(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-527274(P2018-527274A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】低い又は負の熱膨張を示すセラミックス及びガラスセラミックス
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20180824BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20180824BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20180824BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20180824BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20180824BHJP
【FI】
C03C10/04
C03B32/02
G02B1/00
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-564609(P2017-564609)
(86)(22)【出願日】2016年7月5日
(85)【翻訳文提出日】2017年12月12日
(86)【国際出願番号】EP2016065876
(87)【国際公開番号】WO2017005752
(87)【国際公開日】20170112
(31)【優先権主張番号】102015110831.3
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【弁理士】
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ティーメ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リュッセル
【テーマコード(参考)】
3K151
4G015
4G062
【Fターム(参考)】
3K151BA62
4G015EA02
4G062AA11
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4G062KK10
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4G062MM10
4G062MM23
4G062MM40
4G062NN30
4G062QQ08
(57)【要約】
本発明は、低い及び/又は負の熱膨張係数を有するセラミックス及びガラスセラミックスに関する。したがって、本発明の目的は、低い溶融温度において非常に小さい支出で、低いか、さもなければ負の熱膨張を有するセラミックス及び/又はガラスセラミックスを製造する可能な方法を示すことである。目的は、従来のセラミックスプロセス又はガラスからの結晶化により製造することができる式AM
2Si
2-yGe
yO
7(A=Sr及びBa、M=Zn、Mg、Ni、Co、Fe、Cu、Mnであり、Sr、Ba及びZnは、必然的に存在する必要がある)の結晶相により本発明にしたがって達成された。示された組成物は固溶体を形成し、成分Mとして示された元素は、実質的にあらゆる濃度において互いに置換することができるが、Znの濃度は、常にMで示された全ての成分の合計の少なくとも50%でなければならない。これらのケイ酸塩の化学両論及びその構造は、多かれ少なかれ異なることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba1-xSrxM2Si2-yGeyO7(式中、0<x<1及び0≦y≦2、Mは少なくとも構成成分としてZnを有し、Zn、Mg、Mn、Co、Ni、Fe及びCuからなる群から選択される。)に基づく材料であって、負の熱膨張係数又は<1・10-6K-1の線形の熱膨張係数を有する材料。
【請求項2】
結晶相が、MがZn、Mg、Mn、Co、Ni、Fe及びCuからなる群から少なくとも1種のさらなる構成成分を含有し、これらのさらなる構成成分の濃度の合計が、Znの濃度を超えない組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
結晶相が主相であり、これが>50%の体積濃度で存在し、存在する他の相が、他の結晶相か、さもなければ異なる化学組成の1つ若しくはそれより多くのガラス相であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
結晶相がガラスから結晶化されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
ガラスセラミックス又はセラミックスを製造するための請求項1に記載の材料の使用。
【請求項6】
結晶相が結晶化されるガラスが、以下の構成成分:
2〜30モル%のSrO、
1〜25モル%のBaO、ただし、SrO+BaOは6〜30モル%であり、
30〜60モル%のSiO2、
30〜60モル%のGeO2、ただし、SiO2+GeO2は30〜60モル%であり、
0〜30モル%のB2O3、
15〜44モル%のMO(式中、M=Zn、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はこれらの混合物)、
0〜12モル%のM’2O(式中、M’=Li、Na、K又はこれらの混合物)、
0〜4モル%のM’’2O3(式中、M’’=Bi、Sc、Y、La又は希土類元素の酸化物)、
0〜10モル%のM’’’O2(式中、M’’’=Ti、Zr)、
0〜7モル%のM’’’’2O5(式中、M’’’’=Sb、Nb又はTa又はこれらの混合物)
を含有することを特徴とする、請求項4に記載のガラスセラミックス。
【請求項7】
前記材料が、結晶相の結晶化が焼結プロセスの終わりに起こる前に、粘性流開始による高密度化で、焼結プロセスによりアモルファス粉末から製造されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の材料の製造。
【請求項8】
前記材料が、セラミックス技術における慣用のプロセスにしたがう焼結プロセスによる結晶相を含有する結晶性粉末から製造されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の材料の製造。
【請求項9】
オーブン窓又はガラスセラミックス若しくはセラミックス調理場を製造するための低い熱膨張を有する材料としての請求項1に記載の材料の使用。
【請求項10】
調理器具を製造するための低い熱膨張を有する材料としての請求項1に記載の材料の使用。
【請求項11】
マイクロ工学における用途に関する低い熱膨張を有する材料としての請求項1に記載の材料の使用。
【請求項12】
望遠鏡ミラー又は光学技術に関する他の受動素子を製造するための低い熱膨張を有する材料としての請求項1に記載の材料の使用。
【請求項13】
低い熱膨張係数を有する材料、例えば98%>のSiO2濃度を有するガラス、ホウケイ酸塩ガラス、又は実質的にゼロの熱膨張を有するリチウムアルミノシリケートに基づくガラスセラミックスを接合するための材料としての請求項1に記載の材料の使用。
【請求項14】
低い熱膨張係数を有するグレージング材料、例えば>98%のSiO2濃度を有するガラス、ホウケイ酸塩ガラス、又は実質的にゼロの熱膨張を有するリチウムアルミノシリケートに基づくガラスセラミックスに関する請求項1に記載の材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明を実施するための形態】
【0001】
本発明は、低い及び/又は負の熱膨張係数を有するセラミックス及びガラスセラミックスに関する。
【0002】
ほとんどの材料は、温度が増大した際に膨張する。しかし、温度の増大に伴い収縮するか、非常にわずかしか膨張しない幾つかの材料が存在する。大きな熱膨張のないガラスセラミックスで構成された製品の最もよく知られている例の1つはSchottからのCeran(登録商標)であり、例えばガラスセラミックス調理場を製造するのに用いられている。係る調理場は、主成分SiO
2、Al
2O
3及びLi
2Oを含有する。ここで、膨張挙動は、低い又は負の膨張を有するリチウムアルミノシリケートの結晶化により圧倒的に達成される。関連する温度範囲において、係る材料はゼロに近い熱膨張係数を有する。多数の熱応力サイクル及び温度衝撃さえも、係る材料に非常に低い熱応力しかもたらさず、それは通常機械的欠陥、すなわち破壊をもたらさない。不利益は、1600℃超の場合がある非常に高いプロセス温度を、係るガラスセラミックスの製造において生じさせる必要があることである。
【0003】
係るゼロ膨張材料は、精密応用、例えば大面積望遠鏡鏡面か、さもなければ微小光学でも用いられる。これらの材料は、多かれ少なかれ広い温度範囲に亘る熱衝撃抵抗が要求される応用の多くの分野、例えば調理器具の場合に当然に想定される。
【0004】
上述の負の又は非常に低い熱膨張は、低い又は負の膨張を有する結晶相、例えばβ‐リシア輝石(LiAlSi
2O
6の高温改質体)、β‐ユークリプタイト(LiAlSiO
4)、コージライト(Mg
2Al
2Si
5O
18)、高温クオーツ又はβ‐クオーツ混合結晶により達成することができる。これらはよく知られており、種々の文献(例えばJ.N.Grima、V.Zammit、R.Gatt、Xjenza 11、2006、17‐29又はG.D.Barrera、J.A.O.Bruno、T.H.K.Barron、N.L.Allan、J.Phys.:Condens.Matter17、2005、R217‐R252)に詳細に記載されている。
【0005】
種々のガラスセラミックスの他に、ヒューズドシリカも非常に低い膨張係数(0.5・10
-6K
-1)を有し、TiO
2でドープすることによりそれをさらに低減することができる。しかし、この材料の製造は、極端に高い溶融温度(>2200℃)のために困難で複雑であり、したがって高コストである。
【0006】
さらなる負の熱膨張を有する結晶相は、ZrW
2O
8、HfW
2O
8、ZrV
2O
7及びHfV
2O
7であり、それはWO02/22521A1に記載される。しかし、これらの相が結晶化され、次いでそれがゼロに近い熱膨張係数を有するガラスに関しては、これまで述べられていない。加えて、これらの材料は通常高価(特にタングステン化合物の場合)であり、毒性成分(バナジウム化合物)を含有する可能性がある。負の又は低い膨張を示す材料を記載するさらなる特許文献は、以下に示される。
【0007】
US5919720Aは、負の及び低い膨張係数を有する式A
2-x3+A
y4+M
z3+M
3-y6+P
yO
12の種々の相を記載する。この文献によれば、ScHoW
3O
12及びAl
1.5In
0.5W
3O
12は、例えば−7・10
-6K
-1及び1・10
-6K
-1の膨張係数を有する。これらの成分は、例えば固体状態反応を介して製造することができる相である。しかし、多量のこれらの相が結晶化される従来のケイ酸塩又はホウケイ酸塩ガラスの製造は、可能ではないと考えられる。したがって、これらの相が、材料全体の非常に低い熱膨張係数をもたらすのに十分高い体積濃度において、ガラスから結晶化されることができないことを推測することができる。
【0008】
低い膨張を有するガラスセラミックス、例えばCeran(登録商標)は、系Li
2O‐Al
2O
3‐SiO
2からのガラスの溶融及びその後の結晶化により概して製造される。係るリチウムアルミノシリケートガラスは、例えばEP0995723B1、US RE29437E及びDE3927174A1に記載されているが、これらのすべては特に高い溶融温度を要求する。
【0009】
幾つかの特許文献では、アルカリ土類金属酸化物が添加剤として可能である。しかし、これらの酸化物は、結晶相に影響を及ぼすためではなく、単にガラスの特性を変化させるために加えられる。
【0010】
DD142037A1は、BaOが結晶化挙動を改善し、かつ、粘度を低減するのに用いられたリチウムアルミノシリケートガラスを記載する。しかし、BaOは、ガラスの膨張係数の大きな増大をもたらすことが知られている。
【0011】
また、DE2132788Cは、最大2質量%のBaO及び/又はCaO、及び最大12質量%の希土類金属酸化物の組み入れによりドープされたガラスを記載するが、これらは膨張係数を増大させる。ここでも、とりわけβ‐クオーツと同じ構造型を有する結晶により、負の膨張が達成される。高温クオーツ構造は、ここでは酸化アルミニウムによって、また、1価(Li
2O、Na
2O)又は2価(ZnO、MgO)酸化物によって安定化される。1550〜1600℃の非常に高い溶融温度が、ここで言及される。
【0012】
WO2005/009916A1は、負の膨張をβ‐ユークリプタイト及びβ‐クオーツの結晶化により達成することができることを記載する。ZnO、また、BaO及び/又はSrOの両方を加えることができる。しかし、これらの構成成分の結晶相への組み入れは言及されていない。実施例において、1480℃の最小溶融温度が示される。
【0013】
概して、BaO又はSrO等のアルカリ土類金属酸化物は、これまで溶融温度を低減するためだけに、おそらく結晶化が生じる傾向も抑制するためにガラスに加えられてきたと結論付けることができる。この添加は、この種類の酸化物がガラスセラミックスの熱膨張係数を増大させるため、少量でのみ行うことができた。
【0014】
低い又は負の膨張を有する材料の分野における公報の上記の概観から、T>20℃の温度範囲で熱膨張がないか、負の熱膨張を有する非常に制限された数の結晶相だけが知られていることを理解することができる。主に、アルミノシリケートガラスから結晶化されることができる相が、商業的に用いられている。これらは通常、Li
2O‐Al
2O
3‐SiO
2系に基づく。しかし、この系のガラスは、非常に高い溶融温度、通常1550℃を大きく超える溶融温度を有する。これは、したがって高いエネルギーコスト、特に技術的複雑化の高い程度をもたらす。
【0015】
文献で公開された低い又は負の熱膨張係数を有するすべてのケイ酸塩組成物は、上記に示された不利益を有するアルミノシリケート組成物である。
【0016】
したがって、本発明の目的は、低い溶融温度にて非常に小さい支出で、低いか、さもなければ負の熱膨張を有するセラミックス及び/又はガラスセラミックスを製造する可能な方法を示すことである。
【0017】
本特許出願において、非常に低い膨張係数とは、−1・10
-6K
-1〜1・10
-6K
-1の範囲を意味する。
【0018】
目的は、従来のセラミックスプロセス又はガラスからの結晶化により製造することができる式AM
2Si
2O
7(A=Sr、Ba及びM=Zn、Mg、Fe、Ni、Co、Cu、Mn)の結晶相により、本発明にしたがって達成されている。示された組成物は固溶体を形成し、成分Mとして示された元素は、事実上あらゆる濃度において互いに置換することができる。これらのケイ酸塩の化学両論及びその構造は、多かれ少なかれ異なることができる。SiO
2をGeO
2と置換することもできる。
【0019】
化合物BaZn
2Si
2O
7は、室温にて単斜晶低温相として存在し、これは280℃にて斜方晶高温相に転移する(J.H.Lin、G.X.Lu、J.Du、M.Z.Su、C.‐K Loong、J.W.Richardson Jr.、J.Phys.Chem.Solids60、1999、975‐983)。低温相の熱膨張係数は、ここでは非常に高い13〜16・10
-6K
-1であり、相転移は、2.8%の体積増加と関連付けられ、次いで高温相は、高温における非常に小さいか、さもなければ負の熱膨張を組成に応じて有する(M.Kerstan、M.Muller、C.Russel、J.Solid State Chem.188、2012、84‐91)。
【0020】
式AM
2Si
2O
7(A=Ba、Sr及びM=主成分としてZn、加えてMg、Fe、Ni、Co、Cu、Mn)の結晶へのSrOの組み入れは、低い及び/又は負の膨張を有する高温相の安定化に有効であり、その結果これは室温においても安定化される。成分Mは、主成分として常にZnを有するのがよい。すなわち成分M中のZnの割合は、>50%であるのがよい。SrOに加えて、比較的高い濃度のCo、Mg、Fe、Ni、Cu及びMnがZnの代わりに組み入れられる場合、これは、低温の構造BaZn
2Si
2O
7を有する高い膨張相の安定化をもたらす。しかし、Co、Mg、Fe、Ni、Cu及びMnの比較的低い濃度を、低温相を安定化することなく結晶に組み入れることができる。これは、高温相が、Co、Mg、Fe、Ni、Cu及びMnの組み入れ時でさえ、室温にて保持されることを意味する。
【0021】
本発明にしたがって製造される材料を、上記のBa
1-xSr
xM
2Si
2O
7相が主結晶相である粉末から焼結することができる。しかし、焼結に用いられる粉末は、1つ又はそれより多くの他の結晶相又はアモルファス相を含有することができる、記載される粉末を、例えば、酸化物及び炭酸塩からの固体状態反応か、さもなければ他の方法、例えばゾルゲル若しくは共沈プロセスによるか、さもなければガス相反応により製造することができる。
【0022】
本発明による材料は、ガラスの制御された結晶化により得ることもできる。これは、本発明による結晶相の成分が、多くの比較的結晶化安定性のガラスの構成成分でもあるために可能である。比較的少量のSiO
2のだけをBa
1-xSr
xM
2Si
2O
7組成物に加える場合、比較的安定なガラスを得ることができる。ガラスの安定性は、例えばB
2O
3、La
2O
3又はZrO
2等のさらなる成分の添加によりさらに改善することができる。なぜなら、低濃度におけるこれらの成分は、本発明による化学組成物における核生成を抑制するからである。しかし、より高濃度におけるLa
2O
3又はZrO
2は、反対の効果を有する、すなわち、核生成、したがって結晶化を引き起こし、結果として核形成剤として働く可能性がある。
【0023】
高い割合のBaO及び/又はSrOを有するほとんどのガラス及びガラスセラミックスは非常に高い熱膨張係数を有するため、ガラスセラミックスの膨張係数を、重要なガラス特性、例えばガラス転移温度又は純粋なガラスの膨張係数を大きく変化させることなく、BaO/SrO比の変動によって広範な範囲内で変化させることができる。
【0024】
さらに、成分Mは、組成物Ba
1-xSr
xM
2Si
2O
7においてもかなり重要である。M=Znの場合において、本発明による結晶相は、約10モル%のBaOをSrOにより置換するとすぐに安定化されることができる。Zn以外の成分の組み入れは、高膨張低温相の安定化ももたらす。成分Mとして、以下の2価金属:Mg、Ni、Co、Fe、Cu、Mnのイオンを用いることが可能である。
【0025】
Znが他の成分により過剰に置換される場合、高い膨張係数を有する低温相が安定化される。この効果により、ほぼ同じ特性を有するガラスを製造することが可能となるが、その結晶化後の膨張挙動は、かなり変化する可能性がある。これらのガラスセラミックスは、したがって広範な範囲内で、目的のように、膨張係数を制御する可能な方法を示す。
【0026】
本発明は、以下の実施例の助けにより示される。
【実施例】
【0027】
実施例1
以下の表に示される組成物は、従来のセラミックスプロセス(固体状態反応)により製造される。これは、出発物質を液相線温度未満で30〜50時間加熱することを意味する。この時間中、粉末は、繰り返し粉砕され、均一化される(4〜10回)。相純度は、x線粉末回折により検査される。BaCO
3、SrCo
3、ZnO、SiO
2、GeO
2、MgO、MnCo
3、NiO、Fe(COO)
2・2H
2O、Co
3O
4及びCuOが、ここで原料として用いられる。2種の結晶構造をここで安定化することができる。X線粉末回折は、単斜晶改質体が室温にて安定であるか、斜方晶改質体が室温にて安定であるかを検査するのに用いられる。後者は、所望の負の熱膨張を有する。2種の相のうち、室温にて安定であるものを表において見ることができる。幾つかの組成の場合において、2種の相は、サイド・バイ・サイドで存在する。鉄含有サンプルは、アルゴン雰囲気下で製造された。
【0028】
【表1】
【0029】
主成分として斜方晶改質体を含有する粉末は、先の等方圧圧縮、及びその後の焼結後に負の又は非常に低い熱膨張係数を示す。
【0030】
実施例2
酢酸塩及びコロイダルSiO
2による組成Ba
0.2Sr
0.8Zn
2Si
2O
7を有するセラミックスの製造。
【0031】
この目的に関して、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム及び酢酸亜鉛を脱イオン水に正確な化学両論で溶解させる。≦50nmの粒子サイズを有するコロイダルSiO
2の適切な量が、溶解した酢酸塩に加えられる。継続的に撹拌しつつ、水を粘性マスが形成されるまで1日に亘って蒸発させる。これを乾燥させ、ボールミルにより粉砕し、水中のポリビニルアルコールの1%強度溶液と混合し、再び乾燥させる。得られた粉末は、その後一軸で圧縮され、1130℃にて焼結される。得られたセラミックスは、X線粉回折により試験される。結晶構造は、実施例1でも見られたように、高温BaZn
2Si
2O
7のものと対応する。セラミックスは純粋な相であり、−12・10
-6K
-1の線形の熱膨張係数を示す。
【0032】
実施例3
組成8 BaO・8 SrO・34 ZnO・46 SiO
2・1 ZrO
2・3 La
2O
3を有するガラスは、白金るつぼ中で1450℃の温度にて溶融する。ガラスは、この温度にて非常に低い粘度(<10Pas)を示す。約20mmの長さ及び約8mmの直径を有する円筒状の試料の900℃における5時間の結晶化は、(25〜300℃の温度範囲で測定される)0.5・10
-6K
-1の線形の熱膨張係数を与える。
【0033】
実施例4
組成8 BaO・8 SrO・30 ZnO・5 MgO・45 SiO
2・2 ZrO
2 2 La
2O
3を有するガラスを、白金るつぼ中で1400〜1450℃にて溶融させる。900℃における5時間の結晶化後、ガラスは、(25〜300℃の温度範囲で測定される)−2・10
-6K
-1の線形の熱膨張係数を有する。
【0034】
実施例5
組成8 BaO・8 SrO・30 ZnO・5 CoO・45 SiO
2・1 ZrO
2・1 La
2O
3・2 B
2O
3を有するガラスを、Al
2O
3るつぼ中で1350〜1450℃にて溶融させる。900℃における5時間の結晶化後、ガラスセラミックスは、(25〜300℃の温度範囲で測定される)−2.4・10
-6K
-1の線形の熱膨張係数を有する。
【0035】
実施例6
組成8 BaO・8 SrO・34 ZnO・44 SiO
2・1 ZrO
2・1La
2O
3・4 B
2O
3を有するガラスを、≦10μmの平均粒子サイズに砕く。このように得られたガラス粉末を、水中のポリビニルブチラールの1%強度溶液と混合し、乾燥させる。粉末は、その後シリコーン型の助けにより、冷間等圧圧縮される。圧縮物は、最終的に900℃にて5時間焼結される。加熱中、粉末は粘性流により高密度にされ、ガラスは、その後結晶化する。4.1・10
-6K
-1の線形の熱膨張係数が、100〜500℃の温度範囲で得られる。
【0036】
実施例7
組成7.5 BaO・7.5 SrO・32 ZnO・47 SiO
2・5 ZrO
2・1 La
2O
3を有するガラスを、1350〜1450℃にて溶融させる。ガラス転移温度は695℃である。815℃における20時間の結晶化は、組成Ba
0.5Sr
0.5Zn
2Si
2O
7を有する結晶の形成をもたらす。少量のZrO
2が追加的に結晶化する。後者は、核形成剤として働く。815℃にて結晶化されたガラスは、−2.1・10
-6K
-1の線形の熱膨張係数を有する。
【0037】
実施例8
組成Sr
0.5Ba
0.5Zn
1.9Ni
0.1Si
2O
7を有するセラミックスは、固体状態反応により製造される。この目的に関して、適切な量のBaCO
3、SrCO
3、ZnO、NiO及びSiO
2がエタノール中でスラリーにされ、その後<3μmの平均粒子サイズに遊星ミルにおいて粉砕される。出発物質とエタノールとの混合物を、その後110℃にて3時間乾燥させる。このように形成された粉末は、1200℃における10時間の熱処理により、対応する実質的に純粋な相のセラミックスに転化される。セラミックスは、次いで再び<3μmの平均粒子サイズに粉砕され、一軸で圧縮される。圧縮物は、その後1200℃にて10時間焼結される。膨張計測定は、100〜300℃の温度範囲において、−19.3・10
-6K
-1の膨張係数を示す。
【0038】
実施例9
組成8BaO 8SrO 30ZnO 5MgO 45SiO
2 3B
2O
3を有するガラスを、白金るつぼ中で1350℃にて溶融させる。原料BaCO
3、SrCO
3、ZnO、MgO、SiO
2及びH
3BO
3がこの目的に関して用いられる。ガラスを、700℃に予熱されたスチール型に注ぎ、その後同様に700℃に予熱された冷却炉に輸送し、その後2K/分にて冷却する。700〜780℃の温度範囲におけるガラスブロックの結晶化は、室温〜650℃の温度範囲において測定される、ゼロに近い熱膨張を有するガラスセラミックスを製造する。これを、したがって光学要素用の支持材料として用いることができる。
【国際調査報告】