(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号13のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号13のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号59のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号59のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号61のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号61のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号63のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号63のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号65のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号65のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号67のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号67のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号69のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号69のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号71のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号71のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号73のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号73のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号75のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号75のうちの1〜108番目で示されるか、
前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号77のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号77のうちの1〜108番目で示される、
請求項2に記載の抗体。
前記の抗体は抗体(a)で、好ましくは、前記の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号13のうちの124〜239番目で示され、または前記の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号13のうちの1〜108番目で示される請求項2に記載の抗体。
請求項1〜4のいずれかに記載の抗体の使用であって、特異的にEGFRvIIIを発現するかEGFRを過剰発現する腫瘍細胞を標的とする標的性薬物、抗体薬物抱合体または多機能抗体の製造、あるいは
EGFRvIIIを発現するかEGFRを過剰発現する腫瘍を診断する試薬の製造、あるいは
キメラ抗原受容体で修飾された免疫細胞、好ましくは、T細胞、NK細胞またはNKT細胞を含む免疫細胞の製造における使用。
前記の免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体または配位子で、好ましくは、前記の免疫細胞の表面マーカーは、CD3、CD16、CD28を含む請求項9に記載の多機能免疫複合体。
前記の免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子はT細胞の表面マーカーと結合する抗体で、請求項1〜4のいずれかに記載の抗体とT細胞が関与する二重機能抗体になる請求項12に記載の多機能免疫複合体。
融合ポリペプチドで、かつ請求項1〜4のいずれかに記載の抗体およびそれと連結した機能性分子の間に、さらに連結ペプチドが含まれている請求項9に記載の多機能免疫複合体。
免疫細胞の表面に発現される、請求項1〜4のいずれかに記載の抗体をキメラ抗原受容体であって、前記のキメラ抗原受容体は順に連結した請求項1〜4のいずれかに記載の抗体、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含むキメラ抗原受容体。
前記の細胞内シグナル領域は、CD3ζ、FcεRIγ、CD27、CD28、CD137、CD134の細胞内シグナル領域、またはこれらの組み合わせから選ばれる請求項18に記載のキメラ抗原受容体。
請求項18〜24のいずれかに記載のキメラ抗原受容体、または請求項25に記載の核酸、または請求項26に記載の発現ベクター、または請求項27に記載のウイルスの使用であって、EGFRvIIIを発現するかEGFRを過剰発現する腫瘍細胞を標的とする遺伝子修飾された免疫細胞の製造における使用。
さらに、外来のサイトカインのコード配列を担持し、好ましくは、前記のサイトカインは、IL-12、IL-15またはIL-21を含む請求項29に記載の免疫細胞。
さらにもう1種類のキメラ抗原受容体を発現し、当該受容体はCD3ζを含まないが、CD28の細胞内シグナルドメイン、CD137の細胞内シグナルドメインまたはこの両者の組み合わせを含む請求項29に記載の免疫細胞。
さらに安全スイッチを発現し、好ましくは、前記の安全スイッチは誘導性カスパーゼ9(iCaspase-9)、短縮型EGFR(Truancated EGFR)またはRQR8を含む請求項29に記載の免疫細胞。
請求項29〜34のいずれかに記載の遺伝子修飾された免疫細胞の使用であって、腫瘍を抑制する薬物の製造に使用され、前記の腫瘍はEGFRvIIIを発現するかEGFRを過剰発現する腫瘍である使用。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の説明
【
図1】
図1は抗体7B3およびY022が特異的に抗原EGFRvIIIおよびN1N2-806と結合することができたことを示す(ファージELISA実験)。
【
図2】
図2は抗体7B3の抗原EGFRvIIIに対する結合曲線である。
【
図3】
図3は抗体Y022の抗原EGFRvIIIに対する結合曲線である。
【
図4】
図4は3種類のscFv-Fc融合抗体の精製電気泳動像である。
【
図5】
図5はFACSによる一本鎖抗体scFv-Y022-Fc、scFv-806-FcおよびscFv-C225-Fcと細胞表面EGFRの結合能力の検出である。
【
図6】
図6はpH-Y022/CD3発現ベクターの構造概略図である。
【
図7】
図7は一本鎖二重機能抗体Y022/CD3、806/CD3およびC225/CD3のSDS-PAGE検出である。
【
図8】
図8はFACSによるY022/CD3一本鎖二重機能抗体の抗原結合特異性の検出である。
【
図9】
図9は一本鎖二重機能抗体の細胞毒性の図である。
【
図10】
図10はキメラ抗原受容体の各部分の連結順の概略図である。
【0010】
具体的な実施形態
本発明者は深く研究して選別したところ、特異的に腫瘍細胞のEGFRvIIIまたは過剰発現のEGFRを識別するが、ほとんど正常細胞のEGFRを識別しない抗体を得た。本発明の抗体は様々な標的性抗腫瘍薬および腫瘍の診断薬の製造に使用することができる。
抗EGFR抗体
本発明者は前期に得たヒト化抗体に基づいてさらに選別およびアミノ酸の突然変異を行ったところ、選択的にEGFRまたはEGFRvIIIを過剰発現する腫瘍と結合するが、正常細胞のEGFRと結合しない、腫瘍細胞のEGFRにより特異的な抗EGFR抗体を見出した。
【0011】
本発明の抗体は完全な免疫グロブリン分子でもよく、抗原結合断片でもよく、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab')
2断片、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、ドメイン抗体、2価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、二重特異性二本鎖抗体、三本鎖抗体、四本鎖抗体を含むが、これらに限定されない。
【0012】
抗体の抗原結合特性は、重鎖および軽鎖可変領域に位置する3つの特定の領域によって特徴付けられ、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼ばれ、前記のCDR領域によって可変領域が4つのフレームワーク領域(FR)に分かれ、4つのFRのアミノ酸配列が比較的に保存され、直接結合反応に関与しない。これらのCDRは環状構造を形成し、その中のFRで形成されるβシートによって空間構造上で近づき、重鎖におけるCDRおよび相応の軽鎖におけるCDRが抗体の抗原結合部位を構成する。同類の抗体のアミノ酸配列の比較によってどのアミノ酸がFR或いはCDR領域を構成するか確認することが出来る。CDR領域は免疫学で注目されるタンパク質の配列で、本発明の抗体のCDR領域は斬新なものである。前記抗体は本明細書で開示されたCDR領域の2つ、3つ、4つ、5つまたはすべての6つを含んでもよい。
【0013】
本発明のもう一つの側面では、本明細書に記載の抗体の機能的バリアントが含まれている。バリアントは親抗体と競合して配列番号1と特異的に結合することができ、かつ腫瘍細胞のEGFRvIIIまたは過剰発現のEGFRに対する識別能力は本発明の実施例で提供された具体的な抗体に近い。前記機能的バリアントは保存配列修飾を有してもよく、ヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、挿入および欠失を含む。これらの修飾は本分野で既知の標準技術によって導入されてもよいが、たとえば部位特異的変異導入およびランダムPCRによる異変導入が挙げられ、かつ天然および非天然のヌクレオチドおよびアミノ酸を含む。好ましくは、配列の修飾は前記抗体のCDR領域以外の領域に生じた。
【0014】
免疫複合体
また、本発明は、本明細書に記載の抗体および少なくとも1つのほかの種類の機能性分子を含む多機能免疫複合体を提供する。前記の機能性分子は、腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子または検出可能な標識物から選ばれる機能性分子とを含むが、これらに限定されない。前記抗体と前記機能性分子は共役結合、カップリング、付着、架橋などの形態で複合体を構成してもよい。
【0015】
一つの好適な形態として、前記免疫複合体は、本発明の抗体および少なくとも1つの腫瘍表面マーカーを標的とする分子または腫瘍を抑制する分子を含んでもよい。前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍サイトカインまたは抗腫瘍毒素でもよく、好ましくは、前記のサイトカインはIL-12、IL-15、IFN-β、TNF-αを含むが、これらに限定されない。前記の腫瘍表面マーカーを標的とする分子は、たとえば本発明の抗体と協同作用し、より精確に腫瘍細胞を標的としてもよい。
【0016】
一つの好適な形態として、前記免疫複合体は、本発明の抗体および検出可能な標識物を含んでもよい。前記の検出可能な標識物は、蛍光標識物、呈色標識物を含むが、これらに限定されず、たとえば酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属や非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。1つ以上の標識物を含んでもよい。検出および/または分析および/または診断のために標識抗体に使用される標識は、使用される検出/分析/診断の技術および/または方法、たとえば免疫組織化学染色(組織)サンプル、フローサイトメトリーなどによるものである。本分野で既知の検出/分析/診断の技術および/または方法に適する標識は当業者に熟知のものである。
【0017】
一つの好適な形態として、前記免疫複合体は、本発明の抗体および免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子を含んでもよい。前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は免疫細胞を識別することができ、本発明の抗体を免疫細胞に持っていき、同時に本発明の抗体は免疫細胞が腫瘍細胞を標的とするようにさせることによって、免疫細胞が特異的に腫瘍を殺傷するようにすることができる。
【0018】
直接または間接に(たとえばリンカーで)複合させて化学的に免疫複合体を形成する形態の一つとして、前記免疫複合体は本発明の抗体および適切なほかのタンパク質を含む融合タンパク質として生成してもよい。融合タンパク質は本分野で既知の方法によって生成することができ、たとえば核酸分子を構築して前記核酸分子を発現させることによって組み換えて生成し、前記核酸分子は読み枠に合う抗体をコードするヌクレオチド配列および適切な標識をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0019】
本発明のもう一つの側面では、本発明の少なくとも一つの抗体、その機能的バリアントまたは免疫複合体をコードする核酸分子を提供する。関連の配列を獲得すれば、組換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を単離して得る。
【0020】
さらに、本発明は、上述の適当なDNA配列及び適当なプロモーター或いは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現するように、適当な宿主細胞の形質転換に用いることができる。宿主細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞、或いは、低等真核細胞、例えば酵母細胞、或いは、高等真核細胞、例えば哺乳動物細胞でもよい。
キメラ抗原受容体および遺伝子修飾された免疫細胞
【0021】
本発明は、免疫エフェクター細胞(免疫細胞)の表面に発現されるキメラ抗原受容体であって、順に連結した細胞外結合領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含み、中では、前記細胞外結合領域は本発明の抗体を含む受容体を提供する。当該キメラ抗原受容体を免疫エフェクター細胞の表面に発現させることによって、免疫エフェクター細胞がEGFRvIIIを発現するかEGFRを過剰発現する腫瘍細胞に対して高度特異性の細胞毒性作用を有するようにすることができる。
本明細書で用いられるように、前記の「免疫細胞」と「免疫エフェクター細胞」は入れ替えて使用することができ、T細胞、NK細胞またはNKT細胞を含む。
本発明の好適な形態として、前記のキメラ抗原受容体では、含まれる抗体は一本鎖抗体で、CD8のヒンジ領域でCD8またはCD28の膜貫通領域と連結し、膜貫通領域の次に細胞内シグナル領域が隣接する。
本発明には、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸も含まれる。本発明は、さらに、本発明と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはポリペプチドの断片、類似物および誘導体をコードする上記ポリヌクレオチドの変異体に関する。
【0022】
キメラ抗原受容体の膜貫通領域は、CD8またはCD28などのタンパク質の膜貫通領域から選ばれる。ヒトCD8タンパク質はヘテロ二量体で、αβまたはγδの二本鎖からなる。本発明の一つの実施形態において、膜貫通領域はCD8αまたはCD28の膜貫通領域から選ばれる。また、CD8αヒンジ領域(hinge)は、可撓性の領域であるため、CD8またはCD28と膜貫通領域とヒンジ領域はキメラ抗原受容体CARの標的識別ドメインscFvと細胞内シグナル領域の連結に使用される。
【0023】
細胞内シグナル領域は、CD3ζ、FcεRIγ、CD28、CD137、CD134タンパク質の細胞内シグナル領域、およびこれらの組み合わせから選ばれる。CD3分子は5つのサブユニットからなり、中では、CD3ζサブユニット(CD3 zetaとも呼ばれ、Zと略す)は3つのITAMモチーフを含み、当該モチーフはTCR-CD3複合体における重要なシグナル伝達領域である。CD3δZは短縮されたITAMモチーフを有さないCD3ζ配列で、本発明の実践において通常陰性対照として構築される。FcεRIγは主に肥満細胞および好塩基球の表面に分布し、一つのITAMモチーフを含み、構造、分布および機能ではCD3ζと類似である。また、前記のように、CD28、CD137、CD134は共刺激シグナル分子で、それぞれリガンドと結合した後その細胞内シグナル領域による共刺激作用で免疫エフェクター細胞(主にT細胞)の持続的な増殖が生じ、かつ免疫エフェクター細胞のIL-2およびIFN-γなどのサイトカインの分泌レベルを上げると同時に、CAR免疫エフェクター細胞の体内における生存期間および抗腫瘍効果を向上させる。
本発明のキメラ抗原受容体は
本発明の抗体、CD8およびCD3ζ、
本発明の抗体、CD8、CD137およびCD3ζ、
本発明の抗体、CD28分子の膜貫通領域、CD28分子の細胞内シグナル領域およびCD3ζ、あるいは
本発明の抗体、CD28分子の膜貫通領域、CD28分子の細胞内シグナル領域、CD137およびCD3ζ、
およびこれらの組み合わせ
のような順で連結することができる。
ここで、関連キメラ抗原受容体タンパク質におけるCD28aはCD28分子の膜貫通領域を、CD28bはCD28分子の細胞内シグナル領域を表す。上記各キメラ抗原受容体はscFv(EGFR)-CARと総称される。
【0024】
本発明は、さらに、上記免疫エフェクター細胞の表面に発現されるキメラ抗原受容体タンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。一つの具体的な実施形態において、本発明で使用されるベクターは、レンチウイルスプラスミドベクターpWPT-eGFPである。当該プラスミドは、第三世代の自己不活性化レンチウイルスベクターシステムに属し、当該システムは計3つのプラスミド、すなわちタンパク質Gag/Pol、Revタンパク質をコードするパッケージングプラスミドpsPAX2、VSV-Gタンパク質をコードするエンベローププラスミドPMD2.G、および空ベクターpWPT-eGFPを有し、核酸配列への組み込み、すなわちCARの核酸配列のコーディングに使用することができる。空ベクターpWPT-eGFPにおいて、伸長因子-1 α(elongation factor-1α、EF-1α)プロモーターで強化型緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein、eGFP)の発現を調節する。一方、CARをコードする目的核酸配列を含む組み換え発現ベクターpWPT-eGFP-F2A-CARは、口蹄疫ウイルス(food-and-mouth disease virus、FMDV)由来のリボソームスキッピング配列(ribosomal skipping sequence 2A)(F2Aと略す)によってeGFPとCARの共発現が実現される。
【0025】
本発明は、さらに、上記ベクターを含むウイルスを含む。本発明のウイルスは、パッケージング後の感染力を有するウイルスを含み、感染力を有するウイルスへのパッケージングに必要な成分を含むパッケージングされるウイルスも含む。本分野で既知のほかの外来遺伝子の免疫エフェクター細胞への形質導入に使用できるウイルスおよびそれに相応するプラスミドベクターも本発明に使用することができる。
【0026】
本発明は、さらに、本発明の核酸または本発明の当該核酸を含有する上記組み換えプラスミド、あるいは当該プラスミドを含むウイルスを形質導入した遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞を提供する。本分野の通常の核酸形質導入方法は、非ウイルスの形質導入方法もウイルスによる形質導入方法も本発明に使用することができる。非ウイルスの形質導入方法は、エレクトロポレーション法およびトランスポゾン法を含む。最近、Amaxa社によって研究開発されたNucleofectorヌクレオフェクション装置は、直接外来遺伝子を細胞核に導入して目的遺伝子の効率的なトランスフェクションを実現することができる。さらに、眠り姫トランスポゾン(Sleeping Beauty system)またはPiggyBacトランスポゾンなどのトランスポゾンシステムのトランスフェクション効率は通常のエレクトロポレーション法よりも大幅に向上し、nucleofectorトランスフェクション装置とSB眠り姫トランスポゾンシステムの併用が既に報告され[Davies JK.ら Combining CD19 redirection and alloanergization to generate tumor-specific human T cells for allogeneic cell therapy of B-cell malignancies. Cancer Res, 2010, 70(10): OF1-10.]、当該方法は高いトランスフェクション効率も有し、目的遺伝子の部位特異的組み込みも実現できる。本発明の一つの実施形態において、キメラ抗原受容体の遺伝子修飾を実現する免疫エフェクター細胞のトランスフェクション方法はウイルス、たとえばレトロウイルスまたはレンチウイルスに基づいたトランスフェクション方法である。当該方法はトランスフェクション効率が高い、外来遺伝子を安定して発現する、および体外で免疫エフェクター細胞を臨床級の数に培養する時間を短縮させるなどの利点がある。当該遺伝子組み換え免疫エフェクター細胞の表面では、形質導入された核酸は転写、翻訳によってその表面に発現される。様々な培養の腫瘍細胞に対して体外細胞毒性実験を行うことによって、本発明の免疫エフェクター細胞は高度特異性の腫瘍細胞殺傷効果(細胞毒性とも呼ばれる)を有することが証明された。そのため、本発明のキメラ抗原受容体タンパク質をコードする核酸、当該核酸を含むプラスミド、当該プラスミドを含むウイルスおよび上記核酸、プラスミドまたはウイルスを形質導入した遺伝子組み換え免疫エフェクター細胞は有効に腫瘍の免疫治療に使用することができる。
【0027】
本発明に係る免疫細胞は、さらに、外来のサイトカインのコード配列を持ってもよい。前記のサイトカインは、IL-12、IL-15やIL-21などを含む。これらのサイトカインは免疫調節または抗腫瘍の活性を有し、エフェクターT細胞および活性化NK細胞の機能を強化させるか、直接抗腫瘍作用を発揮することができる。そのため、当業者には、これらのサイトカインの応用は前記の免疫細胞のさらなる作用の発揮に有利であることがわかる。
本発明に係る免疫細胞は上記キメラ抗原受容体以外のもう1種類のキメラ抗原受容体を発現してもよいが、当該受容体はCD3ζを含まないが、CD28の細胞内シグナルドメイン、CD137の細胞内シグナルドメインまたはこの両者の組み合わせを含む。
本発明に係る免疫細胞はケモカイン受容体を発現してもよい。前記のケモカイン受容体はCCR2を含むが、これに限定されない。当業者には、前記のCCR2ケモカイン受容体は体内のCCR2を競合的結合させることができ、腫瘍転移の阻止に有利であることがわかる。
本発明に係る免疫細胞はPD-1の発現を低下させるsiRNAまたはPD-L1を遮断するタンパク質を発現してもよい。当業者には、競合的にPD-L1とその受容体PD1の相互作用を遮断し、抗腫瘍T細胞反応の回復に有利であるため、腫瘍の生長を抑制することがわかる。
本発明に係る免疫細胞は安全スイッチを発現してもよい。好ましくは、前記の安全スイッチは誘導性カスパーゼ9(iCaspase-9)、短縮型EGFR(Truancated EGFR)またはRQR8を含む。
【0028】
薬物組成物
本発明の抗体、当該抗体を含む免疫複合体および遺伝子修飾された免疫細胞は薬物組成物または診断試薬の製造に使用することができる。前記の組成物は、有効量の前記抗体、免疫複合体または免疫細胞以外、薬学的に許容される担体を含んでもよい。用語「薬学的に允許される」とは、分子自体と組成物を適当に動物或いはヒトに投与する場合、不利な反応、アレルギー反応或いは他の不良反応が生じないことを指す。
【0029】
薬学的に許容される担体またはその成分にできる一部の物質の具体的な例は、糖類、たとえば乳糖、ブドウ糖やショ糖、デンプン、たとえばコーンスターチやバレイショデンプン、セルロースおよびその誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースやメチルセルロース、トラガカントゴム粉末、麦芽、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤、たとえばステアリン酸やステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、たとえば落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油やカカオオイル、多価アルコール、たとえばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトー
ルやポリエチレングリコール、アルギン酸、乳化剤、たとえばTween(登録商標)、湿潤剤、たとえばドデシル硫酸ナトリウム、着色剤、調味剤、打錠剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水、等張塩溶液、およびリン酸塩緩衝液などがある。
本発明の組成物は、必要により各種の剤形に調製することができ、かつ医者が患者の種類、年齢、体重及び基本病状、投与形態などの要素によって患者に有益な投与量を決めて使用することができる。投与形態は、たとえば注射またはほかの治療形態を使用してもよい。
【0030】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下述実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、例えばJ. Sambrookら編著、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」、第三版、科学出版社、2002年に記載の条件などの通常の条件に、或いは、メーカーのお薦めの条件に従う。
【0031】
実施例1.一本鎖抗体7B3親和性成熟ライブラリーの構築
一本鎖抗体7B3はヒト化改良された抗体断片で、特異的に腫瘍細胞で露出するEGFRの287〜302番目のアミノ酸配列からなる隠れたエピトープ(
287CGADSYEMEEDGVRKC
302(配列番号1))を識別することができる。そのVLおよびVH遺伝子のヌクレオチド配列は特許201210094008.xで示された配列番号14および配列番号13から得られ、かつVL
7B3-リンカー-VH
7B3の順で連結してなる。
一本鎖抗体7B3のヌクレオチド配列(717 bp、配列番号2):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACAGCAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCGTTCAGTACGCCCAGTTCCCATATACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGTGGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCAGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体7B3のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号3。下線部分は順に7B3 VL CDR1、CDR2、CDR3、7B3 VH CDR1、CDR2、CDR3である。):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC
HASQDINSNIGWLQQKPGKAFKGLIY
HGKNLEDGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC
VQYAQFPYTFGQGTKVEIKRGGGGSGGGGSGGGGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVS
GYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLG
YISYRGRTSYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCAR
LGRGFRYWGQGTLVTVSS
7B3一本鎖抗体のEGFRに対する結合能力を向上させるため、それぞれその軽鎖CDR3および重鎖CDR3領域の一部のアミノ酸をランダムに突然変異させ、かつ相応する親和性成熟ライブラリーを構築した。
1.7B3軽鎖CDR3親和性成熟ライブラリーの構築
7B3一本鎖抗体に対して配列アラインメントと分析を行うことによって、7B3軽鎖の3番目のCDR領域の一部のアミノ酸が選択され、プライマーでランダムな突然変異を導入し、軽鎖親和性成熟ライブラリーの構築に使用した。
【0032】
7B3突然変異体ライブラリーをコードするDNA断片を製造するため、プラスミドpCantab 5E-7B3(7B3をpCantab 5E-7B3のsfiI/NotIサイトに挿入したもの)を鋳型とし、PCR方法によってそれぞれ2つのDNA断片を得た後、ブリッジPCRの方法によってアセンブリしてなった。具体的に以下の操作工程を使用した。遺伝子を合成するため、50 μlの容積重量でPCR反応を行い、各反応ではプラスミドpCantab 5E-7B3を鋳型とし、各プライマーの最終濃度は0.2 μMで、そして5 μl 10× KOD Plus緩衝液、4 μl dNTPs(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、それぞれ2 mM)、2 μl 25 mM MgSO4および1 U KOD Plus (Takaraから購入)を入れ、水で所定体積にした後、熱循環装置でPCRプロセスを始めた。反応は、まずサンプルを94℃に加熱して5分間前変性させた後、温度を制御しながら25サイクルを行い、各サイクルは94℃ 30秒、56℃ 30秒および68℃ 30秒であった。最後に、68℃に10分間維持した。一つ目の断片の増幅はプライマーpC7B3fw (配列番号4、ATAACAGGCCCAGCCGGCCATGGATATTCAGATGACCCAGAG)およびLR3re(配列番号5、CACTTTGGTGCCCTGGCCAAATGTMNNTGGGNNMN NMNNMNNCTGMN NGCAATAATAGGTCGCAAAATC)を、二つ目の断片はプライマーLR3f2fw (配列番号6、ACATTTGGCCAGGGCACCAAAG)およびpC7B3re(配列番号7、ATAAATGCGGCC GCGCTGCTCACGGTCAC)を使用した。
【0033】
予想PCR産物はアガロースゲル電気泳動の分析によって同定され、かつWizard SV Gel and PCR Clean-upキット(Promegaから購入)でサンプルから精製して回収した。二つの断片は等モル比で2回目のブリッジPCRに鋳型として投入され、反応系は上記のKOD Plus系のままで、反応はまずサンプルを94℃に加熱して5分間前変性させた後、温度を制御しながら10サイクルを行い、各サイクルの反応条件は94℃ 30秒、60℃ 30秒および68℃ 30秒であった。最後に、68℃に10分間維持した。その後、反応系に直接最終濃度が0.2 μMになるようにプライマーpC7B3fwおよびpC7B3reを入れ、かつPCRプロセスを開始した。反応は、まずサンプルを94℃に加熱して5分間前変性させた後、温度を制御しながら25サイクルを行い、各サイクルは94℃ 30秒、56℃ 30秒および68℃ 30秒であった。最後に、68℃に10分間維持した。予想PCR産物は調製アガロースゲル電気泳動の分析によって分離され、かつWizard SV Gel and PCR Clean-upキットでメーカーの説明に従って精製して回収した。
【0034】
完全なライブラリーDNA断片の両末端はそれぞれsfiIおよびNotI制限酵素の切断部位を含有し、制限酵素sfiI/NotI (New England Biolabsから購入)で制限消化を行い、同じ二重酵素切断されたファージベクターpCANTAB 5Eに挿入した。連結産物をWizard SV Gel and PCR Clean-upキットでサンプルにおけるDNAを分離して脱塩し、電気的形質転換に使用した。電気的形質転換時、エレクトロポレーションキュベットおよびエレクトロポレーションシステムGene Pulser II(Bio-Radから購入)によって、自家製の感受性大腸菌ER2738(New England Biolabsから購入)を形質転換させた。最後に一つの1.9×10
9の突然変異体を含有するライブラリーが確認された。
2.7B3重鎖CDR3親和性成熟ライブラリーの構築
7B3一本鎖抗体に対して配列アラインメントと分析を行うことによって、7B3重鎖の3番目のCDR領域の一部のアミノ酸が選択され、プライマーでランダムな突然変異を導入し、重鎖親和性成熟変異体ライブラリーの構築に使用した。
【0035】
7B3突然変異体ライブラリーをコードするDNA断片を製造するため、プラスミドpCantab 5E-7B3を鋳型とし、PCR方法によってそれぞれ2つのDNA断片を得た後、ブリッジPCRの方法によってアセンブリしてなった。具体的に以下の操作工程を使用した。遺伝子を合成するため、50 μlの容積重量でPCR反応を行い、各反応ではプラスミドpCantab 5E-7B3を鋳型とし、各プライマーの最終濃度は0.2 μMで、そして5 μl 10× KOD Plus緩衝液、4 μl dNTPs(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、それぞれ2 mM)、2 μl 25 mM MgSO
4および1 U KOD Plusを入れ、水で所定体積にした後、熱循環装置でPCRプロセスを始めた。反応は、まずサンプルを94℃に加熱して5分間前変性させた後、温度を制御しながら25サイクルを行い、各サイクルは94℃ 30秒、56℃ 30秒および68℃ 30秒であった。最後に、68℃に10分間維持した。一つ目の断片の増幅はプライマーHR3f1fw(配列番号8、TCGCAATTCCTTTAGTTGTTCC)およびHR3f1re(配列番号9、CAGGGTGCCCTGGCCCCAGTAANNMNNMNNMNNMNNMNNGCGCGCGCAATAATACAC)を、二つ目の断片はプライマーHR3f2fw(配列番号10、TACTGGGGCCAGGGCACCCTG)およびHR3f2re(配列番号11、GGAATAGGTGTATCACCGTACTCAG)を使用した。
【0036】
予想PCR産物はアガロースゲル電気泳動の分析によって同定され、かつWizard SV Gel and PCR Clean-upキットでサンプルから精製して回収した。二つの断片は等モル比で2回目のブリッジPCRに鋳型として投入され、反応系は上記のKOD Plus系のままで、プライマーが存在しない条件において、反応はまずサンプルを94℃に加熱して5分間前変性させた後、温度を制御しながら10サイクルを行い、各サイクルの反応条件は94℃ 30秒、60℃ 30秒および68℃ 30秒であった。最後に、68℃に10分間維持した。その後、反応系に直接最終濃度が0.2 μMになるようにプライマーHR3f1fwおよびHR3f2reを入れ、かつPCRプロセスを開始した。反応は、まずサンプルを94℃に加熱して5分間前変性させた後、温度を制御しながら25サイクルを行い、各サイクルは94℃ 30秒、56℃ 30秒および68℃ 30秒であった。最後に、68℃に10分間維持した。予想PCR産物は調製アガロースゲル電気泳動の分析によって分離され、かつWizard SV Gel and PCR Clean-upキットでメーカーの説明に従って精製して回収した。
【0037】
完全なライブラリーDNA断片の両末端はそれぞれsfiIおよびNotI制限酵素の切断部位を含有し、制限酵素sfiI/NotIで制限消化を行い、同じ二重酵素切断されたファージベクターpCANTAB 5Eに挿入した。連結産物をWizard SV Gel and PCR Clean-upキットでサンプルにおけるDNAを分離して脱塩し、電気的形質転換に使用した。電気的形質転換時、エレクトロポレーションキュベットおよびエレクトロポレーションシステムGene Pulser IIによって、自家製の感受性大腸菌ER2738を形質転換させた。最後に一つの6.0×10
9の突然変異体を含有するライブラリーが確認された。
【0038】
実施例2.7B3親和性成熟ライブラリーによるEGFRvIIIに対する選別
より高い親和性を有する7B3突然変異体を得るため、それぞれ軽鎖および重鎖突然変異体ライブラリーを利用し、別々に4回の選別を実施し、選別方法は、補助ファージM13K07を上記ライブラリーに感染させ、相応するファージライブラリーを得た。当該ファージライブラリーとビオチンで標識された抗原EGFRvIII(鋭勁生物から購入)は、室温で2時間保温した後、ブロッキング液である2%(w/v)BSA(ウシ血清アルブミン、上海生工から購入)でブロッキングされたストレプトアビジン磁気ビーズMyOne C1(Invitrogenから購入)と室温で30分間保温した。その後、PBST(0.1%ツイン-20含有)緩衝液で磁気ビーズを洗浄し、非特異的に結合するファージまたは結合能力の弱いファージを除去した。結合能力の強いファージは、グリシン-塩酸(pH 2.2)でビーズから溶離し、Tris中和液(pH 9.1)で中和した後、対数増殖中期にある大腸菌ER2738に感染させ、そして次の選別に使用された。
【0039】
上記4回の選別において、ビーズの使用量はそれぞれ50μl、25μl、10μlおよび10μlで、ビオチンで標識された抗原EGFRvIII濃度はそれぞれ10nM、1nM、0.5nMおよび0.1nMで、PBSTの洗浄回数はそれぞれ10回、10回、15回および20回であった。2回目の選別から、溶離前にそれぞれ50倍、500倍および1000倍の過剰量のビオチンで標識されていない抗原EGFRvIIIを入れて競合させることによって、結合能力の弱い突然変異体を除去した。
【0040】
表面に7B3一本鎖抗体突然変異体が提示されたファージを生産するため、400 ml 2YT/アンピシリン培地に実施例1で得られたグリセロールストックを接種し、細胞密度をOD
600 = 0.1にし、37℃および200 rpmの条件で細胞密度がOD
600 = 0.5になるように振とう培養した。10
12 pfuのM13KO7補助ファージで感染させ、30℃および50 rpmの条件で30分間培養した。50 mg/lのカナマイシンを入れた後、37℃および200 rpmの条件で30分間振とう培養した後、遠心(15分間、1600×g、4℃)で分離して沈殿させ、400 ml 2YT/アンピシリン/カナマイシン培地に再懸濁させ、37℃および200 rpmの条件で16時間振とう培養した。最後に、細胞を遠心(20分間、5000×g、4℃)で分離して沈殿させてから除去し、上清を規格0.45 μmのろ膜でろ過した後、1/4体積20%(w/v)PEG8000、2.5 M NaCl溶液を入れて氷浴で1時間保温してファージ顆粒を沈殿させた。その後、遠心して沈殿させ(20分間、8000×g、4℃)、上清を捨て、ファージを25 mlの予め冷やしたPBS(137 mM NaCl、2.7 mM KCl、8 mM Na
2HPO
4、2 mM KH
2PO
4)に再懸濁させ、遠心した(5分間、20000×g、4℃)。上清液に1/4体積20%(w/v)PEG8000、2.5 M NaCl溶液を入れ、かつ氷浴で30分間ファージ顆粒を再沈殿させた。遠心して沈殿させ(30分間、20000×g、4℃)、再びファージ沈殿を2 mlの予め冷やしたPBSに再懸濁させ、氷上に30分間置いて遠心した(30分間、17000×g、4℃)。上清液を含4%(w/v)BSA含有PBS溶液と1:1で混合させ、回転混合器に置き、室温で30分間保温した後、そのまま選別に使用した。
【0041】
実施例3.特異的にEGFRvIIIと結合する7B3突然変異体の同定
4回の抗原EGFRvIIIに対する選別の後、4回目の選別で得られたクローンからランダムに96個を選択し、かつ単一ファージELISA(酵素結合免疫吸着実験)によってそれと抗原EGFRvIIIおよびN1N2-806(鋭勁生物から購入)の結合を分析し、ここで、N1N2-806はM13ファージのPIIIタンパク質のN1N2ドメインとEGFRの287〜302番目のアミノ酸の融合タンパク質であった。このために、96ウェルディープウェルプレートにおいて各単一集落を300 μlの2YT/アンピシリン培地(2%ブドウ糖含有)に接種し、かつ37℃および250 rpmで16時間振とう培養した。20 μlの培養物を500 μlの2YT/アンピシリン培地(0.1%ブドウ糖含有)に接種し、37℃および250 rpmで1.5時間振とう培養した。補助ファージ溶液を用意し、75 μlのM13KO7(力価:3×10
12 pfu/ml)を取って15 mlの2YT培地に混合し、50 μl/ウェルでプレートに入れた。37℃および150 rpmの条件で30分間培養した後、用意されたカナマイシン溶液を50 μl/ウェルで入れ(180 μlの50 mg/mlカナマイシンを取って、15 mlの2YT培地に入れた)、37℃および250 rpmで16時間振とう培養した。最後に、細胞を遠心して沈殿させ(30分間、5000×g、4℃)、上清を新しい96ウェルディープウェルプレートに移した。
【0042】
単一ファージELISAを行うため、96ウェルMediSorp ELISAプレート(Nuncから購入)においてそれぞれ100 ng/ウェルの抗原EGFRvIII、N1N2-806ならびに陰性対照であるタンパク質BSAおよびN1N2(鋭勁生物から購入)を使用し、50 μl/ウェルで、4℃で一晩コーティングした。各ウェルを2%BSA(w/v)含有PBSTでブロッキングした。そしてPBSTでウェルを3回洗浄して洗浄液を捨てた。その後、100 μl/ウェルで以上で調製された各ファージ溶液をプレートにおける各ウェルに入れた。37℃で2時間保温した後、PBSTで3回洗浄した。結合したファージを検出するため、抗M13抗体-スーパーオキシドディスムターゼ抱合体(GE Healthcareから購入)を1:5000でPBSTに希釈し、かつ100 μl取って各ウェルに入れた。37℃で1時間保温した後、PBSTで3回洗浄し、さらにPBSで3回洗浄した。最後に、50 μlのTMB基質を吸い取ってウェルに入れ、かつ室温で10分間呈色させた後、各ウェルに50 μlの2M H
2SO
4を入れて呈色反応を止めた。酵素結合免疫測定装置(Bio-Rad)によって450 nmで吸光値を測定した。
【0043】
ELISAで抗原に対する結合シグナルが強いが、BSAに対して結合シグナルのないクローンを選択し、後の評価およびシーケンシング分析に使用した。その後、軽鎖親和性成熟ライブラリーから得られた抗体を重鎖親和性成熟ライブラリーから実施例2で得られた抗体と軽鎖可変領域と重鎖可変領域でさらに組み合わせ、得られた抗体は同様に特異的に抗原EGFRvIIIおよびN1N2-806と結合することができ、対照タンパク質BSAおよびN1N2と結合しない。
【0044】
抗体および抗原決定基の結晶構造から考慮し、7B3の軽・重鎖の突然変異後の組み合わせ抗体とEGFR
287-302の結合に対して構造分析を行い、最後に一部のアミノ酸部位を選定してさらに突然変異させることによって、より高い親和性と安定性を得た。すべての変わったアミノ酸部位は、軽鎖CDR1領域にあるS31、軽鎖CDR3領域のV89、A92、Q93、F94およびY96、重鎖CDR2領域のS182、重鎖CDR3領域のL222、R224、G225、F226およびR227を含む。軽・重鎖の突然変異後の組み合わせ抗体の配列に基づき、さらに突然変異部位を導入し、抗体Y022を得た。親抗体7B3と比べ、Y022は12個のアミノ酸突然変異部位(S31V、V89N、A92E、Q93N、F94I、Y96L、S182Q、L222M、R224K、G225N、F226W、R227D)を含む。
図1に示すように、単一ファージELISA実験において、Y022は特異的に抗原EGFRvIIIおよびN1N2-806と結合することができ、対照タンパク質BSAおよびN1N2と結合しない。
一本鎖抗体Y022のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号12):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATATCCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCAGTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCATGGGTAAGAATTGGGATTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体Y022のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号13):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC
HASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIY
HGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC
NQYENIPLTFGQGTKVEIKRGGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVS
GYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLG
YISYRGR
TQYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCAR
MGKNWDYWGQGTLVTVSS
中では、1〜108番目は軽鎖で、かつ軽鎖CDR1配列はHASQDINVNIG(配列番号41)で、CDR2配列はHGKNLED(配列番号42)で、CDR3配列はNQYENIPLT(配列番号43)である。
中では、124〜239番目は重鎖で、かつ重鎖CDR1配列はGYSITSDYAWN(配列番号44)で、CDR2配列はYISYRGRTQYNPSLKS(配列番号45)で、CDR3配列はMGKNWDY(配列番号46)である。
以上で構築された突然変異体ライブラリーから選別されて部位特異的突然変異が行われたため、Y022のヌクレオチド配列はpCantab 5Eに含まれ、当該プラスミドはpCantab 5E-Y022プラスミドと呼ばれる。
【0045】
抗体Y022の調製と同様の方法によって、本発明者はさらにほかの10個の親和性と安定性が顕著に改善された抗体クローンを得たが、それぞれM14、M15、M25、M26、S7、S8、S17、S22、S23およびS29である。親抗体7B3と比べ、すべての一本鎖抗体に含まれるアミノ酸突然変異部位は表1に示す。
【表1】
一本鎖抗体M14のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号58):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACAGCAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCAATTACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCAACTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体M14のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号59):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINSNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENNPITFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TNYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0046】
M14の軽鎖CDR1(HASQDINSNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENNPIT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTNYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号47、42、48、44、49、50である。
一本鎖抗体M15のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号60):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCAATTACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCAGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体M15のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号61):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENNPITFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TSYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0047】
M15の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENNPIT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTSYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、42、48、44、51、50である。
一本鎖抗体M25のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号62):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATATCCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体M25のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号63):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENIPLTFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TRYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0048】
M25の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENIPLT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTRYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、42、43、44、52、50である。
一本鎖抗体M26のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号64):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATATCCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCAGTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体M26のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号65):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENIPLTFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TQYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0049】
M26の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENIPLT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTQYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、42、43、44、45、50である。
一本鎖抗体S7のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号66):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCACCAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCAATTACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCAGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体S7のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号67):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGTNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENNPITFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TSYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0050】
S7の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGTNLED)、CDR3(NQYENNPIT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTSYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、53、54、44、51、50である。
一本鎖抗体S8のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号68):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAAGCTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCAATTACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCAGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体S8のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号69):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKSFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENNPITFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TSYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0051】
S8の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENNPIT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTSYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、42、54、44、51、50である。
一本鎖抗体S17のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号70):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACACCAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCAGTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体S17のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号71):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINTNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENNPLTFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
GGSDVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGYSITSDYAWNWIRQAPGKGLEWLGYISYRGR
TQYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0052】
S17の軽鎖CDR1(HASQDINTNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENNPLT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTQYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号55、42、56、44、45、50である。
一本鎖抗体S22のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号72):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCACCAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体S22のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号73):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGTNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENNPLTFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
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TRYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0053】
S22の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGTNLED)、CDR3(NQYENNPLT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTRYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、53、56、44、52、50である。
一本鎖抗体S23のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号74):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAAGCTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATAACCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体S23のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号75):
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TRYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0054】
S23の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGKNLEDG)、CDR3(NQYENNPLT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTRYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、42、56、44、52、50である。
一本鎖抗体S29のヌクレオチド配列(717塩基、配列番号76):
GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAGCCTGAGCGCGAGCGTGGGCGACCGTGTGACC
ATTACCTGCCATGCGAGCCAGGATATTAACGTGAACATTGGCTGGCTGCAGCAGAAACCG
GGCAAAGCGTTTAAAGGCCTGATTTATCATGGCAAAAACCTGGAAGATGGCGTGCCGAGC
CGTTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCG
GAAGATTTTGCGACCTATTATTGCAATCAGTATGAAAATTTCCCACTGACATTTGGCCAG
GGCACCAAAGTGGAAATTAAACGT
GGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGT
GGCGGATCGGATGTGCAGCTGGTGGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCGGGCGGCAGC
CTGCGTCTGAGCTGCGCGGTGAGCGGCTATAGCATTACCAGCGATTATGCGTGGAACTGG
ATTCGTCAGGCGCCGGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGCTATATTAGCTATCGTGGCCGC
ACCCGCTATAACCCGAGCCTGAAAAGCCGTATTAGCATTACCCGTGATAACAGCAAAAAC
ACCTTTTTCCTGCAGCTGAACAGCCTGCGTGCGGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCG
CGCCTGGGACGCGGCTTCCGCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
一本鎖抗体S29のアミノ酸配列(239アミノ酸、配列番号77):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDINVNIGWLQQKPGKAFKGLIYHGKNLEDGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCNQYENFPLTFGQGTKVEIKR
GGGGSGGGGSGG
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TRYNPSLKSRISITRDNSKNTFFLQLNSLRAEDTAVYYCARLGRGFRYWGQGTLVTVSS
【0055】
S23の軽鎖CDR1(HASQDINVNIG)、CDR2(HGKNLED)、CDR3(NQYENFPLT)および重鎖CDR1(GYSITSDYAWN)、CDR2(YISYRGRTRYNPSLKS)、CDR3(LGRGFRY)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号41、42、57、44、52、50である。
実施例4.抗体の発現と精製
【0056】
各抗体の遺伝子を発現ベクターpET22B(+)のNdeI/XhoI部位に挿入し、E.coli BL21(DE3)で組み換えて抗体タンパク質を調製し、かつC末端に融合した6×ヒスチジンポリペプチドでニッケル柱で精製した。具体的に、抗体タンパク質を調製するため、各単一集落を5 mlの2YT/アンピシリン培地に接種し、かつ37℃および220 rpmで16時間振とう培養した。このような予備培養物1 mlを100 mlの2YT/アンピシリン培地に接種し、かつ37℃および220 rpmで細胞密度がOD
600 = 0.5になるまで振とう培養した。1 mM α-D-イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を入れて外来遺伝子の発現を誘導した後、続いて30℃および220 rpmで6時間振とう培養した。その後、遠心して細胞を沈殿させ(15分間、3500×g、4℃)、かつ35 mlの破砕緩衝液(50 mM PB、300 mM NaCl、2M尿素、0.5% Triton X-100、pH 8.0)に再懸濁させた。超音波破砕後、サンプルを室温に置いて30分間振とうし、徹底的に細胞破片を溶解させた。その後、遠心して(15分間、10,000×g、4℃)封入体の沈殿を収集し、20 mlの変性緩衝液(50 mM PB、300 mM NaCl、8M尿素、10 mMイミダゾール、pH 8.0)を入れ、室温で1時間振とうした。遠心して(15分間、10,000×g、4℃)沈殿を除去し、溶解上清を収集し、5 mlのHisTrap HP精製カラム(GE Healthcareから購入)でタンパク質を精製した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製後の抗体タンパク質の純度を分析し、かつBCA法によってタンパク質濃度を測定した。
実施例5.抗体の結合活性の測定
【0057】
濃度勾配ELISA実験によって、抗体の抗原EGFRvIIIに対する結合活性を測定した。このために、0.1M NaHCO
3(pH 9.6)コーディング液で抗原EGFRvIIIを希釈し、各ウェルに200 ng、50 μl/ウェルで、4℃で一晩コーディングし、かつ2% (w/v)BSA含有PBSTで室温で2時間ブロッキングした。その後、PBSTでプレートを3回洗浄してきれいに除去した。そして、各ウェルに100 μlの一連の濃度(開始濃度50 ng/ウェル、18 nM、1:81まで希釈)の各抗体タンパク質を含有するPBST溶液を入れ、各サンプルの測定に平行の3ウェルで分析した。37℃で2時間保温した後、PBSTで3回洗浄し、その後1:2000で希釈されたネズミ抗His-tag抗体(Santa cruzから購入)を100 μl/ウェル入れ、37℃で1時間反応させた。結合した抗体を検出するため、HRPで標識されたヒツジ抗ネズミ抗体(Santa cruzから購入)を1:15000の希釈度でPBSTに希釈し、かつ各ウェルに100 μl入れ、37℃で1時間インキュベートした。検出のため、PBSTでウェルを3回洗浄し、さらにPBSで3回洗浄し、最後にTMBを入れて15分間呈色させ、各ウェルに50 μlの2M H
2SO
4を入れて呈色反応を止め、酵素結合免疫測定装置(Bio-Rad)によって450 nmで吸光値を測定した。Sigma Plotソフトで得られた吸光強度値を評価し、抗体の結合強度を計算した。このため、各場合測定された吸光値を相応する抗体濃度に対してグラフにし、かつ以下の非線形回帰で得られた曲線をフィットした。
【0058】
【数1】
ここで、同定する固定化された抗原と抗体タンパク質の間の結合/解離平衡は、
x=抗体タンパク質の濃度、
y=抗原/抗体複合体の濃度(呈色反応後の吸光値で間接に測定した)、
a=固定化抗原の総濃度、
b=解離定数(K
D)である。
抗体7B3の濃度勾配ELISA実験で得られた結合曲線の例示性を
図2に示し、そのK
D値は約22.4 nMで、抗体Y022のEGFRvIIIに対する結合曲線は
図3に示すように、その見かけK
D値は約2.7 nMである。
【0059】
実施例6.Y022と細胞表面EGFRの結合活性の分析
1.scFv-Y022-Fc、scFv-806-FcおよびscFv-C225-Fc融合抗体の発現と精製
標準プロトコールに従い、プライマー対のV5-Y022-F(配列番号14、ACAGTGCTAGCAGATATTCAGATGACCCAG)およびV5-Y022-R (配列番号15、AAGAATGCGGCCGCGCTGCTCACGGTCACCAG)で得られたクローンからscFv-Y022断片を増幅し、プライマー対のV5-806-F (配列番号16、ACAGTGCTAGCAGACATCCTGATGACCCAAT)およびV5-806-R (配列番号17、AAGAATGCGGCCGCTGCAGAGACAGTGACCAG)でpH-806/CD3(201210094008.Xを参照)を鋳型にscFv-806断片を増幅し、プライマー対のV5-C225-F (配列番号18、ACAGTGCTAGCAGACATCTTGCTGACTCAG)およびV5-C225-R (配列番号19、AAGAATGCGGCCGCTGCAGAGACAGTGACCAG)でC225(VL-リンカー-VH)DNA断片(配列は特許US20090099339A1における配列番号10と配列番号12で決まり、上海鋭勁生物技術有限公司によって全遺伝子合成で得られた。)を鋳型にscFv-C225断片を増幅し、増幅産物をNheI/NotI(NEBから購入)で二重酵素切断し、T4 DNAリガーゼ(NEBから購入)で同様にNheI/NotIでベクタープラスミドpCMV-V5-Fc(当該ベクターはマルチクローニングサイトの下流にヒト抗体IgG1を発現するFc断片が融合され、以下V5-Fcと略し、上海鋭勁生物技術有限公司から購入された)を二重酵素切断して連結し、かつ宿主菌TOP10に形質転換し、クローンを選択してPCRで陽性クローンを同定してシークエンシングで確認し、それぞれV5-scFv-Y022-Fc、V5-scFv-806-FcおよびV5-scFv-C225-Fc真核発現プラスミドを得た。
【0060】
上記発現プラスミドをそれぞれ良好に生長するHEK-293F細胞に形質移入し、37℃、5%CO
2、125rpmでシェーカーで7日連続培養し、4000rpmで10min遠心し、沈殿を除去し、上清を収集し、かつ0.45 μmろ膜でろ過し、処理されたサンプルをprotein A(GEから購入)親和カラムによって親和精製し、最終的に精製された抗体-Fc融合タンパク質としてscFv-Y022-Fc、scFv-806-FcおよびscFv- C225-Fcを得たが、同定結合を
図4に示す。
2.FACSによる一本鎖抗体scFv-Y022-Fc、scFv-806-FcおよびscFv-C225-Fcと細胞表面EGFRの結合能力の検出
蛍光活性化細胞選別装置(FACS) (BD社、FACS Calibur)によって一本鎖抗体scFv-Y022-Fc、scFv-806-FcおよびscFv-C225-Fcと以下の細胞系のそれぞれの結合能力を分析した。
具体的な方法は以下の通りである。
1)対数増殖期の表2に示された各腫瘍細胞を6 cmシャーレに接種し、接種の細胞密度が約90%で、37℃のインキュベーターで一晩培養した。
2)10 mMのEDTAで細胞を消化し、200 g×5 minで遠心して細胞を収集した。1×10
6〜1×10
7/mLの濃度で1%ウシ胎児血清含有リン酸塩緩衝液(NBS PBS)に再懸濁させ、100 μl/管の量でフローサイトメーター専用管に入れた。
3)200 g×5 minで遠心し、上清を捨てた。
4)それぞれ測定される抗体scFv-Y022-Fc、scFv-806-FcおよびscFv-C225-Fcを入れ、同時にPBSを陰性対照とし、抗体の最終濃度は20μg/mlで、各管に100ulずつ入れた。氷浴に45分間置いた。
5)各管に1%NBS PBSを2mlずつ入れ、200 g×5 minで遠心し、計二回行った。
6)上清を捨て、1:50で希釈したFITC蛍光で標識されたヒツジ抗ヒト抗体(上海康成生物工程有限公司)を各管に100 μlずつ入れた。氷浴に45分間置いた。
7)各管に1%NBS PBSを2mlずつ入れ、200 g×5 minで遠心し、計二回行った。
8)上清を捨て、300 μlの1%NBS PBSに再懸濁させ、フローサイトメーターで検出した。
9)フローサイトメーターのデータ解析ソフトWinMDI 2.9でデータを解析した。
【0061】
【表2】
【0062】
結果は
図5に示すように、本発明の一本鎖抗体Y022と外来EGFR過剰発現のU87-EGFR(構築方法はWang H.ら,Identification of an Exon 4-Deletion Variant of Epidermal Growth Factor Receptor with Increased Metastasis-Promoting Capacity. Neoplasia,2011,13,461-471に従う)およびEGFRvIII過剰発現のU87-EGFRvIII(構築方法はWO/2011/035465に従う)、内在EGFR過剰発現のA431、CAL 27ならびにMDA-MB-468細胞はいずれも異なる程度の結合があり、特にU87-EGFRvIIIおよびA431細胞との結合は高かったが、結合能力はいずれも一本鎖抗体806ほど高くなかった。一方、一本鎖抗体C225と上記細胞の結合能力はいずれも非常に強かった。これらの一本鎖抗体とU87細胞はほとんど結合しなかった。
【0063】
また、Y022および806の二つの一本鎖抗体はいずれもほとんど脳膠腫細胞系U87細胞と結合しなかった。特に注目すべきのは、一本鎖抗体Y022は正常前立腺上皮細胞RWPE-1およびヒト初代角質細胞K2とも結合しなかったが、一本鎖抗体806はこの二つの正常細胞のいずれとも異なる程度の結合があったことである。
これらの結果から、一本鎖抗体Y022は特異的にEGFRおよびEGFRvIIIを過剰発現する腫瘍細胞と結合することができるが、ほとんどEGFRを発現する正常細胞と結合しないことが示された。
【0064】
実施例7.Y022/CD3一本鎖二重機能抗体をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターの構築
実施例3で得られたpCantab 5E-Y022プラスミドを鋳型とし、フォワードプライマーであるpH7B3f2_fw(配列番号20、GATATTCAGATGACCCAGAGCCCGAGCAG)およびリバースプライマーであるpH7B3f2_re(配列番号21、AATAGGATCCACCACCTCCGCTGCTCACGGTCAC)をプライマー対とし、PCRによって増幅してY022 scFvのDNA断片を得た。もう一つのpHベクターシグナルペプチド配列を含むDNA断片はPCRの方法によって得られ、pH-7B3/CD3プラスミド(201210094008.Xの実施例3および
図2を参照する)を鋳型とし、フォワードプライマーであるpH7B3f1_fw(配列番号22、CCATTGACGCAAATGGGCGGTAGG)およびリバースプライマーであるpH7B3f1_re(配列番号23、CTGCTCGGGCTCTGGGTCATCTGAATATC)を使用した。二つの断片を等モル比で混合し、断片をアセンブリしてPCRを行って、アセンブリの条件は、前変性:94℃、4min、変性:94℃、40s、アニーリング:60℃、40s、伸長:68℃、140sで5サイクル後、68℃、10minで伸長させた。そして、DNAポリメラーゼおよびフォワードプライマーであるpH7B3f1_fwとリバースプライマーであるpH7B3f2_reを補充し、30サイクルで増幅し、増幅条件は、前変性:94℃、4min、変性:94℃、40s、アニーリング:60℃、40s、伸長:68℃、140sで30サイクル後、68℃、10minで伸長させた。
【0065】
増幅して得られた配列は制限酵素NheI/BamHIで同時に酵素切断し、酵素のメーカー(New England Biolabs、NEB)の推薦する反応条件で二重酵素切断を行った。発現ベクターpH(201210094008.Xの実施例3および
図2を参照する)も制限酵素NheI/BamHIで同様の酵素切断を行った。その後、酵素のメーカー(NEB)の推薦する反応条件で、T4 DNAリガーゼで二重酵素切断されたY022 scFv断片とpHベクター断片を連結した。これで得られたY022一本鎖抗体のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はベクターにクローニングされ、ベクターにすでに含まれたCD3一本鎖抗体のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とともに、1本のmRNAに転写し、最終的にY022/CD3一本鎖二重機能抗体のポリペプチドに翻訳することができる。新たなプラスミドはpH-Y022/CD3と名付けられ、その詳しい構造は
図6に示す。
【0066】
実施例8.一本鎖二重機能抗体Y022/CD3、pH-806/CD3およびpH-C225/CD3の発現と精製
発現ベクターpH-Y022/CD3、pH-806/CD3およびpH-C225/CD3(201210094008.Xを参照する)はそれぞれFreeStyle MAX Reagent形質移入試薬(Invitrogenから)の説明書の操作手順に従ってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に形質移入した後、OptiCHO?タンパク質発現キット(Invitrogenから)によって安定したクローンを選別した。それぞれ上記発現ベクターの一つが形質移入されたCHO細胞の安定したクローンを振とうフラスコで37℃、130 rpmで7日間培養し、使用された培地はCD OptiCHO(Gibcoから)であった。遠心によって培養上清を得た後、-20℃で保存した。
【0067】
メーカーによって提供された方法の手順に従い、ヒスチジンアフィニティークロマトグラフィーカラム(His Trap HP column、GE Healthcareから購入)でタンパク質の精製を行った。具体的に、クロマトグラフィーカラムを緩衝液A(20mM リン酸ナトリウム、pH 7.4、0.4M NaCl)で平衡化した後、PBSで透析して細胞培養上清(500 mL上清)をクロマトグラフィーカラム(1 mL)にかけ、流速は3 ml/minであった。その後、5倍体積の緩衝液Aおよび10倍体積の50 mMイミダゾール含有緩衝液Aでカラムを洗浄することによって、不純物のタンパク質を除去した。結合した目的タンパク質を250 mMイミダゾールを添加した同様の緩衝液Aで溶離した。すべての精製工程はいずれも4℃で操作された。
精製された一本鎖二重機能抗体を還元性SDS-PAGEによって検出し、
図7に示すように、これらの抗体分子の分子量はいずれも60 kD程度で、アミノ酸配列から計算された一本鎖二重機能抗体の分子量と一致している。
【0068】
実施例9.Y022/CD3などの一本鎖二重機能抗体の抗原結合特異性の分析
蛍光活性化細胞選別装置(FACS)(BD社、FACSCalibur)によって一本鎖二重機能抗体Y022/CD3とEGFRの結合能力を分析した。
具体的な方法は以下の通りである。
1.対数増殖期の上記表2に示された各腫瘍細胞を6 cmシャーレに接種し、接種の細胞密度が約90%で、37℃のインキュベーターで一晩培養した。
2.10 mMのEDTAで細胞を消化し、200 g×5 minで遠心して細胞を収集した。1×10
6〜1×10
7/mLの濃度で1%ウシ胎児血清含有リン酸塩緩衝液(NBS PBS)に再懸濁させ、100 μl/管の量でフローサイトメーター専用管に入れた。
3.200 g×5 minで遠心し、上清を捨てた。
4.それぞれ測定される抗体Y022/CD3を入れ、同時に無関連抗体NGR/CD3を陰性対照とし、抗体の最終濃度は5μg/mlで、各管に100ulずつ入れた。氷浴で45分間置いた。
5.各管に1%NBS PBSを2mlずつ入れ、200 g×5 minで遠心し、計2回行った。
6.上清を捨て、1:50で希釈したマウス抗ヒスチジンタグ抗体(上海睿星遺伝子技術有限公司)を各管に100 μlずつ入れた。氷浴で45分間置いた。
7.各管に1%NBS PBSを2mlずつ入れ、200 g×5 minで遠心し、計2回行った。
8.上清を捨て、1:50で希釈したFITC蛍光で標識されたヒツジ抗マウス抗体(上海康成生物工程有限公司)を各管に100 μlずつ入れた。氷浴で45分間置いた。
9.各管に1%NBS PBSを2 mlずつ入れ、200 g×5 minで遠心し、計2回行った。
10.上清を捨て、300 μlの1%NBS PBSに再懸濁させ、フローサイトメーターで検出した。
11.フローサイトメーターのデータ解析ソフトWinMDI 2.9でデータを解析した。
【0069】
結果は
図8に示すように、本発明の二重機能抗体Y022/CD3はU87-EGFR、U87-EGFRvIIIおよびA431細胞と結合することができたが、U87およびヒト角化上皮細胞とはほとんど結合することができなかった。これらの結果から、Y022/CD3は特異的に突然変異したEGFRを発現する細胞およびEGFRvIIIを過剰発現する腫瘍細胞と結合することができるが、正常にEGFRを発現する組織と結合しないことが示された。
また、図に示すように、Y022/CD3はヒト末梢血単核球(PBMC)またはJurkat細胞(ヒト末梢血白血病T細胞、CD3発現陽性)とも結合することができたことが示され、本発明の二重機能抗体は特異的に与T細胞の表面のCD3抗原と結合することができることが示唆された。
【0070】
実施例7および8に記載の方法によってそれぞれ発現プラスミド(将実施例7和8中的Y022替換為其它突変形式的抗体)を構築してM14/CD3、M15/CD3、M25/CD3、M26/CD3、S7/CD3、S8/CD3、S17/CD3、S22/CD3、S23/CD3、S29/CD3を発現・精製した。本実施例の方法に従い、それぞれこれらの抗体のEGFRvIIIを過度発現するU87-EGFRvIIIおよび内在的にEGFRを過度発現するCAL 27細胞に対する結合能力を測定した。以上の抗体はいずれもこの2種類の細胞と結合することができ、その平均蛍光強度(MFI)値は表13に示す。
【表3】
【0071】
実施例10.Y022/CD3などの一本鎖二重機能抗体の生物学的活性の分析-各種類の腫瘍細胞に対する細胞毒性
【0072】
末梢血単核球(PBMC)はFicoll(Biochromから)密度勾配遠心法によって、標準手順に従って健常者のドナーの血液から分離した。遠心後、濃度が0.1Mのリン酸塩緩衝液(PBS)で細胞を洗浄した後、RPMI 1640完全培地(Gibco)に再懸濁させ、細胞濃度を5×10
5/mLに調整した。PBMCを細胞毒性実験におけるエフェクター細胞とした。異なる腫瘍細胞を標的細胞(target cells)とした。RPMI 1640完全培地で標的細胞濃度を5×10
4/mLに調整した。同体積の標的細胞とエフェクター細胞をエフェクター細胞:標的細胞(E:T)の比が10:1になるように混合した。
混合後の細胞懸濁液を75μL/ウェルの体積で96ウェルプレートに入れた。その後、各ウェルにそれぞれ25 μLの1000 ng/mLから0.1 ng/mLの10倍系列で勾配希釈された以下の試薬を添加した。
(1) Y022/CD3一本鎖二重機能抗体(BiTe)、
(2) RPMI 1640完全培地(背景対照)、
(3) NGR/CD3一本鎖二重機能抗体(陰性対照で、NGRは新生血管の標的ペプチドで、EGFRと交差結合部位がない。通常の方法で製造された。)。
37℃、5% CO
2のインキュベーターで40時間インキュベートした後、メーカーの操作説明に従い、CytoTox96R非放射性細胞毒性検出キット(Non-Radioactive Cytotoxicity Assay kit、Promegaから)抗体の細胞毒作用を検出した。
【0073】
CytoTox96R非放射性細胞毒性検出は比色法に基づいた検出方法で、51Cr放出法の代わりとして用いられた。CytoTox 96R検出で定量的に乳酸脱水素酵素(LDH)を測定した。LDHは安定した細胞質酵素で、細胞が溶解する時に放出され、その放出形態は放射性解析における51Crの放出形態と基本的に同様である。放出されたLDH培地上清において、30分間カップリングする酵素反応によって検出することができ、酵素反応において、LDHは一種のテトラゾリド(INT)を赤色のホルマザン(formazan)に変換させることができる。生成した赤色産物の量は分解した細胞数に正比例した。
下記表3で挙げられた5種類のEGFRに関連する腫瘍細胞はそれぞれ本発明の二重機能抗体Y022/CD3および対照としてEGFRに関連しないNGR/CD3一本鎖二重機能抗体を介するT細胞の腫瘍殺傷能力の分析に使用された。
腫瘍細胞の殺傷率(すなわち、細胞毒性%)はCytoTox96R非放射性細胞毒性検出G1780製品の使用説明書で提供された以下の公式によって計算された。
【0074】
【数2】
ここで、
「実験」とは抗体/エフェクター細胞/標的細胞を入れた実験ウェルで生じたLDH放出値を、
「エフェクター細胞自発」とはエフェクター細胞が自発的に生じたLDH放出を、
「標的細胞自発」とは細胞がほかの要素で処理されていない場合生じたLDH放出を、
「標的細胞最大」とは0.8%Triton X-100で処理された後標的細胞の完全分裂によるLDH放出を、
「標的細胞最大-標的細胞自発」とは細胞が外部処理を受けた後完全分裂によるLDH放出をいう。
【0075】
【表4】
上記表3の結果から、突然変異したEGFRを発現する細胞および/またはEGFRを過剰発現する腫瘍細胞、たとえばU87-EGFRvIII、U87-EGFRおよびA431は、いずれも二重機能特異的抗体Y022/CD3を介するT細胞によって特異的に殺傷されたことがわかる。
【0076】
具体的に、Y022/CD3で処理された上記腫瘍細胞群では、最小の特異的細胞毒性は32.1%で、最大で66.2%に達した。一方、Y022/CD3は低レベルのEGFRを発現する細胞U87およびヒト初代角質細胞に対する細胞毒性が非常に低く、それぞれ3.4%および4.5%で、顕著に上記突然変異したEGFRを発現する細胞および/またはEGFRを過剰発現する腫瘍細胞の細胞毒性よりも低かった。
より具体的に、Y022/CD3および対照抗体NGR/CD3の異なる濃度における各腫瘍に対する細胞毒性%の結果は下記表4〜8に示す。
【0077】
【表5】
さらに、同じ方法でそれぞれM14/CD3、M15/CD3、M25/CD3、M26/CD3、S7/CD3、S8/CD3、S17/CD3、S22/CD3、S23/CD3、S29/CD3といった発現・精製されたBiTeに対して体外毒性実験分析を行い、結果は
図9に示す。
【0078】
図9から、突然変異したEGFRを発現する細胞および/またはEGFRを過剰発現する腫瘍細胞、たとえばU87-EGFRvIII、U87-EGFRおよびCAL27は、いずれも二重機能特異的抗体M14/CD3、M15/CD3、M25/CD3、M26/CD3、S7/CD3、S8/CD3、S17/CD3、S22/CD3、S23/CD3、S29/CD3を介するT細胞によって異なる程度で殺傷されたことがわかる。一方、低レベルのEGFRを発現する細胞U87はほとんど殺傷作用が生じなかったことがわかる。
【0079】
実施例11. 本発明の核酸がコードするキメラ抗原受容体タンパク質を発現するレンチウイルスプラスミドの構築およびウイルスのパッケージング
キメラ抗原受容体を構築し、本発明で例示されたキメラ抗原受容体の各部分の連結順は表9および
図10に示す。
【表6】
注:CD28aはCD28分子の膜貫通領域を、CD28bはCD28分子の細胞内シグナル領域を表す。
1.核酸断片の増幅
(1) scFv配列の増幅
pCantab 5E-Y022プラスミドを鋳型とし、フォワードプライマー(配列番号24で、一部のCD8シグナルペプチドの配列を含む)およびリバースプライマー(配列番号25で、一部のCD8ヒンジの配列を含む)をプライマー対とし、PCR増幅によってY022 scFvを得た。
配列番号24(TGCTCCACGCCGCCAGGCCGGATATTCAGATGACCCAG)
配列番号25(CGCGGCGCTGGCGTCGTGGTGCTGCTCACGGTCAC)
【0080】
(2) キメラ抗原受容体のほかの部分の核酸配列
抗EGFRvIIIキメラ抗原受容体タンパク質のY022 scFv以外のほかの部分の核酸配列はそれぞれ特許出願番号201310164725.Xで公開された配列番号26、27、28、29および30を鋳型としてPCR法によって得られた。具体的に、ここで、eGFP-F2A-CD8spの配列は特許出願番号201310164725.Xに記載された配列番号27のプラスミドを鋳型とし、プライマー対(配列番号26、27)でPCR増幅によって得られた。CD8-CD3δ zeta(δZ)は特許出願番号201310164725.Xにおける配列番号26のプラスミドを鋳型とし、プライマー対(配列番号28、29)でPCR増幅によって得られた。CD8-CD3 zeta(Z)、CD8-CD137-CD3 zeta(BBZ)、CD28a-CD28b-CD3 zeta(28Z)およびCD28a-CD28b-CD137-CD3 zeta(28BBZ)の配列は特許出願番号201310164725.Xにおける配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30に相応するプラスミドを鋳型とし、プライマー対(配列番号28、30)でPCR増幅によって得られた。
配列番号26(TGCAGTAGTCGCCGTGAAC)
配列番号27(CGGCCTGGCGGCGTGGAGCA)
配列番号28(ACCACGACGCCAGCGCCGCGACCAC)
配列番号29(GAGGTCGACCTACGCGGGGGCGTCTGCGCTCCTGCTGAACTTCACTCT)
配列番号30(GAGGTCGACCTAGCGAGGGGGCAGGGCCTGCATGTGAAG)
2、核酸断片のアセンブリ
【0081】
それぞれ前記のように得られたeGFP-F2A-CD8sp核酸断片を、等モルのY022 scFv核酸断片および等モルのCD8-CD3δ zeta(δZ)またはCD8-CD3 zeta(Z)またはCD8-CD137-CD3 zeta(BBZ)またはCD28a-CD28b-CD3 zeta(28Z)またはCD28a-CD28b-CD137-CD3 zeta(28BBZ)核酸片段と、図に9に示すように3つの断片のアセンブリおよびを行い、アセンブリ条件は予備変性:94℃、4min、変性:94℃、40s、アニーリング:60℃、40s、伸長:68℃、140sで、5サイクルを行った後、68℃、10minで伸長させ、DNAポリメラーゼおよびフォワードプライマー(配列番号24)とリバースプライマー(CD8-CD3δ zetaに相応するリバースプライマーは配列番号29で、ほかのリバースプライマーは配列番号30である)を補充した後、PCR増幅を30サイクル行い、増幅条件は予備変性:94℃、4min、変性:94℃、40s、アニーリング:60℃、40s、伸長:68℃、140sで、30サイクルを行った後、68℃、10minで伸長させた。増幅して得られた断片はそれぞれ(表2)
eGFP-F2A-Y022 scFv-δZ (配列番号31)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-Z (配列番号32)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-BBZ (配列番号33)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-28Z (配列番号34)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-28BBZ (配列番号35)である。
3.レンチウイルスプラスミドベクターの構築
【0082】
例示として、以下で構築されたレンチウイルスプラスミドで使用されたベクターシステムは、第三世代の自己不活性化レンチウイルスベクターシステムに属し、当該システムは計3つのプラスミド、すなわちタンパク質Gag/Pol、Revタンパク質をコードするパッケージングプラスミドpsPAX2(addgeneから購入)、VSV-Gタンパク質をコードするエンベローププラスミドPMD2.G(addgeneから購入)および空ベクターpWPT-eGFP(addgeneから購入)に基づいた目的遺伝子CARをコードする組み換え発現ベクターを有する。
【0083】
空ベクターpWPT-eGFPにおいて、自身の伸長因子-1α(elongation factor-1α、EF-1α)のプロモーターが強化型緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein、eGFP)の発現を調節することができ、空ベクターに本実施例の前記で構築された構築体を挿入した後、目的遺伝子CARをコードする組み換え発現ベクターを形成し、ここで、口蹄疫ウイルス由来のリボソームスキッピング配列(food and mouth disease virus、FMDV、ribosomal skipping sequence、F2A)でeGFPと目的遺伝子CARの共発現を実現させた。F2Aは口蹄疫ウイルスの2A(「自己切断ポリペプチド2A」ともいう)由来のコア配列で、2Aの「自己切断」機能を有し、上流と下流の遺伝子の共発現が実現できる。2Aは、切断効率が高く、上・下流遺伝子の発現のバランスが良く、かつそれ自身の配列が短いという利点のため、遺伝子治療用のマルチシストロン性ベクターの構築に有効で実行可能な策略を提供した。特に、キメラ抗原受容体遺伝子修飾Tリンパ球による免疫治療において、当該配列を用いて目的遺伝子とGFPまたはeGFPの共発現を実現させることが多く、GFPまたはeGFPを検出することで、CARの発現を間接に検出することができる。
【0084】
本実施例では、F2Aを介して連結するdGFPと特異性CARを共発現するレンチウイルス発現ベクターが構築され、pWPT-eGFP-F2A-CARと総称する。上記抗体2で得られた目的遺伝子eGFP-F2A-CAR(実施例7における2を参照し、F2Aの下流のエレメントをCARと略す)を制限酵素MluIおよびSalIで二重酵素切断し、同様に二重酵素切断されたpWPTベクターにライゲーションすることによって、各キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターを構築した。構築できたベクターはMluIおよびSalIの酵素切断によって同定され、そして配列決定によって正確と確認された後、レンチウイルスのパッケージングに使用した。前記のように、eGFP-F2A-CARは一本のmRNAに転写されるが、最終的にeGFPおよび抗EGFRvIIIキメラ抗原受容体といった二つのペプチド鎖に翻訳され、ここで、CD8αシグナルペプチドの誘導によって抗EGFRvIIIキメラ抗原受容体を細胞膜に局在化させる。
得られた各目的CARを含有するベクターは以下の通りである(F2Aの下流のエレメントをCARとも略す)。
pWPT-eGFP-F2A-Y022 scFv-δZ、
pWPT-eGFP-F2A-Y022 scFv-Z、
pWPT-eGFP-F2A-Y022 scFv-BBZ、
pWPT-eGFP-F2A-Y022 scFv-28Z、
pWPT-eGFP-F2A-Y022 scFv-28BBZ。
以上の構築によって、それぞれ5つのeGFP-F2A-CARポリペプチド配列を得たが、以下のように名付けた。
eGFP-F2A-Y022 scFv-δZ 配列番号36)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-Z (配列番号37)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-BBZ (配列番号38)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-28Z (配列番号39)、
eGFP-F2A-Y022 scFv-28BBZ (配列番号40)。
4.プラスミドの293Tへの形質移入およびレンチウイルスのパッケージング
6〜10代目まで培養したHEK-293T細胞(ATCC:CRL-11268)を10 cmシャーレに6×10
6の密度で接種し、37℃、5% CO
2で一晩培養し、形質移入への使用に備えた。培地は10%牛胎児血清(PAA社から購入)含有DMEM(PAA社から購入)である。
形質移入の手順は以下の通りである。
【0085】
4.1 A液の調製:10 μgのmock対照または10 μgの各目的遺伝子プラスミドpWPT-eGFP-F2A-CARを、それぞれ7.5 μgのパッケージングプラスミドPAX2および3 μgのエンベローププラスミドpMD2.Gとともに、800 μLの無血清DMEM培養液に懸濁させ、均一に混合した。
4.2 B液の調製:60μgのPEI(ポリエチレンイミン、Polysciencesから購入)を800μLの無血清DMEM培養液に溶解させ、軽く均一に混合し、室温で5minインキュベートした。
4.3 形質移入複合体の形成:A液をB液に入れて軽く混合し、入れた後すぐボルテックスで混合するか軽く均一に混合し、室温で20minインキュベートした。
4.4 1.6mLの形質移入複合体をHEK-293T細胞に滴下し、4〜5時間後、2%FBSのDMEM培地で形質移入の293T細胞の液置換を行った。
【0086】
形質移入の次の日に形質移入効率(すなわち緑色蛍光を示した細胞の割合)を観察し、〜80%の陽性形質移入効率の場合は形質移入実験成功とした。形質移入から72 h後、0.45 μmのフィルター(Millipore社から購入)でろ過してウイルスを収集し、その後Beckman Optima L-100XP超遠心機で28000 rpm、4℃で2時間遠心し、遠心上清を捨て、遠心で得られた沈殿を原液体積の1/10〜1/50のAIM-V培養液(Invitrogen社から購入)で再懸濁させ、100 μL/管で分注して-80℃で凍結保存し、ウイルスの滴定またはT細胞への感染に備えた。
5.mockまたはeGFP-F2A-CARでパッケージングされたレンチウイルスの力価の測定
【0087】
一日目は、1×10
5/mLで293T細胞を96ウェル培養プレートに100 μL/ウェルで接種し、37℃、5% CO
2で培養し、培養液は10%牛胎児血清含有DMEMであった。二日目は、培養上清を50 μL/ウェル捨て、新鮮な上記培養液を50μL /ウェルで追加し、最終濃度が6 μg/mLになるようにポリブレンを含有させ、37℃、5% CO
2で30 minインキュベートした。ウイルス原液を10 μL/ウェルで、またはウイルス濃縮液を1 μL/ウェルで入れ、3倍に希釈し、勾配を6つにし、重複ウェルを2つにし、37℃、5% CO
2で培養した。感染から48 h後、フローサイトメーターによってeGFPを検出し、陽性率が5〜20%になる細胞数が好適で、力価(U/mL)=陽性率×希釈倍数×100×10
4で力価を算出した。PEI形質移入法でパッケージングされた上記mock、すなわち空ベクター対照および各eGFP-F2A-CARを含むウイルスの力価はいずれも約0.5〜1×10
7 U/mLのレベルで、濃縮後測定されたウイルスの力価は約0.5〜1×10
8 U/mLであった。
実施例12.T細胞への組み換えレンチウイルスの感染
【0088】
健常者の末梢血から密度勾配遠心法によってヒト末梢血単核球(上海市血液センターから提供)を得、約2×10
6/mLの密度でAIM-Vリンパ球培地(Invitrogen社から購入)を入れて培養し、そして細胞:磁気ビーズの比率が1:1になるように抗CD3およびCD28抗体で被覆された磁気ビーズ(Invitrogen社から購入)を入れ、同時に最終濃度300 U/mLの組換えヒトIL-2(上海華新生物高技術有限公司)を入れて48 h刺激培養した後、上記組み換えレンチウイルス(MOI≒15)でT細胞を感染した。感染されたT細胞は、培養の8日目にフローサイトメトリーによって異なる各キメラ抗原受容体の発現を検出し、eGFPとCARの共発現のため、eGFPの陽性細胞、すなわちキメラ抗原受容体を発現する陽性細胞を検出した。感染されていないT細胞を陰性対照とし、異なるキメラ抗原受容体を発現するウイルスでT細胞を感染した陽性率は表10に示す。当該陽性率の結果から、レンチウイルス感染方法によってある程度の陽性率を有するCAR T細胞が得られることが分かった。
【0089】
【表7】
【0090】
T細胞は、それぞれ異なるキメラ抗原受容体でパッケージングされたウイルスにそれぞれ感染された後、細胞密度5×10
5/mlで一日おきに継代培養し、カウントし、そして継代した細胞培養液にIL-2を追加し(最終濃度300 U/ml)、培養の11日目に約100〜1000倍増幅したが、異なるキメラ抗原受容体を発現するT細胞は体外である程度の増幅が可能であることが示され、その後の体外毒性試
験および体内試験に保障を与えた。
【0091】
実施例13.CAR-Y022の体外抗腫瘍活性
体外毒性実験で使用された材料は以下の通りである。
標的細胞はそれぞれ表5に示されたU87、U87-EGFR、U87-EGFRvIII、A431、CAL 27、MDA-MB-468、RWPE-1細胞およびヒト初代角質細胞K2であった。エフェクター細胞は、体外で12日間培養され、FACSによってキメラ抗原受容体の発現が陽性と検出されたT細胞(CAR T細胞)であった。
エフェクター細胞対標的細胞比はそれぞれ3:1、1:1および1:3で、標的細胞の数は10000/ウェルで、各群はいずれも5つの重複ウェルが設けられた。検出時間は18hであった。
ここで、各実験群および各対照群は以下の通りである。
各実験群:各標的細胞+異なるキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞。
対照群1:LDH最大放出の標的細胞。
対照群2:LDH自発放出の標的細胞。
対照群3:LDH自発放出のエフェクター細胞。
【0092】
検出方法:CytoTox 96非放射性細胞毒性検出キット(Promega社)で行われた。当該方法は比色法に基づいた検出方法で、51Cr放出法の代わりとして使用することができる。CytoTox 96R検出で定量的に乳酸脱水素酵素(LDH)を測定した。LDHは安定した細胞質酵素で、細胞が溶解する時に放出され、その放出形態は放射性解析における
51Crの放出形態と基本的に同様である。放出されたLDH培地上清において、30分間カップリングする酵素反応によって検出することができ、酵素反応においてLDHは一種のテトラゾリド(INT)を赤色のホルマザン(formazan)に変換させることができる。生成した赤色産物の量は分解した細胞数に正比例した。具体的には、CytoTox 96非放射性細胞毒性検出キットの取扱説明書を参照する。
細胞毒性の計算式は以下の通りである。
【0093】
【数3】
【0094】
具体的に、表11および表12に示すように、異なるエフェクター細胞対標的細胞比の場合、806-CAR Tと比べ、本発明のキメラ抗原受容体を発現するY022-28Z CAR TおよびY022-28BBZ CAR TはEGFRおよびEGFRvIIIを高発現する細胞に対して顕著な殺傷作用を有し、かつエフェクター細胞対標的細胞比勾配依存性を示し、すなわちエフェクター細胞対標的細胞比が高くなるほど、細胞の毒性作用が強くなる。エフェクター細胞対標的細胞比依存性のデータから、さらに本発明のキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞のEGFRおよびその変異体を高発現する細胞に対する特異的細胞毒作用が示された。
【0095】
注目すべきのは、Y022-CAR TはEGFRを正常発現するRWPE-1細胞およびヒト初代角質細胞K2に対してほとんど殺傷作用がなく、エフェクター細胞対標的細胞比3:1の場合、キメラ抗原受容体Y022-28BBZ CAR T細胞はRWPE-1細胞およびヒト初代角質細胞K2に対する細胞毒性がそれぞれ12%および2%で、Y022-28Z CAR T細胞はRWPE-1細胞およびヒト初代角質細胞K2に対する細胞毒性がそれぞれ8%および3%であったことである。それに対し、806-CAR Tはこの2種類の細胞のいずれに対しても異なる程度の殺傷を有し、806-28BBZ CAR T細胞はRWPE-1細胞およびヒト初代角質細胞K2に対する細胞毒性がそれぞれ25%および22%で、806-28Z CAR T細胞はRWPE-1細胞およびヒト初代角質細胞K2に対する細胞毒性がそれぞれ15%および13%であった。
さらに、mockプラスミド(scFv-Y022-δZ担持)を含有するウイルスで形質移入された陰性対照であるCAR Tは上記細胞系に対する細胞毒性作用がいずれも非常に低かった。
【0096】
以上の結果から、EGFRおよびその変異体に対する一本鎖抗体で構築されたキメラ抗原受容体Y022-CAR Tは、選択的にEGFRおよびその変異体(EGFRvIII)を高発現する腫瘍細胞を殺傷することができるが、EGFRを正常発現する細胞に対してほとんど殺傷作用がないことが示された。また、細胞毒性のデータから、第三世代(Y022-28BBZ)のCAR Tは第二世代(Y022-28Z)のCARTに比べて標的細胞に対する殺傷毒性がより強いことがわかる。
【0097】
【表8】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。