特表2018-527430(P2018-527430A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-527430ゴム組成物およびそれを使用したゴム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-527430(P2018-527430A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを使用したゴム製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20180824BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20180824BHJP
   C08L 11/00 20060101ALI20180824BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20180824BHJP
   C08L 39/06 20060101ALI20180824BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20180824BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20180824BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20180824BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20180824BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20180824BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20180824BHJP
【FI】
   C08L21/00ZBP
   C08L9/02
   C08L11/00
   C08L1/00
   C08L39/06
   C08L23/08
   F16G1/08 C
   F16G1/28 F
   F16G5/06 C
   F16G5/20 A
   C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-500726(P2018-500726)
(86)(22)【出願日】2016年7月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月20日
(86)【国際出願番号】US2016041328
(87)【国際公開番号】WO2017011265
(87)【国際公開日】20170119
(31)【優先権主張番号】14/796,592
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ユディン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ショウン クシャン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB013
4J002AB023
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC071
4J002AC091
4J002AC111
4J002AH003
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB151
4J002BJ002
4J002FA043
4J002FD013
4J002FD146
4J002GM00
4J002GM01
4J200AA04
4J200BA07
4J200DA00
4J200EA21
(57)【要約】
環境にやさしいセルロース系補強用繊維を用いた動力伝達ベルトやホースに有用な組成物。エラストマーやゴムの組成物は、ベースエラストマー、ポリビニルピロリドン、セルロース系繊維、加硫剤を含む。ベースエラストマーはエチレンエラストマー、ニトリルエラストマー、ポリクロロプレンエラストマーから選択される1つ以上であってよい。エラストマーはエチレン−α−オレフィン系エラストマーであってよい。ポリビニルピロリドンはエラストマー100に対して5〜50重量部存在してよい。ルロース系繊維はケナフ、ジュート、タイマ、亜麻、ラミー、サイザル、木材、レーヨン、アセテート、トリアセテート、綿からから選択される1つ以上であってよい。セルロース系繊維は靭皮繊維であってよい。セルロース系繊維はエラストマー100に対して1〜50重量部存在してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースエラストマー、ポリビニルピロリドン、セルロース系繊維、加硫剤を含むゴム組成物。
【請求項2】
前記ベースエラストマーはエチレンエラストマー、ニトリルエラストマー、ポリクロロプレンエラストマーから成るグループから選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ベースエラストマーはエチレン−α−オレフィン系エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ベースエラストマーはポリクロロプレンエラストマーであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記セルロース系繊維はケナフ、ジュート、タイマ、亜麻、ラミー、サイザル、木材、綿から成るグループから選択される1つ以上の天然繊維であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記セルロース系繊維はケナフ、ジュート、タイマ、亜麻から成るグループから選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記セルロース系繊維はケナフ、ジュート、タイマ、亜麻、ラミーから成るグループから選択される一つ以上の靭皮繊維であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記セルロース系繊維はケナフ、ジュート、亜麻から成るグループから選択される一つ以上の靭皮繊維であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記セルロース系繊維は人工材料であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ポリビニルピロリドンは前記ベースエラストマー100に対して5〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記セルロース系繊維は前記ベースエラストマー100に対して1〜50重量部存在することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のゴム組成物の反応生成物を含む動力伝達ベルト。
【請求項13】
加硫または硬化後の請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項14】
エチレン−α−オレフィン系エラストマーと、ポリビニルピロリドンと、亜麻、ジュート、ケナフのグループから選択されるセルロース系靭皮繊維と、加硫剤とを含むゴム組成物。
【請求項15】
前記ポリビニルピロリドンは前記エラストマー100に対して5〜50重量部存在することを特徴とする請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記セルロース系繊維は前記エラストマー100に対して1〜50重量部存在することを特徴とする請求項15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のゴム組成物の反応生成物を含む動力伝達ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ベルトやホース等のゴム製品に有用なゴム組成物に関し、特にセルロース系繊維で補強したエラストマーへポリビニルピロリドンがブレンドされた組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達用のベルトは、Vベルト、マルチVリブドベルト、同期ベルトや歯付きベルトを含む。これらのベルトに使用されるゴム配合には、アラミド繊維のような高性能、合成、短繊維の補強材がよく使用される。これらの繊維は性能要件を満たすために必須と考えられているものの、高価かつ非再生可能資源から得られるものとなりがちである。
【発明の概要】
【0003】
本発明は環境にやさしいセルロース系補強繊維を用いる動力伝達ベルトやホースに有用なエラストマー組成物を提供するシステムと方法を対象とする。
【0004】
エラストマー組成物やゴム組成物は、エラスマー、ポリビニルピロリドン、セルロース系繊維、加硫剤を含む。
【0005】
エラストマーは、エチレンエラストマー、ニトリルエラストマー、ポリクロロプレンエラストマーのいずれか1つ以上であってよい。エラストマーはエチレン−α−オレフィン系エラストマーであってよい。
【0006】
ポリビニルピロリドンはエラストマー100に対して5〜50重量部(PHR)存在してよい。
【0007】
セルロース系繊維は、ケナフ、ジュート、タイマ、亜麻、ラミー、サイザル、木材、レーヨン、アセテート、トリアセテート、綿のいずれか1つ以上であってよい。セルロース系繊維は天然繊維か人工材料であってよい。セルロース系繊維は靭皮繊維であってよい。セルロース系繊維はエラストマー100に対して1〜50重量部存在してよい。
【0008】
本発明は、本発明のゴム組成物の反応生成物を使用した動力伝達ベルトも対象とする。ゴム組成物は加硫または硬化されてもよい。
【0009】
本発明は比較的高価値のゴム化合物の提供に貢献してもよい。高価値のゴム化合物は、たとえば再生可能な天然資源から比較的安価な繊維を用いて比較的高い化合物のモジュラスを達成するものである。
【0010】
ポリクロロプレンエラストマーに基づく本発明の実施形態は、マーチングモジュラスではなくキュアにおいてモジュラスの頭打ちを示してよい。
【0011】
以下の本発明の詳しい説明がよりよく理解できるよう、上記では比較的おおまかに本発明の特徴と技術的優位性を概説した。本発明のその他の特徴や利点は、本発明のクレームの主題を成す以下において説明する。開示されている概念および具体的な実施例は本発明と同じ目的を達成するために他の構造を変更または設計するための基礎として容易に用いることができることは当業者に理解されるべきである。このような同等の構造は添付のクレームで明らかにされている本発明の範囲から外れないことも当業者に理解されるべきである。構成および運用方法の両方に関して本発明に特有と考えられる新規な特徴は、さらに目的や利点とともに添付の図面と関連付けて検討することで以下の説明からよりよく理解される。しかし、それぞれの図面は例解および説明のために供されるだけであり、本発明の範囲を定義することを意図していないことは明確に理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面は本発明の実施形態を図示し、記述とともに本発明の原理の説明に寄与する。添付の図面は本明細書に組み込まれてその一部を構成し、同様の数字は同様の要素を示す。
【0013】
図1】本発明の実施形態の動力伝達Vベルトの部分斜視図である。
【0014】
図2】本発明の実施形態の動力伝達Vリブドベルトの断面図である。
【0015】
図3】本発明の実施形態の歯付き動力伝達ベルトの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は動力伝達ベルトやホース等の力学的製品に有用なゴム組成物を対象とする。ゴム組成物はポリビニルピロリドン(PVP)とブレンドされたベースエラストマーおよびセルロース系繊維成分を有する。
【0017】
「ゴム」は、大きな変形から素早くかつ強制的に復帰し得て(すなわちゴム状である)、かつ沸騰した溶媒において(共有結合架橋の存在のため)本質的に溶解しない素材を意味する。他の有用な定義は参照により本明細書に援用されるASTMD−1566で入手できる。「エラストマー」は、架橋結合時にゴムを形成するゴム状ポリマーを意味する。
【0018】
ゴムやゴム状の「組成物」や「調合物」は、ゴム素材を作るのに使用される原料の組み合わせを意味する。ゴム「化合物」は、混合後かつ硬化または加硫前のゴム組成物の材料の混合物を意味する。ゴム組成物は、加硫剤、充填剤、増量剤、軟化剤、抗分解物、着色剤、加工助剤、硬化剤、促進剤、抑制剤、助剤、燃焼抑制剤等の多数の付加成分を一つ以上のエラストマーに加えて含んでもよい。「ベースエラストマー」は、ゴムの組成物に用いられるゴム状ポリマーを意味し、複数のエラストマーのブレンドであってもよい。
【0019】
本発明のゴムは任意の適切なベースエラストマーをベースとしてよいが、代表的なエラストマーとしては、天然ゴム、ポリクロロプレン(CR)、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、エチレンエラストマー、ニトリルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。エチレンエラストマーは、エチレンビニルアセテートエラストマー、エチレンアクリルエラストマー、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含む。ニトリルエラストマーは、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、カルボキシル化したNBRおよびHNBR等を含む。本発明は代表的なゴム組成がエチレン−α−オレフィンエラストマーのような無極性のエラストマー、例えばエチレンプロピレンジエンエラストマー(EPDM)、エチレンプロピレンエラストマー(EPM)、エチレンオクテンエラストマー(EOM)、エチレンブテンエラストマー(EBM)等をベースとしていると特に有利である。ゴム組成物は2つ以上のエラストマーのブレンドをベースとしていてもよい。
【0020】
本発明のゴムは、ベースエラストマーと他の全ての原料が混合された重合体マトリックスとしてのポリビニルピロリドンとのブレンドをベースとする。ポリビニルピロリドン(PVP)は弱い臭気特性を有する白い吸湿性の粉である。ほとんどのポリマーと異なり、PVPは水およびアルコール、アミン、酸、塩素化炭化水素、アミド、ラクタム等の多数の有機溶剤に対して容易に溶解する。一方、ポリマーは一般的なエステル類、エーテル類、炭化水素、ケトンに対して溶解しない。非常に優れた膜形成、他の素材への初期の粘着度および粘着力、複雑な組成への高い適応力、良好な安定性および可溶性、pH変化への不感性、放射線誘発の架橋結合への即時性、良好な生物学的適合性と、その吸湿特性が組み合わされることで、PVPは溶媒、乳剤、コーティング、フィルムにおいて特によく使用される有利なポリマーとなっている。
【0021】
PVPはN−ビニルピロリドンを水かアルコール中で適切な開始剤と終了方法によって遊離ラジカル重合させることで合成される。適切な重合条件を選択することで、数千ダルトンの小さい値から約220万ダルトンにわたる広い範囲の分子量を得ることができる。選択されたコモノマーは重合中にPVPポリマーに組み込むことでその特性を変更できる。このようなコモノマーは、酢酸ビニル(VA)およびN−ビニルピロリドン(VCAP)を含む。例えば、Luvitec(登録商標)VA64はおおよそ40%のVAコモノマーを含有し、PVPホモポリマーよりも吸湿性が低い。表1はKollidon(登録商標)やLuvitec(登録商標)で売られているいくつかの市販のBASFグレードの同種重合体と共重合体のPVP平均重量と数平均分子量をダルトンで示す。
【0022】
【表1】
【0023】
本発明は、自然に発生する植物由来繊維または主要成分が木材、ケナフ、ジュート、タイマ、ラミー、亜麻等のセルロースをベースとする人造繊維であるセルロース系繊維の、可撓性の動力伝達ベルトやホースに有用なゴム組成物への使用を対象とする。植物の樹皮部分から得られる靱皮繊維が第一の関心対象であるが、いくつかの葉繊維や種繊維も有用であり得る。靱皮繊維としては他にサンヘンプ、ボンテンカ、カディロ、ローゼルが挙げられる。葉繊維としてはアバカ、カンタラ、エネケン、イストゥル、フロミウム、サンセベリア、サイザルが挙げられる。有用な種繊維としては綿とカポックが挙げられる。木質繊維としては広葉樹種や針葉樹種由来のものが挙げられる。人造のセルロース系繊維としては、レーヨン(再生セルロース)、ビスコース、アセテート(セルロースアセテート)、トリアセテート(セルローストリアセテート)等が挙げられる。
【0024】
ケナフ(Hibiscus cannabinus L.)はアフリカ原産の一年生草本である。ケナフはアメリカではより新しい作物である。ケナフは、ミシシッピ州、テキサス州、カリフォルニア州、ルイジアナ州、ニューメキシコ州、ジョージア州等の南部の温暖な地域で主に栽培されている。ケナフの生育期間は90〜150日であって、2.4〜6メートルの高さに成長する。ケナフの一本の真っ直ぐな幹は外側の繊維状の樹皮と内側の木質コアからなり、これによって二つの異なる種類の繊維、すなわち靱皮繊維とコア繊維とが得られる。靱皮繊維は幹の26〜35重量%(重量パーセント)を構成し、靱皮部分を35重量%またはそれ以上もたらす遺伝的な品種が開発されている。収穫したケナフの幹は通常樹皮をコアから分離するためにまず剥皮し、これによってケナフの靱皮繊維のリボンが生産される。これらのリボンは繊維束や単一の繊維へと浸水できる。一旦繊維が空気乾燥されたら(おおよそ10%の含水量)、ケナフ作物は収穫されることが望ましい。乾燥は、作物を畑に立たせておくことで実行されてよい。
【0025】
一般的に、ケナフの靱皮繊維は、長さが平均2.6mm、直径が平均21μm、長さ/直径の平均アスペクト比が124である中空の管であって、針葉樹種と酷似している。コア繊維は、 平均長さが0.5mmであって、広葉樹のそれとよく一致している。
【0026】
ケナフの靱皮繊維束(KBFB)の主要成分はセルロース、ヘミセルロース、リグニンである。それぞれの成分の量は、栽培環境、地理的な起源、年代、植物における位置(根から先端)、浸水および分類技術によって大きく変化し得る。http://www.hempology.org/CURRENT%20HISTORY/1996%20HEMP%20COMPOSIT ES.htmlで入手可能なLloyd E. H.、D. Seber"Bast fiber applications for composites," (1996)において、セルロース60.8重量%、ヘミセルロース20.3重量%、リグニン11.0重量%、抽出物3.2重量%、灰4.7重量%と報告されている。Mohanty et al, "Biofibres, biodegradable polymers and biocomposites: an overview," Macromolecular materials and engineering, 276-277(1): 1-24 (2000)においては、より少ないセルロース(31〜39重量%)と多いリグニン(15〜19重量%)の量が報告されている。Frollini E, Leao AL, Mattoso LHC,編集の"Natural polymers and agrofibers based composites: preparation, properties and applications," San Carlos, Brazil: L.H.C., Embrapa. pp. 115-134 (2000)内の、Rowell et al., "Characterization and factors effecting fiber properties"においては、セルロース44〜57重量%とリグニン15〜19重量%が報告されている。他の情報源では、ケナフ、ジュート、タイマ、亜麻繊維に約71〜76%のセルロース含有量、より少ない(<8%)リグニンと13〜19%のヘミセルロースとが開示されている。
【0027】
ケナフは、豊作、低密度な生息、処理中の非研磨性、高い特定の機械的特性、生分解性、安価な価格等、生態的および経済的な利点を有するセルロース源である。歴史的に、ケナフ繊維はロープとして最初に使われた。現在、産業界は製紙および不織布織物におけるケナフの使用を検討している。ケナフ製品の潜在的用途としては、製紙用パルプ、ロープ、草浸食マット、床敷、油吸着剤、動物の寝わら、断熱ボード、プラスチック用充填剤、織物が挙げられる。
【0028】
表2はケナフと他のセルロース系繊維の機械的特性といくつかの一般的な合成繊維との比較を示している。ケナフ、亜麻、タイマ、ジュートは靱皮繊維、サイザルは葉繊維、綿は種子毛繊維である。引張強さと伸張性の観点において、セルロース系繊維はナイロンやポリエステルよりかなり良好な特性を示す。ケナフ繊維の優れた特徴は、Eガラス繊維やアラミド繊維に匹敵するヤング率を有することである。これらのセルロース系繊維の引張強さはベルト引張コードの用途としては十分には高くないが、本発明の実施形態によれば、ベルトの形状安定性、補剛やコード支持のためにゴムベルト化合物を補強する充填剤として使用するのに適している。
【0029】
【表2】
【0030】
本発明を実施するための、ケナフ繊維を含む望ましい靭皮繊維は、短いコア繊維から分離されてベルト組成物の用途に便利な長さに切断される樹皮から採れる長い靭皮繊維である。繊維の適切な長さは0.5〜5mm、1〜4mm、1〜3mm、あるいは2〜3mmの範囲であってよい。望ましい負荷は所望の補強の量によるが、ベースエラストマー(PHR)100に対して0.55〜50重量部、あるいは1〜30重量部の範囲が有利であり得る。適切な繊維は、たとえばProcotex Corporation SA, Kenactiv InnoVAtions, Inc.やInternational Fiber Corporationから入手できる。
【0031】
亜麻繊維(Linum usitatissimum L)は温暖かつ湿潤な気候で育つ同名の一年生草本から採れる。亜麻の靭皮繊維の収穫および処理はケナフと同様である。茹でて漂白された亜麻は95%以上セルロースを含有し得る。適切な繊維は例えばProcotex Corporation SAから入手できる。
【0032】
麻繊維は、中国起源であり、現在はアジアやヨーロッパでも生育している植物である大麻から採れる。
【0033】
ジュートはインドアサとモロヘイヤの二つの植物から採れる。これらは主にインド、バングラデシュ、ビルマ、ネパール、ブラジルで生育している。ケナフとジュートはその剛性に寄与するリグノセルロースを含有する。ロゼルはケナフと密接に関係しているH. Sabdarifaから抽出される。
【0034】
ラミー靭皮繊維はカラムシの樹皮から採れる。その高い樹液含有量のため、ラミー靭皮繊維はケナフのように浸水することができない。その代わり、アルカリ溶液で煮ることで繊維を分離し、その後洗浄、漂白、中和、乾燥を行う。このように精練されたラミーは95%以上セルロースを含有し得る。このような化学処理は他の種類の繊維の調合にも用いることができ、酵素処理を含んでもよい。
【0035】
サイザルはサイザルアサから得ることができ、葉繊維の中で最も商業的に重要である。
【0036】
多数の他の植物繊維も合成における使用の可能性を研究されている。セルロース系であって適切な物理的、寸法的特性を有している限り、それらもゴム組成物に有用となり得る。これらの他の植物繊維は、バナナ植物繊維、パイナップル、ヤシ、竹等である。
【0037】
木質繊維(セルロース繊維、木材パルプあるいは単に「パルプ」としても知られている)は広葉樹および針葉樹の両方のいかなる木材種からも入手することができる。繊維を分離する工程は、補強ゴム組成物に適した繊維を得るための既知のいかなるパルプ化工程であってもよい。再生パルプを用いてもよい。
【0038】
セルロース系繊維はエラストマーPVPブレンド組成物における唯一の繊維補強材として用いられてもよく、あるいは他の種類の繊維が追加で含まれてもよい。たとえば、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、カーボンガラス等の付加的繊維が組成物にセルロース系繊維とともにブレンドされてもよい。
【0039】
混合するためには、内部バッチミキサー、開放型ロール機、混合押出機等、従来のあるいは既知のいかなる混合装置を用いてもよい。同様に、混合物の成形、形成、保存処理、加硫において、従来のあるいは既知のいかなる方法や装置を用いてもよい。
【0040】
本発明のゴム化合物は、Vベルト、歯付きベルト、同期ベルト、マルチVリブドベルト等の動力伝達用ベルト、ホースや他の適切なゴム製品に用いてよい。
【0041】
図1は、本発明の実施形態による動力伝達ベルトを、可変速駆動用のVベルトの形態で示す。Vベルト100は一般的に等脚台形断面を有し、後側、上側、外側、または表側に配置された引張またはオーバーコード層130と、底側、下側、または内側に配置された圧縮またはアンダーコード層110と、オーバーコード層130とアンダーコード層110の間に配置された粘着層120と、粘着層120に埋め込まれた螺旋巻きの引張コード140とを有する。Vベルト100の側面はV形状を画定するプーリー接触面である。粘着層120、オーバーコード層130、アンダーコード層110を含むベルト本体の層は、一般的に加硫ゴム化合物であって、各層は互いに異なる組成であっても同じ組成であってもよい。Vベルトはその後側、内側、またはその両方に歯か窪みを有してよい。Vベルトの表面またはその内部に織物が用いられてもよい。コードは高モジュラス、耐疲労であって、既知のポリアミド、ポリエステル、アラミド、カーボン、ポリベンゾビスオキサゾール、ホウ素、またはガラスのねじられたまたは配線された束、繊維または紡績糸、またはそれらの混成であってよく、接着剤等で処理されてよい。エラストマー、PVP、セルロース系繊維を含む本発明の実施形態のゴム組成物は、上記ベルトの組立に用いられるエラストマー層のうちいずれか一つ以上に用いられてよい。一つ以上の層は、横方向に向けて散らばって配置された短繊維を含んでもよい。これによって、ベルト本体の縦方向の柔軟性を維持しながら横方向の剛性が高められる。
【0042】
図2はVリブドベルトの形態の本発明の実施形態による動力伝達ベルトの断面を示す。Vリブドベルト200は、後側に配置された引張またはオーバーコード層230と、底側に配置された圧縮またはアンダーコード層210と、オーバーコード層230とアンダーコード層210の間に配置された粘着層220と、粘着層220に埋め込まれた螺旋巻きの引張コード240とを有する。V字型のリブはプーリー接触面となる。粘着層220、オーバーコード層230、アンダーコード層210を含むベルト本体の層は、一般的に加硫ゴム化合物であって、各層は互いに異なる組成であっても同じ組成であってよい。Vベルトの表面またはその内部に織物が用いられてもよい。コードは上述のVベルトと同様であってよい。エラストマー、PVP、セルロース系繊維を含む本発明のゴム組成物は、上記ベルトの組立に用いられるエラストマー層のうちいずれか1つ以上に用いられてよい。一つ以上の層は、横方向に向けて散らばって配置された短繊維を含んでもよい。これによって、ベルト本体の縦方向の柔軟性を維持しながら横方向の剛性が高められる。
【0043】
図3は同期ベルトや歯付きベルトの形態の本発明の動力伝達ベルトを示す。歯付きベルト300は、後側に配置された引張またはオーバーコード層330と、歯部に歯ゴム310と、歯部を覆う歯布320と、ベルトに埋め込まれた螺旋巻きの引張コード340とを有する。歯部はプーリー接触面となる。歯ゴム310とオーバーコード層330を含むベルト本体のゴム層は、一般的に加硫ゴム組成物であって、各層は互いに異なる組成であっても同じ組成であってよい。コードは上述のVベルトと同様であってよい。エラストマー、PVP、セルロース系繊維を含む本発明のゴム組成物は、上記ベルトの組立に用いられるエラストマー層のうちいずれか1つ以上に用いられてよい。1つ以上の層は有利な方向に向けて散らばって配置された短繊維を含んでもよい。
【0044】
同様に、ホースの実施形態(不図示)はいずれかが本発明のゴム組成物に基づいて形成された1つ以上のゴム層を含んでもよい。ホースは1つ以上の織物補強層または1つ以上の粘着層も有してよい。
【0045】
例:
【0046】
第一のセットのゴム組成物の例では、PVPをケナフか亜麻のセルロース系繊維を含むEPDM組成物に加える効果について検討した。表3に記載された組成物は従来のゴム混練機によって混合された。すなわち、内部ミキサーによって混合し、その後挽いてつや出しを行った。比較例を「比較例」、本発明の例を「例」と示す。
【0047】
化合物の物理的特性は標準のゴム試験法によってテストした。引張強さ、極限伸、およびモジュラスは、列理方向(「WG」)および反列理(「XG」)方向においてASTMD−412準拠(ダイC、クロスヘッド速度6インチ/分を使用)の共通の強度試験法を用いて測定した。ここで、「モジュラス」とは、ASTMD−1566およびASTMD−412で定義されているように所定の伸長(たとえば5%か10%)における引張応力を意味する。ゴム硬度はASTMD−2240準拠のタイプAデュロメータを用いてテストした。引裂強度は、列理方向および反列理方向において、ダイC、ASTMD−624に従ってテストした。化合物弾性モジュラス(G’)はASTMD−6204準拠のRPA2000試験機を用いて、混合物を試験機内で硬化した後に歪度6.98%、1.667Hzの条件下で評価した。
【0048】
計測結果を表4に示す。セルロース系繊維を有するEPDM化合物へのPVPの添加によって混合物弾性モジュラス(G’)、引張強さ、引張モジュラス、および引裂強度が増加することが分かった。たとえば、比較例2と例3、例4との比較、あるいは例5、例6との比較によって、ケナフ充填ゴムへのPVPの増加によって物理的特性が向上していることが分かる。同様に、比較例2と例3、例4との比較、あるいは例5、例6との比較によって、ケナフ充填ゴムへのPVPの増加によって物理的特性が向上していることが分かる。制限することを意図するわけではないが、これらの結果はセルロース系繊維と無極性EPDMゴムマトリックス間の適合性が極性PVPの添加で向上したことを示すと考えられる。この結果はPVP改質EPDMエラストマーを有するセルロース系繊維が少なくとも部分的には比較例1における最高水準の高性能切断アラミド繊維の代替となり得ることを示す。このように、例3〜8は比較例1と同等あるいはより良好な物理的特性を有する。
【0049】
【表3】
【0050】
表3における2つの類似した組成物がVベルトでテストされた。比較例ベルトAの比較例1と例ベルトBの例6である。Vベルトは図1に示すように構成され、オーバーコードとアンダーコードの両方が各例の化合物で作られた。ベルトのピッチ長は45インチ、全厚が0.55インチ、トップ幅が1.25インチ、V角度が24°であった。異なる粘着層組成物が使用されたが、ベルトの構成は両者同じとした。両者のベルト構成には同じコードが使用された。ベルトはCVTベルトをテストするために設計された高負荷運転状況下の耐久性試験でテストされた。試験機はこのように26°に設定された滑車を有する2本ベルトリグであって、駆動滑車は5インチピッチ直径を有して2000rpmで駆動し、従動滑車は7.6インチピッチ直径を有して1257rpmで駆動し、トルク負荷は1003lb・in(20馬力)とした。耐久性試験の結果を表5に示す。比較例ベルトAのテストされた3つの対照ベルトはそれぞれ216時間、506時間、332時間の寿命を示した。例ベルトBのテストされた3つの本発明のベルトはそれぞれ348時間、378時間、358時間のベルト寿命を示し、対照に匹敵する平均を出した。このように、少なくともこの試験においては、同等のベルト寿命を示した2つのゴム組成物は同等の物理的特性を示した。
【0051】
【表4】
【0052】
上記2つの組成物は標準のBX断面Vベルトの寸法、すなわちV角度が34°、上部幅がそれぞれ21/32インチ、全厚がそれぞれ13/32インチを有するいくつかのVベルトの構成にも使用され、比較例ベルトCと例ベルトDと名づけた。そして、これらのベルトについて、Vベルト耐久性試験、Vベルト裏面繰返し曲げ試験、Vベルトミスアライメント試験によってテストした。耐久性試験は4.5インチ直径の1:1ドライブ、1770rpm、10HP負荷で34°の滑車走行を含む。裏面繰返し曲げ試験は同様だがゼロ負荷、3600rpm、50lb総張力、スパンで5インチODフラット裏面遊び車で実施する。ミスアライメント試験は耐久性試験と同じ構成を用いるが、従動滑車はアライメントから1°シフトアウトされる。表5にも記載されたこれら3つの試験の結果は、本発明のベルトと対照との間で同等の性能を示している。また、これらのベルトの結果は天然セルロース系繊維がしばしば高性能Vベルトに使用される切断アラミド繊維の一部または全部の代替として適していることを示している。
【0053】
【表5】
【0054】
第2のセットのゴム組成物の例では、PVPをケナフ、ジュート、または亜麻のセルロース系繊維を含むCR化合物に加える効果について検討した。表6に記載の組成物が第1のセットと同様に混合された。CR計測の結果を表7に示す。セルロース系繊維を有するCR化合物へのPVPの添加によって混合物弾性モジュラス(G’)、引張強さ、引張モジュラス、および引裂強度が増加することが分かった。ほとんどの場合において、結果としてEPDM化合物の場合と同じ水準の特性向上は見られなかった。これはEPDMとCRとの間の極性の違いに基づいて説明できると考えられる。具体的には、セルロース系繊維を分散させる際にPVPのような極性ポリマーの添加において、CRよりも極性が低いEPDMの方がより利すると考えられる。それにもかかわらず、PVPを、セルロース系繊維を有するCRへの混合に使用することでいくつかの顕著な利点が見られた。
【0055】
【表6】
【0056】
特筆すべき第1の利点としては、CRの通常のマーチングモジュラスが消失し、表7の結果におけるMDRキュアの良好なキュアの頭打ちに置き換えられた。これははるかに短いt90の結果(完全硬化の90%までの時間)から示される。対照合成物を検討すると、比較例9、13、16では漸進的で断続的なモジュラスの増加のためにt90は30分試験の終了間際となっている。しかし、表7の「例」では頭打ちとなり、t90ははるかに短くなっている。用途によってはこの効果は有利であり得る。望ましい硬化の程度に応じて、PVP/CRブレンドゴムの硬化状態を対照CRゴムに一致させるために硬化システムは調整が必要となり得る。
【0057】
特筆すべき第2の利点としては、PVPがない比較例15と比べて例16、17のようにPVPが添加された亜麻の例では大幅な伸長の向上が見られる。これは同じ亜麻充填化合物におけるモジュラスと引裂強度(「C引裂」)の向上にも相関するようである。
【0058】
【表7】
【0059】
このように、本発明の様々な実施形態によるゴム組成物はベルト、ホース、およびその他の動的ゴム物品に有用である。これらの組成物は、自然や再生可能資源由来で生分解性がある「環境にやさしい」補強繊維を使用する。
【0060】
本発明およびその利点を詳しく説明したが、添付のクレームで定義する本発明の範囲から外れない限り様々な変更、置換、および修正がなされ得ると理解される。さらに、本出願の範囲は本明細書に記載の工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、および手順の特定の実施形態に制限する意図ではない。当業者が本発明の開示から容易に理解するように、ここで説明した実施形態と実質的に同じ機能または実質的に同じ結果をもたらす現在存在するあるいは後に開発される工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、または手順は本発明によって使用されてよい。したがって、添付のクレームはそのような工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、または手順をその範囲内に含むことを意図する。ここで開示した発明はここで特に開示されていない要素を省略して適切に実行されてもよい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】