(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-528178(P2018-528178A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(54)【発明の名称】運動精子ドメイン含有タンパク質2及び炎症
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20180831BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20180831BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20180831BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20180831BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20180831BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20180831BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20180831BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20180831BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20180831BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20180831BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20180831BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20180831BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20180831BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20180831BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20180831BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20180831BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20180831BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20180831BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20180831BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20180831BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20180831BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20180831BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20180831BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20180831BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20180831BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20180831BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20180831BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20180831BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20180831BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20180831BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20180831BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20180831BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20180831BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20180831BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20180831BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20180831BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20180831BHJP
【FI】
A61K45/00ZNA
A61K31/7105
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A61P1/00
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A61P9/14
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A61P3/10
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P21/04
A61P7/06
A61P1/04
A61P17/00
A61P25/14
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/06
A61P19/02
A61P25/04
A61P31/12
A61P33/06
A61P31/16
A61P31/06
A61P31/04
A61P11/06
A61P31/10
A61P37/08
A61P19/10
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 Y
A61K31/685
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/113 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2018-504930(P2018-504930)
(86)(22)【出願日】2016年7月29日
(85)【翻訳文提出日】2018年3月16日
(86)【国際出願番号】IB2016054582
(87)【国際公開番号】WO2017021855
(87)【国際公開日】20170209
(31)【優先権主張番号】62/199,609
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512176406
【氏名又は名称】バスキュラー バイオジェニックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】メンデール イチャック
(72)【発明者】
【氏名】プロフェータ−メイラン オシュラト
(72)【発明者】
【氏名】サレム ヤニブ
(72)【発明者】
【氏名】ショハム アナット
(72)【発明者】
【氏名】ブレイトバート エヤル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA22
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4C084BA44
4C084BA47
4C084CA18
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4C084CA53
4C084DA39
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA081
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4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA451
4C084ZA511
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4C084ZA591
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4C084ZA751
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4C084ZB221
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4C085AA14
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4C085BB35
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4C085BB37
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4C085BB42
4C085BB43
4C085CC11
4C085CC21
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD33
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4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
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4C086EA16
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4C086MA01
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4C086NA14
4C086ZA02
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4C086ZA45
4C086ZA51
4C086ZA55
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA90
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4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB22
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC02
4C086ZC42
4C086ZC52
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、運動精子ドメイン含有タンパク質2(Motile Sperm Domain containing Protein 2(MOSPD2))の阻害剤を用いた、炎症性疾患または障害を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法、及び細胞における1種または複数種の活性を阻害する、防止する、またはその発生率を低下させる方法が開示される。MOSPD2の阻害剤、及びMOSPD2阻害剤を含有する医薬組成物もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患または障害を処置または予防する方法であって、その必要がある対象に、運動精子ドメイン含有タンパク質2(Motile Sperm Domain containing Protein 2(MOSPD2))の阻害剤の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記阻害剤は、ポリペプチド、DNA、またはRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記阻害剤は、(i)MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する単離結合分子であるか、(ii)MOSPD2ポリペプチドのリガンドに特異的に結合する単離結合分子であるか、(iii)MOSPD2ポリペプチドに対して産生された抗血清であるか、(iv)可溶性MOSPD2ポリペプチドであるか、または(v)MOSPD2ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、本質的にそれからなる、もしくはそれからなる可溶性MOSPD2ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体の抗原結合断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、sdFv断片、VHドメイン、またはVLドメインである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記阻害剤は、ストリンジェントな条件下でMOSPD2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、RNAi、miRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合DNA、被包DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、被包RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を起こすことができる分子、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を有する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列によりコードされる、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記炎症性疾患または障害は、特発性炎症性疾患もしくは障害、慢性炎症性疾患もしくは障害、急性炎症性疾患もしくは障害、自己免疫疾患もしくは障害、感染性疾患もしくは障害、炎症性悪性疾患もしくは障害、炎症性移植関連疾患もしくは障害、炎症性変性疾患もしくは障害、過敏症と関連した疾患もしくは障害、炎症性心血管疾患もしくは障害、炎症性脳血管疾患もしくは障害、末梢血管疾患もしくは障害、炎症性腺性疾患もしくは障害、炎症性胃腸疾患もしくは障害、炎症性皮膚疾患もしくは障害、炎症性肝疾患もしくは障害、炎症性神経疾患もしくは障害、炎症性筋骨格疾患もしくは障害、炎症性腎疾患もしくは障害、炎症性生殖疾患もしくは障害、炎症性全身性疾患もしくは障害、炎症性結合組織疾患もしくは障害、壊死、炎症性インプラント関連疾患もしくは障害、炎症性加齢プロセス、免疫不全疾患もしくは障害、または炎症性肺疾患もしくは障害である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記過敏症は、I型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時型過敏症、抗体媒介性過敏症、免疫複合体媒介性過敏症、Tリンパ球媒介性過敏症、遅延型過敏症、ヘルパーTリンパ球媒介性過敏症、細胞傷害性Tリンパ球媒介性過敏症、TH1リンパ球媒介性過敏症、またはTH2リンパ球媒介性過敏症である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炎症性心血管疾患または障害は、閉塞性疾患もしくは障害、粥状動脈硬化、心臓弁疾患、狭窄症、再狭窄、ステント内狭窄、心筋梗塞、冠動脈疾患、急性冠症候群、うっ血性心不全、狭心症、心筋虚血、血栓症、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群、抗第VIII因子自己免疫疾患もしくは障害、壊死性小型血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、微量免疫型巣状壊死性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗体誘導性心不全、血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、心臓自己免疫、シャーガス病もしくは障害、または抗ヘルパーTリンパ球自己免疫である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症性脳血管疾患または障害は、脳卒中、脳血管炎症、脳出血、または椎骨動脈不全である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記末梢血管疾患または障害は、壊疽、糖尿病性脈管障害、虚血性腸疾患、血栓症、糖尿病性網膜症、または糖尿病性腎症である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記自己免疫疾患または障害は、慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強皮症、混合性結合組織疾患、結節性多発動脈炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、橋本病、乾癬、原発性粘液水腫、悪性貧血、重症筋無力症、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、ブドウ膜炎、血管炎、またはヘパリン起因性血小板減少症である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症性腺性疾患または障害は、膵臓疾患もしくは障害、I型糖尿病、甲状腺疾患もしくは障害、グレーブス病もしくは障害、甲状腺炎、特発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎、またはI型多腺性自己免疫症候群である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記炎症性胃腸疾患または障害は、大腸炎、回腸炎、クローン病、慢性炎症性腸疾患、炎症性腸症候群、炎症性腸疾患、セリアック病、潰瘍性大腸炎、潰瘍、皮膚潰瘍、褥瘡、胃潰瘍、消化管潰瘍、口腔内潰瘍、鼻咽頭潰瘍、食道潰瘍、十二指腸潰瘍、または胃腸潰瘍である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記炎症性皮膚疾患または障害は、ざ瘡、自己免疫性水疱性皮膚症もしくは障害、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、接触性皮膚炎、または薬疹である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記炎症性肝疾患または障害は、自己免疫性肝炎、肝硬変、または胆汁性肝硬変である、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記炎症性神経疾患または障害は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、重症筋無力症、運動ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、自己免疫性ニューロパチー、ランバート・イートン筋無力症症候群、傍腫瘍性神経疾患もしくは障害、傍腫瘍性小脳萎縮症、非傍腫瘍性スティフ・マン症候群、進行性小脳萎縮症、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、自己免疫性多腺性内分泌不全症、異常免疫性(dysimmune)ニューロパチー、後天性神経性筋強直症、多発性関節拘縮症、ハンチントン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳卒中、炎症性網膜疾患もしくは障害、炎症性眼疾患もしくは障害、視神経炎、海綿状脳症、片頭痛、頭痛、群発性頭痛、またはスティフ・マン症候群である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記炎症性結合組織疾患または障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、自己免疫性筋炎、原発性シェーグレン症候群、平滑筋自己免疫疾患もしくは障害、筋炎、腱炎、靱帯炎、軟骨炎、関節炎、滑膜炎、手根管症候群、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、骨格炎、自己免疫性耳疾患もしくは障害、または自己免疫性内耳疾患もしくは障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記炎症性腎疾患または障害は、自己免疫性間質性腎炎である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記炎症性生殖疾患または障害は、反復流産、卵巣嚢胞、または月経関連疾患もしくは障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記炎症性全身性疾患または障害は、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、または悪液質である、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
前記感染性疾患または障害は、慢性感染性疾患もしくは障害、亜急性感染性疾患もしくは障害、急性感染性疾患もしくは障害、ウイルス性疾患もしくは障害、細菌性疾患もしくは障害、原虫性疾患もしくは障害、寄生虫性疾患もしくは障害、真菌性疾患もしくは障害、マイコプラズマ疾患もしくは障害、壊疽、敗血症、プリオン病もしくは障害、インフルエンザ、結核、マラリア、後天性免疫不全症候群、または重症急性呼吸器症候群である、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記炎症性移植関連疾患または障害は、移植片拒絶、慢性移植片拒絶、亜急性移植片拒絶、急性移植片拒絶、超急性移植片拒絶、または移植片対宿主病もしくは障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項28】
前記インプラントは、義装具インプラント、乳房インプラント、シリコーンインプラント、歯科インプラント、陰茎インプラント、心臓インプラント、人工関節、骨折修復装置、骨置換インプラント、薬物送達インプラント、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓、人工心臓弁、薬物放出インプラント、電極、または人工呼吸器の管である、請求項11に記載の方法。
【請求項29】
前記炎症性肺疾患または障害は、喘息、アレルギー性喘息、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患もしくは障害、サルコイドーシス、または気管支炎である、請求項11に記載の方法。
【請求項30】
前記炎症性疾患または障害は、線維症である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記炎症性疾患または障害は、慢性自己免疫性疾患または慢性炎症性疾患を罹患している対象における血管炎症である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記慢性自己免疫性疾患または慢性炎症性疾患は、乾癬である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記血管炎症は、心血管疾患、末梢血管疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患、腎動脈狭窄症、虚血性疾患、または大動脈瘤と関連している、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記血管炎症は、虚血性心疾患、粥状動脈硬化、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、または脳卒中と関連している、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記血管炎症は、頸動脈の炎症である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記血管炎症は、大動脈の炎症である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記炎症性疾患または障害は、インプラントと関連した炎症である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記インプラントと関連した炎症は、局所的炎症または全身性炎症反応である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記インプラントは、シリコーン、生理食塩水、金属、プラスチック、または重合体インプラントである、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記インプラントは、美容インプラント、義装具インプラント、皮下インプラント、経皮インプラント、骨置換インプラント、または骨折修復装置である、請求項37〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記インプラントは、薬物送達インプラントまたは薬物放出インプラントである、請求項37〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記インプラントは、人工関節、人工心臓、人工心臓弁、人工睾丸、乳房インプラント、歯科インプラント、眼インプラント、蝸牛インプラント、陰茎インプラント、心臓インプラント、カテーテル、埋込型排尿調節装置、ペースメーカー、電極、ヘルニア支持装置、または人工呼吸器の管である、請求項37〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記炎症性疾患または障害は、肝炎である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記炎症性疾患または障害は、脂肪性肝炎である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記炎症性疾患または障害は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症性疾患または障害は、糸球体腎炎である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記炎症性疾患または障害は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記炎症性疾患または障害は、骨粗鬆症である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象は、ヒトである、請求項1〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
細胞における1種または複数種の活性を阻害する方法であって、その必要がある対象に、MOSPD2の阻害剤の治療有効量を投与することを含み、前記1種または複数種の活性は、以下:白血球遊走、白血球化学走性、ケモカインシグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化、及びFAKリン酸化のうちの1種または複数種である、前記方法。
【請求項51】
前記阻害剤は、ポリペプチド、DNA、またはRNAである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記白血球遊走は、単球の遊走である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも白血球化学走性及びケモカインシグナル伝達経路が阻害される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記白血球化学走性は、単球の化学走性である、請求項50または53に記載の方法。
【請求項55】
ケモカインシグナル伝達経路の前記阻害は、ERKリン酸化及び/またはAKTリン酸化の阻害である、請求項50または53に記載の方法。
【請求項56】
前記白血球化学走性は、2種以上のケモカインまたはケモカイン受容体により誘導される、請求項50または53に記載の方法。
【請求項57】
前記阻害剤は、(i)MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する単離結合分子であるか、(ii)MOSPD2ポリペプチドのリガンドに特異的に結合する単離結合分子であるか、(iii)MOSPD2ポリペプチドに対して産生された抗血清であるか、(iv)可溶性MOSPD2ポリペプチドであるか、または(v)MOSPD2ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、本質的にそれからなる、もしくはそれからなる可溶性MOSPD2ポリペプチドである、請求項50〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体の抗原結合断片である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、sdFv断片、VHドメイン、またはVLドメインである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記阻害剤は、ストリンジェントな条件下でMOSPD2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、RNAi、miRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合DNA、被包DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、被包RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を起こすことができる分子、またはそれらの組み合わせであるか、あるいは遺伝子編集系である、請求項50〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を有する、請求項51〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列によりコードされる、請求項51〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記対象は、ヒトである、請求項50〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
MOSPD2を阻害する、単離ポリペプチド。
【請求項67】
(i)MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する、(ii)MOSPD2ポリペプチドのリガンドに特異的に結合する、(iii)MOSPD2ポリペプチドに対して産生された抗血清である、(iv)可溶性MOSPD2ポリペプチドである、または(v)MOSPD2ポリペプチドの細胞外ドメインを含むか、本質的にそれからなるか、もしくはそれからなる可溶性MOSPD2ポリペプチドである、請求項66に記載の単離ポリペプチド。
【請求項68】
前記MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を有する、請求項66または67に記載の単離ポリペプチド。
【請求項69】
前記MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列によりコードされる、請求項66または67に記載の単離ポリペプチド。
【請求項70】
請求項66〜69のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド、及び薬学上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項71】
MOSPD2を阻害する単離ポリペプチド、及び薬学上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項72】
全身投与または局所投与に適した、請求項70または71に記載の医薬組成物。
【請求項73】
経鼻投与、経口投与、または腹腔内投与に適した、請求項70または71に記載の医薬組成物。
【請求項74】
静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与に適した、請求項70または71に記載の医薬組成物。
【請求項75】
細胞のMOSPD2を阻害する方法であって、前記細胞を、有効量のMOSPD2阻害剤と接触させることを含み、前記MOSPD2阻害剤は、式I:
による構造を有する酸化リン脂質、またはその薬学上許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を含み、
式中、
nは、1〜6の整数であり、nが1である場合、Cn、Bn、Rn、及びYは存在せず、かつC
1は、R’nと結合しており、
B
1、B
2、…Bn−1、及びBnのそれぞれは、独立して、酸素、硫黄、窒素、リン、及びケイ素からなる群より選択され、前記窒素、リン、及びケイ素のそれぞれは、アルキル、ハロ、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオアルコキシ、及びオキソからなる群より選択される1つの置換基で置換されていてもよく、
A
1、A
2、…An−1、及びAnのそれぞれは、独立して、CR’’R’’’、C=O、及びC=Sからなる群より選択され、
Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホナート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、及び一般式:
を有する部分からなる群より選択され、
式中、
B’及びB’’のそれぞれは、独立して、硫黄及び酸素からなる群より選択され、かつ
D’及びD’’のそれぞれは、独立して、水素、アルキル、アミノ置換アルキル、シクロアルキル、ホスホナート、及びチオホスホナートからなる群より選択され、かつ
X
1、X
2、…Xn−1のそれぞれは、独立して、一般式II:
を有する飽和または不飽和の炭化水素であり、
式中、mは、1〜26の整数であり、かつ
Zは、
からなる群より選択され、
式中、Wは、酸素及び硫黄からなる群より選択され、
X
1、X
2、…Xn−1のうち少なくとも1つは、水素以外のZを含み、
かつ、
R
1、R’
1、R
2、…Rn−1、Rn、R’nのそれぞれ、R’’及びR’’’のそれぞれ、ならびにRa、R’a、Rb、R’b、…Rm−1、R’m−1、Rm、及びR’mのそれぞれは、独立して、結合、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択されるか、あるいは、R
1、R’
1、R2、…Rn−1、Rn、及びR’nのうち少なくとも2つ、及び/またはRa、R’a、Rb、R’b、…Rm−1、R’m−1、Rm、及びR’mのうち少なくとも2つは、少なくとも1つの四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成し、あるいはその薬学上許容される塩、水和物、または溶媒和物を形成する、前記方法。
【請求項76】
前記酸化リン脂質は、式III:
による構造を有するか、またはその薬学上許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を有し、
式中、nは、1〜4から選択される整数であり、
B
1、各B
2、及びB
3は、独立して、酸素、硫黄、及びNR
4からなる群より選択され、式中、R
4は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアシルから選択され、
A
1及び各A
2は、独立して、CR
eR
ee、CR
e=CR
ee、C=O、及びC=Sからなる群より選択され、式中、R
e及びR
eeは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、及び一般式:
を有する部分からなる群より選択され、式中、B及びB
aのそれぞれは、独立して、硫黄及び酸素からなる群より選択され、かつD及びD
aは、独立して、水素、アルキル、アミノアルキル、シクロアルキル、ホスホナート、及びチオホスホナートからなる群より選択され、
X
1及び各X
2は、独立して、飽和または不飽和の直鎖または分岐炭化水素であり、X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、
からなる群より選択される酸化部分Zで置換され、式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
R
1、R
1a、各R
2、R
3、及びR
3aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
1、R
1a、R
2、R
3、及びR
3aのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよい、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記酸化リン脂質は、式IIIによる構造を有し、かつ式III中のX1及び各X2は、独立して、一般式IV:
を有し、
式中、mは、1〜26から選択される整数であり、
Zは、
からなる群より選択され、
式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、かつX
1及びX
2のうち少なくとも1つは、水素以外のZを含み、かつ
R
a、R
aa、各R
b、各R
bb、R
c、及びR
ccは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
a、R
aa、R
b、R
bb、R
c、及びR
ccのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよい、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
式I中のnは3であるか、または式III中のnは1である、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、及びホスホグリセロールからなる群より選択される、請求項75〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
Yは、水素、ホスホリルコリン、及びホスホリルエタノールアミンからなる群より選択される、請求項75〜79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
B1、B2、及びB3のそれぞれは、酸素である、請求項75〜80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
Zは、
であり、式中、Wは、酸素である、請求項75〜81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記酸化リン脂質は、式IIIa:
による構造を有するか、またはその薬学上許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を有し、
式中、B
1、B
2、及びB
3は、独立して、酸素及び硫黄から選択され、
A
1及びA
2は、独立して、CH
2、CH=CH、C=O、及びC=Sからなる群より選択され、
Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、及びホスホグリセロールからなる群より選択され、
R
1、R
1a、R
2、R
3、及びR
3aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
1、R
1a、R
2、R
3、及びR
3aのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよく、
かつ、X
1及びX
2は、独立して、飽和または不飽和の直鎖または分岐炭化水素であり、X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、
から選択される式を有する酸化部分Zで置換され、
式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
R1、R1a、R2、R3、及びR3aは、それぞれ水素である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
X
1及びX
2は、独立して、式IVa:
による構造を有し、
式中、mは、1〜26から選択される整数であり、
R
a、R
aa、各R
b、各R
bb、R
c、及びR
ccは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
a、R
aa、R
b、R
bb、R
c、及びR
ccのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよく、
Zは、
からなる群より選択され、
式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、水素以外のZを含む、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
Zは
であり、かつWは酸素である、請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
Yは、水素、ホスホリルコリン、及びホスホリルエタノールアミンからなる群より選択される、請求項83〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
B1、B2、及びB3のそれぞれは、酸素である、請求項83〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記酸化リン脂質は、式VI:
による構造を有し、
式中、A
1は、CH
2、CH=CH、及びC=Oからなる群より選択され、A
2は、存在しないか、またはCH
2であり、X
1は、炭素原子を1〜30個有するアルキルであり、X
2は、
であり、
式中、
Eは、存在しないか、または炭素原子を1〜24個有するアルキル鎖であり、
Fは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハライド、アセトキシ、及びアリールからなる群より選択され、かつ
Zは、
からなる群より選択され、式中、R
dは、H、アルキル、及びアリールから選択され、かつ
Yは、水素、アルキル、アリール、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロールからなる群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項90】
X1は、炭素原子を10〜30個有するアルキルである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
Eは、炭素原子を1〜10個有するアルキルである、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
Yは、ホスホコリンである、請求項89〜91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記酸化リン脂質は、
またはその薬学上許容される塩である、請求項75〜92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記酸化リン脂質は、
またはその薬学上許容される塩である、請求項75〜93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記抗体またはその抗原結合断片は、MOSPD2に約10−6M〜約10−12Mの結合親和性(KD)で結合する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記MOSPD2は、ヒトMOSPD2である、請求項4〜7のいずれか1項または請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に従って付番された、ヒトMOSPD2の以下のアミノ酸領域:約508〜約517、約501〜約514、約233〜約241、約509〜約517、約212〜約221、約13〜約24、約505〜約517、約505〜約514、約89〜約100、約506〜約517、約233〜約245、約504〜約514、約128〜約136、約218〜約226、約15〜約24、約83〜約96、約42〜約50、約462〜474、約340〜約351、約504〜約517、約462〜約470、約327〜約337、約21〜約32、約217〜約226、約510〜約517、約178〜約190、約497〜約509、約504〜約516、約64〜約77、約504〜約515、約147〜約159、約503〜約515、約88〜約97、約208〜約218、約178〜約191、約502〜約515、約503〜約516、約497〜約505、約500〜約509、約189〜約202、約189〜約197、約505〜約516、約1〜約63、約82〜約239、約93〜約234、約327〜約445、約327〜約431、及び約497〜約517の1つまたは複数に特異的に結合する、請求項4〜7、95、及び96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に従って付番された、ヒトMOSPD2の以下のアミノ酸領域:約505〜約515、約500〜約515、約230〜約240、約510〜約520、約210〜約220、約15〜約25、約505〜約520、約505〜約515、約90〜約100、約505〜約525、約230〜約245、約505〜約510、約130〜約140、約220〜約230、約15〜約30、約80〜約95、約40〜約50、約460〜約475、約340〜約350、約500〜約515、約460〜約470、約325〜約335、約20〜約35、約215〜約225、約510〜約520、約175〜約190、約500〜約510、約505〜約530、約60〜約75、約500〜約520、約145〜約160、約502〜約515、約85〜約100、約205〜約220、約175〜約190、約500〜約505、約500〜約525、約495〜約505、約495〜約510、約190〜約200、約190〜約198、約502〜約515、約1〜約60、約80〜約240、約90〜約235、約330〜約445、約330〜約430、及び約495〜約515の1つまたは複数に特異的に結合する、請求項4〜7及び95〜97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記抗体は、IgG分子、IgM分子、IgE分子、IgA分子、もしくはIgD分子であるか、またはそれらに由来する、請求項4〜7及び95〜98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記抗体は、Fc領域を含む、請求項4〜7及び95〜99のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、運動精子ドメイン含有タンパク質2(Motile Sperm Domain containing Protein 2(MOSPD2))の阻害剤を用いた、抗炎症プロセス、例えば、細胞における1種もしくは複数種の活性、または1つもしくは複数の炎症性疾患もしくは障害を処置する、防止・予防する、またはその発生率を低下させる方法に関する。本発明は、1種または複数種のMOSPD2阻害剤を含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
白血球は、感染症及び異物に対する身体の防御に関与する免疫系の細胞である。単球は、白血球の一種であり、自然及び適応免疫、免疫監視、ならびに粒子除去で重要な役割を担う。組織には単球のサブセットが「常在して」おり、炎症刺激とは無関係に動員されて定常状態監視、創傷治癒、及び炎症の消散を補佐しているものの、ヒトの循環単球の大部分(80〜90%)は、「炎症性」と分類される。循環単球は、炎症刺激を感知して血管またはリンパ管内皮を通じて末梢へと迅速に遊走することができ、そこで、マクロファージ及び樹状細胞(DC)へと分化することができる。分化した細胞は、さらなる細胞サブセットと連携して炎症を促進する。宿主防御で必要な役割を果たすにも関わらず、単球は、粥状動脈硬化、関節リウマチ(RA)、及び多発性硬化症(MS)をはじめとする複数の炎症性疾患の決定的メディエーターとして同定されている。
【0003】
ケモカイン受容体及び接着分子は、白血球輸送の調節に重要な役割を果たす。白血球系列及びサブセットで差次的に発現するケモカイン受容体、すなわちGタンパク質共役型受容体(GPCR)の複雑なアレイは、様々な条件下でどの型の細胞をどの組織に遊走させるかを調節する。ケモカインすなわち走化性サイトカインは、白血球及び間質細胞の遊走及び活性化を調節する分泌タンパク質である。ケモカインがケモカイン受容体と結合すると、MAPK/ERK経路及びPI3K/AKT経路などのシグナル伝達経路が活性化され、その結果、それぞれERK及びAKTがリン酸化される。炎症性単球の場合、骨髄を出て内皮細胞の単層を横断し(血管外漏出)循環系に入ること(血管内異物侵入)及び炎症組織へと遊走することは、ケモカインC−Cモチーフリガンド(CCL)2(単球走化性タンパク質1、MCP−1としても知られる)及びCCL7(MCP−3)による活性化に反応した、C−Cモチーフ受容体2(CCR2)シグナル伝達に依存する。他方で、常在性単球の非炎症組織への恒常的遊走は、CCL3(マクロファージ炎症性タンパク質1α、MIP−1αとしても知られる)及びケモカイン(C−X3−Cモチーフ)リガンド1(CX3CL1)に主に依存する。
【0004】
炎症部位に向かう炎症細胞遊走(例えば、白血球走化作用)の阻害は、慢性疾患を処置するための抗炎症性アプローチとして魅力的である。慢性炎症組織における望ましくない単球及び/またはマクロファージの蓄積を抑制することは、治療上有効な可能性があり、それに応じて、遊走阻害剤は、動物モデル及び臨床試験で有益な治療結果を実証してきた。それにも関わらず、ケモカイン及びケモカイン受容体アンタゴニストを用いた複数の臨床試験が第II相で失敗しており、これは恐らく、標的受容体の重複性ならびに多発性硬化症及び関節リウマチなど異質な疾患の複雑さによる。
【0005】
その上さらに、炎症の阻害は、骨粗鬆症の処置にも関連する。なぜなら、炎症は、骨代謝に影響を及ぼし、骨粗鬆症を誘発するからである。
【0006】
運動精子ドメイン含有タンパク質2(MOSPD2)は、518アミノ酸長の、高度に保存されたタンパク質であり、ヒトとマウスの間で90%の相同性がある。バイオインフォマティック解析から、MOSPD2は、細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)及びTRIOタンパク質にちなんで名付けられたCRAL−TRIO領域を含有することが示されている。MOSPD2は、線虫主要精子タンパク質と構造的に関連した領域及び1つの膜貫通領域も含有する。MOSPD2の生体機能については、まだ述べられたことがない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、いくつかの実施形態において、運動精子ドメイン含有タンパク質2(MOSPD2)の阻害剤を用いた、炎症性疾患または障害を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法に関し、及びMOSPD2阻害剤を用いた、細胞における1種または複数種の活性を阻害または防止する方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、炎症性疾患または障害を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法を含む、様々な処置または予防方法に関し、そのような方法は、その必要がある対象に、MOSPD2阻害剤の治療有効量を投与することを含む。他の実施形態において、本発明は、細胞における1種または複数種の活性を阻害する、防止する、またはその発生率を低下させる方法に関し、本方法は、その必要がある対象に、MOSPD2阻害剤の治療有効量を投与することを含み、1種または複数種の活性は、以下のうちの1種または複数種である:MOSPD2発現、炎症細胞遊走(例えば、白血球または単球の遊走)、化学遊走(例えば、白血球または単球の化学遊走)、ケモカインシグナル伝達経路、ERKリン酸化、及びAKTリン酸化。いくつかの実施形態において、MOSPD2阻害剤は、抗体またはその抗原結合断片である。他の実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態において、本発明は、細胞におけるMOSPD2を阻害する様々な方法に関し、そのような方法は、細胞を、有効量のMOSPD2阻害剤と接触させることを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、MOSPD2阻害剤は、酸化リン脂質などの小分子である。1つの好適な実施形態において、MOSPD2阻害剤は、VB−201である。いくつかの実施形態において、MOSPD2阻害剤は、酸化リン脂質ではないMOSPD2阻害剤である。いくつかの実施形態において、MOSPD2阻害剤は、VB−201ではないMOSPD2阻害剤である。いくつかの実施形態において、MOSPD2阻害剤は、細胞表面(例えば、炎症細胞表面)上に発現したMOSPD2に結合する。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、MOSPD2を阻害するポリペプチド、及びMOSPD2を阻害するポリペプチドを含有する医薬組成物にも関する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片である。
【0010】
いくつかの実施形態において、単離抗体またはその抗原結合断片は、MOSPD2と特異的に結合する。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、約10
−6M〜約10
−12Mの平衡解離定数(K
D)でMOSPD2に結合する。他の実施形態において、MOSPD2は、ヒトMOSPD2である。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に従って付番された、ヒトMOSPD2の以下のアミノ酸領域の1つまたは複数に特異的に結合する:約508〜約517、約501〜約514、約233〜約241、約509〜約517、約212〜約221、約13〜約24、約505〜約517、約505〜約514、約89〜約100、約506〜約517、約233〜約245、約504〜約514、約128〜約136、約218〜約226、約15〜約24、約83〜約96、約42〜約50、約462〜474、約340〜約351、約504〜約517、約462〜約470、約327〜約337、約21〜約32、約217〜約226、約510〜約517、約178〜約190、約497〜約509、約504〜約516、約64〜約77、約504〜約515、約147〜約159、約503〜約515、約88〜約97、約208〜約218、約178〜約191、約502〜約515、約503〜約516、約497〜約505、約500〜約509、約189〜約202、約189〜約197、約505〜約516、約1〜約63、約82〜約239、約93〜約234、約327〜約445、約327〜約431、及び約497〜約517。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に従って付番された、ヒトMOSPD2の以下のアミノ酸領域の1つまたは複数に特異的に結合する:約505〜約515、約500〜約515、約230〜約240、約510〜約520、約210〜約220、約15〜約25、約505〜約520、約505〜約515、約90〜約100、約505〜約525、約230〜約245、約505〜約510、約130〜約140、約220〜約230、約15〜約30、約80〜約95、約40〜約50、約460〜約475、約340〜約350、約500〜約515、約460〜約470、約325〜約335、約20〜約35、約215〜約225、約510〜約520、約175〜約190、約500〜約510、約505〜約530、約60〜約75、約500〜約520、約145〜約160、約502〜約515、約85〜約100、約205〜約220、約175〜約190、約500〜約505、約500〜約525、約495〜約505、約495〜約510、約190〜約200、約190〜約198、約502〜約515、約1〜約60、約80〜約240、約90〜約235、約330〜約445、約330〜約430、及び約495〜約515。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態を、あくまでも例として、添付の図面を参照しながら本明細書中説明する。ここで詳細な図面に関して特に、強調しておきたいのは、示される事項が例示であって、本発明の実施形態を図で説明することを目的とすることである。
【0013】
【
図1】MOSPD2に対する低分子ヘアピン型RNA(sh−RNA)(sh−MOSPD2)で得られた運動精子ドメイン含有タンパク質2(MOSPD2)mRNA発現の阻害を示す。U937細胞を、対照レンチウイルス粒子(sh−対照)またはMOSPD2の3つの異なるmRNA領域に向けられたレンチウイルス粒子(Sh−MOSPD2#12、#25、#42、#62、及び#96と付記)で形質導入した。細胞でのMOSPD2 mRNA発現を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて評価し、β−アクチン発現を用いて正規化した。sh−対照と比較したsh−MOSPD2でのMOSPD2発現の減少パーセンテージを示す。
【
図2】RANTESにより誘導されるU937細胞遊走に対するMOSPD2阻害の効果を示す。対照レンチウイルス粒子(レンチsh−対照)またはsh−MOSPD2(レンチsh−MOSPD2)で形質導入されたU937細胞を、トランスウェルアッセイでRANTESに向かう遊走について試験した。示されている結果は、3つ組のウェルの遊走細胞の平均パーセンテージ±標準偏差である。
*p<0.05。
【
図3】RANTESにより誘導されるU937細胞遊走に対するMOSPD2阻害のさらなる効果を示す。対照レンチウイルス粒子(レンチsh−対照)または遺伝子転写物の異なる領域に向けられたsh−MOSPD2(レンチsh−MOSPD2)(レンチsh#25またはレンチsh#42またはレンチ#96)で形質導入されたU937細胞を、溶媒(Sol)で処理し、次いでトランスウェルアッセイでRANTESに向かう遊走について試験した。示されている結果は、3つ組のウェルの遊走細胞の平均パーセンテージ±標準偏差である。
【
図4】RANTESで活性化した後のリン酸化ERK(p−ERK)レベル及びリン酸化AKT(p−AKT)レベルに対するMOSPD2阻害の効果を示すウエスタンブロットの画像である。対照レンチウイルス粒子(レンチsh−対照)またはsh−MOSPD2(レンチsh−MOSPD2#25またはレンチsh−MOSPD2#42)で形質導入されたU937細胞を、RANTESで2分間または5分間処理した。熱ショックタンパク質90(HSP90)の発現も、ローディング対照として示してある。
【
図5】ケモカインにより誘導されるU937細胞遊走に対するMOSPD2阻害の効果を示す。対照レンチウイルス粒子(レンチsh−対照)またはレンチsh−MOSPD2レンチウイルス粒子(レンチsh−MOSPD2)で形質導入されたU937細胞を、トランスウェルアッセイでMCP−3、MCP−1、RANTES、及びSDF−1に向かう遊走について試験した。示されている結果は、3つ組のウェルの遊走細胞の平均パーセンテージ±標準偏差である。
*p<0.05。
【
図6】ケモカインで活性化した後のリン酸化ERK(p−ERK)レベル及びリン酸化AKT(p−AKT)レベルに対するMOSPD2阻害の効果を示すウエスタンブロットの画像である。対照レンチウイルス粒子(sh−対照)またはsh−MOSPD2で形質導入されたU937細胞を、RANTES、MCP−3、MCP−1、及びSDF−1で処理した。チューブリン(Tub)の発現も、ローディング対照として示してある。
【
図7】U937細胞増殖に対するMOSPD2阻害の効果を示す。対照レンチウイルス粒子(レンチsh−対照、−◆−)またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子(レンチsh−MOSPD2、−■−)で形質導入されたU937細胞を播種し、3日間連続して24時間ごとに計数した(1日目、2日目、及び3日目)。示されている結果は、3つ組の1日あたりの細胞数の平均±標準偏差である。
【
図8】
図8A〜8Bは、単離ウサギポリクローナルα−MOSPD2抗体が、内因性ヒトMOSPD2を検出し沈殿させることを示すウエスタンブロットの画像である。
図8Aでは、対照またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子(それぞれ、レンチsh−対照またはレンチsh−MOSPD2)で形質導入されたU937細胞から細胞溶解液を調製した。試料をゲルにロードし、単離α−MOSPD2抗体でブロッティングした。ローディング対照としてHSP90の発現も測定した。
図8Bでは、単離α−MOSPD2抗体または対照としてのウサギIgGを用いて、U937細胞溶解液で免疫沈降を行った。得られる沈殿物を、単離α−MOSPD2抗体で免疫ブロッティングし、続いてヤギ抗ウサギ抗体−HRPとともにインキュベートすることにより、分析した。
【
図9】形質移入されたHEK293細胞の表面上にMOSPD2が発現することを示すヒストグラムである。
図9では、HEK293細胞を、空ベクターまたはHA−rhMOSPD2プラスミド(MOSPD2−HA)を用いて形質移入した。形質移入された細胞を収集し、抗HA−PE抗体で染色した。MOSPD2の発現を、FACSCalibur(BD Bioscience)を用いて評価した。
【
図10】MOSPD2が、末梢血から単離されたヒトCD14単球の膜画分に局在していることを示す画像である。
図10は、抗MOSPD2抗体を用いた、ヒトCD14単球の細胞内タンパク質画分ならびに膜画分(M)及び細胞質画分(C)の分析に基づいている。抗ERKまたは抗MHCクラスI抗体を、それぞれ、細胞質タンパク質及び膜タンパク質の分画純度を評価するために使用した。
【
図11】VB−201が、ヒトCD14単球の細胞溶解液由来のMOSPD2に結合することを示すウエスタンブロットの画像である。標識化VB−201またはVB−221(OB201またはOB221)を細胞溶解液に加え、タンパク質を沈殿させた。試料をゲル上で泳動し、TLR2及びMOSPD2に対してブロッティングし、結果を
図11に示した。
【
図12】ヘマグルチニン(HA)について陽性染色されたHEK293細胞が、OB201には強く結合するが、OB221にはそうならないことを示すヒストグラムである。すなわち、
図12は、VB−201が、HAタグ付MOSPD2発現ベクターで形質移入されたHEK293細胞の表面上のMOSPD2に結合することを示す。
図12では、HEK293細胞を、標識化VB−201またはVB−221(OB201またはOB221)とともにインキュベートし、続いてストレプトアビジン−APC染色した。
【
図13】MOSPD2を過剰発現する細胞との結合について一次スクリーニングした結果同定された17種の抗MOSPD2 F(ab’)
2モノクローナル抗体(mAb)クローンの一覧である。MOSPD2結合について酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いてクローンをさらに分析した結果、バックグラウンドの5倍超高いO.D.値を有する12種のクローンが同定された(
図13中の
*)。
【
図14】
図14A〜
図14Bは、2つの代表的な抗MOSPD2 F(ab’)
2mAbクローンと、MOSPD2を過剰発現する細胞との結合を示す。
【
図17】
図17A〜
図17Bは、MOSPD2が、IFN−ガンマ誘導性STAT1リン酸化(p−Stat1)またはPMA媒介性ERK1/2リン酸化(p−ERK1/2)のそれぞれに影響を及ぼさないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、当然のことながら、本発明は、その応用において、以下の説明または実施例による例示に記載される詳細に限定されない。本発明は、他の実施形態のものであること、あるいは様々な方法で実施または実行することが可能である。同じく、当然のことながら、本明細書中使用される表現及び用語は、説明を目的とするものであって、制限するものとして見なされるべきではない。
【0015】
一般定義
「comprise(含む)」、「comprising(含む)」、「include(含む)」、「including(含む)」、「有する」という用語、及びそれらの同根語は、「〜を含むが、〜に限定されない」ことを意味する。
【0016】
「〜からなる」、は、「〜を含み、〜に限定される」ことを意味する。
【0017】
「本質的に〜からなる」という用語は、ある組成の指定された物質、またはある方法の指定された工程、及びその物質または方法の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の物質または工程を意味する。
【0018】
「例示」という単語は、本明細書中、「例、事例、または例図として機能すること」を意味するのに使用される。「例示」として記載される実施形態はどれでも、他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると見なされることは必ずしもなく、及び/または他の実施形態の特徴を取り入れることを必ずしも排除しない。
【0019】
「任意選択で」という単語は、本明細書中、「いくつかの実施形態では提供されるが、他の実施形態では提供されないこと」を意味するのに使用される。本発明の特定の実施形態のどれでも、複数の「任意選択の」特性を、そのような特性が矛盾しない限り、含むことができる。
【0020】
本明細書中使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈で特に明白に指示されない限り、複数への言及を含む。例えば、「1種類の化合物」または「少なくとも1種類の化合物」は、複数の化合物を、それらの混合物も含めて、含む場合がある。
【0021】
本明細書中使用される場合、本発明に関連して量を修飾する「約」という用語は、定法の試験及び取り扱いを通じて、そのような試験及び取り扱いでの故意ではない誤りを通じて、本発明で使用する成分の製造、原料、または純度の差異を通じて、などにより、生じる可能性がある数量の変動を示す。「約」という用語により修飾されているか否かにかかわらず、請求項は、列挙された量の等価物を含む。1つの実施形態において、「約」という用語は、記載される数値から10%以内にあることを意味する。別の実施形態において、「約」という用語は、記載される数値から5%以内にあることを意味する。
【0022】
本明細書全体を通じて、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示することができる。当然のことながら、範囲形式での記載は、利便性及び簡潔さのためにすぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として見なされるべきではない。したがって、ある範囲の記載は、具体的に開示される全ての可能なサブ範囲ならびにその範囲内の個々の数値を含むと見なされるべきである。例えば、ある範囲の記載は、例えば1〜6であれば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのようなサブ範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したと見なされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0023】
本明細書中使用される場合、「方法」という用語は、所定の任務を達成するための、様式、手段、技法、及び手順を示し、化学、薬理学、生物学、生化学、及び医薬分野の当業者に既知であるか、あるいは該当業者により既知の様式、手段、技法、及び手順から容易に開発することができるかのいずれかである、様式、手段、技法、及び手順が挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
本明細書中使用される場合、「処置する」という用語は、症状の進行を抑止する、実質的に阻害する、遅らせる、または逆転させる、症状の臨床徴候または美観的徴候を実質的に緩和する、あるいは症状の臨床徴候または美観的徴候の出現を実質的に予防することを含む。
【0025】
本明細書中使用される場合、「MOSPD2」は、運動精子ドメイン含有タンパク質2として分類される任意のポリペプチドを示す。MOSPD2の例として、配列番号1〜4のポリペプチド、またはそれらの任意の変異体(例えば、配列番号1〜4のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一の配列を有するもの)が挙げられるが、これらに限定されない。MOSPD2の他の例として、配列番号5〜8のいずれか1つのポリヌクレオチド、またはそれらの任意の変異体(例えば、配列番号5〜8のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のポリヌクレオチド)によりコードされるポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。MOSPD2をコードするポリヌクレオチド配列は、当該分野で既知の方法により、特定生命体での発現に関してコドン最適化を行うことができる。MOSPD2の他の例は、当業者に既知であるもののような公的データベースを検索することにより(例えば、BLAST)同定することが可能である。
【0026】
本明細書中使用される場合、「MOSPD2の活性」または「MOSPD2活性」は、運動精子ドメイン含有タンパク質2が持つ任意の既知の機能または本明細書中記載される機能を含む。そのような活性として、例えば、炎症細胞遊走(例えば、白血球または単球の遊走)の調節、化学走性、ケモカイン誘導性白血球遊走すなわち化学走性、ケモカイン受容体シグナル伝達経路、成長因子シグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化、FAKリン酸化、または炎症が挙げられる。
【0027】
本明細書中使用される場合、「炎症細胞」として、白血球、顆粒球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、または肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書中使用される場合、「化学走性」は、化学刺激に反応した細胞の運動を示す。化学走性として、単球などの炎症細胞がケモカインに向かって動くことが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本明細書中使用される場合、「MOSPD2の阻害剤」及び「MOSPD2阻害剤」は、MOSPD2の活性を下方制御する任意の化合物を示す。阻害剤は、例えば、ポリペプチド、DNA、またはRNAであることが可能である。MOSPD2の阻害は、例えば、感染によるMOSPD2の異所性過剰発現によっても生じる可能性があり、MOSPD2の阻害剤またはMOSPD2阻害剤は、この種の阻害も包含することが意図される。阻害剤は、例えば、MOSPD2ポリペプチドと特異的に結合する分子であるか、MOSPD2ポリペプチドのリガンドと特異的に結合する分子であるか、MOSPD2ポリペプチドに対して産生された抗血清であるか、可溶性MOSPD2ポリペプチドであるか、またはMOSPD2ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、本質的にそれからなる、もしくはそれからなる可溶性MOSPD2ポリペプチドであることも可能である。阻害剤は、例えば、MOSPD2ポリペプチドと特異的に結合する抗体またはMOSPD2ポリペプチドと特異的に結合する抗体の抗原結合断片であることも可能である。阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、例えば、RNAi、miRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合DNA、被包DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、被包RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を生じさせることができる分子、またはそれらの組み合わせであることも可能である。阻害剤は、MOSPD2の活性を下方制御する小分子化学物質であることも可能である。
【0030】
阻害剤は、例えば、クラスター化した規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)、すなわちCRISPR−CAS9系であることも可能である。CRISPR−CAS9系は、文献に記載されており、例えば、CAS9及びガイドRNAを含むことができる。他の遺伝子編集技法も文献に記載されており、同じく使用することができる。
【0031】
「抗体」または抗体の「抗原結合断片」として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’、及びF(ab’)
2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、軽鎖可変領域(VL)または重鎖可変領域(VH)ドメイン、VLまたはVHドメインいずれかを含む断片、及びFab発現ライブラリーにより産生された断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗体または抗体の抗原結合断片は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスのものであることが可能である。抗体の抗原結合断片を作製する方法は、既知であり、例えば、抗体の化学的消化またはプロテアーゼ消化が挙げられる。
【0032】
抗体の「定常領域」は、単独または組み合わせいずれかでの抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を示す。
【0033】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。「Fc領域」は、天然型配列Fc領域の場合も変異型Fc領域の場合もある。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変わる可能性があるものの、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226、またはPro230の位置のアミノ酸残基からカルボキシ末端までの一続きとして定義される。Fc領域の残基の付番は、KabatにあるとおりのEUインデックスによるものである。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2及びCH3を含む。
【0034】
「特異的に結合する」とは、一般に、抗体またはその断片、変異体、もしくは誘導体が、その抗原結合ドメインによりエピトープに結合すること、及びその結合が、抗原結合ドメインとエピトープとの間に何かしらの相補性を必要とすることを意味する。この定義によれば、抗体またはその断片、変異体、もしくは誘導体は、その抗原結合ドメインを介してあるエピトープと結合することが、無作為の無関係なエピトープに結合するよりも容易である場合に、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。
【0035】
本明細書中使用される場合、「エピトープ」は、抗体が特異的に結合することができる、抗原の局所領域を示す。エピトープは、例えば、ポリペプチドの近接アミノ酸であることも可能であるし(直鎖または近接エピトープ)、またはエピトープは、例えば、1つまたは複数のポリペプチドの2つ以上の非近接領域が一緒になることも可能である(立体構造エピトープ、非直鎖エピトープ、非連続エピトープ、または非近接エピトープ)。ある特定の実施形態において、抗体が結合するエピトープは、文献及び本明細書中記載される方法、例えば、NMR分光測定、X線回折結晶構造解析、ELISAアッセイ、質量分析(例えば、MALDI質量分析)と合わせた水素/重水素交換、アレイに基づくオリゴペプチドスキャニングアッセイ、及び/または変異誘発マッピング(例えば、部位指向性変異誘発マッピング)などにより決定することができる。
【0036】
「同一性パーセント」という用語は、当該分野で既知であるとおり、配列を比較することで決定されるとおりの2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関連性である。当該分野では、「同一性」及び「配列同一性」は、場合によっては、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間のペプチドまたはヌクレオチドの並び方の一致により決定されるとおりのそのような配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」及び「類似性」は、既知の方法及び公的に利用可能なリソースにより容易に計算可能であり、そのようなものとして以下が挙げられるが、それらに限定されない:(1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988)、(2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993)、(3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humania:NJ(1994)、(4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987)、及び(5)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)。
【0037】
ポリヌクレオチドは、一本鎖形の核酸断片が、適切な温度及び溶液イオン強度条件下で、他の核酸断片にアニールすることができる場合に、該他のポリヌクレオチドと「ハイブリダイズする」ことができる。ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、周知であり、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、その中の特に第11章及び表11.1に例示されている(本明細書中、その全体が参照により援用される)。温度及び溶液イオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件は、中程度に類似した断片(関連性の遠い生命体由来の相同な配列など)から高度に類似した断片(関連性の近い生命体由来の機能性酵素を複製する遺伝子など)までをスクリーニングするように調節することができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、ストリンジェンシー条件を決定する。ストリンジェントな条件のセットの一例は、最初に6×SSC、0.5%SDSを室温で15分間、次いで2×SSC、0.5%SDSを45℃で30分間で繰り返し、次いで0.2×SSC、0.5%SDSを50℃で30分間で2回繰り返す一連の洗浄を用いる。ストリンジェントな条件の別のセットの例は、より高温を使用するもので、洗浄は上記のものと同一であるが、ただし最後の2回の0.2×SSC、0.5%SDSで30分間洗浄時の温度が60℃に上げられた。ストリンジェントな条件のこのセットは、2回の0.1×SSC、0.1%SDS、65℃での最終洗浄を追加することにより「高度にストリンジェントな条件」へと変更することができる。ストリンジェントな条件のさらなるセットの例は、例えば、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃でハイブリダイゼーション、及び2×SSC、0.1%SDS、続いて0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄を含む。
【0038】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補配列を含有していることを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー次第で、塩基間のミスマッチが起こり得る。核酸をハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、核酸の長さ及び相補性の程度に依存し、これらは当該分野で周知の変数である。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の度合いが高くなるほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTm値も高くなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(Tmが高いことに相当する)は、以下の順序で低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドについては、Tmの計算式が導かれている(Sambrookら、9.50〜9.51を参照)。それより短い核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さが、その特異性を決定する(Sambrookら、上記、11.7〜11.8を参照)。1つの実施形態において、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。他の実施形態において、ハイブリダイズ可能な核酸の最短の長さは、少なくとも約15ヌクレオチド、または少なくとも約20ヌクレオチドである。
【0039】
本明細書全体を通じて使用される場合、「アルキル」という用語は、飽和脂肪族炭化水素を示し、これには直鎖基及び分岐鎖基が含まれる。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する。本明細書中、数値範囲、例えば、「1〜20」などが述べられる場合はいつでも、その基(この場合はアルキル基)が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから上限20個も含めて、その個数まで炭素原子を含有することができることを意味する。いくつかの実施形態において、アルキルは、1〜10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルである。いくつかの実施形態において、アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換されている場合も非置換の場合もある。置換されている場合、置換基として、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、及びアミノが可能であり、これらの用語は本明細書中定義されるとおりである。
【0040】
「シクロアルキル」基は、全てが炭素の単環式または縮合した環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を示し、縮合した複数の環のうち1つは完全共役π電子系を持たない。シクロアルキル基の限定ではなく例として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエン、及びアダマンタンがある。シクロアルキル基は、置換されている場合も非置換の場合もある。置換されている場合、置換基として、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、及びアミノが可能であり、これらの用語は本明細書中定義されるとおりである。
【0041】
「アルケニル」基は、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素炭素二重結合からなるアルキル基を示す。
【0042】
「アルキニル」基は、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素炭素三重結合からなるアルキル基を示す。
【0043】
「アリール」基は、完全共役π電子系を持つ、全てが炭素の単環式または縮合した環の多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の限定ではなく例として、フェニル、ナフタレニル、及びアントラセニルがある。アリール基は、置換されている場合も非置換の場合もある。置換されている場合、置換基として、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、及びアミノが可能であり、これらの用語は本明細書中定義されるとおりである。
【0044】
「ヘテロアリール」基は、環(複数可)中に1個または複数の、例えば、窒素、酸素、及び硫黄などの原子を有し、さらに完全共役π電子系を持つ、単環式または縮合した環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の限定ではなく例として、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、及びプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されている場合も非置換の場合もある。置換されている場合、置換基として、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、及びアミノが可能であり、これらの用語は本明細書中定義されるとおりである。
【0045】
「ヘテロ脂環式」基は、環(複数可)中に1個または複数の、例えば、窒素、酸素、及び硫黄などの原子を有する、単環式または縮合した環の基を示す。これらの環は、1つまたは複数の二重結合も有する場合がある。しかしながら、これらの環は、完全共役π電子系を持たない。ヘテロ脂環式は、置換されている場合も非置換の場合もある。置換されている場合、置換基として、例えば、孤立電子対、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、及びアミノが可能であり、これらの用語は本明細書中定義されるとおりである。代表例として、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノなどがある。
【0046】
「アルコキシ」基は、本明細書中定義されるとおり、−O−アルキル及び−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0047】
「アリールオキシ」基は、本明細書中定義されるとおり、−O−アリール及び−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0048】
「チオアルコキシ」基は、本明細書中定義されるとおり、−S−アルキル基及び−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0049】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書中定義されるとおり、−S−アリール及び−S−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0050】
「カルボニル」基は、−C(=O)−R基を示し、式中、Rは、本明細書中定義されるとおりの、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通じて結合)、またはヘテロ脂環式(環炭素を通じて結合)である。
【0051】
「アルデヒド」基は、カルボニル基を示し、式中、Rは、水素である。
【0052】
「チオカルボニル」基は、−C(=S)−R基を示し、式中、Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0053】
「C−カルボキシ」基は、−C(=O)−O−R基を示し、式中、Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0054】
「O−カルボキシ」基は、RC(=O)−O−基を示し、式中、Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0056】
「カルボン酸」基は、C−カルボキシル基を示し、式中、Rは、水素である。
【0057】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を示す。
【0058】
「トリハロメチル」基は、−CX
3基を示し、式中、Xは、本明細書中定義されるとおりのハロ基である。
【0059】
「スルフィニル」基は、−S(=O)−R基を示し、式中、Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0060】
「スルホニル」基は、−S(=O)
2−R基を示し、式中、Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0061】
「S−スルホンアミド」基は、−S(=O)
2−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0062】
「N−スルホンアミド」基は、RS(=O)
2−NR基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0063】
「O−カルバミル」基は、−OC(=O)−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0064】
「N−カルバミル」基は、ROC(=O)−NR−基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0065】
「O−チオカルバミル」基は、−OC(=S)−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0066】
「N−チオカルバミル」基は、ROC(=S)NR−基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0067】
「アミノ」基は、−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0068】
「C−アミド」基は、−C(=O)−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0069】
「N−アミド」基は、RC(=O)−NR−基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0070】
「尿素」基は、−NRC(=O)−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0071】
「グアニジノ」基は、−RNC(=N)−NR
2基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0072】
「グアニル」基は、R
2NC(=N)−基を示し、式中、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0073】
「ホスホニル」または「ホスホナート」という用語は、−P(=O)(OR)
2基を示し、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0074】
「ホスファート」という用語は、−O−P(=O)(OR)
2基を示し、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0075】
「リン酸」は、各Rが水素であるリン酸基である。
【0076】
「ホスフィニル」という用語は、−PR
2基を示し、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0077】
「チオ尿素」という用語は、−NR−C(=S)−NR−基を示し、各Rは、本明細書中定義されるとおりである。
【0078】
「糖」という用語は、鎖式糖単位または環状糖単位(例えば、ピラノースまたはフラノース系単位)いずれかの、1つまたは複数の糖単位を示し、特に記載がない限り、任意の単糖、二糖、及び少糖を包含する。
【0079】
「塩」という用語は、内部塩及び外部塩両方を含む。いくつかの実施形態において、塩は内部塩である、すなわち、双性イオン構造である。いくつかの実施形態において、塩は外部塩である。いくつかの実施形態において、外部塩は、適切な対イオンを有する薬学上許容される塩である。医薬用途に適した対イオンは、当該分野で既知である。
【0080】
「VB−201」という用語は、1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−グリセロ−3−ホスホコリンを示す。本発明の実施形態に従って、VB−201は、1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−グリセロ−3−ホスホコリンのキラル鏡像異性体、すなわち、(R)鏡像異性体((R)−1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)または(S)鏡像異性体((S)−1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)のいずれか、あるいはそれらの混合物(例えば、ラセミ体)の場合がある。例示の実施形態に従って、VB−201は、(R)−1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。当業者には当然のことながら、VB−201を(R)鏡像異性体または(S)鏡像異性体と指定することは、鏡像異性体純度が100%であることを必要とせず、そうではなくて、RまたはS異性体としていずれかの1種の鏡像異性体が実質的に濃縮されていることを示す(例えば、鏡像異性体過剰率が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い)。いくつかの実施形態において、VB−201は、鏡像異性体過剰率が少なくとも90%である(R)−1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。OB201という用語は、実施例のセクションで記載されるとおりの卵白アルブミン結合VB−201を示す。
【0081】
「VB−221」という用語は、1−(2’−オクチル)ドデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−グリセロ−3−ホスホコリンを示す。本発明の実施形態に従って、VB−221は、1−(2’−オクチル)ドデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−グリセロ−3−ホスホコリンのキラル鏡像異性体、すなわち、(R)鏡像異性体または(S)鏡像異性体のいずれか、あるいはそれらの任意の混合物(例えば、ラセミ体)の場合がある。例示の実施形態に従って、VB−221は、(R)−1−(2’−オクチル)ドデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。同様に、当業者には当然のことながら、VB−221を(R)鏡像異性体または(S)鏡像異性体と指定することは、鏡像異性体純度が100%であることを必要とせず、そうではなくて、RまたはS異性体としていずれかの1種の鏡像異性体が実質的に濃縮されていることを示す(例えば、鏡像異性体過剰率が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い)。いくつかの実施形態において、VB−221は、鏡像異性体過剰率が少なくとも90%である(R)−1−1−(2’−オクチル)ドデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。OB221という用語は、実施例のセクションで記載されるとおりの卵白アルブミン結合VB−221を示す。
【0082】
当然ながら、本発明のある特長は、明確にするために別々の実施形態の文脈で記載されるとしても、それらは、1つの実施形態中に組み合わせて提供される場合もある。反対に、本発明の様々な特長は、簡潔さのため1つの実施形態の文脈で記載されるとしても、それらは、別々にまたは任意の適切な部分的組み合わせで、または本発明の任意の他の記載される実施形態で適切なように提供される場合がある。様々な実施形態の文脈で記載されるある特定の特長は、その実施形態がそれらの要素なしでは作動不能でない限り、それらの実施形態の必須の特長と見なされることはない。
【0083】
MOSPD2及びMOSPD2阻害剤
本出願は、部分的には、運動精子ドメイン含有タンパク質2(MOSPD2)の生物学的機能の同定に基づく。MOSPD2の阻害は、単球が、種々のケモカインに向かって遊走するのを阻害し、ケモカイン受容体シグナル伝達経路の活性化を遮断することがわかっている。これらの結果は、MOSPD2が、白血球及び単球の遊走に極めて重要であること、ならびにその活性の遮断が炎症を阻害し、炎症性疾患及び障害に治療効果を有することを示す。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態は、MOSPD2の阻害剤に、またはMOSPD2の阻害剤を含む方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態において、阻害剤は、MOSPD2を阻害する単離結合分子である。他の実施形態において、阻害剤は、ポリペプチド、DNA、またはRNAである。他の実施形態において、阻害剤は、MOSPD2に特異的に結合するポリペプチドである。他の実施形態において、阻害剤は、MOSPD2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。他の実施形態において、阻害剤は、RNAサイレンシング作用剤である。
【0085】
他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。他の実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または一本鎖抗体である。他の実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、sdFv断片、VHドメイン、またはVLドメインである。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片に関する。いくつかの実施形態において、本明細書中記載される、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、VH、VL、またはVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、定常領域を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、VH、VL、またはVH及びVLは、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの実施形態において、VHは、CDR1、CDR2、CDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、VLは、CDR1、CDR2、CDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、VH、VL、またはVH及びVLは、1つまたは複数のフレームワーク領域(FR)を含む。いくつかの実施形態において、VHは、FR1、FR2、FR3、FR4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、VLは、FR1、FR2、FR3、FR4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0089】
特定の実施形態において、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)に特異的に結合する本明細書中記載される抗体またはその抗原結合断片は、CDR1、CDR2、及びCDR3を含むVH、ならびにCDR1、CDR2、及びCDR3を含むVLを含む。
【0090】
他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、定常領域を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域またはヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖の定常領域は、ヒトガンマ重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非限定的な例が報告されてきており、例えば、米国特許第5,693,780号、及びKabat,EA et al.,(1991)を参照。いくつかの実施形態において、定常領域アミノ酸配列は、天然ヒト配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性があるように修飾されている(例えば、1つ、2つ、またはそれより多いアミノ酸置換)。
【0091】
別の態様において、本明細書中提供されるのは、MOSPD2のエピトープ(例えば、ヒトMOSPD2のエピトープ)を認識するまたはこれに結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の態様において、本明細書中提供されるのは、本明細書中記載される抗体(例えば、実施例5または8に記載される抗体)と同一のMOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)のエピトープまたは重複するエピトープを認識するまたはこれに結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、MOSPD2のエピトープを複数種(例えば、2種、3種、4種、5種、または6種のエピトープ)認識する。
【0092】
ある特定の実施形態において、MOSPD2のエピトープは、文献に記載される1つまたは複数の方法、例えば、NMR分光測定、X線回折結晶構造解析、ELISAアッセイ、質量分析(例えば、MALDI質量分析)と合わせた水素/重水素交換、アレイに基づくオリゴペプチドスキャニングアッセイ、及び/または変異誘発マッピング(例えば、部位指向性変異誘発マッピング)などにより決定することができる。X線結晶構造解析の場合、結晶化は、文献に記載される方法を用いて達成することができる(例えば、Giege R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt4):339−350、McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1−23、Chayen NE(1997)Structure 5:1269−1274、McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300−6303)。抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技法を用いて調べることができ、X−PLOR(Yale University、1992、頒布はMolecular Simulations、Inc.による、例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114 & 115,eds Wyckoff HW et al.、米国特許出願第2004/0014194号)、及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt 1):37−60、Bricogne G(1997)Meth Enzymol 276A:361−423,ed Carter CW、Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt10):1316−1323を参照)などのコンピューターソフトウェアを用いて精緻化することができる。変異誘発マッピング試験は、文献に記載される方法を用いて達成することができる。例えば、Champe M et al.,(1995)上記、及びアラニンスキャニング変異誘発技法を含む変異誘発技法の説明についてCunningham BC & Wells JA(1989)上記、を参照。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片のエピトープは、アラニンスキャニング変異誘発試験を用いて決定される。抗体のエピトープ特性決定は、Ravn et al.,Journal of Biological Chemistry 288:19760−19772(2013)に提示される方法によっても決定することができる。
【0093】
また、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)の同一のまたは重複するエピトープを認識するまたはそれに結合する抗体またはそれらの抗原結合断片は、免疫アッセイなどの定法技法を用いて、例えば、1つの抗体が持つ、別の抗体と標的抗原との結合を遮断する能力の表示、すなわち、競合結合アッセイにより、同定することができる。競合結合は、試験対象の免疫グロブリンが参照抗体と共通抗原との、例えばMOSPD2などとの特異的結合を阻害するアッセイにおいて、決定することができる。複数種類の競合結合アッセイが、記載されてきており、例えば、固相直接または間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli C et al.,(1983)Methods Enzymol 9:242−253を参照)、固相直接ビオチンアビジンEIA(Kirkland TN et al.,(1986)J Immunol 137:3614−9を参照)、固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow E & Lane D,(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照)、I−125標識を用いる固相直接標識RIA(Morel GA et al.,(1988)Mol Immunol 25(1):7−15を参照)、固相直接ビオチンアビジンEIA(Cheung RC et al.,(1990)Virology 176:546−52)、及び直接標識化RIA(Moldenhauer G et al.,(1990)Scand J Immunol 32:77−82)がある。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面または細胞に結合して保持されている精製抗原(例えば、ヒトMOSPD2などのMOSPD2)、未標識の試験免疫グロブリン、及び標識化参照免疫グロブリンの使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で、固体表面または細胞と結合した標識の量を決定することにより、測定することができる。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、競合抗体は、参照抗体と共通抗原との特異的結合を、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、またはそれ以上阻害する。競合結合アッセイは、標識化抗原または標識化抗体いずれかを用いる多数の異なる様式で構成することができる。このアッセイの一般的形式では、抗原は96ウェルプレートに固定される。次いで、未標識抗体が持つ標識化抗体と抗原の結合を遮断する能力を、放射性標識または酵素標識を用いて測定する。さらなる詳細について、例えば、Wagener C et al.,(1983)J Immunol 130:2308−2315、Wagener C et al.,(1984)J Immunol Methods 68:269−274、Kuroki M et al.,(1990)Cancer Res 50:4872−4879、Kuroki M et al.,(1992)Immunol Invest 21:523−538、Kuroki M et al.,(1992)Hybridoma 11:391−407及びAntibodies:A Laboratory Manual,Ed Harlow E & Lane D editors上記、pp.386−389を参照。
【0094】
1つの実施形態において、表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))を用いて、例えば、Abdiche YN et al.,(2009)Analytical Biochem 386:172−180に記載されるものなどの「タンデムアプローチ」により競合アッセイを行うが、これによれば、MOSPD2抗原をチップ、例えば、CM5センサーチップなどの表面に固定し、次いで抗MOSPD2抗体を、チップ全体に行き渡らせる。抗体またはその抗原結合断片が、本明細書中記載される抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片と競合するかどうかを決定するため、抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片を最初にチップ表面全体に行き渡らせて飽和させ、次いで、競合する可能性がある抗体を加える。次いで、競合抗体の結合を、非競合対照との比較で決定し定量することができる。
【0095】
ある特定の態様において、競合ELISAアッセイなどの競合結合アッセイにおいて2種の抗体が、同一のまたは立体的に重複するエピトープを認識する場合、競合結合アッセイを用いて、抗体またはその抗原結合断片が、参照抗体としての別の抗体、例えば、本質的に同一のエピトープまたは重複するエピトープと結合する抗体により、例えば用量依存式に、競合的に遮断されるかどうか決定することができ、アッセイは、標識化抗原または標識化抗体いずれかを用いて、あらゆる異なる様式で構成することができる。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書中記載される抗体(例えば、実施例5または8のもの)、またはそのキメラもしくはFab抗体、または本明細書中記載される抗体(例えば、実施例5または8のもの)のVH CDR及びVL CDRを含む抗体を用いる競合結合アッセイで試験することができる。
【0096】
したがって、ある特定の態様において、本明細書中提供されるのは、当業者に既知のまたは本明細書中記載されるアッセイ(例えば、ELISA競合アッセイ、表面プラズモン共鳴、またはScatchard分析)を用いて決定されるとおりの、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)との結合に関して本明細書中記載される抗体(例えば、実施例5または8のもの)と競合する(例えば、用量依存式で)抗体またはその抗原結合断片である。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1(アミノ酸残基1〜518)に従って付番された、MOSPD2の以下のアミノ酸領域(エピトープ)の1つまたは複数と特異的に結合する:508〜517、501〜514、233〜241、509〜517、212〜221、13〜24、505〜517、505〜514、89〜100、506〜517、233〜245、504〜514、128〜136、218〜226、15〜24、83〜96、42〜50、462〜474、340〜351、504〜517、462〜470、327〜337、21〜32、217〜226、510〜517、178〜190、497〜509、504〜516、64〜77、504〜515、147〜159、503〜315、88〜97、208〜218、178〜191、502〜515、503〜516、497〜505、500〜509、189〜202、189〜197、505〜516、1〜63、82〜239、93〜234、327〜445、327〜431、及び497〜517。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1(アミノ酸残基1〜518)に従って付番された、MOSPD2の以下のアミノ酸領域(エピトープ)の1つまたは複数に特異的に結合する:約508〜約517、約501〜約514、約233〜約241、約509〜約517、約212〜約221、約13〜約24、約505〜約517、約505〜約514、約89〜約100、約506〜約517、約233〜約245、約504〜約514、約128〜約136、約218〜約226、約15〜約24、約83〜約96、約42〜約50、約462〜約474、約340〜約351、約504〜約517、約462〜約470、約327〜約337、約21〜約32、約217〜約226、約510〜約517、約178〜約190、約497〜約509、約504〜約516、約64〜約77、約504〜約515、約147〜約159、約503〜約515、約88〜約97、約208〜約218、約178〜約191、約502〜約515、約503〜約516、約497〜約505、約500〜約509、約189〜約202、約189〜約197、約505〜約516、約1〜約63、約82〜約239、約93〜約234、約327〜約445、約327〜約431、及び約497〜約517。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1(アミノ酸残基1〜518)に従って付番された、MOSPD2の以下のアミノ酸領域(エピトープ)の1つまたは複数に特異的に結合する:約505〜約515、約500〜約515、約230〜約240、約510〜約520、約210〜約220、約15〜約25、約505〜約520、約505〜約515、約90〜約100、約505〜約525、約230〜約245、約505〜約510、約130〜約140、約220〜約230、約15〜約30、約80〜約95、約40〜約50、約460〜約475、約340〜約350、約500〜約515、約460〜約470、約325〜約335、約20〜約35、約215〜約225、約510〜約520、約175〜約190、約500〜約510、約505〜約530、約60〜約75、約500〜約520、約145〜約160、約502〜約515、約85〜約100、約205〜約220、約175〜約190、約500〜約505、約500〜約525、約495〜約505、約495〜約510、約190〜約200、約190〜約198、約502〜約515、約1〜約60、約80〜約240、約90〜約235、約330〜約445、約330〜約430、及び約495〜約515。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、約10
−6M〜約10
−12M、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−7M〜約10
−12、10
−8M〜約10
−12M、約10
−9M〜約10
−12M、約10
−10M〜約10
−12M、約10
−11M〜約10
−12M、約10
−6M〜約10
−11M、約10
−7M〜約10
−11M、約10
−8M〜約10
−11M、約10
−9M〜約10
−11M、約10
−10M〜約10
−11M、約10
−6M〜約10
−10M、約10
−7M〜約10
−10M、約10
−8M〜約10
−10M、約10
−9M〜約10
−10M、約10
−6M〜約10
−9M、約10
−7M〜約10
−9M、約10
−8M〜約10
−9M、約10
−6M〜約10
−8M、または約10
−7M〜約10
−8)の抗体抗原平衡解離定数(K
D)でMOSPD2と結合する。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、K
Dが約10
−6M、約10
−7M、約10
−8M、約10
−9M、約10
−10M、約10
−11M、または約10
−12Mである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は、MOSPD2上の1つまたは複数のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、K
Dは、Scatchard分析、表面プラズモン共鳴、または本明細書中記載される他の方法により、いくつかの実施形態において、37℃で決定される。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、約10
31/Ms〜約10
61/Ms、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
41/Ms〜約10
61/Ms、または10
51/Ms〜約10
61/Ms)のK
onでMOSPD2と結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
onが約10
31/Ms、約10
41/Ms、約10
51/Ms、または約10
61/Msである。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、約10
−31/s〜約10
−61/s、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−41/s〜約10
−61/s、または10
−51/s〜約10
−61/s)のK
offでMOSPD2と結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
offが約10
−31/s、約10
−41/s、約10
−51/s、または約10
−61/sである。
【0103】
いくつかの実施形態において、抗体は、IgG分子、IgM分子、IgE分子、IgA分子、もしくはIgD分子、またはそれらに由来する。他の実施形態において、抗体は、Fc領域を含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書中記載される抗体または抗原結合断片、及び薬学上許容される担体を含む医薬組成物に関する。他の実施形態において、本発明は、本明細書中記載される疾患または障害を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法に関し、本方法は、その必要がある対象に、本明細書中記載される抗体またはその抗原結合断片または本明細書中記載される医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0105】
本発明のさらなる実施形態において、MOSPD2の阻害及びMOSPD2活性の下方制御は、転写及び/または翻訳に干渉する様々な分子[例えば、RNAサイレンシング作用剤(例えば、アンチセンス、siRNA、shRNA、マイクロRNA)、リボザイム、及びDNAザイム]を用いてゲノム及び/または転写レベルで、あるいは、例えば、アンタゴニスト、ポリペプチド切断酵素、タンパク質活性に干渉する小分子(例えば、競合リガンド)などを用いてタンパク質レベルで、もたらされる可能性がある。
【0106】
以下に、MOSPD2などの標的の発現レベル及び/または活性を下方制御することができる作用剤の例を列挙する。
【0107】
MOSPD2の阻害は、例えば、感染によるMOSPD2の異所性過剰発現により生じる場合もあり、MOSPD2の阻害剤またはMOSPD2阻害剤は、この種の阻害も包含することが意図される。
【0108】
MOSPD2の下方制御は、遺伝子編集によっても達成することができる。遺伝子編集は、例えば、クラスター化した規則的な配置の短い回文配列リピート、すなわちCRISPR−CAS9系を用いて行うことができる。CRISPR−CAS9系は、文献に記載されており、例えば、CAS9及びガイドRNAを含むことができる。他の遺伝子編集技法も文献に記載されており、同じく使用することができる。
【0109】
MOSPD2の下方制御は、RNAサイレンシングによっても達成することができる。本明細書中使用される場合、「RNAサイレンシング」という語句は、該当するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害すなわち「サイレンシング」をもたらすRNA分子により媒介される一群の調節機構[例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング(quelling)、共抑制、及び翻訳抑制]を示す。RNAサイレンシングは、植物、動物、真菌を含む多くの種類の生命体で観察されてきている。
【0110】
本明細書中使用される場合、「RNAサイレンシング作用剤」という用語は、標的遺伝子の発現を特異的に阻害する、すなわち「サイレンシング」することができるRNAを示す。いくつかの実施形態において、RNAサイレンシング作用剤は、転写後サイレンシング機構を通じてmRNA分子の完全プロセシング(例えば、全翻訳及び/または発現)を防止することができる。RNAサイレンシング作用剤として、非コードRNA分子、例えば、対になった鎖を含むRNA二重鎖、ならびにそのような小さな非コードRNAを生じさせることが可能な前駆RNAが挙げられる。RNAサイレンシング作用剤の例として、dsRNA、例えば、siRNA、miRNA、及びshRNAが挙げられる。1つの実施形態において、RNAサイレンシング作用剤は、RNA干渉を誘導することができる。別の実施形態において、RNAサイレンシング作用剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0111】
RNA干渉は、動物における、低分子干渉RNA(siRNA)が媒介する配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを示す。植物における、これに該当するプロセスは、一般に、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと称され、真菌ではクエリングとも称される。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を防止するのに使用される進化的に保存された細胞防御機構であると考えられ、多種多様な植物相及び動物門に一般的に共有される。そのような外来遺伝子発現からの防御は、ウイルス感染に由来する、またはトランスポゾンエレメントの宿主ゲノムへの無作為組み込みに由来する二本鎖RNA(dsRNA)の産生に反応して、相同な一本鎖RNAまたはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞反応を介して、進化してきた可能性がある。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態は、mRNAからのタンパク質発現を下方制御するためのdsRNAの使用を企図する。
【0113】
「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する低分子量抑制性RNA二重鎖(一般に18〜30塩基対)を示す。典型的には、siRNAは、中心の19bp二重鎖領域及び末端の対称な2塩基3’−オーバーハングを持つ21量体として化学合成されるが、25〜30塩基長の化学合成RNA二重鎖が、同一位置で、21量体に比べて100倍にも上る高い作用強度を有する可能性があることが最近報告された。RNAiを引き起こす上でRNAが長い方が作用強度が上昇したという観察結果は、生成物(21量体)ではなくて基質(27量体)とともにダイサーを提供することに由来すると理論付けられ、これによりsiRNA二重鎖をRISCに入れる速度または効率が改善されると理論付けられる。
【0114】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、接続してヘアピンまたはステムループ構造を形成する場合がある(例えば、shRNAまたはsh−RNA)。すなわち、上記のとおり、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング作用剤は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)の場合もある。
【0115】
「shRNA」または「sh−RNA」という用語は、本明細書中使用される場合、第一及び第二領域の相補配列を含むステムループ構造を有するRNA作用剤を示し、これらの領域の相補性の度合い及び方向は、これらの領域間の塩基対形成が生じるのに十分であり、第一及び第二領域はループ領域により接続されていて、ループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間に塩基対形成がないことに由来する。ループ中のヌクレオチド数は、3〜23、または5〜15、または7〜13、または4〜9、または9〜11の間の個数であり、上限及び下限の個数を含む。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与する可能性がある。
【0116】
当然ながら、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング作用剤は、RNAのみを含有する分子に限定される必要はなく、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドをさらに包含する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書中提供されるRNAサイレンシング作用剤は、細胞透過性ペプチドと機能的に会合することができる。本明細書中使用される場合、「細胞透過性ペプチド」とは、血漿及び/または細胞の核膜を横断する膜透過性複合体の輸送と関連したエネルギー非依存性(すなわち、非エンドサイトーシス)移行性質を与える短い(約12〜30残基)アミノ酸配列または機能的モチーフを含むペプチドである。
【0118】
別の実施形態に従って、RNAサイレンシング作用剤は、miRNAまたはその模倣物の場合がある。
【0119】
「マイクロRNA」、「miRNA」、「miR」という用語は、同義語であり、約19〜28ヌクレオチド長の非コード一本鎖RNA分子の集団を示し、これらは遺伝子発現を調節する。miRNAは、広範囲の生命体で見つかり、発生、恒常性、及び疾患の原因で役割を果たすことが示されている。
【0120】
「マイクロRNA模倣物」という用語は、RNAi経路に入って遺伝子発現を調節することができる合成非コードRNAを示す。miRNA模倣物は、内因性マイクロRNA(miRNA)の機能を模倣するものであり、成熟二本鎖分子または模倣前駆体(例えば、またはプレmiRNA)として設計することができる。miRNA模倣物は、修飾または非修飾RNA、DNA、RNA−DNAハイブリッド、または代替核酸化学物質(例えば、LNAまたは2’−O、4’−C−エチレン−架橋核酸(ENA))で構成することができる。成熟二本鎖miRNA模倣物の場合、二重領域の長さは、13〜33、18〜24、または21〜23ヌクレオチドで変わる可能性がある。miRNAは、合計で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドを含むことも可能である。miRNAの配列は、プレmiRNAの最初の13〜33ヌクレオチドであることが可能である。miRNAの配列は、プレmiRNAの最後の13〜33ヌクレオチドであることも可能である。
【0121】
標的を下方制御することができる別の作用剤は、標的のmRNA転写物またはDNA配列を特異的に切断することができるDNAザイム分子である。DNAザイムは、一本鎖及び二本鎖標的配列の両方を切断することができる一本鎖ポリヌクレオチドである。(Breaker et al.,Chemistry and Biology 1995;2:655、Santoro et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997;943:4262。)DNAザイムの一般モデル(「10〜23」モデル)が提案されてきている。「10〜23」DNAザイムは、15のデオキシリボヌクレオチドからなる触媒ドメインを有し、このドメインに隣接して、2つのそれぞれ7〜9つのデオキシリボヌクレオチドからなる基質認識ドメインを有する。この種のDNAザイムは、プリン:ピリミジン接続部でその基質RNAを効果的に切断することができる。(Santoro et al.,;Khachigian,Curr.Opin.Mol.Ther.2002;4:119−121。)
【0122】
標的の下方制御は、標的をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイズすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを用いることによっても、もたらすことができる。
【0123】
標的を下方制御することができる別の作用剤は、標的をコードするmRNA転写物を特異的に切断することができるリボザイム分子である。リボザイムは、関心対象のタンパク質をコードするmRNAを切断することにより遺伝子発現を配列特異的に阻害する目的で使用が増えつつある。(Welch et al.,Curr.Opin.Biotechnol.1998;9:486−96。)
【0124】
標的を下方制御することができる別の作用剤は、標的に結合及び/または標的を切断する任意の分子である。そのような分子として、標的のアンタゴニストまたは標的の抑制性ペプチドが可能である。
【0125】
当然ながら、標的の少なくとも触媒部分または結合部分の非機能的類似体も、標的を下方制御する作用剤として使用することができる。
【0126】
標的を下方制御するために本発明のいくつかの実施形態に併せて使用することができる別の作用剤は、標的活性化または基質結合を防止する分子である。
【0127】
いくつかの実施形態において、所定のタンパク質標的の阻害剤は、タンパク質に結合することにより、タンパク質に結合する化合物(例えば、基質、調節タンパク質)に結合することにより、及び/またはタンパク質をコードするオリゴヌクレオチド(例えば、mRNA)に結合することにより、タンパク質を阻害する。
【0128】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、小分子(例えば、800Da未満の分子量を特徴とする)である。いくつかの実施形態において、小分子MOSPD2阻害剤は、トコフェロールまたはその誘導体(例えば、アルファ−トコフェロール、ベータ−トコフェロール、ガンマ−トコフェロール、デルタ−トコフェロール)、トリテルペン(例えば、スクアレン)、ビタミンAまたはその誘導体(例えば、レチンアルデヒド)、ホスファチジルグリセリド(例えば、ホスファチジルイノシトール)、あるいはリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、酸化リン脂質)である。
【0129】
いくつかの実施形態において、小分子MOSPD2阻害剤は、式I:
による構造を有する酸化リン脂質、またはその薬学上許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物であり、
式中、
nは、1〜6の整数であり、nが1である場合、Cn、Bn、Rn、及びYは存在せず、かつC
1は、R’nと結合しており、
B
1、B
2、…Bn−1、及びBnのそれぞれは、独立して、酸素、硫黄、窒素、リン、及びケイ素からなる群より選択され、この窒素、リン、及びケイ素のそれぞれは、アルキル、ハロ、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオアルコキシ、及びオキソからなる群より選択される1つの置換基で置換されていてもよく、
A
1、A
2、…An−1、及びAnのそれぞれは、独立して、CR’’R’’’、C=O、及びC=Sからなる群より選択され、
Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホナート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、及び一般式:
を有する部分からなる群より選択され、
式中、
B’及びB’’のそれぞれは、独立して、硫黄及び酸素からなる群より選択され、かつ
D’及びD’’のそれぞれは、独立して、水素、アルキル、アミノ置換アルキル、シクロアルキル、ホスホナート、及びチオホスホナートからなる群より選択され、かつ
X
1、X
2、…Xn−1のそれぞれは、独立して、一般式II:
を有する飽和または不飽和の炭化水素であり、
式中、mは、1〜26の整数であり、かつ
Zは、
からなる群より選択され、
式中、Wは、酸素及び硫黄からなる群より選択され、
X
1、X
2、…Xn−1のうち少なくとも1つは、水素以外のZを含み、
かつ、
R
1、R’
1、R
2、…Rn−1、Rn、R’nのそれぞれ、R’’及びR’’’のそれぞれ、ならびにRa、R’a、Rb、R’b、…Rm−1、R’m−1、Rm、及びR’mのそれぞれは、独立して、結合、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択されるか、あるいは、R
1、R’
1、R2、…Rn−1、Rn、及びR’nの少なくとも2つ、及び/またはRa、R’a、Rb、R’b、…Rm−1、R’m−1、Rm、及びR’mの少なくとも2つは、少なくとも1つの四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂肪族環、またはヘテロ脂環式環を形成し、あるいはその薬学上許容される塩、水和物、または溶媒和物を形成する。本明細書中記載される実施形態のいずれかにおいても、酸化リン脂質は、任意の比の立体異性体混合物として存在することが可能であり、例えば、RもしくはS異性体など1種の鏡像異性体が実質的に濃縮されたもの(例えば、鏡像異性体過剰率が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはそれ以上である)として、または2種の鏡像異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)として、及び/または1種のジアステレオマーが実質的に濃縮されたもの(例えば、ジアステレオマー過剰率が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはそれ以上である)として、または2種以上のジアステレオマーの混合物として存在することが可能である。
【0130】
1つの実施形態において、本開示の方法のいずれかにおいて有用な酸化リン脂質は、式III:
による構造を有するか、またはその薬学上許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を有する。
【0131】
式III中、nは、1〜4から選択される整数である。
【0132】
式III中、B
1、各B
2、及びB
3は、独立して、酸素、硫黄、及びNR
4からなる群より選択され、式中、R
4は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアシルから選択される。
【0133】
式III中、A
1及び各A
2は、独立して、CR
eR
ee、CR
e=CR
ee、C=O、及びC=Sからなる群より選択され、式中、R
e及びR
eeは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。
【0134】
式III中、Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、及び以下の一般式:
を有する部分からなる群より選択され、
式中、
B及びB
aのそれぞれは、独立して、硫黄及び酸素からなる群より選択され、かつ
D及びD
aは、独立して、水素、アルキル、アミノアルキル、シクロアルキル、ホスホナート、及びチオホスホナートからなる群より選択される。
【0135】
式III中、X
1及び各X
2は、独立して、飽和または不飽和の直鎖または分岐炭化水素であり、X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、
からなる群より選択される酸化部分Zで置換され、式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。
【0136】
式IIIの1つの実施形態において、X
1及び各X
2は、独立して、一般式IV:
を有する。
【0137】
式IV中、mは、1〜26から選択される整数である。
【0138】
式IV中、Zは、
からなる群より選択され、式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、水素以外のZを含む。
【0139】
式III及び式IV中、R
1、R
1a、各R
2、R
3、R
3a、R
a、R
aa、各R
b、各R
bb、R
c、及びR
ccは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
1、R
1a、R
2、R
3、及びR
3aのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよく、かつR
a、R
aa、R
b、R
bb、R
c、及びR
ccのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよい。
【0140】
式IIIの1つの実施形態において、nは、1または2である。式IIIの別の実施形態において、nは1である。
【0141】
式IIIの1つの実施形態において、Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、及びホスホグリセロールからなる群より選択される。
【0142】
式IIIの別の実施形態において、Yは、水素、ホスホリルコリン、及びホスホリルエタノールアミンからなる群より選択される。
【0143】
式IIIの別の実施形態において、Yは、ホスホリルコリン、及びホスホリルエタノールアミンからなる群より選択される。
【0144】
式IIIの1つの実施形態において、Yは、ホスホリルコリンである。
【0145】
式IIIの1つの実施形態において、Zは、
である。式IIIの別の実施形態において、Zは、カルボン酸基である。
【0146】
式IIIのさらなる実施形態において、nは1であり、かつYはホスホリルコリンである。
【0147】
式IIIのさらなる実施形態において、B
1、B
2、及びB
3のそれぞれは、酸素である。
【0148】
式IIIのさらなる実施形態において、nは1であり、Yはホスホリルコリンであり、かつB
1、B
2、及びB
3のそれぞれは、酸素である。
【0149】
1つの実施形態において、本開示の方法のいずれかにおいて有用な酸化リン脂質は、式IIIa:
による構造を有するか、またはその薬学上許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を有する。
【0150】
式IIIa中、B
1、B
2、及びB
3は、独立して、酸素及び硫黄から選択される。
【0151】
式IIIa中、A
1及びA
2は、独立して、CH
2、CH=CH、C=O、及びC=Sからなる群より選択される。
【0152】
式IIIa中、Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、及びホスホグリセロールからなる群より選択される。
【0153】
式IIIa中、R
1、R
1a、R
2、R
3、及びR
3aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
1、R
1a、R
2、R
3、及びR
3aのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよく、かつR
a、R
aa、R
b、R
bb、R
c、及びR
ccのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよい。
【0154】
式IIIa中、X
1及びX
2は、独立して、飽和または不飽和の直鎖または分岐炭化水素であり、X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、
から選択される式を有する酸化部分Zで置換され、式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。
【0155】
式IIIaの1つの実施形態において、X
1及びX
2は、独立して、式IVa:
による構造を有する。
【0156】
式IVa中、mは、1〜26から選択される整数である。
【0157】
式IVa中、R
a、R
aa、各R
b、各R
bb、R
c、及びR
ccは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ホスホナート、ホスファート、ホスフィニル、スルホニル、スルフィニル、スルホンアミド、アミド、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、C−カルバマート、N−カルバマート、C−チオカルボキシ、S−チオカルボキシ、及びアミノからなる群より選択され、R
a、R
aa、R
b、R
bb、R
c、及びR
ccのうち少なくとも2つは、結合して四員、五員、または六員の芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂環式環、またはヘテロ脂環式環を形成してもよい。
【0158】
式IVa中、Zは、
からなる群より選択され、式中、Wは、酸素または硫黄であり、かつR
d及びR
ddは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、X
1及びX
2のうち少なくとも1つは、水素以外のZを含む。
【0159】
式IIIaの1つの実施形態において、Zは、
である。式IIIaの別の実施形態において、Zは、カルボン酸基である。
【0160】
式IIIaの1つの実施形態において、Yは、水素、アシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、カルボキシ、糖、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−グルタル酸、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、及びホスホグリセロールからなる群より選択される。
【0161】
式IIIaの1つの実施形態において、Yは、水素、ホスホリルコリン、及びホスホリルエタノールアミンからなる群より選択される。
【0162】
式IIIaの別の実施形態において、Yは、ホスホリルコリン、及びホスホリルエタノールアミンからなる群より選択される。
【0163】
式IIIaの1つの実施形態において、Yは、ホスホリルコリンである。
【0164】
式IIIaのさらなる実施形態において、B
1、B
2、及びB
3のそれぞれは、酸素である。
【0165】
式IIIaのさらなる実施形態において、Yは、ホスホリルコリンであり、B
1、B
2、及びB
3のそれぞれは、酸素である。
【0166】
式IIIaの1つの実施形態において、酸化リン脂質は、式V:
による構造を有し、式中、B
1、B
2、B
3、A
1、A
2、X
1、X
2、及びYは、式IIIaについて定義したとおりである。
【0167】
1つの実施形態において、式VのB
1、B
2、B
3のそれぞれは、酸素であり、かつ酸化リン脂質は、式VI:
による構造を有する。
【0168】
式VI中、A
1は、CH
2、CH=CH、及びC=Oからなる群より選択される。1つの例において、式VIのA
1は、CH
2である。
【0169】
式VI中、A
2は、存在しないか、またはCH
2である。
【0170】
式VI中、X
1は、炭素原子を1〜30個有するアルキルである。
【0171】
式VI中、X
2は、
であり、
式中、
Eは、存在しないか、または炭素原子を1〜24個有するアルキル鎖であり、
Fは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハライド、アセトキシ、及びアリールからなる群より選択され、かつ
Zは、
からなる群より選択され、式中、R
dは、H、アルキル、及びアリールから選択される。
【0172】
式VI中、Yは、水素、アルキル、アリール、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスファート、ホスホイノシトール−4,5−ビスホスファート、ピロホスファート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセタート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロールからなる群より選択される。
【0173】
式VIの1つの実施形態において、X
1は、炭素原子を10〜30個有する、または炭素原子を8〜30個有するアルキルである。
【0174】
式VIの1つの実施形態において、Eは、炭素原子を1〜10個有する、または炭素原子を1〜4個有するアルキルである。
【0175】
式VIの1つの実施形態において、Yは、ホスホリルコリンである。
【0176】
式I、II、III、IIIa、V、及びVIの各炭素原子は、キラルまたは非キラル炭素原子であり、各キラル炭素原子は、S配置を有することもR配置を有することも可能である。
【0177】
1つの好適な実施形態において、酸化リン脂質は、1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−グリセロ−3−ホスホコリンである。別の好適な実施形態において、酸化リン脂質は、(R)−1−ヘキサデシル−2−(4’−カルボキシ)ブチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。
【0178】
1つの好適な実施形態において、酸化リン脂質は、
またはその薬学上許容される塩である。
【0179】
1つの好適な実施形態において、酸化リン脂質は、
またはその薬学上許容される塩である。
【0180】
本明細書中記載される小分子MOSPD2阻害剤は、本明細書中記載される方法のいずれにおいても、単一作用剤として、単独で使用することもできるし、別の作用剤(例えば、別のMOSPD2阻害剤)と併用して使用することもできる。本明細書中記載される実施形態のいずれかにおいて、有用な小分子MOSPD2阻害剤として、VB−221と比較した場合にMOSPD2(例えば、単球の細胞表面のヒトMOSPD2)のより強力な阻害剤であるもの、例えば、VB−221のIC
50値よりも低いIC
50値を有するものが挙げられる。より好ましくは、有用な小分子MOSPD2阻害剤として、VB−201と比較した場合にMOSPD2(例えば、単球の細胞表面のヒトMOSPD2)と同等またはそれより強力な阻害剤であるもの、例えば、VB−201よりも低いIC
50値を有するものが挙げられる。当業者には当然のことながら、IC
50値は、所定の生体プロセス(またはプロセスの要素、すなわち、酵素、細胞、細胞受容体、または微生物)を半分阻害するために特定の薬物または他の物質(阻害剤)がどのくらい必要かを示す。IC
50値を決定する方法は、当該分野で既知である。
【0181】
小分子MOSPD2阻害剤(本明細書中記載されるとおり)が医薬組成物に含まれて、単一作用剤として単独で、または他の作用剤と併用で、対象に投与される場合、小分子MOSPD2阻害剤(例えば、VB−201)は、その投与がMOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)の1種または複数種の活性(例えば、MOSPD2発現、炎症細胞遊走(例えば、白血球または単球の遊走)、化学走性(例えば、白血球または単球の化学走性)、ケモカインシグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化)の少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす量で存在する。いくつかの実施形態において、小分子MOSPD2阻害剤のヒト対象への投与は、ヒトMOSPD2の1種または複数種の活性の少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす。1つの態様において、小分子MOSPD2阻害剤の投与は、MOSPD2の1種または複数種の活性、例えば、炎症細胞遊走の調節、ケモカインシグナル伝達経路、成長因子シグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化、及び/またはFAKリン酸化の、約10%〜100%、約10%〜約99%、約10%〜約95%、約10%〜約90%、約10%〜約85%、約10%〜約80%、約10%〜約70%、約20%〜約99%、約20%〜約95%、約20%〜約90%、約20%〜約85%、約20%〜約80%、約30%〜約95%、約30%〜約90%、約30%〜約85%、約30%〜約80%、約40%〜約95%、約40%〜約90%、約40%〜約85%、約40%〜約80%、約50%〜約95%、約50%〜約90%、約50%〜約85%、約50%〜約80%、約60%〜約95%、約60%〜約90%、約60%〜約85%、または約60%〜約80%の阻害を引き起こす。好ましくは、小分子MOSPD2阻害剤は、VB−201である。
【0182】
いくつかの実施形態において、所定のタンパク質の阻害剤は、そのタンパク質に、及び/またはそのタンパク質をコードするオリゴヌクレオチド(例えば、mRNA)に結合することにより、そのタンパク質を阻害する。
【0183】
他の実施形態において、MOSPD2阻害剤は、(i)MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する単離結合分子であるか、(ii)MOSPD2ポリペプチドのリガンドに特異的に結合する単離結合分子であるか、(iii)MOSPD2ポリペプチドに対して産生された抗血清であるか、(iv)可溶性MOSPD2ポリペプチドであるか、または(v)MOSPD2ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、本質的にそれからなる、もしくはそれからなる可溶性MOSPD2ポリペプチドである。
【0184】
さらに他の実施形態において、阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体である。他の実施形態において、阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドに特異的に結合する抗体の抗原結合断片である。他の実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または一本鎖抗体である。他の実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、sdFv断片、VHドメイン、またはVLドメインである。
【0185】
いくつかの実施形態において、阻害剤は、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)に特異的に結合する本明細書中記載される抗体またはその抗原結合断片であり、VH、VL、またはVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、定常領域を含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、VH、VL、またはVH及びVLは、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの実施形態において、VHは、CDR1、CDR2、CDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、VLは、CDR1、CDR2、CDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0187】
いくつかの実施形態において、VH、VL、またはVH及びVLは、1つまたは複数のフレームワーク領域(FR)を含む。いくつかの実施形態において、VHは、FR1、FR2、FR3、FR4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、VLは、FR1、FR2、FR3、FR4、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0188】
特定の実施形態において、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)に特異的に結合する本明細書中記載される抗体またはその抗原結合断片は、CDR1、CDR2、及びCDR3を含むVH、ならびにCDR1、CDR2、及びCDR3を含むVLを含む。
【0189】
他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、定常領域を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域またはヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖の定常領域は、ヒトガンマ重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非限定的な例が報告されてきており、例えば、米国特許第5,693,780号、及びKabat,EA et al.,(1991)を参照。いくつかの実施形態において、定常領域アミノ酸配列は、天然ヒト配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性があるように修飾されている(例えば、1つ、2つ、またはそれより多いアミノ酸置換)。別の態様において、本明細書中提供されるのは、MOSPD2のエピトープ(例えば、ヒトMOSPD2のエピトープ)を認識するまたはこれに結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の態様において、本明細書中提供されるのは、本明細書中記載される抗体(例えば、実施例1または8に記載される抗体)と同一のMOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)のエピトープまたは重複するエピトープを認識するまたはこれに結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、MOSPD2のエピトープを複数種(例えば、2種、3種、4種、5種、または6種のエピトープ)認識する。
【0190】
ある特定の実施形態において、MOSPD2のエピトープは、文献に記載される1つまたは複数の方法、例えば、NMR分光測定、X線回折結晶構造解析、ELISAアッセイ、質量分析(例えば、MALDI質量分析)と合わせた水素/重水素交換、アレイに基づくオリゴペプチドスキャニングアッセイ、及び/または変異誘発マッピング(例えば、部位指向性変異誘発マッピング)などにより決定することができる。X線結晶構造解析の場合、結晶化は、文献に記載される方法を用いて達成することができる(例えば、Giege R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt4):339−350、McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1−23、Chayen NE(1997)Structure 5:1269−1274、McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300−6303)。抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技法を用いて調べることができ、X−PLOR(Yale University,1992、頒布はMolecular Simulations、Inc.による、例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114 & 115,eds Wyckoff HW et al.、米国特許出願第2004/0014194号)、及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt 1):37−60、Bricogne G(1997)Meth Enzymol 276A:361−423,ed Carter CW,Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt10):1316−1323を参照)などのコンピューターソフトウェアを用いて精緻化することができる。変異誘発マッピング試験は、文献に記載される方法を用いて達成することができる。例えば、Champe M et al.,(1995)上記、及びアラニンスキャニング変異誘発技法を含む変異誘発技法の説明についてCunningham BC & Wells JA(1989)上記、を参照。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片のエピトープは、アラニンスキャニング変異誘発試験を用いて決定される。抗体のエピトープ特性決定は、Ravn et al.,Journal of Biological Chemistry 288:19760−19772(2013)に提示される方法によっても決定することができる。
【0191】
また、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)の同一のまたは重複するエピトープを認識するまたはそれに結合する抗体またはそれらの抗原結合断片は、免疫アッセイなどの定法技法を用いて、例えば、1つの抗体が持つ、別の抗体と標的抗原との結合を遮断する能力の表示、すなわち、競合結合アッセイにより、同定することができる。競合結合は、試験対象の免疫グロブリンが参照抗体と共通抗原との、例えばMOSPD2などとの特異的結合を阻害するアッセイにおいて、決定することができる。複数種類の競合結合アッセイが、記載されてきており、例えば、固相直接または間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli C et al.,(1983)Methods Enzymol 9:242−253を参照)、固相直接ビオチンアビジンEIA(Kirkland TN et al.,(1986)J Immunol 137:3614−9を参照)、固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow E & Lane D,(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照)、I−125標識を用いる固相直接標識RIA(Morel GA et al.,(1988)Mol Immunol 25(1):7−15を参照)、固相直接ビオチンアビジンEIA(Cheung RC et al.,(1990)Virology 176:546−52)、及び直接標識化RIA(Moldenhauer G et al.,(1990)Scand J Immunol 32:77−82)がある。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面または細胞に結合して保持されている精製抗原(例えば、ヒトMOSPD2などのMOSPD2)、未標識の試験免疫グロブリン、及び標識化参照免疫グロブリンの使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で、固体表面または細胞と結合した標識の量を決定することにより、測定することができる。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、競合抗体は、参照抗体と共通抗原との特異的結合を、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、またはそれ以上阻害する。競合結合アッセイは、標識化抗原または標識化抗体いずれかを用いる多数の異なる様式で構成することができる。このアッセイの一般的形式では、抗原は96ウェルプレートに固定される。次いで、未標識抗体が持つ標識化抗体と抗原の結合を遮断する能力を、放射性標識または酵素標識を用いて測定する。さらなる詳細について、例えば、Wagener C et al.,(1983)J Immunol 130:2308−2315、Wagener C et al.,(1984)J Immunol Methods 68:269−274、Kuroki M et al.,(1990)Cancer Res 50:4872−4879、Kuroki M et al.,(1992)Immunol Invest 21:523−538、Kuroki M et al.,(1992)Hybridoma 11:391−407及びAntibodies:A Laboratory Manual,Ed Harlow E & Lane D editors上記、pp.386−389を参照。
【0192】
1つの実施形態において、表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))を用いて、例えば、Abdiche YN et al.,(2009)Analytical Biochem 386:172−180に記載されるものなどの「タンデムアプローチ」により競合アッセイを行うが、これによれば、MOSPD2抗原をチップ、例えば、CM5センサーチップなどの表面に固定し、次いで抗MOSPD2抗体を、チップ全体に行き渡らせる。抗体またはその抗原結合断片が、本明細書中記載される抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片と競合するかどうかを決定するため、抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片を最初にチップ表面全体に行き渡らせて飽和させ、次いで、競合する可能性がある抗体を加える。次いで、競合抗体の結合を、非競合対照との比較で決定し定量することができる。
【0193】
ある特定の態様において、競合ELISAアッセイなどの競合結合アッセイにおいて2種の抗体が、同一のまたは立体的に重複するエピトープを認識する場合、競合結合アッセイを用いて、抗体またはその抗原結合断片が、参照抗体としての別の抗体、例えば、本質的に同一のエピトープまたは重複するエピトープと結合する抗体により、例えば用量依存式に、競合的に遮断されるかどうか決定することができ、アッセイは、標識化抗原または標識化抗体いずれかを用いて、あらゆる異なる様式で構成することができる。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書中記載される抗体(例えば、実施例のもの)、またはそのキメラもしくはFab抗体、または本明細書中記載される抗体(例えば、実施例のもの)のVH CDR及びVL CDRを含む抗体を用いる競合結合アッセイで試験することができる。
【0194】
したがって、ある特定の態様において、本明細書中提供されるのは、当業者に既知のまたは本明細書中記載されるアッセイ(例えば、ELISA競合アッセイ、表面プラズモン共鳴、またはScatchard分析)を用いて決定されるとおりの、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)への結合に関して本明細書中記載される抗体(例えば、実施例のもの)と競合する(例えば、用量依存式で)抗体またはその抗原結合断片である。
【0195】
いくつかの実施形態において、本発明の抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1(アミノ酸残基1〜518)に従って付番された、MOSPD2の以下のアミノ酸領域(エピトープ)の1つまたは複数に特異的に結合する:508〜517、501〜514、233〜241、509〜517、212〜221、13〜24、505〜517、505〜514、89〜100、506〜517、233〜245、504〜514、128〜136、218〜226、15〜24、83〜96、42〜50、462〜474、340〜351、504〜517、462〜470、327〜337、21〜32、217〜226、510〜517、178〜190、497〜509、504〜516、64〜77、504〜515、147〜159、503〜315、88〜97、208〜218、178〜191、502〜515、503〜516、497〜505、500〜509、189〜202、189〜197、505〜516、1〜63、82〜239、93〜234、327〜445、327〜431、及び497〜517。
【0196】
いくつかの実施形態において、本発明の抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1(アミノ酸残基1〜518)に従って付番された、MOSPD2の以下のアミノ酸領域(エピトープ)の1つまたは複数に特異的に結合する:約508〜約517、約501〜約514、約233〜約241、約509〜約517、約212〜約221、約13〜約24、約505〜約517、約505〜約514、約89〜約100、約506〜約517、約233〜約245、約504〜約514、約128〜約136、約218〜約226、約15〜約24、約83〜約96、約42〜約50、約462〜約474、約340〜約351、約504〜約517、約462〜約470、約327〜約337、約21〜約32、約217〜約226、約510〜約517、約178〜約190、約497〜約509、約504〜約516、約64〜約77、約504〜約515、約147〜約159、約503〜約515、約88〜約97、約208〜約218、約178〜約191、約502〜約515、約503〜約516、約497〜約505、約500〜約509、約189〜約202、約189〜約197、約505〜約516、約1〜約63、約82〜約239、約93〜約234、約327〜約445、約327〜約431、及び約497〜約517。
【0197】
いくつかの実施形態において、本発明の抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1(アミノ酸残基1〜518)に従って付番された、MOSPD2の以下のアミノ酸領域(エピトープ)の1つまたは複数に特異的に結合する:約505〜約515、約500〜約515、約230〜約240、約510〜約520、約210〜約220、約15〜約25、約505〜約520、約505〜約515、約90〜約100、約505〜約525、約230〜約245、約505〜約510、約130〜約140、約220〜約230、約15〜約30、約80〜約95、約40〜約50、約460〜約475、約340〜約350、約500〜約515、約460〜約470、約325〜約335、約20〜約35、約215〜約225、約510〜約520、約175〜約190、約500〜約510、約505〜約530、約60〜約75、約500〜約520、約145〜約160、約502〜約515、約85〜約100、約205〜約220、約175〜約190、約500〜約505、約500〜約525、約495〜約505、約495〜約510、約190〜約200、約190〜約198、約502〜約515、約1〜約60、約80〜約240、約90〜約235、約330〜約445、約330〜約430、及び約495〜約515。
【0198】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、約10
−6M〜約10
−12M、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−7M〜約10
−12、10
−8M〜約10
−12M、約10
−9M〜約10
−12M、約10
−10M〜約10
−12M、約10
−11M〜約10
−12M、約10
−6M〜約10
−11M、約10
−7M〜約10
−11M、約10
−8M〜約10
−11M、約10
−9M〜約10
−11M、約10
−10M〜約10
−11M、約10
−6M〜約10
−10M、約10
−7M〜約10
−10M、約10
−8M〜約10
−10M、約10
−9M〜約10
−10M、約10
−6M〜約10
−9M、約10
−7M〜約10
−9M、約10
−8M〜約10
−9M、約10
−6M〜約10
−8M、または約10
−7M〜約10
−8)の抗体抗原平衡解離定数(K
D)でMOSPD2と結合する。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、K
Dが約10
−6M、約10
−7M、約10
−8M、約10
−9M、約10
−10M、約10
−11M、または約10
−12Mである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は、MOSPD2上の1つまたは複数のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、K
Dは、Scatchard分析、表面プラズモン共鳴、または本明細書中記載される他の方法により、いくつかの実施形態において、37℃で決定される。
【0199】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、約10
31/Ms〜約10
61/Ms、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
31/Ms〜約10
51/Ms、約10
41/Ms〜約10
51/Ms、約10
41/Ms〜約10
61/Ms、約10
51/Ms〜約10
61/Ms、または約10
31/Ms〜約10
41/Ms)のK
onでMOSPD2に結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
onが約10
31/Ms、約10
41/Ms、約10
51/Ms、または約10
61/Msである。
【0200】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、約10
−31/s〜約10
−61/s、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−31/s〜約10
−51/s、約10
−41/s〜約10
−51/s、約10
−41/s〜約10
−61/s、約10
−51/s〜約10
−61/s、または約10
−31/s〜約10
−41/s)のK
offでMOSPD2に結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
offが約10
−31/s、約10
−41/s、約10
−51/s、または約10
−61/sである。
【0201】
さらに他の実施形態において、阻害剤は、RNAi、miRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合DNA、被包DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、被包RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を起こすことができる分子、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、阻害剤は、MOSPD2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下または高度にストリンジェントな条件下のものである。
【0202】
いくつかの実施形態において、阻害剤は、クラスター化した規則的な配置の短い回文配列リピート、すなわちCRISPR−CAS9系である。
【0203】
さらなる実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一の配列を有する。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一の配列を有する。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一性の配列を有する。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性の配列を有する。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと約75%〜100%同一の、またはそれらの値のうちの任意の範囲、例えば、配列番号1〜4のいずれか1つと約80%〜100%同一性、約85%〜100%同一性、約90%〜100%同一性、約95%〜100%同一性、約96%〜100%同一性、約97%〜100%同一性、約98%〜100%同一性、約99%〜約100%同一性、約75%〜約99%同一性、約80%〜約99%同一性、約85%〜約99%同一性、約90%〜約99%同一性、約95%〜約99%同一性、約96%〜約99%同一性、約97%〜約99%同一性、約98%〜約99%同一性、約99%〜約100%同一性、約75%〜約95%同一性、約80%〜約95%同一性、約85%〜約95%同一性、または約90%〜約95%同一性の配列を有する。
【0204】
本発明のさらなる実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一性のポリヌクレオチド配列によりコードされる。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一性のポリヌクレオチド配列によりコードされる。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一性のポリヌクレオチド配列によりコードされる。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号1〜4のいずれか1つと75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のポリヌクレオチド配列によりコードされる。他の実施形態において、MOSPD2ポリペプチドは、配列番号5〜8のいずれか1つと約75%〜100%同一性の、またはそれらの値のうちの任意の範囲、例えば、配列番号5〜8のいずれか1つと約80%〜100%同一性、約85%〜100%同一性、約90%〜100%同一性、約95%〜100%同一性、約96%〜100%同一性、約97%〜100%同一性、約98%〜100%同一性、約99%〜約100%同一性、約75%〜約99%同一性、約80%〜約99%同一性、約85%〜約99%同一性、約90%〜約99%同一性、約95%〜約99%同一性、約96%〜約99%同一性、約97%〜約99%同一性、約98%〜約99%同一性、約99%〜約100%同一性、約75%〜約95%同一性、約80%〜約95%同一性、約85%〜約95%同一性、または約90%〜約95%同一性のポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0205】
医薬組成物
本発明の他の実施形態は、MOSPD2の阻害剤を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、MOSPD2の阻害剤、及び薬学上許容される担体を含む。他の実施形態において、医薬組成物は、MOSPD2の阻害剤(例えば、本明細書中記載される抗体または抗体の抗原結合断片)の治療有効量を含む。
【0206】
他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約1μg/ml〜約10μg/ml、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約2μg/ml〜約10μg/ml、約3μg/ml〜約10μg/ml、約4μg/ml〜約10μg/ml、約5μg/ml〜約10μg/ml、約6μg/ml〜約10μg/ml、約7μg/ml〜約10μg/ml、約8μg/ml〜約10μg/ml、約9μg/ml〜約10μg/ml、約1μg/ml〜約9μg/ml、約2μg/ml〜約9μg/ml、約3μg/ml〜約9μg/ml、約4μg/ml〜約9μg/ml、約5μg/ml〜約9μg/ml、約6μg/ml〜約9μg/ml、約7μg/ml〜約9μg/ml、約8μg/ml〜約9μg/ml、約1μg/ml〜約8μg/ml、約2μg/ml〜約8μg/ml、約3μg/ml〜約8μg/ml、約4μg/ml〜約8μg/ml、約5μg/ml〜約8μg/ml、約6μg/ml〜約8μg/ml、約7μg/ml〜約8μg/ml、約1μg/ml〜約7μg/ml、約2μg/ml〜約7μg/ml、約3μg/ml〜約7μg/ml、約4μg/ml〜約7μg/ml、約5μg/ml〜約7μg/ml、約6μg/ml〜約7μg/ml、約1μg/ml〜約6μg/ml、約2μg/ml〜約6μg/ml、約3μg/ml〜約6μg/ml、約4μg/ml〜約6μg/ml、約5μg/ml〜約6μg/ml、約1μg/ml〜約5μg/ml、約2μg/ml〜約5μg/ml、約3μg/ml〜約5μg/ml、約4μg/ml〜約5μg/ml、約1μg/ml〜約4μg/ml、約2μg/ml〜約4μg/ml、約3μg/ml〜約4μg/ml、約1μg/ml〜約3μg/ml、約2μg/ml〜約3μg/ml、または約1μg/ml〜約2μg/ml)である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、または約10μg/mlである。
【0207】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約10mg/kg〜約40mg/kg、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約15mg/kg〜約40mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約25mg/kg〜約40mg/kg、約30mg/kg〜約40mg/kg、約35mg/kg〜約40mg/kg、約10mg/kg〜約35mg/kg、約15mg/kg〜約35mg/kg、約20mg/kg〜約35mg/kg、約25mg/kg〜約35mg/kg、約30mg/kg〜約35mg/kg、約10mg/kg〜約30mg/kg、約15mg/kg〜約30mg/kg、約20mg/kg〜約30mg/kg、約25mg/kg〜約30mg/kg、約10mg/kg〜約25mg/kg、約15mg/kg〜約25mg/kg、約20mg/kg〜約25mg/kg、約10mg/kg〜約20mg/kg、約15mg/kg〜約20mg/kg、または約10mg/kg〜約15mg/kg)である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、または約40mg/kgである。
【0208】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、MOSPD2阻害剤の投与が、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)の1種または複数種の活性(例えば、MOSPD2発現、炎症細胞遊走(例えば、白血球または単球の遊走)、化学走性(例えば、白血球または単球の化学走性)、ケモカインシグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、及びAKTリン酸化)の少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こすような量で存在する。いくつかの実施形態において、ヒト対象へのMOSPD2阻害剤の投与は、ヒトMOSPD2の1種または複数種の活性の少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす。
【0209】
別の態様において、MOSPD2阻害剤(例えば、抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片)の投与は、MOSPD2の1種または複数種の活性、例えば、炎症細胞遊走の調節、ケモカインシグナル伝達経路、成長因子シグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化、及び/またはFAKリン酸化などの、約10%〜100%、約10%〜約99%、約10%〜約95%、約10%〜約90%、約10%〜約85%、約10%〜約80%、約10%〜約70%、約20%〜約99%、約20%〜約95%、約20%〜約90%、約20%〜約85%、約20%〜約80%、約30%〜約95%、約30%〜約90%、約30%〜約85%、約30%〜約80%、約40%〜約95%、約40%〜約90%、約40%〜約85%、約40%〜約80%、約50%〜約95%、約50%〜約90%、約50%〜約85%、約50%〜約80%、約60%〜約95%、約60%〜約90%、約60%〜約85%、または約60%〜約80%の阻害を引き起こす。
【0210】
本明細書中使用される場合、「医薬組成物」は、本明細書中記載されるとおりの1種または複数種の作用剤(例えば、MOSPD2阻害剤、またはMOSPD2阻害剤と本明細書中記載される1種または複数種の他の作用剤の組み合わせ)、あるいはその生理学的に許容される塩またはプロドラッグを他の化学成分と合わせて含む製剤を示し、他の化学成分として、薬学上許容される担体、賦形剤、滑沢剤、緩衝剤、抗菌剤、増量剤(例えば、マンニトール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム)などが挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物の目的は、作用剤(複数可)を対象に投与しやすくすることである。
【0211】
本明細書中使用される場合、対象に「投与」または「投与する」は、医師または他の医療専門家が、対象に本発明の医薬組成物を処方する行為を含むが、これに限定されない。
【0212】
本明細書中、「薬学上許容される担体」という語句は、対象に対して目立った刺激を引き起こさず、かつ本明細書中記載される作用剤(複数可)の生物活性及び性質を抑制しない担体または希釈剤を示す。
【0213】
本明細書中使用される場合、「担体」という用語は、治療薬を投与するときに一緒に用いられる希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを示す。
【0214】
本明細書中、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加される不活性物質を示す。
【0215】
いくつかの実施形態において、MOSPD2阻害剤を含む医薬組成物は、さらに、1種または複数種の追加活性作用剤を含む。
【0216】
2種以上の作用剤を医薬組成物として投与する場合、各作用剤は、任意選択で、別々の組成物で投与することも、及び/または異なる投与経路を介して投与することもできる。各作用剤に可能な投与経路として、独立して、非経口投与、経粘膜投与、直腸投与、頬側投与、及び/または吸入(例えば、本明細書中記載されるとおり)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0217】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、全身投与または局所投与に適する。他の実施形態において、医薬組成物は、経鼻投与、経口投与、または腹腔内投与に適する。他の実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与に適する。
【0218】
炎症及び炎症性疾患または炎症性障害を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法
本発明の実施形態は、炎症を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法に関し、本方法は、MOSPD2の阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、炎症性疾患または障害を処置する、予防する、またはその発生率を低下させる方法に関し、本方法は、MOSPD2の阻害剤を投与することを含む。他の実施形態において、本方法は、その必要がある対象に、MOSPD2の阻害剤の治療有効量を投与することを含む。
【0219】
本方法のいくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、本明細書中記載される抗体または抗体の抗原結合断片である。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、抗体抗原平衡解離定数(K
D)が10
−6M〜約10
−12M、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−7M〜約10
−12、10
−8M〜約10
−12M、約10
−9M〜約10
−12M、約10
−10M〜約10
−12M、約10
−11M〜約10
−12M、約10
−6M〜約10
−11M、約10
−7M〜約10
−11M、約10
−8M〜約10
−11M、約10
−9M〜約10
−11M、約10
−10M〜約10
−11M、約10
−6M〜約10
−10M、約10
−7M〜約10
−10M、約10
−8M〜約10
−10M、約10
−9M〜約10
−10M、約10
−6M〜約10
−9M、約10
−7M〜約10
−9M、約10
−8M〜約10
−9M、約10
−6M〜約10
−8M、または約10
−7M〜約10
−8)であることが可能である。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、K
Dが約10
−6M、約10
−7M、約10
−8M、約10
−9M、約10
−10M、約10
−11M、または約10
−12Mである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は、MOSPD2上の1つまたは複数のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、K
Dは、Scatchard分析、表面プラズモン共鳴、または本明細書中記載される他の方法により、いくつかの実施形態において、37℃で決定される。
【0220】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、約10
31/Ms〜約10
61/Ms、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
31/Ms〜約10
51/Ms、約10
41/Ms〜約10
51/Ms、約10
41/Ms〜約10
61/Ms、約10
51/Ms〜約10
61/Ms、または約10
31/Ms〜約10
41/Ms)のK
onでMOSPD2に結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
onが約10
31/Ms、約10
41/Ms、約10
51/Ms、または約10
61/Msである。
【0221】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、約10
−31/s〜約10
−61/s、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−31/s〜約10
−51/s、約10
−41/s〜約10
−51/s、約10
−41/s〜約10
−61/s、約10
−51/s〜約10
−61/s、または約10
−31/s〜約10
−41/s)のK
offでMOSPD2に結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
offが約10
−31/s、約10
−41/s、約10
−51/s、または約10
−61/sである。
【0222】
本方法のいくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約1μg/ml〜約10μg/ml、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約2μg/ml〜約10μg/ml、約3μg/ml〜約10μg/ml、約4μg/ml〜約10μg/ml、約5μg/ml〜約10μg/ml、約6μg/ml〜約10μg/ml、約7μg/ml〜約10μg/ml、約8μg/ml〜約10μg/ml、約9μg/ml〜約10μg/ml、約1μg/ml〜約9μg/ml、約2μg/ml〜約9μg/ml、約3μg/ml〜約9μg/ml、約4μg/ml〜約9μg/ml、約5μg/ml〜約9μg/ml、約6μg/ml〜約9μg/ml、約7μg/ml〜約9μg/ml、約8μg/ml〜約9μg/ml、約1μg/ml〜約8μg/ml、約2μg/ml〜約8μg/ml、約3μg/ml〜約8μg/ml、約4μg/ml〜約8μg/ml、約5μg/ml〜約8μg/ml、約6μg/ml〜約8μg/ml、約7μg/ml〜約8μg/ml、約1μg/ml〜約7μg/ml、約2μg/ml〜約7μg/ml、約3μg/ml〜約7μg/ml、約4μg/ml〜約7μg/ml、約5μg/ml〜約7μg/ml、約6μg/ml〜約7μg/ml、約1μg/ml〜約6μg/ml、約2μg/ml〜約6μg/ml、約3μg/ml〜約6μg/ml、約4μg/ml〜約6μg/ml、約5μg/ml〜約6μg/ml、約1μg/ml〜約5μg/ml、約2μg/ml〜約5μg/ml、約3μg/ml〜約5μg/ml、約4μg/ml〜約5μg/ml、約1μg/ml〜約4μg/ml、約2μg/ml〜約4μg/ml、約3μg/ml〜約4μg/ml、約1μg/ml〜約3μg/ml、約2μg/ml〜約3μg/ml、または約1μg/ml〜約2μg/ml)である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、または約10μg/mlである。
【0223】
本方法のいくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約10mg/kg〜約40mg/kg、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約15mg/kg〜約40mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約25mg/kg〜約40mg/kg、約30mg/kg〜約40mg/kg、約35mg/kg〜約40mg/kg、約10mg/kg〜約35mg/kg、約15mg/kg〜約35mg/kg、約20mg/kg〜約35mg/kg、約25mg/kg〜約35mg/kg、約30mg/kg〜約35mg/kg、約10mg/kg〜約30mg/kg、約15mg/kg〜約30mg/kg、約20mg/kg〜約30mg/kg、約25mg/kg〜約30mg/kg、約10mg/kg〜約25mg/kg、約15mg/kg〜約25mg/kg、約20mg/kg〜約25mg/kg、約10mg/kg〜約20mg/kg、約15mg/kg〜約20mg/kg、または約10mg/kg〜約15mg/kg)である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、または約40mg/kgである。
【0224】
本方法のいくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)の1種または複数種の活性(例えば、MOSPD2発現、炎症細胞遊走(例えば、白血球または単球の遊走)、化学走性(例えば、白血球または単球の化学走性)ケモカインシグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、及びAKTリン酸化)の、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす。いくつかの実施形態において、ヒト対象へのMOSPD2阻害剤の投与は、ヒトMOSPD2の1種または複数種の活性の少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす。
【0225】
別の態様において、MOSPD2阻害剤(例えば、抗MOSPD2抗体またはその抗原結合断片)の投与は、MOSPD2の1種または複数種の活性、例えば、炎症細胞遊走の調節、ケモカインシグナル伝達経路、成長因子シグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化、及び/またはFAKリン酸化の約10%〜100%、約10%〜約99%、約10%〜約95%、約10%〜約90%、約10%〜約85%、約10%〜約80%、約10%〜約70%、約20%〜約99%、約20%〜約95%、約20%〜約90%、約20%〜約85%、約20%〜約80%、約30%〜約95%、約30%〜約90%、約30%〜約85%、約30%〜約80%、約40%〜約95%、約40%〜約90%、約40%〜約85%、約40%〜約80%、約50%〜約95%、約50%〜約90%、約50%〜約85%、約50%〜約80%、約60%〜約95%、約60%〜約90%、約60%〜約85%、または約60%〜約80%の阻害を引き起こす。
【0226】
本方法の他の実施形態において、対象は、哺乳類またはヒトである。
【0227】
本方法の他の実施形態において、炎症性疾患または障害は、特発性炎症性疾患もしくは障害、慢性炎症性疾患もしくは障害、急性炎症性疾患もしくは障害、自己免疫疾患もしくは障害、感染性疾患もしくは障害、炎症性悪性疾患もしくは障害、炎症性移植関連疾患もしくは障害、炎症性変性疾患もしくは障害、過敏症と関連した疾患もしくは障害、炎症性心血管疾患もしくは障害、炎症性脳血管疾患もしくは障害、末梢血管疾患もしくは障害、炎症性腺性疾患もしくは障害、炎症性胃腸疾患もしくは障害、炎症性皮膚疾患もしくは障害、炎症性肝疾患もしくは障害、炎症性神経疾患もしくは障害、炎症性筋骨格疾患もしくは障害、炎症性腎疾患もしくは障害、炎症性生殖疾患もしくは障害、炎症性全身性疾患もしくは障害、炎症性結合組織疾患もしくは障害、壊死、炎症性インプラント関連疾患もしくは障害、炎症性加齢プロセス、免疫不全疾患もしくは障害、または炎症性肺疾患もしくは障害である。
【0228】
いくつかの実施形態において、過敏症は、I型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時型過敏症、抗体媒介性過敏症、免疫複合体媒介性過敏症、Tリンパ球媒介性過敏症、遅延型過敏症、ヘルパーTリンパ球媒介性過敏症、細胞傷害性Tリンパ球媒介性過敏症、TH1リンパ球媒介性過敏症、またはTH2リンパ球媒介性過敏症である。
【0229】
他の実施形態において、炎症性心血管疾患または障害は、閉塞性疾患もしくは障害、粥状動脈硬化、心臓弁疾患、狭窄症、再狭窄、ステント内狭窄、心筋梗塞、冠動脈疾患、急性冠症候群、うっ血性心不全、狭心症、心筋虚血、血栓症、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群、抗第VIII因子自己免疫疾患もしくは障害、壊死性小型血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、微量免疫型巣状壊死性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗体誘導性心不全、血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、心臓自己免疫、シャーガス病もしくは障害、または抗ヘルパーTリンパ球自己免疫である。
【0230】
他の実施形態において、炎症性脳血管疾患または障害は、脳卒中、脳血管炎症、脳出血、または椎骨動脈不全である。
【0231】
他の実施形態において、末梢血管疾患または障害は、壊疽、糖尿病性脈管障害、虚血性腸疾患、血栓症、糖尿病性網膜症、または糖尿病性腎症である。
【0232】
いくつかの実施形態において、自己免疫疾患または障害は、慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強皮症、混合性結合組織疾患、結節性多発動脈炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、橋本病、乾癬、原発性粘液水腫、悪性貧血、重症筋無力症、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、ブドウ膜炎、血管炎、またはヘパリン起因性血小板減少症である。
【0233】
いくつかの実施形態において、炎症性腺性疾患または障害は、膵臓疾患もしくは障害、I型糖尿病、甲状腺疾患もしくは障害、グレーブス病もしくは障害、甲状腺炎、特発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎、またはI型多腺性自己免疫症候群である。
【0234】
いくつかの実施形態において、炎症性胃腸疾患または障害は、大腸炎、回腸炎、クローン病、慢性炎症性腸疾患、炎症性腸症候群、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、潰瘍性大腸炎、潰瘍、皮膚潰瘍、褥瘡、胃潰瘍、消化管潰瘍、口腔内潰瘍、鼻咽頭潰瘍、食道潰瘍、十二指腸潰瘍、または胃腸潰瘍である。
【0235】
いくつかの実施形態において、炎症性皮膚疾患または障害は、ざ瘡、自己免疫性水疱性皮膚症もしくは障害、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、接触性皮膚炎、または薬疹である。
【0236】
いくつかの実施形態において、炎症性肝疾患または障害は、自己免疫性肝炎、肝硬変、または胆汁性肝硬変である。
【0237】
いくつかの実施形態において、炎症性神経疾患または障害は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、重症筋無力症、運動ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、自己免疫性ニューロパチー、ランバート・イートン筋無力症症候群、傍腫瘍性神経疾患もしくは障害、傍腫瘍性小脳萎縮症、非傍腫瘍性スティフ・マン症候群、進行性小脳萎縮症、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、自己免疫性多腺性内分泌不全症、異常免疫性(dysimmune)ニューロパチー、後天性神経性筋強直症、多発性関節拘縮症、ハンチントン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳卒中、炎症性網膜疾患もしくは障害、炎症性眼疾患もしくは障害、視神経炎、海綿状脳症、片頭痛、頭痛、群発性頭痛、またはスティフ・マン症候群である。
【0238】
いくつかの実施形態において、炎症性結合組織疾患または障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、自己免疫性筋炎、原発性シェーグレン症候群、平滑筋自己免疫疾患もしくは障害、筋炎、腱炎、靱帯炎、軟骨炎、関節炎、滑膜炎、手根管症候群、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、骨格炎、自己免疫性耳疾患もしくは障害、または自己免疫性内耳疾患もしくは障害である。
【0239】
いくつかの実施形態において、炎症性腎疾患または障害は、自己免疫性間質性腎炎である。
【0240】
いくつかの実施形態において、炎症性生殖疾患または障害は、反復流産、卵巣嚢胞、または月経関連疾患もしくは障害である。
【0241】
いくつかの実施形態において、炎症性全身性疾患または障害は、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、または悪液質である。
【0242】
いくつかの実施形態において、感染性疾患または障害は、慢性感染性疾患もしくは障害、亜急性感染性疾患もしくは障害、急性感染性疾患もしくは障害、ウイルス性疾患もしくは障害、細菌性疾患もしくは障害、原虫性疾患もしくは障害、寄生虫性疾患もしくは障害、真菌性疾患もしくは障害、マイコプラズマ疾患もしくは障害、壊疽、敗血症、プリオン病もしくは障害、インフルエンザ、結核、マラリア、後天性免疫不全症候群、または重症急性呼吸器症候群である。
【0243】
いくつかの実施形態において、炎症性移植関連疾患または障害は、移植片拒絶、慢性移植片拒絶、亜急性移植片拒絶、急性移植片拒絶、超急性移植片拒絶、または移植片対宿主病もしくは障害である。
【0244】
いくつかの実施形態において、インプラントは、義装具インプラント、乳房インプラント、シリコーンインプラント、歯科インプラント、陰茎インプラント、心臓インプラント、人工関節、骨折修復装置、骨置換インプラント、薬物送達インプラント、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓、人工心臓弁、薬物放出インプラント、電極、または人工呼吸器の管である。
【0245】
いくつかの実施形態において、炎症性肺疾患または障害は、喘息、アレルギー性喘息、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患もしくは障害、サルコイドーシス、または気管支炎である。
【0246】
他の実施形態において、炎症性疾患または障害は、線維症である。
【0247】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患または障害は、慢性自己免疫性疾患または慢性炎症性疾患を罹患している対象における血管炎症である。いくつかの実施形態において、慢性自己免疫性疾患または慢性炎症性疾患は、乾癬である。いくつかの実施形態において、血管炎症は、心血管疾患、末梢血管疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患、腎動脈狭窄症、虚血性疾患、または大動脈瘤と関連している。いくつかの実施形態において、血管炎症は、虚血性心疾患、粥状動脈硬化、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、または脳卒中と関連している。他の実施形態において、血管炎症は、頸動脈の炎症である。他の実施形態において、血管炎症は、大動脈の炎症である。
【0248】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患または障害は、インプラントと関連した炎症である。いくつかの実施形態において、インプラントと関連した炎症は、局所的炎症または全身性炎症反応である。いくつかの実施形態において、インプラントは、シリコーン、生理食塩水、金属、プラスチック、または重合体インプラントである。いくつかの実施形態において、インプラントは、美容インプラント、義装具インプラント、皮下インプラント、経皮インプラント、骨置換インプラント、または骨折修復装置である。いくつかの実施形態において、インプラントは、薬物送達インプラントまたは薬物放出インプラントである。他の実施形態において、インプラントは、人工関節、人工心臓、人工心臓弁、人工睾丸、乳房インプラント、歯科インプラント、眼インプラント、蝸牛インプラント、陰茎インプラント、心臓インプラント、カテーテル、埋込型排尿調節装置、ペースメーカー、電極、ヘルニア支持装置、または人工呼吸器の管である。
【0249】
他の実施形態において、炎症性疾患または障害は、肝炎または脂肪性肝炎である。いくつかの実施形態において、炎症性疾患または障害は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態において、炎症性疾患または障害は、糸球体腎炎である。いくつかの実施形態において、炎症性疾患または障害は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)である。
【0250】
炎症は、骨代謝に影響を及ぼし、骨粗鬆症を誘発するため、骨粗鬆症もまた、本発明の炎症性疾患または障害の一例である。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、炎症性疾患または障害は、骨粗鬆症である。
【0251】
1種または複数種の細胞活性を阻害または防止する方法
本発明の実施形態は、細胞における1種または複数種の活性を阻害または防止する方法にも関し、本方法は、MOSPD2の阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、その必要がある対象に、MOSPD2の阻害剤の治療有効量を投与することを含む。
【0252】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、本明細書中記載される抗体または抗体の抗原結合断片である。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、抗体抗原平衡解離定数(K
D)が約10
−6M〜約10
−12M、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−7M〜約10
−12M、10
−8M〜約10
−12M、約10
−9M〜約10
−12M、約10
−10M〜約10
−12M、約10
−11M〜約10
−12M、約10
−6M〜約10
−11M、約10
−7M〜約10
−11M、約10
−8M〜約10
−11M、約10
−9M〜約10
−11M、約10
−10M〜約10
−11M、約10
−6M〜約10
−10M、約10
−7M〜約10
−10M、約10
−8M〜約10
−10M、約10
−9M〜約10
−10M、約10
−6M〜約10
−9M、約10
−7〜約10
−9、約10
−8M〜約10
−9M、約10
−6M〜約10
−8、または約10
−7M〜約10
−8M)であることが可能である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、K
Dが約10
−6M、約10
−7M、約10
−8M、約10
−9M、約10
−10M、約10
−11M、または約10
−12Mである抗体または抗体の抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、K
Dは、Scatchard分析、表面プラズモン共鳴、または本明細書中記載される他の方法により、いくつかの実施形態において、37℃で決定される。
【0253】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、MOSPD2に、約10
31/Ms〜約10
61/Ms、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
31/Ms〜約10
51/Ms、約10
41/Ms〜約10
51/Ms、約10
41/Ms〜約10
61/Ms、約10
51/Ms〜約10
61/Ms、または約10
31/Ms〜約10
41/Ms)のK
onで結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
onが約10
−31/Ms、約10
−41/Ms、約10
−51/Ms、または約10
−61/Msである。
【0254】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、MOSPD2に、約10
−31/s〜約10
−61/s、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約10
−31/s〜約10
−51/s、約10
−41/s〜約10
−51/s、約10
−41/s〜約10
−61/s、約10
−51/s〜約10
−61/s、または約10
−31/s〜約10
−41/s)のK
offで結合する。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、K
offが約10
−31/s、約10
−41/s、約10
−51/s、または約10
−61/sである。
【0255】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約1μg/ml〜約10μg/ml、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約2μg/ml〜約10μg/ml、約3μg/ml〜約10μg/ml、約4μg/ml〜約10μg/ml、約5μg/ml〜約10μg/ml、約6μg/ml〜約10μg/ml、約7μg/ml〜約10μg/ml、約8μg/ml〜約10μg/ml、約9μg/ml〜約10μg/ml、約1μg/ml〜約9μg/ml、約2μg/ml〜約9μg/ml、約3μg/ml〜約9μg/ml、約4μg/ml〜約9μg/ml、約5μg/ml〜約9μg/ml、約6μg/ml〜約9μg/ml、約7μg/ml〜約9μg/ml、約8μg/ml〜約9μg/ml、約1μg/ml〜約8μg/ml、約2μg/ml〜約8μg/ml、約3μg/ml〜約8μg/ml、約4μg/ml〜約8μg/ml、約5μg/ml〜約8μg/ml、約6μg/ml〜約8μg/ml、約7μg/ml〜約8μg/ml、約1μg/ml〜約7μg/ml、約2μg/ml〜約7μg/ml、約3μg/ml〜約7μg/ml、約4μg/ml〜約7μg/ml、約5μg/ml〜約7μg/ml、約6μg/ml〜約7μg/ml、約1μg/ml〜約6μg/ml、約2μg/ml〜約6μg/ml、約3μg/ml〜約6μg/ml、約4μg/ml〜約6μg/ml、約5μg/ml〜約6μg/ml、約1μg/ml〜約5μg/ml、約2μg/ml〜約5μg/ml、約3μg/ml〜約5μg/ml、約4μg/ml〜約5μg/ml、約1μg/ml〜約4μg/ml、約2μg/ml〜約4μg/ml、約3μg/ml〜約4μg/ml、約1μg/ml〜約3μg/ml、約2μg/ml〜約3μg/ml、または約1μg/ml〜約2μg/ml)である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、または約10μg/mlである。
【0256】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約10mg/kg〜約40mg/kg、またはそれらの値のうちの任意の範囲(例えば、約15mg/kg〜約40mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約25mg/kg〜約40mg/kg、約30mg/kg〜約40mg/kg、約35mg/kg〜約40mg/kg、約10mg/kg〜約35mg/kg、約15mg/kg〜約35mg/kg、約20mg/kg〜約35mg/kg、約25mg/kg〜約35mg/kg、約30mg/kg〜約35mg/kg、約10mg/kg〜約30mg/kg、約15mg/kg〜約30mg/kg、約20mg/kg〜約30mg/kg、約25mg/kg〜約30mg/kg、約10mg/kg〜約25mg/kg、約15mg/kg〜約25mg/kg、約20mg/kg〜約25mg/kg、約10mg/kg〜約20mg/kg、約15mg/kg〜約20mg/kg、または約10mg/kg〜約15mg/kg)である。他の実施形態において、MOSPD2の阻害剤は、抗体または抗体の抗原結合断片であり、治療有効量は、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、または約40mg/kgである。
【0257】
いくつかの実施形態において、MOSPD2の阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、MOSPD2(例えば、ヒトMOSPD2)の1種または複数種の活性(例えば、MOSPD2発現、炎症細胞遊走(例えば、白血球または単球の遊走)、化学走性(例えば、白血球または単球の化学走性)、ケモカインシグナル伝達経路、EGF受容体リン酸化、ERKリン酸化、AKTリン酸化、及び/またはFAKリン酸化)の、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす。いくつかの実施形態において、ヒト対象へのMOSPD2阻害剤の投与は、ヒトMOSPD2の1種または複数種の活性の少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはそれ以上)の阻害を引き起こす。
【0258】
いくつかの実施形態において、1種または複数種の活性は、以下のうちの1種または複数種である:MOSPD2発現、炎症細胞の遊走、化学走性、ケモカインシグナル伝達経路、ERKリン酸化、AKTリン酸化、及び/またはFAKリン酸化。いくつかの実施形態において、これらの活性のうち少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、または全てが阻害される。
【0259】
いくつかの実施形態において、少なくとも白血球化学走性及びケモカインシグナル伝達経路が阻害される。他の実施形態において、ケモカインシグナル伝達経路の阻害は、ERKリン酸化及び/またはAKTリン酸化の阻害である。他の実施形態において、化学走性は、2種以上のケモカインまたはケモカイン受容体により誘導される。
【0260】
いくつかの実施形態において、炎症細胞は、例えば、白血球、顆粒球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、または肥満細胞である。
【0261】
他の実施形態において、化学走性は、炎症細胞、例えば、白血球または単球などと関連する。
【0262】
いくつかの実施形態において、ケモカインは、CCL14、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CXCL12、CXCL13、CXCL−8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL10、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17、またはCCL22である。他の実施形態において、遊走または化学走性は、RANTES、MCP−3、MCP−1、及びSDF−1の1種または複数種により誘導される。
【実施例】
【0263】
ここで以下の実施例を参照して、上記の説明と共に、非限定的な様式で本発明のいくつかの実施形態を例示する。
【0264】
材料及び方法
MOSPD2阻害
U937単球細胞株(CRL−1593.2)を、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)(Manassas、VA)から入手した。細胞(2ml中、2×10
6個)を、15ml試験管に入れた。対照レンチウイルス粒子(2×10
5個のウイルス粒子)(SHC202V、Sigma、Israel)またはMOSPD2 sh−RNAを含有するレンチウイルス粒子(2×10
6個のウイルス粒子、Sigma)を細胞に添加し、次いでこれらを、8μg/mlのポリブレン(Sigma)の存在下、60分間、2000rpm、室温で遠心した。人工shRNAヘアピン配列及びMOSPD2上のそれらに対応する標的配列を、配列番号9〜14に提示する。次いで、細胞を、グルタミン、10%ウシ胎仔血清(FCS)、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI培地の入った6ウェルプレートに播種した(これらは全てBiological Industries(Beit Haemek、Israel)製)。72時間後、形質導入された細胞を選択するために、ピューロマイシン(4μg/ml、Sigma)を含有する新たな培地を加えた。
【0265】
細胞遊走トランスウェルアッセイ
ケモカイン誘導性細胞遊走を試験するため、RANTES(CCL5、100ng/ml)、MCP−1(CCL2、100ng/ml)、MCP−3(CCL7、100ng/ml)、またはSDF−1(CXCL12、25ng/ml)(PeproTech、Israel)を、0.5%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したRPMI−1640培地に溶解させ、QCM24ウェル、5mm孔、遊走アッセイプレート(Corning−Costar、Corning、NY)の下段チャンバーに入れた。U937細胞(3×10
5個)を、対照レンチウイルス粒子またはMOSPD2 sh−RNA(sh−MOSPD2)含有レンチウイルス粒子で形質導入し、上段チャンバーに播種し、2〜4時間インキュベートした。続いて、下段の区画に遊走した細胞数を、蛍光標識細胞分取法(FACS)により測定した。
【0266】
ウエスタンブロット法
sh−対照またはsh−MOSPD2レンチウイルスで形質導入されたU937細胞(10
6個)を、0.5%FCS(Biological Industries、Beit Haemek、Israel)を含有するRPMI培地中で3時間飢餓状態に置き、次いでRANTES(100ng/ml)、MIP−1α(100ng/ml)、MCP−3(100ng/ml)、またはSDF−1(25ng/ml)で5分間活性化した。細胞を、1:100のジチオトレイトール(DTT)、ホスファターゼ、及びプロテアーゼ阻害剤(Thermo Scientific)を含有する溶解緩衝液で洗浄及び再懸濁した。試料を、プレキャストCriterionTGXゲル(Bio−Rad、Hemel Hempstead、UK)にロードし、ニトロセルロース膜に移した。ブロットを、トリス緩衝生理食塩水・Tween20(TBST)中の5%乳またはウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロッキングし、続いて一次抗体及び二次抗体と共にインキュベートした。ECLキット(Thermo Scientific)を使用して、膜を現像した。免疫ブロッティングのため、以下の抗体を使用した。
【0267】
一次抗体:抗チューブリン(1:4000)抗体及び抗リン酸化細胞外制御キナーゼ(p−ERK1/2)(Thr183及びTyr185、1:4000)抗体を、Sigma(Israel)から購入した。抗リン酸化AKT(Ser473、1:1000)抗体を、Cell Signalingから購入した。抗熱ショックタンパク質90(HSP90)(1:1000)抗体を、Santa Cruz Biotechnology(Dallas、TX)から購入した。
【0268】
二次抗体:西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)ロバ抗ウサギ(1:5000)抗体及びHRPヤギ抗マウス(1:5000)抗体を、Jackson ImmunoResearch(West Grove、PA)から購入した。
【0269】
Q−PCR
MOSPD2阻害を測定するため、RNeasyミニキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、対照レンチウイルス粒子またはsh−MOSPD2含有レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞からRNAを抽出した。cDNA調製のため、2μgのRNAを、qScript反応ミックス及びqScript逆転写酵素(Quanta Bioscience、Gaithersburg、MD)と混合した。反応物をサーマルサイクラー(BioRad、Hercules、CA)に入れ、メーカーの取扱説明書に従ってランプログラムを設定した。ヒトMOSPD2用プライマーのセット、RNAレベルを正規化するための28S(Biosearch Technologies、Petaluma、CA)、及びSYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems、Warrington、UK)を用いて、Applied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステム(Grand Island、NY)でリアルタイムPCR反応を行った。
【0270】
MOSPD2形質移入
HEK293細胞を、jetPRIME形質移入試薬(Polyplus transfection、France)を用いて、空のプラスミドまたはヘマグルチニン(HA)タグ付ヒトMOSPD2をコードするプラスミドで48時間形質移入した。形質移入効率を、抗HA−PE(miltenyi Biotec、Germany)抗体を用いて、フローサイトメトリーにより測定した。
【0271】
ヒト単球の単離
Sheba Medical Center(Ramat Gan、Israel)の施設内倫理委員会に従って、健康な男性提供者から静脈血試料を得た。50mlのLeucosep試験管(Greiner Bio−One、Germany)を用いて、末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll−Paque PLUS(GE Healthcare、Sweden)上に単離した。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Beit Haemek、Israel)中で洗浄し、PBS及び0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する緩衝液中、ヒトCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)とともに、4℃で15分間インキュベートした。
【0272】
細胞下分画
細胞内タンパク質分画キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、メーカーの取扱説明書に従って細胞区画の分画を行った。
【0273】
細胞増殖
対照レンチウイルス粒子またはsh−MOSPD2含有レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞を、グルタミン、10%FCS、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI培地を含む6ウェルプレートに播種した(1ウェルあたり10
4個)(これらは全てBiological Industries(Beit Haemek、Israel)製)。細胞を、3日間連続で24時間ごとに3つ組のウェルでFACSにより計数した。
【0274】
実施例1
MOSPD2とケモカイン誘導性単球遊走
単球遊走におけるMOSPD2の役割を評価するため、MOSPD2 mRNAの3つの異なる領域に向けられたsh−RNAを含有するレンチウイルス粒子(sh−MOSPD2)を用いて、材料及び方法のセクションで記載したとおりU937細胞においてMOSPD2発現をサイレンシングした。細胞中のMOSPD2 mRNA発現を、定量的PCR(Q−PCR)を用いて評価し、対照としてのβ−アクチン発現に対して正規化した。
図1は、試験したsh−MOSPD2全てが、ヒトMOSPD2のmRNA発現レベルを大幅に低下させたことを示す。次いで、対照レンチウイルス粒子またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞を、トランスウェル遊走アッセイを用いて、ケモカイン、すなわちRANTESに向かう遊走について試験した。
図2及び
図3は、RANTESにより誘導された細胞遊走が、MOSPD2がサイレンシングされていない細胞と比較して、sh−MOSPD2で形質導入された細胞において、有意に阻害されたことを示す。
【0275】
実施例2
MOSPD2、ERKリン酸化、及びAKTリン酸化
ERK及びAKTのリン酸化に対するMOSPD2阻害の効果を試験することにより、ケモカイン誘導性シグナル伝達経路の活性化に対するMOSPD2阻害の効果を測定した。対照レンチウイルス粒子またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞を、RANTESで2分間または5分間処理し、次いで、ウエスタンブロットによりリン酸化ERK及びAKTについて分析した。熱ショックタンパク質90(HSP90)を、ローディング対照として用いた。
図4は、MOSPD2の阻害が、ERK及びAKTのRANTES誘導性リン酸化をほぼ完全に消失させたことを示す。
【0276】
実施例3
MOSPD2とケモカイン受容体駆動性シグナル伝達
他のケモカインに対するMOSPD2阻害の効果も試験した。対照レンチウイルス粒子またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞を、トランスウェルアッセイでMCP−3、MCP−1、RANTES、及びSDF−1に向かう遊走について試験し、ウエスタンブロットによりリン酸化ERK及びAKTのレベルについて試験した。
図5は、MOSPD2阻害が、全ての試験したケモカインにより誘導される細胞遊走を有意に阻害したことを示す。さらに、
図6は、MOSPD2の阻害が、全ての試験したケモカインにより誘導されるERK及びAKTのリン酸化をほぼ完全に消失させたことを示す。そのため、遊走及びシグナル伝達に対するMOSPD2阻害の効果は、一つのケモカインまたはケモカイン受容体経路に限定されない。
【0277】
実施例4
MOSPD2とU937細胞増殖
U937細胞増殖に対するMOSPD2阻害の効果も試験した。対照レンチウイルス粒子またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞を、方法及び材料で記載したとおりに播種し、3日間連続して24時間ごとに計数した。
図7は、MOSPD2阻害が、U937増殖に影響しなかったことを示し、このことは、遊走及びシグナル伝達に対するMOSPD2阻害の効果が、ケモカイン受容体の下流の細胞内プロセスの阻害により生じるのであって、単球活性全般を阻害することによるのではないことを示唆する。
【0278】
実施例5
抗MOSPD2抗体
抗MOSPD2ポリクローナル抗体を、以下の方法に従って作製した。
【0279】
材料及び方法
ヘマグルチニン(HA)タグ付組換えヒトMOSPD2(HA−rhMOSPD2)の作製及び精製
EcoRI及びXbaI制限部位を用いて、全長ヒトMOSPD2 cDNAを、レンチウイルスプラスミドベクターpLVX−EF1α−IRES−Puro(Clonetech、CA)に挿入した。EcoRI制限部位を用いて、HAタグ
をコードするオリゴヌクレオチドを、MOSPD2のN末端領域に挿入した。形質導入のため、A2058黒色腫細胞(ATCC CRL−11147、VA)を、8μg/mlのポリブレン(Sigma、Israel)及びHA−rhMOSPD2発現ベクター含有レンチウイルス粒子の存在下、60分間、2000rpmで、室温で回転させた。次いで、細胞を6ウェルプレートに播種した。72時間後、形質導入された細胞を選択するために、ピューロマイシン(4μg/ml、Sigma、Israel)を含有する新たな培地を加えた。HA−rhMOSPD2を精製するため、A2058形質導入細胞を、M−PER哺乳類タンパク質抽出試薬(Thermo Scientific)で溶解させ、抗HAアガロースビーズ(Thermo Scientific)に通した。グリシンまたはチオシアン酸ナトリウムを用いて、ビーズからHA−rhMOSPD2を溶出させ、続いてPBSに対して十分に透析した。
【0280】
α−MOSPD2ポリクローナル抗体の作製及び単離
ウサギを、完全フロイントアジュバントに乳化させたHA−rhMOSPD2約0.5mgで免疫化し、続いて3週間ごとに、不完全フロイントアジュバントに乳化させたHA−rhMOSPD2約0.25mgを用いた追加免疫を3回行った。各追加免疫の1週間後に血清を収集して、抗体免疫原性及び力価を評価した。タンパク質A/Gビーズ(SantaCruz、CA)を用いて、α−MOSPD2抗体を血清から単離した。
【0281】
結果
ウサギポリクローナルα−MOSPD2抗体は、内因性ヒトMOSPD2を検出し沈殿させる
単離したα−MOSPD2ポリクローナル抗体を、それらの内因性ヒトMOSPD2を検出し沈殿させる能力について評価した。対照またはsh−MOSPD2レンチウイルス粒子で形質導入されたU937細胞から細胞溶解液を調製した。試料を、単離したα−MOSPD2抗体(1:5000に希釈)を用いてウエスタンブロットにより分析した。HSP90の発現を、ローディング対照として測定した。U397細胞溶解液の免疫沈降も、単離したα−MOSPD2抗体または対照としてのウサギIgG(10μg)を用いて行った。得られる沈殿物を、単離したα−MOSPD2抗体を用いて免疫ブロッティングし、続いて、ヤギ抗ウサギ抗体−HRP(1:5000)とともにインキュベーションすることにより分析した。
図8は、単離したα−MOSPD2抗体が、U937細胞において内因的に発現したMOSPD2を容易に検出し(
図8A)免疫沈降させる(
図8B)ことを示す。
【0282】
実施例6
MOSPD2細胞内局在性
MOSPD2の細胞内局在性を、方法及び材料で記載したとおりに空プラスミドまたはHAタグ付ヒトMOSPD2プラスミドで形質移入されたHEK293細胞を用いて調べた。次いで、HEK293細胞を、表面染色のみを可能にする条件下(洗浄剤なし)で、抗HA抗体で染色した。
図9は、HAタグ付ヒトMOSPD2プラスミドで形質移入された細胞が、細胞形質膜上に該タンパク質を発現したことを示す。内因性MOSPD2が細胞膜にも局在化できるかどうかを決定するため、初代ヒトCD14単球から細胞内画分を単離し、MOSPD2の存在について試験した(方法及び材料を参照)。
図10の結果は、MOSPD2が膜で見出されること、及び細胞質画分では見出されないことを示す。ERK及びMHCクラスI抗体を用いて、それぞれ、細胞質画分及び膜画分の純度を実証した。
【0283】
実施例7
VB−201はMOSPD2を阻害する
VB−201及びVB−221の標識化
VB−201及びVB−221を、以下のとおりビオチンで標識した。VB−201、VB−221、及び卵白アルブミン(OVA、Sigma、Israel)を、0.1MのMES緩衝液(Thermo Scientific、Rockford、IL)に溶解させ、EDC[1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl](Thermo Scientific)を用いて、100(VB−201/VB−221):1(OVA):240(EDC)のモル比で、室温で2〜3時間コンジュゲートさせた。その後、試料を10kDa透析カセット(Thermo Scientific)に移し、PBSに対して一晩透析した。次いで、卵白アルブミンが結合したVB−201(OB201)及びVB−221(OB221)を、EDCを用いて、1(OB201/OB221):100(アミン−PEG2−ビオチン):700(EDC)のモル比で、アミン−PEG2−ビオチンとコンジュゲートさせた(0.1MのMES緩衝液中)。反応を、室温で2〜3時間進行させ、その後、試料を再び10kDa透析カセットに移して、PBSに対して一晩透析した。
【0284】
フローサイトメトリーによるVB−201及びVB−221の細胞表面結合特異性
ストレプトアビジン−APC(eBioscience、San Diego、CA)を用いて、フローサイトメトリー実験で、標識化VB−201またはVB−221の結合を検出した。
【0285】
沈殿
1:100のプロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤を含有する1%NP−40溶解緩衝液を用いて細胞を溶解させ、続いて氷上で20分間インキュベートし、最大速度で15分遠心した。試料を、溶媒、OB201、またはOB221とともに、ローテ―ター中4℃で一晩インキュベートした。ストレプトアビジンアガロースビーズ(Sigma、Israel)を2時間加えた。DTTを含まない溶解緩衝液を用いて、室温で10分間タンパク質の溶出を行った。試料のロード、移行、及び免疫ブロッティングを、上記のとおり行った。
【0286】
結果
VB−201は、表面に発現したMOSPD2と結合する
VB−201は、インビトロ及びインビボで単球の遊走を阻害することが、既に示されていた。しかしながら、VB−201の誘導体であるVB−221は、ヒト単球において、ケモカイン誘導性のシグナル伝達及び遊走を阻害しなかった。標識化VB−201及びVB−221を用いて、ヒト単球由来のタンパク質を沈殿させ、質量分析法により差次的表示を調べた。質量分析結果から、MOSPD2は、VB−201に強く結合するが、VB−221にはそうではないことが明らかとなった。
【0287】
これらの結果をさらに検証するため、標識化VB−201及びVB−221をヒトCD14単球由来の細胞溶解物に使用した。次いで、試料を、抗MOSPD2及びTLR2でプローブ標識した。VB−201及びVB−221は、同等な強度でTLR2を沈殿させたものの、VB−201は、VB−221よりも顕著に強くMOSPD2を沈殿させた(
図11)。これらの結果も、VB−201がMOSPD2と結合することを示す。
【0288】
VB−201が、細胞表面上に発現したときの天然型MOSPD2と結合できるかどうかを評価するための試験も行った。すなわち、HEK293細胞を、HAタグ付ヒトMOSPD2をコードするプラスミドで形質移入し、次いで、標識化VB−201またはVB−221で染色した。
図12は、MOSPD2を発現する細胞を標識化VB−201が大いに染色した(HA陽性)のに対し、標識化VB−221では弱い染色しか検出されなかったことを示す。まとめると、これらの結果は、VB−201は、細胞表面に発現したヒトMOSPD2と結合できることを示す。
【0289】
実施例8
抗MOSPD2(Fab’)
2モノクローナル抗体の作製
抗MOSPD2(Fab’)
2モノクローナル抗体(mAb)は、HuCAL PLATINUM(登録商標)プラットフォーム(Bio−Rad AbD Serotec、GmnH)を用いて得た。このプラットフォームは、一揃いのファージディスプレイされたヒトFabを含有する。
【0290】
手短に述べると、ヒトFcと融合したMOSPD2の細胞外領域の組換えタンパク質を、固相支持体に固定した。ファージ粒子上に提示されたHuCAL(登録商標)ライブラリーを、固定された抗原とともにインキュベートした。全面洗浄により非特異的抗体を除去し、還元剤を加えることにより特異的抗体ファージを溶出させた。抗体DNAをプールとして単離し、大腸菌(E.coli)発現ベクターにサブクローニングして、二価F(ab’)
2mAbを作製した。コロニーをピックアップして、マイクロタイタープレートで成長させた。培養物を溶解させて、抗体分子を遊離させ、ELISA及びFACSにより特異的抗原結合についてスクリーニングした。一工程アフィニティークロマトグラフィーを用いて特有抗体を発現させて精製し、次いで、特異性についてELISA及びFACSにより再度試験した。
【0291】
図13は、MOSPD2を過剰発現する細胞との結合についての一次スクリーニング後に同定された17種の抗MOSPD2 F(ab’)
2モノクローナル抗体クローンを列挙する。MOSPD2結合についてELISAでクローンをさらに分析した結果、バックグラウンドの5倍超の値を有するクローンが12種同定された(
図13中の
*)。
【0292】
実施例9
抗MOSPD2 F(ab’)
2 mAbは、細胞で過剰発現したヒトMOSPD2と結合する
A2058黒色腫細胞を、HAタグ付ヒトMOSPD2で形質移入して、MOSPD2を過剰発現する細胞を作製した。
【0293】
次いで、実施例8で同定された12種の抗体クローンとMOSPD2との結合を、これらの細胞を用いてフローサイトメトリーにより試験した。具体的には、10
5個の細胞を、100μlのFACS緩衝液(PBS+2%FCS+0.02%アジ化ナトリウム)中、2.5μgのF(ab’)
2 mAbとともに、4℃で1時間、インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、Alexa−Fluor647コンジュゲート(Fab’)
2ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)
21:200(カタログ番号109−606−097、Jackson Immunoresearch、PA)を用いて、4℃で30分間染色した。細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、FACS−Calibur装置で分析した。
【0294】
全てのクローンが、細胞を陽性に染色した。2種のクローンについて代表的な染色を
図14A〜
図14Bに示す。実施例8でELISAを用いて陽性クローンとして同定されなかったクローンは、陰性対照として用いた。
【0295】
実施例10
MOSPD2の細胞発現特異性及び局在性の明確化
異なる免疫細胞サブ集団の分析から、MOSPD2は、Tリンパ球及びBリンパ球よりもCD14+単球で優勢に発現することが示された(
図15A)。MOSPD2 mRNA発現レベルを測定するため、RNeasyミニキット(Qiagen、ValenVBa、CA)を用いて、RNAを細胞から抽出した。cDNA調製のため、2μgのRNAをqScript反応ミックス及びqScript逆転写酵素(Quanta Bioscience、Gaithersburg、MD)と混合した。反応物を、サーマルサイクラー(BioRad、Hercules、CA)に入れ、メーカーの取扱説明書に従ってランをプログラムした。ヒトMOSPD2用プライマーのセット、RNAレベルを正規化するための28S(BIOSEARCH TECHNOLOGIES、Petaluma、CA)、及びSYBR Green PCR Masterミックス(Applied Biosystems、Warrington、UK)を用いて、リアルタイムPCR反応を、Applied Biosystems7300リアルタイムPCRシステム(Grand Island、NY)で行った。
【0296】
MOSPD2は、1つの膜貫通領域及び1残基長の細胞内テイルを持つ形質膜タンパク質であると予想される。細胞区画の分画、及びヒト単球の免疫蛍光染色、及びHAタグ付MOSPD2を過剰発現するように形質移入されたHEK293細胞のフローサイトメトリー(上記の方法に従って行われる)から、MOSPD2は、ヒト単球の形質膜上に発現する細胞表面タンパク質であることが、明らかとなった(それぞれ、
図15B〜
図15D)。
【0297】
実施例11
MOSPD2は、炎症組織に浸潤した単球で発現する
ホルマリン固定した組織を脱水し、パラフィンに包埋し、4μmの切片にした。免疫染色は、Benchmark XT染色モジュール(Ventana Medical Systems)で十分に較正した。切片を脱ロウし再水和させた後、それぞれ1:80及び1:100に希釈した抗CD163(Cell Marque、Rocklin、USA、MRQ−26)または抗MOSPD2を加えて、40分間静置した。抗CD163染色は、UltraView汎用アルカリホスファターゼ赤色検出キット(Ventana Medical Systems、760−501)を用いて検出し、抗MOSPD2染色は、UltraView汎用DAB検出キット(Ventana Medical Systems、760−500)を用いて検出した。二重染色を適用した場合、MOSPD2染色を先に行い、続いてCD163染色を行った。スライドを、ヘマトキシリン(Ventana Medical Systems)で対比染色した。自動染色のランが完了した後、スライドを70%エタノール、95%エタノール、及び100%エタノールに順次入れ、各回10秒間脱水を行った。カバーを乗せる前に、切片を10秒間キシレンに入れて透徹し、エンテランを用いてマウントした。MOSPD2及びCD163染色したスライドをOlympus BX51顕微鏡で観察した。画像は、Nikon Digital Sightカメラ及びNIS Elements Imagingソフトウェアを用いて撮影した。
【0298】
図16A〜
図16Cに示すとおり、MOSPD2は、様々な炎症組織に浸潤した単球で発現する。
図16Aは、関節リウマチ患者由来の滑膜を、CD163、MOSPD2、またはCD163及びMOSPD2両方について染色したものを示す。
図16Bは、アテローム硬化性頸動脈組織を、CD163、MOSPD2、またはCD163及びMOSPD2両方について染色したものを示す。
図16Cは、浸潤性乳管癌乳房組織をMOSPD2について染色したものを示す。濃い色の矢印は、腫瘍細胞の陽性染色を示す。薄い色の矢印は、浸潤性単球の染色を示す。
【0299】
実施例12
MOSPD2は、IFN−ガンマ誘導性活性化またはPKC媒介性活性化に影響を及ぼさない
MOSPD2を標的とすることは、単球の遊走以外の生体機能を損ねなかった。U937単球株の細胞を、上記のとおりsh−レンチ対照またはsh−レンチMOSPD2ウイルス粒子で形質導入し、IFN−ガンマまたはPMAで処理した。処理した細胞のウエスタンブロット分析は、MOSPD2のサイレンシングが、下流のシグナル伝達マーカーのIFN−ガンマまたはPMAによるリン酸化を変更しなかったことを示した(それぞれ、
図17A及び
図17B)。これらの結果は、MOSPD2が単球遊走を特異的に促進することを示唆する。
【0300】
実施例13
抗MOSPD2抗体のエピトープマッピング
抗MOSPD2抗体がヒトMOSPD2上で特異的に結合する可能性があるエピトープ(複数可)を決定するため、本明細書中記載されるとおり、ストレプトアビジン(SA)チップにあらかじめ固定されたSAを介してN末端ビオチン化MOSPD2断片を捕捉し、MOSPD2表面全体にわたって測定される抗MOSPD2抗体の結合動態を測定することにより(BIAcore(登録商標)3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、Biacore、Inc.、Piscataway NJ)、様々なヒトMOSPD2断片に対する結合親和性を測定する。BIAcoreアッセイは、HBS−EPランニング緩衝液(10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005%v/vのポリソルベートP20)中で行われる。N−ビオチン化MOSPD2をHBS−EP緩衝液中で0.001mg/mL未満の濃度まで希釈して、これを、SAセンサーチップ全体に、様々な接触時間を用いて注入することにより、MOSPD2表面を調製する。捕捉レベルが<50反応単位(RU)に相当する低容量表面を、高分解能動態試験用に用い、一方、高容量表面(約800RUのMOSPD2捕捉)は、濃度試験、スクリーニング、及び溶液親和性測定に用いる。
【0301】
抗体G1 Fabを2倍または3倍の希釈幅で系列希釈して、1μM〜0.1nMの範囲の濃度にする(推定Kdの0.1〜10倍を目的とする)ことにより、動態データを得る。試料は、典型的には、100μL/分で1分間注入し、少なくとも10分の解離時間を持たせる。各結合サイクル後に、表面を、25mMのNaOH含有25%v/vエタノールで再生させる。表面は、このサイクルを数百回行っても耐える。全濃度系列(titration series)(典型的には2つ組で作製される)を、BIAevaluationプログラムを用いて、包括的に1:1ラングミュア結合モデルに当てはめた。この結果、各結合相互作用について結合及び解離動態速度定数(それぞれ、K
on及びK
off)の特有の対が得られ、その比が平衡解離定数(K
D=K
off/K
on)となる。
【0302】
抗MOSPD2抗体は、配列番号1に従って付番された(アミノ酸残基1〜518)、ヒトMOSPD2の以下のアミノ酸領域の1つまたは複数に特異的に結合する可能性がある:508〜517、501〜514、233〜241、509〜517、212〜221、13〜24、505〜517、505〜514、89〜100、506〜517、233〜245、504〜514、128〜136、218〜226、15〜24、83〜96、42〜50、462〜474、340〜351、504〜517、462〜470、327〜337、21〜32、217〜226、510〜517、178〜190、497〜509、504〜516、64〜77、504〜515、147〜159、503〜315、88〜97、208〜218、178〜191、502〜515、503〜516、497〜505、500〜509、189〜202、189〜197、505〜516、1〜63、82〜239、93〜234、327〜445、327〜431、及び497〜517。
【0303】
実施例14
さらなる抗MOSPD2抗体
実施例5(ポリクローナル抗体)または実施例8(モノクローナル抗体)に記載される方法に従って、1つまたは複数のMOSPD2エピトープを認識するさらなる抗MOSPD2抗体を作製する。
【0304】
簡単に述べると、実施例14でMOSPD2エピトープとして同定されたMOSPD2の部分を、ヒトFcと融合させて、固相支持体に固定する。ファージ粒子上に提示されたHuCAL(登録商標)ライブラリー(HuCAL PLATINUM(登録商標)Platform、Bio−Rad AbD Serotec、GmnH)を、固定された抗原とともにインキュベートする。全面洗浄により非特異的抗体を除去し、還元剤を加えて特異的抗体ファージを溶出させる。抗体DNAをプールとして単離し、大腸菌発現ベクターにサブクローニングして、二価F(ab’)
2 mAbを作製する。コロニーをピックアップし、マイクロタイタープレートで成長させる。培養物を溶解させて、抗体分子を遊離させ、ELISA及びFACSにより特異的抗原結合についてスクリーニングする。一工程アフィニティークロマトグラフィーを用いて特有抗体を発現させて精製し、次いで、特異性についてELISA及びFACSにより再度試験する。
【0305】
本明細書中言及される全ての文献、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の文献、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に本明細書中参照により援用されると示されたのと同程度まで、その全体が、本明細書に参照により援用される。また、本出願中の任意の参照についての引用及び特定は、その参照が本発明の先行技術として利用可能であることの承認であると見なしてはならない。セクションの見出しが使用される限りにおいて、それらは、必然的に限定として見なしてはならない。
【国際調査報告】