特表2018-530530(P2018-530530A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-530530免疫刺激オリゴヌクレオチドを含む組合せ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-530530(P2018-530530A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】免疫刺激オリゴヌクレオチドを含む組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20180921BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180921BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180921BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180921BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180921BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180921BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20180921BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180921BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20180921BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180921BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20180921BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20180921BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20180921BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20180921BHJP
【FI】
   A61K31/7088ZNA
   A61P43/00 121
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P37/02
   A61K45/00
   A61K31/713
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61K39/395 U
   A61K39/39
   A61P43/00 111
   A61K48/00
   C12N15/11 Z
   C07K16/18
   C12N15/117 Z
   C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-512125(P2018-512125)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月2日
(86)【国際出願番号】EP2016071314
(87)【国際公開番号】WO2017042336
(87)【国際公開日】20170316
(31)【優先権主張番号】92821
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】LU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】505106324
【氏名又は名称】モロゲン・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】シュロフ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】カップ,カースチン
(72)【発明者】
【氏名】ズーロ,アルフレッド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084AA27
4C084MA12
4C084MA16
4C084MA34
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB091
4C084ZB111
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB01
4C085EE03
4C085EE06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA12
4C086MA16
4C086MA34
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA22
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、疾患の治療のための組合せおよびその使用に関する。本開示は、PD1、PD−L1、OX40、TIM−3、LAG3、CD137(4−1BB)を含む群から選択される、いわゆるT細胞調節因子と非コード配列の免疫調節性DNAの組合せを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.T細胞調節因子としての機能に影響を与えるため、PD1、PD−L1、OX40、TIM−3、LAG3、CD137(4−1BB)を含む群から選択される少なくとも1つの分子に結合する化学物質または分子を含む第1の群、および
b.少なくとも1つの配列モチーフNCGN(ここで、NはA、C、T、またはGを含むヌクレオチドであり、ならびにCはデオキシシチジン、Gはデオキシグアノシン、Aはデオキシアデノシン、およびTはデオキシチミジンである)を含む非コード配列のデオキシリボ核酸を含む第2の群
の構成成分を含む組合せ。
【請求項2】
がGT、GG、GA、AT、およびAAの群からの要素であり、NがCT、TG、およびTTの群からの要素である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記非コード配列のデオキシリボ核酸は、両側が直鎖状で開鎖している、二本鎖部分の片側が直鎖状で開鎖しており該二本鎖の他方側が一本鎖ヘアピンである、またはダンベル型で部分的に一本鎖の共有結合で閉鎖したデオキシリボ核酸の鎖のいずれかである、請求項1または2に記載の組合せ。
【請求項4】
T細胞調節因子に免疫系のチェックポイント阻害剤および免疫系の共刺激分子が含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項5】
前記配列モチーフNCGNを少なくとも3つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項6】
直鎖状で開鎖した非コード配列のデオキシリボ核酸が、少なくとも1個のL−立体配座のヌクレオチドを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項7】
前記直鎖状で開鎖した非コード配列のデオキシリボ核酸のDNA一本鎖の5’−および/または3’−末端に位置した5個の末端ヌクレオチドの1個が、L−立体配座である、請求項6に記載の組合せ。
【請求項8】
a. GTTCCTGGAG ACGTTCTTAG GAACGTTCTC CTTGACGTTG GAGA-GAAC(配列番号1)、または
b. ACCTTCCTTG TACTAACGTT GCCTCAAGGA AGGTTGATCT TCATAACGTT GCCTAGATCA(配列番号2)、または
c. AACGTTCTTCGGGG CGTT(配列番号3)、または
d. AGGTGGTAAC CCCTAGGGGT TACCACCTTC ATCGTCGTTT TGTCGTTTTG TCGTTCTT(配列番号4)
の配列を少なくとも1つ含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項9】
前記非コード配列のデオキシリボ核酸の長さが40〜200ヌクレオチドである、請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
請求項8c)の前記配列が、配列CCTAGGGGTT ACCACCTTCA TTGGAAAACG TTCTTCGGGG CGTTCTTAGG TGGTAACC CCTAGGGGTT ACCACCTTCA TTGGAAAACG TTCTTCGGGG CGTTCTTAGG TGGTAACC(配列番号5)の一部である、請求項8または9に記載の組合せ。
【請求項11】
前記非コード配列のデオキシリボ核酸の長さが48〜116ヌクレオチドである、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項12】
前記配列モチーフNCGNが、一本鎖領域の一部である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項13】
T細胞調節因子に結合する分子が抗体である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項14】
前記の両群からの構成成分を、最大15mg/kg体重で適用するため、固体、液体、または気体の形態で提供する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せの構成成分を、同時に、交互に、または連続して提供するステップを含む方法。
【請求項16】
前記T細胞調節因子に影響を与えるための前記化学物質または前記分子より先に、前記非コード配列のデオキシリボ核酸を提供する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
医薬として使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【請求項18】
がん、自己免疫疾患、および炎症の治療のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【請求項19】
前記組合せの化合物を、同時に、交互に、または連続して投与する、請求項16または17に記載の使用。
【請求項20】
前記組合せを含む医薬組成物の製造のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【請求項21】
医薬品が前記組合せの前記化合物を、同時に、交互に、または連続して放出する、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
治療的または予防的ワクチン接種のアジュバントとしての、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の治療のための組合せおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を刺激、誘導、増強、または抑制することによって、疾病を治療することを定義している。免疫療法の戦略は、がん、感染症、アレルギー、および喘息のような疾患と闘うことである。
【0003】
免疫療法に用いることができる様々な活性薬剤、いわゆる免疫調節剤は公知である。最も確立された免疫調節剤は、低分子または核酸に属し、その多くがToll様受容体系と相互作用する。最も知られている免疫を調節する短いDNA配列は、非メチル化シトシングアニンモチーフ(CGモチーフ)を含有し、これはKrieg他によって記載されている(Nature1995 374:6522 546〜549)。原核生物またはウイルスと比較して真核生物のゲノムでは、非メチル化CGモチーフの出現が、大幅に抑制されている。したがって、このようなモチーフを有するDNA分子は、自然の「危険信号」となり、原核生物またはウイルスの病原体との闘いにおいて免疫系を誘発させる。このことは、免疫療法で感染症を治療または予防するために、このような配列を使用することによって、治療的または予防的に利用できる。近年、特に重視されていることは、腫瘍と闘うために患者自身の免疫系を活性化することを目的としたがん治療において、このような免疫調節剤を使用することである。
【0004】
非メチル化CGモチーフを有するDNA構築物は、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびNKT細胞を含む先天性免疫系のエフェクター細胞を強く刺激することによって、顕著な生理学的作用を引き起こすことが可能である。非メチル化CGモチーフは、先天性免疫のパターン認識受容体であるToll様受容体(TLR)9によって検出される。正確な認識機構は未だ完全には理解されていないが、その基礎となる経路の解明に著しい進歩を遂げている(A.Krieg、Nat.Rev.Drug Disc.、5:471〜484、2006)。
【0005】
非メチル化CGを有するDNA構築物と上記受容体との結合によって、応答細胞における複数のシグナルカスケードが活性化すると想定される。特徴的な表面分子のアップレギュレーションおよびサイトカインの分泌によって、Th1パターンが優位な適応免疫が誘導される。このような構築物は、例えば、抗体、化学療法もしくは放射線治療、ワクチン、またはサイトカインと組み合わせて使用することができる。アレルギー疾患および喘息は、大半がTh2媒介性である。Th1/Th2の比率を増加させることによって、該Th2媒介性応答が低下し、それによってこれらの種類の疾患の治療または予防が可能である。
【0006】
TLR9経路によって調節されない表面分子として、細胞の種類に応じて、例えば、CD40、CD69、CD80、CD86、またはCD169が挙げられる。増加したサイトカインの分泌も細胞の種類の違いによって特徴的である;サイトカインとして、例えば、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1α、MIP−1β、インターロイキン(IL)−6、IL−8、インターフェロン(IFN)−α、腫瘍壊死因子(TNF)−α、IFN−γ、単球走化性タンパク質(MCP)−1、または10kDaのIFN−γ誘導タンパク質(IP−10)が挙げられる。
【0007】
疾患を予防または治療するため、予防接種は非常に有効な手法であることが証明されている。強力で永続的な免疫応答を確保するため、樹状細胞のような抗原提示細胞を刺激することが可能なアジュバントが、通常、その抗原と共に投与され、この目的において、TLR9アゴニストは強力な免疫賦活剤であることが示されている。
【0008】
前臨床試験および進行中の臨床試験によって、免疫調節剤および/またはアジュバントとしてのTLR9アゴニストの使用が支持されており、液性および細胞性応答の両方を増強することから、その抗腫瘍効果が証明されている。
【0009】
非メチル化CGモチーフが免疫応答に影響を及ぼすまたは免疫応答を調節する根本的な機序に関するいかなる説明とも関係なく、このようなモチーフを使用することによって免疫系を調節するための多くの手法が開発された。WO1998/018810では、非メチル化CGモチーフを有する免疫刺激配列は、それが一本鎖の一部である場合、さらにより効果的であることが開示されている。しかし、開鎖した一本鎖DNA分子を投与することは、一本鎖核酸の分解が早いため、実用的ではない。したがって、非メチル化CGモチーフを有する一本鎖または二本鎖DNA構築物を保護するための別の方法が開発された。
【0010】
DNAヌクレアーゼによる分解に対する耐性を得るため、核酸ポリマーの主鎖におけるホスホジエステル結合をホスホロチオエートに修飾することが多い。このようなホスホロチオエート保護核酸(phosphorothioate−protected nucleic acids)の刺激活性が幾分低いことに加え、臨床試験の最後の数年に、ホスホロチオエート保護(phosphorothioate−protection)の毒性によって、医薬組成物または医薬品へのこのような核酸のいかなる使用も除外または厳しく制限されることが示された。
【0011】
異なる免疫調節プロファイルを有する公知の活性化剤の4つのクラスから、2つを除くすべてのメンバーは、直鎖DNA分子を有する。1つの例外はEP1 196 178に開示されている。本文献は、全体が天然DNAから成るCGモチーフを有する、部分的に一本鎖でダンベル型をしている、ヌクレオチド残基の共有結合閉鎖配列(「dSLIM」)を含む、短いデオキシリボ核酸分子を開示している。EP1 196 178の開示によると、該CGモチーフは、開示された分子の二本鎖ステムの両末端にある一本鎖ループ中または該二本鎖ステム中に位置する。該一本鎖ヘアピンループは、細胞内または細胞外において、DNAヌクレアーゼによる分解から二本鎖ステムを保護する。GB1402847.6は、異なる配列を用いた幾分類似したダンベル構造を開示している。
【0012】
直鎖オリゴヌクレオチドからの別の例外は、WO2012/085291に開示されている。本文献は、L−立体配座のヌクレオチドを有するDNA構築物を教示している。WO2012/085291に開示されているデータによると、L−立体配座のヌクレオチドの数およびDNA構築物中のそれらの位置は、DNA構築物の免疫調節能(immunomodulatory capability)に影響を及ぼす。L−立体配座のヌクレオチドのみを含むDNA構築物は、例えば、免疫系を効率的には刺激しない。
【0013】
文献WO2010/039137は、免疫刺激モチーフに隣接する配列および/または修飾がなければ免疫刺激性であろうオリゴヌクレオチドモチーフに1つまたは複数の化学修飾を有する、TLR媒介疾患に対するアンタゴニストとして、免疫調節オリゴヌクレオチドを開示している。したがって、WO2010/039137で開示されたオリゴヌクレオチドの目的は、TLRによって誘導された免疫応答を抑制することである。
【0014】
WO2005/042018は、新規のいわゆるC−クラスのCpGオリゴヌクレオチドについて記載されており、c−クラスのオリゴヌクレオチドは、該分子の5’末端もしくは3’末端に、またはその近くに通常位置するCpG配列、および該分子の他方の末端に、またはその近くに通常位置するGCリッチパリンドロームモチーフを特徴とする。本文献は、c−クラスのDNAが有するパリンドローム配列の変形形態を開示している。
【0015】
文献WO2015/124614は、免疫系を調節するための共有結合閉鎖DNA構築物(covalently closed DNA construct)、医薬組成物、およびワクチンならびにそれらの使用を開示しており、ここで、該DNA構築物は特殊なDNA配列を有する。
【0016】
細胞免疫応答の強い刺激は、調節回路(ragulatory circuits)に影響を及ぼすことを可能にし、このような介入なく、患者に十分な免疫活性が生じることはないであろう。これには、「弱い」抗原、すなわち、MHC−Iによる提示を活性化しない抗原、例えば、染色体転座からのブレークポイントペプチドまたは腫瘍性疾患で多発する突然変異した癌遺伝子に対する応答の誘導が含まれる(Melief CJ、Kast WM;T−cell immunotherapy of cancer;Res Immunol1991Jun−Aug;142(5−6):425−9;同じく:Pasternak G、Hochhaus A、Schultheis B、Hehlmann R;Chronic myelogenous leukemia:molecular and cellular aspects;J Cancer Res Clin Oncol1998;124(12):643−60)。悪性黒色腫の腫瘍細胞で発現され、MHC−Iで提示されるチロシナーゼまたはチロシンヒドロキシラーゼのような自己抗原に対する寛容性を壊すことも望ましいと思われる。(Weber LW、Bowne WB、Wolchok JD、Srinivasan R、Qin J、Moroi Y、Clynes R、Song P、Lewis JJ、Houghton AN;Tumor immunity and autoimmunity induced by immunization with homologous DNA;J Clin Invest1998Sep15;102(6):1258−64;Surman DR、Irvine KR、Shulman EP、Allweis TM、Rosenberg SA、Restifo NJ;Generation of polyclonal rabbit antisera to mouse melanoma associated antigens using gene gun immunization;Immunol Methods;1998May1;214(1−2):51〜62)。
【0017】
別の極めて重要な側面は、予防的ワクチン接種におけるISSのアジュバント効果に加え、既存の感染症の反応を2型応答から1型応答に再極性化し、これによって、病原体を制御し得る可能性である(Kovarik J他、CpG oligodeoxynucleotides can circumvent the Th2 polarization of neonatal responses to vaccines but may fail to fully redirect Th2 responses established by neonatal priming;J Immunol.1999Feb1;162(3):1611−7)。免疫応答の型は、感染症の経過または患者の生存能力に決定的な影響を及ぼすことが、多くの病原体で証明されている。アレルギー反応が2型の過剰応答を示す限り、ISSは、この種の適応症にも治療効果をもたらすことが期待される。
【0018】
CpGを有する特定の配列は、ISS誘導性の刺激を中和する、すなわち、この種の配列を加えた場合、ISSの刺激作用を抑制することが可能になる特性を有することが認められている(Krieg AM、Wu T、Weeratna R、Efler SM、Love−Homan L、Yang L、Yi AK、Short D、Davis HL;Sequence motifs in adenoviral DNA block immune activation by stimulatory CpG motifs;Proc Natl Acad Sci USA1998Oct13;95(21):12631−6)。中和CpGモチーフ(neutralising CpG motifs)(「CpG−N」)として記載されたこれらの配列モチーフの作用の根本的な機序が十分に説明されておらず、ここに引用した公報の著者らは、この作用はISSによる刺激を遮断することに限定されると暗示している。ISSによる免疫誘導の機序が説明されない限り、これらのCpG−Nモチーフが、治療上有意義な免疫を調節する他の特性も有する可能性を否定することはできない。
【0019】
患者の血清中に抗DNA抗体の存在が確認されることを特徴とし、細菌のISSに対する反応を病因とすることが疑われる、少なくとも1つのヒトの疾患として、全身性エリテマトーデスがある(Krieg AM、CpG DNA:a pathogenic factor in systemic lupus erythematosus?、J Clin Immunol1995Nov;15(6):284−92)。これらの場合および他の適応症において、CpG−Nモチーフを使用する根本的な機序を遮断することは有益であると思われる。
【0020】
上記根本的な機序のいかなる説明とも関係なく、CpG配列が上記免疫応答に影響を及ぼす潜在性は、注目に値し、該現象に対する、さらに感染症、腫瘍、および免疫不全症に関する治療的および予防的適用の可能性を探ることに対する、思いがけない広範囲な科学的興味を引き起こした。
【0021】
CpGを含む免疫刺激配列が一本鎖として存在する場合、より有効であることは、ISSに関する文献で述べられており(例えば、WO09818810A1、17ページ、II 29〜30参照)、また記載されている本発明によって確認されている(下記参照)。免疫修飾の目的で、短い開鎖した一本鎖ISSオリゴデオキシヌクレオチドを投与することは、論理的にとられる次の段階であり、感染症、腫瘍、および自己免疫疾患を治療するための多くの実験的手法の対象である。しかし、開鎖した一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドは、細胞外および細胞内エキソヌクレアーゼによって極めて速やかに分解され、このため、in vivoで適用することは非常に困難である。核酸ポリマーの主鎖における修飾されたリン酸−エステル結合と比較すると、前述のヌクレアーゼの酵素活性は、かなり低下し;これによって、一本鎖核酸分子を患者に投与することに適用されるキラル体またはアキラル体のリン酸チオエステル化(「チオエート」)またはリン酸結合(ホスホネート)の減少化が導かれた。これらの修飾された化合物は、固相合成によって、またある程度、古典的なDNAアミダイト合成と比較するとかなり複雑な方法によってのみ製造することが可能である。これらの化合物はアンチセンス研究において知られているが、アンチセンス戦略の臨床試験において、これらの化合物は、特に血液凝固系および補体系に対する重篤な副作用を有することも明らかにされた(例えば、Sheehan and Lan、Blood92、1617〜1625(1998)参照)。ISSのヌクレアーゼ保護のためにチオリン酸誘導体を使用することに関連して、該配列は、活性自体に必要な隣接する配列によって、実際に有効なそのシトシン−グアノシン残基自体を保護する場合、刺激活性がより低下することも明らかにされた(WO98/18810参照)。
【0022】
CpGを含む免疫刺激ISSの使用および製造に関する教示は、WO98/18810に加え、その中で引用されている文献に包括的に記載されている。エキソヌクレアーゼからオリゴデオキシヌクレオチドを保護する必要性は、WO98/18810に詳細に記載されている。in vivoでの安定性が不十分である問題を解決するため、多くの解決策が提案されているが、これらは一本鎖の直鎖状ODNに明確に限定されており;チオリン酸エステル、ジチオリン酸エステル、またはホスホネートについて言及されている。二次構造、具体的にはステムループを形成することでODNを安定化する可能性は、WO98/18810に記載されている。免疫刺激配列に関連したホスホロチオエートオリゴマーの製造および使用は、US5,663,153、US5,723,335、およびUS5,856,462に記載されている。
【0023】
一本鎖配列を保護するための別の戦略は、US5,750,669に記載されている。本文献では、該オリゴマーの末端が、5’−5’結合および3’−3’結合によって連結されたヌクレオシド残基と結合しており、これによってエキソヌクレアーゼ分解を阻害する。
【0024】
2つのステムループまたは共有結合で閉鎖したダンベル型ODNは、DNA結合タンパク質、さらに転写因子の結合部位における競合を研究の焦点とした実験的手法において知られている(Lim他、1997、Nuc.Acids Res.25、575〜581;Blumenfeld他、Nuc.Acids Res.1993、21、3405〜3411)。
【0025】
ヒト免疫系のT細胞応答は、種々のT細胞を調節する分子によって調節され、正常細胞における免疫系の過剰活性を防ぐ(Pardoll DM.Nat Rev Cancer.2012;12(4):252〜264;Sharma P、Wagner K、Wolchok JD、Allison JP.Nat Rev Cancer.2011;11(11):805〜812)。このようなT細胞を調節する分子は、本開示の文脈内では「T細胞調節因子」としてまとめられており、チェックポイント阻害剤および共刺激剤を含む。腫瘍細胞は、このような調節系を利用し、免疫系による検出を回避する。免疫系のチェックポイントの阻害およびT細胞系の共刺激は、抗腫瘍免疫応答を増強すると思われる。免疫チェックポイントの遮断、これに伴う腫瘍特異的T細胞の遊離は、腫瘍細胞に対するそのエフェクター機能が発揮されるため、がん状態(cancer settings)における有効性が明らかにされており、臨床試験は進行中である(Hodi FS、O’Day SJ、McDermott DF、他、N Engl J Med.2010;363(8):711〜723;Robert C、Thomas L、Bondarenko I、他、N Engl J Med.2011;364(26):2517〜2526;Wolchok JD、H.Kluger、M.K.Callahan、他、N Engl J Med、369(2013)、122〜133ページ)。
【0026】
細胞傷害性Tリンパ球抗原(CTLA)−4およびプログラム細胞死(PD)−1は、2つのチェックポイントに相当し、これまでに、がん治療の標的として最も広く研究されてきた。CTLA−4は、特定のがんにおいてT細胞の表面で異常にアップレギュレートされることが認められている強力な共阻害因子である。これは、腫瘍細胞に応答したT細胞の活性化を低下させ、ひいては早期のTリンパ球耐性に関わる。PD−1は、特定の腫瘍でアップレギュレートされ、T細胞の機能を阻害し、末梢血Tリンパ球耐性を維持する役割を果たすことによって該腫瘍が免疫系から逃れることを助けていることが認められている(Keir ME、Butte MJ、Freeman GJ、Sharpe AH、他、Annu Rev Immunol.2008;26:677〜704;Mahoney KM、Freeman GJ、McDermott DF.Clinical Therapeutics37(4):764〜782、2015)。
【0027】
2011年に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された最初の免疫チェックポイント阻害剤は、転移性黒色腫の治療のためにCTLA−4を遮断するモノクローナル抗体であるイピリムマブであった。PD−1とそのリガンドの1つであるPD−L1(B7−H1およびCD274としても公知)の間の相互作用を遮断することによって、抗腫瘍応答が引き起こされることが報告されている(、Pardoll DM.Nat Rev Cancer.2012;12(4):252〜264)。
【0028】
別の阻害分子であり、MHCクラスII分子に結合するCD4相同体であるリンパ球活性化遺伝子−3(LAG−3)は、活性化したT細胞、B細胞、NK細胞、および腫瘍浸潤リンパ球上に発現し、T細胞の活性を制限することによってT細胞の増殖を負に調節すると考えられている(Pardoll DM.Nat Rev Cancer.2012;12(4):252〜264;Goldberg MV、Drake CG.Curr Top Microbiol Immunol2011;344:269−78)。その遮断によって、T細胞の増殖が増大し、抗腫瘍T細胞応答が増強する(Nguyen LT、Nat Rev Immunol、2015)。
【0029】
さらに、T細胞免疫グロブリンムチン−3(TIM−3)は、そのリガンドがガレクチン9であり(様々な種類のがんでアップレギュレートされる)、IFNを分泌するヘルパーT(TH1)細胞、さらに樹状細胞、単球、およびT細胞によって発現される[Ngiow SF、Teng MW、Smyth MJ.Cancer Res.2011;71(21):6567−71]。これは、Tヘルパー1細胞応答を阻害し、TIM−3抗体は、抗腫瘍免疫を増強する(Anderson AC.Curr Opin Immunol2012;24:213−6)。そのリガンドであるガレクチン−9と結合した際、TIM−3は、TH1細胞死を誘導する(Zhu C、Anderson AC、Schubart A、他、Nat Immunol.2005;6(12):1245−52)。TIM−3欠損マウスを用いた試験によって、TIM−3経路は、TH1細胞の増殖およびエフェクター機能を阻害し、またTH1細胞に対する耐性の誘導にとって重要である可能性が示されている(Sabatos CA、Chakravarti S、Cha E、他、Nat Immunol.2003;4(11):1102−10)。さらに、TIM−3は、腫瘍特異的CD8+T細胞においてPD−1と共発現されることが報告されており、両分子の二重遮断によって、ヒトT細胞のin vitroでの増殖およびサイトカイン産生が著しく増強する。動物モデルにおいて、PD−1とTIM−3の協調的遮断によって、抗腫瘍免疫応答および腫瘍拒絶が増強すると報告された(Pardoll DM.Nat Rev Cancer.2012;12(4):252〜264)。
【0030】
BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA/CD272)は、T細胞上の阻害性受容体として同定され、腫瘍細胞に加え、腫瘍関連血管内皮細胞上に発現するHVEM/TNFRSF14は、BTLAリガンドであることが示された。BTLA発現レベルは、黒色腫患者由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)において高く、BTLAを発現するT細胞は、そのリガンドであるHVEMの存在下で阻害される。BTLAは、腫瘍特異的ヒトCD8T細胞の機能を阻害することができる(Paulos CM、June CM.J Clin.Invest2010;120:76〜80)。したがって、BTLAは、腫瘍の微小環境におけるT細胞の妥当な阻害性受容体でもあり、チェックポイント阻害戦略の標的でもあると考えられる(Pardoll DM.Nat Rev Cancer.2012;12(4):252−264)。
【0031】
OX40(CD134/TNFRSF4)は、TNFRスーパーファミリーのメンバーであり、抗原特異的なプライミング中、CD4およびCD8T細胞によって発現する。CD8およびCD4T細胞におけるOX40のライゲーションによって、これらの細胞の生存および増殖が促進される。さらに、OX40の活性化によって、腫瘍反応性エフェクターT細胞の産生が促進し、T細胞の機能を阻害する。前臨床試験では、OX40アゴニストを用いた癌宿主の治療によって、一部の前臨床モデルにおいて腫瘍退縮が得られたことが明らかにされた(Linch SN、McNamara MJ、Redmond WL.Front Oncol.2015 5:34)。
【0032】
共刺激受容体CD137(4−1BB/TNFSF9)は、抗腫瘍リンパ球の活性化および炎症誘発性極性化の両方に対する比類なき能力を有する。CD137/4−1BB受容体を介した共刺激は、T細胞内の複数のシグナル伝達カスケードを活性化し、T細胞の活性化を強力に増強する。抗原感作Tリンパ球上のCD137の刺激によって、腫瘍免疫が増強し、CD137の単独療法は、著しい腫瘍退縮を媒介する能力があり、多くの種類の定着したマウス腫瘍を治癒させることさえある(Bartkowiak T、Curran MA.Front Oncol.2015 5:117)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本開示の目的は、この技術水準に基づいて、免疫刺激DNA構築物を含む効率的な組合せおよび医薬としてのその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
従来技術に関して、本開示の目的は、T細胞調節因子に結合する分子と非コード配列のデオキシリボヌクレオチドの形の免疫調節性DNA構築物の組合せを提供することである。
【0035】
本開示は、チェックポイント阻害剤または共刺激剤として、その機能に影響を与えるため、PD1、PD−L1、OX40、TIM−3、LAG3、CD137(4−1BB)を含む群から選択される少なくとも1つの分子に結合する化学物質または分子と少なくとも1つの配列モチーフNCGN(ここで、NはA、C、T、またはGを含むヌクレオチドであり、ならびにCはデオキシシチジン、Gはデオキシグアノシン、Aはデオキシアデノシン、およびTはデオキシチミジンである)を有する非コード配列のデオキシリボ核酸の構成成分を含む組合せを教示する。
【0036】
T細胞調節因子に結合する上記分子は、合成的にまたは生化学的に製造される、抗体のようなタンパク質またはペプチドであってよい。
【0037】
本開示の組合せは、Nとして、GT、GG、GA、AT、およびAAの群から選択した要素、ならびにNとして、CT、TG、およびTTの群から選択した要素を含んでよい。
【0038】
上記非コード配列のデオキシリボ核酸は、両側が直鎖状で開鎖している、二本鎖部分の片側が直鎖状で開鎖しており該二本鎖の他方側が一本鎖ヘアピンである、またはダンベル型で部分的に一本鎖の共有結合で閉鎖したデオキシリボ核酸の鎖のいずれかであってよい。
【0039】
上記組合せは、さらに、上記配列モチーフNCGNの少なくとも3つを含んでよい。
【0040】
直鎖状で開鎖した非コード配列のデオキシリボ核酸について、少なくとも1個のL−立体配座のヌクレオチドを含んでよく、該直鎖状で開鎖した非コード配列のデオキシリボ核酸のDNA一本鎖の5’−および/または3’−末端に位置した、5個の末端ヌクレオチドの1個がL−立体配座であってよいことが意図されている。
【0041】
本開示の組合せは、さらに、次の非コード配列のデオキシリボヌクレオチド
a. GTTCCTGGAG ACGTTCTTAG GAACGTTCTC CTTGACGTTG GAGAGAAC(配列番号1)、または
b. ACCTTCCTTG TACTAACGTT GCCTCAAGGA AGGTTGATCT TCATAACGTT GCCTAGATCA(配列番号2)、または
c. AACGTTCTTCGGGG CGTT(配列番号3)、または
d. AGGTGGTAAC CCCTAGGGGT TACCACCTTC ATCGTCGTTT TGTCGTTTTG TCGTTCTT(配列番号4)
を少なくとも1つ含んでよい。
【0042】
上記組合せは、さらに、長さが40〜200ヌクレオチドまたは48〜116ヌクレオチドの非コード配列のデオキシリボ核酸を含んでよい。
【0043】
配列AACGTTCTTCGGGG CGTT(配列番号3)は、配列CCTAGGGGTT ACCACCTTCA TTGGAAAACG TTCTTCGGGG CGTTCTTAGG TGGTAACC CCTAGGGGTT ACCACCTTCA TTGGAAAACG TTCTTCGGGG CGTTCTTAGG TGGTAACC(配列番号5)の一部であってよいこともさらに意図されている。
【0044】
上記配列モチーフNCGNは、本開示に記載される組合せの一部である非コード配列のデオキシリボヌクレオチドの一本鎖領域の一部であり得る。
【0045】
上記組合せは、最大15mg/kg体重で適用するため、両群の構成成分を固体、液体、または気体の形態で提供してよい。これは、該投与量が、該組合せを適用すべき生体の体重に適合し得ることを意味する。
【0046】
本開示の組合せの構成成分を、同時に、交互に、または連続して提供するステップを含む方法は、本発明の別の目的である。上記非コード配列のデオキシリボ核酸は、T細胞調節因子に影響を与えるための化学物質または分子の前に提供されてよく、またはその逆でもよい。
【0047】
本開示の追加の目的は、医薬としてまたはがんのような疾患、自己免疫疾患、および炎症の治療のための開示される組合せの使用である。
【0048】
開示される組合せの化合物は、がん、自己免疫疾患、および炎症の治療のため、同時に、交互に、または連続して投与されてよい。
【0049】
許容し得る薬剤の塩を含有する、ワクチンなどの医薬品または医薬製剤の製造のための開示される組合せの使用は、本発明の追加の目的である。該医薬品は、開示される組合せの化合物を、同時に、交互に、または連続して放出してよい。
【0050】
最後に、治療的または予防的ワクチン接種のアジュバントとしての本開示の組合せの使用は、本開示の目的である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明は、図面に基づいて記載される。図面に記載された本発明の実施形態および態様は例に過ぎず、いかなる場合においても本請求項の保護範囲を限定するものではないことは理解されるであろう。本発明は、本請求項およびそれに相当するものによって定義される。当業者には当然のことながら、本発明のある態様またはある実施形態の特徴は、本発明の別の態様または他の実施形態の態様の特徴と組み合わせることができる。図面は以下を示す:
【0052】
図1A】配列番号5と抗PD−1の組合せの抗腫瘍活性。
図1B】配列番号5と抗PD−1の組合せの抗腫瘍活性。
【0053】
図2】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチドによるヒトPBMCの刺激。
【0054】
図3A】配列番号5と抗PD−L1の組合せの抗腫瘍活性。
図3B】配列番号5と抗PD−L1の組合せの抗腫瘍活性。
【0055】
図4A】配列番号6と抗PD−1の組合せの抗腫瘍活性。
図4B】配列番号6と抗PD−1の組合せの抗腫瘍活性。
【0056】
図5】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、配列番号6、および抗PD−によるヒトPBMCの刺激。
【0057】
図6A】配列番号7と抗CTLA−4の組合せの抗腫瘍活性。
図6B】配列番号7と抗CTLA−4の組合せの抗腫瘍活性。
【0058】
図7A】配列番号7と抗PD−L1の組合せの抗腫瘍活性。
図7B】配列番号7と抗PD−L1の組合せの抗腫瘍活性。
【0059】
図8A】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、配列番号9、および抗PD−によるヒトPBMCの刺激。
図8B】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、配列番号9、および抗PD−によるヒトPBMCの刺激。
図8C】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、配列番号9、および抗PD−によるヒトPBMCの刺激。
【0060】
図9A】配列番号10と抗PD−1の組合せの抗腫瘍活性。
図9B】配列番号10と抗PD−1の組合せの抗腫瘍活性。
【0061】
図10A】配列番号10と抗CTLA−4の組合せの抗腫瘍活性。
図10B】配列番号10と抗CTLA−4の組合せの抗腫瘍活性。
【0062】
図11】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、配列番号10、および抗PD−によるヒトPBMCの刺激。
【0063】
図12】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、配列番号11、および抗PD−1によるヒトPBMCの刺激。
【0064】
図13】in vitroにおけるリコール抗原のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択されるペプチド、EnanDIM362、および抗PD−1によるヒトPBMCの刺激。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、いわゆるT細胞調節因子に結合する分子と非コード配列デオキシリボ核酸の組合せを提供する。
【0066】
本開示の意味において、直鎖状で開鎖したDNA配列は、オリゴヌクレオチド、略してODNと表記される。上記DNA配列は、一本鎖または部分的もしくは完全に二本鎖であってよい。オリゴ、オリゴヌクレオチド、およびオリゴデオキシヌクレオチドという用語は、同じ意味で使用されるが、対応するDNA配列の長さを制限するものではない。オリゴヌクレオチドの1つの構成成分はヌクレオチドである。
【0067】
オリゴは、合成によって製造してよく、または部分的もしくは完全に生物由来であってよく、ここで、生物由来には、DNA配列の遺伝学に基づく製造方法が含まれる。
【0068】
L−DNAまたはL−立体配座のヌクレオチドは、天然に存在するD−デオキシリボースの代わりに糖残基としてL−デオキシリボースを有するヌクレオチドを指す。L−デオキシリボースは、D−デオキシリボースのエナンチオマー(鏡像)である。部分的または完全にL−立体配座のヌクレオチドから成るオリゴヌクレオチドは、部分的または完全に一本鎖または二本鎖であってよいが、L−立体配座のヌクレオチドは、D−立体配座のヌクレオチドにハイブリダイズすることはできない(Hauser他、Nucleic Acid Res.2006 34:5101−11)。L−DNAは、D−DNAと同等に可溶性であり選択的である。さらに、L−DNAは、天然に存在する酵素、特にエキソヌクレアーゼによる酵素のエキソ活性に対する耐性があり、このため、L−DNAは、細胞内分解から保護される(Urata他、Nucleic Acids Res.1992 20:3325−32)。したがって、L−DNAは非常に広く適用可能である。
【0069】
本開示に記載の「ステム」は、同じオリゴヌクレオチド内(そのため部分的に自己相補的である)または異なるオリゴヌクレオチド間(部分的にまたは完全に相補的である)のいずれかで塩基対合することによって形成されたDNA二本鎖であると理解されるべきである。分子内塩基対合は、同じオリゴヌクレオチド内の塩基対合を示し、異なるオリゴヌクレオチド間の塩基対合は、分子間塩基対合と称される。
【0070】
本開示の意味において「ループ」は、ステム構造内またはその末端のいずれかの不対合一本鎖領域であると理解されるべきである。「ヘアピン」は、同じオリゴヌクレオチドの2つの自己相補的領域がハイブリダイズし、1つの末端に不対合ループを有するステムが形成される場合に生じるステムとループの特徴的な組合せである。
【0071】
上記ヌクレオチドを共有結合的または非共有結合的に付着した「固相」は、以下に限定されないが、カラム、マトリックス、ビーズ、修飾または官能化ガラスを含むガラス、シリカ、またはシリコンおよび変性シリコンを含むシリカ系物質、合成樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、およびスチレンと他の物質の共重合体、アクリル、ポリブチレン、ポリウレタンなどを含む)、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、多糖類、炭素、さらに無機ガラスおよび無機合成樹脂を指す。したがって、マイクロリットルプレートも本開示に記載の固相の範囲内である。
【0072】
本開示に記載の免疫調節は免疫刺激および免疫抑制を指す。免疫刺激は、免疫系のエフェクター細胞が、増殖、遊走、分化のため刺激されること、または他の何らかの形態で活性化することを優先的に意味する。例えば、通常、ヘルパー胸腺細胞からの共刺激シグナルを必要とするB細胞増殖は、共刺激シグナルなしで免疫刺激オリゴヌクレオチドによって誘導され得る。
【0073】
一方、免疫抑制は、免疫系の活性化または効力を低下させることと理解されるべきである。一般的に、免疫抑制は、例えば移植された臓器の拒絶反応を予防するため、骨髄移植後の移植片対宿主病を治療するため、または、例えば関節リウマチもしくはクローン病のような自己免疫疾患を治療するため、意図的に誘導される。
【0074】
この文脈において、免疫調節は、発現途中か成熟途中の免疫反応に影響を及ぼすこともしくは該反応を修飾すること、または確立した免疫反応の特徴を調節することのいずれかによる、免疫反応の性質または特徴への影響も指してよい。したがって、影響を及ぼすことは、チェックポイント阻害剤についての文脈では、その阻害作用を抑制すること、共刺激分子についての文脈では、それを活性化することを意味する。
【0075】
「がん」という用語は、乳癌、黒色腫、皮膚新生物、胃腸腫瘍(結腸癌、胃癌、膵臓癌、結腸がん、および小腸がんを含む)、卵巣癌、子宮頚癌、肺がん、前立腺がん、腎臓細胞癌、および/または肝転移を含む群から選択される、治療中または予防中のがん性疾患または腫瘍を含む。
【0076】
本開示に記載の自己免疫疾患は、関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、グレーブス病、重症筋無力症、セリアック病、およびアジソン病を含む。
【0077】
本開示の意味においてかつその一般的な定義によると、アゴニストは、受容体またはリガンドのような別の分子に結合し、これによって該分子を活性化する化学物質または分子を示す。活性化させるアゴニストに対し、アンタゴニストは、アンタゴニストが結合する分子とそれぞれのアゴニストとの相互作用を遮断する化学物質または分子として理解されるべきである。文脈によっては、本発明の理解において、アンタゴニストは、例えば、アンタゴニストが別のアンタゴニストと受容体との相互作用を遮断するため、反応を活性化することになる場合もある。
【0078】
本明細書で用いる場合、「薬学的に適用可能なまたは許容し得る塩」という用語は、本発明の化合物に認められる特定の置換基に応じて、比較的無毒性の(すなわち、薬学的に許容される)酸または塩基で調製される上記組合せの化合物の塩を含む。例えば、本発明の化合物が酸性官能基を有する場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態と十分な量の望ましい塩基を、溶媒なしまたは適当な不活性溶媒中のいずれかで接触させることによって得られることがある。薬学的に許容される塩基付加塩の非限定的な例として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、もしくはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が塩基性官能基を有する場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態と十分な量の望ましい酸を、溶媒なしまたは適当な不活性溶媒中のいずれかで接触させることによって得られることがある。薬学的に許容される酸付加塩の非限定的な例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、リン酸、部分的に中和されたリン酸、硫酸、部分的に中和された硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などといった無機酸由来のもの、同様に酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などといった比較的無毒性の有機酸由来の塩が挙げられる。さらに、アルギニンなどのようなアミノ酸の塩およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などといった有機酸の塩も挙げられる。本発明のある特定の化合物は、塩基性および酸性官能基の両方を有しており、このため該化合物は、塩基付加塩または酸付加塩のいずれにも転換可能である。該塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することによって、本発明の化合物の中性形態を再生してもよい。該化合物の親形態は、極性溶媒に対する溶解度のような特定の物理的性質において、様々な塩の形態とは異なるが、本発明の目的において、該塩は該化合物の親形態と同等である。本発明の化合物は、キラルもしくは不斉炭素原子(光学的中心)および/または二重結合を有してよい。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、および各光学異性体は、本発明に包含される。本発明の化合物は、非溶媒和形態、同様に、水和形態を含む溶媒和形態で存在してよい。一般に、該溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、さらに本発明に包含される。さらに、本発明の化合物は、種々の結晶性形態または非晶質形態で存在してもよい。
【0079】
部分的に一本鎖でダンベル型をしている、デオキシリボヌクレオシド残基の共有結合で閉鎖している鎖から成り、1つまたは複数の塩基配列NCGNの配列(ここで、NはGT、GG、GA、AT、またはAAの群からの要素であり、NはCTまたはTTの群からの要素であり、さらにCはデオキシシトシン、Gはデオキシグアノシン、Aはデオキシアデノシン、およびTはデオキシチミジンである)を有するデオキシリボ核酸分子は、ヒトまたは高等動物における免疫刺激のための免疫系のT細胞調節因子に結合できる化学物質または分子との組合せに使用される。
【0080】
本開示に関連するデオキシリボ核酸分子の長さが、最大200ヌクレオチドであってよい。具体的には、長さが48〜116ヌクレオチドの間の配列を意図する。
【0081】
上記ダンベル型の非コード配列のデオキシリボ核酸分子は、一本鎖領域である塩基配列NCGNを有してよい。
【0082】
上記免疫刺激は、in vitroまたはin vivoで行われてもよい。
【0083】
本開示は、少なくとも1つのCpGモチーフおよび少なくとも1個のL−立体配座のヌクレオチドを有する直鎖状の開鎖したDNA配列も提供する。部分的/完全なL−立体配座であるため、該DNA配列には、エキソヌクレアーゼに利用される5’−または3’−末端がない。該構造が、二本鎖の1つの末端に一本鎖ループを有する場合、該末端も分解から保護される。これによって、毒性であることが認められているホスホロチオエート主鎖を使用する必要なく、該ODNは、細胞の分解から完全に保護される。さらに、該ODNは、最小数のヌクレオチドのみから成り、該ODNを小さくすることで細胞への導入が容易になっている。
【0084】
少なくとも1つの配列モチーフNCGNを有する非コード配列のデオキシリボ核酸は、一本鎖または部分的もしくは完全に二本鎖であってよい。これは、同じ分子内(分子内)または異なる分子間(分子間)での塩基対合または任意のその組合せを含む。該構成が、少なくとも1箇所の不対合の一本鎖領域を有することも可能である。追加の実施形態として、ヘアピン構造が含まれる。部分的または完全なL−立体配座であるため、L−立体配座のヌクレオチドが分解されないことから、該構成の半減期は、より長いことが保証される。
【0085】
一本鎖または部分的もしくは完全に二本鎖である少なくとも2つの分子が、互いに連結して、多量体構築物を形成することも、本開示の範囲内である。このため、該多量体構築物は、1つの分子内に隙間なく格納された、少なくともライゲーションパートナーと同数のCpGモチーフが組み込まれており、したがって、T細胞調節因子との組合せの一環として、顕著な免疫応答も引き起こすことが期待される。得られた一本鎖または部分的もしくは完全に二本鎖の多量体構築物は、細胞の分解に対する保護のため、該分子内にL−立体配座のヌクレオチドを有し、共有結合で閉鎖された多量体構築物、または5’−および/または3’−末端にL−立体配座のヌクレオチドを有し、開鎖した多量体構築物のいずれかであってよい。
【0086】
さらに本開示は、カルボキシル、アミン、アミド、アルデミン、ケタール、アセタール、エステル、エーテル、ジスルフィド、チオール、およびアルデヒド基を含む群から選択される官能基を用いた、少なくとも1つの配列モチーフNCGNを有する非コード配列のデオキシリボ核酸中の少なくとも1つのヌクレオチドの化学修飾を含む。これによって、例えば、吸着、共有結合、またはイオン結合による、該DNA構築物と、ペプチド、タンパク質、炭水化物、抗体、合成分子、ポリマー、微小発射体、金属粒子、または固相を含む群から選択される化合物との結合が可能となる。
【0087】
上記修飾は、それぞれの目的に合わせて特異的に選択し得る。したがって、上記構築物は、例えば、組み込まれたCpGモチーフに応答する特異的な細胞に他の分子を往復輸送するために使用し得る。さらに、このような修飾によって、該構築物を該細胞に導入するために使用できる微小発射体に該構築物が結合する可能性がある。該構築物は、マイクロタイタープレートなどの固相に結合することも可能である。
【0088】
下記の実験は、非コード配列のデオキシリボ核酸とT細胞調節因子の組合せの影響を検討するために行われた。該実験は、上記配列モチーフNCGNを有するダンベル型の非コード配列のデオキシリボ核酸、NCGNを有する直鎖状で開鎖した非コード配列のデオキシリボ核酸を用いて行われており、ここで、それらの構築物は、分解されることを防止するためにL−立体配座のヌクレオチドを有している。さらに、T細胞調節因子と、NCGNおよび配列番号4の配列を2つ有する非コード配列のデオキシリボ核酸の組合せによる作用を検討した。
【0089】
PD1、PD−L1、OX40、LAG−3、TIM3、およびCD137(4−1BB)に結合するT細胞調節因子抗体を、ヒト腫瘍を注入したマウスモデルに使用した。増殖期後の治療における効果は、対照群と比較した腫瘍の増殖に対する作用は、以下でより詳細に記載される。
【0090】
上記実験は、本開示の組合せの構成成分を同時に、交互に、または連続して適用する投与計画を比較している。上記化合物の質的適用性(qualitative application)に加え、NCGN配列モチーフを有する非コードDNA配列の非存在下で、上記チェックポイント阻害剤を適用する際に同程度またはより良い結果を得るために、T細胞調節因子の用量を減量することが必要かどうかを検討した。
【0091】
TLR9アゴニストとT細胞調節因子に結合する分子との組合せの可能性に関するin vitro分析は、刺激後にT細胞の応答を評価するためのヒトPBMCのin vitro細胞培養系の使用を含む。免疫学的T細胞調節因子(例えば、PD−1、PD−L1など)に対する抗体およびTLR9アゴニスト(すなわち、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号6)の存在下で、CMV、EBV、インフルエンザ、および破傷風毒素由来の免疫原性ペプチドの混合物によって、PBMCを刺激できることがある。
【0092】
細胞培養上清中のサイトカイン(IL−2およびIFN−γ)の定量化を確定した。該in vitro細胞培養系は、in vivoにおける免疫細胞の複雑な相互作用を再現することはできないが、これらのTLR9アゴニストの組合せの利点に関する根拠を提供する。
【0093】
図面の詳細な説明
配列番号5と抗PD−1の組合せは、マウスA20腫瘍モデルにおいて、抗PD−1または配列番号5のいずれかによる単独療法と比較して、驚くほど極めて増強した抗腫瘍効果を示した。
【0094】
腫瘍増殖は、配列番号5とPD−1の組合せによって驚くほどほぼ完全に阻害された(図1A、B)。各群9〜12匹のマウスにA20マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号5(14、16、19、21、23、26、28、30、33、および35日目に250μg/適用、腫瘍内)、抗PD−1(8、11、16、および19日目に100μg/適用、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(腫瘍内)を対照とした。図1Aは、平均腫瘍増殖−差し込み、18〜32日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(29日目:配列番号5では46.0%、抗PD−1では54.2%、組合せでは99.9%)。図1Bは、Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0095】
ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を、抗原性ペプチドおよび配列番号5と抗PD−1の組合せと共に培養した際、図1A、Bに示された配列番号5と抗PD−1の相乗的組合せ効果が、in vitroで確認された。ペプチドは、リコール抗原(CMV、EBV、Flu=CEF)のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択され、配列番号5との組合せは、配列番号5または抗PD−1のみの注入と比較して、該PBMCによるINF−γ分泌を明らかに増加させた(図2)。該ペプチドの最終濃度は、ペプチド毎に1μg/mLであり、配列番号5は濃度3μM、さらに抗PD−1は10μg/mLで使用された(n=4)。IFN−γ分泌を、免疫応答のマーカーとして分析し、CEF−ペプチドのみによるPBMC刺激後のIFN−γ値に対して正規化した。マウスIgG(10μg/mL)を、抗PD−1の対照として使用した。
【0096】
さらに、マウスCT26腫瘍モデルにおける、抗PD−L1と配列番号5の組合せ療法の驚くべき有益な効果も、配列番号5または抗PD−L1のいずれかによる単独療法を明らかに上回った。腫瘍増殖は減少し(図3A)、生存率は上昇した(図3B)。各群10匹のマウスにCT26マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号5(3、5、7、10、12、14、17、19、21、24、および26日目に250μg/適用、皮下)、抗PD−L1(3、5、7、9、11、13、15、17日目に適用毎に10mg/kg、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(皮下)を対照とした。図3Aは、平均腫瘍増殖−差し込み、17〜27日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(20日目:レフィトリモド(lefitolimod)では23.0%、抗PD−L1では阻害が認められず、組合せでは39.9%)。図1Bは、Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0097】
ループ配列TCATCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTTCTTを有する配列番号6を適用する組合せ効果も検討した。
【0098】
配列番号6を抗PD−1と共にマウスCT26腫瘍モデルに投与した。該組合せは、配列番号6または抗PD−1といった単剤を用いた単独療法と比較して、抗腫瘍効果を驚くほど極めて増強した(図4A、B)。再び、各群10匹のマウスにCT26マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号6(15、17、19、22、24、26、29、31日目に250μg/適用、腫瘍内)、抗PD−1(3、6、10、および13日目に100μg/適用、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(腫瘍内)を対照とした。図4Aは、平均腫瘍増殖−差し込み、15〜29日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(23日目:配列番号6では48.2%、抗PD−1では阻害が認められず、組合せでは75.4)。図1Bは、平均Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0099】
図4に示された結果は、抗原性ペプチドによるヒトPBMCのin vitro刺激データに一致し、驚くべきことに、上記化合物の単独使用を上回る上記組合せの有益性も示している(図5)。リコール抗原(CMV、EBV、Flu=CEF)のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択され、各最終濃度が1μg/mLのペプチド、濃度が3μMの配列番号6、および10μg/mLの抗PD−1が使用された(n=4)。IFN−γ分泌を、免疫応答のマーカーとして使用し、CEF−ペプチドのみによるPBMC刺激後のIFN−γ値に対して正規化した。マウスIgG(10μg/mL)を、抗PD−1の対照として使用した。
【0100】
L−立体配座のヌクレオチドを有するオリゴを、追加試験に使用した。これらのオリゴは、表示された位置にL−ヌクレオチドを有する。DNA分子は、コア配列[yTCATTxCGTGACGTGACGTTCzv](y=1〜3個のL−デオキシリボースで保護されたまたは非保護の2〜8個のG;x=3〜4個のA;z=1〜3個のL−デオキシリボースで保護された2〜6個のT;v=A、G、C、T)と共に使用された。
【0101】
これらのL−ヌクレオチドを有する分子は、チェックポイント阻害剤と組み合わせた場合、免疫調節性および抗腫瘍特性の増強を示した。例えば、マウスCT26腫瘍モデルにおける、配列番号7(GGGGTCATT AAAACGTGACGTGACGTTCTTTTT、L−デオキシリボースを含む塩基に下線)と抗CTLA−4の組合せは、配列番号7または抗CTLA−4による単独療法と比較して、驚くほど効率的な腫瘍増殖の減少が得られた(図6)。各群10匹のマウスにCT26マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号7(3、5、8、10、12、15、17、19、22、14、および26日目に200μg/適用、皮下)、抗CTLA−4(8日目に100μg/適用、11および14日目に50μg/適用、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(皮下)を対照とした。図6Aは、平均腫瘍増殖−差し込み、15〜30日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(22日目:配列番号7では19.8%、抗PD−1では59.1%、組合せでは65.3%)。図6Bは、Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0102】
マウスCT26腫瘍モデルにおける、配列番号7と抗PD−L1の組合せも、配列番号7または抗PD−L1の単独化合物の場合と比較して、抗腫瘍効果の中程度の増強を示した。各群10匹のマウスにCT26マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号7(3、5、7、10、12、14、17、19、21、24、および26日目に、皮下)、抗PD−L1(3、5、7、9、11、13、15、17日目に適用毎に10mg/kg、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(皮下)を対照とした。図7Aは、平均腫瘍増殖−差し込み、13〜27日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(20日目:配列番号7では16.3%、抗PD−L1では阻害が認められず、組合せでは33.3%)。図7Bは、Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0103】
in vitroにおいて、抗PD−1と配列番号7の組合せの有益性を検討した。配列番号8(GGGGGGGGTCATTAAAACGTGACGTGACGTTCTTTTT、L−デオキシリボースを含む塩基に下線)、および配列番号9(GGGGTCATTAAACGTGACGTGA CGTTCTTTTT、L−デオキシリボースを含む塩基に下線)を、抗原性ペプチドで刺激されたPBMCからのIFN−γ分泌に関して観察した(図8)。ペプチドは、リコール抗原(CMV、EBV、Flu=CEF;ペプチド毎の最終濃度1μg/mL)のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択され、配列番号7(A、n=12)、配列番号8(B、n=2)、配列番号9(C、n=4)、各DNA分子の最終濃度は3μM、および抗PD−1(10μg/mL)。免疫応答のマーカーとしてのIFN−γ分泌の分析;CEF−ペプチドのみによる刺激後のIFN−γ値に対して正規化した。マウスIgG(10μg/mL)を、抗PD−1の対照として使用した。
【0104】
別の一連の実験では、コア配列[yTCATTxCGTTCTTCGGGGCGTTCzv](y=1〜3個のL−デオキシリボースで保護されたまたは非保護の2〜8個のG;x=3〜4個のA;z=1〜3個のL−デオキシリボースで保護された2〜6個のT;v=A、G、C、T)を有するDNA分子が使用された。
【0105】
免疫調節に関する組合せ効果および抗腫瘍効果が、この群においても確立された。
この群の例として、配列番号10(GGGGTCATTAAACGTTCTTCGGGG CGTTCTTTTT、L−デオキシリボースを含む塩基に下線)を、抗PD−1との組合せを検討するために使用した。
【0106】
上記組合せによって、マウスCT26腫瘍モデルにおける腫瘍増殖の著しい減少が得られた(図9)。各群10匹のマウスにCT26マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号10(3、5、8、10、12、15、17、19、22、14、および26日目に200μg/適用、皮下)、抗PD−1(3、6、10、および14日目に200μg/適用、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(皮下)を対照とした。図9Aは、平均腫瘍増殖−差し込み、14〜32日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(25日目:配列番号10では17.8%、抗PD−1では51.9%、組合せでは74.6%)。図9Bは、Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0107】
さらに、マウスCT26腫瘍モデルにおける、配列番号10と抗CTLA−4の組合せは、配列番号10または抗CTLA−4の単剤による治療と比較して、腫瘍増殖を減少する(図10)。各群10匹のマウスにCT26マウス腫瘍細胞を皮下接種し、さらに配列番号10(3、5、8、10、12、15、17、19、22、14、および26日目に200μg/適用、皮下)、抗CTLA−4(8日目に100μg/適用、11および14日目に50μg/適用、腹腔内)、または両方を注入した。溶媒の注入(皮下)を対照とした。図10Aは、平均腫瘍増殖−充填、15〜30日目の平均腫瘍増殖阻害を示す(22日目:配列番号10では49.7%、抗PD−1では59.1%、組合せでは70.3%)。図10Bは、Kaplan−Meier生存率プロットを示す。
【0108】
さらに、配列番号10と抗PD−1の組合せは、in vitroにおけるPBMC刺激試験で評価し、配列番号10または抗PD−1のみと比較して、IFN−γ分泌に関する効果の増強を示した(図11)。ペプチドは、リコール抗原(CMV、EBV、Flu=CEF;ペプチド毎の最終濃度1μg/mL))のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択され、配列番号10(3μM)、および抗PD−1(10μg/mL)(n=5)。IFN−γ分泌の分析を、免疫応答のマーカーとし、CEF−ペプチドのみによる刺激後のIFN−γ値に対して正規化した。マウスIgG(10μg/mL)を、抗PD−1の対照として使用した。
【0109】
追加の実験において、コア配列[yTCATTxTCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGzv](y=1〜3個のL−デオキシリボースで保護されたまたは非保護の2〜8個のG;x=3〜4個のA;z=1〜3個のL−デオキシリボースで保護された2〜6個のT;v=A、G、C、T)を有するDNA分子が実験に使用された。
【0110】
この群の例として、配列番号11(GGGGTCATTAAATCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTTTTT、L−デオキシリボースを含む塩基に下線)を使用した。PBMC試験において、in vitroで配列番号11と抗PD−1を組み合わせた場合、IFN−γ分泌は、驚くほど著しく増加し、配列番号11または抗PD−1のみと比較して向上することが示された(図12)。ペプチドは、リコール抗原(CMV、EBV、Flu=CEF;ペプチド毎の最終濃度1μg/mL)のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択され、配列番号11(3μM)、および抗PD−1(10μg/mL)(n=4)。免疫応答のマーカーとしてのIFN−γ分泌の分析;CEF−ペプチドのみによる刺激後のIFN−γ値に対して正規化した。マウスIgG(10μg/mL)を、抗PD−1の対照として使用した。
【0111】
最後に、コア配列[yACGATCGTCwT](y=1〜3個のL−デオキシリボースで保護されたまたは非保護の2〜8個のG;w=1〜3個のL−デオキシリボースで保護された4〜12個のG)を有するDNA分子が、組合せに適用の効果を試験するために使用された。
【0112】
この群の例は、配列番号12(GGGGGACGATCGTCGGGGGGT、L−デオキシリボースを含む塩基に下線)である。ヒトPBMCを用いたin vitroでの刺激試験において、抗PD−1との組合せは、その単独化合物と比較して、著しく増強した免疫応答を引き起こすと評価された(図13)。ペプチドは、リコール抗原(CMV、EBV、Flu=CEF;ペプチド毎の最終濃度1μg/mL)のHLAクラスI−拘束性T細胞エピトープから選択され、配列番号12(3μM)、および抗PD−1(10μg/mL)(n=4)。免疫応答のマーカーとしてのIFN−γ分泌の分析;CEF−ペプチドのみによる刺激後のIFN−γ値に対して正規化した。マウスIgG(10μg/mL)を、抗PD−1の対照として使用した。
【0113】
上記の実験設定を考慮に入れ、マウスの体重が約20g、適用されるDNAの量が約12.5mg/kg体重の範囲内であるとすると、示された驚くべき結果を得るためには、最大15mg/kgが必要であることは適当と考えられる。
【0114】
抗PD−1抗体は、10mg/kg体重で適用され、このため、示された驚くべき結果を得るためには、最大15mg/kg体重での適用も必要と考えられる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
【国際調査報告】