の実施形態では、細胞は、所与の因子について陽性の細胞の場合もあり、所与の因子について陰性の細胞の場合もある。一部の実施形態では、細胞は、CD3+細胞、CD3−細胞、CD5+細胞、CD5−細胞、CD7+細胞、CD7−細胞、CD14+細胞、CD14−細胞、CD8+細胞、CD8−細胞、CD103+細胞、CD103−細胞、CD11b+細胞、CD11b−細胞、BDCA1+細胞、BDCA1−細胞、L−セレクチン+細胞、L−セレクチン−細胞、CD25+、CD25−細胞、CD27+、CD27−細胞、CD28+細胞、CD28−細胞、CD44+細胞、CD44−細胞、CD56+細胞、CD56−細胞、CD57+細胞、CD57−細胞、CD62L+細胞、CD62L−細胞、CD69+細胞、CD69−細胞、CD45RO+細胞、CD45RO−細胞、CD127+細胞、CD127−細胞、CD132+細胞、CD132−細胞、IL−7+細胞、IL−7−細胞、IL−15+細胞、IL−15−細胞、レクチン様受容体G1陽性細胞、レクチン様受容体G1陰性細胞、またはこれらの分化細胞もしくは脱分化細胞であり得る。細胞が発現する因子の例は、限定的であることを意図するものではなく、当業者は、細胞が、当技術分野で公知の任意の因子について陽性の場合もあり、陰性の場合もあることを察知するであろう。一部の実施形態では、細胞は、2つまたはそれよりも多い因子について陽性であり得る。例えば、細胞は、CD4+およびCD8+であり得る。一部の実施形態では、細胞は、2つまたはそれよりも多い因子について陰性であり得る。例えば、細胞は、CD25−、CD44−、およびCD69−であり得る。一部の実施形態では、細胞は、1または複数の因子について陽性であり、かつ、1または複数の因子について陰性であり得る。例えば、細胞は、CD4+およびCD8−であり得る。次いで、選択した細胞を、対象へと輸注することができる。一部の実施形態では、細胞を、1または複数の所与の因子を有するかまたは有さないことについて選択することができる(例えば、細胞を、1または複数の因子の有無に基づき分離することができる)。分離効率は、細胞の生存率と、トランス遺伝子を、細胞ゲノムへと組み込み、かつ/または発現させうる効率とに影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、選択した細胞はまた、in vitroで拡大することもできる。選択した細胞は、輸注の前に、in vitroで拡大することができる。本明細書で開示される方法のうちのいずれかにおいて使用される細胞は、本明細書で開示される細胞のうちのいずれかの混合物(例えば、2つまたはそれよりも多い異なる細胞)であり得ることを理解されたい。例えば、本開示の方法は、細胞を含むことが可能であり、細胞は、CD4+細胞と、CD8+細胞との混合物である。別の例では、本開示の方法は、細胞を含むことが可能であり、細胞は、CD4+細胞と、ナイーブ細胞との混合物である。
【0307】
ナイーブ細胞は、本明細書で開示される方法に特に有用であり得る、いくつかの特性を保持する。例えば、ナイーブ細胞は、in vitroにおける拡大およびT細胞受容体トランス遺伝子の発現がたやすく可能であり、少数の末端分化マーカーを呈し(細胞の輸注後におけるより大きな効能と関連し得る資質)、増殖のより大きな潜在的可能性を示唆する、長いテロメアを保持する(Hinrichs, C.S.ら、「Human effector CD8+ T cells derived from naive rather than memory subsets possess superior traits for adoptive immunotherapy」、Blood、117巻(3号):808〜14頁(2011年))。本明細書で開示される方法は、ナイーブ細胞に特異的なマーカーの選択または負の選択を含み得る。一部の実施形態では、細胞は、ナイーブ細胞であり得る。ナイーブ細胞は一般に、抗原へと曝露されていない、任意の細胞を指す場合がある。本開示における任意の細胞は、ナイーブ細胞であり得る。一例では、細胞は、ナイーブT細胞であり得る。ナイーブT細胞は一般に、骨髄中で分化し、胸腺内の中枢性選択の正の過程および負の過程を経ることに成功し、かつ/または特異的マーカーの発現もしくは非存在(例えば、L−セレクチンの表面発現、活性化マーカーである、CD25、CD44、またはCD69の非存在、メモリーCD45ROアイソフォームの非存在)によって特徴付けられる細胞であると記載することができる。
【0308】
一部の実施形態では、細胞は、細胞株(例えば、不死化細胞株)を含み得る。細胞株の非限定的な例は、ヒトBC−1細胞、ヒトBJAB細胞、ヒトIM−9細胞、ヒトJiyoye細胞、ヒトK−562細胞、ヒトLCL細胞、マウスMPC−11細胞、ヒトRaji細胞、ヒトRamos細胞、マウスRamos細胞、ヒトRPMI8226細胞、ヒトRS4−11細胞、ヒトSKW6.4細胞、ヒト樹状細胞、マウスP815細胞、マウスRBL−2H3細胞、ヒトHL−60細胞、ヒトNAMALWA細胞、ヒトマクロファージ細胞、マウスRAW 264.7細胞、ヒトKG−1細胞、マウスM1細胞、ヒトPBMC細胞、マウスBW5147(T200−A)5.2細胞、ヒトCCRF−CEM細胞、マウスEL4細胞、ヒトJurkat細胞、ヒトSCID.adh細胞、ヒトU−937細胞、またはこれらの細胞の任意の組合せを含む。
【0309】
幹細胞は、様々な体細胞をもたらすことが可能であり、したがって、原理的に、事実上任意の種類の治療用細胞の、無限の供給源として用いられる潜在的可能性を有し得る。幹細胞の再プログラム能力はまた、再プログラム細胞の治療的価値を増強するように、さらなる操作も可能とする。本開示の方法のうちのいずれかにおいて、1または複数の細胞は、幹細胞に由来し得る。幹細胞の非限定的な例は、胚性幹細胞、成体幹細胞、組織特異的幹細胞、神経幹細胞、同種幹細胞、全能性幹細胞、複能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、臍帯幹細胞、上皮幹細胞、または脂肪由来幹細胞を含む。一例では、細胞は、造血幹細胞由来のリンパ系前駆細胞であり得る。別の例では、細胞は、胚性幹細胞由来のT細胞であり得る。さらに別の例では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)由来のT細胞であり得る。
【0310】
条件的ノックアウトは、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター、発生特異的プロモーターを使用することによる、誘導性ノックアウトであり得る。これは、任意の時点または特異的時点において、遺伝子/タンパク質の発現を消失させるか、または抑制することを可能とし得る。例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーターの場合、テトラサイクリンは、生後任意の時点において、T細胞へ与えることができる。cre/lox系はまた、発生特異的プロモーターの制御下も可能である。例えば、一部のプロモーターは、生後なおまたは思春期の開始後にオンとなる。これらのプロモーターは、cre発現を制御するのに使用することができ、したがって、発生特異的ノックアウトにおいて使用することができる。
【0311】
また、ノックアウト技術の任意の組合せを実行し得ることも想定される。例えば、組織特異的ノックアウトまたは細胞特異的ノックアウトを、誘導技術と組み合わせ、組織特異的または細胞特異的な誘導性ノックアウトを創出することができる。さらに、発生特異的プロモーターなどの他の系を、組織特異的プロモーターおよび/または誘導性ノックアウトと組み合わせて使用することもできる。
【0312】
ノックアウト技術はまた、遺伝子編集も含み得る。例えば、遺伝子編集は、CRISPR関連タンパク質(Casタンパク質、例えば、Cas9)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびメガヌクレアーゼを含むヌクレアーゼを使用して実施することができる。ヌクレアーゼは、天然で存在するヌクレアーゼの場合もあり、遺伝子改変ヌクレアーゼの場合もあり、かつ/または組換えヌクレアーゼの場合もある。遺伝子編集はまた、トランスポゾンベースの系(例えば、PiggyBac、Sleeping beauty)を使用して実施することもできる。例えば、遺伝子編集は、トランスポザーゼを使用して実施することができる。
【0313】
CRISPR系
本明細書で記載される方法は、CRISPR系を利用し得る。少なくとも5つの種類のCRISPR系が存在し、これらは全て、RNAタンパク質およびCasタンパク質を包含する。I型、III型、およびIV型は、crRNAと相補的な核酸を切断することが可能な、多Casタンパク質複合体をアセンブルする。I型およびIII型はいずれも、プロセシングされたcrRNAを、多Casタンパク質複合体へとアセンブリングする前に、プレcrRNAのプロセシングを要求する。II型およびV型のCRISPR系は、少なくとも1つのガイドRNAと複合体化させた、単一のCasタンパク質を含む。
【0314】
CRISPR系の一般的な機構および近年における進歩については、Cong, L.ら、「Multiplex genome engineering using CRISPR systems」、Science、339巻(6121号):819〜823頁(2013年);Fu, Y.ら、「High−frequency off−target mutagenesis induced by CRISPR−Cas nucleases in human cells」、Nature Biotechnology、31巻、822〜826頁(2013年);Chu, VTら、「Increasing the efficiency of homology−directed repair for CRISPR−Cas9−induced precise gene editing in mammalian cells」、Nature Biotechnology、33巻、543〜548頁(2015年);Shmakov, S.ら、「Discovery and functional characterization of diverse Class 2 CRISPR−Cas systems」、Molecular Cell、60巻、1〜13頁(2015年);Makarova, KSら、「An updated evolutionary classification of CRISPR−Cas systems,」、Nature Reviews Microbiology、13巻、1〜15頁(2015年)において論じられている。標的DNAの部位特異的切断は、1)ガイドRNAと標的DNA(また、プロトスペーサーとも呼ばれる)との塩基対合相補性、および2)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称する、標的DNA内の短いモチーフの両方により決定される位置において生じる。例えば、操作細胞は、CRISPR系、例えば、II型CRISPR系を使用して作製することができる。本明細書で開示される方法において使用されるCas酵素は、DNAの切断を触媒するCas9であり得る。Streptococcus pyogenesに由来するCas9、または任意の近縁のCas9による酵素作用により、20ヌクレオチドのガイド配列にハイブリダイズし、20ヌクレオチドの標的配列に後続してプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を有する標的部位配列において、二本鎖切断を生じることができる。
【0315】
a.Casタンパク質
ベクターは、Casタンパク質(CRISPR関連タンパク質)など、CRISPR酵素をコードする、酵素コード配列に作動可能に連結することができる。Casタンパク質の非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(また、Csn1またはCsx12としても公知である)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx1S、Csf1、Csf2、CsO、Csf4、Cpf1、c2c1、c2c3、Cas9HiFi、これらの相同体、またはこれらの修飾形を含み得る。非修飾CRISPR酵素は、Cas9など、DNA切断活性を有し得る。CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補体内など、標的配列において、一本または両方の鎖の切断を導きうる。例えば、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、25、50、100、200、500、もしくはそれよりも多い塩基対以内、またはほぼこれらの数の塩基対以内において、一本または両方の鎖の切断を導きうる。突然変異させたCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一本または両方鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に照らして突然変異させたCRISPR酵素をコードするベクターを使用することができる。Casタンパク質は、Cas9HiFiなど、高忠実度のcasタンパク質であり得る。
【0316】
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10を超えるNLS、またはほぼこれらの数を超えるNLSなど、1または複数の核局在化配列(NLS)を含むCRISPR酵素をコードするベクターを使用することができる。例えば、CRISPR酵素は、アミノ末端において、またはこの近傍に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10を超えるNLS、またはほぼこれらの数を超えるNLSを含む場合もあり、カルボキシル末端において、またはこの近傍に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10を超えるNLS、またはほぼこれらの数を超えるNLSを含む場合もあり、これらの任意の組合せ(例えば、アミノ末端における1または複数のNLSと、カルボキシル末端における1または複数のNLSとの組合せ)を含む場合もある。1つを超えるNLSが存在する場合、単一のNLSが、1つを超えるコピーで、かつ/または1もしくは複数のコピーで存在する、他の1もしくは複数のNLSと組み合わせて存在し得るように、各NLSは、他のNLSから独立に選択することができる。
【0317】
Cas9とは、例示的な野生型のCas9ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9 )に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%の配列同一性および/もしくは配列類似性、または少なくともほぼこれらの比率の配列同一性および/もしくは配列類似性を伴うポリペプチドを指す場合がある。Cas9とは、例示的な野生型のCas9ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来する)に対して、最大で50%、60%、70%、80%、90%、100%の配列同一性および/もしくは配列類似性、または最大でほぼこれらの比率の配列同一性および/もしくは配列類似性を伴うポリペプチドを指す場合がある。Cas9とは、Cas9タンパク質の野生型形態を指す場合もあり、欠失、挿入、置換、変異体、突然変異、融合、キメラ、またはこれらの任意の組合せなどのアミノ酸変化を含み得る、Cas9タンパク質の修飾形態を指す場合もある。
【0318】
エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9などのCasタンパク質)をコードするポリヌクレオチドは、真核細胞など、特定の細胞内の発現のために、コドンを最適化することができる。この種の最適化は、同じタンパク質をコードしながら、意図される宿主生物または宿主細胞のコドン優先性を模倣するように、外来由来の(例えば、組換え)DNA突然変異を伴いうる。
【0319】
方法において使用されるCRISPR酵素は、NLSを含み得る。NLSは、ポリペプチド鎖内の任意の位置、例えば、N末端またはC末端の近傍に位置し得る。例えば、NLSは、N末端またはC末端から、ポリペプチド鎖に沿って、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50アミノ酸以内であるか、またはほぼこれらの数のアミノ酸以内であり得る。ある場合には、NLSは、N末端またはC末端から、50アミノ酸もしくはそれよりも多い数のアミノ酸、例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000アミノ酸以内であるか、またはほぼこれらの数のアミノ酸以内であり得る。
【0320】
エンドヌクレアーゼは、例示的な野生型の部位指向型ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9)のヌクレアーゼドメインに対して、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性、または少なくともほぼこれらの比率のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0321】
S.pyogenes Cas9(SpCas9)(表11)を一般に、ゲノム操作のためのCRISPRエンドヌクレアーゼとして使用するが、どの標的切出し部位にも最良のエンドヌクレアーゼではない場合もある。例えば、SpCas9のためのPAM配列(5’NGG3’)は、ヒトゲノム全体を通して夥多であるが、NGG配列は、修飾に所望される遺伝子を適正にターゲティングするように位置しない場合がある。場合によって、異なるエンドヌクレアーゼを使用して、ある特定のゲノム標的をターゲティングすることができる。場合によって、NGG以外のPAM配列を伴う、合成SpCas9由来の変異体を使用することができる。加えて、多様な種に由来する、他のCas9オーソログも同定されており、これらの「非SpCas9」は、様々なPAM配列に結合し、これらもまた、本発明に有用であり得るだろう。例えば、SpCas9の比較的大きなサイズ(約4kbのコード配列)は、SpCas9 cDNAを保有するプラスミドは、細胞内で効率的に発現しえないことを意味する。逆に、Staphylococcus aureus Cas9(SaCas9)のコード配列はおよそ、SpCas9より1キロベース短く、おそらく、細胞内の効率的な発現を可能とする。SpCas9と同様に、SaCas9エンドヌクレアーゼも、in vitroの哺乳動物細胞内、およびマウスのin vivoにおいて、標的遺伝子を修飾することが可能である。
【0322】
S.pyogenes Cas9への代替法は、Cpf1ファミリーに由来する、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼであって、哺乳動物細胞内の切断活性を提示するエンドヌクレアーゼを含み得る。Cas9ヌクレアーゼと異なり、Cpf1を媒介するDNAの切断の結果は、短い3’突出を伴う二本鎖切断である。Cpf1の付着末端型切断パターンは、従来の制限酵素クローニングと類似する指向性遺伝子移入であって、遺伝子編集の効率を増大させる指向性遺伝子移入の可能性を開きうる。上記で記載したCas9の変異体およびオーソログと同様に、Cpf1もまた、CRISPRにより、SpCas9が優先するNGG PAM部位を欠く、ATリッチ領域またはATリッチゲノムへとターゲティングし得る部位の数を拡大し得る。
【0323】
任意の機能的濃度のCasタンパク質を、細胞へと導入することができる。例えば、15マイクログラムのCas mRNAを、細胞へと導入することができる。他の場合には、0.5マイクログラム〜100マイクログラムのCas mRNAを導入することができる。0.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100マイクログラムのCas mRNAを導入することができる。
【0324】
b.ガイドRNA
本明細書で使用される「ガイドRNA(gRNA)」という用語、およびその文法的同等物は、標的DNAに特異的であることが可能であり、Casタンパク質と複合体を形成し得るRNAを指す場合がある。ガイドRNAは、標的部位を指定し、RNA/Cas複合体を、切断のために指定される標的DNAへとガイドする、ガイド配列またはスペーサー配列を含み得る。例えば、
図15は、ガイドRNAが、CRISPR複合体を、3つの遺伝子へとターゲティングし、ターゲティングされた二本鎖切断を実施し得ることを裏付ける。標的DNAの部位特異的切断は、1)ガイドRNAと標的DNA(また、プロトスペーサーとも呼ばれる)との塩基対合相補性、および2)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称する、標的DNA内の短いモチーフの両方により決定される位置において生じる。
【0325】
本明細書で開示される方法はまた、細胞または胚へと、少なくとも1つのガイドRNA、または少なくとも1つのガイドRNAをコードする核酸、例えば、DNAを導入するステップも含み得る。ガイドRNAは、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼと相互作用して、エンドヌクレアーゼを、その部位において、ガイドRNAの5’末端が、染色体配列内の特異的プロトスペーサー配列と塩基対合する、特異的標的部位へと導きうる。
【0326】
ガイドRNAは、2つのRNA、例えば、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含み得る。ガイドRNAは、ある場合には、crRNAおよびtracrRNAの部分(例えば、機能的な部分)の融合により形成される、単一のガイドRNA(sgRNA)を含み得る。ガイドRNAはまた、crRNAおよびtracrRNAを含む二重RNAでもあり得る。ガイドRNAは、crRNAを含むことが可能であり、tracrRNAを欠きうる。さらに、crRNAは、標的DNAまたはプロトスペーサー配列とハイブリダイズし得る。
【0327】
上記で論じた通り、ガイドRNAは、発現産物であり得る。例えば、ガイドRNAをコードするDNAは、ガイドRNAをコードする配列を含むベクターであり得る。ガイドRNAは、細胞または生物に、ガイドRNAをコードする配列およびプロモーターを含む単離ガイドRNAまたは単離プラスミドDNAをトランスフェクトすることにより、細胞または生物へと移入させることができる。ガイドRNAはまた、ウイルスを媒介する遺伝子送達を使用するなど、他の形で、細胞または生物へと移入させることもできる。
【0328】
ガイドRNAは、単離ガイドRNAであり得る。例えば、ガイドRNAは、単離RNAの形態で、細胞または生物へとトランスフェクトすることができる。ガイドRNAは、任意のin vitro転写系を使用する、in vitro転写により調製することができる。ガイドRNAは、細胞へと、ガイドRNAのコード配列を含むプラスミドの形態ではなく、単離RNAの形態で移入させることができる。
【0329】
ガイドRNAは、DNAターゲティングセグメントおよびタンパク質結合性セグメントを含み得る。DNAターゲティングセグメント(またはDNAターゲティング配列、またはスペーサー配列)は、標的DNA内の特異的配列(例えば、プロトスペーサー)と相補的であり得るヌクレオチド配列を含む。タンパク質結合性セグメント(またはタンパク質結合性配列)は、部位指向型修飾性ポリペプチド、例えば、Casタンパク質など、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼと相互作用し得る。「セグメント」とは、分子のセグメント/区画/領域、例えば、RNA内のヌクレオチドの連続的連なりを意味する。セグメントはまた、セグメントが、1つを超える分子の領域を含み得るように、複合体の領域/区画も意味する。例えば、場合によって、DNAターゲティングRNAのタンパク質結合性セグメントは、1つのRNA分子およびタンパク質結合性セグメントであり、したがって、このRNA分子の領域を含む。他の場合には、DNAターゲティングRNAのタンパク質結合性セグメントは、相補性領域に沿ってハイブリダイズさせた、2つの個別の分子を含む。
【0330】
ガイドRNAは、2つの個別のRNA分子を含む場合もあり、単一のRNA分子を含む場合もある。例示的な単一分子のガイドRNAは、DNAターゲティングセグメントおよびタンパク質結合性セグメントの両方を含む。
【0331】
例示的な2分子型DNAターゲティングRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」または「ターゲターRNA」または「crRNA」または「crRNAリピート」)分子および対応するtracrRNA様(「トランス活性化CRISPR RNA」または「アクチベーターRNA」または「tracrRNA」)分子を含み得る。第1のRNA分子は、DNAターゲティングセグメント(例えば、スペーサー)を含み得るcrRNA様分子(ターゲターRNA)と、ガイドRNAのタンパク質結合性セグメントを含む二本鎖RNA(dsRNA)による二重鎖の半分を形成し得る、ヌクレオチドの連なりとであり得る。第2のRNA分子は、ガイドRNAのタンパク質結合性セグメントのdsRNA二重鎖の他の半分を形成し得る、ヌクレオチドの連なりを含み得る、対応するtracrRNA様分子(アクチベーターRNA)であり得る。言い換えれば、crRNA様分子のヌクレオチドの連なりは、tracrRNA様分子のヌクレオチドの連なりと相補的であることが可能であり、これとハイブリダイズして、ガイドRNAのタンパク質結合性ドメインのdsRNA二重鎖を形成し得る。したがって、各crRNA様分子は、対応するtracrRNA様分子を有するということができる。加えて、crRNA様分子は、一本鎖DNAターゲティングセグメントまたはスペーサー配列ももたらし得る。したがって、crRNA様分子と、tracrRNA様分子(対応する対としての)とは、ハイブリダイズして、ガイドRNAを形成し得る。対象の2分子型ガイドRNAは、任意の対応する、crRNAとtracrRNAとの対を含み得る。
【0332】
ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントまたはスペーサー配列は、ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントが、標的部位またはプロトスペーサーと塩基対合し得るように、染色体配列内の標的部位における配列、例えば、プロトスペーサー配列と相補的であり得る。場合によって、ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントは、10ヌクレオチドまたはほぼこの数のヌクレオチド〜25もしくはほぼこの数のヌクレオチドまたはそれよりも多いヌクレオチドを含み得る。例えば、ガイドRNAの第1の領域と、染色体配列内の標的部位との塩基対合の領域は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、もしくは25を超えるヌクレオチドの長さであり得るか、またはほぼこの長さであり得る。ある場合には、ガイドRNAの第1の領域は、19、20、もしくは21ヌクレオチドの長さであり得るか、またはほぼこの長さであり得る。
【0333】
ガイドRNAは、20ヌクレオチドの核酸配列またはほぼこの長さの核酸配列をターゲティングし得る。標的核酸は、20ヌクレオチド未満またはほぼこの長さ未満であり得る。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、もしくはそれよりも多いヌクレオチド、または少なくともほぼこの長さであり得る。標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、もしくはそれよりも多いヌクレオチド、または最大でほぼこの長さであり得る。標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドのすぐの5’側の20塩基であり得るか、またはほぼこの長さであり得る。ガイドRNAは、核酸配列をターゲティングし得る。
【0334】
ガイド核酸、例えば、ガイドRNAは、別の核酸、例えば、細胞ゲノム内の標的核酸またはプロトスペーサーにハイブリダイズし得る核酸を指す場合がある。ガイド核酸は、RNAであり得る。ガイド核酸は、DNAであり得る。ガイド核酸は、核酸部位の配列に特異的に結合するように、プログラムまたはデザインすることができる。ガイド核酸は、ポリヌクレオチド鎖を含むことが可能であり、単一のガイド核酸と呼ばれうる。ガイド核酸は、2つのポリヌクレオチド鎖を含むことが可能であり、二重ガイド核酸と呼ばれうる。
【0335】
ガイド核酸は、核酸に新たな特色または増強された特色をもたらす、1または複数の修飾を含み得る。ガイド核酸は、核酸アフィニティータグを含み得る。ガイド核酸は、合成ヌクレオチド、合成ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド誘導体、および/または修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0336】
ガイド核酸は、例えば、5’末端もしくは3’末端において、またはこの近傍に、標的核酸内の配列(例えば、プロトスペーサー)にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列(例えば、スペーサー)を含み得る。ガイド核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して、配列特異的に、標的核酸と相互作用し得る。スペーサー配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側または3’側に位置する標的核酸にハイブリダイズし得る。スペーサー配列の長さは、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、もしくはそれよりも多いヌクレオチド、または少なくともほぼこの長さであり得る。スペーサー配列の長さは、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、もしくはそれよりも多いヌクレオチド、または最大でほぼこの長さであり得る。
【0337】
ガイドRNAはまた、二次構造を形成するdsRNA二重鎖領域も含み得る。例えば、ガイドRNAにより形成される二次構造は、ステム(またはヘアピン)およびループを含み得る。ループおよびステムの長さは、変動し得る。例えば、ループは、約3〜約10ヌクレオチドの長さの範囲であることが可能であり、ステムは、約6〜約20塩基対の長さの範囲であり得る。ステムは、1〜約10ヌクレオチドの、1または複数のバルジを含み得る。第2の領域の全長は、約16〜約60ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。例えば、ループは、4ヌクレオチドの長さであり得るか、またはほぼこの長さであることが可能であり、ステムは、12塩基対であり得るか、またはほぼこの長さであり得る。dsRNA二重鎖領域は、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、例えば、Casタンパク質など、RNA結合性タンパク質と複合体を形成し得る、タンパク質結合性セグメントを含み得る。
【0338】
ガイドRNAはまた、5’末端または3’末端において、本質的に一本鎖であり得るテール領域も含み得る。例えば、テール領域は、ある場合には、目的の細胞内の任意の染色体配列と相補性ではなく、ある場合には、ガイドRNAの残余部分と相補性ではない。さらに、テール領域の長さは、変動し得る。テール領域は、4ヌクレオチドの長さを超えうるか、またはほぼこの長さを超えうる。例えば、テール領域の長さは、5または約5〜60または約60ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。
【0339】
ガイドRNAは、細胞または胚へと、RNA分子として導入することができる。例えば、RNA分子は、in vitroで転写することもでき、かつ/または化学的に合成することもできる。次いで、ガイドRNAは、細胞または胚へと、RNA分子として導入することができる。ガイドRNAはまた、細胞または胚へと、RNA以外の核酸分子、例えば、DNA分子の形態で導入することもできる。例えば、ガイドRNAをコードするDNAは、目的の細胞内または胚内のガイドRNAの発現のためのプロモーター制御配列に作動可能に連結することができる。RNAコード配列は、RNAポリメラーゼIII(PolIII)により認識されるプロモーター配列に作動可能に連結することができる。
【0340】
ガイドRNAをコードするDNA分子はまた、直鎖状でもあり得る。ガイドRNAをコードするDNA分子はまた、環状でもあり得る。
【0341】
ガイドRNAをコードするDNA配列はまた、ベクターの一部でもあり得る。ベクターの一部の例は、プラスミドベクター、ファージミド、コスミド、人工/ミニ染色体、トランスポゾン、およびウイルスベクターを含み得る。例えば、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼをコードするDNAは、プラスミドベクター内に存在する。適切なプラスミドベクターの、他の非限定的な例は、pUC、pBR322、pET、pBluescript、およびこれらの変異体を含む。さらに、ベクターは、さらなる発現制御配列(例えば、エンハンサー配列、Kozak配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列など)、選択用マーカー配列(例えば、抗生剤耐性遺伝子)、複製起点などを含み得る。
【0342】
RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼおよびガイドRNAの両方を、細胞へと、DNA分子として導入する場合、各々は、個別の分子(例えば、融合タンパク質のコード配列を含有する1つのベクターと、ガイドRNAのコード配列を含有する第2のベクターと)の一部の場合もあり、同じ分子(例えば、融合タンパク質およびガイドRNAの両方のコード(および調節)配列を含有する1つのベクター)の一部の場合もある。
【0343】
Cas9タンパク質またはその任意の誘導体などのCasタンパク質は、リボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するように、ガイドRNAと、あらかじめ複合体化させることができる。RNP複合体は、初代免疫細胞へと導入することができる。RNP複合体の導入は、時限的であり得る。細胞は、細胞周期のG1期、S期、および/またはM期において、他の細胞と同期し得る。RNP複合体は、HDRを増強するような細胞期において送達することができる。RNP複合体は、相同性により導かれる修復を容易とし得る。
【0344】
ガイドRNAはまた、修飾することもできる。修飾は、化学的変更、合成修飾、ヌクレオチド付加、および/またはヌクレオチド控除を含み得る。修飾はまた、CRISPRゲノムの操作も増強し得る。修飾は、gRNAのキラリティーを変更し得る。場合によって、キラリティーは、修飾後において、一様または立体的に純粋であり得る。ガイドRNAは、合成ガイドRNAであり得る。合成ガイドRNAは、CRISPRゲノムの操作を増強し得る。ガイドRNAはまた、切断型でもあり得る。切断を使用して、所望されないオフターゲットの突然変異誘発を低減することができる。切断は、任意の数のヌクレオチド欠失を含み得る。例えば、切断は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50、またはそれよりも多いヌクレオチドを含み得る。ガイドRNAは、任意の長さの標的相補性領域を含み得る。例えば、標的相補性領域は、20ヌクレオチド未満の長さであり得る。標的相補性領域は、20ヌクレオチドを超える長さであり得る。
【0345】
場合によって、二重ニカーゼ法を使用して、二本鎖切断を導入することができる。Casタンパク質は、いずれかのヌクレアーゼドメイン内の公知のアミノ酸において突然変異させ、これにより、1つのヌクレアーゼドメインの活性を欠失させ、一本鎖切断を生じることが可能な、ニカーゼCasタンパク質を作製することができる。2つの顕著に異なるガイドRNAターゲティング逆鎖を伴うニカーゼは、標的部位内でDSBを作製するのに用いることができる(「二重ニック」CRISPR系または「二重ニカーゼ」CRISPR系と称することが多い)。この手法は、2つのオフターゲットニックが、DSBを引き起こすのに十分に近接して作製される可能性は小さいので、標的特異性を劇的に増大させうる。
【0346】
場合によって、GUIDE−Seq解析を実施して、操作ガイドRNAの特異性を決定することができる。CRISPR系ヌクレアーゼによる、オフターゲット切断についての、GUIDE−Seqプロファイリングの一般的な機構およびプロトコールについては、Tsai, S.ら、「GUIDE−Seq enables genome−wide profiling of off−target cleavage by CRISPR system nucleases」、Nature、33巻:187〜197頁(2015年)において論じられている。
【0347】
gRNAは、任意の機能的な濃度で導入することができる。例えば、gRNAは、細胞へと、10マイクログラムで導入することができる。他の場合には、gRNAは、0.5マイクログラム〜100マイクログラムで導入することができる。gRNAは、0.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100マイクログラムで導入することができる。
【0348】
場合によって、方法は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx1S、Csf1、Csf2、CsO、Csf4、Cpf1、c2c1、c2c3、Cas9HiFi、これらの相同体、またはこれらの修飾形からなる群から選択されるエンドヌクレアーゼを含み得る。Casタンパク質は、Cas9であり得る。場合によって、方法は、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をさらに含み得る。gRNAは、少なくとも1つの修飾を含み得る。外因性TCRは、がんネオ抗原に結合し得る。
【0349】
本明細書では、操作細胞を作製する方法であって、少なくとも1つの外因性T細胞受容体(TCR)配列をコードする、少なくとも1つのポリ核酸を導入するステップと;少なくとも1つの修飾を含む、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を導入するステップと;少なくとも1つのエンドヌクレアーゼを導入するステップとを含み;gRNAが、少なくとも1つの内因性ゲノムと相補的な、少なくとも1つの配列を含む方法が開示される。場合によって、修飾は、5’末端上の修飾、3’末端上の修飾、5’末端〜3’末端における修飾、単一塩基の修飾、2’−リボース修飾、またはこれらの任意の組合せである。修飾は、塩基の置換、挿入、欠失、化学修飾、物理修飾、安定化、精製、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0350】
場合によって、修飾は、化学修飾である。修飾は、5’アデニル酸、5’グアノシン三リン酸キャップ、5’N7−メチルグアノシン三リン酸キャップ、5’三リン酸キャップ、3’リン酸、3’チオリン酸、5’リン酸、5’チオリン酸、Cis−Synチミジン二量体、三量体、C12スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、dSpacer、PCスペーサー、rSpacer、Spacer 18、Spacer 9、3’−3’修飾、5’−5’修飾、脱塩基、アクリジン、アゾベンゼン、ビオチン、ビオチンBB、ビオチンTEG、コレステリルTEG、デスチオビオチンTEG、DNP TEG、DNP−X、DOTA、dT−ビオチン、二重ビオチン、PCビオチン、ソラーレンC2、ソラーレンC6、TINA、3’DABCYL、Black Hole Quencher 1、Black Hole Quencher 2、DABCYL SE、dT−DABCYL、IRDye QC−1、QSY−21、QSY−35、QSY−7、QSY−9、カルボキシルリンカー、チオールリンカー、2’デオキシリボヌクレオシド類似体プリン、2’デオキシリボヌクレオシド類似体ピリミジン、リボヌクレオシド類似体、2’−0−メチルリボヌクレオシド類似体、糖修飾類似体、ゆらぎ/ユニバーサル塩基、蛍光色素標識、2’フルオロRNA、2’O−メチルRNA、メチルホスホネート、ホスホジエステルDNA、ホスホジエステルRNA、ホスホチオエート(phosphothioate)DNA、ホスホロチオエートRNA、UNA、シュードウリジン−5’−三リン酸、5−メチルシチジン−5’−三リン酸、2−O−メチル3ホスホロチオエート、またはこれらの任意の組合せから選択することができる。修飾は、
図98に示される、シュードウリジン(pseudouride)修飾であり得る。場合によって、修飾は、生存率に影響を及ぼさなくてもよい(
図99Aおよび
図99B)。
【0351】
場合によって、修飾は、2’−O−メチル3’ホスホロチオエート付加である。2’−O−メチル3’ホスホロチオエート付加は、1塩基〜150塩基において実施することができる。2’−O−メチル3’ホスホロチオエート付加は、1塩基〜4塩基において実施することができる。2’−O−メチル3’ホスホロチオエート付加は、2つの塩基上で実施することができる。2’−O−メチル3’ホスホロチオエート付加は、4つの塩基上で実施することができる。修飾はまた、切断でもあり得る。切断は、5つの塩基の切断であり得る。
【0352】
場合によって、5つの塩基の切断(truncation)は、Casタンパク質による切断(cut)の実施を防止し得る。エンドヌクレアーゼは、CRISPR系、TALEN、亜鉛フィンガー、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、Mega−TAL、および任意の組合せからなる群から選択することができる。エンドヌクレアーゼは、Casエンドヌクレアーゼであり得る。Casエンドヌクレアーゼは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx1S、Csf1、Csf2、CsO、Csf4、Cpf1、c2c1、c2c3、Cas9HiFi、これらの相同体、またはこれらの修飾形からなる群から選択することができる。Casの修飾形は、
図100Aおよび100Bにおいて示される、キャップ除去型casであり得る。Casタンパク質は、Cas9であり得る。Cas9は、前記少なくとも1つの内因性ゲノム内で、二本鎖切断を創出し得る。場合によって、内因性ゲノムは、少なくとも1つの遺伝子を含む。遺伝子は、CISH、PD−1、TRA、TRB、またはこれらの組合せであり得る。場合によって、二本鎖切断は、相同性により導かれる修復(HR)、非相同末端結合(NHEJ)、マイクロ相同性媒介型末端結合(MMEJ)、またはこれらの任意の組合せもしくは誘導体を使用して修復することができる。TCRは、二本鎖切断へと組み込むことができる。
【0353】
c.トランス遺伝子
トランス遺伝子の挿入(例えば、外因性配列)は、例えば、ポリペプチドを発現させるために使用することもでき、突然変異体遺伝子を是正するために使用することもでき、野生型遺伝子の発現を増大させるために使用することもできる。トランス遺伝子は、それが置かれるゲノム配列とは同一でないことが典型的である。ドナートランス遺伝子は、目的の場所において、効率的HDRを可能とするように、相同性である2つの領域で挟んだ非相同配列を含有し得る。加えて、トランス遺伝子配列は、細胞内クロマチンの、目的の領域と相同ではない配列を含有するベクター分子を含み得る。トランス遺伝子は、細胞内クロマチンと相同性である、いくつかの不連続領域を含有し得る。例えば、目的の領域内に正常では存在しない配列のターゲティング挿入のために、配列は、ドナー核酸分子内に存在することが可能であり、目的の領域内の配列に対して相同性の領域で挟むことができる。
【0354】
トランス遺伝子のポリ核酸は、DNAまたはRNA、一本鎖または二本鎖であることが可能であり、細胞へと、直鎖状形態または環状形態で導入することができる。トランス遺伝子配列は、細胞へと、環状形態または直鎖状形態で導入され得る、DNAミニサークル内に含有され得る。直鎖状形態で導入する場合、トランス遺伝子配列の末端を、任意の方法で保護する(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)ことができる。例えば、1または複数のジデオキシヌクレオチド残基を、直鎖状分子の3’末端へと付加することもでき、かつ/または自己相補的オリゴヌクレオチドを、一方または両方の末端へとライゲーションすることもできる。外因性ポリヌクレオチドを、分解から保護するためのさらなる方法は、末端アミノ基の付加、ならびに、例えば、ホスホロチオエート残基、ホスホルアミダイト残基、およびO−メチルリボース残基またはデオキシリボース残基など、修飾ヌクレオチド間連結の使用を含むがこれらに限定されない。
【0355】
トランス遺伝子は、組換えアームで挟むことができる。場合によって、組換えアームは、トランス遺伝子を、所望の組込み部位へとターゲティングする、相補的領域を含み得る。トランス遺伝子はまた、挿入が、内因性遺伝子を破壊するように、ゲノム領域へと組み込むこともできる。トランス遺伝子は、任意の方法、例えば、非組換え末端結合および/または組換え指向修復により組み込むことができる。トランス遺伝子はまた、二本鎖切断を修復する組換えイベント時に組み込むこともできる。トランス遺伝子はまた、相同組換えエンハンサーを使用することにより組み込むこともできる。例えば、エンハンサーは、相同性により導かれる修復を実施して、二本鎖切断を修復するように、非相同末端結合を遮断し得る。
【0356】
トランス遺伝子は、組換えアームで挟むことができ、この場合、アームと、その相補的配列との相同性の程度は、2つの間の相同組換えを可能とするのに十分である。例えば、アームと、その相補的配列との相同性の程度は、50%またはこれを超えうる。2つの相同な非同一配列は、任意の長さであることが可能であり、それらの非相同性の程度は、単一のヌクレオチドという低度の場合(例えば、ターゲティングされた相同組換により、ゲノムの点突然変異を是正する場合)もあり、10キロベースまたはそれよりも多いという高度な場合(例えば、染色体内の所定の異所性部位に遺伝子を挿入する場合)もある。相同な非同一配列を含む、2つのポリヌクレオチドは、同じ長さである必要がない。例えば、CCR5に対する組換えアームを伴う、代表的なトランス遺伝子を、
図16に示す。他の任意の遺伝子、例えば、本明細書で記載される遺伝子を使用して、組換えアームを作製することができる。
【0357】
トランス遺伝子は、ゲノム内の標的二本鎖切断領域と相補的な操作部位で挟むことができる。場合によって、操作部位は、組換えアームではない。操作部位は、二本鎖切断領域に対する相同性を有し得る。操作部位は、遺伝子に対する相同性を有し得る。操作部位は、 ゲノムコード領域に対する相同性を有し得る。操作部位は、ゲノム非コード領域に対する相同性を有し得る。場合によって、トランス遺伝子は、ポリ核酸から切り出すことができるので、相同組換えを伴わずに、二本鎖切断領域に挿入することができる。トランス遺伝子は、相同組換えを伴わずに、二本鎖切断へと組み込むことができる。
【0358】
ポリヌクレオチドは、細胞へと、例えば、複製起点、プロモーター、および抗生剤耐性をコードする遺伝子など、さらなる配列を有するベクター分子の一部として導入することができる。さらに、トランス遺伝子のポリヌクレオチドは、ネイキッド核酸として導入することもでき、リポソームまたはポロキサマーなどの薬剤と複合体化させた核酸として導入することもでき、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))により送達することもできる。トランス遺伝子を送達し得るウイルスは、AAVウイルスであり得る。
【0359】
トランス遺伝子は一般に、その発現が、組込み部位における内因性プロモーター、すなわち、トランス遺伝子が挿入される内因性遺伝子(例えば、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、CCR5、HPRT)の発現を駆動するプロモーターにより駆動されるように挿入する。トランス遺伝子は、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターもしくは誘導性プロモーターまたは組織/細胞特異的プロモーターを含み得る。ミニサークルベクターは、トランス遺伝子をコードし得る。
【0360】
非コード核酸配列の挿入のターゲティングもまた達成することができる。アンチセンスRNA、RNAi、shRNA、およびマイクロRNA(miRNA)をコードする配列もまた、挿入のターゲティングに使用することができる。
【0361】
トランス遺伝子は、内因性遺伝子の全て、一部を発現させるように、内因性遺伝子へと挿入することもでき、内因性遺伝子を発現させないように内因性遺伝子へと挿入することもできる。例えば、本明細書で記載されるトランス遺伝子は、内因性配列のうちの一部(トランス遺伝子に対するN末端側および/またはC末端側)を、例えば、トランス遺伝子との融合体として発現させるように、内因性遺伝子座へと挿入することもでき、内因性配列を、例えば、トランス遺伝子との融合体として発現させないように、内因性遺伝子座へと挿入することもできる。他の場合には、トランス遺伝子(例えば、内因性遺伝子などの、さらなるコード配列を伴うかまたは伴わない)を、任意の内因性遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座へと組み込む。例えば、TCRトランス遺伝子は、内因性TCR遺伝子へと挿入することができる。例えば、
図17は、トランス遺伝子を、内因性CCR5遺伝子へと挿入し得ることを示す。トランス遺伝子は、任意の遺伝子、例えば、本明細書で記載される遺伝子へと挿入することができる。
【0362】
内因性配列をトランス遺伝子と共に(内因性配列またはトランス遺伝子の一部を)発現させる場合、内因性配列は、全長配列(野生型または突然変異体)の場合もあり、部分配列の場合もある。内因性配列は、機能的であり得る。これらの全長配列または部分配列の機能の非限定的な例は、トランス遺伝子(例えば、治療用遺伝子)が発現するポリペプチドの血清半減期を延長すること、および/または担体として作用することを含む。
【0363】
さらに、発現には要求されないが、外因性配列はまた、転写調節配列または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インシュレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列も含み得る。
【0364】
場合によって、外因性配列(例えば、トランス遺伝子)は、目的のタンパク質の融合体と、その融合パートナーとして、融合タンパク質を細胞の表面に位置させる、膜タンパク質の細胞外ドメインとを含む。場合によって、トランス遺伝子は、TCRをコードするが、この場合、TCRを発現させるように、TCRコード配列を、セーフハーバーへと挿入する。場合によって、TCRコード配列を、PD1遺伝子座および/またはCTLA−4遺伝子座へと挿入する。他の場合には、TCRを、ランダム挿入のために、レンチウイルスにより、細胞へと送達するが、PD1特異的ヌクレアーゼまたはCTLA−4特異的ヌクレアーゼを、mRNAとして供給する。場合によって、TCRを、レトロウイルス、AAV、またはアデノウイルスなどのウイルスベクター系を介して、セーフハーバー(例えば、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、CCR5、アルブミン、またはHPRT)に特異的なヌクレアーゼをコードするmRNAと共に送達する。細胞はまた、PD1特異的なヌクレアーゼおよび/またはCTLA−4特異的なヌクレアーゼをコードするmRNAで処置することもできる。場合によって、TCRをコードするポリヌクレオチドを、ウイルス送達系を介して、HPRT特異的ヌクレアーゼおよびPD1特異的ヌクレアーゼまたはCTLA−4特異的ヌクレアーゼをコードするmRNAと併せて供給する。HPRT遺伝子座に組み込んだ、TCRをコードするヌクレオチドを含む細胞は、細胞の停止を結果としてもたらす場合もあり、かつ/または細胞内でアポトーシスを惹起する場合もある、6−チオグアニン、グアニン類似体を、無傷HPRT遺伝子と共に使用して選択することができる。本発明の方法および組成物と共に使用され得るTCRは、これらのキメラタンパク質の全ての種類であって、第1世代、第2世代、および第3世代のデザインを含む種類を含む。本発明ではまた、受容体、リガンド、および操作ポリペプチドに由来する特異性ドメインも想定され得るが、抗体に由来する特異性ドメインを含むTCRが、特に有用であり得る。細胞間シグナル伝達ドメインは、ゼータ鎖、ならびにγ鎖およびε鎖など、CD3複合体の他のメンバーなどのTCR鎖に由来し得る。場合によって、TCRは、CD28、CD137(4−1BBとしてもまた公知である)、またはCD134に由来する細胞間ドメインなど、さらなる共刺激性ドメインを含み得る。なおさらなる場合には、2つの種類の共刺激因子ドメインを同時に使用することもできる(例えば、CD28+CD137と共に使用されるCD3ゼータ)。
【0365】
場合によって、操作細胞は、CD45RO(−)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L+(L−セレクチン)、CD27+、CD28+、およびIL−7Rα+から構成される、ステムメモリー(stem memory)T
SCM細胞であることが可能であり、ステムメモリー細胞はまた、CD95、IL−2Rβ、CXCR3、およびLFA−1も発現することが可能であり、ステムメモリー細胞特有の、多数の機能的な属性を示す。操作細胞はまた、L−セレクチンおよびCCR7を含む、セントラルメモリー細胞であるT
CM細胞でもあることが可能であり、この場合、セントラルメモリー細胞は、例えば、IL−2を分泌し得るが、IFNγまたはIL−4は分泌しえない。操作細胞はまた、L−セレクチンまたはCCR7を含む、エフェクターメモリー細胞であるT
EM細胞でもあることが可能であり、例えば、IFNγおよびIL−4など、エフェクターサイトカインを産生し得る。場合によって、細胞集団を、対象へと導入することができる。例えば、細胞集団は、T細胞とNK細胞との組合せであり得る。他の場合には、集団は、ナイーブ細胞とエフェクター細胞との組合せであり得る。
【0366】
相同組換えHRエンハンサーの送達
場合によって、相同組換えHRエンハンサーを使用して、非相同末端結合(NHEJ)を抑制することができる。非相同末端結合は、二本鎖切断部の末端におけるヌクレオチドの喪失を結果としてもたらすことが可能であり、非相同末端結合はまた、フレームシフトも結果としてもたらし得る。したがって、相同性により導かれる修復は、遺伝子をノックインする場合に使用するのに、より魅力的な機構であり得る。非相同末端結合を抑制するために、HRエンハンサーを送達することができる。場合によって、1つを超えるHRエンハンサーを送達することができる。HRエンハンサーは、非相同末端結合に関与するタンパク質、例えば、KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVを阻害し得る。場合によって、Scr7などのリガーゼIVインヒビターを送達することができる。場合によって、HRエンハンサーは、L755507であり得る。場合によって、異なるリガーゼIVインヒビターを使用することができる。場合によって、HRエンハンサーは、4型アデノウイルスのタンパク質、例えば、E1B55Kおよび/またはE4orf6であり得る。場合によって、化学的インヒビターを使用することができる。
【0367】
KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVなどの非相同末端結合分子は、様々な方法を使用することにより抑制することができる。例えば、KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVなどの非相同末端結合分子は、遺伝子サイレンシングにより抑制することができる。例えば、非相同末端結合分子である、KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVは、因子の転写または翻訳時において、遺伝子サイレンシングにより抑制することができる。非相同末端結合分子である、KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVはまた、因子の分解により抑制することもできる。非相同末端結合分子である、KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVはまた、阻害することもできる。KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVのインヒビターは、E1B55Kおよび/またはE4orf6を含み得る。非相同末端結合分子である、KU70、KU80、および/またはDNAリガーゼIVはまた、封鎖により阻害することもできる。遺伝子の発現は、ノックアウトにより抑制することもでき、遺伝子のプロモーターを変更することにより抑制することもでき、かつ/または因子に対する干渉性RNAを投与することにより抑制することもできる。
【0368】
非相同末端結合を抑制するHRエンハンサーは、プラスミドDNAにより送達することができる。ある場合には、プラスミドは、二本鎖DNA分子であり得る。プラスミド分子はまた、一本鎖DNAでもあり得る。プラスミドはまた、少なくとも1つの遺伝子も保有し得る。プラスミドはまた、1つを超える遺伝子も保有し得る。少なくとも1つのプラスミドもまた、使用することができる。1つを超えるプラスミドもまた、使用することができる。非相同末端結合を抑制するHRエンハンサーは、プラスミドDNAにより、CRISPR−Cas、プライマー、および/または修飾剤化合物と共に送達することができる。修飾剤化合物は、プラスミドDNAの細胞毒性を低減することが可能であり、細胞生存率を改善し得る。HRエンハンサーおよび修飾剤化合物は、ゲノム操作の前に、細胞へと導入することができる。HRエンハンサーは、低分子であり得る。場合によって、HRエンハンサーは、T細胞懸濁液へと送達することができる。HRエンハンサーは、二本鎖DNAをトランスフェクトされた細胞の生存率を改善し得る。場合によって、二本鎖DNAの導入は、毒性であり得る(
図81Aおよび
図81B)。
【0369】
非相同末端結合を抑制するHRエンハンサーは、組み込まれるHR基質と共に送達することができる。基質は、ポリ核酸であり得る。ポリ核酸は、TCRトランス遺伝子を含み得る。ポリ核酸は、mRNAとして送達することができる(
図10および
図14を参照されたい)。ポリ核酸は、TCRトランス遺伝子の組込みのための、ゲノムの内因性領域に対する組換えアームを含み得る。ポリ核酸は、ベクターであり得る。ベクターは、センスまたはアンチセンスの配向性で、別のベクター(例えば、ウイルスベクター)へと挿入することができる。ウイルスカセットの、in vitroにおける転写のために、ウイルスゲノムの5’LTR領域の上流に、T7、T3、または他の転写開始配列を置くことができる(
図3を参照されたい)。次いで、このベクターカセットを、in vitroにおける、mRNAの転写のための鋳型として使用することができる。例えば、このmRNAを、任意の細胞へと、そのコグネイトの逆転写酵素と共に送達する場合、また、mRNAまたはタンパク質としても送達する場合、トランス遺伝子カセットを、ゲノム内の意図される標的部位に組み込むのに所望される、相同組換えイベントのためのHR基質として使用され得る、二本鎖DNA(dsDNA)の形態で、数百〜数千コピーを作製するための鋳型として、一本鎖mRNAカセットを使用することができる。この方法は、CRISPRを媒介する相同組換えのための、毒性のプラスミドDNAの送達への必要性を回避し得る。加えて、各mRNA鋳型は、数百または数千コピーのdsDNAへとなるので、細胞内で利用可能な相同組換え鋳型の量は、極めて高量であり得る。高量の相同組換え鋳型は、所望の相同組換えイベントを駆動し得る。さらに、mRNAはまた、一本鎖DNAも作製し得る。一本鎖DNAはまた、例えば、組換えAAV(rAAV)による遺伝子ターゲティングと共に、相同組換えのための鋳型として使用することもできる。mRNAは、in situにおいて、DNA相同組換えのためのHRエンハンサーへと逆転写することができる。この戦略により、毒性のプラスミドDNAの送達を避けることができる。加えて、mRNAにより、相同組換え基質を、プラスミドDNAより高レベルへと増幅することもでき、かつ/または相同組換えの効率を改善することもできる。
【0370】
非相同末端結合を抑制するHRエンハンサーは、化学的インヒビターとして送達することができる。例えば、HRエンハンサーは、リガーゼIV−DNA間結合に干渉することにより作用し得る。HRエンハンサーはまた、内因性アポトーシス経路も活性化させうる。HRエンハンサーはまた、リガーゼIVインヒビターのペプチド模倣剤でもあり得る。HRエンハンサーはまた、Cas9系と共に共発現させることもできる。HRエンハンサーはまた、E1B55Kおよび/またはE4orf6など、ウイルスタンパク質と共に共発現させることもできる。HRエンハンサーはまた、SCR7、L755507、またはこれらの任意の誘導体でもあり得る。HRエンハンサーは、外因性DNAの挿入の毒性を低減する化合物と共に送達することができる。
【0371】
万一、細胞内で、一本鎖DNAの頑健な逆転写だけが生じる場合は、ウイルスベクターのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方をコードするmRNAを導入することができる(
図3を参照されたい)。この場合、両方のmRNA鎖を、細胞内で逆転写して、dsDNAを作製することもでき、かつ/または自然にアニールさせて、dsDNAを作製することもできる。
【0372】
HRエンハンサーは、初代細胞へと送達することができる。相同組換えHRエンハンサーは、任意の適する手段により送達することができる。相同組換えHRエンハンサーはまた、mRNAとして送達することもできる。相同組換えHRエンハンサーはまた、プラスミドDNAとして送達することもできる。相同組換えHRエンハンサーはまた、免疫細胞へと、CRISPR−Casと共に送達することもできる。相同組換えHRエンハンサーはまた、免疫細胞へと、CRISPR−Cas、TCR配列を含むポリ核酸、および/または外因性DNAの挿入の毒性を低減する化合物と共に送達することもできる。
【0373】
相同組換えHRエンハンサーは、任意の細胞、例えば、免疫細胞へと送達することができる。例えば、相同組換えHRエンハンサーは、初代免疫細胞へと送達することができる。相同組換えHRエンハンサーはまた、T細胞株を含むがこれらに限定されないT細胞および初代T細胞へと送達することもできる。相同組換えHRエンハンサーはまた、CD4+細胞、CD8+細胞、および/または腫瘍浸潤細胞(TIL)へと送達することもできる。相同組換えHRエンハンサーはまた、免疫細胞へと、CRISPR−Casと共に送達することもできる。
【0374】
場合によって、相同組換えHRエンハンサーを使用して、非相同末端結合を抑制することができる。場合によって、相同組換えHRエンハンサーを使用して、相同性により導かれる修復を促進することができる。場合によって、相同組換えHRエンハンサーを使用して、CRISPR−Casによる二本鎖切断の後における、相同性により導かれる修復を促進することができる。場合によって、相同組換えHRエンハンサーを使用して、CRISPR−Casによる二本鎖切断の後における、1または複数の遺伝子の、相同性により導かれる修復、ならびにノックインおよびノックアウトを促進することができる。ノックインされる遺伝子は、TCRであり得る。ノックアウトされる遺伝子はまた、任意の数の内因性チェックポイント遺伝子でもあり得る。例えば、内因性チェックポイント遺伝子は、A2AR、B7−H3、B7−H4、BTLA、CTLA−4、IDO、KIR、LAG3、PD−1、TIM−3、VISTA、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2など)、CCR5、HPRT、PPP1R12C、またはCISHからなる群から選択することができる。場合によって、遺伝子は、PD−1であり得る。場合によって、遺伝子は、内因性TCTであり得る。場合によって、遺伝子は、コード領域を含み得る。場合によって、遺伝子は、非コード領域を含み得る。
【0375】
HRエンハンサーによるHR効率の増大は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%であり得るか、またはほぼこの比率であり得る。
【0376】
HRエンハンサーによるNHEJの減少は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%であり得るか、またはほぼこの比率であり得る。
【0377】
低毒性の細胞操作
外因性ポリ核酸への細胞毒性を緩和して、T細胞を含む細胞の操作を改善することができる。例えば、細胞毒性は、ポリ核酸への細胞応答を変更することにより低減することができる。
【0378】
ポリ核酸は、細胞と接触させることができる。次いで、ポリ核酸を、細胞へと導入することができる。場合によって、ポリ核酸を用いて、細胞ゲノムを変更する。ポリ核酸の挿入の後、細胞は、死滅する場合がある。例えば、ポリ核酸の挿入は、
図18に示される通り、細胞のアポトーシスを引き起こし得る。ポリ核酸に誘導される毒性は、修飾剤化合物を使用することにより低減することができる。例えば、修飾剤化合物は、細胞の免疫センシング応答を破壊し得る。修飾剤化合物はまた、細胞のアポトーシスおよびピロトーシスも低減し得る。状況に応じて、修飾剤化合物は、アクチベーターの場合もあり、インヒビターの場合もある。修飾剤化合物は、
図19に示される経路の任意の構成要素に作用し得る。例えば、修飾剤化合物は、カスパーゼ1、TBK1、IRF3、STING、DDX41、DNA−PK、DAI、IFI16、MRE11、cGAS、2’3’−cGAMP、TREX1、AIM2、ASC、またはこれらの任意の組合せに作用し得る。修飾剤化合物はまた、生得的シグナル伝達系にも作用する場合があり、したがって、生得的シグナル伝達修飾剤であり得る。
【0379】
外因性ポリ核酸への毒性の低減は、化合物と細胞とを接触させることにより実施することができる。場合によって、細胞は、ポリ核酸と接触させる前に、化合物で前処置することができる。場合によって、化合物とポリ核酸とを、細胞へと、同時に導入する。場合によって、化合物は、ポリ核酸、HRエンハンサー、および/またはCRISPR−Casを含むカクテルとして導入することができる。
【0380】
本明細書で記載される方法および組成物において使用され得る化合物は、以下の特徴のうちの1または複数を有することが可能であり、本明細書で記載される機能のうちの1または複数を有し得る。その1または複数の機能にも拘らず、本明細書で記載される化合物は、外因性ポリヌクレオチドの毒性を減少させうる。例えば、化合物は、外因的に導入されたポリ核酸に由来する毒性を結果としてもたらす経路をモジュレートし得る。場合によって、ポリ核酸は、DNAであり得る。ポリ核酸はまた、RNAでもあり得る。ポリ核酸は、一本鎖であり得る。ポリ核酸はまた、二本鎖でもあり得る。ポリ核酸は、ベクターであり得る。ポリ核酸はまた、ネイキッドポリ核酸でもあり得る。ポリ核酸は、タンパク質をコードし得る。ポリ核酸はまた、任意の数の修飾も有し得る。ポリ核酸の修飾は、脱メチル化、CpGメチル化の付加、細菌性メチル化の除去、および/または哺乳動物性メチル化の付加であり得る。ポリ核酸はまた、細胞へと、さらなるポリ核酸、任意の数のHRエンハンサー、および/またはCRISPR−Casを含む試薬カクテルとして導入することもできる。ポリ核酸はまた、トランス遺伝子も含み得る。ポリ核酸は、TCR配列を有するトランス遺伝子を含み得る。
【0381】
化合物はまた、外因性DNAへの毒性の惹起に関与する経路もモジュレートし得る。経路は、任意の数の因子を含有し得る。例えば、因子は、DAI(IFN調節因子のDNA依存性アクチベーター)、IFN誘導性タンパク質16(IFI16)、DEADボックスポリペプチド41(DDX41)、AIM2(absent in melanoma 2)、DNA依存性タンパク質キナーゼ、環状グアノシン一リン酸−アデノシン一リン酸シンターゼ(cGAS)、STING(IFN遺伝子の刺激因子)、TANK結合性キナーゼ(TBK1)、インターロイキン1β(IL−1β)、MRE11(減数分裂組み換え11)、Trex1、カスパーゼ1(アスパルテート特異性を有するシステインプロテアーゼ)、3’修復エキソヌクレアーゼ、DAI(DNA−dependent activator of IRF)、IFI16、DDX41、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA−PK)、MRE11(減数分裂組み換え11)相同体A、および/またはIFN調節因子(IRF)3もしくは7、および/またはこれらの任意の誘導体を含み得る。
【0382】
場合によって、DNAセンシング経路は一般に、細胞内核酸の検出に関与する、1または複数のタンパク質(例えば、DNAセンシングタンパク質)を含む、任意の細胞シグナル伝達経路を指す場合があり、場合によって、外因性核酸を指す場合がある。場合によって、DNAセンシング経路は、インターフェロン(STING)の刺激因子を含み得る。場合によって、DNAセンシング経路は、DAI(DNA−dependent activator of IFN−regulatory factor)を含み得る。DNAセンシングタンパク質の非限定的な例は、3’修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1)、DEADボックスヘリカーゼ41(DDX41)、DAI(DNA−dependent activator of IFN−regulatory factor)、Z型DNA結合性タンパク質1(ZBP1)、インターフェロンガンマ誘導性タンパク質16(IFI16)、LRRFIP1(leucine rich repeat(In FLII)interacting protein 1)、DEAHボックスヘリカーゼ9(DHX9)、DEAHボックスヘリカーゼ36(DHX36)、Ku70(Lupus Ku autoantigen protein p70)である、XRCC6(X−ray repair complementing defective repair in chinese hamster cells 6)、STING(stimulator of interferon gene)、膜貫通タンパク質173(TMEM173)、TRIM32(tripartite motif containing 32)、TRIM56(tripartite motif containing 56)、β−カテニン(CTNNB1)、MyD88(myeloid differentiation primary response 88)、AIM2(absent in melanoma 2)、ASC(apoptosis−associated speck−like protein containing a CARD)、プロカスパーゼ1(pro−CASP1)、カスパーゼ1(CASP1)、プロインターロイキン1ベータ(pro−IL−1β)、プロインターロイキン18(pro−IL−18)、インターロイキン1ベータ(IL−1β)、インターロイキン18(IL−18)、インターフェロン調節因子1(IRF1)、インターフェロン調節因子3(IRF3)、インターフェロン調節因子7(IRF7)、ISRE7(interferon−stimulated response element 7)、ISRE1/7(interferon−stimulated response element 1/7)、NF−κB(nuclear factor kappa B)、RNAポリメラーゼIII(RNA Pol III)、黒色腫分化関連タンパク質5(MDA−5)、LGP2(Laboratory of Genetics and Physiology 2)、レチノイン酸誘導性遺伝子1(RIG−I)、IPS−1(mitochondrial antiviral−signaling protein)、TNF受容体関連因子3(TRAF3)、TANK(TRAF family member associated NFKB activator)、NAP1(nucleosome assembly protein 1)、TANK結合キナーゼ1(TBK1)、Atg9a(autophagy related 9A)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターフェロンラムダ1(IFNλ1)、環状GMP−AMPシンターゼ(cGAS)、AMP、GMP、環状GMP−AMP(cGAMP)、これらのタンパク質のリン酸化形態、またはこれらの任意の組合せもしくは誘導体を含む。DNAセンシング経路の一例では、DAIは、I型インターフェロンおよび他のサイトカインの産生をもたらす、IRFおよびNF−κB転写因子を活性化させる。DNAセンシング経路の別の例では、外因性の細胞内DNAを感知すると、AIM2は、インフラマソームのアセンブリーを誘発し、インターロイキンの成熟およびピロトーシスに至る。DNAセンシング経路のさらに別の例では、PolIIIのRNAは、外因性DNAを、RNAセンサーであるRIG−Iによる認識のために、RNAへと転換し得る。
【0383】
一部の態様では、本開示の方法は、1または複数の細胞へと、少なくとも1つの抗DNAセンシングタンパク質をコードする、第1のトランス遺伝子を含む核酸を導入するステップを含む。
【0384】
抗DNAセンシングタンパク質は一般に、DNAセンシング経路(例えば、DNAセンシングタンパク質)に対応するタンパク質の活性または発現レベルを変更する、任意のタンパク質を指す場合がある。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、1または複数のDNAセンシングタンパク質を分解し得る(例えば、これらの全タンパク質レベルを低減し得る)。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、1または複数のDNAセンシングタンパク質を完全に阻害し得る。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、1または複数のDNAセンシングタンパク質を部分的に阻害し得る。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、少なくとも1つのDNAセンシングタンパク質の活性を、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%阻害し得る。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、少なくとも1つのDNAセンシングタンパク質の量を、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%減少させうる。
【0385】
細胞生存率は、ゲノム操作手順中に、外因性DNAを検出する細胞の能力を阻害し得るウイルスタンパク質を導入することにより増大させることができる。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、1または複数のDNAセンシングタンパク質の翻訳を促進し得る(例えば、これらの全タンパク質レベルを上昇させうる)。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、1または複数のDNAセンシングタンパク質を保護するか、またはこれらの活性を増大させうる。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、少なくとも1つのDNAセンシングタンパク質の活性を、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%増大させうる。場合によって、抗DNAセンシングタンパク質は、少なくとも1つのDNAセンシングタンパク質の量を、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%増大させうる。場合によって、抗DNAセンシングインヒビターは、1または複数のDNAセンシングタンパク質の、競合的インヒビターまたはアクチベーターであり得る。場合によって、抗DNAセンシングインヒビターは、DNAセンシングタンパク質の、非競合的インヒビターまたはアクチベーターであり得る。
【0386】
本開示の場合によって、抗DNAセンシングタンパク質はまた、DNAセンシングタンパク質(例えば、TREX1)でもあり得る。抗DNAセンシングタンパク質の非限定的な例は、c−FLiP(cellular FLICE−inhibitory protein)、ヒトサイトメガロウイルステグメントタンパク質(HCMV pUL83)、デングウイルス特異的NS2B−NS3(DENV NS2B〜NS3)、18型ヒトパピローマウイルスE7タンパク質(HPV18 E7)、hAd5 E1A、単純ヘルペスウイルス即初期タンパク質ICP0(HSV1 ICP0)、ワクシニアウイルスB13(VACV B13)、ワクシニアウイルスC16(VACV C16)、3’修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV−NL63)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS−CoV)、B型肝炎ウイルスDNAポリメラーゼ(HBV Pol)、ブタ伝染性下痢症ウイルス(PEDV)、アデノシンデアミナーゼ(ADAR1)、E3L、p202、これらのタンパク質のリン酸化形態、およびこれらの任意の組合せまたは誘導体を含む。場合によって、HCMV pUL83は、パイリンドメインであるIFI16(例えば、核内のIFI16)と相互作用し、そのオリゴマー化、および後続の下流における活性化を遮断することにより、STING−TBK1−IRF3経路の活性化を阻害することにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。場合によって、DENV Ns2B−NS3は、STINGを分解することにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。場合によって、HPV18 E7は、STINGに結合することにより、cGAS/STING経路シグナル伝達を遮断することにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。場合によって、hAd5 E1Aは、STINGに結合することにより、cGAS/STING経路シグナル伝達を遮断することにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。例えば、
図104Aおよび
図104Bは、CRISPR系、外因性ポリ核酸、およびhAd5 E1Aタンパク質またはHPV18 E7タンパク質をトランスフェクトされた細胞を示す。場合によって、HSV1 ICP0は、IFI16の分解により、かつ/またはウイルスゲノムへのIFI16の動員を遅延させることにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。場合によって、VACV B13は、カスパーゼ1依存性のインフラマソーム(inflamasone)の活性化およびカスパーゼ8依存性の外因性アポトーシスを遮断することにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。場合によって、VACV C16は、DNAに対する生得的免疫応答を遮断し、サイトカイン発現の低下をもたらすことにより、DNAセンシング経路を破壊し得る。
【0387】
化合物は、インヒビターであり得る。化合物はまた、アクチベーターでもあり得る。化合物は、第2の化合物と組み合わせることができる。化合物はまた、少なくとも1つの化合物と組み合わせることができる。場合によって、1または複数の化合物は、相乗作用的に挙動し得る。例えば、1または複数の化合物は、
図20に示される通り、細胞へと一度に導入されると、細胞毒性を低減し得る。
【0388】
化合物は、汎カスパーゼインヒビターであるZ−VAD−FMK、および/またはZ−VAD−FMKであり得る。化合物は、外因性DNAへの毒性の惹起に関与する経路をモジュレートする、任意の数の公知の化合物の誘導体であり得る。化合物はまた、修飾することもできる。化合物は、任意の数の手段により修飾することができ、例えば、化合物への修飾は、重水素化、脂質化、グリコシル化、アルキル化、PEG化、酸化、リン酸化、硫酸化、アミド化、ビオチニル化、シトルリン化、異性体化、ユビキチン化、プロトン化、低分子のコンジュゲーション、還元、脱リン酸化、ニトロシル化、および/またはタンパク質分解を含み得る。修飾はまた、翻訳後修飾でもあり得る。修飾は、翻訳前修飾であり得る。修飾は、顕著に異なるアミノ酸側鎖またはペプチド連結において生じる場合があり、酵素的活性により媒介され得る。
【0389】
修飾は、化合物の合成内の任意のステップにおいて生じ得る。例えば、タンパク質内では、適正な化合物のフォールディングもしくは安定性を媒介するか、または新生化合物を、顕著に異なる細胞的コンパートメントへと導くように、翻訳が進行中であるかまたは完了した直後に、多くの化合物が修飾される。他の修飾は、触媒活性を活性化もしくは不活化させるか、または化合物の生体活性に他の形で影響を及ぼすように、フォールディングおよび局在化が完了した後で生じる。化合物はまた、分解のために化合物をターゲティングするタグへと、共有結合的に連結することもできる。単一の修飾のほかに、化合物は、翻訳後切断と、化合物の成熟または活性化の段階的機構を介する官能基の付加との組合せを介して修飾されることが多い。
【0390】
化合物は、I型インターフェロン(IFN)、例えば、IFN−αおよび/またはIFN−βの産生を低減し得る。化合物はまた、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)および/またはインターロイキン−1β(IL−1β)など、炎症促進性サイトカインの産生も低減し得る。化合物はまた、Janusキナーゼ(JAK)−シグナル伝達兼転写アクチベーター(STAT)経路のモジュレーションを介して、抗ウイルス遺伝子の誘導もモジュレートし得る。化合物はまた、転写因子である、NF−κB(nuclear factor κ−light−chain enhancer of activated B cells)、ならびにIFN調節因子のIRF3およびIRF7もモジュレートし得る。化合物はまた、例えば、IκBキナーゼ(IKK)複合体によるIκBのリン酸化を修飾して、NF−κBの活性化もモジュレートし得る。化合物はまた、IκBのリン酸化をモジュレートする場合もあり、IκBのリン酸化を防止する場合もある。化合物はまた、IRF3および/またはIRF7の活性化もモジュレートし得る。例えば、化合物は、IRF3および/またはIRF7の活性化をモジュレートし得る。化合物は、TBK1および/またはIKKεを活性化させうる。化合物はまた、TBK1および/またはIKKεも阻害し得る。化合物は、IRF3、IRF7、NF−κB、およびI型IFN遺伝子の転写をオンにする他の転写因子から構成される、エンハンセオソーム複合体の形成を防止し得る。修飾化合物は、TBK1化合物および少なくとも1つのさらなる化合物であり得る(
図88Aおよび
図88B)。場合によって、TBK1化合物およびカスパーゼインヒビター化合物を使用して、二本鎖DNAの毒性を低減することができる(
図89)。
【0391】
化合物は、細胞のアポトーシスおよび/またはピロトーシスを防止し得る。化合物はまた、インフラマソームの活性化も防止し得る。インフラマソームは、タンパク質分解酵素カスパーゼ1の活性化およびIL−1βの成熟を媒介する、細胞内多タンパク質複合体であり得る。化合物はまた、AIM2(absent in melanoma 2)もモジュレートし得る。例えば、化合物は、AIM2が、アダプタータンパク質であるASC(apoptosis−associated speck−like protein containing a CARD)と会合することを防止し得る。化合物はまた、PYD:PYD間同型相互作用もモジュレートし得る。化合物はまた、CARD:CARD間同型相互作用もモジュレートし得る。化合物は、カスパーゼ1をモジュレートし得る。例えば、化合物は、カスパーゼ1が、IL−1βおよびIL−18の不活性の前駆体を、成熟サイトカインへと変換する過程を阻害し得る。
【0392】
化合物は、GMP適合性細胞療法を作製するためのプラットフォームの構成要素であり得る。化合物を使用して、細胞療法を改善することができる。化合物は、試薬として使用することができる。化合物は、組合せ療法として組み合わせることができる。化合物は、ex vivoで用いることができる。化合物は、免疫療法のために使用することができる。化合物は、それを必要とする患者のためのT細胞療法を作製する工程の一部であり得る。
【0393】
場合によって、毒性を低減するのに、化合物を使用しない。場合によって、ポリ核酸を修飾してまた、毒性も低減することができる。例えば、ポリ核酸を修飾して、ポリ核酸、例えば、外因性ポリ核酸の検出を低減することができる。ポリ核酸を修飾してまた、細胞毒性も低減することができる。例えば、ポリ核酸は、
図21に描示される方法のうちの1または複数により修飾することができる。ポリ核酸はまた、in vitroで修飾することもでき、in vivoで修飾することもできる。
【0394】
化合物または修飾剤化合物は、プラスミドDNAの細胞毒性を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、またはほぼこれらの比率だけ低減し得る。修飾剤化合物は、細胞生存率を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、またはほぼこれらの比率だけ改善し得る。
【0395】
非メチル化ポリ核酸もまた、毒性を低減し得る。例えば、少なくとも1つのゲノム領域と相補的な、少なくとも2つの組換えアームで挟んだ、少なくとも1つの操作抗原受容体を含む、非メチル化ポリ核酸を使用して、細胞毒性を低減することができる。ポリ核酸はまた、ネイキッドポリ核酸でもあり得る。ポリ核酸はまた、哺乳動物性メチル化も有することが可能であり、場合によって、これも同様に、毒性を低減するであろう。場合によって、ポリ核酸はまた、細菌性メチル化を除去し、哺乳動物性メチル化を導入するように修飾することもできる。本明細書で記載される修飾のうちのいずれかを、本明細書で記載されるポリ核酸のうちのいずれかへと適用することができる。
【0396】
ポリ核酸の修飾は、脱メチル化、CpGメチル化の付加、細菌性メチル化の除去、および/または哺乳動物性メチル化の付加を含み得る。修飾は、二本鎖ポリ核酸の、一本鎖ポリ核酸への転換であり得る。また、一本鎖ポリ核酸を、二本鎖ポリ核酸へと転換することもできる。
【0397】
ポリ核酸は、メチル化(例えば、ヒト性メチル化)させて、細胞毒性を低減することができる。修飾ポリ核酸は、TCR配列またはキメラ抗原受容体(CAR)を含み得る。ポリ核酸はまた、操作細胞外受容体も含み得る。
【0398】
少なくとも1つの操作抗原受容体を含む、哺乳動物性メチル化ポリ核酸を使用して、細胞毒性を低減することができる。ポリ核酸は、哺乳動物性メチル化を含むように修飾することができる。ポリ核酸は、細胞により外来として認識されないように、哺乳動物性メチル化によるメチル化であり得る。
【0399】
ポリ核酸の修飾はまた、培養工程の一部として実施することもできる。ポリ核酸の脱メチル化は、ゲノム修飾された細菌培養物であって、細菌性メチル化を導入しない細菌培養物によりもたらすことができる。これらのポリ核酸は、哺乳動物性メチル化、例えば、ヒト性メチル化を含有するように、後で修飾することができる。
【0400】
毒性はまた、ゲノム操作手順時に、ウイルスタンパク質を導入することにより低減することもできる。例えば、ウイルスタンパク質を使用して、DNAセンシングを遮断し、外因性TCRまたはCRISPR系をコードするドナー核酸の毒性を低減することができる。DNAセンシングを遮断するように、ウイルスにより利用される逃避戦略は、ウイルス核酸の封鎖もしくは修飾;PRRもしくはそれらのアダプタータンパク質の特異的翻訳後修飾への干渉;パターン認識受容体(PRR)もしくはそれらのアダプタータンパク質の分解もしくは切断;PRRの封鎖または再局在化、またはこれらの任意の組合せであり得る。場合によって、ウイルスにより利用される逃避戦略のうちのいずれかにより、DNAセンシングを遮断し得る、ウイルスタンパク質を導入することができる。
【0401】
場合によって、ウイルスタンパク質は、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、デングウイルス(DENV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、1型単純ヘルペスウイルス(HSV1)、ワクシニアウイルス(VACV)、ヒトコロナウイルス(HCoVs)、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS−Cov)、B型肝炎ウイルス、ブタ伝染性下痢症ウイルス、またはこれらの任意の組合せなどのウイルスであり得るか、またはこれらに由来し得る。
【0402】
導入されるウイルスタンパク質は、細胞膜により密閉され得る、特異的複製コンパートメントの形成を誘導することにより、または、他の場合には、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア、またはこれらの任意の組合せなどの細胞小器官上で複製されるように、RIG−I様受容体(RLR)が、ウイルスRNAに接近することを防止し得る。例えば、本発明のウイルスは、RLRによる検出を防止するか、またはRLRの活性化を妨げる修飾を有し得る。他の場合には、RLRシグナル伝達経路を阻害し得る。例えば、Lys63結合型RIG−Iのユビキチン化を阻害または遮断して、RIG−Iシグナル伝達の活性化を防止することができる。他の場合には、ウイルスタンパク質は、RIG−Iのユビキチン化の一因となりうる、細胞内E3ユビキチンリガーゼをターゲティングし得る。ウイルスタンパク質はまた、RIG−Iのユビキチン化も除去し得る。さらに、ウイルスは、細胞内マイクロRNAの存在度をモジュレートすることにより、またはRNA−タンパク質間相互作用を介して、タンパク質間相互作用とは独立に、RIG−Iのユビキチン化(例えば、Lys63結合型)を阻害し得る。
【0403】
場合によって、RIG−Iの活性化を防止するために、ウイルスタンパク質が、ウイルスRNA内の5’−三リン酸部分をプロセシングする場合もあり、ウイルス的ヌクレアーゼが、遊離二本鎖RNA(dsRNA)を消化する場合もある。さらに、ウイルスタンパク質は、ウイルスRNAに結合して、RIG−Iによる病原体関連分子パターン(PAMP)の認識も阻害し得る。一部のウイルスタンパク質は、RIG−Iおよび/またはMDA5の特異的翻訳後修飾を操り、これにより、これらのシグナル伝達能を遮断し得る。例えば、ウイルスは、ウイルス性脱ユビキチン化酵素(DUB)をコードすることにより、Lys63結合型RIG−Iのユビキチン化を防止し得る。他の場合には、ウイルスタンパク質は、細胞内E3ユビキチンリガーゼ、TRIM25(tripartite motif protein 25)、および/またはRipletをアンタゴナイズすることが可能であり、これにより、また、RIG−Iのユビキチン化も阻害し、したがって、その活性化も阻害し得る。さらに、他の場合には、ウイルスタンパク質は、TRIM25に結合して、持続的なRIG−Iシグナル伝達も遮断し得る。MDA5の活性化を抑制するために、ウイルスタンパク質は、PP1αを媒介するかまたはPP1γを媒介する、MDA5の脱リン酸化を防止し、MDA5を、そのリン酸化不活性状態に保つことができる。例えば、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS−CoV)は、プロテインキナーゼRアクチベーター(PACT)をターゲティングして、RIG−Iをアンタゴナイズし得る。DENVウイルスに由来するNS3タンパク質は、トラフィッキング因子である14−3−3εをターゲティングして、ミトコンドリアのMAVSへの、RIG−Iの転移を防止し得る。場合によって、ウイルスタンパク質は、RIG−I、MDA5、および/またはMAVSを切断し得る。細胞内の分解経路を壊滅させて、RLR−MAVS依存性シグナル伝達を阻害するように、他のウイルスタンパク質を導入することもできる。例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)に由来するXタンパク質と、重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス(SARS−CoV)に由来する9bタンパク質とは、MAVSのユビキチン化および分解を促進し得る。
【0404】
場合によって、導入されるウイルスタンパク質は、cGAS、IFI16、STING、またはこれらの任意の組合せの免疫逃避を可能とし得る。例えば、環状GMP−AMPシンターゼ(cGAS)の活性化を防止するため、ウイルスタンパク質は、逆転写された過剰なウイルスDNAを分解するのに、細胞内3’修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1)を使用し得る。加えて、ウイルスカプシドは、逆転写されたDNAの、cGASによるセンシングを防止し得る、シクロフィリンA(CYPA)など、宿主コード因子を動員し得る。さらに、導入されるウイルスタンパク質は、ウイルスDNAおよびcGASの両方に結合して、cGASの活性を阻害し得る。他の場合には、STING(stimulator of interferon(IFN)genes)の活性化をアンタゴナイズするために、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)のポリメラーゼ(Pol)、およびヒトコロナウイルスNL63(HCoV−NL63)、重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス(SARS−CoV)のパパイン様プロテアーゼ(PLP)は、STINGのLys63結合型ユビキチン化を防止または除去する。導入されるウイルスタンパク質はまた、STINGに結合し、その活性化を阻害することもでき、STINGを切断して、それを不活化させることもできる。場合によって、IFI16を不活化させることができる。例えば、ウイルスタンパク質は、プロテアソーム分解のためにIFI16をターゲティングすることもでき、IFI16に結合して、そのオリゴマー化を防止し、これにより、その活性化を防止することもできる。
【0405】
例えば、導入されるウイルスタンパク質は、HCMV pUL83、DENV NS2B〜NS3、HPV18 E7、hAd5 E1A、HSV1 ICP0、VACV B13、VACV C16、TREX1、HCoV−NL63、SARS−Cov、HBV Pol、PEDV、またはこれらの任意の組合せであるか、またはこれらに由来し得る。ウイルスタンパク質は、アデノウイルスタンパク質であり得る。アデノウイルスタンパク質は、4型アデノウイルスのE1B55Kタンパク質、E4orf6タンパク質であり得る。ウイルスタンパク質は、B13ワクチンウイルスタンパク質であり得る。導入されるウイルスタンパク質は、細胞質DNAの認識、センシング、またはこれらの組合せを阻害し得る。
【0406】
場合によって、RIP経路を阻害し得る。他の場合には、c−FLIP(cellular FLICE(FADD−like IL−1ベータ−converting enzyme)−inhibitory protein)経路を、細胞へと導入することができる。c−FLIPは、ヒト細胞内で、長型スプライス変異体(c−FLIPL)、短型スプライス変異体(c−FLIPS)、およびc−FLIPRスプライス変異体として発現し得る。c−FLIPは、スプライス変異体として発現し得る。c−FLIPはまた、Casper、iFLICE、FLAME−1、CASH、CLARP、MRIT、またはusurpinとしても公知であり得る。c−FLIPは、FADDおよび/またはカスパーゼ8もしくはカスパーゼ10およびTRAIL受容体5(DR5)に結合し得る。この相互作用は、DISC(Death−Inducing Signaling Complex)の形成と、後続するカスパーゼカスケードの活性化とを防止する。c−FLIPLおよびc−FLIPSはまた、多様なシグナル伝達経路のほか、Akt、ERK、およびNF−κBを含むいくつかの細胞保護性および生存促進性のシグナル伝達タンパク質の活性化および/または上方調節においても、多機能性の役割を有することが公知である。場合によって、c−FLIPを、細胞へと導入して、生存率を増大させることができる。
【0407】
他の場合には、STINGを阻害し得る。場合によって、カスパーゼ経路を阻害する。DNAセンシング経路は、サイトカインベースの炎症経路および/またはインターフェロンアルファ発現経路であり得る。場合によって、少なくとも1つのDNAセンシング経路インヒビターを細胞へと導入する、多モード法を取る。場合によって、DNAセンシングのインヒビターは、細胞死を低減することが可能であり、外因性TCRトランス遺伝子の組込みの改善を可能とする。多モード法は、TBKインヒビターと組み合わせた、STING/カスパーゼインヒビターであり得る。
【0408】
正確な遺伝子改変の挿入を可能とするHDRを増強するために、本発明者らは、遺伝子サイレンシング、リガーゼIVインヒビターSCR7、または4型アデノウイルスE1B55Kタンパク質およびE4orf6タンパク質の共発現により、NHEJのカギとなる分子である、KU70、KU80、またはDNAリガーゼIVを抑制した。
【0409】
導入されるウイルスタンパク質は、プラスミドDNAの細胞毒性を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、またはほぼこれらの比率だけ低減し得る。ウイルスタンパク質は、細胞生存率を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、またはほぼこれらの比率だけ改善し得る。
【0410】
場合によって、gRNAを使用して、毒性を低減することができる。例えば、gRNAは、ベクターのフィラー領域内に結合するように操作することができる。ベクターは、ミニサークルDNAベクターであり得る。場合によって、ミニサークルベクターは、ウイルスタンパク質と共に使用することができる。他の場合には、ミニサークルベクターは、ウイルスタンパク質、および少なくとも1つのさらなる毒性低減剤と共に使用することができる。場合によって、二本鎖DNAなど、外因性DNAと関連する毒性を低減することにより、ゲノム破壊を、より効率的に実施することができる。
【0411】
場合によって、酵素を使用して、DNAの毒性を低減することができる。例えば、DpnIなどの酵素を用いて、DNAベクター上またはトランス遺伝子上のメチル化標的を除去することができる。電気穿孔の前に、ベクターまたはトランス遺伝子を、DpnIで前処理することができる。DpnIなどのIIM型制限エンドヌクレアーゼは、メチル化DNAを認識および切断することが可能である。場合によって、ミニサークルDNAを、DpnIで処理する。天然の制限エンドヌクレアーゼは、4つの群(I型、II型、III型、およびIV型)へと類別される。場合によって、DpnIなどの制限エンドヌクレアーゼ、またはCRISPR系エンドヌクレアーゼを用いて、操作細胞を調製する。
【0412】
本明細書では、操作細胞を作製する方法であって、少なくとも1つの操作アデノウイルスタンパク質またはその機能的部分を導入するステップと;少なくとも1つの外因性受容体配列をコードする、少なくとも1つのポリ核酸を導入するステップと;少なくとも1つのゲノムを、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼまたはその部分で、ゲノム的に破壊するステップとを含む方法が開示される。場合によって、アデノウイルスタンパク質またはその機能的部分は、E1B55K、E4orf6、Scr7、L755507、NS2B3、HPV18 E7、hAd5 E1A、またはこれらの組合せである。アデノウイルスタンパク質は、血清型1〜57から選択することができる。場合によって、アデノウイルスタンパク質の血清型は、血清型5である。
【0413】
場合によって、操作アデノウイルスタンパク質またはその部分は、少なくとも1つの修飾を有する。修飾は、前記アデノウイルスタンパク質の配列の、置換、挿入、欠失、または修飾であり得る。修飾は、挿入であり得る。挿入は、AGIPAの挿入であり得る。場合によって、修飾は、置換である。置換は、タンパク質配列のアミノ酸373位における、HからAへの置換であり得る。ポリ核酸は、DNAの場合もあり、RNAの場合もある。ポリ核酸は、DNAであり得る。DNAは、ミニサークルDNAであり得る。場合によって、外因性受容体配列は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、およびこれらの任意の部分または誘導体の配列からなる群から選択することができる。外因性受容体配列は、TCR配列であり得る。エンドヌクレアーゼは、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、Mega−TAL、およびこれらの任意の部分または誘導体からなる群から選択することができる。エンドヌクレアーゼは、CRISPRであり得る。CRISPRは、少なくとも1つのCasタンパク質を含み得る。Casタンパク質は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx1S、Csf1、Csf2、CsO、Csf4、Cpf1、c2c1、c2c3、Cas9HiFi、これらの相同体、またはこれらの修飾形からなる群から選択することができる。Casタンパク質は、Cas9であり得る。
【0414】
場合によって、CRISPRは、ゲノム内に、二本鎖切断を創出する。ゲノムは、少なくとも1つの遺伝子を含み得る。場合によって、外因性受容体配列を、少なくとも1つの遺伝子へと導入する。導入は、少なくとも1つの遺伝子を破壊し得る。遺伝子は、CISH、PD−1、TRA、TRB、またはこれらの組合せであり得る。細胞は、ヒト細胞であり得る。ヒト細胞は、免疫細胞であり得る。免疫細胞は、CD3+、CD4+、CD8+、またはこれらの任意の組合せであり得る。方法は、細胞を拡大するステップをさらに含み得る。
【0415】
本明細書では、操作細胞を作製する方法であって、少なくとも1つの外因性T細胞受容体(TCR)配列をコードする、少なくとも1つのポリ核酸を、ウイルスにより導入するステップと;少なくとも1つの遺伝子を、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼまたはその機能的な部分によりゲノム破壊するステップとを含む方法が開示される。場合によって、ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはこれらの任意の誘導体から選択することができる。ウイルスは、アデノ随伴ウイルス(AAV)であり得る。AAVは、血清型5であり得る。AAVは、少なくとも1つの修飾を含み得る。修飾は、化学修飾であり得る。ポリ核酸は、DNA、RNA、またはこれらの任意の修飾体であり得る。ポリ核酸は、DNAであり得る。場合によって、DNAは、ミニサークルDNAである。場合によって、ポリ核酸は、TCR配列を挟む、少なくとも1つの相同性アームをさらに含み得る。相同性アームは、少なくとも1つの遺伝子において、相補配列を含み得る。遺伝子は、内因性遺伝子であり得る。内因性遺伝子は、チェックポイント遺伝子であり得る。
【0416】
場合によって、方法は、少なくとも1つの毒性低減剤をさらに含み得る。毒性低減剤は、ウイルスタンパク質、または細胞質DNAセンシング経路のインヒビターであり得る。ウイルスタンパク質は、E1B55K、E4orf6、Scr7、L755507、NS2B3、HPV18 E7、hAd5 E1A、またはこれらの組合せであり得る。方法は、細胞の拡大をさらに含み得る。場合によって、細胞質DNAセンシング経路のインヒビターを使用することができる。細胞質DNAセンシング経路のインヒビターは、c−FLIP(cellular FLICE(FADD−like IL−1β−converting enzyme)−inhibitory protein)であり得る。
【0417】
細胞生存率、および/または1もしくは複数の細胞のゲノムへのトランス遺伝子の組込みの効率は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定することができる。場合によって、細胞生存率および/または組込みの効率は、トリパンブルー排除、TUNEL(terminal deoxynucelotidyl transferase dUTP nick end labeling)、所与の細胞表面マーカー(例えば、CD4またはCD8)の有無、テロメアの長さ、蛍光活性化細胞分取(FACS)、リアルタイムPCR、またはDroplet Digital PCRを使用して測定することができる。例えば、FACSを使用して、電気穿孔後における、トランス遺伝子の組込みの効率を検出することができる。別の例では、細胞のアポトーシスは、TUNELを使用して測定することができる。
【0418】
非ウイルス性ベクターの、細胞膜への送達
ヌクレアーゼおよび転写因子、これらをコードするポリヌクレオチド、ならびに/または任意のトランス遺伝子のポリヌクレオチド、ならびに本明細書で記載されるタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の適切な手段により、標的細胞へと送達することができる。
【0419】
適切な細胞は、真核細胞および/または真核細胞株、ならびに原核細胞および/または原核細胞株を含み得るがこれらに限定されない。このような細胞、またはこのような細胞から作製された細胞株の非限定的な例は、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NSO、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞のほか、Spodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces属、Pichia属、およびSchizosaccharomyces属などの真菌細胞を含む。場合によって、細胞株は、CHO−K1細胞株、MDCK細胞株、またはHEK293細胞株である。場合によって、適切な初代細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、およびT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆細胞、造血幹細胞、または非多能性幹細胞などであるがこれらに限定されない、他の血液細胞サブセットを含む。場合によって、細胞は、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞などの腫瘍浸潤細胞(TIL)、または他の任意の種類のT細胞など、任意のT細胞を含む、任意の免疫細胞であり得る。T細胞はまた、メモリーT細胞、メモリーステム(memory stem)T細胞、またはエフェクターT細胞も含み得る。T細胞はまた、バルク集団から選択することもでき、例えば、T細胞を、全血液から選択することもできる。T細胞はまた、バルク集団から拡大することもできる。T細胞はまた、特定の集団および表現型に偏る場合もある。例えば、T細胞は、CD45RO(−)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)、および/またはIL−7Rα(+)を表現型的に含むように、偏りうる。CD45RO(−)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)、および/またはIL−7Rα(+)を含むリストから選択される、1または複数のマーカーを含む、適切な細胞を選択することができる。適切な細胞はまた、例示を目的として述べると、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、および間葉幹細胞などの幹細胞も含み得る。適切な細胞は、ヒト細胞、非ヒト細胞、および/またはマウス細胞など、任意の数の初代細胞を含み得る。適切な細胞は、前駆細胞であり得る。適切な細胞は、処置される対象(例えば、患者)に由来し得る。適切な細胞は、ヒトドナーに由来し得る。適切な細胞は、CD45RO(−)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L+(L−セレクチン)、CD27+、CD28+、およびIL−7Rα+から構成される、ステムメモリーT
SCM細胞であることが可能であり、ステムメモリー細胞はまた、CD95、IL−2Rβ、CXCR3、およびLFA−1も発現することが可能であり、ステムメモリー細胞特有の、多数の機能的な属性を示す。適切な細胞は、L−セレクチンおよびCCR7を含む、セントラルメモリー細胞であるT
CM細胞であることが可能であり、セントラルメモリー細胞は、例えば、IL−2を分泌し得るが、IFNγまたはIL−4は分泌しえない。適切な細胞はまた、L−セレクチンまたはCCR7を含む、エフェクターメモリー細胞であるT
EM細胞でもあることが可能であり、例えば、IFNγおよびIL−4など、エフェクターサイトカインを産生し得る。
【0420】
適切な細胞を獲得する方法は、細胞を選択するステップを含み得る。場合によって、細胞は、細胞に対して選択され得るマーカーを含み得る。例えば、このようなマーカーは、GFP、耐性遺伝子、細胞表面マーカー、内因性タグを含み得る。細胞は、任意の内因性マーカーを使用して選択することができる。適切な細胞は、任意の技術を使用して選択することができる。このような技術は、フローサイトメトリーおよび/または磁気カラムを含み得る。次いで、選択した細胞を、対象へと輸注することができる。選択した細胞はまた、大きな個数へと拡大することもできる。選択した細胞は、輸注の前に拡大することができる。
【0421】
本明細書で記載される転写因子およびヌクレアーゼは、例えば、タンパク質のうちの1または複数をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することができる。トランス遺伝子をコードするポリヌクレオチドも、同様に送達することができる。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターなどを含むがこれらに限定されない、任意のベクター系を使用することができる。さらに、これらのベクターのうちのいずれかは、1または複数の転写因子、ヌクレアーゼ、および/またはトランス遺伝子も含み得る。したがって、1または複数の、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、もしくはMega−TAL分子、および/またはトランス遺伝子を、細胞へと導入する場合、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、もしくはMega−TAL分子、および/またはトランス遺伝子は、同じベクター上に保有される場合もあり、異なるベクター上に保有される場合もある。複数のベクターを使用する場合、各ベクターは、1または複数の、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、もしくはMega−TAL分子、および/またはトランス遺伝子をコードする配列を含み得る。
【0422】
従来型のウイルスベースの遺伝子導入法および非ウイルスベースの遺伝子移入法を使用して、操作されたCRISPR分子、TALEN分子、トランスポゾンベースのZEN分子、メガヌクレアーゼ分子、もしくはMega−TAL分子、および/またはトランス遺伝子をコードする核酸を、細胞(例えば、哺乳動物細胞)内および標的組織内に導入することができる。このような方法はまた、CRISPR分子、TALEN分子、トランスポゾンベースのZEN分子、メガヌクレアーゼ分子、もしくはMega−TAL分子、および/またはトランス遺伝子をコードする核酸を、in vitroで、細胞へと投与するのに使用することもできる。一部の例では、CRISPR分子、TALEN分子、トランスポゾンベースのZEN分子、メガヌクレアーゼ分子、もしくはMega−TAL分子、および/またはトランス遺伝子をコードする核酸を、in vivoまたはex vivoにおける免疫療法への使用のために投与することができる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなど、送達媒体と複合体化させた核酸を含み得る。ウイルスベクター送達系は、エピソームゲノム、または細胞への送達の後で組み込まれたゲノムを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含み得る。
【0423】
核酸の非ウイルス的送達法は、電気穿孔、リポフェクション、ヌクレオフェクション、金ナノ粒子送達、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ウィロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、mRNA、人工ビリオン、および薬剤増強型DNA取込みを含む。核酸を送達するために、例えば、Sonitron 2000システム(Rich−Mar)を使用する超音波穿孔もまた、使用することができる。
【0424】
さらなる例示的な核酸送達系は、AMAXA(登録商標)Biosystems(Cologne、Germany)、Life Technologies(Frederick、Md.)、MAXCYTE,Inc.(Rockville、Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、Mass.)、およびCopernicus Therapeutics Inc.(例えば、米国特許第6,008,336号を参照されたい)により提供されている核酸送達系を含む。リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、TRANSFECTAM(登録商標)およびLIPOFECTIN(登録商標))。送達は、細胞への送達(ex vivo投与)の場合もあり、標的組織への送達(in vivo投与)の場合もある。さらなる送達法は、送達される核酸の、EnGeneIC送達媒体(EDV)へのパッケージングの使用を含む。これらのEDVは、抗体の1つのアームが、標的組織に対する特異性を有し、他のアームがEDVに対する特異性を有する、二特異性抗体を使用して、標的組織へと特異的に送達される。抗体により、EDVは、標的細胞の表面に至り、次いで、EDVは、エンドサイトーシスにより、細胞内に至る。
【0425】
操作されたCRISPR分子、TALEN分子、トランスポゾンベースのZEN分子、メガヌクレアーゼ分子、もしくはMega−TAL分子、トランスポゾン、および/またはトランス遺伝子をコードする核酸を含有する、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含むベクターもまた、in vivoにおける細胞への形質導入のために、生物へと、直接投与することができる。代替的に、ネイキッドDNAまたはmRNAも投与することができる。投与は、分子を、血液または組織細胞と、最終的に接触させるために通常使用される経路であって、注射、注入、局所適用、および電気穿孔を含むがこれらに限定されない経路のうちのいずれかによる。1つを超える経路を使用して、特定の組成物を投与することができる。薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物、ならびに組成物を投与するのに使用される特定の方法により、部分的に決定される。
【0426】
場合によって、外因性TCRをコードするベクターは、細胞内ヌクレアーゼへとシャトリングすることができる。例えば、ベクターは、核局在化配列(NLS)を含有し得る。ベクターはまた、タンパク質またはタンパク質複合体によりシャトリングすることもできる。場合によって、Cas9は、ミニサークルベクターをシャトリングする手段として使用することができる。Casは、NLSを含み得る。場合によって、ベクターは、電気穿孔の前に、Casタンパク質とあらかじめ複合体化させることができる。シャトリングのために使用され得るCasタンパク質は、ヌクレアーゼ欠損Cas9(dCas9)タンパク質であり得る。シャトリングのために使用され得るCasタンパク質は、ヌクレアーゼコンピテントCas9であり得る。場合によって、Casタンパク質は、ガイドRNA、および外因性TCRをコードするプラスミドと、あらかじめ混合することができる。
【0427】
本明細書で開示される、ある特定の態様は、ベクターを用いうる。例えば、使用され得るベクターは、細菌用:pBs、pQE−9(Qiagen)、phagescript、PsiX174、pBluescriptSK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR54O、pRIT5(Pharmacia)。真核細胞用:pWL−neo、pSv2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPv、pMSG、pSVL(Pharmiacia)を含むがこれらに限定されない。それらが、選択された宿主内で、複製可能であり、生存する限りにおいて、他の任意のプラスミドおよびベクターもまた、使用することができる。任意のベクターおよび市販のベクター(およびこれらの変異体または誘導体)は、方法における使用のための、1または複数の組換え部位を含むように操作することができる。このようなベクターは、例えば、Vector Laboratories Inc.、Invitrogen、Promega、Novagen、NEB、Clontech、Boehringer Mannheim、Pharmacia、EpiCenter、OriGenes Technologies Inc.、Stratagene、PerkinElmer、Pharmingen、およびResearch Geneticsから得ることができる。目的の他のベクターは、pFastBac、pFastBacHT、pFastBacDUAL、pSFV、およびpTet−Splice(Invitrogen)、pEUK−C1、pPUR、pMAM、pMAMneo、pBI101、pBI121、pDR2、pCMVEBNA、およびpYACneo(Clontech)、pSVK3、pSVL、pMSG、pCH110、およびpKK232−8(Pharmacia,Inc.)、p3’SS、pXT1、pSG5、pPbac、pMbac、pMClneo、およびpOG44(Stratagene,Inc.)、およびpYES2、pAC360、pBlueBa−cHis A、B、およびC、pVL1392、pBlueBac111、pCDM8、pcDNA1、pZeoSV、pcDNA3 pREP4、pCEP4、およびpEBVHis(Invitrogen,Corp.)、ならびにこれらの変異体または誘導体などの真核細胞用発現ベクターを含む。他のベクターは、pUC18、pUC19、pBlueScript、pSPORT、コスミド、ファージミド、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌的人工染色体)、P1(Escherichia coliファージ)、pQE70、pQE60、pQE9(Qiagen)、pBSベクター、PhageScriptベクター、BlueScriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene)、pcDNA3(Invitrogen)、pGEX、pTrsfus、pTrc99A、pET−5、pET−9、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)、pSPORT1、pSPORT2、pCMVSPORT2.0およびpSYSPORT1(Invitrogen)、ならびにこれらの変異体または誘導体を含む。さらなる目的のベクターはまた、Invitrogen製のpTrxFus、pThioHis、pLEX、pTrcHis、pTrcHis2、pRSET、pBlueBa−cHis2、pcDNA3.1/His、pcDNA3.1(−)/Myc−His、pSecTag、pEBVHis、pPIC9K、pPIC3.5K、pA081S、pPICZ、pPICZA、pPICZB、pPICZC、pGAPZA、pGAPZB、pGAPZC、pBlue−Bac4.5、pBlueBacHis2、pMelBac、pSinRep5、pSinHis、pIND、pIND(SP1)、pVgRXR、pcDNA2.1、pYES2、pZEr01.1、pZErO−2.1、pCR−Blunt、pSE280、pSE380、pSE420、pVL1392、pVL1393、pCDM8、pcDNA1.1、pcDNA1.1/Amp、pcDNA3.1、pcDNA3.1/Zeo、pSe、SV2、pRc/CMV2、pRc/RSV、pREP4、pREP7、pREP8、pREP9、pREP 10、pCEP4、pEBVHis、pCR3.1、pCR2.1、pCR3.1−Uni、およびpCRBac;Pharmacia製のX ExCell、X gt11、pTrc99A、pKK223−3、pGEX−1X T、pGEX−2T、pGEX−2TK、pGEX−4T−1、pGEX−4T−2、pGEX−4T−3、pGEX−3X、pGEX−5X−1、pGEX−5X−2、pGEX−5X−3、pEZZ18、pRIT2T、pMC1871、pSVK3、pSVL、pMSG、pCH110、pKK232−8、pSL1180、pNEO、およびpUC4K;Novagen製のpSCREEN−lb(+)、pT7Blue(R)、pT7Blue−2、pCITE−4−abc(+)、pOCUS−2、pTAg、pET−32L1C、pET−30LIC、pBAC−2 cp LIC、pBACgus−2 cp LIC、pT7Blue−2 LIC、pT7Blue−2、X SCREEN−1、X BlueSTAR、pET−3abcd、pET−7abc、pET9abcd、pET11 abcd、pET12abc、pET−14b、pET−15b、pET−16b、pET−17b−pET−17xb、pET−19b、pET−20b(+)、pET−21abcd(+)、pET−22b(+)、pET−23abcd(+)、pET−24abcd(+)、pET−25b(+)、pET−26b(+)、pET−27b(+)、pET−28abc(+)、pET−29abc(+)、pET−30abc(+)、pET−31b(+)、pET−32abc(+)、pET−33b(+)、pBAC−1、pBACgus−1、pBAC4x−1、pBACgus4x−1、pBAC−3 cp、pBACgus−2 cp、pBACsurf−1、plg、Signal plg、pYX、Selecta Vecta−Neo、Selecta Vecta−Hyg、およびSelecta Vecta−Gpt;Clontech製のpLexA、pB42AD、pGBT9、pAS2−1、pGAD424、pACT2、pGAD GL、pGAD GH、pGAD10、pGilda、pEZM3、pEGFP、pEGFP−1、pEGFPN、pEGFP−C、pEBFP、pGFPuv、pGFP、p6xHis−GFP、pSEAP2−Basic、pSEAP2−Contral、pSEAP2−Promoter、pSEAP2−Enhancer、p I3gal−Basic、pl3gal−Control、p I3gal−Promoter、p I3gal−Enhancer、pCMV、pTet−Off、pTet−On、pTK−Hyg、pRetro−Off、pRetro−On、pIRES1neo、pIRES1hyg、pLXSN、pLNCX、pLAPSN、pMAMneo、pMAMneo−CAT、pMAMneo−LUC、pPUR、pSV2neo、pYEX4T−1/2/3、pYEX−S1、pBacPAK−His、pBacPAK8/9、pAcUW31、BacPAK6、pTriplEx、2Xgt10、Xgt11、pWE15、およびX TriplEx;Stratagene製のLambda ZAP II、pBK−CMV、pBK−RSV、pBluescript II KS+/−、pBluescript II SK+/−、pAD−GAL4、pBD−GAL4 Cam、pSurfscript、Lambda FIX II、Lambda DASH、Lambda EMBL3、Lambda EMBL4、SuperCos、pCR−Scrigt Amp、pCR−Script Cam、pCR−Script Direct、pBS+/−、pBC KS+/−、pBC SK+/−、Phag−escript、pCAL−n−EK、pCAL−n、pCAL−c、pCAL−kc、pET−3abcd、pET−llabcd、pSPUTK、pESP−1、pCMVLacI、pOPRSVI/MCS、pOPI3 CAT、pXT1、pSG5、pPbac、pMbac、pMClneo、pMClneo Poly A、pOG44、pOG45、pFRTI3GAL、pNE0I3GAL、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pRS413、pRS414、pRS415、およびpRS416;pPC86、pDBLeu、pDBTrp、pPC97、p2.5、pGAD1−3、pGAD10、pACt、pACT2、pGADGL、pGADGH、pAS2−1、pGAD424、pGBT8、pGBT9、pGAD−GAL4、pLexA、pBD−GAL4、pHISi、pHISi−1、placZi、pB42AD、pDG202、pJK202、pJG4−5、pNLexA、pYESTrp、ならびにこれらの変異体または誘導体も含み得る。
【0428】
これらのベクターを使用して、目的の遺伝子、例えば、トランス遺伝子、または目的の遺伝子の部分を発現させることができる。遺伝子の部分または遺伝子は、任意の方法を使用することにより挿入することができる。例えば、方法は、制限酵素ベースの技法であり得る。
【0429】
ベクターは、下記で記載される通り、in vivoにおいて、個別の患者への投与により、典型的に、全身投与(例えば、静脈内注入、腹腔内注入、筋内注入、皮下注入、または頭蓋内注入)または局所適用により送達することができる。代替的に、ベクターは、ex vivoにおいて、個別の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、T細胞、骨髄吸引物、組織生検)などの細胞へと送達することもできるが、通例、ベクターを組み込んだ細胞についての選択の後、患者への細胞の再移植がこれに続く。選択の前に、または選択の後で、細胞は、拡大することができる。ベクターは、ミニサークルベクターであり得る(
図43)。
【0430】
細胞に、ミニサークルベクターおよびCRISPR系をトランスフェクトすることができる。ミニサークルベクターの濃度は、0.5ナノグラム〜50マイクログラムであり得る。場合によって、電気穿孔により細胞へと導入され得る核酸(例えば、ssDNA、dsDNA、RNA)の量を変動させて、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化することができる。場合によって、約100ピコグラム未満の核酸を、各細胞試料(例えば、電気穿孔される、1または複数の細胞)へと添加することができる。場合によって、少なくとも約100ピコグラム、少なくとも約200ピコグラム、少なくとも約300ピコグラム、少なくとも約400ピコグラム、少なくとも約500ピコグラム、少なくとも約600ピコグラム、少なくとも約700ピコグラム、少なくとも約800ピコグラム、少なくとも約900ピコグラム、少なくとも約1マイクログラム、少なくとも約1.5マイクログラム、少なくとも約2マイクログラム、少なくとも約2.5マイクログラム、少なくとも約3マイクログラム、少なくとも約3.5マイクログラム、少なくとも約4マイクログラム、少なくとも約4.5マイクログラム、少なくとも約5マイクログラム、少なくとも約5.5マイクログラム、少なくとも約6マイクログラム、少なくとも約6.5マイクログラム、少なくとも約7マイクログラム、少なくとも約7.5マイクログラム、少なくとも約8マイクログラム、少なくとも約8.5マイクログラム、少なくとも約9マイクログラム、少なくとも約9.5マイクログラム、少なくとも約10マイクログラム、少なくとも約11マイクログラム、少なくとも約12マイクログラム、少なくとも約13マイクログラム、少なくとも約14マイクログラム、少なくとも約15マイクログラム、少なくとも約20マイクログラム、少なくとも約25マイクログラム、少なくとも約30マイクログラム、少なくとも約35マイクログラム、少なくとも約40マイクログラム、少なくとも約45マイクログラム、または少なくとも約50マイクログラムの核酸を、各細胞試料(例えば、電気穿孔される、1または複数の細胞)へと添加することができる。例えば、1マイクログラムのdsDNAを、電気穿孔のために、各細胞試料へと添加することができる。場合によって、最適のトランスフェクション効率および/または細胞生存率に要求される核酸(例えば、dsDNA)の量は、細胞型に特異的であり得る。場合によって、各試料のために使用される核酸(例えば、dsDNA)の量は、トランスフェクション効率および/または細胞生存率に直接対応し得る。例えば、ミニサークルトランスフェクションの濃度範囲を、
図70A、
図70B、および
図73に示す。5および20マイクログラムの濃度でトランスフェクトされた、ミニサークルベクターの組込みの効率についての概要について描示する、代表的なフローサイトメトリー実験を、
図74、
図78、および
図79に示す。ミニサークルベクターによりコードされるトランス遺伝子は、細胞ゲノムへと組み込まれうる。場合によって、ミニサークルベクターによりコードされるトランス遺伝子の組込みは、順方向でなされる(
図75)。他の場合には、ミニサークルベクターによりコードされるトランス遺伝子の組込みは、逆方向でなされる。
【0431】
本明細書で記載される核酸送達プラットフォーム、例えば、ヌクレオフェクションまたは電気穿孔のうちのいずれかによる、細胞のトランスフェクション効率は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、もしくは99.9%を超えうるか、またはほぼこれらの比率であり得る。
【0432】
例えば、Neon(登録商標)Transfection System(ThermoFisher Scientific)またはAMAXA(登録商標)Nucleofector(AMAXA(登録商標)Biosystems)を使用する電気穿孔もまた、細胞への核酸の送達のために使用することができる。電気穿孔パラメータは、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化するように調整することができる。電気穿孔デバイスは、指数関数的減衰、時定数、および方形波など、複数の電気波形パルスの設定項目を有し得る。あらゆる細胞型は、適用されるパルスパラメータ(例えば、電圧、キャパシタンス、および抵抗)に依存する、固有の最適電界強度(E)を有する。最適電界強度の適用は、膜貫通電圧の誘導による電気透過化であって、核酸が細胞膜を通過することを可能とする電気透過化を引き起こす。場合によって、電気穿孔パルスの電圧、電気穿孔パルス幅、パルス数、細胞密度、およびチップ型は、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化するように調整することができる。
【0433】
場合によって、電気穿孔パルスの電圧を変動させて、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化することができる。場合によって、電気穿孔電圧は、約500ボルト未満であり得る。場合によって、電気穿孔電圧は、少なくとも約500ボルト、少なくとも約600ボルト、少なくとも約700ボルト、少なくとも約800ボルト、少なくとも約900ボルト、少なくとも約1000ボルト、少なくとも約1100ボルト、少なくとも約1200ボルト、少なくとも約1300ボルト、少なくとも約1400ボルト、少なくとも約1500ボルト、少なくとも約1600ボルト、少なくとも約1700ボルト、少なくとも約1800ボルト、少なくとも約1900ボルト、少なくとも約2000ボルト、少なくとも約2100ボルト、少なくとも約2200ボルト、少なくとも約2300ボルト、少なくとも約2400ボルト、少なくとも約2500ボルト、少なくとも約2600ボルト、少なくとも約2700ボルト、少なくとも約2800ボルト、少なくとも約2900ボルト、または少なくとも約3000ボルトであり得る。場合によって、最適のトランスフェクション効率および/または細胞生存率に要求される電気穿孔パルスの電圧は、細胞型に特異的であり得る。例えば、1900ボルトの電気穿孔電圧は、マクロファージ細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。別の例では、約1350ボルトの電気穿孔電圧は、Jurkat細胞、またはT細胞などの初代ヒト細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。場合によって、電気穿孔電圧の範囲は、所与の細胞型に最適であり得る。例えば、約1000ボルト〜約1300ボルトの間の電気穿孔電圧は、ヒト578T細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。
【0434】
場合によって、電気穿孔パルス幅を変動させて、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化することができる。場合によって、電気穿孔パルス幅は、約5ミリ秒未満であり得る。場合によって、電気穿孔幅は、少なくとも約5ミリ秒、少なくとも約6ミリ秒、少なくとも約7ミリ秒、少なくとも約8ミリ秒、少なくとも約9ミリ秒、少なくとも約10ミリ秒、少なくとも約11ミリ秒、少なくとも約12ミリ秒、少なくとも約13ミリ秒、少なくとも約14ミリ秒、少なくとも約15ミリ秒、少なくとも約16ミリ秒、少なくとも約17ミリ秒、少なくとも約18ミリ秒、少なくとも約19ミリ秒、少なくとも約20ミリ秒、少なくとも約21ミリ秒、少なくとも約22ミリ秒、少なくとも約23ミリ秒、少なくとも約24ミリ秒、少なくとも約25ミリ秒、少なくとも約26ミリ秒、少なくとも約27ミリ秒、少なくとも約28ミリ秒、少なくとも約29ミリ秒、少なくとも約30ミリ秒、少なくとも約31ミリ秒、少なくとも約32ミリ秒、少なくとも約33ミリ秒、少なくとも約34ミリ秒、少なくとも約35ミリ秒、少なくとも約36ミリ秒、少なくとも約37ミリ秒、少なくとも約38ミリ秒、少なくとも約39ミリ秒、少なくとも約40ミリ秒、少なくとも約41ミリ秒、少なくとも約42ミリ秒、少なくとも約43ミリ秒、少なくとも約44ミリ秒、少なくとも約45ミリ秒、少なくとも約46ミリ秒、少なくとも約47ミリ秒、少なくとも約48ミリ秒、少なくとも約49ミリ秒、または少なくとも約50ミリ秒であり得る。場合によって、最適のトランスフェクション効率および/または細胞生存率に要求される電気穿孔パルス幅は、細胞型に特異的であり得る。例えば、30ミリ秒の電気穿孔パルス幅は、マクロファージ細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。別の例では、約10ミリ秒の電気穿孔幅は、Jurkat細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。場合によって、電気穿孔幅の範囲は、所与の細胞型に最適であり得る。例えば、約20ミリ秒〜約30ミリ秒の間の電気穿孔幅は、ヒト578T細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。
【0435】
場合によって、電気穿孔パルスの数を変動させて、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化することができる。場合によって、電気穿孔は、単一のパルスを含み得る。場合によって、電気穿孔は、1つを超えるパルスを含み得る。場合によって、電気穿孔は、2つのパルス、3つのパルス、4つのパルス、5つのパルス6つのパルス、7つのパルス、8つのパルス、9つのパルス、または10もしくはそれよりも多いパルスを含み得る。場合によって、最適のトランスフェクション効率および/または細胞生存率に要求される電気穿孔パルスの数は、細胞型に特異的であり得る。例えば、単一のパルスによる電気穿孔は、マクロファージ細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。別の例では、3つのパルスによる電気穿孔は、初代細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。場合によって、電気穿孔幅の範囲は、所与の細胞型に最適であり得る。例えば、約1つ〜約3つの間のパルスによる電気穿孔は、ヒト細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。
【0436】
場合によって、電気穿孔のための出発細胞密度を変動させて、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化することができる。場合によって、電気穿孔のための出発細胞密度は、細胞約1×10
5個未満であり得る。場合によって、電気穿孔のための出発細胞密度は、細胞少なくとも約1×10
5個、細胞少なくとも約2×10
5個、細胞少なくとも約3×10
5個、細胞少なくとも約4×10
5個、細胞少なくとも約5×10
5個、細胞少なくとも約6×10
5個、細胞少なくとも約7×10
5個、細胞少なくとも約8×10
5個、細胞少なくとも約9×10
5個、細胞少なくとも約1×10
6個、細胞少なくとも約1.5×10
6個、細胞少なくとも約2×10
6個、細胞少なくとも約2.5×10
6個、細胞少なくとも約3×10
6個、細胞少なくとも約3.5×10
6個、細胞少なくとも約4×10
6個、細胞少なくとも約4.5×10
6個、細胞少なくとも約5×10
6個、細胞少なくとも約5.5×10
6個、細胞少なくとも約6×10
6個、細胞少なくとも約6.5×10
6個、細胞少なくとも約7×10
6個、細胞少なくとも約7.5×10
6個、細胞少なくとも約8×10
6個、細胞少なくとも約8.5×10
6個、細胞少なくとも約9×10
6個、細胞少なくとも約9.5×10
6個、細胞少なくとも約1×10
7個、細胞少なくとも約1.2×10
7個、細胞少なくとも約1.4×10
7個、細胞少なくとも約1.6×10
7個、細胞少なくとも約1.8×10
7個、細胞少なくとも約2×10
7個、細胞少なくとも約2.2×10
7個、細胞少なくとも約2.4×10
7個、細胞少なくとも約2.6×10
7個、細胞少なくとも約2.8×10
7個、細胞少なくとも約3×10
7個、細胞少なくとも約3.2×10
7個、細胞少なくとも約3.4×10
7個、細胞少なくとも約3.6×10
7個、細胞少なくとも約3.8×10
7個、細胞少なくとも約4×10
7個、細胞少なくとも約4.2×10
7個、細胞少なくとも約4.4×10
7個、細胞少なくとも約4.6×10
7個、細胞少なくとも約4.8×10
7個、または細胞少なくとも約5×10
7個であり得る。場合によって、最適のトランスフェクション効率および/または細胞生存率に要求される電気穿孔のための出発細胞密度は、細胞型に特異的であり得る。例えば、電気穿孔のための出発細胞密度であって、細胞1.5×10
6個の出発細胞密度は、マクロファージ細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。別の例では、電気穿孔のための出発細胞密度であって、細胞5×10
6個の出発細胞密度は、ヒト細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。場合によって、電気穿孔のための出発細胞密度の範囲は、所与の細胞型に最適であり得る。例えば、電気穿孔のための出発細胞密度であって、細胞5.6×10
6〜5×10
7個の間の出発細胞密度は、T細胞などのヒト細胞に最適であり得る(例えば、最高の生存率および/またはトランスフェクション効率をもたらし得る)。
【0437】
例えば、CRISPR系による、外因性TCRをコードする核酸配列の、細胞ゲノムへの組込みの効率は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、もしくは99.9%を超えうるか、またはほぼこれらの比率であり得る。
【0438】
TCRなど、外因性ポリ核酸の組込みは、任意の技法を使用して測定することができる。例えば、組込みは、フローサイトメトリー、Surveyorヌクレアーゼアッセイ(
図56)、TIDE(tracking of indels by decomposition)(
図71および
図72)、ジャンクションPCR、またはこれらの任意の組合せにより測定することができる。代表的なTIDE解析を、PD−1ガイドRNAおよびCTLA−4ガイドRNAについて示される、遺伝子編集効率パーセントについて示す(
図35および
図36)。CISHガイドRNAについての代表的なTIDE解析を、
図62〜
図67Aおよび67Bにより示す。他の場合には、トランス遺伝子の組込みは、PCRにより測定することができる(
図77、
図80、および
図95)。
【0439】
診断法、研究、または遺伝子治療のために、ex vivoにおける細胞へのトランスフェクション(例えば、トランスフェクトされた細胞の、宿主生物への再輸注を介する)もまた、使用することができる。場合によって、細胞は、対象生物から単離し、核酸(例えば、遺伝子またはcDNA)をトランスフェクトし、対象生物(例えば、患者)へと再輸注し戻すことができる。
【0440】
患者において治療的に有効であるのに必要な細胞の量は、細胞の生存率と、細胞を遺伝子改変した効率(例えば、トランス遺伝子が1または複数の細胞へと組み込まれた効率)とに応じて変動し得る。場合によって、遺伝子改変後における細胞の生存率と、トランス遺伝子の組込みの効率との積(例えば、乗算の結果)は、対象への投与に利用可能な細胞の治療用アリコートに対応し得る。場合によって、遺伝子改変後における細胞生存率の増大は、患者において治療的に有効な投与に必要な細胞の量の減少に対応し得る。場合によって、トランス遺伝子が1または複数の細胞へと組み込まれた効率の増大は、患者において治療的に有効な投与に必要な細胞の量の減少に対応し得る。場合によって、治療的に有効であるのに必要な細胞の量の決定は、細胞生存率の、時間経過にわたる変化に対応する関数の決定を含み得る。場合によって、治療的に有効であるのに必要な細胞の量の決定は、トランス遺伝子を1または複数の細胞へと組み込みうる効率の、時間依存的な変数(例えば、細胞の培養時間、電気穿孔時間、細胞の刺激時間)に対する変化に対応する関数の決定を含み得る。
【0441】
a.機能的移植
移植前、移植後、および/または移植時における細胞(例えば、操作細胞または操作された初代T細胞)は、機能的であり得る。例えば、移植された細胞は、移植後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、6、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100日間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、移植後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、移植後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、もしくは30年間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。場合によって、移植された細胞は、最長でレシピエントの生涯にわたり機能的であり得る。
【0442】
さらに、移植された細胞は、その意図される正常な働きの100%で機能し得る。移植された細胞はまた、その意図される正常な働きの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%でも機能し得る。
【0443】
移植された細胞はまた、その意図される正常な働きの100%を超えても機能し得る。例えば、移植された細胞は、その意図される正常な働きの110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000%、またはそれよりも多く機能し得る。
【0444】
医薬組成物および医薬製剤
全体を通して記載される組成物は、医薬への製剤化であることが可能であり、それを必要とするヒトまたは哺乳動物であって、疾患、例えば、がんを伴うと診断されたヒトまたは哺乳動物を処置するのに使用することができる。これらの医薬は、1または複数のT細胞(例えば、操作T細胞)と共に、1または複数の化学療法剤または化学療法化合物と併せて、ヒトまたは哺乳動物へと共投与することができる。
【0445】
本明細書で使用される「化学療法剤」または「化学療法化合物」およびこれらの文法的同等物は、がんの処置において有用な化合物であり得る。開示されるT細胞と組み合わせて使用され得るがん化学療法剤は、有糸分裂インヒビター(ビンカアルカロイド)を含むがこれらに限定されない。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびNavelbine(商標)(ビノレルビン;5’−ノルアンヒドロブラスチン)を含む。さらに他の場合には、がん化学療法剤は、カンプトテシン化合物などのトポイソメラーゼIインヒビターを含む。本明細書で使用される「カンプトテシン化合物」は、Camptosar(商標)(イリノテカンHCL)、Hycamtin(商標)(トポテカンHCL)、ならびにカンプトテシンおよびその類似体に由来する他の化合物を含む。本明細書で開示される方法および組成物において使用され得るがん化学療法剤の別の類別は、エトポシド、テニポシド、およびミトポドジドなどのポドフィロトキシン誘導体である。本開示はさらに、アルキル化剤として公知の、他のがん化学療法剤であって、腫瘍細胞内の遺伝子素材をアルキル化するがん化学療法剤も包含する。これらは、限定なしに、シスプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロランブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、およびダカルバジンを含む。本開示は、化学療法剤としての代謝拮抗剤を包含する。これらの種類の薬剤の例は、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン、およびプロカルバジンを含む。本明細書で開示される方法および組成物において使用され得るがん化学療法剤のさらなる類別は、抗生剤を含む。例は、限定なしに、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、およびダウノマイシンを含む。これらの化合物のために、多数のリポソーム製剤が市販されている。本開示はさらに、限定なしに、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、イホスファミド、およびミトキサントロンを含む、他のがん化学療法剤も包含する。
【0446】
本明細書で開示されるT細胞は、細胞傷害剤/抗新生物剤および抗血管新生剤を含む、他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。細胞傷害剤/抗新生物剤は、がん細胞を攻撃し、死滅させる薬剤と規定することができる。一部の細胞傷害剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞内の遺伝子素材をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロランブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、およびダカルバジン(dacabazine)であり得る。他の細胞傷害剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞のための代謝拮抗剤、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン、およびプロカルバジンであり得る。他の細胞傷害剤/抗新生物剤は、抗生剤、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、およびダウノマイシンであり得る。これらの化合物のために、多数のリポソーム製剤が市販されている。さらに他の細胞傷害剤/抗新生物剤は、有糸分裂インヒビター(ビンカアルカロイド)であり得る。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびエトポシドを含む。種々の細胞傷害剤/抗新生物剤は、タキソールおよびその誘導体、L−アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM−26、イホスファミド、ミトキサントロン、およびビンデシンを含む。
【0447】
抗血管新生剤もまた、使用することができる。開示される方法および組成物における使用に適する抗血管新生剤は、ヒト化抗体およびキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。他の血管新生インヒビターは、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(αおよびβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、ならびにTIMP−1およびTIMP−2(tissue inhibitors of metalloproteinase−1およびtissue inhibitors of metalloproteinase−2)を含む。抗血管新生活性を伴うトポイソメラーゼIIインヒビターである、ラゾキサンなどのトポイソメラーゼインヒビターを含む低分子もまた使用することができる。
【0448】
開示されるT細胞と組み合わせて使用され得る他の抗がん剤は、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アデルスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アバスチン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸エステルナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸エステル;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−Ia;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メレンゲストロール酢酸エステル;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロシン;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩を含むがこれらに限定されない。他の抗がん薬は、20−epi−1,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アデルスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生インヒビター;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アントラレリックス;ADMP(anti−dorsalizing morphogenetic protein)−1;前立腺癌用の抗アンドロゲン;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節剤;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ−アレチン;ベータクラマイシンB;ベツリン酸;bFGFインヒビター;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポックスIL−2;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキサミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来インヒビター;カルゼレシン;カゼインキナーゼインヒビター(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン:ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;9−ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルニシン塩酸塩;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼインヒビター;ゲムシタビン;グルタチオンインヒビター;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子1受容体インヒビター;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;4−イポメアノール;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリンNトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害性因子;白血球アルファインターフェロン;ロイポロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシンインヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIFインヒビター;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシンである線維芽細胞成長因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;ヒト絨毛性ゴナドトロピンに対するモノクローナル抗体;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子インヒビター;multiple tumor suppressor 1ベースの治療;マスタード系抗がん剤;ミカペロキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N置換ベンザミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン:ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;窒素酸化物による抗酸化剤;ニトルリン;O6−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼインヒビター;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター;白金複合体;白金化合物;白金−トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソームインヒビター;プロテインAベースの免疫モジュレーター;プロテインキナーゼCインヒビター;小型藻類のプロテインキナーゼCインヒビター;プロテインチロシンホスファターゼインヒビター;プリンヌクレオシドホスホリラーゼインヒビター;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラ
モセトロン;rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター;rasインヒビター;ras−GAPインヒビター;脱メチル化レテリプチン;レニウム(Re186)エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老齢由来インヒビター1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達インヒビター;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合性タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプテートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合性タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞インヒビター;幹細胞分裂インヒビター;スチピアミド;ストロメリシンインヒビター;スルフィノシン;過活動血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼインヒビター;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チロコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激性ホルモン;エチルエチオプルプリンすず;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳インヒビター;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼインヒビター;チルホスチン;UBCインヒビター;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;赤血球遺伝子治療のためのベクター系;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーを含むがこれらに限定されない。一実施形態では、抗がん薬は、5−フルオロウラシル、タキソール、またはロイコボリンである。
【0449】
場合によって、例えば、がんを処置する組成物、製剤、および方法において、投与される組成物または製剤の単位投与量は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mgであり得る。場合によって、投与される組成物または製剤の総量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100gであり得る。
【0450】
場合によって、本発明は、T細胞を含む医薬組成物であって、単独で、または薬学的に許容される担体または賦形剤と併せて、任意の経路により投与され得る医薬組成物を提供するが、このような投与は、単回投与および複数回投与の両方で実行することができる。より特定すると、医薬組成物は、多様な薬学的に許容される不活性の担体であって、錠剤、カプセル、薬用ドロップ、トローチ、ハンドキャンディー、粉剤、スプレー、水性懸濁液、注射用溶液、エリキシル剤、シロップなどの形態の担体と組み合わせることができる。このような担体は、固体の希釈剤または充填剤、滅菌水性媒体、および多様な非毒性有機溶媒などを含む。さらに、このような経口医薬製剤は、このような目的で一般に利用される多様な種類の薬剤により、適切に甘味および/または芳香添加することができる。
【0451】
例えば、細胞は、患者へと、任意の数の妥当な処置モダリティーであって、抗ウイルス療法であるシドフォビルおよびインターロイキン2またはシタラビン(ARA−Cとしてもまた公知である)などの薬剤による処置を含むがこれらに限定されないモダリティーと共に(例えば、これらの前に、これらと同時に、またはこれらの後で)投与することができる。場合によって、操作細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、およびFK506、抗体、またはCAMPATHなど、他の免疫除去剤、抗CD3抗体または他の抗体療法、細胞毒素(cytoxin)、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸(mycoplienolic acid)、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および放射線照射と組み合わせて使用することができる。操作細胞組成物はまた、患者へと、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体を使用するT細胞除去療法と共に(例えば、これらの前に、これらと同時に、またはこれらの後で)投与することもできる。場合によって、本発明の操作細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えば、RituxanなどのB細胞除去療法の後で投与することができる。例えば、対象は、高用量化学療法による標準的な処置に続き、末梢血幹細胞移植を経る場合がある。ある特定の場合には、移植後、対象は、本発明の操作細胞、例えば、拡大された操作細胞の輸注を受けることができる。加えて、拡大された操作細胞は、手術の前に投与することもでき、手術の後で投与することもできる。本発明の特定の態様では、それを必要とする患者を、宿主対移植片(HvG)拒絶および移植片対宿主病(GvHD)に対して処置するために、本明細書で記載される方法のうちのいずれか1つにより得られる操作細胞を使用することができる。したがって、それを必要とする患者を、宿主対移植片(HvG)拒絶および移植片対宿主病(GvHD)に対して処置する方法であって、患者へと、有効量の操作細胞であり、不活化TCRアルファ遺伝子および/または不活化TCRベータ遺伝子を含む操作細胞を投与することにより患者を処置するステップを含む方法が想定される。
【0452】
使用法
細胞は、本明細書で記載される通り、ヒトから抽出することができる。細胞は、ex vivoにおいて遺伝子的に変更し、状況に応じて使用することができる。これらの細胞は、細胞ベースの治療のために使用することができる。これらの細胞を使用して、レシピエント(例えば、ヒト)における疾患を処置することができる。例えば、これらの細胞を使用して、がんを処置することができる。
【0453】
本明細書では、レシピエントにおける疾患(例えば、がん)を処置する方法であって、レシピエントへの、操作細胞を含む、1または複数の細胞(臓器および/または組織を含む)の移植を含む方法について記載される。細胞内ゲノム移植により調製される細胞を使用して、がんを処置することができる。
【0454】
本明細書では、レシピエントにおける疾患(例えば、がん)を処置する方法であって、レシピエントへの、操作細胞を含む、1または複数の細胞(臓器および/または組織を含む)の移植を含む方法について記載される。場合によって、細胞5×10
10個を、患者へと投与する。他の場合には、細胞5×10
11個を、患者へと投与する。
【0455】
一部の実施形態では、細胞約5×10
10個を、対象へと投与する。一部の実施形態では、細胞約5×10
10個は、対象へと投与される細胞の量の中央値を表す。一部の実施形態では、細胞約5×10
10個は、対象において、治療応答をもたらすのに必要である。一部の実施形態では、細胞少なくとも約1×10
7個、細胞少なくとも約2×10
7個、細胞少なくとも約3×10
7個、細胞少なくとも約4×10
7個、細胞少なくとも約5×10
7個、細胞少なくとも約6×10
7個、細胞少なくとも約6×10
7個、細胞少なくとも約8×10
7個、細胞少なくとも約9×10
7個、細胞少なくとも約1×10
8個、細胞少なくとも約2×10
8個、細胞少なくとも約3×10
8個、細胞少なくとも約4×10
8個、細胞少なくとも約5×10
8個、細胞少なくとも約6×10
8個、細胞少なくとも約6×10
8個、細胞少なくとも約8×10
8個、細胞少なくとも約9×10
8個、細胞少なくとも約1×10
9個、細胞少なくとも約2×10
9個、細胞少なくとも約3×10
9個、細胞少なくとも約4×10
9個、細胞少なくとも約5×10
9個、細胞少なくとも約6×10
9個、細胞少なくとも約6×10
9個、細胞少なくとも約8×10
9個、細胞少なくとも約9×10
9個、細胞少なくとも約1×10
10個、細胞少なくとも約2×10
10個、細胞少なくとも約3×10
10個、細胞少なくとも約4×10
10個、細胞少なくとも約5×10
10個、細胞少なくとも約6×10
10個、細胞少なくとも約6×10
10個、細胞少なくとも約8×10
10個、細胞少なくとも約9×10
10個、細胞少なくとも約1×10
11個、細胞少なくとも約2×10
11個、細胞少なくとも約3×10
11個、細胞少なくとも約4×10
11個、細胞少なくとも約5×10
11個、細胞少なくとも約6×10
11個、細胞少なくとも約6×10
11個、細胞少なくとも約8×10
11個、細胞少なくとも約9×10
11個、または細胞少なくとも約1×10
12個である。例えば、細胞約5×10
10個を、対象へと投与することができる。別の例では、細胞3×10
6個で始めて、細胞を、細胞約5×10
10個へと拡大し、対象へと投与することができる。場合によって、細胞は、治療に十分な数へと拡大する。例えば、細胞5×10
7個は急速な拡大を経て、治療的使用に十分な数を作製することができる。場合によって、治療的使用に十分な数は、5×10
10個であり得る。任意の数の細胞を、治療的使用のために輸注することができる。例えば、患者に、端点を含む、1×10
6〜5×10
12個の間の数の細胞を輸注することができる。患者に、患者のために作製し得るだけの数の細胞を輸注することができる。場合によって、患者へと輸注される細胞は、全てが操作細胞であるわけではない。例えば、患者へと輸注される細胞のうちの、少なくとも90%は、操作細胞であり得る。他の場合には、患者へと輸注される細胞のうちの、少なくとも40%は、操作細胞であり得る。
【0456】
一部の実施形態では、本開示の方法は、対象へと、対象において治療的応答をもたらすのに必要な量の操作細胞を計算および/または投与するステップを含む。一部の実施形態では、治療的応答をもたらすのに必要な操作細胞の量の計算は、細胞の生存率および/またはトランス遺伝子が細胞ゲノムへと組み込まれた効率を含む。一部の実施形態では、対象において治療的応答をもたらすために、対象へと投与される細胞は、生細胞であり得る。一部の実施形態では、対象において治療的応答をもたらすために、細胞のうちの、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%は、生細胞である。一部の実施形態では、対象において治療的応答をもたらすために、対象へと投与される細胞は、細胞ゲノムへの、1または複数のトランス遺伝子の組込みに成功した細胞であり得る。一部の実施形態では、対象において治療的応答をもたらすために、細胞のうちの、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%は、細胞ゲノムへの、1または複数のトランス遺伝子の組込みに成功している。
【0457】
本明細書で開示される方法を、がん、心血管疾患、肺疾患、肝臓疾患、皮膚疾患、または神経疾患を含むがこれらに限定されない疾患を処置または予防するために使用することができる。
【0458】
移植は、任意の種類の移植による移植であり得る。部位は、肝臓被膜下腔、脾臓被膜下腔、腎臓被膜下腔、網、胃または腸粘膜下層、小腸の血管セグメント、静脈嚢、精巣、脳、脾臓、または角膜を含み得るがこれらに限定されない。例えば、移植は、被膜下移植であり得る。移植はまた、筋内移植でもあり得る。移植は、門脈内移植であり得る。
【0459】
移植は、ヒトに由来する1または複数の細胞の移植であり得る。例えば、1または複数の細胞は、脳、心臓、肺、眼、胃、膵臓、腎臓、肝臓、腸、子宮、膀胱、皮膚、毛髪、爪、耳、腺、鼻、口腔、口唇、脾臓、歯茎、歯、舌、唾液腺、扁桃腺、咽頭、食道、大腸、小腸、直腸、肛門、甲状腺、胸腺、骨、軟骨、腱、靭帯、腎上体、骨格筋、平滑筋、血管、血液、脊髄、気管、尿管、尿道、視床下部、下垂体、幽門、副腎、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精嚢、陰茎、リンパ、リンパ節、またはリンパ管であり得る臓器に由来し得る。1または複数の細胞はまた、脳、心臓、肝臓、皮膚、腸、肺、腎臓、眼、小腸、または膵臓にも由来し得る。1または複数の細胞は、膵臓、腎臓、眼、肝臓、小腸、肺、または心臓に由来し得る。1または複数の細胞は、膵臓に由来し得る。1または複数の細胞は、膵島細胞、例えば、膵β細胞であり得る。1または複数の細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、リンパ球、単球、またはマクロファージなど、任意の血液細胞であり得る。1または複数の細胞は、リンパ球、B細胞、またはT細胞など、任意の免疫細胞であり得る。
【0460】
本明細書で開示される方法はまた、1または複数の細胞を移植するステップも含むことが可能であり、この場合、1または複数の細胞は、任意の細胞型であり得る。例えば、1または複数の細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、角化細胞、造血系細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、リンパ球(Bリンパ球およびTリンパ球)、マクロファージ、単球、単核細胞、心筋細胞(cardiac muscle cell)、他の筋肉細胞、顆粒膜細胞、卵丘細胞、表皮細胞、内皮細胞、膵島細胞、血液細胞、血液前駆体細胞、骨細胞、骨前駆体細胞、神経幹細胞、始原幹細胞、肝細胞、角化細胞、臍帯静脈内皮細胞、大動脈内皮細胞、細小血管内皮細胞、線維芽細胞、肝星細胞、大動脈平滑筋細胞、心筋細胞(cardiac myocyte)、ニューロン、クッパー細胞、平滑筋細胞、シュワン細胞、および上皮細胞、赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、脂肪細胞、軟骨細胞、膵島細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、耳下腺細胞、腫瘍細胞、グリア細胞、星状細胞、赤血球、白血球、マクロファージ、上皮細胞、体細胞、下垂体細胞、副腎細胞、毛髪細胞、膀胱細胞、腎細胞、網膜細胞、杆体細胞、錐体細胞、心臓細胞、ペースメーカー細胞、脾臓細胞、抗原提示細胞、メモリー細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、筋肉細胞、卵巣細胞、子宮細胞、前立腺細胞、膣上皮細胞、精子細胞、精巣細胞、胚細胞、卵細胞、ライディッヒ細胞、精管周囲細胞、セルトリ細胞、黄体細胞、子宮頸部細胞、子宮内膜細胞、乳腺細胞、濾胞細胞、粘膜細胞、繊毛細胞、非角化上皮細胞、角化上皮細胞、肺細胞、杯細胞、円柱上皮細胞、ドーパミン作動性(dopamiergic)細胞、扁平上皮上皮細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、ドーパミン作動性細胞、胚性幹細胞、線維芽細胞、および胎児線維芽細胞であり得る。さらに、1または複数の細胞は、膵島細胞および/または膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞(例えば、PP細胞)、もしくは膵ε細胞を含むがこれらに限定されない細胞クラスターなどであり得る。1つの場合には、1または複数の細胞は、膵α細胞であり得る。別の場合には、1または複数の細胞は、膵β細胞であり得る。
【0461】
ドナーは、胎児、新生児、若齢者、および成年者を含むがこれらに限定されない、任意の発生段階にあり得る。例えば、ドナーT細胞は、成体ヒトから単離することができる。ドナーヒトT細胞は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1歳未満であり得る。例えば、T細胞は、6歳未満のヒトから単離することができる。T細胞はまた、3歳未満のヒトから単離することもできる。ドナーは、10歳より高齢であり得る。
【0462】
a.移植
本明細書で開示される方法は、移植を含み得る。移植は、自家移植、同種移植、異種移植、または他の任意の移植であり得る。例えば、移植は、異種移植であり得る。移植はまた、同種移植でもあり得る。
【0463】
本明細書で使用される「異種移植(xenotransplantation)」およびその文法的同等物は、細胞、組織、または臓器の、レシピエントへの、移植、植込み、または輸注を伴う任意の手順であって、レシピエントとドナーとが異なる種である手順を包含し得る。本明細書で記載される、細胞、臓器、および/または組織の移植は、ヒトへの異種移植(xenotransplantation)のために使用することができる。異種移植(xenotransplantation)は、血管化異種移植(xenotransplant)、部分血管化異種移植(xenotransplant)、非血管化異種移植(xenotransplant)、異種ドレッシング、異種バンデッジ、および異種構造を含むがこれらに限定されない。
【0464】
本明細書で使用される「同種移植(allotransplantation)」およびその文法的同等物(例えば、同種移植(allogenic transplantation))は、細胞、組織、または臓器の、レシピエントへの、移植、植込み、または輸注を伴う任意の手順であって、レシピエントとドナーとが同じ種であるが異なる個体である手順を包含し得る。本明細書で記載される、細胞、臓器、および/または組織の移植は、ヒトへの同種移植(allotransplantation)のために使用することができる。同種移植(allotransplantation)は、血管化同種移植(allotransplant)、部分血管化同種移植(allotransplant)、非血管化同種移植(allotransplant)、同種ドレッシング、同種バンデッジ、および同種構造を含むがこれらに限定されない。
【0465】
本明細書で使用される「自家移植(autotransplantation)」およびその文法的同等物(例えば、自家移植(autologous transplantation))は、細胞、組織、または臓器の、レシピエントへの、移植、植込み、または輸注を伴う任意の手順であって、レシピエントとドナーとが同じ個体である手順を包含し得る。本明細書で記載される、細胞、臓器、および/または組織の移植は、ヒトへの自家移植(autotransplantation)のために使用することができる。自家移植(autotransplantation)は、血管化自家移植(autotransplantation)、部分血管化自家移植(autotransplantation)、非血管化自家移植(autotransplantation)、自家ドレッシング、自家バンデッジ、および自家構造を含むがこれらに限定されない。
【0466】
処置(例えば、本明細書で開示される処置のうちのいずれか)の後、移植片拒絶は、1または複数の野生型細胞を、レシピエントへと移植する場合と比較して、改善され得る。例えば、移植片拒絶は、超急性拒絶であり得る。移植片拒絶はまた、急性拒絶でもあり得る。他の種類の拒絶は、慢性拒絶を含み得る。移植片拒絶はまた、細胞を媒介する拒絶またはT細胞を媒介する拒絶でもあり得る。移植片拒絶はまた、ナチュラルキラー細胞を媒介する拒絶でもあり得る。
【0467】
本明細書で使用される「〜を改善すること」およびその文法的同等物は、当業者により認識される、任意の改善を意味し得る。例えば、移植の改善とは、超急性拒絶の減少であって、所望されない影響または症状の減殺、減少、または減弱を包含し得る減少を意味し得る。
【0468】
移植後、移植された細胞は、レシピエントにおいて機能的であり得る。機能性は、場合によって、移植が成功したのかどうかを決定し得る。例えば、移植された細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間、もしくはそれよりも多い期間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないことも指し示す。
【0469】
ある特定の場合には、移植された細胞は、少なくとも1日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞はまた、少なくとも7日間にわたり機能的でもあり得る。移植された細胞は、少なくとも14日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくとも21日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくとも28日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくとも60日間にわたり機能的であり得る。
【0470】
移植の成功の別の指標は、レシピエントが免疫抑制療法を要求しない日数であり得る。例えば、本明細書で提供される処置(例えば、移植)の後、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間、もしくはそれよりも多い期間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないことも指し示す。
【0471】
場合によって、レシピエントは、少なくとも1日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントはまた、少なくとも7日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくとも14日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくとも21日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくとも28日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくとも60日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。さらに、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間、またはそれよりも多い期間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。
【0472】
移植の成功の別の指標は、レシピエントが、低減された免疫抑制療法を要求する日数であり得る。例えば、本明細書で提供される処置の後、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間、またはそれよりも多い期間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないか、または見られても最小限であることも指し示し得る。
【0473】
場合によって、レシピエントは、少なくとも1日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントはまた、少なくともまたは少なくとも約7日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約14日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約21日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約28日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約60日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。さらに、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間、もしくはそれよりも多い期間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。
【0474】
移植の成功の別の指標は、レシピエントが、低減された免疫抑制療法を要求する日数であり得る。例えば、本明細書で提供される処置の後、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間、もしくはそれよりも多い期間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないか、または見られても最小限であることも指し示し得る。
【0475】
本明細書で使用される「低減された」およびその文法的同等物は、1または複数の野生型細胞を、レシピエントへと移植する場合に要求される免疫抑制療法と比較して、低用量の免疫抑制療法を指す場合がある。
【0476】
免疫抑制療法は、免疫系を抑制する任意の処置をさらに含み得る。免疫抑制療法は、レシピエントにおける移植片拒絶を軽減するか、最小化するか、または消失させる一助となりうる。例えば、免疫抑制療法は、免疫抑制薬を含み得る。移植前、移植時、および/または移植後に使用され得る免疫抑制薬は、MMF(ミコフェノール酸モフェチル(Cellcept))、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD4OL)、抗CD40(2C10、ASKP1240、CCFZ533X2201)、アレムツズマブ(Campath)、抗CD20(リツキシマブ)、抗IL−6R抗体(トシリズマブ;Actemra)、抗IL−6抗体(サリルマブ、オロキズマブ)、CTLA4−Ig(Abatacept/Orencia)、ベラタセプト(LEA29Y)、シロリムス(Rapimune)、エベロリムス、タクロリムス(Prograf)、ダクリズマブ(Ze−napax)、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、シクロスポリン、デオキシスパガリン、可溶性補体受容体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/Soliris)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、レフルノミド、抗IL−2R−Ab、ラパマイシン、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、および抗CD122抗体を含むがこれらに限定されない。さらに、1つまたは1つを超える免疫抑制剤/薬物を、併せて使用することもでき、逐次的に使用することもできる。1つまたは1つを超える免疫抑制剤/薬物は、誘導療法のために使用することもでき、維持療法のために使用することもできる。同じ薬物または異なる薬物を、誘導期に使用することもでき、維持期に使用することもできる。場合によって、ダクリズマブ(Zenapax)は、誘導療法のために使用することができ、タクロリムス(Prograf)およびシロリムス(Rapimune)は、維持療法のために使用することができる。ダクリズマブ(Zenapax)はまた、誘導療法のために使用することもでき、低用量タクロリムス(Prograf)および低用量シロリムス(Rapimune)は、維持療法のために使用することができる。免疫抑制はまた、全身放射線照射、胸腺放射線照射、ならびに脾臓全摘出および/または脾臓部分摘出を含むがこれらに限定されない非薬物レジメンを使用して達成することもできる。これらの技法はまた、1または複数の免疫抑制薬と組み合わせて使用することもできる。
【実施例】
【0477】
(実施例1)
種々の核酸送達プラットフォームのトランスフェクション効率の決定
LeukoPakからの末梢血単核細胞(PBMC)の単離
本実施例では、正常末梢血から回収された、Leukopakを使用した。血液細胞を、冷却した1倍濃度のPBSで、3対1に希釈した。希釈した血液を、50mlの三角フラスコ内の15mLのLYMPHOPREP(Stem Cell Technologies)上に、滴下により(例えば、極めてゆっくりと)添加した。細胞を、ブレーキなし、400×Gで、25分間にわたりスピンした。バフィーコートを、ゆっくりと除去し、滅菌三角フラスコに入れた。細胞を、冷却した1倍濃度のPBSで洗浄し、400×Gで、10分間にわたりスピンした。上清を除去し、細胞を、培地中に再懸濁させ、カウントし、凍結培地(45mLの熱不活化FBSおよび5mLのDMSO)中で、生存可能な状態で凍結させた。
【0478】
CD3+T細胞の単離
PBMCを融解させ、培養培地(RPMI−1640(フェノールレッドを伴わない)、20%のFBS(熱不活化させた)、および1倍濃度のGluta−MAX)中、1〜2時間にわたり播種した。細胞を回収し、カウントし、細胞密度を、5×10
7個/mLへと調整し、14mLの滅菌ポリスチレン丸底試験管へと移した。EasySep Human CD3 cell Isolation Kit(Stem Cell Technologies)を使用して、50uL/mLのIsolation Cocktailを、細胞へと添加した。混合物を、ピペッティングにより混合し、室温で5分間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、RapidSpheresを、30秒間にわたりボルテックスし、50uL/mLで、試料へと添加し、ピペッティングにより混合した。混合物を、4mL未満の試料について、5mLまで満たすか、または4mLを超える試料について、10mLまで満たした。滅菌ポリスチレン試験管を、「Big Easy」磁石へと添加し、室温で3分間にわたりインキュベートした。磁石および試験管を、滑らかな動きで倒立させ、濃縮された細胞懸濁液を、未使用の滅菌試験管へと注ぎ込んだ。
【0479】
CD3+T細胞の活性化および刺激
単離されたCD3+T細胞をカウントし、24ウェルプレート内、細胞2×10
6個/mLの密度で播種した。Dynamagnetを使用して、0.2%BSAを伴う、1倍濃度のPBSで洗浄した後、Dynabeads Human T−Activator CD3/CD28 beads(Gibco、Life Technologies)を、3:1(ビーズ:細胞)で、細胞へと添加した。IL−2(Peprotech)を、300IU/mLの濃度で添加した。細胞を、48時間にわたりインキュベートし、次いで、Dynamagnetを使用して、ビーズを除去した。細胞を、電気穿孔またはヌクレオフェクションに先立って、さらに6〜12時間にわたり培養した。
【0480】
CD3+ T細胞のAmaxaトランスフェクション
Amaxa Human T Cell Nucleofector Kit(Lonza、Switzerland)を使用して、非刺激T細胞または刺激T細胞にヌクレオフェクトした(
図82Aおよび
図82B)。細胞をカウントし、室温のAmaxa緩衝液100uL中に、細胞1〜8×10
6個の密度で再懸濁させた。1〜15ugのmRNAまたはプラスミドを、細胞混合物へと添加した。U−014プログラムを使用して、細胞をヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクション後、細胞を、6ウェルプレート内の培養培地2mL中に播種した。
【0481】
CD3+ T細胞のNeonトランスフェクション
Neon Transfection System(10uL Kit、Invitrogen、Life Technologies)を使用して、非刺激T細胞または刺激T細胞に電気穿孔した。細胞をカウントし、10uLのT緩衝液中に、細胞2×10
5個の密度で再懸濁させた。1ugのGFPプラスミドまたはmRNAまたは1ugのCas9および1ugのgRNAプラスミドを、細胞混合物へと添加した。細胞に、1400V、10ミリ秒間ずつ、3つのパルスで電気穿孔した。トランスフェクション後、細胞を、48ウェルプレート内の培養培地200uL中に播種した。
【0482】
リポフェクションによる、CD3+ T細胞への、RNAおよびプラスミドDNAのトランスフェクション
非刺激T細胞を、24ウェルプレート内、1mL当たり細胞5×10
5個の密度で播種した。RNAトランスフェクションのために、製造元のプロトコールに従い、TransIT−mRNA Transfection Kit(Mirus Bio)を使用して、T細胞に、500ngのmRNAをトランスフェクトした。プラスミドDNAのトランスフェクションのために、製造元のプロトコールに従い、TransIT−X2 Dynamic Delivery System(Mirus Bio)を使用して、T細胞に、500ngのプラスミドDNAをトランスフェクトした。細胞を、37℃で48時間にわたりインキュベートしてから、フローサイトメトリーで解析した。
【0483】
CD3+T細胞による、金ナノ粒子であるSmartFlareの取込み
非刺激T細胞または刺激T細胞を、培養培地200uL中の48ウェルプレート内ウェル1つ当たり細胞1〜2×10
5個の密度で播種した。Cy5またはCy3(Millipore、Germany)へと複合体化させた金ナノ粒子である、SmartFlareを、30秒間にわたりボルテックスしてから、細胞へと添加した。1uLの金ナノ粒子であるSmartFlaredを、各ウェルの細胞へと添加した。プレートを、1分間にわたりロッキングし、37℃で24時間にわたりインキュベートしてから、フローサイトメトリーにより、Cy5またはCy3の発現について解析した。
【0484】
フローサイトメトリー
電気穿孔およびヌクレオフェクトされたT細胞を、トランスフェクションの24〜48時間後、フローサイトメトリーにより、GFPの発現について解析した。0.5%FBSを伴う、1倍濃度の冷却PBSで洗浄することにより、細胞を調製し、APC anti−human CD3ε(eBiosciences、San Diego)およびFixable Viability Dye eFlour 780(eBiosciences、San Diego)で染色した。細胞は、LSR II(BD Biosciences、San Jose)およびFlowJo v.9を使用して解析した。
【0485】
結果
表2に示す通り、4つの例示的なトランスフェクションプラットフォームを使用して、細胞とDNA/RNAとの合計6つの組合せについて調べた。細胞とDNA/RNAとの6つの組合せは、EGFPプラスミドDNAの、非刺激PBMCへの添加;EGFPプラスミドDNAの、非刺激T細胞への添加;EGFPプラスミドDNAの、刺激T細胞への添加;EGFP mRNAの、非刺激PBMCへの添加;EGFP mRNAの、非刺激T細胞への添加;およびEGFP mRNAの、刺激T細胞への添加であった。4つの例示的なトランスフェクションプラットフォームは、AMAXAヌクレオフェクション、NEON電気穿孔、脂質ベースのトランスフェクション、および金ナノ粒子の送達であった。種々の条件下における、トランスフェクション効率(トランスフェクト細胞の%)結果を、表1に列挙するが、AMAXAプラットフォームを使用して、mRNAの、刺激T細胞への添加が、最高の効率をもたらした。
【表2】
【0486】
将来的には、類似の方法を使用して、エクソソームを媒介するトランスフェクションを含む、他のトランスフェクション条件についても調べる。加えて、また、類似の方法を使用して、DNA Cas9/DNA gRNA、mRNA Cas9/DNA gRNA、タンパク質Cas9/DNA gRNA、DNA Cas9/gRNAのPCR産物、DNA Cas9/gRNAのPCR産物、mRNA Cas9/gRNAのPCR産物、タンパク質Cas9/gRNAのPCR産物、DNA Cas9/修飾gRNA、mRNA Cas9/修飾gRNA、およびタンパク質Cas9/修飾gRNAを含む他の送達組合せについても調べる。本明細書で開示される方法では、送達効率の高い組合せを使用することができる。
【0487】
(実施例2)
T細胞内の、GFPプラスミドのトランスフェクション効率の決定
GFPプラスミドを使用する、Amaxaヌクレオフェクションによる、初代T細胞のトランスフェクション効率である。
図4は、この実験のために調製された4つのプラスミド:Cas9ヌクレアーゼプラスミド、HPRT gRNAプラスミド(ヒトHPRT遺伝子をターゲティングするCRISPR gRNA)、Amaxa EGFPmaxプラスミド、およびHPRT標的ベクターの構造を示した。HPRT標的ベクターは、0.5kbのターゲティングアームを有した(
図5)。試料の調製、フローサイトメトリー、および他の方法は、実験1と同様であった。プラスミドは、エンドトキシン非含有キット(Qiagen)を使用して調製した。細胞数およびプラスミドの組合せを含む、異なる条件(表3に示す)について調べた。
【表3】
結果
【0488】
図7は、Cas9+gRNA+標的プラスミド共トランスフェクションが、バルク集団内で、良好なトランスフェクション効率をもたらすことを裏付けた。
図8は、CD3+ T細胞についての、EGFPFACS解析の結果を示した。上記条件を使用して、異なるトランスフェクション効率を裏付けた。
図40Aおよび
図40Bは、CRISPRによる、ドナートランス遺伝子によるトランスフェクションの6日後における、生存率およびトランスフェクション効率(GFP+%)を示す。
【0489】
(実施例3)
各遺伝子部位において、二本鎖切断(DSB)誘導が最高度であるgRNAを同定する。
ガイドRNAのデザインおよび構築:
CRISPR Design Program(Zhang Lab、MIT 2015)を使用して、所望の遺伝子領域へのガイドRNA(gRNA)をデザインした。オフターゲット位置により決定される、最高のランク付け値に基づき、gRNAを作製するための複数のプライマー(表4に示す)を選び出した。gRNAは、オリゴヌクレオチド対:5’−CACCG−gRNA配列−3’および5’−AAAC−逆相補体gRNA配列−C−3’により注文した(オリゴヌクレオチド対の配列を、表4に列挙する)。
【表4-1】
【表4-2】
【0490】
標的配列クローニングプロトコール(Zhang Lab、MIT)を使用して、gRNAを、併せてクローニングした。略述すると、以下のプロトコール:37℃で30分間、95℃で5分間、次いで、5℃/分で、25℃へと降下することにより、サーモサイクラー内で、T4 PNK(NEB)および10倍濃度のT4 Ligation Buffer(NEB)を使用して、オリゴヌクレオチド対を、併せてリン酸化およびアニールさせた。pENTR1−U6−Stuffer−gRNAベクター(社内で作製した)を、FastDigest BbsI(Fermentas)で消化し、FastAP(Fermentas)および10倍濃度のFast Digest Bufferを、ライゲーション反応のために使用した。T4 DNA Ligase and Buffer(NEB)を使用して、消化されたpENTR1ベクターを、前のステップによる、リン酸化およびアニールさせたオリゴ二重鎖(希釈率を1:200とする)と併せてライゲーションした。ライゲーション物を、室温で1時間にわたりインキュベートし、次いで、形質転換し、その後、GeneJET Plasmid Miniprep Kit(Thermo Scientific)を使用して、Miniprepした。プラスミドをシーケンシングして、適正な挿入を確認した。
【表5】
【0491】
操作gRNAによりターゲティングされるゲノム配列を、表5および表6に示す。
図44Aおよび
図44Bは、修飾gRNAによる、CISH遺伝子のターゲティングを示す。
【表6】
【0492】
gRNAの検証
HEK293T細胞を、24ウェルプレート内、ウェル1つ当たりの細胞1×10
5個の密度で播種した。150uLのOpti−MEM培地を、1.5ugのgRNAプラスミド、1.5ugのCas9プラスミドと組み合わせた。別の150uLのOpti−MEM培地を、5ulのLipofectamine 2000 Transfection試薬(Invitrogen)と組み合わせた。溶液を、併せて組み合わせ、室温で15分間にわたりインキュベートした。DNA−脂質複合体を、滴下により、24ウェルプレートのウェルへと添加した。細胞を、37℃で3日間にわたりインキュベートし、GeneJET Genomic DNA Purification Kit(Thermo Scientific)を使用して、ゲノムDNAを回収した。gRNAの活性を、Surveyor消化、ゲル電気泳動、および密度測定により定量化した(
図60および
図61)(Guschin, D. Y.ら、「A Rapid and General Assay for Monitoring Endogenous Gene Modification」、Methods in Molecular Biology、649巻:247〜256頁(2010年))。
【0493】
プラスミドターゲティングベクターの構築
標的組込み部位の配列は、データベースの総体から収集した。Primer3ソフトウェアを使用して、これらの配列に基づき、1kb、2kb、および4kbのサイズの長さを保有するターゲティングベクターを作製するように、PCRプライマーをデザインした。次いで、製造元の指示書に従い、Accuprime Taq HiFi(Invitrogen)を使用して、ターゲティングベクターアームをPCRにより増幅した。次いで、TOPO−PCR−Blunt IIクローニングキット(Invitrogen)を使用して、結果として得られるPCR産物をサブクローニングし、配列を検証した。代表的なターゲティングベクター構築物を、
図16に示す。
【0494】
結果
異なるgRNA配列を一助とする、二本鎖切断(DSB)の創出におけるCas9の効率を、表7に列挙した。表7中の百分率数は、試料中の遺伝子改変のパーセントを指し示した。
【表7】
【0495】
5つ全ての被験標的遺伝子部位において、DSBを創出した。これらのうちで、CCR5、PD1、およびCTLA4が、最高のDSB効率をもたらした。本明細書で記載される方法と同じ方法を使用して、hRosa26を含む、他の標的遺伝子部位についても調べる。
【0496】
異なるgRNA配列と共に二本鎖切断を創出する際の、Cas9による比率を、
図15に示す。ドナー対照およびCas9だけによる対照と比較した、二本鎖切断のパーセントを列挙する。3つの代表的な標的遺伝子部位(すなわち、CCR5、PD1、およびCTLA4)について調べた。
【0497】
(実施例4)
免疫チェックポイント遺伝子もまた破壊する、操作TCRを含むT細胞の作製
免疫チェックポイント遺伝子もまた破壊する操作TCRを発現するT細胞集団を作製するために、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、またはMega−TALによる遺伝子編集法を使用する。PD−1および他の内因性チェックポイントについての概要を、表9に示す。細胞(例えば、PBMC、TIL、CD4+細胞、またはCD8+細胞などのT細胞)を、がん患者(例えば、転移性黒色腫)から精製し、標準的な手順に従い培養および/または拡大する。細胞を、刺激する(例えば、抗CD3および抗CD28ビーズを使用して)か、または刺激せずにおく。細胞に、TCRトランス遺伝子を保有する標的ベクターをトランスフェクトする。例えば、MBVb22のTCRトランス遺伝子配列を収集し、IDTで、gBLOCKとして合成する。attBフランキング配列を伴うgBLOCKをデザインし、製造元の指示書に従い、LR Clonase反応(Invitrogen)を介して、pENTR1へとクローニングし、配列を検証した。TCRトランス遺伝子を発現する、3つのトランス遺伝子構成(
図6を参照されたい)を、3つの異なる方式で調べる:1)外因性プロモーター:TCRトランス遺伝子は、外因性プロモーターにより転写される;2)SAによるインフレームの転写:TCRトランス遺伝子は、スプライシングを介して、内因性プロモーターにより転写される;および3)融合体によるインフレームの転写:TCRトランス遺伝子は、インフレームの翻訳を介して、内因性プロモーターにより転写される。
【0498】
CRISPR遺伝子編集法を使用する場合、Cas9ヌクレアーゼプラスミドおよびgRNAプラスミド(
図4に示すプラスミドと類似のプラスミド)にもまた、TCRトランス遺伝子を保有する標的ベクターを伴うDNAプラスミドをトランスフェクトする。10マイクログラムのgRNAおよび15マイクログラムのCas9 mRNAを用いることができる。gRNAは、Cas9ヌクレアーゼを、組込み部位、例えば、PD−1などの内因性チェックポイント遺伝子へとガイドする。代替的に、gRNAのPCR産物または修飾RNA(Hendel、Nature biotechnology、2015年により裏付けられている)も使用する。Cas9ヌクレアーゼ遺伝子およびgRNAの両方を伴う、別のプラスミドもまた調べる。プラスミドは、併せて、または別個にトランスフェクトする。代替的に、Cas9ヌクレアーゼまたはCas9ヌクレアーゼをコードするmRNAを使用して、Cas9ヌクレアーゼプラスミドを置き換える。
【0499】
CRISPR遺伝子編集法を使用して、組み込まれるTCRトランス遺伝子への相同組換え率を最適化するために、0.5kbp、1kbp、および2kbpを含む、異なる長さの標的ベクターアームについて調べる。例えば、アームの長さを0.5kbpとするターゲティングベクターを、
図5に例示する。加えて、SCR7薬およびDNAリガーゼIVインヒビター(例えば、アデノウイルスタンパク質)など、いくつかのCRISPRエンハンサーの効果についてもまた調べる。
【0500】
プラスミドを使用して、トランス遺伝子を保有する相同組換えHRエンハンサーを送達することに加えて、mRNAの使用についてもまた調べる。mRNA相同組換えHRエンハンサーの、DNAへの、in situにおける、高効率の転換が可能な、最適の逆転写プラットフォームを同定する。造血幹細胞および初代T細胞を操作するための逆転写プラットフォームもまた、最適化および実現する。
【0501】
トランスポゾンベースの遺伝子編集法(例えば、PiggyBac、Sleeping Beauty)を使用する場合は、トランスポザーゼプラスミドにもまた、TCRトランス遺伝子を保有する標的ベクターを伴うDNAプラスミドをトランスフェクトする。
図2は、TCRトランス遺伝子の組込みおよび発現のためのトランスポゾンベースの構築物のうちの一部について例示する。
【0502】
次いで、操作細胞を、PD1特異的ヌクレアーゼをコードするmRNAで処理し、集団を、Cel−Iアッセイにより解析して(
図28〜
図30)、PD1の破壊およびTCRトランス遺伝子の挿入について検証する。次いで、検証の後、操作細胞を、in vitroにおいて、増殖させ、拡大する。T7エンドヌクレアーゼI(T7E1)アッセイを使用して、培養細胞内の、オンターゲットのCRISPRイベントを検出することができる(
図34および
図39)。二重シーケンシングによる欠失を、
図37および
図38に示す。
【0503】
一部の操作細胞は、自家移植において使用する(例えば、操作細胞を作製するのにその細胞が使用されるがん患者へと投与し戻す)。一部の操作細胞は、同種移植において使用する(例えば、異なるがん患者へと投与し戻す)。患者の処置における、T細胞の効能および特異性を決定する。遺伝子操作された細胞は、内因性チェックポイント遺伝子の発現を駆動するように、抗原または抗CD3および抗CD28で再刺激することができる(
図90Aおよび
図90B)。
結果
操作TCRによるT細胞の作製、および免疫チェックポイント遺伝子の破壊についての代表的な例を、
図17に示す。陽性のPCR結果は、CCR5遺伝子における、組換えの成功を裏付ける。免疫チェックポイントノックアウトの効率を、
図23A、
図23B、
図24A、および
図24Bにおける代表的な実験に示す。フローサイトメトリーデータを、
図25における代表的な実験について示す。
図26Aおよび
図26Bは、CRISPRによる処置後における、初代ヒトT細胞内の二重ノックアウトパーセントを示す。CRISPRおよび抗PD−1ガイドRNAのトランスフェクション後14日目における、フローサイトメトリー結果の代表例を、
図45、
図51、および
図52に示す。トランスフェクションの14日後における細胞生存率および遺伝子編集効率を、CRISPR系と、CTLA−4およびPD−1をターゲティングするgRNAとをトランスフェクトした細胞について、
図53、
図54、および
図55に示す。
【0504】
(実施例5)
T細胞内の相同組換えの検出
遺伝子もまた破壊する操作TCRを発現するT細胞集団を作製するために、CRISPR、TALEN、トランスポゾンベースのZEN、メガヌクレアーゼ、またはMega−TALによる遺伝子編集法を使用する。相同組換えエンハンサーの使用により、相同組換えが容易となるのかどうかを決定するために、以下の例では、代表的な実験を具体化する。NEONトランスフェクションシステム(Invitrogen)を使用して、刺激CD3+ T細胞に電気穿孔した。細胞をカウントし、100uLのT緩衝液中に、細胞1.0〜3.0×10
6個の密度で再懸濁させた。15ugのmRNA Cas9(TriLink BioTechnologies)、10ugのmRNA gRNA(TriLink BioTechnologies)、および10ugの相同組換え(HR)ターゲティングベクターを、HRについて検討するために使用した。10ugのHRターゲティングベクター単独、または10ugのmRNA gRNAを伴う、15ugのCas9を、対照として使用した。電気穿孔の後、細胞を4つの条件:1)DMSOだけ(媒体対照)、2)SCR7(1uM)、3)L755507(5uM)、ならびに4)SCR7およびL755507へと分けて、HRを促進することが示唆される、2つの薬物について調べた。Countess II Automated Cell Counter(Thermo Fisher)を使用して、3日ごとに細胞をカウントして、これらの多様な条件下における増殖についてモニタリングした。HRについてモニタリングするために、細胞を、フローサイトメトリーにより解析し、PCRにより調べた。フローサイトメトリーのために、細胞を、毎週1回、3週間にわたり解析した。T細胞は、APC anti−mouse TCRβ(eBiosciences)およびFixable Viability Dye eFluor 780(eBiosciences)で染色した。細胞は、LSR II(BD Biosciences)およびFlowJo v.9を使用して解析することができる。PCRによりHRについて調べるために、gDNAを、T細胞から単離し、AccuPrime Taq DNA polymerase,high fidelity(Thermo Fisher)を使用するPCRにより増幅した。CCR5遺伝子の両方およびHRターゲティングベクターの両方の末端に対するプライマーをデザインして、5’末端および3’末端の両方における適正な相同組換えを探索した。
【0505】
(実施例6)
外因性プラスミドDNAにより誘導される毒性の防止
外因性プラスミドDNAは、T細胞内で毒性を誘導する。毒性が生じる機構は、
図19および
図69の生得的免疫センシング経路により説明される。外因性ポリ核酸に対する応答を修飾する化合物の付加により、細胞毒性を低減し得るのかどうかを決定するために、以下の代表的な実験を完遂した。NEONトランスフェクションシステム(Invitrogen)を使用して、CD3+ T細胞に、量を増大させるプラスミドDNA(0.1ug〜40ug)を電気穿孔した(
図91)。電気穿孔の後、細胞を4つの条件:1)DMSOだけ(媒体対照)、2)BX795(1uM、Invivogen)、3)Z−VAD−FMK(50uM、R&D Systems)、ならびに4)BX795およびZ−VAD−FMKへと分けて、二本鎖DNAにより誘導されるアポトーシスを遮断することが可能な、2つの薬物について調べた。細胞は、48時間後において、フローサイトメトリーにより解析した。T細胞は、Fixable Viability Dye eFluor 780(eBiosciences)で染色し、LSR II(BD Biosciences)およびFlowJo v.9を使用して解析した。
【0506】
結果
プラスミドDNAをトランスフェクトしたT細胞が被る毒性の代表的な例を、
図18、
図27、
図32、および
図33に示す。細胞数による生存率を、
図86に示す。生得的免疫経路インヒビターを添加した後で、死を経るT細胞のパーセントは低減される。例示を目的として述べると、
図20は、2つの異なるインヒビターで処理されたT細胞培養物のアポトーシスの低減を表したものを示す。
【0507】
(実施例7)
ゲノム領域に対する組換えアームを伴う、少なくとも1つの操作抗原受容体を含む、非メチル化ポリ核酸
ポリ核酸に対する修飾は、
図21に示される通りに実施することができる。非メチル化ポリ核酸が、外因性プラスミドDNAにより誘導される毒性を低減し、ゲノム操作を改善し得るのかどうかを決定するために、以下の実施例を利用することができる。Maxiprepを開始するために、相同組換えターゲティングベクターを含有する細菌コロニーを採取し、カナマイシン(1:1000)を伴う、5mLのLB培養液中に接種し、37℃で、4〜6時間にわたり増殖させた。次いで、出発培養物を、カナマイシンを伴う、250mLのLB培養液による大容量の培養物へと添加し、SssI酵素の存在下、37℃で12〜16時間にわたり増殖させた。1つの例外を除き、製造元のプロトコールに従い、Hi Speed Plasmid Maxi Kit(Qiagen)を使用して、Maxiprepを調製した。Maxiprepの溶解および中性化の後、2.5mLの内毒素除去緩衝液を、Maxiprepへと添加し、氷上で45分間にわたりインキュベートした。Maxiprepは、無菌性を維持するように、クリーンベンチ内で終えた。Maxiprepの濃度は、Nanodropを使用して決定した。
【0508】
(実施例8)
GUIDE−Seqライブラリーの調製
固相可逆性固定化磁気ビーズ(Agencourt DNAdvance)を使用して、ゲノムDNAを、トランスフェクトした、対照の(非トランスフェクト細胞および外因性TCR(表10)を保有するミニサークルDNAをトランスフェクトしたCRISPR細胞)単離ヒトT細胞から単離し、Covaris S200装置により、末端修復され、Aテールである、平均長500bpへとせん断処理し、8ヌクレオチドのランダム分子指標が組み込まれた半機能的アダプターへとライゲーションした。標的濃縮のために、オリゴタグと相補的なプライマーによる、2ラウンドのネステッドアンカードPCRを使用した。末端修復サーモサイクラープログラム:12℃で15分間、37℃で15分間;72℃で15分間;4℃で保持する。
【0509】
ゲノムへとマッピングし戻されたGUIDE−Seqリードの開始部位は、DSBの位置特定を、数塩基対以内で可能とする。製造元の指示書に従い、Kapa Biosystems kit for Illumina Library Quantification kitを使用してライブラリーを定量化する。各試料について、qPCR試行により与えられる、1uL当たりの分子数についての平均値推定量を使用して、ライブラリーの総セットを、シーケンシングのために併せてプールされるライブラリーの数で除して、分子1.2×10
10個へと標準化するように進む。これは、各試料についての分子ごとのインプットを与えるが、また、各試料について、容量ごとのインプットも与える。切断型gRNAにより導かれる、3つのRGNのオンターゲット部位およびオフターゲット部位にマッピングされたリードであって、本発明者らがGUIDE−Seqにより評価したリードを示す。全ての場合に、標的部位配列を、x軸の左側のプロトスペーサー配列および右側のPAM配列と共に示す。Illumina Miseq Reagent Kit V2によるシーケンシングのための、Illumina製の標準的なプロトコールに従い、ライブラリーを変性させ、Miseqへとロードする(300サイクル(2×150bpのペアドエンド))。
図76Aおよび
図76Bは、代表的なGUIDE−Seq実験についてのデータを示す。
【0510】
(実施例9)
AAVS1突然変異体タンパク質の作製
Integrated DNA技術(IDT)により、突然変異体のcDNAs(表8)を、gBlock断片として、コドン最適化および合成した。in vitroにおけるmRNA合成のために、合成断片を、mRNA産生ベクターへとサブクローニングした。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【0511】
(実施例10)
PD−1、CTLA−4、およびCISHをノックアウトするための、TILのゲノム操作
適切な腫瘍を、適格性の病期であるIIIc−IV期のがん患者から切除し、3〜5mm
2の小さな断片へと切り刻み、増殖培地および高用量(HD)IL−2を伴う培養プレートまたは小型培養フラスコに入れた。まず、TILを、この「前急速拡大プロトコール」(前REP)期中の3〜5週間にわたり、少なくとも細胞50×10
6個へと拡大する。Neon Transfection System(100uL Kitまたは10ul Kit;Invitrogen、Life Technologies)を使用して、TILを電気穿孔する。TILをペレット化させ、T緩衝液で1回洗浄する。TILを、10ulのチップには、10uLのT緩衝液中の細胞2×10
5個の密度で再懸濁させ、100ulチップには、100ulT緩衝液中の細胞3×10
6個の密度で再懸濁させる。次いで、15ugのCas9 mRNA、ならびに10〜50ugのPD−1、CTLA−4、およびCISH gRNA−RNA(100mclのチップ)を用いて、TILを、1400V、10ミリ秒間ずつ、3つのパルスで電気穿孔する。トランスフェクション後、TILを、抗生剤非含有培養培地中、細胞1000個/ulで播種し、5%のCO2中、30℃で24時間にわたりインキュベートする。回収の24時間後、TILを、抗生剤含有培地へと移し、5%のCO2中、37℃で培養することができる。
【0512】
次いで、PBMCフィーダー細胞およびIL−2の存在下で、抗CD3を使用して、TILを刺激することにより、細胞を、2週間にわたり、急速拡大プロトコール(REP)にかけた。拡大されたTIL(ここでは、細胞数十億個)を洗浄し、プールし、患者へと注入し、1または2サイクルのHD IL−2療法が続いた。TILを移入させる前に、TILの存続を容易とするために、シクロホスファミド(Cy)およびフルダラビン(fludaribine)(Flu)を使用する準備レジメンであって、宿主リンパ球を一過性に枯渇させ、注入されるTILに「場所を空け」、サイトカインシンクおよび調節性T細胞を除去する準備レジメンで、患者を処置することができる。対象は、対象自身の修飾TIL細胞の注入を、30分間にわたり受け、処置から回復するまで、院内にとどまって、有害事象についてモニタリングされる。
図102Aおよび
図102Bは、2例の異なる対象のTILの細胞拡大を示す。
図103Aおよび
図103Bは、CRISPR系および抗PD−1ガイドを電気穿孔され、フィーダーの添加を伴う(A)か、またはフィーダーの添加を伴わずに(B)培養されたTILの細胞拡大を示す。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表10】
【表11】
【0513】
(実施例11)
gRNAの修飾
修飾ガイドRNAのデザインおよび構築:
CRISPR Design Program(Zhang Lab、MIT 2015)を使用して、遺伝子の所望の領域へのガイドRNA(gRNA)をデザインした。オフターゲット位置により決定される、最高のランク付け値に基づき、複数のgRNA(表12に示す)を選び出した。PD−1、CTLA−4、およびCISHの遺伝子配列をターゲティングするgRNAを、2’−O−メチル3’ホスホロチオエート付加を含有するように修飾した(
図44および
図59)。
【表12-1】
【表12-2】
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【表13-4】
【表13-5】
【表13-6】
【表13-7】
【表13-8】
【表13-9】
【表13-10】
【表13-11】
【表13-12】
【表13-13】
【表13-14】
【表13-15】
【表13-16】
【表13-17】
【表13-18】
【表13-19】
本発明の新規の特色は、付属の特許請求の範囲において詳細に明示される。本発明の原理が用いられる例示的な実施形態と、付属の図面とを明示する、以下の詳細な記載を参照することにより、本発明の特色および利点のよりよい理解が得られるであろう。