(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
1つ以上の不斉トリグリセリド分子集団を有するトリグリセリド油が提供される。不斉トリグリセリド分子集団は、sn−1位及びsn−2位におけるC8:0脂肪酸又はC10:0脂肪酸と、sn−3位におけるC16:0又はC18:0とからなるトリグリセリド分子である。別の不斉トリグリセリド分子集団は、sn−1位及びsn−2位におけるC16:0脂肪酸又はC18:0脂肪酸と、sn−3位におけるC8:0又はC10:0脂肪酸とからなるトリグリセリド分子である。ショ糖インベルターゼ及びトリグリセリド油の水素化を用いたトリグリセリド油の作製方法及びその使用方法が提供される。組換えDNA技術を用いて油産生組換え細胞を作製することによりトリグリセリド分子が作製される。
第1の不斉トリグリセリド分子集団及び/又は第2の不斉トリグリセリド分子集団を含むトリグリセリド油であって、前記第1の集団が、sn−1位及びsn−2位におけるC8:0脂肪酸又はC10:0脂肪酸と、sn−3位におけるC14:0、C16:0又はC18:0とからなるトリグリセリド分子を含み、前記第2の集団が、sn−1位及びsn−2位におけるC14:0、C16:0脂肪酸又はC18:0脂肪酸と、sn−3位におけるC8:0又はC10:0脂肪酸とからなるトリグリセリド分子を含むトリグリセリド油の調製方法において、
a.組換え微細藻類細胞から分離されるトリグリセリド油を得る工程であって、前記組換え微細藻類細胞が、活性ショ糖インベルターゼをコードする外来遺伝子を含む、工程と、
b.前記トリグリセリド油を水素化して前記不斉トリグリセリド分子を作製する工程と、
を含む方法。
前記組換え微細藻類細胞が、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ、ケトアシル−ACPシンターゼ、又はデサチュラーゼ酵素をコードする1つ以上の外来遺伝子を更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
前記組換え微細藻類細胞が、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ、ケトアシル−ACPシンターゼ、又はデサチュラーゼ酵素をコードする内因性遺伝子の発現を破壊する1つ以上の外来遺伝子を更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.定義
「対立遺伝子」は、生物が同じ染色体上であっても複数の類似した又は同一の遺伝子コピーを有する遺伝子のコピーを指す。対立遺伝子は同じ又は類似したタンパク質をコードし得る。
【0020】
「周囲」圧力及び温度は、これら用語が本明細書において使用されるとき、特記されない限り、それぞれ約1気圧及び約15〜25℃を意味するものとする。
【0021】
脂肪酸プロフィール中の2つの脂肪酸に関連して、「バランスしている」は、2つの脂肪酸がそれらの平均面積パーセントの規定の割合の範囲内であることを意味するものとする。従って、x%の存在量の脂肪酸a及びy%の存在量の脂肪酸bに関して、脂肪酸は、|x−((x+y)/2)|及び|y−((x+y)/2)|が≦100(z)であるならば、「z%以内にバランスしている」。
【0022】
「不斉トリグリセリド」は、グリセロール骨格のsn−1位とsn−3位の脂肪酸が異なるトリアシルグリセリド分子を意味するものとする。
【0023】
「細胞油」又は「細胞脂肪」は、生物から得られる主にトリグリセリドの油を意味するものとし、ここでこの油は、トリグリセリドの脂肪酸プロフィールを実質的に変えるような別の天然油若しくは合成油とのブレンド、又は分画を受けていない。特定の位置特異性のトリグリセリドを含む油に関連して、細胞油又は細胞脂肪は、当該の位置特異的トリグリセリドプロフィールを得るためのエステル交換又は他の合成プロセスに供されておらず、むしろ位置特異性は細胞又は細胞集団によって自然に生じる。細胞によって産生される細胞油について、油のステロールプロフィールは、概して、細胞油を模倣するためステロールを添加することによる油の人工的な再構成によるのでなく、細胞が産生するステロールによって決定される。細胞油又は細胞脂肪に関連して、及び概して本開示全体を通じて使用されるとき、油及び脂肪という用語は、特に注記される場合を除き同義的に使用される。従って、「油」又は「脂肪」は、物質の組成及び他の条件に応じて室温で液体、固体、又は一部固体であり得る。ここで、用語「分画」は、どのように達成するにしても、生物が産生するプロフィールと比べて油の脂肪酸プロフィールを変化させる形で油から材料を取り出すことを意味する。用語「細胞油」及び「細胞脂肪」は、生物から得られるかかる油を包含し、ここで油は、精製、漂白及び/又は脱ガムを含めた、そのトリグリセリドプロフィールを実質的に変化させることのない最小限の処理を受けている。細胞油はまた、「非エステル交換細胞油」であってもよく、これは、脂肪酸がグリセロールに対するそのアシル結合において再分布されたプロセスをその細胞油が受けておらず、生物から回収したときと本質的に同じ配置のままであることを意味する。
【0024】
「外来遺伝子」は、細胞に(例えば形質転換/トランスフェクションによって)導入されたRNA及び/又はタンパク質の発現をコードする核酸を意味するものとし、「導入遺伝子」とも称される。外来遺伝子を含む細胞は、組換え細胞と称することができ、そこにさらなる外来遺伝子が導入され得る。外来遺伝子は、形質転換される細胞と異なる種由来(従って異種)であってもよく、又は同じ種由来(従って同種)であってもよい。このように、外来遺伝子には、遺伝子の内在性コピーと比べて細胞のゲノムにおいて異なる位置を占めるか、又は異なる制御下にある同種遺伝子が含まれ得る。外来遺伝子は細胞に2つ以上のコピーで存在してもよい。外来遺伝子は、ゲノム(核又はプラスチド)への挿入として、又はエピソーム分子として細胞に維持され得る。
【0025】
「FADc」は、「FAD2」とも称され、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼをコードする遺伝子である。
【0026】
「脂肪酸」は、グリセロ脂質中の遊離脂肪酸、脂肪酸塩、又は脂肪酸アシル部分を意味するものとする。グリセロ脂質の脂肪酸アシル基は、トリグリセリドが加水分解又は鹸化されるときに生成されるカルボン酸又はカルボン酸の陰イオンの観点で記載され得ることが理解されるであろう。
【0027】
「固定炭素源」は、炭素を含有する分子、典型的には有機分子であり、そこで培養される微生物によって利用され得る培養培地中に周囲温度及び圧力で固体又は液体の形態で存在する。従って、二酸化炭素は固定炭素源ではない。
【0028】
「作動可能に連結している」は、制御配列(典型的にはプロモーター)及び連結された配列(典型的にはタンパク質をコードする配列、コード配列とも称される)など、2つの核酸配列間の機能的な連結である。プロモーターは、それが遺伝子の転写を仲介することができる場合、外来遺伝子と作動可能に連結している。
【0029】
「微細藻類」は、葉緑体又は他のプラスチドを含有する、場合により光合成を行うことが可能な真核微生物、又は光合成を行うことが可能な原核微生物である。微細藻類には、固定炭素源をエネルギーとして代謝することができない偏性光独立栄養生物、並びに唯一固定炭素源で生存し得る従属栄養生物が含まれる。微細藻類には、Chlamydomonasなどの、細胞分裂直後に姉妹細胞から分離する単細胞生物、並びに、例えばVolvoxなどの、2つの別個の細胞型の単純な多細胞光合成微生物である微生物が含まれる。微細藻類には、Chlorella、Dunaliella、及びProtothecaなどの細胞が含まれる。微細藻類にはまた、Agmenellum、Anabaena、及びPyrobotrysなどの細胞間接着を呈する他の光合成微生物も含まれる。微細藻類はまた、特定の渦鞭毛藻類種及びPrototheca属の種など、光合成を行う能力を失った偏性従属栄養微生物も含まれる。
【0030】
脂肪酸長さに関連して、「中鎖」は、C8〜C16脂肪酸を意味するものとする。
【0031】
組換え細胞に関連して、用語ノックダウンは、遺伝子によりコードされるタンパク質の産生又は活性の点で部分的に(例えば約1〜95%)抑制されている遺伝子を指す。
【0032】
また、組換え細胞に関連して、用語ノックアウトは、遺伝子によりコードされるタンパク質の産生又は活性の点で完全に又はほぼ完全に(例えば>95%)抑制されている遺伝子を指す。ノックアウトは、コード配列への非コード配列の相同組換え、遺伝子欠失、突然変異又は他の方法により調製することができる。
【0033】
「油産生」細胞は、天然に、又は組換えの若しくは古典的な株改良によって、乾燥細胞重量基準で少なくとも20%の脂質を産生する能力を有する細胞である。「油産生微生物(microbe)」又は「油産生微生物(microorganism)」は、微細藻を含め、油産生性の微生物(特に、脂質を蓄える真核微細藻)である。油産生細胞はまた、その脂質又は他の含有分の一部又は全てが取り除かれた細胞、並びに生細胞及び死細胞のいずれも包含する。
【0034】
「規則性油(ordered oil)」又は「規則性脂肪(ordered fat)」は、主として所与の多形構造である結晶を形成するものである。例えば、規則性油又は規則性脂肪は、50%、60%、70%、80%、又は90%超がβ又はβ’多形形態である結晶を有し得る。
【0035】
細胞油に関連して、「プロフィール」は、油中の特定の種又はトリグリセリド又は脂肪酸アシル基の分布である。「脂肪酸プロフィール」は、グリセロール骨格との結合に関係なく、油のトリグリセリド中の脂肪酸アシル基の分布である。脂肪酸プロフィールは、典型的には、実施例1のように、脂肪酸メチルエステル(FAME)への変換と、続く水素炎イオン化検出(FID)によるガスクロマトグラフィー(GC)分析によって決定される。脂肪酸プロフィールは、ある脂肪酸の曲線下面積から求めた全脂肪酸シグナルに対する当該の脂肪酸の1つ以上の百分率として表すことができる。FAME−GC−FID計測値は、脂肪酸の重量百分率を概算する。「sn−2プロフィール」は、油中のトリアシルグリセリドのsn−2位に見られる脂肪酸の分布である。「位置特異的プロフィール」は、立体特異性に関係なく、グリセロール骨格に対するアシル基結合の位置に関するトリグリセリドの分布である。換言すれば、位置特異的プロフィールは、sn−1/3と、対するsn−2とにおけるアシル基結合を表す。従って、位置特異的プロフィールでは、POS(パルミチン酸塩−オレイン酸塩−ステアリン酸塩)及びSOP(ステアリン酸塩−オレイン酸塩−パルミチン酸塩)は同じものとして扱われる。「立体特異的プロフィール」は、sn−1、sn−2及びsn−3におけるアシル基の結合を表す。特に指示されない限り、SOP及びPOSなどのトリグリセリドは同等と見なされる。「TAGプロフィール」は、結合の位置特異的な性質に関係なく、グリセロール骨格との結合に関してトリグリセリドに見られる脂肪酸の分布である。従って、TAGプロフィールでは、油中のSSOの百分率はSSOとSOSとの合計であり、一方、位置特異的プロフィールでは、油中のSOS種を含めない、SSOの百分率が計算される。FAME−GC−FID分析の重量百分率と対照的に、トリグリセリドの割合は、典型的にはモル百分率、すなわちTAG混合物中における所与のTAG分子の百分率として提供される。
【0036】
用語「パーセント配列同一性」は、2つ以上のアミノ酸配列又は核酸配列との関連では、配列比較アルゴリズムを使用した又は目視検査による計測で最大の一致となるように比較及びアラインメントしたとき同じであるか、又は同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを特定の割合だけ有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。パーセントヌクレオチド又はアミノ酸同一性を決定する配列比較では、典型的には一方の配列が参照配列として働き、それと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列がコンピュータに入力され、必要であれば部分配列の座標が指定され、及び配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次に配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づき、1つ又は複数の試験配列について参照配列と比べたパーセント配列同一性を計算する。比較のための配列の最適アラインメントは、デフォルトパラメータに設定したNCBI BLASTソフトウェア(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を使用して実行することができる。例えば、2つの核酸配列の比較には、以下のデフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツール、バージョン2.0.12(2000年4月21日)でblastnを使用し得る:行列:BLOSUM62;マッチに対するリワード:1;ミスマッチに対するペナルティ:−2;開始ギャップ:5及び伸長ギャップ:2ペナルティ;ギャップxドロップオフ:50;期待値:10;ワードサイズ:11;フィルタ:オン。2つのアミノ酸配列のペアワイズ比較には、例えば以下のデフォルトパラメータに設定したblastpで「BLAST 2 Sequences」ツール、バージョン2.0.12(2000年4月21日)を使用し得る:行列:BLOSUM62;開始ギャップ:11及び伸長ギャップ:1ペナルティ;ギャップxドロップオフ50;期待値:10;ワードサイズ:3;フィルタ:オン。
【0037】
「組換え」は、外来核酸の導入又は天然核酸の変化によって改変された細胞、核酸、タンパク質又はベクターである。従って、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞中には見られない遺伝子を発現し、又は当該の遺伝子が非組換え細胞によって発現する場合とは異なる形で天然遺伝子を発現することができる。組換え細胞には、限定なしに、遺伝子産物をコードするか、又は細胞中の活性遺伝子産物レベルを低下させる抑制エレメント、例えば突然変異、ノックアウト、アンチセンス、干渉性RNA(RNAi)又はdsRNAをコードする組換え核酸が含まれ得る。「組換え核酸」は、概して、例えばポリメラーゼ、リガーゼ、エキソヌクレアーゼ、及びエンドヌクレアーゼを使用した、化学合成を使用した核酸の操作により、当初インビトロで形成される核酸であるか、又はその他の天然では通常見られない形態である。組換え核酸は、例えば、2つ以上の核酸を作動可能に連結した状態に置くために作製されてもよい。従って、天然では通常つながっていないDNA分子をライゲートすることによりインビトロで形成される単離核酸又は発現ベクターは、両方とも、本発明の目的上組換えと見なされる。組換え核酸は、それを作製して宿主細胞又は生物に導入した後、宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製し得る;しかしながら、かかる核酸は組換え産生後、続いて細胞内で複製されるが、それでもなお本発明の目的上組換えと見なされる。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち組換え核酸の発現によって作製されたタンパク質である。
【0038】
用語「トリグリセリド」、「トリアシルグリセリド」及び「TAG」は、当該技術分野において周知されているとおり同義的に使用される。
【0039】
II.概要
本発明の例示的な実施形態は、グリセロ脂質における変化した脂肪酸プロフィール及び/又は変化した脂肪酸位置特異的分布を生じる油産生細胞、及びその細胞から生成される生成物を特徴とする。油産生細胞の例としては、プラスチド油産生細胞、例えば油産生藻類のものを含めた、II型脂肪酸生合成経路を有する微生物細胞、並びに該当する場合には、限定はされないが市販の油糧種子作物、例えば、大豆、トウモロコシ、菜種/キャノーラ、綿、アマ、ヒマワリ、ベニバナ及びピーナッツを含めた高等植物の油生成細胞が挙げられる。細胞の他の具体的な例としては、Chlorophtya門、Trebouxiophytae綱、Chlorellales目、又はChlorellacae科の従属栄養又は偏性従属栄養微細藻類が挙げられる。油産生微細藻類及び培養方法の例はまた、偏性従属栄養生物を含む属であるChlorella属及びPrototheca属の種を含め、国際公開第2008/151149号パンフレット、国際公開第2010/063032号パンフレット、国際公開第2010/063031号パンフレット、国際公開第2011/150410号パンフレット、及び国際公開第2011/150411号パンフレットにも提供される。油産生細胞は、例えば、細胞重量基準で25、30、40、50、60、70、80、85、又は約90%±5%の油を産生する能力を有し得る。場合により、産生される油は、高度不飽和脂肪酸、例えばDHA又はEPA脂肪酸が低くてもよい。例えば、油は、5%、2%、又は1%未満のDHA及び/又はEPAを含み得る。上述の公報はまた、かかる細胞を培養して油を、特に微細藻類細胞から抽出する方法も開示している;かかる方法は本明細書に開示される細胞に適用することができ、これらの教示について参照により援用される。微細藻類細胞が使用される場合、それらは独立栄養で培養するか(偏性従属栄養生物でない限り)又は暗所で糖(例えば、グルコース、フルクトース及び/又はショ糖)を使用して培養することができる。本明細書に記載される任意の実施形態において、細胞は、細胞によるショ糖原料からの油の産生を可能にするため外来性インベルターゼ遺伝子を含む従属栄養細胞であってもよい。それに代えて、又は加えて、細胞はセルロース系原料からキシロースを代謝することができる。例えば、活性キシロース輸送体、キシルロース−5−リン酸輸送体、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及びキシロースレダクターゼをコードする遺伝子など、1つ以上のキシロース代謝遺伝子を発現するように細胞を遺伝子操作することができる。キシロースを利用する遺伝子操作されたPrototheca株の開示を含め、2012年11月15日に公開された国際公開第2012/154626号パンフレット、「Genetically Engineeredd Microorganisms that Metabolize Xylose」を参照のこと。
【0040】
油産生細胞は、任意選択で、バイオリアクター/発酵槽で培養されてもよい。例えば、従属栄養油産生微細藻類細胞は、糖含有栄養ブロスで培養することができる。任意選択で、培養は二段階:シード段階及び脂質産生段階で進めることができる。シード段階では、細胞数がsスターター培養物から増加する。従って、シード段階は、典型的には、急速な細胞分裂を促進するように設計された栄養リッチな窒素充満培地を含む。シード段階後、栄養制限(例えば窒素希薄)条件下で細胞に糖が供給されてもよく、これにより糖がトリグリセリドに変換されることになる。例えば、脂質産生段階における細胞分裂速度はシード段階と比べて50%、80%以上低下し得る。加えて、シード段階と脂質産生段階との間での培地の変動によって組換え細胞が誘導され、異なる脂質合成遺伝子が発現することにより、産生されるトリグリセリドが変化し得る。例えば、以下で考察するとおり、内在性又は外来性遺伝子の前に窒素感受性及び/又はpH感受性プロモーターを置くことができる。これは、シード段階における細胞の最適成長を支持しない脂質産生段階で油が産生されるべきである場合に特に有用である。以下の例では、細胞は脂肪酸デサチュラーゼをpH感受性プロモーターと共に有し、従って脂質産生段階ではリノール酸が低い油が産生される一方、シード段階中には細胞分裂に十分なリノール酸を有する油が産生される。得られる低リノール酸油は酸化安定性が極めて高い。
【0041】
油産生細胞は、脂肪酸生合成酵素をコードする1つ以上の外来遺伝子を発現する。結果として、一部の実施形態は、非植物油若しくは非種子油からは得ることのできなかった、又は全く得ることのできなかった細胞油を特徴とする。
【0042】
油産生細胞(任意選択で微細藻類細胞)は、UV及び/又は化学的突然変異誘発と、続く化学的又は生化学的毒素での選択を含めた、環境条件下でのスクリーニング又は選択など、古典的な株改良技術によって改良することができる。例えば細胞は、脂肪酸合成阻害薬、糖代謝阻害薬、又は除草剤で選択することができる。選択の結果として、糖での収率が高い株、油産生(例えば、細胞容積、乾燥重量、又は細胞培養物1リットルの割合として)が多い株、又は脂肪酸若しくはTAGプロフィールが改良された株を得ることができる。
【0043】
例えば、細胞は、1,2−シクロヘキサンジオン;19−酢酸ノルエチンドロン(norethindone);2,2−ジクロロプロピオン酸;2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸;2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、メチルエステル;2,4−ジクロロフェノキシ酢酸;2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ブチルエステル;2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、イソオクチルエステル;2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、メチルエステル;2,4−ジクロロフェノキシ酪酸;2,4−ジクロロフェノキシ酪酸、メチルエステル;2,6−ジクロロベンゾニトリル;2−デオキシグルコース;5−テトラデシルオキシ−w−フロ酸;A−922500;アセトクロル;アラクロル;アメトリン;アムホテリシン;アトラジン;ベンフルラリン;ベンスリド;ベンタゾン;ブロマシル;ブロモキシニル;カフェンストロール;カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP);カルボニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP);セルレニン;クロルプロファム;クロルスルフロン;クロフィブリン酸;クロピラリド;コルヒチン;シクロエート;シクロヘキサミド;C75;DACTHAL(テトラクロロテレフタル酸ジメチル);ジカンバ;ジクロロプロップ((R)−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)プロパン酸);ジフルフェニカン;ジヒドロジャスモン酸(dihyrojasmonic acid)、メチルエステル;ジクワット;ジウロン;ジメチルスルホキシド;没食子酸エピガロカテキン(EGCG);エンドサル;エタルフルラリン;エタノール;エトフメセート;フェノキサプロップ−p−エチル;フルアジホップ−p−ブチル;フルオメツロン;ホメサフェン(fomasefen);ホラムスルフロン;ジベレリン酸;グルホシネートアンモニウム;グリホセート;ハロキシホップ;ヘキサジノン;イマザキン;イソキサベン;リパーゼ阻害薬THL((−)−テトラヒドロリプスタチン);マロン酸;MCPA(2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸);MCPB(4−(4−クロロ−o−トリルオキシ)酪酸);メソトリオン;ジヒドロジャスモン酸メチル;メトラクロル;メトリブジン;ミルドロネート(Mildronate);モリナート;ナプタラム;ノルハルマン;オルリスタット;オキサジアゾン;オキシフルオルフェン;パラコート;ペンジメタリン;ペンタクロロフェノール;PF−04620110;フェネチルアルコール;フェンメジファム;ピクロラム;プラテンシン;プラテンシマイシン;プロメトン;プロメトリン;プロナミド;プロパクロル;プロパニル;プロパジン;ピラゾン;キザロホップ−p−エチル;ジプロピルチオカルバミン酸S−エチル(EPTC);S,S,S−トリブチルホスホロトリチオエート;サリチルヒドロキサム酸;セサモール;シデュロン;メタンアルソン酸ナトリウム(sodium methane arsenate);シマジン;T−863(DGAT阻害薬);テブチウロン;テルバシル;チオベンカルブ;トラルコキシジム;トリアレート;トリクロピル;トリクロサン;トリフルラリン;及びブルピン酸の1つ以上で選択することができる。
【0044】
油産生細胞は貯蔵油を産生し、貯蔵油は主としてトリアシルグリセリドであり、細胞の貯蔵体に貯蔵され得る。生油は、細胞から、細胞を破壊して油を分離することにより得られ得る。生油は、細胞によって産生されるステロールを含み得る。国際公開第2008/151149号パンフレット、国際公開第2010/063032号パンフレット、国際公開第2011/150410号パンフレット、及び国際公開第2011/1504号パンフレットが、油産生微細藻類についての従属栄養培養及び油分離技術を開示している。例えば、細胞を提供又は培養し、乾燥させてプレスすることにより、油を得ることができる。生成された油は、当該技術分野において公知のとおり、又は国際公開第2010/120939号パンフレットに記載されるとおり、精製、漂白、及び脱臭(RBD)され得る。この生油又はRBD油は、様々な食品、化学及び工業製品又はプロセスに使用され得る。かかる処理の後であっても、油は供給源に特有のステロールプロフィールを維持し得る。微細藻類ステロールプロフィールは以下に開示する。特に本特許出願の第XII節を参照のこと。油の回収後、有用な残渣バイオマスが残る。残渣バイオマスの用途としては、紙、プラスチック、吸収剤、吸着剤、掘削液の製造、動物用飼料として、人間の栄養用、又は肥料用が挙げられる。
【0045】
トリグリセリド(「トリアシルグリセリド」又は「TAG」とも称される)細胞油の脂肪酸プロフィールが本明細書に提供される場合、それは、細胞から抽出した貯蔵油の非分画サンプルを、リン脂質が除去された条件下で分析するか、又はリン脂質の脂肪酸に対して実質的に感度のない分析方法で(例えばクロマトグラフィー及び質量分析法を使用して)分析したものを指すことが理解されるであろう。油はRBDプロセスに供してリン脂質、遊離脂肪酸及び匂いを除去してもよく、しかし油中のトリグリセリドの脂肪酸プロフィールの変化はごく僅か又は無視し得る程度である。細胞は油を産生するため、ある場合には、貯蔵油が細胞における全TAGの大部分を占めることになる。以下の実施例1、2、及び3は、TAG脂肪酸組成及び位置特異的構造を決定するための分析法を提供する。
【0046】
大別すると、本発明の特定の実施形態は、(i)特定の脂肪酸の栄養要求株;(ii)不飽和脂肪酸要求性の細胞を含めた、低濃度の多価不飽和脂肪酸を有する油を産生する細胞;(iii)脂肪酸をグリセロール又はグリセロールエステルに転移させる酵素をコードする1つ以上の外来遺伝子の発現に起因して、高濃度の特定の脂肪酸を有する油を産生する細胞;(iv)位置特異的な油を産生する細胞、(v)プロフィールが変化した細胞油を産生することに関連する他の発明を含む。これらの実施形態はまた、かかる細胞によって作られる油、油抽出後のかかる細胞からの残渣バイオマス、そうした油から作られる油脂化学品、燃料及び食品並びに細胞の培養方法も包含する。
【0047】
以下の任意の実施形態において、使用される細胞は、場合により、Chlorophyta、Trebouxiophyceae、Chlorellales、Chlorellaceae、又はChlorophyceaeに分類される細胞を含めた、従属栄養又は偏性従属栄養微細藻類細胞を含む微細藻類細胞などのII型脂肪酸生合成経路を有する細胞であるか、又は合成生物学のツールを使用してII型脂肪酸生合成経路を有するように操作された細胞(すなわち、かかる経路を欠く生物にII型脂肪酸生合成の遺伝機構を移植する)である。II型経路を有する宿主細胞を使用すると、外来性アシル−ACPチオエステラーゼ又は他のACP結合酵素とI型細胞機構の多酵素複合体との間で相互作用が起こらない可能性が回避される。特定の実施形態において、細胞は、Prototheca moriformis種、Prototheca krugani種、Prototheca stagnora種又はPrototheca zopfii種の細胞であるか、又は配列番号1と少なくとも65、70、75、80、85、90又は95%のヌクレオチド同一性を有する23S rRNA配列を有する。暗所で培養するか又は偏性従属栄養生物を使用することにより、産生される細胞油はクロロフィル又は他の色素が低下し得る。例えば、細胞油は、実質的な精製なしに100、50、10、5、1、0.0.5ppm未満のクロロフィルを有し得る。
【0048】
以下に考察する特定の実施形態及び例において、1つ以上の脂肪酸合成遺伝子(例えば、アシル−ACPチオエステラーゼ、ケト−アシルACPシンターゼ、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は本明細書に記載される他のものをコードする)は、微細藻に組み込まれる。特定の微細藻について、植物脂肪酸合成遺伝子産物は、その遺伝子産物がアシル−ACPチオエステラーゼなどの、機能するのにACPの結合を要求する酵素である場合にも、対応する植物アシルキャリアータンパク質(ACP)の非存在下で機能し得ることが分かっている。従って、場合により微細藻類細胞は、植物ACP遺伝子の共発現なしにかかる遺伝子を利用して所望の油を作り得る。様々な酵素を発現するように操作された細胞の例については、例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットを参照することができる。
【0049】
外来遺伝子又は遺伝子の組み合わせを含む組換え細胞の様々な実施形態について、60、70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の核酸配列同一性を有する遺伝子によるそれらの遺伝子の置換は、60、70、80、85、90、91、92、93、94、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99又は99.5%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする遺伝子の置換と同じく、同様の結果をもたらし得ることが考えられる。同様に、新規調節エレメントについて、60、70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の核酸を有する核酸によるそれらの核酸の置換が有効であり得ることが考えられる。様々な実施形態において、機能に不要な配列(例えばFLAG(登録商標)タグ又は挿入された制限部位)は多くの場合に使用が省略され、又は遺伝子、タンパク質及び変異体の比較において無視されることは理解されるであろう。
【0050】
微細藻類を使用して発見され又は微細藻類によって例示されているが、ここに報告される新規遺伝子及び遺伝子の組み合わせは、当該技術分野において周知されている技術を用いて高等植物で使用することができる。例えば、高等植物における外来性脂質代謝遺伝子の使用が、米国特許第6028247号明細書、同第5850022号明細書、同第5639790号明細書、同第5455167号明細書、同第5,512,482号明細書、及び同第5,298,421号明細書に開示されており、外来性アシル−ACPチオエステラーゼを含む高等植物を開示している。高等植物におけるFAD2抑制が国際公開第2013112578号パンフレット、及び国際公開第2008006171号パンフレットに教示されている。
【0051】
III.脂肪酸栄養要求株/油産生期間中の成長阻害条件に対する脂肪酸レベルの低下
ある実施形態では、細胞は、脂質経路遺伝子の全ての対立遺伝子がノックアウトされるように遺伝子操作される。或いは、脂肪酸の補足を要求するように、それらの対立遺伝子の遺伝子産物の量又は活性がノックダウンされる。遺伝子の対立遺伝子の1つ以上と相同なドナー配列を有する第1の形質転換構築物を作成することができる。この第1の形質転換構築物が導入され、続く選択方法により、1つ以上の対立遺伝子破壊を特徴とする分離株が得られ得る。或いは、第1の対立遺伝子への挿入により第1の対立遺伝子を不活性化する選択可能なマーカーを発現するように操作された第1の株を作製してもよい。この株は、脂質経路遺伝子の残りの対立遺伝子をノックアウト又はノックダウンするさらに別の遺伝子操作のための宿主として使用することができる(例えば、第2の選択マーカーを使用して第2の対立遺伝子を破壊する)。当初活性を消失させた内在性遺伝子を有するさらなる形質転換構築物の操作された発現によって、又は好適な異種遺伝子の発現によって、内在性遺伝子の補足を実現することができる。補足遺伝子の発現は、構成的に調節されても、或いは調節可能な制御によって調節されてもよく、それにより成長を可能にし、又は任意に栄養要求条件を作り出すための所望のレベルに至る発現の調整が可能となる。ある実施形態では、脂肪酸要求細胞の集団を使用して補足遺伝子が、例えば外因性脂肪酸合成酵素に対する特定の遺伝子候補、又はかかる候補を含むと考えられる核酸ライブラリによる形質転換により、スクリーニング又は選択される。
【0052】
所望の遺伝子の全ての対立遺伝子のノックアウト及びノックアウトした遺伝子の補足は、順次行われる必要はない。目的の内在性遺伝子の破壊及び好適な補足遺伝子の構成的発現又は誘導性発現のいずれかによるその補足は、いくつかの方法で行うことができる。一つの方法では、これは好適な構築物の同時形質転換によって実現することができ、1つが目的の遺伝子を破壊し、2つ目が好適な代替的遺伝子座に補足を提供する。別の方法では、誘導性プロモーターの制御下で標的遺伝子を好適な遺伝子に直接置き換えることにより、標的遺伝子の消失を生じさせることができる(「プロモーターハイジャック法」)。このようにして、ここで標的遺伝子の発現が調節可能なプロモーターの制御下に置かれる。さらなる手法は、遺伝子の内在性調節エレメントを外来性の誘導性遺伝子発現系に置き換えることである。かかるレジーム下では、ここで目的の遺伝子を、特定の必要性に応じてオン又はオフに切り換えることができる。さらに別の方法は、目的の遺伝子の補足能を有する外来遺伝子を発現する第1の株を作成し、次にこの第1の株における目的の遺伝子の全ての対立遺伝子をノックアウト又はノックダウンすることである。外来遺伝子による複数の対立遺伝子のノックダウン又はノックアウト及び補足手法を使用して、操作される細胞の脂肪酸プロフィール、位置特異的プロフィール、sn−2プロフィール、又はTAGプロフィールを変えてもよい。
【0053】
調節可能なプロモーターが使用される場合、プロモーターはpH感受性(例えば、amt03)か、窒素及びpH感受性(例えば、amt03)か、又は窒素感受性であるがpH非感受性である(例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットを参照のこと)か又は前述のプロモーターのいずれかと少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を含むそれらの変異体であってもよい。プロモーターに関連して、pH非感受性(pH−inensitive)は、環境条件がpH6.8から5.0にシフトしたときのそのプロモーターの感受性がamt03プロモーターと比べて低い(例えば、プロモーターとしてamt03を有する等価な細胞と比較したとき、pHシフト時の活性の相対的変化が少なくとも5、10、15、又は20%小さい)ことを意味する。
【0054】
特定の実施形態において、組換え細胞は、内因性アシル−ACPチオエステラーゼ;例えば長さC18の脂肪酸アシル−ACP鎖(例えば、ステアリン酸塩(C18:0)又はオレイン酸塩(C18:1)、又はC8:0〜C16:0脂肪酸の加水分解に対して選択性を有するFatA又はFatBアシル−ACPチオエステラーゼの活性を低下させる働きをする核酸を含む。内因性アシル−ACPチオエステラーゼの活性は、ノックアウト又はノックダウン手法により低下させ得る。ノックダウンは、例えば、1つ以上のRNAヘアピン構築物の使用によるか、プロモーターハイジャック法(低活性又は誘導性プロモーターを内在性遺伝子の天然プロモーターに代える置換)によるか、又は誘導性プロモーターの制御下にある同様の又は同一の遺伝子の導入と組み合わせた遺伝子ノックアウトにより実現され得る。国際公開第2015/051319号パンフレットは、Prototheca株の操作を記載しており、ここでは内因性脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ(FATA1)の2つの対立遺伝子がノックアウトされている。Prototheca moriformis FATA1の活性が、外因性FatA又はFatBアシル−ACPチオエステラーゼの発現によって補完された。国際公開第2015/051319号パンフレットは、ProtothecaにおけるFATAの発現を低下させるRNAヘアピン構築物の使用について詳述し、これはパルミチン酸がより少なく、且つオレイン酸がより多い、変化した脂肪酸プロフィールをもたらした。
【0055】
従って、油産生細胞は、II型脂肪酸生合成経路を有する生物のものを含め、脂肪酸の補給又は遺伝的補足の非存在下における細胞の生存能力を消失させるか又は厳しく制限する程度に至るまでの、対立遺伝子をコードするアシル−ACP−チオエステラーゼのノックアウト又はノックダウンを有することができる。このような株を使用して、アシル−ACP−チオエステラーゼ導入遺伝子を発現する形質転換体を選択することができる。それに代えて、又は加えて、この株を使用して外因性アシル−ACP−チオエステラーゼを完全に移し替え、かかる細胞によって産生される細胞油の劇的に異なる脂肪酸プロフィールを提供することができる。例えば、FATA発現を完全に又はほぼ完全に消失させ、中鎖脂肪酸を産生するFATB遺伝子に置き換えることができる。或いは、ステアリン酸又はオレイン酸(C18)と比べてパルミチン酸(C16)に特異性を有する内在性FatA遺伝子を有する生物を、ステアリン酸(C18:0)に対してより高い相対的特異性を有する外来性FatA遺伝子に置き換えるか、又はオレイン酸(C18:1)に対してより高い相対的特異性を有する外来性FatA遺伝子に置き換えることができる。特定の具体的な実施形態において、このような内因性アシル−ACPチオエステラーゼの二重ノックアウトを有する形質転換体は、50、60、70、80、又は90%超のカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、又はパルミチン酸、又は18炭素未満の鎖長の全脂肪酸を有する細胞油を産生する。かかる細胞は、ステアリン酸又はオレイン酸などのより長鎖の脂肪酸の補給、又はFatA遺伝子を調節する誘導性プロモーターの場合には成長許容的な状態と成長制限的な状態との間での環境条件の切り替えを必要とし得る。
【0056】
ある実施形態では、油産生細胞は培養される(例えば、バイオリアクター内で)。細胞は、1種以上の脂肪酸に関して完全に栄養要求性であるか又は部分的に栄養要求性(すなわち、致死性又は合成病(lethality or synthetic sickness))である。細胞数を増やすため、脂肪酸を補給して細胞を培養し、次に細胞に油を蓄積させる(例えば乾燥細胞重量基準で少なくとも40%まで)。或いは、細胞が、環境条件に基づき活性を切り替えることのできる調節可能な脂肪酸合成遺伝子を含み、第1の細胞分裂期間における環境条件が脂肪酸の産生に有利であり、且つ第2の油蓄積期間における環境条件が脂肪酸の産生に不利である。誘導性遺伝子の場合、その誘導性遺伝子の調節は、限定なしに環境pHによって(例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットに記載されるとおりのAMT3プロモーターを使用することにより)媒介され得る。
【0057】
これらの補給又は調節方法のいずれかを適用する結果として、最適な細胞増殖に必須の1つ以上の脂肪酸の量が少ない細胞から細胞油が得られ得る。得ることのできる油の具体的な例としては、ステアリン酸、リノール酸及び/又はリノレン酸が低いものが挙げられる。
【0058】
これらの細胞及び方法は、低多価不飽和油に関連してこの直後の章にに例示される。特定の実施例については、例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットにおいて見ることができる。
【0059】
同様に、脂肪酸要求株は、SAD、FAD、KASIII、KASI、KASII、KCS、エロンガーゼ、GPAT、LPAAT、DGAT又はAGPAT又はPAPをコードするものを含め、他の脂肪酸合成遺伝子において作製することができる。これらの栄養要求株を使用して補足遺伝子を選択し、又はそれらの遺伝子の天然発現を消失させて所望の外来遺伝子に有利になるようにして、油産生細胞により産生される細胞油の脂肪酸プロフィール、位置特異的プロフィール、又はTAGプロフィールを変えることもできる。
【0060】
従って、本発明のある実施形態には、油/脂肪の生成方法がある。この方法は、ある脂肪酸が存在することにより細胞数を増加させるための細胞分裂に対して許容的な第1の一連の条件下にある成長期間に組換え油産生細胞を培養する工程と、細胞分裂に対して制限的な、しかしその脂肪酸が欠乏している油の産生に対しては許容的な第2の一連の条件下にある油産生期間に細胞を培養する工程と、細胞から油を抽出する工程とを含み、ここで細胞は、脂肪酸合成酵素の活性を抑制する働きをする突然変異又は外来核酸を有し、その酵素は場合によりステアロイル−ACPデサチュラーゼ、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼ、又はケトアシル−ACPシンターゼである。細胞により産生される油は、脂肪酸が少なくとも50、60、70、80、又は90%欠乏していてもよい。細胞は従属栄養培養することができる。細胞は、従属栄養培養又は独立栄養培養される微細藻類細胞であってよく、乾燥細胞重量基準で少なくとも40、50、60、70、80、又は90%の油を産生し得る。
【0061】
IV.低多価不飽和細胞油
本発明の実施形態において、細胞により産生される細胞油は、極めて低濃度の多価不飽和脂肪酸を有する。結果として、細胞油は、酸化安定性を含めた安定性の向上を備え得る。細胞油は、下述する位置特異的又は立体特異的な(stererospecific)油、高ステアリン酸油、又は高中鎖油を含め、室温で液体又は固体であっても、又は液体油と固体油とのブレンドであってもよい。酸化安定性は、規定の温度でAOCS Cd 12b−92標準試験を使用したランシマット方法により計測することができる。例えば、OSI(酸化安定性指数)試験を110℃〜140℃の温度で実行することができる。油は、1つ以上の脂肪酸デサチュラーゼの活性が低下するように遺伝子操作された細胞(例えば、上記又は本明細書の他の部分で言及しているプラスチド微生物細胞のいずれか)を培養することにより生成される。例えば、細胞は、オレイン酸(18:1)からリノール酸(18:2)への変換に関与する1つ以上の脂肪酸アシルΔ12デサチュラーゼ及び/又はリノール酸(18:2)からリノレン酸(18:3)への変換に関与する1つ以上の脂肪酸アシルΔ15デサチュラーゼの活性が低下するように遺伝子操作されてもよい。コード領域又は調節領域にあるデサチュラーゼをコードする遺伝子の1つ以上の対立遺伝子のノックアウト又は突然変異、RNAi、siRNA、miRNA、dsRNA、アンチセンス、及びヘアピンRNA技術を含めた、RNA転写、又は酵素の翻訳の阻害を含め、様々な方法を使用してデサチュラーゼを阻害することができる。阻害タンパク質又はデサチュラーゼに特異的な他の物質を産生する外来遺伝子の導入を含め、当該技術分野において公知の他の技法もまた用いることができる。具体的な例では、一方の脂肪酸アシルΔ12デサチュラーゼ対立遺伝子のノックアウトが第2の対立遺伝子のRNAレベルの阻害と組み合わされる。
【0062】
特定の実施形態において、細胞における脂肪酸デサチュラーゼ(例えば、Δ12脂肪酸デサチュラーゼ)活性は、細胞を培養できないか又は培養することが困難になる(例えば、細胞分裂速度が10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、97又は99%より大きく低下する)ような程度まで減少させる。かかる条件の実現は、デサチュラーゼの複数の遺伝子コピー(例えば2、3、4個又はそれを超える)又はそれらの遺伝子産物の活性のノックアウト、又は有効な抑制を伴い得る。特定の実施形態は、細胞数を増加させるため脂肪酸又は脂肪酸混合物を補給した完全な又は部分的な脂肪酸要求株の細胞培養での培養と、次に細胞に油を(例えば細胞重量基準で少なくとも40%まで)蓄積させることを含む。或いは、細胞は、活性を切り替えることのできる調節可能な脂肪酸合成遺伝子を含む。例えば、調節は環境条件に基づくことができ、第1の細胞分裂期間における環境条件が脂肪酸の産生に有利であり、且つ第2の油蓄積期間における環境条件が油の産生に不利である。例えば、培養培地pH及び/又は窒素レベルを環境制御として使用して脂質経路遺伝子の発現を切り替え、合成酵素活性が高い又は低い状態を生じさせることができる。かかる細胞の例は、例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットに記載される。
【0063】
特定の実施形態では、細胞内のリノール酸濃度の調節を用いて細胞が培養される。詳細には、リノール酸が存在するために細胞数の増加に許容的な第1の条件下で細胞を培養し、次にリノール酸飢餓により特徴付けられる、従って細胞分裂に対して抑制的な、しかし油の蓄積には許容的な第2の条件下で細胞を培養することにより細胞油が産生される。例えば、培養培地に添加したリノール酸の存在下で細胞のシード培養物が作られてもよい。例えば、脂肪酸アシルΔ12デサチュラーゼの2つの対立遺伝子を消失させたためにリノール酸産生を欠くPrototheca株(すなわちリノール酸要求株)のシード培養物に対し、0.25g/Lになるようなリノール酸の添加が、の細胞分裂を野生型細胞と同等のレベルに支持するのに十分であった。場合により、次にリノール酸を細胞に消費させるか、又は他の方法で除去又は希釈してもよい。次に細胞は油産生期間に切り替えられる(例えば、国際公開第2010/063032号パンフレットに記載されるとおり窒素制限条件下で糖を供給する)。意外にも、油の産生はリノール酸産生又は補給の非存在下であっても起こることが認められており、これは偏性従属栄養生物の油産生微細藻類Protothecaで実証されるとおりであるが、しかし概して他の油産生微細藻類、微生物、又はさらには多細胞生物(例えば、培養植物細胞)に適用可能である。これらの条件下で、細胞の含油量は、乾燥細胞重量基準で約10、20、30、40、50、60、70、80、90%又はそれを超えるまで増加し得る一方、産生される油は、油中の合計トリアシルグリセロール脂肪酸に対する百分率として、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%又はそれ以下の多価不飽和脂肪酸(例えば;リノール酸+リノレン酸)プロフィールを有し得る。例えば、細胞の含油量が乾燥細胞重量基準で50%又はそれを超え、産生される油のトリグリセリドが3%未満の多価不飽和脂肪酸であってもよい。
【0064】
これらの油はまた、細胞分裂期間中はリノール酸を産生する細胞機構を用いることにより、しかし脂質産生期間中はリノール酸を減らして又はそれなしに、リノール酸を培養物に補足する必要なしに(又はその必要性を低減して)生成することができる。リノール酸を産生する細胞機構は、油産生期間中に産生するリノール酸が実質的に少なくなるように調節可能であり得る。この調節は、1つ又は複数のデサチュラーゼ遺伝子の転写調節か又は阻害物質の産生の調節若しくは調節(例えば、調節されたヘアピンRNA/RNAi産生)を介し得る。例えば、脂肪酸Δ12デサチュラーゼ活性の大部分、好ましくは全てを、細胞分裂期間はデサチュラーゼを発現するが油蓄積期間中はそれが低下し又は消失するように調節された調節可能なプロモーター下に置くことができる。この調節は、本明細書の例に記載されるとおり、pH、及び/又は窒素濃度などの細胞培養条件、又は他の環境条件と関係付けることができる。実際には、条件は、物質(例えば、酸又は塩基の添加によるプロトン)を添加若しくは除去するか、又は細胞に物質(例えば、窒素供給栄養素)を消費させて、デサチュラーゼ活性の調節に所望の切り替えを生じさせることにより操作され得る。
【0065】
デサチュラーゼ活性を調節するための他の遺伝的又は非遺伝的方法もまた用いることができる。例えば、油産生期間における多価不飽和脂肪酸の産生を阻害するのに有効な方法で培養培地にデサチュラーゼの阻害薬を添加することができる。
【0066】
従って、本発明の特定の実施形態には、環境条件による組換え調節エレメントの制御下にある、調節可能なデルタ12脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を有する組換え細胞を提供する工程を含む方法がある。細胞は、細胞増殖に有利な条件下で培養される。所与の細胞密度に達したところで細胞培地が変更され、細胞が栄養制限(例えば利用可能な窒素の減少)によって脂質産生モードに切り替えられる。脂質産生期間の間は、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼの活性が下方調節されるような環境条件である。次に細胞が回収され、場合により油が抽出される。脂質産生期間はデルタ12脂肪酸デサチュラーゼが低レベルであるため、油は多価不飽和脂肪酸が少なくなり、酸化安定性が向上する。場合により、細胞は従属栄養培養され、場合により微細藻類細胞である。
【0067】
これらのデサチュラーゼ調節方法の1つ以上を用いると、特にバイオリアクター(例えば1000L超)における大規模培養ではこれまで得ることができなかったと考えらる細胞油を得ることが可能となる。油は、油中の合計トリアシルグリセロール脂肪酸の面積パーセントとして、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.3%、0.2%、又はそれ以下の多価不飽和脂肪酸レベルを有し得る。
【0068】
かかる低レベルの多価不飽和物を有することの一つの帰結は、油が酸化に対して極めて安定することである。実際、ある場合に油は、これまでに知られているどの細胞細胞油と比べても高い安定性を有し得る。特定の実施形態では、油は抗酸化剤の添加なしに、110℃で、AOCS Cd 12b−92.ランシマット試験条件下10時間、15時間、20時間、30時間、40時間、50時間、60時間、又は70時間までに未だ電気伝導度の変曲点に達しない安定性を有する。極めて安定した油について、かかる試験では、かかる長い試験期間により蒸発が起こるため、水の補充が必要となり得ることが注記される。例えば油は、抗酸化剤の添加なしに110℃で40〜50時間又は41〜46時間のOSI値を有し得る。抗酸化剤(食品に好適なもの等)が添加される場合、計測されるOSI値はさらに高くなり得る。例えば、トコフェロール(100ppm)及びパルミチン酸アスコルビル(500ppm)又はPANA及びパルミチン酸アスコルビルを添加すると、かかる油は、ランシマット試験により計測したとき、110℃で100又は200時間を超える酸化安定性指数(OSI値)を有し得る。別の例において、1050ppmの混合トコフェロール及び500pmのパルミチン酸アスコルビルを、1%未満のリノール酸又は1%未満のリノール酸+リノレン酸を含む油に添加する;結果として、この油は110℃で1、2、3、4、5、6、7、8、又は9、10、11、12、13、14、15、又は16、20、30、40又は50日、5〜15日、6〜14日、7〜13日、8〜12日、9〜11日、約10日、又は約20日間安定である。油はまた、130℃で1、2、3、4、5、6、7、8、又は9、10、11、12、13、14、15、又は16、20、30、40又は50日、5〜15日、6〜14日、7〜13日、8〜12日、9〜11日、約10日、又は約20日間安定であり得る。特定の例では、かかる油は、100時間を超えて(観察時約128時間)安定であることが認められた。さらなる実施形態において、抗酸化剤を添加しない細胞油の120℃でのOSI値は15時間又は20時間より長く、又は10〜15、15〜20、20〜25、又は25〜50時間、又は50〜100時間の範囲である。
【0069】
ある例では、これらの方法を用いると、微細藻類細胞の含油量は乾燥細胞重量基準で40〜約85%であり、油の脂肪酸プロフィールにおける多価不飽和脂肪酸は油の脂肪酸プロフィールの0.001%〜3%であり、場合により抗酸化剤の添加なしに110℃で少なくとも20時間のOSI誘導時間を有する細胞油を生じる。さらに別の例には、油産生細胞由来の細胞油のRBD処理により生成される細胞油があり、この油は0.001%〜2%の多価不飽和脂肪酸を含み、抗酸化剤の添加なしに110℃で30時間を超えるOSI誘導時間を有する。さらに別の例には、油産生細胞由来の細胞油のRBD処理により産生される細胞油があり、この油は0.001%〜1%の多価不飽和脂肪酸を含み、抗酸化剤の添加なしに110℃で30時間を超えるOSI誘導時間を有する。
【0070】
別の特定の実施形態には、上述の方法によって生成される多価不飽和度が低下した油がある。この油は、PANA及びパルミチン酸アスコルビルなどの抗酸化剤と組み合わされる。例えば、かかる油を0.5%のPANA及び500ppmのパルミチン酸アスコルビルと組み合わせると、油が130℃で約5日又は110℃で21日のOSI値を有したことが認められた。これらの注目に値する結果は、この油が極めて安定しているのみならず、これらの2つの抗酸化剤がトリグリセリド油の極めて強力な安定化剤であり、これらの抗酸化剤の組み合わせが、安定な生分解性潤滑剤(例えば、ジェットエンジン潤滑剤)の製造における適用性を含め、普遍的な適用性を有し得ることを示唆している。特定の実施形態において、脂肪酸アシルΔ12デサチュラーゼの遺伝子操作により、操作しない株と比べて、OSIの(例えば、110℃における)2〜30倍、又は5〜25倍、又は10〜20倍の増加がもたらされる。油は、上記に記載したとおりのことを含め、細胞のデサチュラーゼ活性を抑制することにより生成することができる。
【0071】
本発明の油で使用するのに好適な抗酸化剤としては、アルファ、デルタ、及びガンマトコフェロール(ビタミンE)、トコトリエノール、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、リポ酸、尿酸、β−カロチン、リコペン、ルテイン、レチノール(ビタミンA)、ユビキノール(補酵素Q)、メラトニン、レスベラトロール、フラボノイド、ローズマリー抽出物、没食子酸プロピル(PG)、第三ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、N,N’−ジ−2−ブチル−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、及びフェニル−α−ナフチルアミン(PANA)が挙げられる。
【0072】
デサチュラーゼの改変に加え、関連する実施形態では、全体を通して記載するとおり、鎖長特異性が変化したアシル−ACPチオエステラーゼの導入又は置換及び/又はKAS、SAD、LPAAT、又はDGAT遺伝子をコードする内在性又は外来性遺伝子の過剰発現を含め、油の特性をさらに調整するため他の遺伝子改変が作製され得る。例えば、高いオレイン酸レベルを生じる株が、低レベルの多価不飽和物も生じ得る。かかる遺伝子改変には、外来性SAD遺伝子の導入によってステアロイル−ACPデサチュラーゼ(SAD)の活性を増加させること、外来性KASII遺伝子の導入によってエロンガーゼ活性を増加させること、及び/又はFATA遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることが含まれ得る。
【0073】
特定の実施形態では、低多価不飽和物の高オレイン酸細胞油が生成され得る。例えば、この油は、60、70、80、90、又は95%超のオレイン酸及び5、4、3、2、又は1%未満の多価不飽和物を含む脂肪酸プロフィールを有し得る。関連する実施形態では、3%以下の多価不飽和脂肪酸であって60%超のオレイン酸、2%未満の多価不飽和脂肪酸且つ70%超のオレイン酸、1%未満の多価不飽和脂肪酸且つ80%超のオレイン酸、又は0.5%未満の多価不飽和脂肪酸且つ90%超のオレイン酸を有する油を産生するため、脂肪酸Δ12デサチュラーゼ活性及び場合により脂肪酸Δ15デサチュラーゼを低下させる働きをする組換え核酸を有する細胞により細胞油が生成される。オレイン酸を増加させる一つの方法は、FATAアシル−ACPチオエステラーゼの発現を低下させるとともに、場合によりKAS II遺伝子を過剰発現させる働きをする組換え核酸を使用することであることが分かっている;かかる細胞は、75%以上のオレイン酸を含む油を産生することができる。或いは、FATAノックアウト又はノックダウンなしにKASIIの過剰発現を用いることができる。オレイン酸レベルは、上記の方法を用いてデルタ12脂肪酸デサチュラーゼ活性を低下させ、それにより不飽和のリノール酸及びリノレン酸に変換されるオレイン酸の量を減少させることにより、さらに増加させることができる。従って、産生される油は、少なくとも75%のオレイン酸及び高々3%、2%、1%、又は0.5%のリノール酸を含む脂肪酸プロフィールを有し得る。関連する例では、油は、80〜95%のオレイン酸及び約0.001〜2%のリノール酸、0.01〜2%のリノール酸、又は0.1〜2%のリノール酸を有する。別の関連する実施形態では、油は、10%未満のパルミチン酸、85%超のオレイン酸、1%以下の多価不飽和脂肪酸、及び7%未満の飽和脂肪酸を有する細胞油が微生物によって産生されるように油産生細胞(例えば、微細藻)を培養することにより産生される。例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットを参照されたく、ここではかかる油が、FAD及びFATAノックアウトに加えて外来性KASII遺伝子の発現を有する微細藻で産生される。かかる油は低い凝固点を有して安定性に優れ、食品において、フライ用、燃料用に、又は化学的応用において有用である。さらに、これらの油は、時間が経過しても変色し難い傾向を呈し得る。例示的な化学的応用では、高オレイン酸油を使用して化学品が製造される。油中のトリグリセリドのオレイン酸基のオレイン酸二重結合をエポキシ化又はヒドロキシル化してポリオールを作製することができる。エポキシ化油又はヒドロキシル化油は、様々な用途で用いられ得る。かかる用途の一つは、ヒドロキシル化大豆油又はヒマシ油で実施されているとおりの、ヒドロキシル化トリグリセリドとイソシアネートとの縮合によるポリウレタン(ポリウレタンフォームを含む)の製造である。ヒドロキシル化及びポリウレタン縮合化学の例については、例えば、米国特許出願公開第2005/0239915号明細書、米国特許出願公開第2009/0176904号明細書、米国特許出願公開第2005/0176839号明細書、米国特許出願公開第2009/0270520号明細書、及び米国特許第4,264,743号明細書及びZlatanic,et al,Biomacromolecules 2002,3,1048−1056(2002)を参照のこと。好適なヒドロキシル形成反応としては、脂肪酸の1つ以上の二重結合のエポキシ化と、続く水(ジオールの形成)、アルコール(ヒドロキシルエーテルの形成)、又は酸(ヒドロキシルエステルの形成)による酸触媒エポキシド開環が挙げられる。バイオベースのポリウレタンの製造において高オレイン酸/低多価不飽和油を使用することには、複数の利点がある:(1)ポリウレタンフォームの保存寿命、色又は匂いが向上し得る;(2)多価不飽和物により生じる不要な副反応がないため、製品の再現性が向上し得る;(3)多価不飽和物がないため、より高度にヒドロキシル化反応が起こり、従ってポリウレタン製品の構造特性を向上させることができる。
【0074】
本明細書に記載される低多価不飽和油又は高オレイン酸/低多価不飽和油は、有利には、黄変が望ましくない化学的応用において使用され得る。例えば、トリグリセリドに由来するトリグリセリド脂肪酸から作られるペンキ又はコーティングにおいて、黄変は望ましくないものであり得る。黄変は、多価不飽和脂肪酸及びトコトリエノール及び/又はトコフェロールが関わる反応によって生じ得る。従って、油産生微生物において低レベルのトコトリエノールを含む高い安定性の油を生成することは、油を使用して作られる化学組成物の高い色安定性を向上させるのに有利であり得る。一般的に使用される植物油と対照的に、油産生微生物を適切に選択することにより、これらの実施形態の細胞油は1g/L以下のトコフェロール及びトコトリエノールレベルを有し得る。特定の実施形態において、細胞油は、多価不飽和脂肪酸が2%未満であり、且つトコフェロール、トコトリエノール又はトコフェロールとトコトリエノールとの合計が1g/L未満である脂肪酸プロフィールを有する。別の特定の実施形態において、細胞油は、多価不飽和脂肪酸が1%未満であり、且つトコフェロール、トコトリエノール又はトコフェロールとトコトリエノールとの合計が0.5g/L未満である脂肪酸プロフィールを有する。
【0075】
高安定性(低多価不飽和)の細胞油のいずれか又はその誘導体は、食品、薬物、ビタミン、ニュートラシューティカルズ、パーソナルケア製品又は他の製品の配合に使用することができ、特に酸化の影響を受け易い製品に有用である。例えば、高安定性細胞油(例えば、3%、2%又は1%以下の多価不飽和物)を使用して、多価不飽和脂肪酸に関連するフリーラジカル反応がないため保存寿命が増加した日焼け防止剤(例えば、アボベンゾン、ホモサレート、オクチサレート、オクトクリレン又はオキシベンゾンの1つ以上を有する組成物)又はレチノイド顔用クリームを配合することができる。例えば、54℃で4週間の加速劣化後に残る色、匂い、官能特性又は%活性化合物の点で、保存寿命が増加し得る。高安定性の油はまた、高温安定性に優れた潤滑剤としても使用することができる。安定性に加え、油は生分解性であってもよく、これはまれな組み合わせの特性である。
【0076】
別の関連する実施形態では、細胞油の脂肪酸プロフィールのC8〜C16脂肪酸を、さらなる遺伝子改変によって、例えば短鎖乃至中鎖選択的アシル−ACPチオエステラーゼの過剰発現又は本明細書に記載される他の改変によって上昇させる。これらの実施形態における低多価不飽和油は、酸化安定性の向上が求められるものを含め、様々な工業、食品、又は消費者製品に使用することができる。食品用途では、油は高温での寿命が長い、又は保存寿命が長いことで、フライに用いられ得る。
【0077】
油がフライに使用される場合、油の安定性が高いことで、抗酸化剤及び/又は消泡剤(例えばシリコーン)を添加しないフライが可能となり得る。消泡剤を含まない結果として、フライ食品による油の吸収が少なくなり得る。燃料用途でトリグリセリドとして、或いはバイオディーゼル若しくは再生可能ディーゼルに処理されて(例えば、国際公開第2008/151149号パンフレット、国際公開第2010/063032号パンフレット、及び国際公開第2011/150410号パンフレットを参照のこと)使用される場合、高い安定性により長期保存が促進され、又は高温での使用が可能となり得る。例えば、高安定性の油から作製される燃料は、補助発電機における使用のため、1年超又は5年超にわたり保存することができる。フライ油は200℃より高い発煙点、及び0.1%未満の遊離脂肪酸を有し得る(細胞油として又は精製後のいずれか)。
【0078】
低多価不飽和油は、以下に記載するとおり生成されるものを含めた、β結晶又はβプライム結晶を形成するものなどの構造化脂肪を含む食品油とブレンドされてもよい。このような油はまた、液体油とブレンドすることもできる。リノール酸を有する油、例えばトウモロコシ油と混合される場合、ブレンドのリノール酸レベルは、高オレイン酸ヒマワリ油などの高オレイン酸植物油のレベルに近付き得る(例えば、約80%オレイン酸及び8%リノール酸)。
【0079】
低多価不飽和細胞油のブレンドは、他の油とエステル交換させることができる。例えば、油は化学的又は酵素的にエステル交換されてもよい。特定の実施形態において、本発明の実施形態に係る低多価不飽和油は、その脂肪酸プロフィール中少なくとも10%のオレイン酸及び5%未満の多価不飽和物を有し、sn−1及びsn−2トリアシルグリセロール位置に特異的な酵素を使用して高飽和油(例えば水素化大豆油又は高ステアリン酸濃度の他の油)と酵素的にエステル交換される。この結果、ステアリン酸−オレイン酸−ステアリン酸(SOS)を含む油となる。エステル交換の方法は当該技術分野において公知である;例えば、「Enzymes in Lipid Modification(脂質改変における酵素)」,Uwe T.Bornschuer,ed.,Wiley_VCH,2000,ISBN 3−527−30176−3を参照のこと。
【0080】
高安定性の油は、スプレー油として使用することができる。例えば、レーズンなどの乾燥果実に、多価不飽和物が5、4、3、2、又は1%未満である高安定性油を吹き付けてもよい。結果として、他の場合には多価不飽和物の存在によって生じ得るノズルにおける重合又は酸化生成物の蓄積が原因となって使用スプレーノズルが詰まることが少なくなる。
【0081】
さらなる実施形態において、以下に記載するものなどのSOSが高い油は、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼのノックダウン又は調節により安定性を向上させることができる。
【0082】
任意選択で、FADcプロモーターが調節される場合、それは、低pHで作動可能なプロモーター(例えば、pH7.0での培養からpH5.0での培養に切り換えたときFADcの転写レベルが半分未満に低下するもの)で調節することができる。プロモーターは低窒素条件下での培養に感受性を有することができ、従ってプロモーターは窒素充満条件下で活性であり、窒素飢餓条件下で不活性である。例えば、プロモーターは、窒素飢餓時に5、10、15倍又はそれ以上のFADc転写物レベルの低下を生じさせ得る。プロモーターはpH5.0で作動可能であるため、より最適なインベルターゼ活性が達成され得る。例えば、細胞は、インベルターゼの存在下に6.5、6.0又は5.5未満のpHで培養することができる。細胞はFADcノックアウトを有し、調節FADcの相対的遺伝子投与量は増加し得る。任意選択で、インベルターゼは細胞によって(天然に又は外来性インベルターゼ遺伝子に起因して)産生される。プロモーターは窒素飢餓条件下で活性が低いため、細胞増殖段階における最適な細胞増殖を許容しない脂質産生期間中に脂肪酸産生が進行し得る。詳細には、低リノール酸油が産生され得る。細胞は、乾燥細胞重量基準で少なくとも20%脂質の油含有量になるまで培養することができる。油は、リノール酸が5、4、3、2、1、又は0.5、0.2、又は0.1%未満の脂肪酸プロフィールを有し得る。国際公開第2015/051319号パンフレットは、かかるプロモーターの発見について記載する。
【0083】
V.位置特異的及び立体特異的油/脂肪
ある実施形態では、組換え細胞は、所与の位置特異的組成を有する細胞脂肪又は油を産生する。結果として、細胞は、所与の多形形態の結晶を(例えば、融解温度を上回るまで加熱し、次に脂肪の融解温度未満に冷却するとき)形成する傾向を有するトリグリセリド脂肪を産生することができる。例えば、脂肪は、テンパリングするかしないかに関わらず、β型又はβ’型の結晶多形(例えばX線回折解析によって決定するとき)を形成する傾向を有し得る。脂肪は規則性脂肪であってもよい。特定の実施形態において、脂肪は、冷却するとβ結晶或いはβ’結晶を直接形成し得る;或いは、脂肪はβ型を経てβ’型へと進み得る。かかる脂肪は、食品用途での構造化ラミネート用又はコーティング用脂肪として使用することができる。この細胞脂肪は、キャンディー、ダーク又はホワイトチョコレート、チョコレート風味の糖菓、アイスクリーム、マーガリン又は他のスプレッド、クリームの詰め物、ペストリー、又は他の食品に添合することができる。場合により、脂肪は(室温で)半固体であってもよいが、しかし人工的に作られたトランス脂肪酸は含まない。かかる脂肪はまた、スキンケア及び他の消費者製品又は工業製品においても有用であり得る。
【0084】
他の実施形態にあるとおり、脂肪は、Chlorophyta門、Trebouxiophytae綱、Chlorellales目、又はChlorellacae科の従属栄養真核微細藻類を含めたプラスチド細胞の遺伝子操作によって生成され得る。好ましくは、細胞は油産生性であり、乾燥細胞重量基準で少なくとも40%の油を蓄積する能力を有する。細胞は、Prototheca moriformis又はPrototheca zopfiiを含めたProtothecaの種などの、偏性従属栄養生物であってもよい。脂肪はまた、独立栄養性の藻類又は植物においても産生され得る。場合により、細胞は、油を産生するためにショ糖を利用する能力を有し、国際公開第2008/151149号パンフレット、国際公開第2010/063032号パンフレット、国際公開第2011/150410号パンフレット、国際公開第2011/150411号パンフレット、及びPCT/US12/23696号明細書に記載されるとおり、ショ糖を代謝させるため組換えインベルターゼ遺伝子が導入され得る。ここで言及する全ての遺伝子と同じく、インベルターゼはコドン最適化され、細胞の染色体に組み込まれてもよい。培養された組換え微細藻類は、ハードストック脂肪の融点未満の温度でハードストック脂肪を産生し得ることが分かっている。例えば、Prototheca moriformisは、15〜30℃の範囲の温度で50%超のステアリン酸を有するトリグリセリド油を従属栄養的に産生するように変化させることができ、ここでこの油は、30℃に保たれると凝固する。
【0085】
ある実施形態では、細胞脂肪は、全体的な構造[飽和脂肪酸(sn−1)−不飽和脂肪酸(sn−2)−飽和脂肪酸(sn−3)]の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%の脂肪を有する。これは以下にSat−Unsat−Sat脂肪として示される。特定の実施形態において、この構造中の飽和脂肪酸は、好ましくはステアリン酸又はパルミチン酸であり、不飽和脂肪酸は好ましくはオレイン酸である。結果として、脂肪は主にβ又はβ’多形結晶、又はそれらの混合物を形成し、対応する物理的特性を、食品又はパーソナルケア製品での使用に望ましいものを含めて有し得る。例えば、脂肪は、食品用には口腔体温で溶解し、又はクリーム、ローション又は他のパーソナルケア製品用には皮膚温度で(例えば、30〜40、又は32〜35℃の融解温度)溶解し得る。場合により、脂肪は、2L又は3Lラメラ構造を(例えば、X線回折解析によって決定するとき)有し得る。場合により、脂肪はテンパリングなしにこの多形形態を形成し得る。
【0086】
特定の関連する実施形態において、細胞脂肪トリグリセリドは高濃度のSOSを有する(すなわち、グリセロール骨格の末端sn−1位及びsn−3位にステアリン酸を含み、sn−2位にオレイン酸を含むトリグリセリド)。例えば、脂肪は、少なくとも50、60、70、80又は90%のSOSを含むトリグリセリドを有し得る。ある実施形態では、脂肪は、少なくとも80%のSOSのトリグリセリドを有する。場合により、sn−2結合脂肪酸の少なくとも50、60、70、80又は90%が不飽和脂肪酸である。特定の実施形態では、sn−2結合脂肪酸の少なくとも95%が不飽和脂肪酸である。加えて、SSS(トリステアリン酸)レベルは20、10又は5%未満であってもよく、及び/又はC20:0脂肪酸(アラキジン酸)レベルは6%未満であってもよく、場合により1%超(例えば、1〜5%)であってもよい。例えば、特定の実施形態において、組換え細胞によって産生される細胞脂肪は、少なくとも70%のSOSトリグリセリドを有し、少なくとも80%がsn−2不飽和脂肪酸アシル部分である。別の特定の実施形態において、組換え細胞によって産生される細胞脂肪は、少なくとも80%のSOSトリグリセリドを含み、且つ少なくとも95%がsn−2不飽和脂肪酸アシル部分であるTAGを有する。さらに別の特定の実施形態において、組換え細胞によって産生される細胞脂肪は、少なくとも80%のSOSを含み、少なくとも95%がsn−2不飽和脂肪酸アシル部分であり、且つ1〜6%がC20脂肪酸であるTAGを有する。
【0087】
さらに別の特定の実施形態において、細胞脂肪の脂肪酸プロフィールにおけるステアリン酸塩とパルミチン酸塩との合計割合は、オレイン酸塩の割合の2倍±10、20、30又は40%である[例えば、(%P+%S)/%O=2.0±20%]。場合により、この脂肪のsn−2プロフィールは、少なくとも40%、及び好ましくは少なくとも50、60、70、又は80%オレイン酸である(sn−2位で)。また場合により、この脂肪は少なくとも40、50、60、70、80、又は90%SOSであってよい。場合により、脂肪は1〜6%のC20脂肪酸を含む。
【0088】
これらの実施形態のいずれにおいても、高SatUnsatSat脂肪は、β’多形結晶を形成する傾向を有し得る。ココアバターのようなこれまでに利用可能な植物脂肪とは異なり、この細胞によって産生されるSatUnsatSat脂肪はテンパリングなしにβ’多形結晶を形成し得る。ある実施形態では、融解温度を上回るまで加熱して、融解温度未満に3、2、1、又は0.5時間冷却すると、多形が形成される。関連する実施形態において、60℃を上回るまで加熱して、10℃に3、2、1、又は0.5時間冷却すると、多形が形成される。
【0089】
様々な実施形態において、脂肪は、融解温度を上回って加熱して融解温度未満に冷却したときβ型、β’型、又は両方の多形を形成し、場合により融解温度を上回るまで加熱して、次に10℃で冷却したとき、5、4、3、2、1、0.5時間以内又はそれ未満で少なくとも50%の多形平衡まで進む。脂肪はココアバターより速い速度でβ’結晶を形成し得る。
【0090】
場合により、任意のこれらの脂肪が、2モル%未満のジアシルグリセロール、又は2モル%未満のモノアシルグリセロールとジアシルグリセロールとの合計を有し得る。
【0091】
ある実施形態では、脂肪は30〜60℃、30〜40℃、32〜37℃、40〜60℃又は45〜55℃の融解温度を有し得る。別の実施形態において、脂肪は20℃で40〜50%、15〜25%、又は15%未満の固形脂肪含有量(SFC)を有し、及び/又は35℃で15%未満のSFCを有し得る。
【0092】
脂肪を作るために使用される細胞は、SatUnsatSat脂肪の形成に有利となるように、細胞トリグリセリドにおける脂肪酸の飽和対不飽和比を改変する働きをする組換え核酸を含み得る。例えば、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(SAD)遺伝子のノックアウト又はノックダウンを用いて、オレイン酸よりステアリン酸の形成に有利となるようにすることができ、又は外来性中鎖選択的アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の発現により、中鎖飽和レベルを増加させることができる。或いは、SAD酵素をコードする遺伝子を過剰発現させて不飽和物を増加させることができる。
【0093】
特定の実施形態において、細胞は、細胞のステアリン酸レベルを上昇させる働きをする組換え核酸を有する。結果として、SOSの濃度が増加し得る。国際公開第2015/051319号パンフレットは、Brassica napus C18:0選択的チオエステラーゼが過剰発現する結果として、組換え微生物の位置特異的プロフィールがSatUnsatSatトリグリセリドPOP、POS、及びSOSについて高濃度化されることを実証する。細胞のステアリン酸を増加させるさらなる方法は、オレイン酸レベルを低下させることである。高オレイン酸レベルを(例えば、ステアリン酸レベルの2分の1を超えて)有する細胞については、オレイン酸レベルを低下させる働きをする組換え核酸又は古典的な遺伝子突然変異もまた用いることができる。例えば、細胞は、オレイン酸を遊離させるアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1つ以上のFATA対立遺伝子、及び/又はステアロイルACPデサチュラーゼ(SAD)をコードする1つ以上の対立遺伝子にノックアウト、ノックダウン、又は突然変異を有し得る。国際公開第2015/051319号パンフレットは、ヘアピンRNAを使用したSAD2遺伝子産物発現の阻害によるPrototheca moriformis(UTEX 1435)における37%ステアリン酸の脂肪酸プロフィールの生成について記載し、一方で野生型株は4%未満のステアリン酸を生成したことから、9倍を超える改善であった。さらに、かかる株はSAD活性を低下させるように操作されるが、SOS、POP、及びPOSを作る十分なオレイン酸を生成するのに十分なSAD活性は残る。特定の例では、アンチセンス、RNAi、又はsiRNA、ヘアピンRNA又はそれらの組み合わせなどの阻害技法を用いて、複数のSADコード対立遺伝子のうちの1つがノックアウトされてもよく、及び/又は1つ以上の対立遺伝子が下方調節される。様々な実施形態において、細胞は、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜約100%ステアリン酸を有するTAGを産生し得る。他の実施形態では、細胞は、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜約100%SOSであるTAGを産生し得る。場合により、又は遺伝子改変に加えて、ステアロイルACPデサチュラーゼを化学的に阻害することができる;これは例えば油産生中に細胞培養物にステルクリン酸を添加することによる。
【0094】
意外にも、単一のFATA対立遺伝子のノックアウトが、微細藻類で産生されるC18脂肪酸の存在を増加させることが見出された。1つの対立遺伝子をノックアウトするか、又は他の方法でFATA遺伝子産物の活性を(例えばヘアピンRNAを使用して)抑制する一方で、ステアロイル−ACPデサチュラーゼの活性もまた(本明細書に開示される技法を用いて)抑制することにより、細胞におけるステアリン酸レベルを増加させることができる。
【0095】
ステアリン酸レベルを増加させる別の遺伝子改変としては、ステアリン酸産生速度を増加させるため、細胞におけるケトアシルACPシンターゼ(KAS)活性を増加させることが挙げられる。微細藻類では、KASII活性の増加がC18合成の増加に有効であり、特にSAD活性の低下に有効な組換えDNAと組み合わせた細胞トリグリセリドにおけるステアリン酸レベルの上昇に有効であることが分かっている。KASIIを増加させる働きをする組換え核酸(例えば、外来性KasII遺伝子)をまた、FatA遺伝子のノックアウト又はノックダウン、又はFatA遺伝子及びSAD遺伝子の両方のノックアウト又はノックダウンと組み合わせてもよい。任意選択で、KASII遺伝子は、KASII Prototheca moriformis(配列番号2に提供される成熟タンパク質)と少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%のアミノ酸同一性を有するタンパク質をコードするか、又は国際公開第2015/051319号パンフレットに開示される若しくは微細藻類KASIIを含めた当該技術分野において公知の任意の植物KASII遺伝子である。
【0096】
場合により、細胞は、単独の改変として、或いはステアリン酸を増加させる他の1つ以上の遺伝子改変との組み合わせで、外因性ステアリン酸遊離アシル−ACPチオエステラーゼを含み得る。例えば、細胞が、C18:0−ACPの切断に選択性を有するアシル−ACPチオエステラーゼを過剰発現するように操作されてもよい。国際公開第2015/051319号パンフレットは、微細藻類、Prototheca moriformis(UTEX 1435)の脂肪酸プロフィールにおいてステアリン酸を約3.7%から約30.4%(8倍超)に増加させる外因性C18:0選択的アシル−ACPチオエステラーゼの発現について記載する。国際公開第2015/051319号パンフレットは、ProtothecaにおいてC18:0レベルを上昇させる働きをするC18:0選択的アシル−ACPチオエステラーゼのさらなる例を提供する。任意選択で、ステアリン酸選択的アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子は、配列番号3、4、5、6、7、8、または9(存在する場合にFLAGタグを除く)と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は9%のアミノ酸同一性を有する酵素をコードする。アシル−ACPチオエステラーゼの導入は、1つ以上の内在性アシル−ACPチオエステラーゼ対立遺伝子のノックアウト又はノックダウンと組み合わせることができる。チオエステラーゼの導入はまた、エロンガーゼ(KCS)又はβ−ケトアシル−CoAシンターゼの過剰発現と組み合わせることもできる。加えて、1つ以上の外来遺伝子(例えば、SAD又はKASIIをコードするもの)を、環境条件によって(例えば、調節可能なプロモーターと作動可能に連結した状態に置くことにより)調節してもよい。特定の例では、pH及び/又は窒素濃度を用いてamt03プロモーターを調節する。次に環境条件を調整することにより、細胞トリグリセリド中に現れるステアリン酸の所望の量を(例えばオレイン酸濃度の2倍となるよう)産生するように細胞が調整され得る。これらの操作の結果として、細胞は少なくとも5、10、15、又は20倍のステアリン酸の増加を呈し得る。
【0097】
単独での、又はステアリン酸を増加させる他の改変と組み合わせたさらなる改変として、細胞は、エロンガーゼ又はβ−ケトアシル−CoAシンターゼを発現する働きをする組換え核酸を含むことができる。例えば、C18:0選択的アシル−ACPチオエステラーゼの過剰発現を、中鎖延長エロンガーゼ又はKCSの過剰発現と組み合わせることにより、組換え細胞におけるステアリン酸産生を増加させ得る。外来遺伝子(例えば、チオエステラーゼ、エロンガーゼ、又はKCSをコードするもの)の1つ以上を、環境条件によって(例えば、調節可能なプロモーターと作動可能に連結した状態に置くことにより)調節してもよい。具体的な例では、pH及び/又は窒素レベルを用いることにより、amt03プロモーター、又は他のプロモーターが調節される。次に環境条件を調整することにより、細胞トリグリセリド中に現れるステアリン酸の所望の量を(例えばオレイン酸濃度の2倍となるよう)産生するように細胞が調整され得る。これらの操作の結果として、細胞は少なくとも5、10、15、又は20倍のステアリン酸の増加を呈し得る。ステアリン酸に加え、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びセロチン酸もまた産生され得る。
【0098】
特定の実施形態では、ステアリン酸レベルを増加させる細胞の遺伝子操作により、細胞により産生される油中のステアリン酸対オレイン酸の比は、2:1±30%(すなわち1.4:1〜2.6:1の範囲)、2:1±20%又は2:1±10%となる。
【0099】
或いは、細胞をSatUnsatSatの形成に有利となるように操作することができ、ここでSatはパルミチン酸又はパルミチン酸とステアリン酸との混合物である。この場合、外因性パルミチン酸を遊離させるアシル−ACPチオエステラーゼの導入が、パルミチン酸形成を促進し得る。この実施形態において、細胞は、少なくとも30、40、50、60、70、又は80%POPであるトリグリセリド、又はPOP、SOS、及びPOSの合計が細胞トリグリセリドの少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%であるトリグリセリドを産生し得る。他の関連する実施形態において、POSレベルは、細胞によって産生されるトリグリセリドの少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%である。
【0100】
特定の実施形態において、油の融解温度はココアバターの融解温度(約30〜32℃)と同程度である。POP、POS及びSOSレベルは、それぞれ約16、38、及び23%でココアバターに近くなり得る。例えば、POPは16%±20%であってもよく、POSは38%±20%であってもよく、SOSは23%±20%であってもよい。或いは、POPは16%±15%であってもよく、POSは38%±15%であってもよく、SOSは23%±15%であってもよい。或いは、POPは16%±10%であってもよく、POSは38%±10%であってもよく、SOSは23%±10%であってもよい。
【0101】
ステアリン酸を増加させる組換え核酸の結果として、脂肪酸プロフィールのある割合がアラキジン酸となってもよい。例えば、脂肪酸プロフィールは、0.01%〜5%、0.1〜4%、又は1〜3%のアラキジン酸となり得る。さらに、位置特異的プロフィールは、0.01%〜4%、0.05%〜3%、又は0.07%〜2%のAOSを有してもよく、又は0.01%〜4%、0.05%〜3%、又は0.07%〜2%のAOAを有してもよい。AOS及びAOAは、数ある潜在的利益の中でも特に、本発明の脂肪を含む糖菓におけるブルーミング及び脂肪マイグレーションを低減し得ると考えられる。
【0102】
ステアリン酸及び/又はパルミチン酸を増加させ、且つSatUnsatSatレベルを改変するよう設計される操作に加え、多価不飽和物レベルが、上記に記載したとおりデルタ12脂肪酸デサチュラーゼ活性(例えば、Fad遺伝子によりコードされるとおりの)の低下、及び場合により成長培地の補給又はFAD発現の調節によることを含め抑制され得る。微細藻類では(Prototheca株での研究から明らかなように)、多価不飽和物がsn−2位に選択的に付加されることが分かっている。従って、sn−2位にオレイン酸を含むトリグリセリドの割合を上昇させるためには、細胞によるリノール酸の産生が抑制され得る。高度に酸化安定性の油に関連した、脂肪酸デサチュラーゼ(FAD)遺伝子又は遺伝子産物を阻害又は除去するための本明細書に記載される技術は、sn−2位の多価不飽和物を減少させることによるSatUnsatSat油の産生に向けて良い効果を伴い適用することができる。さらなる利益として、かかる油は酸化安定性の向上を有し得る。本明細書に同様に記載されるとおり、脂肪は二段階で生成されてもよく、第1の段階で多価不飽和物が供給されるか又は細胞によって産生され、脂肪産生段階で多価不飽和物を欠乏させる。生成される脂肪は、15,10,7、5、4、3、2、1、又は0.5%以下の多価不飽和物を有する脂肪酸プロフィールを有し得る。特定の実施形態では、細胞によって産生される油/脂肪は、50%超のSatUnsatSat、場合により50%超のSOSを有するが、多価不飽和物は3%未満である。場合により、多価不飽和物は、脂肪酸プロフィール中のリノール酸とリノレン酸との合計面積%によって概算され得る。
【0103】
ある実施形態では、細胞脂肪は、65%〜95%SOS、場合により0.001〜5%SSSを有するシアステアリン代用物である。関連する実施形態において、脂肪は、65%〜95%SOS、0.001〜5%SSS、場合により0.1〜8%アラキジン酸を含有するトリグリセリドを有する。別の関連する実施形態において、脂肪は65%〜95%SOSを有し、SSSとSSOとの合計は10%未満又は5%未満である。
【0104】
細胞の位置特異的選択性は、以下に記載する分析法(実施例1〜2、3)を用いて知ることができる。遺伝子工学技術を任意選択で古典的な突然変異誘発及び育種と組み合わせて用いることにより、出発株と比べて少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、又はそれ以上のSatUnsatSat又はSOS産生量の増加を有する微細藻又は高等植物を作製し得る可能性がある。別の態様では、野生型が20%、30%、40%又は50%未満のSatUnsatSat又はSOSを産生する種のSatUnsatSat又はSOS濃度を増加させることで、SatUnsatSat又はSOSをそれぞれ少なくとも30%、40%、50%又は60%まで増加させることができる。出発又は野生型生物と比べた主な変化は、ステアリン酸量の増加(例えば、ステアリン酸から形成されるオレイン酸の量が例えばSAD活性の低下によって低下することによる、及び/又はステアリン酸に変換されるパルミチン酸の量がFATAの活性の低下及び/又はKASIIの活性の増加によって増加することによる)及びFAD2/FADc活性の低下によってリノール酸の量が減少することによるものである。
【0105】
任意選択で、出発生物は、sn−2位でオレイン酸又は不飽和脂肪酸が優勢なTAG種を合成する傾向があるトリアシルグリセロール(TAG)生合成機構を有し得る。多くの油糧種子作物がこの特徴を有する。リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)は、最終的にsn−2位に挿入されることになる脂肪酸種の決定において重要な役割を果たすことが実証されている。実際には、高等植物種子における異種遺伝子発現によるLPAATの操作によって、sn−2位を占有する脂肪酸種を変えることができる。
【0106】
農業上重要な油糧種子及び藻類において高レベルのいわゆる構造化脂肪を有する油(典型的には種SOS−ステアリン酸塩−オレイン酸塩−ステアリン酸塩、POS−パルミチン酸塩−オレイン酸塩−ステアリン酸塩、又はPOP−パルミチン酸塩−オレイン酸塩−パルミチン酸塩で構成される)を生成するための一つの手法は、内因性並びに異種遺伝子発現の操作によるものである。かかる手法としては、以下が挙げられる。
【0107】
ステアリン酸レベルを増加させること。これは、本発明者らがここで微細藻類において実証しており、及び他の研究者らが高等植物で示しているとおり、ステアリン酸特異的FATA活性の発現によるか又は内因性SAD活性の下方調節によって;例えば、直接的な遺伝子ノックアウト、RNAサイレンシング、又は古典的な株改良を含めた突然変異によって達成することができる。しかしながら、ステアリン酸レベルのみを上記の手法によって単純に上昇させることは、最適とはいえない。例えば、パーム油の場合、既に高レベルのパルミチン酸がステアリン酸レベルの上昇と相まって既存のLPAAT活性を打ち負かし、トリ飽和脂肪酸(SSS、PPP、SSP、PPSなど)への多量のステアリン酸及びパルミチン酸の取り込みをもたらす可能性がある。従って、さらにパルミチン酸レベルを制御する工程も行う必要がある。
【0108】
高SOS含有脂肪を作り出すには、パルミチン酸レベルを最小限に抑えなければならず、なぜならパルミチン酸は、高機能LPAATを伴ったとしても、ステアリン酸が占め得たsn−1位又はsn−3位を占有し得るとともに、上記に概説したとおり、飽和物が多過ぎて著しいレベルのトリ飽和TAG種が生じることになるためである。パルミチン酸レベルは、例えば、突然変異/古典的な株改良による内因性FATA活性の下方調節、内因性FATA活性が高いパルミチン酸活性を有する場合には遺伝子ノックアウト又はRNAi媒介性戦略によって低下させることができる。それに代えて、又は上記と併せて、パルミチン酸レベルは、内因性KASII活性の過剰発現又は同じ試みとして現れる古典的な株改良の試みによって、パルミチン酸からステアリン酸への伸長が促進されるようにして低下させることができる。しかしながら、上記の方法でパルミチン酸レベルを単純に低下させることは十分でない場合もある。再びパーム油を例にとる。前出の方法によるパルミチン酸の減少及びステアリン酸の上昇では、なおも相当なレベルのリノール酸が残り得る。ほとんどの高等植物種における内因性LPAAT活性は、sn−2位にオレイン酸を優先的に挿入し得るものの、次の最優先種としてリノール酸を挿入し得る。オレイン酸レベルの低下に伴いリノール酸がsn−2位を占有するようになり、その頻度が高まる。sn−2位にリノール酸を有するTAG種は、それらのTAGが構造化脂肪で所望されるものと比べてはるかに高い融解温度を呈する傾向を有するため、構造化特性が不十分である。従って、次にはリノール脂肪酸レベルの低下によってステアリン酸の増加及びパルミチン酸の減少がバランスしなければならない。
【0109】
次には、高SOS含有脂肪を作り出すためには、リノール脂肪酸レベルを最小限に抑えなければならず、なぜなら、リノール酸は、高機能LPAATを伴ったとしても、オレイン酸を排除するまでsn−2位を占有し、所望の固形脂肪(室温で)とは対照的な液体油が作り出されるためである。リノール酸レベルは、本発明者らが微細藻類で実証しており、及び他の研究者らが植物油糧種子で示しているとおり、内因性FAD2デサチュラーゼの下方調節によって;例えば、突然変異/古典的な株改良、FAD2ノックアウト又は内因性FAD2活性のRNAi媒介性下方調節によって低下させることができる。これに伴い、脂肪酸プロフィール中のリノール酸レベルは少なくとも10、20、30、40、50、100、200、又は300%低下し得る。例えば、本明細書に開示されるものと少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するRNAi構築物を使用してFAD2を下方調節することができる。
【0110】
かかるsn−2選択性を有する出発株を選択してもよいが、また、sn−2位におけるオレイン酸をさらに押し上げ、且つTAGプロフィール中のSat−Unsat−Satをさらに押し上げるため、より高いオレイン酸選択性を有する外来性LPAAT遺伝子を導入することもできる。任意選択で、1つ以上の内因性LPAAT対立遺伝子を、外来性の、特異性がより高いLPAATに置き換えることができる。
【0111】
SatUnsatSat/SOS産生生物から得られる細胞油は、ステロールプロフィールが従来の供給源と区別可能なものとして宿主生物の指標となる点で、従来のSOS/POP/POS供給源と区別することができる。従来のSOS/POP/POS供給源には、ココア、シア、マンゴー、サラノキ、イリッペ、コクム、及びアランブラキアが含まれる。微細藻類ステロールの考察については本開示の第XII節を参照のこと。
【0113】
従って、本発明の実施形態には、細胞によって産生される油(即ち油又は脂肪)中のSOSの量を増加させる方法がある。この方法は、細胞を提供する工程と、古典的技術及び/又は遺伝子工学技術(例えば、突然変異、選択、株改良、外来遺伝子の導入及び/又は調節因子エレメント、又はRNAiなどのRNAレベル調節)を用いて(i)油中のステアリン酸を増加させ、(ii)油中のリノール酸を減少させ、及び任意選択で(iii)sn−2位におけるオレイン酸の付加の立体特異性を増加させる工程とを含む。ステアリン酸を増加させる工程は、SADによって不飽和化を減少させる工程(例えば、ノックアウト、ノックダウン又は調節エレメントの使用)と、パルミチン酸からステアリン酸への変換を増加させる工程(内在性又は外来性KASIIの過剰発現及び/又はFATAのノックアウト又はノックダウンを含む)とを含む。任意選択で、内因性FATAと比べてステアリン酸特異性がより高い外因性FATAを細胞で発現させることにより、ステアリン酸レベルを増加させる。ここで、FATA遺伝子のステアリン酸特異性は、遺伝子産物によるパルミチン酸と比べたステアリン酸の切断速度の尺度である。ステアリン酸特異的FATA遺伝子の挿入は、特異性の低い内在性FATA遺伝子のノックダウン又はノックアウトと組み合わせることができる。このようにして、ステアリン酸の対パルミチン酸比を10%、20%、30%、40%、50%、100%以上増加させることができる。リノール酸を減少させる工程は、ノックアウト及び/又はノックダウンを含めたFADc/FAD2活性の低減によることができる。sn−2位のオレイン酸を増加させる工程は、本明細書に開示されるLPAATと少なくとも75、80、85、90、85、96、97、98、又は99%のアミノ酸同一性を有するLPAATなどの外因性オレイン酸選択的LPAATを発現する工程を含むことができる。
【0114】
具体的な実施形態において、細胞(例えば、油産生微細藻類細胞又は他のプラスチド細胞)は、SOSリッチの(例えば、少なくとも50%SOS及びある場合には60%SOSの)油を産生する。細胞は少なくとも4つの遺伝子が改変される:(i)β−ケトアシル−ACPシンターゼII(KASII)が過剰発現し、(ii)内因性FATAアシル−ACPチオエステラーゼの活性が低下し、(iii)ステアリン酸特異的FATAアシル−ACPチオエステラーゼが過剰発現し、(iii)内因性SAD活性が低下し、及び(iv)内因性FAD活性が低下する。国際公開第2015/051319号パンフレットは、Prototheca moriformis微細藻で、内因性FATA及びSAD2のコード領域を相同組換えで破壊し、β−ケトアシル−ACPシンターゼII(KASII)遺伝子を過剰発現させ、及びFAD2 RNAiを活性化させて多価不飽和物を減少させることによってこの実施形態を実証する。
【0115】
別の具体的な実施形態において、細胞(例えば、油産生微細藻類細胞又は他のプラスチド細胞)は、SOSリッチの(例えば、少なくとも50%SOS及びある場合には60%SOSの)油を産生する。細胞は、少なくとも4つの遺伝子が改変される:(i)β−ケトアシル−ACPシンターゼII(KASII)が過剰発現し、(ii)内因性FATAアシル−ACPチオエステラーゼの活性が低下し、(iii)ステアリン酸特異的FATAアシル−ACPチオエステラーゼが過剰発現し、(iv)内因性SAD活性が低下し、(v)内因性FAD活性が低下し、及び(vi)外因性オレイン酸選択的LPAATが発現する。任意選択で、これらの遺伝子又は調節エレメントは、本明細書に開示される遺伝子又は遺伝子産物又は調節エレメントと少なくとも75、80、85、90、85、96、97、98、又は99%の核酸又はアミノ酸同一性を有する。任意選択で、これらの遺伝子のうちの1つ以上が、本明細書に開示されるものの一つと少なくとも75、80、85、90、85、96、97、98、又は99%の核酸同一性を有するものなどの、pH感受性又は窒素感受性(pH感受性又はpH非感受性)プロモーターの制御下にある。任意選択で、細胞油は分画される。
【0116】
ある実施形態では、本発明に係る細胞によって産生される脂肪を使用して、糖菓、キャンディーのコーティング、又は他の食品が製造される。結果として、チョコレート又はキャンディーバーのような食品は、ココアバターを使用して製造される類似製品の「スナップ性」(例えば割ったときの)を有し得る。使用される脂肪はβ多形形態であるか、又はβ多形形態となる傾向を有し得る。ある実施形態では、方法は、糖菓にかかる脂肪を加えることを含む。場合により、脂肪は、65%超のSOS、45%未満の不飽和脂肪酸、5%未満の多価不飽和脂肪酸、1%未満のラウリン酸、及び2%未満のトランス脂肪酸を有するEEC規則に従うココアバター同等物であってもよい。この脂肪はまた、ココアバター増量剤、向上剤、代替剤、又は抗ブルーミング剤として、又はシアバター代用物として、食品及びパーソナルケア製品中のものを含め使用することができる。本明細書に開示される細胞及び方法を使用して生成される高SOS脂肪は、シアバター又はシア画分が要求される任意の用途又は配合で使用することができる。しかしながら、シアバターと異なり、本発明の実施形態により生成される脂肪は不鹸化物が低量であり;例えば、7、5、3、又は2%未満の不鹸化物であり得る。加えて、シアバターは、ジアシルグリセリドの存在に起因して劣化が速い傾向があるが、本発明の実施形態により生成される脂肪はジアシルグリセリドが低量であり;例えば、5、4、3、2、1、又は0.5%未満のジアシルグリセリドであり得る。
【0117】
本発明のある実施形態には、ショートニング、詳細にはロールイン用ショートニングとして好適な細胞脂肪がある。従って、ショートニングを使用して、ペストリー又は他の多層状食品を作製してもよい。ショートニングは、本明細書に開示される操作された生物及び特に従属栄養微細藻類の生成方法を用いて生成することができる。ある実施形態では、ショートニングは、40〜60℃、好ましくは45〜55℃の融解温度を有し、15〜20%中鎖脂肪酸(C8〜C14)、45〜50%長鎖飽和脂肪酸(C16以上)、及び30〜35%不飽和脂肪酸(好ましくはリノール酸よりオレイン酸を多く含む)のトリグリセリドプロフィールを有し得る。ショートニングは、場合によりβ多形形態を経ることなしに、β’多形結晶を形成し得る。ショートニングはチキソトロピックであってもよい。ショートニングは35℃で15%未満の固形脂肪含有量を有し得る。特定の実施形態には、組換え微細藻によって産生されるロールイン用ショートニングとして好適な細胞油があり、ここで油は400〜700又は500〜600Paの降伏応力及び1×10
5Pa又は1×10
6Paより大きい貯蔵弾性率を有する(実施例4を参照のこと)。
【0118】
構造化された固液脂肪系は、構造化油を使用して、それらを室温で液体の油(例えば、トリステアリン又はトリオレインが高い油)とブレンドすることにより生成され得る。このブレンドされる系は、食品スプレッド、マヨネーズ、ドレッシング、ショートニングにおける使用に(すなわち油水油型エマルションを形成することにより)好適であり得る。本明細書に記載される実施形態に係る構造化脂肪、特にSOSが高いものは、他の油/脂肪とブレンドしてココアバター同等物、代用物、又は増量剤を作製することができる。例えば、65%超のSOSを有する細胞脂肪をパーム中融点画分とブレンドして、ココアバター同等物を作製することができる。
【0119】
一般に、かかる高いSat−Unsat−Sat脂肪又は脂肪系は、ホイップ済みクリーム、マーガリン、スプレッド、サラダドレッシング、ベイクド食品(例えばパン、クッキー、クラッカー、マフィン、及びペストリー)、チーズ、クリームチーズ、マヨネーズ等を含めた、様々な他の製品で使用することができる。
【0120】
特定の実施形態では、上記に記載するSat−Unsat−Sat脂肪がマーガリン、スプレッドなどの製造に使用される。例えば、米国特許第7118773号明細書、第6171636号明細書、第4447462号明細書、第5690985号明細書、第5888575号明細書、第5972412号明細書、第6171636号明細書、又は国際公開第9108677A1号パンフレットに記載されるレシピ又は方法のいずれかを使用して、この脂肪からマーガリンを作製することができる。
【0121】
ある実施形態では、脂肪は、場合により別の脂肪とブレンドされた、細胞の(例えば微細藻類細胞由来の)脂肪を含み、スプレッド又はマーガリン又は他の食品の製造に有用であり、遺伝子操作された細胞によって製造され、以下を含む脂肪酸に由来するグリセリドを有する:
(a)少なくとも10重量%のC18〜C24飽和脂肪酸、
(b)ステアリン酸及び/又はアラキジン酸及び/又はベヘン酸及び/又はリグノセリン酸を含むもの、及び
(c)オレイン酸及び/又はリノール酸、一方、
(d)飽和C18酸/飽和(C20+C22+C24)酸の比≧1、好ましくは≧5、より好ましくは≧10、
これらのグリセリドは以下を含有する:
(e)総脂肪酸重量に対して計算して≦5重量%のリノレン酸
(f)総脂肪酸重量に対して計算して≦5重量%のトランス脂肪酸
(g)sn−2位における≦75重量%、好ましくは≦60重量%のオレイン酸:これらのグリセリドは総グリセリド重量に対して計算して以下を含有する
(h)≧8重量%HOH+HHOトリグリセリド
(i)≦5重量%トリ飽和トリグリセリド、及び場合により以下の1つ以上の特性を有する:
(j)10℃で>10%の固形脂肪含有量
(k)35℃で≦15%固形脂肪含有量、
(l)10℃で>15%の固形脂肪含有量及び35℃で≦25%の固形脂肪含有量、
(m)(HOH+HHO)及び(HLH+HHL)トリグリセリドの比が>1、好ましくは>2であり、
ここでHはC18〜C24飽和脂肪酸を表し、Oはオレイン酸を表し、Lはリノール酸を表す。
【0122】
場合により、固体脂肪含有量(%SFC)は、10℃で11〜30、20℃で4〜15、30℃で0.5〜8、及び35℃で0〜4である。或いは、脂肪の%SFCは、10℃で20〜45、20℃で14〜25、30℃で2〜12、及び35℃で0〜5である。関連する実施形態において、脂肪の%SFCは、10℃で30〜60、20℃で20〜55、30℃で5〜35、及び35℃で0〜15である。C12〜C16脂肪酸含有量は≦15重量%であってもよい。脂肪は≦5重量%の不飽和ジグリセリドを有し得る。
【0123】
関連する実施形態には、細胞油又は細胞油ブレンドから作製されるスプレッド、マーガリン又は他の食品がある。例えば、細胞脂肪を使用して、30〜80wt.%の脂肪相に分散した70〜20wt.%の水相を含む食用W/O(水/油)エマルションスプレッドを作製することができ、この脂肪相は、50〜99wt.%の植物性トリグリセリド油Aと1〜50wt.%の構造化トリグリセリド脂肪Bとの混合物であり、この脂肪は、5〜100wt.%のハードストック脂肪Cと、最大95wt.%の脂肪Dとからなり、ハードストック脂肪Cトリグリセリドの少なくとも45wt.%がSatOSatトリグリセリドからなり、ここでSatは飽和C18〜C24炭素鎖を含む脂肪酸残基を表し、及びOはオレイン酸残基を表すが、但し、脂肪の分画、水素化、エステル化又はエステル交換によって得られた任意のハードストック脂肪Cは除外するものとする。ハードストック脂肪は、本明細書に開示される方法に従い細胞によって生成される細胞脂肪であってよい。従って、ハードストック脂肪は、少なくとも50、60、70、80、又は90%のSOSを有する位置特異的プロフィールを有する脂肪であってよい。W/Oエマルションは、米国特許第7,118,773号明細書を含む当該技術分野において公知の方法に合わせて調製することができる。
【0124】
関連する実施形態において、細胞はまた、リシノール酸を産生する内因性ヒドロリアーゼ酵素も発現する。結果として、産生される油(例えば、液体油又は構造化脂肪)はより容易に乳化してマーガリン、スプレッド、又は他の食品又は非食品になり得る。例えば、産生される油は、乳化剤の添加を用いない又はより少量のかかる乳化剤を使用して乳化させることができる。米国特許出願第13/365,253号明細書は、かかるヒドロキシラーゼを微細藻類及び他の細胞で発現させる方法を開示している。特定の実施形態において、細胞油は少なくとも1、2、又は5%のSRSを含み、ここでSはステアリン酸であり、Rはリシノール酸である。
【0125】
代替的実施形態において、上記に記載したとおりのココアバター模倣物(又は、シア若しくはコラム模倣物等の他の高飽和−不飽和―飽和(sat−unsat−sat)油)である細胞油を分画してトリ飽和物(例えば、トリステアリン及びトリパルミチン、SSP、及びPPS)を取り除くことができる。例えば、SOS濃度の増加のためSAD活性が低下するように操作された微細藻類は、分画してトリ飽和物を取り除くことのできる油を作ることが分かっている。特定の実施形態において、分画された細胞油の融解温度は、ココアバターの融解温度(約30〜32℃)と同程度である。POP、POS及びSOSレベルは、それぞれ約16、38、及び23%でココアバターに近くなり得る。例えば、POPは16%±20%であってもよく、POSは38%±20%であってもよく、SOSは23%±20%であってもよい。或いは、POPは16%±15%であってもよく、POSは38%±15%であってもよく、SOSは23%±15%であってもよい。或いは、POPは16%±10%であってもよく、POSは38%±10%であってもよく、SOSは23%±10%であってもよい。加えて、トリステアリンレベルはトリアシルグリセリドの5%未満であってもよい。
【0126】
ある実施形態では、方法は、少なくとも40、50、又は60%のSOSを有するTAGプロフィールを有する出発油を産生する遺伝子操作された(例えば、微細藻又は他の微生物)細胞から得られる細胞油を得る工程を含む。任意選択で、細胞は、過剰発現するKASII遺伝子、SADノックアウト若しくはノックダウン、又は外来性C18選択的FATA遺伝子、外来性LPAAT、及びFAD2ノックアウト若しくはノックダウンのうちの1つ以上を含む。油は乾燥分画又は溶媒分画によって分画され、出発油と比べてSOSが増加し且つトリ飽和物が減少した濃縮油(ステアリン画分)が提供される。濃縮油は、少なくとも60%、70%又は80%のSOSを有し、トリ飽和物が5%、4%、3%、2%又は1%以下であり得る。濃縮油は、sn−2位に85、90、95%以上のオレイン酸を有するsn−2プロフィールを有し得る。例えば、分画油は、少なくとも60%のSOS、5%以下のトリ飽和物及びsn−2位における少なくとも85%のオレイン酸を含み得る。或いは、油は、少なくとも70%のSOS、4%以下のトリ飽和物及びsn−2位における少なくとも90%のオレイン酸か、又は80%のSOS、4%以下のトリ飽和物及びsn−2位における少なくとも95%のオレイン酸を含み得る。任意選択で、油は、コクムバターと本質的に同一の最大ヒートフロー温度及び/又はDSCで得られるSFC曲線を有する。ステアリン画分は、乾燥分画、溶媒分画、又はこれらの組み合わせによって得ることができる。任意選択で、本方法は、第1の温度及び第2の温度での二段階乾燥分画を含む。第1の温度(termperature)は第2の温度より高くても又は低くてもよい。具体的な実施形態において、第1の温度はOOSの除去に有効であり、第2の温度はトリ飽和物の除去において有効である。任意選択で、第1の温度で処理した後、ステアリン画分が溶媒(例えばアセトン)で洗浄されることによりOOSが除去される。任意選択で、第1の温度は約24℃であり、第2の温度は約29℃である。
【0127】
VI.高中鎖油
本発明の実施形態において、細胞は、細胞中又は細胞の油中の中鎖脂肪酸(例えば、C8:0、C10:0、C12:0、C14:0、又はC16:0脂肪酸)のレベルを上昇させる働きをする組換え核酸を有する。細胞中又は細胞の油中の中鎖脂肪酸のレベルを増加させる一つの方法は、単独の改変として、或いは1つ以上の他の遺伝子改変との組み合わせで、中鎖脂肪酸アシル−ACP基質に対して活性を有する外因性アシル−ACPチオエステラーゼ(例えば、FatB遺伝子によりコードされるもの)を発現するように細胞を操作することである。かかる操作の例については、例えば、国際公開第2015/051319号パンフレットを参照することができる。
【0128】
或いは、又は加えて、細胞は、外因性KASI又はKASIV酵素を発現させ、場合によりKASIIの活性を低下又は消失させる働きをする組換え核酸を含んでもよく、これは、中鎖選択的アシル−ACPチオエステラーゼを発現させる場合に特に有利である。国際公開第2015/051319号パンフレットは、中鎖選択的アシル−ACPチオエステラーゼと併せてKASI又はKASIV酵素を過剰発現するようにPrototheca細胞を操作することによる、C10〜C12脂肪酸の産生が全脂肪酸の約59%となる株の作成について記載する。中鎖産生はまた、KASI及び/又はKASIIの活性を(例えばノックアウト又はノックダウンを用いて)抑制することによっても増加させることができる。国際公開第2015/051319号パンフレットは、約76%又は84%のC10〜C14脂肪酸となる脂肪酸プロフィールを実現する、中鎖選択的アシル−ACPチオエステラーゼの過剰発現と併せたPrototheca moriformis(UTEX 1435)KASIの異なる対立遺伝子の染色体ノックアウトについて詳細する。国際公開第2015/051319号パンフレットはまた、KASI RNAヘアピンポリヌクレオチドが発現する結果として高い中鎖脂肪酸を特徴とする組換え細胞及び油を提供する。これらの改変のいずれかに加え、SAD又はFAD酵素の不飽和又は多価不飽和脂肪酸の産生を(例えばノックアウト又はノックダウンによって)抑制することができる。
【0129】
VII.高オレイン酸/パルミチン酸油
別の実施形態には、約60%のオレイン酸、25%のパルミチン酸及び場合により5%又はそれ以下の多価不飽和物を含む高オレイン酸油がある。高オレイン酸油は、米国特許出願第13/365,253号明細書(その関連する部分が参照により援用される)に開示される方法を用いて生成することができる。例えば、細胞が、アシル−ACPチオエステラーゼを抑制(例えばFATAをコードする遺伝子のノックアウト又はノックダウン)するとともにKASII活性を増加させる遺伝子を発現する働きをする核酸を有し得る。細胞は、上記に記載するとおりの遺伝子発現の調節を含め、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼの発現を阻害するさらなる改変を有してもよい。結果として、多価不飽和物は、5、4、3、2、又は1面積%以下となり得る。
【0130】
VIII.低飽和物油
ある実施形態では、細胞油は組換え細胞から産生される。産生される油は、4%、3%、2%、又は1%(面積%)未満の飽和脂肪酸を有する脂肪酸プロフィールを有する。特定の実施形態において、油は0.1〜3.5%の飽和脂肪酸を有する。特定のかかる油を使用して、飽和脂肪酸の量が無視し得る程度である食品を製造することができる。場合により、これらの油は、少なくとも90%のオレイン酸又は少なくとも90%のオレイン酸と少なくとも3%の多価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸プロフィールを有し得る。ある実施形態では、組換え細胞によって産生される細胞油は、少なくとも90%のオレイン酸、少なくとも3%のリノール酸とリノレン酸との合計を含み、且つ3.5%未満の飽和脂肪酸を有する。関連する実施形態において、組換え細胞によって産生される細胞油は、少なくとも90%のオレイン酸、少なくとも3%のリノール酸とリノレン酸との合計を含み、且つ3.5%未満の飽和脂肪酸を有し、この飽和脂肪酸の大部分は鎖長10〜16で構成される。これらの油は、限定はされないが、本明細書及び米国特許出願第13/365,253号明細書に記載されるものを含め、組換え油産生細胞によって産生され得る。例えば、高活性SADを含む細胞におけるKASII酵素の過剰発現は、飽和物が3.5%以下の高オレイン酸油を産生し得る。場合により、オレイン酸特異的アシル−ACPチオエステラーゼ及び/又はノックアウト若しくは抑制されたC18未満のアシル鎖を加水分解する傾向を有する内因性チオエステラーゼもまた過剰発現される。オレイン酸特異的アシル−ACPチオエステラーゼは、産生される油の脂肪酸プロフィールにおけるパルミチン酸とステアリン酸との合計に対するオレイン酸の比が3、5、7、又は10より大きくなるように、ACP−パルミチン酸及びACP−ステアリン酸に対する活性が低い導入遺伝子であってもよい。或いは、又はそれに加えて、以下の国際公開第2015/051319号パンフレットにあるとおり、FATA遺伝子がノックアウト又はノックダウンされてもよい。FATA遺伝子をノックアウト又はノックダウンし、且つ外来性KASIIを過剰発現させてもよい。別の任意選択の改変は、KASI及び/又はKASIII活性を増加させることであり、これは、より短鎖の飽和物の形成をさらに抑制し得る。場合により、置換グリセロールに対する不飽和脂肪酸アシル部分の転移に特異性を有する1つ以上のアシルトランスフェラーゼ(例えばLPAAT)もまた過剰発現され、及び/又は内因性アシルトランスフェラーゼがノックアウト又は減弱される。さらなる任意選択の改変は、不飽和脂肪酸の伸長に特異性を有するKCS酵素の活性を増加させることであり、及び/又は飽和脂肪酸の伸長に特異性を有する内因性KCSがノックアウト又は減弱される。場合により、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼのノックアウト又はノックダウンにより、リノール酸産生を犠牲にしてオレイン酸が増加する;例えば、本特許出願の第IV章の技術が用いられる。任意選択で、使用される外来遺伝子は植物遺伝子;例えば、油糧種子に見られるmRNAに由来するcDNAから得られるものであってもよい。
【0131】
IX.微量油成分
上記の方法により産生される油は、ある場合には、微細藻類宿主細胞を使用して作製される。上記に記載したとおり、微細藻は、限定なしに、Chlorophyta、Trebouxiophyceae、Chlorellales、Chlorellaceae、又はChlorophyceaeの分類に含まれる。Trebouxiophyceaeの微細藻類は、そのステロールプロフィールに基づき植物油と区別できることが分かっている。Chlorella protothecoidesにより産生される油は、GC−MSによって検出したとき、ブラシカステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、及びβ−シトステロールであるように見えるステロールを産生することが見出された。しかしながら、Chlorellaによって産生されるステロールは全て、C24β立体化学を有すると考えられる。従って、カンペステロール、スチグマステロール、及びβ−シトステロールとして検出された分子は、実際には、それぞれ22,23−ジヒドロブラシカステロール、ポリフェラステロール及びクリオナステロールであると考えられる。従って、上記に記載する微細藻類によって産生される油は、C24β立体化学を有するステロールの存在と、存在するステロールにおけるC24α立体化学の非存在とにより植物油と区別することができる。例えば、産生される油は22,23−ジヒドロブラシカステロールを含有する一方、カンペステロールが欠損していてもよい;クリオナステロールを含有する一方、β−シトステロールが欠損していてもよく、及び/又はポリフェラステロールを含有する一方、スチグマステロールが欠損していてもよい。或いは、又は加えて、油は多量のΔ
7−ポリフェラステロールを含有していてもよい。
【0132】
一実施形態において、本明細書に提供される油は植物油ではない。植物油は、植物及び植物の種子から抽出された油である。植物油は、本明細書に提供される非植物油と、それらの含油量に基づき区別することができる。含油量を分析するための様々な方法を用いて、油の供給源、又は本明細書に提供される油と異なる(例えば植物)由来の油との不純物混和が起こったかどうかを決定することができる。この決定は、分析法の1つ又は組み合わせに基づき行うことができる。これらの試験としては、限定はされないが、遊離脂肪酸、脂肪酸プロフィール、全トリアシルグリセロール含有量、ジアシルグリセロール含有量、過酸化物価、分光特性(例えば紫外吸収)、ステロールプロフィール、ステロール分解産物、抗酸化剤(例えばトコフェロール)、色素(例えばクロロフィル)、d13C値及び官能分析(例えば、味、匂い、及び口当たり)の1つ以上の分析が挙げられる。食用脂肪及び油に関するCodex Alimentarius規格など、市販の油用に多くのかかる試験が標準化されている。
【0133】
ステロールプロフィール分析は、生物学的有機物源の決定に特によく知られている方法である。カンペステロール、b−シトステロール、及びスチグマステロールが一般的な植物ステロールであり、b−シトステロールは主要な植物ステロールである。例えば、b−シトステロールは、ある種の種子油の分析で最も多い存在量であることが見出されており、トウモロコシ油において約64%、菜種油において29%、ヒマワリ油において64%、綿実油において74%、大豆油において26%、及びオリーブ油において79%であった(Gul et al.J.Cell and Molecular Biology 5:71−79,2006)。
【0134】
Prototheca moriformis株UTEX1435から分離した油を個別に清澄化(CL)、精製及び漂白(RB)するか、又は精製、漂白、及び脱臭(RBD)し、JAOCS vol.60,no.8,August 1983に記載される手順に従いステロール含有量について試験した。分析結果を以下の表7に示す(mg/100g単位)。
【0136】
これらの結果は、3つの顕著な特徴を示す。第一に、あらゆるステロールのなかでエルゴステロールが最も豊富であり、全ステロールの約50%以上を占めることが分かった。エルゴステロールの量は、カンペステロール、β−シトステロール、及びスチグマステロールを合わせた量より多い。エルゴステロールは真菌によく見られ、一般に植物には見られないステロイドであり、その存在、特に多量の存在は、非植物油の有用なマーカーとなる。第二に、この油はブラシカステロールを含有することが分かった。菜種油を除いては、ブラシカステロールは一般に植物系の油には見られない。第三に、2%未満のβ−シトステロールが存在することが分かった。β−シトステロールは、一般に微細藻類には見られない顕著な植物ステロールであり、その存在、特に多量の存在は、植物由来の油の有用なマーカーとなる。要約すれば、Prototheca moriformis株UTEX1435は、全ステロール含有量に対する割合として多量のエルゴステロールを含有すると共に、β−シトステロールは微量にしか含有しないことが見出された。従って、エルゴステロール:β−シトステロールの比又はブラシカステロールの存在との組み合わせを使用して、この油を植物油と区別することができる。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満のβ−シトステロールを含有する。他の実施形態では、油はβ−シトステロールを含まない。本願に開示される任意の油又は細胞油について、油は、上記の表7の任意の列のステロールプロフィールを有することができ、ステロール毎に30%、20%、10%以下のばらつきがある。
【0138】
一部の実施形態では、油は、β−シトステロール、カンペステロール、又はスチグマステロールの1つ以上を含まない。一部の実施形態では、油は、β−シトステロール、カンペステロール、及びスチグマステロールを含まない。一部の実施形態では、油はカンペステロールを含まない。一部の実施形態では、油はスチグマステロールを含まない。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満の24−エチルコレスタ−5−エン−3−オールを含む。一部の実施形態では、24−エチルコレスタ−5−エン−3−オールはクリオナステロールである。一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%のクリオナステロールを含む。
【0140】
一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満の24−メチルコレスタ−5−エン−3−オールを含有する。一部の実施形態では、24−メチルコレスタ−5−エン−3−オールは22,23−ジヒドロブラシカステロールである。一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の22,23−ジヒドロブラシカステロールを含む。
【0141】
一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満の5,22−コレスタジエン−24−エチル−3−オールを含有する。一部の実施形態では、5,22−コレスタジエン−24−エチル−3−オールはポリフェラステロールである。一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%のポリフェラステロールを含む。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書に提供される油の含油量は、エルゴステロール又はブラシカステロール又はこれらの2つの組み合わせを含有する。一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%のエルゴステロールを含有する。一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも25%のエルゴステロールを含有する。一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも40%のエルゴステロールを含有する。一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%のエルゴステロールとブラシカステロールとの組み合わせを含有する。
【0143】
一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも1%、2%、3%、4%又は5%のブラシカステロールを含有する。一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、10%、9%、8%、7%、6%、又は5%未満のブラシカステロールを含有する。
【0144】
一部の実施形態では、エルゴステロールとブラシカステロールとの比は、少なくとも5:1、10:1、15:1、又は20:1である。
【0145】
一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%のエルゴステロールと、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満のβ−シトステロールとを含有する。一部の実施形態では、含油量は、全ステロールに対する割合として、少なくとも25%のエルゴステロール及び5%未満のβ−シトステロールを含有する。一部の実施形態では、含油量はブラシカステロールをさらに含む。
【0146】
ステロールは27〜29個の炭素原子を含有し(C27〜C29)、あらゆる真核生物に見られる。動物はC27ステロールをさらに改変してC28及びC29ステロールを生成する能力を有しないため、専らC27ステロールを作る。しかしながら植物にはC28及びC29ステロールを合成する能力があり、C28/C29植物ステロールは多くの場合にフィトステロールと称される。所与の植物のステロールプロフィールはC29ステロールが高く、植物における主要なステロールは、典型的にはC29ステロールのb−シトステロール及びスチグマステロールである。対照的に、非植物生物のステロールプロフィールには、より大きい割合のC27及びC28ステロールが含まれる。例えば真菌類及び多くの微細藻類中のステロールは、主としてC28ステロールである。このステロールプロフィール、特に、植物でC28ステロールと比べてC29ステロールが顕著に優勢であることが、土壌試料中の植物と海洋物との比率を決定する際に利用されている(Huang,Wen−Yen,Meinschein W.G.,“Sterols as ecological indicators”;Geochimica et Cosmochimia Acta.Vol 43.pp 739−745)。
【0147】
一部の実施形態では、本明細書に提供される微細藻類油中の主要ステロールは、b−シトステロール及びスチグマステロール以外のステロールである。微細藻類油の一部の実施形態では、C29ステロールは重量基準で総ステロール含有量の50%、40%、30%、20%、10%、又は5%未満を占める。
【0148】
一部の実施形態では、本明細書に提供される微細藻類油は、C29ステロールより多いC28ステロールを含有する。微細藻類油の一部の実施形態では、C28ステロールは、重量基準で総ステロール含有量の50%、60%、70%、80%、90%、又は95%超を占める。一部の実施形態では、C28ステロールはエルゴステロールである。一部の実施形態では、C28ステロールはブラシカステロールである。
【0149】
X.化学修飾
本発明の油は化学的に改変され得る。かかる化学的改変の一つは水素化であり、これは、グリセロ脂質又は遊離脂肪酸の脂肪酸構成要素の二重結合に水素を添加するものである。水素化プロセスは、特定の用途により好適であり得る半固体又は固体脂肪への液体油の転換を可能にする。
【0150】
本明細書に記載される方法により生成される油の水素化は、以下に報告されるとおり、本明細書に提供される方法及び/又は材料の1つ以上と併せて実施することができる:米国特許第7,288,278号明細書(食品添加剤又は薬剤);同第5,346,724号明細書(潤滑製品);同第5,475,160号明細書(脂肪アルコール);同第5,091,116号明細書(食用油);同第6,808,737号明細書(マーガリン及びスプレッド用構造脂肪);同第5,298,637号明細書(低カロリー脂肪代用物);同第6,391,815号明細書(水素化触媒及び硫黄吸着剤);同第5,233,099号明細書及び同第5,233,100号明細書(脂肪アルコール);同第4,584,139号明細書(水素化触媒);同第6,057,375号明細書(泡止め剤);同第7,118,773号明細書(食用エマルションスプレッド)。
【0151】
当業者は、様々なプロセスを用いて炭水化物を水素化し得ることを認識するであろう。一つの好適な方法としては、水素化反応槽において水素化生成物が形成されるのに十分な条件下で炭水化物を水素又は好適なガスと混合された水素及び触媒と接触させることが挙げられる。水素化触媒は、概して、Cu、Re、Ni、Fe、Co、Ru、Pd、Rh、Pt、Os、Ir、及び合金又はそれらの任意の組み合わせを、単独で、或いはW、Mo、Au、Ag、Cr、Zn、Mn、Sn、B、P、Bi、及び合金又はそれらの任意の組み合わせなどの助触媒と共に含むことができる。他の有効な水素化触媒材料としては、担持ニッケルか、或いはレニウムで修飾されたルテニウムが挙げられる。ある実施形態では、水素化触媒はまた、触媒の所望の機能性に応じた担体のうちいずれか一つも含む。水素化触媒は、当業者に公知の方法によって調製され得る。
【0152】
一部の実施形態では、水素化触媒には、担持第VIII族金属触媒及び金属スポンジ材料(例えばスポンジニッケル触媒)が含まれる。ラネーニッケルは、この発明での使用に好適な活性スポンジニッケル触媒の例を提供する。他の実施形態では、本発明における水素化反応は、ニッケル−レニウム触媒又はタングステン修飾ニッケル触媒を含む触媒を使用して実施される。本発明の水素化反応に好適な触媒の一例は、炭素担持ニッケル−レニウム触媒である。
【0153】
ある実施形態では、重量単位でほぼ等量のニッケル及びアルミニウムの合金を、約25重量%の水酸化ナトリウムを例えば含有するアルカリ水溶液で処理することにより、好適なラネーニッケル触媒が調製されてもよい。アルミニウムはアルカリ水溶液に選択的に溶解し、大部分がニッケルで少量のアルミニウムを含むスポンジ型材料をもたらす。初期合金は、形成されたスポンジニッケル触媒中に約1〜2重量%が残るような量の助触媒金属(すなわちモリブデン又はクロム)を含む。別の実施形態では、水素化触媒は、水中のトリニトラトニトロシルルテニウム(III)、塩化ルテニウム(III)の溶液を使用し、好適な担体材料を含浸させて調製される。次に溶液を乾燥させ、含水量が約1重量%未満の固体を形成する。次に固体を回転式ボール炉において4時間、大気圧下300℃(焼成なし)又は400℃(焼成あり)の水素流中で還元してもよい。冷却し、且つ窒素で触媒を不活性化した後、窒素中5容積%の酸素が触媒に2時間送られる。
【0154】
特定の実施形態において、記載される触媒は触媒担体を含む。触媒担体は触媒を安定化させ、担持する。使用される触媒担体の種類は、選択した触媒及び反応条件に依存する。本発明に好適な担体としては、限定はされないが、炭素、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バナジア、窒化物、窒化ホウ素、ヘテロポリ酸、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛、クロミア、ゼオライト、カーボンナノチューブ、炭素フラーレン及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0155】
この発明で使用される触媒は、当業者に公知の従来の方法を用いて調製することができる。好適な方法としては、限定はされないが、初期湿潤、蒸発含浸、化学蒸着、洗浄−コーティング、マグネトロンスパッタリング技術などを挙げることができる。
【0156】
水素化反応を実施するための条件は、出発物質の種類及び所望の生成物に基づき異なり得る。当業者は、本開示の利益をもって、適切な反応条件を認識するであろう。一般に、水素化反応は80℃〜250℃の温度で、好ましくは90℃〜200℃で、最も好ましくは100℃〜150℃で行われる。一部の実施形態では、水素化反応は500KPa〜14000KPaの圧力で行われる。
【0157】
本発明の水素化分解反応で使用される水素には、外部水素、再生水素、現場で発生する水素、及びそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。本明細書で使用されるとき、用語「外部水素」は、バイオマス反応それ自体から生じるのではなく、むしろ別の供給源からその系に添加される水素を指す。
【0158】
別のかかる化学的改変は、エステル交換である。天然で産生されるグリセロ脂質は、脂肪酸構成要素の分布が均一でない。油との関連において、エステル交換は、異なるグリセロ脂質の2つのエステル間でのアシル基の交換を指す。エステル交換プロセスは、グリセロ脂質の混合物の脂肪酸構成要素を転位させて分布パターンを改変し得る機構を提供する。エステル交換は周知の化学的プロセスであり、概して、油の混合物をある時間にわたり(例えば30分間)、アルカリ金属又はアルキル化アルカリ金属(例えばナトリウムメトキシド)などの触媒の存在下で(約200℃に)加熱することを含む。このプロセスを用いて油混合物の脂肪酸構成要素の分布パターンをランダム化することができ、又は所望の分布パターンを生成するように指向させることができる。脂質を化学的に改変するこの方法は、脂質としての乾燥細胞重に対する割合が少なくとも20%である微生物バイオマスなどの、本明細書に提供される材料に対して実施することができる。
【0159】
起こり得る一部のTAGの融点未満の温度に油混合物を維持することにより、指向性エステル交換を実施することができ、ここでは脂肪酸の特定の分布パターンが求められる。これによりそれらのTAGの選択的な結晶化がもたらされ、このようなTAGは結晶化に伴い反応混合物から効果的に除去される。このプロセスは、例えば、油中の脂肪酸の大部分が沈殿し終えるまで続けることができる。指向性エステル交換プロセスを使用すると、例えば、より長鎖の脂肪酸をより短鎖のカウンターパートによって置換することで、より低いカロリー含有量の生成物を生成することができる。指向性エステル交換はまた、不要なトランス異性体を生じ得る水素化に頼ることなしに、食品添加剤又は生成物(例えばマーガリン)において求められる所望の融解特性及び構造的特徴を提供できる脂肪の混合物を含む生成物の生成にも用いられる。
【0160】
本明細書に記載される方法により生成される油のエステル交換は、以下に報告されるような方法及び/又は材料の1つ以上と併せて実施するか、又はそのような生成物を生成するため実施することができる:米国特許第6,080,853号明細書(非可消化性脂肪代用物);同第4,288,378号明細書(ピーナッツバター安定化剤);同第5,391,383号明細書(食用スプレー油);同第6,022,577号明細書(食品用の食用脂肪);同第5,434,278号明細書(食品用の食用脂肪);同第5,268,192号明細書(低カロリーナッツ製品);同第5,258,197号明細書(低カロリー食用組成物);同第4,335,156号明細書(食用脂肪生成物);同第7,288,278号明細書(食品添加剤又は薬剤);同第7,115,760号明細書(分画プロセス);同第6,808,737号明細書(構造脂肪);同第5,888,947号明細書(エンジン潤滑剤);同第5,686,131号明細書(食用油混合物);及び同第4,603,188号明細書(硬化性ウレタン組成物)。
【0161】
本発明における一実施形態では、上記に記載したとおりの油のエステル転移反応の後に、米国特許第6,465,642号明細書に報告されるとおり、エステル転移反応した生成物とポリオールとの反応が続き、ポリオール脂肪酸ポリエステルが生成される。かかるエステル化及び分離プロセスは、以下のとおりの工程を含み得る:石鹸の存在下で低級アルキルエステルをポリオールと反応させる工程;生成物混合物から残留石鹸を除去する工程;生成物混合物を水洗及び乾燥することにより不純物を除去する工程;精製のため生成物混合物を漂白する工程;生成物混合物中のポリオール脂肪酸ポリエステルから未反応低級アルキルエステルの少なくとも一部を分離する工程;及び分離した未反応低級アルキルエステルを再生利用する工程。
【0162】
エステル転移反応はまた、米国特許第6,278,006号明細書に報告されるとおり、短鎖脂肪酸エステルを含む微生物バイオマスに対して実施することもできる。一般に、エステル転移反応は、好適な触媒の存在下で油に短鎖脂肪酸エステルを添加し、混合物を加熱することによって実施され得る。一部の実施形態では、油は、重量単位で反応混合物の約5%〜約90%を含む。一部の実施形態では、短鎖脂肪酸エステルは、重量単位で反応混合物の約10%〜約50%であってもよい。触媒の非限定的な例としては、塩基触媒、ナトリウムメトキシド、酸触媒、例えば、硫酸及び酸性粘土などの無機酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸などの有機酸、並びにAmberlyst 15などの酸性樹脂が挙げられる。ナトリウム及びマグネシウムなどの金属、及び金属水素化物もまた、有用な触媒である。
【0163】
別のかかる化学的改変はヒドロキシル化であり、これには、二重結合への水の付加によってもたらされる飽和及びヒドロキシル部分の取り込みが関わる。ヒドロキシル化プロセスは、グリセロ脂質の1つ以上の脂肪酸構成要素からヒドロキシ脂肪酸への変換機構を提供する。ヒドロキシル化は、例えば米国特許第5,576,027号明細書に報告される方法を用いて実施することができる。ヒマシ油及びその誘導体を含むヒドロキシル化脂肪酸は、食品添加剤、界面活性剤、色素湿潤剤、消泡剤、防水添加剤、可塑剤、化粧品用乳化剤及び/又は脱臭剤を含めたいくつかの工業用途、並びにエレクトロニクス、医薬品、ペンキ、インク、接着剤、及び潤滑剤における成分として有用である。グリセリドのヒドロキシル化がどのように実施され得るかについての一例は、以下のとおりである:脂肪を、ヘプタンと組み合わせて好ましくは約30〜50℃に加熱し、30分間以上温度を維持し得る;次に混合物に酢酸を添加した後、硫酸水溶液を添加し、続いて過酸化水素水溶液を添加することができ、これは少量ずつ増加させながら1時間かけて混合物に添加される;過酸化水素水の後、次に温度を少なくとも約60℃に上昇させ、少なくとも6時間撹拌し得る;撹拌後、混合物を沈殿させ、反応により形成された下層の水層を取り出すと同時に、反応により形成された上層のヘプタン層を約60℃の温度の熱水で洗浄し得る;次に洗浄したヘプタン層を水酸化カリウム水溶液でpH約5〜7に中和し、次に真空留去し得る;次に反応生成物を100℃で真空乾燥させ、乾燥した生成物を真空条件下で蒸気脱臭し、珪藻土を使用して約50°〜60℃でろ過する。
【0164】
本明細書に記載される方法によって生成される微生物油のヒドロキシル化は、以下に報告されるような方法及び/又は材料の1つ以上と併せて実施するか、又はそのような生成物を生成するため実施することができる:米国特許第6,590,113号明細書(油性コーティング及びインク);同第4,049,724号明細書(ヒドロキシル化プロセス);同第6,113,971号明細書(オリーブ油バター);同第4,992,189号明細書(潤滑剤及び潤滑添加剤);同第5,576,027号明細書(ヒドロキシル化乳);同第6,869,597号明細書(化粧品)。
【0165】
ヒドロキシル化したグリセロ脂質は、エストライドに変換することができる。エストライドはグリセロ脂質からなり、ここではヒドロキシル化脂肪酸構成要素が別の脂肪酸分子とエステル化されている。ヒドロキシル化グリセロ脂質からエストライドへの変換は、Isbell et al.,JAOCS 71(2):169−174(1994)により記載されるとおり、グリセロ脂質と脂肪酸との混合物を加温し、混合物を鉱酸に接触させることによって行われ得る。エストライドは、限定なしに以下に報告されるものを含めた、様々な用途において有用である:米国特許第7,196,124号明細書(エラストマー材料及び床仕上げ材);同第5,458,795号明細書(高温用途の濃化油);同第5,451,332号明細書(工業用途の流体);同第5,427,704号明細書(燃料添加剤);同第5,380,894号明細書(潤滑剤、グリース、可塑剤、及び印刷インク)。
【0166】
上記に詳細に記載した本発明を以下の実施例に例示する。これらの実施例は、特許請求される本発明を限定するのでなく説明するために提供されるものである。微細藻類の遺伝子操作の他の例については、国際公開第2008/151149号パンフレット、国際公開第2010/063032号パンフレット、国際公開第2010/063031号パンフレット、国際公開第2011/150410号パンフレット、国際公開第2011/150411号パンフレット、国際公開第2012/061647号パンフレット、国際公開第2012/106560号パンフレット、国際公開第2013/158938号パンフレット、国際公開第2015/051319号パンフレット、国際公開第2014/176515号パンフレット、及びPCT/US2016/024106号明細書を参照することができ、これらは、様々な脂質生合成経路酵素、例えば以下に挙げるものなどを発現させるための細胞の操作を示している。
【実施例】
【0173】
XI.実施例
実施例1:脂肪酸メチルエステル検出による脂肪酸分析
乾燥バイオマスから脂質サンプルを調製した。2mLのMeOH中5%H
2SO
4に20〜40mgの乾燥バイオマスを再懸濁し、適量の好適な内部標準(C19:0)を含有する200ulのトルエンを添加した。この混合物を短時間超音波処理してバイオマスを分散させ、次に70〜75℃で3.5時間加熱した。2mLのヘプタンを添加して脂肪酸メチルエステル類を抽出し、続いて2mLの6%K
2CO
3(水溶液)を添加して酸を中和した。この混合物を激しく撹拌し、上層の一部をNa
2SO
4(無水)が入ったバイアルに移して、標準的なFAME GC/FID法(脂肪酸メチルエステルガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出法)を用いたガスクロマトグラフィー分析を行った。以下に報告する脂肪酸プロフィールは、この方法によって決定した。
【0174】
実施例2:油からのトリアシルグリセリド精製及びトリアシルグリセリドリパーゼ消化方法
約10mgの油をジクロロメタン中に溶解させて、それをヘプタンでプレコンディショニングしたBond−Elutアミノプロピル固相抽出カートリッジ(500mg)にロードすることにより、各油サンプルのトリアシルグリセリド(TAG)画分を分離した。TAGをジクロロメタン(dicholoromethane)−MeOH(1:1)で収集管に溶出させ、一方、極性脂質はカラムに残留した。窒素ガス流で溶媒を除去した。トリス緩衝液及び2mgブタ膵リパーゼ(II型、Sigma、100−400単位/mg)をTAG画分に添加し、続いて胆汁酸塩及び塩化カルシウム溶液を添加した。ブタ膵リパーゼによってsn−1及びsn−3脂肪酸が切断され、それにより2−モノアシルグリセリド及び遊離脂肪酸が生成される。この混合物を撹拌しながら40℃で3分間加熱し、短時間冷却し、次に6N HClでクエンチした。次にこの混合物をジエチルエーテルで抽出し、エーテル層を水で洗浄して、次に硫酸ナトリウムで乾燥させた。窒素流で溶媒を除去した。モノアシルグリセリド(MAG)画分を分離するため、残渣をヘプタン中に溶解させて、ヘプタンで前処理した第2のアミノプロピル固相抽出カートリッジにロードした。残留TAG類はジエチルエーテル−ジクロロメタン−ヘプタン(1:9:40)で溶出し、ジアシルグリセリド類(DAG)は酢酸エチル−ヘプタン(1:4)で溶出し、及びMAGはカートリッジからジクロロメタン−メタノール(2:1)で溶出した。次に得られたMAG、DAG、及びTAG画分を窒素流で濃縮乾固し、実施例1に記載されるとおりのGC/FID分析の常法の直接エステル交換反応法に供した。
【0175】
実施例3:位置特異的プロフィールの分析
SIL−30ACオートサンプラー、2つのLC−30ADポンプ、DGU−20A5インラインデガッサ、及びCTO−20Aカラムオーブンを含むShimadzu Nexera超高速液体クロマトグラフィーシステムを、APCI源を備えたShimadzu LCMS 8030トリプル四重極質量分析計と組み合わせて用いて、LC/MS TAG分布分析を行った。データは、CIDガス(アルゴン)圧を230kPaに設定してポジティブイオンモードで1428u/秒のスキャン速度でm/z350〜1050のQ3スキャンを用いて取得した。APCI、脱溶媒和ライン、及び熱ブロック温度はそれぞれ300、250、及び200℃に設定し、霧化ガス及び乾燥ガスの流量はそれぞれ3.0L/分及び5.0L/分であり、及びインターフェース電圧は4500Vであった。油サンプルをジクロロメタン−メタノール(1:1)中に5mg/mLの濃度で溶解させて、0.8μLのサンプルを30℃に維持したShimadzu Shim−pack XR−ODS III(2.2μm、2.0×200mm)に注入した。クロマトグラフ分離には、0.48mL/分で27分かけた30%ジクロロメタン−2−プロパノール(1:1)/アセトニトリル〜51%ジクロロメタン−2−プロパノール(1:1)/アセトニトリルの直線勾配を用いた。
【0176】
実施例4:カプリン酸高濃度油の調製
トリグリセリド油は、典型的にはカプリン酸(C10:0)含有量が高くない。ほとんどの植物油及び動物油においてカプリン酸は無視できるほど少量であり、多くの場合に0%と報告される。最も高いカプリン酸含有量の市販の油は、約10%のカプリン酸のヤシ油及び約4%のカプリン酸のパーム核油である。
【0177】
カプリン酸を産生するようにプロトテカ属(Prototheca)を操作した。組換え株A126は75%を超えるカプリン酸を産生した。
【0178】
株A126は以下のとおり調製した。基本株S6165は、UTEX1435に由来する非組換えの古典的に突然変異させたプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)株である。UTEX 1435はテキサス大学(University of Texas)カルチャーコレクションから入手し、脂質収率が増加するように古典的に突然変異させた。この古典的突然変異誘発によっては、UTEX 1435と比較したときS6165によって産生される油の脂肪酸プロフィールは変化しなかった。
【0179】
株A126は、S6165の2つの連続する形質転換によって作成した。初めにS6165を微粒子銃形質転換によって構築物D3118(配列番号15)で形質転換して株S7897を調製した。次に、S7897を構築物D3798(配列番号16)で形質転換した。
【0180】
構築物D3118は、DAO1b−5’::CrTUB2−ScSUC2−PmPGH:PmSAD2−2p−PmSADtp−CwKASA1−CvNR:PmSAD2−2p−CpSAD1tp_トリミング型:CpauFATB1−CvNR::DAO1b−3’と書かれる。D3118は相同組換えによるDAO1b遺伝子座への組み込みを標的化する。5’から3’方向に進んで、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)β−チューブリンプロモーター(CrTUB2)がサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ショ糖インベルターゼ遺伝子(ScSUC2)の発現をドライブする。PmPGHは、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)PGH3’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD2−2pプロモーター(PmSAD2−2p)、続いてプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD輸送ペプチド(PmSADtp)がクフェア・ライチイ(Cuphea wrightii)KASA1遺伝子(CwKASA1)の発現をドライブし、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。構築物D3118はまた、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD2−2pプロモーター(PmSAD2−2p)及びクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)SAD1輸送ペプチド(SAD1tp)によってドライブされるクフェア・パウシペタラ(Cuphea paucipetala)FATB1(CpauFATB1)の発現用のポリヌクレオチドも提供し、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。
【0181】
構築物D3798は、KASI−2ver2_5’::PmHXT1−2v2−ScarMEL1−PmPGK:CvNR:PmSAD2−2v3−PmSADtp−CpauKASIVa−CvNR:PmSAD2−2v3−CpSAD1tp_tr2−CcFATB4−CvNR::KAS1−2ver2_3’と書かれる。D3798はKAS1遺伝子座への組み込みを標的化し、それにより内因性KAS1遺伝子の一方又は両方の対立遺伝子をノックアウトする。5’から3’方向に進んで、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)HXT1−2v2プロモーターが、メリビオース上での成長能力を付与するサッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)MEL1遺伝子の発現をドライブし、これを選択可能マーカーとして利用した。PmPGKはプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)PGK3’UTRであり、CvNRはクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD2−2v3プロモーター(PmSAD2−2v3)、続いてプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD輸送ペプチド(PmSADtp)がクフェア・パウシペタラ(Cuphea paucipetala)KASIVa遺伝子の発現をドライブし、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。構築物D3798はまた、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD2−2v3プロモーター(PmSAD2−2v3)及びクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)SAD1輸送ペプチド(SAD1tp−tr2)によってドライブされるクスノキ(Cinnamomum camphora)FATB4(CcFATB4)の発現用の配列も提供し、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。
【0182】
S6165、S7897及びA126の脂肪酸プロフィールを以下の表9に示す。
【0183】
【表9】
【0184】
実施例5:カプリル酸及びカプリン酸高濃度油の調製
トリグリセリド油は、典型的にはカプリル酸(C8:0)及びカプリン酸(C10:0)含有量が高くない。ほとんどの植物油及び動物油においてカプリル酸及びカプリン酸は無視できるほど少量であり、多くの場合に0%と報告される。最も高いカプリル酸含有量の市販の油は、約9%のカプリル酸のヤシ油及び約3%のカプリル酸のパーム核油である。ヤシ油のカプリル酸とカプリン酸とを合わせた含有量は20%未満であり、及びパームヤシ油については、これは8%未満である。
【0185】
カプリル酸及びカプリン酸の両方を産生するようにプロトテカ属(Prototheca)を操作した。組換え株S8610は21%のカプリル酸及び34%のカプリン酸を産生した。
【0186】
株S8610は基本株S6165で調製した。株S8610は、S6165の2つの連続する形質転換によって作成した。初めにS6165を微粒子銃形質転換によって構築物D3104(配列番号17)で形質転換して株S7786を調製した。次に、S7786を微粒子銃形質転換によって構築物D3937(配列番号18)で形質転換して株S8610を作製した。
【0187】
構築物D3104は、THI4a::CrTUB2−ScSUC2−PmPGH:PmACP1−1p−CpSAD1tp_ChFATB2ExtC_FLAG−CvNR::THI4aと書かれる。D3104は相同組換えによるTHI4A遺伝子座への組み込みを標的化する。5’から3’方向に進んで、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)β−チューブリンプロモーター(CrTUB2)がサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ショ糖インベルターゼ遺伝子(ScSUC2)の発現をドライブする。PmPGHは、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)PGH3’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)ACP1−1pプロモーター(PmACP1−1p)、続いてクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)SAD輸送ペプチド(CpSADtp)がクフェア・フッケリアナ(Cuphea hookeriana)FATB2遺伝子(ChFATB2)の発現をドライブし、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。THI4遺伝子は、チアミンの合成に必要な酵素をコードする。THI4はチアゾール含有部分の合成を触媒し、この部分が最終的にピリミジン含有部分と縮合してチアミンが生成される。
【0188】
構築物D3937は、KASI−1ver2_5’::PmHXT1−2v2−ScarMEL1−PmPGK:CvNR:PmSAD2−2v3−PmSADtp−CpauKASIVa−CvNR:PmACP1−1p−CpSAD1tp_trmd:CcFATB4−CvNR::KAS1−1ver2_3’と書かれる。D3937はKAS1遺伝子座への組み込みを標的化し、それにより内因性KAS1遺伝子の一方又は両方の対立遺伝子をノックアウトする。5’から3’方向に進んで、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)HXT1−2v2プロモーターが、メリビオース上での成長能力を付与するサッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)MEL1遺伝子の発現をドライブし、これを選択可能なマーカーとして利用した。PmPGKはプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)PGK3’UTRであり、及びCvNRはクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD2−2v3プロモーター(PmSAD2−2v3)、続いてプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD輸送ペプチド(PmSADtp)がクフェア・パウシペタラ(Cuphea paucipetala)KASIVa遺伝子の発現をドライブし、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。構築物D3937はまた、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)ACP1−1pプロモーター(PmACP1−1p)及びクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)SAD1輸送ペプチド(SAD1tp−trmd)によってドライブされるクスノキ(Cinnamomum camphora)FATB4(CcFATB4)の発現用の配列も提供し、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。
【0189】
S6165、S7786及びS8610の脂肪酸プロフィールを以下の表10に示す。
【0190】
【表10】
【0191】
S8610油のトリアシルグリセロールプロフィールを表11に示す。本願において使用されるとき、略称「Cy」はカプリル酸であり、「Ca」はカプリン酸であり、「La」はラウリン酸であり、「M」はミリスチン酸であり、「P」はパルミチン酸であり、「S」はステアリン酸であり、「O」はオレイン酸であり、「L」はリノール酸であり、及び「Ln」はリノレン酸である。表11は、S8610油におけるTAG分子集団の50%超が、1つのTAG分子に2つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸及び1つのパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸又はリノレン酸脂肪酸があるトリアシルグリセリド分子を含むことを示している。同様に、TAG分子集団の20%超が、1つのTAG分子に2つのパルミチン酸(pamitic)、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸又はリノレン酸脂肪酸及び1つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸があるトリアシルグリセロール分子を含む。
【0192】
【表11】
【0193】
実施例6:カプリン酸及びラウリン酸高濃度油の調製
トリグリセリド油は、典型的にはカプリン酸(C10:0)及びラウリン酸(C12:0)の両方の含有量が高くない。ほとんどの植物油及び動物油においてカプリン酸は無視できるほど少量であり、多くの場合に0%と報告される。ラウリン酸含有量が豊富な市販の油はヤシ油及びパーム核油である。他の市販の油は、典型的にはラウリン酸含有量が1%未満である。ヤシ油のカプリン酸とラウリン酸とを合わせた含有量は約60%であり、パーム核油については、通常60%未満である。
【0194】
高レベルのカプリン酸及びラウリン酸を産生するようにプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)を操作した。組換え株S6207は80%を超えるカプリン酸とラウリン酸とを合わせた含有量を生じた。
【0195】
株S6207は基本株S1920で調製した。基本株S1920は、UTEX1435に由来する非組換えの古典的に突然変異させたプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)株である。UTEX 1435はテキサス大学(University of Texas)カルチャーコレクションから入手し、脂質収率が増加するように古典的に突然変異させた。株S6207は、S1920の2つの連続する形質転換によって作成した。初めにS1920を微粒子銃形質転換によって構築物D725(配列番号19)で形質転換して株S2655を調製した。S2655をカプリン酸及びラウリン酸レベルが増加するように古典的に突然変異させて株S5050を作成した。次に、S5050を微粒子銃形質転換によって構築物D1681(配列番号20)で形質転換して株S6207を作製した。
【0196】
構築物D725は、SAD2B_5’::CrTUB2−ScSUC2−CpEF1:PmAMT3−PmFADtp_CwFATB2−CvNR:SAD2B_3’と書かれる。D725は相同組換えによるSAD2B遺伝子座への組み込みを標的化する。5’から3’方向に進んで、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)β−チューブリンプロモーター(CrTUB2)が、細胞のショ糖上での成長能力を付与するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ショ糖インベルターゼ遺伝子(ScSUC2)の発現をドライブする。CpEF1はクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)EF13’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)AMT3プロモーター(PmAMT3)、続いてプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)FAD輸送ペプチド(PmFADtp)がクフェア・ライチイ(Cuphea wrightii)FATB2遺伝子(CwFATB2)の発現をドライブし、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。
【0197】
構築物D1681は、KAS1−1_5’::CrTUB2−NeoR−CvNR:PmUAPA1−ChFATB2−CpCD181:PmAMT3−PmSADtp−CwKASA1−CvNR::KAS1−1_3’と書かれる。D1681は相同組換えによるKAS1−1遺伝子座への組み込みを標的化し、それにより内因性KAS1遺伝子の一方又は両方の対立遺伝子をノックアウトする。5’から3’方向に進んで、コナミドリムシ(C.reinhardtii)β−チューブリンプロモーター(CrTUB2)が、細胞のG418上での成長能力を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(NeoR)の発現をドライブする。CvNRはクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)UAPA1プロモーター(PmUAPA1)がクフェア・フッケリアナ(Cuphea hookeriana)FATB2遺伝子(ChFATB2)の発現をドライブする。CpCD181はクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)CD181 3’UTRである。次に、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)AMT3プロモーター(PmAMT3)及びプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)SAD輸送ペプチド(PmSADtp)がクフェア・ライチイ(Cuphea wrightii)KASA1の発現をドライブし、それにクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)硝酸レダクターゼ3’UTR(CvNR)が続く。
【0198】
S1920、S2655、S5050、及びS6207の脂肪酸プロフィールを以下の表12に示す。
【0199】
【表12】
【0200】
実施例7:カプリル酸及びカプリン酸高濃度油の水素化
油を完全に水素化するため50PSIの圧力の水素を使用して、2L Parrリアクターにおいて155℃の温度で0.5%Pricat Ni62/15P触媒を使用して、C8:0及びC10:0が高濃度化された実施例6の油を水素化した。Pricat NI 62/15Pは、混合支持体シリカ、マグネシア及びグラファイト上にNi相及びNiO相を含有する市販の触媒である。反応は約60分間実施し、十分に水素化した油のヨウ素価が1未満であったことから、完全な水素化が示された。ヨウ素価が4未満の水素化油は、FDAによって十分に水素化されていると見なされる。水素化は不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変換し、例えばオレイン酸がステアリン酸に変換される。
【0201】
以下の表13は、実施例6の水素化油の脂肪酸組成を示す。このデータは、不飽和脂肪酸C18:1、C18:2及びC18:3が水素化されてC18:0に変換されたことを示す。他の全ての飽和脂肪酸の量は、C18:0を除いて変わらないままであった。C8:0含有量の僅かな低下があるが、これは水素化油の処理中の損失によるものである。
【0202】
【表13】
【0203】
水素化S8610油の非位置特異的トリアシルグリセロールプロフィールを表14に示す。表14は、S8610油中のTAG分子集団の約45%が、1つのTAG分子に2つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸及び1つのパルミチン酸又はステアリン酸脂肪酸があるトリアシルグリセリド分子を含むことを示している。水素化は、2つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸及び1つのオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸を含有するTAG分子を変換し、不飽和脂肪酸がステアリン酸に変換された。TAG分子集団の約30%は、TAG分子に2つのパルミチン酸又はステアリン酸脂肪酸及び1つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸があるトリアシルグリセロール分子を含む。1つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸部分及び1つ以上のオレイン酸部分を含有するTAG分子において、オレイン酸部分がステアリン酸に変換された。
【0204】
【表14】
【0205】
実施例8:非水素化油の示差走査熱量測定
非水素化及び水素化S8610油を示差走査熱量測定(DSC)によって分析した。DSC実験は以下の加熱及び冷却プロフィールで実施した。サンプルを30.00℃から80.00℃に毎分1.00℃で加熱し、次に30.0分間80.00℃に保った。次にサンプルを80.00℃から−65.00℃に毎分1.00℃で冷却した。サンプルが−65.00℃に達したところでサンプルを−65.00℃に30.0分間保った。次に、サンプルを−65.00℃から80.00℃に毎分1.00℃で加熱した。
【0206】
図1aは非水素化S8610油の加熱曲線であり、
図1bは非水素化S8610油の冷却曲線である。加熱曲線から、非水素化油は、融解温度の中心が0.12℃にある幅の広いシングルピークを有することが示される。冷却曲線は、凍結温度の中心が−29.70℃にある幅の広いシングルピークを示す。
【0207】
図2aは水素化S8610油の加熱曲線であり、
図2bは水素化S8610油の冷却曲線である。これらの加熱及び冷却曲線は、この水素化油が複数の融解及び冷却ピークを有することを示しており、複数のトリアシルグリセリド集団が存在することが示唆される。加熱曲線は、融解温度の中心が1.17℃、17.00℃、31.19℃、及び37.71℃にある少なくとも4つのピークを示す。31.19℃、及び37.71℃で融解するトリアシルグリセリド集団は、これらの融解温度がヒト口腔の体温と同様であるという理由から、菓子用脂肪として有用である。ヒト口腔体温で融解する脂肪はココアバター等価物として用いられる。冷却曲線は、凍結温度の中心が24.19℃、19.10℃、及び0.84℃にある少なくとも3つのピークを示す。約10℃にショルダの第4のピークがあるように見える。
【0208】
実施例9:水素化S8610油の分画
水素化S8610油を短行程蒸留によって180℃、190℃、200℃、210℃、及び220℃で分画して、不斉トリアシルグリセリド分子集団を分離した。
【0209】
表15は、210℃で分画した水素化S8610油の留出画分及び残留画分のTAGプロフィールを示す。留出画分は、2つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸及び1つのパルミチン酸又はステアリン酸脂肪酸があるトリアシルグリセリド分子が高濃度化される。例えば、留出画分では、TAG分子の10.94%が2つのカプリン酸部分及び1つのステアリン酸部分を有するが、残留画分ではこの割合が0.75%にまで低下する。残留画分は、TAG分子に2つのパルミチン酸又はステアリン酸脂肪酸及び1つのカプリル酸又はカプリン酸脂肪酸があるトリアシルグリセリド分子が高濃度化される。例えば、残留画分では、TAG分子の23.92%が1つのカプリン酸部分及び2つのステアリン酸部分を有する。
【0210】
【表15】
【0211】
実施例10:水素化して分画した油の示差走査熱量測定
実施例X+4の水素化して分画した高カプリル酸/カプリン酸油を示差走査熱量測定によって分析した。DSC実験は実施例8の加熱及び冷却プロフィールに従い実施した。
【0212】
図3aは水素化S8610油の留出画分の加熱曲線であり、
図3bは水素化S8610油の残留画分の冷却曲線である。これらの加熱及び冷却曲線は、この水素化油が複数の融解及び冷却ピークを有することを示しており、複数のトリアシルグリセリド集団が存在することが示唆される。加熱曲線は、融解温度の中心が−10.53℃、1.51℃、5.71℃、10.25℃、15.37℃、及び21.88℃にある少なくとも5つのピークを示す。留出画分の加熱曲線は、融点がより低いTAG集団の高濃度化を示す。残留画分の加熱曲線は、融解温度の中心が46.29℃、42.30℃、27.05℃、及び23.18℃にある少なくとも4つのピークを示す。残留画分の加熱曲線は、融点がより高いTAG集団の高濃度化を示す。ヒト口腔の体温に近いより高い温度で融解するトリアシルグリセリド集団が、菓子用脂肪として有用である。ヒト口腔体温で融解する脂肪はココアバター等価物として用いられる。
【0213】
配列表
配列番号1
UTEX 1439、UTEX 1441、UTEX 1435、UTEX 1437プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)の23S rRNA
【化1】
配列番号2
成熟天然プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)KASIIアミノ酸配列(天然トランジットペプチドに下線を引く)
【化2】
配列番号3
pSZ1358由来のセイヨウアブラナ(Brassica napus)C18:0選択的チオエステラーゼのコドン最適化コード領域
【化3】
配列番号4
3X FLAGタグ(太字)を有するセイヨウアブラナ(Brassica napus)アシル−ACPチオエステラーゼ(Genbank受託番号CAA52070)
【化4】
配列番号5
UTEX 250ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(SAD)葉緑体トランジットペプチド及び3X FLAG(登録商標)タグを有するセイヨウアブラナ(Brassica napus)アシル−ACPチオエステラーゼ(GenBank受託番号CAA52070)
【化5】
配列番号6
UTEX 250ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(SAD)葉緑体トランジットペプチドを有するベニバナ(C.tinctorius)FATA(GenBank受託番号AAA33019)
【化6】
配列番号7
3xFLAG(登録商標)エピトープタグを有するトウゴマ(R.communis)FATA(Genbank受託番号ABS30422)
【化7】
配列番号8
3X FLAG(登録商標)エピトープタグを有するカカオ(Theobroma cacao)FATA1
【化8】
配列番号9
3X FLAG(登録商標)エピトープタグを有するマンゴスチン(G.mangostana)FATA1(GenBank受託番号AAB51523)
【化9】
配列番号10
プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)FAD−Dオメガ3デサチュラーゼ
【化10】
配列番号11
【化11】
配列番号12
カメリナ・サティバ(Camelina sativa)オメガ−3 FAD7−2
【化12】
配列番号13
プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)デルタ12デサチュラーゼ対立遺伝子2
【化13】
配列番号14
カメリナ・サティバ(Camelina sativa)オメガ−3 FAD7−1
【化14】
配列番号15
D3118/pSZ4354配列
構築物D3118は、DAO1b−5’::CrTUB2−ScSUC2−PmPGH:PmSAD2−2p−PmSADtp−CwKASA1−CvNR:PmSAD2−2p−CpSAD1tp_トリム型:CpauFATB1−CvNR::DAO1b−3’と書かれる
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
DAO1b−5’−ヌクレオチド1〜735
CrTUB2−ヌクレオチド742〜1053
ScSUC2−ヌクレオチド1066〜2664
PmPGH 3’UTR−ヌクレオチド2671〜3114
PmSAD2−2p−ヌクレオチド3333〜4776
PmSADtp−CwKASAI−ヌクレオチド4780〜6357
CvNR−ヌクレオチド6364〜6764
PmSAD2−2p−ヌクレオチド6772〜8215
CpSAD1tp_トリム型:CpauFATB1−ヌクレオチド8222〜9508
CvNR−ヌクレオチド9515〜9916
DAO1b−3’−ヌクレオチド9949〜10521
配列番号16
D3798/pSZ4902配列
構築物D3798はKASI−2ver2_5’::PmHXT1−2v2−ScarMEL1−PmPGK:CvNR:PmSAD2−2v3−PmSADtp−CpauKASIVa−CvNR:PmSAD2−2v3−CpSAD1tp_tr2−CcFATB4−CvNR::KAS1−2ver2_3’と書かれる
【化19】
【化20】
【化21】
KASI−2ver2_5’::PmHXT1−2v2−ScarMEL1−PmPGK:CvNR:PmSAD2−2v3−PmSADtp−CpauKASIVa−CvNR:PmSAD2−2v3−CpSAD1tp_tr2−CcFATB4−CvNR::KAS1−2ver2_3’
KASI−2ver2_5’−ヌクレオチド1〜750
PmHXTI−2v2−ヌクレオチド757〜1215
ScarMEL1−ヌクレオチド1222〜2637
PmPGK 3’UTR−ヌクレオチド2654〜3098
CvNR−ヌクレオチド3105〜3506
PmSAD2−2v3−ヌクレオチド3521〜4086
PmSADtp−CpauKASIVa−ヌクレオチド4093〜5695
CvNR−ヌクレオチド5703〜6104
PmSAD2−2v3−ヌクレオチド6117〜6682
CpSAD1tp_tr2−CcFATB4−6693〜7838
CvNR−ヌクレオチド7845〜8246
KAS1−2ver2_3’−ヌクレオチド8259〜9010
配列番号17
D3104/pSZ4330配列
構築物D3104はTHI4a::CrTUB2−ScSUC2−PmPGH:PmACP1−1p−CpSAD1tp_ChFATB2ExtC_FLAG−CvNR::THI4aと書かれる
【化22】
【化23】
【化24】
THI4a::CrTUB2−ScSUC2−PmPGH:PmACP1−1p−CpSAD1tp_ChFATB2ExtC_FLAG−CvNR::THI4a
THI4A_5’−ヌクレオチド1〜787
CrTUB2−ヌクレオチド794〜1105
ScSUC2−ヌクレオチド1118〜2716
PmPGH−ヌクレオチド2723〜3166
PmACP1−1p−ヌクレオチド3385〜3955
CpSAD1tp_ChFATB2ExtC_FLAG−ヌクレオチド3965〜5308
CvNR−ヌクレオチド5315〜5716
THI4A_3’−ヌクレオチド5749〜6451
配列番号18
D3937/pSZ5075配列
構築物D3937はKASI−1ver2_5’::PmHXT1−2v2−ScarMEL1−PmPGK:CvNR:PmSAD2−2v3−PmSADtp−CpauKASIVa−CvNR:PmACP1−1p−CpSAD1tp_トリム型:CcFATB4−CvNR::KAS1−1ver2_3’と書かれる
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
KASI−1ver2_5’::PmHXT1−2v2−ScarMEL1−PmPGK:CvNR:PmSAD2−2v3−PmSADtp−CpauKASIVa−CvNR:PmACP1−1p−CpSAD1tp_trmd:CcFATB4−CvNR::KAS1−1ver2_3’
KASI−1ver2_5’−ヌクレオチド1〜750
PmHXT1−2v2−ヌクレオチド757〜1215
ScarMEL1−ヌクレオチド1222〜2637
PmPGK 3’UTR−ヌクレオチド2654〜3098
CvNR−ヌクレオチド3105〜3506
PmSAD2−2v3−ヌクレオチド3521〜4086
PmSADtp−CpauKASIVa−ヌクレオチド4093〜5695
CvNR−ヌクレオチド5703〜6104
PmACP1−1p−ヌクレオチド6111〜6684
CpSAD1tp_trmd:CcFATB4−ヌクレオチド6694〜7839
CvNR−ヌクレオチド7846〜8247
KAS1−1ver2_3’−ヌクレオチド8261〜9004
配列番号19
D725/pSZ1413配列
構築物D725はSAD2B_5’::CrTUB2−ScSUC2−CpEF1:PmAMT3−PmFADtp_CwFATB2−CvNR:SAD2B_3’と書かれる
【化29】
【化30】
【化31】
SAD2B_5’::CrTUB2−ScSUC2−CpEF1:PmAMT3−PmFADtp_CwFATB2−CvNR:SAD2B_3’
SAD2B_5’−ヌクレオチド1〜497
CrTUB2−ヌクレオチド504〜815
ScSUC2−ヌクレオチド828〜2426
CpEF1 3’UTR−ヌクレオチド2433〜2594
PmAMT3−ヌクレオチド2818〜3882
PmFADtp_CwFATB2−ヌクレオチド3889〜5061
CvNR−ヌクレオチド5076〜5483
SAD2B_3’−ヌクレオチド5490〜5974
配列番号20
D1681/pSZ2746配列
構築物D1681はKAS1−1_5’::CrTUB2−NeoR−CvNR:PmUAPA1−ChFATB2−CpCD181:PmAMT3−PmSADtp−CwKASA1−CvNR::KAS1−1_3’と書かれる
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
KAS1−1_5’::CrTUB2−NeoR−CvNR:PmUAPA1−ChFATB2−CpCD181:PmAMT3−PmSADtp−CwKASA1−CvNR::KAS1−1_3’
KASI−1_5’−ヌクレオチド1〜646
CrTUB2−ヌクレオチド654〜965
NeoR−ヌクレオチド978〜1772
CvNR−ヌクレオチド1779〜2180
PmUAPA1−ヌクレオチド2204〜3201
ChFATB2−ヌクレオチド3322〜4377
CpCD181−ヌクレオチド4384〜4648
PmAMT3−ヌクレオチド4655〜5719
PmSADtp−CwKASA1−ヌクレオチド5723〜7300
CvNR−ヌクレオチド7307〜7707
KASI−1_3’−ヌクレオチド7721〜8313