(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-529211(P2018-529211A)
(43)【公表日】2018年10月4日
(54)【発明の名称】電気エネルギーを貯蔵するためのレドックスフロー電池及びそれの使用
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20180907BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20180907BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20180907BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2018-526295(P2018-526295)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016001338
(87)【国際公開番号】WO2017025177
(87)【国際公開日】20170216
(31)【優先権主張番号】102015010083.1
(32)【優先日】2015年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】518043069
【氏名又は名称】イェーナバッテリーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】503093420
【氏名又は名称】フリードリヒ−シラー−ユニバーシタット イエナ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト・ウルリヒ・ジグマー
(72)【発明者】
【氏名】ヤノシュカ・トビアス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ノルベルト
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA03
5H126BB10
5H126GG11
5H126GG17
5H126GG18
(57)【要約】
電気エネルギーを貯蔵するためのレドックスフロー電池及びそれの使用。
腐食性の低い酸化還元活性成分を利用する費用効果高くかつ寿命の長いレドックスフロー電池が開示される。
該レドックスフロー電池は、それぞれ少なくとも一つの液体貯蔵器と連通しており、イオン伝導性隔膜によって隔てられておりかつ電極を備えたカソード液及びアノード液のための二つの電極室を備えた反応セルを含み、この際、前記電極室がそれぞれ電解質溶液で満たされており、酸化還元活性成分を溶解もしくは分散した状態で電解質溶媒中に含んでおり、並びに場合によってはそれに溶解した伝導塩及び場合によっては他の添加剤を含む。前記レドックスフロー電池は、アノード液が一つ乃至六つの式(I)の残基または一つ乃至六つの式(II)の残基を分子中に有する酸化還元活性成分を含むことかつ前記カソード液が一つ乃至六つの式(III)の残基を分子中に有する酸化還元活性成分を含むかまたは鉄塩を含むこと、あるいはアノード液及びカソード液が、一つ乃至六つの式(I)または式(II)の残基を一つ乃至六つの式(III)の残基と組み合わせて分子中に有する酸化還元活性成分を含むことを特徴とする。
式中、
R
1は、共有C−C結合であるかまたは二価の橋掛け基であり、
R
2及びR
3は、互いに独立して、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロサイクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはシアノを意味し、
Xは、q価の無機または有機アニオンを意味し、
b及びcは、互い独立して、0〜4の整数であり、
qは、1〜3の整数であり、
aは、2/qの値を持つ数であり、そして
R
4、R
5、R
6及びR
7は、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーの貯蔵のためのレドックスフロー電池において、前記レドックスフロー電池は、カソード液及びアノード液のための二つの電極室を備えた反応セルを含み、前記電極室は、それぞれ少なくとも一つの液体貯蔵器と連通しており、イオン伝導性隔膜によって隔離されておりかつ電極が装備されており、この際、電極室はそれぞれ電解質溶液が満たされており、これらの電解質溶液は、酸化還元活性成分を、溶解もしくは分散した状態で電解質溶媒中に含み、並びに場合によりそれに溶解された伝導塩及び場合により更に別の添加剤を含むレドックスフロー電池であって、前記アノード液が、一つ乃至六つの式Iの残基を分子中に含むかまたは一つ乃至六つの式IIの残基を分子中に含む酸化還元活性成分であることかつ前記カソード液が、一つ乃至六つの式IIIの残基を分子中に含むかまたは鉄塩を含む酸化還元活性成分であること、あるいはアノード液及びカソード液が、一つ乃至六つの式Iまたは式IIの残基を一つ乃至六つの式IIIの残基と組み合わせて分子中に含む酸化還元活性成分であることを特徴とする、前記レドックスフロー電池。
【化1】
式I及びIIの構造中の窒素原子から分岐するライン及び式IIIの構造中の4位から分岐するラインは、式I、II及びIIIの構造を分子残部と連結する共有結合を表し、
R
1は、共有C−C結合であるかまたは二価の橋掛け基であり、
R
2及びR
3は、互いに独立して、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロサイクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはシアノを意味し、
Xは、q価の無機または有機アニオンまたはこのようなアニオンの混合を意味し、
b及びcは、互い独立して、0〜4の整数であり、
qは、1〜3の整数であり、
aは、2/qの値を持つ数であり、そして
R
4、R
5、R
6及びR
7は、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを意味する。
【請求項2】
アノード液が、一つ乃至四つの式Iの残基または一つ乃至四つの式IIの残基を分子中に含む酸化還元活性成分であることかつカソード液が、一つ乃至四つの式IIIの残基を分子中に含むかまたは鉄塩を含む酸化還元活性成分であること、あるいはアノード液及びカソード液が、一つ乃至四つの式Iまたは式IIの残基を一つ乃至四つの式IIIの残基と組み合わせて分子中に含む酸化還元活性成分であることを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記アノード液中に、一つ乃至四つの式Iaまたは式IIaの残基を分子中に含む酸化還元活性成分を使用することを特徴とする、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【化2】
式Ia及びIIaの構造中の窒素原子から分岐したラインは、式Ia及びIIaの構造を分子残部と連結する共有結合を表し、そして
R
2、R
3、X、a、b、c及びqは、請求項1で定義した意味を有する。
【請求項4】
前記アノード液中に、式Ib、IIb、IV、V、VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIa、VIIIb、IX、IXa、IXb、X、Xa、Xb、XI、XIa、XIb、XII、XIIa及び/またはXIIbの化合物が酸化還元活性成分として使用されることを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【化3】
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びXは、請求項1で定義した意味を有し、
R
8及びR
10は、互いに独立して、水素、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたシクロアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアリール、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアラルキルを意味し、特にC
1〜C
6アルキル、カルボン酸エステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキル、就中好ましくは水素、プロピオネート、イソブチオネート、エチルまたはメチルを意味し、
R
9は、二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
12は、共有結合であるかまたは二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
14は、共有結合であるかまたは二価の有機橋掛け基であり、
R
15は、二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
18は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合した、o倍に正に荷電した二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機残基、特に二価乃至四価の第四級アンモニウム残基、二価乃至四価の第四級ホスホニウム残基、二価乃至三価の第三級スルホニウム残基、またはo倍に正に荷電した二価乃至六価の、特に二価乃至四価のへテロ環状残基であり、
R
19は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合したo倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した二価の有機残基であり、特に第四級アンモニウム残基、第四級ホスホニウム残基、第三級スルホニウム残基、またはo倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した二価のヘテロ環状基であり、
R
20及びR
21は、互いに独立して、水素、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたシクロアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアリール、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアラルキルを意味するか、あるいは二つの残基R
20及びR
21は、一緒になって、C
1〜C
3アルキレン基を形成し、特にC
1〜C
6アルキル、カルボン酸エステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキルであるか、または一緒になってエチレンを意味し、そして就中好ましくは水素、プロピオネート、イソブチオネート、エチルもしくはメチル、または一緒になってエチレンを意味し、
R
22は、二価の有機橋掛け基であり、
R
23は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合している、u倍に負に荷電した二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機残基であり、特に一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたアルキレン残基、一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたフェニレン残基、または一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換された二価のヘテロ環状残基であり、
R
24は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合しているu倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した二価の有機残基であり、特にカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたアルキレン残基、カルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたフェニレン残基、またはカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換された二価のヘテロ環状残基であり、
a、b、c及びqは、請求項1で定義した意味を有し、
dは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
eは、(2+2d+2t)/qの値の数であり、
gは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
hは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
この際、gとhの合計は、2〜6の整数、好ましくは2〜4の整数であり、
iは、2h/qの値の数であり、
jは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
kは、(2+2j)/qの値の数であり、
oは、1〜4の整数であり、
pは、(o+2h)/qの値の数であり、
rは、(3+3j)/qの値の数であり、
tは、0であるか、またはR
9が二価の有機橋掛け基である場合には0もしくは1を意味し、
uは、1〜4の整数であり、
zは、2/qの値の数であり、
z1は、(o+2)/qの値の数であり、
Yは、2h−uまたは2(2−u)−uが0よりも大きい場合には、v価もしくはx価の無機もしくは有機アニオン、またはこのようなアニオンの混合を意味するか、あるいは2h−uまたは2(2−u)−uが0よりも小さい場合には、v価もしくはx価の無機もしくは有機カチオンまたはこのようなカチオンの混合を意味し、
vは、−1〜−3の整数または+1〜+3の整数であり、
xは、−1〜−3の整数または+1〜+3の整数であり、
wは、0であるかまたは(−u+2h)/vの値の正の数であり、
yは、0であるかまたは(2−u)(j+1)/xの値の正の数であり、
Y1は、2−2uが0よりも小さい場合には、x1価の無機もしくは有機カチオンまたはこのようなカチオンの混合を意味し、
x1は、−1〜−3の整数または+1〜+3の整数であり、そして
y1は、0であるかまたは(2−2u)/x1の値の正の数である。
【請求項5】
アノード液中に、式IVa、Va、VIIc、VIIIc、IXc及び/またはXcの化合物が酸化還元活性成分として使用されることを特徴とする、請求項4に記載のレドックスフロー電池。
【化4】
式中、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びXは、請求項1で定義した意味を有し、
R
8、R
9、R
10、R
12、R
14及びR
15は、請求項4で定義した意味を有し、
b、c及びqは、請求項1で定義した意味を有し、
そして
d、e、g、h、i、j及びkは、請求項4で定義した意味を有する。
【請求項6】
カソード液中に、式IIIa、IIIb、IIIc、VI、VIa及び/もしくはVIbの化合物または請求項4に定義した式VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIa、VIIIb、IX、IXa、IXb、X、Xa及び/もしくはXbの化合物が酸化還元活性成分として使用されることを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【化5】
式中、
R
4、R
5、R
6、R
7、X及びqは、請求項1で定義した意味を有し、
o及びuは、請求項4で定義した意味を有し、
R
11は、二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
13は、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロサイクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはシアノであり、そして
R
16は、o倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した一価の有機残基、特に第四級アンモニウム残基、第四級ホスホニウム残基、第三級スルホニウム残基、またはo倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した一価のヘテロ環状基であり、そして
R
17は、m倍に正に荷電した二価乃至四価の有機残基、特に二価乃至四価の第四級アンモニウム残基、二価乃至四価の第四級ホスホニウム残基、二価乃至四価の第三級スルホニウム残基、またはm倍に正に荷電した二価乃至四価のヘテロ環状残基であり、
R
25は、u倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した一価の残基、特にカルボキシル残基もしくはスルホン酸残基であるか、またはu倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した一価のヘテロ環状残基であり、
R
26は、m倍に負に荷電した二価乃至四価の有機残基であり、特に一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたアルキレン残基、または一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたフェニレン残基、または一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換された二価のヘテロ環状残基であり、
Zは、q価の無機または有機カチオンまたはこのようなカチオンの混合を意味し、
fは、1〜3の整数であり、
lは、o/qまたはu/qの値の数であり、
mは、1〜4の整数であり、そして
nは、m/qの値の数を意味する。
【請求項7】
カソード液中に、請求項5または6で定義される式VI、VIa、VIIc、VIIIc、IXc及び/またはXcの化合物が酸化還元活性化合物として使用されることを特徴とする、請求項5または6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
式Ib、IIb、VIId、VIIe、VIIId及び/またはVIIIeの化合物が酸化還元活性化合物として使用されることを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【化6】
式中、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びXは、請求項1で定義した意味を有し、
R
8、R
10、R
14及びR
19は、請求項4で定義した意味を有し、
R
20及びR
21は、互いに独立して、水素、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたシクロアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアリール、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアラルキルを意味するか、あるいは二つの残基R
20及びR
21は、一緒になって、C
1〜C
3アルキレン基を形成し、特にC
1〜C
6アルキル、カルボン酸エステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキルであるか、または一緒になってエチレンを意味し、そして就中好ましくは水素、プロピオネート、イソブチオネート、エチルもしくはメチル、または一緒になってエチレンを意味し、
a、b、c及びqは、請求項1で定義した意味を有し、
sは、3/qの値の数であり、及び
式Ib、IIb、VIId、VIIe、VIIId及び/またはVIIIeの化合物がアノード液中に及び式VIIc、VIId、VIIIc及び/またはVIIIdの化合物がカソード液中に使用される。
【請求項9】
前記カソード液が、請求項6に記載の式IIIa、IIIbまたはIIIcの化合物を、かつ前記アノード液が、請求項4に記載の式IbまたはIIbの化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記カソード液が式IIIbの化合物を、かつアノード液が式Ibの化合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
式IIIbの化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−4−(N,N,N−トリアルキルアンモニウム)の塩であること及び式Ibの化合物がN,N’−ジアルキルバイオロゲンの塩であることを特徴とする、請求項10に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
カソード液中及び/またはアノード液中に、請求項4、5または8に定義される式VII、VIIa、VIIb、VIIc、VIId、VIIe、VIII、VIIIa、VIIIb、VIIIc、VIIId、VIIIe、IX、IXa、IXb、IXc、X、Xa、XbまたはXcの化合物が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンまたはテトラフルオロホウ酸イオン、並びに好ましくは水素イオン、アルカリ−もしくはアルカリ土類金属カチオン、及び置換されたもしくは置換されていないアンモニウムカチオンの群から選択されるカチオンを含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載のレドックスフロー電池。
【請求項14】
一つ乃至四つの式IまたはIIの構造単位を含む酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R1は、共有C−C結合であるかまたはアリーレンもしくはヘテロアリーレンであり、就中好ましくは共有C−C結合、フェニレン、ビフェニレンまたはチオフェンジイルであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載のレドックスフロー電池。
【請求項15】
一つ乃至四つの式IまたはIIの構造単位を含む酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、b及びcは0であるか、またはb及びcは1または2を意味し、そしてR2及びR3は、それぞれメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、ヒドロキシ、アミノまたはニトロを意味することを特徴とする、請求項1〜5または6〜14のいずれか一つに記載のレドックスフロー電池。
【請求項16】
一つ乃至四つの式III、VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIa、VIIIb、IX、IXa、IXb、X、XaまたはXbの構造単位、特に式IIIa、IIIb、V、VIa、VIIc、VIId、VIIe、VIIIc、VIIId、VIIIe、IXcまたはXcの構造単位を含む酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R4、R5、R6及びR7は、それぞれC1〜C6アルキル、就中好ましくはエチルまたはメチルを意味することを特徴とする、請求項1または4〜15のいずれか一つに記載のレドックスフロー電池。
【請求項17】
式IV、V、VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIaまたはVIIIbの酸化還元活性化合物、特に式IVa、Va、VIIcまたはVIIIcの酸化還元活性化合物、就中好ましくは式Ib、VIId、VIIe、VIIIdまたはVIIIeの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R8はまたはR8とR10は、水素、C1〜C6アルキル、カルボン酸アルキルエステル基で置換されたC1〜C6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC1〜C6アルキル、カルボン酸基で置換されたC1〜C6アルキル、スルホン酸基で置換されたC1〜C6アルキル、またはアミノ基で置換されたC1〜C6アルキルを意味し、就中好ましくは水素、プロピオネート、イソブチオネート、エチルまたはメチルを意味することを特徴とする、請求項4、5または8のいずれか一つに記載のレドックスフロー電池。
【請求項18】
式IIbの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R20及びR21は、水素、C1〜C6アルキル、カルボン酸アルキルエステル基で置換されたC1〜C6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC1〜C6アルキル、カルボン酸基で置換されたC1〜C6アルキル、スルホン酸基で置換されたC1〜C6アルキル、またはアミノ基で置換されたC1〜C6アルキルを意味し、就中好ましくは水素、プロピオネート、イソブチオネート、エチルまたはメチルを意味するか、あるいは残基R20及びR21は一緒になってC1〜C3アルキレン基、特にエチレンを形成することを特徴とする、請求項8に記載のレドックスフロー電池。
【請求項19】
式IIIaの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R13は水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、部分的にまたは完全にフッ素化されたC1〜C6アルキル、部分的にもしくは完全に塩素化されたC1〜C6アルキル、C1〜C6フルオロクロロアルキル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、ヒドロキシ、アミノまたはニトロであることを特徴とする、請求項6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項20】
式IVまたはVの酸化還元活性化合物、特に式IVaまたはVaの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R9は、アルキレン、ポリ(アルキレンアミノ)、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC2〜C6アルキレン、ジ(C2〜C6アルキレンアミノ)、トリ(C2〜C6アルキレンアミノ)、クオーター(C2〜C6アルキレンアミノ)、フェニレン、フェニルトリイルまたはフェニルクオタニルであることを特徴とする、請求項4または5に記載のレドックスフロー電池。
【請求項21】
式VIIまたはVIIIの酸化還元活性化合物、特に式VIIcまたはVIIIcの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R12はアルキレン、アルキルトリイル、アルキルクオタニル、アルキルオキシジイル、アルキルオキシトリイル、アルキルオキシクオタニル、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC2〜C6アルキレン、例えばエチレンもしくはプロピレン、またはC2〜C6アルコキシジイル、例えば1,2−ジオキシエチレンもしくは1,3−ジオキシプロピレン、またはC3〜C6アルコキシトリイル、例えば1,2,3−プロパントリオール残基もしくはトリメチロールプロパン残基、またはC4〜C6アルコキシクオタニル、例えばペンタエリトリトール残基、またはフェニレン、フェニルトリイルもしくはフェニルクオタニルであることを特徴とする、請求項4または5に記載のレドックスフロー電池。
【請求項22】
式IXまたはXの酸化還元活性化合物、特に式VIIdまたはVIIIdの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R14は、アルキレン、アルキレンアミノ、ポリ(アルキレンアミノ)、アリーレンまたはヘテロサイクリレンであり、就中好ましくはC2〜C6アルキレン、C2〜C6アルキレンアミノもしくはフェニレンであることを特徴とする、請求項4または8に記載のレドックスフロー電池。
【請求項23】
式IXまたはXの酸化還元活性化合物、特に式IXcまたはXcの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R15はアルキレン、アルキルトリイル、アルキルクオタニル、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC2〜C6アルキレン、例えばエチレンもしくはプロピレン、またはフェニレン、フェニルトリイルもしくはフェニルクオタニルであることを特徴とする、請求項4または5に記載のレドックスフロー電池。
【請求項24】
式VIの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、R11はアルキレン、アルキルトリイル、アルキルクオタニル、アルキルオキシジイル、アルキルオキシトリイル、アルキルオキシクオタニル、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC2〜C6アルキレン、例えばエチレンもしくはプロピレン、またはC2〜C6アルコキシジイル、例えば1,2−ジオキシエチレンもしくは1,3−ジオキシプロピレン、またはC3〜C6アルコキシトリイル、例えば1,2,3−プロパントリオール残基もしくはトリメチロールプロパン残基、またはC4〜C6アルコキシクオタニル、例えばペンタエリトリトール残基、またはフェニレン、フェニルトリイルもしくはフェニルクオタニルであることを特徴とする、請求項6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項25】
式VIIまたはVIIIの酸化還元活性化合物、特に式VIIaまたはVIIIaの酸化還元活性化合物、就中好ましくは式VIIcまたはVIIIcの酸化還元活性化合物が使用され、但しこの際、指数gが1でありかつ指数hが1または2を意味するか、あるいは指数gが1または2でありかつ指数hが1を意味することを特徴とする、請求項4または5に記載のレドックスフロー電池。
【請求項26】
定置型及び移動型用途のための電気エネルギーの貯蔵のための、特に、非常電源供給、ピーク負荷分散のための定置型貯蔵器としての、特に光起電及び風力発電の分野での再生可能なエネルギー源からのまたはガス−、石炭−、バイオマス−、潮汐−及び海洋発電所からの、電気エネルギーの中間貯蔵のための、及び陸上車、航空機及び船舶における貯蔵器としてのエレクトロモビリティの分野での使用のための、請求項1〜25のいずれか一つに記載のレドックスフロー電池の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを貯蔵するための、一般的な用語ではレドックスフローバッテリーとも称されるレドックスフロー電池に関する。レドックスフロー電池は、二つの極性特異性の部屋を含み、これらそれぞれで、酸化還元活性化合物が両方の部屋中で溶解した形または分散した状態で電解質溶剤中に存在しており、そして液体貯蔵器と連通している。このようにして、二つの独立した循環系が、例えば水中または有機溶剤中に溶解もしくは分散した状態で電解質溶剤中に存在する酸化還元活性化合物のために形成され、これらは、極性特異性室間の隔膜によって隔てられている。この隔膜を介して、両室間のイオン交換が行われる。
【背景技術】
【0002】
これらの電池は、例えば風力または太陽発電所のための緩衝電池としてあるいは電極供給網における負荷分散のための予備電源及び調整電源として定置型貯蔵用途のために、更には移動型エネルギー貯蔵器、例えば電気自動車及び電子デバイスの駆動のためのエネルギー貯蔵器としても、特に適している。
【0003】
レドックスフローバッテリー(RFB)は、電気化学的なエネルギー貯蔵器である。電極での電位調節のために必要な化合物は、溶解した酸化還元活性種であり、これらは、電気化学的反応器中での充電または放電過程の際にそれぞれ他の酸化還元状態に変換される。このためには、電解質溶液(カソード液、アノード液)がタンクから取り出され、そして積極的に電極へとポンプ輸送される。アノード及びカソード室は、反応器中ではイオン選択性隔膜によって隔てられており、これは、大概は、カチオン、特にプロトンに高い選択性を示す(例えばNafion
TM)。その他、負に荷電したイオンを選択的に通過させ得かつ正に荷電したイオンをブロックする隔膜も存在する。更に、アニオンも、カチオンも通過させ得るサイズ選択性隔膜(例えば、透析用隔膜または限外濾過用隔膜)が利用されている。
【0004】
アノード室及びカソード室は、本発明の意味では以下のように定義される。カソード室は、電解質としてカソード液を含み、そしてカソードと、カソードの方を向いている隔膜面とによって画定される。アノード室は、電解質としてアノード液を含み、そしてアノードと、アノードの方を向いている隔膜面とによって画定される。
【0005】
カソードでは、放電の時には酸化還元活性成分の還元が、充電の時には酸化還元活性成分の酸化が起こる。アノードでは、放電の時には酸化還元活性成分の酸化が、充電の時には酸化還元活性成分の還元が起こる。
【0006】
充電過程の間のレドックスフロー電池における反応の例示的な説明:
【0007】
アノード
A+e
−→A
−またはA
−+e
−→A
2−またはA
n++xe
−→A
(n−x)+またはA
n−+xe
−→A
(n+x)−
ここで、Aは、酸化還元活性成分であり、n及びxは1以上の自然数を取ることができる。電子は、e
−の符合によって表される。
【0008】
カソード
K→K
++e
−またはK
−→K+e
−またはK
n+→K
(n+y)++ye
−またはK
n−→K
(n−y)−+ye
−
ここで、Kは、酸化還元活性成分であり、n及びyは1以上の自然数を取ることができる。電子は、e
−の符合によって表される。
【0009】
電池の放電時は、上記の反応が逆になる。
【0010】
電解質溶液がポンプ輸送されている間に、電流を取り出し得るか(放電)または系内に供給できる(充電)。RFB中に供給できるエネルギー量は、貯蔵タンクのサイズに直接比例する。それに対して、取り出すことができる電力は、電気化学的反応器のサイズの関数である。
【0011】
RFBは、複雑なシステム技術を有し(BoP−Balance of Plant(周辺機器))、これは、燃料電池のそれとほぼ一致する。個々の反応器の通常の建設サイズは、約2〜50kWの範囲である。反応器は、非常に簡単にモジュラー式に組み合わせることができ、同様に、タンクサイズもほぼ任意に適合させることができる。両側でバナジウム化合物をレドックスペアとして用いて働くRFB(VRFB)が特に重要である。このシステムは、最初は1986年に開示され(AU575247B(特許文献1))、そして目下、技術的な標準となっている。
【0012】
他の無機系で低分子量のレドックスペア(酸化還元活性化合物)が研究されており、中でも、次の物質をベースとするものがある。
・セリウム(B.Fang,S.Iwasa,Y.Wei,T.Arai,M.Kumagai:“A study of the Ce(III)/Ce(lV) redox couple for redox flow battery application”,Electrochimica Acta 47,2002,3971−3976(非特許文献1))
・ルテニウム(M.H.Chakrabarti,E.Pelham,L.Roberts,C.Bae,M.Saleem:“Ruthenium based redox flow battery for solar energy storage”,Energy Conv.Manag.52,2011,2501−2508(非特許文献2))
・クロム(C−H.Bae,E.P.L.Roberts,R.A.W.Dryfe:“Chromium redox couples for application to redox flow batteries”,Electrochimica Acta 48,2002,279−87(非特許文献3))
・ウラン(T.Yamamura,Y.Shiokawa,H.Yamana,H.Moriyama:“Electrochemical investigation of uranium β−diketonates for all−uranium redox flow battery”,Electrochimica Acta 48,2002,43−50(非特許文献4))
・マンガン(F.Xue,Y.Wang,W.Hong Wang,X.Wang:“Investigation on the electrode process of the Mn(II)/Mn(llI) couple in redox flow battery”,Electrochimica Acta 53,2008,6636−6642(非特許文献5))
・鉄(L.W.Hruska,R.F.Savinell:“Investigation of Factors Affecting Performance of the Iron−Redox Battery”,J.Electrochem.Soc.,128:1,1981,18−25(非特許文献6))
【0013】
水溶液中の有機系及び部分有機系システムも同様に注目されている。 2014年1月にアントラキノン−ジスルホン酸/臭素のシステムが開示された。これは、非常に高い電流密度を可能とするが、元素状臭素の使用のために、全てのバッテリー部品の材料及びシステムの安全性に高い要求を課す。(B.Huskinson,M.P.Marshak,C.Suh,S.Er,M.R.Gerhardt,C.J.Galvin,X.Chen,A.Aspuru−Guzik,R.G.Gordon,M.J.Aziz:“A metal free organic−inorganic aqueous flow battery”,Nature 505,2014,195−198(非特許文献7))。水溶液の状態の完全に有機系のシステムとして、キノン類も同様に試験されている(B.Yang,L.Hoober−Burkhard,F.Wang,G.K.Surya Prakash,S.R.Narayanan:“An inexpensive aqueous flow battery for large−scale electrical energy storage based on eater−doluble organic redox couples”:J.Electrochem.Soc.,161(9),2014,A1361−A1380(非特許文献8))。しかし、酸化還元システムに有意に適用可能な電流密度は、5mA/cm
2未満に制限され、そして最大で達成可能な容量は10Ah/l未満である。安定したラジカル分子の2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリドニルオキシル(TEMPO)も同様に既に、N−メチルフタルイミドと共にレドックスフローバッテリーで使用された。(Z.Li,S.Li,S.Liu,K.Huang,D.Fang,F.Wang,S.Peng:“Electrochemical properties of an all−organic redox flow battery using 2,2,6,6−Tetramethyl−1−Piperidonyloxyl and N−Methylphtalimid”:Electrochemical and Solid−State Letters,14(12),2011,A171−A173(非特許文献9))。原料の生じる電位及び溶解性の故に、この材料システムは、水性媒体中では簡単には使用できないだけでなく、溶剤、例えばアセトニトリルなどの危険物質を前提としている。更に、このシステムでは、0.35mA/cm
2の達成可能な電流密度は、本発明で提案される材料システムの場合よりも少なくとも100倍低い。LiPF
6及びTEMPOなどの他の電解質システム(X.Wie,W.Xu,M.Vijayakumar,L.Cosimbescu,T.Liu,V.Sprenkle,W.Wang:“TEMPO−based Catholyte for high−energy densitiy redox flow batteries”Adv.Mater.2014 Vol.26,45,p7649−7653(非特許文献10))も同様に、有機溶剤及び伝導塩を前提としており、これらは、故障の時に有毒なガス、例えばフッ化水素を放出する恐れがあり、そのため、システムの安全性に高い要求を課す。
【0014】
WO2014/026728A1(特許文献2)からは、半透過性隔膜を備えたレドックスフロー電池が知られており、ここでは、レドックスペアとして高分子量化合物が使用されている。実施例では、ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシメタクリレート−co−ポリ(エチレングリコールメチルエーテル−メタクリレート)がカソード液として、そしてポリ(4,4’−ビピリジン−co−ポリ(エチレングリコール)がアノード液として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】AU575247B
【特許文献2】WO2014/026728A1
【特許文献3】EP0042984
【特許文献4】EP0191726A2
【特許文献5】EP0206133A1
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】B.Fang,S.Iwasa,Y.Wei,T.Arai,M.Kumagai:“A study of the Ce(III)/Ce(lV) redox couple for redox flow battery application”,Electrochimica Acta 47,2002,3971−3976
【非特許文献2】M.H.Chakrabarti,E.Pelham,L.Roberts,C.Bae,M.Saleem:“Ruthenium based redox flow battery for solar energy storage”,Energy Conv.Manag.52,2011,2501−2508
【非特許文献3】C−H.Bae,E.P.L.Roberts,R.A.W.Dryfe:“Chromium redox couples for application to redox flow batteries”,Electrochimica Acta 48,2002,279−87
【非特許文献4】T.Yamamura,Y.Shiokawa,H.Yamana,H.Moriyama:“Electrochemical investigation of uranium ss−diketonates for all−uranium redox flow battery”,Electrochimica Acta 48,2002,43−50
【非特許文献5】F.Xue,Y.Wang,W.Hong Wang,X.Wang:“Investigation on the electrode process of the Mn(II)/Mn(llI) couple in redox flow battery”,Electrochimica Acta 53,2008,6636−6642
【非特許文献6】L.W.Hruska,R.F.Savinell:“Investigation of Factors Affecting Performance of the Iron−Redox Battery”,J.Electrochem.Soc.,128:1,1981,18−25
【非特許文献7】B.Huskinson,M.P.Marshak,C.Suh,S.Er,M.R.Gerhardt,C.J.Galvin,X.Chen,A.Aspuru−Guzik,R.G.Gordon,M.J.Aziz:“A metal free organic−inorganic aqueous flow battery”,Nature 505,2014,195−198
【非特許文献8】B.Yang,L.Hoober−Burkhard,F.Wang,G.K.Surya Prakash,S.R.Narayanan:“An inexpensive aqueous flow battery for large−scale electrical energy storage based on eater−doluble organic redox couples”:J.Electrochem.Soc.,161(9),2014,A1361−A1380
【非特許文献9】Z.Li,S.Li,S.Liu,K.Huang,D.Fang,F.Wang,S.Peng:“Electrochemical properties of an all−organic redox flow battery using 2,2,6,6−Tetramethyl−1−Piperidonyloxyl and N−Methylphtalimid”:Electrochemical and Solid−State Letters,14(12),2011,A171−A173
【非特許文献10】X.Wie,W.Xu,M.Vijayakumar,L.Cosimbescu,T.Liu,V.Sprenkle,W.Wang:“TEMPO−based Catholyte for high−energy densitiy redox flow batteries”Adv.Mater.2014 Vol.26,45,p7649−7653
【非特許文献11】C.L.Bird,A.T.Kuhn,Chem.Soc.Rev.:“Electrochemistry of the viologens”40,1981,p49−82
【非特許文献12】T.W.Ebbesen,G.Levey,L.K.Patterson “Photoreduction of methyl viologen in aqueous neutral solution without additives” Nature,1982 vol 298,p545−548
【非特許文献13】Allen J.Bard und Larry R.Faulkner,“Electrochemical Methods:Fundamentals and Applications”,2001,2.Auflage,John Wiley & Sons;Richard G.Compton,Craig E.Banks,“Understanding Voltammetry”,2010,2.Auflage,Imperial College Press
【非特許文献14】Lothar Dunsch:Elektrochemische Reaktionen an Glaskohlenstoff,Zeitschrift fuer Chemie,14, 12,p463−468,Dezember 1974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、安全に、費用効果高くかつ効率よく稼働でき、より向上したポンプ輸送性を有する電解質溶液を含み、隔膜の欠陥箇所を介した公差汚染が起こった場合でさえ、続けて稼働でき、そして既知の解決策と比べて増大した電位レベルを達成できる、選択された酸化還元活性材料システムを備えたレドックスフロー電池を提供するという課題に基づくものである。本発明に従い使用される酸化還元活性成分は、WO2014/026728A1(特許文献2)から知られるポリマー型酸化還元活性化合物と比べて、明らかに低下した粘度を特徴とする。既知のポリマー型レドックスシステムと比べて、濃縮溶液の粘度は、匹敵する容量(1mol/Lレドック活性単位)において明らかに低く、そうして溶液のポンプ輸送時に、生じる圧力損失は小さく、これは、より良好なエネルギー効率を表す。例えば、N−ジメチルバイオロゲンクロライドの濃縮溶液は、室温で5mPasの粘度を有し、他方で、N−メチルバイオロゲンポリマーの濃縮溶液は、同一の容量及び室温において、20mPasの粘度を有する。更に、本発明に従い使用される材料システムは、酸ベースの電解質と比べてより低い腐食性を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、触媒無しで稼働することができ、水中に非常に良好に溶解でき、低廉でありかつ互いに相溶性の選択された酸化還元活性材料システムを備えたレドックスフロー電池の提供によって解消される。上記酸化還元活性材料システムは、分散物としても使用できる。
【0019】
本発明は、それぞれ少なくとも一つの液体貯蔵器と連通しており、イオン伝導性隔膜によって隔てられておりかつ電極を備えたカソード液及びアノード液のための二つの電極室を備えた反応セルを含む電気エネルギーの貯蔵のためのレドックスフロー電池であって、前記電極室がそれぞれ電解質液で満たされており、酸化還元活性成分を溶解もしくは分散した状態で電解質溶剤中に含んでおり、並びに場合によってはそれに溶解した伝導塩及び場合によっては他の添加剤を含む、前記レドックスフロー電池に関する。本発明によるレドックスフロー電池は、アノード液が、一つ乃至六つ、好ましくは一つ乃至四つ、特に一つ乃至三つ、就中好ましくは一つ乃至二つの式Iの残基を分子中に含むか、もしくは一つ乃至六つ、好ましくは一つ乃至四つ、特に一つ乃至三つ、就中好ましくは一つ乃至二つの式IIの残基を分子中に含む酸化還元活性成分であること、及びカソード液が、一つ乃至六つ、好ましくは一つ乃至四つ、特に一つ乃至三つ、就中好ましくは一つ乃至二つの式IIIの残基を分子中に含むかもしくは鉄塩を含む酸化還元活性成分であること、あるいはアノード液及びカソード液が、一つ乃至六つ、好ましくは一つ乃至四つ、特に一つ乃至三つ、就中好ましくは一つ乃至二つの式Iまたは式IIの残基を、一つ乃至六つ、好ましくは一つ乃至四つ、特に一つ乃至三つ、就中好ましくは一つ乃至二つの式IIIの残基と組み合わせて分子中に含む酸化還元活性成分であることを特徴とする。
【0020】
【化1】
式中、
式I及びIIの構造中の窒素原子から分岐するライン及び式IIIの構造中の4位から分岐するラインは、式I、II及びIIIの構造を分子残部と連結する共有結合を表し、
R
1は共有C−C結合であるかまたは二価の橋掛け基、特に共有C−C結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基、就中好ましくは共有C−C結合、フェニレン基、ビフェニレン基またはチオフェンジイル基であり、
R
2及びR
3は、互いに独立して、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロサイクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはシアノを意味し、
Xは、q価の無機または有機アニオンまたはこのようなアニオンの混合を意味し、
b及びcは、互い独立して、0〜4の整数、好ましくは0、1または2であり、
qは、1〜3の整数であり、
aは、2/qの値を持つ数であり、そして
R
4、R
5、R
6及びR
7は、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを意味し、特にC
1〜C
6アルキル、就中好ましくはエチルまたはメチルを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1の電池のOCV曲線を充電状態の関数としてプロットしたものである。
【
図3】実施例2の電池のOCV曲線を充電状態の関数としてプロットしたものである。
【
図4】TEMPO−塩化アンモニウム及び塩化物イオン含有ジ−メチルバイオロゲンを含む電池のOCV曲線、並びにTEMPOベースのポリマー及びバイオロゲンベースのポリマーを含む電池のOCV曲線を示すものである。
【
図5】実施例3の電池のOCV曲線を充電状態(SOC)の関数としてプロットしたものである。
【
図6】実施例3の電池の充電曲線を示すものである。
【
図7】実施例4の電池のOCV曲線を充電状態(SOC)の関数としてプロットしたものである。
【
図8】実施例4の電池の充電曲線を示すものである。
【
図9】銀/塩化銀基準電極に対して測定した、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)中でのTEMPO−塩化アンモニウムのサイクリックボルタモグラムを示すものである。
【
図10】銀/塩化銀基準電極に対して測定した、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)中でのメチルバイオロゲン−TEMPOのサイクリックボルタモグラムを示すものである。
【
図11】銀/塩化銀基準電極に対して測定した、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)中でのプロパノエートバイオロゲン−TEMPOのサイクリックボルタモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アノード液中に好ましく使用される酸化還元活性成分は、一つ乃至四つの式Ia及び/または式IIaの残基を分子中に含む。
【0023】
【化2】
式中、
式Ia及びIIaの構造中の窒素原子から分岐したラインは、式Ia及びIIaの構造を分子残部と連結する共有結合を表し、そして
R
2、R
3、X、a、b、c及びqは、上記で定義した意味を有する。
【0024】
アノード液中に好ましく使用される酸化還元活性成分は、式Ib、IIb、IV、V、VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIa、VIIIb、IX、IXa、IXb、X、Xa、Xb、XI、XIa、XIb、XII、XIIa及びXIIbの化合物である。
【0025】
【化3】
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びXは上で定義した意味を有し、
R
8及びR
10は、互いに独立して、水素、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたシクロアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアリール、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアラルキルを意味し、特にC
1〜C
6アルキル、カルボン酸エステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキル、就中好ましくはプロピオネート、イソブチオネート、エチルまたはメチルを意味し、
R
9は、二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
12は、供給結合であるかまたは二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
14は、共有結合であるかまたは二価の有機橋掛け基であり、
R
15は、二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
18は、炭素原子と介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合した、o倍に正に荷電した二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機残基、特に二価乃至四価の第四級アンモニウム残基、二価乃至四価の第四級ホスホニウム残基、二価乃至三価の第三級スルホニウム残基、またはo倍に正に荷電した二価乃至六価の、特に二価乃至四価のへテロ環状基であり、
R
19は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合したo倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した二価の有機残基であり、特に第四級アンモニウム残基、第四級ホスホニウム残基、第三級スルホニウム残基、またはo−倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した二価のヘテロ環状基であり、
R
20及びR
21は、互いに独立して、水素、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたシクロアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアリール、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアラルキルを意味するか、あるいは二つのR
20及びR
21は、一緒になって、C
1〜C
3アルキレン基を形成し、特にC
1〜C
6アルキル、カルボン酸エステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキルであるか、または一緒になってエチレンを意味し、そして就中好ましくはプロピオネート、イソブチオネート、エチルもしくはメチル、または一緒になってエチレンを意味し、
R
22は、二価の有機橋掛け基であり、
R
23は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合している、u倍に負に荷電した二価乃至六価の、特に二価乃至四価の有機残基であり、特に一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたアルキレン残基、一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたフェニレン残基、または一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換された二価のヘテロ環状残基であり、
R
24は、炭素原子を介してビピリジル残基の窒素原子と共有結合しているu倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した二価の有機残基であり、特にカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたアルキレン残基、カルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたフェニレン残基、またはカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換された二価のヘテロ環状残基であり、
a、b、c及びqは、上記で定義した意味を有し、
dは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
eは、(2+2d+2t)/qの値の数であり、
gは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
hは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
この際、gとhの合計は、2〜6の整数、好ましくは2〜4の整数であり、
iは、2h/qの値の数であり、
jは、1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
kは、(2+2j)/qの値の数であり、
oは、1〜4の整数であり、
pは、(o+2h)/qの値の数であり、
rは、(3+3j)/qの値の数であり、
tは、0であるか、またはR
9が二価の有機橋掛け基である場合には0もしくは1を意味し、
uは、1〜4の整数であり、
zは、2/qの値の数であり、
z1は、(o+2)/qの値の数であり、
Yは、2h−uまたは2(2−u)−uが0よりも大きい場合には、v価もしくはx価の無機もしくは有機アニオン、またはこのようなアニオンの混合を意味するか、あるいは2h−uまたは2(2−u)−uが0よりも小さい場合には、v価もしくはx価の無機もしくは有機カチオンまたはこのようなカチオンの混合を意味し、
vは、−1〜−3の整数または+1〜+3の整数であり、
xは、−1〜−3の整数または+1〜+3の整数であり、
wは、0であるかまたは(−u+2h)/vの正の数であり、
yは、0であるかまたは(2−u)(j+1)/xの正の数であり、
Y1は、2−2uが0よりも小さい場合には、x1価の無機もしくは有機カチオンまたはこのようなカチオンの混合を意味し、
x1は、−1〜−3の整数または+1〜+3の整数であり、そして
y1は、0であるかまたは(2−2u)/x1の正の数である。
【0026】
アノード液中に特に好ましく使用される酸化還元活性成分は、式IVa、Va、VIIc、VIIIc、IXc及びXcの化合物であり、
【0027】
【化4】
式中、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
12、R
14、R
15及びXは、上に定義した意味を有し、及び
b、c、d、e、g、h、i、j、k及びqは、上に定義した意味を有する。
【0028】
カソード液中に好ましく使用される酸化還元活性成分は、式IIIa、IIIb、IIIc、VI、VIa及び/またはVIb、並びに上で定義した式VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIb、VIIIa、IX、IXa、IXb、X、Xa及び/またはXbの化合物であり、
【0029】
【化5】
式中、
R
4、R
5、R
6、R
7、X、o、u及びqは、上に定義した意味を有し、
R
11は、二価乃至四価の有機橋掛け基であり、
R
13は、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロサイクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはシアノであり、そして
R
16は、o倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した二価の有機残基、特に第四級アンモニウム残基、第四級ホスホニウム残基、第三級スルホニウム残基、またはo倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した一価のヘテロ環状基であり、そして
R
17は、m倍に正に荷電した二価乃至四価の有機残基、特に二価乃至四価の第四級アンモニウム残基、二価乃至四価の第四級ホスホニウム残基、二価乃至四価の第三級スルホニウム残基、またはm倍に正に荷電した二価乃至四価のヘテロ環状残基であり、
R
25は、u倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した一価の有機残基、特にカルボキシル残基もしくはスルホン酸残基であるか、またはu倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した一価のヘテロ環状残基であり、
R
26は、m倍に負に荷電した二価乃至四価の有機残基であり、特に一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたアルキレン残基、または一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換されたフェニレン残基、または一つもしくは二つのカルボキシル基もしくはスルホン酸基で置換された二価のヘテロ環状残基であり、
Zは、q価の無機または有機カチオンまたはこのようなカチオンの混合を意味し、
fは、1〜3の整数であり、
lは、o/qまたはu/qの値の数であり、
mは、1〜4の整数であり、そして
nは、m/qの値の数である。
【0030】
カソード液中に特に好ましく使用される酸化還元活性成分は、式VI、VIa、VIIc、VIIIc、IXc及び/またはXcの化合物である。
【0031】
就中好ましく本発明に従い使用される酸化還元活性化合物は、式Ib、IIb、VIId、VIIe、VIIId及び/またはVIIIeのものであり、
【0032】
【化6】
式中、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
14、R
19及びXは、上に定義した意味を有し、
R
20及びR
21は、互いに独立して、水素、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたシクロアルキル、場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアリール、または場合によりカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはアミノ基で置換されたアラルキルを意味するか、あるいは二つの残基R
20及びR
21は、一緒になって、C
1〜C
3アルキレン基を形成し、特にC
1〜C
6アルキル、カルボン酸エステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキルであるか、または一緒になってエチレンを意味し、そして就中好ましくはプロピオネート、イソブチオネート、エチルもしくはメチル、または一緒になってエチレンを意味する。
【0033】
a、b、c及びqは、上記で定義した意味を有し、そして
sは、3/qの値の数である。
【0034】
これらの特に好ましく使用される化合物のうちでも、式Ib、IIb、VIId、VIIe、VIIId及び/またはVIIIeの化合物がアノード液中に及び式VIId、VIIe、VIIId及び/またはVIIIeの化合物がカソード液中に使用される。
【0035】
就中好ましくは、カソード液は、上に定義した式IIIa、IIIbまたはIIIcの化合物を含み、アノード液は、上で定義した式IbまたはIIbの化合物を含む。
【0036】
特に、カソード液は、上で定義した式IIIbの化合物を含み、そしてアノード液は、上で定義した式Ibの化合物を含む。
【0037】
式IIIbの好ましい化合物の例は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−(N,N,N−トリアルキルアンモニウム)の塩、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)の塩、就中、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)クロライドである。
【0038】
式Ibの好ましい化合物の例は、N,N’−ジアルキルバイオロゲンの塩、特にN,N’−ジメチルバイオロゲンの塩、就中N,N’−ジアルキルバイオロゲンクロライドである。
【0039】
特に好ましい酸化還元活性化合物は、上に定義した式VII、VIIa、VIIb、VIIc、VIId、VIIe、VIII、VIIIa、VIIIb、VIIIc、VIIId、VIIIe、IX、IXa、IXb、IXc、X、Xa、Xa及びXcの化合物である。これらは、電気活性ビピリジル残基も、電気活性ニトロキシド残気も含み、そしてカソード液中にも、アノード液中にも使用でき、好ましくは両室中に同じ化合物が使用される。
【0040】
上に定義した式VII、VIIa、VIIb、VIIc、VIId、VIIe、VIII、VIIIa、VIIIb、VIIIc、VIIId、VIIIe、IX、IXa、IXb、IXc、X、Xa、Xb及びXcの酸化還元活性化合物は、正及び負の酸化還元活性単位(TEMPO及びバイオロゲン)からなる複合分子である。従来は、これらの酸化還元活性単位は、常に二つの異なる物質の形でのみ使用された。本発明に従う特に好ましい複合分子は、酸化も、還元もし得る。それによって生じる利点の一つは、例えば膜の欠陥によって引き起こされる混合の時にそれらの溶液がもはや不可逆的な損傷を受けないことである。電位も、両方の酸化還元活性単位の選択によって調節でき、そうして様々な用途計画に合わせて最適化できる。
【0041】
残基R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
13、R
20及び/またはR
21のうちの一つがアルキルを意味する場合は、そのアルキル基は分岐状でも非分岐状でもよい。アルキル基は、典型的には1個乃至20個までの炭素原子、好ましくは1個乃至10個までの炭素原子を含む。アルキル基の例は次のものである:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシルまたはエイコシル。特に好ましいものは、1個乃至6個までの炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0042】
残基R
2、R
3及び/またはR
13の一つがアルコキシである場合には、アルコキシ基は、分岐状でも非分岐状でもよいアルキル単位からなることができる。アルコキシ基は、典型的には1個乃至20個までの炭素原子、好ましくは1個乃至10個までの炭素原子を含む。アルコキシ基の例は次のものである:メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec.−ブトキシ、tert.−ブトキシ、ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−トリデシルオキシ、n−テトラデシルオキシ、n−ペンタデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ、n−オクタデシルオキシまたはエイコシルオキシ。特に好ましいものは、1個乃至6個までの炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0043】
残基R
2、R
3及び/またはR
13の一つがハロアルキルである場合には、このハロアルキル基は、分岐状でも非分岐状でもよい。ハロアルキル基は、典型的には、互いに独立して一つ以上のハロゲン原子で置換されている1個乃至20個までの炭素原子、好ましくは1個乃至10個までの炭素原子を含む。ハロゲン原子の例は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。好ましいものはフッ素及び塩素である。ハロアルキル基の例は次のものである:トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、1,1−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3−ブロモプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル、3−ブロモ−2−メチルプロピル、4−ブロモブチル、パーフルオロペンチル。
【0044】
残基R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
13、R
20及び/またはR
21のうちの一つがシクロアルキルを意味する場合は、シクロアルキル基は、典型的には、それぞれ互いに独立して置換されていることができる3個乃至8個、好ましくは5個、6個または7個の環炭素原子を含む環状基である。置換基の例は、アルキル基であるか、または結合する環炭素原子と一緒になって他の環を形成することができる二つのアルキル基である。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。シクロアルキル基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0045】
残基R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
13、R
20及び/またはR
21のうちの一つがアリールを意味する場合は、このアリール基は、典型的には、それぞれ互いに独立して置換されていることができる5個乃至14個の炭素原子を含む環状芳香族基である。置換基の例は、アルキル基であるか、または結合する環炭素原子と一緒になって他の環を形成することができる二つのアルキル基である。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、アントリルまたはフェナントリルである。アリール基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0046】
残基R
2、R
3及び/またはR
13の一つがヘテロサイクリルを意味する場合には、このヘテロサイクリル基は、典型的には、それぞれ互いに独立して置換されていることができる4個乃至10個の環炭素原子及び少なくとも一つの環ヘテロ原子を有する環状基を含むことができる。置換基の例は、アルキル基であるか、または結合する環炭素原子と一緒になって他の環を形成することができる二つのアルキル基である。ヘテロ原子の例は、酸素、窒素、リン、ホウ素、セレンまたは硫黄である。ヘテロサイクリル基の例は、フリル、チエニル、ピロリルまたはイミダゾリルである。ヘテロサイクリル基は、好ましくは芳香族である。ヘテロサイクリル基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0047】
残基R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
13、R
20及び/またはR
21のうちの一つがアラルキルを意味する場合は、このアラルキル基は、典型的には、アリールが上で既に定義した通りであり、それにアルキル基が共有結合しているアリール基である。このアラルキル基は、芳香族環上で、例えばアルキル基でまたはハロゲン原子で置換されていることができる。アラルキル基の一例はベンジルである。アラルキル基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0048】
残基R
2、R
3及び/またはR
13のうちの一つがアミノを意味する場合は、そのアミノ基は、置換されていないか、または一つもしくは二つもしくは三つの置換基、例えばアルキル基及び/またはアリール基を有することができる。アルキル置換基は、分岐状でも非分岐状でもよい。モノ−またはジアルキルアミノ基は、典型的には、1個乃至20個までの炭素原子、好ましくは1個乃至6個の炭素原子を有する一つまたは二つのアルキル基を含む。モノアルキルアミノ基の例は、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノまたはブチルアミノである。ジアルキルアミノ基の例は次のものである:ジ−エチルアミノ、ジ−プロピルアミノまたはジ−ブチルアミノ。トリアルキルアミノ基の例は次のものである:トリ−エチルアミノ、トリ−プロピルアミノまたはトリ−ブチルアミノ。
【0049】
残基R
2、R
3及び/またはR
13のうちの一つがハロゲンを意味する場合には、これは、共有結合したフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のことと解される。好ましいものはフッ素または塩素である。
【0050】
R
1が二価の橋掛け基を意味する場合には、これは、二価の無機または有機残基のことと解される。二価の無機残基の例は、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−OP(O)O−または−NH−である。二価の有機残基の例は、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンまたはヘテロサイクリレンである。
【0051】
R
14及びR
22が二価の有機橋掛け基を意味する場合は、これは、二つの共有結合を介して分子残部と結合している有機残基のことと解される。二価の有機残基R
14またはR
22の例は、アルキレン、アルキレンオキシ、ポリ(アルキレンオキシ)、アルキレンアミノ、ポリ(アルキレンアミノ)、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンまたはヘテロサイクリレンである。
【0052】
アルキレン基は、分岐状でも非分岐状でもよい。アルキレン基は、典型的には1個乃至20個までの炭素原子、好ましくは2個乃至4個までの炭素原子を含む。アルキレン基の例は次のものである:メチレン、エチレン、プロピレン及びブチレン。アルキレン基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0053】
アルキレンオキシ基及びポリ(アルキレンオキシ)基は、分岐状のアルキレン基、非分岐状アルキレン基のいずれも含むことができる。アルキレンオキシ基中にまたはポリ(アルキレンオキシ)基中に存在するアルキレン基は、典型的には、2個乃至4個の炭素原子、好ましくは2個または3個の炭素原子を含む。前記ポリ(アルキレンオキシ)基中の繰り返し単位の数は、広い範囲で変動し得る。繰り返し単位の典型的な数は、2〜50の範囲で変動する。アルキレンオキシ基の例は次のものである:エチレンオキシ、プロピレンオキシ及びブチレンオキシ。ポリ(アルキレンオキシ)基の例は次のものである:ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンオキシ)及びポリ(ブチレンオキシ)。
【0054】
アルキレンアミノ基及びポリ(アルキレンアミノ)基は、分岐状のアルキレン基、非分岐状アルキレン基のいずれも含むことができる。アルキレンアミノ基中にまたはポリ(アルキレンアミノ)基中に存在するアルキレン基は、典型的には、2個乃至4個の炭素原子、好ましくは2個または3個の炭素原子を含む。前記ポリ(アルキレンアミノ)基中の繰り返し単位の数は、広い範囲で変動し得る。繰り返し単位の典型的な数は、2〜50の範囲で変動する。アルキレンアミノ基の例は次のものである:エチレンアミノ、プロピレンアミノ及びブチレンアミノ。ポリ(アルキレンアミノ)基の例は次のものである:ポリ(エチレンアミノ)、ポリ(プロピレンアミノ)及びポリ(ブチレンアミノ)。
【0055】
シクロアルキレン基は、典型的には、それぞれ互いに独立して置換されていてもよい5個、6個または7個の環炭素原子を含む。置換基の例は、アルキル基であるか、または結合する環炭素原子と一緒になって他の環を形成することができる二つのアルキル基である。シクロアルキレン基の一例はシクロヘキシレンである。シクロアルキレン基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0056】
アルキレン基は、典型的には、それぞれ互いに独立して置換されていてもよい5個乃至14個の炭素原子を含む環状芳香族基である。アリーレン基の例は、o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニル、o−ビフェニリル、m−ビフェニリル、p−ビフェニリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリルまたは9−フェナントリルである。アリーレン基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。置換基の更なる例は、アルキル基であるか、または結合する環炭素原子と一緒になって他の環を形成することができる二つのアルキル基である。
【0057】
ヘテロサイクリル基は、典型的には、それぞれ互いに独立して置換されていてもよい4個乃至10個の環炭素原子及び少なくとも一つの環ヘテロ原子を有する環状基である。ヘテロ原子の例は、酸素、窒素、リン、ホウ素、セレンまたは硫黄である。ヘテロサイクリレン基の例は、フランジイル、チオフェンジイル、ピロールジイルまたはイミダゾルジイルである。ヘテロサイクリレン基は、好ましくは芳香族である。ヘテロサイクリル基は場合により置換されていてもよく、例えばカルボキシル基もしくはスルホン酸基で、カルボキシルエステル基もしくはスルホン酸エステル基で、カルボキシルアミド基もしくはスルホン酸アミド基で、ヒドロキシル基もしくはアミノ基で、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。置換基の更なる例は、アルキル基であるか、または結合する環炭素原子と一緒になって他の環を形成することができる二つのアルキル基である。
【0058】
アラルキレン基は、典型的には、一つもしくは二つのアルキル基が共有結合しているアリール基である。アラルキレン基は、それらのアリール残基及びそれらのアルキル残基を介してまたは二つのアルキル残基を介して分子残部と共有結合することができる。このアラルキレン基は、芳香族環上で、例えばアルキル基でまたはハロゲン原子で置換されていることができる。アラルキレン基の例は、ベンジレンまたはジメチルフェニレン(キシリレン)である。
【0059】
残基R
9、R
11、R
12またはR
15のうちの一つが二価乃至六価の有機橋掛け基を意味する場合は、これは、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つの共有結合を介して分子残部と結合している有機残基のことと解される。
【0060】
二価の有機残基の例は、アルキレン、アルキレンオキシ、ポリ(アルキレンオキシ)、アルキレンアミノ、ポリ(アルキレンアミノ)、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンまたはヘテロサイクリレンである。これらの残基は、既に上に詳細に記載したものである。
【0061】
三価の有機残基の例は、アルキルトリイル、アルコキシトリイル、トリス−ポリ(アルキレンオキシ)、トリス−ポリ(アルキレンアミノ)、シクロアルキルトリイル、アリールトリイル、アラルキルトリイルまたはヘテロサイクリルトリイルである。これらの残基は、二つの共有結合の代わりに三つの共有結合によって分子残部と結合している点を除いて、既に上に詳細に記載した二価の残基に相当する。
【0062】
四価の有機残基の例は、アルキルクオタニル、アルコキシクオタニル、クオーター−ポリ(アルキレンオキシ)、クオーター−ポリ(アルキレンアミノ)、シクロアルキルクオタニル、アリール−クオタニル、アラルキルクオタニルまたはヘテロサイクリルクオタニルである。これらの残基は、二つの共有結合の代わりに四つの共有結合によって分子残部と結合している点を除いて、既に上に詳細に記載した二価の残基に相当する。
【0063】
五価の有機残基の例は、アルキルクインクイニル(quinquinyl)、アルコキシクインクイニル、クインクイ−ポリ(アルキレンオキシ)、クインクイ−ポリ(アルキレンアミノ)、シクロアルキルクインクイニル、アリール−クインクイニル、アラルキルクインクイニルまたはヘテロサイクリルクインクイニルである。これらの残基は、二つの共有結合の代わりに五つの共有結合によって分子残部と結合している点を除いて、既に上に詳細に記載した二価の残基に相当する。
【0064】
六価の有機残基の例は、アルキルヘキシル、アルコキシヘキシル、ヘキシル−ポリ(アルキレンオキシ)、ヘキシル−ポリ(アルキレンアミノ)、シクロアルキルヘキシル、アリールヘキシル、アラルキルヘキシルまたはヘテロサイクリルヘキシルである。これらの残基は、二つの共有結合の代わりに六つの共有結合によって分子残部と結合している点を除いて、既に上に詳細に記載した二価の残基に相当する。
【0065】
R
16は、o倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した一価有機残基である。この際、この残基は、一般的に、正に単荷電乃至四荷電した残基を含む、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロサイクリル、特に第四級アンモニウム残基、第四級ホスホニウム残基、第三級スルホニウム残基、または単荷電乃至四荷電した一価のヘテロ環状残基である。荷電平衡は、一つ以上のアニオンX
q−を介して行われる。ピペリジン−1−オキシル残基に対するo倍に正に荷電した残基の結合は、好ましくは、o倍に正に荷電した残基のヘテロ原子を介して行われる。残基R
16の特に好ましい例は、残基−N
+R
26R
27R
28、−P
+R
26R
27R
28、−S
+R
26R
27または−Het
+であり、ここで、R
26、R
27及びR
28は、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロサイクリル、特にC
1〜C
6アルキル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルであり、そしてHetは、一価で単正荷電したヘテロ環状残基を表し、この残基は、1個乃至3個の環窒素原子を含むかまたは一つの環窒素原子と1個乃至2個の環酸素原子もしくは環硫黄原子を含み、特に好ましくは一価のイミダゾリウム−、ピリジニウム−、グアニジニウム−、ウロニウム−、チオウロニウム−、ピペリジニウム−またはモルホリニウム残基である。
【0066】
R
19は、o倍に正に荷電した、好ましくは単正荷電した二価の有機残基である。この際、この残基は、一般的に、1個乃至4個の正荷電した残基、特に1個乃至4個の第四級アンモニウム残基、1個乃至4個の第四級ホスホニウム残基、1個乃至4個の第三級スルホニウム残基、もしくは正に単荷電乃至四荷電した二価のヘテロ環状残基を含む、アルキレン、ハロアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンまたはヘテロサイクリレンである。荷電平衡は、一つ以上のアニオンX
q−を介して行われる。ピペリジン−1−オキシル残基に対するo倍に正に荷電した残基の結合は、好ましくは、単正荷電した残基のヘテロ原子を介して行われる。R
19とビピリジル残基の窒素原子との結合は、R
19残基の炭素原子を介して行われる。残基R
19の特に好ましい例は、残基−N
+R
26R
27R
29−、−P
+R
26R
27R
29−、−S
+R
26R
29−または−Het
+−であり、この際、R
26及びR
27は、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロサイクリル、特にC
1〜C
6アルキル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルであり、R
29は二価の有機残基を表し、そしてHetは、二価で単正荷電したヘテロ環状残基を表し、この残基は、1個乃至3個の環窒素原子を含むかまたは一つの環窒素原子と1個乃至2個の環酸素原子もしくは環硫黄原子を含み、特に好ましくは一価のイミダゾリウム−、ピリジニウム−、グアニジニウム−、ウロニウム−、チオウロニウム−、ピペリジニウム−またはモルホリニウム残基である。
【0067】
R
17は、m倍に正に荷電した二価乃至四価の有機残基である。この際、前記残基は、正にm荷電された基を有しかつ二つ、三つもしくは四つの共有結合を介して分子残部と結合している有機残基である。正に荷電した残基の例は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、第三級スルホニウムまたはm倍に荷電した二価乃至四価のヘテロ環状残基である。ピペリジン−1−オキシル残基に対するm倍に正に荷電した残基の結合は、好ましくは、m倍に正に荷電した残基のヘテロ原子を介して行われる。残基R
17の特に好ましい例は、残基−N
+R
30R
31−[R
32−N
+R
30R
31]
f−、−P
+R
30R
31−[R
32−PR
30R
31]
f−、−S
+R
30−[R
24−S
+R
30]
f−または[Het
m+,]
f−であり、ここで、R
30及びR
31は、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロサイクリル、特にC
1〜C
6アルキル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルであり、fは、上で定義した意味を有し、R
32は、f+1価の有機残基を表し、そしてHetは、二価乃至四価で、m倍に正に荷電されたヘテロ環状残基を表し、この残基は、1個乃至3個の環窒素原子を含むか、または一つの環窒素原子と1個乃至2個の環酸素原子もしくは環硫黄原子を含み、特に好ましくは二価乃至四価のイミダゾリウム−、ピリジニウム−、グアニジニウム−、ウロニウム−、チオウロニウム−、ピペリジニウム−またはモルホリニウム残基である。
【0068】
R
18は、o倍に正に荷電した二価乃至四価の有機残基である。この際、前記残基は、正にo荷電された基を有しかつ二つ、三つもしくは四つの共有結合を介して分子残部と結合している有機残基である。R
18は、炭素原子を介して一つ以上のビピリジル残基の窒素原子と結合している。正に荷電した残基の例は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、第三級スルホニウムまたはo倍に荷電した二価乃至四価のヘテロ環状残基である。ピペリジン−1−オキシル残基に対するo倍に正に荷電した残基の結合は、好ましくは、o倍に正に荷電した残基のヘテロ原子を介して行われる。残基R
18の特に好ましい例は、残基−[N
+R
30R
31]
g−[R
33−N
+R
30R
31]
h−、−[P
+R
30R
31]
g−[R
33−PR
30R
31]
h−、−[S
+R
30]
g−[R
33−S
+R
30]
h−または[Het
m+,]
g+h−であり、ここで、R
30及びR
31は、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロサイクリル、特にC
1〜C
6アルキル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルであり、g及びhは、上で定義した意味を有し、R
33は、g+h価の有機残基を表し、そしてHetは、二価乃至四価で、o倍に正に荷電されたヘテロ環状残基を表し、この残基は、1個乃至3個の環窒素原子を含むか、または一つの環窒素原子と1個乃至2個の環酸素原子もしくは環硫黄原子を含み、特に好ましくは二価乃至四価のイミダゾリウム−、ピリジニウム−、グアニジニウム−、ウロニウム−、チオウロニウム−、ピペリジニウム−またはモルホリニウム残基である。
【0069】
二価の有機残基R
29、R
32及びR
33の例は、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンまたはヘテロサイクリレンである。これらの残基は、既に上に詳細に記載したものである。
【0070】
三価の有機残基R
32及びR
33の例は、アルキルトリイル、シクロアルキルトリイル、アリールトリイル、アラルキルトリイルまたはヘテロサイクリルトリイルである。これらの残基は、二つの共有結合の代わりに三つの共有結合によって分子残部と結合している点を除いて、既に上に詳細に記載した二価の残基に相当する。
【0071】
四価の有機残基R
32及びR
33の例は、アルキルクアタニル、シクロアルキルクアタニル、アリールクアタニル、アラルキルクアタニルまたはヘテロサイクリルクアタニルである。これらの残基は、二つの共有結合の代わりに四つの共有結合によって分子残部と結合している点を除いて、既に上に詳細に記載した二価の残基に相当する。
【0072】
R
23は、u倍に負に荷電した二価乃至四価の有機残基である。この際、前記残基は、負にu荷電された基を有しかつ二つ、三つもしくは四つの共有結合を介して分子残部と結合している有機残基である。R
23は、炭素原子を介して一つ以上のビピリジル残基の窒素原子と結合している。負に荷電した残基の例は、カルボン酸残基もしくはスルホン酸残基で置換されたアルキレン残基もしくはアリーレン残基(ここで、前記アルキレン残基または複数のアリーレン残基の炭化水素単位は、一つまたは複数の−O−、−CO−O−、−CO−NH−または−NH−基で中断されていることができる)、あるいは二つまでのカルボン酸残基もしくはスルホン酸残基で置換された二価乃至四価のヘテロ環状残基である。ピペリジン−1−オキシル残基に対するこのu倍に負に荷電した残基の結合は、好ましくは、このu倍に負に荷電した残基の炭素原子を介して行われる。残基R
23の特に好ましい例は、一つまたは二つのカルボン酸残基またはスルホン酸残基で置換されたアルキレン残基またはアリーレン残基である。
【0073】
R
24は、u倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した二価の有機残基である。前記残基は、一般的に、一つ乃至四つの単負荷電した残基を含むアルキレン、ハロアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンまたはヘテロサイクリレン、特に、一つ乃至四つのカルボン酸置換基もしくはスルホン酸置換基を持つアルキレン−もしくはアリーレン残基(ここで、アルキレン残基または複数のアリーレン残基の炭化水素単位は、一つまたは複数の−O−、−CO−O−、−CO−NH−または−NH−基で中断されていることができる)、または負に単乃至四荷電された二価のヘテロ環状残基である。荷電の平衡は、一つ以上のアニオンX
q−を介してまたは一つ以上のカチオンY
x+を介して行われる。ピペリジン−1−オキシル残基に対するこのu倍に負に荷電した残基の結合は、好ましくは、このu倍に負に荷電した残基の炭素原子を介して行われる。R
24とビピリジル残基の窒素原子との結合は、R
24残基の炭素原子を介して行われる。
【0074】
R
25は、u倍に負に荷電した、好ましくは単負荷電した一価の有機残基である。この際、前記残基は、一般的に、一つ乃至四つの単負荷電した残基、特に一つ乃至四つのカルボン酸残基もしくは一つ乃至四つのスルホン酸残基、または一つ乃至四つのカルボン酸残基でもしくは一つ乃至四つのスルホン酸残基で置換された一価のヘテロ環状残基を含むアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロサイクリルである。荷電平衡は、一つ以上のカチオンZ
4+を介して行われる。ピペリジン−1−オキシル残基に対するこのu倍に負に荷電した残基の結合は、好ましくは、この単負荷電した残基の炭素原子を介して行われる。
【0075】
式Iの一つ乃至六つの残基または式IIの一つ乃至六つの残基を分子中に有する本発明に従い使用される酸化還元活性成分は、対イオンX
q−を有する。これらによって、充電または放電の際に生じるイオン性荷電が平衡する。対イオンX
q−は、無機もしくは有機q価アニオンであることができる。
【0076】
無機アニオンX
q−の例は、ハロゲン化物イオン、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンもしくはヨウ化物イオン、または水酸化物イオンまたは無機酸のアニオン、例えばリン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素酸イオン、シアン化物イオンである。
【0077】
有機アニオンX
q−の例は、一価もしくは多価カルボン酸または一価もしくは多価スルホン酸のアニオンであり、ここでこれらの酸は飽和でも不飽和でもよい。有機酸のアニオンの例は、酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸イオン、モノフルオロブタンスルホン酸イオン、酪酸イオン、クエン酸イオン、フマル酸イオン、グルタール酸イオン、乳酸イオン、リンゴ酸イオン、マロン酸イオン、シュウ酸イオン、ピルビン酸イオンまたは酒石酸イオンである。
【0078】
更に、本発明に従い使用される酸化還元活性成分は、無機カチオン、例えば一価もしくは多価金属イオン、または有機カチオン、例えばアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、ウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、モルホリニウムもしくはホスホニウムを含むことができる。荷電平衡は、アニオンX
q−を介して行われる。
【0079】
幾つかの場合には、本発明に従い使用される酸化還元活性成分は、一つまたは複数の負の荷電を有する。ここで、荷電の平衡は対イオンY
xまたはZ
q+によって行われる。しかし、酸化還元活性成分が、双性イオン性構造を有し及び荷電平衡に他のアニオンまたはカチオンは必要としない場合もあり得る。
【0080】
アニオンY
x−は、無機もしくは有機x価アニオンであることができる。アニオンY
x−の例は、アニオン
q−について上述した例のそれと同じである。
【0081】
カチオンY
x+は、無機もしくは有機x価カチオンであることができる。これの例は、x価金属イオン、またはx価有機カチオン、例えばアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、ウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、モルホリニウムまたはホスホニウムである。好ましくは、一価もしくは二価の金属イオン、特にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属イオンが使用される。
【0082】
カチオンZ
q+は、無機もしくは有機q価カチオンであることができる。これの例は、q価金属イオン、またはq価有機カチオン、例えばアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、ウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、モルホリニウムまたはホスホニウムである。好ましくは、一価もしくは二価の金属イオン、特にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属イオンが使用される。
【0083】
好ましくは、本発明によるレドックスフロー電池には、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンまたはテトラフルオロホウ酸イオンを含み、並びに好ましくは、水素イオン(H
+)、アルカリ−もしくはアルカリ土類金属イオン(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)、並びに置換されたもしくは置換されていないアンモニウムカチオン(例えばテトラブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム)(置換基は、一般的にアルキル基であることができる)の群から選択されるカチオンを含む、化合物が使用される。
【0084】
好ましくは、一つ乃至四つ、特に一つ乃至二つの式IまたはIIの構造単位であって、R
1が共有C−C結合であるかまたは−O−、−NH−、アリーレンもしくはヘテロアリーレン、就中好ましくは共有C−C結合、フェニレン、ビフェニレンもしくはチオフェンジイルである構造単位を含む酸化還元活性化合物が使用される。
【0085】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、一つ乃至四つの構造単位、特に一つ乃至二つの式I及び/またはIIの構造単位、特に式IaまたはIIaの構造単位、就中好ましくは式Ib、IIb、IV、V、VII、VIII、IX、IXa、XまたはXaの構造単位、及び極めて好ましくは式IVa、Va、VIIa、VIIb、VIIc、VIId、VIIIa、VIIIb、VIIIc、VIIId、IXa、IXb、XaまたはXbの構造単位であって、b及びcが0であるかまたはb及びcが1もしくは2を意味し、そしてR
2及びR
3がそれぞれメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、ヒドロキシ、アミノまたはニトロを意味する構造単位を含む化合物である。
【0086】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式III、VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIa、VIIIb、IX、IXa、IXb、X、XaまたはXbの化合物、特に式IIIa、IIIb、V、VIa、VIIc、VIId、VIIe、VIIIc、VIIId、VIIIe、IXcまたはXcの化合物であって、R
4、R
5、R
6及びR
7が、それぞれC
1〜C
6アルキル、就中好ましくはエチルまたはメチルを意味する化合物である。
【0087】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式IV、V、VII、VIIa、VIIb、VIII、VIIIaまたはVIIIbの化合物、特に式IVa、Va、VIIcまたはVIIIcの化合物、就中好ましくは式Ib、VIId、VIIe、VIIIdまたはVIIIeの化合物であって、R
8またはR
8とR
10は、水素、C
1〜C
6アルキル、カルボン酸アルキルエステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキルを意味し、就中好ましくは水素、エチルまたはメチルを意味する化合物である。
【0088】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式IIbの化合物であって、R
20及びR
21が、水素、C
1〜C
6アルキル、カルボン酸アルキルエステル基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸アミド基で置換されたC
1〜C
6アルキル、カルボン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、スルホン酸基で置換されたC
1〜C
6アルキル、またはアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルキルを意味し、就中好ましくは水素、エチルまたはメチルを意味するか、あるいは残基R
20及びR
21が一緒になってC
1〜C
3アルキレン基、特にエチレンを形成する化合物である。
【0089】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式IIIaの化合物であって、R
13が水素、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6アルコキシ、部分的にまたは完全にフッ素化されたC
1〜C
6アルキル、部分的にもしくは完全に塩素化されたC
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6フルオロクロロアルキル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、ヒドロキシ、アミノまたはニトロである化合物である。
【0090】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式IVまたはVの化合物、特に式IVaまたはVaの化合物であって、R
9が、アルキレン、ポリ(アルキレンアミノ)、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC
2〜C
6アルキレン、ジ(C
2〜C
6アルキレンアミノ)、トリ(C
2〜C
6アルキレンアミノ)、クオーター(C
2〜C
4アルキレンアミノ)、フェニレン、フェニルトリイルまたはフェニルクオタニルである化合物である。
【0091】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式VIIまたはVIIIの化合物、特に式VIIcまたはVIIIcの化合物であって、R
12がアルキレン、アルキルトリイル、アルキルクオタニル、アルキルオキシジイル、アルキルオキシトリイル、アルキルオキシクオタニル、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC
2〜C
6アルキレン、例えばエチレンもしくはプロピレン、またはC
2〜C
6アルコキシジイル、例えば1,2−ジオキシエチレンもしくは1,3−ジオキシプロピレン、またはC
3〜C
6アルコキシトリイル、例えば1,2,3−プロパントリオール残基もしくはトリメチロールプロパン残基、またはC
4〜C
6アルコキシクオタニル、例えばペンタエリトリトール残基、またはフェニレン、フェニルトリイルまたはフェニルクオタニルである化合物である。
【0092】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式IXまたはXの化合物、特に式VIIdまたはVIIIdの化合物であって、R
14が、アルキレン、アルキレンアミノ、ポリ(アルキレンアミノ)、アリーレンまたはヘテロサイクリレンであり、就中好ましくはC
2〜C
6アルキレン、C
2〜C
6アルキレンアミノもしくはフェニレンである化合物である。
【0093】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式IXまたはXの化合物、特に式IXcまたはXcの化合物であって、R
15がアルキレン、アルキルトリイル、アルキルクオタニル、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC
2〜C
6アルキレン、例えばエチレンもしくはプロピレン、またはフェニレン、フェニルトリイルもしくはフェニルクオタニルである化合物である。
【0094】
更に別の好ましく使用される酸化還元活性化合物は、式VIの化合物であって、R
11がアルキレン、アルキルトリイル、アルキルクオタニル、アルキルオキシジイル、アルキルオキシトリイル、アルキルオキシクオタニル、アリーレン、アリールトリイル、アリールクオタニル、ヘテロサイクリレン、ヘテロサイクリルトリイルまたはヘテロサイクリルクオタニルであり、就中好ましくはC
2〜C
6アルキレン、例えばエチレンもしくはプロピレン、またはC
2〜C
6アルコキシジイル、例えば1,2−ジオキシエチレンもしくは1,3−ジオキシプロピレン、またはC
3〜C
6アルコキシトリイル、例えば1,2,3−プロパントリオール残基もしくはトリメチロールプロパン残基、またはC
4〜C
6アルコキシクオタニル、例えばアルコキシクオタニル、例えばペンタエリトリトール残基、またはフェニレン、フェニルトリイルもしくはフェニルクオタニルである化合物である。
【0095】
指数b及びcは好ましくはそれぞれ0、または互いに独立して1または2である。
【0096】
指数aは好ましくは1または2であり、特に2である。
【0097】
指数qは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0098】
指数dは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0099】
指数gは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0100】
指数hは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0101】
特に好ましいものは、式VIIまたはVIIIの化合物、特に式VIIaまたはVIIIaの化合物、就中好ましくは式VIIcまたはVIIIcの化合物であって、指数gが1であり、指数hが1または2を意味するか、あるいは指数gが1または2であり、指数hが1を意味する化合物である。
【0102】
指数iは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0103】
指数jは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0104】
指数kは好ましくは1、2または4であり、特に2または4である。
【0105】
指数fは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0106】
指数mは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0107】
指数nは好ましくは1/2、1または2であり、特に1/2または1である。
【0108】
指数lは好ましくは1/2または1であり、特に1である。
【0109】
指数oは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0110】
指数pは好ましくは6、5、4、3、5/2、2または3/2であり、特に3または5である。
【0111】
指数rは好ましくは9、6、9/2または3であり、特に9または6である。
【0112】
指数sは好ましくは3または3/2であり、特に3である。
【0114】
指数uは好ましくは1または2であり、特に1である。
【0115】
指数vは好ましくは−1または−2であり、特に−1である。
【0116】
指数xは好ましくは−1または−2であり、特に−1である。
【0117】
指数x1は好ましくは−1または−2であり、特に−1である。
【0118】
指数yは好ましくは1または2であり、特に2である。
【0119】
指数zは好ましくは1または2であり、特に2である。
【0120】
指数z1は好ましくは3または1.5であり、特に1.5である。
【0121】
本発明においてカソード液として使用される鉄塩は、酸化状態II及び/またはIIIの水溶性鉄塩である。鉄塩は、その塩の水溶性が疑問視されない限り任意のアニオンを有することができる。
【0122】
化合物の水溶性とは、本明細書の枠内では、25℃で水1L中の少なくとも1gの化合物の溶解性のことと解される。
【0123】
鉄塩の例は、Fe−II−クロライドとFe−III−クロライドとの組み合わせ、またはFe−II−硫酸塩とFe−III−硫酸塩との組み合わせである。無機アニオンを有する鉄塩の他に、有機アニオンを有する鉄塩、例えばFe−II−酢酸塩とFe−III−酢酸塩との組み合わせも使用できる。
【0124】
本発明に従い使用されるレドックス系は、レドックスフローバッテリーのための他の材料系と比べて多くの利点を有する。例えば、鉄/クロムの電池タイプなどでの貴金属触媒は必要とされない。なぜならば、バイオロゲンの反応速度は、クロムと比べてかなり速いからである。更に、該レドックス材料(TEMPO誘導体、鉄(II/III)−塩化物及びジメチルバイオロゲンクロライド)は、中性pH値においても、非常に良好な水溶性を示す(室温で2mol/L超)。その結果、高い蓄電容量が生じる(活性材料2mol/Lで53Ah/L超)。更に、この溶液では、従来技術による系(例えばバナジウムシステム)でしばしば使用されるような電解質としての腐食性の酸は避けることができる。
【0125】
本発明に従い使用される酸化還元活性材料は相互に相溶性でもあり、すなわち混合溶液を、TEMPO誘導体とバイオロゲン誘導体とからまたは鉄(II/III)−クロライドとバイオロゲン誘導体とから調製でき、そしてこの溶液をアノード液としてもカソード液としても使用できる。それによって、他の有機/部分有機レドックスフローシステムでは長期安定性のための本質的な問題である、隔膜の欠陥を介しての公差汚染の問題が大きく減少される。
【0126】
特に、TEMPO官能性とバイオロゲン官能性とを一つの分子中に兼ね備える複合分子は、隔膜欠陥を介した公差汚染の問題を大きく減少する。公差汚染が発生する場合でも、なおも常にアノード液中に、またカソード液としても同じ物質が存在する。それ故、該複合分子は、例えばバナジウム金属の場合にそうであるように少なくとも三つの異なるレドックス状態を取ることができる物質、大概は金属/金属塩をシミュレートする。
【0127】
更なる利点の一つは、システムの稼働及びシステムの安全性にとって不利な水素の発生を抑制することができることである、というのもバイオロゲンは水素を酸化できるからである(C.L.Bird,A.T.Kuhn,Chem.Soc.Rev.:“Electrochemistry of the viologens”40,1981,p49−82(非特許文献11))。充電時に放出する水素は、バッテリーシステムにはもはや利用されず、それ故、バッテリーの効率損失を意味する。それ故、バイオロゲン誘導体は、更に別のレドックスフローバッテリーシステムのための酸化還元活性添加物質としても使用できる。その他、この系の利点の一つは、光による容量のレバランシングを達成でき、そこでバイオロゲン分子は光により誘発されて還元された形態に変換され得ることである(T.W.Ebbesen,G.Levey,L.K.Patterson “Photoreduction of methyl viologen in aqueous neutral solution without additives” Nature,1982 vol 298,p545−548(非特許文献12))。それによって、手間のかかる外部レバランシングサイクルを省くことができる。このレバランシングは、アノード側にもカソード側にも同じ量の電荷担体を調整するためにバナジウムシステムに必要なステップである。
【0128】
該酸化還元活性成分は溶解された形で使用され; これには、分散液としてのそれの使用も含まれる。
【0129】
式IもしくはIIもしくはIIIまたは式I及びIIIもしくはII及びIIIの残基を含む本発明に従い使用される酸化還元活性成分のモル質量は、幅広い範囲で変えることができる。特に好ましいものは、500g/モル未満の分子量を有する式IもしくはIIもしくはIIIまたは式I及びIIIもしくはII及びIIIの残基を含む酸化還元活性成分が使用される。
【0130】
本発明に従い使用される電解質の粘度は、典型的には、1mPas〜10
3mPasの範囲、特に好ましくは10
−2〜10
2mPasの範囲、就中好ましくは1〜20mPasの範囲である(プレート/プレート型回転粘度計を用いて25℃で測定)。
【0131】
本発明に従い使用される酸化還元活性成分の製造は、有機合成の標準的な方法に従い行うことができる。当業者には、このような手順は既知である。
【0132】
本発明に従うレドックスフロー電池は、上記の酸化還元活性成分の他は、このような電池に慣用のなおも更に別の元素または成分を含むことができる。
【0133】
本発明に従うレドックスフロー電池では、イオン伝導性隔膜によって互いに隔てられておりかつ両室中に溶解または分散した形で存在する、選択された酸化還元活性成分がこれらの室中に使用される。
【0134】
電解質は酸化還元活性成分を含む。更に、有機溶剤及び/または水が使用される。更に、電解質は少なくとも一種の伝導塩を含むことができる。追加的に、更に添加剤を使用できる。これの例は、界面活性剤、粘度調整剤、ペスチサイド、緩衝剤、安定化剤、触媒、伝導性添加剤、凍結防止剤、温度安定化剤及び/または泡切り剤である。
【0135】
電解質溶剤の例は、水、アルコール(例えばエタノール)、炭酸エステル(例えばプロピレンカーボネート)、ニトリル(例えばアセトニトリル)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、ケトン(例えばアセトン)、ラクトン(例えばガンマ−ブチロラクトン)、ラクタム(例えばN−メチル−2−ピロリドン)、ニトロ化合物(例えばニトロメタン)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン)、塩素化炭化水素(例えばジクロロメタン)、カルボン酸(例えばギ酸、酢酸)、鉱酸(例えば硫酸、ハロゲン化水素またはハロゲン化水素酸)及びそれらの混合物である。水、炭酸エステル(例えばプロピレンカーボネート)、ニトリル(例えばアセトニトリル)またはそれらの混合物が好ましい。特に好ましいものは水である。
【0136】
伝導塩の例は、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、無機酸のアニオン(例えばリン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素酸イオン、シアン化物イオン)、または有機酸のアニオン(例えば酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸イオン、ナノフルオロブタンスルホン酸イオン、酪酸イオン、クエン酸イオン、フマル酸イオン、グルタール酸イオン、乳酸イオン、リンゴ酸イオン、マロン酸イオン、シュウ酸イオン、ピバル酸イオン、酒石酸イオン)の群から選択されるアニオンを含む塩である。特に好ましいものは、塩化物イオン及びフッ化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びテトラフルオロホウ酸イオン;並びに水素イオン(H
+)、アルカリもしくはアルカリ土類金属イオン(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)、亜鉛、鉄、並びに置換されたもしくは置換されていないアンモニウムカチオン(例えばテトラブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム)(これらの置換基は一般的にアルキル基であることができる)の群から選択されるカチオンである。水素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン及びこれらの混合物が特に好ましい。特に伝導塩は次のものである:NaCl、KCl、LiPF
6、LiBF
4、NaBF
4、NaPF
6、NaClO
4、NaOH、KOH、Na
3PO
4、K
3PO
4、Na
2SO
4、NaSO
3CF
3、LiSO
3CF
3、(CH
3)
4NOH、n−Bu
4NOH、(CH
3)
4NCl、n−Bu
4NCl、(CH
3)
4NBr、n−Bu
4NBr、n−Bu
4NPF
6、n−Bu
4NBF
4、n−Bu
4NClO
4及びこれらの混合物(ここでn−Buはn−ブチル基を表す)。
【0137】
電解質添加剤の例は、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性であることができる界面活性剤である。特に好ましいものは、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリアルキレングリコールエーテル、脂肪アルコールプロポキシレート、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、サポニン、リン脂質)である。
【0138】
電解質添加剤の更に別の例は、緩衝剤(例えば、炭酸−重炭酸緩衝剤、炭酸−ケイ酸塩緩衝剤、酢酸−酢酸塩緩衝剤、リン酸塩系緩衝剤、アンモニア系緩衝剤、クエン酸−もしくはクエン酸塩緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−1−プロパンスルホン酸、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、バルビタール−酢酸塩緩衝剤)である。
【0139】
酸化還元活性成分は、カソード液中の酸化還元活性成分が、アノード液中の酸化還元成分とは異なる、好ましくはより高い正の酸化還元電位を有するように選択される。ここで酸化還元活性成分とは、このような成分に属する全ての酸化還元状態または全てのそれらの還元/酸化状態のことと理解される。これらの酸化還元活性成分は、≧2の酸化及び/または還元状態を取ることができる。酸化還元活性成分が>2の酸化及び/または還元状態を取る場合には、少なくとも二つの酸化及び/または還元状態の酸化還元電位は、カソード液とアノード液との間で電位差が形成できる限りにおいて異なっている。
【0140】
各々アノード液及びカソード液中で進行する酸化還元活性成分のレドックス反応間の電位差は、本発明では、0V超と4.0Vとの間;好ましくは0.5Vと2.5Vとの間; 特に好ましくは0.9Vと1.6Vとの間である。
【0141】
酸化還元活性成分の酸化還元電位は、例えば、サイクリックボルタンメトリを用いて決定できる。この方法は当業者には既知である(Allen J.Bard und Larry R.Faulkner,“Electrochemical Methods:Fundamentals and Applications”,2001,2.Auflage,John Wiley & Sons;Richard G.Compton,Craig E.Banks,“Understanding Voltammetry”,2010,2.Auflage,Imperial College Press(非特許文献13))。
【0142】
本発明によるレドックスフロー電池は、イオン伝導性隔膜を含む。これは次の機能を満たす。
・アノード室及びカソード室の分離。
・両方の酸化還元活性成分の保持。
・電荷均衡に役立つ電解質の伝導塩のための、すなわち伝導塩のアニオン及び/もしくはカチオンのためのまたは一般に電解質中に含まれる荷電担体のための透過性。
【0143】
該提案の隔膜、例えば伝導塩のイオンを透過し得る隔膜または透析膜は、比較的小さいモル質量を有する酸化還元成分を両室中に分離する。
【0144】
隔膜の原材料は、使用事例に依存して、プラスチック、セラミック、ガラス、金属または繊維材料製平坦形成物からなることができる。原材料の例は、有機ポリマー、例えばセルロースもしくは変性したセルロース、例えばセルロースエーテルもしくはセルロースエステル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン及びそれらの誘導体、または更にセラミック、ガラスまたはフェルトである。複数種の材料から構成された隔膜(複合体)も可能である。
【0145】
これらの隔膜及びそれらから生じるレドックスフロー電池は、様々な外見の形態で使用し得る。これの例は、平坦な隔膜、バックフィルター構築方式及びラップドモジュールである。これらの実施形態は当業者には既知である。好ましくは、平坦な隔膜が使用される。
【0146】
本発明に従い使用される隔膜は、より良好な安定性のために、例えばスクリーン形状のまたは穿孔されたプラスチック材料または織物によって支持されていることができる。
【0147】
本発明に従い使用される隔膜の厚さは幅広い範囲で変えることができる。典型的な厚さは、0.1μmと5mmとの間の範囲、特に好ましくは10μmと200μmとの間の範囲にある。
【0148】
上記の電気活性成分、電解質及び隔膜の他に、本発明によるレドックスフロー電池は他の部品を含む。このような他の成分は次のものである。
・搬送装置、例えばポンプ、並びに酸化還元活性成分の輸送及び貯蔵のためのタンク及び管。
・電極、好ましくはグラファイト、グラファイト不織布、グラファイト紙、カーボンナノチューブカーペット、活性炭、カーボンブラックまたはグラフェンからなるかまたはこれらを含む電極。
・場合により、集電体、例えばグラファイトまたは金属でできた集電体。
【0149】
正の電極は、以下の更に別の材料を含むことができるかまたはこれらからなることができる:
貴金属をコーティングしたまたはダイヤモンドをコーティングしたチタン、ニオブ、タングステン、グラファイト、炭化ケイ素またはタンタル、特に白金で及び/またはイリジウムで及び/または酸化ルテニウムでコーティングしたチタン、ダイヤモンドまたは導電性成分、例えばホウ素でドープしたダイヤモンド、ガラス炭素(Lothar Dunsch:Elektrochemische Reaktionen an Glaskohlenstoff,Zeitschrift fuer Chemie,14,12,p463−468,Dezember 1974(非特許文献14))、インジウム−スズ酸化物、鉛、鉛−銀合金、例えば1%の銀を含む鉛−銀合金、スズ、酸化スズ、カーボンブラック、スピネル(例えばEP0042984(特許文献3)に記載のもの)、ペロブスカイト(CaTiO3)、デラホライト(酸化銅及び/または酸化鉄含有)、アンチモン、ビスマス、コバルト、白金及び/または白金ブラック、パラジウム及び/またはパラジウムブラック、マンガン、ポリピロール(例えば、EP0191726A2(特許文献4)、EP0206133A1(特許文献5)に記載のようなもの)、特殊鋼、ハステロイまたは鉄−クロム−ニッケル含有合金。
【0150】
電解質が≧7〜8のアルカリ性pH値を有する場合には、ニッケルを含む正の電極が好ましく使用される。
【0151】
コーティングされた電極材料の場合は、次の既知のコーティング法を使用できる:化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、電着法(galvanische Abscheidung)、金属を溶解された形で及び還元剤を含む液状溶液からの無電解堆積法であって、前記還元剤が表面上に所望の金属を堆積させる堆積法。
【0152】
負の電極は、以下の材料を含むことができるかまたはこれらからなることができる:
亜鉛、特殊鋼、ハステロイもしくは鉄−クロム−ニッケル含有合金、グラファイト、グラファイト不織布、グラファイト紙、カーボンナノチューブカーペット、活性炭、カーボンブラックまたはグラフェン。
【0153】
電解質が≧7〜8のアルカリ性pH値を有する場合には、ニッケルを含む負の電極が好ましく使用される。
【0154】
本発明によるレドックスフロー電池は、更なる任意選択の、但し好ましい部品として集電体を含む。これは、電極材料と外部電源または電流シンクとの間の可能な限り良好な電気的接触を形成するという課題を持つ。
【0155】
集電体としては、本発明によるレドックスフロー電池中には、アルミニウム、アルミニウム合金、特殊鋼、ハステロイ、鉄−クロム−ニッケル合金、貴金属をコーティングしたチタンもしくはタンタル、特に白金で及び/もしくはイリジウムで及び/または酸化ルテニウムでコーティングされたチタン、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウムを使用できる。
【0156】
コーティングされた集電体の製造のためには、中でも次の既知のコーティング法を使用できる:化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、電着法(galvanische Abscheidung)、金属を溶解された形で及び還元剤を含む液状溶液からの無電解堆積法であって、前記還元剤が表面上に所望の金属を堆積させる堆積法。
【0157】
本発明によるレドックスフロー電池は、様々な分野で使用することができる。これは、最も広い意味では、移動型及び定置型用途のための電気エネルギーの貯蔵であることができる。本発明は、この目的のための該レドックスフロー電池の使用にも関する。
【0158】
用途の例は、非常電源供給、ピーク負荷分散のための定置型貯蔵器としての使用、並びにガス−、石炭−、バイオマス−、潮汐−及び海洋発電所からの、特に光起電及び風力発電の分野での再生可能なエネルギー源からの電気エネルギーの中間貯蔵のための定置型貯蔵器としての使用、更には、エレクトロモビリティの分野での使用、例えば陸上車、航空機及び船舶における貯蔵器としての使用である。
【0159】
本発明によるレドックスフロー電池は、好ましくは、電気エネルギーのための定置型貯蔵器として使用される。
【0160】
本発明によるレドックスフロー電池は、それ自体公知のやり方で、直列式にまたは並列式に互いに接続することができる。
【0161】
以下の例は本発明を説明するものであるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0162】
実施例1:鉄/バイオロゲン−レドックスフローバッテリー
電池の理論電位(E
0は、銀/塩化銀基準電極に対しての20℃の水中での酸化還元電位と定義される):
E
0 Fe
2+/Fe
3+=0.77V
E
0 MV
2+/MV
+=−0.43V
→電池電圧=1.2V
2mol/LのNaClの電解質溶液中に溶解したそれぞれ1mol/LのFeCl
2及び1mol/Lのジメチルバイオロゲンクロライドからなる電解質溶液を調製した。これらの物質は化学品の通商で得ることができる。前記電解質溶液を、5cm
2の有効表面積を持つレドックスフロー電池中で試験した。静的(液体をポンプ輸送しない)の場合と液体をポンプ輸送した場合の両方について充電及び放電プロセスを行った。この際、120mW/cm
2までのエネルギー密度を達成できた。蓄電容量は25Ah/Lであった。過電圧を考慮すると、約1.0Vの電池電圧が観察された。
【0163】
図1には、この電池のOCV曲線を、その充電状態の関数としてプロットしている。このOCV曲線は、充電状態に対する電池電圧の依存性を表している。この際、この電池電圧は、「開回路(offenen Stromkreis)」で測定する、すなわち所与の充電状態において外部負荷無しで生じる電池電圧(開回路電圧、簡略してOCV)である。この電圧値が高い程に、エネルギー容量が高く、かつ該システムはより効率よく稼働することができる。
【0164】
図2は、この電池の充電曲線を示す。
【0165】
実施例2:TEMPO−塩化アンモニウム/バイオロゲン−レドックスフローバッテリー
電池の理論電位:
E
0 TEMPO−N
+/TEMPO−N
2+=0.78V
E
0 MV
2+/MV
+=−0.43V
→電池電圧=1.21V
二つの電解質溶液を調製した:作用電極(バッテリーのプラス極)のための溶液は、以下の構造を持つ1.0gのTEMPO−塩化アンモニウム及び10mlの水中の0.55gのNaClから用意した。対電極(バッテリーのマイナス極)のための溶液は、1.5gのジメチルバイオロゲンクロライド及び10mlの水中の0.55gのNaClから調製した。これらの溶液を、5cm
2の有効表面積を持つレドックスフロー電池中で(例1と同様に)試験した。この電池を周期的に充電及び放電した。
TEMPO−塩化アンモニウムの構造:
【0166】
【化7】
図3には、この電池のOCV曲線を、その充電状態の関数としてプロットしている。
【0167】
図4には、ポリマー型レドックスシステムの代わりに、小分子からなるレドックスシステムを使用した場合に、単電池の達成可能な電位レベルが高くなることが示されている。
図4には、上記のTEMPO−塩化アンモニウムと、対イオンとして塩化物イオンを持つジ−メチルバイオロゲンとを酸化還元活性成分として含む電池のOCV曲線が示されている(上側の曲線)。更に、TEMPOベースのポリマー及びバイオロゲンベースのポリマーを酸化還元活性成分として含む電池のOCV曲線が示されている。小分子を有するこのシステムの電池電圧が約0.2V上昇すること;すなわち小分子の該システムのエネルギー密度が、同じ濃度でも15%超高いことが分かる。
【0168】
実施例3:メチルバイオロゲン−TEMPO−レドックスフローバッテリー
電池の理論電位:
E
0 MV−TEMPO
2+/MV−TEMPO
3+=0.68V
E
0 MV−TEMPO
2+/MV−TEMPO
+=−0.46V
→電池電圧=1.14V
電解質溶液を、以下の構造を持つ213mgのメチルバイオロゲン−TEMPO及び4mlの水中の235mgのNaClから調製した。この溶液を、作用電極(バッテリーのプラス極)、対電極(バッテリーのマイナス極)の両方に利用し、そして5cm
2の有効面積を持つレドックスフロー電池中で試験した(例1と同様に行い、液体はポンプ輸送しなかった)。この電池を周期的に充電及び放電した。更にOCV曲線を記録した。
メチルバイオロゲン−TEMPOの構造:
【0169】
【化8】
図5には、この電池のOCV曲線を、その充電状態(SOC)の関数としてプロットしている。
【0170】
図6は、この電池の充電曲線を示す。
【0171】
実施例4:プロパノエートバイオロゲン−TEMPO−レドックスフローバッテリー
電池の理論電位:
E
0 MV−TEMPO
2+/MV−TEMPO
3+=0.67V
E
0 MV−TEMPO
2+/MV−TEMPO
+=−0.49V
→電池電圧=1.16V
電解質溶液を、以下の構造を持つ110mgのプロパノエートバイオロゲン−TEMPO及び2mlの水中の117mgのNaClから調製した。この溶液を、作用電極(バッテリーのプラス極)、対電極(バッテリーのマイナス極)の両方に利用し、そして5cm
2の有効面積を持つレドックスフロー電池中で試験した(例1と同様に行い、液体はポンプ輸送しなかった)。この電池を周期的に充電及び放電した。更にOCV曲線を記録した。
【0172】
プロパノエートバイオロゲン−TEMPOの構造:
【0173】
【化9】
図7には、この電池のOCV曲線を、その充電状態(SOC)の関数としてプロットしている。
【0174】
図8は、この電池の充電曲線を示す。
【0175】
合成例
実施例5:TEMPO−塩化アンモニウムの合成
【0176】
【化10】
4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(2)
20gの4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(1)、2gのNa
2WO
4×2H
2O及び2gのNa
2H
2EDTAを、133mlの水中に室温で溶解した。26.6mlの過酸化水素(30%)を攪拌しながら加えた。反応の進行は、ガスクロマトグラフィ(GC)で追跡し、そして(1)が完全に転化されるまで、更に過酸化水素を5mlづつ加えた。赤色の反応溶液を、緑色の沈降物から分離し、そして150mlの水で洗浄した。水性相を50mlのジクロロメタンで7回抽出し、そして硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去し、そして生成物(収率60%)を真空下に乾燥した。
【0177】
4−(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(3)
2gの4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(2)を、20mlの乾燥メタノール中に溶解し、そして7.3gのジメチルアミンヒドロクロライドをアルゴン保護雰囲気下に加えた。冷却及び攪拌しながら、この反応混合物を444mgのNaBH
3CNと混合した。48時間後、苛性ソーダ溶液を用いてアルカリ化し、そして50mLのジクロロメタンで3回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を除去し、そして粗製生成物を真空下に乾燥した。得られた粗製生成物を、更に精製することなく後段で更に使用した。
【0178】
1−オキシル−N,N,N−2,2,6,6−ヘプタメチルピペリジン−4−アンモニウムクロライド(4,略称:TEMPO−塩化アンモニウム)
上記粗製生成物4−(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(3)を20mlのジメチルエーテル中に完全に溶解し、固形物を濾過によって除去し、そして5mlのジエチルエーテル中の1.42gのヨウ化メチルの溶液を加えた。上記溶液を20時間、室温で攪拌した後、生じた沈降物を分離し、そして20mlのジエチルエーテルで洗浄した。この沈降物を50mlの水中に溶解し、そしてイオン交換樹脂(Dowex Marathon A2、塩化物型)で、ヨウ化物イオンから塩化物イオンへの対イオンのイオン交換を行った。得られた溶液を凍結乾燥し、そして生成物が橙色の粉末(収率89%)として得られた。
【0179】
実施例6:メチルバイオロゲン−TEMPOの合成
【0180】
【化11】
1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−4−(クロロメチル)ベンゾエート(7)
80mlの乾燥クロロホルム及び8mlの乾燥トリエチルアミン中の5gの4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(6)の溶液に、4.3mlの4−(クロロメチル)ベンゾイルクロライド(5)を攪拌しながら室温で滴下した。6時間後に、反応混合物を、300mlの氷水及び50mlの5%濃度重炭酸溶液からなる混合物に加え、攪拌し、そして200mlのクロロホルムを用いて三回抽出した。有機相を200mlの水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして溶剤を真空中に除去した。真空中での乾燥後に、粗製生成物が橙色の粉末(収率95%)として得られた。得られた粗製生成物を、更に精製することなく後段で更に使用した。
【0181】
1−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−[4,4’−ビピリジン]−1−イウム−クロライド(8)
1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−4−(クロロメチル)ベンゾエート(7)の4.5gの粗製生成物及び2.2gの4,4’−ビピリジンに、80mLのアセトニトリルを加え、そしてこの溶液を80℃で72時間攪拌した。この反応混合物を、450mlの冷たい酢酸エチル中で沈殿させ、生じた沈降物を分離し、そして真空中で乾燥した。生成物が橙色の固形物(収率78%)として得られた。
【0182】
1−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−1’−メチル−[4,4’−ビピリジン]−1,1’−ジイウム−クロライド(9、略称:メチルバイオロゲン−TEMPO)
変法A:8mlの水中の2gの1−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−[4,4’−ビピリジン]−1−イウム−クロライド(8)の溶液に、圧力反応器中でクロロメタン(圧力2bar)を加えた。反応溶液を35時間、95℃で攪拌し、そして生成物が凍結乾燥によって固形物(収率95%)として得られた。
【0183】
変法B:12mlのDMSO中の0.5gの1−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−[4,4’−ビピリジン]−1−イウム−クロライド(8)の溶液に、0.14mlのヨウ化メチルを加えた。この反応混合物を6時間、60℃で攪拌し、次いで150mlの酢酸エチル中で沈殿させた。この沈降物を水中に溶解し、そしてイオン交換樹脂(Dowex Marathon A2、塩化物型)で、ヨウ化物イオンから塩化物イオンへの対イオンのイオン交換を行った。得られた溶液を凍結乾燥し、そして生成物が橙色の粉末(収率82%)として得られた。
【0184】
実施例7:プロパノエートバイオロゲン−TEMPOの合成
【0185】
【化12】
3−(1’−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−[4,4’−ビピリジン]−1,1’−ジイウム−1−イル)プロパノエート−クロライド(10、略称:プロパノエートバイオロゲン−TEMPO)
10mlのアセトニトリル中の2gの1−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルビピリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−[4,4’−ビピリジン]−1−イウム−クロライド(8)に、攪拌しながら3mlのアクリル酸を加えた。この溶液を、60℃で30分間攪拌し、冷却し、そして冷たい酢酸エチル中で沈殿させた。沈降物を分離し、真空中で乾燥し、そして目的の生成物が粉末(収率56%)として得られた。
【0186】
実施例8:多官能化されたバイオロゲンの合成
【0187】
【化13】
1−メチル−[4,4’−ビピリジン]−1−イウム−クロライド(11)
圧力反応器中に、200mlのアセトニトリル及び200mlのトルエン中の100gの4,4’−ビピリジンを仕込んだ。32.4gのクロロメタンを添加した後、この溶液を70℃で26時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、そして生成物(収率98%)が灰色の粉末として得られた。
【0188】
1’,1’’’−(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(1−メチル−[4,4’−ビピリジン]−1,1’−ジイウム)クロライド(13)
0.2gの1−メチル−[4,4’−ビピリジン]−1−イウム−クロライド(11)に、61μlの1−ブロモ−2−(2−ブロモエトキシ)エタン(12)、18mgのテトラブチルアンモニウムアイオダイド及び2mlのDMSOを加えた。この反応混合物を、110℃で3日間攪拌し、冷却し、そして冷たい酢酸エチル中に沈殿させた。この沈降物を水中に溶解し、そしてイオン交換樹脂(Dowex Marathon A2、塩化物型)で、ヨウ化物イオンから塩化物イオンへの対イオンのイオン交換を行った。得られた溶液を凍結乾燥し、そして生成物が橙色の粉末(収率73%)として得られた。
【0189】
例5〜8からの目的生成物についての分析データ
1H−NMRスペクトルを、ブルカーフーリエ300(300MHz)で記録した。TEMPOラジカルをフェニルヒドラジンまたはヒドラジン水和物で還元して、測定に影響を与え得る常磁性種が存在しないようにした。
【0190】
サイクリックボルタモグラムを、3極セットアップで測定した。この際、ガラス炭素ディスク型電極を作用電極として、白金ワイヤを対電極として、そして銀/塩化銀電極を基準電極として使用した。電解質としては、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)を使用した。
【0191】
1−オキシル−N,N,N−2,2,6,6−ヘプタメチルピペリジン−4−アミニウムクロライド(4,略称:TEMPO−塩化アンモニウム)
1H NMR(DMSO,300MHz)δ:3.73(1H,m);3.02(9H,s);1.99(2H,m);1.55(2H,m);1.09(12H,d)。
【0192】
図9は、銀/塩化銀基準電極に対して測定した、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)中での該物質のサイクリックボルタモグラムを示す。
【0193】
1−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−1’−メチル−[4,4’−ビピリジン]−1,1’−ジイウム−クロライド(9、略称:メチルバイオロゲン−TEMPO)
1H NMR(D
2O,300MHz)δ:9.09(2H,d);8.94(2H,d);8.44(4H,m);8.01(2H,d);7.52(2H,d);5.93(2H,s);5.28(1H,m);4.40(3H,s);2.13(2H,m);1.82(2H,m);1.24(12H,s)。
【0194】
図10は、銀/塩化銀基準電極に対して測定した、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)中での該物質のサイクリックボルタモグラムを示す。
【0195】
3−(1’−(4−(((1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)−[4,4’−ビピリジン]−1,1’−ジイウム−1−イル)プロパノエート−クロライド(10、略称:プロパノエートバイオロゲン−TEMPO)
1H NMR(D
2O,300MHz)δ:9.05(4H,m);8.43(4H,m);8.02(2H,d);7.51(2H,d);5.92(2H,s);5.31(1H,m);4.81(2H,t);2.87(2H,t);2.16(2H,m);1.84(2H,m);1.26(12H,d)。
【0196】
図11は、銀/塩化銀基準電極に対して測定した、塩化ナトリウム水溶液(0.1mol/l)中での該物質のサイクリックボルタモグラムを示す。この場合、実線は、アノードもしくはカソード領域の個々の測定を示し、他方で、破線は、全領域にわたる測定を示す。
【0197】
1’,1’’’−(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(1−メチル−[4,4’−ビピリジン]−1,1’−ジイウム)クロライド(13)
1H NMR(DMSO,300MHz)δ:9.09(4H,m);8.99(4H,m);8.50(8H,m);4.88(4H,m);4.45(6H,s);4.06(4H,m)。
【国際調査報告】