特表2018-525829(P2018-525829A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-525829(P2018-525829A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(54)【発明の名称】圧電構成素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/083 20060101AFI20180810BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20180810BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20180810BHJP
【FI】
   H01L41/083
   H01L41/09
   F02M51/06 N
   F02M51/06 U
   F02M51/06 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-507543(P2018-507543)
(86)(22)【出願日】2016年6月16日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】EP2016063857
(87)【国際公開番号】WO2017028985
(87)【国際公開日】20170223
(31)【優先権主張番号】102015215529.3
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム アケ
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066BA46
3G066BA54
3G066CC06U
3G066CD04
3G066CD18
3G066CE27
(57)【要約】
本発明は、複数の圧電セラミック材料層(12)と電極層(14)とから成るスタック(18)として形成された圧電構成素子(10)に関し、スタック(18)は、長手方向軸線(16)に沿って少なくとも2つの第1の活性領域(36)を有しており、第1の活性領域(36)には、それぞれ第1の層厚さ(D1)を有する少なくとも2つの圧電セラミック材料層(12)が配置されており、さらにスタック(18)は、少なくとも2つの第2の活性領域(38)を有しており、第2の活性領域(38)には、それぞれ少なくとも第2の層厚さ(D2)を有する少なくとも2つの圧電セラミック材料層(12)が配置されている。第2の層厚さ(D2)は、長手方向軸線(16)に沿った第1の層厚さ(D1)よりも大きくなっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電構成素子(10)であって、複数の圧電セラミック材料層(12)と、複数の活性電極層(14)とを有しており、前記圧電セラミック材料層(12)と前記活性電極層(14)とは、長手方向軸線(16)に沿って交互に重なるように積層されて配置され、1つのスタック(18)を形成している、圧電構成素子において、
前記スタック(18)は、前記長手方向軸線(16)に沿って、それぞれ第1の層厚さ(D1)を有する少なくとも2つの圧電セラミック材料層(12)が配置された少なくとも2つの第1の活性領域(36)と、それぞれ少なくとも第2の層厚さ(D2)を有する少なくとも2つの圧電セラミック材料層(12)が配置された少なくとも2つの第2の活性領域(38)とを有しており、前記長手方向軸線(16)に沿った前記第2の層厚さ(D2)は、前記第1の層厚さ(D1)よりも大きくなっており、
前記第1の活性領域(36)と前記第2の活性領域(38)とは、前記長手方向軸線(16)に沿って交互に重なるように積層されて配置されている、圧電構成素子(10)。
【請求項2】
前記第1の活性領域(36)内には専ら、前記第1の層厚さ(D1)を有する圧電セラミック材料層(12)のみが配置されている、請求項1記載の圧電構成素子(10)。
【請求項3】
前記スタック(18)は、前記長手方向軸線(16)に沿って頭部(22)および足部(24)ならびに前記頭部(22)と前記足部(24)との間に配置された体積部分(26)を有しており、前記第2の活性領域(38)は前記体積部分(26)に配置されており、前記頭部(22)と前記足部(24)とはそれぞれ、1つの第1の活性領域(36)により形成されている、請求項1または2記載の圧電構成素子(10)。
【請求項4】
前記体積部分(26)に配置された前記第1の活性領域(36)は、前記第1の層厚さ(D1)を有する少なくとも3つの圧電セラミック材料層(12)を有している、請求項3記載の圧電構成素子(10)。
【請求項5】
複数の前記第2の活性領域(38)のうちの少なくとも1つに、第3の層厚さ(D3)を有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層(12)が配置されており、前記長手方向軸線(16)に沿った前記第3の層厚さ(D3)は、前記第2の層厚さ(D2)よりも大きくなっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の圧電構成素子(10)。
【請求項6】
前記第3の層厚さ(D3)を有する前記圧電セラミック材料層(12)は、前記長手方向軸線(16)に沿って、前記第2の層厚さ(D2)を有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層(12)により、前記第1の活性領域(36)から離間されて配置されている、請求項5記載の圧電構成素子(10)。
【請求項7】
複数の前記第2の活性領域(38)のうちの少なくとも1つには、少なくとも1つの安全層(40)が、前記長手方向軸線(16)に沿って前記安全層(40)の中間に配置された安全電極(42)を備えて配置されており、前記長手方向軸線(16)に沿った前記安全層(40)の層厚さは、前記第1の層厚さ(D1)よりも大きくなっている、請求項1から6までのいずれか1項記載の圧電構成素子(10)。
【請求項8】
前記安全層(40)は、前記長手方向軸線(16)に沿って前記第2の層厚さ(D2)および/または前記第3の層厚さ(D3)を有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層(12)により、前記第1の活性領域(36)から離間されて配置されている、請求項7記載の圧電構成素子(10)。
【請求項9】
前記スタック(18)は、前記長手方向軸線(16)に対して平行な、互いに反対の側に位置する第1の側方表面(30)と第2の側方表面(32)とを有しており、前記長手方向軸線(16)に沿って重なり合っている前記活性電極層(14)は、前記第1の側方表面(30)までと前記第2の側方表面(32)までとに、交互に達しており、前記第1の側方表面(30)まで達した前記活性電極層(14)は、前記第2の側方表面(32)から離間されており、前記第2の側方表面(32)まで達した前記活性電極層(14)は、前記第1の側方表面(30)から離間されており、好適には、前記第1の側方表面(30)と前記第2の側方表面(32)とには、各1つの外部コンタクト(34)が設けられており、これらの外部コンタクト(34)は、実質的に前記スタック(18)の全長を、前記長手方向軸線(16)に沿って被覆している、請求項1から8までのいずれか1項記載の圧電構成素子(10)。
【請求項10】
前記安全電極(42)は、前記第1の側方表面(30)にまで達していると共に、前記第2の側方表面(32)にまでも達している、請求項7または8を引用する請求項9記載の圧電構成素子(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関の燃焼室内へ燃料を噴射するためのインジェクタシステムにおいて、いわゆる圧電アクチュエータとして用いられる圧電構成素子に関する。
【背景技術】
【0002】
このような圧電構成素子は、一般に複数の圧電セラミック材料層を有している。複数の材料層を形成する、いわゆる圧電セラミックは、圧電効果に基づき電圧印加時に伸長する材料である。このような圧電セラミックが、電圧印加時に縦方向伸長により数マイクロメートルの移動距離を実現する圧電アクチュエータの基礎を形成している。圧電セラミックは、互いに制限された強磁性磁区内にそれぞれ優先方向を有する電気双極子モーメントを有している。圧電セラミックが極性化されていない基本状態では、個々の強磁性磁区の優先方向は無秩序であり、外部に対して圧電セラミックの巨視的な電気分極は生じていない。
【0003】
圧電アクチュエータに圧電効果を利用できるようにするために、圧電セラミックが電気双極子モーメントの整列に基づき極性化され、これにより全ての強磁性磁区内の電気双極子モーメントは、分極軸により規定された優先方向と相違することが全くなくなるか、または極僅かだけになる。
【0004】
上述した個々の圧電セラミック材料層には大抵両面に、金属電極層が設けられている。これらの電極層に所定の電圧が印加されると、電極層は能動的に電圧を通し、圧電セラミック材料層は格子歪みでもって反応する。格子歪みは、既に上述した利用可能な縦方向伸長を生じさせる。ただし、この縦方向伸長は極めて小さいため、例えばインジェクタシステムにおける圧電アクチュエータの形態の圧電構成素子は、多数の個別の圧電セラミック材料層と電極層とを有しており、これらは1つのスタックにおいて長手方向軸線に沿って交互に重ねられて配置されている。
【0005】
図5図7には、上記のように、長手方向軸線16に沿って交互に重ねられて1つのスタック18を形成するように積層された複数の圧電セラミック材料層12と複数の電極層14とを備えた、従来技術から周知の圧電構成素子10が示されている。
【0006】
特に図6に見られるように、長手方向軸線16に沿って重ねられた各電極層14は常に交互に、スタック18の一方の側方表面20までにしか達していない。さらに、スタック18の頭部22と足部24とは、その間に配置されたスタック18の体積部分26に比べ、電極層14を全く有していないことが分かる。
【0007】
これにより、スタック18の側方縁部領域28ならびに頭部22および足部24にはそれぞれ、いわゆる圧電的に不活性の領域が生じており、これらの圧電的に不活性の領域は、図7に示すように所定の電圧が印加されると、その縦方向伸長において、いわゆる活性領域(図6に破線で図示)における圧電セラミック材料層12とは異なる振る舞いをする。
【0008】
圧電構成素子の活性領域と不活性領域との縦方向伸長の相違に基づき、圧電構成素子内には望ましくない機械的応力が生じることになる。
【0009】
その上、内燃機関におけるエミッションおよび燃費に対して高まっている要求により、燃焼室内への燃料噴射にも、より高い要求が課されている。例えば、より高い燃料圧と多重噴射とが必要とされ、これらは同時にインジェクタユニット内の圧電構成素子の、より高い耐久性をも必要とする。
【0010】
圧電構成素子内の機械的応力により、圧電構成素子内に有害な亀裂が形成される恐れがあり、このことは圧電構成素子の寿命を大幅に短縮する。
【0011】
この問題を解決するため、すなわち機械的応力を最大限に減少させるために、これまで2つの戦略が知られている。
【0012】
一方では、適当な材料選択および相応するプロセスパラメータに基づき、電極層に対する圧電セラミック材料層の接着強さを低く調節することができ、これにより、好適には圧電セラミック材料層と、すぐ隣に位置する電極層との間で進行する所定の亀裂に基づいて、機械的応力の応力軽減が行われる。
【0013】
他方では、適当な材料選択および相応するプロセスパラメータならびに圧電セラミック材料層と電極層の所定のスタック順序に基づき、圧電構成素子内に応力を軽減する安全層を一定の間隔で挿入することができる。
【0014】
両方の周知の試みは、生じる亀裂を意図的かつ規定通りに広げる、という目的を遂行するものである。ただし、望ましいのは、亀裂の形成を根本的に減少させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、亀裂の広がりが大幅に減少された圧電構成素子を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する圧電構成素子によって解決される。
【0017】
本発明の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0018】
圧電構成素子は、複数の圧電セラミック材料層と、複数の活性電極層とを有しており、圧電セラミック材料層と活性電極層とは、長手方向軸線に沿って交互に重なるように積層されて配置され、1つのスタックを形成している。スタックは長手方向軸線に沿って、それぞれ第1の層厚さを有する少なくとも2つの圧電セラミック材料層が配置された少なくとも2つの第1の活性領域と、それぞれ少なくとも第2の層厚さを有する少なくとも2つの圧電セラミック材料層が配置された少なくとも2つの第2の活性領域とを有しており、長手方向軸線に沿った第2の層厚さは、第1の層厚さよりも大きくなっている。第1の活性領域と第2の活性領域とは、長手方向軸線に沿って交互に重なるように積層されて配置されている。
【0019】
よって、第2の活性領域では圧電構成素子に、第1の活性領域における層厚さよりも大きな層厚さを有する圧電セラミック材料層が挿入されている。各活性領域内の圧電セラミック材料層が徐々に厚くなっていると、電圧印加時の電界が、第1の活性領域におけるようにより小さな層厚さを有する圧電セラミック材料層内よりも小さくなる。このことから、より厚い圧電セラミック材料層内の機械的応力も、より薄い圧電セラミック材料層内に比べて小さくなっている。機械的応力が比較的小さいと、圧電構成素子内の潜在的な破壊性亀裂の広がりが大幅に小さくなる。これにより、圧電構成素子の耐久性は、第1の層厚さよりも大きな第2の層厚さを有する圧電セラミック材料層を有する第2の活性領域の挿入に基づき、大幅に改善されることになる。
【0020】
圧電構成素子をインジェクタユニットにおける圧電スタックとして用いる場合には、駆動装置内の圧電スタックを、新規の高度な要求に適合させることができる。この適合は、従来のように適当な材料選択によってのみならず、特に、相応の圧電セラミック材料層と電極層とを互いに積層することで圧電構成素子の体積部分に応力軽減領域を挿入することによって達成することができる。
【0021】
好適には、第1の活性領域内には専ら第1の層厚さを有する圧電セラミック材料層のみが配置されている。よって、第1の活性領域は実質的に、結果的に生じる圧電構成素子の縦方向伸長に寄与する。それというのも、ここでは所定の長さに第2の活性領域における電極層よりも多くの電極層が配置されているからである。これにより、第1の活性領域では第2の活性領域における伸長よりも大幅に大きな縦方向伸長が生じることになる。
【0022】
有利な構成では、スタックは長手方向軸線に沿って頭部および足部ならびに頭部と足部との間に配置された体積部分を有しており、第2の活性領域は体積部分に配置されており、頭部と足部とはそれぞれ、1つの第1の領域によって形成されている。
【0023】
第2の活性領域の重要な機能は、圧電構成素子内での亀裂の広がりを回避するか、または少なくとも大幅に減少させるための、機械的応力の軽減にある。よって、これらの第2の活性領域を、好適には亀裂形成の確率が高い体積部分に配置することが有意である。
【0024】
好適には、体積部分に配置された第1の活性領域は、第1の層厚さを有する少なくとも3つの圧電セラミック材料層を有している。
【0025】
圧電構成素子の縦方向伸長を特に大きく生じさせるためには、第1の活性領域が、圧電構成素子の頭部および足部にのみならず、体積部分にも配置されていると有利である。この場合、すぐ上下に、すなわち1つの電極層のみにより互いに隔離されて配置されている圧電セラミック材料層が多いほど、圧電構成素子の、より大きな縦方向伸長を達成することができる。よって、有利には、第1の活性領域は圧電構成素子の体積部分にも設けられていて、この場合は少なくとも3つの圧電セラミック材料層を有している。
【0026】
圧電構成素子の大きさ、所望の縦方向伸長の大きさ、および圧電構成素子に配置された別の第1の活性領域の数に応じて、スタックの体積部分に設けられた1つの第1の活性領域は、3〜20の圧電セラミック材料層を有している。
【0027】
有利な構成では、複数の第2の活性領域のうちの少なくとも1つに、第3の層厚さを有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層が配置されており、この場合、長手方向軸線に沿った第3の層厚さは、第2の層厚さよりも大きくなっている。このような第3の層厚さを有する圧電セラミック材料層は、圧電構成素子のさらに大幅な応力軽減ひいては亀裂形成の危険のより大幅な低下に寄与する。
【0028】
好適には、第3の層厚さを有する圧電セラミック材料層は、長手方向軸線に沿って、第2の層厚さを有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層によって、第1の活性領域から離間されて配置されている。よって、圧電セラミック材料層の薄い方の層厚さから厚い方の層厚さへの移行が緩やかに行われる。このようにして、それ自体が圧電構成素子内に機械的応力を形成する恐れがあるという危険をはらんでいる、急な移行を回避することができる。
【0029】
好適には、複数の第2の活性領域のうちの少なくとも1つには、少なくとも1つの安全層が、長手方向軸線に沿って安全層の中間に配置された安全電極を備えて配置されている。長手方向軸線に沿った安全層の層厚さは、第1の層厚さよりも大きくなっている。有利には、安全層の層厚さは、第2の層厚さおよび/または第3の層厚さに相当していてよい。しかしまた、安全層の層厚さは、第2の層厚さまたは第3の層厚さより厚くなっていてもよい。
【0030】
安全電極は、本来の意味での電極層ではなく、大抵は電圧導通を不可能にするように形成された金属層である。例えば、これらの金属層は意図的に機械的に弱められているので、例えば作動中に裂断し、ひいては圧電構成素子内に生じる亀裂を停止させることができる。安全電極を貫くこのような亀裂により、安全電極は最早、その他の電極層のように導電性ではなくなる。
【0031】
よって、安全層は、圧電構成素子の大幅な応力軽減に寄与する。
【0032】
好適には、安全層は、複数の第2の活性領域のうちの1つに、第1の領域から間隔をあけて配置される。
【0033】
安全層は、好適には長手方向軸線に沿って第2および/または第3の層厚さを有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層により、第1の活性領域から間隔をあけられて配置される。
【0034】
好適には、安全層と、スタックの長手方向軸線に沿って安全層の上方に配置された第1の活性領域との間の間隔ならびに長手方向軸線に沿って安全層から離間された、安全層の下方の第1の活性領域までの間隔は、対称的である。これにより、圧電構成素子の均一な応力軽減を達成することができる。
【0035】
有利な構成では、スタックは、長手方向軸線に対して平行な、互いに反対の側に位置する第1の側方表面と第2の側方表面とを有しており、長手方向軸線に沿って重なり合っている活性電極は、第1の側方表面までと第2の側方表面までとに、交互に達している。第1の側方表面まで達した活性電極は、第2の側方表面から離間されており、第2の側方表面まで達した活性電極は、第1の側方表面から離間されている。このような配置形式に基づき、別の接触電位差が生じさせられるすぐ隣の電極に対して異なる接触電位差を生じさせるように、電極を2つ目毎に接触接続することが可能である。隣り合う電極層の互いに異なる接触接続に基づき、圧電構成素子の縦方向伸長に必要な電位降下を生じさせることができる。
【0036】
好適には、第1の側方表面と第2の側方表面とにはそれぞれ1つの外部コンタクトが設けられており、外部コンタクトは、実質的にスタックの全長を、長手方向軸線に沿って被覆している。つまり、第1の活性領域と第2の活性領域とは全体として、圧電構成素子の全活性領域と見なすことができる。圧電構成素子に設けられた、通常は電極層を有さずに、圧電アクチュエータの他の素子からの絶縁にしか用いられない頭部プレートおよび足部プレートは、加えて、いわゆる不活性領域を形成しており、大抵は外部コンタクトを有していない。
【0037】
圧電構成素子の特に良好な応力軽減を供与できるようにするために、安全電極が、第1の側方表面にまで達していると共に、第2の側方表面にまでも達している。
【0038】
以下に、本発明の有利な構成を、添付図面に基づきより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1の実施形態による圧電構成素子の縦断面図である。
図2】第2の実施形態による圧電構成素子の縦断面図である。
図3】第3の実施形態による圧電構成素子の縦断面図である。
図4】第4の実施形態による圧電構成素子の縦断面図である。
図5】従来技術による圧電構成素子の縦断面図である。
図6】従来技術による圧電構成素子の縦断面図である。
図7】従来技術による圧電構成素子の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、第1の実施形態による圧電構成素子10の縦断面図が示されている。圧電構成素子10は、長手方向軸線16に沿って交互に重なるように積層され、これにより1つのスタック18を形成する、複数の圧電セラミック材料層12と複数の電極層14とを有している。スタック18は、長手方向軸線16に対して平行な第1の側方表面30と第2の側方表面32とを有しており、第1の側方表面30と第2の側方表面32とは、互いに反対の側に位置している。長手方向軸線に沿って重なり合う各電極層14は、第1の側方表面30までと第2の側方表面32までとに、交互に達しており、それぞれ反対の側に位置する各側に、各側方表面30,32から間隔をあけて配置されている。スタック18は、各側方表面30,32に各1つの外部コンタクト34を有しており、外部コンタクト34を介して、それぞれ接触接続された電極層14に電圧を印加することができる。外部コンタクトは、各側方表面30,32において実質的に圧電構成素子10の全長にわたって長手方向軸線16に沿って延在している。よって、図1に示したスタック18は、全体としては圧電アクチュエータの1つの活性領域を形成している。
【0041】
スタック18は、長手方向軸線16に沿って複数の活性領域に、つまり第1の活性領域36と第2の活性領域38とに分けられており、第1の活性領域36と第2の活性領域38とは、長手方向軸線16に沿って交互に重なるように積層されて配置されている。第1の活性領域36において各圧電セラミック材料層12は全て、第1の層厚さD1を有している。第2の活性領域38において各圧電セラミック材料層12はそれぞれ、第2の層厚さD2を有しており、第2の層厚さD2は、第1の層厚さD1よりも大きくなっている。
【0042】
スタック18は、複数の第1の活性領域36と、複数の第2の活性領域38をも有している。第1の活性領域36は、一方ではスタック18の頭部22と足部24とを形成しているが、頭部22と足部24との間に配置されたスタック18の体積部分26にも配置されている。これに対して、第2の活性領域38は、体積部分26にしか位置していない。
【0043】
圧電セラミック材料層12の第2の活性領域38に存在する、より大きな第2の層厚さD2に基づいて、そこに電圧が印加されたときの電界は、第1の活性領域36内の圧電セラミック材料層12におけるよりも小さくなる。これにより、そこには、第1の活性領域36内における機械的応力よりも大幅に小さな機械的応力が生じることになり、潜在的な破壊性亀裂があまり大幅に広がる恐れはない。よって、第2の活性領域38は、実質的に圧電構成素子10のための応力軽減領域として作用し、これに対して第1の活性領域36には実質的に、良好な縦方向伸長の機能が割り当てられている。圧電構成素子10の特に良好な縦方向伸長を達成するために、体積部分26内に配置された第1の活性領域36は、各5つの圧電セラミック材料層12を有しており、これに対して、応力軽減領域用の第2の活性領域38は、各2つの圧電セラミック材料層12のみを有しているに過ぎない。
【0044】
図2には、第2の実施形態による圧電構成素子10の縦断面図が示されている。第1の実施形態との相違点は、第2の活性領域38内に配置された圧電セラミック材料層12が、長手方向軸線16に沿って第2の層厚さD2よりも大きな第3の層厚さD3を有している点にある。これにより、より厚い圧電セラミック材料層12が圧電構成素子10に設けられていることで、望ましくない亀裂の広がりをより強力に抑制することができるようになっているので、圧電構成素子10における応力軽減作用がさらに強められることになる。大幅に異なる層厚さを有する各圧電セラミック材料層12の異なる伸長による応力を回避するために、第3の層厚さD3を有する圧電セラミック材料層12が、それぞれ第2の層厚さD2を有する少なくとも1つの圧電セラミック材料層12により、第1の活性領域36から離間されている。
【0045】
図3には、第3の実施形態による圧電構成素子10の縦断面図が示されている。第1の実施形態との相違点は、第2の活性領域38内に、第2の層厚さD2を有する圧電セラミック材料層12に加えて、安全電極42を有する各1つの安全層40が配置されている点にある。安全電極42は、スタック18の第1の側方表面30からスタック18の第2の側方表面32にまで達している。安全電極42はそれぞれ、圧電構成素子10に機械的な応力が加えられると安全電極42に意図的に亀裂が形成され、次いで亀裂は安全電極42内で止められひいては最早圧電構成素子10内でさらに広がることがないように形成されている。
【0046】
安全電極42は、スタック18の長手方向軸線16に沿って見て安全層40の中間に配置されており、安全層40の層厚さは、第1の活性領域36内の第1の層厚さD1よりも大きくなっている。よって、安全層40もやはり応力軽減領域を形成しており、この応力軽減領域では、一方では厚い層厚さに基づき機械的応力の発生を全体的に減少させることができ、かつ他方では安全電極42の存在に基づき、それでもなお生じる亀裂を阻止することができる。安全層40は、第2の活性領域38内に配置されており、各第1の活性領域36と安全層40との間に第2の層厚さD2を有する各1つの圧電セラミック材料層12が配置されていることにより、それぞれ上側と下側とに続いている第1の活性領域36に対して間隔をあけて配置されている。
【0047】
図4に示すスタック18の第4の実施形態では、さらに加えて、第3の層厚さD3を有する圧電セラミック材料層12が、安全層40と第1の活性領域36との間に配置されていてよく、このようにして、第1の活性領域36から安全層40への移行部を連続的に形成することができる。図3および図4に示す、第2の層厚さD2または第3の層厚さD3を有する圧電セラミック材料層12はそれぞれ、安全層40が上方の第1の活性領域36と下方の第1の活性領域36とに対して対称的に離間されるように、長手方向軸線16に沿って安全層40の隣に配置されている。
【0048】
図5図7には、既に上述した従来技術による圧電構成素子10の縦断面図が示されている。
【0049】
第2の活性領域38の配置形式および数は、圧電構成素子10に対する所望の要求に応じて合わせることができる。同じことは、第2の活性領域38内で第2の層厚さD2および/または第3の層厚さD3を有する圧電セラミック材料層12の配置形式にも当てはまる。また、第2の活性領域38は必要に応じて設けられるか、または設けられなくてもよい。同様に、安全層40も任意で第2の活性領域38内に設けられるか、または設けられなくてもよく、要求に応じて、隣接する第1の活性領域36からより大きなまたはより小さな間隔をあけて配置されていてよい。
【0050】
全体的に、第1の活性領域36内に配置された第1の層厚さD1を有する圧電セラミック材料層12に比べ、第2の層厚さD2または第3の層厚さD3を有する圧電セラミック材料層12では、機械的応力が低下する。これにより、圧電構成素子全体では、潜在的な破壊性亀裂があまり広がらないようになっている。このことは、圧電構成素子10の耐久性の大幅な改善につながる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】