(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-530622(P2018-530622A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】尿路感染症を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/23 20060101AFI20180921BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20180921BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180921BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20180921BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20180921BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20180921BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20180921BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20180921BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20180921BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20180921BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20180921BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20180921BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20180921BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20180921BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20180921BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
A61K31/23
A61P13/02 105
A61P43/00 121
A61K9/10
A61K47/22
A61K47/18
A61K45/00
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/44
A61K47/14
A61K31/19
A61K31/375
A61K31/194
A61K31/198
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-539225(P2018-539225)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月11日
(86)【国際出願番号】US2016056078
(87)【国際公開番号】WO2017066100
(87)【国際公開日】20170420
(31)【優先権主張番号】62/241,321
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518129260
【氏名又は名称】ヘネピン・ライフ・サイエンシーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HENNEPIN LIFE SCIENCES,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(72)【発明者】
【氏名】シュリーベルト・パトリック・エム
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン・マーニー・エル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB28
4C076BB31
4C076BB32
4C076CC17
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
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4C076DD38
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4C076EE53
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4C076FF61
4C084AA19
4C084MA28
4C084MA52
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4C084MA59
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4C084MA67
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA821
4C084ZB332
4C084ZB352
4C084ZB382
4C084ZC751
4C086AA01
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4C086BA18
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA55
4C086MA67
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA82
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA07
4C206DA34
4C206DB06
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4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
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4C206MA75
4C206MA87
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA82
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、尿路感染症の治療および予防に関する。
【解決手段】本発明では、ゲル製剤中のグリセリンモノラウレート(GML)および/またはGML関連組成物は、適切な促進剤と共に、例えば、女性、カテーテルを挿入している患者および高齢者に一般的にみられる尿路感染症を治療するために使用してもよい。こうしたゲル製剤は、尿路感染症を引き起こす1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿路感染症を治療または予防するためのゲル製剤であって、尿路感染症を引き起こす1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害する組成物を含み、前記組成物は、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの組合せからなる群から選択される約0.0001〜0.05Mの促進剤と、式1、式2、ならびに式1および式2の組合せからなる群から選択される約10〜100mg/mLの活性化合物とを含むゲル製剤。
【化1】
式中、R1は:CO(CH
2)
10CH
3である。
【請求項2】
請求項1に記載のゲル製剤であって、前記促進剤および前記活性化合物は、
約73.55w/w%のプロピレングリコール;
約25w/w%のポリエチレングリコール400;
約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;ならびに
約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水
を含む局所用液剤と組み合わされるゲル製剤。
【請求項3】
請求項1に記載のゲル製剤であって、前記促進剤および前記活性化合物は、最大で100w/w%の植物性油、ワセリンまたはその誘導体を含む局所用液剤と組み合わされるゲル製剤。
【請求項4】
請求項3に記載のゲル製剤であって、前記植物性油は、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油およびそれらの組合せからなる群から選択されるゲル製剤。
【請求項5】
請求項1から4に記載のゲル製剤であって、pHが約4〜4.5であるゲル製剤。
【請求項6】
請求項1から4に記載のゲル製剤であって、前記活性化合物は、約30〜70mg/mLのGMLであるゲル製剤。
【請求項7】
請求項1から4に記載のゲル製剤であって、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、またはそれらの組合せをさらに含むゲル製剤。
【請求項8】
尿路感染症を引き起こす1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害するゲル製剤組成物であって、前記製剤は、
約0.0001〜0.05Mのエチレンジアミン四酢酸と、
約10〜100mg/mLのグリセリンモノラウレートと、
a)約73.55w/w%のプロピレングリコール;b)約25w/w%のポリエチレングリコール400;c)約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;ならびにd)約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水を含む局所用液剤と
を含むゲル製剤組成物。
【請求項9】
尿路感染症を引き起こす1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害するゲル製剤組成物であって、前記製剤は、約0.0001〜0.05Mのエチレンジアミン四酢酸と、約10〜100mg/mLのグリセリンモノラウレートと、植物性油、ワセリンまたはその誘導体である局所用液剤とを含み、前記植物性油は、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油およびそれらの組合せからなる群から選択され、前記ゲル製剤のpHは、約4〜4.5であるゲル製剤組成物。
【請求項10】
治療方法または予防方法であって、
(a)1種類以上の病原性微生物によって引き起こされる若しくは引き起こされ得る尿路感染症を患う、またはそうした感染症の恐れがある患者を識別することと、
(b)前記患者に(i)前記1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害し、かつ(ii)少なくとも1種類の促進剤と、式1、式2、ならびに式1および式2の組合せからなる群から選択される化合物とを含むゲル製剤を投与することと、
を含む方法。
【化2】
式中、R1は:CO(CH
2)
10CH
3である。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記促進剤は、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、または他のキレート化剤である方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油およびそれらの組合せからなる群から選択される植物性油をさらに含む方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体をさらに含む方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択されるグリコール誘導体をさらに含む方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、ワセリンまたはその誘導体をさらに含む方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、水および/または生理食塩水をさらに含む方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法であって、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される付加的な有効成分をさらに含む方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法であって、前記ゲル製剤のpHは、約4〜4.5である方法。
【請求項19】
請求項1から9のいずれか1項に記載のゲル製剤で被覆された泌尿器カテーテルまたは留置装置。
【請求項20】
患者の尿路感染症を治療または予防する方法であって、
請求項19に記載の泌尿器カテーテルまたは留置装置を患者の体内に配置する工程を含む方法。
【請求項21】
本願において説明および記載されたゲル製剤。
【請求項22】
本願において説明および記載されるように尿路感染症を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
優先権
本出願は、2015年10月14日に出願された「尿路感染症を治療するための組成物および方法」という名称の米国仮出願第62/241,321号の利益を主張する。上記出願の全教示は参照により本願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、尿路感染症の治療および予防に関し、特に女性、カテーテルを挿入している患者および高齢の患者の尿路感染症の治療および予防に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゲル製剤中のグリセリンモノラウレート(GML)およびGML関連組成物は、適切な促進剤と共に、生体表面(皮膚および/または粘膜)に適用して、病原性微生物の殺傷、病原性微生物による外毒素の生成の阻害、炎症の予防、ヒト細胞を安定させることによる毒性反応または感染症の阻害、および乳酸菌(lactobacilli)やビフィズス菌(bifidobacteria)といった有益な細菌の選択を行ってもよい。特に、こうしたゲル製剤は、例えば、女性、カテーテルを挿入している患者および高齢者に一般的にみられる尿路感染症を治療するために使用してもよい。これらの尿路感染(unary tract infections)は、典型的に、大腸菌(Escherichia coli)、他の腸内細菌科菌(Enterobacteriaceae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ならびに他のグラム陽性菌およびグラム陰性菌といった病原性微生物によって引き起こされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの実施形態としては、尿路感染症を引き起こす1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害する組成物を含むゲル製剤であって、前記組成物は、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(ETDA)およびそれらの組合せからなる群から選択される約0.0001〜0.05Mの促進剤と、式1(Formula 1)、式2(Formula 2)、ならびに式1および式2の組合せからなる群から選択される約10〜100mg/mLの活性化合物とを含む。
【0005】
【化1】
【0006】
式中、R1は:CO(CH
2)
10CH
3である。
【0007】
典型的な実施形態において、ゲル製剤は、GMLを含んでおり、GMLの量は約10〜100mg/mL、好ましくは約30〜70mg/mLであってもよい。ゲル製剤は、また、グリコールグリセロール、セルロース誘導体、植物性油および/またはワセリンを含んでいてもよい。さらに、ゲル製剤は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、またはそれらの組合せから選択される付加的な有効成分を含んでいてもよい。
【0008】
さらに別の実施形態において、この促進剤および活性化合物は、次の成分を含む局所用液剤と組み合わされる:
a)約73.55w/w%のプロピレングリコール;
b)約25w/w%のポリエチレングリコール400;
c)約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;ならびに
d)約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水。
【0009】
代替的に、この促進剤および化合物は、実質的に純粋な、すなわち、約100w/w%の植物性油、ワセリンまたはその誘導体を含む局所用液剤と組み合わされる。
【0010】
これらの実施形態のうちの幾つかにおいては、植物性油は、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0011】
他の実施形態において、ゲル製剤のpHは、約4〜4.5である。
【0012】
本発明の特定の実施形態としては、尿路感染症を引き起こす1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害するゲル製剤組成物であって、前記組成物は、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの組合せからなる群から選択される約0.0001〜0.05Mの促進剤と、式1(Formula 1)、式2(Formula 2)、ならびに式1および式2の組合せからなる群から選択される約10〜100mg/mLの化合物とを含む。
【0013】
【化2】
【0014】
式中、R1は:CO(CH
2)
10CH
3である。
【0015】
この促進剤および化合物は、a)約73.55w/w%のプロピレングリコール;b)約25w/w%のポリエチレングリコール400;c)約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;ならびにd)約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水を含む局所用液剤と組み合わされる。代替的に、前記促進剤および化合物は、植物性油;ワセリンまたはその誘導体を含む局所用液剤と組み合わされる。この実施形態において、植物性油は、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油およびそれらの組合せからなる群から選択してもよく、ゲル製剤のpHは、約4〜4.5である。
【0016】
本発明の他の実施形態は、
(a)尿路感染症を患う患者を識別すること、または1種類以上の病原性微生物によって引き起こされるないしは引き起こされ得る尿路感染症の恐れがある患者を識別することと、
(b)前記患者に、以下の(i)および(ii)を満たすゲル製剤を投与すること、(i)1種類以上の病原性微生物を殺傷、またはその生育を阻害すること、かつ
(ii)少なくとも1種類の促進剤と、式1(Formula 1)、式2(Formula 2)、ならびに式1および式2の組合せからなる群から選択される化合物を含むこと
とを含む治療方法または予防方法である。
【0017】
【化3】
【0018】
式中、R1は:CO(CH
2)
10CH
3である。
【0019】
本発明の当該実施形態において、前記促進剤は、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、または他のキレート化剤であってもよく、前記化合物はGMLであってもよく、また、前記ゲル製剤は、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油およびそれらの組合せからなる群から選択される植物性油と、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体と、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択されるグリコール誘導体と、ワセリン誘導体と、水および/または生理食塩水とを含んでいてもよい。また、そうした実施形態は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される付加的な有効成分も含んでいてもよい。
【0020】
本発明の代替的な実施形態は、(式1および式2と共に、またはその代わりとして)式3もしくは式4のいずれかの化合物、または化3(Formula 3)および化4(Formula 4)の両方の化合物を含むゲル製剤を含んでいてもよい。
【0021】
【化4】
【0022】
式中、R1は、水素原子、CO(CH
2)
8CH
3、CO(CH
2)
10CH
3、またはCO(CH
2)
12CH
3であり;
R2は、水素原子、CO(CH
2)
8CH
3、CO(CH
2)
10CH
3、CO(CH
2)
12CH
3、O(CH
2)
9CH
3、O(CH
2)
11CH
3、またはO(CH
2)
13CH
3であってもよく;
R3は、CO(CH
2)
8CH
3、CO(CH
2)
10CH
3、CO(CH
2)
12CH
3、O(CH
2)
9CH
3、O(CH
2)
11CH
3、またはO(CH
2)
13CH
3であってもよい。
【0023】
本発明のゲル製剤は、1種類以上の補助成分を投与する前、同時、またはその後のいずれの時点で投与してもよい。補助成分としては、例えば、抗真菌剤、免疫機能の変調剤、または抗生物質が挙げられる。また、泌尿器カテーテルまたは留置装置は、本発明のゲル製剤で被覆されていてもよい。このような被覆された装置を、患者の体内に留置して、患者の尿路感染症の治療方法または予防方法に用いてもよい。
【0024】
1種類以上の医薬賦形剤および1種類以上のゲル製剤を含む組成物は、各種ゲル、クリーム、またはフォームに含まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のGMLゲル(5%GML)製剤を病原性微生物、すなわち黄色ブドウ球菌(S. aureus)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、大腸菌(E. coli)、緑膿菌(P. aeruginosa)と混合し、適切な培地に加えて生育させた場合における増殖阻害効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
本発明は、局所用GMLゲル製剤、およびこれらの製剤を用いた尿路感染症の治療方法を提供する。1つの実施形態において、例えば、患者の皮膚または粘膜表面に有効量のGMLまたはGML誘導体の送達を促進することによって尿路感染症を治療するために局所的に使用される。
【0027】
「抗微生物性」という用語は、微生物の生育または微生物による病原的影響の防止、阻害、または阻止に有効であるということを意味する。本願において「微生物」は、任意の細菌、ウイルスまたは真菌を意味するものとして使用する。1つの実施形態において、本発明の製剤は、微生物の生育を防止、阻害、または阻止するために使用される:例えば黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌または肺炎桿菌(K. pneumoniae)から選択される1種類以上の微生物。
【0028】
「抗菌性」、「抗真菌性」、または「抗原虫性」という用語は、細菌、真菌もしくは原虫の生育の阻害もしくは阻止、または細菌、真菌もしくは原虫の殺傷を含む、細菌性、真菌性もしくは原虫性の疾患の重症度もしくはこうした疾患を発症する尤度の低減、または細菌、真菌もしくは原虫の病原的影響の軽減もしくは阻害を指している。「殺菌性」という語は、「抗菌性」と同じ意味で用いられる。
【0029】
「抗ウイルス性」という用語は、ウイルス感染もしくはウイルスの複製の阻害、ウイルスにさらされた患者がウイルス疾患を発症する可能性の低減、またはウイルス疾患の重症度の軽減を指している。
【0030】
「有効量」という用語は、有益または所望する抗微生物活性を与えるために十分な量を指しており、以下に限定されるものではないが、微生物の殺傷、または微生物感染、生育もしくは毒性の阻害を含む、GMLの有効量は、約1mg/mL以下、約10mg/mL以下、約50mg/mL以下、または約100mg/mL以下である。
【0031】
「治療」という用語は、有益または所望の結果(例えば臨床結果)を得るためのアプローチを指している。本発明において、有益または所望する結果としては、微生物の生育の阻害もしくは抑制、もしくは微生物の殺傷;微生物が細胞もしくは患者に感染する1つ以上の過程の阻害;微生物感染によって引き起こされる疾患もしくは状態の阻止もしくは改善;またはそれらの組合せが挙げられる。「治療」という用語は、予防治療も指している。「予防」という用語は、感染もしくは疾患を防止すること、感染もしくは疾患の症状の発現を防止すること、感染もしくは疾患もしくはその症状の発症を遅延させること、または続いて発現する感染もしくは疾患もしくはその症状の重症度を低下させることを指している。
【0032】
「局所用」という用語は、任意の皮膚または粘膜表面への組成物の適用を指している。「皮膚表面」は、表皮細胞層および皮膚細胞層を一般的に含む脊椎動物の身体の保護的な外皮を指している。「粘膜表面」は、本願において、粘液を分泌する器官または体腔の粘膜組織を指すものとして用いられる。
【0033】
「医薬上許容される局所用キャリア」という用語は、過度の毒性、刺激もしくはアレルギー反応のない、皮膚もしくは粘膜表面に適用可能な材料、希釈剤、または媒体を指している。
【0034】
「医薬上許容される賦形剤」という用語は、一般的に安全、無毒かつ生物学的観点および他の点からも望ましい医薬組成物の調製に役立つ賦形剤を意味しており、動物に対する使用およびヒトの医薬用途に許容される賦形剤が含まれる。本願において使用される「医薬上許容される賦形剤」としては、1種類以上のそうした賦形剤を含む。
【0035】
「植物性油(plant-derived oil)」という用語は、室温で液体状の、植物または種子から抽出された物質を意味している。適切な植物性油としては、以下に限定されるものではないが、パーム、オリーブ、トウモロコシ、キャノーラ、ココナッツ、大豆、小麦麦芽、ホホバ、ヒマワリ、ごま、ピーナッツ、綿実、紅花、大豆、菜種、アーモンド、ブナの実、カシュー、ヘーゼルナッツ、マカダミア、モンゴンゴナッツ、ピーカン、松の実、ピスタチオ、クルミ、グレープフルーツ種子、レモン、オレンジ、ニガウリ、ヒョウタン、バッファローカボチャ、バターナッツスクワッシュ種子、エグシ種子、パンプキンシード、スイカ種子、アサイー、ブラックシード、クロフサスグリ種子、ボラージ種子、マツヨイグサ、アマニ、ユーカリ、アマランサス、アプリコット、アップルシード、アルガン、アボカド、ババス、コリアンダー種子、グレープシード、からし、ポピーシード、米糠、キャスター、またはその混合物が挙げられる。混合物としては、あくまでも例示的であり、以下に限定されるものではないが、オリーブ油と大豆油の組合せ、ココナッツ油と小麦麦芽油の組合せ、またはホホバ油、パーム油およびキャスター油の組合せであってもよい。適切な油の混合物は、二成分、三成分、四成分、またはそれよりも多くてもよい。
【0036】
「促進剤」という用語は、GMLもしくはGML誘導体に添加されたとき、組成物の抗微生物特性を向上させる、またはこの特性に寄与する効果を有する化合物、物質、液体、粉末または混合物を指している。
【0037】
「有効成分」という用語は、抗菌性(抗細菌性)成分、抗真菌性成分、抗ウイルス性成分、抗原虫性成分、またはそれらの組合せを意味している。本発明で使用される抗菌性成分としては、例えば、アミノグリコシド、カルバセフェム、セファロスポリン、グリコペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、サルファ薬(sulfuramides)およびテトラサイクリンが挙げられる。抗真菌性成分としては、以下に限定されるものではないが、アゾール類、ポリエン類、もしくはエキノキャンディン類の成分、ヌクレオシド類似体、アリルアミン、グリセオフルビン、トルナフテート、またはセレン合成物が挙げられる。抗ウイルス性成分としては、あくまでも例示的であり、以下に限定されるものではないが、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アバカビル、エノホビル、ラミブジン、エムトリシタビン、ジドブジン、テノホビル、エファビレンツ、ラルテグラビル、エンフビルチド、マラビロク、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターフェロン、オセルタミビル、およびザナミビルが挙げられる。
【0038】
「セルロース誘導体」という用語は、任意のセルロース系化合物を指しており、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸セルロースが挙げられる。
【0039】
「バイオフィルム」という用語は、互いに付着し表面で生育する微生物(通常、細菌)の集合体を意味している。典型的に、バイオフィルム中の微生物の細胞は、細胞外高分子物質として知られる細胞外マトリックスを生成する。大抵、このマトリックスおよび集合体そのものの密度により、バイオフィルム中の細菌の抗生物質耐性は顕著に増大する。バイオフィルムは、耳の感染症、および歯肉炎のような歯科疾患に関係する可能性がある。
【0040】
「単離化合物」という用語は、天然に存在する対応物が存在しない、または、その成分を天然に伴う化合物から分離もしくは精製された、化合物(例えば、GMLまたは関連化合物)を指している。例えば、このような化合物には、膵臓、肝臓、脾臓、卵巣、精巣、筋肉、関節組織、神経組織、胃腸組織、もしくは腫瘍組織などの組織において、もしくは血液、血清、もしくは尿などの体液において、から分離もしくは精製された化合物も含まれる。典型的に、天然に発生する生物学的化合物は、その化合物が天然に付随する他の天然有機分子を含まない乾燥重量で少なくとも70%であるとき「単離された」といえる。好ましくは、本願において使用される化合物が、乾燥重量で、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%となるように調製される。単離または精製の程度は、任意の適切な方法で、例えば、カラム・クロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動方法、またはHPLC解析によって測定することができる。化学的に合成される化合物(例えば、GML)は、その性質により、その成分を天然に伴う化合物から分離されるので、合成化合物は、定義上、「単離された」ものである。本発明に有益な単離化合物および補助成分は、例えば、(i)自然物から(例えば、組織もしくは体液から)の抽出;(ii)化合物もしくは補助成分がタンパク質である場合、そのタンパク質をコードする組換え核酸の発現;または(iii)当業者に公知の標準的な化学合成方法によって得ることができる。
【0041】
1つの実施形態において、本発明で提供される組成物は、モノグリセリドGMLを含む。GMLは、化学式C
15H
30O
4で表されるグリセロールの脂肪酸エステル、すなわち、ラウリン酸の誘導体である。GMLは、当該分野においてラウリン酸グリセリルまたはモノラウリンとしても知られている。GMLは、母乳および一部の植物に天然に存在し、食品および化粧品の添加物として使用される。GMLおよび他のグリセリドは、米国食品医薬品局によってGenerally Recognized as Safe Substances(一般的に安全と認識される物質)のデータベースに挙げられている。GMLおよび関連化合物は、これまでに、米国特許出願公開第2007/0276049号明細書(2004年11月10日出願)、米国特許第8,796,332号明細書および米国特許出願公開第2013/0281532号明細書において開示されている。
【0042】
GMLは、R,S光学異性体の両方および1/3位および2位にラウリン酸を有する形態を含む、複数の形態で取得または合成することができる。本願において提供されるゲル製剤は、1つの実施形態において、GMLのR異性体を含む。他の実施形態において、前記製剤はGMLのS異性体を含む。また別の実施形態では、前記製剤は、両異性体のラセミ混合物を含む。
【0043】
同様に、前記製剤は、1/3位にラウリン酸エステルを有するGML、2位にラウリン酸エステルを有するGML、またはその組合せを含んでいてもよい。各形態のR,S光学異性体およびそのラセミ混合物は、本発明と共に使用することに適している。
【0044】
1位または3位にラウリン酸を有するGMLの化学構造は、1/3位グリセリンモノラウレート(GML)である。
【0046】
2位にラウリン酸エステルを有するGMLの化学構造は、2位グリセリンモノラウレート(GML)である。
【0048】
他の実施形態において、前記ゲル製剤は、GML誘導体、例えば、式A(Formula A)から式F(Formula F)のなかから選択される化合物を含む。こうした化合物の例としては、あくまでも例示的であり、以下に限定されるものではないが、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテートおよびドデシルグリセリンが挙げられる。
【0050】
式中、各Xは独立して−O−または−S−を表し、nは5以上20以下の整数である。
【0051】
他の実施形態において、ゲル製剤は、少なくとも1つのGML誘導体を含み、前記少なくとも1つの誘導体は、式Eまたは式Fのいずれかの化合物である。こうした化合物の例としては、以下に限定されるものではないが、グリセリンジラウレート、グリセリンジカプリレート、グリセリンジミリステート、グリセリントリラウレートおよびグリセリントリパルミテートが挙げられる。
【0052】
1つの実施形態において、式A,B,CまたはDの化合物が本願の製剤に含まれ、少なくとも1つの−X−が、−S−である。1つの実施形態において、1つの−X−が−S−であり、他の−X−は−O−である。
【0053】
1つの実施形態において、式Eまたは式Fの化合物が本願の製剤に含まれ、nは、いずれも10であり、少なくとも1つの−X−が−O−である。
【0054】
本願において提供されるゲル製剤は、1つの実施形態において、GMLおよびGML誘導体を含む。例えば、1つの実施形態において、本願のゲル製剤は、GMLおよび式Fの化合物を含む。さらなる実施形態において、nは、いずれも10であり、少なくとも1つの−X−が−O−である。
【0055】
他の実施形態において、前記ゲル製剤は、約10μg/mLから約100mg/mLのGMLまたはその誘導体を含む。さらなる実施形態において、前記ゲル製剤は、約50μg/mLから約50mg/mLのGMLまたはその誘導体を含む。さらなる実施形態において、前記ゲル製剤は、約100μg/mLから約10mg/mLのGMLまたはその誘導体を含む。さらに別の実施形態において、前記ゲル製剤は、約500μg/mLから約5mg/mLのGMLまたはその誘導体を含む。
【0056】
1つの実施形態において、前記ゲル製剤は、約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約500μg/mL、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約50mg/mL、または約100mg/mLのGMLまたはその誘導体を含む。
【0058】
組成物中のGMLまたはその誘導体の量は、治療する尿路感染症の程度および治療を受ける患者の特徴に応じて調整可能である。組成物中のGML量は、例えば、感染症または疾患の性質;適用部位;患者の服薬履歴、体重、年齢、性別および治療を受ける表面範囲;ならびに患者が他の薬剤を服用しているかどうかに応じて変更してもよい。
【0059】
上記のとおり、1つの態様において、本発明は、GMLまたはその誘導体を含むゲル製剤に向けられている。1つの実施形態において、前記ゲル製剤は、少なくとも1種類のグリコールを含む。例えば、1つの実施形態において、前記ゲル製剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはその組合せを含む。1つの実施形態において、このポリエチレングリコールの分子量(MW)は、約300から約10,000の範囲にある。さらなる実施形態において、このポリエチレングリコールの分子量は、約300から約1,000である。さらに別の実施形態において、このポリエチレングリコールの分子量は、約400である。
【0060】
1つの実施形態において、前記ゲル製剤にポリエチレングリコールが含まれる。さらなる実施形態において、このポリエチレングリコールの分子量(MW)は、約400、約500または約1,000である。1つの実施形態において、前記ゲル製剤に含まれるポリエチレングリコールの濃度(w/w)は、約15%から約50%、約20%から約40%、または約25%から約35%、例えば、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%である。さらなる実施形態において、前記ゲル製剤に、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールの両方が含まれる。さらなる実施形態において、プロピレングリコールは約70%から約80%の濃度で含まれ、ポリエチレングリコールは約20%から約30%の濃度で含まれる。さらに別の実施形態において、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400である。
【0061】
さらなる実施形態において、前記組成物にプロピレングリコールが含まれる。さらに別の実施形態において、前記組成物中のプロピレングリコールの濃度は、約60%から約80%であり、例えば、約60%、約65%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、または約80%である。
【0062】
他の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含むゲル製剤が提供される。1つの実施形態において、このゲル製剤は、少なくとも1種類のセルロース誘導体を含む。さらなる実施形態において、前記組成物は、1種類のセルロース誘導体または2種類のセルロース誘導体を含む。1つの実施形態において、このセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースである。他の実施形態において、このセルロース誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシメチルセルロースである。さらに別の実施形態において、前記組成物は、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含む。1つの実施形態において、前記セルロース誘導体は、約0.1%(w/w)から約5.0%(w/w)の濃度で含まれる。さらなる実施形態において、前記組成物に複数のセルロース誘導体が同濃度で含まれる。さらなる実施形態において、2種類のセルロース誘導体が含まれ、それぞれの濃度は約1.25%(w/w)である。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは酢酸セルロースが挙げられる。
【0063】
1つの実施形態において、本願において提供されるゲル製剤は、GMLまたはその誘導体と、少なくとも1種類のセルロース誘導体と、プロピレングリコールと、ポリエチレングリコールとを含む。
【0064】
他の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含むゲル製剤が提供される。さらなる実施形態において、前記組成物は、少なくとも1種類の植物性油、例えば上記油のうちの少なくとも1種類の油(例えば、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油)を含む。1つの実施形態において、この植物性油は、最大で約100w/w%の濃度で前記組成物に含まれる。
【0065】
1つの実施形態において、本願において提供されるゲル製剤は、植物性油および少なくとも1種類のセルロース誘導体が含まれる。例えば、1つの実施形態において、前記ゲル製剤は、ヒドロキシプロピルセルロースおよび植物性油、またはヒドロキシエチルセルロースおよび植物性油、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび植物性油の組合せを含む。1つの実施形態において、前記セルロース誘導体および前記植物性油(例えば、パーム油、トウモロコシ油、すなわち、植物油)は、それぞれ同一の濃度(w/w)で含まれる。他の実施形態において、前記ゲル製剤は、ワセリンを含む。1つの実施形態において、前記組成物は、植物性油および2種類のセルロース誘導体を含む。さらなる実施形態において、この2種類のセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースであり、前記組成物中のセルロース誘導体の全濃度は、約1.25%(w/w)である。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸セルロースが挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態において、本願において提供されるゲル製剤は1種類以上の促進剤を含む。さらなる実施形態において、この促進剤は有機酸、キレート化剤またはその組合せである。さらなる実施形態において、前記促進剤はキレート化剤である。さらに別の実施形態において、前記促進剤はEDTAである。
【0067】
1つの実施形態において、前記促進剤はEDTAである。さらなる実施形態において、本願において提供されるGML組成物は、約0.00005M、約0.0005M、約0.005M、または約0.05MのEDTAを含む。他の実施形態において、キレート化剤は、約0.00005Mから約0.05M、約0.0005Mから約0.005M、または約0.005Mから約0.05Mの濃度で前記組成物に含まれる。
【0068】
1つの実施形態において、前記ゲル製剤は、植物性油および促進剤の両方、例えばパーム油およびEDTAを含む。他の実施形態において、前記促進剤は有機酸であり、植物性油を含む製剤中に存在する。1つの実施形態において、本願において提供されるゲル製剤は、促進剤と、非水性ゲル(例えば、セルロース誘導体を含むゲル)とを含む。他の実施形態において、前記ゲル製剤は、GMLまたはその誘導体と、植物性油と、非水性ゲル(例えば、1種類以上のセルロース誘導体を含むゲル)と、促進剤とを含む。
【0069】
1つの実施形態において、前記組成物は、少なくとも1種類の医薬上許容される賦形剤を含む。医薬上許容される賦形剤は、この分野の当業者にとって周知であり、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液)、アミノ酸、アルコール、血清アルブミンなどのタンパク質、パラベン(例えば、メチルパラベン)、またはマンニトールが挙げられる。
【0070】
1つの実施形態において、前記組成物のpHは約3.5から約7.0である。さらなる実施形態において、前記組成物のpHは約4.0から約6.0である。さらに別の実施形態において、前記組成物のpHは約4.0から約4.5である。
【0071】
1つの実施形態において、本願において提供されるゲル製剤は、GMLまたはその誘導体、および医薬上許容される局所用キャリアを含む。1つの実施形態において、前記医薬上許容される局所用キャリアは、例えば、パラフィンワックスまたはワセリンなどの炭化水素の混合物である。ワセリンは、炭化水素の水不溶性、疎水性、半固体の任意の混合物である。前記医薬上許容される局所用キャリアは、本願に記載する任意の製剤に添加してもよい。
【0072】
1つの実施形態において、前記ゲル製剤は、付加的な有効成分を含む。付加的な有効成分としては、例えば、抗菌性、抗ウイルス性、抗真菌性、および抗原虫性の成分が挙げられる。抗菌剤としては、以下に限定されるものではないが、アミノグリコシド、カルバセフェム、セファロスポリン、グリコペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、サルファ薬、およびテトラサイクリンが挙げられる。抗真菌性成分としては、以下に限定されるものではないが、アゾール類、ポリエン類、もしくはエキノキャンディン類の成分、ヌクレオシド類似体、アリルアミン、グリセオフルビン、トルナフテート、またはセレン合成物が挙げられる。抗ウイルス性の成分としては、あくまでも例示的であり、以下に限定されるものではないが、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アバカビル、エノホビル、ラミブジン、エムトリシタビン、ジドブジン、テノホビル、エファビレンツ、ラルテグラビル、エンフビルチド、マラビロク、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターフェロン、オセルタミビル、またはザナミビルが挙げられる。
【0073】
他の実施形態において、前記組成物は、固体、半固体、フォーム、ワックス、クリーム、またはローションである。
【0074】
本願に記載するGMLゲル製剤は、現在認可されている抗微生物性組成物よりも刺激性が低いので、当該分野で現在使用される他の抗微生物性組成物と比べて、患者の服薬コンプライアンスレートがより好ましいものとなる。
【0075】
1つの実施形態において、本願の方法は、本明細書に記載するように、GMLまたはその誘導体を含むゲル製剤を患者に投与することを含む。1つの実施形態において、前記方法は、GMLまたはその誘導体、植物性油および医薬上許容される局所用キャリアを含む有効量の組成物を患者に局所的に投与することを含む。他の実施形態において、前記方法は、GML、非水性ゲル、および医薬上許容される局所用キャリアを含む有効量の組成物を局所的に投与することを含む。例えば、前記組成物は、3〜4日または6〜7日間にわたって1日当たり2回適用してもよい。代替的に、前記組成物は、7〜10日または12〜14日間にわたって1日当たり1回適用してもよい。
【0076】
1つの実施形態において、微生物感染の治療方法は、本願明細書に記載する有効量の1種類以上のGML組成物を、患者の少なくとも1箇所の皮膚または粘膜表面に適用することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記ゲル製剤は、患者の皮膚または粘膜表面に適用される。またはワイプ、スポンジ、スワブもしくは他の材料に含浸してから各材料を用いて適用される。本願明細書において、「スワブ」という用語は、皮膚もしくは粘膜表面に液体、ゲル、ワックス、クリームもしくはローションを塗布するために適した材料、または皮膚もしくは粘膜表面に液体、ゲル、ワックス、クリームもしくはローションを適用する動作、または皮膚もしくは粘膜表面から液体、ゲル、ワックス、クリーム、ローションもしくは流体を回収(collect)する動作を指す。幾つかの実施形態において、この材料は、例えばスティック、ワイヤ、ロッド、またはアプリケータといったホルダに取り付けられている。さらなる実施形態において、ホルダに取り付けられた材料は、ホルダの一端または両端に取り付けられている。幾つかの実施形態において、ワイプ、スポンジ、スワブまたは他の材料には、前記組成物が予め充填、すなわち前記組成物が共に包装されている。
【0078】
他の実施形態において、前記ゲル製剤は、尿カテーテルもしくは他の留置装置に塗布または含浸され、被覆された装置は、既知の方法および手順で患者の体内に配置される。
【0079】
GML組成物は、幾つかのメカニズムのうちの1つ以上によって微生物感染を阻害する。そのようなメカニズムとしては、微生物への直接的な毒性;脊椎動物細胞への感染性微生物の浸入の阻害;微生物生育の阻害;毒素などの病原性因子の生成もしくは活性の阻害;脊椎動物細胞の安定化;または感染過程を促進する炎症性もしくは免疫活性化メディエータの誘導の阻害を含む(これらに限定されるものではない)。
【0080】
1つの実施形態において、細菌の膜のGML媒介性直接阻害としては、膜内に局在するシグナルタンパク質の阻害、またはシグナルタンパク質に結合するリガンドの阻害が挙げられる。1つの実施形態において、GMLは2成分シグナル伝達系に間接的な効果を与え、この効果は、膜貫通タンパク質がシグナル機能を行う能力を阻害する膜構造の改変;細菌の細胞膜電位の散逸;および膜中のpH勾配の変化から選択される。
【0081】
細菌の細胞膜に対するGMLの推定効果と同様に、GMLはウイルス脂質エンベロープを破壊することで、特定のウイルスを不活性化することが示されている。
【0082】
細菌性、ウイルス性、真菌性または原虫性感染症の特定および診断方法は、この分野の当業者に一般的に知られている。本願に開示された製剤が感染症の治療に有用であるかを評価するために、この分野の当業者にとって既知の方法を用いることができる。
【0083】
1つの実施形態において、1種類以上の微生物を含むバイオフィルムを除去または殺傷する方法が提供される。1つの実施形態において、前記方法は、前記ゲル製剤を前記バイオフィルムに直接適用することでこの製剤を投与することを含む。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、GMLまたはGMLの誘導体と共に、第2の有効成分を投与することを含む。この付加的な有効成分は、本願明細書に記載した組成物に含まれていてもよく、または別個に投与されてもよい。1つの実施形態において、前記1種類以上の付加的な有効成分は、GML組成物を局所的に投与する前または後に投与される。例えば、前記2つの有効成分は、順に局所的に投与してもよく、または異なる投与経路で順に投与してもよい。
【0084】
1つの実施形態において、前記付加的な有効成分は、本発明の組成物を適用する前、適用中またはその後に投与される。他の実施形態において、前記付加的な有効成分は、前記組成物と同一の経路で、または異なる経路で投与される。例えば、前記付加的な有効成分は、1つの実施形態において、以下の投与経路のうちの1つの経路で投与される:局所、鼻腔内、皮内、静脈内、筋肉内、経口および皮下。付加的な有効成分の服用量は、例えば、感染症または疾患の性質;適用部位;患者の体重、年齢、性別および治療範囲;併用医薬;および医学的判定に依存する。
【実施例】
【0085】
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例は、上記の実施形態と同様に、あくまでも例示的なものであり、本発明の範囲をいかなるようにも限定するものではないということを理解されたい。
【0086】
実施例1:
5%w/vのGML非水性ゲルは、高い抗生物質耐性を有する生物および複数のクローングループを含む黄色ブドウ球菌54株に対する殺菌性を有する。GMLは、接触により抗菌性を発揮し、ほんの数分でこれらの生物を殺傷させる。黄色ブドウ球菌がGMLに対する耐性を発達させる推定機会は<1/10であり、耐性がみられる可能性は極めて低い。また、5%のGML非水性ゲルは、GML単独よりも強力な抗ブドウ球菌成分である。
【0087】
実施例2:
バイオフィルム形成に対するGMLの効果を直接評価するために、96ウェルのプラスチック・マイクロタイタープレートに、黄色ブドウ球菌の3つの株(MN8、メシチリン感受性株;MNWH、メチシリン耐性株;もしくはMW2、メチシリン耐性株)のうちの1株、または無莢膜型ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzae)約10
6/mLを接種した。ウェルは、24時間および48時間にわたって37℃で静置培養を行った。コントロールとして、各微生物に対して3ウェルを1組とした各組において、ピペットで上下動することによりウェルを3回撹拌した。GMLの抗菌活性は、上清中のCFU/mLを測定することにより計測された。上清を除去した後、ウェルをPBSで3回洗浄して未結合の細胞を除去し、クリスタルバイオレットで30分間処理した。再度ウェルをPBSで3回洗浄して、未結合のクリスタルバイオレットを除去した。そして、ウェルをエタノールで処理し、バイオフィルム会合クリスタルバイオレットを可溶化した。595nmでの吸光度をELISAリーダによって計測し、バイオフィルム形成を測定した。
【0088】
CFU/mLで測定された黄色ブドウ球菌株の3つの株全ての増殖が、500μg/mLのGMLによって、24および48時間後の両方の時点において完全に阻害された。対照的に、細菌増殖を阻害するために必要なGML濃度よりも10倍低い濃度においては、マイクロタイタープレートのウェルに残留したバイオフィルム物質のクリスタルバイオレット染色が低減されたことによって測定されるように、バイオフィルム形成が顕著に阻害された。
【0089】
実施例3:
5%のGML非水性ゲル(低pHおよびEDTAといった他の促進剤を含むGML)は、接触によってシュードモナス種(Pseudomonas species)に対する効果を発揮する殺菌剤である。殺菌剤は、開始時の接種材と比較して、1mLあたりの細菌のコロニー形成単位(CFU)を3logよりも大きく減少させるものとして定義される。
【0090】
上記の教示内容に照らしてこの分野の当業者によって理解されるように、本発明から逸脱することなく、本発明の上記実施形態に変更や変形を施すことが可能である。したがって、請求項の範囲およびその均等物において、本発明は、具体的に記載されたもの以外の方法で実施してもよいということを理解されたい。
【国際調査報告】