特表2018-531435(P2018-531435A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-531435(P2018-531435A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】多焦点レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 2 A20060101AFI20180928 2 C07C 275/
   G02C 7/04 2 A20060101ALI20180928 2 C07C 275/
   G02B 9/02 2 A20060101ALI20180928 2 C07C 275/
   A61F 2/16 2 A20060101ALI20180928 2 C07C 275/
【FI】
   G02C7/06
   G02C7/04
   G02B9/02
   A61F2/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-536338(P2018-536338)
(86)(22)【出願日】2016年9月29日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2016073361
(87)【国際公開番号】WO2017055510
(87)【国際公開日】20170406
(31)【優先権主張番号】15188045.7
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518112697
【氏名又は名称】レイナー・イントラオキュラー・レンジズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ルックス,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】プランク,ニコーレ
(72)【発明者】
【氏名】ブレズナ,ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ドラゴスティノフ,ニコラウス
【テーマコード(参考)】
2H006
2H087
4C097
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2H006BC07
2H006BD00
2H087KA20
2H087RA46
4C097AA25
4C097CC01
4C097CC03
4C097SA02
(57)【要約】
本発明は、屈折焦点(F)と回折構造(5)とを有する多焦点レンズに関し、この構造はレンズ(1)の半径方向(r)で、半径の2乗(r)についてプロットした場合に、周期的なプロファイル(6,7,8,9)を有し、
プロファイル(6,7,8,9)は、それぞれの結合個所(10,11,12,13)で微分不可能な、互いに接する4つの区域(6,7,8,9)を周期ごとに有し、第1の区域(9)が単調減少するとともに他の3つの区域(6,7,8)が単調増加し、または第1の区域(9)が単調増加するとともに他の3つの区域(6,7,8)が単調減少し、他の区域のうち第1の区域(9)に接していない区域(7)はそれ以外の両方の他の区域(6,8)よりも大きい傾斜を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折焦点(F)と回折構造とを有する多焦点レンズであって、
前記回折構造(5)は、レンズ(1)の半径方向(r)で、半径の2乗(r)についてプロットした場合に周期的なプロファイル(6,7,8,9)を有し、
前記プロファイル(6,7,8,9)は、それぞれの結合個所(10,11,12,13)で微分不可能に互いに接する4つの区域(6,7,8,9)を周期ごとに有するものにおいて、
第1の区域(9)が単調減少するとともに他の3つの区域(6,7,8)が単調増加し、または第1の区域(9)が単調増加するとともに他の3つの区域(6,7,8)が単調減少し、
前記他の区域のうち前記第1の区域(9)に接していない区域(7)はそれ以外の両方の他の区域(6,8)よりも大きい傾斜を有することを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項2】
前記区域(6,7,8,9)は、半径の2乗(r)についてプロットした場合に、直線状であることを特徴とする、請求項1に記載の多焦点レンズ。
【請求項3】
前記第1の区域(9)は実質的に垂直であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多焦点レンズ。
【請求項4】
前記他の区域のうち前記第1の区域(9)に接していない区域(7)は実質的に垂直であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の多焦点レンズ。
【請求項5】
前記第1の区域(9)にそれぞれ接する2つの他の区域(6,8)は実質的に等しい傾斜を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の多焦点レンズ。
【請求項6】
前記第1の区域(9)にそれぞれ接している2つの他の区域(6,8)は、半径の2乗(r)についてプロットした場合に1μm/mmから10μm/mmの傾斜を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の多焦点レンズ。
【請求項7】
前記プロファイル(6,7,8,9)の周期(p)は、半径の2乗についてプロットした場合に0.5mmから1mmであり、プロファイル深さ(T)は2μmから10μmであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の多焦点レンズ。
【請求項8】
前記多焦点レンズは眼内レンズまたはコンタクトレンズであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の多焦点レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折焦点と回折構造とを有する多焦点レンズに関し、この構造はレンズの半径方向で、半径の2乗についてプロットした場合に周期的なプロファイルを有し、このプロファイルは、それぞれの結合個所で微分不可能な、互いに接する4つの区域を周期ごとに有する。
【背景技術】
【0002】
多焦点のレンズまたはコンタクトレンズ、すなわち、たとえば近見視と遠見視のため(二焦点)あるいは近見視と中間見視と遠見視(三焦点)のために利用することができる複数の焦点を有するレンズは、数十年前から知られ、屈折焦点に追加して1つまたは複数の回折焦点を創出するために、屈折式のベースレンズ上のさまざまな回折構造を利用する。
【0003】
特許文献1および特許文献2では、2つの回折焦点を生成するために回折構造を有するレンズが利用され、該回折構造のプロファイルは交互に単調増加と単調減少する4つの区域を周期ごとに有し、すなわち、鋭角を有する2つの最大値を周期ごとに有している。出願人が見出したところでは、このような構造のレンズへの刻設は、製作するのが困難な数多くのプロファイル先端をもたらすばかりでなく、生成される焦点における光強度分布や光収率の低下をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ実用新案出願公開第202009018881号明細書
【特許文献2】欧州特許第2503962号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を克服する改良されたレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、この目的は、プロファイルの第1の区域が単調減少するとともに他の3つの区域が単調増加し、または第1の区域が単調増加するとともに他の3つの区域が単調減少し、他の区域のうち第1の区域に接していない区域はそれ以外の両方の他の区域よりも大きい傾斜を有する、冒頭に述べた種類のレンズによって達成される。
【0007】
本発明に基づく構造により、近見視、中間見視、および遠見視のために利用可能な焦点が、従来技術で知られているよりも高い強度割合を有するレンズが創出される。問題をいっそう厳密に考察するために、以下では、「正」の次数の回折焦点を、レンズとその屈折焦点との間に位置するもの、「負」の次数の回折焦点を、レンズに反して屈折焦点より離れて位置するものとして定義する。
【0008】
たとえば遠見視のために屈折焦点が利用されるとき、回折構造の正の一次焦点は中間見視のための距離に相当し、回折構造の正の二次焦点は近見視のための距離に相当する。回折構造のそれぞれの負の焦点は、このケースでは、レンズの利用者の網膜よりも後方で初めて結像され、それによりこのレンズは利用者にとっては利用可能でなく、画像品質の悪化に寄与する。
【0009】
それに対して本発明のレンズでは、(当初の)負の次数の強度割合が、利用される正の次数ないしゼロ番目の(屈折)次数へと結像され、それによって従来技術に比べていっそう色強度が高くコントラスト豊かな画像がもたらされる。利用可能な焦点がより高い強度割合を有しているからである。
【0010】
これと同じ利点は、たとえば別案の実施形態において屈折焦点が近見視のために利用され、回折構造の負の一次焦点が中間見視のための距離に相当し、回折構造の負の二次焦点が遠見視のための距離に相当するときにももたらされる。この実施形態では、回折構造の正の次数は近見視焦点よりも前に位置しているので利用可能性が低く、また、負の3次の次数は網膜の後方で初めて焦点を結ぶのでまったく利用可能でない。このとき本発明によると、正の次数の強度割合がゼロ番目の(屈折の)負の第1および負の第2の次数に結像され、それによって従来技術に比べていっそう高い光収率が利用可能な焦点でもたらされ、それに伴って色強度が高くコントラスト豊かな画像がもたらされる。
【0011】
さらに、いずれの実施形態でも本発明によるレンズは、レンズの回折構造が周期ごとに最大値を1つしか有さず、それにもかかわらず、2つの回折焦点を生成するという有意な利点を有する。したがって、レンズ上での回折構造の製作を大幅に簡単に、かつ少ない廃棄材料で行うことができる。最大値の角度が、2つの回折焦点を生成する従来技術の回折構造よりも大きく、そのうえ周期ごとに1回しか現れず、すなわち半分の頻度でしか現れないからである。特に、周期長が非常に小さくなるレンズの周縁部では、それによって可能となるいっそう正確な製造により、いっそう高いレンズの精度を実現することができ、このことは、ひいてはいっそう正確でコントロールされた光分布につながる。
【0012】
レンズの屈折焦点は、上述したとおり、近見視または遠見視のいずれかのために利用することができる。屈折焦点が遠見視のために利用されるとき、第1の区域が単調減少し、他の3つの区域が単調増加する実施形態が好ましい実施形態である。別案として、屈折焦点を近見視のために利用することができ、その場合、第1の区域が単調増加し、他の3つの区域が単調減少するのが好ましい。
【0013】
半径の2乗についてプロットした場合に、これらの区域は直線状であるのが好ましく、すなわち、これらの区域はレンズにおいて2乗で上昇または下降していく側面(フランク)をもたらす。このことは、レンズの強度推移の容易な計算を可能にする。別案として、これらの区域は、レンズの強度分布を適合化するために、個別的な推移を有することもできる。
【0014】
好ましい実施形態では、上述した第1の区域は実質的に垂直である。これとは関わりなく、他の区域のうち第1の区域に接しない区域も、実質的に垂直であってよい。これら両方の方策は、きわめて容易なプロファイルパターンを可能にする。なぜなら、2つの区域の傾斜を判定しなくてよくなるからである。このことはレンズの製造も容易にする。垂直の区域は、半径の2乗についてプロットした場合に、レンズにおいて垂直の側面(フランク)ももたらすからである。
【0015】
プロファイルの計算を、およびその帰結としてレンズの製造をも簡略化するために、2つの他の区域のうち第1の区域にそれぞれ接する区域は、半径の2乗についてプロットした場合に、実質的に等しい傾斜を有することができる。
【0016】
1つの実際的な実施形態では、2つの他の区域のうちそれぞれ第1の区域に接する区域は、半径の2乗についてプロットした場合に、1μm/mmから10μm/mmの傾斜を有する。さらにプロファイルの周期は、半径の2乗についてプロットした場合に、0.5mmから1mmであり、プロファイル深さは2μmから10μmであるのが好ましい。このことは、近見視および中間見視のための焦点が、利用者により希望される距離に位置するレンズをもたらす。
【0017】
次に、添付の図面に示されている実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。図面には次のものが示されている:
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるレンズを示す模式的な平面図である。
図2図1のレンズを示す模式的な側面図である。
図3図1のレンズを示す拡大した半断面図である。
図4】レンズ半径の2乗についてプロットされた、図1−3のレンズの回折構造のプロファイルである。
図5】本発明によるレンズの強度分布と、従来技術に基づくレンズの強度分布との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および2は、前面2と、裏面3と、光学軸4とを有するレンズ1を示している。レンズ1は、中央のゾーンZと、あとでさらに詳しく説明する2つの環状のゾーンZとを有している。説明しているレンズ1は、特に眼内レンズまたはコンタクトレンズとして利用されるが、光学器具で使用することもできる。
【0020】
レンズ1は、下で説明するように、遠見視または近見視のために利用することができ、以下においてゼロ次焦点とも呼ぶ、光学軸4の上に位置する屈折焦点Fを有している。レンズ1の裏面または前面2,3に、回折構造5が刻設されている。図3および4を参照。それは、レンズ1を近見視だけでなく、中間見視や遠見視のためにも適合させるためである。
【0021】
回折構造5は、光学軸4の上に位置する多数の別の焦点F,i=...,−2,−1,1,2,...を生成し、これらは屈折焦点Fを中心として実質的に対称に分布しており、屈折焦点Fは、設けられる回折構造5に関わりなく、レンズ1の形状によって与えられる。回折焦点F,Fは、回折構造5の正の一次焦点ないし二次焦点と呼ばれ、レンズ1と屈折焦点Fとの間で光学軸4の上に位置する。回折焦点F−1,F−2は、回折構造5の負の一次焦点ないし二次焦点と呼ばれ、レンズ1と反対を向くほうの屈折焦点Fの側に位置する。
【0022】
焦点Fの(位置的)分布は屈折焦点Fを中心として対称であるが、それぞれの焦点Fに割り当てられる強度分布は対称ではないのがよい。たとえば三焦点レンズの場合、特に3つの最大の強度が構成されるのがよく、すなわちそれは遠見視、中間見視、および近見視のためである。このことは、回折構造5が図4に示すように構成されることによって実現される。
【0023】
図4(横軸:半径の2乗r[mm];縦軸:プロファイル深さT[μm])では、回折構造5はレンズ1の半径方向rで、半径の2乗rについてプロットした場合に、それぞれの結合個所10,11,12,13で微分不可能な、互いに接する4つの区域6,7,8,9を周期pごとに有する周期的なプロファイルを有している。「半径の2乗についてプロットする」という表現は、周期性については、周期インターバルpがレンズ1の上で減少していくことを意味する。
【0024】
周期pは、たとえば眼内レンズやコンタクトレンズでは0.5mmから1mmの範囲内であってよく、プロファイル深さTは2μmから10μmの範囲内であってよい。
【0025】
図4の実施形態では、プロファイル5の任意の「第1の」区域が、ここでは区域9が、単調減少するとともに、プロファイルの他の3つの区域6,7,8が単調増加する。「第1の」という表現は、ここでは区域6−9の順番を指すのではなく、3つの「他の」区域と区別をするためのものにすぎない。1つの周期pの内部での区域6−9の順序は自由に選択または定義することができ、それにより、たとえば各々の区域6,7,8,9を「スタート」区域として選択することができ、ないしは「第1の」区域9が必ずしも周期pの開始部に位置しなくてよい。
【0026】
図4に示す実施形態では、屈折焦点Fは遠見視用に設計されており、単調増加する他の3つの区域6,7,8と単調減少する第1の区域9によって、正の次数の2つの回折焦点F,Fが近見視および中間見視のために生じる(図5参照)。別案として、屈折焦点Fを、たとえば近見視用に設計することができ、そのために、負の次数の2つの回折焦点F−1,F−2を中間見視と遠見視のために生じさせるような、単調減少する3つの他の区域6,7,8と単調増加する第1の区域9とが利用される(図示せず)。
【0027】
他の区域のうち第1の区域9に接していない区域は、すなわち図4では中間にある他の区域7は、それ以外の両方の他の区域6,8よりも大きい傾斜を有する。「傾斜」という概念は、ここでは区域6,7,8,9の全体として克服される傾斜として定義され、すなわち、区域6,7,8ないし9の開始点と、当該区域6,7,8ないし9の終了点との間の傾斜として定義される。
【0028】
区域6−9は、半径の2乗rについてプロットしたときに直線状であってよく、それにより、レンズ1の上で単調増加する区域6,7,8は、半径rについて2乗で増加していく面を生じさせる。
【0029】
さらに図4では、第1の区域9と、他の区域のうち第1の区域9に接していない区域は、すなわちここでは中間にある他の区域7は、実質的に垂直であり、すなわち、これらの区域は+/−∞の傾斜を有している。別案として、これら両方の区域7,9はそれぞれ互いに無関係に有限の傾斜を有することもできる(図示せず)。
【0030】
それぞれ第1の区域9に接する2つの他の区域6,8は、半径の2乗rについてプロットした場合に、実質的に等しい傾斜を有している。この傾斜は、たとえば眼内レンズまたはコンタクトレンズでは1μm/mmから10μm/mmの範囲内にあってよい。両方の区域6,8が互いに相違する傾斜を有することもできる(図示せず)。
【0031】
回折構造5は、レンズ1の側2,3の表面全体に設けることができ、または、図1に示すように、中央の領域Zもしくはレンズ1の環状の領域Zだけに設けることができる。その代替または追加として、構造5のアポダイゼーションを行うことができる。このことは、レンズ半径rが増すにつれて構造5のプロファイル深さTが減少していくことを意味する。
【0032】
レンズ1を製作するために、たとえば旋盤での施削によって、回折構造5をたとえばレンズブランクへ直接的に刻設することができる。あるいはレンズブランクが、単に3Dプリンタのための加工性のある出発材料であってもよく、その場合、レンズブランクへの構造の刻設は、出発材料を多焦点レンズ1へと3D印刷することによって行われる。
【0033】
別案として、構造5をまず雌型として、たとえば同じく旋盤または3Dプリンタによって成形ブランクへ刻設することもできる。次いで、レンズ材料が成形ブランクと接触させられ、そのようにして多焦点レンズ1を製作する。レンズ材料は、たとえばすでにレンズブランクをなすように予備製作されていてよく、これに構造5が「スタンプ」としての成形ブランクによって押印もしくは刻印される。別案として、レンズ材料が液体ないしビスコースの状態で存在しており、たとえば鋳型の中で成形ブランクへ注ぎかけることができる。次いで、たとえば光供給または熱供給によってレンズ材料が硬化される。
【0034】
図5は、ここで提案されるレンズ1の強度推移14(実線によって図示)と、従来技術に基づくレンズの強度推移15(破線によって図示)との比較を示している(横軸:レンズからの距離D[mm];縦軸:相対強度I[1])。
【0035】
この比較のために用いた、ここで提案される回折構造5を有するレンズ1は、半径の2乗rについてプロットした場合に、0.65mmの周期pを有し、プロファイル深さTは4.4μmである。それぞれ第1の区域9に接する他の2つの区域6,8は−半径の2乗rについてプロットしたときに−、4.3μm/mmの傾斜を有している。
【0036】
これとは対照的に従来技術に基づく対照線は、連続して単調に増加し、減少し、増加し、減少する4つの区域を1つの周期の内部に有する周期的なプロファイルを有していた。
【0037】
図5のグラフから明らかなように、屈折焦点Fの領域では強度分布の類似する推移がもたらされる。しかし図5から良くわかるとおり、従来技術に基づくレンズ1は回折構造5の第2の負の焦点F−2の領域で比較的大きい強度値を有している。これとは対照的に、ここで提案されるレンズ1では、利用可能でない強度が負の次数から利用可能な正の次数へとシフトしており、その様子は、焦点FおよびFにおける推移10の明らかに高い強度、ならびに焦点F−2における推移14の明らかに低い強度を参照すれば明瞭である。このように、説明しているレンズ1の利用者にとっては、従来技術に基づくレンズよりも色強度が高くコントラスト豊かな画像がもたらされる。
【0038】
それに応じて本発明は、図示した実施形態だけに限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲の枠内に収まる一切の変形、改変、およびこれらの組み合わせを含んでいる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】