特表2018-526255(P2018-526255A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-526255押出成形ハニカム体の乾燥システムおよび乾燥方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-526255(P2018-526255A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(54)【発明の名称】押出成形ハニカム体の乾燥システムおよび乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/24 20060101AFI20180817BHJP
【FI】
   B28B11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-529747(P2018-529747)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月11日
(86)【国際出願番号】GB2016052695
(87)【国際公開番号】WO2017037452
(87)【国際公開日】20170309
(31)【優先権主張番号】102015216647.3
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】504109285
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドッツェル, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】レッペルト, ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミュンヒ, イェルク ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ツァップ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ショーネ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシュマン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】プロスケ, トーマス
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055AB03
4G055AC10
4G055BA12
(57)【要約】
長手方向(L)に延在し長手方向(L)を横断する第1の方向(A)に延在する第1のチャネル壁(20a)とやはり長手方向(L)を横断する第2の方向(B)に延在する第2のチャネル壁(20b)によって各々境界が定められるチャネル(18)を有する押出成形ハニカム体(14)を押し出し成形し乾燥させるシステム(2)であって、(i)押し出し成形によってハニカム体(14)を作製する、押出成形ヘッド(17)を有する押出成形機(16)と、(ii)ハニカム体に照射方向(S)に指向性のマイクロ波ビームを各々照射する、複数のマイクロ波放射器(6)からなる構成を備えるマイクロ波加熱炉(4)と、(iii)押出成形機(16)からマイクロ波加熱炉(4)内にハニカム体を移送する、押出成形機(16)に隣接する給送ユニット(12)とを備え、ここで、(a)押出成形機の押出成形ヘッド(17)が、システムの動作中、押し出し成形により得られる押出成形ハニカム体(14)がマイクロ波加熱炉(4)内へと移送されるときのその配向位置が、各マイクロ波放射器(6)の照射方向(S)が第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の2つの横断方向(A、B)の各々に対してゼロでない予め定められた照射角(α)に向けられるような配向位置になるように、向けられるか、GBまたは(b)システム(2)が、押出成形機によって作製されるハニカム体の第1および/または第2のチャネル壁(20a、20b)の配向を感知し、各マイクロ波放射器(6)の照射方向(S)が第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の2つの横断方向(A、B)の各々に対してゼロでない予め定められた照射角(α)に向けられるように、ハニカム体および/またはマイクロ波放射器(6)を設定ポイント配向へと動かすように設計されるかのどちらかである、システム(2)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(L)に延在し前記長手方向(L)を横断する第1の方向(A)に延在する第1のチャネル壁(20a)とやはり前記長手方向(L)を横断する第2の方向(B)に延在する第2のチャネル壁(20b)によって各々境界が定められるチャネル(18)を有する押出成形ハニカム体(14)を押し出し成形し乾燥させるシステム(2)であって、
(i)押し出し成形によって前記ハニカム体(14)を作製する、押出成形ヘッド(17)を有する押出成形機(16)と、
(ii)前記ハニカム体に照射方向(S)に指向性のマイクロ波ビームを各々照射する、複数のマイクロ波放射器(6)からなる構成を備えるマイクロ波加熱炉(4)と、
(iii)前記押出成形機(16)から前記マイクロ波加熱炉(4)内に前記ハニカム体を移送する、前記押出成形機(16)に隣接する給送ユニット(12)と
を備え、
(a)前記押出成形機の前記押出成形ヘッド(17)が、前記システムの動作中、前記押し出し成形により得られる前記押出成形ハニカム体(14)が前記マイクロ波加熱炉(4)内へと移送されるときのその配向位置が、各マイクロ波放射器(6)の前記照射方向(S)が前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の2つの横断方向(A、B)の各々に対してゼロでない予め定められた照射角(α)に向けられるような配向位置になるように、向けられるか、
(b)前記システム(2)が、前記押出成形機によって作製される前記ハニカム体の前記第1および/または第2のチャネル壁(20a、20b)の前記配向を感知し、各マイクロ波放射器(6)の前記照射方向(S)が前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の前記2つの横断方向(A、B)の各々に対してゼロでない予め定められた照射角(α)に向けられるように、前記ハニカム体および/またはマイクロ波放射器(6)を設定ポイント配向へと動かすように設計されるか、
のどちらかである、
システム(2)。
【請求項2】
前記予め定められた照射角(α)が、前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の前記第1または前記第2の横断方向(A、B)に対して、30°から60°の範囲内、特に45°である、請求項1に記載のシステム(2)。
【請求項3】
複数のマイクロ波放射器(6)が、前記長手方向(L)を横断する平面(Q)内に配置される、請求項1または2に記載のシステム(2)。
【請求項4】
前記マイクロ波加熱炉が、互いに対して各々90°オフセットされる4つのマイクロ波放射器(6)からなる構成を備える、請求項1、2または3のいずれか一項に記載のシステム(2)。
【請求項5】
前記長手方向(L)において互いに対してオフセットされる複数の横断面(Q)が、複数の、特に4つの、互いに対して90°オフセットされるマイクロ波放射器(6)を各々設ける、請求項3または4に記載のシステム(2)。
【請求項6】
前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の様々な横断面(A、B)の個々のマイクロ波放射器(6)が、前記長手方向(L)に互いに対して整列される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(2)。
【請求項7】
順送りプロセスで複数のハニカム体を連続的に乾燥させるように設計され、前記給送ユニット(12)が、前記長手方向(L)に対して平行な送り方向(F)に前記ハニカム体を移送するように設計される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(2)。
【請求項8】
動作中、前記マイクロ波加熱炉(4)内の内圧が、20mbar未満、特に6mbar未満に設定される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(2)。
【請求項9】
動作中、照射されるマイクロ波電力が、前記マイクロ波加熱炉(4)内にわたる圧力の関数として調節されるように設計される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(2)。
【請求項10】
各マイクロ波放射器(6)が、マイクロ波を発生させる独自のユニットを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム(2)。
【請求項11】
長手方向(L)に延在し前記長手方向(L)を横断する第1の方向(A)に延在する第1のチャネル壁(20a)とやはり前記長手方向(L)を横断する第2の方向(B)に延在する第2のチャネル壁(20b)によって各々境界が定められるチャネル(18)を有する押出成形ハニカム体(14)の乾燥方法であって、マイクロ波加熱炉(4)内において、前記押出成形ハニカム体(14)に複数のマイクロ波放射器(6)からのマイクロ波放射を照射するステップであって、各マイクロ波放射器が、前記押出成形ハニカム体に照射方向(S)に指向性のマイクロ波ビームを照射する、ステップと、各マイクロ波放射器の前記照射方向(S)が、前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の前記2つの横断方向(A、B)に対してゼロでない予め定められた照射角(α)に向けられることを確実にするステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記押出成形ハニカム体(14)が、押出成形機(16)によって押し出し成形され、各マイクロ波放射器の前記照射方向(S)が前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の前記2つの横断方向(A、B)に対してゼロでない予め定められた照射角(α)に向けられることを確実にする前記ステップが、前記ハニカム体が前記マイクロ波加熱炉(4)内へと移送されるときに前記ハニカム体の前記第1および第2のチャネル壁(20a、20b)の前記2つの横断方向(A、B)に対して予め定められた照射角(α)の条件に合致するような配向に前記押出成形ハニカム体を給送ユニット(12)に設置するステップによってもたらされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ハニカム体(14)が、前記マイクロ波加熱炉(4)の内部で、前記長手方向(L)に互いに3cmよりも大きく6cm未満の距離にある、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延在し長手方向に対して横断する第1の方向に延在する第1のチャネル壁とやはり長手方向に対して横断する第2の方向に延在する第2のチャネル壁によって境界が定められるチャネルを有する押出成形ハニカム体を乾燥させるシステムに関する。本発明は、さらに、そのようなハニカム体の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなシステムおよび方法は、たとえば、DE102011016066B4において知ることができる。ハニカム体は、典型的には、セラミック塊からなり、そのハニカム体の乾燥は、セラミックハニカム体の製造の間のステップ、特にセラミックハニカム触媒の形成ステップの一部をなす。ハニカム体は、通常、ペースト状のセラミックの湿った塊を押し出し成形することによって製造される。セラミックハニカム触媒の場合、触媒は、ペースト状のセラミックの湿った塊中の他の成分と混ぜ合わせられる。ハニカム体は、その後、高温で焼結処理を受ける前に、まず乾燥させられる。
【0003】
ハニカム体は、通常、ハニカム体の長手方向に延在するチャネルを有する。これらのチャネルは、ここでは長手方向に対して横断する第1および第2の方向に延在する第1および第2のチャネル壁によって境界が定められる。チャネル壁は、典型的には、ここではラティス様に形成され、好ましくは長手方向に対して横断する平面内において互いに対して垂直に向けられる。
【0004】
製造されたハニカム触媒は、特に、排ガス浄化用、たとえばSCR触媒として窒素酸化物の還元用に使用される。そのようなハニカム触媒は、特に、車両用、または発電所から産出されるものなどの定置排出(stationary emission)処理用に使用される。
【0005】
費用効果が高く効率的な製造のために、そのようなハニカム触媒は、しばしば、その後の温度処理、詳細には焼結プロセスを受ける前に、セラミック固体物を形成するために、押出成形プロセス後に、厳密な好ましくは予め定められた残余含水量まで、順送り方法で乾燥させられる。EP2227447B1には、湿ったハニカム触媒がまず凍結されてからマイクロ波の照射を受ける凍結乾燥法が開示されている。そのような方法は、特に効率的であることが証明されている。ここでは、乾燥時間は、1時間よりも大幅に短縮される。この方法の特に有利な点は、乾燥が、凍結状態からの昇華によって実施されること、すなわち水が直接気相になることに見られる。ハニカム体の加熱のない均一な乾燥は、ここでは、マイクロ波照射によることを狙いとする。それとは対照的に、乾燥を支援する従来のIR照射では、(外部が高く内部が低い)温度勾配が生まれ、それが不利な点である。
【0006】
乾燥プロセスは、一般的に、ひび割れの発生を回避するために、可能な限り最も均一かつ応力付加のないやり方で行われるべきである。
【0007】
DE102011016066B4には、マイクロ波加熱炉内にマイクロ波支援による乾燥をもたらすことを目的として、マイクロ波加熱炉の長手方向にオフセットされ互いに対して回転方向にオフセットされて各々配置される複数のマイクロ波放射器であって、その結果、異なる角度方向の指向性のマイクロ波ビームを個々のハニカム体に照射する、複数のマイクロ波放射器の使用が開示されている。
【0008】
しかし、試験によって、そのようなマイクロ波支援乾燥法は、依然として、好ましくないマイクロ波照射により、乾燥プロセス中にハニカム体内でひび割れが生じることがあり、そのひび割れが機械的安定性に影響を及ぼし、特定の状況下ではハニカム触媒を使えなくする危険があることが示されている。
【発明の概要】
【0009】
これを出発点として、本発明は、そのようなひび割れを可能な限り回避する、そのようなハニカム体、特にセラミック塊からなるハニカム体を乾燥させるシステムおよび方法を明記することを目的とすることに基づいている。
【0010】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する押出成形ハニカム体を押し出し成形し乾燥させるシステム、および請求項11に記載の特徴を有する押出成形ハニカム体の乾燥方法を用いて、本発明によって達成される。好ましい開発は、従属請求項に記載されている。システムに関して明記される好ましい実施形態の利点は、しかるべくその方法に移されるべきである。
【0011】
システムおよび方法は、いわゆる貫流構造(flow−through arrangement)である、両端が開端のチャネルを有する押出成形ハニカム体の製造に使用するためのものである。これらのハニカム体は、きんせい石などの材料から作られる不活性なセラミックハニカム体であってよい。そのような押出成形ハニカム体は、典型的には、後で、触媒ウォッシュコートでコーティングされて、好ましくは自動車用の、所望の触媒コンバータに形成される。
【0012】
本発明の方法によって作られる押出成形ハニカム体はまた、後で、市松模様のハニカム体のチャネルの第1の端部にエンドプラグを挿入し、やはり市松模様であるが第1の端部に栓がされたチャネルからオフセットされたハニカム体のチャネルの第2の端部にエンドプラグを挿入することによって、各チャネルがエンドプラグを1つしか含まないような構造に加工され得る。上述したようなエンドプラグを含む押出成形ハニカム体は、壁流フィルタとして既知である。
【0013】
最も好ましくは、システムおよび方法は、押出成形ハニカム触媒である押出成形ハニカム体を作るのに使用され、すなわち、適切な触媒がペーストに添加され、その後、押し出し成形され、したがってペーストは、乾燥され焼結されると、ハニカム体の機械的構造にも寄与する触媒も含む。そのような触媒は、好ましくは、たとえばアンモニアである窒素還元剤を用いた窒素酸化物(NO)の選択的触媒還元(SCR)用の触媒であり、遷移金属により促進される結晶性モレキュラーシーブを含む。アルミノシリケートゼオライトおよび好ましい遷移金属促進剤を含む好ましい結晶性モレキュラーシーブは、銅、鉄、または銅と鉄の両方を含む。あるいは、SCR触媒は、バナジウム/タングステン/チタニア触媒であってもよい。
【0014】
システムは、ハニカム体に、指向性のマイクロ波ビームを予め定められた照射方向に照射するための複数のマイクロ波放射器を有するマイクロ波加熱炉を備える。その場合、システムは、照射方向が、チャネル壁が延在する2つの横断方向に対して予め定められた照射角に向けられることが確実になるように設計される。これに関連して、2つの横断方向に対する照射角は、ゼロではなく、すなわちゼロと等しくない。したがって、システムの特定の機器構成の結果、チャネル壁の配向に対して平行な照射が確実に回避される。
【0015】
発明者らは、マイクロ波放射がチャネル壁に対して平行に向けられると、望ましくないひび割れの形成が促進されることを試験により見出した。乾燥プロセスの間、通常、ハニカム体内に応力が生じる。そのような方向の照射の場合、明らかに不均一な乾燥が起こり、その結果、乾燥プロセスの間にハニカム体の内部で応力が生じ、その応力をハニカム体によってそれ以上吸収することができなくなり、ひび割れが起こる。発明者らは、詳細に特許請求される「非平行」照射、すなわち2つの横断方向に対する照射角をゼロでなくすることによってこの問題を回避できることを見出した。特定の配向によって、応力がハニカム体によってより良く吸収されるようになり、その結果、ひび割れの発生が回避されるか、または少なくとも減少する。さらに、特定の非平行照射は、ハニカム体の内部におけるマイクロ波放射の望ましくない集束作用を防ぎ、それによって、やはりまたひび割れの発生が少なくとも抑制される。
【0016】
システムは、マイクロ波加熱炉だけでなく、押し出し成形によってハニカム体を作製するための押出成形機も備える。1つの構成において、横断方向に対する照射角が所望の値をとることを確実にするために、押出成形機は、マイクロ波加熱炉に対して定められた方法で向けられる。好ましくは、押出成形機は、横断方向がそれによって定められる押出成形ヘッドを有する。この押出成形ヘッドは、動作中にハニカム体が正しい位置にある状態でマイクロ波加熱炉へと送り込まれるように、向けられる。したがって、ハニカム体は、「2つの横断方向に対する照射角がゼロではない」という要件に合う押出成形ヘッドによってすでに所望の配向に形成されていることが好ましい。押出成形ハニカム体は、その後、給送ユニットに設置され、マイクロ波加熱炉へと送り込まれる。好ましくは、これは、押し出し成形の後に、2つの横断方向に対する照射角を変更するようにそれぞれのハニカム体を再配向することなく行われる。
【0017】
押出成形ヘッドは、ハニカム体のハニカム構造を補完する模様、すなわち、通常、互いに交差しハニカム体の第1および第2のチャネル壁を画定する第1および第2の押出成形スリットを有する。
【0018】
これらの押出成形スリットは、照射方向に対して所望の横断方向にすでに向けられていることが好ましい。
【0019】
押出成形ヘッドの特定の配向がマイクロ波加熱炉のマイクロ波放射器に対して正しい位置にあるこの構成の結果、好ましくは連続的な順送り方法のための、比較的単純な設計のシステムが提供される。したがって、正しい位置の配向のための追加の制御および監視ユニット、ならびにハニカム体を位置決めするかまたは回転させるための可能性のある装置は必要なく、好ましくは、設けられることもない。
【0020】
あるいは、所望の照射角を確実にするためのシステムは、動作中に第1および/または第2のチャネル壁の配向を感知するように予めプログラム可能な制御ユニットを有する。この目的のため、たとえば、マイクロ波加熱炉に入る前、すなわち押出成形機からマイクロ波加熱炉に運ばれる間、そうでなければハニカム体がマイクロ波加熱炉の内部にあるときに、ハニカム体の第1および第2のチャネル壁の正しい配向をチェックする光学測定システムが使用されることが好ましい。
【0021】
システムの制御ユニットは、好ましくは、ハニカム体および/または1つもしくは複数のマイクロ波放射器を再配向するように設計される配向ユニット(orientation unit)を備え、それによって、制御ユニットの制御下で所望の配向へと動かされる。すなわち、要件を満たさないハニカム体の配向を感知すると、それに対応して、配向ユニットは、ハニカム体または必要に応じて1つもしくは複数のマイクロ波放射器の回転の可能性を提供する。しかし、ハニカム体が回転されることが好ましい。
【0022】
照射角は、第1または第2の横断方向に対して30°から60°の範囲内に向けられるように選択される。45°の照射角が最も好ましい。
【0023】
チャネル壁は、通常、ラティス様に互いに対して90°の角度に向けられるので、45°の照射によって、2つのチャネル壁に対する照射角が同一になることが確実になる。発明者らは、試験において、配向を45°にすると、ひび割れの回避に関する最も良い結果が得られることを見出した。
【0024】
システムは、効果的な乾燥法を促進するために、複数のマイクロ波放射器からなる構成を備える。この文脈において、各マイクロ波放射器の照射方向は、横断方向に対してゼロでない照射角、すなわち各照射角がゼロと等しくないように、向けられる。したがって、複数のマイクロ波放射器が存在するときには、平行な照射の回避が確実になる。使用されるすべてのマイクロ波放射器が、平行な照射が回避されるように向けられることが好ましい。すべてのマイクロ波放射器が、横断方向のうちの1つに対して同じ照射角を有することが好ましい。
【0025】
さらに、複数のマイクロ波放射器は、長手方向(L)を横断する共通の横断面内に配置されることが好ましい。マイクロ波放射器は、本明細書では、マイクロ波加熱炉の円周の周りにオフセットされて配置される。それによって、効果的かつ均一な乾燥が可能になる。
【0026】
この文脈において、4つのマイクロ波放射器は、便宜上、個々のマイクロ波放射器が互いに対してオフセットされる、好ましくは90°オフセットされるように、横断面内に配置されることが好ましい。この方策は、好ましくは、各マイクロ波放射器ごとに45°の照射角を確実にする。
【0027】
1つの横断面内に複数のマイクロ波放射器からなる構成の別法として、しかし好ましくはそれに加えて、複数のマイクロ波放射器は、さらに、長手方向に互いに対してオフセットされて配置される。長手方向に互いに対してオフセットされる個々のマイクロ波放射器は、互いに整列される、すなわち、互いに対して回転方向にオフセットされるように向けられないことが好ましい。したがって、長手方向に連続する各マイクロ波放射器は、先行のマイクロ波放射器と同じ回転方向位置に配置される。これは、1つの横断面内に複数のマイクロ波放射器からなる構成の場合、それぞれの横断面内のすべてのマイクロ波放射器に適用される。したがって、横断面当たりに4つのマイクロ波放射器をそれぞれ使用する場合、マイクロ波放射器は、個々の横断面内に、たとえば12時、3時、6時および9時の位置に配置される。
【0028】
可能な限り効率的な乾燥プロセスを得るために、本発明による方法は、順送り方法による複数のハニカム体の連続乾燥を提供することができる。それに対応して、システムは、適切なやり方で具現化され、給送ユニットは、好ましくは、送り方向にハニカム体を連続的に移送する機能を果たす。本明細書において好ましくは、送り方向は、ハニカム体のチャネルの長手方向と一致する。マイクロ波放射器は、横方向に配置され、好ましくは長手方向に対して横断方向、つまり長手方向に対して90°角度に照射する。
【0029】
さらに、システムは、動作中、マイクロ波加熱炉内を、好ましくは20mbar未満、好ましくは6mbar未満、または4mbar未満の負圧に設定するように具現化される。それに対応して、適切なポンプ能力を備えた真空ポンプが、好ましくは凝縮器/再昇華器(resublimator)とあわせて設けられる。
【0030】
乾燥方法は、個々のハニカム体がマイクロ波での乾燥の前に凍結される、したがって、凍結乾燥法であることが好ましい。この目的のため、通常、ハニカム体の送り方向における実際のマイクロ波加熱炉よりも前に、たとえばマイクロ波加熱炉の入力領域を形成するハウジングの周りに冷却コイルを設置することによって、冷却領域が形成される。ハニカム体は、通常、十分に低い氷点下の温度に冷却される。
【0031】
冷却システムに加えて、または好ましくは別法として、ハニカム体は、数mbar、たとえば6mbar未満の適切な負圧に設定することによって凍結される。圧力を下げることによって、氷点下の温度を得ることができる。好ましくは、そのような概念より、マイクロ波加熱炉の内部の圧力の変化は、温度の変動を引き起こし、圧力を上げると、温度の上昇が引き起こされる。
【0032】
凍結乾燥の所望の効果を達成するために、乾燥プロセスの間中、ハニカム体が「解凍」されることを回避するために十分に低い温度が確保されることが確実にされることが好ましい。それと同時に、これによって、ハニカム体を乾燥させるための所望の昇華が、液体水の存在なくして確実に行われることが確実になる。液体水の存在は、実際、ひび割れの形成の増加を引き起こす。
【0033】
したがって、1つの好ましい構成では、様々なマイクロ波放射器によって照射されるマイクロ波電力が、マイクロ波加熱炉内にわたる内圧の関数として調節されることが実現される。この構成は、高い放射電力は、放出されるべき水を含む気体の高い質量流を引き起こし、その質量流が真空ポンプによって「吸い出される」、という概念に基づいている。しかし、高い質量流は、流れ抵抗の増加を引き起こし、したがって、質量流がそこを通って出なければならないハニカム体の制限されたチャネル内の圧力の増加を引き起こす。特定の状況下において、これは、ハニカム体内の温度の望ましくない増大を引き起こす。したがって、これを回避するために、放射電力は、予め定められた限界値を上回る圧力のそのような望ましくない上昇を確実に回避するために、それに対応するように調整される。したがって、そのような望ましくない上昇が起きた場合、または限界値に達した場合、放射電力は、たとえば質量流を減少させ、さらなる圧力の増加を回避するために、たとえば、減少される。
【0034】
放出される水成分を含む質量流の効果的な排出を達成するために、マイクロ波加熱炉内における2つの連続するハニカム体の間に十分な距離を置くことがさらに好ましい。発明者らは、試験を通して、2つの連続するハニカム体の間の距離が、2.5cmよりも大きい、好ましくは3cmよりも大きいことが、ハニカム体の間の圧力の望ましくない上昇を確実に防ぐのに好ましいことを発見した。したがって、2つの連続するハニカム体の間の距離は、たとえば3から6cmの範囲に設定することが好ましい。
【0035】
さらに、目標とする均一なマイクロ波照射を得るために、各マイクロ波放射器に、マイクロ波を発生させる別個のユニットが割り当てられ得る。したがって、ビームスプリッタによるビームの分割はない。そのようなビームスプリッタは、やはり、マイクロ波の不均一な照射をしばしば引き起こすので、動作中のひび割れの発生に関して重要な意味を持つことが証明されている。複数のマイクロ波放射器が1つの横断面内に配置される場合、同じマイクロ波電力が各マイクロ波放射器によって照射されることが好ましい。
【0036】
次に、本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ハニカム体を乾燥させるシステムの概略縦断面図である。
図2図1の断面線II、IIに沿ったマイクロ波加熱炉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図において、同一の働きをする部分には同じ参照符号が付与される。
【0039】
図1に示されるシステム2は、マイクロ波加熱炉4を備え、マイクロ波加熱炉4は、長手方向Lに延在し、全体的に細長いダクト状に具現化される。ダクトの断面は円形であることが好ましい。あるいは、マイクロ波加熱炉のダクトの断面は、多角形の形態であることが多く、たとえば矩形、好ましくは正方形の形である。マイクロ波加熱炉4は、複数のマイクロ波放射器6を有する。例示的な実施形態では、マイクロ波放射器は、長手方向Lに互いに対してオフセットされて配置される。さらに、横断面Q内に複数のマイクロ波放射器6が各々配置される。
【0040】
具体的に図2から明らかなように、本明細書では、全部で4つのマイクロ波放射器6が、マイクロ波加熱炉4の円周の周りに分散して配置される。それらのマイクロ波放射器6は、互いに対して、特に90°オフセットされて各々配置される。
【0041】
マイクロ波放射器6は、第一に、図1に示されるような、ホーン放射器と呼ばれるものとして具現化されることが好ましいアンテナに開口する単純なマイクロ波導波管である。アンテナ(ホーン放射器)は、マイクロ波加熱炉4上に径方向に配置され、マイクロ波加熱炉ダクトの内側に開口する。マイクロ波の発生のために、別個のマイクロ波発生ユニットが、本明細書ではより詳細には示されないやり方で各々個々のマイクロ波放射器6に設けられることが好ましい。したがって、前記マイクロ波発生ユニットは、発生したマイクロ波放射をそれぞれのマイクロ波放射器6の案内チャネル内へと出力する。
【0042】
さらに、マイクロ波加熱炉4内部を所望の負圧に設定するために、真空ポンプ10を含む真空システム8が配置され、前記真空システム8は、動作中のマイクロ波加熱炉4内部の内圧を、好ましくは、ある値に、典型的には約6mbar未満の範囲内に設定し、そこで保持する。真空ポンプに加えて、凝縮器/再昇華器(本明細書ではより詳細には示されない)が、乾燥プロセス中に放出される水のために配置される。マイクロ波加熱炉4の内部で個々のマイクロ波放射器6が配置される乾燥ゾーンの入力側または出力側には、ロック11が形成され、それを通ってハニカム体14がマイクロ波加熱炉の負圧領域へと送り込まれるか、またはそこから送り出される。さらに、好ましい1つの実施形態では、移行ゾーンが、ロック11とそれぞれに最も近いマイクロ波放射器6との間に形成され、前記移行ゾーンは、長手方向Lにおいて、数10cm、特に少なくとも30から50cmの範囲内、好ましくは最大約1メートルの長さを有する。その結果、(プラズマ)放電が確実に回避される。
【0043】
マイクロ波放射器6のある乾燥ゾーン、および2つの移行ゾーンは、たとえばフランジ連結を介して、システム2のさらなる構成要素、具体的にはロック11によってしっかりと接合される、一層の好ましくは管状の構成要素を形成することが好ましい。
【0044】
さらに、マイクロ波加熱炉4の内部には、給送ユニット12が配置される。動作中、給送ユニット12の上には、複数のハニカム体14が配置される。給送ユニット12は、個々のハニカム体14を、連続的に、順送り方法で、長手方向Lにマイクロ波加熱炉4へと送り込む。したがって、給送ユニット12は、マイクロ波加熱炉の長手方向Lと一致する送り方向Fにハニカム体14を送り込む。ハニカム体14は、本明細書では、数cmの範囲内、特に、3cmよりも大きく、好ましくは3から6cmの範囲内の距離を有する。
【0045】
システム2は、さらに、マイクロ波加熱炉4の方に向いた側に押出成形ヘッド17を備える押出成形機16を有する。ハニカム触媒14は、セラミックのペースト状の塊から、押出成形機16を用いた成形プロセスによって生成される。押出成形機16の後には、切断装置が(本明細書では示されないやり方で)形成され、それによって、押出成形ヘッド17を出た押し出し成形された材料の長さが、繰り返し切断され、その結果、個々のハニカム体14が形成される。
【0046】
ハニカム体14は、本明細書では、たとえば、約5から14インチ(12.7から35.6cm)の直径、5から10インチ(12.7から25.4cm)の長さを有する。
【0047】
ハニカム体14は、好ましくは、排他的に、追加の冷却装置を配置することなく、圧力を適切に減少させることによって凍結される。したがって、ハニカム体14は、低圧で凍結され、その結果、ハニカム体14に含まれる水が氷の形態で閉じ込められる。
【0048】
システム2全体を、個々のハニカム体14が個々のマイクロ波放射器6に対して定められた配向にある状態でマイクロ波加熱炉4の中を通過するように考えることが特に重要である。この目的のため、1つの好ましい実施形態では、押出成形ヘッド17がすでに適切な配向に取り付けられており、その結果、生成された押出成形ストランド、したがって、生成されたハニカム体14は、すでに所望の配向を有する。
【0049】
あるいは、好ましい開発では、たとえば、所望の配向をチェックする測定装置および/または所望の配向をもたらす配向ユニットである、所望の配向を制御する装置が組み込まれる。
【0050】
ハニカム体14は、しばしば円形断面形状を有する押出成形ハニカム体であり、すなわち、全体的に柱状の形に具現化されることが好ましい。ハニカム体14は、本明細書では、長手方向Lに延在し、図2から具体的に明らかなように、複数の個々のチャネル18を有する。これらの個々のチャネル18は、ハニカム体14を、好ましくは長手方向Lに完全に貫通し、したがって、入口開口にある端側から入り出口開口にある端側からそれぞれ出る。個々のチャネル18は各々、第1のチャネル壁20aおよび第2のチャネル壁20bによって各々境界が定められる。第1のチャネル壁20aは、第1の横断方向Aに延在し、第2のチャネル壁20bは、第2の横断方向Bに延在する。チャネル壁20a、20bは、特に、ラティス状に具現化され、互いに対して垂直になっている。それに対応して、2つの横断方向A、Bも、互いに対して垂直に向いている。
【0051】
指向性のマイクロ波ビームは、いずれの場合も、動作中に、個々のマイクロ波放射器6によって、マイクロ波加熱炉4内へと照射方向Sに照射される。前記照射方向Sは、本明細書では、2つの横断方向A、Bに対して照射角αに向けられる。例示的な実施形態では、いずれの場合も、照射角αは、2つの横断方向A、Bに対して45°である。
【0052】
システム2の動作は、(本明細書ではより詳細には示されない)制御装置によって、オープンループ制御、および好ましくはクローズドループ制御をも受ける。連続的かつ効率的な動作を達成するために、個々のハニカム体14は、マイクロ波加熱炉4内を長手方向Lに予め定められた速度で案内される。システム2の内部には、センサ、好ましくは、重量センサ、またはハニカム体14がマイクロ波加熱炉4に入る前にその含水量を少なくとも間接的に感知する湿度センサなどが配置されることが好ましい。その場合、たとえば、照射されるマイクロ波電力は、含水率の関数として適切に制御される。
【0053】
一般的に、照射される放射電力は、制御ユニットを用いて適切に調節され、その結果、定められた残留含水量になるように可能な限り均一である一様な乾燥が行われる。本明細書では、調節は、特にマイクロ波加熱炉4内における内圧の関数として行われる。制御変数は、所望の最大内圧である。これは、過度に高い昇華速度が、圧力の望ましくない増加、したがって(部分的であっても)解凍の危険を伴う温度の望ましくない上昇を引き起こすことになる過度に高い質量流とならないことを確実にする。
【0054】
横断面Q当たりの照射される放射電力は、本明細書では、たとえば数キロワットの範囲内である。本明細書では、前方の横断面Qにおける照射される放射電力は、通常、それより先に乾燥がすでに行われている後方の横断面Qにおける放射電力よりも大きい。特に、第1の横断面Qの照射電力は、たとえば、マイクロ波加熱炉4に入るところのハニカム体14の性状の関数、特に、その重量の関数として設定され、調整される。
【0055】
放射方向Sに対してハニカム体14が定められた配向にある本明細書に記載の上述したシステムによって、ひび割れが形成される危険が低い、特に適切で迅速な乾燥方法が可能になる。さらなる重要な態様は、放射電力の調節であり、その結果、予め定められた最大値を上回る圧力上昇が回避される。
【符号の説明】
【0056】
2 システム
4 マイクロ波加熱炉
6 マイクロ波放射器
8 真空システム
10 真空ポンプ
11 ロック
12 給送ユニット
14 ハニカム体
16 押出成形機
17 押出成形ヘッド
18 チャネル
20a 第1のチャネル壁
20b 第2のチャネル壁
L 長手方向
F 送り方向
a 距離
Q 横断面
A 第1の横断方向
B 第2の横断方向
S 照射方向
α 照射角
図1
図2
【国際調査報告】