特表2018-531122(P2018-531122A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-531122(P2018-531122A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】複合テキスタイルおよび光学センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 2 A20060101AFI20180928 2 C07C 275/
   A61B 5/1455 2 A20060101ALI20180928 2 C07C 275/
   A61B 5/11 2 A20060101ALI20180928 2 C07C 275/
【FI】
   A61B5/02 310B
   A61B5/1455
   A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-530977(P2018-530977)
(86)(22)【出願日】2016年9月5日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月2日
(86)【国際出願番号】GB2016052728
(87)【国際公開番号】WO2017037479
(87)【国際公開日】20170309
(31)【優先権主張番号】62/214,274
(32)【優先日】2015年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】518075716
【氏名又は名称】フットフォールズ・アンド・ハートビーツ・(ユーケイ)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FOOTFALLS AND HEARTBEATS (UK) LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】511093498
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノッティンガム
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】マクマスター,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ‐ギル,バリー
(72)【発明者】
【氏名】モーガン,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】コーポッシュ,セルギー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AA12
4C017AA16
4C017AC04
4C017AC26
4C017EE15
4C038KK01
4C038KL07
4C038KM01
4C038KY01
(57)【要約】
少なくとも1つの医学的徴候または臨床徴候を測定するように適合された複合センサが提供される。複合センサは、複合センサに印加された圧力を測定するように構成されたテキスタイルセンサと、光学センサと、を備える。光学センサは、典型的には、少なくとも1つの光ファイバセンサ(FOS)を備え、かつ、光電式容積脈波(PPG)センサとして、必要に応じて、反射モード光電式容積脈波(PPG)センサとして機能することができる。複合センサは、センサを着用している対象者の動きによって引き起こされるモーションアーチファクトをなくし、それによって、対象者の長期間の歩行モニタリングを容易にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合センサに印加された圧力を測定するように構成されたテキスタイルセンサと、光学センサと、を備える複合センサ。
【請求項2】
少なくとも1つの医学的徴候または臨床徴候を測定するように適合されている請求項1に記載の複合センサ。
【請求項3】
前記医学的徴候または臨床徴候は、少なくとも1つのバイタルサインを含む請求項1または2に記載の複合センサ。
【請求項4】
前記医学的徴候または臨床徴候は、体温、血圧、酸素飽和度、毛細血管再充満時間(CRT)、脈拍/心拍数など、および、覚醒、からなる群から選択される少なくとも1つの徴候を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項5】
対象者の皮膚表面と接触して、または、前記皮膚表面の近傍で、使用される請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項6】
前記テキスタイルセンサはニットセンサを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項7】
前記ニットセンサは、複数のステッチを備えることによって所定のステッチパターンを形成するテキスタイルに編み込まれる導電性編糸で構成され、
前記ステッチパターンは、測定可能な電気接触抵抗を生成し、
前記測定可能な電気接触抵抗は、前記テキスタイルセンサに圧力が印加されると変化する請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項8】
前記圧力は、前記テキスタイルセンサに加えられた圧縮の形態である請求項7に記載の複合センサ。
【請求項9】
前記ステッチパターンは、ジャージーステッチ、タックステッチ、ミスステッチ、および/または、レイドイン編糸、ならびに、これらの任意の組合せ、からなる群から選択されるステッチを備える請求項7または8に記載の複合センサ。
【請求項10】
前記光学センサは、少なくとも1つの光源を備える請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項11】
前記光源は発光ダイオード(LED)を含む請求項10に記載の複合センサ。
【請求項12】
前記光学センサは、光電式容積脈波(PPG)センサであり、必要に応じて、反射モード光電式容積脈波(PPG)センサである請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項13】
前記光学センサは、少なくとも1つの光ファイバセンサ(FOS)を備える請求項1〜12のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項14】
前記FOSは、
遠位末端および近位末端を有する少なくとも1つの第一の送信ファイバであって、その近位末端において第一の光源に接続され、かつ、その遠位末端から光を送信する第一の送信ファイバと、
遠位末端および近位末端を有する少なくとも1つの第一の受信ファイバであって、その近位末端において第一の光検出器に接続され、かつ、その遠位末端において光を受光する第一の受信ファイバと、を備え、
前記第一の送信ファイバの前記遠位末端は、前記第一の送信ファイバから送信された光を前記第一の受信ファイバによって受信できるように、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端と軸方向で十分に位置合わせされ、または、前記遠位末端と同軸になっている請求項13に記載の複合センサ。
【請求項15】
前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、空隙によって離間されている請求項14に記載の複合センサ。
【請求項16】
前記第一の送信ファイバの前記末端と、前記第一の受信ファイバの前記末端とは、光ファイバの外側被覆が除去された領域によって離間されている請求項14に記載の複合センサ。
【請求項17】
ヒトまたは動物である対象者の皮膚表面と接触させての使用、または、前記皮膚表面の近傍での使用、に適している複合センサであって、
(i)ニットセンサを有し、前記ニットセンサは、ステッチパターンを画定する複数のステッチを含むテキスタイルを形成するように編まれる導電性編糸で構成され、前記ステッチパターンは、測定可能な電気接触抵抗を含み、外部圧力が印加された場合に前記測定可能な電気接触抵抗が変化するテキスタイルセンサと、
(ii)光ファイバ反射モード光電式容積脈波(PPG)センサを有する光学センサと、
を備える複合センサ。
【請求項18】
前記PPGセンサは、遠位末端および近位末端を有する少なくとも1つの第一の送信ファイバであって、その近位末端において第一の光源に接続され、かつ、その遠位末端から光を送信する、第一の送信ファイバと、遠位末端および近位末端を有する第一の受信ファイバであって、その近位末端において第一の光検出器に接続され、かつ、その遠位末端において光を受光する、第一の受信ファイバと、を備え、
前記第一の送信ファイバの前記遠位末端は、前記第一の送信ファイバから送信された光を前記第一の受信ファイバによって受信できるように、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端と軸方向で十分に位置合わせされ、または、前記遠位末端と同軸になっている請求項18に記載の複合センサ。
【請求項19】
前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、空隙によって離間されている請求項18に記載の複合センサ。
【請求項20】
前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、光ファイバの外側被覆が除去された領域によって離間されている請求項18に記載の複合センサ。
【請求項21】
対象であるヒトまたは動物のスポーツまたはタスク指向のパフォーマンスを監視する方法で用いられる請求項1〜20のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項22】
患者であるヒトまたは患畜である動物の臨床徴候および/または症状を監視する方法で用いられる請求項1〜20のいずれか1項に記載の複合センサ。
【請求項23】
前記患者であるヒトまたは患畜である動物は、1型または2型糖尿病、末梢血管疾患、心血管疾患、腎臓病、高血圧症、および、心不整脈、からなる群から選択される1つ以上の臨床症状または病気を患っている請求項22に記載の複合センサ。
【請求項24】
請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載の複合センサを備える衣服。
【請求項25】
請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載の前記複合センサを備える創傷被覆材。
【請求項26】
皮膚表面に取り付けた光学センサから得られた測定値からモーションアーチファクトを取り除く方法であって、前記皮膚表面に取り付けられた光学センサの部位に加えられた圧縮を連続的に記録することと、前記測定値を正規化し、かつ、モーションアーチファクトを取り除くために前記測定値に対して補正を施すことと、を含む方法。
【請求項27】
前記皮膚表面に取り付けられた光学センサの前記部位に加えられた圧縮の連続する記録は、前記光学センサと、加えられた圧縮を測定するセンサと、を組み合わせることによって実現される請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人肌に接触することができ、かつ、臨床徴候を監視することができるセンサ、特にウェアラブルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
テキスタイルデザインにおいて重要になりつつある領域は、たとえば、医療従事者による監視、評価および治療介入のために、生理学的データを表す電気信号が衣服から収集され遠隔地へ送信される「インテリジェントテキスタイル」の領域である。しかし、このようなテキスタイル装置は、テキスタイルシェル内に配置された半導体素子を備えて、衣料品として着用されるため、一般的には文字通り「インテリジェントな」テキスタイルではない。
【0003】
ヒトまたは動物と相互に作用するテキスタイルベースのセンサシステムを作り出すことは、センサが臨床徴候や生理学的パラメータを正確に、かつ正しい環境で測定することが可能である必要があるため、難しいことである。しかし、このようなセンサは、扱い難い物であってはならないし、また、正常な動作や機能の妨げになるものであってはならない。ほとんどのテキスタイルベースのセンサシステムに伴う重大な欠点は、対象者が、歩行または体位変換などの通常の動作を行う場合にそれらのセンサが測定に失敗するということである。これは、測定値に取り込まれて、測定閾値またはベースラインに著しく影響を及ぼす可能性があるいわゆる「モーションアーチファクト」によるものである。
【0004】
研究対象の被験者が着用することができるテキスタイルベースのセンサを用いて測定するのに望ましいであろう多くの重要な生理学的パラメータおよび臨床徴候が存在する。毛細血管再充満時間(CRT)は、皮膚表面の下における微小血液循環系が、圧力を加えて取り除いた後に血液で再び満たされるまでにかかる時間である。CRT測定は、現在、シンプルな定量計測法(皮膚に指を押し付けた後、色調が戻るまでの時間が計測される)、または、テープで体部位の適所に付着した光ファイバセンサを用いた複雑な定量計測法を用いて遂行されている。足底圧計測は、歩行分析研究室内での固定圧力パッド、または、より高価な矯正用インサートのいずれかを介して行われる。糖尿病性足神経障害を持つ患者について、蓄積される相対足底圧の時間毎/日毎の分析を可能にする装置はほとんどない。それでも、携帯型24時間血圧モニタは、比較的扱い難い。血圧は、基本的な生理学的パラメータであり、すなわち、病気のインジケータとして幅広く用いられる、いわゆる「バイタルサイン」であるため、「文字どおりの」歩行用は、素晴らしい進歩を示すであろう。また、歩行または「自宅での」血圧のモニタリングは、曖昧であるため、臨床医にとってあまり役に立たない結果をもたらすことに留意されたい。酸素飽和度(SpO)は、現在、指または耳たぶ用の装置を介して定期的にモニタされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際出願PCT/IB2014/058866号
【特許文献2】国際出願PCT/IB2014/063929号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、テキスタイルベースであり、かつ、重要な生理学的パラメータおよび臨床/医学的徴候の歩行モニタリングを実行できるセンサを提供することが所望される。
【0007】
本発明は、従来技術に関連する上述した問題および欠点のうちの少なくともいくつかを軽減または克服するために発明されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様によれば、複合センサに印加された圧力を測定するように構成されたテキスタイルセンサと、光学センサと、を備える複合センサが提供される。典型的には、前記複合センサは、対象者の皮膚表面に接触して、または、前記皮膚表面の近傍で、使用される。
【0009】
好適には、前記複合センサは、少なくとも1つのバイタルサインなどの医学的徴候または臨床徴候を測定するように適合されている。典型的には、前記医学的徴候または臨床徴候は、体温、血圧、酸素飽和度、毛細血管再充満時間(CRT)、脈拍/心拍数など、および、覚醒、からなる群から選択される少なくとも1つの徴候を含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記テキスタイルセンサはニットセンサを含む。
【0011】
本発明の特定の実施形態において、前記ニットセンサは、複数のステッチを備えることによって所定のステッチパターンを形成するテキスタイルに編み込まれる導電性編糸で構成され、前記ステッチパターンは、測定可能な接触抵抗を生成し、前記測定可能な接触抵抗は、前記テキスタイルセンサに圧力が印加されると変化する。好適には、前記圧力は、前記テキスタイルセンサに加えられた圧縮の形態である。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、前記ステッチパターンは、ジャージーステッチ、タックステッチ、ミスステッチ、および/または、レイドイン編糸、ならびに、これらの任意の組合せ、からなる群から選択されるステッチを備える。必要に応じて、前記ステッチパターンは、少なくとも50%のジャージーステッチを備える。この実施形態では、前記残りのステッチは、ミスステッチとタックステッチとの組合せで構成してもよい。別法として、前記残りのステッチは、約5%のミスステッチと約45%のタックステッチとの組合せで構成してもよい。さらに代替的な実施形態においては、前記残りのステッチは、約10%のミスステッチと約40%のタックステッチとの組合せで構成される。必要に応じて、本発明のまた別の実施形態では、前記残りのステッチは、大部分(たとえば、半分以上)がミスステッチまたはタックステッチで構成される。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、前記光学センサは、少なくとも1つの光源を備える。好適には、前記光源は発光ダイオード(LED)を含む。本発明の1つの実施形態において、前記光学センサは、光電式容積脈波(フォトプレスチモグラフィ、PPG)センサ、たとえば、反射モードPPGセンサである。
【0014】
本発明の特定の実施形態によれば、前記光学センサは、少なくとも1つの光ファイバセンサ(fibre−optic sensor:FOS)を備える。典型的には、前記FOSは、少なくとも1つの光ファイバを備え、好適には、本発明のFOSは、複数の光ファイバを備え、必要に応じて、前記FOSは、3つ以上の光ファイバを備えてもよい。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記FOSは、遠位末端および近位末端を有する少なくとも1つの第一の送信ファイバであって、前記第一の送信ファイバは、その近位末端において第一の光源に接続され、かつ、その遠位末端から光を送信する、第一の送信ファイバと、遠位末端および近位末端を有する第一の受信ファイバであって、前記第一の受信ファイバが、その近位末端において第一の光検出器に接続され、かつ、その遠位末端において光を受光する、第一の受信ファイバと、を備え、前記第一の送信ファイバの前記遠位末端は、前記第一の送信ファイバから送信された光を前記第一の受信ファイバによって受信できるように、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端と十分に位置合わせされる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、空隙によって離間されている。好適には、前記空隙は、長さが最大で約10mm、典型的には、約10mm未満、必要に応じて約7mm以下である。
【0017】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記第一の送信ファイバと第一の受信ファイバとは、単一の一体化光ファイバ内に構成されているが、前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、光ファイバの外側被覆が除去された領域によって離間されている。好適には、被覆が除去された領域は、長さが最大で約10mm、典型的には、約10mm未満、好適には、約7mm以下である。
【0018】
本発明の第二の態様は、対象者の皮膚表面と接触させての使用、または、前記皮膚表面の近傍での使用、に適している複合センサを提供し、前記複合センサは、テキスタイルセンサであって、前記テキスタイルセンサはニットセンサを有し、前記ニットセンサは、ステッチパターンを画定する複数のステッチを含むテキスタイルを形成するように編まれる導電性編糸で構成され、前記ステッチパターンは、測定可能な電気接触抵抗を含み、記測定可能な電気接触抵抗は、外部圧力が前記テキスタイルセンサに印加された場合に変化するテキスタイルセンサと、光学センサであって、前記光学センサは光ファイバ反射モード光電式容積脈波(PPG)センサを有する光学センサと、を備える。
【0019】
本発明の特定の実施形態は、複合センサを提供し、前記PPGセンサは、遠位末端および近位末端を有する少なくとも1つの第一の送信ファイバであって、前記第一の送信ファイバが、その近位末端において第一の光源に接続され、かつ、その遠位末端から光を送信する、第一の送信ファイバと、遠位末端および近位末端を有する第一の受信ファイバであって、前記第一の受信ファイバが、その近位末端において第一の光検出器に接続され、かつ、その遠位末端において光を受光する、第一の受信ファイバと、を備え、前記第一の送信ファイバの前記遠位末端は、前記第一の送信ファイバから送信された光を前記第一の受信ファイバによって受信できるように、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端と軸方向で十分に位置合わせされ、または、前記遠位末端と同軸になっている。必要に応じて、前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、空隙によって離間されている。好適には、前記空隙は、長さが最大で約10mm、典型的には、約10mm未満、好適には、約7mm以下である。本発明の代替的な実施形態において、前記第一の送信ファイバの前記遠位末端と、前記第一の受信ファイバの前記遠位末端とは、光ファイバの外側被覆が除去された領域によって離間されている。好適には、前記被覆されていない領域は、長さが最大で約10mm、典型的には、約10mm未満、好適には、約7mm以下である。
【0020】
本発明の第三の態様は、対象であるヒトまたは動物のスポーツまたはタスク指向のパフォーマンスを監視する方法で用いられる前述のセンサを提供する。
【0021】
本発明の第四の態様は、患者であるヒトまたは患畜である動物の臨床徴候および/または症状を監視する方法で用いられる前述のセンサを提供する。本発明の特定の実施形態は、前述のセンサを提供し、前記患者であるヒトまたは患畜である動物は、1型または2型糖尿病、末梢血管疾患、心血管疾患、腎臓病、高血圧症、および、心不整脈、からなる群から選択される1つ以上の臨床症状または病気を患っている。
【0022】
本発明の第五の態様は、前述した前記複合センサを備える衣服を提供する。必要に応じて、前記衣服は、靴下またはストッキングを備えている。
【0023】
本発明の第六の態様は、前述した前記複合センサを備える創傷被覆材を提供する。好適には、前記創傷被覆材は、包帯を備えている。
【0024】
本発明の第七の態様は、皮膚表面に取り付けた光学センサから得られた測定値からモーションアーチファクトを取り除く方法であって、前記皮膚表面に取り付けられた光学センサの部位に加えられた圧縮を連続的に記録することと、前記測定値を正規化し、かつ、モーションアーチファクトを取り除くために前記測定値に対して補正を施すことと、を含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態において、前記皮膚表面に取り付けられた光学センサの前記部位に加えられた圧縮の連続する記録は、前記光学センサと、加えられた圧縮を測定するセンサと、を組み合わせることによって実現される。好適には、加えられた圧縮を測定する前記センサは、本願明細書に記載されているタイプのテキスタイルセンサである。必要に応じて、前記皮膚表面に取り付けられた光学センサは、本願明細書に記載されているFOSを備える。
【0025】
この出願の範囲内において、先の段落に、前記請求項におよび/または以下の説明および図面に記載されている様々な態様、実施形態、実施例および代替例、ならびに、特に本発明の前記個々の形状構成を、独立してまたは何らかの組合せで解釈してもよいことが明確に意図されている。すなわち、すべての実施形態および/またはいずれかの実施形態の形状構成は、そのような形状構成に互換性がある限り、どのような方法でも、またどのような組み合わせでも、組合せることができる。本出願人は、最初に出願した任意の請求項を変更する権利、または、それに伴って新たな任意の請求項を出願する権利を有し、その権利には、最初はそのようにクレームされていないが、他の任意の請求項の何らかの特徴に従属するようにおよび/または前記特徴を含むように、最初に出願されたいずれかの請求項を補正する権利を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本発明の1つ以上の実施形態を、単なる例示として、添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1】本発明の実施形態による皮膚表面に接触させた複合センサの概略図。
図2図1の複合センサに用いる交差構成光ファイバセンサの概略図。
図3図2の交差構成光ファイバセンサを用いて行った毛細血管再充満時間測定を示すチャート。
図4】シングルジャージーニットステッチパターンにおける2つの相互接続された編糸ユニットの概略図(図4a)、および、図1の複合センサに用いるテキスタイルセンサに用いられる単純なシングルジャージーニットステッチパターンの概略図(図4b)。
図5】シングルジャージーニットステッチ、ミスステッチ、および、タックステッチ、を有するニットステッチパターンを有するテキスタイルセンサの代替的な実施形態の概略図。
図6図5に示す種類の、圧力を測定するためのテキスタイルセンサの適合性を示すチャートである。
図7】複合センサのテキスタイルセンサを用いて測定した毛細血管酸素飽和度測定(図7b)中に指に加えられた荷重を示すチャート(図7a)、および、図2の交差構成光ファイバセンサを用いて行った毛細血管酸素飽和度測定を示すチャート(図7b)。
図8図1の複合センサを用いて行った患者についてのCRTを確立するための組合せ測定を示すチャート。
図9】複合センサに用いることができる同軸構成光ファイバセンサの概略図。
図10】複合センサに用いることができる連続構成光ファイバセンサの概略図。
図11図11の連続構成光ファイバセンサを用いて行った毛細血管再充満時間測定を示すチャート。
図12】複合センサの概略平面図。
図13】複合センサを、足の生理学的パラメータを測定するのに用いることができる位置を示す足の裏の写真。
図14図13に示す位置において足の裏に対して行った組合せ測定のセット。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願明細書において引用したすべての参考文献は、それらの全体が参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。特に他の定義がない限り、本願明細書で用いられている技術用語および科学用語は、この発明に関連する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有している。
【0029】
本発明を記載する前に、本発明を理解するのに役に立つであろう多くの定義を記載する。
【0030】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(the)」は、この説明で用いられる場合、文脈が明確に他のものを指定していない限り、複数の指示対象を含む。したがって、たとえば、「1つのセンサ(a sensor)」という用語は、単一のセンサ、1つ以上のセンサ、または、センサのアレイ、を意味することが意図されている。この明細書の目的のために、「前方」、「後方」、「正面」、「裏面」、「右」、「左」、「上方」、「下方」などの用語は、便宜上の言葉であり、用語を限定するものと解釈すべきではない。加えて、「本願明細書に組み込まれる」と言われている参考文献は、いずれも、その全体が組み込まれるものと理解すべきである。
【0031】
「備える(comprising)」という用語は、本願明細書で用いられる場合、列挙された要素のうちのいずれかが必ず含まれ、かつ、他の要素は必要に応じて同様に含んでもよいことを意味する。「から本質的になる」は、列挙されたいずれかの要素が必ず含まれ、列挙された要素の基本的なおよび新規の特徴に著しく影響を及ぼすであろう要素は除外され、かつ、その他の要素は必要に応じて含んでもよいことを意味する。「からなる」は、列挙されたもの以外のすべての要素が除外されることを意味する。これらの用語の各々によって定義された実施形態は、この発明の範囲内に含まれる。
【0032】
「遠位」および「近位」という用語は、本願明細書で用いられる場合、装置の長手方向軸に沿った方向を指すのに用いられる。本発明のファイバは、本質的に細長くかつ一次元に適合されているため、使用時の遠位方向は光源または受信部から最も遠いファイバの末端を指し、また、近位方向は光源または受信部に最も近いファイバの末端を指す。近位(proximal)という用語は、「に近い(near to)」というその従来からの意味を採用する「近接して(proximate)」と混同すべきではないことに留意すべきである。
【0033】
本願明細書における目的のため、「モーションアーチファクト」は、センサ装置の動きまたは当該装置が適用された対象者によって導入される、信号の認識または表示の何らかのエラーである。動きは、本発明の装置を着用している対象者の自発的または不随意的動作によって引き起こされる可能性がある。
【0034】
「接触抵抗」という用語は、本願明細書で用いられる場合、接触している編糸によるテキスタイルの部分の全電気抵抗を指すのに用いられる。接触抵抗は、編糸接触面積に伴って変化し、また、テキスタイルに加えられた重量または張力に基づいて変化する可能性がある。数式1は、ホルムの接触抵抗方程式であり、式中、Rは接触抵抗であり、ρは材料の抵抗率であり、Hは材料の硬度であり、Fは垂直抗力である。
【0035】
【数1】
【0036】
数式2は、別のホルムの方程式を表し、これは、テキスタイルベースの接触抵抗により関連している。Fは、nPによって置き換えられており、式中、nはテキスタイル中の隣接する編糸間の接触点の数であり、また、Pは接触圧力である。
【0037】
【数2】
【0038】
材料の硬度および電気抵抗率は、テキスタイルの材料特性に依存する定数である。そのため、接触抵抗は、接触点の数および接触圧力に反比例する。すなわち、より多くの接触点があれば、結果として接触抵抗がより低くなる。したがって、接触点および/または接触圧力が増加すればするほど、接触抵抗は減少する。接触抵抗は、本願明細書で用いられる場合、編糸またはテキスタイルにおける導電性の尺度を示す。「マイクロ」スケールでは、表面粗さは、面・面接触を制限する。さらに、圧力が増加するにつれて、接触点の数が増加し、「ナノ」スケールでは、最終的には、個々の接触点は、より大きな接触面積に「合成」する。「総和としての積分」および「有限要素法(FEM)」は、これらの接触点の限度、および、その結果としてそれらがもたらす接触面積、を判断するのに用いることができる方法である。
【0039】
「テキスタイル」および「ファブリック」という用語は、本願明細書で用いられる場合、すでに組み合わされている複数の個々の繊維から製造されたフレキシブル材料を指す。テキスタイルまたはファブリックは、織ってもよく、編んでもよく、かぎ針で編んでもよく、伸ばしてもよく、または、繊維を用いて実現することができる他の任意の種類の織り合わせによって作成してもよい。テキスタイルに関連して用いられる「繊維」は、何らかの実質的に細長い編糸または縫糸を指す。
【0040】
「ミスステッチ」は、本願明細書で用いられる場合、少なくとも一本の針が古いループを保持し、かつ、1つ以上のウェールを横切る何らかの新たな糸を受け入れない編み方として定義される。ミスステッチは、隣接するウェール内にはない同じコースの2つのループを接続する。
【0041】
本願明細書における目的のため、「平編み」は、編糸のループが、ファブリックの裏面に引っ張られる編み方を指す。平編みは、ファブリックおよび縫糸の表面に一連のウェールまたは縦方向のリブを、または、裏面に横方向のループを形成する。また、平編みは、「シングルニットジャージーステッチ」または「シングルジャージーステッチ」と呼ぶこともできる。
【0042】
「タックステッチ」は、本願明細書における用途の場合、編糸が針のフック内に保持され、新たなループを形成しない編み方として定義される。
【0043】
図4aは、シングルジャージーステッチ100を備えるテキスタイルの概略図であり、編糸接触面積の概念を示す。ジャージーニットテキスタイルにおいて、ニードルループ部104(または編糸ユニット)は、ヘッド部104と、ヌース部108を形成する2つのサイドレッグ部106と、を備える。各サイドレッグ部106のベースには、前の編みサイクルで形成されたシンカーループ部112のヘッド部104を介してかかるフット部110がある。ニードルループ部104のサイドレッグ部106は、一方の側部(または面)から、シンカーループ部112のサイドレッグ部106およびヘッド部104を横切ってシンカーループ部112の他方の側部/面まで通り、その後、ヘッド部104およびシンカーループ部112の反対側のサイドレッグ部106を横切って戻るようにループを形成して、シンカーループ部112の元の側部/面に戻る。ステッチ長さ114は、それのいずれかの側に、ニードルループ部104と、シンカーループ部112の半分と、を含む編糸の長さとして定義される。
【0044】
編糸接触面積は、テキスタイルの多くの異なる変数によって影響を受け、かつ、導電性編糸で形成されたテキスタイルの接触抵抗に直接的な影響を及ぼす。接触抵抗は、編糸接触表面積の伝導特性と関連付けられる。編糸表面の、より大きな糸接触面積およびより小さな表面粗さは、テキスタイル中を伝わる電気信号に対してより低い抵抗をもたらす。したがって、編糸接触面積の増加は、接触抵抗の比例減少を引き起こす。編糸変数、ステッチ変数、および、テキスタイル変数は、それぞれ編糸接触面積に影響を及ぼし、それにより、特定の検出動作または用途に適合した、編糸接触面積、および、その結果としての接触抵抗、を有するテキスタイルを具体的に設計するのに用いることができる変数を提供する。
【0045】
接触抵抗に影響を及ぼす可能性のある変数には、編糸タイプおよび構成、編糸製造方法、編糸カウント、ステッチのタイプ、構成およびパターン、ステッチ長さ、ステッチ割合、平均電気抵抗率(MER)、ファブリック厚さ、ファブリック重量、光気孔率(OP)、ならびに、永久伸び(PPS)、が挙げられる。
【0046】
図4bは、シングルジャージーステッチパターンの概略図である。このパターンにおいて、相互接続ステッチループは、シングルジャージー接触点116に触れている。シングルジャージーステッチパターンにおいて、1つのステッチは、本質的には、隣接するステッチに一方の側のみで接触し、または、一度に隣接するステッチ(またはファブリック)の表面に接触する。すなわち、2つの相互接続ステッチループにおいて、第一のステッチループのレッグ部は、第二のステッチループの一方の表面で第二の隣接するステッチループのフット部に接触する。第二のステッチループの反対側の表面では、第一のステッチループのヘッド部は、第二のステッチループのレッグ部に接触する。その結果として、シングルジャージー接触点は、隣接するループの比較的小さな交差点に制限される。
【0047】
「光ファイバ」という用語は、本願明細書で用いられる場合、そこを介して電磁信号を伝えることができるフレキシブルな透明フィラメントである。光ファイバの透明コアは、その外周面の周りの被覆材料によって包囲され、被覆材料はコアと異なる屈折率を有し、このことは、被覆とコアとの間の境界に達する電磁波が全反射を受けることを確実にする。
【0048】
本願明細書で用いられる「皮膚表面」という用語は、監視されている対象者、典型的には、ヒトまたは動物の表皮面を指すことが意図されている。哺乳動物では、皮膚は、外側の表皮層および下にある真皮、ならびに、皮膚に付随する脈管構造を含む支持組織、を備えている。
【0049】
本発明は、テキスタイルセンサおよび光学センサを組み込んだテキスタイルを備える複合センサを提供する。本発明に係る複合センサは、対象者の皮膚表面との直接的な物理接触での使用、または、皮膚表面の近傍での使用、のために構成される。本発明に係る複合センサは、検出動作を測定するように構成される。本発明の1つの実施形態において、複合センサは単一の検出動作を監視するように構成される。本発明の別の実施形態では、複合センサは複数の検出動作を同時におよび/または連続的に測定および監視することが可能である。
【0050】
本発明の装置は、体温、血圧、酸素飽和度、毛細血管再充満時間(CRT)、正常心拍数の変動(たとえば心不整脈)を含む心拍数、および、覚醒、を含む非限定的な群から選択されるものなどの重要な生理学的パラメータおよび医学的徴候/臨床徴候(たとえば検出動作)の測定および連続モニタリングに適している。当業者には、本発明に係る装置および方法が、診断目的または予後予測目的だけのものではないことは認識されるであろう。生理学的パラメータおよびバイタルサイン(「バイタル」とも言う)の測定は、タスク指向のパフォーマンスまたはスポーツのパフォーマンスに関する進行中のモニタリングを含む多数の目的に役立つ可能性がある。例として、宇宙飛行士、軍関係者、または、厳しい環境における他の作業者(たとえば深海潜水士)の連続モニタリングは、本質的に所定のものであり、診断目的に限定されない。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は、図1に示されているように、少なくとも1つのテキスタイルセンサ(textile sensor:TS)、および、少なくとも1つの光ファイバセンサ(FOS)、を含むテキスタイルを備える複合センサを提供する。図1は複合センサ10の断面図を示し、TS12はFOS14に接触し、かつ、FOS14に圧縮を加える。このようにして、FOS14は、対象者の皮膚表面16(この場合ヒトの患者の足の裏)に確実に押し付けられて配置される。FOS14によって放射された光は、皮膚表面16および皮膚表面16の下の血液循環によって吸収18され、または、反射20して戻される。TS12は、テキスタイルによってTS12およびその結果としてFOS14に加えられた力の大きさを測定する中央制御装置22に接続されている。
【0052】
図1に示すようなFOS14は、反射率モード光電式容積脈波(PPG)センサであり、その構成は図2に図示されている。図2は、図1のFOS14の一部分24の平面構成を示す。なお、図の表現を明確にするため、テキスタイルセンサ12は図2には含まれていない。他の可能性のある光学センサ構成と区別するために、以後は交差構成のFOS24と称する図2のFOS14は、以後は左送信光ファイバ26および右送信光ファイバ28と呼ぶことにする第一および第二の送信光ファイバと、以後は左受信光ファイバ30および右受信光ファイバ32と呼ぶことにする対応する第一および第二の受信光ファイバと、を含んでいる。従来の光ファイバと同様に、ファイバの外表面は、光ファイバの長手方向にわたって全反射が確実に生じ、それによって、信号の潜在的な何らかの損失、または、信号へのノイズの導入が低減されるように、被覆材で覆われている。
【0053】
また、交差構成のFOS24は、第一(左)の発光ダイオード(LED)34および第二(右)の発光ダイオード(LED)36などの1つまたは複数の光源と、左の光検出器38および右の光検出器40などの対応する第一および第二の受信部と、を含んでいる。各LED34、36は、そのそれぞれの送信ファイバ26、28の近位末端42、44に接続し、かつ、送信ファイバ26、28の遠位末端46、48に光を伝送する。各末端42、44、46、48は、長手方向軸に対して約45度の角度になる横断面を形成するように、ファイバ26、28を切断または切開することによって形成される。その後、各末端42、44、46、48の表面は、最適な光伝送を容易にするために研磨されうる。送信ファイバ26、28の遠位末端46、48は、空隙50が、送信ファイバ26、28の2つの遠位末端46、48の間に形成されるような距離で離間して互いに対向して位置するように同軸に配置されている。したがって、ファイバ26、28は、交差構成のFOS24が平坦に置かれている場合には、長手方向の第一の軸52に沿って位置合わせされ、かつ、送信ファイバ26、28がそれに沿って位置している長手方向軸52に対して直角になっている中心軸54のいずれかの側部に、中心軸から特定の距離の位置に配置されている。
【0054】
同様に、各光検出器38、40は、そのそれぞれの受信ファイバ30、32の近位末端56、58に接続し、かつ、受信ファイバ30、32の遠位末端60、62から光を受光する。受信ファイバ30、32の遠位末端60、62は中心軸54上にあり、ファイバ30、32は中心軸54から反対方向に延出する。ファイバ30、32は、各ファイバ30、32の遠位末端60、62の少なくとも近傍で、送信ファイバ26、28と平行に位置合わせされ、かつ、送信ファイバ26、28からオフセットされている。
【0055】
送信ファイバ26、28から受信ファイバ30、32をオフセットさせることにより、送信ファイバ26、28間の空隙50は、ファイバ26、28、30、32間の検出領域64を画定する。使用時には、そのそれぞれのLED34、36によって、光信号が送信ファイバ26、28の各々に沿って、検出領域64に向かって伝えられる。各ファイバの近位末端および遠位末端が、ファイバを切断して研磨することによって形成されているため、末端は被覆材で覆われておらず、それにより、光の入射および出射が可能になっている。各送信ファイバ26、28の場合、光信号はファイバ26、28の近位末端42、44に入り、その後、全反射のメカニズムにより、送信ファイバ26、28に沿って伝わる。遠位末端46、48では、光はファイバ26、28から出射し、対象者の皮膚表面に隣接している可能性のある検出領域64内に送信される。反射および/または吸収は、受信ファイバ30、32の遠位末端60、62に入射することができる光の量に影響を及ぼす。受信ファイバ30、32に入射する光は、光検出器38、40に到達するまで、全体的にファイバ30、32を通って伝送され、そこで信号強度が測定される。検出領域64での光の出射を可能にするだけで、情報の損失が最小限になり、かつ、より高い信号対雑音比(SNR)が実現される。
【0056】
交差構成のFOS24の有効性および能力は、図3によって示されている。図3は、センサ24が適用された患者の皮膚中の毛細血管再充満時間(CRT)を測定することによって得られた。図3に示すように、交差構成のFOS24を用いて測定した場合、圧縮の形式の圧力が定期的に印加され、その後、取り除かれる。圧力がセンサ24および皮膚表面16に印加された場合、送信ファイバ26、28から受信ファイバ30、32への光の反射が強まるため、光検出器38、40によって測定される光の強度が増加する。圧力が取り除かれると、皮膚に血液が十分に再灌流するベースラインレベルで安定するまで強度が低下する。検出領域への圧力の各印加および除去に続いて、測定した光の強度は、圧力が取り除かれる時点と、CRTに相当するベースラインレベルに戻る時点と、の間に要する時間を伴って、安定したベースラインまで低下する。図3において、CRTは約2秒になるように図示されている。しかし、通常の歩行動作をシミュレーションするために、各時刻に印加される圧力は異なる。そのため、測定において異なるピークを示し、かつ、その結果として潜在的に異なるCRTが生じる。このようなアーチファクトを緩和するために、複合センサは交差構成のFOSおよびTSを組み込んでいる。このようにして、本発明のセンサは、(TSによって測定される)印加された圧力に関して測定された光強度の正規化を可能にし、これによって、正確なCRTを得ることができる。加えて、圧力検出TSを含むことにより、所定の閾値圧力を超えたときにのみCRTを測定できるようにしている。したがって、本発明に係る複合センサ構成は、センサを真に歩行用に用いることができ、このことは、対象者の通常の活動の最中にわたる対象者の連続モニタリングを可能にする。このことは、臨床環境において、本発明に係るセンサ構成が最小限の影響または妨げで患者が日々の活動を続けることを可能にするという点においてかなりの利点である。スポーツパフォーマンスの評価などの非臨床研究においては、動作の自由度および範囲に対する悪影響は、仮にあるにしても最小限となる。このことは明らかに、これまで、従来技術によるセンサ構成を用いては実現できなかった、実生活での測定における高い精度をもたらす。
【0057】
強度レベルのピークと底値との間のCRT測定の変調度が、問題としている循環の絶対血液量に比例することは、既知である。
【0058】
本発明の1つの実施形態によれば、TSは、テキスタイルの特定のゾーン内に構成され、かつ、導電性編糸から形成されている。TSは、典型的には、それ自体が衣服を形成していてもよいテキスタイル内の完全に一体化されたニットセンサであり、当該センサは検出動作のために(たとえば、印加された圧力および/または圧縮を検出するために)設計および適合されている。TSは、ステッチパターンを形成する複数のステッチを編んで構成してもよい。複数のステッチは、ジャージーステッチ、タックステッチ、および、ミスステッチまたはレイドイン編糸、からなる群から選択される任意の組合せを備えていてもよい。実施例のステッチパターン100が図4bに図示されており、そこには、100%ジャージーステッチからなるステッチパターン100が図示されている。この種の適当なテキスタイルセンサは、出願人フットフォールズ・アンド・ハートビーツ社のさらなる特許出願、国際出願PCT/IB2014/058866号(特許文献1)および国際出願PCT/IB2014/063929号(特許文献2)の対象である。
【0059】
図5は、本願明細書に記載のFOSなどの光学センサとともに用いることができるTSの代替的な実施形態である、ミスステッチおよびタックステッチを有するシングルジャージーステッチパターン101の概略図である。ミスステッチおよびタックステッチを有するシングルジャージーステッチパターン101は、シングルジャージー接触点116を有し、かつ、ミスステッチ118およびタックステッチ120に追加的な接触点を含む。タックステッチ接触点122は、タックステッチループが、コース内で隣接するステッチタイプと相互接続するときに生じる。タックループ接触点124は、タックステッチのタックループが、タックステッチの保持ループを押し付けたときに生じる。保持ループ接触点126は、タックステッチの保持ループが、隣接するステッチループに押し付けられたときに形成される。
【0060】
図4bに示した平編みのシングルジャージーステッチパターン100と比較すると、図5のタックステッチおよびミスステッチ構造に示す異なる接触点および領域は、異なるステッチパターンを有するテキスタイル間の異なる接触領域を可能にし、その結果として、所与の用途または検出動作に対して具体的にデザインすることができる予測可能な接触抵抗を可能にする。
【0061】
印加された圧縮などの外力を検出して測定する能力を有する代替的なウェアラブルセンサは、以下に記載したクレームの範囲から逸脱することなく、本発明の複合センサに用いることができる。
【0062】
図6aおよび図6bは本発明の1つの実施形態を示し、具体的には、TSがどのようにして計測可能範囲内で、かつ、生データとして、センサに印加された圧力を測定することができるかを示している。TSは、50%のジャージーステッチと、5%のミスステッチと、45%のタックステッチと、からなる構成を有する導電性編糸を組み込んだニットテキスタイルである。図6aは、比較としての市販のFlexiForce(登録商標)圧力センサとともに、TSから得られた処理データを示すグラフである。増大する水準の圧力を、テキスタイル内の接触抵抗(Ω)(左軸)と圧力(mmHg)(右軸)との関係を確立するように測定値が計測される状態で、TSおよびFlexiForceセンサとの両方に経時的に印加した。
【0063】
図6aで簡単に説明するために、たとえば、10〜25秒の間に計測される示度は、市販の圧力センサによって計測された20mmHgの圧力に相当し、かつ、テキスタイルで測定された約5500Ωに相当する。
【0064】
この測定は、圧力とTS内の接触抵抗との間に明確な関係があることを実証しており、かつ、抵抗と圧力の間の多項式関係を確立できるようにし、そのことが図6bに図示されている。
【0065】
複合センサにおいて、FOSは、TSに対して定位置に略固定されている。FOSは、各FOSをテキスタイルまたはTSに接続する固定バンドを用いて固定される。別法として、TSがセンサプレートを全体的に取り囲むように、センサプレートをTSに組み込んでもよい。そして、FOSは、固定バンドまたは接着剤によって、センサプレートに装着される。
【0066】
代替的な実施形態において、FOSは、テキスタイル内に形成されたチャネルに埋め込まれる。ファイバの末端は、TSにおいて皮膚表面に露出され、TS内には埋め込まれない。代替的な実施形態では、FOSは、テキスタイルおよびTSに埋め込まれる。このような構成では、テキスタイル構造は、FOSを所望の位置で保持するのに役に立つ可能性があり、また、FOSの構成要素の寸法安定性の制御を可能にする。このような構成は、FOSと検出領域の互いに対する動きによる干渉の可能性、および、FOSの測定精度に対する干渉の可能性を、最小限にする。加えて、テキスタイルセンサの周りの、TS構造の中であり、かつ、テキスタイル構造内である定位置にFOSを保持することは、問題を引き起こすとともにセンサの寿命を低減するFOSの光ファイバの「ねじれ」を回避するのに役に立つ可能性がある。
【0067】
次に、上述したような複合センサを用いて実行したCRT実験について考察すると、FOSおよびTSの光源および受信部は、プロセッサ等の中央制御装置(図示せず)に接続することができる。プロセッサは、複合センサに組み込んでもよく、または、それの外部であってもよく、たとえば、モバイル機器(スマートフォンなど)では無線プロトコルおよび交換モジュールを介して通信してもよい。プロセッサは、測定を実施および記録するように構成される。CRT測定中に、プロセッサは、測定した光強度が圧力の印加に続いて皮膚に血液が灌流する所定のベースラインレベルまで戻るのにかかった時間を記録する。圧力が測定されて、何らかのモーションアーチファクトがプロセッサによって考慮される。プロセッサは、光検出器の出力から毛細血管再充満時間を測定するように構成されている。
【0068】
毛細血管再充満時間が、実質的に線形の温度依存性を示すこと、および、それによって照らされた領域(または近傍の領域)の温度を、(たとえば、ルックアップテーブルを用いて)温度補正を実行するのに用いることができることは周知である。このことは、TSを用いて、または、テキスタイル内に組み込まれた独立したTSを用いて、実現してもよい。別法として、テキスタイル内に組み込まれた基準ファイバまたは熱電対は、温度補正情報および他の参考情報をもたらす。1つの実施形態において、基準ファイバは、完全に被覆されて測定には用いられない。そのかわり、基準ファイバに沿って伝送される信号が既知の値と比較され、そして、外部環境のパラメータ(たとえば、温度の何らかの変動)が比較により確立される。また、基準ファイバは、受光の変化を引き起こす可能性のある外部照明の状態および変化を考慮するように組み込まれていてもよい。
【0069】
圧力検出TSの出力は、毛細血管再充満測定のタイミングをトリガするのに用いてもよく、および/または、毛細血管再充満測定は、負荷を解放する前の負荷をかける大きさおよび/または期間に基づいて補正してもよい。このようにして複合センサは、連続的に作動する歩行用センサを実現することができる。複合センサが、足の裏の微小循環を測定するのに用いられる場合、着用者の普通の歩行は、実行すべき測定をトリガすることができる。同じ圧力の測定を毎回実行し、それによって測定を規格化することができ、かつ、文字通り繰り返し可能な測定を確実に可能にする。加えて、歩行、または、足の裏に対する何らかの圧力の印加および除去は、測定をトリガすることができるため、多くのCRT測定について、正確な平均値を形成するのに用いることができる。
【0070】
本発明の特定の実施形態において、プロセッサは、追加的な測定ステップを実行して、測定データの分析を行う。他の実施形態では、プロセッサは、より高い信号対雑音比をもたらすように、光源の出力を変化させる。たとえば、周囲照明状態が非常に明るい場合には、光のベースライン閾値が増加するように、光源の強度が増加される。
【0071】
本発明の実施形態においてプロセッサは、電源と連通している。電源は、FOSの光源および受信部に、ならびにTSに、電気的に接続されている。いくつかの実施形態において電源は、TSを介して、または、テキスタイルに組み込まれた別の導電性編糸または複数の導電性編糸を介して、光源および/または受信部に電気的に接続されている。
【0072】
複合センサの使用時の動作をさらに説明するため、交差構成のFOSを、患者の指の毛細血管酸素飽和度(SpO)を測定するのに用いた。結果を図7aおよび図7bに示す。SpOは、光電式容積脈波(PPG)を用いて、赤色光および赤外線で測定した。PPG波形は、各心拍に伴う血液量の心臓心同期変化に起因するパルス状の(“AC”)生理学的波形を備え、かつ、呼吸、交感神経系活動および体温調節に起因するさまざまな低周波成分とともに緩やかに変化する(“DC”)ベースラインに重畳される。
【0073】
図7aは、一定の30秒間隔で指に印加された増加する圧力から生じる(異なるレベルの圧縮を引き起こす)異なる重量の印加の影響を表す。図7bは、該交差構成のFOSによって行われた測定を示す。図7aおよび図7bに示すように、たとえば、時刻30秒、60秒、90秒、120秒および150秒に示すような急激な重量の増加、および、その結果として動きによって引き起こされた指に印加された圧力は、モーションアーチファクトと呼ばれる測定したSpO値の急激な減少に対応している。これらのモーションアーチファクトおよびSpO値に関する情報を組み合わせることにより、モーションアーチファクトを測定値から除去して、より高い精度および真の歩行モニタリングをもたらすことができる。
【0074】
加えて、SpO値は、90秒と120秒との間で、閾値圧力が、既に指に印加されていることを示すSpOレベルまで上昇していることが分かる。閾値を超えると、FOSの応答が不正確になっている。したがって、複合センサの使用中に最大圧力閾値を超えた場合、超過期間中に測定されたSpOレベルは無視される。
【0075】
逆に言えば、測定値が記録されるためには、最小圧力閾値を超える必要がある。約0秒と10秒との間で、最小閾値を満たさなかったため、不正確な測定値を生じていることがわかる。そのため、SpOを測定することができる圧力の最適な範囲があり、これは、本願明細書に記載されているタイプの複合センサによって認識されて補正される。
【0076】
加えて、上記のSpO測定の場合と同様な方法論を用いる複合センサを用いて実行したCRT測定の組合せ測定が図8に図示されている。患者の指に印加された圧力は右側のY軸で測られ、一方、反射光の強度は左側のY軸に示されている。時間は、X軸によって測られる。印加された圧力に応答して光強度が変化していることが図8を見てわかる。
【0077】
図9は、複合センサ10に用いることができるFOS150の代替的な構成を示す。以降、同軸構成のFOS150と称する図9のFOS150はファイバのペア152を備え、ファイバのペア152は送信ファイバ154および受信ファイバ156を有している。図9には、3つのファイバペア152が図示されているが、意図した用途に従って、より多くのまたはより少ないペアを組み込んでもよい。ファイバの各ペア152は同一であるため、ここでは、単一のペアのみについて説明する。
【0078】
また、同軸構成のFOS150は、それぞれの発光ダイオード(LED)158などのファイバの各ペアのための光源と、各ファイバのペア152のための光検出器160などの受信部またはそれぞれの受信部と、を含んでいる。交差構成のFOS24の場合と同様に、各LED158は、そのそれぞれの送信ファイバ154の近位末端162に接続し、かつ、送信ファイバ154の遠位末端164に光を送信する。各末端162、164は、ファイバ154の長手方向軸に対して45度の角度をなす面を形成するように、ファイバ154を切断することによって形成される。そして、ファイバ154の切断面は研磨される。各送信ファイバ154の遠位末端164は、空隙168が、ファイバ154、156の2つの遠位末端164、166の間に形成されるような距離で離間された、そのそれぞれの受信ファイバ156の遠位末端166に対向して位置するように同軸に配置されている。したがってファイバ154、156は、同軸構成のFOS150が平らに置かれた場合、長手方向軸170に沿って整列される。
【0079】
同様に、各光検出器160は、そのそれぞれの受信ファイバ156の近位末端172に接続し、かつ、当該受信ファイバ156の遠位末端166から光を受光する。
【0080】
送信ファイバ154および受信ファイバ156の各々は、切断された遠位端164、166を除いて、全反射を確実にするために、それらのそれぞれの長手方向に沿って被覆材を備えている。ファイバのペア152は同じ方向に配列され、かつ、互いに平行に配列されている。そのため、送信ファイバ154の遠位末端164は、送信ファイバ154が同じ方向において軸174から離れて延びている状態で、軸174に沿って整列されている。同様に、受信ファイバ156の遠位末端166は、別の軸176に沿って整列され、受信ファイバ156は同じ方向において平行に、軸176から離れる方向に延びている。ファイバの3つのペア152を互いに平行に配列することによって、検出領域178の潜在的なサイズが増加する。ファイバの数を増加させることは、より多くの散乱光が検出される可能性があることも意味するが、そのことは後述する。
【0081】
FOS200の代替的な構成が図10に図示されている。以後、連続構成のFOS200と称する図10のFOS200は、各光ファイバ202が、送信部204と、受信部206と、検出部208と、を有する平行に配列された1つ以上の光ファイバ202を備えている。図10には3つのファイバが図示されているが、意図した用途に従って、より多くのまたはより少ない(たとえば1つまたは2つの)ファイバを組み込んでもよい。ファイバの各々は同一であるため、ここでは、単一のファイバ202のみについて言及する。
【0082】
従来の光ファイバと同様に、ファイバの外側面は、光ファイバの長手方向に沿って全反射が確実に生じ、それによって、潜在的な何らかの信号損失または信号への雑音の取込みが低減されるように、被覆材210で被覆されている。前の図2および図9の実施形態では、検出領域64、178内での光交換は、ファイバ間での空隙52、168の形成を可能にしていた。連続構成のFOS200では、ファイバ202によって遠位末端が形成されておらず、また、ファイバ202は、光源212から、それらのファイバ202の末端216、218のいずれかに設けられている受信部214、光源212、および、受信部214、まで連続している。この構成200では、被覆材210は、ファイバの内部コアの一部を外部環境に対して露出させるために、検出部208においてファイバ202から除去されている。
【0083】
したがって、連続構成のFOS200において、光は全反射により送信部204に沿って進む。(前述の実施形態の検出領域64、178に相当する)検出部208では、光は、ファイバ202から出て、対象者の隣接する皮膚表面へ「漏れる」ようになっている。その結果、皮膚および皮下組織の内部での光の反射または吸収は、検出部208において、ファイバ202内に戻り、かつ、被覆された受信部206に沿って受信部214まで進む光の量によって測定される。
【0084】
図10に示す連続構成のFOS200の実施形態は、ここでもまた、より少ないファイバの場合に可能性のあるものよりも大きな検出ゾーン220を画定する、略離間されて平行に配列された3つのファイバを備えている。
【0085】
図11は、図10のセンサ構成200を用いて行ったCRTの測定を示す。
【0086】
図12に示す明暗度の増減は、測定の0〜15秒の間に空気中に配置された場合に、反射して受信ファイバに戻る信号は、この期間後の測定期間中に反射するものよりもかなり少ないことを示している。測定期間中には、かなり多くの光が反射され、CRTに対応する強度の低下を引き起こすのは、血液灌流のある皮膚による光の吸収である。
【0087】
図12において、連続構成のFOS200は、図4bに示すタイプのテキスタイルセンサ101を組み込んだテキスタイル250と組み合わされ、それによって、複合センサ252を形成している。ここでは、連続構成のFOS200が図示されているが、FOS24、150の前述した構成のうちのいずれか、または、FOSの他のいずれかの構成を、前述のテキスタイルセンサ101と同じ方法で用いてもよい。
【0088】
テキスタイル250はTS101を中央制御装置(図示せず)および電源(図示せず)に接続し、かつ、その結果として検出ゾーン258を同様に接続する、テキスタイル250に編み込まれた導電性編糸を備える2つの「導線」領域254、256を有している。
【0089】
FOS200の光ファイバ260は、約1mm離して配置され、かつ、それらの位置がTS101に対して容易に維持されるように、テキスタイル250に埋め込まれる。光ファイバ260の被覆されていない検出部262は、皮膚表面に対して最大限の接触を行うことができるように、テキスタイル250に埋め込まれておらず、かつ、光ファイバ260の軸に沿ってかつ軸にわたって直径で約7mm未満である検出ゾーン258内で、TS101の中央に位置するように配列されている。本発明の1つの実施形態によれば、当該軸方向において、約7mm未満の検出ゾーン258は、対象者が歩行しているときの光ファイバ260の最小限の動きを確実にする。
【0090】
代替的な実施形態においては、直径で約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、最大で10mm、および、最大で20mm、のいずれかよりも大きい検出ゾーン258を用いることができる。いずれの場合でも、TS101は、光ファイバ260の相対位置に関して特に敏感であるように構成される。データのより良好な空間的平均化のために、大きなTS101を用いてもよい。
【0091】
光ファイバセンサの上述した構成によって、毛細血管再充満時間(CRT)、毛細血管酸素飽和度(それによって、組合せをパルスオキシメトリで利用できるようになっている)、足底圧、心拍数および心拍変動、ならびに、血圧、を含む幅広い生理学的パラメータを測定することができる。
【0092】
多くの可能性のある生理学的用途に関する光ファイバセンサの動作は、CRTおよびSpOを測定する上述した方法と同様であるが、上記のFOS構成は、組織から反射した光の変動するスペックルパターンを検出して処理する方法(たとえば、レーザ―ドップラー流量測定法(laser Doppler flowmetry:LDF)やレーザースペックルコントラスト測定法)に適用することができる。これらの方法は、血流および血圧を監視するのに用いられる。
【0093】
微小循環、ひいてはLDF信号は、組織に作用する圧力によって大きく影響を受ける。複合圧力およびLDF測定は、微小血管検査(たとえば、閉塞後反応性充血のための臨床上関連する測定)を行うのに有用である。したがって、本発明の複合センサは、モーションアーチファクトおよび印加された圧力を考慮して行うためのモニタリングを可能にする。そのため、適正圧力に調節して、一定に保持することができ、および測定は既知の圧力閾値を超えた状態でのみ行われ、異常な結果または不正確な結果が得られないようにする。
【0094】
LDFにおいては、コヒーレント光が(通常はレーザから)組織を照らす。赤血球を動かすことによって散乱される光は、ドップラー周波数偏移を受けて、約20Hz〜20kHzの周波数スペクトルをもたらす(ドップラー偏移を伴わずに)静止組織によって散乱される光に干渉する。この周波数スペクトルは、フォトダイオードによって直接的に検出された後、数式3の方程式を用いて、血流の表示を示すように処理される。
【0095】
【数3】
【0096】
数式3において、Mはパワースペクトルパワー密度スペクトルP(ω)の第一のモーメントであり、ωは検出光の角周波数であり、DCは検出されたDC光レベルである。
【0097】
検出されたスペックルパターンの特性、ひいては血流信号もまた、センサと皮膚表面との間の距離による影響を受ける。同様に、TSに近接するモニタリングセンサは、センサのより望ましい位置決め、ひいてはより正確な測定値を可能にする。
【0098】
本発明の複合センサは、所望の用途に適した衣服、創傷被覆材、包帯、ひも、ファブリックストリップ、または、ウェビング、に組み込むことができる。本発明の代替的な実施形態においては、複合センサは、対象者の皮膚に接触するが、必ずしも前記対象者によって着用される必要はないようにデザインされる装置、家具、面、または、ツール内で構成してもよい。例として、複合センサは、自動車または航空機に使用される座席または操縦装置に組み込んでもよい。
【0099】
テキスタイル圧力センサを用いることに関する追加的な便益は、センサは、モーションアーチファクトの影響を低減するために、検出器が皮膚表面に接触したときを確認するための近接インジケータとしても用いることができるということである。これにより、センサを、皮膚表面に付着させるのではなく、ゆったりした服の中で着用できるようにする。
【0100】
別法として、血圧監視は、パルス通過時間を測定することによって遂行することができる。このことを遂行するために、体の異なる二か所(たとえば、腕の領域と患者の指先、または、患者の耳たぶと指先)においてPPG測定が実行される。各検出器におけるパルスの到達時間が測定され、到着時間の差を血圧に関連付けることができる。
【0101】
請求項に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、多くの代替的な実施形態が可能である。たとえば、テキスタイルまたはTSは、他の実施形態では、織りその他の方法で製造される。いくつかの実施形態においては、単一のFOSを形成する複数の光ファイバが、単一の光源および単一の受信部に取り付けられる。
【0102】
代替的な実施形態では、伝送モード光ファイバセンサが含まれている。伝送モードセンサは、指または他の体部位を介して光を、反対側に配置された受信ファイバへ送信する。測定は、反射光ではなく、送信光を測定することによって行われる。
【0103】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0104】
〔実施例1−着用者の足の裏用の歩行CRT測定装置を形成するための複合センサを組み込んだ靴下〕
【0105】
複合センサは、体にぴったり合ったテキスタイルから製造された靴下に組み込まれる。複合センサは、着用者の足の裏の生理学的パラメータを監視する。着用者は、特に、糖尿病性足潰瘍を患う可能性のある人達である。これは、糖尿病性足潰瘍の発症を診断および監視する際に有用である。このような靴下は、従来のペドバログラフィー(pedobarography)装置の代わりに用いることもでき、また、足底圧緩和装具の有効性を判断するのにも用いることができる。
【0106】
靴下の布地は、テキスタイルセンサを備えており、それに応じて光ファイバセンサが靴下に埋め込まれている。同軸構成のFOSが、図13に示す箇所で着用者の足と接触するように組み込まれている。同軸構成のFOSは、それぞれ、500μmの直径を有するプラスチック光ファイバからなる単一のペアを備えている。第一の検出領域は第一中足骨の領域内にあり、第二の検出領域は第五中足骨の領域内にあり、かつ、第三のセンサ領域はかかと中央の領域にある。
【0107】
プロセッサおよび光源、受信部、ならびに、電源は、着用者の足首の上にあるように、靴下に組み込まれる。着用者は、靴下を着用しながら正常に歩く。3つの位置の各々にあるテキスタイルセンサは、着用者の歩行を分析するのに用いることができるとともに、歩行中に、着用者によって各検出位置に印加された圧力を測定するのにも用いることができる。測定された圧力が閾値圧力を超える場合、あらかじめ確立されたベースラインと閾値圧力との間で、CRTの測定を行うことができる。
【0108】
テキスタイルセンサは、検出位置に対する光ファイバの位置を監視し、靴下が足の正しい位置にない場合には、ユーザに警告する。テキスタイルセンサは、着用者が歩行中であるという条件で連続的に測定することができる。着用者が歩行中でない場合は、何らかの腫れに関してユーザに警告するために、依然として圧力が監視される。腫れが生じた場合、CRTの測定または他の機能が腫れが生じた理由を特定するべく、ユーザは歩き回るように遠隔装置を用いて促される。
【0109】
複合センサを用いて行った組合せ測定が図14に示されている。図示されている測定は、それぞれ、第一、第二および第三の検出領域に関連付けるように順序付けられている。
【0110】
本発明の特定の実施形態が本願明細書に詳細に開示されているが、これは、例として、および単に説明のために行われている。上述した実施形態は、本発明の範囲に関して限定しようとするものではない。本発明により、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の置換、変更および改良を本発明に対して行ってもよいことが意図されている。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】