(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-531047(P2018-531047A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】液媒体の高さに応じて上昇流空間と下降流空間とを流体連通させるための自動装置を備える通気攪拌型液媒体発酵槽
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 2 A20060101AFI20180928 2 C07C 275/
【FI】
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-540224(P2018-540224)
(86)(22)【出願日】2016年10月14日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月14日
(86)【国際出願番号】FR2016052659
(87)【国際公開番号】WO2017068265
(87)【国際公開日】20170427
(31)【優先権主張番号】15/60152
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518142328
【氏名又は名称】ジェジェ コリオリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェイル ラグレーゼ アルノー
(72)【発明者】
【氏名】バイヨン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フェイ ステファン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA02
4B029AA11
4B029BB01
4B029CC01
4B029CC02
4B029DA03
4B029DA07
4B029DB11
(57)【要約】
本発明は、容器と、2つの空間を仕切る仕切壁と、これらの空間のうち1つの下部にガスを注入するための装置と、を備える液媒体発酵槽に関する。このガスにより、ガスが注入された空間に液媒体と注入ガスとの混合物の上昇流が発生し、他方の空間に下降流が発生する。上記仕切壁には、これらの空間同士を流体連通させるための少なくとも1つの装置が設けられることにより、流体連通の構成が、流体が一方の空間から他方の空間に自由に流動できる第1の開放構成と、前述の装置により流体の流れが完全にまたは部分的に遮断される第2の閉鎖構成とで自由に切り替えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気による攪拌手段を備える、液媒体のための発酵槽(10)であって、
液媒体を収容するように適応された容器(11)と、
前記容器(11)内にあり、第1の空間(V1)および第2の空間(V2)を分離する仕切壁と、
前記第1の空間(V1)または前記第2の空間(V2)の下部にガスを注入することにより、ガスを注入した方の空間に前記液媒体と前記注入ガスとの混合物の上昇流を生じさせ、ガスを供給していない方の空間に前記混合物の下降流を生じさせる装置と、
を備え、
前記仕切壁に、前記第1の空間(V1)と前記第2の空間(V2)との間の流体連通を実現する、少なくとも1つの流体連通装置(16)が設けられ、
前記流体連通装置(16)により、前記液媒体および前記容器(11)に収容されたガスが前記流体連通装置(16)を通って一方の空間から他方の空間に自由に流体循環する第1の構成であって、前記流体連通装置(16)において、上昇流が発生する空間における前記混合物の圧力と、下降流が発生する空間における前記混合物の圧力との差が所定閾値よりも大きい場合に直ちに採用される第1の構成と、
前記流体連通装置(16)により、前記液媒体および前記容器(11)に収容されたガスの前記流体循環の全部または一部が阻止される第2の構成であって、前記流体連通装置(16)において、上昇流が発生する前記空間における前記混合物の圧力と、下降流が発生する前記空間における前記混合物の圧力との差が前記所定閾値以下である場合に直ちに採用される第2の構成との間で、前記流体連通装置(16)が自動的に切り替わることを特徴とする発酵槽。
【請求項2】
請求項1に記載の発酵槽(10)において、
前記発酵槽は、高さ(H)に沿って互い違いに配置される前記仕切壁の異なる領域に配置されている複数の別体の流体連通装置(16)を備えることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項3】
請求項2に記載の発酵槽(10)において、
前記流体連通装置(16)の各々は、自律的であり、外部作用を受けることなく、前記発酵槽(10)の何らかの他の流体連通装置(16)によって採用された構成に関係なく一方の構成から他方の構成に切り替わることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
前記流体連通装置(16)の各々は、
前記仕切壁を厚さ方向に貫通する複数の開口部(17)と、
複数の閉要素(18)と、
を備え、
前記閉要素(18)の各々は、対応する開口部(17)に設けられていて、前記流体連通装置(16)の前記第1の構成に対応する開位置と、前記流体連通装置(16)の前記第2の構成に対応する閉位置とに切り替わり、
前記開位置では、
前記閉要素(18)が、対応する前記開口部(17)を開放し、前記開口部(17)を介して前記第1の空間(V1)と前記第2の空間(V2)とを流体連通させることにより、前記液媒体および前記容器(11)に収容された前記ガスが、前記開口部(17)を通って一方の空間から他方の空間に自由に循環できるようになり、
前記閉位置では、
前記閉要素(18)が、対応する前記開口部(17)を少なくとも部分的に閉鎖し、前記液媒体および前記容器(11)に収容された前記ガスが、前記開口部(17)を介して前記第1の空間(V1)と前記第2の空間(V2)との間で流体連通するのを完全にまたは一部阻止することを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項5】
請求項4に記載の発酵槽(10)において、
前記流体連通装置(16)の各々は、閉要素(18)毎に設けられ、前記閉要素(18)を前記閉位置と前記開位置とに可動するように、前記仕切壁に固定する連結機構(19)を備えることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項6】
請求項5に記載の発酵槽(10)において、
前記連結機構(19)の各々は、上昇流が発生する空間における前記混合物と下降流が発生する空間における前記混合物との圧力差が前記所定閾値よりも大きい値になる場合に、前記圧力差の作用下で前記閉要素(18)が機械的に自動で開位置に切り替わるように構成されることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の発酵槽(10)において、
前記連結機構(19)の各々は、上昇流が発生する空間における前記混合物と下降流が発生する空間における前記混合物との圧力差が前記所定閾値以下の値になる場合に、前記圧力差の作用下で前記閉位置への前記閉要素(18)の機械的設定が自動的に行われるように構成されることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
前記閉要素(18)の各々と対応する前記連結機構(19)は、対応する前記開口部(17)の上方に位置するピボット軸(21)の周囲に、前記仕切壁に対応した前記閉要素(18)のヒンジ手段(22)を備え、前記閉要素(18)を、前記ピボット軸(21)を中心に傾斜させることにより、開位置から閉位置への切り替えおよび閉位置から開位置への切り替えが行われることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項9】
請求項8に記載の発酵槽(10)において、
前記連結機構(19)は、上昇流が発生する前記空間に前記ピボット軸(21)を配置し、下降流が発生する前記空間に前記閉要素(18)を配置することを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項10】
請求項8または9に記載の発酵槽(10)において、
前記閉要素(18)の各々と対応する前記連結機構(19)は、第1の端部(201)と、第2の端部(202)とを有する支持アーム(20)を備え、
前記第1の端部(201)は、前記ヒンジ手段(22)における前記ピボット軸(21)の周囲に蝶番式に開閉され、
前記第2の端部(202)は、前記閉要素(18)に連結され、
前記支持アーム(20)は、前記仕切壁を厚さ方向に貫通することを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
前記連結機構(19)の重心が、上昇流が発生する空間(V1)にあることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項12】
請求項5〜7のいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
前記閉要素(18)の各々に対応する前記連結機構(19)は、
略水平な並進方向に沿って前記仕切壁に対して前記閉要素(18)を並進させる摺動手段と、
前記閉位置に向かって常に前記閉要素(18)を付勢する弾性復帰部材と、
を備え、
前記摺動手段によって前記閉要素(18)を前記並進方向に摺動させることにより、前記開位置から前記閉位置への切り替え、および前記閉位置から前記開位置への切り替えが行われ、
前記閉要素(18)に対する前記弾性復帰部材の機械的付勢作用に対抗することにより、前記開位置への切り替えが行われることを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項13】
請求項4〜12のいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
前記閉要素(18)は、前記閉要素(18)の前記閉位置で前記仕切壁を支持するための支持面(181)を有し、
前記支持面(181)は、前記仕切壁における前記支持面(181)が接触する領域の形状と補完関係にある空間的形状を有することを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
前記仕切壁が、前記容器(11)内にある内管(12)内に形成されることにより、前記内管(12)が、内部に前記第1の空間(V1)を区画し、前記容器(11)とともに、外部に前記第2の空間(V2)を区画することを特徴とする発酵槽(10)。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載の発酵槽(10)において、
少なくとも1つの前記流体連通装置(16)は、自動で作動し、手動での操作が不要であることを特徴とする発酵槽(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気による攪拌手段を備える、連続的または断続的な稼働のための液媒体発酵槽に関する。この発酵槽は、
液媒体を収容するように適合された容器と、
上記容器内にあり、第1の空間と第2の空間とを分離させる仕切壁と、
上記第1の空間または上記第2の空間の下部にガスを注入して、ガスを注入した方の空間に上記液媒体と注入ガスとの混合物の上昇流を、ガスを供給していない方の空間にこの混合物の下降流を生じさせる装置と、
を備える。
【背景技術】
【0002】
発酵槽は液媒体の発酵を行う装置であることが知られている。この装置は、バイオリアクタまたはプロパゲータとしても知られている。この装置により、微生物(酵母菌、バクテリア、微細菌、藻類、動物細胞および植物細胞)が増殖する。これにより、温度、pH、ガス発生などの培養状態が監視できることにより、収集した情報の信頼性が高くなる。
【0003】
従来より、発酵プロセス中に液媒体を攪拌する方法が2種類ある。
【0004】
第1の液媒体攪拌方法は、最もよく使用される方法である。この方法では、例えば、1つ以上のモータを用いて、具体的には、機械化された攪拌器によって液媒体を循環させる電動式手段を使用する。
【0005】
この方法には、容器内の液媒体の高さがばらつく場合にも機能できるという利点がある。液媒体が発泡したか、または、液媒体が制御されていない状態で蒸発した場合、蒸発した液媒体は、依然として攪拌され、ガス交換の中断またはガス交換量の顕著な減少を回避できる。しかしながら、この方法には、複雑であり、且つ、費用が嵩むという欠点がある。この方法では、上記モータのシャフトに対応する電動式システムおよび閉手段を使用する必要がある。これには、部品の追加が伴うとともに、手動での操作が必要となる。
【0006】
第2の液媒体攪拌方法では、液媒体の下部に注入されたガスを循環させることによりガスを攪拌する攪拌手段が使用される。この技術は、従来より、「エアリフト」という用語で知られている。以下に記載する発明は、この第2の方法に該当する方法に関する。
【0007】
この方法には、前述のように機械的なシステムを使用しないという利点がある。しかしながら、この方法では、一般的に、容器内の液媒体の高さを一定にする必要がある。このため、発泡現象および蒸発現象は非常に問題となる。なぜなら、容器内の液媒体の高さが下降する場合、下降流がうまく流れない可能性があり、ガスを発生させることも発酵槽の大部分において効果的ではなくなる。発酵槽のこの部分において、攪拌量およびガス交換量が急激に減少する。微生物は、死滅して沈殿し得る。
【0008】
従来より、「エアリフト」技術の発酵槽は、液媒体を収容する容器と、容器を第1の空間と第2の空間とに区画するために容器内に位置する(例えば、内管内に構成される)少なくとも1つの仕切壁と、を備える。ガス注入装置がこれらの2つの空間のうち1つの下部に配置されることにより、この空間に注入されたガスと上記液媒体との混合物の上昇流を、この注入装置によってガスを供給していない方の空間にこの混合物の下降流を生じさせる。
【0009】
内管の高さにかかわらず、液媒体が、排出領域よりも下にある所定の高さで静的平衡状態になると、このシステムは直ちに停止される可能性がある。
【0010】
液媒体の高さが下降する場合(とりわけ発泡または制御されていない状態での蒸発の場合)に発酵槽内で循環が行われなくなる可能性をできる限り抑制するために、米国特許第3236744号明細書に記載の方法のように、内管が、複数の開口部と、手動で制御されるこれらの開口を閉める手段と、を備える方法がある。しかしながら、この方法は、人的要因に依拠するものであり、信頼性が高くない。液媒体の高さに応じて高さが変えられる内管を設けることもできるが、この方法の実現は容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の欠点の全部または一部を解決することを目的とする。
【0012】
これに関して、上述の第2の方法に相当するいわゆる通気攪拌型液媒体発酵槽を提供する必要がある。これにより、
構成が単純になるとともに信頼性およびコスト効率が高くなり、
とりわけ発酵槽の外部から繋がっているシャフトまたはアクチュエータの通路を閉じる手段に固有の外部汚染のリスクが回避され、
液媒体の高さにかかわらず、確実に攪拌およびガス交換が行われ、
発酵槽の機能不良および微生物の沈殿のリスクが回避され、
電動式システムの使用を回避して手動での操作が制限され、
開閉手段および閉手段の使用が抑制できる。
【0013】
これらの目的は、添付の請求項に係る発酵槽によって実現できる。
【0014】
特に、前述の問題に対応するために、通気による攪拌手段を備える、液媒体のための発酵槽であって、液媒体を収容するように適応された容器と、上記容器内にあり、第1の空間および第2の空間を分離する仕切壁と、上記第1の空間または上記第2の空間の下部にガスを注入することにより、ガスを注入した方の空間に上記液媒体と上記注入ガスとの混合物の上昇流を生じさせ、ガスを供給していない方の空間に上記混合物の下降流を生じさせる装置と、を備え、上記仕切壁には、上記第1の空間と前記第2の空間との間の流体連通を実現する、少なくとも1つの流体連通装置が設けられ、
上記流体連通装置により、上記液媒体および上記容器に収容されたガスが上記流体連通装置を通って一方の空間から他方の空間に自由に流体循環する第1の構成であって、上記流体連通装置において、上昇流が発生する空間における上記混合物の圧力と、下降流が発生する空間における上記混合物の圧力との差が所定閾値よりも大きい場合に直ちに採用される第1の構成と、
上記流体連通装置により、上記液媒体および上記容器に収容されたガスの上記流体循環の全部または一部が阻止される第2の構成であって、上記流体連通装置において、上昇流が発生する上記空間における上記混合物の圧力と、下降流が発生する上記空間における上記混合物の圧力との差が上記所定閾値以下である場合に直ちに採用される第2の構成と
の間で、上記流体連通装置が自動的に切り替わる発酵槽が提供される。
【0015】
本発明は、非限定的な例として記載されるとともに添付の図面に示す特定の実施形態の以下の説明により、適切に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る発酵槽の例を示す斜視透視図である。
【
図2】
図2は、
図1の発酵槽に用いる閉要素および対応する連結機構の斜視図である。
【
図3】
図3は、閉要素と、
図2に示す支持アームとを示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の構成を採用する複数の連通装置を示す、
図1の発酵槽の部分斜視透視図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る発酵槽の第2の構成の縦断面を概略的に示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る発酵槽の第1の構成の縦断面を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
簡潔に上に説明された添付の図面に関して、本発明は、本質的に、連続的または断続的な稼働を確実にする液媒体発酵槽10に関する。発酵槽は、液媒体内で通気させることにより液媒体を確実に攪拌する手段を備える。液媒体は、無菌媒体または汚染が監視された媒体であってもよい。したがって、発酵槽10は、「エアリフト」技術に対応するタイプの槽である。
【0018】
発酵槽10は、一般的に、液媒体を確実に発酵させるように構成される。この装置は、バイオリアクタまたはプロパゲータとしても知られている。この装置により、微生物(酵母菌、バクテリア、微細菌、藻類、動物細胞および植物細胞)が増殖する。これにより、温度、pH、ガス発生、ガス交換などの培養状態が監視できることにより、収集した情報の信頼性が高くなる。
【0019】
以下に詳細に記載される発酵槽10は、通常、
液媒体を収容するように適応された任意の形状の容器11と、
容器11内にあり、容器11内の第1の空間V1と第2の空間V2とを分離させる仕切壁と、
第1の空間V1または第2の空間V2の下部にガスを注入して、ガスを注入した方の空間に液媒体と注入ガスとの混合物の上昇流を生じさせ、他方の空間(すなわち、ガス注入装置13によってガスが供給されていない方の空間)にこの混合物の下降流を生じさせる上述のガス注入装置13と、
を備える。
【0020】
この仕切壁は、高さHを有し、どのような性質、構成、または形状であってもよい。図示の例では、仕切壁は、容器11内にある内管12内に形成されることにより、内管12は、内部に第1の空間V1を区画し、容器11とともに外部に第2の空間V2を区画する。言い換えると、この具体的な例では、第1の空間V1は、内管12によって区画される内部の空間に相当し、第2の空間V2は、内管12の周囲であり、内管12と容器11の壁との間に位置する。
【0021】
しかしながら、仕切壁が1つの内管12として構成されることに限定されないことは言うまでもない。具体的には、例えば、任意の形状(例えば、矩形)の容器11内に、任意の形状の部位または平行なコンパートメントを有する複数の同心管を設けてもよい。
【0022】
非限定的な図示の変形例では、注入装置13は、第1の空間V1の下部にガスを注入することにより、第1の空間V1(すなわち、本明細書では円形断面の内管12の内部)において液媒体と注入ガスとの混合物の上昇流が発生する。第2の空間V2(すなわち、容器11の内壁と内管12の外壁との間にある、本明細書では環状断面の中間空間)においてこの混合物の下降流が発生する。
【0023】
しかしながら、注入装置13が、第2の空間V2の下部にガスを注入することにより、容器11と内管12との間の第2の空間V2において液媒体と注入ガスとの混合物の上昇流が発生する反転構成を検討する可能性も十分にある。この変形例では、この場合、内管12内部の第1の空間V1において下降流が発生する。
【0024】
図では、発酵槽10の容器11は、容器11、ひいては発酵槽10に発酵対象の液媒体を供給するための流入口14と、発酵後に容器11、ひいては発酵槽10から液媒体を排出するための排出口15と、を有する。流入口14および排出口15には、関連する技術分野で公知の従来のあらゆる手段を設けることができる。これにより、例えば、流入口14を介して発酵槽10に流入する液媒体および/または排出口15を介して発酵槽10から排出される液媒体の流量を調節できる。通常、発酵槽10には、発酵槽の技術分野で従来より使用されている手段(具体的には、この領域の液媒体または混合物の物理的特徴(例えば、温度、圧力、流量、高さ、発泡検出要素など)を判定できる何らかのセンサ等)が設けられてもよい。発酵槽10は、ガスを注入装置13に供給するための導入口23と、排出システム24と、をさらに備える。
【0025】
仕切壁には、少なくとも1つの流体連通装置16が設けられ、第1の空間V1および第2の空間V2とを選択的に流体連通させたりそれを妨げたりする。各流体連通装置16は、特に、この目的のために手動で操作することなく、以下の構成の間で自動的に切り換わるように構成される。
流体連通装置16により、液媒体および容器11に収容されたガスがこの装置を通って一方の空間から他方の空間に自由に流体循環する第1の構成(
図6)
流体連通装置16により、液媒体および容器11に収容されたガスの流体循環の全部または一部が阻止される第2の構成(
図5)
【0026】
好適には、少なくとも1つの流体連通装置16は、自動で作動し、手動での操作が不要であり、自律的に動作するものである。これにより、信頼性の高い効果的な循環、ひいては最適な攪拌が可能になる。
【0027】
流体連通装置16において、混合物の少なくとも1つの物理的パラメータが所定の条件を満たす場合、直ちに第1の構成が採用される。流体連通装置16において、上記少なくとも1つの物理的パラメータが上述の所定の条件を満たさない場合、直ちに第2の構成が採用される。
【0028】
上記少なくとも1つの物理的パラメータは、第1の空間V1および第2の空間V2の各々における混合物の圧力値を含む。流体連通装置16において、上昇流が発生する空間における圧力と、下降流が発生する空間における圧力との差が所定閾値よりも大きい場合、直ちに第1の構成が採用される。液媒体の高さの差により液媒体が上昇流の空間から下降流の空間へあふれ出ることがないという理由のため、上昇流が発生する空間における液媒体が下降流が発生する空間と連通しない場合に、上述の状況が発生し得る。それに反して、流体連通装置16において、上昇流が発生する空間における圧力と、下降流が発生する空間における圧力との差が前述の所定閾値以下である場合、直ちに第2の構成が採用される。
【0029】
上昇流の空間と下降流の空間との圧力差が、これらの2つの空間における液媒体の高さの差によって完全に誘導され得ることは明らかである。例えば、下降流の空間における液媒体の高さが上昇流の空間における液媒体の高さよりも低い場合、差圧は、連続モードにおける発酵槽10の標準状態を基準にして相対するものになる。要するに、上昇流の空間における液媒体の圧力は、下降流の空間における液媒体の圧力よりも大きくなる。
【0030】
所定閾値よりも大きい場合に自動的に第1の構成が適用されるが、この所定閾値は、0と等しいか、0よりも大きい一定値を採用してバネ等の適切な機械的部材によって固定するかのいずれかであってもよい(装置16において空間V1の圧力と空間V2の圧力とが等しい場合に、第2の構成が自動的に適用される)。
【0031】
図1、
図4Aおよび
図4Bは、理解しやすいように、各流体連通装置16が第1の構成を採用する仮想の状況にある発酵槽10を示す。使用時に、各流体連通装置16が液媒体に浸漬されていない場合、または、2つの空間の圧力差が閾値を超過するほどではない場合、流体連通装置16は第2の構成を採用することは言うまでもない。
【0032】
具体的な実施形態によれば、発酵槽10は、仕切壁の高さHに沿って互い違いになっている仕切壁の異なる領域に配置された複数の別体の流体連通装置16を備える。言い換えると、流体連通装置16は、内管12における、高さに沿って互い違いになった様々な領域に配置されている。内管12は、鉛直方向に配向されることにより、この高さは、液媒体の高さが容器11内で変動する方向に相当することが明確である。
図1、
図2、
図3、
図4A、および
図4Bに示す具体的な例では、発酵槽10は、内管12の高さに沿って互い違いになった3つの別体の流体連通装置16を備える。
図5および
図6では、発酵槽10は、内管12の高さに沿って互い違いになった別体の流体連通装置を2つだけ備える。上側流体連通装置16および下側流体連通装置16は、それぞれ独立して配置されている。流体連通装置16は、例えば、仕切壁の高さH、要求される精度、液媒体の性質などに応じて、どのような数であってもよい。流体連通装置16は、一定のピッチであってもそうでなくても、仕切壁の高さH全体または一部に分散して設けられても良い。
【0033】
図6では、上側流体連通装置16は第1の構成を採用するが、下側流体連通装置16は第2の構成を採用している。
【0034】
図5では、上側流体連通装置16および下側流体連通装置16は、両方とも、第2の構成を採用している。
【0035】
発酵槽10により、従来の発酵槽によって生じた問題を解決できる。
図5に示す発酵槽10の標準的な動作状況では、各流体連通装置16は第2の構成を採用する。このため、
図5では、上側流体連通装置16は第2の構成を採用し、下側流体連通装置16も第2の構成を採用する。従って、各流体連通装置16は、発酵槽10の標準的な状況では通常閉鎖されている。特に発酵槽10内の液媒体の高さN1がほぼ一定を保つ場合(各装置の両側にある空間V1およびV2の圧力がほぼ同じである場合)、一方の空間から他方の空間への循環が阻止される。第1の空間V1における上昇流の方向は、矢印F1によって示す。第2の空間V2における下降流の方向は、矢印F3によって示す。発酵槽10の上部では、矢印F2に示すように、液媒体が仕切壁の上面を介して上昇流の空間から下降流の空間へ排出される。発酵槽10の下部では、矢印F4に概略的に示すように、液媒体が仕切壁の下方を通って下降流の空間から上昇流の空間に戻る。
【0036】
しかしながら、
図6は、複数の流体連通装置16のうち1つが自動的かつ自律的に第1の構成を採用する発酵槽10の状況を示す。矢印F1、矢印F3、および矢印F4は、これらの領域において、液媒体の循環方法が
図5と常時同じであることが分かるように示される。しかしながら、
図6には矢印F2がない。なぜなら、液媒体が仕切壁の上方で一方の空間から他方の空間に排出されることがないからである。これに反して、発酵槽10内の液媒体の高さが下降する傾向にある場合(例えば、発泡または制御されていない状態での蒸発の場合)、上昇流の空間(本明細書では空間V1)の圧力は、下降流の空間(本明細書では空間V2)の圧力に対して上昇する傾向にある。
図6では、発酵槽10における液媒体の高さは、
図5の標準的な状況で最初に想定される高さN1と比較して概ね下降している。上昇流の空間における液媒体の高さはN2とされ、下降流の空間における液媒体の高さはN3とされる。このため、高さN2およびN3は、例えば、制御されていない状態での蒸発または発泡が原因で高さN1の下方にある。一方では、両方の空間の圧力差が理由で、高さN3は、高さN2よりも下方にある。空間V1における高さN2と空間V2における高さN3との差に付随する空間V1および空間V2における圧力差は、少なくとも仕切壁の高さH(ここでは、内管12の高さに相当する)方向のいくつかの領域において差圧に対応する所定閾値よりも大きくなるまで大きくすることができる。閾値を超過したこれらの領域では、差圧を受ける流体連通装置16は、自動的に、圧力差の影響下で一時的に第1の構成を採用する。このため、
図6では、上側流体連通装置16は自動的に第1の構成を採用する。しかしながら、
図6は、空間V1および空間V2の圧力差が、所定閾値を超過するほどではない特定の場合を示す。従って、下側流体連通装置16は、上側流体連通装置16とは違って、第2の構成のままである。同じ発酵槽10の複数の流体連通装置16は、自律的であり、互いに独立している。これらの流体連通装置16は、これら装置の両側にある2つの空間の差圧の作用以外の外部作用を受けることなく、自動的に動作する。
【0037】
図6では、上側流体連通装置16を第1の構成に切り替えることにより、2つの空間V1およびV2内を(高さN1が実現されたときの)最初の圧力に戻しやすくする。このように第1の構成に変更することによって、液媒体および注入ガスが、とりわけ上昇流が発生する空間から下降流が発生する空間に向かう(矢印F5によって示す)方向に、こうして開かれた上側流体連通装置16を通って自由に循環できる。このように上側流体連通装置16を通って液媒体を一時的に自由且つ自動的に循環させることにより、発酵槽10内の液媒体の高さの低下という結果を補償して補正できる。よって、発酵槽10内の循環は中断しない。これにより、発酵槽10の遮断並びに通気およびガス交換ができないデッド領域のリスクが回避される。そうでなければ、発酵が中断するか、液媒体の状態が変化するかのいずれかになり、微生物が死滅する可能性がある。こうして、液媒体の高さが高くなり、排出が仕切壁の上面で再開されると、上昇流空間における圧力が低下する一方、下降流空間における圧力は上昇する。こうして、上側流体連通装置16は、自動的に第2の構成に戻る。図示の例では、液媒体は、各流体連通装置16が第1の構成であるときに、第1の空間V1から第2の空間V2へ循環する傾向にある。液媒体の高さが発酵槽10において十分に高くされると、上昇流の空間における低圧および下降流の空間における超過圧力を再び生じさせる。これらの圧力は、対象の流体連通装置を第2の構成に自動的に戻す程度の圧力である。
【0038】
複数の流体連通装置16をばらばらの高さに配置することには、特に発泡および制御されていない状態での蒸発の場合や、発酵槽10の遮断および発酵の中断すなわち微生物の死滅のリスクを制限する場合に、液媒体の高さのばらつきを自動的且つ自律的に補償できるという利点がある(これにより、同じ物理化学的条件下で液培養媒体を維持できる)。従って、発酵槽10は、第1の方法に係る従来の発酵槽と比較して設計が非常に単純でコスト効率が良いだけでなく、非常に信頼性が高く、安全である。この槽には、電動式システムが不要であり、外側から動かされる開閉手段ひいては閉手段も不要になるという利点がある。これにより、手動での操作の必要性および外部汚染のリスクが回避される。
【0039】
この特徴を有する発酵槽10には、内管12の高さが低い場合や変動する場合に備える必要なく、または、液媒体を攪拌するための電動式システムを用いる必要なく、容器11内で液媒体の高さが変わっても、良好に動作できるという利点がある。これにより、ガスが供給された空間内の液媒体の高さに応じて、流体連通装置16を様々な高さで開閉できる。
【0040】
好ましくは、各流体連通装置16は、自律的であり、外部作用を受けることなく、発酵槽10の何らかの他の流体連通装置16によって採用された構成に関係なく一方の構成から他方の構成に切り替わる。言い換えると、異なる高さに位置する流体連通装置16は、互いに独立し、この特定の実施形態では連結されることもなく、発酵槽外部から制御もされない。この特徴は、変形例を考慮することを妨げない。この変形例では、1つの流体連通装置16の(以下に詳細に説明する)複数の閉要素18は、同じ高さにあるが、とりわけバネによる操作および/または閉要素同士の連結によって同時に動作する。
【0041】
非常に単純であると同時に信頼性および効率が高いという利点を有する実施形態によれば、各流体連通装置16は、仕切壁を厚さ方向に貫通する複数の開口部17と、複数の閉要素18と、を有する。各閉要素18は、対応する開口部17に設けられ、流体連通装置16の第1の構成に対応する開位置と、流体連通装置16の第2の構成に対応する閉位置との間で切り替わる。開位置では、閉要素18は、対応する開口部17を開放し、この開口部17を介して第1の空間V1と第2の空間V2とを流体連通させることにより、液媒体および容器11に収容されたガスは、開口部17を通って一方の空間から他方の空間に自由に循環できるようになる。閉位置では、閉要素18は、対応する開口部17を少なくとも部分的に閉鎖し、液媒体および容器11に収容されたガスが開口部17を介して第1の空間V1と第2の空間V2との間で流体連通するのを完全にまたは一部阻止する。
【0042】
実際には、図示の例では、各開口部17は、内管12の厚さ全体を貫通する窓30すなわち排出口である。この窓は、第1の空間V1と第2の空間V2との両方と連通する。各開口部17の輪郭は、例えば、図示のように矩形状のような如何なる形状であってもよい。各流体連通装置16に設けられる開口部17の数は、図示の実施形態に示すように、例えば4のような如何なる数でもよい。所定の流体連通装置16については、この装置に設けられる開口部17は、内管12の同じ所定の高さの位置に配置されており、一定のピッチか異なるピッチで、延長軸の周囲に所定の角度で配置させる。
【0043】
図2および
図3において、各流体連通装置16は、閉要素18毎に、対応する連結機構19を備えてもよい。連結機構19により、仕切壁にある閉要素18を閉位置と開位置との間で可動になるように固定できる。添付の
図1、
図4A、および
図4Bでは、全部の流体連通装置16について開位置を示す。
図6では、上側流体連通装置16については開位置を示し、下側流体連通装置16については閉位置を示す。すべての図において、連結機構19により、例えば、閉要素18を内壁12に固定できる。
【0044】
各連結機構19は、上昇流が発生する空間と下降流が発生する空間との圧力差が既出の所定閾値よりも大きい値になる場合に、この圧力差の作用下で開位置への閉要素18の機械的な設定が自動的にされるように構成される。
【0045】
各連結機構19は、上昇流が発生する空間と下降流が発生する空間との圧力差が所定閾値以下の値になる場合に、この圧力差の作用下で閉位置への閉要素18の機械的な設定が自動的にされるように構成される。
【0046】
単純でコスト効率が良好であり且つ信頼性および効率が高い実施形態によれば、各閉要素18と対応する連結機構19は、対応する開口部17の上方に位置するピボット軸21の周囲に仕切壁を基準にして回動する閉要素18のヒンジ手段を備える。閉要素18をこのピボット軸21を中心にして傾斜させることにより、開位置から閉位置への切り替えおよび閉位置から開位置への切り替えが行われる。実際には、図示の例では、このヒンジ手段により、内管12に対して閉要素18を蝶番式に開閉できる。
【0047】
好ましくは、連結機構19は、上昇流が発生する空間にピボット軸21を常に配置する一方、下降流が発生する空間に閉要素18を(その位置が閉位置であるか開位置であるかに関係なく)常に配置する。
【0048】
このため、発酵槽10の図示の特定の例では、ピボット軸21は、液媒体と注入ガスとの混合物の上昇流が発生する第1の空間V1に配置される一方、閉要素18は、下降流が発生する空間に常に(すなわち、その位置が閉位置であるか開位置であるかに関係なく)配置される。下降流が発生する空間は、本明細書では第2の空間V2に相当する。
【0049】
この配置には、上昇流が発生する空間(本明細書では第1の空間V1)に連結機構19の重心を非常に好適に位置決めすることにより、標準的な動作状況の下で、重力の作用で各閉要素18を閉位置に自動閉鎖することを促すという利点がある。
【0050】
さらに、同じ目的のために、各閉要素18と対応する連結機構19は、第1の端部201と、第2の端部202とを有する支持アーム20を備えてもよい。第1の端部201は、ヒンジ手段におけるピボット軸21の周囲に蝶番式に開閉される。第2の端部202は、閉要素18に連結される。支持アーム20は、例えば、支持アーム20に支持される閉要素18によって閉鎖される開口部17の上方の領域において、仕切壁(具体的には、図示の例における内管12)を厚さ方向に貫通する。または、支持アーム20は、開口部17を介して仕切壁を厚さ方向に貫通してもよい。ピボット軸21は、支持アーム20に固定されてもされなくてもよい。特に、ピボット軸21を構成する部分は、第1の端部201で支持アーム20の残りの部分と一体成形されてもよい。
【0051】
このような配置には、さらに、上昇流が発生する空間と下降流が発生する空間との圧力差が小さくても、閉要素18を開位置に切り替えできるという利点がある。言い換えると、各装置16を第2の構成に切り替える際の感度が高く、上昇流の空間と下降流の空間との圧力差が小さい状況でこの感度が実現できる。
【0052】
各連結機構19は、例えば、ピボット軸21が取り付けられたU字型固定金具22を備える。U字型金具22は、実際には、前述のヒンジ手段を構成する。U字型固定金具22は仕切壁に固定される。特に、U字型固定金具22は、上昇流が発生する空間に連続的に(すなわち、閉要素18の位置が閉位置であるか開位置であるかに関係なく)配置される。上昇流が発生する空間は、図示の例では、第1の空間V1に相当する。内管12の内面と、U字型連結金具との連結は、例えば、接着または溶接による組込み式であってもよい。しかしながら、いかなる他のタイプの機械的連結が考慮されてもよい。例えば、必要に応じて、少なくとも1の並進自由度および/または回転自由度がある状態にする。
【0053】
上昇流の空間内では、支持アーム20の形状およびピボット軸21の深さによって所定閾値が求められ、減圧閉鎖力が求められてもよい。よって、最小の圧力差により、閉要素18が開く。開/閉閾値を予め求める際には、閉要素18の重量および/または支持アーム20の長さが考慮に入れられてもよい。
【0054】
発明の一般的な機能原則は、詳細に上述されているが、出願人は、本発明の3つの例示的な実施形態に係る発酵槽10を以下に詳細に示す。これらの発酵槽10の有効体積は、それぞれ、3.75リットル、350リットル、840リットルである。
【0055】
有効体積が3.75リットルの発酵槽10の例では、上昇流が発生する第1の空間V1の全高は476mmであるが、この空間を区画する管の内径は60mmである。下降流が発生する第2の空間V2を外から区画する管の内径は、部分的に100mmであるが、その高さは576mmである。2つの流体循環装置16は、発酵槽10の高さに沿って互いにずれて配置される。これらの装置16は、第2の空間V2の底面から210mmの位置と322mmの位置とにある。これら2つの装置16は、それぞれ、少なくとも2つの開口17と、同じ高さにある2つの対応する閉要素18と、を備える。より正確に言えば、各開口部17により、第1の空間V1と、第2の空間V2とが流体連通しており、各開口部17は、14mm×36mmの矩形状外形を有する。1mmのステンレス鋼からなる各閉要素18は、第1の空間V1を区画する管の外壁の形状にぴったりと一致する。各閉要素の長さは45mmであり、高さは20mmである。アーム20のピボット軸21は、第1の空間V1を区画する管の壁から10.75mmの距離だけ第1の空間V1の内方に寄っている。アーム20の長さは50mmであり、(アーム20が鉛直方向に配向している)閉位置と開位置との最大ピボット移動角度は61°である。したがって、閉要素18が、第2の空間V2を外から区画する管の内壁に擦れることと、閉要素18がこの内壁に引っかかって動けなくなることとが回避される。
【0056】
有効体積が350リットルの発酵槽10の例では、上昇流が発生する第1の空間V1の全高は3000mmであるが、この空間を区画する管の内径は219mmである。下降流が発生する第2の空間V2を外から区画する管の内径は、部分的に400mmであるが、その高さは4000mmである。3つの流体循環装置16は、発酵槽10の高さに沿って互いにずれて配置される。これらの装置16は、第2の空間V2の底面から521mmの位置と、1354mmの位置と、2180mmの位置とにある。これら3つの装置16は、それぞれ、少なくとも4つの開口17と、同じ高さにある4つの対応する閉要素18と、を備える。より正確に言えば、各開口部17により、第1の空間V1と、第2の空間V2とが流体連通しており、各開口部17は、123mm×68mmの矩形状外形を有する。1mmのステンレス鋼からなる各閉要素18は、第1の空間V1を区画する管の外壁の形状にぴったりと一致する。各閉要素の長さは153mmであり、高さは93mmである。アーム20のピボット軸21は、第1の空間V1を区画する管の壁から32mmの距離だけ第1の空間V1の内方に寄っている。アーム20の長さは75mmであり、(アーム20が鉛直方向に配向している)閉位置と開位置との最大ピボット移動角度は61°である。したがって、閉要素18が、第2の空間V2を外から区画する管の内壁に擦れることと、閉要素18がこの内壁に引っかかって動けなくなることとが回避される。
【0057】
有効体積が840リットルの発酵槽10の例では、上昇流が発生する第1の空間V1の全高は3000mmであるが、この空間を区画する管の内径は419mmである。下降流が発生する第2の空間V2を外から区画する管の内径は、部分的に600mmであるが、その高さは4000mmである。4つの流体循環装置16は、発酵槽10の高さに沿って互いにずれて配置される。これらの装置16は、第2の空間V2の底面から321mmの位置と、996mmの位置と、1671mmの位置と、2346mmの位置とにある。これら4つの装置16は、それぞれ、4つの開口部17と、同じ高さにある4つの対応する閉要素18と、を備える。より正確に言えば、各開口部17により、第1の空間V1と、第2の空間V2とが流体連通しており、各開口部17は、230mm×68mmの矩形状外形を有する。1mmのステンレス鋼からなる各閉要素18は、第1の空間V1を区画する管の外壁の形状にぴったりと一致する。各閉要素の長さは284mmであり、高さは93mmである。アーム20のピボット軸21は、第1の空間V1を区画する管の壁から32mmの距離だけ第1の空間V1の内方に寄っている。アーム20の長さは75mmであり、(アーム20が鉛直方向に配向している)閉位置と開位置との最大ピボット移動角度は61°である。したがって、閉要素18が、第2の空間V2を外から区画する管の内壁に擦れることと、閉要素18がこの内壁に引っかかって動けなくなることとが回避される。
【0058】
図示しない他の代替的実施形態によれば、各閉要素18に対応する連結機構19は、ほぼ水平な並進方向に沿って仕切壁に対して閉要素18を並進させるスライド手段と、閉位置に向かって常に閉要素18を付勢する弾性復帰部材と、を備える。このスライド手段により閉要素18を上記並進方向にスライドさせることにより、開位置から閉位置に、また、閉位置から開位置へ切り替わる。閉要素18に対するこの弾性復帰部材の機械的付勢作用に対抗することにより、開位置への切り替えが行われる。
【0059】
代替的な変形例では、弾性復帰部材による機械的付勢作用は、各所定閾値の決定および特徴付けの際に考慮される。この所定閾値を超えると、流体連通装置16は、第1の構成に切り替わり、閉要素18は、開位置に切り替わる。
【0060】
発酵槽10が単純な構成およびコスト効率を維持しつつ動作効率を良好にするために、閉要素18は、閉位置で仕切壁(すなわち、本明細書では内管12)を支持するための支持面181を有する。この支持面181は、仕切壁におけるこの支持面181が接触する領域の形状と補完関係にある空間的形状を有する。これにより、特に、より安価に閉位置の効率が確実に良好にできる。
【0061】
発酵槽10の図示の例では、内管12の外面は、略円筒形で、円形の断面を有する凸面状であることにより、支持面181は、補完的な形状の円筒部において凹面である。
【0062】
しかしながら、前述のように、各閉要素18は、形状および構造または硬さの面でどのような性質であってもよい。図示の例では、閉要素18は、硬質であり、単純な閉鎖フラップの形状を有するが、これに限定されない。
【0063】
発酵槽10について前述された実施形態は多数の利点があり、特に効果的であるが、少なくとも1つの流体連通装置16の設計については、代替的な方法が検討されてもよい。仕切壁を内管12として構成することに限定されない。また、例えば、部分的に開口部を閉鎖するヒンジ手段または閉要素を備えていない柔軟性のあるフラップを提供することは可能である。例えば、センサによる検出とともにシリンダを利用することも可能である。内管12の内または外で回転する1つの管で流体連通装置16のすべての閉要素を構成することも可能である。当該1つの管は、この第2の管の回転によりこの装置16の開口部17を露出させる。代替的な方法としては、内管12の内側または外側に取り付けられた管が、液媒体の高さに応じて、管の高さ方向にスライド可能にする方法がある。
【0064】
本発明に係る発酵槽10のさらなる利点は、既存の「エアリフト」タイプの発酵槽に適応できる。
【0065】
一方、前述の発酵槽10は、浮揚要素を用いないという利点を有する。浮揚要素を用いる場合、上昇流または下降流の空間の一部を遮断することにより、流体の循環を鉛直方向に妨害することになる。この利点の結果として、発酵槽10内で流体の循環が確実に良好かつ均一になる。
【0066】
最終的には、流体連通装置16の自動開閉により、液媒体の高さに関係なく、液媒体の最大循環高さを用いて機能できる。発酵槽10内の液媒体の高さが下降する場合、上昇流の空間と下降流の空間との差圧が逆にされ、液媒体の高さの直下にある装置16が開き、流体の循環が2つの空間の間で継続して行われる。しかしながら、まだ低い高さにある装置16は、閉鎖されたままである。もし液媒体の高さが単数または複数の開放装置よりもさらに下降しても、液媒体は、これから開く装置よりもまだ下方にあるだけであり、開放された直後の装置などよりも低い高さにあるのではない。したがって、発酵槽10内の液媒体の高さに関係なく、上昇流および下降流について最大高さが維持される。これにより、攪拌が良好になり、ガス交換が最適化される。そうではなく、液媒体の高さが上昇する場合、プロセスが同じやり方で上下逆にされる。
【国際調査報告】