(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-531432(P2018-531432A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】改善されたフルートヘッドジョイント
(51)【国際特許分類】
G10D 9/00 2 A20060101AFI20180928 2 C07C 275/
G10D 7/02 2 A20060101ALI20180928 2 C07C 275/
【FI】
G10D9/00
G10D7/02 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-521313(P2018-521313)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月22日
(86)【国際出願番号】HU2016000066
(87)【国際公開番号】WO2017068380
(87)【国際公開日】20170427
(31)【優先権主張番号】P1500480
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】HU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518137841
【氏名又は名称】ラカト、ゾルタン
【氏名又は名称原語表記】LAKAT,Zoltan
(71)【出願人】
【識別番号】518137852
【氏名又は名称】ホルバス、タマス
【氏名又は名称原語表記】HORVATH,Tamas
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ラカト、ゾルタン
(72)【発明者】
【氏名】ホルバス、タマス
(57)【要約】
本発明は、円筒管セクション(2)と、補強要素(4)によって隣接された歌口(3)と、歌口(3)の左に位置された管セクション(2)を終端させるように適応されたクラウン(6)と、歌口(3)の下に位置される音波チャンバ(5)内の管セクション(2)に配設された凹状チューニング栓(8)とを備えるフルートヘッドジョイントに関する。本発明に従ったフルートヘッドジョイントは、円筒管セクション(2)が、従来の構成に比べて長くなっており、クラウン(6)が、開口されるように構成されており、チューニング栓(8、12、15、23)が、円筒体であり、その面が、規則的または不規則的な弓状面および平坦面の組み合わせとして作られた沈下した三次元構造を有する歌口(3)に面して位置されており、チューニング栓(8、12、15、23)とクラウン(6)との間の共鳴孔(5a)に設けられるように適応された釣り合いおもり(40)を有しており、また、追加の延設片(42、43)を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルートヘッドジョイントであって、円筒管セクション(2)と、補強要素(4)によって隣接された歌口(3)と、前記歌口(3)の左に位置された管セクション(2)を終端させるように適応されたクラウン(6)と、前記歌口(3)の下に位置され、前記管セクション(2)の音波チャンバ(5)内に配設された凹状のチューニング栓(8、12、15、23)とを備え、
前記クラウン(6)が開口されるように構成されており、前記チューニング栓(8、12、15、23)が円筒体であり、その面が規則的または不規則的な弓状面および平坦面の組み合わせとして作られた沈下した三次元構造を有する前記歌口(3)に面して位置されており、
前記チューニング栓(8、12、15、23)と前記クラウン(6)との間の共鳴孔(5a)に設けられるように適応された釣り合いおもり(40)を有し、
また、追加の延設片(42、43)を有することを特徴とする、フルートヘッドジョイント。
【請求項2】
前記円筒管セクション(2)が従来の構成に比べて長いことを特徴とする、請求項1に記載のフルートヘッドジョイント。
【請求項3】
前記クラウン(6)が、2つの空洞部、底部(33)および上部(34)から成り、前記底部と前記上部との間に膜が配設され、前記底部(33)の円筒表面上に溝(9)が配設されることを特徴とする、請求項1に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項4】
前記クラウン(6)の前記底部(33)および上部(34)が、取り外し可能な接続によって共に結合されることを特徴とする、請求項3に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項5】
前記チューニング栓(8)が、その前記円筒体上に配設されたゴム製リングを受けるために適応された溝(9)を備える円筒体であり、前記チューニング栓の表面が、内向きテーパ構成を有する前記歌口(3)に面することを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項6】
前記チューニング栓(12)が、その円筒表面上に配設された溝(9)を備える円筒体であり、前記歌口(3)に面するその面(13)が、内円錐部(14a)と、錐台形状部(14b)と、凹状張り出し部(14c)とで形成されることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項7】
前記チューニング栓(15、23)が、2つの部、上部および底部(19、30)で形成されることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項8】
前記チューニング栓(12)の前記上部が、ステム部(16)と、媒介部(18)を介して前記ステム部(16)に結合された上向きテーパ部(17)とで形成され、前記上部の内部に、内円錐部(14a)と、錐台形状部(14b)と、凹状張り出し部(14c)とから成るくぼみが配設され、前記底部(19)に、前記底部(19)の全体の高さに沿って延びる接続孔が配設されることを特徴とする、請求項7に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項9】
前記チューニング栓(15)の前記上部および前記底部(19)が、しっかりと、または、取り外し可能な接続、例えばねじ山によって、共に結合されることを特徴とする、請求項8に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項10】
前記チューニング栓(23)の前記上部が、ヘッド部(24)と、ステム部(25)と、円筒部(26)と、円筒部(29)で終端とされる外向きテーパ部(28)とから成り、前記上部の内部に、内円錐部(14a)と、錐台形状部(14b)と、凹状張り出し部(14c)とから成るくぼみが配設され、前記底部(30)に、前記上部を受けるために適応された内ボア(31)と、前記内ボア(31)に接続された円錐部(32)とが配設されることを特徴とする、請求項7に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項11】
前記チューニング栓(23)の前記上部と前記底部(30)との間に、好ましくはゴム製リングを利用して実装された、取り外し可能な接続があることを特徴とする、請求項10に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項12】
チューニング栓(8、12、15、23)とクラウン(6)との間の共鳴孔(5a)に設けられるように適応された釣り合いおもり(40)を備え、追加の延設片(42、43)をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項13】
前記釣り合いおもり(40)が、その外側表面上に配設された各ゴム製リングを受けるために適応された1つ以上の溝(41)を備えるディスクまたはリング形状体であることを特徴とする、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項14】
前記延設片(42)が薄壁管であり、その一端(44)に溝(48)が配設されており、その他端(45)が前記クラウン(6)を受けるために適応されることを特徴とする、請求項1〜13のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項15】
前記延設片(43)が薄壁管であり、前記フルートヘッドジョイント(1)に接続されたその端(46)がテーパ構造を有し、その他端(47)が前記クラウン(6)を受けるために適応されることを特徴とする、請求項1〜14のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項16】
前記クラウン(6)と、前記チューニング栓(8、12、15、23)と、前記釣り合いおもり(40)と、前記延設片(42、43)とが、金、銀、洋銀、銅、真鍮、アルミニウム、鋼、チタン、プラチナ、タンタル、ジルコニウム、木材、骨、プラスチック等で作られることを特徴とする、請求項1〜15のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【請求項17】
前記クラウン(6)と、前記チューニング栓(8、12、15、23)と、前記釣り合いおもり(40)と、前記延設片(42)とが、その円筒表面に留められた溝(9、41、48)に配設されたゴム製リングを用いて前記フルートヘッドジョイント(1)に取り付けられることを特徴とする、請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載のフルートヘッドジョイント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒管セクションと、補強要素によって隣接された歌口と、歌口の左に位置された管セクションを終端させるように適応されたクラウンと、歌口の下に位置される音波チャンバ(sonic chamber)の管セクションに配設された凹状チューニング栓とを備えるフルートヘッドジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
近代フルートの発明者であるTh.ベームは、当該楽器のほぼあらゆる部品を近代化したが、フルートヘッドジョイントに配設されるチューニング栓およびフルートヘッドジョイントを塞ぐように適応されたクラウンについては、修正を加えないままであった。チューニング栓は通常、最も高価なハンドメイドの楽器でさえも、コルクで作られており、それに、通常金属製の板がほとんどの製造業者によって追加される。フルートの音質は主に、ヘッドジョイントの質に依存する。
【0003】
コルクの存在に起因して、フルートヘッドジョイントの左手側は、音響的に受動的な「ミュート(mute)」管セクションである。当該楽器の心臓は、歌口の下に位置される音波チャンバである。音波チャンバは、幅約4cmのヘッドジョイントの領域であり、その中心から管の開口端に向かって音が伝搬する。チューニング栓の材質に起因して、ヘッドジョイントの左手側は、従来の状態では音響的に作動不能であり、当該楽器はしたがって前方および右手方向に音を放出する。コルクの材質的特性は、音および振動の断片を吸収するということである。
【0004】
コルク材質によって引き起こされる欠点を解消する努力がなされてきた。かくして、特許明細書US 6,660,919は、閉口されたクラウン、ねじ軸、およびチューニング板が、コルクの一部と共に保持されるという解決策を開示している。チューニング栓の安定保持は、ねじ軸を受けるために適応された追加のインサートによって提供され、この金属のインサートは、フルートの音をわずかではあるが向上させる。
【0005】
この解決策は、コルクおよび塞がれたチューニング栓によって、上管セクションが依然としてこもる(muffled)という欠点を有する。
【0006】
2012年より、日本のフルートメーカーであるナガハラが、銀製ヘッドジョイントのために作られた栓および釣り合いおもりが適用された、そのようなフルートヘッドジョイントを販売しており、顧客はニーズに最も合う部品を選ぶことが可能である。この構成は当該楽器の使用を容易にするものの、閉口されたクラウンとコルクが音をこもらせる。
【0007】
交換可能なチューニング栓を適用するが、ヘッドジョイントの内側にコルクを保持する他の解決策も知られている。
【0008】
ロバート・ビジオは、コルクを完全に放棄し、閉口されたクラウンを有する金属のチューニング栓を適用した最初のフルートメーカーであった。彼はクラウン内に釣り合いおもりを組み込んだ。
【0009】
彼の設計の欠点は、チューニング板が依然として平坦な面を有するということである。
【0010】
本発明の目的は、従来のヘッドジョイントの欠点を解消するフルートヘッドジョイントを提供することであり、すなわち、
・フルートヘッドジョイントの内側に適用される平坦なチューニング面は、臨時記号を有するノート(notes)には、より適さない。
・フルートは、ソフトに奏でられたときは、通常平坦な音を発するのに対し、ラウドに(loudly)奏でられた時は、大抵鋭い。
・高いピッチのノートは不安定であり、その共鳴は澄んだ楽音(tone)を維持できず、したがって一定のピッチ補正が要求される。
・低いピッチのノートは、フォルテの楽節(passage)において奏でることが困難であるのに対し、ピッチの高いノートは、強く吹かれなければならず、奏者の集中力を酷使する。
・従来のフルートは、前方および右手方向にのみ音を放出する。
【0011】
本発明は、平坦な表面の代わりに、三次元の凹状チューニング表面を適用することによって、改善された、より澄んだ音が達成され得るという認識に基づく。開口されたクラウンにより、フルートは、左手方向にも音を放出する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、円筒管セクションと、補強要素によって隣接された歌口と、歌口の左に位置された管セクションを終端させるように適応されたクラウンと、歌口の下に位置される音波チャンバに配設された凹状チューニング栓とを備え、円筒管セクションが、従来の配置に比べて長くなっており、クラウンが、開口された構成を有しており、チューニング栓が、円筒体であり、その面が、規則的または不規則的な弓状面および平坦面の組み合わせとして作られた沈下した三次元構造を有する歌口に面しており、歌口とクラウンとの間の管セクションが、従来の解決策に比べて長くなっており、ヘッドジョイントが、チューニング栓とクラウンとの間の共鳴孔に設けられるように適応された釣り合いおもりを備えることを特徴とする、フルートヘッドジョイントを提供することによって実現される。
【0013】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの好ましい実施例において、クラウンは、2つの空洞部、底部および上部から成り、底部と上部との間に膜が配設され、底部の円筒表面上に溝が配設されており、底部および上部は、取り外し可能な接続によって共に結合される。
【0014】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの別の好ましい実施例において、チューニング栓は、円筒体上に配設されたゴム製リングを受けるために適応された溝を備える円筒体であり、チューニング栓の表面が、内向きテーパ構成を有する歌口に面する。
【0015】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントのさらなる好ましい実施例において、チューニング栓は、その円筒表面上に配設された溝を備える円筒体であり、歌口に面するその面が、内円錐部と、錐台形状部と、凹状張り出し部とで形成される。
【0016】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの好適な実施例のチューニング栓は、2つの部、上部および底部から成り、ここで、チューニング栓の上部が、ステム部と、媒介部を介してステム部に結合された上向きテーパ部とで形成される。上部の内部に、内円錐部と、錐台形状部と、凹状張り出し部とから成るくぼみが配設されており、底部に、底部の全体の高さに沿って延びる接続孔が配設されており、ここで、チューニング栓の上部および底部は、しっかりと共に結合されるか、または、底部および上部は、取り外し可能な接続によって共に結合される。
【0017】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの別の好適な実施例において、チューニング栓の上部は、ヘッド部と、ステム部と、円筒部と、円筒部で終端とされる外向きテーパ部とから成る。上部の内部に、内円錐部と、錐台形状部と、凹状張り出し部とから成るくぼみが配設されてあり、底部に、上部を受けるために適応された内ボアと、ボアに接続された円錐部とが配設されており、チューニング栓の上部と底部との間に、好ましくはゴム製リングを利用して実装された、取り外し可能な接続が配設される。
【0018】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントのすべての好ましい実施例は、チューニング栓とクラウンとの間の共鳴孔内に挿入されるように適応された釣り合いおもりを備え、追加の延設片をさらに備え、釣り合いおもりが、その外部表面上に配設されたゴム製リングを受けるために適応された1つ以上の溝を備えるディスクまたはリング形状体である。
【0019】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの好ましい実施例において、延設片は薄壁管であり、その一端に溝が配設されており、その他端がクラウンを受けるために適応されるのに対し、別の好ましい実施例において、延設片は薄壁管であり、フルートヘッドジョイントに接続されたその端がテーパ構造を有し、その他端がクラウンを受けるために適応される。
【0020】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントのすべての好ましい実施例において、クラウンと、チューニング栓と、釣り合いおもりと、延設片とが、金、銀、洋銀(alpaca)、銅、真鍮、アルミニウム、ジルコニウム、鋼、チタン、プラチナ、プラスチック、木材、骨等で作られており、クラウンと、チューニング栓と、釣り合いおもりとは、要求される場合には、耐食コーティングを提供される。
【0021】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントのすべての好ましい実施例において、クラウンと、チューニング栓と、釣り合いおもりと、延設片とが、円筒外側表面に機械切削された溝に配設された各ゴム製リングを用いて、フルートヘッドジョイントに取り付けられる。
【0022】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの好ましい実施例は、添付された図面を参照しながら詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの図を示す。
【
図1a】
図1aは、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの部分断面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントのチューニング栓の実施例を断面図で示す。
【
図3】
図3は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントのチューニング栓のさらなる実施例を断面図で示す。
【
図4】
図4は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの二部分チューニング栓の図を示す。
【
図5】
図5は、平面A−Aに沿って取られた、
図4に例示された二部分チューニング栓の断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に例示された二部分チューニング栓の上面図である。
【
図7】
図7は、
図4に例示された二部分チューニング栓の上部を受けるために適応された底部の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの二部分チューニング栓のさらなる実施例を示す。
【
図9】
図9は、平面B−Bに沿って取られた、
図8に例示された二部分チューニング栓の断面図である。
【
図11】
図11は、
図8に例示された二部分チューニング栓の上部を受けるために適応された底部の断面図である。
【
図12】
図12は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントのクラウンの底部を例示する。
【
図13】
図13は、平面C−Cに沿って取られた、
図12に例示されたクラウンの底部の断面図である。
【
図14】
図14は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントのクラウンの上部を例示する。
【
図15】
図15は、平面D−Dに沿って取られた、
図14に例示されたクラウンの上部の断面図である。
【
図16】
図16は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの釣り合いおもりを例示する。
【
図17】
図17は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの延設片の実施例を例示する。
【
図18】
図18は、本発明に従ったフルートヘッドジョイントの延設片の別の実施例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に、本発明に従ったフルートヘッドジョイント1の図が示されており、これは、従来のヘッドジョイントに類似して構成されるがそれよりも長い管セクション2から成り、管セクション2上に配設された歌口3に、要素4が隣接する。いわゆる音波チャンバ5が、歌口3の下に位置されたフルートヘッドジョイント1の管セクション2の部分に配設される。音波チャンバ5は、いわゆるチューニング栓8によって、クラウン6に面する側で終端とされる。音波チャンバ5は、基本的には約4cmのサイズの領域であり、歌口3を通じて吹き込まれた空気が、この領域の中央を通じて、管セクション2の自由端7の方向に流れる。当該楽器を奏でるために適応されたキーシステム(keywork)を有するフルートの本体は、フルートヘッドジョイント1の管セクション2の自由端に取り付けられる。クラウン6の近くのフルートヘッドジョイント1の領域に、チューニング栓8が位置されてある。吹き込まれた空気がこの栓に対して衝突し、「Uターン」すると、自由端7の方向に流れる。
【0025】
従来のフルートにおいては、チューニング栓8の構成に起因して、音および振動の断片がこの管セクションで吸収される。本発明に従ったフルートヘッドジョイント1とともに適用されたチューニング栓8は、この効果を解消するために適応されており、さらなる追加の部品および構成変更の適用により、フルートの音を向上させることを可能にする。
【0026】
図1aは、本発明に従ったフルートヘッドジョイント1の部分断面図であり、ここで、全管セクションのサイズはX=220〜450mmであり、歌口3の左に位置される管セクションは、通常より著しく長く、Y=30〜230mmの長さを有する。クラウン6とチューニング栓8との間に位置される共鳴孔5aには、釣り合いおもり40が配設されてあり、この役割については、後で検討される。より長い管セクション2の結果、共鳴孔5aもより大きくなり、より大きい共鳴孔5aが、フルートの音に対し、より大きい増幅効果を有する。
【0027】
図2に、フルートヘッドジョイントのチューニング栓8が断面図で例示される。チューニング栓8は、直径D=9〜46mm(フルートヘッドジョイント1の直径に依存する)および高さL=3〜120mmを有する円筒体である。丸みを付けた角を有する溝9が、チューニング栓8の円筒体に位置されてあり、フルートヘッドジョイント1の管セクション2の内側にチューニング栓8を固定するために適応された、図示されないゴム製リングが当該溝に設けられる。
【0028】
それによって、1つまたは2つ以上の溝9が、チューニング栓8の円筒部の外側表面上に配設される。各溝9内に設けられた2つ以上のゴム製リングが、チューニング栓8の改善されたセンタリングを提供する。
【0029】
チューニング栓8の底端10は平坦な表面を有するのに対し、端10に並行でありフルートヘッドジョイント1の歌口3に面する上面11は、三次元構造を有する、すなわち、本実施例においては、円錐角α=0〜120°および深さL
1=2〜110mmの内円錐面を構成する。
【0030】
チューニング栓8は、銀、金、洋銀、銅、真鍮、ジルコニウム、チタン、プラチナ、タンタル、骨、木材、またはプラスチックを含む広範囲の素材で作られ得る。金属製チューニング栓8は好ましくは、強力な耐擦傷性コーティングを形成し、美的に快く、輝かしい表面仕上げを提供するロジウムでコーティングされる。
【0031】
チューニング栓8は好ましくは、成形された、均質な、または合金の素材で作られる。
【0032】
チューニング栓は板状金属でも作られうるが、その場合には、音質を改善するために、釣り合いおもりが適用されねばならないことは、留意されるべきである(
図16参照)。
【0033】
図3に、フルートヘッドジョイント1の歌口3に面する表面13が段階移行三次元構成を備える、チューニング栓12の構成が示されており、当該構成は、
図2に関連して上で言及された円錐角α=0〜120°を有し、チューニング栓12の上面の下方3〜25mmから2〜70mmまで延びる円錐部14aを含む。円錐部14aの直径d
1は、1〜30mmである。2〜40mmの直径d
2を有する錐台形状部14bが、半径移行セクション(R
1=1〜58mm)を介して円錐部14aに接続されており、張り出し部14cが、半径移行セクション(R
2=1〜58mm)を介してそれに接続されている。この構成は、フルートのより低いノートが、より大きいピッチで発せられることを可能にする。
【0034】
チューニング栓12の外部構成は、チューニング栓8の外部構成と同一である。
【0035】
実験結果によって、チューニング栓も二元金属構成を有し得るということが証明されている。このような、2つ以上の異なる金属または金属合金で作られる、二元金属のチューニング栓15の構成が、
図4〜7および
図8〜11に開示される。
【0036】
図4は、上部15を例示し、上部が、円筒ステム部16と、ステム部16に接続された円錐状構成部17とから成ることを示す。ステム部16と部17との間の移行も、円錐状構成部18によって提供される。チューニング栓15(
図5参照)の内三次元表面の構成は、上で
図3に関連して記載された単一素材のチューニング栓12の内部構成と同一である。
【0037】
図6aに、
図4に従ったチューニング栓15の上面図が示される。
【0038】
図7は、二元金属チューニング栓15の底部19の断面図を示す。底部19もチューニング栓8および12の外部構成と同一に構成されている、つまり、円筒表面上に配設された溝9がある。
【0039】
底部19の内部構成は、
図4に例示された構成に類似している、つまり、ステム部16を受けるために適応された円筒部20が、底部19に配設される。円筒部20は、
図4に例示される部17を支持するように適応された円錐部22で終端とされる、丸みを付けた張り出し表面を有する部21に接続されている。
【0040】
チューニング栓15の部品は、接着接合またははんだ付けによって組み立てられるが、ゴム製リング式またはねじ式ジョイントも実装され得る。
【0041】
図8〜11は、ゴム製リング式ジョイントを備える二元金属チューニング栓の構成を例示する。
【0042】
図8に、チューニング栓23の上部が例示されており、その底部は、ヘッド部24と、ヘッド部24よりも小さい直径を有するステム部25と、ヘッド部24の直径と同一の直径を有しステム部25に接続される円筒部26と、円錐部27と、円錐部27よりも小さい円錐角を有しそれに接続されるさらなる円錐部28と、円筒部29とからなる。
【0043】
チューニング栓23の上部の内部三次元表面の構成は、上で
図3に関連して記載されたチューニング栓12の内部表面構造と同一である。
【0044】
図10は、チューニング栓23の上面図を示すのに対し、
図11には、チューニング栓23の底部30の断面図が示される。
【0045】
底部30には、上部のヘッド部24と、ステム部25と、円筒部26とを受けるために適応されたボア31が配設されてあり、直径d
3=1〜44mmおよび深さL
3=2〜45mmを有する。
【0046】
ボア31の上方に位置された底部30の領域において、上部つまり円錐部27がそれに対して支持される円錐状構成部32が見い出し得る。
【0047】
チューニング栓23は、最初にゴム製リングを上部のステム部25上に置き、その後上部および底部30を取り付けることによって組み立てられる。ヘッド部24がボア31内に挿入されるにつれ、ゴム製リングはボア31の壁に接着され、面27が部32に対して完全に支持されるまで、上部がボア31内に押し込まれる。ボア31の壁に接着されたゴム製リングは、二つの部を取り付けられたまま維持する。
【0048】
チューニング栓15および23のこのような二部分構成により、上部および底部は、異なる金属または金属合金から作られる。
【0049】
一方では、この解決策は、金属の組み合わせによって、より広い音色範囲が達成され得ることを可能にするのに対し、(非常に高価な)銀または金でチューニング栓全体を作る必要が今はないので、フルートのコストをも減らす。
【0050】
本発明に従ったフルートに適用された三次元チューニング栓のおかげで、一貫して完全な音が達成され得る。ピッチ精度も著しく改善される。
【0051】
チューニング栓は、フルートを奏でて発生される音に非常に著しい影響を有する。異なる金属は、フルートの音の質および特性に、異なる効果を有する。チューニング栓の形状が、演奏中でさえも、簡単かつ迅速に、それが別のものと交換され得ることを可能にする、つまり、次の曲により良く合致する音色および音質を達成することを可能にする、異なるチューニング栓が、演奏される異なる曲と曲の間に、フルートヘッドジョイント内に挿入されうる。
【0052】
チューニング栓の構成に起因して、一端で当該楽器を塞ぐように適応されたクラウン6は、今は音質に影響を有し得る。したがって、従来のクラウンを、「開口」された構成を有するクラウン、つまり、円筒孔を備えるクラウンと交換することが必要になった。
【0053】
図12〜15に、クラウン6が例示される。
【0054】
クラウン6は、2つの部分、底部33および上部34から成る。
【0055】
溝9が、底部33の外円筒表面上に配設されてある。フルートヘッドジョイント1にクラウン6を留めるために適応されたゴム製リングが溝9に挿入される。
【0056】
直径d
4=1〜30mmおよび高さL
4=3〜30mmを有するボア35が底部33の全長に沿って延びる(
図13参照)。
【0057】
上部34は、円筒部36と、円筒部36に接続された、ドームのような形状で構成される部37とから成る。
【0058】
上部34に、底部33に接続されるように適応された段ボア38が配設されてあり、ボア38はより狭い円筒ボア39で終わる。ボア38の直径は、d
5=2〜32mmであり、これは最終的に、直径d
6=1〜30mmを有するボア39で終わる。クラウン6の底部33と上部34との間に、膜(図示されない)が配設されており、底部および上部33、34は、ねじ式ジョイントによって結合される。
【0059】
膜は、たとえば、銀、金、鋼、アルミニウム等の広範囲の素材で作られ得る。
【0060】
クラウン6は、広範囲の異なる素材、つまり、銅、真鍮、ジルコニウム、チタン、銀、金、プラチナ、タンタル、洋銀、骨、木材、プラスチック等からも作られ得る。
【0061】
クラウンは、フルートの音質には、より著しくない影響を有するが、クラウンの材質は、発生される音の質に微妙に影響を及ぼす。上に記載したクラウンの形状は、演奏中でさえも、簡単かつ迅速に、それが別のものと交換され得ることを可能にする、つまり、次の曲により良く合致する音質を達成することを可能にする異なるクラウンが、約30秒でフルートヘッドジョイント内に挿入され得る。
【0062】
この最終結果は、新規なチューニング栓およびクラウンを備える本発明に従ったフルートが、従来のフルートに比べて、はるかに良い音質を有するということである。それは、同じ量の吹き込まれた空気で、より強く、よりダイナミックで、より澄んだ、より柔軟な音を有し、ピアノノートもフォルテノートもより簡単に奏でられる。より少ないピッチ補正が必要とされる。
【0063】
間隔の大きいスラーおよび跳躍進行も、より簡単に演奏し得る。それはもはや、低いノートをラウドに、高いノートをソフトに奏でるのに、いかなる困難をももたらさない。
【0064】
上に記載した形で変更されたチューニング栓およびクラウンは、奏者にとって、非常に顕著な違いを作る。
【0065】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントは、フルートの使用および音に肯定的な影響を及ぼす追加の部品を提供され得る。
【0066】
このような追加の部品は、チューニング栓とクラウンとの間の共鳴孔内に挿入された釣り合いおもり40であり得る。
【0067】
図16に、想定される釣り合いおもりの構成が例示されており、これは基本的には、直径15〜18mm(フルートヘッドジョイント1の直径に対応)および高さL
5=1〜30mmを有するディスクまたはリング形状体である。
【0068】
溝41は、釣り合いおもり40の側表面に機械切削されており、溝41に据えられたゴム製リングが、所望の位置で、釣り合いおもりを保持するように適応されている。
【0069】
釣り合いおもりは、洋銀、アルミニウム、銅、真鍮、銀、金、チタン、およびジルコニウム等の広範囲の素材でも作られ得る。しかしながら、銅、真鍮、または洋銀で作られた釣り合いおもりは、耐食対策として、また、アルミニウム酸化を防ぐために、コーティングされねばならない。
【0070】
フルートの質に依存して、また、奏者のニーズに従って、金属の組み合わせを適用することによって、フルートの音において異なる効果が達成され得る。これを提供するために、複数の異なる金属または金属合金が利用されうる。より軽く、より際立ったスタッカートノート(短期間ノート)が演奏され得、または所望される場合には、より完全な、より軽やかな、または、よりカラフルな音質が提供され得る。また、より大きく、より豊かな音が、より温かい、または、より冷たい音色とともに達成され得る。
【0071】
最後に、本発明によるフルートヘッドジョイントに(また、それ以前に製造されたいかなる他のフルートヘッドジョイントにも)取り付けられるように適応された延設片を適用することにより、従来のヘッドジョイントよりも大きい長さを有する特別なサイズのフルートを提供し得る。このような延設片42および43が、
図17および
図18に描かれる。
【0072】
延設片42および43は、クラウン6と交換してフルートヘッドジョイント1内に一時的に挿入されるように適応された薄壁管として実装され、ゴム製リングによって保持される。このような解決策は
図17に見られ、延設片の端44が、フルートヘッドジョイント1に接続され、直径d
7=13〜16mmを有する。フルートヘッドジョイント1に延設片を取り付けるために、端44の周辺に、ゴム製リングを受けるように適応された溝48が配設され、クラウンが、直径d
8=12〜25mmを有する上端45に挿入される。
【0073】
延設片42の長さは好ましくは、L
6=1〜28cmである。
【0074】
図18に例示された延設片43は、外側からフルートヘッドジョイント上に一時的に設けられるように、クラウン6と交換するように適応された薄壁管としても実装される。それは、2cmと28cmとの間の長さL
7を有する。フルート本体に外側から取り付けられるように適応された端46は、テーパされた構成および直径d
9=15〜30mmを有し、クラウンは、他端47に挿入される。
【0075】
延設片42、43は、コンサート中でさえも、迅速かつ簡単に切り替えることができる。
【0076】
これらは通常、銅、真鍮、洋銀、銀、または金で作られ得る。金属合金または高純度金属は、平均的なフルート音とは異なる、より大きくてより美しい、改善された音を提供する。
【0077】
本発明に従ったフルートヘッドジョイントの利点は、以下のように要約し得る。
・開口されたクラウンを適用すると、共鳴孔が一種の増幅器として機能し、金属(特に銀)の添加量に起因して、フルートの音がより鮮やかになる。
・3次元チューニング表面を有するチューニング栓を適用することにより、高音量および改善されたダイナミクスに加えて、より完全で、より豊かで、より共鳴した音が実現され得る。
・適切に寸法変更されたとき、いかなるチューニングおよびサイズの横型フルートにも適用され得る。
【符号の説明】
【0078】
1…フルートヘッドジョイント、2…管セクション、3…歌口、4…要素、5…音波チャンバ、5a…共鳴孔、6…クラウン、7…自由端、8…チューニング栓、9…溝、10…端、11…面、12…チューニング栓、13…面、14a…円錐部、14b…錐台形状部、14c…張り出し部、15…チューニング栓、16…ステム部、17…部、18…部、19…底部、20…部、21…部、22…円錐部、23…チューニング栓、24…ヘッド部、25…ステム部、26…円筒部、27…円錐部、28…部、29…円筒部、30…底部、31…ボア、32…部、33…底部、34…上部、35…ボア、36…円筒部、37…部、38…ボア、39…部、40…釣り合いおもり、41…溝、42…延設片、43…延設片、44…端、45…端、46…端、47…端、48…溝、49…膜、50…ゴム製リング。
【国際調査報告】